JP2013122012A - ポリ乳酸の冷結晶化組成物、その成形品並びに成形法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は融点以上に加熱溶融し形状を付与しながら一定温度以下に冷却・固化後、引き続き60〜140℃に加熱しながら賦形する昇温加熱過程における冷結晶化であり、真空・圧空成形(サーモフォーミング)等に代表される成形加工分野に関係する。すなわち、ポリ乳酸の真空・圧空成形(サーモフォーミング)等の冷結晶化を伴う成形加工において、耐熱性と耐衝撃性ともに優れた成形品を大幅なコストアップを伴うことなく効率的に得ることを課題とする。
【解決手段】ポリ乳酸とポリグリセリン脂肪酸エステルの割合が、ポリ乳酸が99.7重量%〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜5重量%を含むことを特徴とするポリ乳酸の冷結晶化組成物を用いることにより上記課題を解決する。
【選択図】なし
【解決手段】ポリ乳酸とポリグリセリン脂肪酸エステルの割合が、ポリ乳酸が99.7重量%〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜5重量%を含むことを特徴とするポリ乳酸の冷結晶化組成物を用いることにより上記課題を解決する。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリ乳酸に耐熱性と耐衝撃性を同時に賦与するコストパフォーマンスに優れた冷結晶化組成物、その成形品並びに成形法に関するものである。
近年における地球的規模での温暖化ガスの増加や昨今における原油価格の高騰、さらにはそう遠くない将来における化石資源の枯渇問題は、必然的な流れとして植物などの再生可能資源由来のバイオプラスチックや生分解性プラスチックに対する関心を高めている。代表的な生分解性プラスチックとしては、ポリ乳酸(PLA)系、微生物ポリエステル(PHB)系、でんぷん系やポリブチレンサクシネート(PBS)系等があるが、それらの中でもポリ乳酸系が最も低コストで、環境低負荷特性や熱的・機械的性質のバランスに優れたものとして近年注目されている。
ところで、熱可塑性プラスチックの代表的な成形加工プロセスである真空・圧空成形(サーモフォーミング)法は、融点(熱軟化流動点)以上に加熱したプラスチックを一旦シート状に押出し冷却・固化させた後、引き続き一定温度以上に予熱し加熱金型内で最終目的形状に成形加工する冷結晶化過程である。この間に許容される成形加工時間が長引くと生産性に劣り生産コストが高騰し実用的でない。また、見かけ上形状は付与されても正規の構造形成がなされず、本来の性能・機能(たとえば耐熱性や耐衝撃性)が発現しないケースは好ましくない。また、成形後も通常の室温環境下で徐々に二次結晶化が進行するものは、成形品の寸法・形状変化や物性の変化を伴い好ましくない。
真空・圧空成形の具体例としては、弁当や総菜などの食品容器、青果物容器、食品トレー、カップ、ブリスター等が挙げられる。これら容器類は調理直後の熱い料理を充てんする場合や消費者が召し上がる直前に電子レンジ等で再加熱する場合、あるいはホット飲料を充てんする場合などには一定の耐熱性が求められる。また、これら容器の角が硬い異物表面に当たってもひび割れや損傷を招来しない一定の耐衝撃性が求められる。
真空・圧空成形の具体例としては、弁当や総菜などの食品容器、青果物容器、食品トレー、カップ、ブリスター等が挙げられる。これら容器類は調理直後の熱い料理を充てんする場合や消費者が召し上がる直前に電子レンジ等で再加熱する場合、あるいはホット飲料を充てんする場合などには一定の耐熱性が求められる。また、これら容器の角が硬い異物表面に当たってもひび割れや損傷を招来しない一定の耐衝撃性が求められる。
さて、ポリ乳酸はα−オキシ酸である乳酸を基本単位とする重縮合体であり、脂肪族ポリエステルの中では比較的高い融点(Tm)、結晶化温度(Tc)やガラス転移温度(Tg)を有するために、見掛け上は比較的成形加工性に優れる。特にフィルムや繊維の押出成形の場合には、ずり応力下での溶融押出後に延伸・熱処理操作を行うことにより高分子鎖の配向結晶化が起こり、機械的強度やタフネス、耐熱性の向上を図ることができる。しかしながら、真空・圧空成形のようにずり応力等の存在しない静止場での延伸操作を伴わない成形工程では、ポリ乳酸は結晶化速度が極めて遅いために結晶化がほとんど進まず、得られる成形品の耐熱性は極めて低いという問題点がある。たとえば、すでに述べたように電子レンジ再加熱や熱湯注入に際して熱変形を招来することが広く知られている。
ポリ乳酸の結晶化速度を向上させるために、これまで様々な無機系又は有機系結晶核剤(造核剤)が提案されている。下記特許文献に代表例を示す通り、層状ケイ酸塩に代表される粘土鉱物、エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪酸アミド、銅フタロシアニンやフェニルホスホン酸亜鉛等の有機金属錯体等が挙げられる。これら結晶核剤は成形過程における結晶化速度並びに結晶化度を高め成形品の耐熱性を向上させるには一定の効果を有するが、得られる成形品の耐衝撃性は逆に低下するのが通例である。(例えば、特許文献1〜4参照。)
ポリ乳酸の結晶化速度を向上させるために、これまで様々な無機系又は有機系結晶核剤(造核剤)が提案されている。下記特許文献に代表例を示す通り、層状ケイ酸塩に代表される粘土鉱物、エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪酸アミド、銅フタロシアニンやフェニルホスホン酸亜鉛等の有機金属錯体等が挙げられる。これら結晶核剤は成形過程における結晶化速度並びに結晶化度を高め成形品の耐熱性を向上させるには一定の効果を有するが、得られる成形品の耐衝撃性は逆に低下するのが通例である。(例えば、特許文献1〜4参照。)
ポリ乳酸の耐熱性以外の性能上のもう一つの大きな欠点は硬くて脆いことであり、ポリ乳酸成形品は耐衝撃性や強靭性(タフネス)に劣ることである。これまでポリ乳酸に柔軟性や耐衝撃性を付与するために、下記特許文献に代表例を示すように、低分子系あるいは高分子系可塑剤を相当量添加することにより改良が試みられてきた。しかしながら、一般的に柔軟性や耐衝撃性は改良されてもTgやTmのような熱的特性が低下したり、耐熱性の指標としての熱変形温度あるいは荷重たわみ温度が低下するのが通例であった。(例えば、特許文献5〜7参照。)
すなわち、一般的にプラスチックの耐熱性と耐衝撃性改良技術は逆相関の関係にあり、耐熱性を向上させると耐衝撃性は低下し、一方耐衝撃性を向上させると耐熱性は低下するのが通例であり、ポリ乳酸も例外ではない。従って、ポリ乳酸に耐熱性と耐衝撃性を同時に賦与するためには、ポリ乳酸に結晶化を促進させる結晶核剤と、耐衝撃性を改良する可塑・柔軟剤を、それぞれ別個に相当量添加することがこれまで一部で試みられてきた。しかしながら、この方法は煩雑で多大なコストアップを招くばかりか、それら多種類の添加剤間の相互作用(減殺効果)のために、お互いに足を引っ張り合う関係となり目標とする良好な結果は得られていない。
一般的にポリ乳酸のような結晶性高分子化合物の結晶化速度は結晶核形成速度と結晶成長速度に依存するが、この場合の結晶化温度は結晶核形成速度とは負の相関関係(温度が高くなるほど遅くなる)にあるのに対し、結晶成長速度とは正の相関関係(温度が高くなるほど速くなる)にあることが広く知られている。その結果として、一般的に結晶化速度が最大になる結晶化温度が存在する。ポリ乳酸の場合にはこの温度は通常110℃前後である。
ここで、柔軟性や耐衝撃性を改良するために添加される可塑剤の結晶化に及ぼす作用・効果を考えてみると、系の温度上昇効果と同様に分子運動を活発化することにより結晶成長速度を速くする効果はあっても、逆に結晶核生成速度は遅らせる効果を有するために必ずしも耐熱性の向上にはつながらない。その結果として、耐熱性と耐衝撃性を同時に満足することは基本的に至難の業と考えられてきた。また、これら可塑剤を大量(10〜30%)に添加することにより仮に一定の結晶化促進効果が得られても、その場合には系のTgやTm等の熱的特性がかなり低下するという問題を招来することが知られている。
ところで、ポリ乳酸の本来の熱的特性を大きく損なうことなく柔軟性を付与するための可塑剤、それを用いたポリ乳酸組成物、及びこの組成物を加工した可塑性成形物を提供することを目的に、「ポリ乳酸100質量部に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルを1質量部〜20質量部含むことを特徴とする可塑化ポリ乳酸組成物」が出願されている(例えば、特許文献8参照。)。該特許文献においては、請求項7並びに明細書において明らかなように、具体的には「ポリ乳酸組成物をフィルム、シート、または袋に成形してなる可塑性成形物」を提供することにあり、その目的とするところはフィルムやシートのTmやTgをほとんど低下させることなく柔軟性を付与することである。
上記ポリ乳酸組成物をフィルム、シートまたは袋に成形するに際しては、ポリ乳酸組成物を溶融押出後(あるいは同時)に延伸を伴いながら製造加工するいわゆる流動場(ずり応力または伸長応力下)での溶融結晶化に関わる技術分野に関するものである。
上記ポリ乳酸組成物をフィルム、シートまたは袋に成形するに際しては、ポリ乳酸組成物を溶融押出後(あるいは同時)に延伸を伴いながら製造加工するいわゆる流動場(ずり応力または伸長応力下)での溶融結晶化に関わる技術分野に関するものである。
しかしながら、上記ポリ乳酸組成物から成る成形物を引き続き真空・圧空成形のような冷結晶化過程で結晶化を促進し、成形品の耐熱性の向上をもたらすことの可能性は何ら記述されておらず、何も示唆もされていない。ここで言うところの耐熱性とは成形品のTmやTg等の(準)平衡状態に係る熱的パラメータの高低を指すのではなく、成形品の熱変形温度や荷重たわみ温度で表示される実用上の真の耐熱性である。ここで、真の耐熱性である熱変形温度や荷重たわみ温度を支配するのは、言わば結晶部の融点と結晶化度の積に相当すると考えることができる。このことは、たとえば融点が高くても結晶化度が低ければ熱変形温度や荷重たわみ温度等の耐熱性は必然的に低くなることを意味する。
本発明は融点(熱軟化流動点)以上に加熱したプラスチックを一旦シート状に押出し冷却・固化させた後、引き続き一定温度以上に予熱し加熱金型内で最終目的形状に成形加工する真空・圧空成形(サーモフォーミング)に代表される成形加工分野に関係するものであり、ずり応力等を伴わない静止場での冷結晶化過程であるために最も結晶化が起こり難く成形加工が困難な系の一つである。すでに述べたように、ポリ乳酸は結晶化速度が遅いために上記真空・圧空成形のような系では結晶化が遅々として進まず、その結果として成形品の耐熱性は極めて低く、また耐衝撃性にも劣ることが最大の課題であった。
以上の科学的、技術的背景下で、本発明はポリ乳酸用添加剤として特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物それ自体が、驚くべきことに冷結晶化過程における結晶化促進と耐衝撃性向上の相乗効果を同時に発現することを初めて見出したことに基づく。本発明の特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物の結晶化促進作用をより詳細に述べると、上述の結晶成長速度のみならず、通常は逆相関の関係にある結晶核生成速度をも増幅する作用を有することを発見したことに基づく。これは、等温冷結晶化過程における結晶化開始時間(誘導期間)が、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物をごく少量(1重量%前後)添加するだけで著しく短縮されることから見出された。
上述の結晶核生成の促進機構は必ずしも明らかではないが、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物が結晶核剤そのものとして作用しているというよりも、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物が適度な非相溶性を有することからポリ乳酸界面に配位し、何らかの結晶核生成の足場を提供し、その結果として結晶核生成を促進しているのではないかと推察される。また、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物の適度な可塑剤としての作用が分子拡散・運動性を高め、ポリ乳酸の結晶化促進作用と同時にポリ乳酸界面における衝撃吸収材としての作用を発現しているのではないかと推察される。
こうして、ポリ乳酸に特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物を少量加えるだけで、その冷結晶化を伴う真空・圧空成形等の成形加工工程でポリ乳酸の耐熱性と耐衝撃性を同時に発現せしめることが初めて可能となった。このような特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物の冷結晶化過程におけるポリ乳酸用マルチ機能改質剤としての驚くべき発見は、本発明者の知る限りこれまで報告されていない。
上述の結晶核生成の促進機構は必ずしも明らかではないが、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物が結晶核剤そのものとして作用しているというよりも、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物が適度な非相溶性を有することからポリ乳酸界面に配位し、何らかの結晶核生成の足場を提供し、その結果として結晶核生成を促進しているのではないかと推察される。また、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物の適度な可塑剤としての作用が分子拡散・運動性を高め、ポリ乳酸の結晶化促進作用と同時にポリ乳酸界面における衝撃吸収材としての作用を発現しているのではないかと推察される。
こうして、ポリ乳酸に特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物を少量加えるだけで、その冷結晶化を伴う真空・圧空成形等の成形加工工程でポリ乳酸の耐熱性と耐衝撃性を同時に発現せしめることが初めて可能となった。このような特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物の冷結晶化過程におけるポリ乳酸用マルチ機能改質剤としての驚くべき発見は、本発明者の知る限りこれまで報告されていない。
本発明においてポリ乳酸に添加されるマルチ機能改質剤としての特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物はわずか1重量%前後(0.3重量%〜5重量%)で有効であり、大幅なコストアップを伴うことなく上記課題を同時に解決することを可能にする。すなわち、これまでのポリ乳酸の真空・圧空成形に代表される冷結晶化においては、結晶核剤や結晶化促進剤、可塑剤、耐衝撃性改良材等の複数の改質剤が相当量添加されていたのに対し、本発明では特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物1種類を少量加えるのみで結晶化(核形成と結晶成長)速度の大幅な促進による耐熱性の向上と耐衝撃性の改良を同時に達成することが可能である。また、この場合にTmやTgもほとんど低下しないために、熱的特性を損なうことなく耐衝撃性を付与することが可能である。
特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物の添加量が0.3重量%未満では耐熱性を向上させるための結晶化促進効果が十分でなく、また耐衝撃性改良効果も限定される。一方、添加量が5重量%を超えると一定の耐衝撃性改良効果は見込まれても、耐熱性向上効果が減殺される傾向にあり好ましくない。最適の添加量範囲は0.3重量%〜5重量%であり、特に0.5重量%〜2重量%が最も好ましい。
特定のポリグリセリン脂肪酸エステル化合物の添加量が0.3重量%未満では耐熱性を向上させるための結晶化促進効果が十分でなく、また耐衝撃性改良効果も限定される。一方、添加量が5重量%を超えると一定の耐衝撃性改良効果は見込まれても、耐熱性向上効果が減殺される傾向にあり好ましくない。最適の添加量範囲は0.3重量%〜5重量%であり、特に0.5重量%〜2重量%が最も好ましい。
すなわち、本発明は以下の構成から成る。
(1)ポリ乳酸とポリグリセリン脂肪酸エステルの割合が、ポリ乳酸が99.7重量%〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜5重量%を含むことを特徴とするポリ乳酸の冷結晶化組成物。
(2)ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分であるポリグリセリンの平均重合度が2〜40であることを特徴とする前記(1)記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
(3)ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率が30%以上であることを特徴とする前記(1)または(2)記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
(4)ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率が50%以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)いずれか記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
(5)ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分である脂肪酸が、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれか記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
(6)前記(1)〜(5)いずれか記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物を含有することを特徴とする成形品。
(7)成形品の耐熱性が動的粘弾性試験においてtanδのピーク温度が70℃以上で、耐衝撃性が2J以上であることを特徴とする請求項(6)記載の成形品。
(8)成形品の耐熱性が動的粘弾性試験においてtanδのピーク温度が75℃以上で、耐衝撃性が3J以上であることを特徴とする請求項(6)記載の成形品。
(9)成形品の融点が170℃以上、ガラス転移温度が57℃以上であることを特徴とする前記(6)〜(8)いずれか記載の成形品。
(10)ポリ乳酸とポリグリセリン脂肪酸エステルの割合が、ポリ乳酸が99.7重量%〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜5重量%を含むことを特徴とするポリ乳酸の冷結晶化組成物の成形方法に関して、該ポリ乳酸冷結晶化組成物を融点以上に加熱溶融し形状を付与しながら一定温度以下に冷却・固化後、引き続き60〜140℃に加熱しながら賦形することを特徴とする成形法。
(11)成形法が真空・圧空成形であることを特徴とする前記(10)記載の成形法。
(1)ポリ乳酸とポリグリセリン脂肪酸エステルの割合が、ポリ乳酸が99.7重量%〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜5重量%を含むことを特徴とするポリ乳酸の冷結晶化組成物。
(2)ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分であるポリグリセリンの平均重合度が2〜40であることを特徴とする前記(1)記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
(3)ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率が30%以上であることを特徴とする前記(1)または(2)記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
(4)ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率が50%以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)いずれか記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
(5)ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分である脂肪酸が、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれか記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
(6)前記(1)〜(5)いずれか記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物を含有することを特徴とする成形品。
(7)成形品の耐熱性が動的粘弾性試験においてtanδのピーク温度が70℃以上で、耐衝撃性が2J以上であることを特徴とする請求項(6)記載の成形品。
(8)成形品の耐熱性が動的粘弾性試験においてtanδのピーク温度が75℃以上で、耐衝撃性が3J以上であることを特徴とする請求項(6)記載の成形品。
(9)成形品の融点が170℃以上、ガラス転移温度が57℃以上であることを特徴とする前記(6)〜(8)いずれか記載の成形品。
(10)ポリ乳酸とポリグリセリン脂肪酸エステルの割合が、ポリ乳酸が99.7重量%〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜5重量%を含むことを特徴とするポリ乳酸の冷結晶化組成物の成形方法に関して、該ポリ乳酸冷結晶化組成物を融点以上に加熱溶融し形状を付与しながら一定温度以下に冷却・固化後、引き続き60〜140℃に加熱しながら賦形することを特徴とする成形法。
(11)成形法が真空・圧空成形であることを特徴とする前記(10)記載の成形法。
本発明によれば、ポリ乳酸の真空・圧空成形(サーモフォーミング)等の冷結晶化を伴う成形加工において、耐熱性と耐衝撃性ともに優れた成形品を一定の成形加工時間内に大幅なコストアップを伴うことなく効率的に得ることができる。
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。
本発明の技術的範囲は下記の実施態様に限定されるものではなく、本発明の骨子や要旨を変更することなく様々に改変し実施することができる。
本発明の技術的範囲は下記の実施態様に限定されるものではなく、本発明の骨子や要旨を変更することなく様々に改変し実施することができる。
本発明に用いられるポリ乳酸とは天然の有機酸である乳酸(CH3CH(OH)COOH)を基本単位とし、複数の乳酸が連なって高分子量となった脂肪族ポリエステルの一種である。ポリ乳酸の原料である乳酸は、植物(例えば、トウモロコシ、キャツサバ、サトウキビ、ビート、サツマイモなど)中に含まれるデンプンなどの多糖類を酵素分解して得られるグルコースなどの糖類を栄養源とし乳酸菌による発酵法により生産することができる。
一般的に高分子量ポリ乳酸を製造するには、先ず乳酸の重縮合により低重合度ポリ乳酸を合成した後、それを解重合して得られるラクチド(環状二量体)を精製後、これを開環重合することにより製造するが、本発明においてはポリ乳酸の製造方法にはよらない。
ポリ乳酸を構成する単体としての乳酸は分子中に不斉炭素を有するために、立体構造の異なるL型とD型の二種類の光学異性体が知られている。本発明は、L型またはD型のみ、或いはL型とD型とを任意の比で含むポリ乳酸に対しても用いることができるが、成形加工性や得られる成形品の熱的・機械的性質からしてできるだけL型(またはD型)含量の高いポリ乳酸が望ましい。
本発明に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とを反応して得られるエステルである。本発明に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分であるポリグリセリンを具体的に示すと、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、エイコサグリセリン、テトラコンタグリセリン等が挙げられるがこれに限定されるもはではなく、好ましくはジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリンであり、これらの1種又は2種以上の混合物が利用される。
本発明に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルのもう一方の構成成分である他の脂肪酸としては特に限定されるものではない。具体的には、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸などの飽和脂肪酸やパルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。さらに、イソステアリン酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸)等が挙げられ、好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸であり、これらの1種又は2種以上の混合物として利用される。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法は特に限定するものではないが、上記原料を用いてリン酸、p−トルエンスルホン酸、苛性ソーダ等の触媒の存在下もしくは無触媒で100℃〜300℃、好ましくは120℃〜260℃の範囲で加熱し生成水を系外に除去することによって得られる。反応は不活性ガスの存在下で行なうのが好ましい。また、トルエン又はキシレン等の共沸溶剤中で行っても良い。このようにして合成されたポリグリセリン脂肪酸エステルを具体的に示すと、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル(例えば、ジグリセリンジステアリン酸エステル、ジグリセリントリステアリン酸エステル、ジグリセリンテトラステアリン酸エステルなどが挙げられる)、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル(例えば、デカグリセリンテトラステアリン酸エステル、デカグリセリンペンタステアリン酸エステル、デカグリセリンオクタステアリン酸エステル、デカグリセリンデカステアリン酸エステルなどが挙げられる)が挙げられるがこれに限定されるものではなく、これらの1種又は2種以上の混合物が利用される。
更にこのとき、ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率が30%以上であることが好ましい。ここで脂肪酸エステル化率が30%未満であるとポリ乳酸との相溶性が増大するために、本発明の目的である結晶化速度の飛躍的な向上による耐熱性付与効果が減殺される。ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率は、次式の通り容易に算出できる。
エステル化率(%)=(構成脂肪酸のmol数/構成ポリグリセリンの総水酸基のmol数)×100
本発明のポリ乳酸冷結晶化組成物におけるポリ乳酸と、ポリグリセリン脂肪酸エステルの混合比としては、目的にする用途に応じて適宜選択すれば良く、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸が99.7重量%〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜5重量%が好ましく、ポリ乳酸系樹脂が99.7〜98重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜2重量%が更に好ましい。
エステル化率(%)=(構成脂肪酸のmol数/構成ポリグリセリンの総水酸基のmol数)×100
本発明のポリ乳酸冷結晶化組成物におけるポリ乳酸と、ポリグリセリン脂肪酸エステルの混合比としては、目的にする用途に応じて適宜選択すれば良く、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸が99.7重量%〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜5重量%が好ましく、ポリ乳酸系樹脂が99.7〜98重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜2重量%が更に好ましい。
本発明に係るポリ乳酸組成物には、主成分であるポリ乳酸と添加剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステルの他に、用途に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、加水分解防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、アンチブロッキング剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、難燃剤等の添加剤を適宜添加することもできる。
本発明に係るポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸とポリグリセリン脂肪酸エステル、更に必要に応じて他の添加剤を均一に混合した後、一軸あるいは多軸の押出機を用いて溶融混練する方法等を採用して製造することができる。本発明に係るポリ乳酸組成物の形状としては、特に限定されるものではないが、ペレット状、棒状、粉末状等の形状が好ましい。
本発明に係るポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸とポリグリセリン脂肪酸エステル、更に必要に応じて他の添加剤を均一に混合した後、一軸あるいは多軸の押出機を用いて溶融混練する方法等を採用して製造することができる。本発明に係るポリ乳酸組成物の形状としては、特に限定されるものではないが、ペレット状、棒状、粉末状等の形状が好ましい。
上記のようにして得られたポリ乳酸組成物を融点(熱軟化流動点)以上に加熱して一旦シート状に押出し冷却・固化させた後、引き続き一定温度以上に予熱し加熱金型内で最終目的形状に成形加工することにより耐熱性と耐衝撃性に優れた様々な形状を有する真空・圧空成形品として得ることができる。この場合の金型温度としては、最終要求性能に応じて60℃〜140℃に適宜設定されることが望ましい。
具体的な真空・圧空成形品の例としては、弁当や総菜などの食品容器、野菜や果物等の青果物容器、使い捨て食品トレー、カップ、ブリスター、製品容器、部品トレー等を挙げることができる。
具体的な真空・圧空成形品の例としては、弁当や総菜などの食品容器、野菜や果物等の青果物容器、使い捨て食品トレー、カップ、ブリスター、製品容器、部品トレー等を挙げることができる。
また、本発明のポリ乳酸組成物はブロー成形に供することもできる。一般的にブロー成形法には押出ブロー成形法と射出ブロー成形法があるが、特に冷結晶化を伴う射出ブロー成形法において耐熱性と耐衝撃性に優れたポリ乳酸系ボトルを製造することができる。具体的な用途としては、シャンプーやオイル、農薬等を入れる各種ボトルとして有用である。
さらに、本発明のポリ乳酸組成物は、必要に応じて溶融張力を高める最適の分子・配合設計を施すことにより発泡成形にも供することができる。一般的に発泡成形には押出発泡とビーズ発泡があるが、本発明のポリ乳酸組成物は特に冷結晶化を伴うビーズ発泡において有用であり、耐熱性と耐衝撃性に優れたポリ乳酸発泡成形品を得ることができる。具体例としては、緩衝材、家電製品梱包材、工業用断熱材、魚箱等を挙げることができる。
成形品の耐熱性を動的粘弾性試験で試験し、耐衝撃性をデュポン式衝撃試験(小形角板試験片(1×50×55mm3、直径1インチの撃ち型、直径1インチの受け台、錘1000g)で試験したとき、耐熱性でtanδのピーク温度が65℃以上、耐衝撃性が1J以上であることが好ましい。更には、耐熱性でtanδのピーク温度が70℃以上、耐衝撃性が2J以上であることが好ましい。また更には耐熱性でtanδのピーク温度が75℃以上、耐衝撃性が3J以上であることが好ましい。これらは特に限定されるものではないが、耐熱性と耐衝撃性はともに高い方が好ましい。耐熱性を必要とする用途であれば、耐熱性が高い方が好ましく、耐衝撃性を必要とする用途であれば耐衝撃性が高い方が好ましく、それぞれ用途にあった使い分けをすればよい。
成形品の融点、ガラス転移温度は特に限定されるものではないが、融点が170℃以上、ガラス転移温度が57℃以上であることが好ましい。更には、融点が175℃以上、ガラス転移温度が60℃以上であることが好ましい。
以下に、射出成形を代表例として本発明の実施例を説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例によって限定されるものではない。
以下に、射出成形を代表例として本発明の実施例を説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例によって限定されるものではない。
所定のエステル化率となるようにポリグリセリン及び脂肪酸を混合し、不活性ガス中、酸触媒(リン酸等)、又はアルカリ触媒(苛性ソーダ等)の存在下又は、触媒を用いずに120〜260℃で加熱し反応水を系外に除去することによってポリグリセリンと脂肪酸を反応させ、表1記載のポリグリセリン脂肪酸エステルを合成し、これをポリ乳酸系樹脂用マルチ機能改質剤とした。
ポリ乳酸樹脂としては、重量平均分子量(Mw)=185,000、D異性体含有(共重合)率=0.25%のトヨタ自動車株式会社製のU’z S−17を使用した。
実施例1〜4
ポリ乳酸樹脂組成物の調製は上記ポリ乳酸と上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを表1に記載の重量割合で配合し、ストランドダイを装着した二軸押出機を使ってシリンダ温度200℃で溶融混練を行った。溶融押し出しされたストランドは水冷後、ペレタイザーでペレット化を行い、その後除湿型乾燥器を用いて50℃で24時間乾燥を行った。
次に、住友重機械工業社製の射出成形機(SE−18S)を使い、上記ペレットを押出機シリンダ温度200℃、金型温度30℃、金型内での冷却時間30秒で、射出成形試験片として小形角板試験片(1×50×55mm3)を作製した。作製した小形角板試験片(1×50×55mm3)を井元社製ホットプレス機(加熱冷却プレスIMC−1812)で表1記載の結晶化温度で30秒間ホットプレスして冷結晶化を行った。
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)を用いて熱的・機械的性質の測定を行い、評価した。
ポリ乳酸樹脂組成物の調製は上記ポリ乳酸と上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを表1に記載の重量割合で配合し、ストランドダイを装着した二軸押出機を使ってシリンダ温度200℃で溶融混練を行った。溶融押し出しされたストランドは水冷後、ペレタイザーでペレット化を行い、その後除湿型乾燥器を用いて50℃で24時間乾燥を行った。
次に、住友重機械工業社製の射出成形機(SE−18S)を使い、上記ペレットを押出機シリンダ温度200℃、金型温度30℃、金型内での冷却時間30秒で、射出成形試験片として小形角板試験片(1×50×55mm3)を作製した。作製した小形角板試験片(1×50×55mm3)を井元社製ホットプレス機(加熱冷却プレスIMC−1812)で表1記載の結晶化温度で30秒間ホットプレスして冷結晶化を行った。
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)を用いて熱的・機械的性質の測定を行い、評価した。
比較例1〜2
比較例1〜2として、上記ポリ乳酸のみのブランクにつき、実施例1〜4と全く同じ条件にて小形角板試験片(1×50×55mm3)を作製し、表1記載の結晶化温度で30秒間ホットプレスによる冷結晶化を行い、熱的・機械的性質の比較検討を行った。
比較例1〜2として、上記ポリ乳酸のみのブランクにつき、実施例1〜4と全く同じ条件にて小形角板試験片(1×50×55mm3)を作製し、表1記載の結晶化温度で30秒間ホットプレスによる冷結晶化を行い、熱的・機械的性質の比較検討を行った。
上記冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)の熱的・機械的性質の評価は、以下の通り行った。
(1)耐熱性:動的粘弾性試験
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)を1×5×35mm3サイズにカットして、JISK7244−4(ISO6721−4)に準じて、レオロジー社製粘弾性測定装置DVD−V4を用いて動的粘弾性試験にて耐熱性を測定した(測定治具 引張り、周波数10Hz、振動幅3ミクロン、昇温速度2℃/min)。耐熱性の指標としては、損失正接tanδより算出されるtanδのピーク温度を耐熱性の指標とした。
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)を1×5×35mm3サイズにカットして、JISK7244−4(ISO6721−4)に準じて、レオロジー社製粘弾性測定装置DVD−V4を用いて動的粘弾性試験にて耐熱性を測定した(測定治具 引張り、周波数10Hz、振動幅3ミクロン、昇温速度2℃/min)。耐熱性の指標としては、損失正接tanδより算出されるtanδのピーク温度を耐熱性の指標とした。
(2)耐熱性:熱変形試験1
実用上の観点より、小形角板試験片(1×50×55mm3)の熱変形温度を測定した。上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)の両端から7mmの部位それぞれを金属製の支持台に載せる。金属製の支持台に沿うように、小形角板試験片(1×50×55mm3)の中央に金属製平板(18×67×2mm3)を置く。その金属製平板(18×67×2mm3)の中央に1.9kgの重りを載せ、所定の温度に設定した恒温槽にて5分間静置する。5分後に重りを支えられているかどうかを耐熱性の指標とし、重りを5分間支えきれた上限温度を本試験の熱変形温度とした。耐熱性の高いものは、小形角板試験片(1×50×55mm3)の両端7mmの部分で重りを支えきれるが、耐熱性の低いものは湾曲して支えきれない。
実用上の観点より、小形角板試験片(1×50×55mm3)の熱変形温度を測定した。上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)の両端から7mmの部位それぞれを金属製の支持台に載せる。金属製の支持台に沿うように、小形角板試験片(1×50×55mm3)の中央に金属製平板(18×67×2mm3)を置く。その金属製平板(18×67×2mm3)の中央に1.9kgの重りを載せ、所定の温度に設定した恒温槽にて5分間静置する。5分後に重りを支えられているかどうかを耐熱性の指標とし、重りを5分間支えきれた上限温度を本試験の熱変形温度とした。耐熱性の高いものは、小形角板試験片(1×50×55mm3)の両端7mmの部分で重りを支えきれるが、耐熱性の低いものは湾曲して支えきれない。
(3)耐熱性:熱変形試験2
上記の熱変形試験1と同様の試験方法で0.46kgの重りを使用して、130℃に設定した恒温槽にて5分間静置した。5分後に重りを支えられているかどうかを耐熱性の指標とした。耐熱性の高いものは、小形角板試験片(1×50×55mm3)の両端7mmの部分で重りを支えきれるが、耐熱性の低いものは湾曲して支えきれない。支えきれた場合を熱変形なし、支えきれない場合を熱変形ありとした。
本試験方法は、真空・圧空成形品を食品容器として使用する場合、食品を温めるために電子レンジで再加熱(130℃、5分)する際の耐熱性評価試験を想定したものである。
上記の熱変形試験1と同様の試験方法で0.46kgの重りを使用して、130℃に設定した恒温槽にて5分間静置した。5分後に重りを支えられているかどうかを耐熱性の指標とした。耐熱性の高いものは、小形角板試験片(1×50×55mm3)の両端7mmの部分で重りを支えきれるが、耐熱性の低いものは湾曲して支えきれない。支えきれた場合を熱変形なし、支えきれない場合を熱変形ありとした。
本試験方法は、真空・圧空成形品を食品容器として使用する場合、食品を温めるために電子レンジで再加熱(130℃、5分)する際の耐熱性評価試験を想定したものである。
(4)耐衝撃性:デュポン式衝撃試験
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)をデュポン式落下衝撃試験機(安田精機製作所製No.517、落下高さ最大100cm、ピッチ5cm、直径1インチの撃ち型と、直径1インチの受け台、錘1000gを使用)を用いて、50%衝撃破壊エネルギー(E50(J))として耐衝撃性を測定した。試験方法、E50(J)の算出方法は、JIS K7211−1(2006)の「7.6.2 予備試験」、「7.6.3 試験手順」、及び「7.6.4 結果の表示」に準じて算出した。
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)をデュポン式落下衝撃試験機(安田精機製作所製No.517、落下高さ最大100cm、ピッチ5cm、直径1インチの撃ち型と、直径1インチの受け台、錘1000gを使用)を用いて、50%衝撃破壊エネルギー(E50(J))として耐衝撃性を測定した。試験方法、E50(J)の算出方法は、JIS K7211−1(2006)の「7.6.2 予備試験」、「7.6.3 試験手順」、及び「7.6.4 結果の表示」に準じて算出した。
(5)曲げ特性:曲げ試験
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)を1×50×25mm3サイズにカットして、JISK7171に準じてインストロン社製INSTRON5582(ロードセル 1kN)を用い、曲げ強さと曲げ弾性率を測定することにより曲げ特性の評価を行った。曲げ速度は1mm/min、支点間距離は16mmにて実施した。
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)を1×50×25mm3サイズにカットして、JISK7171に準じてインストロン社製INSTRON5582(ロードセル 1kN)を用い、曲げ強さと曲げ弾性率を測定することにより曲げ特性の評価を行った。曲げ速度は1mm/min、支点間距離は16mmにて実施した。
(6)ガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)のガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)は、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠し、示差走査熱量分析計(理学電機製、XRD−DSCII)を用い、昇温速度10℃/minで測定を行った。
ガラス転移温度は、JIS K7121記載の中間点ガラス転移温度とした(中間点ガラス転移温度は、測定結果のDSC曲線の各ベースラインを延長した直線から縦方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とする)。
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)のガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)は、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠し、示差走査熱量分析計(理学電機製、XRD−DSCII)を用い、昇温速度10℃/minで測定を行った。
ガラス転移温度は、JIS K7121記載の中間点ガラス転移温度とした(中間点ガラス転移温度は、測定結果のDSC曲線の各ベースラインを延長した直線から縦方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とする)。
(7)結晶化度
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)の結晶化度は、示差走査熱量分析計(理学電機製、XRD−DSCII)を用い、昇温速度10℃/minで測定を行った。
結晶化度は、得られた融解熱量、発熱量より次式の通り容易に算出できる。93.1J/gはポリ乳酸の理論融解熱量を示す。
結晶化度(%)=(|融解熱量|−|発熱量|)×100/93.1
上記のように冷結晶化した小形角板試験片(1×50×55mm3)の結晶化度は、示差走査熱量分析計(理学電機製、XRD−DSCII)を用い、昇温速度10℃/minで測定を行った。
結晶化度は、得られた融解熱量、発熱量より次式の通り容易に算出できる。93.1J/gはポリ乳酸の理論融解熱量を示す。
結晶化度(%)=(|融解熱量|−|発熱量|)×100/93.1
表2において明らかな様に、冷結晶化同条件下での実施例2を比較例1と比較すると、ポリ乳酸にポリグリセリン脂肪酸エステルを1重量%加えた実施例2においては、耐熱性の指標としてのtanδのピーク温度が最大75℃を超えている(78.8℃)のに対し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加しないポリ乳酸のみのブランクである比較例1では67℃に満たない(66.8℃)。また、小形角板試験片(1×50×55mm3)の熱変形試験1においても、実施例2は70℃であるのに対して、比較例1は60℃である。表2の130℃での熱変形試験2においても、実施例2は熱変形がないのに対して、比較例1は熱変形することからも耐熱性が高いことがわかる。
しかもここで特筆されるべきことは、結晶化条件110℃、30秒では実施例1〜3において比較例1との比較で明らかなように、耐熱性の大幅な向上と同時に耐衝撃性は低下することなくむしろ大きく向上していることである。
実施例2における融点(Tm)やガラス転移温度(Tg)についても、ブランクである比較例1との比較においても全く同等で十分高く有意な低下は認めらない。
ポリグリセリン脂肪酸エステルを1重量%加えた実施例2がブランクである比較例1との比較において、なぜ大幅な耐熱性の向上(tanδのピーク温度:比較例1が66.8℃に対して、実施例2が78.8℃、熱変形温度:比較例1が60℃に対して、実施例2が70℃)がもたらされたかを解明するために結晶化度を測定した結果、実施例2ではおよそ53.9%であるのに対し比較例1では41.8%であることが明らかとなり、結晶化度の大きな差異が耐熱性の支配的な要因であることが確認された。このようにポリグリセリン脂肪酸エステルを加えたことによる耐熱性(tanδのピーク温度、熱変形温度)の大幅な向上は、結晶化速度の大幅な向上による結晶化度の大きな差異に起因することが明らかとなった。
実施例4はホットプレスによる結晶化温度を100℃とした場合であるが、結晶化温度が同じ100℃である比較例2の対比において明らかなように、ポリ乳酸にポリグリセリン脂肪酸エステルを加えることにより有意に耐熱性と耐衝撃性の向上を同時に図ることが可能である。
実施例1〜3はポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量が0.5重量%〜2重量%と異なるものである。ブランクである比較例1との比較において、耐衝撃性、耐熱性で実施例1〜3の方が高い値を示している。また、添加量が増えるにつれて耐衝撃性、耐熱性は高い値を示している。
以上本発明により、ポリ乳酸の真空・圧空成形等の冷結晶化を伴う成形加工において、耐熱性と耐衝撃性ともに優れた成形品を大幅なコストアップを伴うことなく効率的に得ることができ、産業上貢献大である。
Claims (11)
- ポリ乳酸とポリグリセリン脂肪酸エステルの割合が、ポリ乳酸が99.7重量%〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜5重量%を含むことを特徴とするポリ乳酸の冷結晶化組成物。
- ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分であるポリグリセリンの平均重合度が2〜40であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
- ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率が30%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
- ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率が50%以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
- ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分である脂肪酸が、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物。
- 請求項1〜5いずれか記載のポリ乳酸の冷結晶化組成物を含有することを特徴とする成形品。
- 成形品の耐熱性が動的粘弾性試験においてtanδのピーク温度が70℃以上で、耐衝撃性が2J以上であることを特徴とする請求項6記載の成形品。
- 成形品の耐熱性が動的粘弾性試験においてtanδのピーク温度が75℃以上で、耐衝撃性が3J以上であることを特徴とする請求項6記載の成形品。
- 成形品の融点が170℃以上、ガラス転移温度が57℃以上であることを特徴とする請求項6〜請求項8いずれか記載の成形品。
- ポリ乳酸とポリグリセリン脂肪酸エステルの割合が、ポリ乳酸が99.7重量%〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.3重量%〜5重量%を含むポリ乳酸冷結晶化組成物の成形方法に関して、該ポリ乳酸溶冷結晶化組成物を融点以上に加熱溶融し形状を付与しながら一定温度以下に冷却・固化後、引き続き60〜140℃に加熱しながら賦形することを特徴とする成形法。
- 成形法が真空・圧空成形(サーモフォーミング)であることを特徴とする請求項10記載の成形法。
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JP2011271097A JP2013122012A (ja) | 2011-12-12 | 2011-12-12 | ポリ乳酸の冷結晶化組成物、その成形品並びに成形法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105479543A (zh) * | 2016-01-29 | 2016-04-13 | 虞雅仙 | 一种吸塑材料裁切装置及全自动水钻吸塑盘成型设备 |
-
2011
- 2011-12-12 JP JP2011271097A patent/JP2013122012A/ja active Pending
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