本願発明は、背もたれ付き椅子に関するものである。
椅子には様々の種類があり、それぞれの種類に応じて様々の改良がなされている。その例として例えば特許文献1には、着座した人が背もたれにもたれ掛かると座が前傾する椅子が開示されており、他方、特許文献2には、人が着座すると座がその前後略中間部を中心にして側面視で傾動し、この座の後傾動に連動して背もたれが傾動するようになっている椅子が記載されている。両特許文献とも、背もたれを座に連動させる手段としては一種のリンク機構を採用している。
特許文献1のものは、人が着座しただけでは座及び背もたれとも姿勢に変化はなく、着座者が背もたれに凭れ掛かって背もたれに大きなモーメントが掛かると、テコの原理で座の後部が上向きに突き上げられて座を前傾させるものであり、その目的は、ロッキング状態で人の身体を伸ばしやすくすることによって安楽状態を確保せんとするものである。
他方、特許文献2では、例えば人が座の前部に腰掛けると背もたれは大きく前傾して人を前傾姿勢に押し勝手となり、すると、使用者は不快感を感じて座り位置を後ろにずらすことになる。すなわち、特許文献2は、使用者が座の前部に腰掛けるいわゆるチョン掛け(或いはチョイ掛け)を行うと不快感を与えることにより、正しい着座姿勢を取らせるようにしたものである。
特公昭44−20784号公報
特公昭46−27517号公報
人が椅子を使用する場合、必ずしも深く腰掛けるとは限らず、浅く腰掛けることはよくある。椅子の使い方は人によって様々であるから、椅子の設計思想としては、腰掛け位置が違っていても使用者にできるだけ負担をかけないようにするというユーザーフレンドリーな発想も必要である(オフィス等での業務では浅く腰掛けることは良くあるから、このような使用状態に配慮する必要性は高い)。
しかし、特許文献1のものはロッキング状態のことしか想定されておらず、いわゆる浅く腰掛けた場合への配慮はなんら成されてない。他方、特許文献2のものは、いわば使用者に深く腰掛ける癖をつけさせようとするもので、これも使用者に対する配慮が十分とは言い難い。
更に述べると、着座した人の身体への負担を軽減するためには、人の腰部を支持して背筋を伸ばした状態を採りやすくすることが重要であり、そこで、近年、人の腰椎部分を集中的に支持するランバーサポート付きの椅子が普及しているのであるが、特許文献2のものは背もたれ全体を前傾させるものであるため、椅子の使用者は背もたれの上部を背もたれで押されて猫背状態になってしまい、このため背筋を伸ばすことはできず、従って、特許文献2ではランバーサポート機能は確保することはできない。
更に、特許文献2の構成では、人が浅く腰掛けると座は前傾姿勢になるため、人は上半身を伸ばした直立させた姿勢を採り難いという問題もある。
本願発明は、このような現状に鑑みなされたもので、よりユーザーフレンドリーな椅子を提供することを課題とするものである。
請求項1の発明に係る椅子は、座と、着座した人の背中と腰とが当たり得る背もたれと、人が着座すると背もたれの少なくとも下部を前向きに突出させる連動手段を備えている。この場合、背もたれの全体を着座によで前進させることも可能であるが、着座によって主として背もたれの下部(腰支持部、ランバーサポート部)を前進させるのが好ましい。
請求項2の発明に係る椅子は、請求項1に加えて、更に、座を支持する座受け部材と背もたれを支持するバックフレームとが備えられており、前記座受け部材に、座を、側面視での姿勢を全く又は殆ど変えずに下降しつつ後退動するように取付けている一方、前記背もたれは、主として人の腰部に当たる部分が着座によって前進するように設定されている。
請求項3の発明に係る椅子は、請求項1又は2において、前記背もたれは、側面視での形状が変化することにより、主として人の腰部に当たる腰支持部が着座によって前進するように設定されており、更に、背もたれのうち少なくとも腰支持部は、着座者の体圧によって平面視での形状も変化し得るように柔軟性を備えている。
請求項4の発明に係る椅子は、請求項1〜3のうちの何れかにおいて、着座した人が背もたれに凭れ掛かると背もたれ及び座がばね手段に抗して後退しつつ後傾するようになっている。
本願発明の椅子は、人が着座すると背もたれの少なくとも下部が前向きに突出するため、人が座に浅く腰掛けても着座者の腰部を背もたれで後ろから支えることができる。すなわち背もたれはランバーサポート機能を発揮できるのであり、このため、いわゆるチョン掛けのように浅い腰掛け状態であっても、使用者の身体への負担を著しく軽減できる。
例えばお年寄りや女性などで小柄な人は椅子に浅く腰掛けざるをえない場合があるが、本願発明の椅子は浅く腰掛けても腰を的確にサポートできるため、一種のバリアフリー性も備えていると言える。
請求項2のように構成すると、座は側面視での姿勢を変えることなくスライドすることに加えて、背もたれの腰支持部で着座者の腰を的確に支持できるため、使用者は背筋を伸ばした姿勢をとることができる。この点も本願発明の特徴の一つある。更に請求項2のように構成すると、着座によって背もたれが前進することに加えて座が後退するため、着座によって人の腰を腰支持部でサポートすることをより確実ならしめることができる。
請求項3のように構成すると、使用者の体格が異なっても身体へのフィット性を向上できる利点がある。更に請求項4のように構成すると、ロッキング機能も発揮できて好適である。
(A) は第1実施形態の側面図、(B) は背もたれのインナーシェルの斜視図である。
(A) は主要部材の分離側面視図、(B) は背もたれの取付け状態を示す一部破断分離斜視図である。
一部を破断した主要部材の概略分離正面図である。
図1の V-V視断面図である。
動きを示す側面図である。
第2実施形態の非着座状態での側面図である。
第2実施形態の着座状態での側面図である。
第3実施形態を示す図である。
第4実施形態を示す図である。
第5実施形態を示す図である。
第6実施形態を示す図である。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は事務用等の回転椅子に適用している。
(1).第1実施形態の構造
図1〜図5では第1実施形態を示している。図1のうち(A)は椅子の側面図、(B)は背もたれのインナーシェルの斜視図、図2のうち(A)は主要部材の分離側面視図、(B)は背もたれの取付け状態を示す一部破断分離斜視図、図3は一部を破断した主要部材の概略分離正面図、図4は図1の V-V視断面図、図5は動きを示す側面図である。
椅子は、ガスシリンダからなる脚支柱1と、その上端に固定した座受けベース2と、座受けベース2に取付けた中間部材3と、中間部材3に取り付けた座4と、座受けベース2に後傾動自在に連結した左右2本のバックフレーム5と、バックフレーム5で支持された背もたれ6とを備えている。
背もたれ6は、図1(B)に概略を示すインナーシェル7を備えており、図2(B)に明示するように、インナーシェル7の前面にクッション材8を張っている。図示していないが、脚支柱1は、放射状に延びる複数本の枝杆を有する脚ベースに取付けられており、各枝杆にはキャスターを設けている。
座受けベース2は上向きに開口した箱状に形成されており、その前部に、中間部材3を左右長手の第1軸11で連結している。中間部材3は、正面視で下向き開口コ字状に形成されており(図3参照)、その側板3aと座受けベース2とに第1軸11が貫通している。座受けベース2における第1軸の挿通穴は側面視で後傾状に延びる長穴12になっており、このため、第1軸11は長穴12に沿ってスライドし得る。長穴12には樹脂製のブッシュ13を装着している。
バックフレーム5は側面視後傾状のアーム部5aと略鉛直状に延びる背支柱5bとから成っていて全体として側面視く字状の形態になっている。そして、アーム部5aの先端部と座受けベース2の前後中途部とを第2軸14で連結している。また、中間部材3の後部とアーム部5aの前後中途部とを左右長手の第3軸15で連結している。従って、中間部材3とバックフレーム5とは連動して後傾しつつ後退動する。図示していないが、座受けベース2の内部には、第1軸11の後退動を支持するばねを配置しており、背もたれ6のロッキングはこのばねに抗して行われる。
座4は樹脂製等のインナーシェル4aの上面にクッション4bを張った構造になっている。そして、座4の下面に、中間部材3と略同じ横幅で下向きに開口コ字状のブラケット14を固定し、このブラケット14の左右側板と中間部材3とを前後2対ずつの第1リン
ク15から成る平行リンク機構で連結している。
各第1リンク15はブラケット14及び中間部材3の外側に位置しており、前部の第1リンク15は第1軸11で中間部材3に連結されており、後部の第1リンク15は、専用の軸16によって中間部材3に連結されている。第1リンク15をブラケット14に連結している軸は符号17で示している。非着座状態(ニュートラル状態)で第1リンク15は側面視で若干後傾姿勢になっている。これは、着座によって後傾させためである。図示していないが、第1リンク15が前傾することを阻止するストッパーを設けている。
座4と中間部材3とを平行リンク機構で連結したことにより、座4は側面視での姿勢を変えることなく下降しつつ後退しうる。換言すると、座4は前傾したり後傾したりせずに、略水平状の姿勢を保持したままで下降しつつ後退し得る。なお、第1リンク15は座4のインナーシェル4aに一体成形した下向き突起に連結しても良い。また、座4をスライドさせる手段は平行リンク機構に限らないことはいうまでもない。
バックフレーム5における背支柱部5bの上部5b′は、その下方の部分から分離しており、コイルばね18を介して連結されている。このため、背支柱部5bはその上端部5b′はコイルばね18の弾性に抗して後傾しうる。
背もたれ6は、その裏面のうち上端よりもある程度下方の部位においてバックフレーム5における背支柱部5bの上端部5b′に取付けられており、その具体的構造は図2(B)に示されている。すなわち、左右の背支柱部5bの上端部5b′に左右横長で断面内向きコ字状の桟部材19を溶接等によって固着する一方、背もたれ6を構成するインナーシェル7に、桟部材19の上面に重なる突起片20を一体に形成し、突起片20をビス(ボルト)21で桟部材19に締結している。
この場合、本実施形態の特徴として、突起片20は、インナーシェル7のうち上向き開口したスリットで囲われた上下長手の舌状片22の下端に形成している。このため、舌状片22が曲がるように変形することにより、背もたれ6が舌状片22の付け根を中心にして傾動することと、背もたれ6が全体として背支柱部5bの手前側に移動することとが許容されている。突起片20はインナーシェル7とは別部材で構成しても良い。
背もたれ6は着座した人の腰を中心にした部分に当たる腰支持部(ランバーサポート部)6aを備えている。腰支持部6aは側面視で前向き凸状に湾曲しており、背もたれ6が舌状片22を中心にして側面視で傾動することにより、腰支持部6aが前後動する。図1(B)に示すように、背もたれ6のインナーシェル7は、少なくとも腰支持部6aの個所で側面視形状と平面視形状とが変化し得る程度の柔軟性を備えている。インナーシェル7に柔軟性を与えることは、例えばスリットの群を形成することによって達成できる。
背もたれ6における腰支持部6aの背面には、左右長手で帯状のプッシュプレート24がねじ止め等によって固定されている。
次に、連動手段について説明する。本実施形態では、座4の後ろ向きスライドの動きを利用して背もたれ6の腰支持部6aを前向きに突出させるものであり、連動手段は、既述した第1リンク15と、左右バックフレーム5の内面に第1連結軸25によって連結した前後長手の第2リンク26と、背もたれ6のプッシュプレート24に左右長手の第2連結軸27を介して連結した左右の第3リンク28と、第2リンク26と第3リンク28とに回動自在に連結された第4リンク29と、第2リンク26と第4リンク29との相対角度を保持する左右一対のガスシリンダ30とを備えている。第3リンク28の前端はプッシュプレート24に形成した軸受片24a(図4参照)に連結されているが、背もたれ6の
インナーシェル7に形成した後ろ向き突起片に連結してもよい。
ガスシリンダ30は第2リンク26及び第4リンク29にピン31で回動自在に連結されている。なお、ガスシリンダ30は左右中間部に1本だけでも配置しても良いし、第2リンク26の左右中間部との3個所に3本配置するなどしても良い。
第4リンク29の下端は第2連結軸27に連結されており、第3リンク28の後端と第4リンク29の上端とは第4連結軸32で連結されている。第2リンク26は上向き開口の樋状に形成されており、第4リンク29の下端部とガスシリンダ30の下端部とは第2リンク26の内部に位置している。また、左右の第3リンク28の間隔は左右第2リンク26の間隔よりも広いため、図4に示すように、第3リンク28と第4リンク29との間には大きな間隔が空いている。
第2リンク28の前端部には側面視で前向きに開口した長溝穴33が形成されており、この長溝穴33に、座4の下面のブラケット14に補助部材14aを介して固定した左右長手の作動軸34を嵌め入れている。
(2).動きの説明・実施形態の利点
以上の構成において、人が座4に腰掛けると、図5に示すように、座4は平行リンク機構の作用によって下降しつつ後方にスライドする。すると、作動軸34の押圧作用によって第2リンク26が前傾姿勢に回動し、すると、第2リンク26と第4リンク29との相対角度がガスシリンダ30で一定に保持されていることから、第3リンク28が前向きに押され、これにより、背もたれ6の腰支持部6aが大きく前進動する。このため、人が椅子に浅く腰掛けても、人の腰を的確に支持してランバーサポート機能を発揮できる。
人が椅子に深く腰掛けた場合は、背もたれ6の腰支持部6aはガスシリンダ30が縮むことによって押し戻されるため、深く腰掛けることが阻害されることはない。また、背もたれ6の腰支持部6aは側面視形状及び平面形状が変化し得るように柔軟性を持っているため、使用者の体格が異なっても、背もたれ6は人の身体にフィットする。このため座り心地が良い。また、腰支持部6aが変形することによっても、深く腰掛けることが損なわれることはない。
本実施形態のガスシリンダ30を設けると、使用者が身体を前後に動かしても腰支持部6aは使用者の動きに追従して前後動しうるため、フイット性に優れていて特に好ましい。なお、ガスシリンダ30をロックすることにより、腰支持部6aの初期前進位置を調節することができる。ガスシリンダ30に代えてコイルばね等の弾性体を設けることも可能である。
着座した人が背もたれ6に凭れ掛かると、背もたれ6は全体として後傾し、これに連動して座4も後退しつつ後傾動する。この場合、背もたれ6の上端に近い部位は舌状片22を介して背支柱5bに取付けられていることにより、着座すると背もたれ6は全体として後傾姿勢になるため、ロッキング状態での上半身の後傾角度は、着座によって背もたれ6が後傾する角度とバックフレーム5の後傾角度とを足し合わせた角度になる。従って、ロッキング状態での安楽性を向上できる。
更に、バックフレーム5は図5に一点鎖線で示すようにロッキング状態において後傾し、このバックフレーム5の後傾動によって背もたれ6が全体として下がるため、バックフレーム5の後傾角度はバックフレーム5の後傾角度よりも僅かながら大きくなる(バックフレーム5の回動中心から遠いほど移動量が大きくなるためである)。このため、深い安楽姿勢を採ることができる。
また、背もたれ6は着座によって自然な姿勢で後傾するため、ロッキングに際しては、背もたれは人の背及び腰に突き上げ感を受けることはなく、違和感のない快適なロッキング状態を得ることができる。更に、着座すると背もたれ6が後傾することにより、使用者はバックフレーム5が後傾動していない状態において上半身を後傾させた状態で背もたれ6に凭れる掛かることができ、このため、バックフレーム5が後傾動を始める前にロッキングの準備段階に入るかのような状態を呈することになり、その結果、ロッキング状態への移行が極くスムースに行われる。
また、ロッキングによって座4が下降動すると、第2リンク26の前部が作動軸34で下向きに押されることにより、背もたれ6は単にバックフレームに取付けただけの場合に比べてより多く下降動するため、座4と背もたれ6との相対距離が広がることに起因したいわゆるシャツ捲れの現象を防止できる。
本実施形態のように背支柱部5bの上部をばね18に抗して屈曲しうる構成にすると、ロッキング状態でのクッション性が高くなるため快適さを一層向上できる。
(3).第2実施形態(図6〜図7)
図6及び図7では第2実施形態を示している。図6は非着座状態の側面図、図7は着座状態ての部分的な側面図である。
この実施形態は第1実施形態の変形例であり、第1実施形態との相違点は、相違点は、第1リンク15にストッパーピン36を設けている点、第4リンク29と腰支持部6aの下端とを第5リンク37で連結した点、第4リンク29に対する第3リンク28及び第5リンク37の取付け位置を調節可能としている点である(第3リンク28及び第5リンク37に連結軸32,38の取付け穴39を複数個形成している。)また、作動軸34は座4のインナーシェル4aに形成した軸受部40に取り付けている。
この第2実施形態では、第1リンク15のストッパーピン36が中間部材3の上面に当たることにより、座4のスライドが規制される。また、第5リンク37が存在することにより、腰支持部6aと側面視で前向き凸状に湾曲した形状が保持されるため、着座者の腰椎部分を的確にサポートすることができる。
更に、第4リンク29に対する第3リンク28及び第5リンク37の取付け位置を調節できるため、背もたれ6の側面視での初期形状及び前後位置を変えることができ、このため、個人の体格や好みに応じて背もたれ6の位置とプロフィールとを設定できる。なお、背もたれ6の側面姿勢と前後位置とは無段階的に調節できるようにしてもよい。
(4).第3実施形態(図8)
図8では第3実施形態を示している。この実施形態では、連動手段として、平行リンク方式の第1リンク15に加えて、中間部材3の左右側面に上下中途部を第6連結軸41で連結されたシーソー式の第6リンク42と、第6リンク42と背もたれ6の側面とを連結する第7リンク43と、座4の左右側面に設けたガイド部材44と、第6リンク42の下端と第7リンク43の上下中途部とに連結したガスシリンダ30とを備えている。
ガイド部材44には略後傾状に延びる長穴45が空いており、第6リンク42の上端に設けたスライドピン(ローラでも良い)46を長穴45に嵌め入れている。また、第7リンク43の下端と第6リンク42と第6連結軸41によって中間部材3に連結されている。各リンクは左右一対ずつ配置されている。
この実施形態では、人が着座すると、ガイド部材44の押圧作用によって第6リンク42及び第7リンク43が左側面視で反時計回りに回動し、これにより、背もたれ6は後傾して腰支持部6aが大きく前進動する。
(5).第4実施形態(図9)
図9では第4実施形態を示している。(A)は右側面図、(B)は部分的な平断面図である。この実施形態では、座4をスライドする手段として、中間部材3に側面視で前傾状の左右2本ずつのガイド軸48を固定して、このガイド軸48にスライド自在に嵌め込んだ外筒49に座受け部材50を固定し、座受け部材50に座4を固定している。外筒49には、座4をニュートラル状態に戻すばね51を内蔵している。
そして、左右の背支柱部5aの前面に断面角形等の補強バー52を溶接等によって固定し、この補強バー52の左右端面に第8リンク53の前後中途部を第8連結軸54によって連結し、第8リンク53の前部に設けた前後長手の長穴55に、座受け部材50に固定した作動軸34を嵌め入れている。更に、第8リンク53と背もたれ6のプッシュプレート24とを第9リンク56及び第10リンク57で連結している。第8リンク53は第1実施形態の第2リンク26に相当し、第9リンク56は第1実施形態の第3リンク28に相当し、第10リンク57は第1実施形態の第4リンク29に相当する。
(6).第5〜第6実施形態(図10〜図11)
図10では第5実施形態を示している。この実施形態では、座受け部材59は右側面視で逆つ字状(左側面視ではつ字状)に形成されており、座4をスライドさせる手段として、座受け部材59の傾斜部59aを斜め後方にスライドさせるレール60と、座受け部材59の上部と座受けベース2とに連結した第11リンク61とを併用している。座受け部材59の傾斜部59aには長穴62が形成されており、座受けベース2に突設したガイドピン63が長穴62に嵌まっている。
座4のスライドを背もたれ6の前進動に変換させる連動手段として、バックフレーム5の背支柱部5bに、座4のスライドで回動するベルクランク式の第12リンク64と、第12リンク64の回動によって背もたれ6の腰支持部6aを前進させるベルクランク式の第13リンク65とを連結している。第12リンク64と第13リンク65とは一緒に回動するようにピン66で係合している。
また、第13リンク65の先端は腰支持部6aの背面に設けた軸受ブラケット67に連結されている。第12リンク64は座受け部材59に形成した突起59bで押されるようになっている。
図11に示す第6実施形態は第5実施形態の変形例であり、第12リンク64を直線状に延びるシーソー式に構成している。バックフレーム5には、第12リンク64の回動によって第13リンク65が前傾動することを確実ならしめるためのガイド体65aを設けている。これらの実施形態(及び他の実施形態)も、背もたれ6におけるインナーシェルの弾性復元力によって座4やリンクをニュートラル状態に戻すことができるが、戻し用のばね手段を設けても良い。第5実施形態及び第6実施形態では連動手段を座4の下方とバックフレーム5の手前側とに配置できるため、全体として外観がスッキリする利点がある。
(7).他のバリエーション
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば適用対象としては事務用等の回転椅子には限らず、例えば病院用等のソファーや劇場用又は競技場用等の固定式椅子、或いは車両用椅子などの様々の椅子に適用できる。
また、着座によって背もたれを前進させる連動手段は実施形態に限定されるものではなく、更に様々の構成を採用できる。例えば、着座によって座が下降動のみする構成として、この下降動によって背もたれを前進させてもよい。また、着座による荷重を油圧又は空圧に変換し、この油圧又は空圧を利用してシリンダによって背もたれを前進させるといったことも可能である。
(8).本願発明の展開例
ところで、自動車の椅子(特に運転席の椅子)は、前後位置をレバーやダイアルで調節しているが、調節がわりと面倒である。また、事務用等の回転椅子でも座の前後位置を調節できるものが市販されているが、座の前後位置の調節も面倒な場合がある。本願発明の思想を応用することにより、このような課題を改善することが可能になる。
すなわち、背もたれの前後位置を固定できるロック手段を設けて、このロックとロック解除とを例えばレバーの回動操作のような簡単な操作で行えるようにしておく一方、着座によって背もたれが前進するにおいて、人が背もたれを押して後退動させ得るように構成しておき、背もたれが出過ぎと感じた場合は後方に押しやることによって背もたれ(腰支持部)の最適の位置を設定し、その状態で背もたれを前後動不能にロックするのである。
また、本願発明は、着座しても背もたれは前進しない椅子において、背もたれに対する座の前後位置の調節手段に展開することも可能である。すなわち、本実施形態で説明したような座のスライド機構を設けた椅子において、座にその前後位置をロックできるロック手段(例えばレバー)を設けておいて、着座して最も使い心地のよい前後位置にロックするのである。この場合は、使用者は腰を浮かせて座を前進させることもあるので、座の下降量は僅かであるのが好ましい。
1 脚支柱
2 座受けベース
3 中間部材
4 座
5 バックフレーム
6 背もたれ
6a 腰支持部
7 背もたれのインナーシェル
15 第1リンク
26 第2リンク
28 第3リンク
29 第4リンク
30 ガスシリンダ
34 作動軸
本願発明は、背もたれ付き椅子に関するものである。
椅子には様々の種類があり、それぞれの種類に応じて様々の改良がなされている。その例として例えば特許文献1には、着座した人が背もたれにもたれ掛かると座が前傾する椅子が開示されており、他方、特許文献2には、人が着座すると座がその前後略中間部を中心にして側面視で傾動し、この座の後傾動に連動して背もたれが傾動するようになっている椅子が記載されている。両特許文献とも、背もたれを座に連動させる手段としては一種のリンク機構を採用している。
特許文献1のものは、人が着座しただけでは座及び背もたれとも姿勢に変化はなく、着座者が背もたれに凭れ掛かって背もたれに大きなモーメントが掛かると、テコの原理で座の後部が上向きに突き上げられて座を前傾させるものであり、その目的は、ロッキング状態で人の身体を伸ばしやすくすることによって安楽状態を確保せんとするものである。
他方、特許文献2では、例えば人が座の前部に腰掛けると背もたれは大きく前傾して人を前傾姿勢に押し勝手となり、すると、使用者は不快感を感じて座り位置を後ろにずらすことになる。すなわち、特許文献2は、使用者が座の前部に腰掛けるいわゆるチョン掛け(或いはチョイ掛け)を行うと不快感を与えることにより、正しい着座姿勢を取らせるようにしたものである。
特公昭44−20784号公報
特公昭46−27517号公報
人が椅子を使用する場合、必ずしも深く腰掛けるとは限らず、浅く腰掛けることはよくある。椅子の使い方は人によって様々であるから、椅子の設計思想としては、腰掛け位置が違っていても使用者にできるだけ負担をかけないようにするというユーザーフレンドリーな発想も必要である(オフィス等での業務では浅く腰掛けることは良くあるから、このような使用状態に配慮する必要性は高い。)。
しかし、特許文献1のものはロッキング状態のことしか想定されておらず、いわゆる浅く腰掛けた場合への配慮はなんら成されてない。他方、特許文献2のものは、いわば使用者に深く腰掛ける癖をつけさせようとするもので、これも使用者に対する配慮が十分とは言い難い。
更に述べると、着座した人の身体への負担を軽減するためには、人の腰部を支持して背筋を伸ばした状態を採りやすくすることが重要であり、そこで、近年、人の腰椎部分を集中的に支持するランバーサポート付きの椅子が普及しているのであるが、特許文献2のものは背もたれ全体を前傾させるものであるため、椅子の使用者は背もたれの上部を背もたれで押されて猫背状態になってしまい、このため背筋を伸ばすことはできず、従って、特許文献2ではランバーサポート機能は確保することはできない。
更に、特許文献2の構成では、人が浅く腰掛けると座は前傾姿勢になるため、人は上半身を伸ばした直立させた姿勢を採り難いという問題もある。
本願発明は、このような現状に鑑みなされたもので、よりユーザーフレンドリーな椅子を提供することを課題とするものである。
請求項1の発明に係る椅子は、人が腰掛けるとベースに近づくように下降して人が立つとベースから離反して上昇位置に復帰する座と、前記座の下降動と上昇動に連動して全体的に動き得る背もたれとを備えており、前記座と背もたれとはベースで支持されており、前記座と背もたれとは、前記座が下降した状態で背もたれにて着座者の腰部と背とを適切に支持する高さ関係に保持されている構成であって、
前記背もたれは、人が着座しても後傾せずに着座した人が凭れ掛かるとロッキング用ばね手段に抗して後傾するようにベースに取り付けられており、かつ、前記背もたれが着座者の凭れかかりによって後傾しても、前記座はベースに近づくように下降した状態に保持されている。
請求項2の発明に係る椅子は、請求項1において、前記座は、前記背もたれが後傾するとベースに近づくように下降した状態を保持しつつ後退及び後傾するように背もたれに連動している。
本願発明の椅子は、人が着座して座が下降して、着座者の腰部を背もたれで後ろから適切に支えることができる。すなわち、座が下降しても背もたれはランバーサポート機能を発揮できるのであり、このため、使用者の身体への負担を軽減できる。
そして、ロッキング機能も発揮できて好適である。
(A) は第1実施形態の側面図、(B) は背もたれのインナーシェルの斜視図である。
(A) は主要部材の分離側面視図、(B) は背もたれの取付け状態を示す一部破断分離斜視図である。
一部を破断した主要部材の概略分離正面図である。
図1の V-V視断面図である。
動きを示す側面図である。
第2実施形態の非着座状態での側面図である。
第2実施形態の着座状態での側面図である。
第3実施形態を示す図である。
第4実施形態を示す図である。
第5実施形態を示す図である。
第6実施形態を示す図である。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は事務用等の回転椅子に適用している。
(1).第1実施形態の構造
図1〜図5では第1実施形態を示している。図1のうち(A)は椅子の側面図、(B)は背もたれのインナーシェルの斜視図、図2のうち(A)は主要部材の分離側面視図、(B)は背もたれの取付け状態を示す一部破断分離斜視図、図3は一部を破断した主要部材の概略分離正面図、図4は図1の IV-IV視断面図、図5は動きを示す側面図である。
椅子は、ガスシリンダからなる脚支柱1と、その上端に固定した座受けベース2と、座受けベース2に取付けた中間部材3と、中間部材3に取り付けた座4と、座受けベース2に後傾動自在に連結した左右2本のバックフレーム5と、バックフレーム5で支持された背もたれ6とを備えている。
背もたれ6は、図1(B)に概略を示すインナーシェル7を備えており、図2(B)に明示するように、インナーシェル7の前面にクッション材8を張っている。図示していないが、脚支柱1は、放射状に延びる複数本の枝杆を有する脚ベースに取付けられており、各枝杆にはキャスターを設けている。
座受けベース2は上向きに開口した箱状に形成されており、その前部に、中間部材3を左右長手の第1軸11で連結している。中間部材3は、正面視で下向き開口コ字状に形成されており(図3参照)、その側板3aと座受けベース2とに第1軸11が貫通している。座受けベース2における第1軸の挿通穴は側面視で後傾状に延びる長穴12になっており、このため、第1軸11は長穴12に沿ってスライドし得る。長穴12には樹脂製のブッシュ12′を装着している。
バックフレーム5は、側面視後傾状のアーム部5aと略鉛直状に延びる背支柱5bとから成っており、全体として側面視く字状の形態になっている。そして、アーム部5aの先端部と座受けベース2の前後中途部とを第2軸13で連結している。また、中間部材3の後部とアーム部5aの前後中途部とを左右長手の第3軸13′で連結している。従って、中間部材3とバックフレーム5とは連動して後傾しつつ後退動する。図示していないが、座受けベース2の内部には、第1軸11の後退動を支持するロッキング用ばね手段を配置しており、背もたれ6のロッキングはこのロッキング用ばね手段に抗して行われる。
座4は、樹脂製等のインナーシェル4aの上面にクッション4bを張った構造になっている。そして、座4の下面に、中間部材3と略同じ横幅で下向きに開口コ字状のブラケット14を固定し、このブラケット14の左右側板と中間部材3とを前後2対ずつの第1リンク15から成る平行リンク機構で連結している。
各第1リンク15はブラケット14及び中間部材3の外側に位置しており、前部の第1リンク15は第1軸11で中間部材3に連結されており、後部の第1リンク15は、専用の軸16によって中間部材3に連結されている。第1リンク15をブラケット14に連結している軸は符号17で示している。非着座状態(ニュートラル状態)で第1リンク15は側面視で若干後傾姿勢になっている。これは、着座によって後傾させるためである。図示していないが、第1リンク15が前傾することを阻止するストッパーを設けている。
座4と中間部材3とを平行リンク機構で連結したことにより、座4は側面視での姿勢を変えることなく下降しつつ後退しうる。換言すると、座4は前傾したり後傾したりせずに、略水平状の姿勢を保持したままで下降しつつ後退し得る。なお、第1リンク15は座4のインナーシェル4aに一体成形した下向き突起に連結しても良い。また、座4をスライドさせる手段は平行リンク機構に限らないことはいうまでもない。
バックフレーム5における背支柱部5bの上部5b′は、その下方の部分から分離しており、コイルばね18を介して連結されている。このため、背支柱部5bはその上端部5b′がコイルばね18の弾性に抗して後傾しうる。
背もたれ6は、その裏面のうち上端よりもある程度下方の部位においてバックフレーム5における背支柱部5bの上端部5b′に取付けられており、その具体的構造は図2(B)に示されている。すなわち、左右の背支柱部5bの上端部5b′に左右横長で断面内向きコ字状の桟部材19を溶接等によって固着する一方、背もたれ6を構成するインナーシェル7に、桟部材19の上面に重なる突起片20を一体に形成し、突起片20をビス(ボルト)21で桟部材19に締結している。
この場合、本実施形態の特徴として、突起片20は、インナーシェル7のうち上向き開口したスリットで囲われた上下長手の舌状片22の下端に形成している。このため、舌状片22が曲がるように変形することにより、背もたれ6が舌状片22の付け根を中心にして傾動することと、背もたれ6が全体として背支柱部5bの手前側に移動することとが許容されている。突起片20はインナーシェル7とは別部材で構成しても良い。
背もたれ6は、着座した人の腰を中心にした部分に当たる腰支持部(ランバーサポート部)6aを備えている。すなわち、腰支持部6aは、座が下降した状態で着座者の腰を中心にした部分に当たる適正高さになるように設定されている。腰支持部6aは側面視で前向き凸状に湾曲しており、背もたれ6が舌状片22を中心にして側面視で傾動することにより、腰支持部6aが前後動する。図1(B)に示すように、背もたれ6のインナーシェル7は、少なくとも腰支持部6aの個所で側面視形状と平面視形状とが変化し得る程度の柔軟性を備えている。インナーシェル7に柔軟性を与えることは、例えばスリットの群を形成することによって達成できる。
背もたれ6における腰支持部6aの背面には、左右長手で帯状のプッシュプレート24がねじ止め等によって固定されている。
次に、連動手段について説明する。本実施形態では、座4の後ろ向きスライドの動きを利用して背もたれ6の腰支持部6aを前向きに突出させるものであり、連動手段は、既述した第1リンク15と、左右バックフレーム5の内面に第1連結軸25によって連結した前後長手の第2リンク26と、背もたれ6のプッシュプレート24に左右長手の第2連結軸27を介して連結した左右の第3リンク28と、第2リンク26と第3リンク28とに回動自在に連結された第4リンク29と、第2リンク26と第4リンク29との相対角度を保持する左右一対のガスシリンダ30とを備えている。第3リンク28の前端はプッシュプレート24に形成した軸受片24a(図4参照)に連結されているが、背もたれ6のインナーシェル7に形成した後ろ向き突起片に連結してもよい。
ガスシリンダ30は第2リンク26及び第4リンク29にピン31で回動自在に連結されている。なお、ガスシリンダ30は左右中間部に1本だけでも配置しても良いし、第2リンク26の左右中間部との3個所に3本配置するなどしても良い。
第4リンク29の下端は第2連結軸27に連結されており、第3リンク28の後端と第4リンク29の上端とは第4連結軸32で連結されている。第2リンク26は上向き開口の樋状に形成されており、第4リンク29の下端部とガスシリンダ30の下端部とは第2リンク26の内部に位置している。また、左右の第3リンク28の間隔は左右第2リンク26の間隔よりも広いため、図4に示すように、第3リンク28と第4リンク29との間には大きな間隔が空いている。
第2リンク28の前端部には側面視で前向きに開口した長溝穴33が形成されており、この長溝穴33に、座4の下面のブラケット14に補助部材14aを介して固定した左右長手の作動軸34を嵌め入れている。
(2).動きの説明・実施形態の利点
以上の構成において、人が座4に腰掛けると、図5に示すように、座4は平行リンク機構の作用によって、ガスシリンダ30に抗して下降しつつ後方にスライドする。すると、作動軸34の押圧作用によって第2リンク26が前傾姿勢に回動し、すると、第2リンク26と第4リンク29との相対角度がガスシリンダ30で一定に保持されていることから、第3リンク28が前向きに押され、これにより、背もたれ6の腰支持部6aが大きく前進動する。このため、人が椅子に浅く腰掛けても、人の腰を的確に支持してランバーサポート機能を発揮できる。着座していた人が立つと、座4は元の上昇位置に復帰する。
人が椅子に深く腰掛けた場合は、背もたれ6の腰支持部6aはガスシリンダ30が縮むことによって押し戻されるため、深く腰掛けることが阻害されることはない。また、背もたれ6の腰支持部6aは側面視形状及び平面形状が変化し得るように柔軟性を持っているため、使用者の体格が異なっても、背もたれ6は人の身体にフィットする。このため座り心地が良い。また、腰支持部6aが変形することによっても、深く腰掛けることが損なわれることはない。
本実施形態のガスシリンダ30を設けると、使用者が身体を前後に動かしても腰支持部6aは使用者の動きに追従して前後動しうるため、フイット性に優れていて特に好ましい。なお、ガスシリンダ30をロックすることにより、腰支持部6aの初期前進位置を調節することができる。ガスシリンダ30に代えてコイルばね等の弾性体を設けることも可能である。
着座した人が背もたれ6に凭れ掛かると、座4は中間部材3に近づくように下降したままで背もたれ6は全体として後傾し、これに連動して座4も中間部材3に近づくように下降したままで後退しつつ後傾動する。この場合、背もたれ6の上端に近い部位は舌状片22を介して背支柱5bに取付けられていることにより、着座すると背もたれ6は全体として後傾姿勢になるため、ロッキング状態での上半身の後傾角度は、着座によって背もたれ6が後傾する角度とバックフレーム5の後傾角度とを足し合わせた角度になる。従って、ロッキング状態での安楽性を向上できる。
更に、バックフレーム5は図5に一点鎖線で示すようにロッキング状態において後傾し、このバックフレーム5の後傾動によって背もたれ6が全体として下がるため、バックフレーム5の後傾角度はバックフレーム5の後傾角度よりも僅かながら大きくなる(バックフレーム5の回動中心から遠いほど移動量が大きくなるためである。)。このため、深い安楽姿勢を採ることができる。
また、背もたれ6は着座によって自然な姿勢で後傾するため、ロッキングに際しては、背もたれは人の背及び腰に突き上げ感を受けることはなく、違和感のない快適なロッキング状態を得ることができる。更に、着座すると背もたれ6が後傾することにより、使用者はバックフレーム5が後傾動していない状態において上半身を後傾させた状態で背もたれ6に凭れる掛かることができ、このため、バックフレーム5が後傾動を始める前にロッキングの準備段階に入るかのような状態を呈することになり、その結果、ロッキング状態への移行が極くスムースに行われる。
また、ロッキングによって座4が下降動すると、第2リンク26の前部が作動軸34で下向きに押されることにより、背もたれ6は単にバックフレームに取付けただけの場合に比べてより多く下降動するため、座4と背もたれ6との相対距離が広がることに起因したいわゆるシャツ捲れの現象を防止できる。
本実施形態のように背支柱部5bの上部をばね18に抗して屈曲しうる構成にすると、ロッキング状態でのクッション性が高くなるため快適さを一層向上できる。
(3).第2実施形態(図6〜図7)
図6及び図7では第2実施形態を示している。図6は非着座状態の側面図、図7は着座状態ての部分的な側面図である。
この実施形態は第1実施形態の変形例であり、第1実施形態との相違点は、第1リンク15にストッパーピン36を設けている点、第4リンク29と腰支持部6aの下端とを第5リンク37で連結した点、第4リンク29に対する第3リンク28及び第5リンク37の取付け位置を調節可能としている点である(第3リンク28及び第5リンク37には、連結軸32,38の取付け穴39を複数個形成している。)。また、作動軸34は座4のインナーシェル4aに形成した軸受部40に取り付けている。
この第2実施形態では、第1リンク15のストッパーピン36が中間部材3の上面に当たることにより、座4のスライドが規制される。また、第5リンク37が存在することにより、腰支持部6aと側面視で前向き凸状に湾曲した形状が保持されるため、着座者の腰椎部分を的確にサポートすることができる。
更に、第4リンク29に対する第3リンク28及び第5リンク37の取付け位置を調節できるため、背もたれ6の側面視での初期形状及び前後位置を変えることができ、このため、個人の体格や好みに応じて背もたれ6の位置とプロフィールとを設定できる。なお、背もたれ6の側面姿勢と前後位置とは無段階的に調節できるようにしてもよい。
(4).第3実施形態(図8)
図8では第3実施形態を示している。この実施形態では、連動手段として、平行リンク方式の第1リンク15に加えて、中間部材3の左右側面に上下中途部を第6連結軸41で連結されたシーソー式の第6リンク42と、第6リンク42と背もたれ6の側面とを連結する第7リンク43と、座4の左右側面に設けたガイド部材44と、第6リンク42の下端と第7リンク43の上下中途部とに連結したガスシリンダ30とを備えている。
ガイド部材44には略後傾状に延びる長穴45が空いており、第6リンク42の上端に設けたスライドピン(ローラでも良い)46を長穴45に嵌め入れている。また、第7リンク43の下端と第6リンク42と第6連結軸41によって中間部材3に連結されている。各リンクは左右一対ずつ配置されている。
この実施形態では、人が着座すると、ガイド部材44の押圧作用によって第6リンク42及び第7リンク43が左側面視で反時計回りに回動し、これにより、背もたれ6は後傾して腰支持部6aが大きく前進動する。
(5).第4実施形態(図9)
図9では第4実施形態を示している。(A)は右側面図、(B)は部分的な平断面図である。この実施形態では、座4をスライドする手段として、中間部材3に側面視で前傾状の左右2本ずつのガイド軸48を固定して、このガイド軸48にスライド自在に嵌め込んだ外筒49に座受け部材50を固定し、座受け部材50に座4を固定している。外筒49には、座4をニュートラル状態に戻すばね51を内蔵している。
そして、左右の背支柱部5aの前面に断面角形等の補強バー52を溶接等によって固定し、この補強バー52の左右端面に第8リンク53の前後中途部を第8連結軸54によって連結し、第8リンク53の前部に設けた前後長手の長穴55に、座受け部材50に固定した作動軸34を嵌め入れている。更に、第8リンク53と背もたれ6のプッシュプレート24とを第9リンク56及び第10リンク57で連結している。第8リンク53は第1実施形態の第2リンク26に相当し、第9リンク56は第1実施形態の第3リンク28に相当し、第10リンク57は第1実施形態の第4リンク29に相当する。
(6).第5〜第6実施形態(図10〜図11)
図10では第5実施形態を示している。この実施形態では、座受け部材59は右側面視で逆つ字状(左側面視ではつ字状)に形成されており、座4をスライドさせる手段として、座受け部材59の傾斜部59aを斜め後方にスライドさせるレール60と、座受け部材59の上部と座受けベース2とに連結した第11リンク61とを併用している。座受け部材59の傾斜部59aには長穴62が形成されており、座受けベース2に突設したガイドピン63が長穴62に嵌まっている。
座4のスライドを背もたれ6の前進動に変換させる連動手段として、バックフレーム5の背支柱部5bに、座4のスライドで回動するベルクランク式の第12リンク64と、第12リンク64の回動によって背もたれ6の腰支持部6aを前進させるベルクランク式の第13リンク65とを連結している。第12リンク64と第13リンク65とは一緒に回動するようにピン66で係合している。
また、第13リンク65の先端は腰支持部6aの背面に設けた軸受ブラケット67に連結されている。第12リンク64は座受け部材59に形成した突起59bで押されるようになっている。
図11に示す第6実施形態は第5実施形態の変形例であり、第12リンク64を直線状に延びるシーソー式に構成している。バックフレーム5には、第12リンク64の回動によって第13リンク65が前傾動することを確実ならしめるためのガイド体65aを設けている。これらの実施形態(及び他の実施形態)も、背もたれ6におけるインナーシェルの弾性復元力によって座4やリンクをニュートラル状態に戻すことができるが、戻し用のばね手段を設けても良い。第5実施形態及び第6実施形態では連動手段を座4の下方とバックフレーム5の手前側とに配置できるため、全体として外観がスッキリする利点がある。
(7).他のバリエーション
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば適用対象としては事務用等の回転椅子には限らず、例えば病院用等のソファーや劇場用又は競技場用等の固定式椅子、或いは車両用椅子などの様々の椅子に適用できる。
また、着座によって背もたれを前進させる連動手段は実施形態に限定されるものではなく、更に様々の構成を採用できる。例えば、着座によって座が下降動のみする構成として、この下降動によって背もたれを前進させてもよい。
1 脚支柱
2 座受けベース
3 中間部材
4 座
5 バックフレーム
6 背もたれ
6a 腰支持部
7 背もたれのインナーシェル
15 第1リンク
26 第2リンク
28 第3リンク
29 第4リンク
30 ガスシリンダ
34 作動軸