JP2013112568A - 層間に水素イオンを存在させた粘土粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】層間に存在する陽イオンのうち、70〜99mol%が水素イオンであり、二次粒子がロゼット状である粘土粉末。
【選択図】なし
Description
代表的な粘土の結晶構造は、ケイ酸のネットワークが広がる四面体層が、金属酸化物水酸化物層からなる八面体層を挟んだ単位結晶層からなる。多くの場合、この層間には陽イオンが存在しており、一般的に用いられる粘土はナトリウムイオン、カルシウムイオンが層間に存在しているタイプが多い。
1価の陽イオンを層間に有する粘土は2価以上の陽イオンと比較し、層剥離しやすいことが特徴にあげられる。そのため、吸水性で、膨潤しやすく、さらに増粘作用を有する。
そのため、水又は親水性溶媒に均一に分散することが可能な水素イオン型粘土の乾燥粉末の開発が望まれていた。
(1)層間に存在する陽イオンのうち、70〜99mol%が水素イオンであり、二次粒子がロゼット状である粘土粉末。
(2)水または親水性溶媒への膨潤力が30〜100mL/2gであることを特徴とする(1)に記載の粘土粉末。
(3)3%sol粘度が100〜3,000mPa・sであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の粘土粉末。
(4)スメクタイト、バーミキュライト、又は膨潤性マイカを含有する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の粘土粉末。
(5)原料粘土が天然粘土又は合成粘土であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の粘土粉末。
(6)前記原料粘土の層間に存在する陽イオンの70〜99mol%を、イオン交換により水素イオンに交換した後、分散液を微粒子として乾燥させることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の粘土粉末の製造方法。
本発明において、「一次粒子」とは、粘土の最小単位である、ケイ酸のネットワークが広がる四面体層が金属酸化物水酸化物層からなる八面体層を挟んでできた単位結晶層(本発明において、単に「層」とも称する。)、及び複数層の結晶をいう。また、二次粒子とは、1次粒子が不規則に集合した不定形の粒子形態をいう。二次粒子の直径は、好ましくは1〜100μmである。
「ロゼット(rosette)状」とは、二次粒子の中心から花弁状に放射状に開くように一次粒子が凝集した状態をいう。なお、本発明において、このロゼット状に規則性は要求されず、また、二次粒子ごとに異なる形状であってよい。
層間に存在する陽イオンの内の水素イオンの割合(mol%)は、粘土の陽イオン交換容量から各種金属の浸出陽イオンの総量を引いた値を陽イオン交換容量で除して、100倍することにより算出できる。
本発明の粘土粉末が水又は親水性溶媒に均一に微分散する作用機構は負電荷を有する粘土結晶層面への水素イオンの吸着の強さ、及び粒子形状に起因しているものと推定される。粘土結晶層の層間に存在する水素イオンは熱と経過時間によって層面に強固に吸着され、水又は親水性溶媒を取り込むことができなくなる。しかし、本発明では、後述するように粘土分散液の液滴を微粒化させ、瞬時に乾燥させているため、水素イオンが粘土結晶層面に強固に吸着せず、また粒子形状がロゼット状であるため、水又は親水性溶媒と本来は強い親和性のある水素イオンが70〜99mol%存在することにより、花弁(図1の符号2)の形状の隙間(図1の符号3)に水又は親水性溶媒の分子が入り込みやすい状態となり、その結果、粒子の微分散の促進、増粘作用、膨潤作用の向上に寄与するものと推定される。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明の粘土粉末を調製するための出発原料となる原料粘土は親水性であり、層間に陽イオンを持つタイプが好ましく、スメクタイト、バーミキュライト、膨潤性マイカを含有する粘土などが存在する。また、モンモリロナイト、バイデライト、ノントライト等の天然粘土、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト等の合成粘土のいずれでもよく、粘土に機能性を持たせるために変性させたシリル化粘土、分散剤や有機溶媒などの添加物を含む粘土であってもよい。天然精製モンモリロナイトとしてはクニピアF(商品名、クニミネ工業社製)が市販されている。
上記粘土原料を水、又はN−メチルホルムアミド、ホルムアミド等の親水性溶媒に分散させ分散液を調製する。分散液中の粘土原料の割合は特に制限されないが、固形分0.5〜20質量%であることが好ましい。
本発明における水素化処理は一般的な方法で行なうことができる。例えば、水素化した陽イオン交換樹脂を充填したカラムに対し、上記分散液を通液させることで行うことができる。また、アルカリ金属等のイオンを層間に有する粘土粉末あるいは粘土分散液に塩酸等の酸を反応させた後、遠心、ろ過、セラミックフィルターなどを用いて蒸留水で充分に洗浄を繰り返すことで行うこともできる。その際、できるだけ粘土の陽イオン交換容量(CEC:Cation Exchange Capacity)に対し、余剰の水素イオンを除去することが望ましい。
水素化処理を行う際の温度条件は特に制限されるものではないが、4℃以上90℃以下であることが好ましい。
本発明における層間に存在する陽イオンの内の水素イオンの割合(mol%)は、粘土のCEC(meq/100g)及び浸出陽イオン(LC:Leached Cation)(meq/100g)の定量を行ない、下記(式1)によって算出することができる。
水素イオンの割合(mol%)=CEC−LC(Total)/CEC×100(式1)
CECの定量は、日本ベントナイト工業会標準試験方法JBAS−106‐77に記載の方法により行なう。また、LCの定量は、CECの測定の際に浸出した試料の各種金属イオンの元素分析によって行なう。元素分析は、ICP発光分光分析、原子吸光分析によって行なう。
LCとして定量する金属イオンの具体例として、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のイオン、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属のイオン、鉄、銅等の遷移金属のイオン及び亜鉛、アルミニウム等の典型金属のイオンが挙げられる。
本発明における乾燥、粉末の製造にはスプレードライヤーを用いて噴霧などを行い、液滴を微粒化させた後、水分を蒸発させることができる方法であることが好ましい。本発明においては、市販のスプレードライヤーを用いることができ、例えば、大川原化工機株式会社、株式会社パウダリングジャパン、ヤマト科学株式会社、日本科学機械製造株式会社が製造したスプレードライヤーが挙げられる。
スプレードライヤーの吐出圧力は特に制限はないが、0.1kPa〜300kPaであることが好ましく、10kPa〜100kPaであることがより好ましい。また、乾燥温度は特に制限されないが、入口温度は70℃〜300℃であることが好ましく、150℃〜250℃であることがより好ましい。出口温度は40℃〜90℃であることが好ましく、60℃〜80℃であることがより好ましい。
本発明の粘土粉末を水、又はN−メチルホルムアミド、ホルムアミド等の親水性溶媒に添加し、羽根つき攪拌機やホモミキサーなどの一般的な撹拌方法によって分散することができる。このようにして得た分散液を粒度分布測定装置により、評価することで分散状態を確認できる。
本発明の粘土粉末を水、又はN−メチルホルムアミド、ホルムアミド等の親水性溶媒に添加し、固形分1〜4質量%の分散液を作製し、16時間静置後の粘度を測定することで粘度を評価することができる。測定は一般的な粘度計であればよく、B型粘度計、コーンプレート型粘度計を用いることができる。
本発明の粘土粉末を2gとり、100mLの水、又はN−メチルホルムアミド、ホルムアミド等の親水性溶媒が入った100mLのメスシリンダーに徐々に添加する。試料が沈着した後、24時間放置し、容積内に堆積した見かけ容積をよみとり、膨潤力(mL/2g)を測定できる(日本ベントナイト工業会標準試験方法 JBAS−104‐77)。
(陽イオン交換樹脂の水素化)
強酸性陽イオン交換樹脂(商品名:アンバーライトIR120B、ダウ・ケミカル製)13Lを充填したカラムに対し、1M塩酸(純正社製、35%塩化水素)を90L通液し、イオン交換樹脂の水素化を行なった。その後、カラムに蒸留水を1,000L通液させ、樹脂の洗浄を行った。
(粘土の水素化処理)
水素化した樹脂が充填されたカラムに対し、精製モンモリロナイト(商品名:クニピアF、クニミネ工業社製)を水に分散させた2質量%精製モンモリロナイト水分散液を通液させ、層間に水素イオンが存在する粘土の分散液を得た。
(粘土の乾燥)
得られた水素化粘土分散液をスプレードライヤー(DL410、ヤマト科学社製)を用いて、吐出圧力13.7kPa、入口温度250℃、出口温度80℃の条件で乾燥させ、粘土粉末を得た。
層間に水素イオンが存在する粘土の水分散液を得るまでは実施例1と同様の操作を行った。乾燥工程においては粘土分散液をFRP(グラスファイバー強化不飽和ポリエステル)製のトレイに入れ、105℃の乾燥機を用いて16時間乾燥させ、得られた乾燥試料をサンプルミル(SK−M2、協立理工社製)を用いて、粉砕することで、粘土粉末を得た。
層間に水素イオンが存在する粘土の分散液を得るまでは実施例1と同様の操作を行った。乾燥工程においては粘土分散液をFRP製のバットに入れ、105℃の乾燥機に16時間乾燥させ、得られた乾燥試料をサンプルミルで粉砕後、さらにジェット粉砕機(FS‐4型、セイシン企業社製)で微粉砕し、粘土粉末を得た。
層間に水素イオンが存在する粘土の分散液を得るまでは実施例1と同様の操作を行った。乾燥工程においては粘土分散液を冷凍庫で凍結させ、得られた試料を凍結乾燥機(FDU−540、東京理科器械社製)を用いて、2日間乾燥し、その後サンプルミルで粉砕することで、粘土粉末を得た。
層間に水素イオンが存在する粘土の分散液を得るまでは実施例1と同様の操作を行った。乾燥工程においては粘土分散液を冷凍庫で凍結させ、得られた試料を凍結乾燥機を用いて、2日間乾燥し、その後サンプルミルで粉砕後、さらにジェット粉砕機(FS‐4型、セイシン企業社製)を用いて、微粉砕し、粘土粉末を得た。
以下、実施例1、比較例1〜4の粘土粉末の特性を評価した。
以下の表1に実施例1、比較例1〜4に用いた水素化処理前の粘土(クニピア‐F)、及び水素化処理後の粘土(H‐Mont)の層間陽イオンの測定結果を示した。
装置:走査型電子顕微鏡(SEM)JS−6390LA、日本電子社製
測定方法:真空度20Pa、加速電圧10kVの条件で観察倍率500倍又は2,500倍で観察した。
これに対して、図2及び図4から、比較例1及び比較例3で得られた粘土粉末では、それぞれ、粘土の二次粒子の形状が、凹凸は観察されるものの、ほぼ扁平であることが分かる。図3及び図5から、比較例2及び比較例4で得られた粘土粉末では、それぞれ、花弁状に一次粒子が凝集しているような部分もあるが、本発明のように、中心から花弁状に放射状に開くような形状とはなっていない。
装置:MX−50、エー・アンド・デイ社製
測定方法:測定皿に粘土粉末を約1g乗せ、水分値を定量した。
装置:LA950V2(商品名、HORIBA社製)
測定方法:適量の実施例1、及び比較例1〜4の粉末を装置の乾式ユニット中にセットし、試料屈折率を1.70とし、粒度分布、及びメディアン径を測定した。結果を下記表2に示す。
装置:LA950V2(商品名、HORIBA社製)
測定方法:フローセル中に蒸留水と適量の実施例1、及び比較例1〜4の水分散液を入れ、試料屈折率を1.70とし、粒度分布、及びメディアン径を測定した。
装置:TV−10M型回転粘度計(東機産業社製)
測定方法:実施例1、及び比較例1〜4で調製した粘土粉末を用いて蒸留水で固形分3質量%分散液を作製した。16時間後の各試料を1,000rpmで5分間攪拌機を用いて攪拌し、その後、60回転/分で60秒間、少量サンプルアダプターを用いて各試料の見掛け粘度を測定した。その後5分間静置させた後に6回転/分で120秒の見かけ粘度を測定した。下記表2中、60回転/分の条件で測定した粘度をη60、6回転/分の条件で測定した粘度をη6で表す。
測定方法:実施例1、及び比較例1〜4の粘土粉末を2gとり、100mLの蒸留水が入った100mLのメスシリンダーに徐々に添加した。試料が沈着した後、24時間放置し、容積内に堆積した見かけ容積をよみとり、膨潤力(mL/2g)を測定した。
評価方法:実施例1、及び比較例1〜4で調製した粘土粉末を用いて蒸留水で1質量%分散液を作製し、100mLのスクリュー管瓶に入れ、24時間静置後及び1週間静置後の分散液の安定性を試料固形分の沈降の有無を目視で評価した。表3において、沈降が観察された場合を「○」で示し、沈降が観察されなかった場合を「×」で示した。
2 一次粒子が凝集して形成された花弁
3 花弁間の間隙
4 比較例1で調製した粘土の二次粒子
5 比較例2で調製した粘土の二次粒子
6 比較例3で調製した粘土の二次粒子
7 比較例4で調製した粘土の二次粒子
Claims (6)
- 層間に存在する陽イオンのうち、70〜99mol%が水素イオンであり、二次粒子がロゼット状である粘土粉末。
- 水または親水性溶媒への膨潤力が30〜100mL/2gであることを特徴とする請求項1に記載の粘土粉末。
- 3%sol粘度が100〜3,000mPa・sであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘土粉末。
- スメクタイト、バーミキュライト、又は膨潤性マイカを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘土粉末。
- 原料粘土が天然粘土又は合成粘土であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘土粉末。
- 前記原料粘土の層間に存在する陽イオンの70〜99mol%を、イオン交換により水素イオンに交換した後、分散液を微粒子として乾燥させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘土粉末の製造方法。
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