JP2013122584A - 長尺の楕円偏光フィルム及びその利用 - Google Patents

長尺の楕円偏光フィルム及びその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】斜め方向の視角特性を改善するための長尺の楕円偏光フィルム及びその利用技術を提供する。
【解決手段】主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂組成物により構成され、固有複屈折値が負である長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して得られた、幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムと、長尺の偏光フィルムと、を備え、前記位相差フィルムの長手方向と偏光フィルムの長手方向とが一致するように積層されてなる長尺の楕円偏光フィルムによれば、斜め方向の視角特性を改善できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、長尺の楕円偏光フィルム及びその利用に関し、特に負の複屈折率を有する位相差フィルムを備えた長尺の楕円偏光フィルム及びその利用に関するものである。
近年、フラットパネルディスプレイ(FPD)における立体(3D)映像表示が大きな注目を浴び始めている。従来、立体表示には裸眼で立体視する種々の方式や専用眼鏡を用いる種々の方式が知られているが、家庭においては日常生活において動きのある中で映像を見ることができる観点から、専用眼鏡を用いる方式が注目されている。これらの要望を満たす方式として、眼鏡シャッター方式(アクティブ眼鏡方式)と偏光眼鏡方式(パッシブ眼鏡方式)の2つの方式が特に注目されている。なかでも、偏光眼鏡方式は偏光眼鏡自体が安価であり、軽量である点や、環境光との干渉がない点、また、偏光を用いることから液晶ディスプレイに適したものであり、技術開発が進んでいる(例えば特許文献1)。
偏光眼鏡方式(偏光表示方式)には、プロジェクター投影方式、ハーフミラー合成表示方式、液晶光路変換表示方式などがあるが、いずれも画像表示装置側に設けた円偏光板を介して左目用と右目用画像を同一面に重ねて偏光表示し、また視認者が装着する偏光眼鏡により、左目画像と右目画像とに分離するものである。つまり、偏光眼鏡方式では、画像表示装置側及び偏光眼鏡側の双方に円偏光板を設けることなる。現在、画像表示装置側と偏光眼鏡側とにおける円偏光板は、共に正の複屈折性を有する素材からなるものを用いることが一般的である。
特開2009−175551号公報(2009年8月6日公開)
しかしながら、上述したように、偏光眼鏡方式において、画像表示装置側及び偏光眼鏡側の円偏光板について共に正の複屈折性を有する素材からなるものを使用する場合、斜め方向の視角特性が狭くなる問題が発生することを本発明者らは独自に見出した。
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、斜め方向の視角特性を改善するための長尺の楕円偏光フィルム及びその利用技術を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、斜め方向の視角特性が狭くなる問題の原因は、画像表示装置側の円偏光板と偏光眼鏡側の円偏光板に同じ素材を使用した場合、厚さ方向の位相差が足し合わされるためであると考えた。そこで、本発明者らは、画像表示装置側及び偏光眼鏡側の円偏光板の一方を負の複屈折性を有する位相差フィルムを用いた円偏光板とし、他方を正の複屈折性を有する円偏光板とすることにより、厚さ方向の位相差が相殺され、斜め方向の視角特性を改善できるという新規知見を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、以下の構成からなるものである。
(1)主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂組成物により構成され、固有複屈折値が負である長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して得られた、幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムと、長尺の偏光フィルムと、を備え、前記位相差フィルムの長手方向と偏光フィルムの長手方向とが一致するように積層されてなる長尺の楕円偏光フィルム。
(2)前記位相差フィルムのNZ係数の値が、0.90〜2.20である(1)に記載の長尺の楕円偏光フィルム。
(3)前記位相差フィルムが示す、波長447nm、590nm、及び750nmのそれぞれの光に対する面内位相差Re(447)、Re(590)、及びRe(750)について、式Re(447)/Re(590)が1.00〜1.20、かつ式Re(750)/Re(590)が0.80〜1.05である(1)又は(2)に記載の長尺の楕円偏光フィルム。
(4)前記環構造が、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、無水マレイン酸構造、グルタルイミド構造、及びマレイミド構造から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれかに記載の長尺の楕円偏光フィルム。
(5)前記環構造が、以下の式(1)で表されるラクトン環構造である(4)に記載の長尺の楕円偏光フィルム。
Figure 2013122584
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。)
(6)主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂により構成され、固有複屈折値が負である長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して得られた、幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムと、長尺の偏光フィルムとを、前記位相差フィルムの長手方向と偏光フィルムの長手方向とが一致するように積層する工程を有する長尺の楕円偏光フィルムの製造方法。
(7)前記位相差フィルムと偏光フィルムとを積層する工程は、ロールtoロール積層により行われる(6)に記載の長尺の楕円偏光フィルムの製造方法。
(8)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の長尺の楕円偏光フィルムを、当該長尺の楕円偏光フィルムの長手方向に対して略垂直又は略平行な方向に沿って、所定の大きさに裁断してなる円偏光板。
(9)前記(8)に記載の円偏光板を備える画像表示装置。
(10)円偏光板を備える画像表示装置と、円偏光板を備える偏光眼鏡とを含み、前記画像表示装置における円偏光板又は偏光眼鏡における円偏光板のいずれか一方が前記(8)に記載の円偏光板である画像表示システム。
本発明に係る楕円偏光フィルムは、負の複屈折性を有する。このため、画像表示装置側及び偏光眼鏡側の円偏光板の一方を本発明に係る楕円偏光フィルムを用いた円偏光板とし、他方を正の複屈折性を有する円偏光板(例えば、ポリカーボネートを用いた円偏光板)とすることにより、厚さ方向の位相差が相殺され、斜め方向の視角特性を改善できるという効果を奏する。このため、例えば、立体画像表示装置用の円偏光板として有用である。
本発明の一実施形態に係る位相差フィルムを斜め延伸する工程を模式的に示す図である。 本発明の実施例において行った円偏光板2枚重ね時の光もれ評価の方法を模式的に示す図である。 本発明の参考例において行った位相差フィルム同士を重ねて斜め方向からの位相差を測定する方法を模式的に示す図である。
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。また、「%」は「重量%」を、「部」は「重量部」を意味する。
<1.楕円偏光フィルム>
本発明に係る楕円偏光フィルムは、(i)主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂組成物により構成され、固有複屈折値が負である長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して得られた、幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムと、(ii)長尺の偏光フィルムと、を備え、前記位相差フィルムの長手方向と偏光フィルムの長手方向とが一致するように積層されてなる長尺の楕円偏光フィルムであればよく、その他の構成については特に限定されない。
本発明に係る楕円偏光フィルムにおいて、前記位相差フィルムは、1/4波長板(λ/4板)として機能するものであると換言できる。すなわち、本発明に係る楕円偏光フィルムにおいて、前記位相差フィルムと偏光フィルムとは、それぞれ長尺の状態にて、前記位相差フィルムの面内の遅相軸と偏光フィルムの透過軸との間の角度がおよそ45°(45°±10°の範囲)となるように積層されている。
本発明に係る楕円偏光フィルムは、前記長尺の位相差フィルムと長尺の偏光フィルムとを連続的に積層、例えば、ロールtoロールで積層して得られるものであることが好ましい。
ここで、本明細書において「長尺」とは、長さについては特に限定されないが、例えば、長さが5m以上であることが好ましく、上限については特に限定されない。
また幅についても特に限定されないが、例えば、10cm〜5mが好ましく、30cm〜4mがより好ましく、50cm〜3mであることがさらに好ましい。また、長尺とは、帯状と換言することもできる。
また、本明細書において「楕円偏光」とは、楕円偏光、正円偏光のいずれをも含む意図で用いる。
本発明に係る楕円偏光フィルムにおいて、前記位相差フィルムと偏光フィルムとは、直接積層されていることが好ましい。例えば、前記位相差フィルムと偏光フィルムとの間には、接着剤層あるいは易接着層のみが存在し、他の光学フィルムを介さない構成であることが好ましい。通常、偏光フィルムは、偏光子の両側に偏光子保護フィルムが形成される構成であるが、例えば、その一方の偏光子保護フィルムを、前記位相差フィルムで置き換えた構成を挙げることができる。つまり、本発明に係る楕円偏光フィルムにおいては、前記偏光フィルム(偏光子)において前記位相差フィルムを設けた反対側の面に、偏光子保護フィルムを設けた構成であってもよい。また、前記偏光フィルム(偏光子)において偏光子保護フィルムを設けない構成や、偏光子保護フィルムに替えてその他の基材フィルムを設けた構成であっても構わない。
以下、本発明の楕円偏光フィルムに使用する各種材料等について順に説明する。
<1−1.位相差フィルム>
本発明に用いる位相差フィルムは、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂により構成され、固有複屈折値が負である長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して得られた、幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムである。
本位相差フィルムは、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂により構成されるものであればよく、前記主鎖に環構造を有するアクリル重合体以外の成分については特に限定されない。例えば、前記主鎖に環構造を有するアクリル重合体は、正の固有複屈折を有するため、負の固有複屈折を有するスチレン重合体を含ませることで、熱可塑性樹脂組成物の固有複屈折値を負とすることができる。
ここで、固有複屈折値とは、長尺の未延伸フィルムのものをいい、前記熱可塑性樹脂組成物が含む各重合体の固有複屈折率の兼ね合いにより決定される。なお、重合体の固有複屈折とは、当該重合体の分子鎖が一軸配向した層を想定したときに、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な方向の光の屈折率から、配向軸に垂直な方向の光の屈折率を引いた値をいう。
すなわち、本位相差フィルムは、負の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂組成物から得られるものであり、アクリル重合体の含有割合、及び、例えば、スチレン重合体の含有割合を調整することにより、位相差を幅広く制御することが可能である。使用可能なアクリル重合体、スチレン重合体については後述する。
本位相差フィルムは、長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して得られた、幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムである。換言すれば、本位相差フィルムの面内の遅相軸が、当該フィルムの長手方向に対しておよそ45°(45°±10°)傾いているものである。すなわち、本位相差フィルムは、偏光フィルムと組み合わせて、楕円偏光板として機能するものであり、例えば1/4波長板(λ/4板)といえる。なお、本明細書において、未延伸フィルムを原フィルムと称する場合もある。
本位相差フィルムは、長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して得られるものであるため、位相差フィルムロールと換言することもできる。例えば、位相差フィルムロールとは、帯状の位相差フィルムが巻回されているものを意図する。このような位相差フィルムロールであれば、帯状の偏光フィルムとのロールtoロール積層による楕円偏光フィルムの製造に好適である。
本位相差フィルムの構成は、斜め方向に延伸されている以外、基本的に、未延伸のフィルムの構成と同じである。ただし、位相差フィルムには、延伸前の原フィルムにない層、例えば、延伸後の工程により付加された層、又は延伸時もしくは延伸後の工程において変性した層、が存在しうる。
本位相差フィルムは二軸延伸性が弱いことが好ましい。例えば、本位相差フィルムのNZ係数の値は、0.90〜2.20であることが好ましい。また0.92〜1.30が好ましく、0.93〜1.25がより好ましく、さらには0.94〜1.20、特に0.95〜1.15が好ましい。NZ係数は、原フィルムの構成及び位相差フィルムの製造条件によって制御可能である。
本明細書において、NZ係数とは、位相差フィルムの二軸延伸性及び一軸延伸性を評価する指標である。NZ係数は、位相差フィルムの面内における遅相軸方向の屈折率をnx、当該フィルムの面内における進相軸方向の屈折率をny、当該フィルムの厚さ方向の屈折率をnzとしたときに、式(nx−nz)/(nx−ny)によって与えられる値である。位相差フィルムが示す面内位相差Re及び厚さ方向の位相差Rthを用いると、NZ係数は、式|Rth|/|Re|+0.5により与えられる。NZ係数の値が1に近いほど、位相差フィルムの二軸延伸性が弱く(一軸延伸性が強く)なる。
本位相差フィルムが示す面内位相差Reは、波長590nmの光に対する値にして、例えば、20nm〜500nmであり、30nm〜320nmが好ましく、より好ましくは50nm〜300nm、の範囲である。なお、面内位相差Reは、式(nx−ny)×dにより与えられる。位相差フィルムが示す面内位相差Reの値は、例えば、原フィルムの延伸条件により制御しうる。
本位相差フィルムは、厚さ方向の位相差Rthが−30nm以下である。好ましくは、−30nm〜−1000nmの範囲、より好ましくは−50nm〜−500nm、の範囲である。なお、位相差Rthは、フィルム面内における遅相軸の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸の屈折率をny、フィルムの厚さ方向の屈折率をnz、フィルムの厚さをdとしたときに、式{(nx+ny)/2−nz}×dにより与えられる。なお、本明細書における屈折率nx、ny、nzは、波長590nmの光に対する屈折率である。
厚さ方向の位相差Rth及び面内位相差Reが上記範囲にある負の位相差フィルムをIPSモードのLCDに配置することにより、斜めから画面を見たときの光漏れを抑制できる。また、高コントラスト及び低い色ずれの画像表示を実現できる。
本位相差フィルムにおける位相差Rth及び位相差Reの値、ならびに屈折率nx、ny及びnzの関係は、目的とする光学特性に応じて選択できる。
本位相差フィルムは、波長分散性を示すことが好ましい。従来、位相差フィルムには、ポリカーボネート、シクロオレフィン重合体が主に用いられてきたが、これら一般的な重合体から構成される位相差フィルムは、光の波長が短くなるほど位相差が大きくなる波長分散性(順波長分散性)を示すものが多い。本位相差フィルムもポリカーボネート又はシクロオレフィン重合体を使用したフィルムと同様の波長分散性を示すものであることが好ましい。特に、光学フィルムとして多用されているポリカーボネートと同様の波長分散性を示すことが好ましい。この構成によれば、本位相差フィルムを、例えば、市販されているポリカーボネート等を用いた円偏光板と組み合わせて使用する場合、波長分散性が類似するため、視認性が向上する。例えば、当該位相差フィルムを画像表示装置に用いたときに、当該装置の視認性、コントラスト特性が向上する。
波長分散性の指標は、以下のとおりである。波長447nmの光に対する位相差フィルムの面内位相差をRe(447)、波長590nmの光に対する位相差フィルムの面内位相差ReをRe(590)、波長750nmの光に対する面内位相差をRe(750)としたときに、例えば、Re(447)、Re(590)、及びRe(750)に関して、式Re(447)/Re(590)が1.00〜1.20かつ式Re(750)/Re(590)が0.80〜1.05を満たすことが好ましい。また、式Re(447)/Re(590)が1.05〜1.15かつ式Re(750)/Re(590)が0.90〜1.02であることが好ましく、式Re(447)/Re(590)が1.08〜1.12かつ式Re(750)/Re(590)が0.94〜1.00であることがより好ましい。
本位相差フィルムは、幅方向における光学特性の均一性に優れている。当該位相差フィルムをその幅方向に見たときに、光学的な配向角の最大値と最小値との差(光軸精度ΔR)は、例えば、2.5°以下であり、原フィルムの構成及び位相差フィルムの製造条件によっては1°以下となる。当該位相差フィルムを、その幅方向に見たときに、波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)の最大値と最小値との差は、例えば、4nm以下であり、原フィルムの構成及び位相差フィルムの製造条件によっては2nm以下となる。当該位相差フィルムを、その幅方向に見たときに、NZ係数の最大値と最小値との差は、例えば、0.10以下であり、原フィルムの構成及び位相差フィルムの製造条件によっては0.05以下、さらには0.02以下となる。
本位相差フィルムの厚さは、例えば、10μm〜500μmであり、好ましくは20μm〜300μmであり、より好ましくは30μm〜150μmである。
本位相差フィルムの全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%以上である。全光線透過率は、位相差フィルムの透明性の目安となる。全光線透過率が85%未満の位相差フィルムは、光学用フィルムとして適さない。全光線透過率は、透明性の目安であり、85%未満であると透明性が低下し、光学フィルムとして適さない。本発明の位相差フィルムは、アクリル重合体とスチレン重合体の相溶性が良好であるため、透明性の高い位相差フィルムが得られる。また、スチレン重合体として前記グラフト鎖にスチレン系重合体有するゴム質重合体を用いる場合、グラフト鎖がアクリロニトリルに由来する構成単位を含むと、アクリル重合体との相容性が向上するため、樹脂組成物中でゴム質重合体が均一に分散し、得られる位相差フィルムの全光線透過率が向上する。
本位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。Tgの上限は限定されないが、位相差フィルムの生産性及びハンドリング性を考慮すると、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。ここで、ガラス転移温度とは、ポリマー分子がミクロブラウン運動を始める温度であり、各種の測定方法があるが、本発明においては、示差走査熱熱量計(DSC)によって、JIS−K7121に準拠して、始点法で求めた温度と定義する。
本位相差フィルムを構成する樹脂の組成は、原フィルムを構成する樹脂の組成と基本的に同じである。
本位相差フィルムの表面には、必要に応じて、各種の機能性コーティング層が形成されていてもよい。機能性コーティング層は、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層である。機能性コーティング層の形成は、延伸前の原フィルムに対して行われてもよく、延伸により得た位相差フィルムに対して行われてもよい。
熱可塑性樹脂組成物をフィルム化する方法は特に限定されず、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法(プレス成形法)等、公知のフィルム成形方法を利用できる。熱可塑性樹脂組成物が溶液状である場合、例えばキャスト成形すればよい。熱可塑性樹脂組成物が固形状である場合、溶融押出やプレス成形などの成形手法を用いればよい。
溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、及びこれらの混合溶媒などの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル;などが挙げられる。これら溶媒は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーターなどが挙げられる。
溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法などが挙げられ、その際の、フィルムの成形温度は、好ましくは150℃〜350℃、より好ましくは200℃〜300℃である。
本位相差フィルムは、各種の光学部材として好適に用いてもよい。光学部材は、例えば、光学用保護フィルム、具体的には、各種の光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)の基板の保護フィルム、LCDなどの画像表示装置が備える、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどに使用してもよい。
本位相差フィルムの原フィルムとしては、例えば、特開2010−262253号公報に記載のものを用いることができる。以下に、本位相差フィルムに関し、斜め延伸前の原フィルムを製造するための熱可塑性樹脂組成物について説明し、その後、原フィルムを斜め延伸して幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムを得る方法を説明する。
<1−1−1.熱可塑性樹脂組成物>
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂組成物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル重合体、スチレン重合体、その他の成分を含むものを例示できる。
<1−1−2.アクリル重合体>
アクリル重合体は、主鎖に環構造を有するアクリル重合体である。ここで、前記環構造が、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、無水マレイン酸構造、グルタルイミド構造、及びマレイミド構造から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。特に、耐熱性からはラクトン環構造とグルタルイミド構造を有するものが好ましい。これにより、得られた位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)が向上する。高いTgを有する位相差フィルムは、電源、光源、回路基板などの発熱体が狭い空間に集積された構造を有する、LCDなどの画像表示装置への使用に好適である。これに加えて、環構造の種類によっては、得られた位相差フィルムが示す位相差が増大する。
本熱可塑性樹脂組成物中における主鎖に環構造を有するアクリル重合体の含有率は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。
主鎖に環構造を有するアクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位と環構造とを含む。当該アクリル重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位と環構造との含有率の合計は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上である。環構造の含有率は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上である。環構造の含有率が40重量%を超えると、そのような環構造の含有率を有する重合体の形成が難しくなったり(環化反応を進行させる際にゲルが生じやすくなる)、当該重合体を含む熱可塑性樹脂の成形性及びハンドリング性が低下して、原フィルムの生産性が低下したりすることがある。
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどの単量体に由来する構成単位である。アクリル重合体は、これらの構成単位を2種類以上有しうる。アクリル重合体はメタクリル酸メチル(MMA)単位を有することが好ましく、この場合、位相差フィルムの熱安定性が向上する。
アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位以外の構成単位を有しうる。当該構成単位は、例えば、水酸基及び/又はカルボン酸基を有する構成単位である。水酸基及び/又はカルボン酸基を有する構成単位は、その種類によっては、重合後の環化反応によって重合体の主鎖に位置する環構造に変化する。アクリル重合体には、環構造に変化しなかった、未反応のこれらの構成単位が残りうる。水酸基を有する構成単位は、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルの各単量体に由来する構成単位である。カルボン酸基を有する構成単位は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸の各単量体に由来する構成単位である。アクリル重合体は、これらの構成単位を2種類以上有しうる。
アクリル重合体が有しうる、(メタ)アクリル酸エステル単位以外のさらなる構成単位は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールの各単量体に由来する構成単位である。アクリル重合体は、これらの構成単位を2種類以上有しうる。
環構造の種類は特に限定されず、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、マレイミド構造及び無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である。なかでも、成形時における耐熱性の観点から、ラクトン環構造、グルタルイミド構造及びマレイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
アクリル重合体が主鎖に有していてもよいラクトン環構造は特に限定されず、例えば、4から8員環であってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環又は6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造は、例えば、特開2004−168882号公報に開示されている構造であるが、前駆体の重合収率が高いこと、前駆体の環化反応により、高いラクトン環含有率を有するアクリル重合体が得られること、MMA単位を構成単位として有する重合体を前駆体にできること、などの理由から以下の式(1)に示される構造が好ましい。
Figure 2013122584
式(1)において、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基である。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
式(1)における有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基のような炭素数1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基のような炭素数1〜20の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基のような炭素数1〜20の芳香族炭化水素基である。上記アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基及びエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換されていてもよい。
アクリル重合体が主鎖にラクトン環構造を有する場合、当該重合体におけるラクトン環構造の含有率は特に限定されない。含有率は、例えば5〜90重量%であり、好ましくは10〜80重量%であり、より好ましくは10〜70重量%であり、さらに好ましくは20〜60重量%である。アクリル重合体における環構造の含有率が過度に小さくなると、得られた位相差フィルムにおいて、環構造の存在により期待される特性、例えば、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度及び光学特性が不十分となることがある。環構造の含有率が過度に大きくなると、アクリル重合体及び当該重合体を含む熱可塑性樹脂の成形性及びハンドリング性が低下して、原フィルム及び位相差フィルムの生産性が低下する。
アクリル重合体におけるラクトン環構造の含有率は、公知の方法により評価しうる。具体的には、例えば、アクリル重合体に対してダイナミックTG測定を実施し、150℃〜300℃に加熱したときの重量減少率(実測重量減少率)を求める。この重量減少率は、評価対象であるアクリル重合体に残留する水酸基の量に対応する。150℃は、アクリル重合体に残留する未反応の(環化しなかった)水酸基が再び環化反応を開始する温度であり、300℃は、アクリル重合体が分解を始める温度である。この実測重量減少率と、環化反応前の前駆体が有する全ての水酸基(前駆体の組成から算出しうる)が脱アルコール環化反応したと仮定したときの理論重量減少率とから、ラクトン環構造の含有率を算出しうる。すなわち、ラクトン環構造を有するアクリル重合体のダイナミックTG測定において、150℃〜300℃までの間の実測重量減少率(X)の測定を行う。これとは別に、当該重合体の組成から、その組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成(脱アルコール環化反応)に関与すると仮定したときの理論重量減少率(Y)を求める。理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール環化反応に関わる構造(水酸基)を有する単量体のモル比、すなわち当該単量体の含有率から算出しうる。これらの値X,Yを式{1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))}×100(%)に代入して、脱アルコール反応率Aが得られる。次に、求めた脱アルコール反応率Aに対応する割合で環化反応が進行したと仮定して、式B×A×MR/Mmにより、ラクトン環の含有率が求められる。Bは、前駆体(ラクトン環化反応が進行する前の重合体)における、上記水酸基を有する単量体の含有率であり、MRは、環化反応により形成されるラクトン環構造の式量であり、Mmは、上記水酸基を有する単量体の分子量であり、Aは、脱アルコール反応率である。
主鎖に環構造を有するアクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは8万以上、より好ましくは10万以上である。分子量の分散度は、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3以下である。これらの場合、アクリル重合体に存在する分岐構造が少なく、加工時の熱安定性が向上するとともに、得られた位相差フィルムの強度及び外観が向上する。Mw及び分散度は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)を用いて、ポリスチレン換算により求めうる。分散度は、重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnである。Mnも、GPCを用いて求めうる。
主鎖に環構造を有するアクリル重合体のガラス転移温度Tgは、例えば、110℃以上であり、115℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。一方、Tgが200℃を越えると、溶融製膜が困難になるなど、フィルムへの成形性及びフィルムの延伸性が低下する。主鎖に環構造を有さない一般的なアクリル重合体のTgは100℃程度である。
主鎖に環構造を有するアクリル重合体は、公知の方法により製造しうる。環構造が無水グルタル酸構造又はグルタルイミド構造であるアクリル重合体は、例えば、WO2007/26659号公報又はWO2005/108438号公報に記載されている方法により製造しうる。環構造が無水マレイン酸構造又はN−置換マレイミド構造であるアクリル重合体は、例えば、特開昭57−153008号公報又は特開2007−31537号公報に記載されている方法により製造できる。環構造がラクトン環構造であるアクリル重合体は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報又は特開2007−63541号公報に記載されている方法により製造できる。
前記熱可塑性樹脂組成物は、上述した以外の他の重合体を含みうる。熱可塑性樹脂における当該他の重合体の含有率は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜25重量%、さらに好ましくは0〜10重量%である。当該重合体は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)のようなオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂のような含ハロゲン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体のようなスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステル;ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートのような生分解性ポリエステル;ポリカーボネート;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610のようなポリアミド;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム又はアクリル系ゴムを配合したABS樹脂又はASA樹脂のようなゴム質重合体;である。
前記熱可塑性樹脂組成物は、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含むものであるが、当該アクリル重合体との相溶性の観点から、スチレン重合体が好ましい。
特に、環構造をアクリル重合体の主鎖に導入すると、正の固有複屈折を有する。このため、他の成分により熱可塑性樹脂組成物の固有複屈折値を負とすることが好ましく、かかる観点からも、スチレン重合体が好ましい。
<1−1−3.スチレン重合体>
スチレン重合体は、負の固有複屈折を有する以外は特に限定されず、スチレン系単量体に由来する構成単位(スチレン単位)を含む公知のスチレン系重合体を使用できる。スチレン系単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、クロロスチレンなどが挙げられる。スチレン重合体のスチレン単位の含有量は10重量%以上が好ましく、更に好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。
スチレン重合体の具体的な種類は特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などであってもよい。アクリル重合体との相容性に優れることから、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体に由来する構成単位を含むスチレン系重合体が好ましく、アクリロニトリルに由来する構成単位を含むスチレン系重合体がより好ましく、アクリロニトリル−スチレン共重合体やアクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体が特に好ましい。
なお、スチレン重合体がアクリル重合体と相容性を有するか否かは、両者を混合して得た樹脂組成物のTgを後述する方法によって測定することにより確認できる。一般的には、当該組成物のTgが1点のみ確認されれば、スチレン重合体はアクリル重合体と相容性を有しているといえる。
スチレン重合体が、アクリロニトリル−スチレン共重合体である場合、当該共重合体の全構成単位におけるスチレン単位が占める割合は特に限定されないが、通常、60〜80重量%程度の範囲であればよい。
スチレン重合体がアクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体である場合、当該共重合体の全構成単位におけるスチレン単位が占める割合は特に限定されないが、通常、55〜80重量%程度の範囲であればよい。
スチレン重合体はグラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体を含んでいてもよい。グラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体は、特に限定されないが、例えば、微粒子のアクリルゴムやブタジエンゴムなどの存在下にスチレン系単量体を含む単量体を重合することによって製造が可能である。ゴム質重合体は、当該アクリル重合体と相溶し得る組成を有するグラフト部を表面に有することが好ましい。ゴム質重合体の平均粒子径は、位相差フィルムとしての透明性の向上の観点から、例えば、400nm以下であり、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは70nm以下である。
グラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体としては、グラフト鎖にアクリロニトリルに由来する構成単位を含むスチレン系重合体を有するゴム質重合体が好ましい。グラフト鎖がアクリロニトリルに由来する構成単位を含むと、アクリル重合体との相容性が向上するため、樹脂組成物中でゴム質重合体が均一に分散し、得られる位相差フィルムの全光線透過率が向上する。具体的には、アクリルゴムやブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトしたASA樹脂やABS樹脂、AES樹脂が挙げられ、スチレン重合体の負の固有複屈折を低下させないことから、ASA樹脂が特に好ましい。
スチレン重合体の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは150,000〜300,000である。
前記前記熱可塑性樹脂組成物に、アクリル重合体とスチレン重合体を含む場合、当該樹脂組成物中、アクリル重合体の含有割合は、50〜80重量%が好ましく、より好ましくは60〜80重量%である。また、スチレン系重合体の含有割合は20〜50重量%が好ましく、より好ましくは25〜40重量%である。
<1−1−4.その他の成分>
前記熱可塑性樹脂組成物は、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する重合体を含みうる。この場合、熱可塑性樹脂の組成によっては、得られた位相差フィルムが示す複屈折の波長分散性の制御の自由度が高くなり、例えば、逆波長分散性を示す位相差フィルムが得られる。逆波長分散性は、少なくとも可視光域において、波長が短くなるほど複屈折が小さくなる(位相差が小さくなる)波長分散性である。複素芳香族基は、例えば、カルバゾール基、ピリジン基、チオフェン基及びイミダゾール基から選ばれる少なくとも1種である。複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位は、例えば、N−ビニルカルバゾール単位、ビニルピリジン単位、ビニルチオフェン単位及びビニルイミダゾール単位から選ばれる少なくとも1種である。なかでも、N−ビニルカルバゾール単位が好ましく、この場合、位相差フィルムが良好な逆波長分散性を示しうる。逆波長分散性を示す位相差フィルムによって、高い反射防止効果を示す楕円偏光板が実現する。
複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する重合体は、主鎖に環構造を有するアクリル重合体でありうる。また、前記熱可塑性樹脂組成物は、主鎖に環構造を有するアクリル重合体とは異なる重合体として、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する重合体を含みうる。
逆波長分散性を示す位相差フィルムは、主鎖に環構造を有するアクリル重合体と、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する重合体とを原フィルムが同一の層に含む場合だけではなく、双方の重合体を別々の層に含む場合(各重合体を含む層の積層構造を有する場合)にも、実現しうる。
前記熱可塑性樹脂組成物は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、位相差上昇剤及び位相差低減剤のような位相差調整剤;位相差安定剤、熱安定剤等の安定剤:ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー:樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;アンチブロッキング剤;マット剤;酸補足剤;金属不活性化剤;ASA及びABSのようなゴム質重合体;その他、位相差フィルムの光学特性及び/又は機械的特性を調整する材料である。添加剤の添加量は、例えば、0〜10重量%であり、好ましくは0〜5重量%であり、より好ましくは0〜2重量%であり、さらに好ましくは0〜0.5重量%である。
前記熱可塑性樹脂組成物は、特に限定されないが、アクリル重合体とスチレン重合体、及び、その他の熱可塑性樹脂や添加剤などを、従来公知の混合方法にて混合することで製造できる。例えば、オムニミキサー等の混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を押出混練する方法を採用することができる。この場合、押出混練に用いる混練機は、特に限定されるものではなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機や加圧ニーダー等、例えば、従来公知の混練機を用いることができる。成形温度は、好ましくは200〜350℃、より好ましくは250〜300℃、更に好ましくは255〜300℃、特に好ましくは260〜300℃である。
<1−1−5.原フィルムを斜め延伸する方法(位相差フィルムの製造方法)>
本発明において、原フィルムを斜め延伸する方法について、図1を参照しながら説明する。図1は、前記の製造方法を実施しうる加熱延伸装置1における、左右のクリップ群の走行状態を模式的に示している。図1に示す装置1では、複数個のクリップにより構成される左側クリップ群及び複数個のクリップにより構成される右側クリップ群の各々に属するクリップが、クリップイン部(CIL,CIR)からL1〜L10,R1〜R9を経てクリップアウト部(COL,COR)に達し、左側クリップレールLR及び右側クリップレールRRを経て、再びクリップイン部(CIL,CIR)に戻る走行を繰り返している。図1では原フィルムの図示が省略されているが、クリップイン部(CIL,CIR)において、帯状の原フィルムにおける左右の長辺縁部が、それぞれ左側クリップ群及び右側クリップ群によって把持される。原フィルムは、当該フィルムを把持する左右のクリップ群の走行によって、加熱延伸装置1に導かれるとともに、当該装置1における予熱ゾーンZ1、前段延伸ゾーンZ2、後段延伸ゾーンZ3及び熱処理ゾーンZ4をこの順に通過する。
本方法では、クリップ群が帯状の原フィルムを把持する際に、すなわち、クリップイン部(CIL,CIR)において、左右双方のクリップ群の走行速度が互いに等しい。クリップインの際に左右のクリップ群の走行速度が等しくない場合、原フィルムが、走行速度が大きいクリップ側に引っ張られることにより、加熱延伸装置1への原フィルムの移動安定性及び加熱延伸装置1における原フィルムの移動安定性が低下する。このため、望む光学特性を有する位相差フィルムが得られないことがある。最も悪いケースでは、原フィルムが破断し、帯状の位相差フィルムが製造できないことがある。
ここで、「等しい」とは、完全に同一である状態だけではなく、僅かな差がある状態を含む。現実には、斜め方向に原フィルムを延伸する際に発生する応力によって、相対的に先行するクリップに対して引き戻す力が加わり、相対的に遅れるクリップに対して前に進める力が加わる。このため、クリップイン時における左側クリップ群の走行速度と、右側クリップ群の走行速度とを、常に、完全に同一となるようにコントロールすることは難しい。これを考慮し、本発明の製造方法では、クリップイン時における左側クリップ群の走行速度v1と、右側クリップ群の走行速度v2との比v1/v2を0.98〜1.02に保持する。比v1/v2は、好ましくは0.99〜1.01、より好ましくは0.995〜1.005である。
クリップインの際に左右のクリップ間に走行速度差があったとしても、クリップイン部(CIL,CIR)の直前に配置されている原フィルムの搬送ロールから当該クリップイン部までの区間において原フィルムの流れ方向に張力を与えることで、走行速度差により生じる原フィルムのシワ又は弛みを緩和して、当該フィルムの移動安定性を改善する方法が考えられる。しかし、この方法は、以下の理由1,2から、現実には実施できない。
1.室温に保持されている当該区間で原フィルムに張力をかけたとしても、原フィルムに生じるシワ及び弛みの緩和は難しい。さらに、アクリル重合体、特に主鎖に環構造を有するアクリル重合体、を含む熱可塑性樹脂により構成されるフィルムは脆い傾向があり、張力をかけると破断することがある。
2.当該区間に加熱装置を配置し、原フィルムを加熱しながら張力をかけた場合、当該フィルムがその長手方向に延伸される。この延伸は、後に加熱延伸装置1においてなされる斜め方向の延伸を打ち消す。これにより、目的とする光学特性が得られないだけではなく、得られた位相差フィルムが示す二軸延伸性が増大する。
左側クリップと右側クリップとが原フィルムの周辺縁部を把持するタイミングは、同時でありうるが、必ずしも同時でなくてもよい。
左側クリップが原フィルムを把持するクリップイン部(CIL)と、右側クリップが原フィルムを把持するクリップイン部(CIR)とを結ぶ直線が、原フィルムの長手方向(流れ方向)に対して垂直であることが好ましい。この場合、クリップイン部(CIL,CIR)から予熱ゾーンZ1への原フィルムの移動安定性が向上する。特に、左側クリップと右側クリップとの間で、原フィルムの周辺縁部を把持するタイミングが同時でないことがある場合に、上記直線が、原フィルムの長手方向に対して垂直であることが好ましい。
予熱ゾーンZ1では、加熱延伸装置1に供給された原フィルムが、後に通過する延伸ゾーン(前段延伸ゾーンZ2及び後段延伸ゾーンZ3)において延伸可能となる温度にまで加熱される。原フィルムの加熱が不十分なまま延伸を開始すると、原フィルムが破断することがある。このため、例えば、加熱延伸装置における予熱ゾーンZ1の温調の設定温度あるいは予熱ゾーンZ1における原フィルムが通過する雰囲気の温度を、当該延伸可能となる温度に設定する。予熱ゾーンZ1において原フィルムが加熱される温度は、延伸ゾーンZ1における原フィルムの延伸温度と等しい温度又は僅かに高い温度であることが好ましい。予熱ゾーンZ1では、基本的に、原フィルムの延伸は実施されない。ただし、加熱によって原フィルムに弛み又は収縮が生じることがあり、当該弛み又は収縮を取り除くために、各クリップ群における隣り合うクリップ間の間隔(原フィルムの長手方向におけるクリップ間の間隔)及び/又はクリップ群間の間隔(原フィルムの幅方向におけるクリップ間の間隔)を調整しうる。
延伸ゾーンは、予熱ゾーンから走行移動してきた一方のクリップ群の走行速度v1を順に減少させる第1の区間を有する。図1に示す例では、前段延伸ゾーンZ2が第1の区間に対応する。前段延伸ゾーンZ2では、予熱ゾーンZ1から走行移動してきた左側クリップ群の走行速度v1が順に減少する。これにより、前段延伸ゾーンZ2において、右側クリップに対する左側クリップの走行遅れが発生し、隣り合う左側クリップ間の間隔が、走行速度v1の減少に比例して徐々に狭くなる。そして、発生した当該走行遅れに基づいて、原フィルムが、当該フィルムの長手方向に対して斜めに延伸される。この延伸は、縦延伸(フィルム長手方向の延伸)と横延伸(フィルム幅方向の延伸)とのベクトル和による延伸とは異なり、一軸延伸性が強い。これにより、長手方向に対して傾いた遅相軸を有する(斜め延伸された)帯状の位相差フィルムであって、従来よりもNZ係数の値が1に近く、二軸延伸性が弱い(一軸延伸性が強い)位相差フィルムが製造される。
従来、加熱延伸装置の延伸ゾーンにおいて、原フィルムを把持するクリップ群の走行速度を減少させて(隣り合うクリップ間の間隔を狭めて)、延伸フィルムである位相差フィルムを製造する技術、少なくとも、斜め延伸された位相差フィルムを製造する技術、は存在しない。当業者の技術常識によれば、延伸ゾーンでは、あくまでもクリップ群の走行速度が増大する(隣り合うクリップ間の間隔が広がる)。本方法は、このような当業者の技術常識に反してなされた方法である。
第1の区間において一方のクリップ群の走行速度v1が減少した後の当該速度v12が、第1の区間において走行速度v1が減少する前の当該速度v11の30%以上95%以下であることが好ましい。この値(速度比v12/v11)は、第1の区間における、上記一方のクリップ群の減速度に対応する。減速度の好ましい範囲は、原フィルムを構成する熱可塑性樹脂の種類、原フィルムの幅、及び加熱延伸装置における第1の区間の長さなどにより、変化する。具体的には、好ましい減速度の上限(好ましい上記速度比v12/v11の下限)は、例えば、一方のクリップ群の減速によって原フィルムの周辺縁部を中心に発生するシワの影響及び当該シワによる原フィルムの破断の回避といった要件により定められる。ここで、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂により原フィルムが構成される場合、フィルムとしたときの当該樹脂の「脆さ」から、好ましい減速度の上限が小さくなる。原フィルムの幅が広い場合、一方のクリップ群の減速によって原フィルムに発生するシワの影響が当該フィルムの中央部にまで及びにくくなるとともに、端部にとどまるシワは後に切除しうるため、好ましい減速度の上限が大きくなる。速度比v12/v11の下限は30%が好ましく、33%(第1の区間において一方のクリップ群の速度v1及び隣り合うクリップ間の間隔が1/3となる)がより好ましく、40%(第1の区間において一方のクリップ群の速度v1及び隣り合うクリップ間の間隔が1/2.5となる)がさらに好ましい。原フィルムがシワにより破断し難い熱可塑性樹脂により構成される場合、さらに高い減速度を好ましい範囲として採用しうることがある。一方、好ましい減速度の下限(好ましい上記速度比v12/v11の上限)は、例えば、第1の区間の長さの影響を受けやすい。第1の区間の長さが長いほど、小さい減速度で斜め延伸の効果が得られるためである。しかし、現実の加熱延伸装置においてとりうる第1の区間の長さには限度があり、当該限度を考慮すると、速度比v12/v11は95%以下が好ましい。
図1に示す例では、速度v12は、第1の区間である前段延伸ゾーンZ2が終了するポイントL6における左側クリップの走行速度である。速度v11は、第1の区間である前段延伸ゾーンZ2が始まる直前のポイントL3における左側クリップの走行速度である。ポイントL6では、隣り合う左側クリップ間の間隔が最も狭くなる。本明細書において、走行速度v1が減少する前のポイントL3における隣り合う左側クリップ間の間隔に対する、ポイントL6における隣り合う左側クリップ間の間隔の比を、前段延伸ゾーンZ2における左側クリップ倍率(M−LB)と呼ぶ。M−LBの値は、速度比v12/v11に等しい。同様に、前段延伸ゾーンZ2における右側クリップ倍率(M−RB)が定められる。
第1の区間では、他方のクリップ群(図1に示す例では、右側クリップ群)の走行速度v2が保持されることが好ましい。このとき、前段延伸ゾーンZ2における右側クリップ倍率(M−RB)が1である。他方のクリップ群の走行速度を変化させると、原フィルムに対して、その長手方向に延伸する力(縦延伸の力)が加わる。これは、得られた位相差フィルムの二軸延伸性が強くなる要因となるし、当該フィルムの幅方向に対する光学特性の均一性が低下する要因となる。
延伸ゾーンは、上記第1の区間より後に、第1の区間を経て走行移動してきた上記一方のクリップ群の走行速度を順に回復させる第2の区間をさらに有する。図1に示す例では、後段延伸ゾーンZ3が第2の区間に対応する。後段延伸ゾーンZ3では、前段延伸ゾーンZ2から走行移動してきた左側クリップ群の走行速度が順に増加し、左側クリップ群の走行速度v1と右側クリップ群の走行速度v2とが互いに等しくなる。具体的には、左側クリップ群の走行速度v1と、右側クリップ群の走行速度v2との比v1/v2が、0.98〜1.02、好ましくは0.99〜1.01、より好ましくは0.995〜1.005となる。
第2の区間において、双方のクリップ群の走行速度は、第2の区間が終了したポイントにおいて互いに等しい状態にあれば、任意の経過を辿ることができる。図1に示す例を用いて説明すると、左側クリップ群及び右側クリップ群は、例えば、以下の経過を辿る。
(1)左側クリップ群の走行速度v1を、第1の区間である前段延伸ゾーンに移動する直前の速度v11にまで戻さず、その分、右側クリップ群の走行速度v2を減少させる。この経過では、左右双方のクリップ群における隣り合うクリップ間の間隔は、原フィルムが延伸ゾーンに移動する前の時点よりも狭くなる。
(2)右側クリップ群の走行速度v2を、前段延伸ゾーンZ2及び後段延伸ゾーンZ3の間、一定に保ち、左側クリップ群の走行速度v1を、第1の区間である前段延伸ゾーンZ2に移動する直前の速度v11にまで戻す。この経過では、左右双方のクリップ群における隣り合うクリップ間の間隔は、原フィルムが延伸ゾーンに移動する前の時点と同一である。
(3)右側クリップ群の走行速度v2を、後段延伸ゾーンZ3において僅かに増大させ、これに合わせるように、左側クリップ群の走行速度v1を増大させる。この経過では、左右双方のクリップ群における隣り合うクリップ間の間隔は、原フィルムが延伸ゾーンに移動する前の時点よりも広くなる。
すなわち、図1に示す例において、左側クリップ群の走行速度は、前段延伸ゾーンZ2に移動する直前の時点と、後段延伸ゾーンZ3が終了した直後の時点との間で、必ずしも同一でなくてもよい(同一でもよい)。ただし、本方法では、第2の区間において上記一方のクリップ群の走行速度v1が回復した後の当該速度v14が、第1の区間において上記走行速度v1が減少する前の当該速度v11の90%〜110%であることが好ましい。この値は、第2の区間における、上記一方のクリップ群の走行速度の回復度に対応する。図1に示す例では、速度v14は、第2の区間である後段延伸ゾーンZ3が終了するポイントL9における左側クリップの走行速度である。回復度が90%に満たない場合、前段延伸ゾーンZ2において、隣り合ったクリップ間の間隔が狭まることによって発生したシワの除去が不十分になることがある。回復度が110%を超える場合、得られた位相差フィルムの二軸延伸性が増す。
図1に示す例では、左右双方のクリップ群は、上記(2)の経過を辿っている。具体的には、後段延伸ゾーンZ3に移動してきた直後(L6及びR5)では、左右のクリップ間で走行速度に差があるが、後段延伸ゾーンZ3において左側クリップの走行速度が回復し、当該ゾーンZ3の末端(L9及びR7)では、左右のクリップの走行速度が互いに等しくなる。右側クリップの走行速度は、前段延伸ゾーンZ2及び後段延伸ゾーンZ3を通して同一である。M−RBと同様に、後段延伸ゾーンZ3における左側クリップ倍率(M−LC)を定めると、図1に示す例では、(M−LB)×(M−LC)=1となる。すなわち、図1に示す例では、延伸ゾーンに移動する前の時点と、延伸ゾーンから移動した後の時点との間で、左右の双方のクリップ群ともに、隣り合うクリップ間の間隔が等しい(ただし、クリップイン時における左右クリップの走行速度の同一性で説明したように、斜め延伸による応力がクリップに加わるため、(M−LB)×(M−LC)=1であったとしても、走行速度の同一性と同様のずれが生じることがある)。延伸ゾーン内では、左側クリップ群のみ、隣り合うクリップ間の間隔が狭くなる。前段延伸ゾーンZ2と後段延伸ゾーンZ3の境界であるポイントL6において、当該間隔は最も狭くなり、左側クリップの走行速度は最も遅くなる。
本方法では、延伸ゾーンが、第1の区間と第2の区間とを有する。第2の区間は、第1の区間の後(原フィルムの下流側)にある。本発明の効果が得られる限り、延伸ゾーンは、第1の区間にも第2の区間にも属さない他の区間、例えば、左右のクリップが走行速度の差を保ったまま走行する区間、を有しうる。
前段延伸ゾーン及び後段延伸ゾーンにおけるこのような延伸は、独立に加減速しうる複数のクリップにより構成される一対のクリップ群を備えた同時二軸延伸機により実施しうる。ただし、通常の延伸機は、フィルムの延伸時にクリップを減速させる状態を想定していない。このため、必要に応じて、延伸機の構造及び/又は延伸機の制御プログラムの改良が必要になることがある。当業者であれば、本方法に関する本明細書の記載に従うことで、このような改良を実施しうる。
図1に示す例では、クリップ群の走行速度を減少させる第1の区間が左側クリップ側に設けられているが、本方法はこの例に限定されず、例えば、右側クリップ側に第1の区間が設けられていてもよい。
本方法では、延伸ゾーンにおいて、原フィルムの幅方向に対する左右双方のクリップ群間の間隔を増大させて、原フィルムをさらに横延伸してもよい。
横延伸は、前段延伸ゾーンZ2及び/又は後段延伸ゾーンZ3にて実施しうる。横延伸を併用することによって、得られた位相差フィルムが示す光学特性(例えば、光軸の向き、及び位相差値、特に光軸の向き)の制御の自由度が高くなる。
例えば、図1に示す例において、フィルム面内の遅相軸が当該フィルムの長手方向に対して45°傾いた位相差フィルムを得る場合、横延伸を併用することが好ましい。
横延伸を併用する場合、前段延伸ゾーンZ2での横延伸の倍率をT−Z2、後段延伸ゾーンZ3での横延伸の倍率をT−Z3として、式(M−LB)×(T−Z2)1/2<1が満たされるように延伸倍率を設定することが好ましい。原フィルムを、ある方向に延伸倍率X倍で一軸延伸した場合、当該方向と垂直な方向にX1/2倍だけ収縮する力が働く。上記式が満たされるように横延伸の倍率を設定することにより、この力による原フィルムの収縮が抑えられ、得られた位相差フィルムにおける二軸延伸性の増加が抑えられる。通常のテンター横延伸では、この収縮が、得られた位相差フィルムにおけるボウイング現象及び強い二軸延伸性の原因となる。
本方法は、さらに、得られた位相差フィルムの幅方向における光学特性(例えば、位相差、光軸の向き、及びNZ係数で表される一軸延伸性)の均一性を向上させる点からも有利である。
熱処理ゾーンにおける熱処理温度は、通常、延伸ゾーンにおける延伸温度未満である。仮に、従来の方法と同じように、前段延伸ゾーン及び後段延伸ゾーンにおいて原フィルムを把持する左側クリップの間隔が広がり続けている場合、右側クリップが熱処理ゾーンに移動した後も、左側クリップの間隔が広がり続けることになる(例えば、図1におけるL8−R8において、左側クリップの間隔が広がり続ける状態にある)。この状態では、未だ延伸ゾーンにある左側クリップの近傍では原フィルムが積極的に延伸される一方で、既に熱処理ゾーンに移動した右側クリップの近傍では、原フィルムの温度が低く、当該フィルムが延伸されない。これは、得られた位相差フィルムにおける幅方向の光学特性のムラにつながる。これに対して、本方法では、後段延伸ゾーンにおいて左側クリップの走行速度が増加するが、これは、前段延伸ゾーンにおいて減少した走行速度が回復しているだけであり、回復に従って、走行遅れに伴う斜め延伸の力が弱くなっていく。このため、得られた位相差フィルムにおける幅方向の光学特性の均一性が向上する。
延伸ゾーンにおける延伸温度は、原フィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準に、好ましくはTg−20℃〜Tg+60℃であり、より好ましくはTg−10℃〜Tg+30℃である。延伸温度がTg−20℃未満の場合、延伸の際に原フィルムの破断が起こりやすくなる。延伸温度がTg+60℃を越える場合、延伸ゾーンにおける原フィルムの弛みが大きくなって、当該フィルムと加熱延伸装置とが接触したり、原フィルムの破断が起こりやすくなる。延伸温度は、例えば、加熱延伸装置における延伸ゾーンの温調の設定温度あるいは延伸ゾーンにおける原フィルムが通過する雰囲気の温度である。原フィルムが複数の層からなる場合、最も高いTgを示す熱可塑性樹脂層のTgが、延伸温度の基準となる。
延伸ゾーンにおける延伸速度(斜め延伸方向の延伸速度)は、例えば、10〜20000%/分であり、好ましくは100〜10000%/分である。延伸速度が10%/分よりも小さい場合、延伸を完了するまでに必要な時間が長くなり、位相差フィルムの製造コストが増大する。これに加えて、延伸ゾーンに必要な長さが長大となり、そのような加熱延伸装置は現実的でない。延伸速度が20000%/分よりも大きい場合、原フィルムの破断が起きやすくなる。
熱処理ゾーンZ4では、延伸ゾーンにおいて延伸された原フィルムが、延伸ゾーンにおける延伸温度以下の特定の温度(熱処理温度)に保持される。これにより、当該フィルムに含まれる重合体の分子配向が安定し、当該フィルムの歪みが軽減されて、最終的に得られた位相差フィルムが示す特性、例えば、光学特性及び機械的特性、の安定化が図られる。熱処理温度は、延伸ゾーンにおける延伸温度未満が好ましい。熱処理ゾーンの全域にわたって、同一の熱処理温度に保持されている必要は必ずしもない。熱処理ゾーンにおける少なくとも一部の熱処理温度が、延伸ゾーンにおける延伸温度未満の温度であることが好ましい。原フィルムが延伸温度未満になると、収縮する。このとき、原フィルムに生じる収縮応力を適切に保つことによって、延伸によって生じた原フィルム中の分子配向が大きく損なわれることなく安定し、最終的に得られた位相差フィルムが示す特性の安定化が図られる。熱処理ゾーンにおける収縮応力を適切に保つために、例えば、原フィルムの長手方向におけるクリップ間の間隔、及び/又は原フィルムの幅方向におけるクリップ間の間隔を調整しうる。調整方法は、例えば、収縮応力が大きい場合に、フィルムの破断を防ぐためにクリップ間の間隔を狭める方向である。熱処理温度は、延伸ゾーンにおける、熱処理ゾーンに隣接する部分の延伸温度をT℃として、好ましくはT−80℃〜T−1℃であり、より好ましくはT−40℃〜T−2℃である。熱処理温度は、例えば、加熱延伸装置における熱処理ゾーンの温調の設定温度あるいは熱処理ゾーンにおける原フィルムが通過する雰囲気の温度である。
熱処理ゾーンを通過した後、原フィルムが左右双方のクリップ群から解放される(クリップアウト)。本方法では、延伸後の原フィルムをクリップ群が離す際、すなわち、クリップアウト部(COL,COR)において、左右双方のクリップ群の走行速度が互いに等しい。クリップアウトの際に左右のクリップの走行速度が等しくない場合、クリップアウトしてから原フィルムが最初に接するガイドロールまでの区間において、フィルムに片弛みが生じる(走行速度が速いクリップ側に、弛みが生じる)。
クリップアウトの際に左右のクリップの走行速度差があったとしても、クリップアウトしてから原フィルムが最初に接するガイドロールまでの区間において原フィルムの流れ方向に張力を与えることで、走行速度差により生じる原フィルムのシワ又は弛みを緩和して、当該フィルムの移動安定性を改善する方法が考えられる。しかし、この方法は、以下の理由1〜3から、現実には実施できない。
1.室温に保持されている当該区間で原フィルムに張力をかけたとしても、原フィルムに生じるシワ及び弛みの緩和は難しい。さらに、アクリル重合体、特に主鎖に環構造を有するアクリル重合体、を含む熱可塑性樹脂により構成されるフィルムは脆い傾向があり、当該フィルムの端部(クリップが把持していた部分)をニップして張力をかけると、フィルムが破断する。
2.当該区間に加熱装置を配置し、原フィルムを加熱しながら張力をかけたとしても、加熱条件によっては弛みを緩和しうるものの、膜厚の大きいフィルム端部(クリップが把持していた部分)をニップして張力をかけるため、膜厚の薄いフィルム中央部はニップされず、シワの緩和は難しい。
3.当該区間に加熱装置を配置し、原フィルムを加熱しながら張力をかけた場合、当該フィルムがその長手方向に延伸される。この延伸は、加熱延伸装置1においてなされた斜め方向の延伸を打ち消す。これにより、目的とする光学特性が得られないだけではなく、得られた位相差フィルムが示す二軸延伸性が増大する。
上述したクリップイン部(CIL、CIR)と同様の理由に基づき、左側クリップ群のクリップアウト部(COL)と右側クリップ群のクリップアウト部(COR)とを結ぶ直線が、原フィルムの長手方向(流れ方向)に対して垂直であることが好ましい。この場合、加熱延伸装置1における原フィルムの移動安定性が向上する。特に、左側クリップと右側クリップとが原フィルムの周辺縁部を把持するタイミングが同時でないことがある場合に、上記直線が、原フィルムの長手方向に対して垂直であることが好ましい。
本方法では、加熱延伸装置における原フィルムの移動方向を、延伸ゾーンの前後において略並行に保つことが好ましい。言い換えれば、原フィルムを把持する際のクリップの走行方向は、延伸されたフィルムを解放する際のクリップの走行方向と略平行であることが好ましい。クリップの走行方向は、原フィルムに対して横延伸をさらに加える場合を考慮し、一方の長辺縁部を把持又は解放するクリップの走行方向と、他方の長辺縁部を把持又は解放するクリップの走行方向とのベクトルの和の方向を意味する。特開2005-319660号公報及び特開2010−266723号公報には、延伸の前後で原フィルムの移動方向が異なる、屈曲したテンターレールを有するテンター横延伸機を用いた斜め延伸が開示されている。フィルムの長手方向に対する遅相軸の角度が異なる2種以上の帯状の位相差フィルムを製造する場合、延伸倍率など、加熱延伸装置における延伸条件を変更する必要がある。上記のような、延伸の前後でフィルムの移動方向が異なる延伸機を用いた場合、延伸条件を変更するたびに、得られた位相差フィルムを巻き取る巻取り機の設置場所の変更や原フィルムを供給するロールの平行度の調整(芯だし)などが必要になり、位相差フィルムの生産性が低下する。さらに、テンターレールが屈曲しているため、延伸装置の設置に必要な面積の確保が難しい。一方、原フィルムの移動方向を、延伸ゾーンの前後において略並行に保つ場合、延伸条件を変更したときにおいてもこのような調整を省略でき、帯状の位相差フィルム及び位相差フィルムロールの生産性が向上する。この構成は、例えば、同時二軸延伸機により実現可能である。
本方法によって得られた帯状の位相差フィルムは、続いて、任意の工程に供給しうる。例えば、ロールに巻回して位相差フィルムロールを得てもよいし、コーティング層の形成あるいは他のフィルムとの積層のような後工程に供給してもよい。
本方法によって得られた帯状の位相差フィルムは、例えば、当該位相差フィルムと、帯状の偏光フィルムとを連続的に積層しうる(より具体的な例として、ロールtoロールで積層しうる)ため、効率よい楕円偏光板の製造に好適である。
本方法は、本発明の効果が得られる限り、上述した以外の任意の工程を含んでいてもよい。当該工程は、例えば、形成された位相差フィルムの光学特性及び機械的特性を安定させるために実施される熱処理(アニーリング)工程である。
原フィルムは、典型的には、未延伸フィルムである。ただし、本発明の効果が得られる限り、既に延伸されたフィルムを原フィルムとして使用しうる。
原フィルムは、単層フィルム又は複数の熱可塑性樹脂層の積層フィルムでありうる。原フィルムは、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂により構成される層を有することが好ましい。原フィルムは、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂からなる一つの層により構成されうる。原フィルムは、当該層と、シクロオレフィンのような、アクリル重合体以外の他の重合体を含む熱可塑性樹脂層との積層体でありうる。
原フィルムの表面に、熱可塑性樹脂層ではない機能性層を設けうる。機能性層は、例えば、ハードコート層、易接着層、帯電防止層、反射防止層及びアンチブロッキング層である。
原フィルムの左右の端部(幅方向の端部)に、ナーリング加工のような機能性加工が施されうる。機能性加工は、原フィルムの破断防止又は原フィルムへのアンチブロッキング性の付与を目的とする、テープの貼付でありうる。テープは、例えば、積水化学製のタフライトテープ(商品名)である。
原フィルムを製造する方法は特に限定されない。原フィルムは、例えば、溶液製膜法(溶液流延法、キャスト成形法)、溶融製膜法(溶融押出法、押出成形法)、プレス成形法のような公知の手法により製造しうる。なかでも、環境負荷が小さく生産性に優れる観点から、溶融製膜法による原フィルムの製造が好ましい。
溶液製膜法では、例えば、原フィルムを構成する熱可塑性樹脂と良溶媒とを撹拌混合して均一な混合液とし、得られた混合液を支持フィルム又はドラムにキャストしてキャスト膜を形成し、形成したキャスト膜を予備乾燥して自己支持性を有するフィルムとし、このフィルムを支持フィルム又はドラムから剥がして乾燥し、原フィルムを形成する。原フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、必要ならば添加剤のような材料を含む。これは、他の製膜法においても同じである。溶液製膜法に用いられる溶媒は、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンのような塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン及びこれらの混合溶媒のような芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールのようなアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル;である。溶媒として、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。溶液製膜法を実施する装置は、例えば、ドラム式キャスティングマシン、ベルト式キャスティングマシンである。
溶融製膜法では、例えば、原フィルムを構成する熱可塑性樹脂の各成分をオムニミキサーのような混合機を用いてプレブレンドし、得られた混合物を混練機により混練した後、押出成形して原フィルムを形成する。別途形成した熱可塑性樹脂を溶融押出成形して原フィルムを形成してもよい。混練機は特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダーのような公知の混練機である。
押出成形は、例えば、Tダイ法、インフレーション法である。押出成形の温度(成形温度)は、好ましくは200〜350℃、より好ましくは250〜300℃、さらに好ましくは255〜300℃、特に好ましくは260〜300℃である。Tダイ法によれば、押出機の先端部にTダイを取り付け、当該Tダイから押し出して得たフィルムを巻き取ることによって、ロールに巻回した原フィルム(原フィルムロール)が得られる。
押出成形に用いる押出機の種類は特に限定されず、単軸、二軸、多軸のいずれの押出機も使用しうる。熱可塑性樹脂を十分に可塑化して良好な混練状態を得るために、押出機のL/D値(Lは押出機のシリンダの長さ、Dはシリンダ内径)は、好ましくは10〜100であり、より好ましくは15〜80であり、さらに好ましくは20〜60である。L/D値が10未満の場合、熱可塑性樹脂が十分に可塑化されず、良好な混練状態が得られないことがある。L/D値が100を超える場合、熱可塑性樹脂に対して過度に剪断発熱が加わることにより、樹脂に含まれる重合体が熱分解することがある。
押出機のシリンダの設定温度は、好ましくは200〜300℃であり、より好ましくは250〜300℃である。シリンダの設定温度が200℃未満の場合、樹脂の溶融粘度が過度に高くなり、原フィルムの生産性が低下しやすい。シリンダの設定温度が300℃を超える場合、樹脂に含まれる重合体が熱分解することがある。
押出機の形状は、特に限定されない。押出機は、1個以上の開放ベント部を有することが好ましい。この場合、押出機の開放ベント部から分解ガスを吸引でき、得られた原フィルムに残存する揮発成分の量が低減する。開放ベント部から分解ガスを吸引するためには、例えば、開放ベント部を減圧状態にすればよい。減圧状態にある開放ベント部の圧力は、1.3〜931hPaが好ましく、13.3〜798hPaがより好ましい。開放ベント部の圧力が931hPaより高いと、揮発成分ならびに重合体の分解により発生する単量体成分が樹脂中に残存しやすい。開放ベント部の圧力を1.3hPaより低く保つことは、工業的に困難である。
原フィルムの製造には、ポリマーフィルターにより濾過した熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。ポリマーフィルターを用いた濾過により、樹脂中に存在する異物が除去され、位相差フィルムの光学欠点及び外観上の欠点が低減される。濾過は、溶液濾過又は溶融濾過である。
溶融濾過の際、樹脂は高温の溶融状態となる。ポリマーフィルターを通過する際に樹脂に含まれる成分が劣化すると、劣化により発生したガス成分あるいは着色劣化物が流れ出し、得られた原フィルムに、穴あき、流れ模様、流れスジのような欠点が観察されることがある。これらの欠点は、特に、原フィルムの連続成形時に観察されやすい。溶融濾過時の樹脂の劣化は、樹脂の溶融粘度を低下させ、ポリマーフィルターにおける樹脂の滞留時間を短くすることによって防ぎうる。この観点から、ポリマーフィルターにより溶融濾過した樹脂の成形温度は、例えば、255〜320℃であり、260〜300℃が好ましい。
ポリマーフィルターの構成は特に限定されない。ハウジング内に多数枚のリーフディスク型フィルターを配したポリマーフィルターが好適に用いられる。リーフディスク型フィルターの濾材は、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、又はそれらを組み合わせたハイブリッドタイプのいずれであってもよく、なかでも、金属繊維不織布を焼結したタイプが最も好ましい。
ポリマーフィルターの濾過精度は特に限定されないが、通常15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。濾過精度が1μm以下の場合、ポリマーフィルターにおける樹脂の滞留時間が長くなるため、樹脂に含まれる重合体が熱劣化しやすい。さらに、原フィルムの生産性も低下する。濾過精度が15μmを超える場合、樹脂中の異物を除去することが難しくなる。
ポリマーフィルターの形状は特に限定されず、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型;断面が複数の頂点もしくは面においてリーフディスクフィルターの内周面に接し、センターポールの外面に樹脂の流路がある外流型;である。なかでも、樹脂の滞留箇所の少ない外流型が好ましい。
ポリマーフィルターにおける樹脂の滞留時間は、好ましくは20分以下、より好ましくは10分以下、さらに好ましくは5分以下である。濾過時におけるフィルター入口圧及び出口圧は、例えば、それぞれ3〜15MPa及び0.3〜10MPaであり、圧力損失(フィルターの入口圧と出口圧の圧力差)は、1MPa〜15MPaが好ましい。圧力損失が1MPa以下の場合、樹脂がフィルターを通過する流路に偏りが生じやすく、得られたフィルムの品質が低下する傾向がある。圧力損失が15MPaを超えると、ポリマーフィルターの破損が起こり易くなる。
ポリマーフィルターに導入される樹脂の温度は、その溶融粘度に応じて適宜設定すればよく、例えば250〜300℃であり、好ましくは255〜300℃であり、さらに好ましくは260〜300℃である。
ポリマーフィルターを用いた溶融濾過により、異物及び着色物の少ない原フィルムを得るための具体的な手順は、特に限定されない。例えば、(1)クリーン環境下で樹脂の形成及び濾過処理を行い、引き続いてクリーン環境下で成形を行うプロセス、(2)異物又は着色物を有する樹脂をクリーン環境下で濾過処理した後、引き続いてクリーン環境下で成形を行うプロセス、(3)異物又は着色物を有する樹脂を、クリーン環境下で濾過処理すると同時に成形を行うプロセス、が採用される。それぞれの工程毎に、複数回、濾過処理を実施しうる。
ポリマーフィルターによって樹脂を溶融濾過する際には、押出機とポリマーフィルターとの間にギアポンプを設置して、フィルター内の樹脂の圧力を安定化させることが好ましい。
すなわち、本発明には、(i)複数個のクリップにより構成される一対のクリップ群によって、帯状の原フィルムにおける双方の長辺縁部をそれぞれ把持し、(ii)前記クリップ群によって把持された前記原フィルムを、当該クリップ群の走行によって、加熱延伸装置に導びくとともに、当該装置における予熱ゾーン、延伸ゾーンおよび熱処理ゾーンをこの順に通過させ、(iii)ここで、前記クリップ群が前記原フィルムを把持する際に、前記一対のクリップ群から選ばれる一方のクリップ群の走行速度v1と他方のクリップ群の走行速度v2との比v1/v2を0.98〜1.02に保持し、(iv)前記延伸ゾーンは、前記予熱ゾーンから走行移動してきた前記一方のクリップ群の走行速度v1を順に減少させる第1の区間を有し、当該第1の区間において、前記他方のクリップ群に対する前記一方のクリップ群の走行遅れを発生させ、発生した当該遅れに基づいて前記原フィルムを当該フィルムの長手方向に対して斜めに延伸し、(v)前記延伸ゾーンは、前記第1の区間より後に、前記第1の区間を経て走行移動してきた前記一方のクリップ群の走行速度を順に回復させる第2の区間をさらに有し、当該第2の区間において、前記一方のクリップ群の走行速度v1と前記他方のクリップ群の走行速度v2との比v1/v2を0.98〜1.02に戻して、(vi)フィルム面内の遅相軸が当該フィルムの長手方向に対して10°〜80°傾いた帯状の位相差フィルムを得る、位相差フィルムの製造方法も含まれ得る。
<1−2.偏光フィルム>
本発明に用いられる偏光フィルムは、長尺の偏光フィルムであればよく、その具体的な構成については特に限定されない。例えば、本偏光フィルムは、(i)従来公知の偏光子のみからなる長尺のフィルムであってもよいし、また(ii)偏光子と、当該偏光子の片面に、偏光子保護フィルムとを積層した長尺の偏光フィルム、(iii)偏光子と、当該偏光子の片面に、偏光子保護フィルム以外の基板フィルム又は光学フィルムとを積層した長尺の偏光フィルム、のいずれの構成であってもよい。
前記偏光子としては、特定の振動方向をもつ光のみを透過する機能を有する偏光子であれば如何なるものでもよく、例えばポリビニルアルコール系フィルム等を延伸し、ヨウ素や二色性染料などで染色したポリビニルアルコール系偏光子;ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系偏光子;多層積層体あるいはコレステリック液晶を用いた反射型偏光子;薄膜結晶フィルム系偏光子;等が挙げられ、これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムを二色性物質で染色して一軸延伸した偏光子が好適に用いられる。これら偏光子の厚さは特に制限されず、一般的に、5〜100μm程度である。
前記偏光子保護フィルムとしては、例えばトリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、(メタ)アクリル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリナフタレンテレフタレートフィルム、等が挙げられる。
偏光子保護フィルム以外の基板フィルム又は光学フィルムとしては、従来公知の種々の基板フィルム、光学フィルムを使用することができ、特に限定されるものではない。
本偏光フィルムの長さ、幅等については、前述の位相差フィルムのものと同様であるため、説明を省略する。
<1−3.楕円偏光フィルムのその他の構成と作用効果>
本発明に係る楕円偏光フィルムにおいては、前記位相差フィルムと前記偏光フィルムとが接着剤層を介して接着されてなることが好ましい。好ましい接着剤としては、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアクリル系等の接着剤やアクリル系、シリコン系、ゴム系等の粘着剤が挙げられる。なお、偏光子の偏光機能が低下しない条件で加熱圧着してもよいことはいうまでもなく、その場合は、ゆるやかな加熱圧着条件で接着することができる。
接着する方法は、通常一般に知られているものでよく、例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、偏光フィルム及び/又は接合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物であるフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。接着剤を塗布した後、偏光フィルムとそれに接合される位相差フィルムをニップロールなどにより挟んで、貼り合わせる。
また、前記位相差フィルムには、偏光フィルムと接する面に接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理やアンカー層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、及びこれらを併用する方法が好ましい。
本発明に係る楕円偏光フィルムは、表面性、耐傷付き性を向上させる為に、さらに、少なくとも一層以上のハードコート層を積層することができる。該ハードコート層としては、例えばシリコン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、紫外線硬化型樹脂、ウレタン系ハードコート剤等よりなるハードコート層が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば紫外線硬化型アクリルウレタン、紫外線硬化型エポキシアクリレート、紫外線硬化型(ポリ)エステルアクリレート、紫外線硬化型オキセタン等から選ばれる一種類以上の紫外線硬化樹脂が挙げられる。ハードコート層の厚みは、0.1μm〜100μmである。又はドコート層の間にプライマー処理をすることもできる。また、反射防止や低反射処理など公知の防眩処理を行うこともできる。
また、本発明に係る楕円偏光フィルムは、最外層の少なくとも一方に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を有していてもよい。粘着剤層を形成する粘着剤は、特に限定されないが、例えばアクリル重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。
前記粘着剤層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマー又はその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で楕円偏光フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着剤層を形成してそれを楕円偏光フィルム面に移着する方式などが挙げられる。
本発明に係る楕円偏光フィルムと前記粘着剤層との間の密着性を向上させるために、その層間にアンカー層を設けることも可能である。前記アンカー層としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類から選ばれるアンカー層が用いられ、特に好ましくは分子中にアミノ基を含んだポリマー類が使用される。分子中にアミノ基を含んだポリマーは、分子中のアミノ基が、粘着剤中のカルボキシル基や、導電性ポリマー中の極性基と反応もしくはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、より好な密着性が確保される。
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、前述アクリル系粘着剤の共重合モノマーで示したジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などを挙げることができる。
本発明に係る楕円偏光フィルムは、例えば、画像表示装置(LCDやEL発光表示装置等)において、立体(3D)映像表示用途に好適に用いることができる。具体的には、本発明に係る楕円偏光フィルムは、偏光眼鏡方式(偏光表示方式)において、画像表示装置側又は偏光眼鏡側における円偏光板として利用できる。
本発明に係る楕円偏光フィルムは、負の複屈折性を有するため、画像表示装置側及び眼鏡側の円偏光板の一方を本発明に係る楕円偏光フィルムを用いた円偏光板とし、他方を正の複屈折性を有する円偏光板(例えば、ポリカーボネートを用いた円偏光板)とすることにより、厚さ方向の位相差が相殺され、斜め方向の視角特性を改善できる。また、本発明に係る楕円偏光フィルムは、画像表示装置等の反射防止膜としても使用できる。
以上のように、本発明に係る楕円偏光フィルムによれば、画面に対して斜め方向からの視聴においても、良好な反射防止特性及び/又は3D表示特性を示す、視野角特性に優れる画像表示装置を実現できる。
<2.楕円偏光フィルムの製造方法>
本発明に係る楕円偏光フィルムの製造方法は、主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂により構成され、固有複屈折値が負である長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して得られた、幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムと、長尺の偏光フィルムとを、前記位相差フィルムの長手方向と偏光フィルムの長手方向とが一致するように積層する工程を有するものであればよく、その他の工程、製造条件、原材料等については特に限定されない。
前記位相差フィルム及び偏光フィルムは、前記<1>欄で説明したものを用いることができる。また、本製造方法において、前記位相差フィルムに関して、前記長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して、幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムを製造する工程を含んでいてもよい。かかる工程は、前記<1−1−5>欄で説明した方法を用いればよい。
また、前記位相差フィルムと偏光フィルムとを積層する工程は、前記長尺の位相差フィルムと長尺の偏光フィルムとを連続的に積層する工程であることが好ましく、例えば、ロールtoロール積層により行われる工程を挙げることができる。ロールtoロール積層により行われる工程については、従来公知の手法を利用でき、特に限定されるものではない。例えば、ロール状に巻いた長さが数m〜数十m、好ましくは数十m〜数百mであって、幅が数cm〜3m、好ましく数十cm〜1m程度の長尺の位相差フィルムと、ロール状に巻いた略同じ長さ/幅の長尺の偏光フィルムとを、ニップロール等により貼り合わせて、再びロールに巻き取る方法を挙げることができる。
前述の楕円偏光フィルムの製造方法によれば、前記<1>欄で説明した楕円偏光フィルムを効率的に製造することができる。
<3.円偏光板、画像表示装置、及び画像表示システム>
本発明に係る円偏光板は、前述した長尺の楕円偏光フィルムを、当該長尺の楕円偏光フィルムの長手方向に対して略垂直又は略平行な方向に沿って、所定の大きさに裁断して得られた円偏光板であればよく、その他の具体的な構成については限定されない。すなわち、枚葉の円偏光板も本発明に含まれ得る。本発明に係る円偏光板は、本発明に係る楕円偏光フィルムより製造されたものであるため、正円偏光のみならず楕円偏光を行うものも当然に含む。
本発明に係る画像表示装置は、前記円偏光板を備えるものであればよく、その他の構成については特に限定されない。前記円偏光板を、各種の画像表示装置に組み込むことによって、画面に対して斜め方向からの視聴においても、良好な反射防止特性及び/又は3D表示特性を示す、視野角特性に優れる画像表示装置を作製することができる。
前記円偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型等の各種駆動方式の液晶表示装置(LCD)で好ましく用いられ、また、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)の各種画像表示装置にも好ましく用いられる。
また、本発明には、円偏光板を備える画像表示装置と、円偏光板を備える偏光眼鏡とを含み、前記画像表示装置における円偏光板又は偏光眼鏡における円偏光板のいずれか一方が、本発明に係る円偏光板である画像表示システム(画像表示セット)も含まれる。ここでいう、本発明に係る円偏光板とは、前述した長尺の楕円偏光フィルムを、その長手方向に対して略垂直又は略平行な方向に沿って、所定の大きさに裁断して得られた円偏光板のことを意図する。
また、本発明に係る画像表示システムにおいては、前記円偏光板を備える画像表示装置と円偏光板を備える偏光眼鏡とのいずれか一方に本発明に係る円偏光板を用い、かつもう一方に正の複屈折性を有する円偏光板を用いる構成であることが好ましい。
前記の構成によれば、本発明に係る円偏光板(楕円偏光フィルム)は、負の複屈折性を有するため、画像表示装置側及び眼鏡側の円偏光板の一方を本発明に係る楕円偏光フィルムを用いた円偏光板とし、他方を正の複屈折性を有する円偏光板(例えば、ポリカーボネートを用いた円偏光板)とすることにより、厚さ方向の位相差が相殺され、斜め方向の視角特性を改善できる。よって、優れた立体(3D)映像表示用の画像表示システムを提供できる。
また、本発明には、立体(3D)映像表示用の偏光眼鏡方式(偏光表示方式)に用いられる、偏光眼鏡であって、本発明に係る円偏光板を備える偏光眼鏡が含まれ得る。かかる偏光眼鏡は、前述した本発明に係る円偏光板である画像表示システムに好適に用いることができる。
本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、明細書に記載した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
まず、以下に本実施例において作製した樹脂の評価方法を説明する。
<ガラス転移温度(Tg)>
樹脂のTgは、JIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
<重量平均分子量>
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置及び測定条件は以下の通りである。
システム:東ソー製GPCシステム HLC−8220
測定側カラム構成;
・ガードカラム:東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ-L
・分離カラム:東ソー製、TSKgel SuperHZM-M 2本直列接続
リファレンス側カラム構成;
・リファレンスカラム:東ソー製、TSKgel SuperH-RC
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
<固有複屈折の正負>
位相差フィルムを構成する樹脂組成物の固有複屈折の正負は、全自動複屈折計(王子計測機器製、KOBRA−WR)を用いて当該フィルムの配向角を求め、その値に基づいて評価した。具体的には樹脂組成物からなるフィルムをガラス転移温度よりも5℃から10℃高い温度に加熱した状態で自由端一軸延伸を行い、測定された配向角が延伸方向に対して0°近傍の場合、位相差フィルムを構成する重合体の固有複屈折は正であり、測定された配向角が90°近傍の場合、位相差フィルムを構成する樹脂組成物の固有複屈折は負とした。
<位相差>
波長590nmにおける位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値Rth、及び光軸は大塚電子社製RETS−100を用いて測定した。
厚み方向位相差値Rthについては、アッベ屈折率計で測定したフィルムの平均屈折率、膜厚d、40°傾斜させて測定した位相差値(Re(40°))、三次元屈折率nx、ny、nzの値を得た後、下記式から求めた。なお、フィルムの流れ方向の屈折率をnx、フィルムの幅方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした。
厚み方向位相差Rth(nm)=d×{(nx+ny)/2−nz}
フィルムの膜厚dは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)を用いて測定した。なお、傾斜させる方向は、遅相軸を傾斜軸としたRe(S40°)と進相軸を傾斜軸としたRe(F40°)を測定し、Re(S40°)>Re(F40°)となる場合は遅相軸を傾斜軸とし、逆にRe(S40°)<Re(F40°)となる場合は進相軸を傾斜軸とした。
また、位相差フィルムの一軸延伸性は、NZ係数(NZ=|Rth|/|Re(590)|+0.5)により評価した。さらに、このロールフィルムの流れ方向に対して垂直にフィルムを切り出し、この切り出したエッジをRETS−100の基準バーに合わせて基準軸がぶれないようにサンプルをセットして測定した時の遅相軸の向きを光軸とした。また、光軸ムラは得られたフィルムのセンター部分500mmを50mmピッチで光軸の測定を行い、その最大値と最小値の差から求めた。
さらに、波長分散性は447nm、590nm、及び750nmにおける面内位相差をそれぞれRe(447)、Re(590)、Re(750)としたとき、Re(447)/Re(590)、及びRe(750)/Re(590)より算出した。
なお、位相差、光軸の値は作製した帯状の位相差フィルムの幅方向に、100mm以上はなれた3点測定し、その平均値とした。
<円偏光板2枚重ね時の光もれ評価>
市販の製図用バックライト上に図2に示す通り、楕円偏光板カットフィルムの製膜時の流れ方向を直行するように(すなわち、PVA(ポリビニルアルコール)偏光子の吸収軸が直行するように)重ねて置き、図に示すように各偏光板の吸収軸から方位角45°方向、仰角45°における斜め方向の光漏れを確認した。このとき、光漏れが感じられないものを○、白っぽく光が漏れているのが感じられるものを×とした。
<製造例1>
攪拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、40重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、10重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、0.025重量部のアデカスタブ2112(ADEKA製)、及び重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.05重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)を添加するとともに、0.10重量部の上記t−アミルパーオキシイソノナノエートを2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合体溶液に、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学製、商品名:Phoslex A−8)0.05部を加え、90〜105℃の還流下で2時間、環化縮合反応を行った。次いで、得られた重合体溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、バレル温度240℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個及びフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーが設けられており、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で70部/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.05部/時の投入速度で第1ベントの後ろから、イオン交換水を1.05部/時の投入速度で第2及び第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液は、酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、5部の酸化防止剤(チバジャパン社製、イルガノックス1010)と、失活剤として55部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、ニッカオクチクス亜鉛3.6%)とを、トルエン45部に溶解させた溶液を用いた。また、上記サイドフィーダーから、スチレン−アクリロニトリル共重合体(スチレン/アクリロニトリルの比率は73質量%/27質量%、重量平均分子量22万)のペレットを投入速度30部/時で投入した。
上記脱揮操作により、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル重合体と、スチレン−アクリロニトリル共重合体とを含み、負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂組成物(1A)のペレットを得た。なお、得られた樹脂組成物の重量平均分子量は146000、ガラス転移温度は122℃、メルトフローレートは13.6g/10分であった。
<製膜例1〜3>
製造例1で作製した樹脂(1A)のペレットを、ポリマーフィルター(濾過精度5μm)及び700mm幅のTダイを先端部に備えた単軸押出機により270℃で溶融押出して、厚み150μm、幅570mmの原フィルムを製膜し、巻き取った。得られた原フィルムを、予熱ゾーン、前段延伸ゾーン、後段延伸ゾーン及び熱処理ゾーンが設定された同時二軸延伸機を用いて、表1及び表2に示す延伸条件にて斜め延伸した。なお、原フィルムを把持する際の左右のクリップ群の走行速度(左右のクリップイン部でのクリップ走行速度)は、ともに2.0m/分とし、クリップが原フィルムを把持する位置は、当該フィルムの幅方向の端部から25mmの位置とした。
原フィルムを延伸した後にクリップを解放する際の左右のクリップ群の走行速度(左右のクリップアウト部でのクリップ走行速度)は、それぞれ、表2に示される「左側(右側)クリップ倍率/トータル」の欄に記載されている数値に、左側(右側)のクリップイン部におけるクリップ走行速度を掛けた値となる。製膜例1を例にすると、トータルのクリップ倍率が、左右のクリップともに1.00倍であるため、クリップアウト部でのクリップ走行速度は、左右のクリップともに2.0m/分ということになる。ただし、予熱ゾーン及び熱処理ゾーンでは、原フィルムの流れ方向及び幅方向ともに、加熱による原フィルムの弛みの解消及び冷却時にフィルムに生じる収縮応力の調整を目的としたクリップ走行速度の微調整は実施している。特に記載がない限り、以降の実施例及び比較例においても同様である。
また、表2における「トータル」の欄は、左側クリップ倍率、右側クリップ倍率及び横延伸倍率のそれぞれにおいて、前段延伸ゾーンでの倍率と後段延伸ゾーンでの倍率とを掛けた値を示す。表2の製膜例1の条件では、左側クリップの走行速度は、前段延伸ゾーンにおいて、当該ゾーンに入る前の0.67倍(1/1.50倍)になるまで減少し(隣り合うクリップ間の間隔は0.67倍となる)、後段延伸ゾーンにおいて、前段延伸ゾーンから移動してきたときの1.50倍となっている(隣り合うクリップ間の間隔も1.50倍となる)。これらの数値の積(トータル値)は1.00倍であり、すなわち、左側クリップは、前段延伸ゾーンで減速した後、後段延伸ゾーンで元の走行速度に回復した(隣り合うクリップの間隔が元に戻った)ことになる。一方、右側クリップの走行速度は、前段延伸ゾーン及び後段延伸ゾーンを通して積極的に変化させていない。すなわち、右側クリップにおける隣り合うクリップ間の間隔は、前段延伸ゾーン及び後段延伸ゾーンを通してほぼ一定である。これに対し製膜例3の条件は、右側クリップの走行速度が前段延伸ゾーンから増加し、左側クリップの走行速度は後段延伸ゾーンにて追いつくように増加させた。
さらに、横延伸についてはクリップレールは、左右ともに、前段延伸ゾーン及び後段延伸ゾーンを通じて直線に設定した。しかし、横延伸に関して、表2では、前段延伸ゾーンにおける倍率と後段延伸ゾーンにおける倍率とが異なっている。これは、後段延伸ゾーンにおける倍率が、前段延伸ゾーンでの横延伸後の原フィルムの幅を基準にしているためである。
Figure 2013122584
Figure 2013122584
このようにして得た位相差フィルムロール1A−F1〜1A−F3の物性を、以下の表3に示す。
Figure 2013122584
<実施例1〜3>
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムロールを繰り出し、以下の工程を経て楕円偏光フィルムの長尺ロールを得た。
1.30℃の温水中に浸漬して膨潤させた。
2.0.3重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)の30℃のヨウ素溶液中で染色しながら、3.5倍まで延伸した。
3.65℃の3重量%のホウ酸エステル水溶液中に浸漬しながら総延伸倍率が6倍まで延伸した。
4.40℃の乾燥炉にて乾燥を行い、厚さ30μmの偏光子を得た。
5.得られた偏光子の片面に、市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)を鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、その長手方向を揃えてロールtoロール法により貼合した(片面にTACを貼合した偏光子を有する偏光フィルム)。
6.また、もう片面にアクリル系粘着剤を介して製膜例1〜3のいずれかの位相差フィルムを、その長手方向を揃えてロールtoロール法により貼合し、楕円偏光フィルムの長尺ロールを得た。
7.得られた楕円偏光フィルムの長尺ロールから100mm四方の円偏光板カットフィルム(CPL−1〜3)を得た。それぞれ、実施例1〜3とする。
Figure 2013122584
<比較例1>
前記工程5において得られた、片面にTACを貼合した偏光子を切り出し、溶融押出法により成形された、ガラス転移温度が150℃、厚みが60μm、及びリターデーションが147nmである、ビスフェノールAから得られるポリカーボネート(PC)フィルムとその光軸が偏光子の吸収軸に対して45°となるように貼合して円偏光板カットフィルム(CPL−4)を得た。
以下の表5に示す構成で円偏光板2枚重ね時の光もれ評価を行った。その時の光漏れ結果と共に表に示す。
Figure 2013122584
<参考例1〜3>
製膜例1〜3のうち、最もNZ係数の小さい製膜例2と最もNZ係数の大きい製膜例3、及びリターデーションが147nmである、ビスフェノールAから得られるポリカーボネートフィルムを、図3に示すように、重ねて斜め45°における位相差値を測定した。
Figure 2013122584
この結果、負の複屈折性を有する位相差フィルムを用いた場合、ポリカーボネートのような汎用円偏光板と組み合わせた場合斜め方向の位相差値が打ち消されるため、光漏れ防止に有用であることが分かった。
本発明は、液晶表示装置(LCD)をはじめとする画像表示装置に幅広く使用できる。本発明に係る楕円偏光フィルムの使用により、画面に対して斜め方向からの視聴においても、良好な反射防止特性及び/又は3D表示特性を示す、視野角特性に優れる画像表示装置が実現する。
1 加熱延伸装置
11 偏光子保護フィルム
12 PVAフィルム(偏光子)
13 位相差フィルム(ポリカーボネート)
14 位相差フィルム(本発明に係る位相差フィルム)
15 PVAフィルム(偏光子)
16 偏光子保護フィルム
17 バックライト
18 円偏光板
19 円偏光板(本発明に係る円偏光板)

Claims (10)

  1. 主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂組成物により構成され、固有複屈折値が負である長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して得られた、幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムと、
    長尺の偏光フィルムと、を備え、
    前記位相差フィルムの長手方向と偏光フィルムの長手方向とが一致するように積層されてなることを特徴とする長尺の楕円偏光フィルム。
  2. 前記位相差フィルムのNZ係数の値が、0.90〜2.20であることを特徴とする請求項1に記載の長尺の楕円偏光フィルム。
  3. 前記位相差フィルムが示す、波長447nm、590nm、及び750nmのそれぞれの光に対する面内位相差Re(447)、Re(590)、及びRe(750)について、
    式Re(447)/Re(590)が1.00〜1.20、かつ
    式Re(750)/Re(590)が0.80〜1.05であることを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺の楕円偏光フィルム。
  4. 前記環構造が、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、無水マレイン酸構造、グルタルイミド構造、及びマレイミド構造から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の長尺の楕円偏光フィルム。
  5. 前記環構造が、以下の式(1)で表されるラクトン環構造であることを特徴とする請求項4に記載の長尺の楕円偏光フィルム。
    Figure 2013122584
    (式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。)
  6. 主鎖に環構造を有するアクリル重合体を含む熱可塑性樹脂により構成され、固有複屈折値が負である長尺の未延伸フィルムを斜め延伸して得られた、幅方向に対する配向角θが45°±10°の範囲にある長尺の位相差フィルムと、
    長尺の偏光フィルムとを、
    前記位相差フィルムの長手方向と偏光フィルムの長手方向とが一致するように積層する工程を有することを特徴とする長尺の楕円偏光フィルムの製造方法。
  7. 前記位相差フィルムと偏光フィルムとを積層する工程は、ロールtoロール積層により行われることを特徴とする請求項6に記載の長尺の楕円偏光フィルムの製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の長尺の楕円偏光フィルムを、当該長尺の楕円偏光フィルムの長手方向に対して略垂直又は略平行な方向に沿って、所定の大きさに裁断してなることを特徴とする円偏光板。
  9. 請求項8に記載の円偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。
  10. 円偏光板を備える画像表示装置と、円偏光板を備える偏光眼鏡とを含み、
    前記画像表示装置における円偏光板又は偏光眼鏡における円偏光板のいずれか一方が請求項8に記載の円偏光板であることを特徴とする画像表示システム。
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