JP2013091606A - 血清コレステロール量低下剤、及び血清コレステロール量を低下させる方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】MRJP1及び10−ヒドロキシ−2−デセン酸を有効成分とすることを特徴とする、血清コレステロール量低下剤、並びに、MRJP1及び10−ヒドロキシ−2−デセン酸を経口摂取することを特徴とする、血清コレステロール量を低下させる方法。
【選択図】なし
Description
(1) MRJP1及び10−ヒドロキシ−2−デセン酸を有効成分とすることを特徴とする、血清コレステロール量低下剤。
(2) MRJP1及び10−ヒドロキシ−2−デセン酸を経口摂取することを特徴とする、血清コレステロール量を低下させる方法。
<胆汁酸結合アフィニティーカラムの作製>
胆汁酸結合アフィニティーカラムは、カルボジイミドをスペーサーとして、コール酸をカラム担体であるEAH−Sepharose 4Bに結合させることにより作製した。胆汁酸結合アフィニティーカラムの調製方法は、Pattinsonらの方法(非特許文献6)に準じて行った。
具体的には、まず、EAH−Sepharose 4B担体50mL容量に対し、625mLの胆汁酸溶液(スペーサーとして33.4mM 1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide HClと3.7mMのコール酸を含む50%エタノール溶液)をpH6.4で16時間反応させ、担体にコール酸を結合させた。その後、カラムに非吸着の過剰なコール酸溶液を0.5M NaClを含む50%エタノールで洗浄したものを充填することにより、胆汁酸結合アフィニティーカラム(カラムのベッド容量:50mL)を作製した。なお、カラムは使用前に0.02%NaN3溶液にて平衡化した。
次いで、作製されたカラムが、実際に胆汁酸結合能を有する化合物に対するアフィニティーを備えているかどうかを、BSAとOvalbuminをアプライすることにより、確認した。カラムからの溶出条件は、マキノらの方法(非特許文献7)に準じて行った。
まず、作製された胆汁酸結合アフィニティーカラムに、1.5mg/mLのBSA溶液又はOvalbumin溶液をアプライした。次に、当該カラムに第1次洗浄液(0.5M NaCl、10mM Tris−HCl、pH8.0)を通し、当該カラム中の担体に吸着していなかった物質を洗浄除去した。次いで、当該カラムに、溶出液(0.5%Sodium deoxycholate、10mM Tris−HCl、pH8.0)を通し、コール酸と結合したタンパク質、すなわち胆汁酸結合能を有するタンパク質を溶出した。最後に、当該カラムに、第2次洗浄液(8M urea、10mM Tris−HCl、pH8.0)を通し、当該カラムに非特異的に結合した物質を溶出した。
<胆汁酸結合アフィニティーカラムによるRJタンパク質の分画>
参考例1で作製された胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いて、RJタンパク質の分画を行い、胆汁酸結合能を有するタンパク質を単離・精製した。この胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いたRJ由来胆汁酸結合タンパク質の単離精製は、これまで報告が無く、非常に効率的な精製法である。
まず、RJタンパク質溶液を調製した。具体的には、RJ(中国産)に純水を加えて懸濁したものを、孔径10kDaの透析膜を用いて、純水にて72時間透析した。透析膜内液を回収し、凍結乾燥した後、再びNaN3含有トリス緩衝液(0.2%NaN3、10mM Tris−HCl(pH8.0))に懸濁し、117mg/25mLのRJタンパク質溶液(10kDa cut off RJ)を調製した。
さらに、溶出液により溶出された画分(図2中の「A」、以下、「画分A」)を回収した。
胆汁酸結合アフィニティーカラムにより単離・精製されたRJ由来胆汁酸結合タンパク質の同定を行った。
まず、画分Aを孔径10kDaの透析膜を用いて、純水にて4℃、72時間透析・脱塩した。透析膜内液を回収し、凍結乾燥することにより、脱塩画分Aを調製した。
次いで、脱塩画分Aを10%のSDS−PAGEに供し、含まれているタンパク質を分離した。SDS−PAGEの結果を図3に示す。図3中、「std」は分子量マーカーを、「A」は脱塩画分Aを意味し、これらをそれぞれアプライしたものである。この結果、「A」レーンには約49〜75kDaの範囲内に3本のバンド(図3中、(1)〜(3))が検出された。この結果から、脱塩画分A溶液には、胆汁酸と結合する3種類のRJ由来タンパク質が含まれていたことが明らかである。
RJから単離精製されたMRJP1及びMRJP2の胆汁酸結合能を測定した。
まず、RJからゲル濾過クロマトグラフィーを用いてMRJP1を精製した。具体的には、まず、参考例2と同様にして調製した23.5mg/5mLのRJタンパク質溶液(10kDa cut off RJ)を5mL、HiLoad superdex 200p.g(GE healthcare社製)にアプライした。その後、溶出液(20mM Na2HPO4・20mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7.5)を溶出速度1.5mL/minで当該カラムに通し、5mLずつを1画分として回収した。各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を図4に示す。また、RJタンパク質溶液と同時に、当該カラムに36mg/mlのGel Filtration Standard (BIO−RAD社製)をアプライし、移動度(溶出開始からの総溶出量)と、当該画分に含まれる分子の大きさとの関係を調べ、検量線を作成した。作成された検量線を図5に示す。
本発明者らは、前記の胆汁酸結合アフィニティーカラムから溶出した複合体の、ゲル解析において量的に一番多かったMRJP1画分に着目した。図4に示すゲル濾過クロマトグラフィーのうち、画分B(Frac.B:図4中、点線で囲まれた画分)は、図5に示すスタンダードの移動度と分子量から得た検量線から、分子量約290kDa付近であることがわかった。この画分を15%のSDS−PAGEに供したところ、図6に示すように、約55kDaの位置に単一なバンドとして検出された。また、当該画分に含まれている分子に対してMALDI−TOF/MSにて質量分析を行ったところ、MRJP1を含む画分であると判明した。これらの結果から、MRJP1は約55kDaであり、RJ中では、5〜6量体として存在していることが確認された。以下、当該画分をMRJP1画分という。
なお、当該MRJP1画分には、非特許文献5において、高脂血症ラットの血液中のトリグリセリド、総コレステロールを減少させる作用が報告されているデセン酸は含まれていないことが、定量的に明らかにされた。
本発明者らはさらに、前記の胆汁酸結合アフィニティーカラムから溶出した複合体の、ゲル解析において量的に一番多かったMRJP1画分に次いで多かったMRJP2に着目した。図4に示すゲル濾過クロマトグラフィーのうち、画分E(Frac.E:図4中、一点鎖線で囲まれた画分)に含まれているタンパク質を調べた。当該画分Eは、図5に示すスタンダードの移動度と分子量から得た検量線から、分子量約51kDa付近であることがわかった。この画分Eを15%のSDS−PAGEに供したところ、図7に示すように、46〜66kDaの位置に2本のバンドとして検出された。
また、この画分Eを陰イオンクロマトグラフィーに供し、単一のタンパク質に精製した。具体的には、画分Eを結合用溶液(20mM Tris−HCl、pH8.0)で125mg/5mLに希釈した上で、5mLをHiPrep Q FF(GE Healthcare社製)にアプライした。その後、溶出液(20mM Tris−HCl、0.5M NaCl、pH8.0)を用いて、移動相中の塩化ナトリウム濃度を図8中の点線で示すような0〜0.5Mにグラジエントをかけることにより、タンパク質を溶出させた。なお、移動相の移動速度は1.5mL/minとした。
各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を図8に示す。図8中に示す得られたピークのうちの1〜4を、それぞれ15%のSDS−PAGEに供したところ、図9に示すように、ピーク1から2までは単一なバンドとして検出された。そこで、ピーク1及び2を合わせて回収し、当該画分に含まれている分子に対してMALDI−TOF/MSにて質量分析を行ったところ、MRJP2を含む画分であると判明した。以下、当該画分をMRJP2画分という。
上記で精製されたMRJP1及びMRJP2の胆汁酸結合能の評価を、透析法により行った。ポジティブコントロールとして抗高コレステロール剤であるコレスチラミンを、ネガティブコントロールとしてカゼインをそれぞれ用いた。
具体的には、タウロコール酸含有リン酸緩衝液(50mM タウロコール酸、100mMリン酸緩衝液、pH7.4)中に、コレスチラミン、カゼイン、MRJP1画分、MRJP2画分、又は生RJを凍結乾燥させたものを、それぞれ100mg/mLとなるように添加したものを反応溶液とした。これらの反応溶液を37℃で2時間インキュベートした後、室温で72時間透析した。透析膜外液に含まれている総胆汁酸量を測定することにより、透析膜内液に含まれている(すなわち、各分子と結合した)胆汁酸の割合を算出した。
算出された各分子と結合した胆汁酸の割合を図10に示す。図10中、「Intact RJ」は、生RJを凍結乾燥させたものを添加した反応溶液の結果である。この結果、胆汁酸結合能はネガティブコントロール群のカゼイン(33%)と比較し、MRJP1は46%、MRJP2は37%であった。すなわち、MRJP1のほうがMRJP2よりも高い胆汁酸結合能を示した。
<コレステロールミセル溶解性試験>
RJから単離精製されたMRJP1及びMRJP2のコレステロールミセル溶解抑制能を測定した。MRJP1及びMRJP2は、参考例3において調製したMRJP1画分及びMRJP2画分をそれぞれ用いた。また、ネガティブコントロールとしてカゼインを用いた。
<ラットへの経口投与試験>
高コレステロール血症のモデルである1%コレステロール摂取ラットに、RJから単離精製されたMRJP1を経口投与し、血清コレステロールに与える影響を調べた。MRJP1は、参考例3において調製したMRJP1画分を用いた。また、ネガティブコントロールとしてカゼインを用いた。
図12に示すように、実験期間の3日間、コレステロールを含む食餌を与えたラットに、1日1回、MRJP1又はカゼインを経口投与した。3回目の投与から24時間経過後、4時間絶食させた後、心臓採血によりラットを屠殺した。採取された血液を用いて、血清コレステロールを測定した。さらに解剖し、肝臓重量を測定した。その他の具体的な実験条件は以下の通りである。
実験群数:n=9
投与開始時間:AM8:00
試験飼育期間:3日間(予備飼育3日間)
絶食時間:4時間
実験サンプル:カゼインナトリウム(CS)又はMRJP1(MR)
サンプル投与量:300mg/kg(B.W.)/day、又は600mg/kg(B.W.)/day
食餌組成:20%カゼイン+1%コレステロール
各実験群の体重の変化を図13に、1日当たりの食餌摂取量を図14に、肝臓重量を図15に、それぞれ示す。この結果、各群のうち、カゼインナトリウム(CS)投与群とMRJP1(MR)投与群とでは、いずれも特に差は観察されなかった。
一方、図16のように、血清総コレステロール量は、300mg/kg(B.W.)/dayの投与群と600mg/kg(B.W.)/dayの投与群のいずれにおいても、カゼインナトリウム(CS)投与群よりもMRJP1(MR)投与群のほうが、血清総コレステロール量が低下する傾向が観察された。特に600mg/kg(B.W.)/dayの投与群では、カゼインナトリウム(CS)投与群よりもMRJP1(MR)投与群のほうが、血清総コレステロール量が有意に(ダンカン検定とStudeut’s t−testの両方でp<0.05)低下していた。
これらの結果から、単離精製されたMRJP1を経口投与することにより、血清総コレステロール量を低下させられることが明らかである。
<ラットへの経口投与試験>
実験群数を10匹(n=10)、試験飼育期間を7日間(予備飼育3日間)、サンプル投与量を600mg/kg(B.W.)/dayとした以外は、参考例5と同様にして、高コレステロール血症のモデルである1%コレステロール摂取ラットに、RJから単離精製されたMRJP1を7日間経口投与し、血清コレステロールに与える影響を調べた。
この結果、体重の変化、1日当たりの食餌摂取量、及び肝臓重量は、カゼインナトリウム(CS)投与群とMRJP1(MR)投与群とでは、いずれも有意差は観察されなかった。
一方、血清総コレステロール量は、カゼインナトリウム(CS)投与群よりもMRJP1(MR)投与群のほうが、血清総コレステロール量が有意に(約26%)低下した(Student’s t−testでp<0.05)。特に、血清LDLコレステロール及び血清VLDLコレステロールの総量が有意に低下した。
これらの結果から、単離精製されたMRJP1を7日間経口投与することにより、血清総コレステロール量を低下させられることが明らかである。
<ラットへの経口投与試験>
ラットに、RJから単離精製されたMRJP1及び/又はデセン酸を経口投与し、血清コレステロールに与える影響を調べた。MRJP1は、参考例3において調製したMRJP1画分を用いた。デセン酸は、デセン酸高濃度ローヤルゼリーをジエチルエーテルで抽出し、純度99.7%になるまで精製を繰り返して得た。純度は日本薬局方ローヤルゼリーに記載の定量法(液体クロマトグラフィー)により測定した。また、ネガティブコントロールとしてカゼインを用いた。
450CS群:カゼインナトリウム(450mg/kg(B.W.)/day)(タンパク質含有量:91.9%)
600CS群:カゼインナトリウム(600mg/kg(B.W.)/day)(タンパク質含有量:91.9%)
1050CS群:カゼインナトリウム(1050mg/kg(B.W.)/day)(タンパク質含有量:91.9%)
450MRJP1:MRJP1(450mg/kg(B.W.)/day)(タンパク質含有量:84.05%)
600HDA:デセン酸(600mg/kg(B.W.)/day)(デセン酸含有量:99.68%)
複合(450MRJP1+600HDA):MRJP1(450mg/kg(B.W.)/day)(タンパク質含有量:84.05%)+デセン酸(600mg/kg(B.W.)/day)(デセン酸含有量:99.68%)
投与開始時間:AM8:00
試験飼育期間:3日間(予備飼育3又は4日間)
絶食時間:4時間
食餌組成:20%カゼイン+1%コレステロール
一方で、血清総コレステロール量においては、450CS群と比較して、450MRJP1群で有意な血清総コレステロール量の低下が確認された。また、同様に血清総コレステロール量が低下することが期待された600HDA群では、血清総コレステロール量を低下させる傾向が確認された。さらに、MRJP1及びデセン酸を複合投与した複合(450MRJP1+600HDA)群では、450CS群と比較して、有意かつ、全ての実験群の中で最も低い血清総コレステロール量を示した。
つまり、MRJP1とデセン酸を複合投与することにより、それぞれを単独で投与した場合と比較して、より強力な血清総コレステロール低下作用を発揮することが初めて明らかにされた。この低下効果のメカニズムはまだ明らかではないが、in vitro試験の結果から、MRJP1が腸管においてコレステロール吸収阻害作用を有すると考えられることからも、この吸収阻害作用によって体外へのコレステロールの排出が促進されたためと考えられ、さらには、このメカニズム以外にも他のコレステロール代謝経路との複合的な効果による可能性も考えられる。
以上の結果より、MRJP1とデセン酸という血清総コレステロール量を低下するRJ成分を複合して経口摂取させることにより、相加的なコレステロール代謝改善作用が発揮されることが明らかである。
Claims (2)
- MRJP1及び10−ヒドロキシ−2−デセン酸を有効成分とすることを特徴とする、血清コレステロール量低下剤。
- MRJP1及び10−ヒドロキシ−2−デセン酸を経口摂取することを特徴とする、血清コレステロール量を低下させる方法。
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