JP2013083578A - ガス診断装置およびガス診断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】温度センサや検出値の読み出し機構を新たに設けることなく、簡易な計算処理で迅速かつ的確に空気の混合割合の異常判定を行う。
【解決手段】ガス診断装置100は、流体の圧力を検出する圧力センサ112と、圧力センサ近傍の温度を検出する温度センサ114と、温度に基づいて圧力センサが検出した圧力を補正する圧力温度補正部130と、流体の上下流に超音波の送信部と受信部とが配置され、流体を介して送信部から受信部に伝播する超音波の伝播速度を検出する超音波センサ116と、温度を変数とする上限関数と下限関数に温度センサで検出された温度を代入して上限値と下限値とを求め、伝播速度が上限値以下かつ下限値以上であれば流体を構成する複数の物質の混合割合が異常であると判定する混合判定部134とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、流体における空気の混合状態を診断するガス診断装置およびガス診断方法に関する。
ガスメータを通じて供給される可燃性のガスに対して、その上流および下流の側面から超音波を発し、その伝播速度(上流側から下流側に伝播する速度と、下流側から上流側に伝播する速度の合計速度またはその平均速度)によってガスの流速や流量を導出する技術が存在する。また、超音波の伝播速度によって、流体を構成する所定の物質(例えば可燃性ガス)に、その物質と異なる種類または組成の物質(例えば空気)が含まれているか否か検知する技術が開示されている(例えば、特許文献1、2)。
また、流体に他の物質が混在していない場合の、温度に対応した音速データを予め記憶し、温度と音波伝播時間に応じて、流体に混在が発生しているか否かを検出する技術も公開され(例えば、特許文献3)、また、所定の流体中を伝播する超音波の音速を求め、音速の温度依存性に関するデータに基づいて流体の温度を推定し、異常を検出すると、警報を発したり、遮断弁を動作させる技術も開示されている(例えば、特許文献4)。
特開2010−216725号公報 特開2001−281030号公報 特開2008−128824号公報 特開2008−298802号公報
しかし、特許文献1の技術は、ガスメータ内において形成されるメタンガスと空気との層によって空気混入の計測が困難になるのを回避する技術であり、また、特許文献2の技術は、空気が混入しているか否かを判別しているに過ぎないので、空気の混合割合が許容される範囲であっても一義的に異常と判定されてしまう。
また、特許文献3では、超音波の伝播時間が温度によって変化することが開示されているが、温度毎の伝播時間データを抽出し、その伝播時間データに基づいて可燃性ガスと空気の混合度合いを判定するといった複数段階の煩雑な演算を必要とし、また、測定した温度に関する伝播時間データが存在しない場合には、混合度合いを正確に判定することができない問題があった。特許文献4においても、音波の伝播時間と温度との関係に言及されているが、流体の温度を推定し、測定した温度との比較によってその異常を検出する構成なので、計算が複雑になるのみならず、空気の混合度合いを正確に把握することはできなかった。
さらに、上記の技術では、混合度合いの検出精度を高めるために、高精度な温度センサを別途準備しなくてはならないが、製造コストや占有体積が増大するだけでなく、温度センサの検出値を演算値として取り込む電気的構成が新たに必要となり、システムの複雑化を招いていた。
ところで、可燃性ガスに空気が混入すると、その混入量の増加に伴って可燃性ガスを利用する際の危険度が高まるが、混入量がさらに多くなると危険度は却って低くなる。従来では、空気が混入していることをもって異常を判定しているので、空気の混入量は多いが危険度は小さいといった場合においてまで可燃性ガスの供給を停止することとなり、新規の設置や損傷箇所の復旧作業の妨げとなる場合があった。
本発明は、このような課題に鑑み、温度センサや検出値の読み出し機構を新たに設けることなく、簡易な計算処理で迅速かつ的確に空気の混合割合の異常判定を行うことが可能なガス診断装置およびガス診断方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明のガス診断装置は、流体の圧力を検出する圧力センサと、圧力センサ近傍の温度を検出する温度センサと、温度に基づいて圧力センサが検出した圧力を補正する圧力温度補正部と、流体の上下流に超音波の送信部と受信部とが配置され、流体を介して送信部から受信部に伝播する超音波の伝播速度を導出する超音波センサと、温度を変数とする伝播速度の上限関数と下限関数に温度センサで検出された温度を代入して上限値と下限値とを求め、超音波センサが導出した伝播速度が上限値以下かつ下限値以上であれば流体を構成する複数の物質の混合割合が異常であると判定する混合判定部と、を備えることを特徴とする。
上限関数および下限関数のいずれか一方または双方は一次関数であってもよい。また、上限関数および下限関数は一次関数であり、その傾きが双方等しくてもよい。
ガス診断装置は、混合割合が異常であると判定されると、遮断弁を駆動して流体の流動を遮断するガス遮断部をさらに備えてもよい。
上記課題を解決するために、圧力センサを温度補正すべく圧力センサ近傍の温度を検出する温度センサと、流体の上下流に超音波の送信部と受信部とが配置され、流体を介して送信部から受信部に伝播する超音波の伝播速度を導出する超音波センサとを用いて流体の状態を診断する本発明のガス診断方法は、温度を変数とする伝播速度の上限関数と下限関数に温度センサで検出された温度を代入して上限値と下限値とを求め、超音波センサが導出した伝播速度が上限値以下かつ下限値以上であるか否か判定し、上限値以下かつ下限値以上であれば流体を構成する複数の物質の混合割合が異常であると判定することを特徴とする。
本発明によれば、温度センサや検出値の読み出し機構を新たに設けることなく、簡易な計算処理で迅速かつ的確に空気の混合割合の異常判定を行うことが可能となる。
ガス診断装置の概略的な構成を示した機能ブロック図である。 圧力温度補正部の動作を説明するための説明図である。 混合判定部の動作を説明するための説明図である。 混合判定部の動作を説明するための説明図である。 ガス診断方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
地震等の大規模な災害時においては、可燃性ガスの供給に要するガス管等が損傷することがある。このように損傷したガス管の復旧作業や補修作業において、可燃性ガスに空気が混入してしまうと、可燃性ガスと空気との混合割合によっては不完全燃焼を起こし、可燃性ガスの消費機器が正常に動作しなかったり、流量計測値に誤差が生じ、正確な流量制御ができなかったり等の問題が生じ得る。また、ガス管やガスメータ(ガス診断装置)の新規の配設においても可燃性ガスと空気とが混合している期間が生じている。したがって、作業員は、安全を確保すべく、空気の混合割合を専用の機器で確認しながらの煩雑な復旧作業を強いられ、手間と時間を費やしていた。
そこで、本実施形態におけるガス診断装置は、可燃性ガスと空気との混合割合を検出し、その混合割合が許容する範囲に含まれていなければ、可燃性ガスが異常であると判定して可燃性ガスの供給を停止する。また、本実施形態では、このような混合割合を低コストかつ効果的に判定し、高精度な異常判定を可能とする。こうして、作業員は、ガス管やガス診断装置等を介した可燃性ガスの供給状態を迅速に把握でき、空気のパージ処理といった復旧作業や新規の設置作業を的確に遂行することが可能となる。以下、本実施形態のガス診断装置100について詳述する。
(ガス診断装置100)
図1は、ガス診断装置100の概略的な構成を示した機能ブロック図である。ガス診断装置100は、遮断弁110と、圧力センサ112と、温度センサ114と、超音波センサ116と、表示部118と、演算ユニット120とを含んで構成される。
遮断弁110は、例えばソレノイドやステッピングモータを用いた電磁弁等で構成され、ガス流路150を遮断または開放して可燃性ガスの供給を制御する。圧力センサ112は、遮断弁110より後段に設けられ、可燃性ガスの圧力を検出する。温度センサ114は、圧力センサ112に対応付けて配置され、圧力センサ112自体、または、圧力センサ112の近傍の温度Tを測定する。圧力センサ112は、同一の圧力であっても、温度Tに依存してその検出値が変動するので、後述する圧力温度補正部130によって温度補正が実行される。したがって、温度センサ114は圧力センサ112自体の温度と相関性のある位置の温度Tを検出できれば足りる。
超音波センサ116は、ガス流路150の上流側側面と下流側側面の予め定められた位置に配置され、20kHz以上の音波である超音波の送信部や受信部として機能する超音波振動子116a、116bと、可燃性ガスを介して超音波振動子116a、116b間を伝播する超音波の伝播時間を検出し、超音波振動子116a、116b間の距離に基づいて伝播速度vを導出する伝播速度導出部116cとで構成される。伝播速度導出部116cは、例えば、送信部から送信された超音波と、受信部で受信された超音波の波形におけるゼロクロス点の位相差によって伝播時間を検出する。
超音波振動子116a、116bはガス流路150に対して固定され、また、可燃性ガスまたは可燃性ガスと空気との混合気がガス流路150中、均等に充填されているので、超音波の伝播速度vは、ガス流路150内の流体の流速や、可燃性ガスと空気との混合割合に依存して変化する。したがって、その伝播速度vを把握することで、可燃性ガスの流速や流量、さらには空気の混合割合を把握することができる。
例えば、2つの超音波振動子116a、116bをそれぞれ送信部および受信部として交互に機能させ、順方向伝播時間と逆方向伝播時間を測定し、その差分によって可燃性ガスの流速を導出する。さらに、かかる流速に断面積を乗じることで流量も導出可能である。また、順方向伝播時間と逆方向伝播時間とを加算または平均化し、流体の流速に依存するパラメータを相殺することで、空気の混合割合を導出することも可能となる。
表示部118は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、可燃性ガスの供給量(使用量)の積算値や、可燃性ガス漏洩等の異常を報知するために用いられる。演算ユニット120は、中央処理装置(CPU)、プログラムや後述する上限関数および下限関数に関する情報等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、ガス診断装置100全体を管理および制御する。また、演算ユニット120は、圧力温度補正部130、圧力判定部132、混合判定部134、異常報知部136、ガス遮断部138としても機能する。
圧力温度補正部130は、圧力センサ112に対応付けられて配置された温度センサ114が検出した温度Tに基づいて、圧力センサ112で検出された圧力の実測値を補正し、圧力の参照値として導出する。
図2は、圧力温度補正部130の動作を説明するための説明図である。図2では、圧力センサ112で実際に検出された圧力の実測値を横軸に、圧力の補正後の参照値を縦軸に示している。圧力センサ112が温度に拘わらず正確に圧力を測定できるとしたら、図2中、破線160で示すように、実測値と参照値とは等しくなる。しかし、実際には温度に依存しており、その線形性を保持するために温度補正を行っている。例えば、図2のように、所定の複数の温度T、T、Tに対して予め温度特性を特定しておき、温度センサ114の検出値が温度T、T、Tのいずれかであれば、その温度に対応した温度特性を参照して実測値から参照値を導出する。また、温度センサ114の検出値が温度T、T、T以外であれば、温度T、T、Tの参照値を補間(例えば線形補間)することによって個々の温度の参照値を導出できる。
圧力判定部132は、圧力温度補正部130によって補正された圧力の参照値を参照し、ガス流路150を流れる可燃性ガスの圧力が所定の許容範囲内であるか否か常に監視して、異常を検出すると後述する異常報知部136にその旨伝達する。また、大規模の地震等が発生した場合、遮断弁110によりガス流路150を遮断して圧力の参照値を参照することで、遮断弁110より下流のガス流路150において可燃性ガスの漏洩が発生していないか判定する。
混合判定部134は、演算ユニット120のROMに記憶された、温度Tを変数とする上限関数と下限関数に関する情報と、温度センサ114で検出された温度Tとを用いて、その温度Tにおける混合割合の危険範囲を示す伝播速度の上限値と下限値とを求め、求められた上限値および下限値と、超音波センサ116によって導出された伝播速度vとを比較することで可燃性ガスと空気との混合割合が異常であるか否か判定する。以下、具体的な動作を説明する。なお、ここでは可燃性ガスの例として、都市ガスの主成分であるメタンガスを例にしているが、都市ガスはメタンガス100%とは限らず、他のガスが混合している場合もある。また、可燃性ガスは都市ガスに限定されるものでもないが、ここでは、簡便のため、メタンガス100%の例で説明する。
図3および図4は、混合判定部134の動作を説明するための説明図である。本実施形態では、可燃性ガスとして、例えばメタンガスが用いられている。超音波は、伝播する流体の密度に応じてその伝播速度が変化する特性を有する。したがって、超音波センサ116によって測定された伝播速度が、メタンガス100%中の超音波の伝播速度と同じであれば、その流体はメタンガスであると特定できる。
しかし、メタンガス中の超音波の伝播速度はその流体の温度に依存して変化する。例えば、メタンガス中の超音波の伝播速度は図3に示すように温度の上昇に従って伝播速度も高くなる。したがって、正確には、超音波センサ116によって測定された伝播速度が、そのときの温度に対応した図3に示すメタンガス中の超音波の伝播速度と同じであれば、その流体をメタンガスと特定できることとなる。
また、メタンガスに限らず、ガス管等が損傷した場合に混入すると考えられる空気に関しても、図3のように、超音波の伝播速度が温度に依存して変化する。ただし、空気中の超音波の伝播速度はメタンガスと比較して遅い。また、メタンガスと空気の温度に対する超音波の伝播速度の推移は、厳密には異なるものの、温度上昇に対する伝播速度の増加傾向は大凡近似しており、図4に「メタンガス100%」および「空気100%」で示すように、流体がメタンガスのみ(100%)である場合における温度に対する超音波の伝播速度の推移162や、流体が空気のみ(100%)である場合における温度に対する超音波の伝播速度の推移164を一次関数で近似することができる。
また、メタンガスと空気とが混合されている場合、その混合割合に応じて伝播速度vの推移も変化する。ここでは、メタンガス100%の推移162と、空気100%の推移164とをその混合割合に応じて按分することとなり、その代表例として、空気に対してメタンガスが2%、5%、14%、20%混入しているときの伝播速度vの推移を図4に示している。
ところで、メタンガスと空気とはその混合割合によっては、点火源があれば発火が生じる混合割合と、その混合割合でなければ点火源があっても点火や爆発が生じない混合割合とがある。前者の混合割合は、空気に対してメタンガスが5%〜14%(爆発限界)と言われている。したがって、混合判定部134は、空気に対してメタンガスが5%〜14%混入すると、発火の危険性が生じ、ガス機器の安全な燃焼に影響を与えると判定する。これは、超音波センサ116が検知した伝播速度vと温度センサ114が検出した温度Tとが、図4においてクロスハッチングで示した範囲166に含まれるか否かによって判定される。
本実施形態では、図4においてクロスハッチングで示した範囲166の上限を上限関数として一次関数で示し、また、下限を下限関数として一次関数で示す。したがって、演算ユニット120のROMには、メタンガスが14%混入した場合の温度Tに対する上限関数としての一次関数f(T)=a・T+bの傾きaおよびオフセットb、ならびに、メタンガスが5%混入した場合の温度Tに対する下限関数としての一次関数f(T)=c・T+dの傾きcおよびオフセットdが予め記憶されている。
混合判定部134は、温度センサ114が検出した温度Tを上限関数および下限関数に代入し、上限値a・T+bと下限値c・T+dとを求める。そして、混合判定部134は、超音波センサ116が検知した伝播速度vと、上限値a・T+bと下限値c・T+dとを比較してa・T+b≧v≧c・T+dの関係を満たせば、可燃性ガスと空気との混合割合が異常であると判定する。
このように、温度との単純な乗算で上限値および下限値を求め、それと伝播速度とを比較するといった簡易な計算により、処理負担を軽減しつつ高精度な異常判定を実行することが可能となる。
また、対象である複数の流体、ここではメタンガスと空気との温度Tに対する伝播速度vの変化率が近似している場合、上限関数および下限関数の傾きを等しく(ここでは傾きaと)することができる。そうすると、上記a・T+b≧v≧c・T+dの関係は、a・T+b≧v≧a・T+dと置換でき、全ての項からa・Tを減算してb≧v−a・T≧dのように表すことができる。かかる条件の下では、乗算を、温度センサ114が検出した温度Tと傾きaとの乗算1回に絞ることができ、混合判定部134は、超音波センサ116が検知した伝播速度vから温度Tと傾きaとの乗算値を減算し、その減算値と、各オフセットb、dとを比較するのみで、可燃性ガスと空気との混合割合の異常を判定することができる。かかる構成により、処理負担をさらに軽減しつつ高精度な異常判定を実行することが可能となる。
また、混合判定部134は、流体における可燃性ガスと空気との混合割合を一旦異常であると判定すると、その範囲から外れても即座に異常と判定している状態を解除せず、例えば、図4においてハッチングで示したような、メタンガスの混合割合が2%以下、または20%以上となったときにはじめて解除する。このようなヒステリシスを設けることで、上限値や下限値付近で混合割合が上下した場合においても混合割合が異常であると判定する状態を確実に維持することができ、安全性の向上を図ることが可能となる。
異常報知部136は、混合判定部134が空気の混入を検知し、危険と判定している間、即ち、空気に対して可燃性ガス(メタンガス)の混合割合が5%〜14%になってから、2%以下、または、20%以上の安全範囲に復帰するまでの間、表示部118に警報を示す情報を表示し続け、また、その旨を示す音声を図示しないスピーカに出力し続ける。こうして、作業員または利用者が、視覚的または聴覚的に可燃性ガスと空気との混合割合の異常を把握することができる。また、メタンガスの混合割合が20%以上になると、警報が解除されるので、作業員は、爆発の恐れのある状況としての空気のパージが完了したことを早期に把握することが可能となる。
この考え方は、上述した爆発限界の範囲だけではなく、ガスメータの下流で利用されるガス機器の安全や有効な利用に影響を与えないメタンガスの混合割合にも活用できる。例えば、解除条件をメタンガスが95%以上に置換し、条件を満たすと警報が解除されるように設定することが可能となる。この場合、警報が解除されれば、作業員は、空気がガス機器に影響を与えないメタンガスの混合割合、例えば5%未満になったことを確認して作業を終えることができる。
ガス遮断部138は、混合判定部134が、混合割合が異常であると判定している間、遮断弁110を駆動してガス流路150を遮断する。
(ガス診断方法)
以下では、上述したガス診断装置100を用い流体の状態を診断するガス診断方法について詳述する。
図5は、ガス診断方法の全体的な流れを示したフローチャートである。当該ガス診断方法では、異常フラグがOFFに初期設定された後、予め定められた時間間隔の定期的なタイマ割込によって処理が開始される。タイマ割込が生じると、まず、ガス診断装置100の温度センサ114は、圧力センサ112近傍の温度Tを検出し(S200)、超音波センサ116は、流体を介して送信部としての超音波振動子116aから受信部としての超音波振動子116bに伝播する超音波の伝播時間を検出して伝播速度vを導出する(S202)。
そして、混合判定部134は、異常フラグがOFFであるか否か判定し(S204)、OFFであると判定すると(S204におけるYES)、ROMから上限関数の傾きaおよびオフセットb、ならびに、下限関数の傾きcおよびオフセットdを読み出し(S206)、温度センサ114で検出された温度Tを用いて上限値a・T+bと下限値c・T+dとを求める(S208)。
続いて、混合判定部134は、伝播速度が上限値以下かつ下限値以上であるか否か判定し(S210)、上限値以下かつ下限値以上であれば(S210におけるYES)、流体を構成する複数の物質の混合割合が異常であると判定し、異常フラグをONする(S212)。そして、タイマ割込の待ち受け状態に戻る。
また、異常フラグ判定ステップS204において異常フラグがOFFではない(異常フラグON)と判定すると(S204におけるNO)、ROMから、安全範囲の一方の境界を示すメタンガスの混合割合が20%の場合に相当する関数の傾きeおよびオフセットf、ならびに、安全範囲の他方の境界を示すメタンガスの混合割合が2%の場合に相当する関数の傾きgおよびオフセットhを読み出し(S214)、温度センサ114で検出された温度tを用いて第1解除値e・t+fと第2解除値g・t+hとを求める(S216)。
続いて、混合判定部134は、伝播速度vが第1解除値以上または第2解除値以下であるか否か判定し(S218)、第1解除値以上または第2解除値以下であれば(S218におけるYES)、混合割合の異常が解除されたと判定し、異常フラグをOFFする(S220)。そして、タイマ割込の待ち受け状態に戻る。
このようなガス診断装置100やガス診断方法によって、圧力センサ112の温度補正に用いられる温度センサを兼用し、簡易な計算処理で迅速かつ的確に、可燃性ガスと空気との混合割合が危険範囲に含まれるか否かを判定することが可能となる。したがって、ガス診断装置100上下ガス流路150の損傷箇所の復旧作業やガス診断装置100の新規の設置作業において、作業員は、可燃性ガスと空気との混合割合を別途確認せずとも、ガス診断装置100を参照するだけで、その作業状態を的確に把握でき、効率的に作業を遂行することが可能となる。
また、空気のパージ処理を行った場合においても、作業員は、パージによって空気の混合割合が安全な範囲(空気80%未満、メタンガス20%以上)となったことを迅速に把握することができるので、安全性を確保しつつ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
さらに、メタンガスの混合割合が5%未満であった場合に従来のように一義的に異常と判定することがないので、新規の配設等において不必要に遮断弁110が遮断してしまったり、警報が生じたりすることを抑制でき、作業効率のさらなる向上を図ることができる。
また、圧力センサ112の温度補正と、空気混合の異常判定とにおいて温度センサ114を兼用することで、圧力センサ112と演算ユニット120とのインターフェースを利用して空気混合の異常判定を遂行できるので、温度センサ114やそのインターフェースを空気混合の異常判定のために新設する必要がなくなり、低コスト化を図ることができる。また、圧力センサ112の不具合検出ロジックを流用して温度センサ114の不具合も検出可能となるので、温度センサ114の不具合検出ロジックを別途準備する必要がない。さらに、温度センサ114の新設が不要な分、温度センサ114の取り付け場所を確保する必要がなくなり、当該ガス診断装置100を小型、軽量化でき、使用材料の削減、運搬や保管費用の低減が可能となる。
また、温度に基づき関数を用いて危険範囲に含まれるか否かを計算しているので、補正テーブルを組み入れた場合に比べ、必要なメモリ領域が小さくて済み、メモリ容量の削減を図ることが可能となる。また、補正テーブルを参照する場合における膨大なメモリの検索を省略できるので、検索に要する時間の間中、継続して演算ユニット120を起動し続ける必要が無く、消費電力の抑制を図ることも可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
また、コンピュータを、ガス診断装置100として機能させるプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
なお、本明細書のガス診断方法における各工程は、必ずしもフローチャートして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
本発明は、流体における空気の混合状態を診断するガス診断装置およびガス診断方法に利用することができる。
100 …ガス診断装置
110 …遮断弁
112 …圧力センサ
114 …温度センサ
116 …超音波センサ
116a …超音波振動子
116b …超音波振動子
116c …伝播速度導出部
118 …表示部
120 …演算ユニット
130 …圧力温度補正部
132 …圧力判定部
134 …混合判定部
136 …異常報知部
138 …ガス遮断部
150 …ガス流路

Claims (5)

  1. 流体の圧力を検出する圧力センサと、
    前記圧力センサ近傍の温度を検出する温度センサと、
    前記温度に基づいて前記圧力センサが検出した圧力を補正する圧力温度補正部と、
    前記流体の上下流に超音波の送信部と受信部とが配置され、該流体を介して該送信部から該受信部に伝播する超音波の伝播速度を導出する超音波センサと、
    温度を変数とする伝播速度の上限関数と下限関数に前記温度センサで検出された温度を代入して上限値と下限値とを求め、前記超音波センサが導出した伝播速度が該上限値以下かつ該下限値以上であれば前記流体を構成する複数の物質の混合割合が異常であると判定する混合判定部と、
    を備えることを特徴とするガス診断装置。
  2. 前記上限関数および下限関数のいずれか一方または双方は一次関数であることを特徴とする請求項1に記載のガス診断装置。
  3. 前記上限関数および下限関数は一次関数であり、その傾きが双方等しいことを特徴とする請求項2に記載のガス診断装置。
  4. 前記混合割合が異常であると判定されると、遮断弁を駆動して前記流体の流動を遮断するガス遮断部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガス診断装置。
  5. 圧力センサを温度補正すべく該圧力センサ近傍の温度を検出する温度センサと、流体の上下流に超音波の送信部と受信部とが配置され、該流体を介して該送信部から該受信部に伝播する超音波の伝播速度を導出する超音波センサとを用いて流体の状態を診断するガス診断方法であって、
    温度を変数とする伝播速度の上限関数と下限関数に前記温度センサで検出された温度を代入して上限値と下限値とを求め、
    前記超音波センサが導出した伝播速度が前記上限値以下かつ前記下限値以上であるか否か判定し、
    前記上限値以下かつ前記下限値以上であれば前記流体を構成する複数の物質の混合割合が異常であると判定することを特徴とするガス診断方法。
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