以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造を示す断面図である。ここでは、画像形成装置1としてモノクロプリンターを例示するが、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ装置、或いは、これらの機能を備える複合機であってもよく、またカラー画像を形成する画像形成装置であっても良い。
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有する本体ハウジング10と、この本体ハウジング10内に収容される給紙部20、画像形成部30、定着部40及びトナーコンテナ50(現像剤搬送装置)とを含む。
本体ハウジング10の前面側(図1の右側)には前カバー11が、後面側には後カバー12が各々備えられている。ユーザーは、前カバー11を開放することで、トナー切れの際にトナーコンテナ50を本体ハウジング10の前面側から取り出すことができる。後カバー12は、シートジャムやメンテナンスの際に開放されるカバーである。画像形成部30及び定着部40の各ユニットは、後カバー12が開放されることで、本体ハウジング10の後面側から取り出し可能となる。また、本体ハウジング10の上面には、画像形成後のシートが排出される排紙部13が備えられている。
給紙部20は、画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット21を含む。この給紙カセット21は、その一部が本体ハウジング10の前面からさらに前方に突出している。給紙カセット21には、前記シートの束が収容されるシート収容空間、前記シートの束を給紙のためにリフトアップするリフト板等が備えられている。給紙カセット21の後端側の上部にはシート繰出部21Aが設けられている。このシート繰出部21Aには、給紙カセット21内のシート束の最上層のシートを1枚ずつ繰り出すためのピックアップローラー(図略)が配置されている。
画像形成部30は、給紙部20から送り出されるシートにトナー画像を形成する画像形成処理を行う。画像形成部30は、感光体ドラム31(像担持体)と、この感光体ドラム31の周囲に配置された、帯電装置32、露光装置(図1には表れていない)、現像装置33、転写ローラー34及びクリーニング装置35とを含む。
感光体ドラム31は、その軸回りに回転し、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。感光体ドラム31としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。帯電装置32は、感光体ドラム31の表面を均一に帯電するものであって、感光体ドラム31に当接する帯電ローラーを含む。露光装置は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム31の周面に、パーソナルコンピューター等の外部装置から与えられる画像データに基づいて変調された光を照射して、静電潜像を形成する。
現像装置33は、感光体ドラム31上の前記静電潜像を現像してトナー像を形成するために、感光体ドラム31の周面にトナーを供給する。現像装置33は、感光体ドラム31に供給するトナーを担持する現像ローラー331と、現像ハウジング60(図2〜図5参照)の内部で現像剤を攪拌しながら循環搬送する第1搬送スクリュー332及び第2搬送スクリュー333とを含む。この現像装置33については、後記で詳述する。
転写ローラー34は、感光体ドラム31の周面に形成されたトナー像をシート上に転写させるためのローラーであって、感光体ドラム31と転写ニップ部を形成している。この転写ローラー34には、トナーと逆極性の転写バイアスが与えられる。クリーニング装置35は、クリーニングローラー等を有し、トナー像転写後の感光体ドラム31の周面を清掃する。
定着部40は、転写されたトナー像をシート上に定着する定着処理を行う。定着部40は、加熱源を内部に備えた定着ローラー41と、この定着ローラー41に対して圧接され、定着ローラー41との間に定着ニップ部を形成する加圧ローラー42とを含む。トナー像が転写されたシートが前記定着ニップ部に通紙されると、トナー像は、定着ローラー41による加熱および加圧ローラー42による押圧により、シート上に定着される。
トナーコンテナ50は、現像装置33に補給するトナー(現像剤)を貯留する。トナーコンテナ50は、トナーの主な貯留箇所となるコンテナ本体51(容器本体)と、コンテナ本体51の一側面(図1では後面)の下部から突設された筒状部52と、コンテナ本体51の他の側面を覆う蓋部材53と、コンテナ内部に収容されトナーを搬送する回転部材54とを含む。トナーコンテナ50内に貯留されたトナーは、回転部材54が回転駆動されることによって、筒状部52の先端下面に設けられたトナー排出口521から現像装置33内に供給される。このトナーコンテナ50については、図6以下を参照して後記で詳述する。
本体ハウジング10内には、シートを搬送するために、主搬送路22F及び反転搬送路22Bが備えられている。主搬送路22Fは、給紙部20のシート繰出部21Aから画像形成部30及び定着部40を経由して、本体ハウジング10上面の排紙部13に対向して設けられている排紙口14まで延びている。反転搬送路22Bは、シートに対して両面印刷を行う場合に、片面印刷されたシートを主搬送路22Fにおける画像形成部30の上流側に戻すための搬送路である。
主搬送路22Fの、感光体ドラム31と転写ローラー34との転写ニップ部よりも上流側には、レジストローラー対23が配置されている。シートは、レジストローラー対23にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで、前記転写ニップ部に送り出される。主搬送路22F及び反転搬送路22Bの適所には、シートを搬送するための搬送ローラーが複数配置されており、例えば排紙口14の近傍には排紙ローラー対24が配置されている。
反転搬送路22Bは、反転ユニット25の外側面と、本体ハウジング10の後カバー12の内面との間に形成されている。なお、反転ユニット25の内側面には転写ローラー34及びレジストローラー対23の一方のローラーが搭載されている。後カバー12及び反転ユニット25は、それらの下端に設けられた支点部121の軸回りに各々回動可能である。反転搬送路22Bにおいてシートジャムが発生した場合、後カバー12が開放される。主搬送路22Fでシートジャムが発生した場合、或いは感光体ドラム31のユニットや現像装置33が外部に取り出される場合には、後カバー12に加えて反転ユニット25も開放される。
続いて、図2〜図7を参照して、現像装置33及びトナーコンテナ50の構造、並びにこれらの配置関係について説明する。図2は、現像装置33とトナーコンテナ50との組み付け状態を示す平面図、図3はその斜視図、図4は、現像装置33単体の斜視図、図5は、現像装置33の内部構造を示す平面図、図6及び図7は、トナーコンテナ単体の斜視図をそれぞれ示している。
現像装置33は、一方向(現像ローラー331の軸方向)に長尺の箱形形状を有する現像ハウジング60を備える。現像ハウジング60は、その長手方向に延びる開口部が形成され、該開口部から現像ローラー331の周面の一部が露呈している。本実施形態において現像ハウジング60は、その長手方向が本体ハウジング10の左右方向と一致するよう、本体ハウジング10に組み付けられている。
現像ハウジング60の左端付近の天板60Tには、トナーコンテナ50から供給されるトナーを当該ハウジング内に受け入れるためのトナー補給口60Hが穿孔されている。このトナー補給口60Hと、トナーコンテナ50のトナー排出口521とが上下方向に重なるように、現像装置33とトナーコンテナ50とが組み付けられる。トナーコンテナ50は、図2に矢印Aで示すように、現像ハウジング60の長手方向と直交する方向(前後方向)において、現像装置33に対して着脱される。トナーコンテナ50は上面視で一方向に長いハウジング形状を備えるので、現像装置33にトナーコンテナ50が装着された状態では、上面視で略L字型の構造体を形成することになる(図2参照)。
天板60Tの上面には、左右方向にスライド移動が可能な現像シャッター板61が配置されている。現像シャッター板61は、付勢バネ62で常時左方向に付勢されている。付勢バネ62はコイルバネであって、現像シャッター板61の右端縁と、該現像シャッター板61に隣接するリブとに各々設けられたバネ座621、622に各端部が取り付けられている。図4ではトナー補給口60Hが開放されている状態を示しているが、トナーコンテナ50が未装着の状態では、現像シャッター板61は付勢バネ62に付勢されて左方に位置し、トナー補給口60Hを塞ぐ。
トナーコンテナ50の筒状部52の先端縁(他端部524)下部には、押圧板522が取り付けられている。また、筒状部52の先端面には、回転部材54に回転駆動力を入力するためのコンテナギア54Gが露出して配置されている。現像ハウジング60のトナー補給口60Hの左奥部には、入力ギア631とカップリング632とを備えるギアホルダー63が配置されている。カップリング632は、本体ハウジング10に備えられた図略のモーターからの回転駆動力が与えられる。入力ギア631は、トナーコンテナ50が現像装置33に装着された状態でコンテナギア54Gと歯合され、前記回転駆動力をコンテナギア54Gに伝達する。
トナーコンテナ50が現像装置33に装着される際、トナー補給口60Hに対してトナーコンテナ50の筒状部52が前方から後方に進入する。この際、トナーコンテナ50の押圧板522が、トナー補給口60Hを塞いでいる状態の現像シャッター板61と干渉し、当該現像シャッター板61を右方へ移動させる。具体的には、現像シャッター板61の上面に突設されている斜行凸条623と押圧板522とが干渉し、付勢バネ62の付勢力に抗して現像シャッター板61が右方へ押し遣られる。トナーコンテナ50の筒状部52が所定位置まで進入すると、トナー補給口60Hは完全に開放されると共に、入力ギア631にコンテナギア54Gが歯合することになる。
図5を参照して、現像ハウジング60は内部空間600を備える。二成分現像方式の場合、この内部空間600には、トナーとキャリアとからなる現像剤が充填される。キャリアは、内部空間600においてトナーと攪拌混合されトナーを帯電させると共に、トナーを現像ローラー331まで搬送する。トナーは、逐次現像ローラー331に供給されて消費され、その消費分はトナーコンテナ50から適宜供給される。
現像ハウジング60の内部空間600は、左右方向に延びる仕切り板601によって、左右方向に長尺の第1通路602と第2通路603とに区画されている。仕切り板601は、現像ハウジング60の左右方向幅よりも短く、仕切り板601の右端及び左端には、第1通路602と第2通路603とをそれぞれ連通させる第1連通部604及び第2連通部605が備えられている。これにより、現像ハウジング60の内部には、第1通路602、第1連通部604、第2通路603及び第2連通部605に至る循環経路が形成されている。
上述のトナー補給口60Hは、第1通路602の左端付近の上方に配置されている。第1通路602には第1搬送スクリュー332が収容され、第2通路603には第2搬送スクリュー333が収容されている。第1、第2搬送スクリュー332、333は、それぞれシャフトと、このシャフトの周上にスパイラル状に突設された羽根部材とを含む。第1搬送スクリュー332は、シャフト回りに回転駆動されることで、図5の矢印a方向に現像剤を搬送する。一方、第2搬送スクリュー333は、シャフト回りに回転駆動されることで、矢印b方向に現像剤を搬送する。
第1、第2搬送スクリュー332、333が回転駆動されることで、上述の循環経路に沿って現像剤が循環搬送される。トナー補給口60Hから新たに補給されたトナーについて説明すると、当該トナーは第1通路602に落下して既存の現像剤と混合され、第1搬送スクリュー332により矢印a方向に搬送される。この際、トナーはキャリアと攪拌され、帯電される。次いでトナーは、第1通路602の下流端から第1連通部604を経て第2通路603に入り、第2搬送スクリュー333によって矢印b方向に搬送される。この搬送の際、トナーは同様に帯電される一方で、一部が現像ローラー331の周面に供給される。そして、残部のトナーとキャリアとは、第2連通部605を経て、第1通路602の上流端に戻される。
続いて、図6〜図11を参照して、トナーコンテナ50の詳細構造について説明する。図6は、トナーコンテナ50を筒状部52側(図1では後方側)から見た斜視図、図7は、視線方向を180度変えて蓋部材53側から見た斜視図、図8は、トナーコンテナ50の側面図、図9はその側断面図、図10は、トナーコンテナ50内に配置される回転部材54の斜視図である。
既述の通り、トナーコンテナ50は、コンテナ本体51、筒状部52(現像剤搬送路)、蓋部材53及び回転部材54を含む。コンテナ本体51は、トナーを貯留する空間を形成するために、断面半円形状の底壁511と、該底壁511の一端縁から上方に延びる第1側壁512と、前記底壁511の他端縁から上方に延び前記第1側壁512と対向する第2側壁513と、筒状部52側の端縁部において第1側壁512及び第2側壁513を繋ぐ第3側壁514と、第1側壁512及び第2側壁513の上端縁同士を繋ぐ天壁515と、蓋部材53と対向する側の端縁に形成された第1フランジ部516とを備えている。なお、コンテナ本体51の第1フランジ部516の側は、側部開口面とされている。
コンテナ本体51は、底壁511の部分が最も幅が狭く、この底壁511から上方に向かうに連れて、第1側壁512と第2側壁513との間隔が広くなる縦長の外観形状を備えている。第1側壁512及び第2側壁513は平板状の部材であり、これら第1側壁512及び第2側壁513は断面視において直線状の内面を備えている。
第3側壁514の上部には、トナーをコンテナ本体51内に充填するための開口を塞ぐキャップ517が取り付けられている。第2側壁513には、当該トナーコンテナ50の管理情報が記録された無線タグ518が取り付けられている。また、第1側壁512及び第2側壁513の上端部付近には、底壁511が延びる方向に平行な一対の溝部519が形成されている。この溝部519は、トナーコンテナ50が本体ハウジング10に装着される際に、本体ハウジング10側の図略のガイド部材でガイドされる部分である。
筒状部52は、現像剤を搬送するための円筒状空間を備えた現像剤搬送路であって、第3側壁514から、底壁511に連なって突設された円筒状の部分である。筒状部52の一端部523は、第3側壁514の下端部に連接され、コンテナ本体51の内部空間と筒状部52の内部空間とは連通状態とされている。筒状部52の他端部524は筒状部52の突出端であって、コンテナギア54Gは他端部524から更に外方に突出する状態で配置されている。筒状部52の底部525は、コンテナ本体51の底壁511に面一とされており、これにより断面半円形状の樋状部分が、第1フランジ部516から他端部524に亘って形成されている。筒状部52は、回転軸541の径方向の断面形状が円形である内壁面を備え、その一端部523から他端部524に向けて、僅かに先細りのテーパ形状とされている。
上述の通り、筒状部52にはトナー排出口521が設けられ、当該筒状部52が現像装置33に装着される。なお、トナー排出口521は、筒状部52の底部525に配置された落下口である。前記装着の際に現像ハウジング60の一部と係合する係合部526が、底部525に配置されている。コンテナ本体51内に貯留されているトナーは、後述する回転部材54の回転駆動により筒状部52に送り出され、トナー排出口521から吐出される。
図9に示すように、トナー排出口521は、底部525の、他端部524の近傍に設けられている。トナー排出口521の下面には、筒状部52の延びる方向に沿ってスライド移動するシャッター板527が取り付けられている。シャッター板527は、図略の付勢部材により常時トナー排出口521を塞ぐよう、他端部524の方向に付勢されている。一方、筒状部52が現像装置33に装着される際、シャッター板527は現像ハウジング60の一部と干渉して、一端部523の方向にスライド移動する。図9は、シャッター板527が後退してトナー排出口521を開放している状態を示している。なお、シャッター板527と上述の係合部526とは一体の部材である。
蓋部材53は、コンテナ本体51の側部開口面を覆うもので、凹形状を備えた蓋本体部531と、蓋本体部531の周縁に設けられ第1フランジ部516と突き合わされる第2フランジ部532とを備える。蓋本体部531は、下方から上方へ膨らむように傾斜した傾斜面と、その傾斜面の上端に連なる垂直面とを備える。蓋本体部531の前記垂直面は、第2フランジ部532から相当突出した部分となっており、ユーザーは当該部分を摘んで、トナーコンテナ50の本体ハウジング10に対する着脱操作を行うことができる。蓋本体部531の内面下端には、後述する回転部材54の回転軸の第1端部542を回転自在に支持する軸支部533が設けられている。軸支部533に第1端部542が挿入された状態で、第2フランジ部532は第1フランジ部516に溶着される。
回転部材54は、コンテナ本体51の底壁511から筒状部52の上に亘って配置され、軸回りに回転駆動されることによりトナーを搬送する部材である。図9及び図10に示すように、回転部材54は、回転軸541(回転軸部材)と、この回転軸541と一体回転する第1搬送部材55、第2搬送部材56及び一対の分散部材57(外側部材)とを備えている。
回転軸541は、細長い円柱状の部材であり、底壁511(筒状部52)の延びる方向に延在するように配置され、その両端に第1端部542及び第2端部543を備えている。第1端部542は、蓋部材53の軸支部533で回転自在に支持されている。筒状部52において、回転軸541は、当該筒状部52の筒心に沿って配置されている。第2端部543には、筒状保持片544が一体的に取り付けられている。この筒状保持片544に、コンテナギア54Gの胴部545が嵌め入れられることで、コンテナギア54Gと回転軸541とが一体化されている。胴部545は、筒状部52の他端部524で回転自在に支持されている。
また、筒状保持片544には、トナー排出口521にトナーを送り出す可撓性のフイルム部材546が取り付けられている。フイルム部材546は、矩形状の薄いPETフイルムであり、回転軸541の軸方向と直交する方向に突出して、筒状保持片544の周面に取り付けられている。フイルム部材546は、回転軸541の回転時に周回し、筒状部52の他端部524付近に存在するトナーを流動化させ、トナー排出口521に送り出す。
第1搬送部材55は、回転軸541と一体で、回転軸541の周面にスパイラル状に突設された搬送部材である。第2搬送部材56は、回転軸541の外周に、回転軸541及び第1搬送部材55との間にギャップを置いて配置された中空のスパイラル状搬送部材である。つまり、第2搬送部材56は、回転軸541の周面上であって、第1搬送部材55よりも径方向外側に配置されている。第1搬送部材55は、回転軸541に沿った一方向へ向かう搬送力をトナーに与える。一方、第2搬送部材56は、前記一方向と反対方向へ向かう搬送力をトナーに与える。
一対の分散部材57は、回転軸541とほぼ同じ長さを有し且つ回転軸541と平行に配置される棒状の部材であって、第2搬送部材56の側部をそれぞれ連結する部材である。分散部材57は、第1搬送部材55に対して所定のギャップを置いて配置されている。また、一の分散部材57と他の分散部材57とは、回転軸541の周方向に180度の間隔をおいて配置されている。筒状部52において分散部材57は、その筒状部52の円筒状空間の、内周壁に近い外周領域に配置されることになる。
換言すると、第2搬送部材56は複数の半円形のアーチ状搬送片からなり、一対の分散部材57によりこれらアーチ状搬送片が一体化され、その結果として、軸心付近に中空部を備えたスパイラル状の第2搬送部材56が形成されている。前記第2搬送部材56の中空部の内径は、第1搬送部材55のスパイラル外径よりも大きい。そして、前記中空部の中に、第1搬送部材55を周面に備えた回転軸541が同心状に挿通された態様が、本実施形態の回転部材54の構成である。なお、第1搬送部材55のスパイラル方向と、第2搬送部材56のスパイラル方向は逆方向である。
第2搬送部材56の第2端部543側(筒状部52側の端部)には、半円形のアーチ状搬送片からなるスパイラル片56Rが取り付けられている。このスパイラル片56Rは、第2搬送部材56のアーチ状搬送片と略同じサイズである。しかし、第2搬送部材56のアーチ状搬送片とはスパイラル方向が逆となるように、スパイラル片56Rは、一対の分散部材57間に取り付けられている。
一対の分散部材57は、その端部571において連結ピース572によって連結されている。連結ピース572は、その中央部において、回転軸541の第1端部542付近に固着されている。図10には表れていないが、第2端部543の側にも同様な連結ピースが配置されている。すなわち、回転軸541と、第2搬送部材56及び分散部材57とは連結ピース572によって一体化されており、回転軸541が回転すると、第2搬送部材56及び分散部材57も一体回転する。
回転部材54(回転軸541)は、コンテナ本体51から筒状部52に跨って架設されており、図10に示している通り、コンテナ本体51内に位置する第1部分54Aと、筒状部52内に位置する第2部分54Bとを含む。第1搬送部材55は、回転軸541の軸方向のほぼ全長に亘って形成されている。つまり、回転軸541の第1部分54A及び第2部分54Bの双方に相当する部分の周面上に、第1搬送部材55は形成されている。一方、第2搬送部材56は、第1部分54Aに相当する領域にのみ配置されている。スパイラル片56Rは、第1部分54Aにおける第2部分54Bとの境界部の近傍に、第2搬送部材56の端部に連接される形態で配置されている。分散部材57は、第1部分54A及び第2部分54Bの双方に跨って配置されている。
コンテナギア54Gに、回転軸541を所定の回転方向に回転させる回転駆動力が与えられると、第1搬送部材55及び第2搬送部材56は、それぞれのスパイラル方向に応じてトナーの搬送力を発生する。第2搬送部材56は、コンテナ本体51側から筒状部52(トナー排出口521)側に向かう方向(以下、第2搬送方向)に、トナーを搬送する。つまり、回転軸541の第1端部542側から第2端部543側に向けてトナーを搬送する。これに対し、第1搬送部材55は、トナーを筒状部52側からコンテナ本体51側に戻す方向(以下、第1搬送方向)に、トナーを搬送する。つまり、回転軸541の第2端部543側から第1端部542側に向けてトナーを搬送する。
一方、分散部材57は、第1搬送部材55及び第2搬送部材56によって搬送されるトナーを、回転軸541の径方向外側へ分散させる役目を果たす。すなわち、分散部材57は、第1搬送部材55又は第2搬送部材56のスパイラル片によって推進力(付勢力)を与えられたトナーの周囲に存在するトナーを、径方向外側へ分散する。これにより、トナーの前記第1搬送方向又は第2搬送方向への移動が促進される。
スパイラル片56Rは、第2搬送部材56のスパイラル方向は逆方向に配置されているので、トナーを第1搬送方向に搬送する。スパイラル片56Rの役目は、コンテナ本体51の、筒状部52との境界部付近において、トナーを筒状部52からコンテナ本体へ積極的に戻す搬送力を発生させることにある。
回転部材54の詳細構造について、図11に基づいて説明する。図11(A)は、筒状部52内に位置する第2部分54Bにおける、回転部材54の部分的な側断面図、図11(B)はその縦断面図である。本実施形態の回転部材54は、その軸心付近においては第1搬送部材55が発生する付勢力によってトナーを第2搬送方向へ搬送し、前記軸心付近よりも径方向外側の周辺部分では第2搬送部材56が発生する付勢力によってトナーを第1搬送方向へ搬送する。このようなトナーの両方向搬送をスムースに行わせるために、第1搬送部材55と分散部材57との間のギャップ、及び、第1搬送部材55の回転軸541からの突出高さに工夫が施されている。
図11(A)及び(B)に示すように、回転軸541の半径をR、第1搬送部材55の回転軸541の周面からの突出高さをD1、第1搬送部材55のスパイラルの最外周部55Aと分散部材57(外側部材)の径方向内面57Aとの間を距離D2とする。ここで、回転軸541の延在方向から見た場合(図11(B))における、第1搬送部材55の投影面積S1と、第1搬送部材55の最外周部55Aと分散部材57の内面57A(分算部材57の回転により内面57Aが通過する回転軌道)との間の円環状ギャップの投影面積S2とは、次の(1)式及び(2)式で表すことができる。
S1=π×{((R+D1)2−R2)} ・・・(1)
S2=π×{((R+D1+D2)2−(R+D1)2)} ・・・(2)
そして、本実施形態では、前記投影面積S1と前記投影面積S2との関係が次の(3)式を満たすように設定される。
0.4<S2/S1<19.0 ・・・(3)
上記(3)式を満たすことで、分散部材57と第1搬送部材55との間には十分なギャップが確保される。従って、分散部材57と第1搬送部材55との間においてトナーの流動性を良好とすることができ、トナーの搬送方向が前記軸心付近と周辺部分とで異なっていても、各々の方向への現像剤の搬送を的確に行わせることができる。
この点について、図12を参照して、さらに説明する。図12は、筒状部52の縦断面の一部を示している。筒状部52は、トナーを搬送するための円筒状空間を備えたトナー搬送路であると言うことができる。そして、前記円筒状空間の中心軸AX付近の筒心領域R1においては、筒状部52側からコンテナ本体51側に戻す方向(矢印C2;第1搬送方向)に付勢されたトナーが搬送される。一方、筒心領域R1の周辺の外周領域R2においては、コンテナ本体51側から筒状部52(トナー排出口521)側に向かう方向(矢印C1;第2搬送方向)に付勢されたトナーが搬送される。前記第1搬送方向への付勢力をトナーに与えるのが第1搬送部材55であり、前記第2搬送方向への付勢力をトナーに与えるのが第2搬送部材56である。
投影面積S1(第1搬送部材55の突出高さD1)は、前記第1搬送方向への付勢力の大きさに影響する。すなわち、S1(D1)が大きい程、大きな付勢力をトナーに与えることができる。しかし、いくら第1搬送部材55に大きな付勢能力を具備させても、分散部材57と第1搬送部材55との間においてトナーの流動性が悪いと、第1搬送方向C2へのトナー搬送が十分に行えない。投影面積S2(距離D2)は、上記のトナー流動性に影響を与える。分散部材57が第1搬送部材55に近接しすぎていると、筒心領域R1に存在するトナーの流動性が分散部材57の回転によって制限されてしまう。
そこで本実施形態では、上記(3)式を満たすことができるように、上記D1及びD2が設定される。上記(3)式の下限値(0.4)を下回ると、投影面積S2(距離D2)が小さすぎてトナーの流動性が悪化し、第1搬送方向C2へのトナー搬送が十分に行えない。すなわち、前記流動性の悪化によって、第1搬送部材55の周囲に、トナーが凝集したトンネルが形成され易くなる。その結果、第1搬送部材55のスパイラルの谷間に存在するトナーは動けなくなり、その一方で第2搬送部材56によってトナーが筒状部52に供給され続けるので、筒状部52においてトナー詰まりが発生する。また、上記(3)式の上限値(19.0)を上回ると、投影面積S1(突出高さD1)が小さすぎて、トナーに第1搬送方向C2へ向かう付勢力を十分に与えることができず、やはりトナー詰まりが発生する。これに対し、上記(3)式を満たすように上記D1及びD2を設定すれば、第1搬送方向C2へ向かう前記付勢力を確保しつつ、前記トナーの流動性が良好となるので、第1搬送方向C2に向けたトナーの搬送性を良好なものとすることができる。
上記実施形態において、スパイラル片56Rが存在しない回転部材を用いても良い。図13は、変形実施形態に係る回転部材54M1を示す斜視図である。この回転部材54M1では、図10においてスパイラル片56Rが存在する位置まで、第2搬送部材56のスパイラルを形成するアーチ状搬送片560が配置されている。つまり回転部材54M1は、第1部分54Aの全域に亘って、第2搬送部材56のスパイラルが形成されているものである。第1搬送部材55及び第2搬送部材56によるトナーの搬送作用は、図10の回転部材54と同様である。
以上の通り、本実施形態の回転部材54(54M1)は、径方向内側(第1搬送部材55)と外側(第2搬送部材56)とで、互いに異なる方向にトナーを搬送する能力を有する。先ず、図13に示す回転部材54M1によるトナー搬送動作を、図14、図15に基づいて説明する。図14は、回転部材54M1によるトナーの搬送動作を説明するための、トナーコンテナ50Aの模式的な側断面図、図15は、図14の状態から回転部材54M1が90度回転した状態の、トナーコンテナ50Aの模式的な側断面図である。
第2搬送部材56は、回転駆動されることで、トナーに第2搬送方向へ向かう押圧力を与える。第2搬送部材56によって筒状部52に向かわされるトナーは、図中に矢印C1で示すように、専ら回転部材54の外周部付近を移動する。筒状部52内には第2搬送部材56が存在しない。しかし、回転軸541の径方向で見て第2搬送部材56とほぼ同じ周回軌道上に存在する分散部材57が筒状部52の内周壁に近い部分(外周領域R2)のトナーを流動させるので、トナーの第2搬送方向への推進力は維持される。従ってトナーは、筒状部52内においても、その内周壁に近い部分において、矢印C1で示すように他端部524に向けて移動する(図12も参照)。
第2搬送方向へ搬送されるトナーは、やがて筒状部52の他端部524に到達する。到達したトナーの一部は、フイルム部材546で押圧される形で、トナー排出口521から現像ハウジング60内に落下する。
一方、トナー排出口521から吐出されなかったトナーは、第1搬送部材55の駆動によって、図中に矢印C2で示すように、専ら筒状部52の中心軸に近い部分(筒心領域R1)において、第1搬送方向に逆搬送される。逆搬送されるトナーは、やがて筒状部52とコンテナ本体51との境界を通過し、分散部材57による分散効果も相俟って、コンテナ本体51に戻される。
このように、本実施形態のトナーコンテナ50(50A)においては、第2搬送部材56によって一旦筒状部52に送り出されたトナーが、第1搬送部材55によってコンテナ本体51に戻される循環搬送機能が具備されている。このため、筒状部52に先端にトナー排出口521が設けられた構造のトナーコンテナ50であっても、トナー排出口521の近傍においてトナーが凝集することを抑止できる。
すなわち、筒状部52は、第2搬送部材56のスパイラル外径よりやや大きい内径を有する程度の狭小な筒状内部空間を備える部位である。このような筒状部52を有するトナーコンテナ50において、回転部材54に、第2搬送方向にトナーを搬送する機能のみが備えられている場合、トナーの送り量に対して吐出量が少ないと、やがてトナーは行き場を失い筒状部52内で押し固められ、ついには凝集化する。そうすると、トナー排出口521がトナーの凝集体で塞がれ、トナーが吐出できなくなる不具合が生じる。
これに対して本実施形態のトナーコンテナ50では、第1搬送部材55が筒状部52内に配置され、トナーを第1搬送方向へ逆方向送りする搬送機能を備えるので、トナーが押し固められることはない。すなわち、筒状部52においては、径方向外側にはトナーの逃げ場が無いので、トナーは筒状部52の軸心方向に向かおうとする。その軸心部分には第1搬送部材55が配置され、トナーを第1搬送方向に搬送する。しかも、上記(3)式を満たすように上記D1及びD2が設定されているので、第1搬送方向に向けたトナーの搬送性は良好である。従って、トナーが凝集化する前に、トナーを筒状部52からコンテナ本体51へ効率良く戻すことができる。
上記の循環搬送機能は、図10に示すスパイラル片56Rを備えた回転部材54を用いた場合、より促進される。図16は、図10の回転部材54によるトナーの搬送動作を説明するための、トナーコンテナ50の模式的な側断面図である。第1搬送部材55及び第2搬送部材56によるトナーの搬送動作は、図14及び図15に基づき説明した動作を同様である。
筒状部52内においてトナーは、回転軸541の径方向外側への逃げ場が制限されており、筒状部52とコンテナ本体51との境界部付近においても、トナーの逃げ場が比較的少ない。このような前記境界部付近において、スパイラル片56Rの駆動によって、トナーを筒状部52からコンテナ本体51へ送り出す、図中矢印C3方向の押圧力を発生させることができる。矢印C3方向に押し戻されたトナーは、分散部材57の駆動によって、矢印C4方向に示すように、回転部材54の径方向外側へ分散される。従って、第2搬送部材56によって第2搬送方向へ順方向搬送されるトナーと、第1搬送部材55によって第1搬送方向へ逆方向搬送されるトナーとの衝突が緩和され、トナーの筒状部52からコンテナ本体51への戻りを円滑に行わせることができる。
以下、上記の(3)式における投影面積S1と投影面積S2との面積比S2/S1の適正化についての実験結果を示す。次の部品を用いて図9に示すようなトナーコンテナ50を作製した。
筒状部52;内径=φ17mm、長さ=45mm
コンテナ本体51;筒状部52と連通する部分の幅=17mm、長さ=100mm
第1搬送部材55;外径=φ5mm〜13mm、ピッチ=10mm、回転軸541の外径=4mm又は5mm
第2搬送部材56;最大外径=φ21mm、最小外径=φ16mm、内径=φ14mmで、筒状部52側に向かう程、外径が小さい。スパイラルの傾斜角は62.2度に設定。
分散部材57;円周方向の幅=1mm
スパイラル片56R;外径=φ18mm、内径=φ14mm。スパイラルの傾斜角は、62.2度。
上記トナーコンテナ50の筒状部52にイエロートナー4.3グラムを充填する一方で、コンテナ本体51に黒トナーを100グラム充填した。トナー排出口521を閉じた状態で、回転部材54を15分間回転させた。しかる後、コンテナ本体51に収容されているトナーの上層箇所から一部のトナーを採取し、その濃度(L値)をマクベス反射濃度計RD−19I(マクベス社製)にて測定した。同様の測定を、面積比S2/S1を表1の通りに異ならせた8個(実施例1〜10、比較例1〜3)のトナーコンテナ50について実施した。その結果を表1に示す。
表1から明らかな通り、面積比S2/S1が上記(3)式の条件を満たす実施例1〜10のトナーコンテナではL値が高い値を示している。これは、筒状部52に充填したイエロートナーがコンテナ本体51に戻され、黒トナーと混合された結果、明るさが増したことを示している。特に、実施例5〜7の面積比S2/S1=6.1〜3.4の範囲のトナーコンテナについては、15を超過するL値を得ることができた。一方、比較例1〜3のトナーコンテナではL値が低く、イエロートナーがコンテナ本体51の黒トナーとあまり混合されていない、つまり筒状部52からコンテナ本体51に戻されていないことを示している。以上の実験結果より、上記(3)式の範囲で面積比S2/S1を設定することが好ましいことが確認された。とりわけ、実施例5〜7と、実施例4及び実施例8との間のL値の傾きを考慮すると、面積比S2/S1は、3.0〜7.0の範囲が特に好ましい値であると言える。
以上説明した本実施形態によれば、コンテナ本体51と、このコンテナ本体51から突設されトナー排出口521を有する筒状部52とを含むコンテナ形状を有するトナーコンテナ50において、トナーを正逆の2方向に搬送する筒状部52内でトナーの搬送性を良好とすることができる。これにより、筒状部52内においてトナーが凝集することを抑止できる。従って、コンテナ本体51内に貯留されたトナーを残存させることなく現像装置33に供給できるトナーコンテナ50を提供することができる。
以上、本発明の実施形態に係るトナーコンテナ50及び画像形成装置1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記実施形態では、現像剤搬送装置の具体例としてトナーコンテナ50を例示し、また、現像剤搬送路としてトナーコンテナ50の筒状部52を例示した。現像剤搬送装置は、例えばトナー貯留部と現像ローラー等とが一体化された現像ユニット、トナーコンテナと現像装置との間に介在される中間ホッパー、或いは画像形成部30で回収された廃トナーを廃トナーコンテナまで搬送する搬送路等であっても良い。
(2)上記実施形態では、外側部材の例として、分散部材57を例示した。外側部材は他の部材であっても良く、例えば第2搬送部材56であっても良い。この場合、上記(2)式におけるD2は、第2搬送部材56の内周面と、第1搬送部材55の最外周部分との距離となる。
(3)上記実施形態では、第1搬送部材55が回転軸541の軸方向全長に亘って形成されている例を示した。第1搬送部材55は、少なくとも回転軸541の第2部分54Bに形成されていれば良い。図17は、変形実施形態に係る回転部材54M2を備えたトナーコンテナ50Bの模式的な側断面図である。図示する通り、第1搬送部材550は、トナーコンテナ50Bの筒状部52に相当する第2部分54Bにのみ、回転軸541の周面に形成されている。第2搬送部材56は、上記実施形態と同様に、コンテナ本体51に相当する第1部分54Aにのみ配置されている。このような構成の回転部材54M2であっても、第1搬送部材550はトナーを筒状部52からコンテナ本体51に戻すので、筒状部52内でトナーが凝集することを抑止できる。