各実施形態を説明する前に本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理を説明する。
(磁気冷暖房装置の動作原理)
<固定部の構成>
図1は複数の熱輸送器を配置した固定部の構成を示す図である。円形状の固定部は分離部130A−130Dで区分した4つの熱輸送器1−4を有する。各熱輸送器は低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに熱を伝導させる。各熱輸送器は磁性体と熱伝導部を交互に配置して形成する。磁性体には、発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として正の磁性体を用いる。熱伝導部には、磁気が印加されると熱伝導率が相対的に大きくなり、磁気が除去されると熱伝導率が相対的に小さくなる同一材料を用いる。
たとえば、熱輸送器1は、磁性体100A−100Eと熱伝導部300A−300Gとを交互に配置している。具体的には、低温側熱交換部400Aから熱伝導部300A−磁性体100A−熱伝導部300B−磁性体100B−熱伝導部300C−磁性体100C−熱伝導部300D−磁性体100D−熱伝導部300E−磁性体100E−熱伝導部300F−磁性体100F−熱伝導部300Gの順に配置して高温側熱交換部400Bに至る。低温側熱交換部400Aと熱伝導部300A、熱伝導部300Aから熱伝導部300Gまでの各熱伝導部と磁性体、熱伝導部300Gと高温側熱交換部400Bは相互に隙間なく接続してある。熱輸送器2−4の構成も熱輸送器1の構成と同一である。
<回転部の構成>
図2及び図3に示す回転部は、図1に示した固定部を上下方向の両側から一定の隙間を設けて挟む。回転部の構成は下記のとおりである。
図2は、複数の磁気印加除去部を配置した上側の回転部の構成を示す図である。円形状の上側の回転部は分離部200AU−200DUで区分した4つの磁気印加除去部1U−4Uを有する。図2に示す上側の回転部は、図の表側を図1に示す固定部の表側に対向して位置させ、上側の回転部の中心を固定部の中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図2は、固定部に対向して位置させた上側の回転部を固定部に向かって上から透視した状態を表している。
磁気印加除去部1Uは、熱輸送器1に磁気印加除去部1Uが対峙する時刻T1の時に、回転部の外周から内周に向けて、磁性体100Aに対向する永久磁石210AM、熱伝導部300Bに対向する永久磁石210BH、磁性体100Cに対向する永久磁石210CM、熱伝導部300Dに対向する210DH、磁性体100Eに対向する永久磁石210EM、熱伝導部300Fに対向する永久磁石210FHを有する。
磁気印加除去部2Uは、熱輸送器1に磁気印加除去部2Uが対峙する時刻T2の時に、回転部の外周から内周に向けて、熱伝導部300Aに対向する永久磁石220AH、磁性体100Bに対向する永久磁石220BM、熱伝導部300Cに対向する永久磁石220CH、磁性体100Dに対向する永久磁石220DM、熱伝導部300Eに対向する220EH、磁性体100Fに対向する永久磁石220FM、熱伝導部300Gに対向する永久磁石220GHを有する。
磁気印加除去部3Uと磁気印加除去部4Uは上側の回転部の中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Uと磁気印加除去部2Uと同一である。磁気印加除去部3Uは時刻T3の時に熱輸送器1と対峙し、磁気印加除去部4Uは時刻T4の時に熱輸送器1と対峙する。
図3は、複数の磁気印加除去部を配置した下側の回転部の構成を示す図である。円形状の下側の回転部は分離部200AD−200DDで区分した4つの磁気印加除去部1D−4Dを有する。図3に示す下側の回転部は、図の表側を図1に示す固定部の裏側に対向して位置させ、下側の回転部の中心を固定部の中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図3は、固定部に対向して位置させた下側の回転部を固定部側から見た状態を表している。
磁気印加除去部1Dは、熱輸送器1に磁気印加除去部1Dが対峙する時刻T1の時に、回転部の外周から内周に向けて、磁性体100Aに対向する永久磁石260AM、熱伝導部300Bに対向する永久磁石260BH、磁性体100Cに対向する永久磁石260CM、熱伝導部300Dに対向する260DH、磁性体100Eに対向する永久磁石260EM、熱伝導部300Fに対向する永久磁石260FHを有する。
磁気印加除去部2Dは、熱輸送器1に磁気印加除去部2Dが対峙する時刻T2の時に、回転部の外周から内周に向けて、熱伝導部300Aに対向する永久磁石270AH、磁性体100Bに対向する永久磁石270BM、熱伝導部300Cに対向する永久磁石270CH、磁性体100Dに対向する永久磁石270DM、熱伝導部300Eに対向する270EH、磁性体100Fに対向する永久磁石270FM、熱伝導部300Gに対向する永久磁石270GHを有する。
磁気印加除去部3Dと磁気印加除去部4Dは下側の回転部の中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Dと磁気印加除去部2Dと同一である。磁気印加除去部3Dは時刻T3の時に熱輸送器1と対峙し、磁気印加除去部4Dは時刻T4の時に熱輸送器1と対峙する。
上側の回転部の各磁気印加除去部1U−4Uと下側の回転部の各磁気印加除去部1D−4Dは固定部の各熱輸送器1−4を介して上下方向で対向する。上側の回転部と下側の回転部は、上側の回転部の分離部200AU−200DUと下側の回転部の分離部200AD−200DDが常に対向するように、相対的な位置を変えずに同期して回転する。
<熱輸送の原理>
図4及び図5は、本発明に係る磁気冷暖房装置の動作説明に供する図である。図4は、時刻T1と時刻T2の2つの状態を示す。時刻T1の状態は、図1の固定部のA−A線が図2及び図3の上側と下側の回転部のA−A線と一致している状態である。つまり、固定部の熱輸送器1が上側の回転部の磁気印加除去部1Uと下側の回転部の磁気印加除去部1Dに対峙している状態である。また、時刻T2の状態は、固定部の熱輸送器1が上側の回転部の磁気印加除去部2Uと下側の回転部の磁気印加除去部2Dに対峙している状態である。図5は、時刻T3と時刻T4の2つの状態を示す。時刻T3の状態は、固定部の熱輸送器1が上側の回転部の磁気印加除去部3Uと下側の回転部の磁気印加除去部3Dに対峙している状態である。また、時刻T4の状態は、固定部の熱輸送器1が上側の回転部の磁気印加除去部4Uと下側の回転部の磁気印加除去部4Dに対峙している状態である。
時刻T1では、図4に示す通り、磁性体100Aに永久磁石210AMと260AMが位置し、熱伝導部300Bに永久磁石210BHと260BHが位置する。また、磁性体100Cに永久磁石210CMと260CMが位置し、熱伝導部300Dに永久磁石210DHと260DHが位置する。また、磁性体100Eに永久磁石210EMと260EMが位置し、熱伝導部300Fに永久磁石210FHと260FHが位置する。
時刻T2では、上側と下側の回転部が時刻T1から90度時計方向に回転するので、図4に示す通り、熱伝導部300Aに永久磁石220AHと270AHが位置する。また、磁性体100Bに永久磁石220BMと270BMが位置し、熱伝導部300Cに永久磁石220CHと270CHが位置する。また、磁性体100Dに永久磁石220DMと270DMが位置し、熱伝導部300Eに永久磁石220EHと270EHが位置する。また、磁性体100Fに永久磁石220FMと270FMが位置し、熱伝導部300Gに永久磁石220GHと270GHが位置する。
時刻T3では、上側と下側の回転部が時刻T2からさらに90度時計方向に回転するので、図5に示す通り、磁性体100Aに永久磁石230AMと280AMが位置し、熱伝導部300Bに永久磁石230BHと280BHが位置する。また、磁性体100Cに永久磁石230CMと280CMが位置し、熱伝導部300Dに永久磁石230DHと280DHが位置する。また、磁性体100Eに永久磁石230EMと280EMが位置し、熱伝導部300Fに永久磁石230FHと280FHが位置する。
時刻T4では、上側と下側の回転部が時刻T3からさらに90度時計方向に回転するので、図5に示す通り、熱伝導部300Aに永久磁石240AHと290AHが位置する。また、磁性体100Bに永久磁石240BMと290BMが位置し、熱伝導部300Cに永久磁石240CHと290CHが位置する。また、磁性体100Dに永久磁石240DMと290DMが位置し、熱伝導部300Eに永久磁石240EHと290EHが位置する。また、磁性体100Fに永久磁石240FMと290FMが位置し、熱伝導部300Gに永久磁石240GHと290GHが位置する。
このように、永久磁石の位置関係を追うと、時刻T1からT4に移行する間に、時刻T1とT2における、永久磁石、磁性体、熱伝導部の同じ位置関係が2回繰り返される。
上記のように、各磁性体には正の磁性体を用いているので、磁気が印加されると発熱し、磁気が除去されると吸熱する。また、熱伝導部には磁気の印加除去によって熱伝導率が変化する材料を用いているので、磁気が印加されると熱伝導率が相対的に大きくなり、磁気が除去されると熱伝導率が相対的に小さくなる。
したがって、時刻T1からT4に移行するにしたがって、低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに向けて熱が移動し、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間に温度差ができる。温度差ができる原理は次のとおりである。
図6は、本発明に係る磁気冷暖房装置において熱が移動していく様子の説明に供する図である。熱が移動していく様子は図4と図5を参照しながら説明する。
まず前提として、全ての磁性体が同一材料で形成されており、全ての磁性体の磁気熱量効果が同一の種類であって、温度変化量が5℃のものを用いた場合を想定する。具体的には、全ての磁性体は、磁気が印加されると5℃温度が上昇し、磁気が除去されると5℃温度が下降する特性を持っていると想定する。また、全ての熱伝導部材も磁気の印加、除去によって同じように熱伝導率が大きくなりまた小さくなる特性を持っていると想定する。
まず、初期の時刻T1の状態では全ての磁性体100A−100F及び熱伝導部300A−300Gが室温の20℃になっている。低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間で、交互に配置した磁性体と熱伝導部は熱輸送器を形成する。
次に、時刻T2の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4の時刻T1で示す状態から時刻T2で示すような状態になる。その結果、図6に示すように、磁性体100Aの温度が5℃下降し、熱伝導部300Aによる熱伝導が可能になって、低温側熱交換部400Aから磁性体100Aに熱が移動する。また、磁性体100B、100Dの温度が5℃上昇し、磁性体100C、100Eの温度が5℃下降し、熱伝導部300C、300Eによる熱伝導が可能になって、磁性体100Bから磁性体100Cに、磁性体100Dから磁性体100Eに熱が移動する。また、磁性体100Fの温度が5℃上昇し、熱伝導部300Gによる熱伝導が可能になって、磁性体100Fから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。
時刻T2の状態では、磁気が除去された磁性体100A、100C、100Eの温度が15℃に下降し、磁気が印加された磁性体100B、100D、100Fの温度が25℃に上昇する。このため、図6に示すように、熱伝導部300A、300C、300E、300Gを介して温度の高い方から温度の低いほうに熱が移動する。
この熱の移動によって、図6のT2´の状態で示すように、低温側熱交換部400Aと磁性体100Aの温度が17.5℃になり、磁性体100Fと高温側熱交換部400Bの温度が22.5℃になる。
次に、時刻T2´の状態からT3の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4の時刻T2に示す状態から図5の時刻T3で示すような状態になる。その結果、磁性体100A、100C、100Eの温度が5℃上昇し、磁性体100B、100D、100Fの温度が5℃下降し、熱伝導部300B、300D、300Fによる熱伝導が可能になって、磁性体100Aから磁性体100Bに、磁性体100Cから磁性体100Dに、磁性体100Eから磁性体100Fに熱が移動する。
時刻T3の状態では、磁気が印加された磁性体100A、100C、100Eの温度が22.5℃または25℃に上昇し、磁気が除去された磁性体100B、100D、100Fの温度が15℃または17.5℃に下降する。このため、図6に示すように、熱伝導部300B、300D、300Fを介して温度の高い方から温度の低いほうに熱が移動する。
この熱の移動によって、図6のT3´に示すように、低温側熱交換部400Aの温度が17.5℃になり、磁性体100A、100Bの温度が18.75℃になる。磁性体100C、100Dの温度が20℃になり、磁性体100E、100Fの温度が21.25℃になる。高温側熱交換部40Bの温度は22.5℃のままである。
次に、時刻T3´の状態からT4の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4の時刻T2で示した状態と同一の状態になる。その結果、図6のT2. T4に示すような状態となって、低温側熱交換部400Aから磁性体100Aに熱が移動し、磁性体100Bから磁性体100Cに、磁性体100Dから磁性体100Eに熱が移動し、磁性体100Fから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。
以上の通り、上側の回転部と下側の回転部が同期して1回転する度に、時刻T1の状態から時刻T4の状態が繰り返されて、低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。時間が経過するにしたがって、図7に示すように、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間の温度差が大きくなっていく。最終的には、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間の温度差が安定する。この状態で、低温側熱交換部400Aの熱を利用して、たとえば室内の温度を下げることができ、高温側熱交換部400Bの熱を利用して、たとえば室内の温度を上げることができる。
なお、図1−図7の説明は、発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として正の磁性体を用いた場合に当てはまる。発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として負の磁性体を用いた場合には、熱の移動方向は図4−図6に示した方向とは逆になる。したがって、負の磁性体を用いた場合、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bの位置が図1、図4−図6とは逆になる。
本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理は以上のとおりである。次に、本発明に係る磁気冷暖房装置の実施形態を[実施形態1]と[実施形態2]に分けて説明する。[実施形態1]に係る磁気冷暖房装置は、磁性体と熱伝導部を交互に配置した熱輸送器を複数環状に配置した形態を有する。[実施形態2]に係る磁気冷暖房装置は、熱輸送器を直線状に配置した形態を有する。
[実施形態1]
次に、図8−図11を参照して実施形態1に係る磁気冷暖房装置の構成について説明する。実施形態1に係る磁気冷暖房装置の動作原理は上述の動作原理と同一である。図8は、実施形態1に係る磁気冷暖房装置の固定部の構成図である。図9は、実施形態1に係る磁気冷暖房装置の上側の回転部の構成図である。図10は、実施形態1に係る磁気冷暖房装置の下側の回転部の構成図である。図11は、実施形態1に係る磁気冷暖房装置の図8−図10に示すA−B断面図である。
(磁気冷暖房装置の構成)
<固定部の構成>
図8及び図11に示すように、磁気冷暖房装置の固定部1000は円形状に形成する。固定部1000の中心部分には円筒状の高温側熱交換部40Bを設け、高温側熱交換部40Bを取り囲むように円形状の低温側熱交換部40Aを設ける。低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の空間に1mm程度の厚みの熱輸送器配置板150(図11参照)をはめ込み、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとで固定する。
熱輸送器配置板150上の中心角30度の扇状の空間に、図8及び図11に示すように、磁気熱量効果を有する磁性体10A−10Fとこれらの磁性体の熱を輸送する熱伝導部30A−30Gとを交互に配置する。交互に配置した磁性体10A−10Fと熱伝導部30A−30Gで1つの熱輸送器50−1を構成する。熱輸送器50−1に隣接する中心角30度の扇状の空間に、図8に示すように、磁気熱量効果を有する磁性体11A−11Fとこれらの磁性体の熱を輸送する熱伝導部31A−31Gとを交互に配置する。交互に配置した磁性体11A−11Fと熱伝導部31A−31Gで1つの熱輸送器50−2を構成する。
図8に示すように、熱輸送器配置板150上には、中心角30度ごとに1つの扇状の熱輸送器50−1、50−2、…を配置し、熱輸送器配置板150上には、並列に合計12個の扇状の熱輸送器50−1、50−2、…を形成する。なお、12個の扇状の熱輸送器50−1、50−2、…のそれぞれの間には熱絶縁を図るための空間を形成してある。また、低温側熱交換部40Aは熱輸送器50−1、50−2、…の一端に熱伝導部(熱輸送器50−1の場合には熱伝導部30A)を介して配置する。さらに、高温側熱交換部40Bは熱輸送器50−1、50−2、…の他端に熱伝導部(熱輸送器50−1の場合には熱伝導部30G)を介して配置する。低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bの内部には、熱交換効率を向上させるためフィン41(図11参照)と42(図8参照)を設けている。
熱輸送器配置板150は、互いに独立して分離された12個の熱輸送器50−1、50−2、…を配置している。このため、熱輸送器50−1、50−2、…が輸送している熱を奪わないように、熱輸送器配置板150は断熱性の高い材料で形成するか、熱輸送器配置板150と熱輸送器50−1、50−2、…との間に断熱性の高い材料を挟む。なお、熱輸送器配置板150は磁性体に印加される磁束を減少させてはならないので、磁束を通過させやすい材料で形成することが好ましい。また、熱輸送器50は熱輸送器配置板150の上側に設けたが、熱輸送器配置板150の下側に設けても良い。また、熱輸送器配置板150は上下の熱輸送器配置板150に挟まれるように設けても良い。
<磁性体の構成>
磁性体10A−10Fは、本実施形態では同一材料で形成しており、同一材料として正の磁性体を用いる。正の磁性体は、磁気を印加していないときには常磁性状態(磁気スピンが無秩序の状態)となり、磁気を印加すると強磁性状態(磁気スピンが一方向に揃う状態)となる、常磁性状態と強磁性状態が可逆的に生じる材料を用いて製造する。
正の磁性体の材料は、GdやGdをベースとした合金である、Gd−Y系、Gd−Dy系、Gd−Er系、Gd−Ho系、La(Fe,Si)13やLa(Fe,Al)13などの磁性材料を用いることができる。
一方、本実施形態では用いていないが、磁性体10A−10Fに同一材料として負の磁性材料を用いることもできる。負の磁性体の材料としては、FeRh合金、CoMnSiGe系、NiMnSn系などの磁性材料を用いることができる。
一般的に、正の磁性体と負の磁性体は、磁気の印加に対して、熱発生が、発熱するか、吸熱するか反対なので、正の磁性体と負の磁性体の磁気熱量効果による温度変化の大きさは相違する。したがって、本実施形態のように、正か負のどちらか一方の磁性体を用いた場合には、全ての磁性体の磁気熱量効果による温度変化の大きさが同一になる。したがって、磁気冷暖房装置全体として安定した熱伝達特性が得られ熱輸送効率が向上する。また、正の磁性体の磁気熱量効果に比較して負の磁性体の磁気熱量効果の方が小さいので、熱輸送効率を考慮すると、正の磁性体を用いることが好ましい。さらに、負の磁性体の材料は正の磁性体の材料に比較して希少な材料を用いることになるので、コストの面でも正の磁性体を用いることが好ましい。
本実施形態では、磁性体10A−10F及び熱伝導部30A−30Gの形状を、扇を径方向に一定の幅で切り取ったような形状とした。しかし、これ以外の形状、例えば、球状、楕円体状、立方体状、円柱状、楕円柱状などの形状を採用しても良い。
また、磁性体10A−10Fに正または負の磁性体を用い、さらにこれらの磁性体10A−10Fの作動温度を全て同一のものとすることができる。しかし、これに限らず、磁性体の作動温度が異なるものを配置することもできる。例えば、高温側熱交換部40Bに隣り合う磁性体10Fから低温側熱交換部40Aに隣り合う磁性体10Aに向けて段階的に作動温度が低い磁性体を配置することもできる。ここで、作動温度が高い磁性体と作動温度が低い磁性体との相違は、磁気熱量効果を発現する温度域が高い温度であるか低い温度であるかという点にある。
図12は、磁性体の作動温度の相違の説明に供する図である。この図は、具体的には、LaCeFeCoSi系の磁気エントロピー変化量(縦軸)と温度(横軸)の関係を示している。Coの量を増やすと、最も磁気熱量効果が大きくなる温度が、図に示すように225K、250K、270K、290Kと変化する。他の材料に関しても、組成比を変えると、磁気熱量効果が発現する温度領域を変えることができる。
したがって、図12に示すように、高温側熱交換部40Bに隣り合う磁性体10Fから低温側熱交換部40Aに隣り合う磁性体10Aに向けて段階的に、高温域で磁気熱量効果を発現する磁性体(高温用)、中温域で磁気熱量効果を発現する磁性体(中温用)、低温域で磁気熱量効果を発現する磁性体(低温用)、という順番に並べると、高温側熱交換部40Bと低温側熱交換部40Aと間の温度差をさらに大きく取ることができる。
磁性体の作動温度が異なるものは、磁気熱量効果を発現する温度領域が異なる磁気材料でそれぞれの磁性体を形成しても良いし、1種類の磁気材料の材料組成比を変化させることによって磁気熱量効果を発現する温度領域がそれぞれ異なる磁性体を形成しても良い。
このように、熱輸送器50−1、50−2、…内において、磁性体の位置に応じて最適な作動温度を選択すると、均一の作動温度の磁性体を用いた熱輸送器50−1、50−2、…よりも、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間で、より大きな温度差を得ることができ、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
次に、実施形態1に係る磁気冷暖房装置が採用する熱伝導部の具体的な構造について説明する。
本実施形態に係る熱伝導部30A−30Gは、磁性体10A−10Fが磁気熱量効果により発生した熱を低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに向けて伝導する。熱伝導部30A−30Gは、磁気の印加、除去により熱伝導率が大きく変化する特性を持つ。熱伝導部30A−30Gは全て同一の材料で形成される。熱伝導部30A−30Gは、磁気を印加すると熱伝導率が大きくなり、磁気を除去すると熱伝導率が小さくなる。このため、熱伝導部30A−30Gは、磁気の印加、除去によって磁性体10A−10Fに熱を伝導させたりさせなかったりすることができ、磁性体の並び方向に向けて効率的に熱を伝達させることができる。
<熱伝導部の構成>
図13は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の熱伝導部の構造図である。
図8に示したように、実施形態1に係る磁気冷暖房装は、低温側熱交換部40Aと磁性体10Aとの間に熱伝導部30Aを、磁性体10A−10Fのそれぞれの磁性体間に熱伝導部30B−30Fを、磁性体10Fと高温側熱交換部40Bとの間に熱伝導部30Gをそれぞれ接続する。
図13では、磁性体10Aの対向する両面に接続する熱伝導部30Aと30Bを例示する。熱伝導部30A、30Bは、磁性体10Aの対向する両面に接合又は接着によって一体化する。磁性体10Aの両隣には低温側熱交換部40Aと磁性体10Bが存在する。熱伝導部30Aは低温側熱交換部40Aと磁性体10Aに接合又は接着され、熱伝導部30Bは磁性体10Aと磁性体10Bに接合又は接着される。したがって、低温側熱交換部40A、熱伝導部30A、磁性体10A、熱伝導部30B、磁性体10B…は一体化する。
<熱伝導部の動作>
熱伝導部30Aと30Bは、9テスラ程度の磁気が印加されると、印加される前よりも熱伝導率が大きくなる。熱伝導率の大きさの変化は、100倍から3000倍の範囲である。したがって、熱伝導部30Aと30Bは、磁気が印加されなければ熱伝導率は極めて小さくなり、接続されている低温側熱交換部40A、磁性体10A、磁性体10Bの間では熱を伝導しない。一方、熱伝導部30Aと30Bは、磁気が印加されると熱伝導率は極めて大きくなり、接続されている低温側熱交換部40A、磁性体10A、磁性体10Bの間で熱が伝導する。
図13に示すように、熱伝導部30Aと30Bは、磁気の印加、除去によって絶縁体、金属に相転移する転移体を含む。転移体は、少なくとも1種類以上の電荷整列絶縁体を含む。したがって、転移体に磁気を印加すると金属に相転移して熱伝導率が相対的に大きくなる。また、転移体から磁気を除去すると絶縁体に相転移して熱伝導率が相対的に小さくなる。
図13の場合、熱伝導部30Aには磁気が印加されていないので、熱伝導部30Aは絶縁体としての性質を持ち、伝導電子が流れ難くなって、低温側熱交換部40Aと磁性体10Aとの間では熱が伝導しない。一方、熱伝導部30Bには、永久磁石21BH、26BHによって磁気が印加されているので、熱伝導部30Bは金属としての性質を持ち、伝導電子が流れやすくなって、磁性体10Aと磁性体10Bとの間で熱が伝導する。一般的に固体の熱伝導は、フォノン及び伝導電子が担っていることが知られている。本実施形態ででは、伝導電子の流れを磁気によって制御する。
磁気を印加することで絶縁体から金属に相転移するメカニズムを解明する研究の結果によれば、次のような報告がなされた。
遷移金属の酸化物の中には、大量の電子が存在し電子間の相関が強い物質であるために、電子同士が反発し合い局在化した、電荷整列絶縁体という絶縁体が多く存在している。電荷整列絶縁体では、電子のスピンや軌道など、電荷以外の電子の持つ性質(自由度)に直接作用する外場が、電荷整列絶縁体という絶縁体を金属に相変化させる。特に、磁気が電子のスピンに作用すると、局在している大量の電子を雪崩のように動かし、絶縁体を金属に相変化させる。報告によると、ネオジウムストロンチウムマンガン酸化物を用いた場合、温度10K(−236℃)2.4テスラの磁気では電気抵抗率が500Ωmと高い絶縁体状態であったが、9テスラの磁気では電気抵抗率が0.2Ωmと4桁ほど減少したことが示された。本実施形態の熱伝導部はこの現象を積極的に利用して、磁気冷暖房装置を構成している。なお、本実施形態では、磁気を印加すると金属化する電荷整列絶縁体として、Gd0.55Sr0.45MnO、Pr0.5Ca0.5MnO3を用いる。
このように、熱伝導部を、電荷整列絶縁体を含む転移体で形成すると、磁気の印加、除去によって、熱伝導率の大きさを大きく変えることができ、熱スイッチとして機能させることができる。磁気の印加、除去によって熱伝導率が変化する熱伝導部30A、30Bを用いると、隣接する磁性体との熱伝導を、磁気の印加、除去だけで断続させることができる。磁気冷暖房装置を車載するためには小型化が要求されるが、小型化するためには磁気冷暖房装置の高周波化が必要である。高周波化するためには、磁性体間の熱伝達を高速(例えば0.1秒程度)で行う必要がある。本実施形態の熱伝導部30A−30Gは、磁気を印加する周期を短くすることで容易に高周波化できる。
<回転部の構成>
図9及び図10に示す回転部は、図8に示した固定部1000を上下方向の両側から一定の隙間を設けて挟む。回転部の構成は下記のとおりである。
円形状の上側の回転部2000Aは、図9の表側を図8に示す固定部1000の表側に対向して位置させ、上側の回転部2000Aの中心を固定部1000の中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図9は、固定部1000に対向して位置させた上側の回転部2000Aを固定部1000に向かって上から透視した状態を表している(図11参照)。
図9に示す磁気印加除去部1Uは、ある時刻で、図8に示した熱輸送器50−1に対峙する。その時刻では、回転部2000Aの外周から内周に向けて、磁性体10Aに対向する永久磁石21AM、熱伝導部30Bに対向する永久磁石21BH、磁性体10Cに対向する永久磁石21CM、熱伝導部30Dに対向する21DH、磁性体10Eに対向する永久磁石21EM、熱伝導部30Fに対向する永久磁石21FHを有する。
図9に示す磁気印加除去部2Uは、上記と同じ時刻で図8に示した熱輸送器50−2に対峙する。その時刻では、回転部2000Aの外周から内周に向けて、熱伝導部30Aに対向する永久磁石22AH、磁性体10Bに対向する永久磁石22BM、熱伝導部30Cに対向する永久磁石22CH、磁性体10Dに対向する永久磁石22DM、熱伝導部30Eに対向する22EH、磁性体10Fに対向する永久磁石22FM、熱伝導部30Gに対向する永久磁石22GHを有する。
回転部2000Aに存在するその他の磁気印加除去部は、回転部2000Aの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Uまたは磁気印加除去部2Uと同一である。なお、永久磁石の周方向の長さは、磁性体に対向する永久磁石(磁性体用)の長さが熱伝導部に対向する永久磁石(熱伝導部用)の長さよりも長く、磁性体に対向する永久磁石の長さ方向の中心位置と熱伝導部に対向する永久磁石の長さ方向の中心位置は一致している。
円形状の下側の回転部2000Bは、図10の表側を図8に示す固定部1000の裏側に対向して位置させ、下側の回転部2000Bの中心を固定部1000の中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図10は、固定部1000に対向して位置させた下側の回転部2000Bを固定部1000側から見た状態を表している(図11参照)。
図10に示す磁気印加除去部1Dは、上記と同じ時刻で、図8に示した熱輸送器50−1に対峙する。その時刻では、回転部2000Bの外周から内周に向けて、磁性体10Aに対向する永久磁石26AM、熱伝導部30Bに対向する永久磁石26BH、磁性体10Cに対向する永久磁石26CM、熱伝導部30Dに対向する26DH、磁性体10Eに対向する永久磁石26EM、熱伝導部30Fに対向する永久磁石26FHを有する。
図10に示す磁気印加除去部2Dは、上記と同じ時刻で図8に示した熱輸送器50−2に対峙する。その時刻では、回転部2000Bの外周から内周に向けて、熱伝導部30Aに対向する永久磁石27AH、磁性体10Bに対向する永久磁石27BM、熱伝導部30Cに対向する永久磁石27CH、磁性体10Dに対向する永久磁石27DM、熱伝導部30Eに対向する27EH、磁性体10Fに対向する永久磁石27FM、熱伝導部30Gに対向する永久磁石27GHを有する。
回転部2000Bに存在するその他の磁気印加除去部は、回転部2000Bの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Dまたは磁気印加除去部2Dと同一である。なお、永久磁石の周方向の長さは、磁性体に対向する永久磁石の長さが熱伝導部に対向する永久磁石の長さよりも長く、磁性体に対向する永久磁石の長さ方向の中心位置と熱伝導部に対向する永久磁石の長さ方向の中心位置は一致している。磁性体用の永久磁石と熱伝導部用の永久磁石の長さは回転部2000Aのそれらの長さと同一である。
上側の回転部2000Aの各磁気印加除去部1U、2U、…と下側の回転部2000Bの各磁気印加除去部1D、2D、…は固定部1000の各熱輸送器50−1、50−2、…を介して上下方向で対向する。上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bは、磁気印加除去部1Uと磁気印加除去部1Dを対峙させた状態で相対的な位置を変えずに同期して回転する。
<磁気冷暖房装置の動作>
図11は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の図8−図10に示すA−B断面図である。図に示すように、上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bは、ごく狭い間隔を設けて固定部1000を挟む。
図11は図8−図10に示す固定部と回転部を組み上げた状態におけるA−B断面図である。したがって、A断面では、熱輸送器50−1を構成する磁性体10Aに永久磁石21AMと26AMが対向する。熱輸送器30Bに永久磁石21BHと26BHが対向する。磁性体10Cに永久磁石21CMと26CMが対向する。熱輸送器30Dに永久磁石21DHと26DHが対向する。磁性体10Eに永久磁石21EMと26EMが対向する。熱輸送器30Fに永久磁石21FHと26FHが対向する。この状態は、図8に示す熱輸送器50−1に図9、図10で示す磁気印加除去部1Uと1Dが対向している状態である。
また、B断面では、熱輸送器50−2を構成する熱輸送器31Aに永久磁石22AHと27AHが対向する。磁性体11Bに永久磁石22BMと27BMが対向する。熱輸送器31Cに永久磁石22CHと27CHが対向する。磁性体11Dに永久磁石22DMと27DMが対向する。熱輸送器31Eに永久磁石22EHと27EHが対向する。磁性体11Fに永久磁石22FMと27FMが対向する。熱輸送器31Gに永久磁石22GHと27GHが対向する。この状態は、図8に示す熱輸送器50−2に図9、図10で示す磁気印加除去部2Uと2Dが対向している状態である。
上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bが同期して回転すると、30度回転する度に、各熱輸送器50−1、50−2、…において、上述のA断面の状態とB断面の状態が繰り返される。したがって、各熱輸送器50−1、50−2、…において、図4−6で説明したのと同一のことが繰り返され、磁性体10A−10F、11A−11F、…で発生した熱が熱伝導部30A−30G、31A−31G、…を介して低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに伝達される。
上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bとが同期して回転すると、熱輸送器50−1を構成する磁性体10A−10Fと熱伝導部30A−30Gには、図14に示すようなタイミングで、図14に示すような期間、磁気が印加される。具体的には、図9に示す磁気印加除去部1Uのように、永久磁石21AM、21CM、21EMの周方向の長さが永久磁石21BH、21DH、21FHの周方向の長さよりも長くしてある。このため、図8の熱輸送器50−1を例に取ると、図14に示すように、磁気の印加のタイミングは磁性体10A、10C、10Eの方が早く、熱伝導部30B、30D、30Fの方が遅くなる。一方、磁気の除去のタイミングは磁性体10A、10C、10Eの方が遅く、熱伝導部30B、30D、30Fの方が早くなる。磁性体の磁気の印加時間が長く熱伝導部の磁気の印加時間が短いのは、磁性体に対向する永久磁石の長さが熱伝導部に対向する永久磁石の長さよりも回転方向(移動方向)に長くしてあるからである。図14に示すようなタイミングで、図14に示すような期間、磁気が印加されることは、熱輸送器50−1以外の熱輸送器でも同じである。
以上のように、図14に示すようなタイミングで、図14に示すような期間、磁気を印加すると、磁性体と熱伝導部に磁気を印加するタイミングの違い(位相差)によって、磁性体が発熱してから熱伝導が開始され、磁性体から十分に熱が移動してから熱伝導が遮断することができる。なお、本実施形態では、図14に示すようなタイミングで磁気の印加、除去を行ない、図14に示すような期間、磁性体の発熱、熱伝導部による熱伝導を行ったが、このようなタイミングや期間には限らない。タイミングや期間の調整は、永久磁石の周方向の長さと、周方向の中心位置を相対的にずらすことで実現できる。本実施形態では、磁性体、熱伝導部への磁気の印加、除去のタイミング、磁性体、熱伝導部に磁気を印加する期間を、図14に示すように最適化している。
磁気冷暖房装置の構成の説明に戻ると、図11に示すように、上側の回転部2000A、下側の回転部2000Bはその中心部が開口し、その中心部にはベアリング410A、410Bを設けてある。また、両回転部2000A、2000Bの外周部にはベアリグ420A、420Bを設けてある。ベアリング410A、410B、ベアリング420A、420Bは、両回転部2000A、2000Bを固定部1000の上下面で回転自在に支持する。したがって、両回転部2000A、2000Bは高温側熱交換部40Bを回転軸として図示矢印方向(図9、図10参照)に回転する。
上側の回転部2000A、下側の回転部2000Bの一方の面の外周にはリングギア430A、430Bを取り付ける。リングギア430A、430Bは、サーボモータ350A、350Bのギア360A、360Bと噛み合う。サーボモータ350Aが回転すると、ギア360Aと噛み合うリングギア430Aが自転して上側の回転部2000Aが回転する。また、サーボモータ350Bが回転すると、ギア360Bと噛み合うリングギア430Bが自転して下側の回転部2000Bが回転する。サーボモータ350Aと350Bを同期して回転させると、両回転部2000A、2000Bが一体的に回転する。
本実施形態では、サーボモータ350A、350Bを同期して回転させる。したがって、両回転部2000A、2000Bは高温側熱交換部40Bを中心に、固定部1000を挟むようにして同一の回転速度で回転する。両回転部2000A、2000Bを同期させて回転するには、両回転部2000A、2000Bの基準位置とサーボモータ350A、350Bの回転位置を検出することが必要である。そのため、図11に示すように、両回転部2000A、2000Bの基準位置を検出するための基準位置検出センサ250A、250Bを設けてある。また、サーボモータ350Aと350Bの回転位置を検出するための回転位置検出センサをサーボモータ350Aと350Bに内蔵してある。
上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bに配置する永久磁石は、両回転部2000A、回転部2000Bの間でN極とS極とが対峙するように極性を考慮して配置する。上側の回転部2000Aの片面に配置した永久磁石と下側の回転部2000Bの片面に配置した永久磁石は、常に対峙した状態となるように、両回転部2000A、2000Bは同期して回転させる。たとえば、図11に示すように、上側の回転部2000Aの永久磁石21AM、21BH、21CM、21DH、21EM、21FH、22AH、22BM、22CH、22DM、22EH、22FM、22GHと下側の回転部2000Bの永久磁石26AM、26BH、26CM、26DH、26EM、26FH、27AH、27BM、27CH、27DM、27EH、27FM、27GHは、両回転部2000A、2000Bが回転中または停止中にかかわらず常に対峙した状態である。
なお、本実施形態では、両回転部2000A、2000Bに配置する磁気印加除去部に永久磁石を用いたが、電磁石を用いても良い。電磁石を用いた場合には、両回転部2000A、2000Bの構造が複雑になる。回転した状態で、電磁石への給電がきるように配線する必要があるからである。したがって、本実施形態では、永久磁石を用いている。
また、図11に示すように、固定部1000に上側の回転部2000A、下側の回転部2000Bを取り付けた状態で、固定部1000、上側の回転部2000A、下側の回転部2000Bで囲まれた内部空間は、減圧または真空に近い環境にする。内部空間を減圧または真空に近い環境にすれば、各熱輸送器50−1、50−2、…は、真空内、または減圧下の環境内で設置されることになって、内部の空気への放熱が防止され、また、永久磁石が回転することによる空気抵抗が減少されるからである。
両回転部2000A、2000Bが回転すると、固定部1000の各熱輸送器50−1、50−2、…では、30度回転するごとに、図4に示した時刻T1の状態と時刻T2の状態を繰り返される。このため、両回転部2000A、2000Bが30度回転するごとに、各熱輸器50−1、50−2、…の磁性体が発熱と吸熱を繰り返し、熱伝導部が熱の輸送と遮断を繰り返す。磁性体の単位時間当たりの発熱量は、両回転部2000A、2000Bの回転速度によって変化する。発熱量を大きくしたければ両回転部2000A、2000Bの回転速度を速くする。大きな発熱量が必要なければ両回転部2000A、2000Bの回転速度を遅くする。
各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体が発熱しまた吸熱するときの熱を、低温側熱交換器40Aから高温側熱交換器40Bに伝達させ、要求される熱量が得られるようにするためには、両回転部2000A、2000Bの回転速度を最適化しなければならない。両回転部2000A、2000Bの回転速度の最適化を制御するものが、図15以降に示す制御系である。
図15は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の制御系のブロック図である。また、図16は、図15の空調情報入力部のさらに具体的な制御系のブロック図である。
図15に示すように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の制御系は、基準位置検出センサ250A、基準位置検出センサ250B、空調情報入力部460、サーボモータ350A、サーボモータ350B、サーボモータ制御部380、空調制御部450を有する。サーボモータ350A、サーボモータ350Bは、自身の回転位置を検出する回転位置検出センサ370A、370Bを備えている。
基準位置検出センサ250Aは上側の回転部2000A(図11参照)に設定した基準位置を検出する。基準位置は回転部2000Aの外周に設ける。例えば、光を反射する反射体を上側の回転部2000Aの外周に取り付けた場合には、その反射体の取り付け位置が基準位置となる。この場合、基準位置検出センサ250Aには受発光素子を用い、反射体が受発光素子からの光を反射すると、基準位置が検出される。
基準位置検出センサ250Bは下側の回転部2000Bに設定した基準位置を検出する。その他は基準位置検出センサ250Aと同一である。
上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bに設ける基準位置は、両回転部2000A、回転部2000Bの永久磁石が固定部1000を介して正しく向き合うように(図11に示すように)、正確な位置に設定する。したがって、上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bは、基準位置検出センサ250Aと基準位置検出センサ250Bが、基準位置を常に同時に検出するように、同一の速度で同期して回転する。
空調情報入力部460は空調に必要な情報を入力する。空調に必要な情報は、設定温度、低温側熱交換部入口温度、低温側熱交換部出口温度、高温側熱交換部入口温度、高温側熱交換部出口温度である。空調情報入力部460の具体的な説明については、後述の図16に基づいて行う。
サーボモータ350A、サーボモータ350Bは、熱輸送器50−1、50−2、…の各磁性体に選択的に磁気を印加し除去するため上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bを駆動するモータである。具体的には、サーボモータ350Aは、図9に示したように永久磁石が配置してある上側の回転部2000Aを回転させる。また、サーボモータ350Bは、図10に示したように永久磁石が配置してある下側の回転部2000Bを回転させる。サーボモータ350A、サーボモータ350Bには、それぞれのサーボモータの回転位置を検出する回転位置検出センサ370A、370Bを設けてある。回転位置検出センサ370A、370Bで検出した回転位置は、サーボモータ350A、サーボモータ350Bの回転速度を同期させるために用いる。
サーボモータ制御部380は、回転位置検出センサ370A、370Bで検出した回転位置と、基準位置検出センサ250A、250Bで検出した基準位置を用いて、サーボモータ350A、350Bの回転を制御する。サーボモータ制御部380は、運転条件に応じてサーボモータ350A、350Bの回転速度を制御する。ここで、運転条件とは、熱輸送器50−1、50−2、…の要求熱量、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の温度差である。
空調制御部450は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の動作を総括的に制御する。空調制御部450の具体的な説明については、後述の図17の動作フローチャートに基づいて行う。
図16に示すように、空調情報入力部460は、温度設定部462、低温側熱交換部入口温度センサ464、低温側熱交換部出口温度センサ466、高温側熱交換部入口温度センサ468、高温側熱交換部出口温度センサ470を有する。
温度設定部462は、磁気冷暖房装置が空調する車室内の温度を設定するコントローラである。低温側熱交換部入口温度センサ464は、図8、図11に示した固定部1000の低温側熱交換部40Aに供給される冷媒の温度を検出する。低温側熱交換部入口温度センサ464は、低温側熱交換部40Aの冷媒入口部分に設ける。
低温側熱交換部出口温度センサ466は、図8及び図11に示した固定部1000の低温側熱交換部40Aから排出される冷媒の温度を検出する。低温側熱交換部出口温度センサ466は、低温側熱交換部40Aの冷媒出口部分に設ける。高温側熱交換部入口温度センサ468は、図8及び図11に示した高温側熱交換部40Bに供給される冷媒の温度を検出する。高温側熱交換部入口温度センサ468は、高温側熱交換部40Bの冷媒入口部分に設ける。高温側熱交換部出口温度センサ470は、高温側熱交換部40Bから排出される冷媒の温度を検出する。高温側熱交換部出口温度センサ470は、高温側熱交換部40Bの冷媒出口部分に設ける。
温度設定部462、低温側熱交換部入口温度センサ464、低温側熱交換部出口温度センサ466、高温側熱交換部入口温度センサ468、高温側熱交換部出口温度センサ470を設けるのは、固定部1000でどの程度の熱量を低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに移動させなければならないかを知るためである。移動させなければならない熱量がわかれば、サーボモータ350A、350Bの回転速度を調整することができる。
空調制御部450は、設定温度、低温側熱交換部入口温度、低温側熱交換部出口温度、高温側熱交換部入口温度、高温側熱交換部出口温度を用いて、サーボモータ350A、350Bの回転速度を調整する。
次に、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の動作を、図17のフローチャートに基づいて詳細に説明する。図17は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の動作フローチャートである。
(磁気冷暖房装置の動作)
まず、操作者は、温度設定部462から車室内の設定温度を入力する。設定温度が入力されると、空調制御部450は、要求熱量と要求温度差を入力する(S1)。空調制御部450は、車室内の空間容量、現在の車室内の温度、車室内の設定温度を参照して、車室内を設定温度にするために必要な要求熱量を求める。また、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの温度差を求める。この求めた値を、要求熱量、要求温度差として入力する。
次に、空調制御部450は、入力した要求熱量と要求温度差をあらかじめ記憶しているマップと照合して磁気印加周波数fを取得する(S2)。
空調制御部450は磁気冷暖房装置を運転する(S3)。つまり、空調制御部450は、求めた磁気印加周波数fを実現するために、サーボモータ制御部380に回転数の指示を出す。磁気印加周波数は、1つの磁性体に対して1秒間に何回磁気の印加除去をするかを示すものである。例えば、磁気印加周波数fが6Hzであったとすると、図8−図11に示す構成の磁気冷暖房装置の場合、両回転部2000A、2000Bが1秒間に1回転すると6回磁気の印加除去が行われるので、両回転部2000A、2000Bに要求される回転数は60rpmである。サーボモータ制御部380には、両回転部2000A、2000Bが60rpmで回転するために必要なサーボモータ350A、350Bの回転数を指示する。
次に、空調制御部450は、空調動作を終了する指示が成されたか否かを判断する(S4)。空調動作の終了が指示されなければ(S4:NO)、ステップS3に戻り、空調動作の終了が指示されると(S4:YES)、処理を終了する。
以上のように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置では、永久磁石が配置されている両回転部2000A、2000Bを回転させるだけで、低温側熱交換器40Aから高温側熱交換器40Bに向けて熱を移動させることができる。
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る磁気冷暖房装置における磁気冷暖房の原理を図面に基づいて詳細に説明する。
(磁気冷暖房の原理)
図18は、実施形態2に係る磁気冷暖房装置における磁気冷暖房の原理図である。実施形態1と同様、磁性体10A−10Dには、発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として正の磁性体を用いる。また、熱伝導部30A−30Eには、磁気が印加されると熱伝導率が相対的に大きくなり、磁気が除去されると熱伝導率が相対的に小さくなる同一材料を用いる。
磁気印加除去部20A、20B、磁気印加除去部20C、20D、磁気印加除去部20G、20Hは、磁性体10A−10D及び熱伝導部30A−30Eを挟むようにして、磁性体10A−10D、熱伝導部30A−30Eの間で往復移動する。
まず、図18Aの状態から図18Bの状態になる。すなわち、磁気印加除去部20A、20Bが磁性体10A及び熱伝導部30Bから磁性体10B及び熱伝導部30Cに、磁気印加除去部20C、20Dが磁性体10C及び熱伝導部30Dから磁性体10D及び熱伝導部30Eに、磁気印加除去部20G、20Hが熱伝導部30Aに、一斉に移動する。
次に、図18Bの状態から図18Aの状態になる。すなわち、磁気印加除去部20A−20Hが一斉に図示左方向に移動して、磁気印加除去部と磁性体、熱伝導部の位置関係が図18Aの状態に戻る。
したがって、磁気印加除去部が往復移動すると、図18Aと図18Bの状態が交互に繰り返される。本実施形態では、同一の磁気印加除去部によって、磁性体と熱伝導部に同時に磁気を印加する。熱が低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに移動する原理は実施形態1(図1−図7参照)と同じである。
(磁気冷暖房装置の構成)
図19は、実施形態2に係る磁気冷暖房装置の構成図である。実施形態2に係る磁気冷暖房装置は熱輸送器を直線的に設けている。
図19に示すように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置500は、ベース板520の長手方向の両端に、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bを取り付ける。ベース板520の低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間には、図18と同様に、磁性体10A−10D及び熱伝導部30A−30Eを交互に直線状に並べて配置する。磁性体を直線状に並べたときには、細長い空間に熱伝達機構を構成させることができ、狭い空間を有効利用できる。
磁性体10A−10D及び熱伝導部30A−30Eは、ベース板520上に直接接合しても良いが、磁気熱量効果を有効に利用できるようにするためには、ベース板520は熱抵抗の大きな材料で構成することが望ましい。熱抵抗が小さいと、磁性体10A−10Dで発生した熱がベース板520を伝って放熱されてしまうからである。また、熱抵抗を大きくするために、磁性体10A−10D及び熱伝導部30A−30Eは、ベース板520上に直接接合するのではなく、ベース板520との間に熱絶縁性フィルムや熱絶縁層を設けても良い。
磁性体10A−10Dは、本実施形態では上述の通り正の磁性体を用いるが、負の磁性材料で形成することもできる。正負の磁性体の材料や形状については実施形態1で述べた。また、熱伝導部30A−30Eは、磁気が印加されると熱伝導率が相対的に大きくなり、磁気が除去されると熱伝導率が小さくなる。熱伝導部が磁気の印加、除去によって熱伝導率を変化する原理は実施形態1で述べた。実施形態2で用いる磁性体と熱伝導部は実施形態1と同一である。
磁気印加部530A−530Cは、これらを図示左右方向に直線状に往復移動させるスライダー540に取り付ける。スライダー540は、ベース板520の長手方向に沿って往復移動する。スライダー540はスライドガイド580に取り付ける。スライドガイド580は固定部570A及び570Bによって支持される。
固定部570A及び570Bはベース板520の下部両端に位置しスライドガイド580を支持する。スライダー540は、ボールねじやリニアスライダーなどの直線移動機構585に取り付けられ、スライドガイド580に沿って直線状に往復移動する。直線移動機構585は磁気回路駆動部590によって駆動される。磁気回路駆動部590はモータの回転を直線運動に変えるカム機構を有するものや、リニアモータ、圧電アクチュエータを用いることができる。
(磁気冷暖房装置の動作)
図20は、実施形態2に係る磁気冷暖房装置の動作フローチャートである。磁気冷暖房装置500の動作は空調制御部600が総括的に制御する。
空調制御部600は、磁気冷凍の開始信号が入力されたか否かを判断する(S11)。空調制御部600は、磁気冷凍の開始信号が入力されなければ(S11:NO)、入力されるのを待ち、入力されれば(S11:YES)次のステップに進む。
空調制御部600は、磁気冷凍の開始信号が入力されると、磁気回路駆動部590を動作させ、磁気印加部530A、530B、530Cを往復移動させる。例えば、図18A、Bに示すように、磁気印加部530A、530Bを磁性体10Aと熱伝導部30B、磁性体10Cと熱伝導部30Dの位置から、磁性体10Bと熱伝導部30C、磁性体10Dと熱伝導部30Eの位置に、磁気印加部530Cを熱伝導部30Aの位置に、移動させる。このとき、磁性体10A、10Cは吸熱し、磁性体10B、10Dは発熱する。また、熱伝導部30A、30C、30Eの熱伝導率が大きくなる。さらに、磁気印加部530A、530Bを磁性体10Bと熱伝導部30C、磁性体10Dと熱伝導部30Eの位置から、磁性体10Aと熱伝導部30B、磁性体10Cと熱伝導部30Dの位置に、磁気印加部530Cを、熱伝導部30Aの位置から、低温熱交換部40A上に移動させる。このとき、磁性体10B、10Dは吸熱し、磁性体10A、10Cは発熱する。また、熱伝導部30B、30Dの熱伝導率が大きくなる。この動作を繰り返すことで、低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに熱が移動する(S12)。
そして、空調制御部600は、磁気冷凍の終了信号が入力されたか否かを判断する(S13)。空調制御部600は、磁気冷凍の終了信号が入力されなければ(S13:NO)、ステップ12の処理に戻る。つまり、空調制御部600は、磁気回路駆動部590を動作させ、磁気印加部530A、530B、530Cを往復移動させる。空調制御部600は、磁気冷凍の終了信号が入力されない限り、上記のステップS12の動作を繰り返す。磁気冷凍の終了信号が入力されれば(S13:YES)処理を終了して、磁気冷暖房装置500の動作を終了する。
以上のように磁気印加部530A、530B、530Cを往復移動させることによって、図7に示すグラフのように、低温側熱交換部40Aの温度を下げ、高温側熱交換部40Bの温度を上げることができ、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間に温度差を生じさせることができる。
実施形態1、2に係る磁気冷暖房装置では、以下のような効果を得ることができる。
実施形態1、2に係る磁気冷暖房装置では、磁性体として、同一の磁気熱量効果を有する材料を用い、各熱伝導部として、磁気の印加、除去によって熱伝導を断続する同一の材料を用いた。したがって、磁性体と熱伝導部材は、それぞれ1種類の材料を用いれば良いので、それぞれの材料の熱に対する特性が揃い、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
実施形態1に係る磁気冷暖房装置では、熱輸送器の各磁性体に対して磁気を印加、除去する磁性体用磁石と、熱輸送器の各熱伝導部に対して磁気を印加、除去する熱伝導部用磁石とを、個別に配置した。したがって、磁性体の磁気熱量効果を最大限に引き出せる磁気の強さと、熱伝導部の熱伝導率の変化の幅を最大限に引き出せる磁気の強さとを個別に設定することができる。そのため、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
実施形態2に係る磁気冷暖房装置では、熱輸送器の各磁性体と各熱伝導部に対して共通の磁気印加除去部を配置した。このため磁気印加除去部の構成を簡素化できる。
実施形態1に係る磁気冷暖房装置では、磁気印加除去部における磁性体用磁石と熱伝導部用磁石とは、熱輸送器の各磁性体に対して磁気を印加、除去するタイミングと熱輸送器の各熱伝導部に対して磁気を印加、除去するタイミングとが異なるように配置している。このため、磁性体に発生した熱を最適なタイミングで隣接する磁性体などに伝達させることができ、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
実施形態1、2に係る磁気冷暖房装置では、熱輸送器は、低温側熱交換器と高温側熱交換器との間で、複数並列に配置するので、磁気冷暖房装置の熱量を向上させることができる。熱輸送器を並列にどの程度配置するかは、磁気冷暖房装置に要求される熱量によって決める。
実施形態1、2に係る磁気冷暖房装置では、熱輸送器の各磁性体及び各熱伝導部材に選択的に磁気を印加し除去するため磁気印加除去部を熱輸送器に対して相対的に移動させる駆動部を有しているので、駆動部の動作(回転数や往復移動の頻度)を変えることで、磁気冷暖房装置に要求される熱量を供給できる。
実施形態1、2に係る磁気冷暖房装置では、熱伝導部は、低温側熱交換部と磁性体との間、複数の磁性体との間、磁性体と高温側熱交換部との間で接合又は接着により一体化されるので、熱的な接触抵抗の低減が図れ、熱輸送器の製造が容易になる。
実施形態1に係る磁気冷暖房装置において、真空内、または減圧下の環境内に熱輸送器を設置すると、熱輸送器を構成する磁性体と熱伝導部の断熱性を向上させることができる。そのため、低温側熱交換部から高温側熱交換部に効率的に熱を輸送させることができ磁気冷暖房装置の高出力化及びコンパクト化を達成することができる。