JP2013113282A - 作業車両の排気浄化装置 - Google Patents

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Yoshinao Okubo
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Abstract

【課題】DPF手動再生時の燃費を向上させる。
【解決手段】DPF22の手動再生を指令する再生指令部55と、酸化触媒21の温度が、酸化触媒21を活性化するための活性化温度に到達したか否かを判定する活性化判定部52と、再生指令部55により手動再生が指令されると、エンジン回転速度を第1の回転速度N1に制御し、その後、活性化判定部52により酸化触媒21の温度が活性化温度に到達したと判定されると、エンジン回転速度を第1の回転速度N1よりも低い第2の回転速度N2に制御するエンジン回転速度制御部34,50と、活性化判定部52により酸化触媒21の温度が活性化温度に到達したと判定されると、排気ガスの流れによって酸化触媒21に未燃燃料が導かれるようにディーゼルエンジン10への燃料を供給する燃料供給部37,50とを備える。
【選択図】図6

Description

本発明は、コンバインやトラクタ等の作業車両の排気浄化装置に関する。
ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる未燃燃料を酸化する酸化触媒と、排気ガス中の粒子状物質であるパティキュレート(以下、PM(Particulate Matter)という)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(以下、DPF(Diesel Particulate Filter)という)とを有する排気浄化装置が知られている(例えば特許文献1参照)。DPFは、DPFに流入する排気ガス温度を上昇させることで、DPFで捕集したPMが燃焼して再生される。特許文献1記載の装置では、手動操作によりDPFの手動再生を指令する。
特開2010−281312号公報
ところで、この種の装置では、一般に、酸化触媒を活性化させた状態で、燃料のポスト噴射によりDPFを再生する。しかしながら、手動再生の指令後に酸化触媒を活性化させるには時間がかかる。このため、手動再生の準備に要する時間が長くなり、燃費の悪化が問題となる。本発明は、DPFの手動再生を行う場合の燃費を向上させる作業車両の排気浄化装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、ディーゼルエンジン(10)から排出された排気ガスを、排気ガスに含まれる粒子状物質を酸化させる酸化触媒(21)と、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するDPF(22)を介して浄化する作業車両の排気浄化装置であって、DPF(22)の手動再生を指令する再生指令部(55)と、酸化触媒(21)の温度が、酸化触媒(21)を活性化するための活性化温度に到達したか否かを判定する活性化判定部(50,52)と、活性化判定部(50,52)により酸化触媒(21)の温度が活性化温度に到達したと判定されると、排気ガスの流れによって酸化触媒(21)に未燃燃料が導かれるようにディーゼルエンジン(10)へ燃料を供給する燃料供給部(37,50)と、再生指令部(55)により手動再生が指令されると、エンジン回転を第1の回転速度(N1)に制御し、その後、活性化判定部(52)により酸化触媒の温度が前記活性化温度に到達したと判定されると、エンジン回転速度を第1の回転速度(N1)よりも低い第2の回転速度(N2)に制御するエンジン回転速度制御部(34,50)とを備えることを特徴とする。
本発明の別の態様による作業車両の排気浄化装置では、作業車両が、走行装置(3)、刈取り装置(4)、脱穀装置(5)およびグレンタンク(7)を有するコンバイン(100)であり、DPF(22)における粒子状物質の堆積状態に応じてDFP(22)を自動再生する自動再生処理部(50b)と、コンバイン(100)の作業段階が、グレンタンク(7)に貯留された貯留物を排出する排出作業段階であるか否かを判定する作業判定部(58;59)と、作業判定部(58;59)により排出作業段階であると判定されると、自動再生処理部(50b)による自動再生を禁止し、排出作業段階でないと判定されると、自動再生処理部(50b)による自動再生を許可する自動再生禁止部(50a)とをさらに備える。
本発明の別の態様による作業車両の排気浄化装置では、作業車両が、走行装置(3)、刈取り装置(4)、脱穀装置(5)およびグレンタンク(7)を有するコンバイン(100)であり、グレンタンク(7)内の貯留物の貯留量を検出する貯留量検出部(60)と、貯留量検出部(60)により検出された貯留量が所定値以上のとき、再生指令部(55)の指令による手動再生を禁止し、貯留量が所定値未満のとき、再生指令部(55)の指令による手動再生を許可する手動再生禁止部(50c)とをさらに備える。
本発明の別の態様による作業車両の排気浄化装置では、手動再生の要否を判定する手動再生判定部(50,54)と、手動再生判定部(50,54)により手動再生が必要と判定されると、刈取り装置(4)および脱穀装置(5)の少なくとも一方の動作を禁止する動作禁止部(4e,502)とをさらに備える。
本発明の別の態様による作業車両の排気浄化装置では、手動再生の要否を判定する手動再生判定部(50,54)と、刈取り装置(4)又は脱穀装置(5)が圃場の穀稈を刈取る刈取作業段階であるか否かを検出する刈取り作業判定部(50)をさらに備え、エンジン回転速度制御部(501)は、手動再生判定部(50,54)により手動再生が必要と判定されると、刈取り装置(4)又は脱穀装置(5)が駆動されている状態におけるディーゼルエンジン(10)の作業回転を低下させる。
本発明によれば、DPFを手動再生する場合の燃費を向上させることができる。
図1は、本実施形態に係る排気浄化装置が適用されるコンバインの側面図である。 図2は、本実施形態に係る排気浄化装置が適用されるコンバインの平面図である。 図3は、図1のコンバインの機体の内部構成を示す側面図である。 図4は、図1のコンバインの機体の内部構成を示す背面図である。 図5は、図3のエンジンへの給排気の流れを模式的に示す図である。 図6は、本実施形態に係る排気浄化装置の手動再生処理に係る制御構成を示すブロック図である。 図7は、本実施形態に係る排気浄化装置における手動再生処理の一例を示すフローチャートである。 図8は、本実施形態に係る排気浄化装置の動作の一例を示す図である。 図9は、本実施形態に係る排気浄化装置における触媒劣化エラーの発生タイミングを示す図である。 図10は、PM堆積量の時間変化を示す図である。 図11は、本実施形態に係る排気浄化装置におけるPM過堆積防止処理を行うための制御構成を示すブロック図である。 図12は、図11の本体制御部で実行される処理の一例を示すフローチャートである。 図13は、本実施形態に係る排気浄化装置におけるPM過堆積防止処理の他の例を説明する図である。 図14は、本実施形態に係る排気浄化装置における自動再生禁止処理を行うための制御構成を示すブロック図である。 図15は、図15の自動再生判定部で実行される処理の一例を示すフローチャートである。 図16は、本実施形態に係る排気浄化装置における手動再生禁止処理を行うための制御構成を示すブロック図である。 図17は、図16の手動再生判定部で実行される処理の一例を示すフローチャートである。 図18は、本実施形態に係るコンバインの運室室内の前部における部品の配置を示す図である。 図19は、本実施形態に係る排気浄化装置における情報伝達装置の制御に係る構成を示すブロック図である。 図20は、図18の表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
本発明の実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。以下では、一例として、本実施形態に係る排気浄化装置を、作業車両としてのコンバインに適用する。コンバインは、走行しながら農作物の刈取りと脱穀を行う移動式農業機械である。
図1は、本実施形態に係る排気浄化装置が適用されるコンバイン100の側面図であり、図2は、平面図である。以下では、便宜上、図示のように互いに直交する3つの方向をそれぞれ前後方向、左右方向、および上下方向と定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。前後方向は、コンバイン100の長さ方向であり、左右方向は幅方向、上下方向は高さ方向である。このうち、前方は、刈取り作業時におけるコンバイン100の進行方向であり、左方は、前方に向かって左手方向であり、下方は、重力が作用する方向である。なお、これらの方向は、説明をわかりやすくするために定義したものであり、これらの方向によって本発明の構成が限定されるものではない。
コンバイン100は、機体フレーム2の下部に配置された走行装置3と、機体フレーム2の前端部に取り付けられた刈取り装置4と、機体フレーム2の上部左側に搭載された脱穀装置5とを有する。機体フレーム2上の右前部には運転室6が搭載され、運転室6の後方にグレンタンク7が搭載されている。運転室6の後部下方には、エンジン10が搭載され、エンジン10の後方に排気浄化ユニット20が搭載されている。以下では、機体フレーム2とその上方に配置された各部をまとめて機体1と呼ぶ。
走行装置3は、エンジン10からの動力を左右一対の履帯3aに伝え、コンバイン100を走行させる。刈取り装置4は、穀稈を分草する分草具4aと、分草された穀稈を引き起こす引き起こし装置4bと、引き起こされた穀稈の根元を切断する刈刃とを有し、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈り取る。刈取り装置4により刈り取られた穀稈は、機体1の左端部に設けられた搬送チェーン8とその上方の挟扼杆との間に挟まれ、搬送チェーン8の駆動により脱穀装置5に搬送される。
脱穀装置5は、搬送チェーン8により穀稈が後方に搬送される過程で、穀稈から穀粒を切り離し(脱粒)、藁等の夾雑物と穀粒とを分離する。脱穀装置5を通過して、穀粒が扱ぎ取られた穀稈(排藁)は、機体1の後端部の排藁切断装置9へ搬送される。排藁切断装置9へ搬送された排藁は、排藁切断装置9で切断された後、例えば、圃場に放出される。
詳細な図示は省略するが、脱穀装置5は、脱穀部と、脱穀部の下方に配置された選別部とを有する。脱穀部は、機体1の前部左側に配置された扱室と、扱室の右方に配置された第二処理室と、第二処理室の後方に配置された排塵処理室とを含んで構成される。扱室は、運転室6の左方に位置し、扱室には、前後方向に延在する回転軸を中心に回転可能な円柱形状の扱胴5aが配置されている。扱胴5aは、回転動作により、扱室内に搬送されてきた穀稈の穂先部から穀粒を脱粒する。なお、第二処理室には二番処理胴が、排塵処理室には排塵処理胴が、それぞれ前後方向に延在する回転軸を中心に回転可能に配置されている。
選別部は、扱室の下方に揺動可能に配置された選別棚と、選別棚の下方空間にそれぞれ配置された唐箕、一番回収部および二番回収部と、選別棚の後方に配置された排塵ファンとを含んで構成される。選別部は、脱穀部で脱粒された穀粒を含む被処理物(扱胴5aが脱穀したもの)から夾雑物を除去して、穀粒を回収する。すなわち、選別棚の揺動運動と、唐箕による選別風および排塵ファンによる吸引の作用とにより、脱穀部から送られてきた被処理物から穀粒を選別し、一番回収部および二番回収部で回収する。回収した穀粒は、グレンタンク7に搬送され、貯蔵される。
グレンタンク7内の穀粒は、グレンタンク7の後方に立設した筒体11aおよびその筒体11aの上端部から延在する筒体11bを有する排出装置11により、外部へ排出される。グレンタンク7は、右後端部のヒンジ部7aを支点にして車両外側、すなわち車両の右後方(図2の矢印A方向)に回転可能である。
図3は、脱穀装置5の左方における機体1の内部構成を示す側面図であり、図4は、背面図である。エンジン10は、運転室6の後部の下方空間に配置されている。エンジン10は、弾性部材を介してエンジンマウント12により機体フレーム2に支持、すなわち弾性支持されている。排気浄化ユニット20は、エンジン10の後方に、かつ脱穀装置5とグレンタンク7との間に配置されている。グレンタンク7の左下方に排気浄化ユニット20を配置する空間を形成するため、図4に示すようにグレンタンク7の左下部は、上方から下方にかけて斜めに形成されている。
排気浄化ユニット20は、外周が円筒形状を呈し、その軸線を前後方向に向けて配置されている。排気浄化ユニット20は、排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)等を酸化するディーゼル用酸化触媒(以下、DOC:Diesel Oxidation Catalyst)21と、PMを捕集するDPF22とを内部に有する。DPF22は、DOC21と左右方向の位置を揃えてDOC21の前方に配置されている。なお、DOC21とDPF22とを、一体のユニットとせずに配置することもできる。
排気浄化ユニット20の前方および後方には支持部材23が配置され、排気浄化ユニット20は支持部材23により所定高さに水平姿勢で支持されている。各支持部材23は、左右一対の脚部23aと、左右一対の脚部23aの上部に取り付けられた支持プレート23bとをそれぞれ有する。各脚部23aは、その底部が機体フレーム2に固定され、機体フレーム2上に立設している。前後の支持プレート23bは、排気浄化ユニット20を挟むように互いに平行に配置されている。排気浄化ユニット20の左上方および右下方には、前後方向に向けて一対の支持フレーム23cが延設されている。各支持フレーム23cの前端部は、前側の支持プレート23bの左上端部および右下端部にそれぞれ固定され、各支持フレーム23cの後端部は、後側の支持プレート23bの左上端部および右下端部にそれぞれ固定されている。
排気浄化ユニット20の上方および下方には、それぞれ前後方向に向けて排気配管24,25が配置されている。図3に示すように、上方の配管24は、L字状に折り曲げられ、前側の一端部がエンジン10に、後側の他端部がDOC21の後側上部にそれぞれ接続されている。配管24の途中には、可撓性部24aが設けられている。可撓性部24aは、エンジン10からの振動を吸収し、エンジン10から排気浄化ユニット20への振動伝達を抑制する。配管24の端部を排気浄化ユニット20の後部に接続することで、配管24の前後方向の長さが長くなり、可撓性部24aを容易に設けることができる。下方の配管25は、L字状に折り曲げられ、前側の一端部がDPF22の前側下部に接続され、後側の他端部は機体フレーム2の下方で、後方に向けて開口している。
排気浄化ユニット20の周囲には、排気浄化ユニット20を包囲するように、支持プレート23bの外周形状に合わせてカバー26が設けられている。カバー26は一対の支持フレーム23cにより支持されている。さらに、カバー26の上部には、上方の配管24全体を覆うようにカバー27が設けられている。カバー26の下側(図4の点線範囲)には、カバー26の内部に入り込んだ藁屑等を外部に排出するように開口部26aが設けられている。
図5は、エンジン10のシリンダ30内への吸気およびシリンダ30内からの排気の流れを模式的に示す図である。本実施形態において、エンジン10は、動作周期の間に4つの工程を経る、4ストローク/1サイクル(4サイクル)のディーゼルエンジンである。エンジン10は、コモンレールシステムによりシリンダ30内へ燃料が噴射される。吸気タービン31により過給された空気は、エアクリーナ32、吸気タービン31、吸気冷却器33および吸気弁34を順次通過してシリンダ30内に供給される。高圧ポンプ35は、燃料タンク内の燃料を汲み上げて、コモンレール36に圧送する。インジェクター37は、コモンレール36に蓄圧された高圧燃料をシリンダ30内に噴射し、シリンダ30内に供給された空気を燃焼させる。これによりピストン38が駆動され、エンジン10は回転力を出力する。エンジン10が出力した回転力は、走行装置3、刈り取り装置4、脱穀装置5、排出装置11等の動力源となる。
シリンダ30内で燃焼した排気ガスは、排気タービン39、図3の配管24、DOC21、DPF22、絞り弁40および図3の配管25を順次通過して車外に排出される。シリンダ30から排出された排気ガスの一部は、排気ガス再循環装置を構成するEGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ41およびEGR弁42を介してシリンダ30の吸気側に戻すことが可能である。吸気弁34、絞り弁40、EGR弁41の開閉、インジェクター37からの燃料の噴射パターンおよび噴射タイミング等は、エンジン10の各種状態を検出するセンサからの信号に基づいて、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)内のエンジン制御部501(図6)により制御される。
DOC21に流入する排気ガスの温度(DOC入口温度)およびDOC21から流出した排気ガスの温度(DOC出口温度)は、それぞれ温度センサ51,52により検出される。DPF22から流出した排気ガスの温度(DPF出口温度)は、温度センサ53により検出される。DPF22の入口と出口と間の差圧は、差圧センサ54により検出される。DPF22が目詰まりすると、差圧センサ54の検出値が増加するため、差圧センサ54の検出値によりDPF22の再生処理の要否を判定できる。
DOC21は、複数のセルを有するハニカム構造の担体が、酸化触媒として例えば白金(Pt)を担持している。DOC21の各セルの両端は開口しており、セルの内部を排気ガスが通過すると、Ptの触媒作用により、排気ガスに含まれるHC,CO,NO等を酸化する。DPF22は、複数のセルを有するハニカム構造の担体である。隣り合うセルの端部は交互に目封じされ、排気ガスがセルの内部とセルの壁とを通過することで、DPF22は、セルの壁で、DOC通過後の排気ガスに含まれるPMを捕捉する。
DPF22は、PMの堆積による目詰まりを防止するため、再生が必要となる。再生は、自然再生と強制再生とに大別される。自然再生では、エンジン10の通常運転時にDPF22に流入する排気ガス温度が上昇することで、PM(主に煤)が自然に燃焼する。強制再生では、燃料のポスト噴射等によりDPF22に流入する排気ガス温度を強制的に上昇させることで、PMを燃焼させる。なお、ポスト噴射とは、メイン噴射又はアフター噴射の後に燃料過多の状態を作り出すために行われる噴射であり、シリンダ30内で燃料を燃焼させるためではなく、DOC21へ燃料を送ることを目的として行われる噴射である。強制再生には、車両走行時にPMの堆積状態に応じてDPF22を自動的に再生する自動再生と、車両停車時にオペレータの手動操作による指令によってDPF22を再生する手動再生とがある。
自動再生は、差圧センサ54の検出値が予め定めた所定値P0以上になると、自動的に開始される。この自動再生時には、ECUがエンジン回転速度(単位時間あたりの回転)に応じて吸気弁34の開度を絞り側に制御するとともに、インジェクター37から燃料をポスト噴射させる。ポスト噴射により噴射した燃料をDOC21内に流入させて酸化燃焼させることによりDPF22に流入する排気ガス温度を上昇させ、DPF22に堆積したPMを燃焼させ、PMを除去する。差圧センサ54の検出値が所定値P0を超えてDPF22へのPMの堆積量が増大すると、自動再生処理ではPMを除去しきれない場合がある。この場合、ECUは、オペレータからの手動再生指令を待って手動再生処理を行う。以下、主に手動再生処理について説明する。
図6は、本実施形態に係る排気浄化装置の手動再生処理に係る制御構成を示すブロック図である。この手動再生処理を行うECU50は、エンジン回転速度および燃料噴射タイミング等、主にエンジン10の動作を制御するエンジン制御部501と、エンジン以外の動作を制御する本体制御部502とを有する。ECU50には、温度センサ51〜53からの信号と、差圧センサ54からの信号と、オペレータが手動再生指令を入力する手動再生スイッチ55からの信号と、エンジン回転速度を検出する回転速度センサ56からの信号とが入力される。
ECU50は、入力されたこれらの信号に基づいて所定の処理を実行し、エンジン制御部501が吸気弁34、インジェクター37にそれぞれ制御信号を出力し、本体制御部502が情報伝達装置57に制御信号を出力する。情報伝達装置57は、運転室6に設けられた警報ランプを有し、警報ランプの点灯により、手動再生が必要な状態である旨(手動再生必要状態)をオペレータに報知する。情報伝達装置57は、差圧センサ54の検出値が予め定めた所定値P1以上になると作動(警報ランプを点灯)する。所定値P1は、自動再生処理の開始時の所定値P0よりも大きい値に設定している(図10参照)。
図7は、ECU50で実行される手動再生処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば情報伝達装置57の作動後(警報ランプの点灯後)、オペレータが手動再生スイッチ55をオンするとスタートする。手動再生処理前のエンジン回転速度は例えば設定回転速度N0である。設定回転速度N0は、オペレータが作業状況に応じて手動操作で設定するエンジン回転速度である。設定回転速度N0は、最小回転速度(例えばローアイドル回転速度)から最大回転速度(例えばハイアイドル回転速度)までの間で設定可能であり、ここでは設定回転速度N0が例えばローアイドル回転速度に設定されているものとする。
ステップS1で、ECU50は、エンジン回転速度を設定回転速度N0から予め定めた所定回転速度N1まで上昇させる。このエンジン回転速度制御時に、ECU50は、回転速度センサ56の検出値が所定回転速度N1となるように吸気弁34の開度を絞り側に制御する。これと併せて、メイン噴射のタイミングを遅角させるようにしてもよい。所定回転速度N1は、ローアイドル回転速度(例えば1200rpm)よりも高く、かつ、ハイアイドル回転速度(例えば2800rpm)よりも低い回転速度である。吸気を絞ってエンジン回転速度を増加させる点および排気ガスを早期に昇温させる点を考慮すると、ハイアイドル回転速度の70%〜80%程度とすることが好ましい。本実施形態では、所定回転速度を、例えば比較的高速である2200rpmとしている。
ステップS2で、ECU50は、温度センサ52により検出された排気ガス温度、すなわちDOC出口温度が予め定めた所定値T1以上であるか否かを判定する。所定値T1は、DOC21を十分な活性化状態とするために必要な温度であり、例えば500℃に設定されている。すなわち排気ガス温度が低いとDOC21が活性化するまでに時間がかかるが、エンジン回転速度を所定回転速度N1まで強制的に上昇させることで、DOC21に流入する排気ガス温度を高めて、DOC21を早期に活性化させる。なお、DOC出口温度の代わりにDOC入口温度に基づいて、DOC21の活性化の有無を判定するようにしてもよい。ステップS2でECU50が肯定と判定すると、手動再生の準備が完了したとして、ステップS3に進む。
ステップS3で、ECU50は、エンジン回転速度を予め定めた所定回転速度N2まで減少させる。このエンジン回転速度制御時に、ECU50は、回転速度センサ56の検出値が所定回転速度N2となるように吸気弁34の開度を開放側に制御する。
本実施形態では、所定回転速度N2をローアイドル回転速度(1200rpm)としている。エンジン回転速度を所定回転速度N2まで下げることで、エンジンの騒音を低減できる。
ステップS4で、ECU50は、メイン噴射後に燃料をポスト噴射するようにインジェクター37を制御する。これにより排気ガス中の未燃燃料がDOC21で酸化燃焼して排気ガス温度が上昇し、DPF22に高温の排気ガスが流れ、手動再生が行われる。この場合、DOC21が既に活性化温度まで上昇しているため、DOC21では即座に酸化燃焼が開始され、DPF22の再生を早期に開始することができる。これにより、手動再生スイッチ55の操作から再生が完了するまでの手動再生に要するトータルの時間を短縮することができ、燃料消費量を低減することができる。また、オイルダイリューションを抑制できる。
ステップS5で、ECU50は、差圧センサ54により検出されたDPF22の前後差圧が予め定めた所定値Pa未満であるか否かを判定する。所定値Paは、情報伝達装置57の作動時の所定値P1と等しい値、あるいはそれよりも小さい値(例えば所定値P0)に設定している。このため、ステップS5では、DPF22に堆積したPMが十分に除去されたか否かが判定される。ステップS5が肯定されるとステップS6に進む。
ステップS6で、ECU50は、燃料のポスト噴射を停止させるとともに、エンジン回転速度を手動再生処理前の設定回転速度N0に復帰させる。さらに、ECU50は、情報伝達装置57の作動を停止(ランプを消灯)し、手動再生処理を終了する。
本実施形態の動作を、図8を参照してより具体的に説明する。図8は、温度センサ51により検出されたDOC入口温度Taと、温度センサ52により検出されたDOC出口温度Tbと、温度センサ53により検出されたDPF出口温度Tcと、エンジン回転速度Nの各時間変化を示す図である。
DPF22の手動再生は、例えばグレンタンク7内の穀粒を圃場外の籾受け車両に搭載されたタンクに向けて排出装置11により排出する、籾排出作業時に行う。このため、情報伝達装置57の作動により手動再生必要状態を認識したオペレータは、コンバイン100を畦側まで移動した後、手動再生スイッチ55を操作して、手動再生の開始を指令する。時点t0で、手動再生スイッチ55が操作されると、エンジン回転速度が所定回転速度N1まで上昇する(ステップS1)。これによりDOC入口温度TaおよびDOC出口温度Tcがともに上昇し、DOC21の活性化が促進される。
時点t1で、DOC出口温度Tbが所定値T1以上になると、手動再生の準備が完了する。次いで、エンジン回転速度が所定回転速度N2まで減速し(ステップS3)、インジェクター37から燃料がポスト噴射され(ステップS4)、手動再生が開始される。このとき、DOC21は、既に排気ガスの昇温によって活性化状態となっているため、DOC21における酸化燃焼が即座に開始され、DOC出口温度Tbがさらに上昇するとともに、DPF出口温度Tcが上昇する。これによりDPF22に堆積したPMを燃焼させることができ、DPF22に堆積したPMを早期に除去することができる。その後、DPF22の前後差圧が所定値Pa未満になると、燃料のポスト噴射が終了し、エンジン回転速度が手動再生処理前の設定回転速度N0に復帰する(ステップS6)。
このように本実施形態では、手動再生の指令時にエンジン10を所定回転速度N1で回転させてDOC21を早期に活性化させた後、エンジン回転速度を所定回転速度N2まで下げてポスト噴射を行い、DPF22を再生するようにした。これにより、例えば手動再生の準備とポスト噴射による手動再生とを同一のエンジン回転速度(例えば所定回転速度N2)で行う場合に比べ、手動再生スイッチ55を操作してから手動再生が完了するまでの時間(手動再生時間)を短くすることができ、燃費の悪化を抑えることができる。また、オイルダイリューションの発生も抑えることができる。
すなわち、手動再生の準備期間(再生準備期間)にエンジン回転速度が低速の回転速度N2のままである場合、排気ガス温度が低いためDOC21が活性化するまでに時間がかかる。そのため、ポスト噴射を開始するまでに時間がかかり、その分、手動再生時間が長くなる。これに対し、再生準備期間にエンジン回転速度を高速の回転速度N1(>N2)に制御すると、DOC21を短時間で活性化でき、手動再生時間を短くすることができる。したがって、手動再生処理時の燃料消費量を抑えることができる。また、手動再生処理を短時間で終わらせることができるため、手動再生による作業の中断時間は短く、作業効率の悪化も抑えることができる。DOC21が活性化状態となった後は、エンジン回転速度を所定回転速度N2まで下げて燃料をポスト噴射するため、エンジン回転速度を下げずにポスト噴射を行う場合に比べ、エンジン騒音を低減できる。
<DPFの触媒劣化エラー>
DOC21に、排気ガス中に含まれる硫黄等が付着すると、DOC21(Pt等)の酸化能力が低下し、ポスト噴射を行ってもDOC出口温度TbがDPF22の再生可能な温度まで上昇しないことがある。本実施形態の排気浄化装置は、このような触媒劣化の状態(触媒劣化エラー)をECU50が判定し、触媒劣化エラーをオペレータに報知する。
触媒劣化エラーとして、通常エラーと事前エラーの2種類を設定する。通常エラーとは、噴射量の累積値が所定値M0に達したにも拘らず、DOC出口温度Tbが再生に必要な温度まで上昇しないときに発生するエラーである。事前エラーとは、DOC出口温度Tbに拘らず、噴射量の累積値が所定値M0よりも小さい所定値M1に達したことを条件として発生するエラーである。
図9は、触媒劣化エラーの発生タイミングを示す図であり、横軸は時間、縦軸は手動再生開始時点からの燃料噴射量の累積値を表す。図9に示すように、時点t1で、噴射量の累積値Sが所定値M1に達すると、ECU50は、情報伝達装置57を介して事前エラーを報知する。その後、時点t2で、噴射量の累積値が所定値M2に達し、かつ、DOC出口温度Tbが再生に必要な温度まで上昇していないと、ECU50は、情報伝達装置57を介してオペレータに通常エラーを報知する。この場合、事前エラーと通常エラーは、オペレータが認識可能な異なる態様で報知するのであれば、いかなる態様で報知してもよい。例えば、事前エラーは警報ランプを点滅させることにより、通常エラーは警報ランプを点灯させることにより、報知してもよい。
このように触媒劣化エラーとして、通常エラーおよび事前エラーを報知することで、オペレータはDOC21の触媒劣化を容易に認識することができる。また、通常エラーを報知する前に事前エラーを報知するようにしたので、DOC21の触媒劣化を事前に把握することができ、DOC21のメンテナンスや交換時期を予測して作業を行うことができる。したがって、通常エラーが発生する前に必要な部品を予め手配することが可能となり、DOC21のメンテナンス等による作業の中断時間を短縮できる。
<DPFへのPM過堆積防止>
情報伝達装置57を作動(警報ランプ点灯)して手動再生必要状態をオペレータに報知したにも拘らず、オペレータが情報伝達装置57の作動を見落として手動再生を指令しない場合、PMが過堆積となってDPF22のディーラー修理が必要となるおそれがある。本実施形態の排気浄化装置は、そのようなPM過堆積を防止するために、手動再生を強制的に指令させるようなPM過堆積防止処理を行う。図10は、PM堆積量(推定値)の時間変化を示す図である。PM堆積量は、DPF22の前後差圧と相関関係を有し、差圧センサ54の検出値により推定することができる。なお、差圧センサ54の検出値だけでなく、燃料噴射量の累積値を考慮してPM堆積量を推定してもよい。以下では、差圧センサ54の検出値によりPM堆積量を推定するものとして説明する。
図10において、差圧センサ54による検出値が所定値P0以上かつ所定値P1未満の範囲は、自動再生処理が行われる領域(自動再生領域)であり、所定値P1以上かつ所定値P3未満の範囲は、手動再生処理を行うべき領域(手動再生領域)であり、所定値P3以上の範囲は、ディーラーの修理が必要となる過堆積の領域である。ここで、手動再生処理を確実に実行させるために、手動再生領域を前期および後期の2段階に分ける。すなわち、差圧センサ54による検出値が所定値P1以上かつ所定値P2未満の範囲を、手動再生領域の前期とし、差圧センサ54による検出値が所定値P2以上かつ所定値P3未満の範囲を、手動再生領域の後期とする。手動再生領域の後期には、以下のようにコンバイン100の所定の動作を禁止する。
図11は、PM過堆積防止処理を行うための制御構成を示すブロック図である。ECU50の本体制御部502は、差圧センサ54からの検出値に基づいて所定の処理を実行し、刈取り装置4の電磁クラッチ4eを制御する。電磁クラッチ4eは、エンジン10からの動力を刈取り装置駆動用アクチュエータ(モータおよびシリンダ等)へ伝達および遮断する。電磁クラッチ4eがオンすると刈取り装置4が駆動可能となり、電磁クラッチ4eがオフすると、刈取り装置4が駆動不能となる。
図12は、図11の本体制御部502で実行される処理の一例を示すフローチャートである。ステップS11では、ECU50は、電磁クラッチ4eのオン指令が出力されているか否かを判定する。電磁クラッチ4eのオン指令は、運転室6内での操作により刈取り装置4の駆動が指令されると出力される。ステップS11が肯定されるとステップS12に進み、否定されるとステップS14に進む。ステップS12で、ECU50は、差圧センサ54の検出値が所定値P2以上か否か、すなわち、手動再生領域の後期であるか否かを判定する。ステップS12が否定されるとステップS13に進み、肯定されるとステップS14に進む。ステップS13で、ECU50は電磁クラッチ4eをオンする。これにより電磁クラッチ4eが接続状態となり、刈取り装置4の駆動が許可される。一方、ステップS14で、ECU50は電磁クラッチ4eをオフする。これにより電磁クラッチ4eが遮断状態となり、刈取り装置4の駆動が禁止される。
このように手動再生領域の後期に刈取り装置4の駆動を禁止することで、PM(主に煤)が過堆積となる前に、オペレータの手動再生スイッチ55の操作による手動再生を確実に行うことができる。また、PMが堆積すると、排気の背圧が上昇して所望の作業馬力を得られないおそれがあるが、手動再生を強制的に行わせることで、PMの堆積による排気の背圧を低減し、所望の作業馬力が得られるようにして、作業性の低下を防ぐことができる。刈取り装置4の駆動を禁止するだけで、走行装置3や排出装置11の駆動は許容しているので、例えば圃場の真ん中で刈取り装置4の駆動が禁止された場合に、車両を圃場の外側へ移動した後に、手動再生を行うことができる。
ECU50のエンジン制御部501は、刈取り装置4および脱穀装置5のクラッチが接続されると、エンジン回転速度を作業に適したハイアイドル回転速度(2800rpm)に制御する。そこで、手動再生領域の後期になったときに、本体制御部502により刈取り装置4の電磁クラッチ4eをオフする代わりに、エンジン制御部501により作業回転速度をハイアイドル回転速度から低下させるようにしてもよい。
図13は、この場合のエンジン回転速度と燃料噴射量との関係を示す図である。図中の斜線範囲は、燃費や排気ガスの問題を考慮した推奨エンジン回転域(いわゆるグリーンゾーン)である。手動再生領域の後期には、図13の矢印に示すように、エンジン制御部501は、エンジン回転速度の特性を通常状態の特性(実線)からグリーンゾーン内の特性(点線)へと変更する。これによりエンジン回転速度が低下するため、オペレータは、手動再生が必要である旨を容易に認識することができる。エンジン回転速度の低下の範囲をグリーンゾーン内としているため、作業回転速度が低下しても作業自体は可能であり、オペレータの判断で作業を停止した後に、手動再生を行うことができる。
<自動再生禁止>
グレンタンク7内に溜まった穀粒は、排出装置11により排出され、籾受け用タンクを有する籾受け車両に移される。この籾排出作業時には、コンバイン100の後部が籾受け車両に向けられることが多い。このため、籾排出作業時に自動再生処理を行うと、高温の排気ガスが籾受け車両に向けて排出され、あるいは、圃場外に堆積された藁屑等に向けて排出され、好ましくないことがある。そこで、本実施形態では、籾排出作業時に自動再生処理を禁止するように構成する。
図14は、自動再生禁止処理を行うための制御構成を示すブロック図である。ECU50は、満タン検出器58および作業完了スイッチ59からの信号に基づいて自動再生の許否を判定する自動再生判定部50aと、その判定結果に基づいて自動再生処理を実行する自動再生処理部50bとを有する。満タン検出器58は、例えばグレンタンク7内の頂部に設けられて、グレンタンク7内の穀粒が満タン状態のときにオンする検出スイッチである。作業完了スイッチ59は、例えば運転室6内に設けられて籾排出作業の完了時に操作されるスイッチである。
図15は、自動再生判定部50aで実行される処理の一例を示すフローチャートである。ステップS21では、自動再生判定部50aは、満タン検出器58がオンか否かを判定する。ステップS21が肯定されるとステップS22に進み、自動再生判定部50aは、自動再生処理部50bに自動再生処理の禁止信号を出力する。これにより自動再生が禁止され、自動再生処理部50bは、差圧センサ54の検出値が所定値P0以上になっても自動再生を行わない。ステップS23では、禁止フラグをオンする。
一方、ステップS21が否定されるとステップS24に進み、自動再生判定部50aは禁止フラグがオンかオフかを判定する。ステップS24で禁止フラグがオフと判定されると、ステップS25に進み、自動再生判定部50aは、自動再生処理部50bに自動再生処理の許可信号を出力する。これにより自動再生が許可され、自動再生処理部50bは、差圧センサ54の検出値が所定値P0以上になると、上述したようにして自動再生を実行する。すなわち、エンジン回転速度に応じて吸気弁34の開度を絞り側に制御するとともに、インジェクター37から燃料をポスト噴射させることで、排気ガス温度を上昇させ、DPF22に堆積したPMを燃焼させる。ステップS24で禁止フラグがオンと判定されると、ステップS26に進み、自動再生判定部50aは、作業完了スイッチ59がオンか否かを判定する。ステップS26が肯定されるとステップS27に進み、自動再生判定部50aは禁止フラグをオフする。
このようにグレンタンク7が満タン状態のときに自動再生を禁止するので(ステップS21→ステップS22)、籾排出作業を安全に行うことができる。この場合、一旦、満タン検出器58がオンすると、禁止フラグがオンとなり、作業完了スイッチ59がオンされるまで、自動再生が禁止される。このため、籾排出作業を開始した場合には、その作業が終了するまでの間、自動再生を禁止することができる。すなわち、籾排出作業の開始により、グレンタンク7内の穀粒が減少して満タン検出器58がオフとなった場合にも、引き続き自動再生を禁止することができる。作業完了スイッチ59のオンにより、禁止フラグをオフして自動再生を許可するので(ステップS26→ステップS27→ステップS21→ステップS24→ステップS25)、自動再生を許可するタイミングをオペレータの判断で決定することができる。なお、禁止フラグのオン時に運転室6内の所定のランプを点灯し、自動再生の禁止状態をオペレータに報知するようにしてもよい。
<手動再生禁止>
排気浄化ユニット20は、機体1の内部、すなわちグレンタンク7の奥に配置されている。一方、手動再生時には、自動再生時よりも高温の排気ガスが排出される。このため、手動再生時には、不測の事態に備えてグレンタンク7を車両外側(図2の矢印A方向)に回動可能な状態として、排気浄化ユニット20にアクセス可能とすることが好ましい。ところが、グレンタンク7の底部には、排出装置11に連通する螺旋状の排出部が設けられているため、グレンタンク7内に穀粒が存在していると、排出部がロックしてグレンタンク7が車両外側に回動不能となることがある。あるいは、グレンタンク7内に穀粒が存在していると、グレンタンク7を回動した際に、穀粒が車外に洩れてしまうことも考えられる。この点を考慮して、本実施形態では、一定条件下で手動再生を禁止する。
図16は、手動再生禁止処理を行うための制御構成を示すブロック図である。ECU50は、籾量検出器60からの信号に基づいて手動再生の許否を判定する手動再生判定部50cと、その判定結果に基づいて手動再生を実行する手動再生制御部50dとを有する。籾量検出器60は、グレンタンク内の籾量が所定量以上の場合にオンする検出するスイッチである。籾量検出器60がオフのときは、グレンタンク7を車両外側に回動可能であり、グレンタンク7を回動した際の穀粒の洩れ量も問題とならない程度である。
図17は、手動再生判定部50cで実行される処理の一例を示すフローチャートである。ステップS31で、手動再生判定部50cは、籾量検出器60がオンか否かを判定する。ステップS31が肯定されるとステップS32に進み、否定されるとステップS33に進む。ステップS32で、手動再生判定部50cは、手動再生制御部50dに手動再生処理の禁止信号を出力する。これにより手動再生処理が禁止され、手動再生スイッチ55(図6)が操作されても、手動再生は行われない。ステップS33で、手動再生判定部50cは、手動再生制御部50dに手動再生処理の許可信号を出力する。これにより手動再生が許可され、手動再生スイッチ55が操作されると、上述したように手動再生が行われる(図7)。
このように籾量検出器60のオンおよびオフに応じて手動再生を禁止および許可するので、手動再生時に高温の排気ガスによって不測の事態が生じた場合には、グレンタンク7を回動して、排気浄化ユニット20に容易にアクセスすることができる。これにより、オペレータは、不測の事態に容易に対処することが可能である。なお、籾量検出器60のオンによる手動再生の禁止状態を、運転室6内の所定のランプを点灯することで、オペレータに報知するようにしてもよい。
<表示装置>
本実施形態では、情報伝達装置57の作動(警報ランプの点灯)により、手動再生必要状態をオペレータに報知するようにしたが、情報伝達装置57を、警報ランプと表示装置とを含んで構成してもよい。以下、主に表示装置について説明する。
図18は、運転室内の前部における部品の配置を示す図である。表示装置61は、運転室6の中央のオペレータが視認しやすい位置(運転席の正面)に設けられている。表示装置61の右方には、手動再生必要状態を報知する警報ランプ62が設けられ、表示装置61の左方には、コンバイン100の各種指令を入力する操作スイッチ63が設けられている。表示装置61は、液晶表示による表示部64とエンジン回転計65とを中央の上下2段に配置し、その左右両側に押釦式のスイッチ66〜71を配置した構成である。スイッチ66,67は、それぞれ左右のウインカスイッチ、スイッチ68,69は、それぞれ前照灯前向きスイッチおよび前照灯下向きスイッチ、スイッチ70は切替スイッチ、スイッチ71はホーンスイッチである。図18の表示部64には、作業用の通常画面が表示されている。この通常画面には、燃料残量64a、エンジン負荷64b、グレンタンク貯留量64c等の情報が表示される。
図19は、情報伝達装置57の制御に係る構成を示すブロック図である。図示は省略するが、エンジン制御部501には、エンジン制御に必要な各種センサ(例えば図6に示したセンサ)からの信号が入力される。これらセンサからの信号はエンジン制御部501を介して本体制御部502に入力される。本体制御部502は、エンジン制御部501と手動再生スイッチ55とからの信号に基づいて所定の処理を実行し、情報伝達装置57に制御信号を出力して、警報ランプ62を点消灯するとともに、表示装置64の表示内容を変更する。
具体的には、差圧センサ54(図6)の検出値が所定値P1以上になると、本体制御部502は、警報ランプ62を点灯させるとともに、手動再生必要状態を表す第1のメッセージ(例えば「DPF手動再生が必要になりました」)を、表示部64に表示させる。これによりオペレータは手動再生の要否を容易に認識できる。
さらに本体制御部502は、第1のメッセージに続いて第2のメッセージ(例えば「エンジン回転をアイドリングにしてください」)を表示部64に表示させる。この第2のメッセージは、オペレータにエンジン10の設定回転速度N0をローアイドルにするような操作を促すものである。すなわち、手動再生処理が終了した直後にエンジン回転速度は設定回転速度に戻るが(図7)、設定回転速度N0が高い状態(例えばハイアイドル)で手動再生スイッチ55が操作されると、手動再生処理後にエンジン回転速度が急激に上昇する。これを防止するために、手動再生スイッチ55の操作前に、オペレータにエンジン回転速度を下げるような操作を促す。これにより、手動再生処理の終了後にエンジン回転速度は低いままであり、エンジン回転速度の急上昇による不所望な動作を防止できる。
第2のメッセージの表示後に、設定回転速度N0をローアイドル回転速度とする操作がなされたことを検出すると、本体制御部502は、手動再生スイッチ55の操作を促す第3のメッセージ(例えば「DPF手動再生スイッチを押してください」)を表示部64に表示させる。これによりオペレータは、手動再生スイッチ55の操作タイミングを容易に認識することができる。
第3のメッセージの表示後に、オペレータが手動再生スイッチ55を操作すると、手動再生処理が開始される。このとき、本体制御部502は、手動再生処理の状態を表す第4のメッセージ(例えば「手動再生準備中」)を表示部64に表示させる。これによりオペレータは、手動再生処理の状態を容易に認識できる。
手動再生準備中あるいは手動再生中に、何らかの異常が発生した場合、ECU50は手動再生処理を途中で終了する。例えば、エンジン温度の異常上昇等、エンジン10に不具合が発生した場合に、手動再生処理を中止する。この場合、本体制御部502は、異常状態を表す第5のメッセージ(例えば「エンジン異常があります。DPF再生を中止します」)を表示部64に表示させる。これによりオペレータは、手動再生処理が中止となった状態およびその原因を容易に認識できる。
本体制御部502は、第5のメッセージの表示に続いて、異常時の対応を表す第6のメッセージ(例えば「販売店へご連絡お願いいたします」)を表示部64に表示させるようにしてもよい。これによりオペレータは、異常事態にどのように対応すべきかを容易に認識することができる。
手動再生スイッチ55の操作により手動再生が開始された後、本体制御部502が差圧センサ54等からの検出値により再生完了までに要する時間を推定し、再生完了までの残り時間を表す第7のメッセージ(例えば「DPF再生終了まで○○分」)を表示部64に表示させるようにしてもよい。この場合、DPF22の再生中に切替スイッチ70(図18)を操作することにより、表示部64の画面表示を切り替えて、残り時間を表示すればよい。残り時間の表示は、時間の経過とともに例えば1分単位で変化させればよい。このように再生完了までの残り時間を表示することで、オペレータはDPF再生の進捗状況を容易に認識することができ、再生完了後の作業予定を立てやすくなるという利点がある。
以上の第1のメッセージ〜第7のメッセージは、表示部64の全体に表示してもよく、表示部64の一部に表示してもよい。表示部64の一部に表示する場合、例えばエンジン負荷64bの代わりにメッセージを表示するようにしてもよい。
表示部64に表示される表示モードは、表示装置61のスイッチ(例えば切替スイッチ70)の操作により作業モードに応じて切替可能である。作業モードは、通常作業モード、メンテナンスモード、整備モード等に分けられる。このうち整備モードは、システムチェックモード、センサ調整モード、異常履歴モード等に分けられる。システムチェックモードでは、各種センサ(例えば差圧センサ)からの出力を取り込み、出力状態を確認する。例えば、センサの出力によりDPF22の堆積量を確認する。この場合、DPF22の堆積量を表示部64に表示し、必要に応じてDPF22の手動再生を行うようにしてもよい。図20は、表示部64に表示されるDPF堆積量の一例である。このようにDPF堆積量を表示部64に表示することで、オペレータが手動再生の要否を判断し、整備モード時に必要に応じて手動再生を行うことができる。
<変形例>
上記実施形態では、手動再生スイッチ55の操作によりDPF22の手動再生を指令するようにしたが、オペレータ自体の判断で手動再生を指令するのであれば、再生指令部の構成はいかなるものでもよい。排気ガス温度が所定値T1に到達したときにDOC21が活性化していると判定したが(図7のステップS2)、DOC21の温度と相関関係を有する他の物理量(例えばDOC21の表面温度)を検出して、DOC21が活性化するための活性化温度に到達したか否かを判定してもよく、活性化判定部の構成は上述したものに限らない。
上記実施形態では、手動再生が指令されると、ECU50が吸気弁34を絞り制御することによりエンジン回転速度を所定回転速度N1(第1の回転速度)に制御し(図7のステップS1)、その後、排気ガス温度が所定値T1に到達すると、エンジン回転速度を所定回転速度N2(第2の回転速度)に制御するようにした(図7のステップS3)。ここで、エンジン回転速度を第1の回転速度として手動再生の準備が終了した後に、エンジン回転速度を第1の回転速度よりも低い第2の回転速度に制御するのであれば、エンジン回転速度制御部の構成はいかなるものでもよい。
上記実施形態では、手動再生時にエンジン回転速度を所定回転速度N2まで低減するとともに、燃料をポスト噴射するようにECU50がインジェクター37を制御したが(図7のステップS4)、排気ガスの流れによって未燃燃料をDOC21に導くように燃料を供給するのであれば、燃料供給部の構成は上述したものに限らない。すなわち、ポスト噴射以外によって未燃燃料をDOC21に供給し、DOC21で酸化燃焼させるようにしてもよい。
上記実施形態では、差圧センサ54によりDPF22の目詰まり状態を検出し、差圧センサ54の検出値が所定値P0以上になると、自動再生処理部50b(図14)での処理によりDPF22を自動再生するようにしたが、自動再生処理部の構成はいかなるものでもよい。グレンタンク7内の頂部に満タン検出器58(図14)を設け、グレンタンク7内の貯留物が満タン状態にあることを満タン検出器58が検出すると、作業段階として籾排出作業が行われる段階(排出作業段階)にあると判定したが、作業判定部の構成はこれに限らない。例えば、作業完了スイッチ59からの信号に基づいて作業段階として籾排出作業が行われる段階(排出作業段階)にあると判定するようにしてもよい。
上記実施形態では、自動再生判定部50aでの処理により、満タン検出器58のオン時に自動再生を禁止し(図15のステップS22)、その後、排出作業の終了時に作業完了スイッチ59がオンされると、自動再生を許可するようにしたが(図15のステップS27)、排出作業時に自動再生を禁止し、排出作業時以外で自動再生を許可するのであれば、自動再生禁止部の構成はいかなるものでもよい。
上記実施形態では、籾量検出器60(図16)によりグレンタンク内の籾量を検出したが、グレンタンク内の貯留物の貯留量を検出する貯留量検出部の構成はこれに限らない。手動再生判定部50cでの処理により、籾量検出器60がオンすると、グレンタンク内の籾量が所定値以上であるとして手動再生制御部50dによる手動再生を禁止し(図17のステップS32)、籾量検出器60がオフすると籾量が所定値未満であるとして手動再生を許可したが(ステップS33)、手動再生禁止部の構成はこれに限らない。
上記実施形態では、ECU50が差圧センサ54の検出値に応じてPM堆積量を推定し、手動再生の要否、すなわち手動再生領域にあるか否かを判定したが(図10)、手動再生判定部の構成はこれに限らない。手動再生領域の後期において、刈取り装置4の駆動を禁止するようにしたが(図12のステップS13)、その代わりに、脱穀装置5の駆動を禁止するようにしてもよい。あるいは、刈取り装置4と脱穀装置5との両方の駆動を禁止してもよく、動作禁止部の構成は上述したものに限らない。手動再生領域の後期において、エンジン回転を作業回転速度(ハイアイドル回転速度)からグリーンゾーン内の回転速度に低下させるようにしたが、エンジン回転速度の低下範囲をグリーンゾーンとは無関係に定めてもよい。
以上の実施形態では、走行装置3と刈取り装置4と脱穀装置5とグレンタンク7とを有するコンバイン100に排気浄化装置を適用する例を説明した。しかし、本発明は、コンバイン100に限らず、ディーゼルエンジン10から排出された排気ガスをDOC21およびDPF22を介して浄化するように構成された他の作業車両にも、同様に適用することができる。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態および変形例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。すなわち、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能である。
3 走行装置
4 刈取り装置
4e 電磁クラッチ
5 脱穀装置
6 運転室
7 グレンタンク
10 ディーゼルエンジン
11 排出装置
20 排気浄化ユニット
21 酸化触媒(DOC)
22 パティキュレートフィルタ(DPF)
34 吸気弁
37 インジェクター
50 電子制御ユニット(ECU)
50a 自動再生判定部
50b 自動再生処理部
50c 手動再生判定部
50d 手動再生制御部
52 温度センサ
54 差圧センサ
55 手動再生スイッチ
57 情報伝達装置
58 満タン検出器
59 作業完了スイッチ
60 籾量検出器
61 表示装置
100 コンバイン
501 エンジン制御部
502 本体制御部
N1 所定回転速度
N2 所定回転速度

Claims (5)

  1. ディーゼルエンジンから排出された排気ガスを、排気ガスに含まれる粒子状物質を酸化させる酸化触媒と、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するDPFを介して浄化する作業車両の排気浄化装置であって、
    前記DPFの手動再生を指令する再生指令部と、
    前記酸化触媒の温度が、該酸化触媒を活性化するための活性化温度に到達したか否かを判定する活性化判定部と、
    前記活性化判定部により前記酸化触媒の温度が前記活性化温度に到達したと判定されると、排気ガスの流れによって前記酸化触媒に未燃燃料が導かれるように前記ディーゼルエンジンへ燃料を供給する燃料供給部と、
    前記再生指令部により手動再生が指令されると、エンジン回転速度を第1の回転速度に制御し、その後、前記活性化判定部により前記酸化触媒の温度が前記活性化温度に到達したと判定されると、エンジン回転速度を前記第1の回転速度よりも低い第2の回転速度に制御するエンジン回転速度制御部とを備えることを特徴とする作業車両の排気浄化装置。
  2. 請求項1に記載の作業車両の排気浄化装置において、
    前記作業車両は、走行装置、刈取り装置、脱穀装置およびグレンタンクを有するコンバインであり、
    前記DPFにおける粒子状物質の堆積状態に応じて前記DPFを自動再生する自動再生処理部と、
    前記コンバインの作業段階が、前記グレンタンクに貯留された貯留物を排出する排出作業段階であるか否かを判定する作業判定部と、
    前記作業判定部により前記排出作業段階であると判定されると、前記自動再生処理部による自動再生を禁止し、前記排出作業段階でないと判定されると、前記自動再生処理部による自動再生を許可する自動再生禁止部とをさらに備える作業車両の排気浄化装置。
  3. 請求項1に記載の作業車両の排気浄化装置において、
    前記作業車両は、走行装置、刈取り装置、脱穀装置およびグレンタンクを有するコンバインであり、
    前記グレンタンク内の貯留物の貯留量を検出する貯留量検出部と、
    前記貯留量検出部により検出された貯留量が所定値以上のとき、前記再生指令部の指令による手動再生を禁止し、貯留量が前記所定値未満のとき、前記再生指令部の指令による手動再生を許可する手動再生禁止部とをさらに備える作業車両の排気浄化装置。
  4. 請求項2または3に記載の作業車両の排気浄化装置において、
    手動再生の要否を判定する手動再生判定部と、
    前記手動再生判定部により手動再生が必要と判定されると、前記刈取り装置および前記脱穀装置の少なくとも一方の動作を禁止する動作禁止部とをさらに備える作業車両の排気浄化装置。
  5. 請求項2または3に記載の作業車両の排気浄化装置において、
    前記手動再生の要否を判定する手動再生判定部と、
    前記刈取り装置又は脱穀装置が圃場の穀稈を刈取る刈取作業段階であるか否かを検出する刈取り作業判定部をさらに備え、
    前記エンジン回転速度制御部は、前記手動再生判定部により手動再生が必要と判定されると、前記刈取り装置又は脱穀装置が駆動されている状態における前記ディーゼルエンジンの作業回転速度を低下させる作業車両の排気浄化装置。
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