JP2013090574A - ペプチドワクチン - Google Patents

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Abstract

【課題】免疫原性に優れ、より高い抗体産生誘導能を有するペプチドであって、追加投与によっても目的の抗体の産生を増強することのできるペプチドの提供。
【解決手段】細胞接着分子の細胞結合モチーフのアミノ酸配列、免疫記憶が成立しているT細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列(T)、抗原の特定の1又は2以上のB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列(B)、及び前記Tと前記Bの間にそれらを連結させるように配置されたリンカーペプチドのアミノ酸配列を含み、該リンカーペプチドのアミノ酸配列がGKK又はVVKKであることを特徴とするペプチド、該ペプチドを有効成分として含有する組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、免疫原性に優れ、抗原に対する抗体の産生を効率よく誘導するペプチド、該ペプチドを有効成分として含有する組成物とその用途に関する。より詳しくは本発明は、ヒトのアミロイドβペプチド(以下、「Aβペプチド」と略記する。)の特定のB細胞エピトープに対する抗体の産生を効率良く誘導するペプチド、該ペプチドを有効成分とするAβペプチドに起因するアルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の予防及び/又は治療用の組成物とその用途に関する。
生体に、特定の抗原に対して特異的な抗体産生のみを誘導する場合には、精製した抗原を単独で、或いは、抗体産生を増強する活性を有する免疫アジュバント(免疫機構を非特異的に刺激することによって、抗原に対する特異的免疫反応を強める物質)と共に生体に投与する方法が一般的に用いられてきた。この方法は、種々の感染症に対する最も有効な予防手段としても汎用されている。
特に抗生物質が無効であるウイルスや、微生物が産生する毒素などのように、他に有効な予防或いは治療方法がない場合には、生体に、これらのウイルスや毒素に対する抗体産生を誘導し、防御することが唯一の対策である場合も多い。現在この方法が実用化されているものとしては、病原微生物を有機溶媒や紫外線照射などで不活化して感染性を無くした不活化ワクチン及び病原体を弱毒化して生体への病原性を弱めた弱毒化ワクチンがある。これらのワクチンはポリオウイルスワクチンなど一部を除き、注射により非経口的に投与されている。しかし、不活化ワクチン、生ワクチンは何れも生体に対してアナフィラキシーショックを与えることがある。さらにウイルス粒子そのもの、或いは、蛋白巨大分子を免疫原として用いるため、ワクチン製剤とした際の安定性を保持するためヒト血清アルブミンやゼラチンなどを製剤の安定剤として用いる場合もあった。このためこれら安定剤に用いた物質に未知の感染性微生物の混入が否定できないこと、或いは、安定剤に対する生体のアナフィラキシーショックが生じることがあった。また大部分のワクチンは注射剤として製剤化されているが、注射剤以外のワクチン製剤も求められている。
一方、不活化ワクチンや生ワクチンよりも高い安全性と有効性をもつ、不活化ワクチンや生ワクチンの部分アミノ酸配列からなるポリペプチドを利用した新型ワクチンの開発研究が世界中で鋭意進められている。B型肝炎ウイルスワクチンに代表される組換え型ワクチンやコンポーネントワクチンは、その新型ワクチンの代表例である。しかしながら、ワクチンとして利用するポリペプチドの鎖長は短いものほど好ましいものの、短くすればするほど、生体が個別にもつ主要組織適合性抗原(以下、「MHC」と略記する。)のクラスIIハプロタイプの拘束性を幅広くカバーし、十分な免疫原性を有するようにデザインすることが難しくなる。
経粘膜投与時の抗原の免疫原性を高める方法としては、対象とする抗原とともに、コレラ毒素や大腸菌由来の熱不安定型のエンテロトキシンや、これらのアミノ酸配列の一部を置換して弱毒化したものを免疫アジュバントとして投与する方法が知られている(非特許文献1)。しかしながら、目的とする抗原以外に、免疫アジュバントとして使用したコレラ毒素や大腸菌由来の熱不安定型のエンテロトキシンに対する抗体が産生されるなどの問題があり、実用に供されていない。
本発明者らは、目的とする抗体を免疫アジュバントを用いずに生体内で充分量産生誘導でき、且つ、安全に投与できるペプチドワクチンの提供を検討し、新規構造特性を有するペプチドを開発した(特許文献1)。すなわち、特許文献1には、アミノ末端(以下、「N末端」と略称する。)側にT細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有し、リンカーペプチドをはさんで、そのカルボキシ末端(以下、「C末端」と略称する。)側にB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有するペプチド内に、細胞接着分子の細胞結合モチーフのアミノ酸配列を有するペプチドが開示されている。このような構造を有するペプチドは、免疫アジュバント非存在下で経鼻などの経粘膜投与した場合に、複数のMHC クラスIIハプロタイプにおいて、目的とする抗原に対する特異抗体の充分な産生を効率よく増強した。しかも、上記ペプチドは、目的とする特異抗体以外の抗体の産生誘導能が低く、また、アナフラキシーなどの副作用を誘発しない安全性の高いポリペプチドであることを明らかにした。さらには、上記ポリペプチドが免疫アジュバント効果を有することを明らかにした。
本発明者らは、さらに、特許文献1に開示された構造特性に基づいて、ヒトAβに対する抗体の産生を効率よく誘導するペプチドを作製し、本願ペプチドをアルツハイマー病の治療に利用できることを開示した(特許文献2)。すなわち、特許文献2には、N末端側に免疫記憶の成立しているT細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列(以下、「T」と略記する場合がある。)を有し、リンカーペプチド(以下、「L」と略記する場合がある。)をはさんで、そのC末端側にAβペプチドの1又は2以上のB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列(以下、「B」と略記する場合がある。)を有し、さらに細胞接着分子の細胞結合モチーフのアミノ酸配列をTのN末端側、TとLの間、LとBの間、及びBのC末端側から選ばれる少なくとも1つの位置に有するペプチドが開示されている。
アルツハイマー病(以下、「AD」と略称する。)は老人性認知症の発症原因の大勢を占めるとされており、患者に記憶障害や運動障害を引き起こし生活の質(QOL)の低下が著しい疾病である。さらに病気の治療以外に多大な介護が必要で、患者本人とその家族をはじめ介護者の時間的損失、労働機会の損失、精神的負担など、医療コストのみならず社会的負担が多くなる疾病である。高齢化が進む先進諸国において、認知症は、患者数が増加の一途をたどっており深刻な問題となっている。
ADは、根本的な治療法がない重篤な神経変性疾患の一種類であり、病理的には42個(配列表における配列番号1)又は40個(配列表における配列番号2)のアミノ酸からなるAβが中枢神経に蓄積されるいわゆる「老人斑」の沈着、神経原線維変化、及び神経細胞の変性と脱落が特徴的な疾病である。ADの治療には、コリンエステラーゼ阻害剤による治療や、抗高脂血症剤やエイコサペンタエン酸(EPA)エチルなどの脳神経保護剤による臨床試験が実施されている。
ADの治療方法の開発においては、ADの中心的な役割を担っているAβを標的分子としたワクチン開発も進められている(非特許文献2)。また、ヒト型抗Aβモノクローナル抗体、DNAワクチン、CpGDNAなどの新しいアジュバント、及び経口投与用のペプチドワクチンなどの開発も進められている。しかしながら、DNAワクチンは、MHCクラスI拘束性であるために細胞障害性T細胞の活性化を誘導しやすく、そのためADの治療には適当でないと考えられていた。ペプチドワクチンは免疫原性が弱くAβに対する抗体産生誘導能が低いため、抗体産生の誘導にアジュバントを必要とすることが多く、アジュバントの使用による過剰な免疫反応を惹起する可能性がある。また、抗原が比較的高分子のものではT細胞エピトープならびにB細胞エピトープを多数含むために、これらエピトープに対する過剰な免疫反応が惹起されることがある。このような過剰な免疫反応は予期せぬ炎症反応などを惹起する可能性があり、これによる脳炎などの副作用リスクがあるとされている。そのため、依然としてADの根本的な治療方法は確立されていない。また、AβはAD以外の各種疾患の発症や増悪にも関与していることが知られているが、これらの疾患の予防法や治療法も確立されていない。
国際公開第WO2004/087767号パンフレット。 国際公開第WO2007/097251号パンフレット。
ラベル(Lavelle E.C.)、「Mucosal Immunogenicity of Plant Lectins in Mice」、イムノロジー(Immunology)、2000年、第99巻、第1号、p.30−37。 アガジャニャン(Agadjanyan M.G)ら、「Prototype Alzheimer’s disease vaccine using the immunodominant B cell epitope from beta−amyloid and promiscuous T cell epitope pan HLA DR−binding peptide」、ジャーナル オブ イムノロジー(Journal of Immunology)、2005年、第174巻、第3号、p.1580−1586。
従前、本発明者らは、免疫原性に優れ、目的とする抗体を免疫アジュバントを用いずに生体内で充分量産生誘導でき、且つ、安全に投与できる新規構造特性を有するペプチドを開発した。すなわち、N末端側にT細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有し、リンカーペプチドをはさんで、そのC末端側にB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有するペプチド内に、細胞接着分子の細胞結合モチーフのアミノ酸配列を有するペプチドを開示している(特許文献1)。また、このような構造特性に基づいて、Aβに対する抗体の産生を効率よく誘導するペプチド、すなわち、N末端側に生体において免疫記憶の成立しているT細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列(T)を有し、リンカーペプチド(L)をはさんで、そのC末端側にAβペプチドの1又は2以上のB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列(B)を有し、さらに細胞接着分子の細胞結合モチーフのアミノ酸配列をTのN末端側、TとLの間、LとBの間、及びBのC末端側から選ばれる少なくとも1つの位置に有するペプチドを作製し、開示した(特許文献2)。このようなペプチドにより、正常マウスにおいて高い抗Aβ抗体産生が認められた。
しかしながら、ペプチドワクチンの充分な薬効を得るためには、より高い抗体産生誘導能を有するペプチドが求められていた。
本発明の課題は、免疫原性に優れ、より高い抗体産生誘導能を有するペプチドであって、追加投与によっても目的の抗体の産生を増強することのできるペプチドを提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行い、特許文献2に開示したAβペプチドワクチンに含まれている各構造要素、すなわち、T細胞エピトープ、リンカーペプチド、及びB細胞エピトープそれぞれに対する抗体の産生量に着目した。そこで、抗原性の低いリンカーペプチドの探索を行い、その結果、細胞接着分子の細胞結合モチーフのアミノ酸配列、T細胞エピトープのアミノ酸配列、B細胞エピトープのアミノ酸配列、及びリンカーペプチドとしてGKK又はVVKK(配列表における配列番号3)で表されるアミノ酸配列を含むペプチドが、目的とする抗体の産生を効率よく誘導することを見出した。本発明者らは、さらに、当該ペプチドが、追加投与の際に従前のペプチドに比べて目的の抗体の産生をより増強することを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に関する:
1.一般式:R−T−R−L−R−B−Rで示されるアミノ酸配列を有するペプチド、ここでTは免疫記憶の成立しているT細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を示し、Lはリンカーペプチドのアミノ酸配列を示し、Bは抗原の特定の1又は2以上のB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を示し、R、R、R及びRのうち少なくとも1つが細胞接着分子の細胞結合モチーフのアミノ酸配列を示すペプチドであって、該リンカーペプチドのアミノ酸配列がGKK又はVVKKで表されるアミノ酸配列であることを特徴とするペプチド、
2.T細胞エピトープが、ジフテリア、結核、破傷風、及び百日咳の予防接種に抗原として用いられるペプチドから選ばれる何れか1種又は2種以上のペプチドに由来するアミノ酸配列を有することを特徴とする前記1.のペプチド、
3.B細胞エピトープが、AβペプチドのB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有することを特徴とする前記1.又は2.のペプチド、
4.AβペプチドのB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列が、AβのN末端から第1番目のアミノ酸から第15番目のアミノ酸配列(配列表における配列番号4)又はAβのN末端から第1番目のアミノ酸から第13番目のアミノ酸配列(配列表における配列番号5)である前記3.のペプチド、
5.配列表における配列番号6から11の何れかに記載のアミノ酸配列からなる前記4.のペプチド、
6.前記1.から5.の何れかのペプチドと共に、製剤学的に許容される1種以上の製剤用添加剤を含有する組成物、
7.前記3.から5.の何れかのペプチドと共に、製剤学的に許容される1種以上の製剤用添加剤を含有する、Aβに対する抗体の産生を誘導することができる組成物、
8.アルツハイマー病の予防及び/又は治療用である前記7.の組成物、及び
9.前記1.から5.の何れかのペプチドをコードするDNA。
本発明により、免疫原性に優れ、高い抗体産生誘導能を有し、追加投与により目的の抗体の産生を増強することのできるペプチドを提供することができる。
さらに本発明に係るペプチドにより、効果及び安全性の高いペプチドワクチンを提供できる。本発明に係るペプチドは、高い抗体産生誘導能を有し、また、該ペプチドにより産生誘導された抗体は該ペプチドの投与終了後に速やかに低減する。そのため、抗原による過剰な炎症反応などの免疫反応に起因する副作用が生じる可能性が少ない。特にAβのような内部抗原に対するワクチンは、かかる副作用が少ないことは大きな利点である。
各種Aβペプチドワクチンの追加投与後の抗Aβ抗体産生誘導能をBalb/cマウスを用いて評価した結果を示す図である。評価は1群4匹のマウスを用いて行い、抗Aβ抗体量は平均±S.E.で示した。試験したペプチドは全て、そのN末端に細胞接着分子の細胞結合モチーフであるRGDで表されるアミノ酸配列を有し、それに続いてジフテリアトキソイド(以下、「DiTox」と略称する。)由来のT細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列、リンカーペプチドのアミノ酸配列、及びAβペプチド由来のB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列が順次連結された構造を有する。評価した8種類のペプチドの中で、GKKで表されるアミノ酸配列からなるリンカーペプチド(以下、「GKKリンカーペプチド」と略称することがある。)を有するRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−15)が最も高い抗Aβ抗体産生誘導能を示し、6回の追加投与後でも抗Aβ抗体の産生の増加が観察された。GKKリンカーペプチドを有する他のペプチドも高い抗Aβ抗体産生誘導能を示した。また、VVKKで表されるアミノ酸配列からなるリンカーペプチドを有するRGD−DiTox(19)−VVKK−Aβ(1−15)も高い抗Aβ抗体産生誘導能を示した。図中、「Veh」はAβペプチドワクチンの代わりにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与した結果を示す。(実施例1)
本発明は、下記一般式で示されるアミノ酸配列を有するペプチド、ここでTは免疫記憶の成立しているT細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を示し、Lはリンカーペプチドのアミノ酸配列を示し、Bは抗原の特定の1又は2以上のB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を示し、R、R、R及びRのうち少なくとも1つが細胞接着分子の細胞結合モチーフのアミノ酸配列を示すペプチドであって、該リンカーペプチドのアミノ酸配列がGKK又はVVKKで表されるアミノ酸配列であることを特徴とするペプチドに関する。
(化1)
−T−R−L−R−B−R
本明細書におけるアミノ酸配列の表記は、配列表においては三文字表記とし、その他の記載においては一文字表記とする。
本発明に係るペプチドは、該ペプチドに含まれるB細胞エピトープ或いはこれを含むアミノ酸配列に対する抗体の産生を誘導する能力を有し、且つ、該ペプチドの追加投与により目的とする抗体の産生を増強することができる。本発明でいう抗体とは、主としてイムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンM(IgM)、イムノグロブリンA(IgA)抗体であり、血中や体液中に分泌されるものはもとより、鼻腔、口腔、眼、消化管などに分泌される抗体も当然これに含まれる。
本発明に係るペプチドは、T細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列とB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列との間にそれらを連結させるように配置されたリンカーペプチドのアミノ酸配列がGKK又はVVKKで表されるアミノ酸配列であることに特徴がある。従前の開示(特許文献1及び2)ではリンカーペプチドとして、抗原プロセッシングに関与するプロテアーゼの認識配列、特にジペプチドが例示され、さらにカテプシンBの認識配列であるリジン−リジン(KK)からなるジペプチドが推奨されていた。しかしながら、リンカーペプチドとしてKKからなるジペプチドを使用して作製したAβペプチドワクチンは、追加免疫を繰り返すことにより抗Aβ抗体産生量が増加しなかったり、増加の程度が低いことがあった。一方、GKK又はVVKKで表されるアミノ酸配列からなるペプチドをリンカーペプチドとして作製したAβぺプチドワクチンは、後述する実施例に示すように、KKからなるジペプチドをリンカーペプチドとして作製したAβぺプチドワクチンと比較して、より高い抗Aβ抗体産生誘導能を示し、また、追加投与により抗体産生量の増加の程度も大きかった。リンカー部位は目的とする抗体の産生誘導に直接関与する部位ではないことから、AβペプチドのB細胞エピトープの代わりに他の抗原のB細胞エピトープを用いても同様の結果が得られると考えることができる。さらに、GKK又はVVKKで表されるアミノ酸配列からなるペプチドをリンカーペプチドとして作製したAβぺプチドワクチンは、KKからなるジペプチドをリンカーペプチドとして作製したAβぺプチドワクチンと比較して、その投与終了後に血中抗Aβ抗体濃度が速やかに低減する。ワクチンの弱点として、ワクチンにより誘発される免疫反応が一旦惹起されるとそれを制御することや元の状態に戻すことは容易ではなく、それにより例えば過剰な炎症反応が生じて副作用が生じるおそれがあることが一般的に知られている。しかしながら、本発明に係るペプチドワクチンはその投与終了後に目的とする抗体の血中濃度が速やかに低減することから副作用を誘発する可能性は少ない。特に、Aβのような内部抗原に対するワクチンは、副作用が少ないことは大きな利点である。また、GKKで表されるアミノ酸配列からなるペプチドをリンカーペプチドとして作製したAβぺプチドワクチンの投与終了後の血中抗Aβ抗体濃度の速やかな低減は、Aβ由来のB細胞エピトープを含むアミノ酸配列の長さを変更しても同程度に認められたことから、B細胞エピトープの差異には依存せず、リンカーペプチドの配列の差異に依存すると考えている。したがって、本発明に係るペプチドワクチンにおいてAβペプチドのB細胞エピトープの代わりに他の抗原のB細胞エピトープを用いても、その投与終了後に目的とする抗体の血中濃度が速やかに低減すると考えることができる。このように、GKK又はVVKKで表されるアミノ酸配列からなるペプチドをリンカーペプチドとして作製したAβぺプチドワクチンは、極めて高い抗体産生誘導能を有し、かつ安全性が高いという大きな利点を有する。抗体産生誘導能がより高いことから、GKKで表されるアミノ酸配列からなるペプチドをリンカーペプチドとして作製したAβぺプチドワクチンがより好ましい。
本発明でいう「エピトープ」とは、抗原決定基ともいい、免疫応答に関与するT細胞、B細胞及び抗体に認識される抗原分子の特定の構造単位を意味し、6〜10個のアミノ酸配列や5〜8個の単糖の配列から成る。「抗原」とは、生体を刺激して抗体産生や細胞性免疫などの免疫応答を惹起する物質の総称をいう。一般的には免疫応答を惹起するタンパク質をいう。糖、脂質、核酸などの種々の有機物に対して抗体が産生されるが、タンパク質以外の物質は、一般的にタンパク質と結合して複合体を形成した場合に抗原としての活性を現す。T細胞及びB細胞により認識される抗原分子の特定の構造単位をそれぞれ「T細胞エピトープ」及び「B細胞エピトープ」と呼ぶ。
本発明に係るペプチドにおいて、B細胞エピトープは抗体産生を誘導する部位として使用される。B細胞エピトープのアミノ酸配列は、微生物、細胞、又は腫瘍細胞に由来する毒素、アレルゲン、酵素、細胞膜抗原、腫瘍特異性抗原などの抗原であって、その各々について文献的に既に明らかにされている既知の抗原エピトープのアミノ酸配列そのものでもよく、また実際に生体に対して免疫原性をもつ様々な抗原そのもの、或いは、常法により、抗原の部分ペプチドを免疫してB細胞エピトープ配列を同定し、この同定したアミノ酸配列を有するペプチドをB細胞エピトープとして用いてもよい。また、このB細胞エピトープは、後述のT細胞エピトープと同じ抗原上にあるものでもよく、B細胞エピトープとそのアミノ酸配列の一部又は全部を共有していてもよい。従って、B細胞エピトープ部分については、感染防御、癌、腫瘍、潰瘍、肝炎など炎症性疾患、アレルギー及びアトピー性皮膚炎などの免疫性疾患などの予防や治療、酵素の中和、臨床検査などに使用される各種抗原の検出など、抗体の使用目的に応じて、好ましい抗原ペプチドを選択することが出来る。これらのB細胞エピトープを含むペプチドはそのまま使用してもよく、タンデムに連結して、その2量体、3量体或いは多量体として使用してもよい。また、同一抗原上に存在する2種以上のB細胞エピトープをタンデムに連結することも、抗原全体をB細胞エピトープとすることもできる。また、複数種の抗原性タンパク質が関与する疾患治療の場合、それらのB細胞エピトープをタンデムに連結することにより、1つのペプチドで複数種の抗原性タンパク質に対する抗体を産生できるペプチドを設計することもできる。この場合には、各B細胞エピトープの間に、前述の抗原プロセッシングに関与するプロテアーゼの認識配列をリンカーペプチドとして挿入することにより、個々のエピトープのプロセッシングをより確実に行わせることもできる。
本発明に係るペプチドにおいて、抗体産生を誘導する部位としてAβペプチドのB細胞エピトープを使用することにより、Aβに対する抗体産生を誘導するペプチドを製造できる。「AβペプチドのB細胞エピトープ」とは、アルツハイマー病の原因とされるAβのB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むペプチドをいう。なかでも、Aβ凝集線維を溶解したり、Aβの神経線維やその他の臓器への沈着の阻害、アセチルコリンレセプターへの結合を阻害する抗体の産生を誘導することができるアミノ酸配列を有するペプチドが好ましく、その点からは、AβのN末端付近のアミノ酸配列を含むペプチドが特に好ましく、アミノ酸が5乃至20個程度で構成されるものが好ましい。構成するアミノ酸の数が少なすぎると抗体産生誘導能が消失し、多すぎると抗原性は高くなるがその一方で副作用を誘発するような抗体の産生を誘導するエピトープを含む可能性がある。このB細胞エピトープを含むペプチドはそのまま使用してもよく、タンデムに連結して、その2量体、3量体或いは多量体として使用してもよい。また、必要であれば、Aβ上に存在する2種以上のB細胞エピトープをタンデムに連結することも、Aβ全体、例えば、アミノ酸数が42個(配列表における配列番号1、以下、「Aβ(1−42)」と略記する。)や40個(配列表における配列番号2、以下、「Aβ(1−40)」と略記する。)のAβをB細胞エピトープとすることもできる。また、複数のエピトープを連結して、複数種の抗体の産生を同時に誘導するようなペプチドを設計することもできる。これらの場合には、各B細胞エピトープの間に、前述の抗原プロセッシングに関与するプロテアーゼの認識配列をリンカーペプチドとして挿入することにより、個々のエピトープのプロセッシングをより確実に行わせることもできる。
本発明に係るペプチドにおいて、B細胞エピトープとして、AβのN末端付近のアミノ酸配列を用いる場合は、少なくともAβのN末端から4−10番目のアミノ酸配列を有することが好ましく、例えば、配列表における配列番号1又は2に示すアミノ酸配列における1−15番目のDAEFRHDSGYEVHHQのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号4、以下、「Aβ(1−15)」と略記する。)、1−13番目のDAEFRHDSGYEVHのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号5、以下、「Aβ(1−13)」と略記する。)、1−11番目のDAEFRHDSGYEのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号14、以下、「Aβ(1−11)」と略記する。)、3−11番目のEFRHDSGYEのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号15、以下、「Aβ(3−11)」と略記する。)、3−15番目のEFRHDSGYEVHHQのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号16、以下、「Aβ(3−15)」と略記する。)、などを挙げることができる。その他、AβペプチドのB細胞エピトープとして、配列表における配列番号1又は2に示すアミノ酸配列における1−10番目のDAEFRHDSGYのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号17、以下、「Aβ(1−10)」と略記する。)、1−8番目のDAEFRHDSのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号18、以下、「Aβ(1−8)」と略記する。)1−6番目のDAEFRHのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号19、以下、「Aβ(1−6)」と略記する。)を挙げることができる。Aβペプチドに対する抗体の産生誘導能や副作用の点を考慮すれば、Aβ(1−15)又はAβ(1−13)を用いるのが好ましく、Aβ(1−15)が特に好ましく用いられる。
本発明に係るペプチドに使用する「免疫記憶が成立しているT細胞エピトープ」とは、本発明に係るペプチドワクチンの投与時、その投与する生体に、既に、免疫記憶が成立しているものをいう。例えば、本発明に係るペプチドを投与する生体に対して、本発明に係るペプチドと同じT細胞エピトープを含むペプチドを予め投与し、免疫記憶を成立させておけばよい。生体において免疫記憶が成立しているT細胞エピトープは、好ましくは、ヒトにおいて免疫記憶が成立しているT細胞エピトープをいう。とりわけ、予防接種などにより、大多数のヒトが、幼児期以降に免疫を獲得している抗原ペプチドがもつT細胞エピトープは、上記のような免疫記憶を成立させる操作を行なわなくても使用できる。また、すでに免疫記憶が成立している患者に対して、再度、上記操作を行えばさらなる効果の向上が期待できる。
T細胞エピトープは、MHC クラスII分子であるHLA−DR分子とそのアグレトープで結合し、ヘルパーT細胞用抗原として提示される。「アグレトープ」とは、T細胞エピトープがもつ、HLA−DR分子との結合部位のアミノ酸残基をいう。T細胞エピトープは、HLA−DRのハプロタイプに拘束されるため、できるだけ多数のHLA−DRハプロタイプ(アレル)の拘束を受ける重複・シフト型のマルチアグレトープ型ペプチドやそれを含むアミノ酸配列のものを使用するのが好ましい。
本発明で使用するT細胞エピトープとしては、例えば、ジフテリア、破傷風、百日咳、舌下腺炎、風疹、麻疹、結核などの予防接種に抗原として使用するペプチドが、大部分のヒトで、幼児期から免疫記憶が成立していることから好ましい。ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳ワクチンを含む三種混合ワクチンやBCG(結核)の接種は、日本では接種が義務づけられており、世界的にも接種が広く行われていることから、汎用性の点から、特に好ましい。
これらのペプチドのアミノ酸配列は何れも既に公知であることから、当該ペプチドの公知のT細胞エピトープのアミノ酸配列を利用してもよい。また、実際にヒトの末梢血の幼若化反応などを利用して、抗原の部分ペプチドのエピトープ配列を同定し、この同定したアミノ酸配列を有するペプチドをT細胞エピトープとして用いてもよい。また、利用可能なHLA−DRのT細胞エピトープ予測プログラムを利用して、多くのHLA−DRに結合するマルチアグレトープ領域を選択して、ペプチドのアミノ酸配列を決定することも任意に行うことができる。
また、このT細胞エピトープ自身は、当該エピトープに対する抗体産生誘導能が低い方が、副作用などの点から好ましい。一方で、エピトープとして予防接種に使用される感作抗原由来のアミノ配列のペプチドを使用すれば、当該エピトープは、本来、ヒトにおいて、このエピトープに対する抗体の産生を誘導するために使用されるものなので、このエピトープに対する抗体が産生されたとしても、その安全性は確立されており、副作用が発生しにくいという利点がある。これらのT細胞エピトープペプチドはそのまま使用しても、或いは同種又は複数種のT細胞エピトープをタンデムに連結して使用してもよい。また、T細胞エピトープは、アグレトープとなるアミノ酸残基以外のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換しても機能を発揮することができる。
このT細胞エピトープとしては、具体的には、例えば、ジフテリアトキソイド由来のエピトープであるAYNFVESIINLFQVVHNSYNのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号20)(以下、「DiTox(20)」と略記する。)、AYNFVESIINLFQVVHNSYのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号21)((以下、「DiTox(19)」と略記する。)、及びYNFVESIINLFQVVHNSYNのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号22)、及び破傷風トキソイド由来のエピトープである、LQTMVKLFNRIKNNVAのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号23)、FLQTMVKLFNRIKNNVAGのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号24)(以下、「TetT1L)」と略記する。)、IHVLHGLYGMQVSSHEのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号25)、LIHVLHGLYGMQVSSHEIのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号26)、YIVNEDKFQILYNSIMYGのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号27)、QYIVNEDKFQILYNSIMYGFのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号28)(以下、「TetT3L)」と略記する。)、SYQMYRSLEYQVDAIのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号29)、RSYQMYRSLEYQVDAIのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号30)、NINIFMRESSRSFLVのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号31)、ININIFMRESSRSFLVNのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号32)、ヒト型及びウシ型の結核菌(Mycobacterium tuberculosis/bovis)共通の分泌タンパク質として知られるMPT64由来ペプチドであるIQMSDPAYNINISLPSYYPDのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号33)(以下、「MptL(43−62)」と略記する。)、IQMSDPAYNINISLPSのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号34)、DPAYNINISLPSYYPDのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号35)及びYNINISLPSYYPDQKSのアミノ酸配列を有するペプチド(配列表における配列番号36)などのアミノ酸配列を有するエピトープを挙げることができる。中でも、抗体産生誘導能の高さと、後述のHLA−DR拘束性予測プログラム「ProPrep」で予測可能なHLA−DRと結合可能な51アレルの内、それぞれ47アレル、39アレル、41アレル、或いは50アレルに結合できると予測されるMptL(43−62)、DiTox(20)、TetT1L及びTetT3Lが好ましく、DiTox(20)が特に好ましい。
DiTox(20)のC末端においてアミノ酸残基が1つ欠失したDiTox(19)は、ペプチドの抗原性やマルチアグレトープ機能にC末端のアミノ酸が影響しないことがインシリコ(in silico)解析により判明したことから、DiTox(20)と同様のアレルに結合できると予測されるため、DiTox(20)と同様に好ましく使用できる。
また、必要に応じて本発明に係るペプチドワクチンを投与するヒトの末梢血とこれらのT細胞エピトープを混合培養し、その幼若化反応を確認するか、或いは、その少量を皮内に投与して遅延型過敏症が起きることを確認して、メモリーT細胞の存在の有無を確認して、投与するヒトに好ましいT細胞エピトープを選択することもできる。
細胞接着分子の細胞結合モチーフとしては、本発明に係るペプチドを粘膜表面に長期間保持することができて、経口、経鼻などの経粘膜投与での抗体産生の誘導能の増強作用のあるものである限り利用することができる。例えば、インテグリンファミリーに対する結合モチーフをはじめとし、その他の細胞結合モチーフのアミノ酸配列を用いることができる。例えば、インテグリン結合モチーフに属するアミノ酸配列としては、フィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクチン、フィブリノーゲン、ラミニン、ヒト免疫不全ウイルスのTatタンパク質などの細胞接着分子に存在する結合モチーフとして知られる、RGD、RED、LDV、PHSRN(配列表における配列番号37)、RKK、DGEA(配列表における配列番号38)などのアミノ酸配列を挙げることができる。また、インテグリンのファミリー以外の結合モチーフのアミノ酸配列としては、YIGSR(配列表における配列番号39)、IKVAV(配列表における配列番号40)、RFYVVMWK(配列表における配列番号41)、IRVVM(配列表における配列番号42)などを挙げることができる。なかでも、RGD、RED、及びYIGSRで表される各アミノ酸配列からなるペプチドが、特異的な抗体の産生誘導能が強いことから好ましく、RGDが特に好ましい。また、本発明に係るペプチドにおいて、これら細胞結合モチーフのアミノ酸配列の連結部位は、T細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列のN末端側又はC末端側、又は、B細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列のN末端側又はC末端側の合計4箇所から選択でき、そのうち少なくとも1箇所に連結すればよい。とりわけ、T細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列のN末端側又はC末端側の片側、又は両側に、細胞接着分子の細胞結合モチーフを連結した本発明に係るペプチドは、B細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列に特異的な抗体の産生が特に増強されるので好ましく、N末端側に連結したものが特に好ましい。
本発明に係るペプチドの具体例として、抗体産生を誘導する部位としてAβペプチドのB細胞エピトープを含み、Aβに対する抗体産生を誘導するペプチドを挙げることができる。より具体的には、配列表において配列番号6−11に記載のアミノ酸配列によりそれぞれ表されるRGD−DiTox(19)−VVKK−Aβ(1−15)、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−15)、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−13)、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−10)、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−8)、及びRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−6)を例示できる。
本発明に係るペプチドを製造するための方法に限定はなく、慣用のペプチド合成法によるか、或いは、慣用のペプチド合成法によりあらかじめ部分的に合成したペプチド同士を結合して、調製することができる。また当該ペプチドは、各メーカーから市販されているペプチドシンセサイザーを用いて装置のプロトコールに従って合成することができる。
また、本発明に係るペプチドは、組換えDNA技術により調製することができる。例えば、設計したペプチドのアミノ酸配列をコードするDNAを調製し、これを自律増殖可能なベクターに挿入し、それを大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母などの微生物、動植物やそれらの細胞又は組織などの宿主に導入して形質転換体としたり、トランスジェニック動植物を作製して、それらを培養、育成した後、本発明に係るペプチドを適宜の方法により、採取・精製することができる。さらには、本発明に係るペプチドを発現させた菌体、動物体或いは植物体をそのまま加工して、本発明に係るペプチドを含有する経口摂取用の組成物として使用することもできる。植物種としては、例えば、キク科(Asteraceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、セリ科(Apiaceae)、バラ科(Rosaceae)、ブドウ科(Vitaceae)、ツツジ科(Vaccinium)、パパイヤ科(Caricaceae)、マメ科(Fabaceae)、クルミ科(Juglandaceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)、ナス科(Solanaceae)、ヒルガオ科(Convolvulaceae)、イネ科(Poaceae)、又はヤモノイモ科(Dioscoreaceae)などに属する植物種、より詳細には、レタス、チコリ、ヨモギ、ブロッコリ、キャベツ、ダイコン、ワサビ、カラシ、キュウリ、メロン、カボチャ、ハヤトウリ、ニンジン、ミツバ、セロリ、リンゴ、プラム、ウメ、モモ、イチゴ、ラズベリー、アーモンド、ナシ、ビワ、ブドウ、クランベリー、コケモモ、ブルーベリー、パパイヤ、アルファルファ、ダイズ、クルミ、ホウレンソウ、トマト、トウガラシ、サツマイモ、イネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ライムギ、ヤマノイモ、ジャガイモなどを挙げることができる。また、本発明に係るペプチドは、前記の何れかの方法により、その全アミノ酸配列を有するペプチドを直接調製してもよく、或いは、予めその一部アミノ酸配列を有するペプチドを合成したもの同士を化学的に結合して調製することもできる。
本発明の効果を妨げない限り、本発明に係るペプチドに、製剤学的に許容できる1種又は2種以上の製剤用添加剤を組み合わせた組成物を調製することもできる。製剤用の添加剤としては、水、アルコールなどの溶媒、グルコース、マルトースなどの還元性糖質、α,α−トレハロース、ショ糖、サイクロデキストリンなどの非還元性糖質、或いは、α,α−トレハロース、マルトシルトレハロースなどのα,α−トレハロースの糖質誘導体、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、マルトトリイトールなどの糖アルコール、寒天、プルラン、グアガム、アラビアガムなどの水溶性高分子、ゼラチン、シルクなどのタンパク質やそれらの加水分解物、脂質、アミノ酸、緩衝剤、安定化剤、抗菌剤、香料、栄養機能食品、医薬部外品或いは医薬品の有効成分、ミョウバン、水酸化アルミニウムなどの免疫アジュバントや上記以外の食品添加物、医薬品添加物などを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用できる。なかでも、ペプチドの安定化効果の高い、α,α−トレハロース及びα,α−トレハロースの糖質誘導体が好ましい。
また、本発明に係るペプチドを含有する製剤の形態としては、その製剤中のペプチドが長期間安定に保持されるものであれば特に制限はなく、溶液、凍結乾燥品、錠剤、舌下錠、トローチ、粉末、顆粒、クリーム、軟膏、シラップなどの剤形から、投与対象、投与方法、製剤の保存方法や輸送方法を考慮して適宜選択すればよい。また、本発明に係るペプチド又はそれを含有する組成物は、必要に応じて、リポソームに封入したり、皮膚、組織への浸透促進剤やイオン導入法などを併用することにより、抗原提示細胞の存在部位への浸透を促進させることもできる。また、本発明に係るペプチドは、錠菓、飴、清涼飲料などの各種飲食品に含有せしめ、これを経口的に摂取することにより、ペプチドを経粘膜的に投与することもできる。また、本発明に係るペプチドをコードするRNAを直接生体に投与したり、細胞にDNAを導入するいわゆる遺伝子治療などにより、生体内において本発明に係るペプチドを発現させることもできる。
本発明に係るペプチド又はこれを含む組成物のヒトへの投与方法には、特に制限はなく、本発明に係るペプチドが、投与部位へ確実に到達できる方法であれば何れでよい。例えば、スポイトや注射器を使用して適量を粘膜上に滴下してもよく、経口摂取や、クリーム或いはジェル状にして粘膜に塗布したり、カテーテルなどで投与部位に誘導してもよく、さらには、スプレーやネブライザーなどにより霧状にして吹き付けたり、鼻、気管或いは肺へ吸引させてもよい。皮下、皮内、筋肉内、血管内、腹腔内や胸腔内などの体腔内への投与には、注射器、カテーテル、点滴などの投与方法を使用することができる。本発明に係るペプチドの投与量は、抗体産生誘導能、疾患の種類、投与経路、投与方法、投与対象動物などを考慮して適宜決定すればよく、通常、0.00001乃至100mg/kg体重、好ましくは0.0001乃至25mg/kg体重、さらに好ましくは0.001乃至10mg/kg体重である。また、本発明に係るペプチドは、初回の投与で、効果的に抗体産生を誘導することができるので、以後は、このペプチドのB細胞エピトープのアミノ酸配列を有するペプチドのみで追加投与を行った場合でも、目的とする抗体の産生を増強することができる。
本発明に係るペプチド又はこれを含む組成物は、ペプチドワクチンとして使用できる。ワクチンとは、病原体に対する能動免疫を与える目的で投与される製剤をいう。能動免疫とは、抗原の投与により免疫応答を誘発することをいう。ペプチドワクチンとは、タンパク質のアミノ酸配列のうち実際に免疫反応を惹起して生体防御に働く部分のアミノ酸配列からなるペプチドを含む製剤をいう。
本発明に係るペプチドワクチンは、それにより産生誘導する抗体の使用目的に応じて、好ましい抗原ペプチドを選択することにより、感染防御、癌、腫瘍、潰瘍、肝炎など炎症性疾患、アレルギー及びアトピー性皮膚炎などの免疫性疾患などの予防や治療に使用することができる。或いは、酵素の中和、臨床検査などに使用される各種抗原の検出に使用する抗体の製造に使用することができる。
本発明に係るペプチドワクチンにおいて、B細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列として、Aβ由来のB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を選択することにより、抗Aβ抗体の産生を誘導するペプチドワクチンを得ることができる。このようなペプチドワクチンにより、Aβに起因する疾患の予防や治療を行うことができる。本発明でいうAβに起因する疾患とは、Aβが特定の組織に沈着するなどして起きる疾患をいい、その沈着が病因の主因となるものは言うまでもなく、他の疾患に付随するAβの沈着により発生乃至増悪する疾患を含み、これらの疾患に伴う臨床症状も含む。具体的には、例えば、アルツハイマー病、ピック病、びまん性レビー小体病、進行性核上麻痺(スチール−リチャードソン症候群)、多系統変性(シャイ−ドレーガー症候群)、筋萎縮性側索硬化症、変性運動失調、皮質基底変性、グアムALS−パーキンソン−痴呆合併症、亜急性硬化性汎脳炎、ハンチントン病、パーキンソン病、シヌクレイノパシー、一次性進行性失語症、線条体黒質変性、マチャド−ジョセフ病/脊髄小脳性運動失調3型及びオリーブ橋小脳変性を含む運動ニューロン疾患、ジル・ド・ラ・ツレット病、球麻痺及び偽球麻痺、脊髄及び脊髄延髄筋委縮症(ゲネディ病)、一次性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、ヴェルニッヒ−ホフマン病、クーゲルベルグ−ヴェランデル病、テイ−サックス病、ザントホフ病、家族性痙性病、ヴォールファルト−クーゲルベルグ−ヴェランデル病、痙性対麻痺、進行性多病巣性白質脳障害、及びプリオン病(クロイツフェルト−ヤコブ病)、ゲルストマン−ストロイスラー−シャインカー病、クールー及び致死性家族性不眠症を含む、年齢が関係する痴呆、血管性痴呆、拡散性白質病(ヴィンズヴァンガー病)、内分泌又は代謝を起源とする痴呆、頭部外傷及び拡散性脳損傷の痴呆、痴呆性の拳闘姿勢又は前頭葉痴呆、大脳虚血又は塞栓性の閉塞及び血栓性の閉塞を含むインファクションならびに任意の種類の脳蓋内出血から生じる神経変性疾患、脳蓋内及び椎骨損傷、遺伝性大脳血管障害、非神経障害性遺伝性アミロイド、ダウン症候群、マクログロブリン血症、二次的家族性地中海熱、マックル−ウェルズ症候群、多発性骨髄腫、膵臓疾患又は心臓疾患に関連するアミロイドーシス、慢性血液透析関節症又はフィンランド型及びアイオワ型アミロイドーシス、糖尿病変成ニューロパチーなどの神経変性疾患や膵臓へのAβの沈着に起因する糖尿病などを挙げることができ、これらの疾患に伴う臨床症状も含む。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
各種Aβペプチドワクチンを作製し、その抗Aβ抗体産生誘導能をBalb/cマウスを用いて評価した。
ペプチドは、特許文献2で開発したペプチドプロトタイプのAβペプチドワクチンであるRGD−DiTox(20)−KK−Aβ(1−13)(配列表における配列番号12)のリンカー部位及びB細胞エピトープ部位を変換することにより設計し、外部委託(オペロンバイオテクノロジー株式会社)により合成した。ペプチドは全て、1mg/mLとなるようにPBSに溶解した。
評価したペプチドは、RGD−DiTox(20)−KK−Aβ(1−13)(配列表における配列番号12)、RGD−DiTox(19)−VKK−Aβ(1−15)(配列表における配列番号13)、RGD−DiTox(19)−VVKK−Aβ(1−15)(配列表における配列番号6)、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−15)(配列表における配列番号7)、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−13)(配列表における配列番号8)、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−10)(配列表における配列番号9)、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−8)(配列表における配列番号10)、及びRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−6)(配列表における配列番号11)の8種類である。
ペプチドのマウスへの投与は次のように行った。まず、5週齢のBalb/cマウス(日本チャールズリバー株式会社)に沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド(北里研究所製)を50μL/マウスで背部皮下に投与して予備免疫を行い、免疫2週間後からペプチド投与を行なった。投与は1mg/mLに調製したペプチド溶液50μL/マウス(50μg/マウス)を背部皮下に投与した。1群(N)4匹とし、初回投与後、2週間間隔で6回の追加投与を行なった。ペプチド投与1週間後にマウス尾部より採血を行い、血漿成分を採取した。血漿にはプロテアーゼインヒビターカクテル(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製)を添加し、抗Aβ抗体測定用試料とした。また、陰性対照群としてPBSを50μL/マウスで背部皮下に投与した。
血中抗Aβ抗体量の測定は、Aβ(1−42)合成ペプチド(Anaspec社製)をコーティングしたプレートを用い、ELISA法にて行った。具体的には、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したAβ(1−42)合成ペプチドを蒸留水に希釈して、96穴プレートに添加し(100ng/well)、4℃で1晩(overnight)コーティングした。1% ブロックエース(雪印乳業株式会社製)でブロッキングし、測定用試料を100μLで添加し、4℃で1晩インキュベートした。反応終了後、プレートを洗浄し、2000倍希釈したホースラディッシュ パーオキシダーゼ接合・抗マウスイムノグロブリン抗体(anti−mouse Ig−HRP、Amersham社製)を添加し、2時間、4℃でインキュベートした。反応終了後、PBSで洗浄し、発色基質ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン)−6−スルホン酸、KPL社製)を添加し、室温で30分インキュベートした後、405nmの吸光度を測定した。抗Aβ抗体の定量は抗Aβモノクローナル抗体を使用し、標準曲線から抗Aβ抗体を定量化した。
評価した8種類のペプチドは何れも抗Aβ抗体の産生を誘導し、追加投与を行うことで抗体量が増加した(図1)。その中でもGKKリンカーペプチドを有するRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−15)は最も高い抗Aβ抗体産生誘導能を有しており、6回の追加投与後では従来のペプチドであるRGD−DiTox(20)−KK−Aβ(1−13)の6倍以上の抗Aβ抗体が産生されていることが明らかとなった(図1及び表1)。GKKリンカーペプチドを有する他のペプチドも高い抗Aβ抗体産生誘導能を有していた(図1及び表1)。また、VVKKで表されるアミノ酸配列からなるリンカーペプチドを有するRGD−DiTox(19)−VVKK−Aβ(1−15)も高い抗Aβ抗体産生誘導能を有していた(図1及び表1)。RGD−DiTox(19)−VKK−Aβ(1−15)はRGD−DiTox(20)−KK−Aβ(1−13)と同程度の抗Aβ抗体産生誘導能であった(図1及び表1)。一方、B細胞エピトープについては明確な傾向を見出すことは出来なかった(図1)。
Figure 2013090574
以上の結果から、リンカーペプチドのアミノ酸配列をGKK又はVVKKで表されるアミノ酸配列とすることにより、KKで表されるアミノ酸配列を使用するよりも、高い抗Aβ抗体産生誘導能が得られることが明らかとなった。また、リンカーペプチドのアミノ酸配列がGKK又はVVKKで表されるアミノ酸配列であるAβペプチドワクチンは、追加投与により抗体の産生を著しく増強した。特に、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−15)は高い抗Aβ抗体産生誘導能を有しており、アルツハイマー病治療用ペプチドワクチンとして有用であると考えられた。
6回の追加投与終了後、1ヶ月間の休薬期間をおき、休薬による血中抗Aβ抗体量の推移を観察した。GKK、VKK、及びVVKKの何れか1で表されるアミノ酸配列からなるリンカーペプチドを有するペプチドを投与した場合は、追加投与終了後、血中抗Aβ抗体量が速やかに低下した。一方、従来のペプチドRGD−DiTox(20)−KK−Aβ(1−13)を投与した場合は、血中抗Aβ抗体量が低下せず、1ヶ月間維持されていた。
各種Aβペプチドワクチンを作製し、その抗Aβ抗体産生誘導能をJUマウスを用いて評価した。JUマウス(クオン(Quon D.)ら、「Formation of beta−amyloid protein deposits in brains of transgenic mice」、ネイチャー(Nature)、1991年、第352巻、p.239−241。)は自家繁殖を行い使用した。
ペプチドは、特許文献2で開発したペプチドプロトタイプのAβペプチドワクチンであるRGD−DiTox(20)−KK−Aβ(1−13)(配列表における配列番号12)のリンカー部位及びB細胞エピトープ部位を変換することにより設計し、外部委託(オペロンバイオテクノロジー株式会社)により合成した。ペプチドは全て、1mg/mLとなるようにPBSに溶解した。
評価したペプチドは、RGD−DiTox(20)−KK−Aβ(1−13)(配列表における配列番号12)、RGD−DiTox(19)−VKK−Aβ(1−15)(配列表における配列番号13)、RGD−DiTox(19)−VVKK−Aβ(1−15)(配列表における配列番号6)、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−15)(配列表における配列番号7)、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−13)(配列表における配列番号8)の5種類である。
各種ペプチドのマウスへの投与は次のように行った。まず、8週齢のJUマウスに沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド(北里研究所製)を50μL/マウスで背部皮下に投与し、予備免疫を行い、免疫2週間後からペプチド投与を行なった。ペプチドは200μg/mLに調製し、等量のアジュバンド(フロインド インコンプリート アジュバント(FIA)、和光純薬株式会社製)と混合してエマルジョンを作製し、JUマウスの背部皮下に100μg/マウス(10μg/マウス)で投与した。1群(N)4匹とし、初回投与後、2週間間隔で2回の追加投与を行なった。2回目の追加投与1週間後にマウス尾部より採血を行い、血漿成分を採取した。血漿にはプロテアーゼインヒビターカクテル(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製)を添加し、抗Aβ抗体測定用試料とした。また、陰性対照群としてPBSと等量のFIAを混合してエマルジョンを作製し、100μL/マウスで背部皮下に投与した。
血中抗Aβ抗体量の測定は、実施例1に記載の抗Aβ抗体量測定方法と同様の方法に従って行った。
評価した5種類のペプチドは何れも2回の追加投与により抗Aβ抗体の産生を誘導した(表2)。その中でもGKKリンカーペプチドを有するRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−15)は最も高い抗Aβ抗体産生誘導能を有しており、従来のペプチドであるRGD−DiTox(20)−KK−Aβ(1−13)と比較して85倍の抗Aβ抗体の産生を誘導した(表2)。また、同様にGKKリンカーペプチドを有するRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−13)及びRGD−DiTox(19)−VVKK−Aβ(1−15)も、RGD−DiTox(20)−KK−Aβ(1−13)と比較して10倍以上高い抗Aβ抗体産生誘導能を有していた(表2)。エマルジョンによる投与においてもペプチド溶液投与と同様の結果が確認できた。
Figure 2013090574
以上の結果から、アジュバンドを用いた投与においても、リンカーペプチドのアミノ酸配列をGKK又はVVKKで表されるアミノ酸配列とすることにより、KKで表されるアミノ酸配列を使用するよりも、高い抗Aβ抗体産生誘導能が得られることが明らかとなった。特に、RGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−15)は高い抗Aβ抗体産生誘導能を有しており、アルツハイマー病治療用ペプチドワクチンとして有用であると考えられた。
以上説明したとおり、本発明は、生体において免疫記憶が成立しているT細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列(T)、抗原の特定の1又は2以上のB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列(B)、及び前記Tと前記Bの間にそれらを連結させるように配置されたリンカーペプチドのアミノ酸配列を含み、該リンカーペプチドのアミノ酸配列がGKK又はVVKKであることを特徴とするペプチド、及び該ペプチドを有効成分として含有する組成物を提供する。例えば、本発明はこのような構造を有する抗Aβ抗体産生誘導能を有するペプチド及び該ペプチドを有効成分として含有する組成物を提供する。本発明に係るペプチドは、広範なヒトのHLA−DRのハプロタイプに拘束されるため、多くのヒト、とりわけ、予防接種などにより免疫記憶の成立したヒトにおいて、病原菌やウイルスなど異物の異物に起因する各種疾患の予防・治療に有効なペプチドワクチンとして使用することができる。或いはアルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患などの各種疾患の予防・治療に有効な、Aβに対する抗体産生を誘導するペプチドワクチンとして使用することができる。また、本発明に係るペプチドワクチンは、免疫アジュバントを用いなくても、抗体産生誘導能を示し、また、経鼻投与や経口投与などの経粘膜投与で使用できること、さらに、投与終了後に抗体の血中濃度が速やかに低下することから、簡易かつ安全なペプチドワクチンである。
配列番号1:アミロイドβペプチド1−42。
配列番号2:アミロイドβペプチド1−40。
配列番号3:合成ペプチド。
配列番号4:アミロイドβペプチドのアミノ酸残基1−15からなるペプチド。
配列番号5:アミロイドβペプチドのアミノ酸残基1−13からなるペプチド。
配列番号6:合成ペプチドであり、ここでRGD−DiTox(19)−VVKK−Aβ(1−15)と称する。
配列番号7:合成ペプチドであり、ここでRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−15)と称する。
配列番号8:合成ペプチドであり、ここでRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−13)と称する。
配列番号9:合成ペプチドであり、ここでRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−10)と称する。
配列番号10:合成ペプチドであり、ここでRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−8)と称する。
配列番号11:合成ペプチドであり、ここでRGD−DiTox(19)−GKK−Aβ(1−6)と称する。
配列番号12:合成ペプチドであり、ここでRGD−DiTox(20)−KK−Aβ(1−13)と称する。
配列番号13:合成ペプチドであり、ここでRGD−DiTox(19)−VKK−Aβ(1−15)と称する。
配列番号14:アミロイドβペプチドのアミノ酸残基1−11からなるペプチド。
配列番号15:アミロイドβペプチドのアミノ酸残基3−11からなるペプチド。
配列番号16:アミロイドβペプチドのアミノ酸残基3−15からなるペプチド。
配列番号17:アミロイドβペプチドのアミノ酸残基1−10からなるペプチド。
配列番号18:アミロイドβペプチドのアミノ酸残基1−8からなるペプチド。
配列番号19:アミロイドβペプチドのアミノ酸残基1−6からなるペプチド。
配列番号20:ジフテリアトキソイドの部分ペプチド。
配列番号21:ジフテリアトキソイドの部分ペプチド。
配列番号22:ジフテリアトキソイドの部分ペプチド。
配列番号23:破傷風トキソイドの部分ペプチド。
配列番号24:破傷風トキソイドの部分ペプチド。
配列番号25:破傷風トキソイドの部分ペプチド。
配列番号26:破傷風トキソイドの部分ペプチド。
配列番号27:破傷風トキソイドの部分ペプチド。
配列番号28:破傷風トキソイドの部分ペプチド。
配列番号29:破傷風トキソイドの部分ペプチド。
配列番号30:破傷風トキソイドの部分ペプチド。
配列番号31:破傷風トキソイドの部分ペプチド。
配列番号32:破傷風トキソイドの部分ペプチド。
配列番号33:ヒト型/ウシ型結核菌の分泌タンパク質MPT64の部分ペプチド。
配列番号34:ヒト型/ウシ型結核菌の分泌タンパク質MPT64の部分ペプチド。
配列番号35:ヒト型/ウシ型結核菌の分泌タンパク質MPT64の部分ペプチド。
配列番号36:ヒト型/ウシ型結核菌の分泌タンパク質MPT64の部分ペプチド。
配列番号37:細胞接着モチーフを含むペプチド。
配列番号38:細胞接着モチーフを含むペプチド。
配列番号39:細胞接着モチーフを含むペプチド。
配列番号40:細胞接着モチーフを含むペプチド。
配列番号41:細胞接着モチーフを含むペプチド。
配列番号42:細胞接着モチーフを含むペプチド。

Claims (9)

  1. 下記一般式で示されるアミノ酸配列を有するペプチド、ここでTは免疫記憶の成立しているT細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を示し、Lはリンカーペプチドのアミノ酸配列を示し、Bは抗原の特定の1又は2以上のB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を示し、R、R、R及びRのうち少なくとも1つが、細胞接着分子の細胞結合モチーフのアミノ酸配列を示すペプチドであって、該リンカーペプチドのアミノ酸配列がGKK又はVVKKで表されるアミノ酸配列であることを特徴とするペプチド。
    (化1)
    −T−R−L−R−B−R
  2. T細胞エピトープが、ジフテリア、結核、破傷風、及び百日咳の予防接種に抗原として用いられるペプチドから選ばれる何れか1種又は2種以上のペプチドに由来するアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
  3. B細胞エピトープが、アミロイドβペプチドのB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のペプチド。
  4. アミロイドβペプチドのB細胞エピトープのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列が、アミロイドβのN末端から第1番目のアミノ酸から第15番目のアミノ酸配列(配列表における配列番号4)又はアミロイドβのN末端から第1番目のアミノ酸から第13番目のアミノ酸配列(配列表における配列番号5)である請求項3に記載のペプチド。
  5. 配列表における配列番号6から11の何れか1に記載のアミノ酸配列からなる請求項4に記載のペプチド。
  6. 請求項1から5の何れか1項に記載のペプチドと共に、製剤学的に許容される1種以上の製剤用添加剤を含有する組成物。
  7. 請求項3から5の何れか1項に記載のペプチドと共に、製剤学的に許容される1種以上の製剤用添加剤を含有する、アミロイドβペプチドに対する抗体の産生を誘導することができる組成物。
  8. アルツハイマー病の予防及び/又は治療用である請求項7に記載の組成物。
  9. 請求項1から5の何れか1項に記載のペプチドをコードするDNA。
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