JP2013120848A - 赤色発光半導体素子とその製造方法 - Google Patents

赤色発光半導体素子とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】EuやPrの添加濃度の増大を図りながら、表面平坦性を良好に保って、優れた光出力とデバイス特性とを備えた赤色発光半導体素子とその製造方法を提供する。
【解決手段】GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を用いた赤色発光半導体素子の製造方法であって、GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を母体材料として、有機金属気相エピタキシャル法を用いて、900〜1100℃の温度条件の下で、EuまたはPrを、Ga、InあるいはAlと置換するように添加した活性層を、p型層とn型層の間に、p型層とn型層の形成と一連の形成工程において形成するに際して、EuまたはPrを含有する有機原料、および母体材料を構成する元素を含有する有機原料を、所定の繰り返し周期で間欠的に供給する赤色発光半導体素子の製造方法および赤色発光半導体素子。
【選択図】なし

Description

本発明は赤色発光半導体素子とその製造方法に関し、詳しくはGaN、InN、AlN等の特定の母体材料(母材)にEuまたはPrが添加された活性層をn型層とp型層との間に設けた優れた発光特性とデバイス特性とを備えた赤色発光半導体素子とその製造方法に関する。
窒化ガリウム(GaN)などの窒化物半導体は、青色発光デバイスを構成する半導体材料として注目されており、近年では、GaNにインジウム(In)を高濃度添加することにより、緑色さらには赤色発光デバイスを実現できると期待されている。しかし、高In組成になるに従い、In組成の揺らぎやピエゾ電界効果が顕著になるため、窒化物半導体を用いた赤色発光デバイスの実現には至っていないのが現状である。
一方、窒化物半導体のワイドギャップに着目し、GaNを添加母体としてユーロピウム(Eu)やプラセオジム(Pr)が添加された半導体が赤色発光デバイスとして有望視されている。
このような状況下、本発明者らは、世界に先駆けてEuまたはPr添加GaNを活性層とする赤色発光ダイオード(LED)の実現に成功した(特許文献1)。
そして、このような赤色発光ダイオードの実現により、既に開発されている青色発光ダイオードおよび緑色発光ダイオードと併せて、同一基板上に窒化物半導体を用いた光の三原色の発光ダイオードを集積化することが可能となるため、小型で高精細なフルカラーディスプレイや、現在の白色LEDには含まれていない赤色領域の発光が加えられたLED照明などの分野への応用が期待されている。
しかしながら、前記した赤色発光ダイオードの光出力は、現状では50μW程度に留まっており、実用化には発光強度(光出力)の更なる向上が求められている。
光出力の向上を図るためには、前記した活性層の発光中心であるEuやPrの添加濃度を高めることが必須であるが、従来の添加技術を用いた場合、EuまたはPr濃度が高くなるにつれて活性層の結晶形成表面に顕著な荒れが生じる。このような荒れが発生した半導体をLED構造に応用すると、LED構造に必要な界面平坦性が実現できないため、デバイス性能の顕著な劣化を招く。
例えば、分子線エピタキシー法によるEu添加の場合には、濃度の面からはEu原子濃度16%までの添加が実現しているが、反射高速電子線回折像を見ると、Eu原子濃度0.1%の時点で既に表面に荒れが生じ、多結晶化していることが指摘されている(非特許文献1)。
また、GaNへのEu添加手法として最も多く用いられているイオン注入法の場合には、高エネルギーによるイオン打ち込みにより、半導体の表面やその近くの結晶がダメージ(イオンダメージ)を受けて表面が荒れるため、赤色発光半導体素子として良好なpn接合を形成することができない。
このような表面の荒れを防ぐために、本発明者らは、特許文献1において有機金属エピタキシャル(OMVPE)法を採用したが、この方法の場合でも、Eu濃度が5×1019cm−3を超えると表面に荒れが発生してしまうことを本発明者らは確認している。
このように、従来の赤色発光半導体素子の製造においては、EuやPrを高濃度に添加することと活性層表面の平坦性を充分に維持することの双方を両立させることができなかった。
WO2010/128643 A1公報
H.Bang,S.Morishima,J.Sawahata,J.Seo,M.Takiguchi,M.Tsunemi,and K.Akimoto、「Concentration quenching of Eu−related luminescence in Eu−doped GaN」、Appl.Phys.Lett.85,227(2004).
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点に鑑み、EuやPrの添加濃度の増大を図りながら、表面平坦性を良好に保って、優れた光出力とデバイス特性とを備えた赤色発光半導体素子とその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、以下の各請求項に示す発明により、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
請求項1に記載の発明は、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を用いた赤色発光半導体素子の製造方法であって、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を母体材料として、有機金属気相エピタキシャル法を用いて、900〜1100℃の温度条件の下で、EuまたはPrを、Ga、InあるいはAlと置換するように添加した活性層を、p型層とn型層の間に、p型層とn型層の形成と一連の形成工程において形成するに際して、
EuまたはPrを含有する有機原料、および前記母体材料を構成する元素を含有する有機原料を、所定の繰り返し周期で間欠的に供給する
ことを特徴とする赤色発光半導体素子の製造方法である。
本発明者等は、上記課題の解決について鋭意検討する中で、有機金属気相エピタキシャル法(OMVPE法)を用いてEuやPrを添加する際の原料供給方法として、母体材料(母材)の形成に際して用いられている流量変調成長法(Flow rate Modulation Epitaxy:FME法)に着目した。
FME法は、従来より、OMVPE法による母材の作製に際して、有機原料を間欠的に供給し、基板表面での拡散を促進させることによって成長表面を平坦化させる手法として用いられている技術である。
このような母材作製に用いられるFME法を、活性層におけるEu濃度の増大手法として用いることは通常考えられず、本発明者の知る限りそのような報告もない。
しかし、本発明者は、従来の考え方に捉われず、活性層の形成における原料(Ga有機原料およびEu有機原料)の供給方法としてこのFME法の技術を適用した場合、Euを高濃度に添加しながらも表面の平坦性を維持することができる可能性もあると考え、種々の実験を行った結果、原料の供給および中断の間隔(繰り返し周期)を適切に制御することにより、Euを高濃度に添加しながらも表面の平坦性を維持することができることを見出した。
このように、表面の平坦性を維持しながらEuを高濃度に添加することができた理由は、以下のように考えられる。即ち、Gaと比較して原子半径が1.5倍大きいEuが適切なサイトを置換するためには充分な表面拡散が必要である。しかし、従来のように連続的な原料供給の場合にはこの表面拡散が不充分であったのに対し、間欠的な原料供給を行った場合には、Euの充分な表面拡散が行われてEuの取込が促進されるため、Euを充分な高濃度に添加することができる。この結果、Euを高濃度に添加しながらも表面の平坦性が維持された活性層を形成することができたものと考えられる。
そして、所定の成長温度の下、間欠的な原料供給により高濃度に添加された活性層のEuは、Gaと置換する形で配置されて、Euイオンの置換サイトがGaサイトおよびその極近傍となるように制御されるため、そのフォトルミネセンススペクトル(Photoluminescence Spectrum:PLスペクトル)において、Euイオンに起因する621nm付近のピークが支配的となり、充分に発光して高い光出力を得ることができる。
このように、Euを高濃度に添加することができる一方で、表面の平坦性を維持することができるため、光出力の向上とデバイス特性の確保の両立が可能な赤色発光半導体素子を製造することができる。
なお、「621nm付近のピークが支配的」とは、621nmを中心とした618〜623nmの範囲の波長での発光がEuイオンに起因する発光であるため、621nm付近のピークをできるだけ大きくすることを意味している。
そして、本請求項の発明においては、活性層の形成に用いるOMVPE法における温度条件が重要である。即ち、温度が低すぎると異なる結晶場を有するEuイオンが増加して621nmにおけるピークが減少する一方、温度が高すぎるとEuイオンが表面から脱離してEu添加が困難となる。好ましい温度条件は900〜1100℃であり、950〜1050℃であるとより好ましい。
また、p型層と活性層とn型層の形成を一連の形成工程、即ち途中で反応容器から取り出すことなく、反応容器内において順次p型層、活性層、n型層(p型層、n型層の順番の前後は問わない)を形成することにより、各層間に界面準位が存在せず、キャリアを効率的に注入できる。これらのため、数V程度の低電圧動作が可能となる。
なお、前記の観点から、n型層、p型層もOMVPE法により形成することが好ましいが、他の成長法を排除するものではない。
以上においては、母材としてGaN、添加元素としてEuを挙げて本発明を説明してきたが、母材としてはGaNに限定されず、InN、AlNまたはこれらの混晶(InGaN、AlGaN等)を母材としても上記の効果と同様の効果を得ることができる。また、添加元素もEuに限定されず、Prを添加元素としても上記の効果と同様の効果を得ることができる。
なお、添加元素をEuまたはPrとしているのは、これらの元素は外殻電子が内殻電子により遮蔽されており、内殻遷移に伴う発光が590nm以上の波長であり、これがNTSC色域、HDTV色域に限定されず、赤みが感じられる光であるからである。
そして、本請求項の発明により、前記したような大きな経済的効果を提供することができる。即ち、Eu添加GaNを用いた高い光出力のデバイス特性に優れた赤色発光ダイオードの実現により、「赤・緑・青」の光の三原色の発光ダイオードを実用化レベルで集積化することが可能となるため、小型かつ高精細な高出力の発光ダイオードを用いたフルカラーディスプレイを実現することができる。
また、現在の白色LEDには含まれていない赤色領域の強度の高い発光を加えることにより、現在赤色LEDとして使用されているAlGaInP系LEDの代替のみならず、周囲の温度によって発光波長が変化しないという希土類元素の特性を生かした高輝度LED照明が可能となる。
請求項2に記載の発明は、
前記繰り返し周期が、1秒以上300秒未満であることを特徴とする請求項1に記載の赤色発光半導体素子の製造方法である。
各有機原料の供給と中断とを切り替える繰り返し周期が長すぎると、中断時、表面に添加元素以外の不純物が付着して取り込まれるため、添加元素の拡散が充分に行われず、充分高濃度に添加することができない恐れがある。一方、繰り返し周期が短すぎると、材料の供給と中断を行うバルブの開閉を頻繁に行う必要があるため、バルブが早く消耗して、バルブの交換頻度が増大する恐れがある。好ましい繰り返し周期は1秒以上300秒未満であり、10〜60秒であるとより好ましい。
請求項3に記載の発明は、
前記繰り返し周期における繰り返しタイミングが、EuまたはPrを含有する有機原料の繰り返しタイミングと、母体材料を構成する元素を含有する有機原料の繰り返しタイミングとで異なっていることを特徴とする請求項2に記載の赤色発光半導体素子の製造方法である。
添加元素(例えばEu)有機原料ガスを間欠的に供給するタイミングと母材元素(例えばGa)有機原料ガスを間欠的に供給するタイミングは、作業性の観点からは同期させて同時に切り替えることが好ましいが、この供給タイミングをずらした場合には、EuとGaが結晶表面上に取り込まれる際、競合することがなくなるため、表面平坦性を損なうことなく、添加元素(例えばEu)をより高濃度に添加することができる。
請求項4に記載の発明は、
前記母体材料に添加される元素が、Euであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤色発光半導体素子の製造方法である。
Euは、Prに比べて赤色発光効率が高いため、添加元素としてより好ましい。また、Euはカラーテレビの赤色蛍光体としての実績もあり、Prに比べてEu化合物の入手も容易であるため添加元素として好ましい。
請求項5に記載の発明は、
Euが、Eu{N[Si(CHまたはEu(C1119により供給されることを特徴とする請求項4に記載の赤色発光半導体素子の製造方法である。
Eu源であるEu有機原料としては、例えば、Eu[C(CH、Eu[C(CHH]、Eu{N[Si(CH、Eu(C、Eu(C1119等を挙げることができるが、これらの内でも、Eu{N[Si(CHやEu(C1119は、反応装置内での蒸気圧が高いため、効率的な添加を行うことができる。
請求項6に記載の発明は、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を母体材料に用いた赤色発光半導体素子であって、
基板上に、p型層とn型層に挟まれた活性層を有しており、
前記活性層は、EuまたはPrを含有する有機原料、および前記母体材料を構成する元素を含有する有機原料を、所定の繰り返し周期で間欠的に供給して、GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶に、EuまたはPrが、Ga、InあるいはAlと置換するように添加した活性層である
ことを特徴とする赤色発光半導体素子である。
前記の通り、所定の繰り返し周期で間欠的に供給された原料ガスから形成された活性層は、添加元素が高濃度に添加されながらも表面の平坦性が維持されているため、優れた発光特性とデバイス特性とを備えた赤色発光半導体素子を提供することができる。
なお、活性層が形成される基板としては、通常サファイアが用いられるが、これに限定されるものではなく、例えば、Si、GaN、GaAs等を用いることもできる。
請求項7に記載の発明は、
前記活性層において、EuまたはPrの添加量が、1×1017〜5×1021cm−3であることを特徴とする請求項6に記載の赤色発光半導体素子である。
EuやPr(添加元素)の添加量が少なすぎる場合には、Eu濃度やPr濃度が低いため、充分な高輝度発光を得ることが困難となり、高い光出力を得ることができない。一方、添加量が多すぎる場合には、活性層にEuやPrの偏析が生じるため、発光効率が減少して、高い光出力を得ることができない。好ましい添加量は、1×1017〜5×1021cm−3であり、1×1019〜5×1020cm−3であるとより好ましい。
請求項8に記載の発明は、
前記活性層において、AFM(原子間力顕微鏡)による表面粗さが3nm以下であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の赤色発光半導体素子である。
また、前記したように、表面が荒れているとデバイス性能に悪影響を与える。AFMによる表面粗さが3nm以下であると、LED構造に適した平坦性を備えた活性層を形成することができ、良好なpn接合を形成することができる。1nm以下であるとより好ましい。なお、表面粗さは小さい方が好ましいが、製造の効率性とのバランスを考慮すると、下限は0.1nm程度が好ましい。
請求項9に記載の発明は、
光出力が、100μW以上であることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の赤色発光半導体素子である。
添加元素を高濃度に添加する一方で、表面の平坦性を維持している活性層を備えた赤色発光半導体素子であるため、従来にない100μW以上の高い光出力の赤色発光半導体素子を提供することができる。
請求項10に記載の発明は、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を用いた赤色発光半導体素子であって、
基板上に、p型層とn型層に挟まれた活性層を有しており、
前記活性層は、GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶に、EuまたはPrが、Ga、InあるいはAlと置換するように添加して形成され、EuまたはPrの添加量が1×1017〜5×1021cm−3、AFM(原子間力顕微鏡)による表面粗さが3nm以下の活性層であり、
光出力が100μW以上であることを特徴とする赤色発光半導体素子である。
上記のような赤色発光半導体素子は、添加元素(EuまたはPr)が1×1017〜5×1021cm−3と高濃度に添加されながらも、AFMによる表面粗さが3nm以下と表面平坦性にも優れているため、100μW以上の優れた光出力とデバイス特性とを備えた赤色LEDを提供することができる。
本発明によれば、EuやPrの添加濃度の増大を図りながら、表面平坦性を良好に保って、優れた光出力とデバイス特性とを備えた赤色発光半導体素子とその製造方法を提供することができる。
本発明の実施の形態の赤色発光半導体素子の基本的な構造を示す図である。 本発明の実施の形態におけるEu有機原料およびGa有機原料の供給と中断の一例を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態により得られたEu添加GaN層(活性層)の表面の光学顕微鏡画像である。 本発明の実施の形態における赤色発光半導体素子のフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。 本発明の実施の形態におけるEu有機原料およびGa有機原料の供給と中断の他の例を模式的に示す図である。
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
1.赤色発光半導体素子の作製
図1に本実施の形態における赤色発光半導体素子の基本的な構造を示す。図1において、10はGaN母材にEuが添加されたEuドープGaN層(活性層)、20はアンドープGaN層、30はGaNバッファ層、40はサファイア基板である。
最初に、有機金属気層成長法(OMVPE法)を用いて、サファイア基板40上にGaNバッファ層(厚さ30nm)30およびアンドープGaN層(厚さ3.4μm)20を成長させた。
次に、アンドープGaN層20の上に、所定の繰り返し周期で間欠的に原料を供給しつつ、活性層となるEuドープGaN層(厚さ300nm)10を積層した。
Ga原料、及びN原料としては、それぞれトリメチルガリウム、アンモニアを用い、Eu有機原料としてはEu(DPM)、即ち、Eu(C1119を用いた。
EuドープGaN層10の形成は、温度1030℃、圧力100kPaの条件下、キャリアガス流量40SLM、成長速度0.8μm/hとなるように制御した。なお、キャリアガスとして水素を用いた。
また、Eu有機原料とGa有機原料の供給は同時に行い、供給と中断を切り替える間隔(繰り返し周期)は同じ長さとした(図2参照)。そして、繰り返し周期は、10秒、1分(60秒)、5分(300秒)の3水準とし、各水準における供給時間の合計が、従来の連続成長における供給時間(30分)と同じになるようにした。即ち、1回の供給と中断を1サイクルとして、繰り返し周期10秒の場合には180サイクル、繰り返し周期1分の場合には30サイクル、繰り返し周期5分の場合には6サイクル行った。併せて、比較のために、連続成長(30分)によるEuドープGaN層10の形成も行った。
なお、OMVPE装置の配管バルブ等を通常仕様のもの(耐熱温度80〜100℃)から高温特殊仕様のものに変更することにより、シリンダー温度を135℃に保つことを可能にさせて、十分な量のEuを反応管に供給することが可能となるようにした。
2.EuドープGaN層のEu濃度および結晶表面
放射光蛍光X線測定によりEu添加濃度を測定した。この結果、連続供給の場合は3×1019cm−3であったのに対して、繰り返し周期10秒の場合は1×1020cm−3と約3倍に増大していることが分かった。
また、光学顕微鏡により結晶表面を観察した結果、Eu添加濃度が高い繰り返し周期10秒の場合、図3に示すように、凹凸が認められず平坦性が良好であることが分かった。なお、図3において、左上に見える黒点は、顕微鏡画像の焦点が合った状態で表面を観察していることを示すため故意に欠陥部分を撮影したものである。
3.発光特性
次に、上記の各赤色発光半導体素子について、ヘリウム・カドミウムレーザーを用いてフォトルミネッセンススペクトル(PLスペクトル)を測定し、繰り返し周期とPL強度との関係について評価した。
図4に結果を示す。なお、図4において、縦軸はPL強度(任意単位、a.u.)であり、横軸は波長(nm)である。
図4より、繰り返し周期を5分、1分、10秒と短くするにつれて、PL強度が増大していることが分かる。特に、支配的な3本のピークのうち右側(長波長側)の2本の発光ピーク強度の増大が顕著となっており、繰り返し周期を変化させることにより、Euの周辺局所構造が変化していることが分かる。
なお、図4においては、繰り返し周期が5分の場合、PL強度が連続成長よりも減衰しているが、これは成長中断時間が長すぎるとEu以外の不純物が拡散して取り込まれることを示しており、成長中断時間にも最適値が存在することを示している。
なお、上記においては、Eu有機原料とGa有機原料の供給と中断を同時に行ったが、図5に示すように、それぞれの原料の供給と中断をずらしてもよい。
この場合には、Eu有機原料のみが供給されている時間帯にはEuNが生成され、Ga有機原料のみが供給されている時間帯にはGaNが生成される。そして、これによりIII族サイトを置換するGaとEuの競合がなくなるため、Eu添加濃度をさらに向上させることができる。
以上のように、本発明においては、適切な繰り返し周期の下に原料供給を行うことにより、OMVPE法による活性層の形成に際して、EuやPrの添加濃度の増大を図りながら、表面平坦性を良好に保つことができるため、優れた光出力とデバイス特性とを備えた赤色発光半導体素子を製造して提供することが可能となる。
そして、これにより、前記したような小型かつ高精細な高出力の発光ダイオードを用いたフルカラーディスプレイや、高輝度LED照明の実現が可能となる。
10 EuドープGaN層
20 アンドープGaN層
30 GaNバッファ層
40 サファイア基板

Claims (10)

  1. GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を用いた赤色発光半導体素子の製造方法であって、
    GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を母体材料として、有機金属気相エピタキシャル法を用いて、900〜1100℃の温度条件の下で、EuまたはPrを、Ga、InあるいはAlと置換するように添加した活性層を、p型層とn型層の間に、p型層とn型層の形成と一連の形成工程において形成するに際して、
    EuまたはPrを含有する有機原料、および前記母体材料を構成する元素を含有する有機原料を、所定の繰り返し周期で間欠的に供給する
    ことを特徴とする赤色発光半導体素子の製造方法。
  2. 前記繰り返し周期が、1秒以上300秒未満であることを特徴とする請求項1に記載の赤色発光半導体素子の製造方法。
  3. 前記繰り返し周期における繰り返しタイミングが、EuまたはPrを含有する有機原料の繰り返しタイミングと、母体材料を構成する元素を含有する有機原料の繰り返しタイミングとで異なっていることを特徴とする請求項2に記載の赤色発光半導体素子の製造方法。
  4. 前記母体材料に添加される元素が、Euであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤色発光半導体素子の製造方法。
  5. Euが、Eu{N[Si(CHまたはEu(C1119により供給されることを特徴とする請求項4に記載の赤色発光半導体素子の製造方法。
  6. GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を母体材料に用いた赤色発光半導体素子であって、
    基板上に、p型層とn型層に挟まれた活性層を有しており、
    前記活性層は、EuまたはPrを含有する有機原料、および前記母体材料を構成する元素を含有する有機原料を、所定の繰り返し周期で間欠的に供給して、GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶に、EuまたはPrが、Ga、InあるいはAlと置換するように添加した活性層である
    ことを特徴とする赤色発光半導体素子。
  7. 前記活性層において、EuまたはPrの添加量が、1×1017〜5×1021cm−3であることを特徴とする請求項6に記載の赤色発光半導体素子。
  8. 前記活性層において、AFM(原子間力顕微鏡)による表面粗さが3nm以下であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の赤色発光半導体素子。
  9. 光出力が、100μW以上であることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の赤色発光半導体素子。
  10. GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を用いた赤色発光半導体素子であって、
    基板上に、p型層とn型層に挟まれた活性層を有しており、
    前記活性層は、GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶に、EuまたはPrが、Ga、InあるいはAlと置換するように添加して形成され、EuまたはPrの添加量が1×1017〜5×1021cm−3、AFM(原子間力顕微鏡)による表面粗さが3nm以下の活性層であり、
    光出力が100μW以上であることを特徴とする赤色発光半導体素子。
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