JP2013084454A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】合金系活物質を負極に含有した扁平状捲回型電極群を備えたリチウムイオン二次電池の充放電サイクル特性を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池は、帯状の負極と帯状の正極とが両電極間にセパレータが介在するように捲回された扁平状捲回型電極群において、負極の短編方向の中央部のみ局所的に膨張する課題に対し、平坦部にリチウムイオン伝導性樹脂膜を形成し、電極群の平坦部を接着させることにより局所的な過剰反応を抑制し、サイクル特性を向上させることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、合金系活物質を負極活物質として含む扁平状捲回型電極群を備えたリチウムイオン二次電池に関し、詳しくは、リチウムイオン二次電池の電極群の改良に関する。
リチウムイオン二次電池は、高容量で、エネルギー密度が高いことから、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、携帯ゲーム機などの携帯型電子機器の電源として用いられている。また、ハイブリッド自動車などの車載用電源、無停電電源などへの開発も進められている。
近年、リチウムイオン二次電池のさらなる高容量化を図るために、黒鉛に代わる負極活物質として、合金化および脱合金化によってリチウムを吸蔵および放出可能な合金系活物質が用いられている。合金系活物質としては、ケイ素やスズの単体、ケイ素やスズを含む酸化物および合金などが知られている。
合金系活物質はリチウムを吸蔵したときに顕著に膨張することから、膨張時の応力によって負極活物質層にクラックを生じさせたり、負極活物質層を負極集電体から剥離したり、負極集電体を変形させたりする傾向がある。そこで、特許文献1は、合金系活物質を負極集電体の表面から突出した柱状体として形成し、複数の柱状体を負極集電体の表面で互いに間隔をあけて配置した負極活物質層を備えたリチウムイオン二次電池を提案している。上記負極活物質層は、隣接する柱状体間に間隙を有しており、この間隙によって合金系活物質の膨張時の応力を緩和させることができる。また、特許文献1は、上述の負極活物質層の表面に、さらにイオン伝導性樹脂層を設けた構成を開示している。イオン伝導性樹脂層は、合金系活物質の膨張により負極活物質層の表面および内部にクラックが生じた場合に、それまで非水電解液と接していなかった負極活物質層の新生面と、非水電解液との接触により、充放電反応以外の副反応が生じて副生成物が析出するのを抑制する。
特許文献2は、負極集電体と、負極集電体上に形成された合金系活物質からなる負極活物質層と、負極活物質層の表面に形成された樹脂層とを備えたリチウムイオン二次電池用負極を開示している。この樹脂層は、負極活物質層の表面全面を覆うのではなく、ストライプ状などのパターンからなる開口部を備えており、開口部から負極活物質層の一部が負極表面に露出している。上述の負極によれば、リチウム吸蔵時の負極活物質層の膨張を抑制して、膨張時の応力が負極活物質層に局所的に集中するのを緩和することができる。これにより、負極活物質層にクラックが生じた場合に、合金系活物質が脱落したり、負極集電体から剥離したりするのを防止できる。
負極活物質として合金系活物質を用いたリチウムイオン二次電池においては、さらに、帯状の負極および正極を、両電極間にセパレータを介在させて負極および正極の各長辺方向に捲回した捲回型電極群とすることが試みられている。この場合、電極構造を省スペース化して、さらなる高容量化を実現できる。特許文献3に開示の非水電解質二次電池は、上述の捲回型電極群を備えており、負極および正極はいずれも、集電体と、活物質および結着剤ポリマーを含む活物質層とを含み、負極および正極の少なくとも一方はさらに、セパレータとの間に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのマトリックスポリマーからなる高分子支持体を備えている。この非水電解質二次電池において、高分子支持体を形成するマトリックスポリマーは、非水電解液に対する膨潤性が正極および負極の各活物質層における結着剤ポリマーより高く設定されている。このため、高分子支持体を設けることで、捲回型電極群からの非水電解液の漏洩を解消することができる。
特開2010−97843号公報 特開2009−252547号公報 特開2008−47402号公報
本発明者らは、帯状の負極と帯状の正極とが両電極間にセパレータが介在するように負極および正極の各長辺方向に沿って捲回された扁平状捲回型電極群を備え、かつ、負極表面に負極の長辺方向に沿って形成された帯状の負極活物質層を備え、負極活物質層が合金系活物質を含有したリチウムイオン二次電池に対して、充放電サイクルを繰り返したときには、負極活物質層の短辺方向における中央の領域において負極活物質層の厚みが顕著に増大することに気付いた。
扁平状捲回型電極群においては、屈曲した(R形状の)端部の負極活物質の膨張によって平坦部の極板間隔が開く傾向がある。合金系活物質を用いると充電時の膨張量が大きいため、その傾向は強くなる。さらに、充放電サイクルを繰り返すことで、合金系活物質の微細化による極板厚み膨張が徐々に進行し、平坦部の極板間隔が開いていく。
平板を2枚対向させ、その間に電解液を満たす。次に2枚の平板間隔を垂直に広げると、電解液が端部から中央部に移動し、中央部にのみ電解液が存在する状態になる。再度、平板間隔を狭くすると電解液が平板全体に広がる。扁平状捲回型電極群の場合、この現象が充放電サイクル毎に起こる。合金系活物質を用いた場合、充電時の膨張量が大きいこと、充放電サイクルの繰り返しにより微細化することによって、平坦部の極板間隔が広がりやすくなり、充電時に液が短辺方向における中央の領域にのみ存在する現象が起こりやすい。その結果、電解液が存在している部分のみ充放電反応が起こるため、合金系活物質の微細化が局所的に進行してしまう。こうして、負極活物質層の短辺中央部で厚みが顕著に増大するという上述の現象が起こる。
また、負極活物質層の局所的な隆起が顕著に成長すると、負極活物質層が負極集電体から剥離して、負極集電体と合金系活物質との電気的な接続が断たれるおそれがある。このような場合には、リチウムイオン二次電池の電池容量や充放電サイクル特性が著しく低下する。
そこで本発明は、上記課題を解決して、捲回型電極群を備え、負極活物質層が複数の合金系活物質の柱状体からなるリチウムイオン二次電池について、充放電サイクル特性を向上させることを目的とする。
本発明の一局面は、帯状の負極、帯状の正極、および帯状のセパレータを含み、前記負極および前記正極の間に前記セパレータが介在するように前記負極および前記正極の各長辺方向に沿って捲回され、主平面の平坦部と屈曲した端部を持つ扁平状捲回型電極群と、非水電解液と、を備え、前記負極は、合金系活物質を含む負極活物質層を備え、負極活物質層、正極活物質層、セパレータの少なくとも一つ表面に被着形成されたリチウムイオン伝導性樹脂膜と、を備え、前記リチウムイオン伝導性樹脂膜は、前記平坦部の全部、もしくは一部に位置する部分のみに形成されていることを特徴とする。そして、前記リチウムイオン伝導性樹脂膜は、端部には形成されない。
前記合金系活物質としては、ケイ素またはスズの単体、または、ケイ素またはスズを含む化合物が挙げられ、特に、ケイ素の単体またはケイ素を含む化合物が好ましい。ケイ素を含む化合物としては、ケイ素合金、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物などが挙げられる。ケイ素酸化物は、一般式:SiOx(0<x<2、好ましくは0.01≦x≦1)で表されるものが好ましく、さらにFe、Al、Ca、Mn、Tiなどの元素を含んでいてもよい。合金系活物質は、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
上述のリチウムイオン二次電池において、リチウムイオン伝導性樹脂膜は、ヘキサフルオロプロピレン単位(HFP)を3〜20モル%の割合で含有するヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体(HFP−VDF)、およびHFPを3〜20モル%の割合で含有するヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(HFP−TFE)、HFPを3〜20モル%の割合で含有するヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレンの共重合体(HFP−VDF−TFE)の少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。前記HFPが3モル%未満では、樹脂膜の電解液膨潤率が低く、イオン伝導性が低化し、充放電レート特性が低下する。また、前記HFPが20モル%を超えると、樹脂膜の膨潤率が大きくなりすぎ、樹脂膜として存在できなくなるため、極板間の密着力が低化してしまう。その両面を満たすため、HFPは3モル%〜20モル%であることが好ましい。電極群の密着性を高めるためには、HFPが3モル%〜10モル%であることがより好ましい。
また、リチウムイオン伝導性樹脂膜は、平均膜厚が0.1〜5μmであることが好ましい。0.1μm未満では、樹脂膜を介して電極群を密着させる効果が低下してしまう。また、5μmを超えると、イオン伝導性が低くなりすぎ、ハイレート放電特性を低下させてしまう。
上述のリチウムイオン二次電池によれば、充放電サイクルを繰り返した際の極板間隔の拡大を抑制することができるため、電解液の偏在が緩和され、局所的に電極反応が過剰に進行することを抑制することができる。その結果、負極活物質層の短編方向中央部における局所的な厚み膨張を抑制することができ、電池の充放電サイクル特性が向上する。
本発明の一実施形態の扁平状捲回型電極群を説明する展開図 本発明の一実施形態の扁平状捲回型電極群を説明する模式縦断面図 本発明の一実施形態のリチウムイオン二次電池の一部切欠き斜視図 本発明の一実施例で使用した蒸着装置の模式図
はじめに、本発明の一実施形態であるリチウムイオン電池を形成する扁平状捲回型電極群について図1および図2を用いて説明する。扁平状に捲回した電極群11は、帯状の負極2と、帯状の正極4と、帯状のセパレータ1とを含み、これらは、負極2と正極4との間にセパレータ1が介在するようにして、負極2および正極4の各長辺方向に沿って捲回されている。
負極2は、例えば、負極活物質とポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含む負極合剤スラリーを、銅箔などの負極集電体の表面に塗布して乾燥し、圧延することによって得られる。また、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて、銅箔などの負極集電体の表面に直接活物質層を形成することによって得られる。負極に含まれる合金系活物質としては、ケイ素またはスズの単体、または、ケイ素またはスズを含む化合物が挙げられ、特に、ケイ素の単体またはケイ素を含む化合物が好ましい。ケイ素を含む化合物としては、ケイ素合金、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物などが挙げられる。ケイ素酸化物は、一般式:Si
Ox(0<x<2、好ましくは0.01≦x≦1)で表されるものが好ましく、さらにFe、Al、Ca、Mn、Tiなどの元素を含んでいてもよい。合金系活物質は、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
正極集電体は、リチウムイオン二次電池の正極に用い得るものであれば特に限定されない。具体的には、多孔性または無孔の導電性基板が挙げられ、導電性基板の材質としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタンなどが挙げられる。
正極4は、例えば、カーボンブラックなどの導電剤と、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含む正極合剤スラリーを、アルミニウム箔などの正極集電体の表面に塗布して乾燥し、圧延することにより得られる。正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物が好ましい。リチウム含有遷移金属化合物の代表的な例としては、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiNi1−yCo(0<y<1)、LiNi1−y−zCoMn(0<y+z<1)などが挙げられる。
セパレータ1は、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用い得るものであれば、特に限定されない。セパレータ1としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる微多孔性フィルムが挙げられる。セパレータの厚みは、例えば10〜30μmである。
負極2、正極4、セパレータ1のいずれかの表面の一部には、後述するリチウムイオン伝導性樹脂膜3が被着形成される。リチウムイオン伝導性樹脂膜3は、扁平状に捲回された電極群11の平坦部にのみ形成されており、その全面、もしくは一部に被着形成されており、R形状の端部には形成されていない。
平坦部にのみリチウムイオン伝導性樹脂膜を形成することで、平坦部の極板間隔が広がるため、R形状の半径も大きくなり、R形状の端部の活物質膨張による平坦部の極板間隔拡大を抑制することが出来る。また、さらにリチウムイオン伝導性樹脂膜が接着層の役割を果たすため、さらに平坦部の極板間隔拡大を抑制することができる。その結果、電極群のS字湾曲を防ぐと共に、充放電反応におけるレート特性低下を抑制することができる。さらに、極板間隔が開きにくいため、極板間の電解液が局所的に偏在することを抑制できる。その結果、局所的な充放電反応を抑制することになり、活物質の過剰反応による局所的な厚み膨張を抑制することができる。合わせて、平坦部のリチウムイオン伝導性樹脂膜が電解液を膨潤することで、電解液の偏在を抑制すると共に、一定の抵抗となることで、平坦部における充放電反応を均一化することができる。
リチウムイオン伝導性樹脂膜3としては、例えば、フッ素樹脂などのハロゲン含有樹脂、ポリエチレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレートなどのアクリル樹脂、これらの誘導体などが用いられ、特に、樹脂膜のリチウムイオン伝導性を高める観点から、フッ素樹脂が好ましい。
フッ素樹脂としては、フッ化ビニリデン(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)などのフッ素原子含有オレフィンの重合体や、フッ素原子含有オレフィンまたはその誘導体を構成単位として含む共重合体が挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンなどのホモポリマーや、VdFとHFPとの共重合体(P(VdF−HFP))、HFPとTFEとの共重合体(P(HFP−TFE)))、VdFとHFPとTFEの共重合体(P(VdF−HFP−TFE))などの共重合体が挙げられる。共重合体はフッ素原子含有モノマー同士の共重合体に限定されず、フッ素原子含有モノマーと他の共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。フッ素樹脂は、リチウムイオン伝導
性樹脂膜の耐電圧や化学的安定性を高める観点より、VdF、HFPおよびTFEの少なくとも1種をモノマー成分として含むことが好ましく、特に、P(VdF−HFP)やP(HFP−TFE)、P(VdF−HFP−TFE)が好ましい。
P(VdF−HFP)やP(HFP−TFE)に含まれるHFP単位の割合は、モノマーのモル量換算で、3〜20モル%が好ましく、3〜10モル%がさらに好ましい。HFP単位の含有割合を3〜20モル%に設定することにより、リチウムイオン伝導性樹脂膜のイオン伝導性を維持しつつ、扁平状捲回型電極群の平坦部の正極、負極、セパレータを密着させることができる。
リチウムイオン伝導性樹脂膜は、リチウムイオン伝導性樹脂膜を形成するポリマーを適当な溶媒に溶解または分散させ、こうして得られたポリマー溶液または分散液を負極活物質層の表面に塗布して、乾燥させることにより形成できる。ポリマー溶液または分散液の塗布は、例えば、スクリーン印刷、ダイコート、コンマコート、ローラコート、バーコート、グラビアコート、カーテンコート、スプレーコート、エアーナイフコート、リバースコート、ディップスクイズコート、ディップコートなどの、公知の液状物の塗布方法により実施できる。これらの塗布方法の中でも、ディップコートが好ましい。
ポリマーの溶媒または分散媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどのアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類、ジメチルアミンなどのアミン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステルなどが挙げられる。
リチウムイオン伝導性樹脂膜は、電池の組立て後に非水電解液と接触することによって、イオン伝導性を発現する。また、上述のポリマー溶液または分散液中にリチウム塩などの支持電解質を含有させることにより、イオン伝導性樹脂膜の形成時点であらかじめイオン伝導性を発現させることができる。
ポリマー溶液または分散液中のポリマーの含有割合は、ポリマー溶液または分散液の全量に対し、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。ポリマーの含有割合を0.1〜20質量%に設定することにより、ポリマー溶液または分散液の粘度を適度に調整することができる。
正極、負極、セパレータの表面の一部にリチウムイオン伝導性樹脂膜を形成した後、セパレータを挟んで、正極と負極を積層して捲回し、扁平状捲回型電極群を作製する。その後、電極群に対し、プレス加圧することによって、リチウムイオン伝導性樹脂膜を介して正極、負極、セパレータを密着させることができる。その際、電極群を加熱することによってリチウムイオン伝導性樹脂膜を軟化させた後、プレス加圧することで、密着性をさらに高めることができる。また、ゴムシート(シリコンゴム、天然ゴム等)のような柔軟性を有するシートを介してプレス加圧することで、電極群の凹凸によらず、全体に均一にプレス加圧を施すことができる。
リチウムイオン伝導性樹脂膜の平均膜厚は特に制限されないが、0.1〜5μmが好ましく、0.5〜3μmがさらに好ましい。このような範囲では、リチウムイオン伝導性樹脂膜が正極、負極、セパレータの接着効果が有効に作用するため、充放電の繰り返しによる極板間隔の拡大を抑制でき、負極活物質層の短辺方向において電極反応を均一化させることができる。また、接着効果を得るためには、50%以上の面積が必要であるため、平坦部の50〜100%にリチウムイオン伝導性樹脂膜を形成することが好ましい。
次に、本発明の一実施形態であるリチウムイオン電池は、扁平状捲回型電極群を用いる
ことができ、平坦部と端部を有する電極群を形成した場合に本発明の効果が得られる。
リチウムイオン電池の作製は、扁平状捲回型電極群の正極の端部にアルミリードを溶接し、負極の端部にニッケルリードを溶接し、アルミリードとニッケルリードを電池ケースに電気的に接続する。次に、電池ケースに非水電解液を注入する。非水電解液の量は特に限定されず、リチウムイオン二次電池の分野における技術常識の範囲で適宜設定することができる。その後、電池ケースを封口し、リチウムイオン二次電池を得ることができる。
非水電解液は、非水溶媒と、これに溶解するリチウム塩とを含む。非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類との混合溶媒が挙げられる。また、γ−ブチロラクトンやジメトキシエタンなども用いられる。リチウム塩としては、無機リチウムフッ化物やリチウムイミド化合物などが挙げられる。無機リチウムフッ化物としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsFなどが挙げられ、リチウムイミド化合物としてはLiN(CFSOなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[実施例1]
(1)負極の作製
(1−1)負極集電板の作製
直径50mmの鍛鋼製ローラの表面に、レーザ加工により、直径10μm、深さ8μmの円形の凹部を形成することにより、凸部形成用ローラを作製した。凹部は、中心間距離がローラ表面に沿って30μmとなるように、かつ凹部の中心点が二次元三角格子状のパターンとなるように配置した。凸部形成用ローラは、同じものを2本作製して、互いのローラの軸を平行に配置することにより、一対のニップローラとした。
一対のニップローラ間に、厚さ20μmの合金銅箔(ジルコニアを全体の0.03質量%含有する銅合金、商品名:HCL−02Z、日立電線(株)製)を通過させて、合金銅箔の表裏両面を加圧した。一対のニップローラ間にかかる荷重は、線圧1000kgf/cm(約9.8kN/cm)とした。こうして、合金銅箔の表裏両面に、高さ約6μm、直径約10μmの凸部が複数形成された負極集電体を得た。隣り合う凸部間の中心間距離は30μmであった。こうして得られた負極集電体を裁断して、幅100mmの帯状部材に成形した。凸部の形状は、走査型電子顕微鏡により確認した。
(1−2)負極活物質層の形成
図4に示す蒸着装置40を用いて、負極集電体の表面に負極活物質層を形成した。蒸着装置40は、巻出しロール42から巻取りロール45に向けて搬送ロール43を介しながら銅箔50を走行させ、成膜ロール44aと成膜ロール44bの下部において、蒸着ソース47a、蒸着ソース47bで、スクラップシリコン等の材料を蒸発させ、この蒸発させた材料を銅箔50の上に蒸着し、銅箔上に活物質層を形成する。マスク46a、マスク46b、およびマスク46cを備えることにより蒸着する角度を制御した。蒸着は、真空ポンプ49で圧力1×10−2Paまで減圧した後、純度99.7%の酸素ガスを酸素ノズル48a、酸素ノズル48bから真空容器41内へと供給しながら、蒸着ソース47a、蒸着ソース47bに投入しているスクラップシリコン(純度99.999%)を蒸着源として電子ビーム蒸着を行った。電子ビーム蒸着時の真空容器41内部は、圧力1×10−1Pa(abs)の酸素雰囲気とした。こうして、負極集電体の両面に、SiO(xの平均値0.4)からなる柱状体を複数形成した。
さらに、図4に示す蒸着装置40を用いて、負極集電体の表面に形成された負極活物質
層に対してリチウムを蒸着した。リチウムの蒸着は、蒸着源として、スクラップシリコンに代えて金属リチウムを用い、ノズル44から供給されるガスとして、酸素ガスに代えてアルゴンガスを用い、さらに、電子ビーム蒸着時の真空容器41内部を0.1Pa(abs)のアルゴン雰囲気とした。リチウムの蒸着量は、負極活物質層の不可逆容量に相当する量であって、金属リチウムの蒸着膜をベタ膜として形成した場合の厚みで9μmとした。
(1−3)リチウムイオン伝導性樹脂膜の形成
ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの共重合体(P(HFP−VDF))をジメチルカーボネートに溶解させて、P(HFP−VDF)の濃度が3質量%のポリマー溶液を調製した。P(HFP−VDF)中のヘキサフルオロプロピレン単位の含有割合は12モル%であった。得られたポリマー溶液を70℃に加熱した後、負極2の活物質層の平坦部に位置する部分の表面に塗布した。塗膜を5分間自然乾燥させた後、80℃に加熱してから、1時間真空乾燥させることにより、図1に示すようなリチウムイオン伝導性樹脂膜3を形成した。
図1および2に示すように、リチウムイオン伝導性樹脂膜3は、負極2の活物質層上に間欠的に形成されており、形成部は捲回型の電極群11の平坦部に位置させた。リチウムイオン伝導性樹脂膜3の幅は負極2の活物質層と同じ幅とし、平均厚みは2μmであった。
こうして得られた負極2を裁断して、幅34mm、全長300mmの帯状に成形した。負極の長辺方向の一端に、負極活物質層を取り除いて負極集電体を露出させた領域を設けて、この領域に負極リードを溶接した。
(2)正極の作製
コバルト酸リチウム粉末93質量部と、アセチレンブラック4質量部とを混合した。得られた混合粉末と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(呉羽化学工業(株)製、♯1320)とを、混合粉末とPVDFとの質量比が100:3となるように加えた後、さらに適量のNMPを加えて、正極合剤スラリーを調製した。得られたスラリーを、厚さ15μmのアルミニウム箔の両面にドクターブレード法によって塗布し、85℃で乾燥させた後、全体の厚みが160μmとなるように、ローラプレス機で圧延し、幅32mm、全長280mmの帯状に成形した。こうして得られた正極の長辺方向の一端に、正極活物質層を取り除いてアルミニウム箔を露出させた領域を設け、この領域に正極リードを溶接した。
(3)捲回型の電極群の作製
セパレータ1として、ポリエチレン微多孔膜(厚さ20μm、商品名:ハイポア、旭化成(株)製)を使用した。セパレータ1と、負極2と、正極4とを積層して、得られた積層体を図1および2のように捲回することにより、捲回型の電極群11を得た。
(4)非水電解液の調整
エチレンカーボネートと、ジメチルカーボネートと、エチルメチルカーボネートとの体積比1:1:1の混合溶媒に、1モル/リットルの濃度でLiPFを溶解させることにより、非水電解液を調製した。非水電解液には、ビニレンカーボネートを3質量%の割合で含有させた。
(5)リチウムイオン二次電池の作製
そして図3に示すようなリチウムイオン二次電池を作製した。前述の正極リード13および負極リード14を形成した電極群11を用いた。そして、厚み約80μmのアルミニ
ウム製の角型の電池缶12に電極群11を収容した。そして、電極群11の上部に絶縁板15を配置した。そして、正極リード13の他端を封口板16の下面に溶接し、負極リード14の他端を負極端子17に溶接した。なお、負極端子17は絶縁ガスケット18で囲まれており、外部負極端子として封口板16の開口から露出する。そして、防爆弁20を備えた封口板16を、電池缶12の開口端部に配置し、溶接により接合した。そして、封口板16に設けられた注液孔から、2.5gの非水電解質を電池缶12内に注入した。そして、封口板16の注液孔を封栓19で溶接により塞いだ。このようにして、高さ50mm、幅34mmで、設計容量850mAhの角型のリチウムイオン二次電池を製造した。
(6)リチウムイオン二次電池の評価
前述のように製造したリチウムイオン二次電池のサイクル特性の評価と、電池の膨れ評価とを、以下の方法に従って行った。
<サイクル特性評価>
上述のリチウムイオン二次電池について、25℃環境下で、以下の条件で、充放電を300サイクル繰り返した。1サイクル目の放電容量に対する300サイクル目の放電容量の割合(容量維持率)を百分率で求めた。
<サイクル試験条件>
定電流充電:充電電流値425mA、充電終止電圧4.2V
定電圧充電:充電電圧値4.2V、充電終止電流42.5mA
定電流放電:放電電流値425mA、放電終止電圧3.0V
<電池の膨れ評価>
上述のリチウムイオン二次電池について、25℃環境下で4.2Vまで充電し、電池の平坦部の厚みを計測した。1サイクル目の厚みから300サイクル目の厚みへの変化量を求め、1サイクル目の厚みに対する割合(厚み変化率)を下記の式(1)により、百分率で求めた。
厚み変化率=[(300サイクル目の厚み)−(1サイクル目の厚み)]÷(1サイクル目の厚み)・・・(1)
以上の結果を表1に示す。
[実施例2から5]
ポリマー溶液の塗布量を変えることにより、樹脂膜の平均膜厚を0.1μm(実施例2)、5μm(実施例3)、0.05μm(実施例4)、10μm(実施例5)に制御したこと以外は、実施例1と同様にして負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。得られた負極およびリチウムイオン二次電池を、それぞれ実施例1と同様にして評価した。
[比較例1]
リチウムイオン伝導性樹脂膜を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。負極およびリチウムイオン二次電池について、実施例1と同様の評価を行った。
捲回型電池の平坦部に位置する部分の負極活物質層表面にのみチウムイオン伝導性樹脂膜を形成した実施例1〜5によれば、充放電を300サイクル繰り返しても、比較例1に対して電池の厚み増加を抑制できた。実施例4のように0.05μmまでポリマー層を薄くすると密着効果が低下して電池膨れが大きくなってしまい、結果としてサイクル特性が低下した。また、実施例5のように10μmのポリマー層を形成すると、ポリマー層のイオン伝導性が低くなりすぎたため、レート特性の低下の影響でサイクル特性が低下した。最適範囲の実施例1から3については、電池膨れも抑制でき、かつサイクル特性も良化できた。一方、比較例1のように、リチウムイオン伝導性樹脂膜を形成しない場合は、短辺方向の中央部が局所的に膨張したことによる電池厚み増加が大きく、かつサイクル特性も低くなった。これらの結果から、平坦部のみにポリマー層を形成することにより、平坦部の充放電反応を均一化することで負極の膨れを抑制できており、その結果、電池の厚み増加を抑制できていると考えられる。また、サイクル特性低下は電池膨れによる極板間距離の拡大が主要因と考えており、ポリマー層形成で極板間距離の拡大を防止することができたため、サイクル特性も良化させることが出来たと推定している。
本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、携帯電話、PDA、ノート型PC、タブレットPC、デジタルカメラ、携帯ゲーム機などの携帯型電子機器の電源として有用である。また、ハイブリッド自動車などの車載用電源、無停電電源などの用途にも応用することができる。
1 セパレータ
2 負極
3 リチウムイオン伝導性樹脂膜
4 正極
10 リチウムイオン二次電池
11 電極群
12 電池缶
13 正極リード
14 負極リード
15 絶縁板
16 封口板
17 負極端子
18 絶縁ガスケット
19 封栓
20 防爆弁
40 蒸着装置
41 真空容器
42 巻出しロール
43 搬送ロール
44a 成膜ロール
44b 成膜ロール
45 巻取りロール
46a、46b、46c マスク
47a、47b 蒸着ソース
48a、48b 酸素ノズル
49 真空ポンプ
50 銅箔

Claims (3)

  1. 帯状の負極、帯状の正極、および帯状のセパレータを含み、前記負極および前記正極の間に前記セパレータが介在するように前記負極および前記正極の各長辺方向に沿って捲回され、主平面の平坦部と屈曲した端部を持つ扁平状捲回型電極群と、非水電解液と、を備え、
    前記負極は、合金系活物質を含む負極活物質層を備え、
    負極活物質層、正極活物質層、セパレータの少なくとも一つ表面に被着形成されたリチウムイオン伝導性樹脂膜と、を備え、
    前記リチウムイオン伝導性樹脂膜は、前記平坦部の全部、もしくは一部に位置する部分のみに形成されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 前記リチウムイオン伝導性樹脂膜が、ヘキサフルオロプロピレン単位を3〜20モル%の割合で含有するヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体、およびヘキサフルオロプロピレン単位を3〜20モル%の割合で含有するヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン単位を3〜20モル%の割合で含有するヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体の少なくとも1種の樹脂を含む請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記リチウムイオン伝導性樹脂膜の平均膜厚が0.1〜5μmである請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
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