JP2013124591A - 船外機およびそれを備えた船舶 - Google Patents

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【課題】燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置と、その燃料噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプとを有するV型の4サイクルエンジンを備えた船外機を小型化する。
【解決手段】エンジン8は、後斜め左向きに延びる左バンク28Lと、後斜め右向きに延びる右バンク28Rとを備えている。高圧燃料ポンプ74は、右バンク28Rの吸気カム軸43によって駆動されるように、右バンク28Rのシリンダ軸線L2よりも船外機幅方向の内方に取り付けられている。
【選択図】図6

Description

本発明は、船外機およびそれを備えた船舶に関し、特に、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置と、その燃料噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプとを有するV型の4サイクルエンジンを備えた船外機に関する。
従来から、船外機のエンジンとして、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射装置(以下、ポート内噴射装置という)と、そのポート内噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプとを有する4サイクルエンジンがよく用いられている。ここで、吸気ポート内の圧力は燃焼室内の圧力よりも低いため、ポート内噴射装置の噴射圧力は比較的低くても足りる。そのため、ポート内噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプは、吐出圧力が低くても足りる。当該燃料ポンプとして、小型のポンプを用いることができ、また、電動ポンプを用いることができる。したがって、上記エンジンでは、燃料ポンプのレイアウトの自由度が高い。
近年、燃費の向上および排ガスの浄化性能の向上等を目的として、船外機のエンジンとして、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置(以下、筒内噴射装置という)を有する4サイクルエンジンを採用することが検討されている。しかし、燃焼室内の圧力は吸気ポート内の圧力よりも高いため、筒内噴射装置では噴射圧力を大きく設定する必要がある。そのため、筒内噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプとして、吐出圧力の高いポンプが必要である。このような燃料ポンプとして、エンジンのカム軸によって駆動される比較的大型のポンプを好適に用いることができる。ところが、そのような燃料ポンプは、カム軸の近傍に配置しなければならず、また、大きな設置スペースを必要とするため、レイアウトの自由度が低いという課題がある。
特許文献1には、船外機の大型化を抑制することを目的として、筒内噴射装置および燃料レールの配置に工夫を施すことが記載されている。特許文献1に記載された船外機のエンジンは、いわゆるV型エンジンであり、後斜め左向きに延びる左バンクと、後斜め右向きに延びる右バンクとを有している。左バンクのシリンダヘッドには、排気ポートと、排気ポートよりも左方に位置する吸気ポートとが形成されている。言い換えると、排気ポートは船外機の幅方向の内方に配置され、吸気ポートは外方に配置されている。筒内噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプは、左バンクの吸気側カバーに取り付けられている。この燃料ポンプは、左バンクの吸気カム軸に摺接しており、この吸気カム軸によって駆動される。
特開2002−138925号公報
ところで、V型エンジンを備えた船外機では、左バンクおよび右バンクの船外機幅方向の最外部に相当する部分は、最も横幅が広い部分となる。船外機の横幅の増大を抑制する観点からは、左バンクおよび右バンクの最外部に相当する部分をできるだけコンパクトにすることが好ましい。しかし、上記特許文献1に記載された船外機では、左バンクの最外部に相当する部分に燃料ポンプが取り付けられていた。そのため、船外機の小型化に関して、更なる改善の余地があるものであった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置と、その燃料噴射装置に向かって燃料を供給する燃料ポンプとを有するV型の4サイクルエンジンを備えた船外機を小型化することにある。
本発明に係る船外機は、鉛直方向に延びるクランク軸と、後斜め左向きに延びるシリンダを有し且つ後斜め左向きに延びる左バンクと、後斜め右向きに延びるシリンダを有し且つ後斜め右向きに延びる右バンクと、を備えたV型の4サイクルエンジンを備える。前記左バンクおよび前記右バンクのそれぞれは、前記シリンダ内に形成された燃焼室と、前記燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置と、前記シリンダの軸線よりも船外機幅方向の内方に形成され且つ前記燃焼室と連通可能な第1ポートと、前記シリンダの軸線よりも船外機幅方向の外方に形成され且つ前記燃焼室と連通可能な第2ポートと、前記第1ポートを開閉する第1バルブと、前記第2ポートを開閉する第2バルブと、鉛直方向に延び且つ前記シリンダの軸線よりも船外機幅方向の内方に配置され、前記クランク軸と共に回転することによって前記第1バルブを駆動する第1カム軸と、鉛直方向に延び且つ前記シリンダの軸線よりも前記幅方向の外方に配置され、前記クランク軸と共に回転することによって前記第2バルブを駆動する第2カム軸と、を有している。前記船外機は、前記左バンクおよび前記右バンクのうちの一方のバンクの前記第1カム軸によって駆動されるように、前記一方のバンクの前記シリンダの軸線よりも船外機幅方向の内方に取り付けられ、前記燃料噴射装置に向かって燃料を供給する燃料ポンプを備えている。
なお、ここでいう「鉛直方向」には、厳密な意味での鉛直方向に限らず、鉛直方向から若干傾いた方向も含まれる。すなわち、実質的な鉛直方向も含まれる。
上記船外機のエンジンはV型エンジンであり、左バンクおよび右バンクの船外機幅方向の最外部に相当する部分は、船外機において最も横幅が広い部分となる。燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプは、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプに比べると、大型化する傾向がある。しかし、上記船外機によれば、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプは、一方のバンクのシリンダ軸線よりも船外機幅方向の内方に取り付けられており、当該燃料ポンプは、シリンダ軸線の船外機幅方向の内方に位置する第1カム軸によって駆動される。そのため、燃焼室内に燃料を直接噴射することによってもたらされる効果、すなわち燃費および排ガス浄化性能の向上等の効果を得ながら、船外機の横幅の増大を抑制することができる。
本発明の一態様によれば、前記左バンクのシリンダおよび前記右バンクのシリンダのうち、いずれか一方は他方に対して上方にオフセットしている。前記燃料ポンプは、上方にオフセットしている方のシリンダを有するバンクに取り付けられている。
上方にオフセットしているシリンダを有するバンクは、上方にオフセットしている分、鉛直方向にスペースの余裕がある。そのため、エンジンの鉛直方向の長さを大型化しなくても、燃料ポンプを設置することができる。
本発明の他の一態様によれば、前記エンジンの上方は、上方に行くほど先細り状のカウリングによって覆われている。前記左バンクおよび前記右バンクのシリンダは、それぞれ鉛直方向に沿って複数設けられている。前記燃料ポンプは、上方にオフセットしている方のバンクの最も上のシリンダの上端と最も下のシリンダの下端との間の中間位置よりも、下方に配置されている。
このことにより、カウリング内の下部は上部に比べてスペースの制約が少ない。そのため、カウリング内の下方のスペースを有効活用して、燃料ポンプを配置することができる。
本発明の他の一態様によれば、前記燃料ポンプは、上方にオフセットしている方のバンクの最も下のシリンダの軸線よりも下方に配置されている。
このことにより、カウリング内の下方のスペースを最大限有効に活用して、燃料ポンプを配置することができる。
本発明の他の一態様によれば、前記燃料ポンプを駆動する前記第1カム軸は、棒状のカム軸本体と、前記カム軸本体から半径方向の外方に突出し、前記第1バルブを駆動する複数のカムとを有している。前記カム軸本体における最も下のカムの下方の部分に、前記燃料ポンプを駆動するポンプ駆動用カムが嵌め込まれている。
このように、カム軸本体における最も下のカムの下方の部分にポンプ駆動用カムを嵌め込むことにより、カム軸本体と別体のポンプ駆動用カムを容易に取り付けることができる。
本発明の他の一態様によれば、前記他方のバンクには、前記左バンクおよび前記右バンクの各燃焼室に供給される空気を一時的に蓄えるサージタンクが設けられている。
このことにより、燃料ポンプおよびサージタンクを一方のバンクに集中的に配置する場合に比べて、エンジンの後部の大型化を抑制することができる。
本発明の他の一態様によれば、少なくとも前記燃料ポンプが設けられた方のバンクは、前記第1ポートおよび前記第2ポートが形成されたシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの先端部に固定された樹脂製のヘッドカバーとを有している。前記燃料ポンプは、前記樹脂製のヘッドカバーに取り付けられている。
樹脂製のヘッドカバーは金属製のヘッドカバーよりも成形が容易である。そのため、ヘッドカバーに、燃料ポンプを取り付けるための取付部等を容易に形成することができる。燃料ポンプをヘッドカバーに容易に取り付けることができる。
本発明の他の一態様によれば、前記ヘッドカバーの内部には、カムキャップが配置されており、前記燃料ポンプは、前記カムキャップを介して前記ヘッドカバーに固定されている。
このことにより、燃料ポンプをヘッドカバーに安定して取り付けることができる。
本発明の他の一態様によれば、前記第1ポート、前記第2ポートは、それぞれ前記燃焼室に空気を吸入する吸気ポート、前記燃焼室から排ガスを排出する排気ポートである。前記燃料噴射装置は、前記吸気ポートの側方に配置されている。
このことにより、燃料ポンプと燃料噴射装置との距離を短くすることができる。そのため、燃料ポンプと燃料噴射装置とを接続する燃料配管を短くすることができる。
本発明の他の一態様によれば、前記燃料噴射装置は、前記シリンダの軸線よりも船外機幅方向の内方に配置されている。
このことにより、燃料ポンプと燃料噴射装置との距離を短くすることができる。そのため、燃料ポンプと燃料噴射装置とを接続する燃料配管を短くすることができる。
本発明に係る船舶は、前記船外機を備えたものである。
本発明によれば、V型の4サイクルエンジンを有しながらコンパクトな船外機を備えた船舶を提供することができる。
本発明に係る船舶は、前記船外機を複数備え、前記複数の船外機は、各船外機の幅方向に並べられているものである。
前述の通り、前記船外機によれば、横幅の増大が抑制される。したがって、前記船外機を幅方向に並べて使用することにより、横幅の増大を抑制する効果が顕著に発揮される。
以上のように、本発明によれば、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置と、その燃料噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプとを有するV型の4サイクルエンジンを備えた船外機を小型化することができる。
船体の一部および船外機の側面図である。 船外機の内部構成を概念的に示す平面図である。 船外機の主要部の左側面図である。 船外機の主要部の右側面図である。 エンジンの背面図である。 エンジンの一部の水平断面図である。 シリンダのオフセットを説明する概念図である。 エンジンの一部の水平断面図である。 サージタンク等の鉛直断面図である。 左バンクをシリンダ軸線に沿って斜め後方から見た図である。 排気マニホールドおよび排気管等の左側面図である。 排気マニホールドおよび排気管の一部を破断して示すエンジンの右側面図である。 排気管の正面図である。 高圧燃料ポンプの水平断面図である。 高圧燃料ポンプの鉛直断面図である。 左バンクおよび右バンクの一部の鉛直断面図である。 高圧燃料ポンプ、燃料供給レール、および燃料噴射装置等を示す部分背面図である。 燃料配管および燃料供給レール等の斜視図である。 右バンクのヘッドカバーの裏面図である。 プレートおよび右バンクのヘッドカバーの裏面図である。 図20のA1−A1線に沿った右バンクの断面図である。 左バンクおよび右バンクのヘッドカバー等の斜視図である。 冷却系の構成を示すブロック図である。 シリンダブロックおよびシリンダヘッドのウォータジャケットの断面図である。 シリンダブロックの表面図である。 シリンダヘッドの裏面図である。 ガスケットの表面図である。 シリンダヘッドの図26のA2−A2線断面図である。 シリンダヘッドの図26のA3−A3線断面図である。 各ウォータジャケットにおける冷却水の流れを示す図である。 複数の船外機を備えた船舶の模式的な平面図である。
(第1実施形態)
<船外機の全体構成>
図1に示すように、船舶2は、船体3と、船体3の後部に取り付けられた船外機1とを備えている。以下の説明では、特に断らない限り、前、後、左、右は、それぞれ船舶2の進行方向に対して前、後、左、右を言うものとする。図中の符号F、Re、L、R(図2参照)は、それぞれ前、後、左、右を表すものとする。また、符号U、Dは、それぞれ上、下を意味するものとする。船外機1は、船体3の後部に固定されたクランプブラケット4と、チルト軸5を介してクランプブラケット4に揺動可能に連結されたスイベルブラケット6と、スイベルブラケット6に固定された船外機本体7とを備えている。
スイベルブラケット6の内部には、鉛直方向に延びる図示しないスイベル軸が設けられている。船外機本体7は、このスイベル軸まわりに回転可能である。船外機本体7をスイベル軸まわりに回転させることにより、船外機本体7の向きを斜め左向きまたは斜め右向きに変更することができる。船外機本体7は、スイベル軸まわりに左右に揺動可能である。また、船外機本体7は、スイベルブラケット6がチルト軸5まわりに揺動することにより、スイベルブラケット6と共にチルト軸5まわりに揺動可能である。このように、船外機本体7は、鉛直軸まわりに揺動可能であると共に、水平軸まわりに揺動可能である。
船外機本体7は、エンジン8と、エンジン8から下方に延びるドライブ軸9と、船外機1の前後進を切り替える切替機構10と、プロペラ軸11と、プロペラ軸11の先端に固定されたプロペラ12とを備えている。エンジン8は、鉛直方向に延びるクランク軸13を備えている。クランク軸13の下端部は、ドライブ軸9の上端部に連結されている。ドライブ軸9の下端部は、切替機構10を介してプロペラ軸11の前端部に連結されている。
船外機1は、エンジン8等を覆うハウジングとして、トップカウル14およびボトムカウル15からなるカウリング16と、カウリング16の下部に接続されたアッパーケース17と、アッパーケース17の下部に接続されたロアケース18とを備えている。エンジン8はカウリング16の内部に収容されている。なお、カウリングはエンジンカバーとも表現される。
エンジン8が駆動するとクランク軸13が回転し、クランク軸13の回転に伴ってドライブ軸9が回転する。ドライブ軸9の回転力は、切替機構10を介してプロペラ軸11に伝達される。プロペラ軸11は、ドライブ軸9の回転に伴って回転する。プロペラ軸11が回転するとプロペラ12が回転し、推進力が発生する。プロペラ軸11およびプロペラ12は両方向に回転可能である。プロペラ軸11およびプロペラ12の回転方向は、切替機構10によって切り替えられる。プロペラ12が一方の方向に回転すると、プロペラ12は前向き(すなわち図1の左向き)の推進力を発生する。プロペラ12が逆の方向に回転すると、プロペラ12は後ろ向き(すなわち図1の右向き)の推進力を発生する。
図2は、カウリング16の内部構成を示す概略平面図である。図3はカウリング16の内部構成を示す概略左側面図、図4は同概略右側面図である。図5は、エンジン8の背面図である。
図2の線L1は、エンジン8の中心線を表す。この中心線L1はクランクシャフト13の中心13a(図6参照)を通過し、前後方向に延びる直線として定義される。この中心線L1は、船外機1の中心線とも表現される。以下の説明において、「船外機幅方向の内方」とは、船外機1の中心線L1に近い方を意味し、「船外機幅方向の外方」とは、船外機1の中心線L1から遠い方を意味するものとする。なお、本実施形態では、船外機幅方向とは、左右方向のことである。
図2に示すように、カウリング16のトップカウル14は、中心線L1に関して略左右対称に形成されている。また、トップカウル14は、前方から後方に向かって、横幅がいったん増加してから減少するような形状に形成されている。トップカウル14は、略卵形の輪郭を有している。ただし、横幅が最大となる部分(以下、最大部という)14wは、前後の中央の位置よりも後方に位置している。最大部14wは、トップカウル14の後端から、トップカウル14の全長の約1/4程度前方に位置している。なお、トップカウル14の後端、全長は、それぞれカウリング16の後端、全長に対応する。
詳細については後述するが、船外機1は、エンジン8に空気を供給する吸気系と、エンジン8の排ガスを排出する排気系と、エンジン8に燃料を供給する燃料供給系と、エンジン8に冷却水を供給する冷却系とを備えている。図5に示すように、吸気系は、内部にスロットルバルブが収容されたスロットルボディ50と、スロットルボディ50から空気が供給されるサージタンク48と、サージタンク48からエンジン8の各燃焼室に空気を分配する吸気マニホールド47とを有している。図3に示すように、排気系は、各燃焼室からの排ガスを合流させる排気マニホールド63と、内部に触媒が収容された排気管120とを備えている。図2に示すように、燃料供給系は、燃料フィルタ19と、ベーパセパレータタンク20と、高圧燃料ポンプ74とを備えている。冷却系は、水ポンプ107(図1参照)と、エンジン8の内部に形成されたウォータジャケット等とによって形成されている。
また、図2に示すように、カウリング16の内部には更に、ヒューズボックス21、ECU(Engine Control Unit)22(図4参照)、オイルフィルタ23、およびスタータモータ24等の他の部品が収容されている。
<エンジンの構成>
エンジン8は、水冷式のV型の多気筒エンジンである。本実施形態では、エンジン8はV型の6気筒エンジンである。ただし、本発明に係るエンジンの気筒数は6に限定される訳ではない。
図6に示すように、エンジン8は、クランクケース27と、後斜め左向きに延びる左バンク28Lと、後斜め右向きに延びる右バンク28Rと、を備えている。左バンク28Lおよび右バンク28Rはそれぞれ、内部にシリンダ32が形成されたシリンダブロック29と、シリンダ32を覆うようにシリンダブロック29に結合されたシリンダヘッド30と、シリンダヘッド30の先端部を覆うヘッドカバー31とを備えている。
図7に模式的に示すように、左バンク28Lおよび右バンク28Rはいずれも、鉛直方向に並ぶ3つのシリンダ32を有している。左バンク28Lのシリンダ32と右バンク28Rのシリンダ32とは、上下に互い違いに配置されている。各バンク28L,28Rの3つのシリンダ32を下から順に、下シリンダ32、中シリンダ32、上シリンダ32と称することとすると、左バンク28Lの下シリンダ32は、右バンク28Rの下シリンダ32よりも低い位置に配置されている。右バンク28Rの上シリンダ32は、左バンク28Lの上シリンダ32よりも高い位置に配置されている。左バンク28Lの中シリンダ32は、右バンク28Rの下シリンダ32よりも高く且つ右バンク28Rの中シリンダ32よりも低い位置に配置されている。左バンク28Lの上シリンダ32は、右バンク28Rの中シリンダ32よりも高く且つ右バンク28Rの上シリンダ32よりも低い位置に配置されている。このように、右バンク28Rのシリンダ32は、左バンク28Lのシリンダ32に対して、距離OSだけ上方にオフセットされている。なお、左右のシリンダ32のオフセットは逆でもよい。すなわち、左バンク28Lのシリンダ32が、右バンク28Rのシリンダ32に対して、距離OSだけ上方にオフセットされていてもよい。
図6に示すように、左バンク28Lと右バンク28Rとは、中心線L1を境として、ほぼ左右対称に配置されている。また、左バンク28Lと右バンク28Rとの前後の位置は、ほぼ同じである。
クランクケース27の内部には、クランク軸13が収容されている。クランク軸13の中心13aは、中心線L1上に位置している。
本実施形態では、シリンダブロック29は一体物で形成されている。ただし、シリンダブロック29は、複数の部品が組み合わせられることによって形成されていてもよい。例えば、シリンダブロック29のうち、クランク軸13を覆う部分と、内部にシリンダ32が形成された部分(言い換えると、いわゆるシリンダボアを形成する部分)とが別体であり、それらがボルト等によって互いに固定されていてもよい。シリンダブロック29は、例えばボルト等によってクランクケース27に固定されている。本実施形態では、シリンダ32は、シリンダブロック29のボア内部の表面に溶射、メッキ等により薄層を形成することにより、シリンダブロック29と一体的に形成されている。ただし、シリンダ32はシリンダブロック29と別体に形成され、シリンダブロック29内に圧入等されていてもよい。シリンダ32内には、ピストン33が摺動自在に配置されている。ピストン33は、コンロッド34を介してクランク軸13に連結されている。
シリンダヘッド30は、シリンダブロック29の後端部に、ボルト41によって結合されている。シリンダヘッド30には、凹部35が形成されている。凹部35とシリンダ32の内壁とピストン33の頂面とにより、燃焼室36が区画されている。図8に示すように、シリンダヘッド30には、燃焼室36に臨む吸気ポート37および排気ポート38が形成されている。また、シリンダヘッド30には、吸気ポート37を開閉する吸気バルブ39と、排気ポート38を開閉する排気バルブ40とが設けられている。吸気ポート37は、シリンダ軸線L2よりも船外機幅方向の内方に形成されている。吸気ポート37の開口端の中心および吸気バルブ39の中心(これらは一致するので、以下、単に吸気ポート37の中心37cという)は、シリンダ軸線L2よりも船外機幅方向の内方に位置している。排気ポート38は、シリンダ軸線L2よりも船外機幅方向の外方に形成されている。排気ポート38の開口端の中心および排気バルブ40の中心(これらの中心は一致するので、以下、単に排気ポート38の中心38cという)は、シリンダ軸線L2よりも船外機幅方向の外方に位置している。
図6に示すように、ヘッドカバー31は、シリンダヘッド30の後端部に、ボルト42により結合されている。
エンジン8は、燃焼室36内に燃料を直接噴射するエンジンである。図8に示すように、シリンダヘッド30には、燃料を噴射する燃料噴射装置60L,60Rが設けられている。平面視において、燃料噴射装置60L,60Rは、左バンク28Lのシリンダヘッド30と、左バンク28Lのシリンダブロック29と、右バンク28Rのシリンダブロック29と、右バンク28Rのシリンダヘッド30との間に配置されている。すなわち、平面視において、燃料噴射装置60L,60Rは、左バンク28Lのシリンダヘッド30と、左バンク28Lのシリンダブロック29と、右バンク28Rのシリンダブロック29と、右バンク28Rのシリンダヘッド30とによって囲まれる領域132に配置されている。
左バンク28Lの燃料噴射装置60Lは、後斜め右向きに配置されている。燃料噴射装置60Lは、左バンク28Lの吸気ポート37の右方に配置され、この吸気ポート37と略平行となるように配置されている。左の燃料噴射装置60Lの少なくとも一部は、中心線L1よりも左方に配置されている。ここでは、燃料噴射装置60Lの全体が中心線L1よりも左方に配置されている。
右バンク28Rの燃料噴射装置60Rは、後斜め左向きに配置されている。燃料噴射装置60Rは、右バンク28Rの吸気ポート37の左方に配置され、この吸気ポート37と略平行となるように配置されている。右の燃料噴射装置60Rの少なくとも一部は、中心線L1よりも右方に配置されている。ここでは、燃料噴射装置60Rの全体が中心線L1よりも右方に配置されている。
シリンダヘッド30には、点火装置として点火プラグ61が設けられている。点火プラグ61は、シリンダ軸線L2に沿ってシリンダヘッド30に挿入され、シリンダヘッド30の中央部分に配置されている。点火プラグ61の点火部分である先端部は、燃焼室36内に配置されている。図6に示すように、ヘッドカバー31には、点火プラグ61のコネクタ62が取り付けられている。図示は省略するが、コネクタ62には電線が接続されている。
図8に示すように、ヘッドカバー31およびシリンダヘッド30の内部には、吸気カム軸43および排気カム軸44が設けられている。吸気カム軸43はシリンダ軸線L2よりも船外機幅方向の内方に配置され、排気カム軸44はシリンダ軸線L2よりも船外機幅方向の外方に配置されている。吸気カム軸43には、吸気バルブ39を駆動する吸気カム45が設けられている。排気カム軸44には、排気バルブ40を駆動する排気カム46が設けられている。図示は省略するが、吸気カム軸43および排気カム軸44は、チェーンまたはベルトによりクランク軸13に連結されている。吸気カム軸43および排気カム軸44は、クランク軸13によって駆動され、クランク軸13と共に回転する。
<吸気系の構成>
図5に示すように、船外機1は、エンジン8に空気を供給する吸気系として、内部にスロットルバルブ49(図9参照)が設けられたスロットルボディ50と、スロットルボディ50に接続されたサージタンク48と、サージタンク48と全吸気ポート37とをつなぐ吸気マニホールド47とを備えている。図8に示すように、吸気マニホールド47は、左右の吸気通路130L,130Rを形成している。なお、図6における符号131は、平面視における両吸気通路130L,130Rの重なり部分の前端を表している。
図9は、スロットルボディ50およびサージタンク48等を後方から見た鉛直断面図である。図9に示すように、スロットルボディ50は、左右方向に延びる略管状に形成された管状部52と、スロットルバルブ49を回転自在に支持する鉛直方向に延びるスロットル軸53とを備えている。スロットルバルブ49は、スロットル軸53まわりに回転することにより、管状部52の流路断面積を変更する。管状部52の流路断面積が大きくなると吸入空気量が増加し、エンジン出力が増加する。逆に、管状部52の流路断面積が小さくなると吸入空気量が減少し、エンジン出力が減少する。図5に示すように、スロットルボディ50は、船外機幅方向の中央に配置されている。スロットルボディ50の一部は、中心線L1を含む鉛直面P1内に位置している。
図9に示すように、スロットルボディ50の右側部分には、ファンネル51が接続されている。ファンネル51は、吸入空気の流れを円滑化する部材であり、右方に向かって広がっている。ファンネル51は右向きに開口している。図5に示すように、ファンネル51は中心線L1よりも右方に配置されている。
図9に示すように、サージタンク48は、スロットルボディ50の左側部分に接続されている。サージタンク48は、エンジン8の吸気の圧力変動を緩和するものである。なお、本実施形態ではスロットルボディ50はサージタンク48に直接接続されているが、スロットルボディ50とサージタンク48との間に、ダクト等の他の部材が介在していてもよいことは勿論である。すなわち、スロットルボディ50とサージタンク48とは、ダクト等を介して間接的に接続されていてもよい。
サージタンク48はいわゆる縦長の形状に形成されており、上下長さが前後長さおよび左右長さのいずれよりも大きくなっている。図5に示すように、サージタンク48の上下長さは、シリンダヘッド30の上下長さと略同一となっている。図6に示すように、サージタンク48の左右長さ48Lは、ヘッドカバー31の左右長さ31Lよりも短くなっている。
図6に示すように、サージタンク48は中心線L1よりも左方に配置されている。サージタンク48は、左バンク28Lのヘッドカバー31の後方に配置されている。サージタンク48には、ボス54が一体的に形成されている。ボス54は、ヘッドカバー31に一体的に形成されたボス55に、ボルト56によって固定されている。このように、サージタンク48の左側部分は、左バンク28Lのヘッドカバー31に固定されている。
サージタンク48は、左バンク28Lのヘッドカバー31と、カウリング16(詳しくは、トップカウル14)との間に配置されている。サージタンク48の後壁48bは、カウリング16の内壁16bと略平行に配置されている。言い換えると、サージタンク48の後壁48bは、カウリング16の形状に倣うように形成されている。これにより、サージタンク48の後壁48bとカウリング16の内壁16bとの間の隙間を小さく抑えることができる。また、サージタンク48の前壁48fは、ヘッドカバー31と略平行に配置されている。言い換えると、サージタンク48の前壁48fは、ヘッドカバー31の形状に倣うように形成されている。これにより、ヘッドカバー31とサージタンク48の前壁48fとの間の隙間を小さく抑えることができる。そのため、カウリング16およびヘッドカバー31との干渉を避けながら、サージタンク48の容積を大きく確保することができる。本実施形態によれば、平面視において、中心線L1とカウリング16と左バンク28Lとに囲まれたスペースに、十分な容積を有するサージタンク48を配置することができる。
図6に示すように水平断面において、サージタンク48の内部は、右方すなわち吸気マニホールド47の方に向かうほど広くなっている。
図9に示すように、サージタンク48に吸入された空気は、概ねサージタンク48内において下方に向かって流れる。サージタンク48内の水平断面の面積、すなわち流路断面積は、下方に向かっていったん増加した後、減少する。サージタンク48の流路断面積は、エンジン8の上側の3つのシリンダと下側の3つのシリンダとの間の位置(言い換えると、エンジン8の上下方向の中央位置)の近傍にて、最大となっている。サージタンク48は、空気の流れを円滑化するために、流路断面積が下方に向かって連続的に変化するような形状に形成されている。ここでは、サージタンク48は流線形状に形成されている。ただし、サージタンク48の具体的形状は特に限定されず、流路断面積が下方に向かってステップ状に変化するような形状に形成することも可能である。また、サージタンク48は、流路断面積が一定の形状に形成されていてもよい。
サージタンク48には、上下に並ぶ6つの流出口48aが形成されている。各流出口48aは、右方に向かって開口している。
サージタンク48には、吸気マニホールド47が接続されている。図8に示すように、吸気マニホールド47は、互いに組み立てられた2つの部材、すなわち上流部47Aおよび下流部47Bの2つの部材からなっている。上流部47Aは、サージタンク48と一体的に形成されている。サージタンク48および上流部47Aは、合成樹脂によって一体的に形成されている。ただし、サージタンク48および上流部48Aの材料は特に限定されず、アルミニウム合金等の金属によって形成されていてもよい。下流部47Bは金属製であり、ここではアルミニウム合金によって形成されている。ただし、下流部48Bの材料も特に限定される訳ではない。また、上流部47Aとサージタンク48とは別体であってもよい。吸気マニホールド47は、単一の部材によって形成されていてもよい。サージタンク48の材料、および吸気マニホールド47の材料は、特に限定されない。
図9に示すように、吸気マニホールド47の上流部47Aは、鉛直方向に並ぶ6本の吸気管57r,57lを備えている。上流部47Aは、吸気管57r,57lがサージタンク48の流出口48aとつながるように、サージタンク48に一体的に接続されている。上から1番目、3番目、5番目の吸気管57rは、右バンク28Rの吸気ポート37に空気を供給する。上から2番目、4番目、6番目の吸気管57lは、左バンク28Lの吸気ポート37に空気を供給する。各吸気ポート37に空気を円滑に供給するために、吸気管57rと吸気管57lとの湾曲態様は異なっている。詳しくは、図8に示すように平面視において、吸気管57lの上流端は吸気管57rの上流端よりも後方にずれており、吸気管57lの下流端は吸気管57rの下流端よりも左方にずれている。吸気管57lの下流端の中心57leは、中心線L1よりも左方に位置している。吸気管57rの下流端の中心57reは、中心線L1よりも右方に位置している。
図9に示すように、上流部47Aの下流端には、複数の孔58aが形成されたフランジ58が設けられている。図示は省略するが、吸気マニホールド47の下流部47Bにも、フランジ58と同様のフランジが設けられている。孔58aにはボルトが挿通され、両フランジ58は上記ボルトによって結合されている。
図8に示すように、吸気マニホールド47の下流部47Bは、吸気管57rに接続された吸気管59rと、吸気管57lに接続された吸気管59lとを備えている。下流部47Bは、上流部47Aの前方に位置している。吸気管59rは、吸気管57rと右バンク28Rの吸気ポート37とを接続している。吸気管59lは、吸気管57lと左バンク28Lの吸気ポート37とを接続している。吸気管59r,59lの下流端には、フランジ59sが設けられている。シリンダヘッド30の吸気ポート37の上流端にも、同様のフランジが設けられている。両フランジ59sは、図示しないボルトにより結合されている。
吸気管59lは、左バンク28Lのシリンダヘッド30から、後斜め右向きに延びている。吸気管59rは、右バンク28Rのシリンダヘッド30から、後斜め左向きに延びている。吸気管59l,59rから吸気ポート37に空気を円滑に導くために、吸気管59l,59rの下流端部は、吸気ポート37の上流端部の延長線上に配置されている。吸気管59l,59rの下流端部と吸気ポート37の上流端部とは、中心が一致するように配置されている。
図10は、左バンク28Lのシリンダ軸線L2に沿って、左斜め後から左バンク28Lおよびサージタンク48等を見た図である。図10に示すように、シリンダ軸線L2から見たときに、最も下のコネクタ62はサージタンク48と重なっていない。そのため、このコネクタ62は、このコネクタ62に接続された点火プラグ61と共に、サージタンク48に邪魔されることなく、シリンダヘッド30およびヘッドカバー31から引き抜くことができる。また、同様に、上記コネクタ62および点火プラグ61は、サージタンク48に邪魔されることなく、シリンダヘッド30およびヘッドカバー31に挿入することができる。よって、メンテナンスが容易である。
点火プラグ61およびコネクタ62の全体を点火装置と称することとすると、本実施形態では、複数の点火装置のうち一部の点火装置のみが、シリンダ軸線L2から見てサージタンク48と重ならないように配置されている。ただし、サージタンク48の寸法または形状を変更することにより、シリンダ軸線L2から見て、すべての点火装置がサージタンク48と重ならないようにすることも可能である。これにより、点火装置のメンテナンス性を更に向上させることができる。
<排気系の構成>
図2に示すように、船外機1は、エンジン8の排ガスを排出する排気系として、シリンダヘッド30に一体的に形成された排気マニホールド63と、内部に触媒64を収容した触媒ケース65と、排気マニホールド63と触媒ケース65の上端部とを接続する上排気管66と、触媒ケース65の下端部とシリンダブロック29の下部の側部とを接続する下排気管67(図11参照)と、下排気管67から船外機1の外部に排ガスを導出する排気通路68(図1参照)とを備えている。上排気管66と触媒ケース65と下排気管67とは、それぞれ別体である。しかし、それらの一部または全部は一体化されていてもよい。以下では、上排気管66と触媒ケース65と下排気管67とをまとめて、排気管120と称する。
図2に示すように、排気マニホールド63は、左バンク28Lの排気ポート38の左方と、右バンク28Rの排気ポート38の右方とに設けられている。図11に示すように、排気マニホールド63は上方に延びている。図12に示すように、排気マニホールド63は、内管63iと、内管63iの周囲を囲むシリンダヘッド30と一体の外壁63oとを備えている。排ガスは内管63iの内部を流通する。内管63iと、シリンダヘッド30と一体の外壁63oとの間には、冷却水が流通するウォータジャケット63wが形成されている。排気マニホールド63の内管63iの側部には、鉛直方向に並ぶ図示しない複数の流入口が形成されている。排気ポート38は、上記流入口につながっている。上記流入口を通じて排気ポート38から排気マニホールド63に排出された排ガスは、排気マニホールド63の内管63iの内部を上向きに流れながら、他の排気ポート38からの排ガスと合流する。
上述の通り、本実施形態では、排気マニホールド63はシリンダヘッド30に一体的に形成されているが、排気マニホールド63とシリンダヘッド30とは別体であってもよい。別体の排気マニホールド63をボルト等によってシリンダヘッド30に結合するようにしてもよい。
図12に示すように、上排気管66はいわゆる二重管であり、内管66iと、内管66iの周囲を囲む外管66oとからなっている。排ガスは内管66iの内部を流れる。内管66iと外管66oとの間には、冷却水が流れるウォータジャケット66wが形成されている。図2に示すように平面視において、上排気管66はシリンダブロック29に倣うように配置されている。すなわち、左の上排気管66は、左バンク28Lのシリンダブロック29と同様、後斜め左向きに延びている。右の上排気管66は、右バンク28Rのシリンダブロック29と同様、後斜め右向きに延びている。図12に示すように、上排気管66の下端部は、下方に向かって広がっている。
図11に示すように、上排気管66の下端部には、触媒ケース65の上端部がボルト72により固定されている。図12に示すように、触媒ケース65は、内管65iおよび外管65oを有する二重管によって構成されている。外管65oは内管65iと同心円状に配置され、内管65iの周囲を囲んでいる。排ガスは内管65iの内部を流れる。内管65iと外管65oとの間には、冷却水が流れるウォータジャケット65wが形成されている。内管65iの内部には、触媒64が配置されている。図6に示すように、触媒ケース65は横断面が円形状に形成されており、触媒64も横断面が円形状に形成されている。ただし、触媒64の横断面形状は特に限定されず、触媒ケース65の横断面形状に合わせて適宜に変更することができる。内管65i内に配置される触媒64の個数は1個に限らず、2個以上であってもよい。
図6に示すように、平面視において、触媒ケース65は、Vバンクの外方に配置されている。左の触媒ケース65は、左バンク28Lの左方に配置され、右の触媒ケース65は、右バンク28Rの右方に配置されている。平面視において、触媒ケース65は、クランクケース27とシリンダブロック29とシリンダヘッド30とカウリング16の側壁とに囲まれる領域に配置されている。
平面視において、触媒ケース65の中心65cは、シリンダブロック29の後端29bよりも前方であって、クランクケース27の前端27f(図2参照)よりも後方に位置している。また、触媒ケース65の中心65cは、クランク軸13の中心13aよりも後方に位置している。なお、触媒ケース65の横断面形状が円形状でない場合には、触媒ケース65の重心を触媒ケース65の中心と見なすことができる。触媒ケース65の前端65fは、クランクケース27の前端27fよりも後方に位置している。触媒ケース65の後端65bは、クランクケース27の後端27bよりも後方に位置している。
図6に示すように、触媒ケース65の船外機幅方向の最外端65oeは、シリンダヘッド30の船外機幅方向の最外端30oeとほぼ同様の位置にある。触媒ケース65の船外機幅方向の最外端65oeは、シリンダブロック29の船外機幅方向の最外端29oeよりも外方に位置し、触媒ケース65の船外機幅方向の最内端65ieは、シリンダブロック29の船外機幅方向の最外端29oeよりも内方に位置している。触媒ケース65の中心65cは、シリンダブロック29の船外機幅方向の最外端29oeよりも外方に位置している。
図3に示すように、触媒ケース65の鉛直方向の長さは、シリンダ32の直径よりも大きい。図11に示すように、触媒ケース65の鉛直方向の長さは、シリンダヘッド30の鉛直方向の長さの約半分程度である。図12に示すように、触媒ケース65内の触媒64の鉛直方向の長さは、シリンダ32の直径と同じか、あるいはシリンダ32の直径よりも大きくなっている。
図12に示すように、下排気管67も二重管であり、内管67iと外管67oとを備えている。排ガスは内管67iの内部を流れる。内管67iと外管67oとの間には、冷却水が流れるウォータジャケット67wが形成されている。下排気管67の上端部は、上方に向かって広がっている。図11に示すように、下排気管67の上端部は、ボルト73により、触媒ケース65の下端部に固定されている。図12に示すように、シリンダブロック29の下部の側部には、船外機幅方向の外方に向かって開口する導入口70が形成されている。排気管67の下端部は、導入口70と向かい合わせになるように、シリンダブロック29の下部の側部に固定されている。
触媒ケース65の内管65iの流路断面積は、上排気管66の内管66iの中途部の流路断面積よりも大きく、また、下排気管67の内管67iの中途部の流路断面積よりも大きい。すなわち、排気マニホールド63からシリンダヘッド30に至る間に、排気の通路の流路断面積は、いったん増加してから減少する。触媒64は、上記通路のうち、流路断面積が大きくなった部分に配置されている。本実施形態では、触媒64は、上記通路のうち流路断面積が最も大きい部分に配置されている。
図7を参照しながら前述したように、右バンク28Rのシリンダ32は、左バンク28Lのシリンダ32に対して上方にオフセットしている。図13に示すように、それらシリンダ32のオフセットに対応して、右バンク28Rの排気管120は、左バンク28Lの排気管120に対して上方にオフセットしている。すなわち、右バンク28Rの上排気管66は左バンク28Lの上排気管66よりも上方にずれており、右バンク28Rの触媒ケース65は左バンク28Lの触媒ケース65よりも上方にずれており、右バンク28Rの下排気管67は左バンク28Lの下排気管67よりも上方にずれている。なお、左右のバンク28R、28Lのオフセットは逆でもよい。
図12に示すように、シリンダブロック29の下部には、シリンダブロック29を支持する支持部材(図示せず)等に取り付けられる取付ブロック115が設けられている。取付ブロック115は、シリンダブロック29の一部を構成している。図示は省略するが、取付ブロック115の内部には、導入口70からシリンダブロック29の下端部に至る排ガス通路が形成されている。図1に示すように、排気管120から船外機1の外部に排ガスを導出する排気通路68は、取付ブロック115内の上記排ガス通路と、アッパーケース17およびロアケース18内の排ガス通路と、プロペラ軸11の内部に形成された排ガス通路とを有している。排ガスは、上記排気通路68を通じて、水中に排出される。
<燃料供給系の構成>
図2に示すように、船外機1は、エンジン8に燃料を供給する燃料供給系として、燃料フィルタ19と、ベーパセパレータタンク20と、高圧燃料ポンプ74とを備えている。
図1に模式的に示すように、船体3には、燃料が貯留された燃料タンク76が設けられている。図2に示すように、燃料フィルタ19は、燃料ホース75を介して燃料タンク76に接続されている。図示は省略するが、船体3または船外機1の内部には、燃料タンク76から燃料フィルタ19に向かって燃料を搬送するポンプ(以下、低圧燃料ポンプという)が設けられている。燃料フィルタ19は、上方に延びる略円筒状のケース19a(図4参照)と、ケース19a内に設けられた図示しないフィルタエレメントとを備えている。図2に示すように、燃料フィルタ19は、カウリング16のトップカウル14の前壁とエンジン8のクランクケース27との間に配置されている。燃料フィルタ19は、中心線L1よりも右方に配置されている。
ベーパセパレータタンク20は、燃料ホース77を介して燃料フィルタ19に接続されている。燃料タンク76から上記低圧燃料ポンプによって搬送されてきた燃料は、燃料フィルタ19を通過することによって浄化され、ベーパセパレータタンク20に流入する。
ベーパセパレータタンク20は、燃料タンク76から供給された燃料を貯留すると共に、燃料の蒸気(ベーパ)または空気と、液体の燃料とを分離するものである。ベーパセパレータタンク20は、縦長のタンク20a(図3参照)と、タンク20aの内部に配置された図示しないポンプ(以下、タンク内高圧燃料ポンプという)と、タンク20aの内部に配置された図示しないフロートと、フロートと連動して開閉するバルブとを備えている。タンク20a内の燃料の液面高さが所定の高さ以上になると、上記バルブが閉じ、ベーパセパレータタンク20への燃料の流入が停止する。一方、タンク20a内の燃料の液面高さが所定の高さよりも低くなると、上記バルブが開き、ベーパセパレータタンク20に燃料が流入する。
図2に示すように、ベーパセパレータタンク20は、中心線L1よりも左方に配置されており、クランクケース27の斜め左前に配置されている。ベーパセパレータタンク20は、燃料フィルタ19よりは後方に配置されている。
高圧燃料ポンプ74は、右バンク28Rのヘッドカバー31に取り付けられている。高圧燃料ポンプ74とベーパセパレータタンク20とは、燃料ホース78によって接続されている。ベーパセパレータタンク20のタンク20aに貯留された燃料は、ベーパセパレータタンク20内のタンク内高圧燃料ポンプによって、燃料ホース78を通じて高圧燃料ポンプ74に供給される。
燃料ホース78の上流端は、ベーパセパレータタンク20に接続されている。図2〜図4に示すように、燃料ホース78の一部は、排気管120の下方に配置されている。詳しくは、燃料ホース78は、排気管120の下方を通って後方または斜め後方に延びている。ただし、燃料ホース78の一部を排気管120の下方に配置する代わりに、排気管120の上方またはシリンダブロック29等の上方に配置することも可能である。
なお、高圧燃料ポンプ74の上流側では、燃料の圧力はそれほど高くないので、燃料ホース75、燃料ホース77、および燃料ホース78は、耐圧性の高いホースでなくても良い。燃料ホース75、燃料ホース77、および燃料ホース78の材料は特に限定されず、例えば、ゴムまたは樹脂等からなっていてもよい。また、燃料ホース75、燃料ホース77、または燃料ホース78を、樹脂または金属等からなる配管に置き換えてもよい。
図6に示すように、高圧燃料ポンプ74は、カム駆動式燃料ポンプであって、右バンク28Rの吸気カム軸43によって駆動される。高圧燃料ポンプ74は、中心線L1の右方に配置されている。サージタンク48は中心線L1の左方に配置されているので、高圧燃料ポンプ74は、中心線L1の左方および右方のうち、サージタンク48が配置されている方(左方)と逆の方(右方)に配置されていると言うことができる。また、高圧燃料ポンプ74は、右バンク28Rのシリンダ軸線L2よりも左方に配置されている。言い換えると、高圧燃料ポンプ74は、右バンク28Rのシリンダ軸線L2の船外機幅方向の内方に配置されている。平面視において、右バンク28Rのヘッドカバー31とカウリング16の側壁との間の隙間は、右バンク28Rのシリンダ軸線L2の右方よりも左方の方が大きくなっている。右バンク28Rのシリンダ軸線L2の左方とヘッドカバー31との間には、空きスペースが形成されている。この空きスペースを有効活用すべく、高圧燃料ポンプ74は上記空きスペースに配置されている。
図5に示すように、高圧燃料ポンプ74は、右バンク28Rのヘッドカバー31の下部に取り付けられている。前述したように、右バンク28Rのシリンダ32は、左バンク28Lのシリンダ32に対して、上方にオフセットしている。高圧燃料ポンプ74は、上方にオフセットすることによって生じた空きスペースを有効活用すべく、左バンク28Lおよび右バンク28Rのうち、上方にオフセットしている方のバンク28Rの下部に取り付けられている。ヘッドカバー31には、高圧燃料ポンプ74を取り付けるための取付部31kが形成されている。ヘッドカバー31は樹脂製であり、成形が容易である。本実施形態によれば、ヘッドカバー31に、高圧燃料ポンプ74用の取付部31kを容易に形成することができる。
図14は高圧燃料ポンプ74の水平断面図、図15は高圧燃料ポンプ74の鉛直断面図である。高圧燃料ポンプ74は、燃料を吸入する吸入部80と、燃料を吐出する吐出部81と、ポンプ本体82とを備えている。図示は省略するが、ポンプ本体82の内部には、一部をダイヤフラムで仕切られた圧力室と、吸入部80から圧力室に向かう方向の燃料の流れのみを許容する吸入逆止弁と、圧力室から吐出部81に向かう方向の燃料の流れのみを許容する吐出逆止弁とが設けられている。ダイヤフラムが図14の上下に往復動することにより、吸入部80から圧力室に燃料が吸い込まれ、圧力室から吐出部81に燃料が吐出される。
ポンプ本体82には、後端部(図14の上端部)が上記ダイヤフラムに連結されたロッド83が設けられている。ロッド83は、コイルスプリング87によって、前方(図14の下方)に付勢されている。ロッド83の前端部(図14の下端部)には、リフタ84が設けられている。リフタ84は、ロッド83に当接されたフレーム85と、フレーム85の前部に回転可能に支持されたローラ86とを有している。ロッド83およびリフタ84は、一体となって、図14の上下方向に往復可能に構成されている。ロッド83およびリフタ84は、シリンダ軸線L2と平行な方向に往復可能に構成されている。
吸気カム軸43には、高圧燃料ポンプ74を駆動するポンプ駆動用カム79が設けられている。ポンプ駆動用カム79は、カム軸本体43aと一体的に形成されていてもよいが、本実施形態では、カム軸本体43aとは別体に形成されている。ポンプ駆動用カム79は、カム軸本体43aに圧入されている。ポンプ駆動用カム79は、カム軸本体43aと種類の異なる材料からなっていてもよい。ポンプ駆動用カム79の材料は特に限定されず、例えば、焼結材、鋳鉄(ダクタイル鋳鉄(FCD;Ferrum Casting Ductile)等)等を好適に用いることができる。リフタ84のローラ86は、カム79に当接している。吸気カム軸43の回転に伴ってカム79が回転すると、カム79に当接しているリフタ84は往復移動する。それに伴い、ロッド83が往復移動し、上記ダイヤフラムが繰り返し変位する。これにより、吸入部80から吸い込まれた燃料は、上記圧力室内で昇圧され、高圧の燃料となって吐出部81から吐出される。
図16に示すように、ポンプ駆動用のカム79は、右バンク28Rの吸気カム軸43の下部に形成されている。本実施形態に係るエンジン8は、1つのシリンダ32に対して、吸気ポート37および排気ポート38がそれぞれ2つずつ設けられている。右バンク28Rには3つのシリンダ32が設けられており、吸気カム軸43には、上下に並ぶ6つの吸気カム45が設けられている。カム79は、それら6つの吸気カム45よりも低い位置に設けられている。すなわち、カム79は、最も下に位置する吸気カム45よりも、更に下方に配置されている。そのため、吸気カム軸43とは別体の部材をカム軸本体43aに嵌め込むことによってカム79を形成する場合、別体の部材を嵌め込む作業を容易に行うことができる。ただし、カム79は別部材で形成されたものに限らず、カム軸本体43aと一体形成されていてもよい。
図15に示すように、ヘッドカバー31の内部には、高圧燃料ポンプ74を支持する支持体として、カムキャップ88が配置されている。カムキャップ88には、ボルト89が挿入される複数の孔90が形成されている。高圧燃料ポンプ74は、プレート91を介してカムキャップ88に重ねられている。高圧燃料ポンプ74は、ボルト89により、プレート91と共にカムキャップ88に固定されている。このように、高圧燃料ポンプ74は、カムキャップ88を介してヘッドカバー31に固定されている。
カムキャップ88の前部(図15の左部)には、吸気カム軸43を回転自在に支持する軸受部88aが形成されている。軸受部88aには、潤滑油を供給する給油路93が形成されている。吸気カム軸43の下から1番目の吸気カム45と2番目の吸気カム45との間と、ポンプ駆動用のカム79の下方とには、軸受部92が設けられている。軸受部92は、カム軸本体43aの一部を他の部分よりも拡径することによって形成されていてもよく、カム軸本体43aとは別体の軸受部材を挿入することによって形成されていてもよい。なお、吸気カム45の下方の軸受部92は、吸気カム軸43の最下端に位置するので、別体の軸受部材の挿入は容易である。
なお、図15等では、高圧燃料ポンプ74のカバーは図示していないが、高圧燃料ポンプ74を覆うカバーを設けてもよい。すなわち、高圧燃料ポンプ74のうち、ヘッドカバー31の外方に位置する部分は、カバーによって覆われていてもよい。
図8に示すように、左バンク28Lの右方には、左バンク28Lのすべての燃料噴射装置60Lに燃料を供給する燃料供給レール94Lが配置されている。右バンク28Rの左方には、右バンク28Rのすべての燃料噴射装置60Rに燃料を供給する燃料供給レール94Rが配置されている。燃料供給レール94L,94Rは、それぞれ燃料噴射装置60L,60Rに燃料を供給する燃料パイプである。図17に示すように、燃料供給レール94Rは鉛直方向に延びており、右バンク28Rの各燃料噴射装置60Rに接続されている。同様に、燃料供給レール94Lは鉛直方向に延びており、左バンク28Lの各燃料噴射装置60Lに接続されている。
図8に示すように平面視において、燃料供給レール94Lおよび燃料供給レール94Rは、左バンク28Lと右バンク28Rと吸気マニホールド47とで囲まれた領域132内に配置されている。左の燃料供給レール94Lは、中心線L1の左方に配置され、右の燃料供給レール94Rは、中心線L1の右方に配置されている。燃料供給レール94L,94Rは、シリンダヘッド30の吸気マニホールド47との合面95よりも前方に配置されている。
図18に示すように、高圧燃料ポンプ74と燃料供給レール94L,94Rとは、燃料配管96a,96L,96Rによって接続されている。燃料配管96aの一端は、高圧燃料ポンプ74の吐出部81に接続されている。燃料配管96aの他端は、三方継手97に接続されている。三方継手97には、燃料配管96Lの一端および燃料配管96Rの一端が接続されている。燃料配管96Lの他端は、燃料供給レール94Lの下端部94Leに接続されている。燃料配管96Rの他端は、燃料供給レール94Rの下端部94Reに接続されている。
高圧燃料ポンプ74から供給される燃料は、燃料配管96aを通過した後、三方継手97を通じて、燃料配管96Lと燃料配管96Rとに分流される。燃料配管96L内の燃料は、左の燃料供給レール94Lに供給される。左の燃料供給レール94L内の燃料は、燃料噴射装置60Lに供給される。燃料配管96R内の燃料は、右の燃料供給レール94Rに供給される。右の燃料供給レール94R内の燃料は、燃料噴射装置60Rに供給される。このように、燃料配管96a,96L,96Rには、高圧燃料ポンプ74から高圧の燃料が供給される。そのため、燃料配管96a,96L,96Rは、十分な耐圧性を有するよう、ステンレス等の金属からなっている。ただし、耐圧性を有する限り、燃料配管96a,96L,96Rの材料は特に限定される訳ではない。
このように、本実施形態では、高圧燃料ポンプ74からの燃料は、三方継手97で分流されてから燃料供給レール94L,94Rに供給される。ただし、高圧燃料ポンプ74から燃料供給レール94L,94Rに燃料を供給する燃料配管の構成は、上記の構成に限定されない。他の構成として、例えば、燃料供給レール94Lおよび燃料供給レール94Rのいずれか一方のみが、燃料配管を介して高圧燃料ポンプ74の吐出部81に接続され、燃料供給レール94Lと燃料供給レール94Rとが、他の燃料配管を介して互いに接続されていてもよい。この場合、高圧燃料ポンプ74から吐出される燃料は、燃料供給レール94Lおよび燃料供給レール94Rの一方を通じて他方に供給されることになる。
燃料噴射装置60L,60Rに供給された燃料は、燃料噴射装置60L,60Rによって燃焼室36の内部に噴射される。噴射された燃料は、燃焼室36内の空気と混合し、混合気となる。この混合気は、点火プラグ61によって着火され、爆発する。この爆発によって、エンジン8の駆動力が発生する。
ところで、未燃焼の混合気の一部(以下、ブローバイガスという)は、ピストン33とシリンダ32との間の隙間を通って、クランクケース27の内部に漏れることがある。クランクケース27内のブローバイガスは、クランクケース27内の潤滑油と混ざり、クランクケース27の外部に流出する。本実施形態に係るエンジン8は、ブローバイガスを潤滑油から分離し、再び燃焼室36に戻すこととしている。エンジン8は、ブローバイガスと潤滑油とを分離する気液分離器135を備えている。次に、この気液分離器135の構成を説明する。
気液分離器135は、右バンク28Rのヘッドカバー31の内部に形成されている。図19は、右バンク28Rのヘッドカバー31の裏側を表す図である。ヘッドカバー31は、裏壁31aと、裏壁31aの側部から裏方向に延びる側壁31bと、裏壁31aの上部から裏方向に延びる上壁31cと、裏壁31aの下部から裏方向に延びる下壁31dとを有している。また、ヘッドカバー31は、点火プラグ61が取り付けられるボス部98を有している。ボス部98は、ヘッドカバー31の裏方向に延びている。
図20に示すように、ヘッドカバー31の内部には、ヘッドカバー31の裏壁31aに対向するようにプレート99が配置されている。プレート99は、複数のボルト100によってヘッドカバー31に固定されている。なお、プレート99とヘッドカバー31との固定方法は特に限定されない。例えば、プレート99とヘッドカバー31との双方を樹脂で形成した場合、溶着によりプレート99をヘッドカバー31に固定してもよい。図21に示すように、プレート99は、ヘッドカバー31の裏壁31aから離間するように配置されている。プレート99と裏壁31aとの間には空間145が形成されている。プレート99は裏壁31aの下端部を覆っておらず、空間145の下方は開放されている。この空間145が、ブローバイガスと潤滑油とを分離する気液分離室となる。このように、ヘッドカバー31とプレート99とにより、気液分離器135が形成されている。
プレート99の上端部には、潤滑油が混じったブローバイガス(以下、単にブローバイガスという)を導入する導入部101が設けられている。導入部101は、右バンク28Rのブローバイガスを導入するように構成されている。本実施形態では、導入部101は、ヘッドカバー31の裏方向に延びる偏平なダクトによって形成されている。この実施形態では、ダクトは、カム43等からの潤滑油が流れ込みにくい位置および形状に形成されている。ただし、導入部101の形状は、これに限定される訳ではない。
図22に示すように、右バンク28Rのヘッドカバー31の表側には、気液分離器135内に連通する他の導入部102が設けられている。左バンク28Lのシリンダヘッド30には、左バンク28Lのブローバイガスを導出する導出部103が設けられている。導出部103と導入部102とは、ガス配管104によって接続されている。左バンク28Lのブローバイガスは、導出部103、ガス配管104、および導入部102を通じて、気液分離器135内に導入される。
図22に示すように、右バンク28Rのヘッドカバー31の表側には、ガスを導出する導出部105が設けられている。導出部105は、気液分離器135内の上部に連通している。図5に示すように、導出部105は、ガス配管106を介してスロットルボディ50に接続されている。
液体の潤滑油とガスとでは、比重が大きく異なる。そのため、潤滑油が混じったブローバイガスは、気液分離器135内に流入すると、比重の小さなガスと、比重の大きな潤滑油とに分離する。図21に示すように、潤滑油は、下方に落下し、またはプレート99等の表面を流下し、気液分離器135内の下部に回収される。回収された潤滑油は、エンジン8内の図示しない油溜まりに返送される。潤滑油から分離されたガスは、導出部105およびガス配管106を通じて、スロットルボディ50に送られる。このガスは、スロットルボディ50から吸い込まれる空気と共に、サージタンク48、吸気マニホールド47、および吸気ポート37を経て、燃焼室36に供給される。
<冷却系の構成>
前述したように、エンジン8は水冷式エンジンである。エンジン8は、船舶2が航行している海、川、湖等の水(以下、外水という)を用いて冷却される。次に、エンジン8を冷却する冷却系の構成について説明する。
図1に示すように、船外機1のアッパーケース17の内部には、水を搬送する水ポンプ107が配置されている。水ポンプ107はドライブ軸9によって駆動されるように構成されている。ロアケース18内には、冷却水としての外水を取り込むための取水口107aが設けられている。取水口107aから取り入れられた冷却水は、水ポンプ107によってエンジン8に搬送される。
図23は、冷却系の構成を示すブロック図である。冷却系は、左バンク28Lの冷却水通路110と、右バンク28Rの冷却水通路110とを備えている。左バンク28Lの冷却水通路110と右バンク28Rの冷却水通路110とは、同様の構成を有している。以下では、一方の冷却水通路110のみを説明する。冷却水通路110は、メイン通路である水通路121と、バイパス通路122とを有している。
水通路121は、エンジン8の取付ブロック115内の排ガス通路の周囲に形成されたウォータジャケット108wと、シリンダヘッド30の内部に形成されたウォータジャケット30wと、シリンダブロック29の内部に形成されたウォータジャケット29wと、排気管120の内部に形成されたウォータジャケット120wとを備えている。詳細は後述するが、シリンダヘッド30のウォータジャケット30wは、燃焼室36の周りに形成された第1ジャケット111Aおよび第2ジャケット111Bと、排気ポート38の周りおよび排気マニホールド63内に形成された第3ジャケット63wとを有している。排気管120のウォータジャケット120wは、前述した上排気管66のウォータジャケット66w(図12参照)、触媒ケース65のウォータジャケット65w、および下排気管67のウォータジャケット67wによって形成されている。
水ポンプ107から供給された冷却水は、エンジン8の取付ブロック115のウォータジャケット108wを経由して、シリンダヘッド30の第1ジャケット111Aおよび第2ジャケット111Bに流入する。第1ジャケット111A内および第2ジャケット111B内の冷却水は、シリンダヘッド30を冷却する。第1ジャケット111A内および第2ジャケット111B内の冷却水の一部は、第3ジャケット63wに流入する。他の一部は、バイパス通路122を通じて、シリンダブロック29のウォータジャケット29wに流入する。第3ジャケット63w内の冷却水は、シリンダヘッド30の一部および排気マニホールド63を冷却した後、ウォータジャケット120wに流入する。ウォータジャケット120w内の冷却水は、排気管120を冷却する。言い換えると、ウォータジャケット120w内の冷却水は、排気管120内の排ガスおよび触媒64を冷却する。排ガスおよび触媒64を冷却した冷却水は、ウォータジャケット120wから、シリンダブロック29のウォータジャケット29wに流入する。ウォータジャケット29w内の冷却水は、シリンダブロック29を冷却する。シリンダブロック29を冷却した冷却水は、図示しない排水通路を経由し、船外機1の外部に排出される。
図24は、シリンダブロック29およびシリンダヘッド30の断面図である。シリンダブロック29とシリンダヘッド30との間には、ガスケット116が挟まれている。図25は、シリンダブロック29をシリンダ軸線L2に沿って見た表面図である。図26は、シリンダヘッド30をシリンダ軸線L2に沿って見た裏面図である。図27は、ガスケット116をシリンダ軸線L2に沿って見た表面図である。
図25に示すように、シリンダブロック29のウォータジャケット29wは、それぞれ上、真ん中、下のシリンダ32の周囲を取り囲む略環状の溝29waを有している。各溝29waは、各シリンダ32の周囲に形成され、各シリンダ32の軸方向に延びている。隣り合うシリンダ32同士は結合されており、隣り合う溝29wa同士は連続している。シリンダ32同士の結合部の側方には、切り欠き溝29wbが形成されている。切り欠き溝29wbは、シリンダ32の中心同士を結ぶ線L3の方に凹んでいる。図24に示すように、切り欠き溝29wbの深さDbは、溝29waの深さDaよりも小さくなっている。切り欠き溝29wbの底部29wbbは、溝29waの方に向かって傾斜している。
図26に示すように、シリンダヘッド30のウォータジャケット30wは、それぞれ、上、真ん中、下の燃焼室の一部の周りに形成されたジャケット部30waを有している。これらジャケット部30waは、シリンダヘッド30の内部においてつながっている。ジャケット部30waは、前述の第1ジャケット111Aまたは第2ジャケット111Bを形成している。
図27に示すように、ガスケット116には、各シリンダ32に対応する開口116aが形成されている。また、ガスケット116には、シリンダヘッド30のウォータジャケット30wからシリンダブロック29のウォータジャケット29wに冷却水を導く孔116bが形成されている。孔116bは、ガスケット116がシリンダブロック29とシリンダヘッド30との間に挟まれたときに、孔116bの少なくとも一部がシリンダブロック29の切り欠き溝29wb上に位置するように形成されている。ここでは、孔116bの全体が切り欠き溝29wb上に位置している。図24に示すように、シリンダヘッド30のウォータジャケット30w内の冷却水の一部は、孔116bを通じて、シリンダブロック29の切り欠き溝29wb内に流入し、溝29waに流れ込む。ガスケット116の孔116bにより、冷却水のバイパス通路122(図23参照)が形成されている。
シリンダヘッド30のウォータジャケット30wの構成は特に限定されないが、前述したように本実施形態では、ウォータジャケット30wは、第1ジャケット111Aと、第2ジャケット111Bと、第3ジャケット63wとを有している。図28は、図26のA2−A2線に沿った断面図である。すなわち、隣り合うシリンダ32の間の断面図である。図29は、図26のA3−A3線に沿った断面図である。すなわち、シリンダ軸線L2を含む断面図である。
図29に示すように、シリンダ軸線L2を含む断面において、第1ジャケット111Aは、概ね第2ジャケット111Bの下方に形成されている。第1ジャケット111Aおよび第2ジャケット111Bは、燃焼室36の周囲に形成されている。第1ジャケット111A、第2ジャケット111Bは、それぞれ上部ジャケット、下部ジャケットと言うことができる。なお、ここでいう上、下とは、単に図29における上、下を意味する。第3ジャケット63wの一部は、排気ポート38の周りに形成されている。
第1ジャケット111Aは相対的に燃焼室36の近くに形成され、第2ジャケット111Bは第1ジャケット111Aよりも燃焼室36の遠くに形成されている。また、第1ジャケット111Aは、概ね第2ジャケット111Bよりも排気ポート38の方に形成されている。言い換えると、第1ジャケット111Aは、概ね第2ジャケット111Bよりも船外機幅方向の外方に形成されている。第3ジャケット63wは、第1ジャケット111Aおよび第2ジャケット111Bよりも船外機幅方向の外方に形成されている。概ね、船外機幅方向の内方から外方に向かって、第2ジャケット111B、第1ジャケット111A、第3ジャケット63wの順に形成されている。図28および図29を見比べると明らかなように、第1ジャケット111Aおよび第2ジャケット111Bは、鉛直方向に沿って形状が変化している。図示は省略するが、第3ジャケット63wも鉛直方向に沿って形状が変化している。
前述したように、第3ジャケット63wの一部は、排気マニホールド63の内管63iと、シリンダヘッドと一体の外壁63oとの間に形成されている(図12参照)。図示は省略するが、シリンダヘッドと一体の外壁63oの側部には、第2ジャケット111Bと連通する冷却水の導入口が形成されている。冷却水は上記導入口を通じて、排気マニホールド63の内管63iと外壁63oとの間に導入される。
前述したように、排気管120のウォータジャケット120wは、上排気管66のウォータジャケット66w、触媒ケース65のウォータジャケット65w、および下排気管67のウォータジャケット67wによって構成されている(図12参照)。排気管120のウォータジャケット120wは、冷却水を概ね下向きに流通させるように形成されている。触媒ケース65のウォータジャケット65wは、冷却水を下向きに流通させるように形成されている。
図12に示すように、上排気管66の外管66oには、エア抜き用の孔66aが形成されている。孔66aは、上排気管66のウォータジャケット66wにつながっている。孔66aは、船外機1が水平な姿勢に保たれたときに上排気管66の最も上方に位置する部分に形成されている。また、孔66aは、上排気管66の湾曲部分に形成されている。孔66aの周囲には、上方に突出するニップル117が形成されている。図示は省略するが、ニップル117には、ホースが接続されている。孔66aを通じて、ウォータジャケット120w内に溜まった空気を排出することができる。なお、孔66aは常時開放されている。
図12に示すように、下排気管67の外管67oには、水抜き用の孔67aが形成されている。孔67aは、下排気管67のウォータジャケット67wにつながっている。船外機1が使用されないときには、船外機1は大きくチルトアップされる。孔67aは、船外機1がチルトアップされたときに下排気管67の最も下方に位置する部分またはその近傍の部分に形成されている。例えば、船外機1が非使用時に水平線Pから角度αだけチルトアップされるように設定されている場合、船外機1が水平な姿勢に保たれているときに、側面視において当該孔67aが形成されている部分の接線と水平線とのなす角の角度がαとなるように孔67aを形成してもよい。本実施形態では、船外機1が水平な姿勢に保たれているときに、触媒ケース65は鉛直方向に延びるように形成されている。船外機1が水平な姿勢に保たれているときに、側面視において、当該孔67aが形成されている部分の接線と触媒ケース65の軸線とのなす角が90°−αとなるように孔67aを形成してもよい。
図12に示すように、シリンダブロック29には、冷却水を排出可能な孔118が形成されている。孔67aと孔118とは、ゴム製のホース119によって接続されている。ただし、ゴム製のホース119の代わりに、樹脂等の他の材料からなるホースを用いることもできる。また、ホース119の代わりに、ステンレス等の金属等からなる配管を用いることもできる。ただし、ゴム製のホース119は可撓性を有している。可撓性を有するホース119は膨張可能であるので、ホース119内の冷却水が凍結した場合であっても、破損するおそれがない。ウォータジャケット67w等の内部の冷却水は、孔67a、ホース119、および孔118を通じて外部に排出可能である。
前述したように、シリンダヘッド30の第1ジャケット111Aおよび第2ジャケット111Bに流入した冷却水は、その一部がバイパス通路122を通じてシリンダブロック29のウォータジャケット29wに流入する。他の冷却水は、図30に示すように、その一部が第3ジャケット63wに順次流出しながら(符号164参照)、第1ジャケット111A内および第2ジャケット111B内を上向きに流れる。第3ジャケット63wでは、冷却水は、第1ジャケット111Aおよび第2ジャケット111Bから流入する冷却水と順次合流しながら、第3ジャケット63w内を上向きに流れる。冷却水は、第3ジャケット63wから排気管120のウォータジャケット120wに流入し、このウォータジャケット120w内を下向きに通過した後、シリンダブロック29のウォータジャケット29wに流入する。
図28に示すように、シリンダヘッド30には、第1ジャケット111Aから第2ジャケット111Bに至る孔126が形成されている。この孔126にはカラー127が嵌め込まれ、カラー127にはボルト123が挿入されている。なお、符号128は、リング状のシールを表している。ボルト123は、第1ジャケット111Aから第2ジャケット111Bに至っている。ボルト123の先端部、言い換えると、ボルト123の第1ジャケット111A内の部分には、第1防食電極124が取り付けられている。ボルト123の第2ジャケット111B内の部分には、カラー127を介して第2防食電極125が取り付けられている。第1ジャケット111A内の第1防食電極124と、第2ジャケット111B内の第2防食電極125とは、同一のボルト123に取り付けられている。なお、ここで言うところの「ボルトに取り付けられる」とは、第1防食電極124のようにボルト123に直接取り付けられる場合だけでなく、第2防食電極125のように、他の部材を介してボルト123に間接的に取り付けられる場合も含まれる。これら第1防食電極124および第2防食電極125により、シリンダヘッド30の腐食が抑制されている。冷却水として外水を用いる場合、外水の成分によっては、シリンダヘッド30の腐食が促進されてしまうおそれがある。特に外水として海水を用いる場合、腐食が生じやすい。しかし、本実施形態によれば、第1防食電極124および第2防食電極125によって、そのような腐食を効果的に抑制することができる。
<実施形態の効果>
本実施形態に係る船外機1によれば、燃焼室36内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置60L,60Rを備えている。燃焼室36内に燃料を直接噴射することにより、吸気ポート37内に燃料を噴射する場合に比べて、燃費および排ガス浄化性能を向上させることができる。
ところで、燃焼室36内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置60L,60Rでは、吸気ポート37内に燃料を噴射する燃料噴射装置に比べて、噴射圧力を高くしなければならない。そのため、燃料噴射装置60L,60Rに燃料を供給する高圧燃料ポンプ74は、吐出圧力の高いポンプでなければならない。そこで本実施形態では、高圧燃料ポンプ74は、エンジン8のカム軸によって駆動されるように構成されている。エンジン8は、シリンダ軸線L2の船外機幅方向の内方に配置された吸気カム軸43と、外方に配置された排気カム軸44とを備えている。高圧燃料ポンプ74は、吸気カム軸43および排気カム軸44のいずれによっても駆動可能である。ただし、本実施形態では、以下の理由により、高圧燃料ポンプ74は吸気カム軸43により駆動されるように構成されている。
すなわち、図6に示すように、エンジン8は、後斜め左向きに延びる左バンク28Lと、後斜め右向きに延びる右バンク28Rとを備えたV型の4サイクルエンジンである。このようなV型のエンジン8を備えた船外機1では、左バンク28Lおよび右バンク28Rの最外部に相当する部分は、最も横幅が広い部分となる。高圧燃料ポンプ74を左バンク28Lまたは右バンク28Rの外方部分に設置すると、船外機1の横幅が増大してしまうおそれがある。
そこで、本実施形態に係る船外機1では、高圧燃料ポンプ74は、右バンク28Rの吸気カム軸43によって駆動されるように、右バンク28Rのシリンダ軸線L2よりも船外機幅方向の内方に取り付けられている。すなわち、高圧燃料ポンプ74は、シリンダ軸線L2の内方に位置する吸気カム軸43と、シリンダ軸線L2の外方に位置する排気カム軸44とのうち、内方に位置する方の吸気カム軸43によって駆動されるように構成されている。これにより、燃焼室36内に燃料を直接噴射することによってもたらされる効果を得ながら、船外機1の横幅の増大を抑制することができる。
なお、本実施形態では、高圧燃料ポンプ74は、右バンク28Rの吸気カム軸43によって駆動されるように、右バンク28Rのシリンダ軸線L2よりも内方に取り付けられている。しかし、高圧燃料ポンプ74は、左バンク28Lの吸気カム軸43によって駆動されるように、左バンク28Lのシリンダ軸線L2よりも内方に取り付けられていてもよい。
また、船外機1によれば図7に示すように、右バンク28Rのシリンダ32は、左バンク28Lのシリンダ32に対して上方にオフセットしている。図5に示すように、高圧燃料ポンプ74は、上方にオフセットしている方のシリンダ32を有するバンク、すなわち右バンク28Rに取り付けられている。上方にオフセットしているシリンダ32を有する右バンク28Rは、左バンク28Lに比べて、上方にオフセットしている分、鉛直方向にスペースの余裕がある。そのため、エンジン8の鉛直方向の長さを大型化しなくても、高圧燃料ポンプ74を設置することができる。
また、船外機1によれば、図4に示すように、エンジン8の上方はトップカウル14によって覆われている。トップカウル14は、上方に向かって先細り状に形成されている。トップカウル14の上部は下部に比べて、前後の長さおよび左右の長さが短くなっている。そのため、トップカウル14内において、上部は下部に比べてスペースの制約が大きい。また、図示は省略するが、エンジン8の上部には、吸気カム軸43および排気カム軸44のプーリ等が配置されている。このことによっても、エンジン8の上部は、レイアウトの制約が大きい。しかし、本実施形態によれば、図4に示すように、高圧燃料ポンプ74は、上方にオフセットしている右バンク28Rの最も上のシリンダ32の上端32tと、最も下のシリンダ32の下端32bとの間の中間位置32mよりも、下方に配置されている。そのため、トップカウル14内の下方のスペースを有効活用して、高圧燃料ポンプ74を配置することができる。言い換えると、トップカウル14を特に大型化しなくても、高圧燃料ポンプ74を配置することができる。
さらに本実施形態によれば、図4に示すように、高圧燃料ポンプ74は、上方にオフセットしている右バンク28Rの最も下のシリンダ32の軸線L2よりも下方に配置されている。そのため、トップカウル14内の下方のスペースを最大限有効に活用して、高圧燃料ポンプ74を配置することができる。
船外機1によれば、図14〜図16に示すように、高圧燃料ポンプ74を駆動する吸気カム軸43は、棒状のカム軸本体43aと、カム軸本体43aから半径方向の外方に突出し、吸気バルブ39を駆動する複数の吸気カム45とを有している。吸気カム軸43における最も下のカム45の下方の部分に、高圧燃料ポンプ74を駆動するポンプ駆動用カム79が嵌め込まれている。ポンプ駆動用カム79は、最も下のカム45の更に下方に設けられるので、カム軸本体43aに下方から容易に挿入することができる。したがって、カム軸本体43aに対し、カム軸本体43aと別体のポンプ駆動用カム79を設けることが容易となる。カム軸本体43aと異なる材料からなるポンプ駆動用カム79、例えば、カム軸本体43aの材料よりも硬度の高い材料で形成されたポンプ駆動用カム79を、カム軸本体43aに容易に取り付けることができる。必要な部分のみを硬くした吸気カム軸43を容易に得ることができる。
また、船外機1によれば図2に示すように、左バンク28L、すなわち、高圧燃料ポンプ74が設けられた方のバンクと反対側のバンクには、左バンク28Lおよび右バンク28Rの各燃焼室36に供給される空気を一時的に蓄えるサージタンク48が設けられている。このように、左バンク28Lおよび右バンク28Rの一方に高圧燃料ポンプ74を設け、他方にサージタンク48を設けることにより、高圧燃料ポンプ74およびサージタンク48を一方のバンクに集中的に配置する場合に比べて、エンジン8の後部の大型化を抑制することができる。なお、本実施形態と逆の配置も可能である。すなわち、高圧燃料ポンプ74を右バンク28Rに設け、サージタンク48を左バンク28Lに設けることも可能である。
また、船外機1によれば、右バンク28Rは、吸気ポート37および排気ポート38が形成されたシリンダヘッド30と、シリンダヘッド30の先端部に固定された樹脂製のヘッドカバー31とを有している。高圧燃料ポンプ74は、その樹脂製のヘッドカバー31に取り付けられている。ここで、図5に示すように、ヘッドカバー31には、高圧燃料ポンプ74を取り付けるための取付部31kが形成されている。逆に言うと、ヘッドカバー31には、高圧燃料ポンプ74を取り付けるための取付部31kを形成しなければならない。しかし、樹脂製のヘッドカバー31は、金属製のヘッドカバーよりも成形が容易である。そのため、本実施形態によれば、ヘッドカバー31に、高圧燃料ポンプ74用の取付部31kを容易に形成することができる。
また、高圧燃料ポンプ74は、カムキャップ88を介してヘッドカバー31に固定されている。そのため、高圧燃料ポンプ74をヘッドカバー88に安定して取り付けることができる。
また、船外機1によれば、高圧燃料ポンプ74を駆動するカム軸は吸気カム軸43であり、高圧燃料ポンプ74はシリンダ軸線L2の船外機幅方向の内方に配置されている。図8に示すように、吸気ポート37はシリンダ軸線L2の船外機幅方向の内方に形成されており、燃料噴射装置60L,60Rは吸気ポート37の側方に配置されている。高圧燃料ポンプ74および燃料噴射装置60L,60Rは、シリンダ軸線L2の船外機幅方向の内方に配置されている。そのため、高圧燃料ポンプ74と燃料噴射装置60L,60Rとの距離が短くなる。よって、高圧燃料ポンプ74から燃料噴射装置60L,60Rに燃料を供給する燃料通路の長さ、すなわち、燃料配管96a,96L,96R等の長さを短くすることができる。
本実施形態に係る船外機1は、船体3に1台のみ取り付けることも可能であるが、図31に示すように、幅方向に複数台並べて配置してもよい。前述のように、本実施形態に係る船外機1によれば、横幅が短くなっている。そのため、複数台の船外機1を幅方向に並べて配置した場合、横幅を短くすることの効果が特に顕著に発揮される。なお、図31の例では、2台の船外機1が並べて配置されているが、3台以上の船外機1を並べて配置することも勿論可能である。
(他の実施形態)
前記実施形態では、エンジン8は、燃料を噴射する燃料噴射装置として、燃焼室36内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置60L,60Rのみを備えていた。しかし、本発明に係る船外機のエンジンは、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置に加えて、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射装置を備えていてもよい。
1 船外機
8 エンジン
27 クランクケース
28L 左バンク
28R 右バンク
32 シリンダ
37 吸気ポート(第1ポート)
38 排気ポート(第2ポート)
39 吸気バルブ(第1バルブ)
40 排気バルブ(第2バルブ)
43 吸気カム軸(第1カム軸)
44 排気カム軸(第2カム軸)
60L,60R 燃料噴射装置
74 高圧燃料ポンプ(燃料ポンプ)
L2 シリンダ軸線

Claims (12)

  1. 鉛直方向に延びるクランク軸と、後斜め左向きに延びるシリンダを有し且つ後斜め左向きに延びる左バンクと、後斜め右向きに延びるシリンダを有し且つ後斜め右向きに延びる右バンクと、を備えたV型の4サイクルエンジンを備えた船外機であって、
    前記左バンクおよび前記右バンクのそれぞれは、前記シリンダ内に形成された燃焼室と、前記燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射装置と、前記シリンダの軸線よりも船外機幅方向の内方に形成され且つ前記燃焼室と連通可能な第1ポートと、前記シリンダの軸線よりも船外機幅方向の外方に形成され且つ前記燃焼室と連通可能な第2ポートと、前記第1ポートを開閉する第1バルブと、前記第2ポートを開閉する第2バルブと、鉛直方向に延び且つ前記シリンダの軸線よりも船外機幅方向の内方に配置され、前記クランク軸と共に回転することによって前記第1バルブを駆動する第1カム軸と、鉛直方向に延び且つ前記シリンダの軸線よりも前記幅方向の外方に配置され、前記クランク軸と共に回転することによって前記第2バルブを駆動する第2カム軸と、を有し、
    前記左バンクおよび前記右バンクのうちの一方のバンクの前記第1カム軸によって駆動されるように、前記一方のバンクの前記シリンダの軸線よりも船外機幅方向の内方に取り付けられ、前記燃料噴射装置に向かって燃料を供給する燃料ポンプを備えた、船外機。
  2. 前記左バンクのシリンダおよび前記右バンクのシリンダのうち、いずれか一方は他方に対して上方にオフセットしており、
    前記燃料ポンプは、上方にオフセットしている方のシリンダを有するバンクに取り付けられている、請求項1に記載の船外機。
  3. 前記エンジンの上方は、上方に行くほど先細り状のカウリングによって覆われ、
    前記左バンクおよび前記右バンクのシリンダは、それぞれ鉛直方向に沿って複数設けられ、
    前記燃料ポンプは、上方にオフセットしている方のバンクの最も上のシリンダの上端と最も下のシリンダの下端との間の中間位置よりも、下方に配置されている、請求項2に記載の船外機。
  4. 前記燃料ポンプは、上方にオフセットしている方のバンクの最も下のシリンダの軸線よりも下方に配置されている、請求項3に記載の船外機。
  5. 前記燃料ポンプを駆動する前記第1カム軸は、棒状のカム軸本体と、前記カム軸本体から半径方向の外方に突出し、前記第1バルブを駆動する複数のカムとを有し、
    前記カム軸本体における最も下のカムの下方の部分に、前記燃料ポンプを駆動するポンプ駆動用カムが嵌め込まれている、請求項4に記載の船外機。
  6. 前記他方のバンクには、前記左バンクおよび前記右バンクの各燃焼室に供給される空気を一時的に蓄えるサージタンクが設けられている、請求項2〜5のいずれか一つに記載の船外機。
  7. 少なくとも前記燃料ポンプが設けられた方のバンクは、前記第1ポートおよび前記第2ポートが形成されたシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの先端部に固定された樹脂製のヘッドカバーとを有し、
    前記燃料ポンプは、前記樹脂製のヘッドカバーに取り付けられている、請求項1〜6のいずれか一つに記載の船外機。
  8. 前記ヘッドカバーの内部には、カムキャップが配置され、
    前記燃料ポンプは、前記カムキャップを介して前記ヘッドカバーに固定されている、請求項7に記載の船外機。
  9. 前記第1ポート、前記第2ポートは、それぞれ前記燃焼室に空気を吸入する吸気ポート、前記燃焼室から排ガスを排出する排気ポートであり、
    前記燃料噴射装置は、前記吸気ポートの側方に配置されている、請求項1〜8のいずれか一つに記載の船外機。
  10. 前記燃料噴射装置は、前記シリンダの軸線よりも船外機幅方向の内方に配置されている、請求項1〜8のいずれか一つに記載の船外機。
  11. 請求項1〜10のいずれか一つに記載の船外機を備えた、船舶。
  12. 請求項1〜10のいずれか一つに記載の船外機を複数備え、
    前記複数の船外機は、各船外機の幅方向に並べられている、船舶。
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JP2016121659A (ja) * 2014-12-25 2016-07-07 三菱自動車工業株式会社 V型エンジン

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