上記特許文献1に開示されているホルダーユニット250によれば、スクライビングホイール252の保持位置を安定化させ高速かつ高精度にガラス板等の脆性材料基板にスクライブラインを形成することができるという優れた効果を奏する。しかしながら、このホルダーユニット250においては、ホルダー溝254内におけるスクライビングホイール252の側壁面とホルダー251の支持部255、256の接触面積が大きくなっているため、例えばガラス基板のスクライブ時に発生したカレットがスクライビングホイール252の側壁面とホルダー251の支持部255、256との間に巻き込まれ、この巻き込まれたカレットによってスクライビングホイール252の回転不良を起こす傾向がある。
また、スクライビングホイール252の側壁面とホルダー251の支持部255、256との間に巻き込まれたカレットが多量になると、スクライビングホイール252の回転性がより悪化し、スクライブ時に刃先がガラス基板の表面を滑るため、刃先寿命が短くなることが懸念される。加えて、ホルダー251の支持部255、256とピン259との接触面積が大きいために摩擦抵抗が大きく、スクライブ中にピン259が回転したり、回転しなかったりすることがあり、これによってガラスへの切断荷重が不均一となって、ガラス端面強度の低下やガラス破断強度のバラツキの要因となることがある。
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、スクライビングホイールの側壁面とホルダーの支持部との間の接触面積が小さくなるようにして、物理的にスクライビングホイールの側壁面とホルダーの支持部との間にカレットが巻き込まれ難くすると共に、スクライビングホイールのホルダー溝内での位置の安定性、スクライビングホイールの進行方向に対する左右のぶれを抑制及びスクライブしたときのスクライブラインの直線性に対する悪影響の抑制されたホルダー及びホルダーユニットを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、追加的に、ピンとホルダーの支持部との間の摩擦抵抗が小さく、ピンが回転し易い構成のホルダー及びホルダーユニットを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のホルダーは、ディスク状であって、中心に貫通孔が形成され、外周部に沿って垂直断面形状がV字形の刃が形成されたスクライビングホイールを、前記スクライビングホイールの貫通孔に回転自在に挿入されるピンにより、回転自在に保持するためのホルダーにおいて、前記ホルダーは、前記スクライビングホイールを内部で回転自在に保持するホルダー溝と、前記ホルダー溝によって形成された一対の支持部と、前記一対の支持部にそれぞれ同軸に形成され、前記ピンが挿入される一対のピン孔と、を有し、前記ホルダー溝は、前記スクライビングホイールの一部が挿入される狭幅部と、前記ホルダーの切断端側に形成された前記狭幅部よりも幅広の広幅部とからなり、前記一対のピン孔は前記ホルダー溝の前記広幅部に対応する位置に形成されていることを特徴とする。
本発明のホルダーでは、ピンの切断端側に形成されているホルダー溝の広幅部ではスクライビングホイールの側壁面はホルダーの支持部と接触することがない。そのため、本発明のホルダーによれば、ホルダー溝の狭幅部内に挿入されているスクライビングホイールの側壁面とホルダーの支持部との間の接触面積が従来のホルダーの場合よりも小さくなっているので、スクライビングホイールとホルダーの支持部との間の摩擦抵抗が小さくなり、スクライビングホイールが回転し易くなる。
また、通常、一対の支持部に形成された一対のピン孔は少なくとも一方が支持部を貫通するように形成されるが、本発明のホルダーではピンは両端部側でのみ支持部のピン孔内に支持されている。そのため、本発明のホルダーにおいては、ピン孔内におけるピンとホルダーの支持部との間の接触面積も従来のホルダーユニットの場合よりも小さくなるので、ピン孔内におけるピンとホルダーの支持部との間の摩擦抵抗も小さくなり、ピンの回転性も良好となる。加えて、本発明のホルダーにおいては、一対の支持部にそれぞれ形成された一対のピン孔はホルダー溝の広幅部に対応する位置に形成されているので、ホルダー溝の広幅部においてピンの周囲に空間が生じるため、たとえスクライブ時にカレットが発生し、このカレットがホルダー溝の狭幅部へ進入しても、容易に排出される。
そのため、本発明のホルダーによれば、スクライブ時にスクライビングホイール及びピンの回転性が良好となるので、スクライブ時にスクライビングホイールの刃先が被スクライブ基板の表面を滑る現象が生じ難くなくなり、刃先寿命が長くなると共にスクライブ後の被スクライブ基板の端面強度の低下や破断強度のバラツキが抑制される。
また、本発明のホルダーにおいては、前記一対の支持部は、前記ホルダー溝の前記狭幅部と前記広幅部との間が段差状に形成されていることが好ましい。
ホルダー溝が段差状に形成されていると、ホルダーの支持部の対向する内面を互いに平行とし易いためにスクライブ時の直線性が良好となる。
また、本発明のホルダーにおいては、前記ホルダー溝の狭幅部は、前記ピンの軸に対して、前記切断端側とは反対側に形成されているものとしてもよい。
本発明のホルダーでは、ピンの軸に対して、スクライビングホイールの切断端側とは反対側がホルダー溝の狭幅部内に位置している。そのため、本発明のホルダーによれば、ホルダーの切断端側のホルダー溝の広幅部においてピンの周囲に空間が生じるため、スクライブ時にカレットが進入し難く、さらにスクライブ時にカレットが発生し、このカレットがホルダー溝の狭幅部へ進入しても、容易に排出される。
また、本発明のホルダーにおいては、前記ホルダー溝の狭幅部は、前記ピンの軸に対して、前記切断端側とは反対側と、左右の一方とに形成されているものとしてもよい。
本発明のホルダーでは、ピンの軸に対して、スクライビングホイールの切断端側とは反対側と、左右の一方のいずれかがホルダー溝の狭幅部内に位置しており、切断端側の左右の少なくとも一方はホルダー溝の広幅部に位置している。そのため、本発明のホルダーによれば、単にホルダー溝の幅を広げてカレットの排出を容易にする場合とは異なり、スクライビングホイールの刃先の振れが少なく、スクライブラインの形成時に蛇行することが抑制される。
また、本発明のホルダーにおいては、前記ホルダー溝の狭幅部は、前記ピンの軸に対して、前記切断端側に形成されているものとしてもよい。
本発明のホルダーでは、ピンの軸に対して、ホルダーの切断端側にホルダー溝の狭幅部及び支持部の広幅部が設けられ、切断端側と反対側にホルダー溝の広幅部が設けられている。そのため、本発明のホルダーによれば、ピン孔内におけるピンとホルダーの支持部との間の摩擦抵抗が小さくなり、ピンの回転性も良好となる。加えて、スクライビングホイールの交換時には、支持部の広幅部においてスクライビングホイールを保持しながらスクライビングホイールの交換を行うことができ、ホイールの交換が容易になる。
また、本発明のホルダーにおいては、前記一対の支持部の前記一対のピン孔の少なくとも一方が支持部を貫通している場合、ピン孔が貫通した支持部のホルダー溝と対向する側の外面には、貫通したピン孔を閉塞する押さえカバーが配置され、前記押さえカバーは、それぞれ前記ホルダーの切断端側とは反対側の位置において調整ネジによって前記ホルダーに固定されているものとしてもよい。
本発明のホルダーによれば、簡単な構成によってピンをピン孔から抜け難くすることができる。
また、上記目的を達成するため、本発明のホルダーユニットは、ディスク状であって、中心に貫通孔が形成され、外周部に沿って垂直断面形状がV字形の刃が形成されたスクライビングホイールと、前記スクライビングホイールを回転自在に保持するためのホルダーとを具備し、前記ホルダーは、ホルダー溝によって形成された一対の支持部と、前記一対の支持部にそれぞれ同軸に形成された一対のピン孔と、前記一対のピン孔及び前記スクライビングホイールの貫通孔に回転自在に挿入され、前記ホルダー溝内で前記スクライビングホイールを回転自在に保持するピンと、を有し、前記ホルダー溝は、前記スクライビングホイールの一部が挿入される狭幅部と、前記ホルダーの切断端側に形成された前記狭幅部よりも幅広の広幅部とからなり、前記一対のピン孔は前記ホルダー溝の前記広幅部に対応する位置に形成されていることを特徴とする。
本発明のホルダーユニットでは、ピンの切断端側に形成されているホルダー溝の広幅部ではスクライビングホイールの側壁面はホルダーの支持部と接触することがない。そのため、本発明のホルダーユニットによれば、ホルダー溝の狭幅部内に挿入されているスクライビングホイールの側壁面とホルダーの支持部との間の接触面積が従来のホルダーユニットの場合よりも小さくなっているので、スクライビングホイールとホルダーの支持部との間の摩擦抵抗が小さくなり、スクライビングホイールが回転し易くなる。
また、本発明のホルダーユニットでは、通常、一対の支持部に形成された一対のピン孔は、少なくとも一方が支持部を貫通するように形成されるが、ピンは両端部側でのみ支持部のピン孔内に支持されている。そのため、本発明のホルダーユニットにおいては、ピン孔内におけるピンとホルダーの支持部との間の接触面積も従来のホルダーユニットの場合よりも小さくなるので、ピン孔内におけるピンとホルダーの支持部との間の摩擦抵抗も小さくなり、ピンの回転性も良好となる。加えて、本発明のホルダーユニットにおいては、一対の支持部にそれぞれ形成された一対のピン孔はホルダー溝の広幅部に対応する位置に形成されているので、ホルダー溝の広幅部においてピンの周囲に空間が生じるため、たとえスクライブ時にカレットが発生し、このカレットがホルダー溝の狭幅部へ進入しても、容易に排出される。
そのため、本発明のホルダーユニットによれば、スクライブ時にスクライビングホイール及びピンの回転性が良好となるので、スクライブ時にスクライビングホイールの刃先が被スクライブ基板の表面を滑る現象が生じ難くなくなり、刃先寿命が長くなると共にスクライブ後の被スクライブ基板の端面強度の低下や破断強度のバラツキが抑制される。
なお、本発明のホルダーユニットにおいては、スクライビングホイールとして、ディスク状ホイールの円周部に沿った全周にわたり垂直断面形状V字形の刃が形成されているものであっても、或いは、ディスク状ホイールの円周部に沿って垂直断面形状V字形の刃が形成されていると共にこのV字形の刃に交差する方向に一定ピッチで一定深さの溝ないし一定高さの突起が形成されているもの(上記特許文献2参照)であってもよい。
また、本発明のホルダーユニットにおいては、前記一対の支持部は、前記ホルダー溝の前記狭幅部と前記広幅部との間が段差状に形成されていることが好ましい。
ホルダー溝が段差状に形成されていると、ホルダーの支持部の対向する内面を互いに平行とし易いためにスクライブ時の直線性が良好となり、また、ピンの周囲に形成される空間の体積を小さくできるので、ホルダーユニットを小型化し易くなる。
また、本発明のホルダーユニットにおいては、前記ホルダー溝の狭幅部は、前記ピンの軸に対して、前記切断端側とは反対側に形成されているものとしてもよい。
本発明のホルダーでは、ピンの軸に対して、スクライビングホイールの切断端側とは反対側がホルダー溝の狭幅部内に位置している。そのため、本発明のホルダーユニットによれば、ホルダーの切断端側のホルダー溝の広幅部においてピンの周囲に空間が生じるため、スクライブ時にカレットが進入し難く、さらにスクライブ時にカレットが発生し、このカレットがホルダー溝の狭幅部へ進入しても、容易に排出される。
また、本発明のホルダーユニットにおいては、前記ホルダー溝の狭幅部は、前記ピンの軸に対して、前記切断端側とは反対側と、左右の一方とに形成されているものとしてもよい。
本発明のホルダーユニットでは、ピンの軸に対して、スクライビングホイールの切断端側とは反対側と、左右の一方とがホルダー溝の狭幅部内に位置しており、左右の他方はホルダー溝の広幅部に位置している。そのため、本発明のホルダーユニットによれば、スクライビングホイールの刃先の振れがより少なくなり、スクライブラインの形成時に蛇行することが抑制される。
また、本発明のホルダーユニットにおいては、前記ホルダー溝の狭幅部は、前記ピンの軸に対して、前記切断端側に形成されているものとしてもよい。
本発明のホルダーユニットでは、ピンの軸に対して、ホルダーの切断端側にホルダー溝の狭幅部及び支持部の広幅部が設けられ、切断端側と反対側にホルダー溝の広幅部が設けられている。そのため、本発明のホルダーユニットによれば、ピン孔内におけるピンとホルダーの支持部との間の摩擦抵抗が小さくなり、ピンの回転性も良好となる。加えて、スクライビングホイールの交換時には、支持部の広幅部においてスクライビングホイールを保持しながらスクライビングホイールの交換を行うことができ、ホイールの交換が容易になる。
また、本発明のホルダーユニットにおいては、前記一対の支持部の前記ホルダー溝と対向する側の外面には、前記一対のピン孔をそれぞれ閉塞する押さえカバーが配置され、前記押さえカバーは、それぞれ前記ホルダーの切断端側とは反対側の位置において調整ネジによって前記ホルダーに固定されているものとしてもよい。
本発明のホルダーユニットによれば、簡単な構成によってピンをピン孔から抜け難くすることができると共に、調整ネジの締め付け度を変えることにより、ホルダーの支持部に微少な変形を起こさせてスクライビングホイールの側壁面と支持部の内側面との間のクリアランスを微調整することができるようになる。
また、本発明のスクライブ装置においては、上記のホルダーユニットが取り付けられたスクライブヘッドを備えているものとしてもよい。
本発明のスクライブ装置は、上記の効果を奏するスクライブ装置を提供することができる。
また、本発明のスクライブ装置においては、前記ホルダーユニットはホルダージョイントを介して着脱可能に取り付けられているものとしてもよい。
本発明のスクライブ装置は、ホルダーユニットがスクライブヘッドに対してホルダージョイントを介して取り付けられているので、スクライビングホイールを交換する際に、ホルダーユニットごと交換することができるので、スクライビングホイールの交換を容易におこなうことができる。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのスクライブ装置、ホルダーユニット及びホルダーの一例を示すものであって、本発明をこのスクライブ装置、ホルダーユニット及びホルダーに特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも適応し得るものである。
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係るホルダー11及びホルダーユニット10を図1及び図2を用いて説明する。なお、図1は実施形態1のホルダーユニットの斜視図であり、図2Aは図1のホルダーユニットの正面図であり、図2Bは図2AのIIB部分の拡大図である
実施形態1に係るホルダーユニット10は、図7及び図8に示した従来のスクライビングホイールの場合と同様に、ホルダー11とスクライビングホイール12とを有しており、ホルダー11の下端にスクライビングホイール12が回転自在に保持されている。ホルダー11は、下方が三角形状に形成された直方体状の部材であり、上部にホルダー11を固定するための貫通孔13を有している。なお、このホルダー11はスクライビングホイール12を被スクライビング部材に当接させてスクライブラインを形成するために用いられるものであるため、以下においてはホルダー11の被スクライビング部材に当接させる側(切断端側)を「下」といい、その反対側を「上」という。
スクライビングホイール12は、例えば焼結ダイヤモンドで形成された厚さdが約0.65mmのディスク状の部材であって、中心に貫通孔を有している。また、スクライビングホイール12は、従来例のものと同様に、外周部に沿って稜線を形成するV字形の刃を有している。稜線の両側の傾斜面は、通常、90〜165°の角度で互いに交差しており、これらの傾斜面によって稜線が形成されている。
このホルダー11の下方には、ホルダー溝14がホルダー11の三角形状の下方を開放するように形成され、ホルダー溝14を挟むこの三角形状の部分で支持部15、16を形成している。そして、ホルダー溝14は、スクライビングホイール12の上方の一部分が挿入される狭幅部14aと、この狭幅部14aよりも幅広に形成された広幅部14bとからなっている。そのため、一対の支持部15、16は、それぞれホルダー溝14の狭幅部14aに対向する広幅部15a、16aと、ホルダー溝14の広幅部14bに対向する狭幅部15b、16bを備えている。なお、ホルダー11の支持部15、16における広幅部15a、16aと狭幅部15b、16bとの間は段差状に形成されている。
また、ホルダー11の支持部15、16の相対向する面、すなわち、広幅部15a、16aの相対向する面及び狭幅部15b、16bの相対向する面は、共に平行に形成されている。そして、ホルダー11の支持部15、16における狭幅部15b、16bには、各々を貫通するピン孔17、18が同軸に形成されている。ピン孔17、18は、ホルダー溝14と垂直に交差しており、スクライビングホイール12のピン19を保持する円形の貫通孔である。
そして、本実施形態1のホルダーユニット10では、ピン19は、スクライビングホイール12の貫通孔及びピン孔17、18に、ホルダー11の支持部15、16の広幅部15a、16aとは接触しないように、取り付けられている。そのため、ホルダー11の支持部15、16の広幅部15a、16aの下側とピン19との間には隙間20が形成されている。なお、ピン19は、例えば、超硬合金等の金属、焼結ダイヤモンドで形成された円柱形の部材であって、一端が尖頭形状を有している。
ホルダー溝14の狭幅部14aの間隔w1はスクライビングホイール12の幅よりわずかに大きくなるようにされている。スクライビングホイール12の幅dは例えば約0.65mmであり、ホルダー溝14の狭幅部14aの間隔w1は例えば約0.67mmである。また、ホルダー溝14の広幅部14bの間隔w2は、狭幅部14の間隔w1の間隔より広ければ任意であるが、支持部15、16の狭幅部15b、16bに形成されたピン孔17、18内におけるピン19の回転時の摩擦が小さくなるようにするためには、ピン19を両端部のみで支持し、ピン19がピン孔17、18内に位置している部分の長さが短くなるようにする必要があり、ホルダー溝14の狭幅部14aの間隔w1の2倍以上とすることが好ましい。
しかしながら、あまりw2を大きくすると、ホルダー11の支持部15、16の狭幅部15b、16bの幅が細くなるために、スクライブ時に印加される荷重によって、狭幅部15b、16bが撓む虞があること、及び、ピン19が両端部側で支持されることになり、ピン19自体も撓んでしまう虞が生じるので、ホルダー11の支持部15、16の狭幅部15b、16bの幅がホルダー11の支持部15、16の広幅部15a、16aの1/3程度となるようにすることが好ましい。また、ホルダー11の支持部15、16の広幅部15a、16aの下側とピン19との間に形成された隙間20の間隔は任意であるが、ホルダーユニット10を小型化するには小さい方がよい。
また、本実施形態1のホルダーユニット10では、ホルダー11の支持部15、16の広幅部15a、16aに形成されたピン孔17、18の両端部は、それぞれ押さえカバー22、23によって閉塞されている。これらの押さえカバー22、23は、例えば図1に示したように、一端が突出したワッシャ形状を有しており、それぞれがホルダー11の上方において調整ネジ24、25によってホルダー11の外側面に固定されている。
このホルダーユニット10の組立は次のようにして行われる。まず、支持部15側より押さえカバー22を調整ネジ24によって取付け、ピン孔17の外部側を閉塞する。次いで、スクライビングホイール12の一部をホルダー溝14の狭幅部14a内に挿入して保持し、ピン19を尖頭形状の部分からピン孔18、スクライビングホイール12の貫通孔及びピン孔17に挿通する。ピン19の尖頭形状の部分が、ピン孔17の一方の開口付近にある押さえカバー22と接するところまでピン19を挿入し、次いで支持部16側から押さえカバー23を調整ネジ25でねじ止めしてピン孔18の外部側を閉じる。これにより、ピン19はピン孔17、18から脱落することはなくなり、しかも、スクライビングホイール12はピン19に回転自在に保持される。
この状態のホルダーユニット10を用いてガラス基板等の脆性基板をスクライブすれば、スクライビングホイール12はホルダー溝14の狭幅部14a内で位置が安定するので、スクライビングホイール12の進行方向に対する左右のぶれがほとんどなくなり、スクライブしたときのスクライブラインの直線性を向上させることができるようになる。加えて、たとえスクライブ時にカレットが発生し、このカレットがホルダー溝14の狭幅部14aとスクライビングホイール12との間に侵入しても、ホルダー11の支持部15、16の広幅部15a、16aの下側とピン19との間に形成されている隙間20及びピン19と脆性基板との間に形成される空間の存在のために、容易に排出されるので、スクライビングホイール12の回転性が損なわれることが抑制される。
そのため、本実施形態1のホルダーユニット10によれば、スクライブ時にスクライビングホイール12及びピン19の回転性が良好となるので、スクライブ時にスクライビングホイール12の刃先が被スクライブ基板の表面を滑る現象が生じ難くなくなり、刃先寿命が長くなると共にスクライブ後の被スクライブ基板の端面強度の低下や破断強度のバラツキが抑制されるという優れた効果を奏するようになる。
なお、実施形態1のホルダーユニット10においては、ホルダー溝14の狭幅部14aが、スクライビングホイール12の上方の一部分に形成された例を示したが、図面において左右側の一部分が挿入されるように形成してもよいことは当然である。そして、何れの場合においても、スクライブ時に発生したカレットがホルダー溝14の狭幅部14a内に侵入し難く、スクライビングホイール12及びピン19の回転性が良好となる。
また、本実施形態1のホルダーにおいては、ホルダー11の支持部15、16の相対向する面、すなわち、広幅部15a、16aの相対向する面及び狭幅部15b、16bの相対向する面は、共に平行に形成されているが、広幅部15a、16aの相対向する面が平行に形成されていれば、狭幅部15b、16bの相対向する面は平行でなくてもよい。少なくともスクライビングホイール12が接触する支持部15、16の広幅部15a、16aの相対向する面が平行であれば、スクライビングホイール12がホルダー溝14の狭幅部14a内で位置を安定させることができるためである。
さらにまた、本実施形態1のホルダーにおいては、ホルダー11の支持部15、16における狭幅部15b、16bに各々を貫通するピン孔17、18が同軸に形成されて、ピン孔17、18の両側より押さえカバー22、23を用いてピン19を保持するようにしているが、一方のピン孔の径を支持部外周側で狭くしてピンを保持するようにしてもよい。さらに、ピン孔17、18は、同軸に形成されていれば、狭幅部15b、16bのいずれか一方を貫通するのみでも良い。この場合には、ピン孔の径が狭くされていない支持部又は貫通したピン孔が設けられた支持部の外側面にのみ押さえカバーが設けられていればよい。
[実施形態2]
次に、実施形態2のホルダー及びホルダーユニットを図3及び図4を用いて説明する。なお、図3は実施形態2のホルダーユニットの斜視図であり、図4は図3のIV−IV線に沿った断面図である。また、図3及び図4においては、実施形態1のホルダーユニット10と同一の構成部分には同一の参照符号を付与して、その詳細な説明は省略する。
実施形態2のホルダー11A及びホルダーユニット10Aが実施形態1のホルダー11及びホルダーユニット10と構成が相違する点は、ホルダー溝14の狭幅部14a及び広幅部14bの構成と、それに伴う支持部15、16の広幅部15a、16a及び狭幅部15b、16bの構成である。すなわち、実施形態2のホルダー11A及びホルダーユニット10Aでは、ホルダー溝14の狭幅部14aは、スクライビングホイール12の上方の一部分と、図面において右側の一部分が挿入されるように形成されており、それに伴って支持部15、16の広幅部15a、16aが、スクライビングホイール12の上方と、図面において右側に形成されている。
そして、ホルダー溝14の広幅部14bは、スクライビングホイール12の図面において左側に形成されており、それに伴って支持部15、16の狭幅部15b、16bが、スクライビングホイール12の図面において左側に形成されている。また、ホルダー11Aの支持部15、16における広幅部15a、16aと狭幅部15b、16bとの間は段差状に形成されている。
この場合においても、ホルダー11Aの支持部15、16の相対向する面、すなわち、広幅部15a、16aの相対向する面及び狭幅部15b、16bの相対向する面は、共に平行に形成されている。そして、ホルダー11Aの支持部15、16における狭幅部15b、16bには、各々を貫通するピン孔(図示省略)が同軸に形成されており、ピン19はホルダー11Aの支持部15、16の広幅部15a、16aとは接触しないように取り付けられている。そのため、ホルダー11Aの支持部15、16の広幅部15a、16aの下側とピン19との間には隙間20が形成されている。
このような構成の実施形態2のホルダー11A及びホルダーユニット10Aによれば、実施形態1のホルダー11及びホルダーユニット10に比すると、僅かにスクライビングホイール12と支持部15、16の広幅部15a、16aとの間の接触面積が大きくなるため、僅かに摩擦抵抗が大きくなるが、その点を除けば実質的に同等の作用効果を奏することができる外、スクライビングホイール12の刃先の振れがより少なくなるので、スクライブラインの形成時に蛇行することが抑制されるようになる。
なお、実施形態2のホルダーユニット10Aにおいては、ホルダー溝14の狭幅部14aが、スクライビングホイール12の上方の一部分だけでなく、図面において右側の一部分が挿入されるように形成された例を示したが、図面において左側の一部分が挿入されるように形成してもよいことは当然である。そして、何れの場合においても、実施形態2のホルダーユニット10Aを用いてスクライブラインを形成する際には、ホルダーユニット10Aを図面において左右のいずれかに形成された狭幅部側に移動させれば、スクライブ時に発生したカレットがホルダー溝14の狭幅部14a内に侵入し難くなるので、刃先寿命が長くなると共にスクライブ後の被スクライブ基板の端面強度の低下や破断強度のバラツキが抑制されるという優れた効果を奏することができるようになる。
[実施形態3]
次に、実施形態3のホルダー及びホルダーユニットを図5及び図6を用いて説明する。なお、図5は実施形態3のホルダーユニットの斜視図であり、図6Aは図5のホルダーユニットの正面図であり、図6Bは図6AのVIB部分の拡大図である。また、図5及び図6においては、実施形態1のホルダーユニット10と同一の構成部分には同一の参照符号を付与して、その詳細な説明は省略する。
実施形態3のホルダー11B及びホルダーユニット10Bが実施形態1のホルダー11及びホルダーユニット10と構成が相違する点は、ホルダー溝14の狭幅部14a及び広幅部14bと、それに伴う支持部15、16の広幅部15a、16a及び狭幅部15b、16bの配置が上下逆になっている点である。すなわち、実施形態3のホルダー11B及びホルダーユニット10Bでは、ホルダー溝14の狭幅部14aはスクライビングホイール12の下方に、広幅部14bがスクライビングホイール12の上方に形成されており、それに伴って支持部15、16の広幅部15a、16aがスクライビングホイール12の下方に、狭幅部15b、16bがスクライビングホイール12の上方に形成されている。なお、ホルダー11Bの支持部15、16における広幅部15a、16aと狭幅部15b、16bとの間は段差状に形成されている。
この場合においても、ホルダー11Bの支持部15、16の相対向する面、すなわち、広幅部15a、16aの相対向する面及び狭幅部15b、16bの相対向する面は、共に平行に形成されている。そして、ホルダー11Bの支持部15、16における狭幅部15b、16bには、各々を貫通するピン孔17、18が同軸に形成されており、ピン19はホルダー11Bの支持部15、16の広幅部15a、16aとは接触しないように取り付けられている。そのため、ホルダー11Bの支持部15、16の広幅部15a、16aの上側とピン19の上側との間には隙間20が形成されている。
このような構成の実施形態3のホルダー11B及びホルダーユニット10Bによれば、実施形態1のホルダー11及びホルダーユニット10に比すると、スクライビングホイール12と支持部15、16との間の接触面積が少なくなり、かつスクライビングホイール12の取付が容易となるという効果も奏されるようになる。
すなわち、スクライビングホイール12の取付時には、ホルダー溝14の狭幅部14aにスクライビングホイール12の一部を差し込み、ピン19を支持部16の貫通孔18、スクライビングホイール12の貫通孔、支持部15の貫通孔17に順に通すこととなる。しかしながら、実施形態1のホルダー11及びホルダーユニット10では、狭幅部14aがホルダー11の内部にあるためスクライビングホイール12を固定し難く、スクライビングホイール12の外径が小さくなるとその取付が難しくなる。それに対し、実施形態3のホルダー11B及びホルダーユニット10Bによれば、切断端側にホルダー溝14の狭幅部14aが形成されているので、スクライビングホイール12の取付時にホルダー11Bの下端に位置する狭幅部14aでスクライビングホイール12を保持してピン19を挿入することができるため、スクライビングホイール12の取り付け及び交換が容易になる。
加えて、たとえスクライブ時にカレットが発生し、このカレットがホルダー溝14の狭幅部14aとスクライビングホイール12との間に侵入しても、ホルダー11Bの支持部15、16の広幅部15a、16aの上側とピン19との間に形成されている隙間20及びピン19とホルダー溝14の広幅部14bの間に形成される空間の存在のために、容易に排出されるので、スクライビングホイール12の回転性が損なわれることが抑制される。
以上のような実施形態1〜3に示したホルダーユニットは、脆性材料基板を手で切るための脆性材料切断用カッターに取り付けることができる。また、実施形態1〜3のホルダーユニットは、スクライブ装置に備わっているスクライブヘッドに取り付けられることにより、脆性材料基板に対してスクライブラインを形成することもできる。このスクライブ装置に関して図面を用いて説明する。
図7はスクライブ装置100の概略図を示している。スクライブ装置100は、移動台111が一対の案内レール112a、112bに沿って、y軸方向に移動自在に保持されている。移動台111はボールネジ113と螺合している。このボールネジ113はモータ114の駆動により回転し、移動台111を案内レール112a、112bに沿って、y軸方向に移動させる。
移動台111の上面にはモータ115が設けられている。モータ115はテーブル116をxy平面で回転させて所定角度に位置決めするものである。脆性材料基板117はこのテーブル116上に載置され、図示しない真空吸引手段などにより保持される。スクライブ装置110の上部には、脆性材料基板117のアライメントマークを撮像する2台のCCDカメラ118が設けられている。そして、スクライブ装置110には、移動台111とその上部のテーブル116を跨ぐようにブリッジ119がx軸方向に沿って支柱120a、120bにより架設されている。
ブリッジ119にはガイド122が取り付けられており、スクライブヘッド121はガイド122に沿ってx軸方向に沿って移動可能となっている。そして、このスクライブ装置100のスクライブヘッド121には、ホルダージョイント123を介して、スクライビングホイール150を回転自在に保持しているホルダー140aからなるホルダーユニット110が取り付けられている。
次に、このホルダージョイント123について図8を用いて説明する。図8はホルダー40aを具備するホルダーユニット110が取り付けられたホルダージョイント123の正面図である。ホルダージョイント123は、略円柱状をしており、回転軸部124と、ジョイント部125で構成されている。
そして、スクライブヘッド121にホルダージョイント123が装着された状態においては、この回転軸部124には、ホルダージョイント123を回動自在に保持するための二つのベアリング126a、126bが円筒形のスペーサ127を介して取り付けられた状態になっている。なお、図8にはホルダージョイント123の正面図を示すとともに、回転軸部124に取り付けられたベアリング126a、126bとスペーサ127の断面図を示している。
円柱形のジョイント部125には、下端側に円形の開口128が形成されており、この開口の上部にはマグネット129が埋設されている。そして、この開口128には、ホルダー140aを具備するホルダーユニット110が着脱自在に取り付けられている。なお、図9に示すように、ホルダー140aの上端側には位置決め用の取付部146が設けられている。この取付部146はホルダー140aを切り欠いて形成されており、傾斜部146aと支持部146bを有している。また、ホルダー140aの上端側の少なくとも一部分は磁性体金属で構成されている。
このスクライビングホール150とホルダー140aを具備するホルダーユニット110は、ホルダージョイント123の開口128へ、ホルダー140aの取付部146側から挿入される。その際、ホルダー140aの上端側の磁性体金属がマグネット129によって引き寄せられ、取付部146の傾斜部146aが、開口128の内部を通る平行ピン130に接触し位置決めが行われ、ホルダーユニット110はホルダージョイント123に固定される。反対に、ホルダージョイント123からホルダーユニット110を取り外す際には、ホルダーユニット110を下方へ引く抜くことで、容易に取り外すことができる。
ここで、スクライビングホイール150は消耗品であるため定期的な交換が必要となる。本実施形態においては、ホルダージョイント123を介してホルダーユニット110がスクライブヘッド121に装着されているので、ホルダーユニット110の着脱が容易に行える。したがって、スクライビングホイール150をホルダー140aから取り外したりすることなく、スクライビングホイール150とホルダー140aを一体として扱い、ホルダーユニット110そのものを交換すればよいので、スクライビングホイール150の交換作業を容易に行うことができる。
[実施形態4]
次に、ホルダー140aを具備するホルダーユニット110の詳細について、図9、図10を用いて説明する。図9Aは上方側からのホルダーユニット110の斜視図であり、図9Bは下方側からのホルダーユニット110の斜視図である。また、図10Aは図9AのXa−Xa線に沿った断面図であり、図10Bは図9AのXb−Xb線に沿った断面図である。
このホルダー140aは略円柱形の金属または樹脂からなり、その下端側には支持部1165,166が設けられている。この支持部165と支持部166との間に、スクライビングホイール150を保持するためのホルダー溝142が形成されている。また、支持部165、166には、スクライビングホイール150を固定するために孔状のピン孔z143aがそれぞれ形成されている。このピン孔143aにピン144が貫通され、スクライビングホイール150が回転自在に取り付けられている。
なお、ホルダー140aは上述したように、スクライビングホイール150を脆性材料基板である被スクライビング部材に当接させてスクライブラインを形成するために用いられるものであるため、以下においてはホルダー140aの被スクライビング部材に当接させる側(切断端側)を「下」といい、その反対側を「上」という。
ホルダー140aに形成されているホルダー溝142は、スクライビングホイール150の上方の一部分が挿入される狭幅部142aと、この狭幅部142aよりも幅広に形成された窪み部の一例である広幅部142bと、からなっている。そのため、一対の支持部165、166は、それぞれホルダー溝142の狭幅部142aに対向する広幅部165a、166aと、ホルダー溝142の広幅部142bに対向する狭幅部165b、166bを備えている。なお、ホルダー140aの支持部165、166における広幅部165a、166aと狭幅部165b、166bとの間は段差状に形成されている。
また、ホルダー140aの支持部165、166の相対向する内壁、すなわち、広幅部165a、166aの相対向する面及び狭幅部165b、166bの相対向する面は、共に平行に形成されている。そして、ホルダー140aの支持部165、166における狭幅部165b、166bには、各々を貫通するピン孔143aが同軸にそれぞれ形成されている。ピン孔143aは、ホルダー溝142と垂直に交差しており、スクライビングホイール150のピン144を保持する円形の貫通孔である。
そして、実施形態4のホルダーユニット110では、ピン144は、スクライビングホイール150の貫通孔153及びピン孔143aに、ホルダー140aの支持部165、166の広幅部165a、166aとは接触しないように、取り付けられている。そのため、ホルダー140aの支持部165、166の広幅部165a、166aの下側とピン144との間には隙間167が形成されている。なお、ピン144は、例えば、超硬合金等の金属、焼結ダイヤモンドで形成された円柱形の部材であって、一端が尖頭形状を有している。
ホルダー溝142の狭幅部142aの間隔はスクライビングホイール150の幅よりわずかに大きくなるようにされている。スクライビングホイール150の幅は例えば約0.65mmであり、ホルダー溝142の狭幅部142aの間隔は例えば約0.67mmである。また、ホルダー溝142の広幅部142bの間隔は、狭幅部142aの間隔より広ければ任意である。しかしながら、ピン孔143a内におけるピン144の回転時の摩擦が小さくなるようにするためには、ピン144を両端部のみで支持し、ピン144がピン孔143a内に位置している部分の長さが短くなるようにする必要がある。したがって、広幅部142bの1間隔は、ホルダー溝142の狭幅部142aの間隔の2倍以上とすることが好ましい。
一方、あまり広幅部142bの間隔を大きくすると、ホルダー140aの支持部165、166の狭幅部165b、166bの幅が細くなるために、スクライブ時に印加される荷重によって、狭幅部165b、166bが撓む虞があること、及び、ピン144が両端部側で支持されることになり、ピン144自体も撓んでしまう虞が生じるので、ホルダー140aの支持部165、166の狭幅部165b、166bの幅がホルダー140aの支持部165、166の広幅部165a、166aの1/3程度となるようにすることが好ましい。また、ホルダー140aの支持部165、166の広幅部165a、166aの下側とピン144との間に形成された隙間167の間隔は任意であるが、ホルダーユニット110を小型化するには小さい方がよい。
この状態のホルダーユニット110を用いて、スクライブ装置100によりガラス基板等の脆性基板をスクライブすれば、スクライビングホイール150はホルダー溝142の狭幅部142a内で位置が安定するので、スクライビングホイール150の進行方向に対する左右のぶれがほとんどなくなり、スクライブしたときのスクライブラインの直線性を向上させることができるようになる。加えて、たとえスクライブ時にカレットが発生し、このカレットがホルダー溝142の狭幅部42aとスクライビングホイール150との間に侵入しても、ホルダー140aの支持部165、166の広幅部165a、166aの下側とピン144との間に形成されている隙間167及びピン144と脆性基板との間に形成される空間の存在のために、容易に排出されるので、スクライビングホイール150の回転性が損なわれることが抑制される。
そのため、実施形態4のホルダーユニット110によれば、スクライブ時にスクライビングホイール150及びピン144の回転性が良好となるので、スクライブ時にスクライビングホイール150の刃先が被スクライブ基板の表面を滑る現象が生じ難くなくなり、刃先寿命が長くなると共にスクライブ後の被スクライブ基板の端面強度の低下や破断強度のバラツキが抑制されるという優れた効果を奏するようになる。
なお、実施形態4のホルダーユニット110においては、ホルダー溝142の狭幅部142aが、スクライビングホイール150の上方の一部分に形成された例を示したが、図面において左右側の一部分が挿入されるように形成してもよいことは当然である。そして、何れの場合においても、スクライブ時に発生したカレットがホルダー溝142の狭幅部142a内に侵入し難く、スクライビングホイール150及びピン144の回転性が良好となる。
また、実施形態4のホルダー140aにおいては、ホルダー140aの支持部165、166の相対向する内壁、すなわち、広幅部165a、166aの相対向する面及び狭幅部165b、166bの相対向する面は、共に平行に形成されているが、広幅部115a、116aの相対向する面が平行に形成されていれば、狭幅部165b、166bの相対向する面は平行でなくてもよい。少なくともスクライビングホイール150が接触する支持部165、166の広幅部165a、166aの相対向する面が平行であれば、スクライビングホイール150がホルダー溝142の狭幅部142a内で位置を安定させることができるためである。
[実施形態5]
次に、実施形態5のホルダー140bを具備するホルダーユニット110Aについて、図11を用いて説明する。なお、図11Aは下方側からのホルダー140bの斜視図であり、図11Bは反対側からのホルダー140bの斜視図であり、図11Cは図11AのXI−XI線に沿った断面図である。
実施形態5のホルダー140b及びホルダーユニット110Aが実施形態4のホルダー140a及びホルダーユニット110と構成が相違する点は、ホルダー溝142の狭幅部142a及び広幅部142bの構成と、それに伴う支持部165、166の広幅部165a、166a及び狭幅部165b、166bの構成である。すなわち、実施形態5のホルダー140bでは、ホルダー溝142の狭幅部142aは、スクライビングホイール150の上方の一部分と、図11Cにおいてスクライビングホイール150の右側の一部分が挿入されるように形成されており、それに伴って支持部165、166の広幅部165a、166aが、スクライビングホイール150の上方と、図11Cにおいてスクライビングホイール150の右側に形成されている。
そして、ホルダー溝142の広幅部142bは、図11Cにおいてスクライビングホイール150の左側に形成されており、それに伴って支持部165、166の狭幅部165b、166bが、図11Cにおいてスクライビングホイール150の左側に形成されている。また、ホルダー140bの支持部165、166における広幅部165a、166aと狭幅部165b、166bとの間は段差状に形成されている。
この場合においても、ホルダー140bの支持部165、166の相対向する内壁、すなわち、広幅部165a、166aの相対向する面及び狭幅部165b、166bの相対向する面は、共に平行に形成されている。そして、ホルダー140bの支持部165、166における狭幅部165b、166bには、各々を貫通するピン孔143aが同軸に形成されており、ピン144はホルダー140bの支持部165、166の広幅部165a、166aとは接触しないように取り付けられている。そのため、ホルダー140bの支持部165、166の広幅部165a、166aの下側とピン144との間には隙間167が形成されている。
このような構成の実施形態5のホルダー140b及びホルダーユニット110Aによれば、実施形態4のホルダー140a及びホルダーユニット110に比すると、僅かにスクライビングホイール150と支持部165、166の広幅部165a、166aとの間の接触面積が大きくなるため、僅かに摩擦抵抗が大きくなるが、その点を除けば実質的に同等の作用効果を奏することができる外、スクライビングホイール150の刃先の振れがより少なくなるので、スクライブラインの形成時に蛇行することが抑制されるようになる。
なお、実施形態5のホルダーユニット110Aにおいては、ホルダー溝142の狭幅部142aが、スクライビングホイール150の上方の一部分だけでなく、図11Cにおいてスクライビングホイール150の右側の一部分が挿入されるように形成された例を示したが、図11Cにおいてスクライビングホイール150の左側の一部分が挿入されるように形成してもよいことは当然である。そして、何れの場合においても、実施形態5のホルダー40cを具備するホルダーユニット110Aを用いてスクライブ装置100でスクライブラインを形成する際には、ホルダー140bを移動させれば、スクライブ時に発生したカレットがホルダー溝142の狭幅部142a内に侵入し難くなるので、刃先寿命が長くなると共にスクライブ後の被スクライブ基板の端面強度の低下や破断強度のバラツキが抑制されるという優れた効果を奏することができるようになる。
[実施形態6]
次に、実施形態6のホルダー140cを具備するホルダーユニット110Bについて、図12を用いて説明する。なお、図12Aは下方側からのホルダー140cの斜視図であり、図12Bは図12AのXII−XII線に沿った断面図である。
実施形態6のホルダー140c及びホルダーユニット110Bが実施形態4のホルダー140a及びホイールユニット110と構成が相違する点は、ホルダー溝142の狭幅部142a及び広幅部142bと、それに伴う支持部165、166の広幅部165a、166a及び狭幅部165b、166bの配置が上下逆になっている点である。すなわち、実施形態6のホルダー140c及びホルダーユニット110Bでは、ホルダー溝142の狭幅部142aはスクライビングホイール150の下方に、広幅部142cがスクライビングホイール150の上方に形成されており、それに伴って支持部165、166の広幅部165a、166aがスクライビングホイール150の下方に、狭幅部165b、166bがスクライビングホイール150の上方に形成されている。なお、ホルダー140cの支持部165、166における広幅部165a、166aと狭幅部165b、166bとの間は段差状に形成されている。
この場合においても、ホルダー140cの支持部165、166の相対向する内壁、すなわち、広幅部165a、166aの相対向する面及び狭幅部165b、166bの相対向する面は、共に平行に形成されている。そして、ホルダー140cの支持部165、166における狭幅部165b、166bには、各々を貫通するピン孔143aが同軸に形成されており、ピン144はホルダー140cの支持部165、166の広幅部165a、166aとは接触しないように取り付けられている。そのため、ホルダー140cの支持部165、166の広幅部165a、166aの上側とピン144の上側との間には隙間167が形成されている。
このような構成の実施形態6のホルダー140c及びホルダーユニット110Bによれば、実施形態4のホルダー140c及びホルダーユニット110に比すると、スクライビングホイール150と支持部165、166との間の接触面積が少なくなるという効果も奏されるようになる。
したがって、スクライブ時にカレットが発生し、このカレットがホルダー溝142の狭幅部142aとスクライビングホイール150との間に侵入しても、ホルダー140cの支持部165、166の広幅部165a、166aの上側とピン144との間に形成されている隙間67及びピン144とホルダー溝142の広幅部142bの間に形成される空間の存在のために、容易に排出されるので、スクライビングホイール150の回転性が損なわれることが抑制される。
なお、図7に示したスクライブ装置100においては、スクライブヘッド121にホルダージョイントを介して、ホルダーユニット110を取り付ける構成のスクライブ装置について説明したいが、スクライブ装置はホルダーユニットをスクライブヘッドに直接取り付ける構成であっても構わない。