第1の発明は被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルの導体は絶縁皮膜で覆われたアルミニウムを主成分とする金属で形成され、両端には端子金具が電気的に接続され、端子金具は、導体の一部を収容する接続部とを備え、接続部には導体と接触する接触面に凹形状の収納部を設けて、導体と接触面の接続時または接続前に導体と接続部の接触面を電気的に接続するはんだまたはロウ付け剤を収容し、外部からの熱により絶縁皮膜の絶縁を破壊すると同時に、外力により接続部を変形させて収納部の容積が減じることで収容したはんだまたはロウを導体と接触面の間に吐出させ、冷却によりはんだ接続またはロウ付け構成とし、導体が加熱コイル端子部に電気的に接続されるとしたものである。
これによって、従来のヒュージング加工と同じ加工をすることで、アルミニウムを主成分とする導体と銅系金属で構成された端子金具をはんだまたはロウを介した合金を形成することとなり、アルミニウムを主成分とする導体が表面のはんだまたはロウの被覆により酸化を防止することができるとともに、異種金属との間に合金を形成することで電気的に接続することができる。
第2の発明は、特に、第1の発明の接続部を外部からの熱を受熱する受熱部と、導体を接続部に保持する保持部を備えた構成とすることにより、銅系導体に比べて比較的屈曲に弱いアルミニウム主成分の導体を屈曲から保護することができるとともに、受熱部近傍のアルミニウムを主成分とする導体の絶縁皮膜を溶融して導体を直接端子金具と接触させることとなり、導体と端子金具を電気的に接触させることができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の接続部は、受熱部を複数個形成することにより、加熱温度範囲が約250℃から650℃の狭い範囲で絶縁皮膜を溶融して導体と端子金具を電気的に接触させる上で、一箇所で不完全な絶縁被覆の溶融があっても複数の受熱部を構成することで、他の受熱部で導体と端子金具が電気的に接触することができるので、より確実に導体と端子金具の接触を実現することができる。
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに電力を供給する制御回路を、少なくとも前記制御回路が前記加熱コイルに電力を供給している間、加熱コイルに冷却風を送る送風装置とを備え、前記加熱コイルの導体は絶縁皮膜で覆われたアルミニウムを主成分とする金属で形成され、両端には端子金具が電気的に接続され、前記導体は単線または複数の撚り線で形成され、前記送風装置から加熱コイルへの送風と加熱コイルの一部の間に風の遮蔽部を設けた構成としたものである。
これによって、異常状態になり連続通電等の加熱状態が続き加熱コイルの温度が上昇した場合に、加熱コイルへの冷却風は通常も一部遮蔽されているのであるが、異常加熱状態となり加熱コイル全体の温度が上昇を始めると遮蔽部の風下に位置する加熱コイルの一部のみ温度が周囲よりも上昇し、やがてアルミニウムの融点である660℃を超えることとなり、加熱コイルの導体が自己溶断して異常状態を停止することとなり、異常状態が発生して加熱コイルが異常高温になっても自己溶断することで安全に停止して高温による発火等を回避することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における電磁誘導加熱装置の加熱コイル端部の接続子の斜視図を示すものである。
図1において、端子金具を形成する接続子166は黄銅やリン青銅をプレス加工により円筒形の接続部167を形成するとともに、一端には保持部を形成するコイル線押さえ103と螺着部104を形成したものである。螺着部104は電力を供給するための配線(図示せず)を接続するための構成である。
図2は接続子166を長手方向と直角に切断した断面図である。接続部167の略中央には収納部105が内側から外方向に向かって凹状に形成されている。収納部105の方向は上下左右任意ではあるが、本実施の形態では下方に設けている。略円筒状の接続部167の内面は接触面106を形成している。前記収納部105には接続子166の形成時または後加工において、はんだまたはロウ107を収納することとなる。
また、収納部105のはんだまたはロウ107を収納する凹状構成の反対面である接続子166の外面側の凸形状の部分は受熱部108であり、接続子166に外部から熱を伝導により受け入れる部位である。外部から受熱部108を介して熱を伝導により受け入れると、収納部105に最初に熱が伝わり、収納部105に収納されたはんだまたはロウ107に熱が伝わり、はんだまたはロウ107が溶け出すこととなる。
図3は加熱コイル109を示す斜視図である。加熱コイル109は水平方向に渦巻き状に形成されている。内側コイル110と外側コイル111は直列に形成されているが、機器の性能のためには別コイルとして電流を通電する構成にしても良い。本実施の形態は形状的には内側コイル110と外側コイル111を形成したが、電気的には直列に接続したひとつの加熱コイル109として構成されている。
接続子166は加熱コイル109の両端に各1個接続される。接続子A112と接続子B113は面対称な形状をしている。接続子A112の接続部167には加熱コイル109の内側コイル110の内側端114が接続され、接続子B113には加熱コイル109
の外側コイル111の外側端115が接続される。内側端114と外側端115はそれぞれ加熱コイル端子部を形成している。
接続部167の内側の直径は加熱コイル109の内側端114や外側端115の直径よりやや大きい寸法設定で設計されているため、内側端114または外側端115を接続部167に通す場合には簡単に素通りする寸法になっている。
接続子A112と接続子B113は面対称な形状であるので、形状説明は接続子A112で説明する。加熱コイル109はコイル台116に載置されるとともに接着によりコイル台116に固定される。コイル台116には接続子A112と接続子B113を取り付けるための接続台117がコイル台116の外周に設けてある。コイル台116と接続台117はPPS樹脂等のモールド加工により一体的に形成されている。
図4は接続台117を拡大した斜視図である。接続子A112と接続子B113は面対称に配置され、接続台117に複数の爪118で取り付けられている。加熱コイル109は複数の素線119(図5)を撚り合わせた撚り線で構成されている。
コイル台116の接続子B113近傍には遮蔽壁120が一体的に設けてある。遮蔽壁120の形状は、冷却風を遮蔽するためにリブ形状をしているが、コイルの一部を被覆する形状でも良い。遮蔽壁120は遮蔽部を形成している。一般的に電磁誘導加熱装置の加熱コイル109は数十アンペア以上の電流を通電するので、ジュール熱による自己発熱が大きく、空冷による冷却が一般的である。
この空冷の風に対して前記接続子B113近傍の遮蔽壁120は加熱コイル109の接続子B113から加熱コイル109の外側コイル111の一部を冷却風から遮蔽する構成としている。遮蔽壁120の構成は、内側コイル110の一部を遮蔽する構成でも良い。
遮蔽壁120によって冷却風の風下に位置する加熱コイル109の間の一部を溶断部121とする。
図5は素線119の断面図である。導体122はアルミニウムを主成分とする金属で形成されている。直径は0.1mmから0.3mm程度の太さである。絶縁皮膜123はエナメル層であり、電気的に絶縁性能を有した数ミクロンの膜である。絶縁皮膜123を構成するエナメル層の材質は一般的にはポリウレタンやポリアミドやポリイミド等の組成の材質で形成されるが、電磁誘導加熱装置では加熱コイル109に用いられる材質は、加熱コイル109の自己発熱に対する耐熱を確保するためにポリアミドやポリイミドが用いられる。耐熱は150℃から200℃程度であると同時に、電気的絶縁が破壊される温度は250℃から300℃程度で、瞬間的に絶縁性能が破壊されるのは約400℃である。
前記導体122はアルミニウムの融点に近い660℃で溶融する。絶縁皮膜123の外周には自己融着皮膜124が焼き付けられている。自己融着皮膜124は溶融温度が絶縁皮膜123の溶融温度よりも低く約230℃程度の融点を持つ材質で形成される。
具体的にはポリアミド等である。融点や絶縁皮膜の絶縁性能破壊温度についてまとめると、自己融着皮膜124の溶融温度が約230℃で一番低く、次に絶縁皮膜123の絶縁性能破壊温度が230℃から400℃である。導体122の溶融温度は約660℃である。
図6は本発明の電磁誘導加熱装置の断面図である。加熱コイル109に電力を供給する制御回路125と、送風装置である冷却ファン126を内蔵している。冷却ファン126
は本体127の外部から吸気した冷気を前記制御回路125と加熱コイル109に送風し、自己発熱した熱を取り除く作用をする。
冷却ファン126が作動している間は、制御回路125全体と加熱コイル109全体に冷気を供給するが、前記遮蔽壁120の風下に位置する加熱コイル109の溶断部121には冷気が供給されないか、または供給されにくい。
図7(a)は接続子166に内側端114または外側端115を素通しした後に、外部からの熱を加えるための装置を示している。接続子166の接続部167を上電極128と下電極129で挟む。接続部167は装置により固定されているものであり、上電極128と下電極に挟持されている必要はない。上電極128と下電極129はジュール熱発生電源130に接続されていて、半導体により上電極と下電極の間で消費される電力を制御して、上電極128と下電極129の間で発生する発熱量を所定の発熱に制御することができる。
上電極128と下電極129とはプレス装置(図示せず)により所定の隙間を維持する位置まで押し下げられる。所定の隙間を形成する理由は、接続部167を押しつぶすことにより、収納部105内のはんだまたはロウ107を収納部105から押し出すことと、さらに接続部167を押しつぶすことにより、接続部167内面である接触面106と加熱コイル109の内側端114または外側端115との間の空間を狭くすることで、収納部から押しだされたはんだまたはロウ107を素線119間に浸透させながら接続部167の長手方向に押し出すためである。
上電極128と下電極との隙間を一定の値にすることで、接続部167を押しつぶしたときに接続部167の内面である接触面106と内側端114または外側端115の間に発生する空間を一定にすることができ、従って、この空間を埋めるはんだまたはロウの必要量を一定に制御することができるからである。
図7(b1)と図7(b2)と図7(b3)は、横軸は距離であり、接続部167の寸法と同じ距離を表す尺度であり、接続部167の一端からの位置を意味する。図7(a)の横方向の寸法と同じ尺度である。縦軸は温度を表す。
ジュール熱発生電源130は、上電極128と下電極129の間に所定の電流を両電極の間の電圧をリアルタイムで測定しながら積算電力を計算して所定のジュール熱を発生したら通電を停止するものである。
図7(b1)は通電を停止した直後の接続部167の温度分布を示している。図7(b2)は図7(b1)から約1秒後の接続部167の温度分布を示している。図7(b3)は、図7(b2)からさらに1秒後の接続部167の温度分布を表しているグラフである。
以上のように構成された電磁誘導加熱装置の加熱コイル端部の接続子について、以下その動作、作用を説明する。
まず、加熱コイル109の内側端114を接続子A112の接続部167に通す。接続子166の接続部167には予めアルミニウム用のはんだまたはロウが収納されているか、または溶融したはんだまたはロウを収納部105に注入して固化させた状態で収納されている。
図7(a)の状態で収納部105外側である受熱部108に下電極129が当接し、接
続部167の上部には上電極128が当接している。本実施の形態では受熱部108は収納部105が下方に位置するので、接続部167の下部に位置することになるが、収納部外面が受熱部108となる。
上電極端面131と下電極端面132はほぼ平面な形状をしている。特に、下電極端面132は凹形状の収納部105を接続部167内方に押しつぶす役割があるので、平面形状にしてある。上電極128は保守しやすい形状である平面形状にしてある。前記接続部167の長手方向の寸法について、上電極端面131が当接する寸法または下電極端面132が当接する寸法の約6倍としている。
次に、ジュール熱発生電源から電流が上電極128を通り接続部167を介して下電極129へと流れる。ジュール熱発生電源130は、上電極128と下電極129の間の電圧と通電している電流をリアルタイムで積算して、上電極128と下電極129の間で消費している電力の積算を計算している。
つまり、接続部167で消費している電力を積算している。所定の積算電力に達した時点で通電を停止する。この時点で、接続部167に所定の電力量(熱量)が供給されたことになる。また、この通電中に上電極128と下電極129とはプレス装置(図示せず)により機構的な力を上下方向に加えられている。
ジュール熱発生電源130により収納部105中央付近外部から加熱されるので、収納部105近傍のみ約700℃の高温に達している。ジュール熱発生電源130が所定の電力を供給した後に通電を停止するまでに、収納部105は下電極129に押し上げられ上電極128により接続部167上部は押し下げられている。
ジュール熱発生電源130が通電を停止した時点の接続部167の温度分布は図7(b1)の通りである。収納部105の上方のみがジュール熱により約700℃に達していると同時に、収納部105は上電極128と下電極129とで収納部105を内側に変形されている。
つまり、約700℃に加熱された収納部105は内側に変形して収納部105の容積を著しく小さくしている。700℃に加熱された収納部105内のはんだまたはロウ107は溶融して溶け出し、収納部105の変形により収納部から押し出されている。
収納部105近傍の素線119はアルミニウムを主成分とする金属である導体122は溶融している。また、絶縁皮膜123も瞬間的に700℃に達するので、溶融すると同時に絶縁性能が無くなり、導体122は直接はんだまたはロウ107と電気的に接触している。
また、接続子166内面の接触面106は溶融した導体122と、はんだまたはロウ107と接触し、はんだまたはロウ107の介在により導体122と合金を形成している。接続子166は融点以下の温度であるので、上電極128と下電極129により変形された以外は形状を維持し、溶融することは無く、接続部167を維持している。
次に、ジュール熱発生電源130の通電停止から時間が経過するので、各部の温度分布は図7(b2)に変化する。収納部105近傍の熱は接続部167と導体122の熱伝導により、接続部167の長手方向に拡散すると同時に、中央部の温度は低下する。長手方向に熱伝導するために、中央部から近い図7(b2)のA点部分では660℃以上の範囲でアルミニウムを主成分とする導体122は溶融する。
この部分では中央部と同じ状況となり、アルミニウムを主成分とする導体122と接触面6とがはんだまたはロウを介在させて合金を形成する。
図7(b2)のB点では絶縁皮膜123が溶融して絶縁性能が無くなる、導体122は絶縁されずに隣接する導体122と電気的に接触したり接触面106に直接接触することで、接続子166と導体122とが電気的に接触する。
しかし、B点では導体122は溶融温度以下であるので、導体122の形状を維持している。もちろん接続子166も融点以下であるので、上電極128と下電極129による変形以外は形状を維持している。
さらに、図7(b2)のC点では、はんだまたはロウ107の溶融温度以上の温度であるので、はんだまたはロウ107は溶融した状態であり、素線119の周囲を流動的に長手方向に押し出されつつある。
素線119の絶縁皮膜123は絶縁性能が破壊する温度以下であるので、素線119の周囲には絶縁皮膜123が依然存在する状態で、はんだまたはロウ107が溶融して素線119の間を流動的に押し出されてくる。
導体122は溶融温度以下であるので、溶融することなく原型を維持しているし、接続部167も形状を維持している。接続部167は溶融した、はんだまたはロウ107が合金を形成するので、C点においては、絶縁皮膜123は形状も絶縁性能も維持された状態で、素線119の絶縁性能が破壊されること無く、はんだまたはロウ107が接続部167と合金を形成することになる。
この結果、C点において、はんだまたはロウ107が素線119の絶縁皮膜123は絶縁性能を維持した状態で封止することとなる。
収納部105近傍では導体122が溶融し、はんだまたはロウ107を介在させて接続部167と合金を形成して電気的に接続されることとなり、接続部167長手方向のB点では素線119の絶縁性能が破壊されるが導体122は溶融しないので形状を維持したまま、はんだまたはロウを介在して接続部167内面の接触面106と電気的に接続される。
C点では素線119の絶縁性能は破壊されることなく、絶縁性能を維持したまま、はんだまたはロウ107により封止されるとともに、そのはんだまたはロウ107は接触面106と合金を形成して素線119を封止することになる。
これにより、アルミニウムを主成分とする導体122は、接続部167中央の収納部105近傍では絶縁皮膜123の破壊とともに導体122が溶融して、はんだまたはロウを介在させて接触面106と合金を形成し、機械的にも電気的にも接触面106と接続され、接続部167の長手方向に移動すると、導体122は溶融することなく形状を維持する一方で、絶縁性能は破壊されて電気的に接触面106と接続され、さらに、接続部167の長手方向に移動すると導体122の絶縁性能は維持されて、当初の素線119の性能と形状を維持したままで、はんだまたはロウ107が溶融して、接触面106との間に合金を形成して素線119を封止することとなる。
以上のように、本実施の形態においては接続部167を長手方向に形成することと、収納部105にはんだまたはロウ107を収納し、外部からの熱により溶融すると同時に導体122の融点まで温度を局部的に上昇させることで、熱の伝導による拡散を利用して部
分的に機械的接続と電気的接続を実現すると同時に、機械的または電気的に接続した部分を封止することにより、従来のヒュージング加工と同じ加工方法で、アルミニウムを主成分とする金属で形成された導体122と黄銅やリン青銅を主成分とする接続子166を電気的に接続するとともに、導体122を外気から密封(封止)することで、導体122の酸化を防止することが確実に実現することができる。
また、本実施の形態では接続子166を黄銅やリン青銅で形成したが、鉄やステンレス鋼や銅のように、アルミニウムよりも融点の高い金属で形成すれば良い。図7(b2)において、660℃以上の融点を有する金属で接続子166を形成すれば接続部167をジュール熱発生電源130で加熱する場合に接続子166が溶融することなくアルミニウムを主成分とする導体122をはんだまたはロウ107で封止することができる。
また、本実施の形態のコイル線押さえ103は、接続子166に一体的に形成する必要はなく、アルミニウムを主成分とする導体122を加工時や使用時の折り曲げや振動から保護する構成をしていれば、繰り返し折り曲げに弱いアルミニウムを主成分とする導体122を保護することができる。
さらに、接続部167の長手方向の寸法について、実施の形態1では上電極端面131が当接する寸法または下電極端面132が当接する寸法の約6倍としたが、収納部105近傍の導体122の温度が、導体122の絶縁皮膜123の絶縁性能が無くなる温度である300℃以上になる一方で、はんだまたはロウ107が素線119を封止(密封)する温度である220℃から300℃の間になる温度勾配を維持できる寸法が必要である。
実際には3倍以上が必要になる。この寸法は接続子166の形状や材質や上電極端面131および下電極端面132の寸法により決定される。
(実施の形態2)
図8は、本発明の第2の実施の形態における電磁誘導加熱装置の加熱コイル端部の接続子の斜視図を示すものである。
図8において、接続子140に収納部A141と収納部B142が接続部143の内側から外側に向かって凹状に形成されている。収納部A141と収納部B142は接続部143の中心からともに下方に向かって凹状に形成されている。
また、収納部A141と収納部B142には各々、はんだまたはロウ144を収納するとともに、凹状構成の反対面である接続子140外面側の凸形状の部分は受熱部A145と受熱部B146であり、接続子140に外部から熱を伝導により受け入れる部位である。
外部から受熱部A145と受熱部B146を介して熱を伝導により受け入れると、収納部A141と収納部B142に最初に熱が伝わり、収納部A141および収納部B142の各々に収納された、はんだまたはロウ144に熱が伝わり、はんだまたはロウ144が溶け出すこととなる。
上記以外の各部の名称と符号とその形状や作用や機能は実施の形態1と同じであり説明を省略する。
収納部A141と収納部B142が同一方向に形成されているのは、ジュール熱発生電源130に接続された下電極端面132が同一平面で形成できるからである。
図9は本実施の形態の接続子140の断面図を示すものである。収納部A141と収納部B142には、はんだまたはロウ144が収納されているか、または後加工で収納される。
以上のように構成された電磁誘導加熱装置の加熱コイル端部の接続子について、以下その動作、作用を説明する。
まず、接続部143内方に加熱コイル109の内側端114または外側端115を通し、この状態で接続子140を上電極128と下電極129の間に位置させる。上電極端面131は接続子140上部に接触し、下電極端面132は収納部A141の下部に位置する受熱部A145と収納部B142の下部に位置する受熱部B146に同時に接触する。
下電極端面132は受熱部A145と受熱部B146とに同時に接触できるだけの面積と平面度を有している。ジュール熱発熱電源130から上電極128と下電極129に通電されると、上電極端面131と下電極端面132の間の接続子140の中央付近でジュール熱が発生すると同時に、収納部A141と収納部B142がプレス装置(図示せず)により、押し潰されて収納部A141と収納部B142はほぼ同時にその容積が小さくなる。
収納部A141および収納部B142に収納されていた、はんだまたはロウ144はジュール熱により溶融状態にあるので、収納部A141と収納部B142が変形により容積が小さくなると同時に接続部143に押し出される。
図9において、収納部A141から左側と収納部B142から右側は実施の形態1の収納部105の左右の状態と同じ状態に変化する。
すなわち、接続部143の中央から両端に向かって導体122が溶融する部分と導体122は溶融しないが絶縁皮膜123の絶縁性能が無くなり、はんだまたはロウ144を介在させて接触面106と電気的に接続される部分と、素線119の絶縁皮膜123は破壊されずに絶縁性能を維持した状態で、はんだまたはロウ144が溶融して、素線119を封止する部分の順に接続部143の中央から長手方向の外側に向かって変化する。
収納部A141と収納部B142の間は近接しているので、導体122は比較的高温になり、溶融し、電気的に導体122と接触面106は導通することとなる。収納部A141と収納部B142が比較的離れて位置する場合には、収納部A141と収納部B142の間の導体122は、溶融することなく絶縁皮膜123の絶縁性能が破壊されて、はんだまたはロウ144を介在して接触面106との間で電気的に接続されることになる。
いずれにしても接続子140中央部は、はんだまたはロウ144を介在して加熱コイル109と電気的に接続されることになる。
以上のように、本実施の形態においては収納部A141と収納部B142の複数の収納部構成にすることで、アルミニウムを主成分とする導体122と接続子140を接続する加工を複数箇所で実施することで、つまり収納部構造を1箇所増加することで接続加工の信頼性を倍増することができる。
また、本実施の形態では収納部A141と収納部B142の2箇所の収納構造としたが、3箇所以上の構成にしても良く、接続部143の長手方向において、収納部構成からの温度勾配が維持できる寸法を維持すれば、収納部構成は何箇所であっても良い。
また、本実施の形態の収納部A141と収納部B142を同一平面に位置させたが、互いに上下逆の位置に配置にしても良い。例えば、受熱部A145を上電極端面131に接触する位置に配置しても良い。この場合は、素線119の束の異なる方向から、はんだまたはロウ144を押し出すこととなるので、加熱コイル109の複数の方向からはんだまたはロウ144を拡散することとなり、より均一に、はんだまたはロウ144を接続部143の長手方向に拡散させることができる。
(実施の形態3)
図10は、本発明の第3の実施の形態における電磁誘導加熱装置の加熱コイル端部の接続子の斜視図を示すものである。
図10において、収納部150は接続部151の下方に位置するが、接続部151の長手方向全長に亘って設けられ、接続部151両端まで凹状が維持されている。
図11は接続子152を展開したプレス加工途中の形状である。このように収納部150を連続的に形成することで、はんだまたはロウ153を収納部150に収納する加工をより簡便にすることが可能になる。
上記以外の各部の名称と符号とその形状や作用や機能は実施の形態1と同じであり説明を省略する。
以上のように構成された電磁誘導加熱装置の加熱コイル端部の接続子について、以下その動作、作用を説明する。
まず、黄銅またはリン青銅等のフープ材から図11の形状を連続的にプレス加工で形成する。図11の連続した収納部150に、はんだまたはロウ153を連続的に収納または溶融して収納し合金化する。
引き続きプレス加工で、図10の接続子152の形状を形成すると、収納部150には、はんだまたはロウ153がすでに収納されていることになる。
接続子152毎に、はんだまたはロウ153を収納する工程が著しく簡便になる。また、はんだまたはロウ153を溶融すると200℃近い温度になるので、完成した接続子152の収納部150に後加工で、はんだまたはロウ153を溶融して収納する場合は、すぐに直接人手で触れることができないので、加工上、冷却工程が必要になる。本実施の形態では、事前に図11の段階で、はんだまたはロウ153を収納部150に溶融して収納しておくので、冷却工程が不要である。
以上のように、本実施の形態においては、はんだまたはロウ153を収納部150に収納する加工が連続的に行うことが可能であり、経済的に有利な構成になる。
また、本実施の形態では、はんだまたはロウ153を収納する収納部150をプレス加工で連続的に形成するとともに、はんだまたはロウ153を連続的に収納することができる構成としたが、図12に示すように、黄銅またはリン青銅等のフープ材に予め、はんだまたはロウ153を溶融して、固着した材料をプレス加工することで接続子152を形成しても良い。この場合、収納部150には収納部150形成時点ではんだまたはロウ153が収納されていることになる。
(実施の形態4)
図13は、本発明の第4の実施の形態における電磁誘導加熱装置の加熱コイルおよび加
熱コイル端部の斜視図である。
図13において、加熱コイル端子部である内側端160と外側端161を延長した形状にし、接続子A162は内側端160に電気的に接続し、接続子B163は外側端161に電気的に接続されて、制御回路164の端子台165まで内側端160と外側端161を延長することで、接続子A162と接続子B163を、直接制御回路164の端子台165に接続することが可能となる。
上記以外の各部の名称と符号とその形状や作用や機能は実施の形態1と同じであり説明を省略する。
以上のように構成された電磁誘導加熱装置の加熱コイル端部の接続子について、以下その動作、作用を説明する。
まず、加熱コイル109の内側端160と外側端161を延長し、内側端160には接続子A162を電気的に接続する。接続子B163には外側端161を電気的に接続する。ジュール熱発熱電源130の上電極128と下電極129により、接続子A162と接続子B163にそれぞれ内側端160と外側端161を接続する加工と、各部位の状態は第1の実施の形態から第3の実施の形態までと同じ形状と同じ作用と機能であり、説明を省略する。
制御回路164の端子台165と接続子A162および接続子B163は、従来は別の接続電線で接続していたものを、加熱コイル109の内側端160と外側端161を延長することで部品点数を削減することが可能になる。また、加熱コイル109は素線119を撚り加工しているので、電磁誘導加熱装置に用いる高周波の電流を通電することによる表皮効果や近接効果を低減することができ、加熱効率を改善することができる。
接続子は通常プレス加工で連続的に形成される場合がほとんどである。従って接続子の収納部に、はんだまたはロウを収納することはプレス加工の工程の中または延長工程で実施することが経済的である。その点、本願第1の実施の形態から第4の実施の形態はプレス加工を前提とした形状であり、具体的加工がより簡便である。