JP2013095987A - アルミニウム合金線及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】所望の引張強さ、耐熱性および高導電性を兼ね備えつつ、連続鋳造圧延法を用いた量産機にも十分に対応可能であるアルミニウム合金線及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】Zrを0.2〜0.40重量%、Scを0.05〜0.30重量%、Siを0.01〜0.05重量%、Feを0.05〜0.20重量%、Tiを0.001〜0.010重量%、Vを0.001〜0.010重量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金線。
【選択図】なし

Description

本発明は、導電用耐熱アルミニウム(Al)合金線、及びそれを用いたアルミニウム電線(例えば、架空送電線や電車線用電線)に関するものである。
近年の電力需要の増加にともない、架空送電線や電車線用電線においては送電容量の増加が要求されている。送電容量を増加させるためには、導体の断面積を大きくすれば良いが、重量が増加するため既存鉄塔等の許容強度を超える問題が生じる。
導体の断面積を変えずに送電容量を増加させるためには、耐熱性に優れ、かつ導電率の高いアルミニウム合金線を導体に使用すればよく、その目標値として、引張強さが200MPa以上、導電率が58%IACS以上、耐熱性が95%以上であることが望ましいといわれている。
従来、これに対処するために、Zrを0.1重量%程度含んだAl−Zr合金が使用されてきた。しかし、従来のAl−Zr合金線において耐熱性を向上させるにためには、Zrの添加量を増加して固溶量を増加させればよいが、その反面導電性が著しく低下してしまう問題がある。
かかる問題を解決するために、第3元素としてFe、Mg、Siなどを添加し、極めて長時間の熱処理を行うことで、耐熱性と導電性の要求特性を満たす耐熱アルミニウム合金線を製造している。
しかしながら、Al−Zr合金にFe、Mg、Siなどを添加し、耐熱性および導電性の両要求特性を満足させるためには、50時間を超える長時間の熱処理(時効処理)が必要であり、製造コストが高くなってしまうという問題がある。
一方で、熱処理時間を短縮するために、微量のBeを添加したAl−Zr−Be系合金線が開発され、適用されている状況にある。
しかしながら、Beを添加したAl−Zr−Be系合金の場合には、熱処理時間は短縮できるが、Be自体が高価な金属であるため製造コストが高くなってしまうという問題がある。
特開2001−131719号公報 特開2001−348637号公報 特許第4144184号公報 特許第4144188号公報
これに対し、引張強さおよび耐熱性に優れ、かつ導電率の高いアルミニウム合金線として、Alに所定量のZr、Scを添加したAl−Zr−Sc合金の開発が進められている。
本発明者らの検討により、引張強さ200MPa以上、導電率58%IACS以上、耐熱性95%以上の諸特性を両立するAl−Zr−Sc合金を用いたアルミニウム合金線が、研究・実験的な段階のものでは実現できることがわかっており(例えば特許文献1から4参照)、かかるアルミニウム合金線を量産に適した産業的な規模で実用可能にすることが求められている。
量産化を考慮すると、低コスト化の観点から、連続鋳造圧延法を用いてアルミニウム合金線を製造することが求められるが、かかる連続鋳造圧延法を用いたAl−Zr−Sc合金の製造上の問題については未だ十分になされているとはいえない。
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、所望の引張強さ、耐熱性および高導電性を兼ね備えつつ、連続鋳造圧延法を用いた量産機にも十分に対応可能であるアルミニウム合金線及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは、Zrを0.2〜0.40重量%、Scを0.05〜0.30重量%、Siを0.01〜0.05重量%、Feを0.05〜0.20重量%、Tiを0.001〜0.010重量%、Vを0.001〜0.010重量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金線であれば、所望の引張強さ、耐熱性および高導電性を兼ね備えつつ、連続鋳造圧延法を適用した量産機を用いて製造しても表面品質の優れた荒引線を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
また、上記目的を達成するため、本発明者らは、Zrを0.2〜0.40重量%、Scを0.05〜0.30重量%、Siを0.01〜0.05重量%、Feを0.05〜0.20重量%、Tiを0.001〜0.010重量%、Vを0.001〜0.010重量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鋳造圧延して荒引線を製造し、その荒引線に300〜400℃で5〜10時間の第1次熱処理を行い、続いて400〜500℃で20〜60時間の第2次熱処理を行い、その後、断面積減少率50%以上の冷間加工を施すアルミニウム合金線の製造方法を用いることで、連続鋳造圧延法を適用した量産機を用いて製造しても、所望の引張強さ、耐熱性および高導電性を兼ね備えたアルミニウム合金線を得ることができることを見出したものである。
本発明によれば、所望の引張強さ、耐熱性および高導電性を兼ね備えつつ、連続鋳造圧延法を用いた量産機にも十分に対応することができる。
本発明に係るアルミニウム合金線は、Zrを0.2〜0.40重量%、Scを0.05〜0.30重量%、Siを0.01〜0.05重量%、Feを0.05〜0.20重量%、Tiを0.001〜0.010重量%、Vを0.001〜0.010重量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。
本発明に係るアルミニウム合金線において、Zrを0.20〜0.40重量%、Scを0.05〜0.30重量%としたのは、Zrが0.20重量%未満、あるいはScが0.05重量%未満では、導電率の向上は達成できるものの、耐熱性の向上が達成できず、Zrを0.40重量%以上、あるいはScを0.30重量%以上では、耐熱性の向上は達成できるものの、導電率は低下してしまう。したがって、本発明において、ZrとScの適正な添加量は、Zr0.20〜0.40重量%、Sc0.05〜0.30重量%である。
そして、Zrを0.20〜0.40重量%、Scを0.05〜0.30重量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鋳造圧延することにより、AlマトリックスにZr、およびScを固溶させ、次いで熱処理することにより、Al3Zr、Al3Sc、およびAl3(Zr、Sc)の微細な析出物を形成させる。この析出物によって、加工組織を安定化し、かつ導電性を低下させることなく、加工材の耐熱性、および強度特性を著しく向上させることが可能となる。したがって、本発明は、従来技術であるZrをAl中に固溶させたり、あるいは熱処理によりAl3Zrのみを析出させることによって耐熱性および強度特性を向上させる。
また、本発明に係るアルミニウム合金線において、Siを0.01〜0.05重量%の範囲に限定したのは、Siには、熱処理時におけるAl3Zr、Al3Sc、およびAl3(Zr、Sc)の析出を促進する作用があり、Siが0.01重量%未満では、かかる作用の発現が乏しいためである。また、Siが0.05重量%を超えると、導電率を著しく低下させてしまう。
また、Feは、アルミニウム合金線の強度を向上させる作用があるが、Feが0.05重量%未満では、かかる作用の発現が乏しく、Feが0.20重量%を超えると導電率を著しく低下させてしまう。
また、TiおよびVは、アルミニウム合金の鋳造材における結晶粒を微細化して、かかる鋳造材の割れや傷の発生を抑制し、これにより鋳造圧延時の製品の歩留が大幅に向上する作用があるが、Tiが0.001重量%未満或いはVが0.001重量%未満では、かかる作用の発現が乏しいためである。また、Tiが0.010重量%を超え或いはVが0.010重量%を超える場合には、導電率を著しく低下させてしまう。
次に、本発明のアルミニウム合金線の製造方法は、Zrを0.2〜0.40重量%、Scを0.05〜0.30重量%、Siを0.01〜0.05重量%、Feを0.05〜0.20重量%、Tiを0.001〜0.010重量%、Vを0.001〜0.010重量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鋳造圧延して荒引線を製造し、その荒引線に300〜400℃で5〜10時間の第1次熱処理を行い、続いて400〜500℃で20〜60時間の第2次熱処理を行い、その後、断面積減少率50%以上の冷間加工を施す構成からなるものである。
本発明に係るアルミニウム合金線の製造方法は、工業的な製造方法である連続鋳造圧延法を用いる。この連続鋳造圧延法には、例えば、プロペルチ法、SCR法、ヘズレー法などがあり、本発明は特にこれを限定するものではない。以下では、本発明に係るアルミニウム合金線の製造方法について、アルミニウム合金線の製造に最も用いられるプロペルチ法によって説明する。
プロペルチ法によって得られた荒引線は、次いで300〜400℃で5〜10時間の第1次熱処理を行い、続いて400〜500℃で20〜60時間の第2次熱処理を実施する。これら熱処理によって、鋳造時に固溶したZrとScを微細な粒子として析出させることができる。ここで、第1次熱処理の作用は、析出物の核を形成させることであり、第2次熱処理の作用は析出物を適正な大きさに成長させることである。
熱処理が300〜400℃で5〜10時間の第1次熱処理、続いて400〜500℃で20〜60時間の第2次熱処理を行う場合、
第1次熱処理が300℃未満であると析出物の核発生が生じにくく、400℃を超えると析出物が成長するため好ましくない。また、熱処理時間が5時間未満であると析出物の核発生が不十分であり、10時間を超えると析出物の成長が生じ好ましくない。
さらに、第2次熱処理が400℃未満であると析出物の成長が不十分となり、導電性が回復されない。また、500℃を超える温度では析出物が粗大化し、耐熱性が向上しない。さらに、熱処理時間が20時間未満では析出物の成長が十分でなく、60時間を超えると析出物の粗大化が生じ、耐熱性が低下する。
したがって、本発明における熱処理は、300〜400℃で5〜10時間の第1次熱処理、400〜500℃で20〜60時間の第2次熱処理である。
また、荒引線の断面減少率50%以下では、冷間加工時の加工硬化によるアルミニウム合金線の強度特性の向上が期待できない。
以下、実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
Zrを0.35重量%、Scを0.1重量%、Siを0.03重量%、Feを0.11重量%、Tiを0.004重量%、Vを0.005重量%、残部はアルミニウムおよび不可避的不純物からなる合金を工業的製法であるプロペルチ法を用いて鋳造圧延し、外径12mmの荒引線を製造した。当該荒引線に第1次熱処理を350℃で7時間、次いで第2次熱処理を420℃で40時間施した後、断面積減少率93%の冷間加工を加えて外径3.2mmのアルミニウム合金線を製造した。
[実施例2]
Zrを0.35重量%、Scを0.2重量%、Siを0.03重量%、Feを0.11重量%、Tiを0.004重量%、Vを0.005重量%、残部はアルミニウムおよび不可避的不純物からなる合金を工業的製法であるプロペルチ法を用いて鋳造圧延し、外径12mmの荒引線を製造した以外は、実施例1と同様にして外径3.2mmのアルミニウム合金線を製造した。
[比較例1]
Zrを0.35重量%、Scを0.1重量%、残部はアルミニウムおよび不可避的不純物からなる合金を工業的製法であるプロペルチ法を用いて鋳造圧延し、外径12mmの荒引線を製造した。当該荒引線に第1次熱処理を350℃で7時間、次いで第2次熱処理を420℃で40時間施した後、断面積減少率93%の冷間加工を加えて外径3.2mmのアルミニウム合金線を製造した。
[比較例2]
Zrを0.35重量%、Scを0.2重量%、残部はアルミニウムおよび不可避的不純物からなる合金を工業的製法であるプロペルチ法を用いて鋳造圧延し、外径12mmの荒引線において、1次熱処理を350℃で7時間、次いで第2次熱処理を420℃で40時間施した後、断面積減少率93%の冷間加工を加えて外径3.2mmのアルミニウム合金線を製造した。
そしてまず実施例および比較例の荒引線の表面品質を市販の過流探傷機を用いて測定し、その表面傷又は表面割れの程度を相対的に評価し、表1中において、荒引線の表面傷の少ない良品を○とし、表面傷が多い不良品を×とした。
さらに、実施例と比較例のアルミニウム合金線について、それぞれ引張強さ(MPa)、導電率(%IACS)、耐熱性(%)を測定した。これらの評価結果を表1に示す。
ここで、耐熱性(%)は、(得られたアルミニウム合金線に280℃で1時間加熱した後における引張強さ/得られたアルミニウム合金線の引張強さ)×100で求められる値である。
Figure 2013095987
実施例1、実施例2並びに比較例1、2のアルミニウム合金線においては、いずれも200MPa以上の引張強さ、58%IACS以上の導電率、95%以上の耐熱性を有しているものの、荒引線の表面品質の点においては、実施例は、荒引線の表面傷が少なく、比較例は、荒引線の表面傷が多く入ってしまい、表面品質が悪かった。
次に、本発明に係るアルミニウム合金線の製造方法について、実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[比較例3]
Zrを0.35重量%、Scを0.1重量%、残部はアルミニウムおよび不可避的不純物からなる合金を工業的製法であるプロペルチ法を用いて鋳造圧延し、外径12mmの荒引線を製造した。当該荒引線に第1次熱処理を200℃で10時間、次いで第2次熱処理を400℃で50時間施した後、断面積減少率93%の冷間加工を加えて外径3.2mmのアルミニウム合金線を製造した。
[比較例4]
Zrを0.35重量%、Scを0.1重量%、残部はアルミニウムおよび不可避的不純物からなる合金を工業的製法であるプロペルチ法を用いて鋳造圧延し、外径12mmの荒引線を製造した。当該荒引線に第1次熱処理を350℃で7時間、次いで第2次熱処理を600℃で50時間施した後、断面積減少率93%の冷間加工を加えて外径3.2mmのアルミニウム合金線を製造した。
[比較例5]
Zrを0.35重量%、Scを0.2重量%、残部はアルミニウムおよび不可避的不純物からなる合金を工業的製法であるプロペルチ法を用いて鋳造圧延し、外径12mmの荒引線を製造した。当該荒引線に第1次熱処理を200℃で10時間、次いで第2次熱処理を400℃で50時間施した後、断面積減少率93%の冷間加工を加えて外径3.2mmのアルミニウム合金線を製造した。
[比較例6]
Zrを0.35重量%、Scを0.2重量%、残部はアルミニウムおよび不可避的不純物からなる合金を工業的製法であるプロペルチ法を用いて鋳造圧延し、外径12mmの荒引線を製造した。当該荒引線に第1次熱処理を350℃で7時間、次いで第2次熱処理を600℃で50時間施した後、断面積減少率93%の冷間加工を加えて外径3.2mmのアルミニウム合金線を製造した。
[比較例7]
Zrを0.35重量%、Scを0.1重量%、Siを0.03重量%、Feを0.11重量%、Tiを0.004重量%、Vを0.005重量%、残部はアルミニウムおよび不可避的不純物からなる合金を工業的製法であるプロペルチ法を用いて鋳造圧延し、外径12mmの荒引線を製造した。当該荒引線に第1次熱処理を200℃で10時間、次いで第2次熱処理を400℃で50時間施した後、断面積減少率93%の冷間加工を加えて外径3.2mmのアルミニウム合金線を製造した。
[比較例8]
Zrを0.35重量%、Scを0.2重量%、Siを0.03重量%、Feを0.11重量%、Tiを0.004重量%、Vを0.005重量%、残部はアルミニウムおよび不可避的不純物からなる合金を工業的製法であるプロペルチ法を用いて鋳造圧延し、外径12mmの荒引線を製造した。当該荒引線に第1次熱処理を200℃で10時間、次いで第2次熱処理を400℃で50時間施した後、断面積減少率93%の冷間加工を加えて外径3.2mmのアルミニウム合金線を製造した。
実施例1、2および比較例3から比較例8の金属組成と熱処理条件を表2に示すとともに、実施例1、2および比較例3から比較例8の引張強さ、導電率、耐熱性を表3に示す。
Figure 2013095987
Figure 2013095987
表2及び表3に示すように、本発明材である実施例1及び2のアルミニウム合金線の製造方法は、第1次熱処理および第2次熱処理のいずれも規定範囲内のものであったため、200MPa以上の引張強さ、58%IACS以上の導電率、95%以上の耐熱性を有するアルミニウム合金線を実現することができた。
これに対して、比較例3、5、7、8のアルミニウム合金線は、第1次熱処理の温度が200℃という低い温度であったため、析出物の核発生が生じにくく、導電性が回復されていないことがわかる。また、比較例4および比較例6のアルミニウム合金線は、第1次熱処理の温度が600℃という高い温度であったため、析出物が粗大化し、耐熱性が向上しないことがわかる。

Claims (2)

  1. Zrを0.2〜0.40重量%、Scを0.05〜0.30重量%、Siを0.01〜0.05重量%、Feを0.05〜0.20重量%、Tiを0.001〜0.010重量%、Vを0.001〜0.010重量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金線。
  2. Zrを0.2〜0.40重量%、Scを0.05〜0.30重量%、Siを0.01〜0.05重量%、Feを0.05〜0.20重量%、Tiを0.001〜0.010重量%、Vを0.001〜0.010重量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鋳造圧延して荒引線を製造し、その荒引線に300〜400℃で5〜10時間の第1次熱処理を行い、続いて400〜500℃で20〜60時間の第2次熱処理を行い、その後、断面積減少率50%以上の冷間加工を施すことを特徴とするアルミニウム合金線の製造方法。
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