以下、本発明に係る油圧作業機の油圧システムの実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明に係る油圧システムが備えられる油圧作業機の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
この図1に示すように、油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に回動可能に取り付けられる作業装置3とを備えている。作業装置3は、旋回体2に上下方向の回動可能に接続されるブーム4と、このブーム4の先端に上下方向の回動可能に接続されるアーム5と、このアーム5の先端に上下方向の回動可能に接続されるバケット6とを含んでいる。また、この作業装置3は、ブーム4を作動させるブームシリンダ4aと、アーム5を作動させるアームシリンダ5aと、バケット6を作動させるバケットシリンダ6aとを含んでいる。旋回体2上には運転室7を設けてあり、運転室7の後方には油圧ポンプ等が収容される機械室8を設けてある。
図2は図1に示す油圧ショベルに備えられる本発明に係る油圧システムの第1実施形態を示す油圧回路図である。
回転動力生成手段を構成する内燃機関による原動機、すなわちエンジン11の出力軸が油圧ポンプ12a、12b、パイロットポンプ13の入力軸と機械的に接続され、エンジン11によって油圧ポンプ12a、12b、パイロットポンプ13が駆動される。なお、エンジン11は燃料噴射量を調節することで出力軸の回転速度をほぼ一定に保持する制御を行っている。
油圧ポンプ12a、12bは、油圧アクチュエータ、例えば前述したブームシリンダ4a、アームシリンダ5aを駆動する油圧動力を生成する装置で、1回転当たりに吐出する作動油の流量を調整できるようになっているため、入力軸の回転数が一定でも、作動油の吐出流量を変化させることが可能である。油圧ポンプ12a、12bの容量は、後述するレバー15a、15bの操作量(後述するパイロット弁16a、16bで発生するパイロット圧)や、油圧ポンプ12a、12bの吐出圧、エンジン11の負荷余裕率などから、図示しないレギュレータによって制御される。また、油圧ポンプ12aは後述するブームシリンダ4aの動作を制御する流量制御弁25と、アームシリンダ5aの動作を制御する副流量制御弁28に圧油を供給し、油圧ポンプ12bは後述するブームシリンダ4aの動作を制御する副流量制御弁27と、アームシリンダ5aの動作を制御する流量制御弁26に圧油を供給する。なお、レバー操作が行われていないときには、油圧ポンプ12a、12bから吐出された作業油は、上記流量制御弁25、26、副流量制御弁27、28を通過して、作動油タンク18に戻る。また、メインリリーフ弁19によって、油圧ポンプ12a、12bから吐出される作動油の圧力がメイン回路の許容値を超えないように保護されている。
パイロットポンプ13は後述する油圧機器の制御に用いられるパイロット圧を生成する装置であり、1回転当たりに吐出する作動油の流量が固定となっている。パイロットポンプ13が吐出した作動油は、パイロットリリーフ弁17を介して作動油タンク18に戻るようになっており、パイロット回路の圧力はパイロットリリーフ弁17の設定圧に保持されている。
ブームシリンダ4aはブームの側面両側に2本設置されており、図2の油圧回路上では便宜上1本で構成しているが、作用、機能は同一である。ブームシリンダ4aは、複動片ロッド式の油圧シリンダであり、動力源の油圧ポンプ12a、12bから吐出された圧油が、流量制御弁25、副流用制御弁27を介して供給されることで、伸縮動作を行う。
流量制御弁25、副流量制御弁27は3位置6ポートの油圧パイロット式のスプール弁で、パイロット弁16aにて調整されたパイロット圧によって動作し、パイロット圧の大きさによって各ポート間の油路の開口面積(流体抵抗の大きさ)を変化させることで、ブームシリンダ4aの動作速度や圧力を調整する。レバー15aによってパイロット弁16aをA側に操作した時は、本図における流量制御弁25の左側、副流量制御弁27の右側が高圧となり、流量制御弁25のスプールが右側に、副流量制御弁27のスプールが左側に移動する。すると、油圧ポンプ12a、12bとブームシリンダ4aのAポートが接続し、ブームシリンダ4aは収縮動作を行い、ブームシリンダ4aのBポートから排出された作動油は作動油排出油路20aを通り、流量制御油路21aと動力回生油路22aに分岐する。流量制御油路21aの作動油は流量制御弁25を通過して作動油タンク18に戻り、動力回生油路22aの作動油は後述する可変容量型の油圧回生モータ23を通過して作動油タンク18に戻る。さらに、動力回生油路22aには回生制限弁24aが設けられ、副流量制御弁27を通過して作動油タンク18に戻る動力回生迂回油路35aに分岐している。回生制限弁24aは、後述する回生制限弁制御手段、すなわちコントローラ10からの指令電流によって、動力回生油路22aから動力回生迂回油路35aへの分流比を調整する電磁比例弁であり、通電無しのノーマル位置が回生OFF(図2において左側の位置=動力回生油路22aを完全に遮断し全流量を動力回生迂回油路35aに導く)で、コントローラ10からの指令電流の増加に従い、油圧回生モータ23側(図14におけるA−M通路)の開口が開き、動力回生迂回油路35a側(図14におけるA−S通路)の開口が閉じていくことで、油圧回生モータ23への流量を増加させる設定となっている。なお、ブームシリンダ4aが収縮動作をしているとき(パイロット弁16aがA側に操作されている時)、回生制限弁24aは後述するコントローラ10からの指令電流によって任意の位置に制御されており、動力回生油路22aから動力回生迂回油路35aへの分流比が調整されている。
反対に、パイロット弁16aをB側に操作した時は、同図2における流量制御弁25の右側、副流量制御弁27の左側が高圧となり、流量制御弁25のスプールが左側に、副流量制御弁27のスプールが右側に移動する。すると、油圧ポンプ12a、12bとブームシリンダ4aのBポートが接続し、ブームシリンダ4aは伸長動作を行い、ブームシリンダ4aのAポートから排出された作動油は流量制御弁25および副流量制御弁27を通過して作動油タンク18に戻る。なお、ブームシリンダ4aが伸長動作をしているとき(パイロット弁16aがB側に操作されている時)は、動力回生油路22aに設けられた回生制限弁24aは回生OFF位置に制御されており、油圧ポンプ12a、12bから供給される作動油が油圧回生モータ23に流入すること無く、全量がブームシリンダ4aに供給される。
また、流量制御油路21aと動力回生油路22aとの分岐部より流量制御油路21a側に第1差圧発生手段、すなわち第1絞り弁33aと、第1圧力検出手段すなわち第1圧力計30a、同分岐部より動力回生油路側に第2差圧発生手段、すなわち第2絞り弁34aと、第2圧力検出手段すなわち第2圧力計31a、同分岐部に第3圧力検出手段すなわち第3圧力計32aが設けられている。これらの圧力計(30a、31a、32a)は圧力値を電気信号として出力する圧力センサであり、それらの出力は後述するコントローラ10と図示しない電気配線によって接続されている。なお、第1圧力計30a、第2圧力計31a、第3圧力計31a、第1絞り弁33a、第2絞り弁34aは、一体の差圧検出ブロック29aとして構成されており、作動油排出油路20aに接続するポートから流量制御油路21aに接続するポートに作動油を通過させた場合の圧力流量特性(第1圧力計30aと第3圧力計32aによって検出される差圧と流量の関係)、作動油排出油路20aに接続するポートから動力回生油路22aに接続するポートに作動油を通過させた場合の圧力流量特性(第2圧力計31aと第3圧力計32aによって検出される差圧と流量の関係)については、あらかじめ校正がなされている。
アームシリンダ5aは複動片ロッド式の油圧シリンダであり、動力源の油圧ポンプ12a、12bから吐出された圧油が、流量制御弁26、副流用制御弁28を介して供給されることで、伸縮動作を行う。
流量制御弁26、副流量制御弁28は、パイロット弁16bにて調整されたパイロット圧によって動作し、上述した流量制御弁25、副流量制御弁27とほぼ同様に構成されるが、各ポート間の通路の開口面積については、それぞれ個別の設定になっている。また、アームシリンダ5aと流量制御弁26、副流量制御弁28との接続は、Aポート側、Bポート側共に、上述したブームシリンダ4aにおけるBポート側と同様になっており、伸縮両方向の動作について、排出作動油を油圧回生モータ23に導くことが可能になっている。なお、それぞれの動力回生油路22a、22b、22cは同一の油圧回生モータ23に接続しており、それぞれの回生制限弁24a、24b、24cより油圧回生モータ23側の油路で合流している。
また、動力回生を行うことができる油圧アクチュエータの動作を行わせるために使用されるパイロット回路には、パイロット圧を検出するためのパイロット圧力計19a、19b、19cが設けられ、それぞれ、ブームシリンダ4aの収縮動作、アームシリンダ5aの伸長動作、アームシリンダ5aの収縮動作に対応するパイロット圧を検出する。
本油圧ショベルには、上述したブームシリンダ4a、アームシリンダ5a以外にも、バケットシリンダ6a、旋回モータ(図示せず)、走行モータ(図示せず)といった油圧アクチュエータが存在するが、特に本発明に関わる部位ではないので図2の油圧回路図からは省略してある。
油圧回生モータ23はその出力軸がエンジン11、油圧ポンプ12a、12b、パイロットポンプ13と機械的に接続されている。油圧回生モータ23は1回転当たりの作動油吸入流量を変化させることができるため、出力軸の回転数が一定でも、吸入流量を変化させることができる。そして、油圧回生モータ23の容量は、コントローラ10からの容量指令を受けて動作するモータ容量制御手段、例えば電子制御レギュレータ36にて調整される。なお、油圧回生モータ23とエンジン11が機械的に接続されているため、油圧回生モータ23も常にエンジン11と同期して回転している。したがって、油圧回生モータ23の入力ポートに圧油が流入している場合にはモータ作用を行い油圧ポンプ12a、12b、パイロットポンプ13を駆動する駆動トルクを発生し、エンジン11をアシストするが、十分な作動油の流入が無い場合には、メイクアップ油路29から作動油を吸い上げてポンプ作用をする。この第1実施形態では、このポンプ作用によるロスを最低限に抑えるため、油圧回生モータ23が最小容量ゼロ(モータが回転しても作動油の吸い込み、吐き出しを行わない)の可変容量型の油圧モータから成っている。
上述のように、この第1実施形態は、回転動力生成手段、すなわちエンジン11と、このエンジン11によって生成された回転動力を油圧動力に変換する油圧ポンプ12a,12bと、この油圧ポンプ12a,12bから吐出される圧油によって駆動される複数の油圧アクチュエータ、例えばブームシリンダ4a、アームシリンダ5aと、これらのブームシリンダ4a、アームシリンダ5a毎に設けられ、互いに連動し、油圧ポンプ12a,12bからブームシリンダ4a、アームシリンダ5aに供給される圧油の流れを制御する流量制御弁25,26及び副流量制御弁27,28とを備えるとともに、ブームシリンダ4a、アームシリンダ5aのそれぞれに関連させて形成される同等の基本回路を備えている。基本回路は、ブームシリンダ4a、アームシリンダ5aの作動油排出油路20a,20b,20cから分岐し、流量制御弁25,26に接続する流量制御油路21a,21b,21cと、可変容量型の油圧回生モータ23に接続する動力回生油路22a,22b,22cとを含み、後述するように、動力回生油路22a,22b,22cの油圧動力を油圧回生モータ23にて回転動力に変換して動力回生を行うものである。
また、基本回路のそれぞれは、動力回生油路22a,22b,22cから分岐し副流量制御弁27,28に接続する動力回生迂回油路35a,35b,35cと、これらの動力回生迂回油路35a,35b,35cと動力回生油路22a,22b,22cとの分岐点に設けられ、作動油排出油路20a,20b,20cを流れる作動油を動力回生油路22a,22b,22c、及び動力回生迂回油路35a,35b,35cの一方、または双方に導くように切り替える回生制限弁24a,24b,24cとを含んでいる。また、この基本回路のそれぞれは、流量制御油路21a,21b,21cの圧力を検出する第1圧力検出手段、すなわち第1圧力計30a,30b,30cと、回生制限弁24a,24b,24cよりも作動油排出油路20a,20b,20c側の動力回生油路22a,22b,22cの部分の圧力を検出する第2圧力検出手段、すなわち第2圧力計32a,32b,32cと、作動油排出油路20a,20b,20cの圧力を検出する第3圧力検出手段、すなわち第3圧力計32a,32b,32cとを含んでいる。
また、基本回路のそれぞれは、流量制御油路21a,21b,21cと動力回生油路22a,22b,22cの分岐点と、第1圧力計30a,30b,30cとの間に設けた第1差圧発生手段、すなわち第1絞り弁33a,33b,33cと、流量制御油路21a,21b,21cと動力回生油路22a,22b,22cの分岐点と、第2圧力計31a,31b,31cとの間に設けた第2差圧発生手段、すなわち第2絞り弁34aとを含んでいる。
また、第1実施形態は、後述するように、第3圧力計32a,32b,32cで検出される圧力と第2圧力計31a,31b,31cで検出される圧力との差圧と、図14に示す予め設定される差圧・流量特性に基づいて、動力回生油路22a,22b,22cを流れる流量を求め、求めた流量と第2圧力計31a,31b,31cで検出された圧力との積から、動力回生油路22a,22b,22cの油圧動力を求め、この求めた油圧動力のそれぞれに基づいて回生を行う油圧アクチュエータ、すなわちブームシリンダ4aまたはアームシリンダ4bを決定し、その決定したブームシリンダ4aまたはアームシリンダ4bの作動油排出油路20a,20b,20cを流れる作動油を油圧回生モータ23に導くように、基本回路のそれぞれに含まれる回生制限弁24a,24b,24cを制御する回生制限弁制御手段、すなわちコントローラ10を設けた構成にしてある。
コントローラ10は、図示しない演算装置や入出力インターフェースなどから成り、圧力計19a、30a、31a、32a、19b、30b、31b、32b、19c、30c、31c、32cや油圧ショベルに設けたその他の各種センサや運転室内のスイッチ類(いずれも図示せず)からの情報を元に、演算装置に記録されたプログラムによって、エンジン11の回転速度、油圧ポンプ12a、12bの容量、油圧回生モータ23の容量、回生制限弁24a、24b、24c等を制御する機能をもつ。
以上のように構成される本発明による油圧ショベルの油圧システムの作動について、図3から図12の制御フローチャートを用い、コントローラ10、油圧回生モータ23、回生制限弁24a、24b、24cに重点をおいて説明する。
今、油圧ショベルはスタンバイ状態(エンジン11は起動しているものの、レバー操作が行われていない状態)にある。このスタンバイ状態において、コントローラ10にて動作している制御プログラムでは、図3に示す主処理が行われている。主処理では、まず、S1にてエンジン11の燃料噴射量Fを、コントローラ10にて別個に動作しているエンジン11用の制御プログラムから取得する。次に、S2にて、圧力計19a、30a、31a、32a、19b、30b、31b、32b、19c、30c、31c、32cからコントローラ10の入力ポートに入力されている電気信号を変換して、それぞれの圧力Ppa、P1a、P2a、P3a、Ppb、P1b、P2b、P3b、Ppc、P1c、P2c、P3cを取得する。そして、動力計算ルーチンS3にて各油圧アクチュエータの動力回生油路22a,22b,22cを流れる作動油の油圧動力を計算する。
動力計算ルーチンS3は、S9にて各油圧アクチュエータの第3圧力計32a、32b、32cと第2圧力計31a、31b、31cのそれぞれの差圧に対応する流量を、各差圧検出ブロック29a、29b、29c毎の圧力流量特性マップから読み取り、動力回生油路22a、22b、22cに対応してそれぞれQa、Qb、Qcとする。なお、圧力流量特性マップはコントローラ10内部メモリに記憶されており、その一例を図13に示す。今はスタンバイ状態にありレバー操作が行われておらず、全ての油圧アクチュエータが伸縮動作を行っていないため、Qa、Qb、Qcはいずれもゼロである。したがって、S10において計算される油圧動力La、Lb、Lcは全てゼロとなり、処理を終了する。
主処理に戻り、次の動作判定ルーチンS4に移行すると、各油圧アクチュエータのパイロット圧Ppa、Ppb、Ppcを判定値Ppminと比較して、動作している油圧アクチュエータを判定し、動作している油圧アクチュエータの組み合わせに応じてFlag1の値を決定する。判定値Ppminは油圧アクチュエータが動作しているかどうかを判断するための閾値であり、ゼロよりも若干大きな値に設定する。スタンバイ状態においては、操作されている油圧アクチュエータが無いためFlag1=1として、処理を終了する。
主処理に戻り、回生アクチュエータ選択ルーチンS5に移行する。回生アクチュエータ選択ルーチンS5では、図4に示す様に、S4にて決定したFlag1によって行われる処理が分かれる。Flag1=1の場合は処理11を行うが、処理11ではFlag2=0として処理を終了する。Flag2は回生を行う油圧アクチュエータを表す番号で、Flag2=0はいずれの油圧アクチュエータも回生を行わないことを意味する。
主処理に戻り、制御指令値計算ルーチンS6に移行する。制御指令値計算ルーチンS6では、図5に示す様に、S5にて決定したFlag2によって行われる処理が分かれる。Flag2=0の場合は処理20が選択され、まずS11にてβ×Cc>0の判定を行う。ここでβ×Ccは回生制限弁24cの指令電流値であり、βは回生係数、Ccは開度指令値で、いずれも後述する。スタンバイ状態が継続している場合、β=1、Cc=0となっているため、S11はNoと判定され、次のS12にてCcをゼロにリセットする(他の条件ではβ=0、Cc≠0の場合があるため)。そして、順次、S13、S14、S15、S16を実行し、Cb、Caをゼロにリセットする。開度指令値Ca、Cb、Ccは、レバー操作量と油圧アクチュエータ毎に設定されたレバー操作量に対する感度係数αa、αb、αc(いずれも後述)にて決定される回生制限弁24a、24b、24cの開度を定める値である。開度指令値Ca、Cb、Ccがゼロの場合、指令電流値β×Ca、β×Cb、β×Ccはゼロとなり、上述した通り、いずれの回生制限弁24a、24b、24cはノーマル位置(回生OFF位置)に位置する。次に、S17にて油圧回生モータ23の容量指令値qをΔqdだけ減算する。容量指令値qは油圧回生モータ23の容量を制御する電子制御レギュレータ36への指令電流値であり、qはゼロからqmaxの値を取り、q=0は容量ゼロを意味する。スタンバイ状態が続いている場合にはq=0の状態が続いているので、S18においてqは負の値となり、S19にて再度qの最小値であるq=0に戻される。以上で処理20が終了し、制御指令値計算ルーチンS6に戻り、制御指令値計算ルーチンS6の処理を終了する。
主処理に戻り、回生係数計算ルーチンS7に移行する。回生係数計算ルーチンS7では、図12に示すように、S20にて、S1にて取得したエンジン11の燃料噴射量Fと判定値Fminを比較する。判定値Fminは、スタンバイ状態における燃料噴射量Fよりも小さく設定されており、スタンバイ状態においてはF>Fminとなる。したがって、ここではS21にて回生係数βをΔβiだけ加算する。スタンバイ状態が続いている場合、既に回生係数βは最大値の1になっているため、S22にてβ>1となり、S23にて再度β=1に戻され、回生係数計算ルーチンS7の処理を終了する。ここで、回生係数βについて説明する。油圧回生モータ23によって油圧動力が回生されることによって発生する駆動トルクが、油圧ポンプ12a、12b、および、パイロットポンプ13の吸収トルクの総和を超えると、エンジン11は油圧回生モータ22によって駆動されることになり、過回転(オーバーラン)状態になる。このエンジン11の過回転を防ぐために、油圧回生モータ23に導かれる作動油の流量を減量させるための係数である。エンジン11が過回転状態になっていない場合にはβ=1として、油圧回生モータ23によって回生することのできる動力は全て回生し、エンジン11が過回転状態になった場合には、過回転状態が解消するまでβを減算し、油圧回生モータ23の回生動力を減少させる。具体的には、回生制限弁24a,24b,24cの流量比をβに応じて調整し、油圧回生モータ23への作動油の流量を調整する。
主処理に戻り、制御指令値更新(出力)ルーチンS8に移行する。ここでは、図12のS24にて、S6にて計算された回生制限弁24a,24b,24cの開度指令値Ca、Cb、Ccに対して、S7にて計算された回生係数βを乗じた新しい指令電流値を計算し、回生制限弁24a、24b、24cに出力している電流値を新しい指令値(β×Ca=β×Cb=β×Cc=0)に更新する。また、油圧回生モータ23の電子制御レギュレータ36に出力している指令電流値についても新しい指令値(q=0)に更新し、制御指令値更新(出力)ルーチンS8の処理を終了する。
以上で一連の主処理が終了し、再度、主処理が繰り返し行われる。なお、油圧ショベル1には、図2に示すブームシリンダ4a、アームシリンダ5a以外にも、バケットシリンダ6a、旋回モータ(図示せず)、走行モータ(図示せず)といった油圧アクチュエータも存在するが、それらの油圧アクチュエータの動作が上述した主処理に影響を与えることは無い。したがって、ブームシリンダ4a、アームシリンダ5aが操作されていない状態であれば、主処理は上述したスタンバイ状態と同様に作動する。
次に、レバー15aをB側に単独操作する場合について説明する。レバー15aによってパイロット弁16aをB側に操作した時は、流量制御弁25の右側、副流量制御弁27の左側が高圧となり、流量制御弁25のスプールが左側に、副流量制御弁27のスプールが右側に移動する。すると、油圧ポンプ12a、12bとブームシリンダ4aのBポートが接続し、ブームシリンダ4aは伸長動作を行い、ブームシリンダ4aのAポートから排出された作動油は流量制御弁25および副流量制御弁27を通過して作動油タンク18に戻る。この時においても、コントローラ10にて動作している制御プログラムでは、図3に示す主処理が行われている。
主処理では、S1にてエンジン11の燃料噴射量F、S2にて圧力Ppa、P1a、P2a、P3a、Ppb、P1b、P2b、P3b、Ppc、P1c、P2c、P3cを取得し、動力計算ルーチンS3にて各油圧アクチュエータの動力回生油路22a,22b,22cを流れる作動油の油圧動力を計算する。
動力計算ルーチンS3では、動力回生油路22a、22b、22cの流量Qa、Qb、Qcが計算される。ブームシリンダ4aの伸張動作においては、副流量制御弁27から、動力回生迂回油路35a、回生制限弁24a、動力回生油路22a、第2絞り弁34aを通過して、ブームシリンダ4aのBポートに作動油が供給される。したがって、第3圧力計32aと第2圧力計31aには差圧が発生し、流れの方向からQa<0となる。一方、Qb、Qcについてはゼロのままである。したがって、S10において計算される油圧動力は、La<0、Lb=Lc=0となり、処理を終了する。
次の動作判定ルーチンS4では、各油圧アクチュエータのパイロット圧Ppa、Ppb、Ppcから動作している油圧アクチュエータを判定するが、ここではPpa=Ppb=Ppc=0であり、Flag1=1となり、処理を終了する。
次の回生アクチュエータ選択ルーチンS5では、Flag1=1なので処理11を行い、Flag2=0として処理を終了する。
以降は、上述したスタンバイ状態と全く同じ処理となり、制御指令値更新(出力)ルーチンS8にて、回生制限弁24a、24b、24cに出力している電流値を新しい指令値(β×Ca=β×Cb=β×Cc=0のまま保持)に更新する。また、油圧回生モータ23の電子制御レギュレータ36に出力している電流値についても新しい指令値(q=0のまま保持)に更新し、制御指令値更新(出力)ルーチンS8の処理を終了する。
上述した通り、レバー15aをB側に単独操作する場合、回生制限弁24aは終始回生OFF位置を保持することになり、ブームシリンダ4aの伸張動作には何ら影響を与えない。
次にレバー15aをA側に単独操作する場合について説明する。レバー15aをA側に操作すると、流量制御弁25の左側、副流量制御弁27の右側の圧力が上がり、流量制御弁25のスプールが右側に、副流量制御弁27のスプールが左側に移動する。すると、各スプールの油圧ポンプ12a、12bとブームシリンダ4aのAポートを接続する油路が開き、ブームシリンダ4aは収縮動作を行い、ブームシリンダ4aのBポートから作動油が排出される。この時においても、コントローラ10にて動作している制御プログラムでは、図3に示す主処理が行われている。
主処理では、S1にてエンジン11の燃料噴射量F、S2にて圧力Ppa、P1a、P2a、P3a、Ppb、P1b、P2b、P3b、Ppc、P1c、P2c、P3cを取得し、動力計算ルーチンS3にて各油圧アクチュエータの動力回生油路22a、22b、22cを流れる作動油の油圧動力を計算する。
動力計算ルーチンS3では、動力回生油路22a、22b、22cの流量Qa、Qb、Qcが計算される。ブームシリンダ4aから排出され始めた作動油は、作動油排出油路20aから流量制御油路21aと動力回生油路22aに分岐し、第3圧力計32aと第2圧力計31aには差圧が発生し、Qa>0となる。一方、Qb、Qcについてはゼロのままである。したがって、S10において計算される油圧動力は、La>0、Lb=Lc=0となり、処理を終了する。
次の動作判定ルーチンS4では、各油圧アクチュエータのパイロット圧Ppa、Ppb、Ppcから動作している油圧アクチュエータを判定する。レバー15aの操作によりパイロット圧Ppaが上昇した結果、Ppa>Ppminになっているとする。一方、Ppb、Ppcについてはゼロのままなので、Flag1=4となり、処理を終了する。
次の回生アクチュエータ選択ルーチンS5では、Flag1=4なので処理14を行い、Flag2=1として処理を終了する。Flag2=1はブームシリンダ4aの動力回生油路22aを回生対象に選択することを意味する。
次の制御指令値計算ルーチンS6では、Flag2=1なので処理21が選択される。処理21では、回生対象になっていない回生制限弁24b、24cについて、指令電流値β×Cb、β×Ccがゼロになっているかどうかを判定する。ここでは、ブームシリンダ4aの単独動作を行っているので、アームシリンダ5aの回生制限弁24b、24cの開度指令値Cb、Ccはいずれもゼロになっている。したがって、S25、S26の判定はいずれもNoであり、Ca制御ルーチンS41が実行される。Ca制御ルーチンS26では、図7に示す通り、まずS27にて回生制限弁24aの目標開度指令値Catを計算する。ここで、目標開度指令値Catは次式にて計算される。
Cat=αa×Cmax×Ppa÷Ppmax (式1)
そして、目標開度指令値Catより開度指令値Caが小さい場合、S28にてCaをΔCaiだけ加算し、目標開度指令値Catより開度指令値Caが大きい場合、S29にてCaをΔCadだけ減算する。こうして、開度指令値Caを目標開度指令値Catに一致させるようにする。なお、開度指令値Caがゼロを下回った場合にはCa=0に、CaがCmaxを上回った場合にはCa=Cmaxに再設定を行う。開度指令値Caに開度係数βを乗じた値が回生制限弁24aへの指令電流値になるが、指令電流値β×Caと、動力回生迂回油路35a、35b、35c側のA−S油路と油圧回生モータ23側のA−M油路が開口面積の関係は、図14に示す通り、指令電流値β×Caが大きくなるほど、動力回生迂回油路35a,35b,35c側のA−S通路の開度が小さくなり、油圧回生モータ23側のA−M通路の開度が大きくなる。また、Cmaxとは最大開度係数であり、開度指令値Cmaxかつ開度係数β=1のとき、A−S油路は完全に遮断され、A−M油路が最大開口となる。また、αaはレバー15aの操作量変化に対する回生制限弁24aにおける分流比変化の感度の表す感度係数である。αaを大きくするとレバー操作量に対する分流比変化が大きくなるので、少しのレバー操作量で大きな回生流量が発生し、回生効率を重視する設定となり、αaを小さくすると微操作性重視の設定となる。また、Ppmaxは、流量制御弁25、26、副流量制御弁27、28のスプールが最大ストロークになる時のパイロット圧で、パイロットリリーフ弁17の設定圧よりも若干低めの圧力に設定されている。したがって、式1は、開度指令値Caをパイロット圧Ppaに比例して大きくし、その感度を感度係数αaによって決定するという意図を持つ。なお、αaの設定次第では、開度指令値Caが最大開度指令値Cmaxを超えるので、その場合にはCa=Cmaxとする。
次に、油圧回生モータ23の容量指令値qを決定する。まず、図7のS42にてP1a、P2aの圧力を比較する。P1a<P2aがNoの時、S30にて容量指令値qをΔqdだけ減算し、P1a<P2aがYesの時、S31にて容量指令値qをΔqiだけ加算する。容量指令値qを大きくすると、油圧回生モータ23に吸収される流量が大きくなるので、動力回生油路22aの流量が大きくなり、第2絞り弁34aにおける圧力降下が大きくなるため、P2aの値は小さくなる。つまり、容量指令値qによってP2aが変化する作用を利用して、S30、S31での処理によって、P1aとP2aを同圧になる方向に、容量指令値qの大きさを調整する制御となっている。なお、ここでは、ブームシリンダ4aの動力回生油路22aが回生対象として選択されているので、動力回生油路22aに関わる圧力P1a、P2aによって油圧回生モータ23の容量を制御する。以上で処理21を終了し、制御指令値計算ルーチンS6に戻り、制御指令値計算ルーチンS6の処理を終了する。
次の回生係数計算ルーチンS7では、図12のS20にて、S1にて取得したエンジン11の燃料噴射量Fと判定値Fminを比較する。F<FminがNoの場合は、S21にて回生係数βをΔβiだけ加算する。ここでは、油圧ポンプ12a、12b、および、パイロットポンプ13の吸収トルクの総和が、油圧回生モータ23の駆動トルクを上回っている状態、すなわち、回転速度を維持するために、エンジン11にて所定の駆動トルクを生成している状態である。この場合、油圧回生モータ23が生成する駆動トルクを大きくすることで、エンジン11に求められる駆動トルクを減少させることができる。回生係数βを増加させることは、制御指令値更新(出力)ルーチンS8において、回生制限弁24aへの指令電流値β×Caを増加させることになるので、回生制限弁24aのA−S通路の開度を減少させ、A−M通路への分流比率を増大させることを意味する。すなわち、回生係数βを増加させることで、油圧回生モータ23の吸収流量を増加させ、油圧回生モータ23によってより大きな駆動トルクを生成するようになる。当然、既に回生係数βが最大値1である場合には、S23にてβ=1に戻す処理が行われるので、回生制限弁24aへの指令電流値β×Caが、制御指令値計算ルーチンS6にて決定した開度指令値Caを越えることは無い。一方、F<FminがYesの場合は、S31にて回生係数βをΔβdだけ減算する。この場合、油圧回生モータ23の生成する駆動トルクが、油圧ポンプ12a、12b、および、パイロットポンプ13の吸収トルクの総和と同等、あるいは上回っている状態、すなわち、エンジン11による駆動トルクが、エンジン11自体の回転速度を維持するために必要な最小限度のトルクを下回っている状態である。この場合、油圧回生モータ23の生成する駆動トルクをより減らすように、すなわち、回生係数βを減少させるように制御している。当然、既に回生を行っていない場合にはβは最小値0になっているため、S32にてβ=0に戻す処理が行われる。ここでは、これらの制御によって、油圧回生モータ23による回生動力を最大限に利用しつつ、過度な動力回生によるエンジン11が過回転(オーバーラン)を防いでいる。以上で回生係数計算ルーチンS7の処理は終了する。
次の制御指令値更新(出力)ルーチンS8では、図12のS20にて、S6にて計算された回生制限弁24a,24b,24cの開度指令値Ca、Cb、Ccに対して、S7にて計算された回生係数βを乗じた新しい指令値(電流値)を計算し、回生制限弁24a、24b、24cに出力している指令電流値を新しい指令値βCa、βCb=βCc=0に更新する。また、油圧回生モータ23の電子制御レギュレータ36に出力している電流値についても新しい指令値(q=0)に更新し、制御指令値更新(出力)ルーチンS8の処理を終了する。
上述した通り、レバー15aをA側に単独操作する場合については、ブームシリンダ4aのBポートから排出された作動油の油圧動力が油圧回生モータ23に導かれ、油圧動力を回生する。このとき油圧回生モータ23と動力回生迂回油路35a(副流量制御弁27)の分流比率は回生制限弁24aの指令電流値β×Caによって決定されるが、開度指令値Caはレバー15aの操作量に応じて決定されるため、レバー15aの操作量が小さい領域では、油圧回生モータ23より副流量制御弁27の流量比率を大きくすることで良好な微操作性を確保し、レバー15aの操作量が大きい領域では、大きな回生動力を得ることができる。さらに、油圧回生モータ23によって生成させる駆動トルクが、当該油圧システム(油圧ポンプ12a、12b、パイロットポンプ)の吸収トルクを上回った場合、回生係数βによって油圧回生モータ23への分流比率を減少させることで、エンジン11の過回転(オーバーラン)を防ぐことができる。また、P1aとP2aを同圧にするように油圧回生モータ23の容量qを制御するので、回生制限弁24aの開度(指令電流値β×Ca)によらず、常に流量制御油路21aと動力回生油路22aの流量比が一定に保たれる。そして、流量制御油路21aの流量は、ブームシリンダ4aの排出作動油の圧力とレバー15aの操作量によって決まり、動力回生油路22aの流量は流量制御油路21aに対して一定比率に制御させるので、結果的に、レバー15aの操作量によってブームシリンダ4aの排出作動油の流量、すなわち、ブームシリンダ4aの速度が決定されることになる。また、アームシリンダ5aは伸縮両方向の動作において油圧回生モータ23による動力回生が行える構成になっているものの、単独動作における作動についてはブームシリンダ4aの収縮動作における作動と同様なので、説明を省略する。
次に、ブームシリンダ4aとアームシリンダ5aの複合動作について、ブームシリンダ4aとアームシリンダ5aが共に収縮動作を行う場合を例に説明する。ここでは、先にレバー15aの操作が行われており、動力回生油路22aからの回生が行われている状態からレバー15bの操作を開始した場合と、逆に、レバー15bの操作が先で、動力回生油路22bからの回生が行われている状態からレバー15a操作が行われた場合について、分けて説明を行う。なお、レバー15bは無操作状態から操作を行うこととし、アームシリンダ5aの目標回生動力B(後述)の方が大きい場合を想定する。
まず、先にレバー15aの操作が行われており、動力回生油路22aからの回生が行われている状態からレバー15bの操作を開始した場合について説明する。この時においても、コントローラ10にて動作している制御プログラムでは、図3に示す主処理が行われており、S1〜S8の処理によって、回生制限弁24aの指令電流値β×Ca、油圧回生モータ23の容量指令値qが、いずれもゼロでない状態に制御されているとする。
ここで、レバー15bによってパイロット弁16bがA側に操作されると、図3の動作判定ルーチンS4にて、Flag1=6に決定される。そして、次の図4の回生アクチュエータ選択ルーチンで処理16が選択され、処理16のS33において、動力回生油路22a、22bを流れる油圧動力のうち、レバー15a、15bの操作量や、感度係数αa、αbを考慮して、実際に回生を行おうとしている目標回生動力A、Bを計算する。目標回生動力A、Bの計算式は式2、式3の通りである。
A=La×αa×Ppa÷Ppmax (式2)
B=Lb×αb×Ppb÷Ppmax (式3)
S34にて、A、Bの大小関係を比較する。ここでは、アームシリンダ5aの目標回生動力Bの方が大きい場合を想定しているので、Flag2=2に設定される。次の制御指令値計算ルーチンS6では、Flag2=2なので図5の処理22が選択される。処理22では、図6に示すように、S35にて回生制限弁24cの指令電流値β×Ccについて判定を行う。ここではレバー15bを無操作状態から操作したことを想定しているので、開度指令値Ccはゼロであり、S35の判定はNoである。次に、S36にて回生制限弁24aの指令電流値β×Caについて判定を行う。レバー15bの操作開始時は前段の指令値が残っているので、β×Ca>0の判定はYesであり、Ca減算ルーチンS37が実行される。Ca減算ルーチンS37では、図10に示すようにS38にて開度指令値CaからΔCadを減算する。また、動力回生油路22aに関連するP1a、P2aを同圧になるように油圧回生モータ23の容量指令値qを調整し、処理を終了する。Ca減算ルーチンS37の処理が終了すると、処理22は終了し、主処理における次の回生係数計算ルーチンS7に移る。回生係数計算ルーチンS7での処理は状況に応じて変化するが、ここでは依然としてβがゼロでない数値をとっているとする。こうして、次の制御指令値更新(出力)ルーチンS8が実行されるが、上述した通り、レバー15bによってアームシリンダ5aの動作が開始していても、先に回生を行っていたブームシリンダ4aの回生制限弁24aの指令電流値β×Caが正の値をとっている限り、アームシリンダ5aの回生制限弁24bの開度指令値Cbはゼロのまま更新されない。そして、回生制限弁24aの指令電流値β×Caがゼロになるまで主処理が繰り返され、その間、油圧回生モータ23の容量指令値qはブームシリンダ4aの流量制御油路21aと動力回生油路22aの流量比率を一定に保つように(P1aとP2aを同圧に保つように)制御される。
こうして、回生制限弁24aの指令電流値β×Caがゼロになると、処理22におけるS36の判定がNoとなり、Cb制御ルーチンS39が実行される。Cb制御ルーチンS39では、S40にて回生制限弁24bの目標開度指令値Cbtが計算され、開度指令値Cbを目標開度指令値Cbtに一致させるようにする。また、油圧回生モータ23の容量指令値qについても、アームシリンダ5aの動力回生油路22bに関わるP1b、P2bを同圧にするように制御される。次の回生係数計算ルーチンS7では、前段の回生制限弁24aの指令電流値β×Caがゼロになるまでの過程で、油圧回生モータ23の生成する駆動トルクが減少するため、エンジン11に要求される駆動トルクが増加し、その結果F<FminがNoの状態が続くことから、β=1で保持されていることを想定する。そして、制御指令値更新(出力)ルーチンS8にて、アームシリンダ5aの動力回生油路22bと油圧回生モータ23を接続する回生制限弁24bの指令電流値β×Cbが出力され、油圧回生モータ23の容量指令値qは流量制御油路21bと動力回生油路22bの流量比率を一定に保つように(P1bとP2bを同圧に保つように)制御された容量指令値qが出力される。このように、ブームシリンダ4aとアームシリンダ5aの複合動作で、かつ、ブームシリンダ4aの動力回生が行われている状態から、アームシリンダ5aからの動力回生への切り換わる動作について説明したが、この例において、回生動力の小さな油圧アクチュエータから大きな油圧アクチュエータへ回生対象が切り換わること、そして、切り換わりの際に油圧アクチュエータへの作動油給排油路が干渉しないことが分かる。
次に、レバー15bの操作が先で、アームシリンダ5aの動力回生油路22bからの回生が行われている状態からレバー15a操作が行われた場合についてについて説明する。この時においても、コントローラ10にて動作している制御プログラムでは、図3に示す主処理が行われており、S1〜S8の処理によって、回生制限弁24bの指令電流値β×Cb、油圧回生モータ23の容量指令値qが、いずれもゼロでない状態に制御されているとする。このとき、動作判定ルーチンにてFlag1=3に設定され、回生アクチュエータ選択ルーチンでは処理13が選択されている。そして、処理13ではFlag2=2に設定されている。
ここで、レバー15aによってパイロット弁16aがA側に操作されると、動作判定ルーチンS4にて、Flag1=6に決定される。そして、次の回生アクチュエータ選択ルーチンで処理16が実行される。処理16のS33において、動力回生油路22a、22bを流れる油圧動力のうち、レバー15a、15bの操作量や、感度係数αa、αbを考慮して、実際に回生を行おうとしている目標回生動力A、Bを計算し、S34にてA、Bの大小関係を比較する。ここでは、アームシリンダ5aの目標回生動力Bの方が大きい場合を想定しているので、Flag2=2に設定される。したがって、レバー15aの操作が行われる場合とFlag2に変更が無いため、レバー15aの操作が行われても、アームシリンダ5aの回生動作に変化は生じない。
ブームシリンダ4a、アームシリンダ5aの複合動作は、上述した例以外にも存在するが、いずれも上述した例の組み合せで説明可能である。
このように構成した第1の実施形態によれば、動力の回生が可能な複数の油圧アクチュエータ、すなわちブームシリンダ4a、アームシリンダ5aに対して1つの油圧回生モータ23で動力回生を行うため、ブームシリンダ4a,アームシリンダ5a毎に油圧回生モータを配置する構成と比較して、車体に機器を搭載する上でのレイアウトの制約の増大や、機器コストの増大を最小限に抑えることができる。また、ブームシリンダ4a、アームシリンダ5aについて推定した排出作動油の油圧動力を基に最も大きな回生動力が得られる油圧アクチュエータを回生対象に選択することから優れた再生効率を確保することができる。したがって、さらなる省エネを実現させることができる。
また、第1実施形態によれば、コントローラ10は、基本回路のそれぞれに含まれる動力回生油路22a,22b,22cの油圧動力の大きさに、ブームシリンダ4a、アームシリンダ5aをそれぞれ操作するレバー15a,15bの操作量を考慮した重み付けを行った指標に基づいて、回生を行う油圧アクチュエータを決定する処理を行うことから、ブームシリンダ4a、アームシリンダ5aについて推定した排出作動油の油圧動力と、ブームシリンダ4a、アームシリンダ5a毎の操作指令値とから、例えば、ブームシリンダ4a、アームシリンダ5a毎に微操作性と回生効率の優先度を考慮して最適な油圧アクチュエータを油圧回生モータ23に接続する等、様々な目的に応じた制御を実現できる。
また、第1実施形態によれば、回転動力生成手段を、回転速度を一定に保持するように制御される内燃機関による原動機、すなわちエンジン11にて構成し、コントローラ10は、内燃機関の燃料噴射量が予め設定される所定量を下回ったときに、作動油を油圧回生モータ23に導く回生制限弁24a,24b,24cのうちの該当するものを制御して、油圧回生モータ23へ流入する流量の一部を動力回生迂回油路22a,22b,22cの該当するものに迂回させる処理を行うことから、油圧回生モータ23による回生動力が大きくなり、油圧ポンプ12a,12bの吸収トルクに油圧回生モータ23の生成トルクが近づいてきた場合に、一定の回転速度を保持するために必要となるエンジン11の出力トルクが減少し、燃料噴射量が減少することを利用して、燃料噴射量が所定量を下回った場合に、回生制限弁24a,24b,24cの該当するものによって油圧回生モータ23に吸収される流量を減らすことで油圧回生モータ23の生成トルクを減少させ、油圧ポンプ12a,12bの吸収トルクを上回らないようにすることができ、その結果、エンジン11の過回転(オーバーラン)を防止して、エンジン11の破損、寿命の短縮を防ぐことができる。
なお、目標回生動力あるいは開度指令値の計算において、それらが操作パイロット圧に比例する方式について説明したが、操作パイロット圧のべき乗に比例するなど、非線形な重み付けを行うようにしてもよい。
次に、本発明の第2実施形態について、図15に示す制御フローチャートを基に説明する。第2実施形態は、第1実施形態とほぼ同一に構成されているものの、第1実施形態における主処理のS1に替えてエンジン11の実回転速度Sを取得するS42、回生係数計算ルーチンS7に替えてS43を採用した点において異なる。なお、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付け、その説明を省略する。
第2実施形態においては、主処理開始後、S42にてエンジン11の実回転速度を取得する。そして、回生係数計算ルーチンS43では、S42にて取得したエンジン11の実回転速度Sとエンジン11の目標回転速度Stとの差S−Stと、判定値ΔSとの大小関係を比較する。ΔSは許容できるエンジン11の過回転量(目標回転速度に対する実回転速度の上回り量の許容値)である。S44にて、S−St>ΔSがNoであれば、目標回転速度Stよりも実回転速度Sが低いので、S45にて回生係数βをΔβiだけ加算し、油圧回生モータ23の動力回生量を増やし、エンジン11をアシストする駆動トルクを増大する。一方、S44がYesであれば、目標回転速度Stよりも実回転速度Sが高くなり、その過回転量が許容値ΔSを上回っているので、S46にて回生係数βをΔβdだけ減算し、油圧回生モータ23の動力回生量を減らし、エンジン11をアシストする駆動トルクを現ずることで、エンジン11の過回転量を許容値以下に抑えることが可能であり、以上のように構成した第2実施形態においても、第1実施形態と同様の機能を果たすことができる。