JP2013130532A - 落下衝撃検知装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】落下衝撃を受けた機器の加速度変化に基づき、当該落下衝撃の程度を判定する落下衝撃検知装置を提供する。
【解決手段】
機器に備え付けられ、直交する3軸の加速度を検出する加速度センサと、前記3軸の加速度変化の大きさを算出する加速度変化算出部と、前記加速度変化の大きさに基づき前記機器の落下衝撃を検知する落下衝撃検知部とを備え、前記加速度変化算出部は、単位時間ごとの前記加速度の差分をとることによって前記加速度変化の大きさを算出し、前記落下衝撃検知部は、前記加速度変化の大きさが予め定められた第1閾値以上になった場合、前記機器が落下衝撃を受けたと判定する落下衝撃検知装置。
【選択図】図1
【解決手段】
機器に備え付けられ、直交する3軸の加速度を検出する加速度センサと、前記3軸の加速度変化の大きさを算出する加速度変化算出部と、前記加速度変化の大きさに基づき前記機器の落下衝撃を検知する落下衝撃検知部とを備え、前記加速度変化算出部は、単位時間ごとの前記加速度の差分をとることによって前記加速度変化の大きさを算出し、前記落下衝撃検知部は、前記加速度変化の大きさが予め定められた第1閾値以上になった場合、前記機器が落下衝撃を受けたと判定する落下衝撃検知装置。
【選択図】図1
Description
この発明は、落下衝撃検知装置に関する。
近年、携帯端末は、営業・流通・小売などの接客支援、配送業務や保守・点検サービスなど多様な用途に用いられ、様々な環境での運用が想定されるため、従来よりも一層高い耐衝撃性能が求められている。それゆえ、ユーザーが携帯端末を万一落とすようなことがあった場合でも、本体の破損やメモリの故障等によるデータ消去が最小限に抑えられるよう、堅牢な構造により高い耐衝撃性能を実現している。
ところで、メーカーによって保証された耐衝撃性能は、適切な取扱いの範囲において端末の破損等が生じた場合を想定しており、適切な範囲を超えたユーザーの誤った使用によって端末の破損等が生じた場合は、ユーザーの責任と考えられ、保証の対象外となる。ところが実際には、端末の破損等が生じたとき、ユーザーが誤った使用をしていたかどうかを端末の破損状況から立証することは極めて困難であり、ユーザーに責任があったとしても、結局メーカーが端末の修理費等を受け持つ場合が少なくなかった。
このような問題を解決すべく、3軸加速度センサを用いて機器の落下を検知し、落下衝突に至るまでの加速度の履歴を不揮発性半導体メモリに記録する機能を備えることにより、落下の事実を事後に証明可能にした落下検知装置の発明が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
ところで、機器が落下衝突時に受ける最大衝撃力は、数千G程度(1Gは、重力加速度であり、約9.8m/s2)に達することもあるため、従来の落下検知装置を用いてこのような加速度を検出するには、少なくとも数千G程度の検出可能範囲(ダイナミックレンジ)を有する加速度センサが必要である。しかしながら、数千G程度もの高いダイナミックレンジを有する加速度センサは、サイズが大きく高価であり、携帯端末等の小型機器に搭載するには困難であった。
一方、機器に搭載可能な小型で安価な加速度センサを用いた場合、そのダイナミックレンジはせいぜい数G〜数十G程度であり、加速度センサのダイナミックレンジを超える加速度を検出できない。それゆえ、落下衝突時に機器が受けた衝撃が、メーカーによって予め想定された許容範囲内の衝撃かどうかを知ることができないという問題があった。
このような事情に鑑み、数G〜数十G程度のダイナミックレンジを有する加速度センサを用いた場合でも、数千Gもの加速度に達するような落下衝撃の判定が可能となる落下衝撃検知装置が求められていた。
この発明は、機器に備え付けられ、直交する3軸の加速度を検出する加速度センサと、前記3軸の加速度変化の大きさを算出する加速度変化算出部と、前記加速度変化の大きさに基づき前記機器の落下衝撃を検知する落下衝撃検知部とを備え、前記加速度変化算出部は、単位時間ごとの前記加速度の差分をとることによって前記加速度変化の大きさを算出し、前記落下衝撃検知部は、前記加速度変化の大きさが予め定められた第1閾値以上になった場合、前記機器が落下衝撃を受けたと判定する落下衝撃検知装置を提供するものである。
この発明によれば、加速度センサのダイナミックレンジを超える落下衝撃があった場合でも、落下衝突時に機器が受ける加速度変化の大きさに基づいて、落下衝撃が許容範囲内にあるか否かを判定できる。それゆえ、ダイナミックレンジの狭い小型で安価な加速度センサを用いた場合でも、数千Gもの加速度に達するような落下衝撃の判定が可能となる。
また、判定に必要な加速度変化は衝突直後に生じるため、落下衝撃時の加速度の大きさのピークが来る前に判定を完了することができる。それゆえ、数千Gもの落下衝撃を受けて機器の故障が生じる前に判定を行い、その結果を保存することによって、落下衝撃力の影響を最小限に抑えることが可能となる。
さらに、落下時に機器の回転が生じていた場合、機器の回転による加速度の変化が問題となるが、判定に必要な加速度変化は衝突直後の極めて短い期間に生じるため、その影響は小さい。
この発明は、機器に備え付けられ、直交する3軸の加速度を検出する加速度センサと、前記3軸の加速度変化の大きさを算出する加速度変化算出部と、前記加速度変化の大きさに基づき前記機器の落下衝撃を検知する落下衝撃検知部とを備え、前記加速度変化算出部は、単位時間ごとの前記加速度の差分をとることによって前記加速度変化の大きさを算出し、前記落下衝撃検知部は、前記加速度変化の大きさが予め定められた第1閾値以上になった場合、前記機器が落下衝撃を受けたと判定する落下衝撃検知装置を提供するものである。
「単位時間」とは、機器の落下衝突後、落下衝撃によって機器の加速度が加速度センサのダイナミックレンジを超える前に、当該加速度の変化を検出するのに十分に短い時間である。単位時間の具体的な設定例については後述する。
「単位時間の差分をとる」ことは、単位時間をサンプリングの間隔として、サンプリングされた加速度の前後の差分を計算することで実現できる。
「第1閾値」とは、耐衝撃試験によって得られたデータに基づき予め定められた値であり、落下衝突時に機器が衝撃に耐えうるものとして許容される衝撃かどうかを判定する基準である。なお、第1閾値の具体的な算出方法については後述する。
「落下衝撃を受けた」とは、落下衝突時に機器が故障あるいは変形するおそれがある程度を超えた強度の落下衝撃を受けたことをいう。
「単位時間の差分をとる」ことは、単位時間をサンプリングの間隔として、サンプリングされた加速度の前後の差分を計算することで実現できる。
「第1閾値」とは、耐衝撃試験によって得られたデータに基づき予め定められた値であり、落下衝突時に機器が衝撃に耐えうるものとして許容される衝撃かどうかを判定する基準である。なお、第1閾値の具体的な算出方法については後述する。
「落下衝撃を受けた」とは、落下衝突時に機器が故障あるいは変形するおそれがある程度を超えた強度の落下衝撃を受けたことをいう。
この発明による落下衝撃検知装置において、衝突時間判定部と落下衝撃強度推定部とをさらに備え、前記衝突時間検知部は、前記加速度の大きさが予め定められた第2閾値以上になったときの持続時間を衝突時間とし、前記落下衝撃強度推定部は、前記加速度変化の大きさと前記衝突時間とに基づき、前記機器の落下衝撃強度を推定するものであってもよい。
このようにすれば、加速度センサのダイナミックレンジを超える落下衝撃があった場合でも、落下衝突時に機器が受ける加速度変化の大きさと落下衝撃の持続時間とに基づいて、機器の落下衝撃強度を推定できる。それゆえ、小型かつ安価な加速度センサを用いて、落下衝撃が許容範囲内にあるかどうかを判定できる。
このようにすれば、加速度センサのダイナミックレンジを超える落下衝撃があった場合でも、落下衝突時に機器が受ける加速度変化の大きさと落下衝撃の持続時間とに基づいて、機器の落下衝撃強度を推定できる。それゆえ、小型かつ安価な加速度センサを用いて、落下衝撃が許容範囲内にあるかどうかを判定できる。
「第2閾値」とは、地面との衝突時に機器が地面から受ける衝撃加速度と、機器が地面から衝撃を受けていない場合に機器に作用する加速度(重力加速度)とを区別する基準値である。第2閾値は、衝突時間の判定に用いる。
「衝突時間」とは、機器と地面との衝突の持続時間であり、落下衝突時に機器が地面から連続して衝撃力を受けることにより、その加速度の変化を生じる時間である。なお、衝突後に機器がバウンドする場合、加速度の測定波形は複数の山を示すが、そのうち最初の山、すなわち最初の衝突の持続時間を指す。
「落下衝撃強度」とは、落下衝突時に機器が受ける衝撃力または加速度の最大値である。
「衝突時間」とは、機器と地面との衝突の持続時間であり、落下衝突時に機器が地面から連続して衝撃力を受けることにより、その加速度の変化を生じる時間である。なお、衝突後に機器がバウンドする場合、加速度の測定波形は複数の山を示すが、そのうち最初の山、すなわち最初の衝突の持続時間を指す。
「落下衝撃強度」とは、落下衝突時に機器が受ける衝撃力または加速度の最大値である。
この発明による落下衝撃検知装置において、前記落下衝撃検知部は、前記加速度変化の大きさと前記衝突時間とに基づき、前記機器が落下衝撃を受けたか否かを判定するものであってもよい。
このようにすれば、加速度変化に加えて実際の衝突時間も判定に用いることができるため、実際の落下状況に応じた正確な判定が実現できる。
このようにすれば、加速度変化に加えて実際の衝突時間も判定に用いることができるため、実際の落下状況に応じた正確な判定が実現できる。
この発明による落下衝撃検知装置が、落下衝撃記録部をさらに備え、前記落下衝撃記録部は、不揮発性メモリであり、前記落下衝撃検知部が、前記機器が落下衝撃を受けたと判定を行った場合、前記判定の結果を格納するものであってもよい。
このようにすれば、落下衝突時に大きな衝撃を受けて機器が故障を生じた場合でも、保存されたデータを保持することができる。
このようにすれば、落下衝突時に大きな衝撃を受けて機器が故障を生じた場合でも、保存されたデータを保持することができる。
「判定の結果」は、機器が落下衝撃を受けたか否かの判定結果の他に、判定の基礎となったデータ、すなわち、加速度の大きさ、加速度変化の大きさ、衝突時間、落下衝撃強度等を有していてもよい。
〔第1実施形態〕
図1〜図3に基づき、この発明の第1実施形態に係る落下衝撃検知装置について説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る落下衝撃検知装置1の構成を示すブロック図である。
図1〜図3に基づき、この発明の第1実施形態に係る落下衝撃検知装置について説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る落下衝撃検知装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、落下衝撃検知装置1は、CPU10、加速度センサ11、不揮発性メモリ12、RAM13、タイマ14、電源回路15およびバッテリ16を備える。
この発明の加速度変化算出部、落下衝撃検知部、落下衝撃強度推定部は、CPU10によって実現される。この発明の衝突時間判定部は、CPU10とタイマ14との協働によって実現される。この発明の落下衝撃記録部は、不揮発性メモリ12によって実現される。
CPU10は、マイクロプロセッサ(Microprocessor)を主体とする回路である。なお、周辺回路として、特定の用途のために設計、製造される集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)、その他の演算機能を有する回路を含んでいてもよい。
加速度センサ11は、X,Y,Z3軸の測定値を検出し、シリアルインターフェースを経由して、測定データをCPU10に渡す。加速度センサ11としては、ピエゾ抵抗型、静電容量型など各種形式の加速度センサ11を用いることができる。加速度センサ11の例としては、±8Gのダイナミックレンジを有する3×3mmパッケージのLIS331DL STMICRO社製の3軸加速度センサが挙げられる。
不揮発性メモリ12は、CPU10がアクセス可能なメモリであり、CPU10のプログラム制御のために必要なデータが格納される。また、不揮発性メモリ12は、落下情報等の測定データを格納する。落下情報としては、落下日時Date、最大加速度変化量Avmax、衝突時間Tc、最大加速度Amax等が挙げられる。表1に落下情報の一例を示す。
落下日時Dateは、機器が落下衝撃を受けたときの日時である。
最大加速度変化量Avmaxは、落下衝突時に機器が受けた衝撃加速度の単位時間あたりの変化量の最大値である。
衝突時間Tcは、機器が地面から1Gより大きな衝撃加速度を受けている時間である。
最大加速度Amaxは、落下衝突時に機器が受けた加速度の最大値である。
最大加速度変化量Avmaxは、落下衝突時に機器が受けた衝撃加速度の単位時間あたりの変化量の最大値である。
衝突時間Tcは、機器が地面から1Gより大きな衝撃加速度を受けている時間である。
最大加速度Amaxは、落下衝突時に機器が受けた加速度の最大値である。
また、不揮発性メモリ12は、落下衝撃の判定に必要なデータも格納する。落下衝撃判定に必要なデータは事前に設定しておく。表2に落下衝撃判定用データの一例を示す。
基準衝突時間Tcnormは、機器と地面との衝突時間Tcの基準値である。基準衝突時間Tcnormの設定の詳細については後述する。
許容加速度Alimは、機器の衝突時に許容できる衝撃加速度の最大値である。許容加速度Alimの詳細については後述する。
許容加速度Alimは、機器の衝突時に許容できる衝撃加速度の最大値である。許容加速度Alimの詳細については後述する。
RAM13は、CPU10がアクセス可能であって、一時的にデータを記憶しておくワークメモリを提供する。
電源回路15およびバッテリ16は、CPU10および周辺回路へ電力を供給する。
以下、図2に基づき、衝撃加速度の時間変化から機器が受ける衝撃が許容範囲内にあるかどうかを判定する具体的な基準の設定方法について説明する。
図2は、落下衝突時に機器が受ける衝撃加速度の時間変化の例を示す説明図である。
図2は、落下衝突時に機器が受ける衝撃加速度の時間変化の例を示す説明図である。
図2(A)は、ユーザーに保持されていた機器が落下して地面に衝突したときの機器の重心が受ける加速度の時間変化を示す説明図である。横軸は時間(単位はミリ秒(ms))を示し、縦軸は機器の重心の加速度(単位はG)を示す。太線のグラフは、加速度センサ11によって検出される加速度の変化を示し、破線のグラフは、実際に機器が有する加速度の変化を示す。衝突時以外の太線のグラフと破線のグラフは一致している。なお、説明の便宜のため、図2においては、垂直方向の加速度変化のみを考慮しており、水平方向の加速度変化や機器の回転等による角速度の変化を考慮しないものとする。
図2(A)に示すように、ユーザーに保持されている状態において、機器は下向きの重力加速度(1G)を受けている(期間(i))。このとき、機器そのものは静止状態にあるが、機器に作用する1Gの重力加速度が検出される。これは加速度センサ11の検出原理を考えると、次のように理解される。ピエゾ抵抗型加速度センサの場合、センサを構成する錘が下向きの重力を受けて、錘を支える可撓部(薄い金属部)が変位する。この可撓部の位置変化をピエゾ抵抗素子によって検出することにより、錘に作用する重力加速度が検出される。なお、他のタイプの加速度センサ11を用いた場合も同様である。
次に、ユーザーの手を離れて機器が落下を始めると、その加速度は落下により無重力状態となるため0Gとなる(期間(ii))。このとき、加速度センサ11を構成する錘と、錘を支える可撓部が同じ重力加速度を受けて変位するため、錘と可撓部との相対的な位置変化が生じない。それゆえ、検出される加速度は原理的には0Gとなるが、実際には、加速度センサ11個々のばらつきやノイズレベルによって微小な加速度が検出されることがある。したがって、ばらつき等による変動を考慮して基準値を設定する必要がある。
自由落下の後、機器は地面に衝突し、機器の急激な加速度変化となって現れる(期間(iii))。落下衝突時に機器が受ける衝撃加速度は通常、急激に上昇してピークに達した後、急激に減少する。図2(A)においては、1度目の衝突後、機器がバウンドし、再び無重力状態となる(期間(iv))。その後、2度目の衝突を起こし(期間(v))、地面に着地する(期間(vi))。一方、図2(B)においては、1度目の衝突まで(期間(i)〜(iii))は図2(A)と同じだが、1度目の衝突後、機器がバウンドせずにそのまま地面に着地して加速度が一定になる(期間(iv))点で異なる。
ところで、耐衝撃試験においては、通常数メートルの高さからコンクリート等の堅い表面に機器を自由落下させ、衝突時に機器が受ける衝撃力に対する機器の耐衝撃性能を検査する。このような試験を行うことで、落下衝突時に機器が故障あるいは変形するおそれのある程度を超えた強度の衝撃力が決定される。このような衝撃力を許容衝撃力Flimとすると、F(力)、m(質量)、A(加速度)として、運動方程式F=m・Aの関係から、衝突時に機器が受ける許容加速度Alimが求められる。
図2(A)に示すように、衝突時に機器が受ける最大加速度Amaxがその許容加速度Alimよりも大きい場合、当該落下衝撃は許容範囲を超えた衝撃であったと考えられる。一方、図2(B)に示すように衝突時に機器が受ける最大加速度Amaxがその許容加速度Alimよりも小さい場合、当該落下衝撃は許容範囲内の衝撃であったと考えられる。
このように、落下衝突時に機器が受ける衝撃加速度を検出できれば、その履歴を参照することにより、機器が受けた落下衝撃が許容範囲内の衝撃であったかどうかが判明する。
このように、落下衝突時に機器が受ける衝撃加速度を検出できれば、その履歴を参照することにより、機器が受けた落下衝撃が許容範囲内の衝撃であったかどうかが判明する。
ところで、ダイナミックレンジの狭い加速度センサ11を用いて衝撃加速度を検出する場合、図2(A)(B)の太線グラフに示すように、加速度センサ11のダイナミックレンジを超える加速度は一定となって検出される。それゆえ、加速度の大きさを検知する従来の落下検知装置にダイナミックレンジの狭い加速度センサ11を適用すると、以下のような問題が生じる。すなわち、機器が落下衝突時に加速度センサ11のダイナミックレンジを超える衝撃加速度を受けた場合、その最大加速度Amaxが許容加速度Alimを超えたかどうかを知ることができないため、機器が受けた落下衝撃が許容範囲内の衝撃であったかどうかを判定することができない。
それゆえ、本発明に係る落下衝撃検知装置は、衝突時に機器が受ける加速度の大きさではなく、加速度の変化が予め定められた第1閾値以上であるかどうかを検出することにより、機器が受けた落下衝撃が許容範囲内の衝撃かどうかを判定する。
次に、落下衝撃判定の基準となる第1閾値の設定の一例について説明する。
水平な地面に機器が落下した場合、落下による衝撃は様々な要因により決定されるが、衝撃力を決定する主な要因としては、落下衝突時に機器が受ける運動量の変化の大きさと衝突時間の2つがある。
機器の落下衝撃は、実際には、落下開始時の機器の高さ(位置エネルギー)、落下開始時の初速、角度等により様々であるが、ここでは説明の便宜のため、機器が垂直落下して地面と衝突することにより、地面に対する相対速度がVpだけ変化した場合を想定する。例えば、地面に向かって速度Vpで落下していた機器が地面との衝突後に速度が0になった場合などがあげられる。このとき、機器の質量をmとすると、その運動量の変化mVpは、衝突時に機器が地面から受ける力積に等しい。
ここで、F(t)は、衝突時に機器が受ける衝撃力の時間変化を表す関数である。上式は、衝突開始時(t=0)から衝突時間Tcの間、機器が受けた衝撃力F(t)を積分したものが衝突による機器の運動量変化mVpに等しいことを示す。なお、衝突時に機器が受ける加速度をA(t)とすると、運動方程式F(t)=mA(t)の関係から、加速度A(t)を用いて上式を書き換えると、次式のようになる。
t=0で機器が地面と衝突を開始し、その加速度A(t)がt=t0で最大加速度Amaxに達するものとして、加速度A(t)をsin関数で近似すると、次式のようにかける。
上式は、衝突によって生じる機器の速度の変化Vpが同じ場合、衝突時間Tcが長いほど、衝突時の機器の最大加速度Amaxが小さいことを示す。これは、例えば、機器が柔らかいクッションに衝突した場合に相当し、機器の運動エネルギーの一部がクッションの変形のために用いられ、このクッションの変形によって機器との衝突時間Tcが長くなるため、加速度の変化A(t)が比較的緩やかになり、最大加速度Amaxが小さくなる。
加速度A(t)の時間変化は、その時間微分dA(t)/dtで表すことができる。
上式は余弦関数であり、t=0で最大値をとる。そこで、式(6)にt=0を代入してTc=2t0の関係を用いると、最大加速度変化量Avmaxと最大加速度Amaxとの関係が求められる。
Amaxについての式になおすと、次式が得られる。
ここで、落下衝突時に機器が故障を生じない条件は、衝突時に機器が受ける最大加速度が許容加速度以下のとき(すなわち、Amax≦Alim)であるため、上式をこの条件に代入すると、次式が導ける。
上式は、加速度変化から落下衝撃が許容範囲内にあるかどうかを判定する式である。加速度変化の最大値である最大加速度変化量Avmaxを式(9)の右辺の値と比較することにより、落下衝撃が許容範囲内かどうかを判定できる。それゆえ、衝突時の加速度の大きさA(t)の最大値Amaxの値が不明であっても、衝突開始時の加速度の変化dA(t)/dtを検出し、式(9)の関係に基づく判定を行うことにより、機器の落下が適正な条件下で行われたかどうかを判断することが可能となる。
ここで、衝突時間Tcは、機器および衝突対象の材質、衝突時の機器および衝突対象の変形の程度、衝突部位などにより様々な値をとりうる。しかしながら、落下時の衝撃によって故障が生じる範囲に限定すれば、衝突対象としてクッション等の柔らかい材質を考慮に入れる必要はない。すなわち、コンクリートやアスファルトなどある程度の堅さをもった材質に限定できるので、Tcの範囲も限られたものとなる。それゆえ、耐衝撃試験において機器が故障あるいは変形するおそれが生じうるTcの範囲を測定し、その平均値を基準衝突時間Tcnormとして採用する。
また、許容加速度Alimは、落下衝撃試験において機器が故障を生じる衝撃加速度の範囲を測定し、その範囲の最小値を許容加速度Alimとして採用する。
なお、第1実施形態において、判定式を算出するのに、加速度A(t)をsin関数で近似した場合を紹介したが、他の関数を用いて近似を行った場合でも、加速度の変化dA(t)/dtと、許容加速度Alimおよび衝突時間Tcとの関係式を得ることができれば、本発明の効果が得られる点で同様である。
図3は、この発明の第1実施形態に係る落下衝撃検知装置の処理を示すフローチャートである。
図3において、最初に、加速度センサ11は、X軸、Y軸、Z軸の3軸の加速度の測定値(それぞれ、Ax(n),Ay(n),Az(n)とする)を検知する(ステップS101)。nは、整数値(n=1,2,…)であり、サンプリングの回数を表す。
ここで、サンプリングの単位時間としては、機器が地面に衝突後、機器の加速度A(t)が、加速度センサ11のダイナミックレンジの上限である限界加速度Ashに到達するまでの時間をTshとすると、Tshよりも十分に短くなければならない。なぜなら、限界加速度Ashの近傍においては、加速度センサ11のダイナミックレンジを超える加速度A(t)の検出値が飽和するため、その加速度の変化量dA(t)/dtも機器が受ける実際の加速度変化を反映したものではないからである。
また、式(6)に示すように、加速度A(t)の変化量dA(t)/dtは、衝突の開始時に最大値(πAmax)/2t0をとり、時間の経過とともに減少していく。例えば、衝突開始から加速度A(t)が最大値Amaxをとるまでの時間をt0としたとき、加速度の変化量はt=0.1t0で最大値の0.99であるが、t=0.2t0で最大値の0.95に、t=0.3t0で最大値の0.89となる。それゆえ、判定に必要な衝突直後の最大加速度変化量Avmaxを精度良く検知するためには、時間の経過による加速度変化量の減少が大きくならない程度に十分に短く単位時間を設定する必要がある。
したがって、サンプリングの単位時間としては、Tshおよびt0より十分に短く設定しなければならない。例えば、Tshおよびt0の時間のオーダーが数十ms程度なら、測定の単位時間は、少なくとも数ms程度のオーダーにとる必要がある。
次に、ステップS102において、CPU10は、加速度の大きさA(n)2を計算する(ステップS102)。
加速度の大きさA(n)2が一定時間の間、ほぼ0Gの場合(ステップS103の判定がYesの場合)、CPU10は、機器が自由落下状態にあるものと判断し、ステップS104へ進む。
落下時間の判定の基準値は、想定される落下の状況に基づいて決定する。例えば、1mの自由落下に要する時間は、約450msであり、2mの自由落下に要する時間は、約640msである。例えば、2m以内の自由落下を判定の対象とする場合、落下時間の基準値を640msに設定する。しかしながら、実際の落下状況は自由落下に限られず多様であり、例えば、歩きながら機器を落としたり、角度をつけて機器を地面に放り投げたりする場合があるため、これらの状況を考慮して基準値を設定する。
一方、加速度の大きさA(n)2が一定時間ほぼゼロにならない場合(ステップS103の判定がNoの場合)、CPU10は、ステップS101〜S103の処理を反復する。
ステップS104において、加速度センサ11は、3軸の加速度の測定値を検出する(ステップS104)。続いて、ステップS105において、CPU10は、1つ前の加速度の測定値(Ax(n―1),Ay(n―1),Az(n―1))を不揮発性メモリ12に保持しておき、現在の測定値(Ax(n),Ay(n),Az(n))との加速度の変化量を計算する(ステップS105)。
具体的には、X,Y,Z3軸の測定値から、単位時間あたりの加速度の変化量を計算する。加速度の変化量としては、式(11)に示すように、各軸において単位時間ごとの加速度の差の2乗をとった値A(n,n−1)を計算する。本体の落下による衝撃を加速度のベクトル変化としても計算する。
ステップS106において、CPU10は、加速度の変化量と不揮発性メモリ12に格納された第1閾値とを比較する。A(n,n−1)は、加速度変化の大きさの2乗に等しいため、判定には式(9)の両辺を2乗した判定式を用いる。加速度の変化量が第1閾値よりも大きい場合(ステップS106の判定がYesの場合)、CPU10は、機器が許容範囲を超えた落下衝撃を受けたと判定し(ステップS107)、加速度の変化量と判定結果を不揮発性メモリに格納する(ステップS108)。その後、ステップS109へ進む。
一方、加速度の変化量が第1閾値以下の場合(ステップS106の判定がNoの場合)、CPU10は、一定時間を経過したか否かを判定する(ステップS110)。
ステップS110の判定時間は、想定される機器の落下時間に基づいて決定する。式(6)に示すように、加速度A(t)の変化量dA(t)/dtは、衝突の開始時に最大値(πAmax)/2t0をとり、時間の経過とともに減少していく。それゆえ、衝突直後の加速度の変化量が第1閾値を超えていない場合、その後の加速度の変化量が第1閾値を超える可能性は極めて低い。そこで、ステップS110の判定時間としては衝突直後まででよく、その最大判定時間を機器の想定される落下時間の最大値を超えた値に設定する。
ステップS110において、一定期間を経過していない場合(ステップS110の判定がNoの場合)、CPU10は、ステップS104〜S106の処理を反復する。一方、一定期間を経過していない場合(ステップS110の判定がYesの場合)、CPU10は、機器が許容範囲を超えた落下衝撃を受けなかったものと判定し(ステップS111)、ステップS109へ進む。
ステップS109において、CPU10は、RAMに格納されたデータをクリアして、S101の処理に戻る。
〔第2実施形態〕
次に、図4に基づき、この発明の第2実施形態に係る落下衝撃検知装置の処理について説明する。
図4は、この発明の第2実施形態に係る落下衝撃検知装置の処理を示すフローチャートである。
次に、図4に基づき、この発明の第2実施形態に係る落下衝撃検知装置の処理について説明する。
図4は、この発明の第2実施形態に係る落下衝撃検知装置の処理を示すフローチャートである。
図4の処理は、衝突の持続時間を計算して落下衝撃の程度を算出する点で図3の処理と異なる。
図4におけるステップS201〜S208の処理は、それぞれ図3におけるステップS101〜S108の処理と同様であり、また、図4におけるステップS214〜S216の処理は、それぞれ図3におけるステップS119〜S111の処理と同様であるため、これらの説明を省略する。
図4におけるステップS201〜S208の処理は、それぞれ図3におけるステップS101〜S108の処理と同様であり、また、図4におけるステップS214〜S216の処理は、それぞれ図3におけるステップS119〜S111の処理と同様であるため、これらの説明を省略する。
図4のステップS209において、加速度センサ11は、X軸、Y軸、Z軸の測定値を検知する(ステップS209)。続いて、CPU10は、加速度の大きさを計算し(ステップS210)、加速度の大きさA(n)2が第2閾値以下になったか否かを判定する(ステップS211)。なお、A(n)2は、加速度の大きさの2乗であるため、それを考慮して第2閾値を設定する。
ステップS211において、加速度の大きさA(n)2が第2閾値以下になった場合(ステップS211の判定がYesの場合)、CPU10は、衝突開始時から加速度の大きさがピーク値を経て所定値以下になるまでの時間を衝突時間Tcとする。このようにして得られた衝突時間Tcを用いて、式(9)に基づき、さらに落下衝撃の判定を行うこともできる。
次に、CPU10は、式(8)の関係に基づき、最大加速度変化量Avmaxと衝突時間Tcとから機器が受ける最大加速度Amaxを計算する(ステップS212)。続くステップS213において、CPU10は、衝突時間Tcと最大加速度Amaxを不揮発性メモリ12に格納する(ステップS213)。
1:落下衝撃検知装置
10:CPU
11:加速度センサ
12:不揮発性メモリ
13:RAM
14:タイマ
15:電源回路
16:バッテリ
Alim:許容加速度
Amax:最大加速度
Avmax:最大加速度変化量
Flim:許容衝撃力
Tc:衝突時間
Tcnorm:基準衝突時間
10:CPU
11:加速度センサ
12:不揮発性メモリ
13:RAM
14:タイマ
15:電源回路
16:バッテリ
Alim:許容加速度
Amax:最大加速度
Avmax:最大加速度変化量
Flim:許容衝撃力
Tc:衝突時間
Tcnorm:基準衝突時間
Claims (4)
- 機器に備え付けられ、
直交する3軸の加速度を検出する加速度センサと、前記3軸の加速度変化の大きさを算出する加速度変化算出部と、前記加速度変化の大きさに基づき前記機器の落下衝撃を検知する落下衝撃検知部とを備え、
前記加速度変化算出部は、単位時間ごとの前記加速度の差分をとることによって前記加速度変化の大きさを算出し、
前記落下衝撃検知部は、前記加速度変化の大きさが予め定められた第1閾値以上になった場合、前記機器が落下衝撃を受けたと判定する落下衝撃検知装置。 - 衝突時間判定部と落下衝撃強度推定部とをさらに備え、
前記衝突時間検知部は、前記加速度の大きさが予め定められた第2閾値以上になったときの持続時間を衝突時間とし、
前記落下衝撃強度推定部は、前記加速度変化の大きさと前記衝突時間とに基づき、前記機器の落下衝撃強度を推定する請求項1に記載の落下衝撃検知装置。 - 前記落下衝撃検知部は、前記加速度変化の大きさと前記衝突時間とに基づき、前記機器が落下衝撃を受けたか否かを判定する請求項2に記載の落下衝撃検知装置。
- 落下衝撃記録部をさらに備え、
前記落下衝撃記録部は、不揮発性メモリであり、前記落下衝撃検知部が、前記機器が落下衝撃を受けたと判定を行った場合、前記判定の結果を格納する請求項2または3に記載の落下衝撃検知装置。
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- 2011-12-22 JP JP2011281743A patent/JP2013130532A/ja active Pending
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