JP2013109246A - 静電荷像現像用トナー及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性、耐熱保管性及び耐ホットオフセット性に優れた静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供する。また、高速複写機に用いた場合でも光沢性があり高い画質の画像が得られる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けてなるコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該コア粒子が、重量平均分子量が20,000〜40,000の範囲内のスチレン−アクリル樹脂と、重量平均分子量が100,000〜300,000の範囲内のポリエステル樹脂を含有し、該シェル層がスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【選択図】なし

Description

本発明は静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関し、更に詳しくは、電子写真方式の画像形成装置に用いられる静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
近年、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)の分野では、市場からの要求に応じて、高画質化に対応できるトナーが求められている。高画質化に対応するトナーとしては、従来に比べて粒径が小さくかつ粒径分布がシャープなトナーが求められている。トナーが小粒径化し粒径分布がシャープになると個々のトナー粒子の現像挙動が揃うことにより、微小ドットの再現性が著しく向上する。しかしながら、従来の粉砕法によるトナー製造方法では、トナーの微粒化には限界があり、またトナーの粒径分布をシャープにすることは容易ではなかった。
これに対して、トナー粒子の形状や粒径分布を任意に制御可能な製造方法として、乳化凝集法が提案されている。この方法は、樹脂微粒子の乳化分散液に着色剤粒子分散液や必要に応じてワックス分散液を混合し、攪拌しながら、凝集剤添加、pH制御等により、それぞれの粒子を凝集させ、さらに加熱することによって、粒子を凝集、融着させてトナー粒子を得るものである。
また、省エネルギーの観点から、少ないエネルギーで定着できる低温定着トナーの開発が進められている。トナーの定着温度を下げるためには、結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げることが必要である。しかしながら、結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げるため、結着樹脂のガラス転移点や分子量を下げるとトナーの耐熱保管性が劣る、あるいはホットオフセットという現象が発生するなど新たな問題が生じる。
低温定着性と耐熱保管性を両立させるためにトナーをコア・シェル構造に制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、低温定着性に優れたコア粒子表面にガラス転移点や軟化点が高く耐熱性に優れた粒子からなるシェル層を形成することにより、低温定着性と耐熱保管性を両立させる技術が提案されている。特に乳化凝集法によるトナーの製造においては、このような形状制御や機能向上が容易に行えるという利点がある。しかし、近年プロダクションプリント領域においては、複写機、プリンターの高速化及び対応紙種の拡大が進み、前記のコア・シェル構造のトナーでは更なる低温定着化と耐ホットオフセット性の両立は困難になってきている。
この問題を解決するため、シェル層にポリエステル樹脂を用いたトナーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。ポリエステル樹脂は、スチレン−アクリル樹脂に比べて高いガラス転移点(Tg)を維持したまま低軟化点化設計が容易に行えるという利点があり、コアの結着樹脂としてスチレン−アクリル樹脂を用い、シェル層にポリエステル樹脂を用いることで、ポリエステル樹脂のシャープメルト性の効果で低温定着性と耐熱保管性を改善することができる。
しかし、スチレン−アクリル樹脂とポリエステル樹脂とは親和性が乏しく、コア粒子にスチレン−アクリル樹脂を用い、シェル層にポリエステル樹脂を用いた場合、薄層で均一なシェル層の形成が困難であるため、近年の市場の要求に対しては、十分な耐熱保管性を得ることが困難であった。また、コアとシェルの融着が起こりにくいためにトナー粒子の形状制御が困難で、シェル層の表面が平滑なトナー粒子を作製することが難しく、また連続プリント時に現像機内でトナーが攪拌されることにより、シェル層との剥離が起こる場合があり、その結果、画像ノイズが生じ、画質が低下するという問題もあった。
これらの問題を解決するため、シェル層にウレタン変性ポリエステル樹脂及び/又はアクリル変性ポリエステル樹脂を用いたコア・シェル構造を有するトナーとすることによって、低温定着性、耐熱保管性、耐ホットオフセット性を改善する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
スチレン−アクリル樹脂とポリエステル樹脂との親和性を高めるため、シェル層を構成する樹脂として、ウレタン変性ポリエステル樹脂、又はアクリル変性ポリエステル樹脂を用いることによって、コアにスチレン−アクリル樹脂を用いた場合でもある程度均一なシェル層を形成することができる。しかし、シェル層にスチレン成分が存在しないため、シェル層の樹脂のガラス転移点が高くなり、低温定着性が損なわれてしまう。また、市場からの要請に応じて、なお一層の低温定着性を計るため、コア樹脂にさらに低温定着性を付与した場合、低温定着性と耐熱保管性及び耐ホットオフセット性を両立させるという点において、いまだ十分といえるものではなかった。
特開2005−221933号公報 特開2005−338548号公報 特許第4305155号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低温定着性、耐熱保管性及び耐ホットオフセット性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することである。また、本発明のもう一つの解決課題は、高速複写機に用いた場合でも光沢性があり高い画質の画像が得られる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、コア粒子に粘性の低い低分子量のスチレン−アクリル樹脂と弾性の高い高分子量のポリエステル樹脂を含有し、シェル層にスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含有するコア・シェル構造を有するトナー粒子とすることにより、上記課題が解決できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けてなるコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該コア粒子が、重量平均分子量が20,000〜40,000の範囲内のスチレン−アクリル樹脂と、重量平均分子量が100,000〜300,000の範囲内のポリエステル樹脂を含有し、該シェル層がスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
2.前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、7,000〜19,000の範囲内にあることを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
3.重量平均分子量が、20,000〜40,000の範囲内にあるスチレン−アクリル樹脂微粒子分散液と重量平均分子量が、100,000〜300,000の範囲内にあるポリエステル樹脂微粒子分散液とを凝集してコア粒子を形成する工程と、該コア粒子に重量平均分子量が、7,000〜19,000の範囲内にあるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂微粒子分散液を混合して凝集し、該コア粒子表面に該スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂からなるシェル層を形成する工程を含むことを特徴とする第1項又は第2項に記載のコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法。
本発明の上記手段により、低温定着性と耐熱保管性及び耐ホットオフセット性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することができる。また、高速の複写機に使用した場合においても光沢性に優れた高画質の画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
スチレン−アクリル樹脂を含有するコア粒子とスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂からなるシェル層を有するトナーにおいては、シェル層に用いるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を構成するポリエステル成分の高いガラス転移点とシャープメルト性の効果で、耐熱保管性と低温定着性を得ることができる。しかし、近年の市場からの要請に応じて、さらに低温定着性と耐ホットオフセット性を向上させるためには、十分ではなかった。
そこで、更に低温定着性と耐ホットオフセット性を向上させるため、コア粒子に高分子量のスチレン−アクリル樹脂と低分子量のスチレン−アクリル樹脂を併用すると、コア粒子を構成する高分子量のスチレン−アクリル樹脂と低分子量のスチレン−アクリル樹脂が相溶してしまうため、シェル層のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のポリエステルセグメントの低温定着性の効果が損なわれてしまう。
そこで、コア粒子に含有する高分子量のスチレン−アクリル樹脂を高分子量のポリエステル樹脂とすると低分子量のスチレン−アクリル樹脂と高分子量のポリエステル樹脂とが相分離して相溶しないため、シェル層のポリエステルセグメントの低温定着性を維持したまま、相分離した高分子量のポリエステル樹脂の高い弾性の効果で、耐ホットオフセット性が向上する。また、この軟化点の低い低子量のスチレン−アクリル樹脂の低温定着性向上効果と弾性の高い高分子量のポリエステル樹脂の耐ホットオフセット性向上効果で定着画像のトナー表面が平滑になるため、定着画像の光沢性も向上させることができたものと考えられる。
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けてなるコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該コア粒子が、重量平均分子量が20,000〜40,000の範囲内のスチレン−アクリル樹脂と、重量平均分子量が100,000〜300,000の範囲内のポリエステル樹脂を含有し、該シェル層がスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項3までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様として、前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、7,000〜19,000の範囲内にあることが低温定着性と耐熱保管性が良好になる効果が得られることから好ましい。
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、重量平均分子量が20,000〜40,000の範囲内にあるスチレン−アクリル樹脂微粒子分散液と、重量平均分子量が100,000〜300,000の範囲内にあるポリエステル樹脂微粒子分散液とを凝集してコア粒子を形成する工程と、該コア粒子に重量平均分子量が、7,000〜19,000の範囲内にあるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂微粒子分散液を混合して凝集し、該コア粒子表面に該スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂からなるシェル層を形成する工程を含む製造方法であることが低温定着性、耐熱保管性、光沢性及び耐ホットオフセット性の良好なトナーが得られることから好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明を行う。なお、本願において、「〜」は、その前後の数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
〔トナー〕
本発明のトナーは、少なくともスチレン−アクリル樹脂を含む結着樹脂を含有するコア粒子の表面に、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含有してなるシェル層が形成されてなるコア・シェル構造のトナー粒子よりなるものであって、当該スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が、ポリエステルセグメントの末端にスチレン−アクリル重合体セグメントが結合されたものである。
〔シェル層〕
本発明のトナーを構成するシェル層は、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含むシェル樹脂よりなるものである。
シェル樹脂において、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂と共に含有させることのできる樹脂としては、例えばスチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
シェル樹脂におけるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の含有割合は、シェル樹脂100質量%中において70〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましい。
シェル樹脂におけるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の含有割合が70質量%未満である場合は、コア粒子とシェル層との十分な親和性が得られずに所望のシェル層を形成することができないために、十分な耐熱保管性、帯電性又は耐破砕性が十分に得られないおそれがある。
トナーを構成するシェル樹脂にスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を用いることにより、以下の効果が得られる。
すなわち、一般に、トナー粒子の設計においてポリエステル樹脂を結着樹脂として用いることの利点は、ポリエステル樹脂がスチレン−アクリル樹脂に比べて高いガラス転移点(Tg)を維持したまま低軟化点化の設計が容易に行えることにある。つまり、ポリエステル樹脂は低温定着性と耐熱保管性との両方を満足するために好適な樹脂である。そして、シェル層に用いられるポリエステル樹脂にスチレン−アクリル重合体セグメントを導入することによって、ポリエステル樹脂の高いガラス転移点と低い軟化点を維持したままコア粒子のスチレン−アクリル系樹脂との親和性が高められ、これにより、薄層でありながらより均一な膜厚でかつその表面が平滑なシェル層を形成することができる。
また、コア粒子に低分子量のスチレン−アクリル樹脂と高分子量のポリエステル樹脂を含有させることにより、低温定着性と耐ホットオフセット性の向上を図ることができる。従って、本発明のトナーによれば、低温定着性と耐熱保管性と耐ホットオフセット性の両方を満足する静電荷像現像用トナーを得ることができる。また、低温定着性と耐ホットオフセット性が良好になることで、定着画像のトナー表面の平滑性が向上し、光沢性の優れた高画質の画像を得ることができる。
そして、本発明においては、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂におけるスチレン−アクリル重合体セグメントの含有割合(以下、「スチレン−アクリル変性量」ともいう。)が5質量%以上30質量%以下とされており、特に、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
スチレン−アクリル変性量は、具体的には、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、ポリエステルセグメントとなる未変性のポリエステル樹脂と、スチレン−アクリル重合体セグメントとなる芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、これらを結合させるための両反応性モノマーを合計した全質量に対する、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの質量の割合をいう。
スチレン−アクリル変性量が上記の範囲にあることにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とコア粒子との親和性が適正に制御され、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することができる。一方、スチレン−アクリル変性量が過小である場合は、均一な膜厚のシェル層を形成することができず、部分的にコア粒子が露出してしまう結果、十分な耐熱保管性及び帯電性が得られない。また、スチレン−アクリル変性量が過大である場合は、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が軟化点の高いものとなるため、トナー粒子全体として十分な低温定着性が得られない。
また、本発明のトナーにおいては、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のポリエステルセグメントを形成するために多価カルボン酸モノマーとして脂肪族不飽和ジカルボン酸が用いられて、このポリエステルセグメントに当該脂肪族不飽和ジカルボン酸に由来の構造単位が含有されることが好ましい。
脂肪族不飽和ジカルボン酸とは、分子内にビニレン基を有する鎖状のジカルボン酸をいう。
脂肪族不飽和ジカルボン酸に由来の構造単位を有するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂によれば、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を確実に形成することができる。
このスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のポリエステルセグメントを構成する多価カルボン酸モノマーに由来の構造単位における、脂肪族不飽和ジカルボン酸に由来の構造単位の含有割合(以下、「特定の不飽和ジカルボン酸含有割合」ともいう。)が25モル%以上75モル%以下とされることが好ましく、特に30モル%以上60モル%以下であることがより好ましい。
特定の不飽和ジカルボン酸含有割合が上記の範囲にあることにより、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を一層確実に形成することができる。一方、特定の不飽和ジカルボン酸含有割合が過小である場合は、十分な耐熱保管性及び帯電性が得られないことがあり、また、特定の不飽和ジカルボン酸含有割合が過大である場合は、十分な帯電性が得られないことがある。
脂肪族不飽和ジカルボン酸に由来の構造単位としては、下記一般式(A)で表されるものに由来の構造単位であることが好ましい。
一般式(A):HOOC−(CR=CR−COOH
〔式中、R、Rは水素原子、メチル基又はエチル基であって、互いに同じであっても異なっていてもよい。nは1又は2の整数である。〕
このような脂肪族不飽和ジカルボン酸に由来の構造単位が含有されていることにより、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を一層確実に形成することができる。
これは、ビニレン基を有する脂肪族不飽和ジカルボン酸に由来の構造単位を有するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を用いることにより、例えば後述する乳化重合凝集法によってトナー粒子を製造する場合に、エマルション化したときの当該スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂による微粒子の乳化安定性が向上するために、コア粒子の表面への凝集が均一に進むためと推察される。また、ビニレン基を有する脂肪族不飽和ジカルボン酸に由来の構造単位を有するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、極性が高いものであるために、これを用いてトナー粒子を例えば後述する乳化重合凝集法によって製造する場合に、シェル層を形成すべきスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂による微粒子のポリエステルセグメント部分が、凝集粒子における表面側に配向し易くなったためとも推察される。
シェル層を構成するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、7,000〜19,000の範囲内にあることが、低温定着性の観点から好ましい。また、シェル層を構成するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、耐熱保管性、耐ホットオフセット性、定着分離性及び耐ブロッキング性などの耐熱性を確実に得る観点から、ガラス転移点が50〜70℃であることが好ましく、より好ましくは50〜65℃であり、かつ、軟化点が80〜110℃であることが好ましい。
(ガラス転移点の測定法)
シェル樹脂のガラス転移点は、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82に規定された方法(DSC法)によって測定された値である。
また、シェル樹脂の軟化点は、以下のように測定されるものである。
まず、20℃±1℃、50%±5%RHの環境下において、シェル樹脂1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、24℃±5℃、50%±20%RH環境下において、フローテスター「CFT−500D」(島津製作所製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、シェル樹脂の軟化点とされる。
トナーを構成する結着樹脂におけるシェル樹脂の含有割合は、結着樹脂全量の5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
結着樹脂におけるシェル樹脂の含有割合が過度に低い場合は、十分な耐熱保管性が得られないおそれがあり、また、結着樹脂におけるシェル樹脂の含有割合が過度に高い場合は、十分な低温定着性が得られないおそれがある。
〔スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の作製方法〕
以上のようなシェル樹脂に含有されるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の3つが挙げられる。
(A−1)ポリエステルセグメントをあらかじめ重合しておき、当該ポリエステルセグメントに両反応性モノマーを反応させ、さらに、スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーを反応させることにより、スチレン−アクリル重合セグメントを形成する方法。
(A−2)スチレン−アクリル重合体セグメントをあらかじめ重合しておき、当該スチレン−アクリル重合体セグメントに両反応性モノマーを反応させ、さらに、ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを反応させることにより、ポリエステルセグメントを形成する方法。
(B)ポリエステルセグメント及びスチレン−アクリル重合体セグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性モノマーを反応させることにより、両者を結合させる方法。
本明細書において、両反応性モノマーとは、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び/又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と、重合性不飽和基とを有するモノマーである。
(A−1)の方法について具体的に説明すると、
(1)未変性のポリエステル樹脂と、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、両反応性モノマーとを混合する混合工程(混合工程(1))、
(2)芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合させる重合工程を経ることにより、ポリエステルセグメントの末端にスチレン−アクリル重合体セグメントを形成させることができる(重合工程(2))。
前記混合工程(1)においては、加熱することが好ましい。加熱温度としては、未変性のポリエステル樹脂、芳香族系ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及び両反応性モノマーを混合させることができる範囲であればよく、良好な混合が得られると共に、重合制御が容易となることから、例えば80〜120℃とすることができ、より好ましくは85〜115℃、さらに好ましくは90〜110℃である。
未変性のポリエステル樹脂、芳香族系ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及び両反応性モノマーのうち、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの使用割合は、用いられる樹脂材料の全質量、すなわち前記の4者の全質量を100質量%としたときの芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの合計の割合が5質量%以上30質量%以下とされ、特に、5質量%以上20質量%以下とされることが好ましい。
用いられる樹脂材料の全質量に対する芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの合計の割合が上記の範囲にあることにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とコア粒子との親和性が適正に制御され、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することができる。一方、当該割合が過小である場合は、得られるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が、均一な膜厚のシェル層を形成することができるものとならず、部分的にコア粒子が露出してしまう結果、得られるトナーに十分な耐熱保管性及び帯電性が得られない。また、当該割合が過大である場合は、得られるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が軟化点の高いものとなるため、得られるトナーが、全体として十分な低温定着性が得られないものとなる。
また、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの相対的な割合は、下記式(ア)で表されるFOX式で算出されるガラス転移点(Tg)が35〜80℃、好ましくは40〜60℃の範囲となるような割合とされることが好ましい。
式(ア):1/Tg=Σ(Wx/Tgx)
〔式(ア)において、Wxはモノマーxの質量分率、Tgxはモノマーxの単独重合体のガラス転移点である。〕
なお、本明細書においては、両反応性モノマーはガラス転移点の計算に用いないものとする。
未変性のポリエステル樹脂、芳香族系ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及び両反応性モノマーのうち、両反応性モノマーの使用割合は、用いられる樹脂材料の全質量、すなわち前記の4者の全質量を100質量%としたときの両反応性モノマーの割合が0.1質量%以上5.0質量%以下とされ、特に、0.5質量%以上3.0質量%以下とされることが好ましい。
〔芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー〕
スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、ラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するものである。
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレンなど及びその誘導体が挙げられる。
これらの芳香族系ビニルモノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。
これらの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、優れた帯電性、画質特性などを得る観点から、スチレン又はその誘導体を多く用いることが好ましい。具体的には、スチレン又はその誘導体の使用量が、スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するために用いられる全モノマー(芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー)中の50質量%以上であることが好ましい。
〔両反応性モノマー〕
スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するための両反応性モノマーとしては、ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び/又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有するモノマーであればよく、具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などを用いることができる。
〔ポリエステル樹脂〕
本発明に係るスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を作製するために用いるポリエステル樹脂は、多価カルボン酸モノマー(誘導体)及び多価アルコールモノマー(誘導体)を原料として適宜の触媒の存在下で重縮合反応によって製造されたものである。
多価カルボン酸モノマー誘導体としては、多価カルボン酸モノマーのアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができ、多価アルコールモノマー誘導体としては、多価アルコールモノマーのエステル化合物及びヒドロキシカルボン酸を用いることができる。
多価カルボン酸モノマーとしては、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの2価以上のカルボン酸などを挙げることができる。
多価カルボン酸モノマーとしては、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸を用いることが好ましく、特に、上記一般式(A)で表される脂肪族不飽和ジカルボン酸を用いることが好ましい。
脂肪族不飽和ジカルボン酸を用いることにより、得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が、確実に、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することができるものとなる。特に、上記一般式(A)で表される脂肪族不飽和ジカルボン酸を用いることにより、得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が、一層確実に、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することができるものとなる。
用いる全多価カルボン酸モノマーにおける脂肪族不飽和ジカルボン酸の割合は、25モル%以上75モル%以下とされることが好ましく、特に30モル%以上60モル%以下であることがより好ましい。
用いる脂肪族不飽和ジカルボン酸の割合が上記の範囲にあることにより、得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が、より一層確実に、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することができるものとなる。一方、用いる脂肪族不飽和ジカルボン酸の割合が過小である場合は、得られるトナーに十分な耐熱保管性及び帯電性が得られないことがあり、また、用いる脂肪族不飽和ジカルボン酸の割合が過大である場合は、得られるトナーに十分な帯電性が得られないことがある。
多価アルコールモノマーとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
上記の多価カルボン酸モノマーと多価アルコールモノマーの比率は、多価アルコールモノマーのヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。
ポリエステル樹脂を合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を得るための未変性のポリエステル樹脂は、ガラス転移点が40℃以上70℃以下であることが好ましく、より好ましくは50℃以上65℃以下の範囲である。未変性のポリエステル樹脂のガラス転移点が40℃以上であることにより、当該ポリエステル樹脂について高温領域における凝集力が適切なものとなり、定着の際にホットオフセット現象を生じることが抑制される。また、未変性のポリエステル樹脂のガラス転移点が70℃以下であることにより、定着の際に十分な溶融を得ることができて十分な最低定着温度を確保することができる。
また、当該未変性のポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,500以上60,000以下であることが好ましく、より好ましくは3,000以上40,000以下の範囲である。
重量平均分子量が1,500以上であることにより、結着樹脂全体として好適な凝集力が得られ、定着の際にホットオフセット現象を生じることが抑制される。また、重量平均分子量が60,000以下であることにより、十分な溶融を得ることができて十分な最低定着温度を確保することができながら、定着の際にホットオフセット現象を生じることが抑制される。
当該未変性のポリエステル樹脂は、用いる多価カルボン酸モノマー及び/又は多価アルコールモノマーとして、カルボン酸価数又はアルコール価数を選択することなどによって、一部枝分かれ構造や架橋構造などが形成されていてもよい。
〔重合開始剤〕
前記重合工程(2)においては、ラジカル重合開始剤の存在下で重合を行うことが好ましく、ラジカル重合開始剤の添加の時期は特に制限されないが、ラジカル重合の制御が容易であるという点で、混合工程の後で添加することが好ましい。
重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤が好適に用いられる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化−tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸−tert−ブチル、過酢酸−tert−ブチル、過安息香酸−tert−ブチル、過フェニル酢酸−tert−ブチル、過メトキシ酢酸−tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸−tert−ブチルなどの過酸化物類;2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミノジプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2′−アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。
〔連鎖移動剤〕
また、当該重合工程(2)においては、スチレン−アクリル重合体セグメントの分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
連鎖移動剤は、上記の混合工程において樹脂材料と共に混合させておくことが好ましい。
連鎖移動剤の添加量は、所望するスチレン−アクリル重合体セグメントの分子量や分子量分布によって異なるが、具体的には芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、並びに両反応性モノマーの合計量に対して、0.1〜5質量%の範囲で添加することが好ましい。
重合工程(2)における重合温度は、特に限定されず、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー間の重合及びポリエステル樹脂への結合が進行する範囲において適宜選択することができる。重合温度としては、例えば、85℃以上125℃以下であることが好ましく、90℃以上120℃以下であることがより好ましく、95℃以上115℃以下であることがさらに好ましい。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の作製においては、重合工程後の残留モノマー量など乳化物からの揮発性有機物質が、1,000ppm以下に抑制されることが実用上好ましく、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下である。
〔コア粒子〕
本発明のトナーを構成するコア粒子は、少なくともスチレン−アクリル樹脂とポリエステル樹脂を含む結着樹脂を含有するものであって、着色剤を含有したものであっても、着色剤を含有しないものであってもよい。
コア粒子を構成する結着樹脂は、スチレン−アクリル樹脂とポリエステル樹脂の他に、従来から電子写真用トナーの結着樹脂として用いられる樹脂を含んでもよく、このようなその他の樹脂としては、公知の種々の樹脂を用いることができる。
(スチレン−アクリル樹脂)
コア粒子を構成するスチレン−アクリル樹脂としては、低分子量のスチレン−アクリル樹脂が好ましく、重量平均分子量が、20,000〜40,000の範囲内のものが好ましい。重量平均分子量が、上記範囲内であると優れた低温定着性が得られるので好ましい。
スチレン−アクリル樹脂を形成するために用いられる重合性モノマーとしては、上記に挙げた芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを挙げることができる。上記の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、それぞれ1種単独で、又はそれぞれ2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合性モノマーとして、上記の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共に、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、酢酸ビニルなどや、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン塩化ビニル、N−ビニルピロリドン、ブタジエンなどを用いることもできる。
また、重合性モノマーとして、上記の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共に、多官能ビニル系モノマーを用いることもできる。多官能ビニル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキしレングリコールなどのジアクリレート;ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどの三級以上のアルコールのジメタクリレート及びトリメタクリレートなどが挙げられる。
多官能ビニル系モノマーの結着樹脂に係る重合性モノマー全体に対する共重合比は、通常0.001〜5質量%とされ、好ましくは0.003〜2質量%、より好ましくは0.01〜1質量%とされる。
多官能ビニル系モノマーの使用により、テトラヒドロフランに不溶のゲル成分が生成されるが、ゲル成分は、結着樹脂全体の40質量%以下とされることが好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
(高分子量ポリエステル樹脂)
コア粒子を構成する高分子量のポリエステル樹脂としては、重量平均分子量が、100,000〜300,000の範囲内が好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると耐ホットオフセットが、良好になるので好ましい。
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸モノマー(誘導体)及び多価アルコールモノマー(誘導体)を原料として適宜の触媒の存在下で重縮合反応によって製造されたものである。
多価カルボン酸モノマー誘導体としては、多価カルボン酸モノマーのアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができ、多価アルコールモノマー誘導体としては、多価アルコールモノマーのエステル化合物及びヒドロキシカルボン酸を用いることができる。
多価カルボン酸モノマーとしては、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの2価以上のカルボン酸などを挙げることができる。
多価アルコールモノマーとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
上記の多価カルボン酸モノマーと多価アルコールモノマーの比率は、多価アルコールモノマーのヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。
ポリエステル樹脂を合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。
〔着色剤〕
コア粒子が着色剤を含有したものとして構成される場合の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができる。
カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどを用いることができる。
磁性体としては鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物などを用いることができる。
また、顔料としてはC.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同7、同15、同16、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同123、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同208、同209、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー3、同9、同14、同17、同35、同36、同65、同74、同83、同93、同94、同98、同110、同111、同138、同139、同153、同155、同180、同181、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4、同60、中心金属が亜鉛、チタン、マグネシウムなどであるフタロシアニン顔料などを用いることができ、これらの混合物も用いることができる。染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同3、同14、同17、同18、同22、同23、同49、同51、同52、同58、同63、同87、同111、同122、同127、同128、同131、同145、同146、同149、同150、同151、同152、同153、同154、同155、同156、同157、同158、同176、同179、ピラゾロトリアゾールアゾ染料、ピラゾロトリアゾールアゾメチン染料、ピラゾロンアゾ染料、ピラゾロンアゾメチン染料、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などを用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
着色剤の数平均一次粒子径は種類により異なるが、おおむね10〜200nm程度であることが好ましい。
コア粒子が着色剤を含有したものとして構成される場合のトナーにおける着色剤の含有割合は、結着樹脂に対して1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜20質量%である。
以上の結着樹脂は、ガラス転移点が30〜60℃であることが好ましく、より好ましくは30〜50℃である。また、軟化点が80〜110℃であることが好ましく、より好ましくは90〜100℃である。
結着樹脂のガラス転移点及び軟化点は、測定試料として結着樹脂を用いて上述と同様に測定されるものである。
(重量平均分子量の測定方法)
GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフ)による樹脂の分子量の測定方法としては、濃度1mg/mlになるように測定試料をテトラヒドロフランに溶解させる。溶解条件としては、室温にて超音波分散機を用いて5分間行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理した後、GPCへ10μl試料溶解液を注入する。GPCの測定条件の具体例を下記に示す。
装置:HLC−8220(東ソー製)
カラム:TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連(東ソー製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.2ml/min
検出器:屈折率検出器(RI検出器)
試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
〔トナーの製造方法〕
本発明のトナーは、公知の種々の方法によって製造することができるが、コア粒子の表面に均一にシェル層を形成させることができることから、水系媒体に分散された結着樹脂微粒子と着色剤微粒子などを凝集、融着させてコア粒子を形成し、当該コア粒子の表面にシェル樹脂微粒子を凝集、融着させることによりトナー粒子が得られる乳化重合凝集法によって製造することが好ましい。
本発明のトナーを乳化重合凝集法によって製造する場合の、着色剤を含有するトナーの製造例を具体的に示すと、
(1−1)水系媒体中において、シェル樹脂によるシェル樹脂微粒子を形成して当該シェル樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製するシェル樹脂微粒子分散液調製工程、
(1−2)水系媒体中において、結着樹脂による結着樹脂微粒子を重合により形成して当該結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製する結着樹脂重合工程、
(1−3)水系媒体中に、着色剤による着色剤微粒子が分散されてなる分散液を調製する着色剤微粒子分散液調製工程、
(2)水系媒体中で結着樹脂微粒子及び着色剤微粒子を凝集させてコア粒子を形成するコア粒子形成工程、
(3)コア粒子が分散されてなる水系媒体中に、シェル樹脂微粒子を添加してコア粒子の表面にシェル樹脂微粒子を凝集、融着させてコア−シェル構造を有するトナー母体粒子を形成するシェル化工程、
(4)熱エネルギーにより熟成させて、トナー母体粒子の形状を調整する熟成工程、
(5)トナー母体粒子の分散系(水系媒体)からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤などを除去する洗浄工程
(6)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程、
から構成され、必要に応じて、
(7)乾燥処理されたトナー粒子母体に外添剤を添加する外添剤添加工程
を加えることができる。
(1−1)シェル樹脂微粒子分散液調製工程
このシェル樹脂微粒子分散液調整工程において、シェル樹脂微粒子の分散液は、例えば、超音波分散法、ビーズミル分散法などにより、界面活性剤を添加した水系直接分散法により得ることができる。
このシェル樹脂微粒子分散液調製工程において得られるシェル樹脂微粒子の平均粒子径は、体積基準のメディアン径で例えば50〜500nmの範囲にあることが好ましい。
なお、体積基準のメディアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
本発明において、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
〔界面活性剤〕
水系媒体中には、分散させた微粒子の凝集を防ぐために、分散安定剤が添加されていることが好ましい。
分散安定剤としては、公知の種々のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などの界面活性剤を使用することができる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデイシルトリメチルアンオニウムブロマイドなどが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げることができる。
以上の界面活性剤は、所望に応じて、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(1−2)結着樹脂重合工程
この結着樹脂重合工程においては、結着樹脂に係る樹脂微粒子が形成されて、これがコア粒子形成工程に供される。
具体的には、結着樹脂に係る樹脂微粒子は、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、結着樹脂を形成するための重合性モノマーに必要に応じてワックスや荷電制御剤などのトナー構成成分を溶解あるいは分散させたモノマー溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して、液滴中において重合反応を進行させる。なお、前記液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。このような結着樹脂重合工程においては、機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
このコア粒子の結着樹脂重合工程において形成させる結着樹脂微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成のものとすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した第1樹脂微粒子の分散液に、重合開始剤と重合性モノマーとを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する方法を採用することができる。本発明においては、第1段重合を高分子量ポリエステルとしているので、通常の重縮合反応にてポリエステル樹脂を合成し、これを微粒子化して、水系媒体中で微粒子分散液として、これにスチレン−アクリル系モノマーを加えて、第2段重合、必要に応じて、第3段重合を行う。ポリエステル樹脂を微粒子分散液とする方法としては、機械的方法により粉砕し、界面活性剤を用いて水系媒体中で分散する方法、及び転相乳化法が挙げられるが、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
結着樹脂重合工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述のシェル樹脂微粒子分散液調製工程において使用することのできる界面活性剤として挙げたものと同じものを使用することができる。
本発明のトナー粒子中には、結着樹脂及び着色剤の他に、必要に応じてワックスや荷電制御剤、磁性粉などの内添剤が含有されていてもよく、このような内添剤は、例えば、この結着樹脂重合工程において、あらかじめ、結着樹脂を形成するためのモノマー溶液に溶解又は分散させておくことによってトナー粒子中に導入することができる。
また、このような内添剤は、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、コア粒子形成工程において樹脂微粒子及び着色剤微粒子と共に当該内添剤微粒子を凝集させることにより、トナー粒子中に導入することもできるが、結着樹脂重合工程においてあらかじめ導入しておく方法を採用することが好ましい。
〔ワックス〕
ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニルなどのエステルワックス類などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ワックスとしては、トナーの低温定着性及び離型性を確実に得る観点から、その融点が50〜95℃であるものを用いることが好ましい。
ワックスの含有割合は、結着樹脂全量に対して2〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜18質量%、さらに好ましくは4〜15質量%である。
〔荷電制御剤〕
また、本発明に係るトナー粒子中に、荷電制御剤を含有させる場合は、荷電制御剤としては、公知の種々のものを使用することができる。
荷電制御剤としては、水系媒体中に分散することができる公知の種々の化合物を用いることができ、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体などが挙げられる。
トナー粒子中に荷電制御剤を含有させる方法としては、上記に示したオフセット防止剤を含有させる方法と同様の方法を挙げることができる。
荷電制御剤の含有割合は、結着樹脂全量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%とされる。
〔重合開始剤〕
結着樹脂重合工程において使用される重合開始剤としては、上記と同様のものを使用することができる。
〔連鎖移動剤〕
結着樹脂重合工程においては、結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては上記と同様のものを使用することができる。
この結着樹脂重合工程において得られる結着樹脂微粒子の平均粒子径は、体積基準のメディアン径で例えば50〜500nmの範囲にあることが好ましい。
なお、体積基準のメディアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
(1−3)着色剤微粒子分散液調製工程
着色剤微粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
使用される界面活性剤としては、例えば上述の界面活性剤と同様のものを挙げることができる。
この着色剤微粒子分散液調製工程において調製される着色剤微粒子分散液中の着色剤微粒子の分散径は、体積基準のメディアン径で10〜300nmとされることが好ましい。
この着色剤微粒子分散液中の着色剤微粒子の体積基準のメディアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800(大塚電子社製)」で測定されるものである。
この着色剤微粒子分散液調製工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述のシェル樹脂微粒子分散液調製工程において使用することのできる界面活性剤として挙げたものと同じものを使用することができる。
(2)コア粒子形成工程
このコア粒子形成工程においては、必要に応じて、結着樹脂微粒子及び着色剤微粒子と共に、オフセット防止剤や荷電制御剤などのその他のトナー構成成分の微粒子を凝集させることもできる。
結着樹脂微粒子及び着色剤微粒子を凝集、融着する具体的な方法としては、水系媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となるよう添加し、次いで、結着樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ、これら混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱することによって、結着樹脂微粒子及び着色剤微粒子などの微粒子の塩析を進行させると同時に融着を並行して進め、所望の粒子径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するために加熱を継続して行う方法である。
この方法においては、凝集剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くして速やかに結着樹脂に係る樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ、これら混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱することが好ましい。この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によっては粒子の凝集状態が変動して粒径分布が不安定になったり、融着させた粒子の表面性が変動したりする問題が発生することが懸念されるためである。この昇温までの時間としては通常30分間以内であることが好ましく、10分間以内であることがより好ましい。また、昇温速度としては1℃/分以上であることが好ましい。昇温速度の上限は特に規定されるものではないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から、15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、反応系がガラス転移点以上の温度に到達した後、当該反応系の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、コア粒子の成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナー粒子の耐久性を向上することができる。
〔凝集剤〕
このコア粒子形成工程において使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
コア粒子形成工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述のシェル樹脂微粒子分散液調製工程において使用することのできる界面活性剤として挙げたものと同じものを使用することができる。
このコア粒子形成工程において得られるコア粒子の粒径は、例えば体積基準のメディアン径(D50)が2〜9μmであることが好ましく、より好ましくは4〜7μmである。
コア粒子の体積基準のメディアン径は、「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)によって測定されるものである。
(3)シェル化工程
このシェル化工程においては、コア粒子の分散液中にシェル樹脂微粒子を添加してコア粒子の表面にシェル樹脂微粒子を凝集、融着させ、コア粒子の表面にシェル層を被覆させてトナー母体粒子を形成する。
具体的には、コア粒子の分散液はコア粒子形成工程における温度を維持した状態でシェル樹脂微粒子の分散液を添加し、加熱撹拌を継続しながら数時間かけてゆっくりとシェル樹脂微粒子をコア粒子の表面に凝集、融着させることによってコア粒子の表面に厚さ100〜300nmのシェル層を被覆させてトナー母体粒子を形成する。加熱撹拌時間は、1〜7時間が好ましく、3〜5時間が特に好ましい。
(4)熟成工程
上記のコア粒子形成工程及びシェル化工程における加熱温度の制御によりある程度トナーにおけるトナー粒子の形状の均一化を図ることができるが、さらなる形状の均一化を図るために、熟成工程を経る。
この熟成工程は、加熱温度と時間の制御を行うことにより、粒径が一定で分布が狭く形成したトナー母体粒子表面が平滑だが均一な形状を有するものとなるよう制御する。具体的には、コア粒子形成工程及びシェル化工程において加熱温度を低めにして樹脂微粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、この熟成工程においても加熱温度を低めに、かつ、時間を長くしてトナー母体粒子を所望の平均円形度となる、すなわち表面が均一な形状のものとなるよう制御する。
(5)洗浄工程〜(6)乾燥工程
洗浄工程及び乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。
(7)外添剤添加工程
この外添剤添加工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に必要に応じて外添剤を添加、混合することにより、トナー粒子を調製する工程である。
乾燥工程までの工程を経て作製されたトナー母体粒子は、そのままトナー粒子として使用することが可能であるが、トナーとしての帯電性能や流動性、あるいはクリーニング性を向上させる観点から、その表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑材を外添剤として添加することが好ましい。
外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
無機微粒子としては、例えばシリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいはチタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。
これら無機微粒子は、耐熱保管性及び環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであることが好ましい。
これらの外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とされる。
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置が挙げられる。
〔トナー〕
本発明の「トナー」は、コア粒子の表面にシェル層が形成されてなる「トナー母体粒子」よりなる。「トナー母体粒子」は、そのままでも「トナー」として使用することができるが、通常この「トナー母体粒子」に、外添剤を添加したものを「トナー粒子」という。「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
〔トナーの平均粒径〕
本発明のトナーの平均粒径は、例えば体積基準のメディアン径(D50)で3〜10μmであることが好ましい。この粒径は、例えば後述する乳化重合凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
体積基準のメディアン径が上記の範囲にあることにより、例えば1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)レベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することができる。
トナー粒子の体積基準のメディアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を調製し、このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにして頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメディアン径とされる。
〔トナー粒子の平均円形度〕
本発明のトナーは、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、転写効率の向上の観点から、下記式(T)で示される円形度の算術平均値が0.850〜0.990であることが好ましい。
式(T):円形度=粒子投影像と同等の投影面積を有する真円の周囲長/粒子投影像の周囲長
ここで、トナー粒子の平均円形度は「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定される値である。
具体的には、トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、「FPIA−2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。
〔現像剤〕
本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。
〔画像形成装置〕
本発明のトナーは、一般的な電子写真方式の画像形成方法に用いることができ、このような画像形成方法が行われる画像形成装置としては、例えば静電潜像担持体である感光体と、トナーと同極性のコロナ放電によって当該感光体の表面に一様な電位を与える帯電手段と、一様に帯電された感光体の表面上に画像データに基づいて像露光を行うことにより静電潜像を形成させる露光手段と、トナーを感光体の表面に搬送して前記静電潜像を顕像化してトナー像を形成する現像手段と、当該トナー像を必要に応じて中間転写体を介して転写材に転写する転写手段と、転写材上のトナー像を定着させる定着手段を有するものを用いることができる。このような構成を有する画像形成装置の中でも、複数の感光体に係る画像形成ユニットが中間転写体に沿って設けられた構成のカラー画像形成装置、特に、感光体が中間転写体上に直列配置させたタンデム型カラー画像形成装置に好適に用いることができる。
また、本発明のトナーは、定着温度(定着部材の表面温度)が100〜200℃とされる比較的低温のものにおいて好適に用いることができる。
さらに、本発明のトナーは、静電潜像担持体の線速が100〜500mm/secとされる高速機に好適に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
1.トナー〔1〕の作製
1−1.コア用樹脂微粒子分散液(A1)の作製
(1)第1段重合(ポリエステル樹脂(a1)の合成)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(BPA)316質量部、テレフタル酸80質量部、フマル酸34質量部、及び重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、窒素気流下、200℃昇温した後、4kPaで2時間反応させ、「ポリエステル樹脂(a1)」を得た。得られた「ポリエステル樹脂(a1)」の重量平均分子量(Mw)は202,000であった。
(2)ポリエステル樹脂微粒子分散液(a1)の作製
得られた「ポリエステル樹脂(a1)」100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメディアン径(D50)が160nmの「ポリエステル樹脂微粒子分散液(a1)」を得た。
(3)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、
スチレン(St) 94質量部
n−ブチルアクリレート(BA) 27質量部
メタクリル酸(MAA) 6質量部
n−オクチルメルカプタン(NOM) 1.7質量部
からなる溶液に、離型剤としてパラフィンワックス(融点:73℃)51質量部を添加し、85℃に加温して溶解させてモノマー溶液〔1〕を調製した。
一方、アニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2質量部をイオン交換水1100質量部に溶解させた界面活性剤溶液を90℃に加温し、この界面活性剤溶液に上記の「ポリエステル樹脂微粒子の分散液(a1)」を、ポリエステル樹脂微粒子(a1)の固形分換算で28質量部添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記モノマー溶液〔1〕を加えて4時間混合・分散させ、分散粒子径350nmの乳化粒子を含有する分散液を調製し、この分散液に重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、この系を90℃において2時間にわたって加熱・撹拌することによって重合を行うことにより、「樹脂微粒子(a11)」の分散液を調製した。
(4)第3段重合(コア用樹脂微粒子分散液(A1)の作製)
上記の「樹脂微粒子(a11)」の分散液に、重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、80℃の温度条件下において、
スチレン(St) 230質量部
n−ブチルアクリレート(BA) 78質量部
メタクリル酸(MAA) 16質量部
n−オクチルメルカプタン(NOM) 4.2質量部
からなるモノマー溶液〔2〕を1時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間にわたって加熱・撹拌することによって重合を行った。その後、28℃まで冷却し、アニオン性界面活性剤溶液中にコア用樹脂微粒子〔A〕が分散された「コア用樹脂微粒子分散液(A1)」(ポリエステル樹脂微粒子を内包したコア粒子)を作製した。このコア用樹脂微粒子分散液の樹脂を取り出し、GPCで重量平均分子量を測定したところ、スチレン−アクリル樹脂成分の重量平均分子量(Mw)は、31,000であった。
1−2.シェル用樹脂微粒子分散液(B1)の作製
(1)シェル用樹脂(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(B1))の合成
(1)−1.ポリエステルセグメントの合成
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した容量10リットルの四つ口フラスコに、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 117質量部
フマル酸 82質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 2質量部
を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させた。
(1)−2.スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(B1)の合成
上記ポリエステル反応液を160℃まで冷却した後、
アクリル酸 10質量部
スチレン 30質量部
ブチルアクリレート 7質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、アクリル酸、スチレン、ブチルアクリレートを除去することにより、「スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(B1)」を得た。重量平均分子量(Mw)は、12,100であった。
(2)シェル用樹脂微粒子分散液(B1)の調製
得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(B1)100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメディアン径(D50)が250nmであるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂微粒子(B1)が分散された「シェル用樹脂微粒子分散液(B1)」を作製した。
1−3.着色剤微粒子分散液(C)の調製工程
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、着色剤としてカーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子(C)が分散されてなる「着色剤微粒子分散液(C)」を調製した。この分散液における着色剤微粒子(C)の粒子径を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)を用いて測定したところ、117nmであった。
1−4.凝集、融着−熟成−洗浄−乾燥−外添剤添加工程
(1).トナー〔1〕の作製
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、「コア用樹脂微粒子分散液(A1)」を固形分換算で288質量部、イオン交換水2000質量部を投入し、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10(25℃)に調整した。
その後、上記「着色剤微粒子分散液(C)」を固形分換算で40質量部投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にてコア粒子の粒径を測定し、体積基準のメディアン径(D50)が6.0μmになった時点で、シェル用のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂である「シェル用樹脂微粒子分散液(B1)」を固形分換算で72質量部を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で30℃に冷却し、「トナー粒子〔1〕の分散液」を得た。
この「トナー粒子〔1〕の分散液」を遠心分離機で固液分離し、トナー粒子のウェットケーキを形成し、これを遠心分離機を用いて濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥し、トナー粒子〔1〕を得た。
乾燥させたトナー粒子〔1〕に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合することにより、本発明のトナー〔1〕を作製した。
2.トナー〔2〕〜〔13〕の作製
2−1.コア用樹脂微粒子分散液(A2)〜(A10)の作製
(1)第1段重合(ポリエステル樹脂(a2)〜(a5)の合成)
ポリエステル樹脂a1合成において、重合温度、圧力及び反応時間を表1のように変えた他は同様にして、ポリエステル樹脂(a2)〜(a5)を合成した。
Figure 2013109246
(2)ポリエステル樹脂微粒子分散液(a2)〜(a5)の作製
ポリエステル樹脂微粒子分散液(a1)と同様にして、得られた「ポリエステル樹脂(a2)〜(a5)」100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメディアン径(D50)が160nmの「ポリエステル樹脂微粒子分散液(a2)〜(a5)」を得た。
(3)コア用樹脂微粒子分散液(A2)〜(A10)の作製(第2、第3段重合)
コア用樹脂微粒子粒子分散液(A1)の作製において、ポリエステル樹脂(a2)〜(a5)を用い、スチレン−アクリル樹脂のモノマー組成と重合条件を表2に示したように変更して、「コア用樹脂微粒子分散液(A2)〜(A10)」(ポリエステル樹脂微粒子を内包スチレン−アクリル樹脂からなるコア粒子)を作製した。
Figure 2013109246
2−2.シェル用樹脂微粒子分散液(B2)〜(B5))の作製
(1)シェル用樹脂「スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(B2)〜(B5)」の合成
シェル用樹脂(B1)の合成において、ポリエステル樹脂のモノマー組成と重合条件を表3のように変更した他は同様にして、シェル用樹脂(B2)〜(B5)(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(B2)〜(B5))を作製した。
なお、ポリエステル樹脂の重合において、分子量をモニターして反応時間を調整した。
Figure 2013109246
(2)シェル用樹脂微粒子分散液(B2)〜(B5)の調製
シェル用樹脂微粒子分散液(B1)と同様にして、シェル用樹脂微粒子分散液(B2)〜(B5)を調製した。
2−3.凝集、融着−熟成−洗浄−乾燥−外添剤添加工程
(1)トナー〔2〕〜〔13〕の作製
トナー〔1〕の作製において、コア用樹脂とシェル用樹脂を表4のように変更した以外は同様にして、トナー〔2〕〜〔13〕を作製した。なお、ここで、トナー〔2〕〜〔7〕は本発明のトナーであり、トナー〔8〕〜〔13〕は比較用のトナーである。
Figure 2013109246
3.トナー〔14〕の作製
トナー〔11〕の作製において、コアに高分子量ポリエステル樹脂を用いなかった他は同様にして、トナー〔14〕(比較用トナー)を作製した。すなわち、コアのスチレン−アクリル樹脂として重量平均分子量31,000のスチレン−アクリル樹脂を用い、シェル層のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂B1を用いてトナー〔14〕を作製した。
〔現像剤の製造例〕
(1)キャリアの作製
Mn−Mgフェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂微粒子5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成させることにより、体積基準のメディアン径が50μmであるキャリアを得た。
キャリアの体積基準のメディアン径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定した。
(2)現像剤の製造(トナーとキャリアの混合)
トナー〔1〕〜〔14〕の各々に対して、上記のキャリアをトナー濃度が6%となるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器株式会社)によって回転速度45rpmで30分間混合することにより、現像剤〔1〕〜〔14〕を製造した。
以上の現像剤〔1〕〜〔14〕を用いて、下記評価を実施した。
(1)低温定着性評価
市販のカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)において、定着装置を、定着上ベルトの表面温度を140〜170℃の範囲で、定着下ローラの表面温度を120〜150℃の範囲で変更することができるように改造したものを用い、評価紙「NPi上質紙128g/m」(日本製紙製)上に、定着速度300mm/secで、トナー付着量11.3g/mのベタ画像を定着させる定着実験を、コールドオフセットによる定着不良が観察されるまで、設定される定着温度(定着上ベルトの表面温度)を170℃、165℃・・・と5℃刻みで減少させるよう変更しながら繰り返し行った。なお、定着下ローラは、常に定着上ベルトの表面温度より20℃低い表面温度に設定した。そして、コールドオフセットによる定着不良が観察されない定着実験の最低の定着温度を定着下限温度として評価した。なお、この定着下限温度が低ければ低い程、低温定着性に優れることを意味し、155℃以下であれば実用上問題なく、合格と判断される。
(2)耐熱保管性評価
トナー0.5gを内径21mmの10mlガラス瓶に取り、蓋を閉めて、タップデンサー「KYT−2000」(セイシン企業製)を用いて室温で600回振とうした後、蓋を取った状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物が解砕しないよう注意しながらのせて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調節し、10秒間振動を加えた後、篩上に残存した残存トナー量を測定し、下記式(1)により残存トナー量の比率であるトナー凝集率を算出した。なお、20%以下であれば実用上問題なく、合格と判断される。結果を表2に示す。
式(1):トナー凝集率(%)={残存トナー量(g)/0.5(g)}×100
(3)光沢性評価
画像形成装置として、市販の複合機「bizhub PRO C6501」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用い、この複合機の黒の現像器に現像剤を各々投入し、熱ローラ定着方式による定着装置の加熱部材の表面温度を180℃として、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、「POD128gグロスコート(128g/m)」(王子製紙社製)上に画像を形成した。転写紙上のトナー量1.2mg/cmに設定したベタ画像の光沢度を測定した。光沢度の値を下記ランクに従って評価した。光沢度が60%以上を合格とする。
なお、光沢度は、光沢度計「Gloss Meter」(村上色彩工学研究所製)を用い、屈折率1.567のガラス表面を基準として入射角75°で測定した。
<評価基準>
良好○:60%以上
不良×:10%以上60%未満
(4)耐ホットオフセット性評価
画像形成装置として、市販の複合機「bizhub PRO C6501」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用い、この複合機の黒の現像器に現像剤を各々投入し、熱ローラ定着方式による定着装置の加熱ローラの表面温度を140〜220℃の範囲において5℃刻みで変更し、各温度について、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、下記非ホットオフセット領域について定着試験を行った。
(非ホットオフセット領域評価)
まず、A4コート紙「PODグロスコート(84.9g/m)」(王子製紙社製)上に、搬送方向に対して垂直方向に5cm幅のフルカラーベタ帯状画像を有するA4画像を横送り搬送で定着して、コールドオフセット現象の発生の有無から定着温度の下限温度Aを確認した。次いで、コート紙「PODグロスコート(84.9g/m)」(王子製紙社製)上に、搬送方向に対して垂直方向に5mm幅のフルカラーベタ帯状画像及び20mm幅のハーフトーン画像を有するA4画像を横送り搬送で定着して、ホットオフセット現象に起因する画像表面の荒れや加熱ローラ汚染が生じたときの温度Bを確認し、温度Bと下限温度Aとの差を定着温度領域すなわち非ホットオフセット領域として下記ランクに従って評価した。非ホットオフセット領域が60℃以上であれば、合格とする。
<評価判定基準>
良好○:非オフセット領域が60℃以上
不良×:非オフセット領域が60℃未満
以上の評価結果を表5に示した。
Figure 2013109246
表5から明らかなように、本発明の静電荷像現像用トナーは、比較用のトナーに比べて、低温定着性、光沢性、耐熱保管性及び耐ホットオフセット性において優れた特性を有している。

Claims (3)

  1. 少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けてなるコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該コア粒子が、重量平均分子量が20,000〜40,000の範囲内のスチレン−アクリル樹脂と、重量平均分子量が100,000〜300,000の範囲内のポリエステル樹脂を含有し、該シェル層がスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  2. 前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、7,000〜19,000の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 重量平均分子量が、20,000〜40,000の範囲内にあるスチレン−アクリル樹脂微粒子分散液と重量平均分子量が、100,000〜300,000の範囲内にあるポリエステル樹脂微粒子分散液とを凝集してコア粒子を形成する工程と、該コア粒子に重量平均分子量が、7,000〜19,000の範囲内にあるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂微粒子分散液を混合して凝集し、該コア粒子表面に該スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂からなるシェル層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法。
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