JP2013078354A - 膨張装置 - Google Patents

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剛彦 蒲谷
Masao Teraoka
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Abstract

【課題】誤ってレバーが手動操作されたときでも、圧縮ガスを内蔵した容器を打ち抜き、膨張動作を完結させることを可能にする膨張装置を提供する。
【解決手段】シャーピン13で動作が規制されたレバー11を操作してシャーピン13を破断し、このレバー11の動作により撃針19を駆動し、この撃針19がガス・ボンベ9の封止端を貫通して圧縮ガスを噴出させ、この圧縮ガスによりライフ・ジャケット側を膨張させる膨緒装置1であって、シャーピン13が破断するときのレバー11の回転トルク(破断トルクT1)が、撃針19がガス・ボンベ9の封止端を貫通するときのレバー11の回転トルク(ボンベ貫通トルクT2)よりも大きくなるように設定したことを特徴とする。
【選択図】図8

Description

圧縮ガスによりライフ・ジャケットや救命いかだのような浮揚体を膨らませるための膨張装置に関する。
従来のこの種の膨張装置は、作動レバー、撃針、小型ガス・ボンベ(圧縮ガスを内蔵した容器)等よりなっている。
ライフ・ジャケット着用者の落水等により、水浸入小孔から浸入した水によって紙芯が濡れて溶けると、紙芯によって圧縮状態で固定されていた連結スプリングが作動し、撃針が自動的に駆動されて小型ガス・ボンベを貫通し、小型ガス・ボンベから圧縮ガスが噴出してライフ・ジャケットを膨張させることができる。
また、手動のレバー操作により撃針を動作させ、小型ガス・ボンベを貫通させることができる。
かかる膨張装置では、誤ってレバーが手動操作され、撃針の尖端がガス・ボンベの閉止端に衝突しても、閉止端に僅かな傷ができるだけで、貫通はしない状況を招き得る。
この状況では、ガス・ボンベからの圧縮ガスの噴出はなく、閉止端の傷から微小なガス漏れが発生することがある。このガス漏れは、比較的長い時間をかけて行われ、ライフ・ジャケットの膨張はないがガス・ボンベからガスが抜けているという状況を招く恐れがある。
特開2004−244009公報
解決しようとする問題点は、誤ってレバーが手動操作され、圧縮ガスを内蔵した容器を傷付け、ガス漏れを招く恐れがあった点である。
本発明は、誤ってレバーが手動操作されたときでも、圧縮ガスを内蔵した容器を打ち抜き、膨張動作を完結させることを可能とするため、シャーピンで動作が規制されたレバーを操作してシャーピンを破断し、このレバーの動作により撃針を駆動し、この撃針が圧縮ガスを内蔵した容器の封止端を貫通して圧縮ガスを噴出させ、この圧縮ガスにより浮揚体側を膨張させる膨緒装置であって、前記シャーピンが破断するときの前記レバーの回転トルクが、前記撃針が容器を貫通するときの前記レバーの回転トルクよりも大きくなるように設定したことを特徴とする。
本発明は、上記構成であるから、シャーピンが設定トルクで適切に破断した後、撃針が容器の閉止端を容易に貫通する。このため、誤ってレバーが操作されても、撃針の尖端が容器の閉止端に衝突すると、閉止端が容易に打ち抜かれて撃針の針部が閉止端を貫通する。
したがって、容器から圧縮ガスが噴出して、浮揚体が膨張し、誤作動を容易に認識し、圧縮ガスを内蔵した容器の交換を促すことができる
(A)は、ガス・ボンベを取り付けた膨張装置の全体側面図、(B)は、シェアピンの側面図である。(実施例1) 膨張装置の断面図である。(実施例1) 図2のIII‐III線矢視断面図である。(実施例1) インジケーター軸が貫通した撃針の断面図である。(実施例1) 撃針の断面図である。(実施例1) 撃針本体の断面図である。(実施例1) 撃針本体の平面図である。(実施例1) 撃針本体と撃針ワッシャとの関係を示す端面図である。(実施例1) アクチュエーター及び表示部の断面図である。(実施例1) 表示部の側面図である。(実施例1) 表示視認部を含めたインジケーター軸の断面図である。(実施例1) (A)は、アクチュエーター・ソケットの斜視図、(B)は、同断面図である。(実施例1) (A)は、アクチュエーター・シャフトの斜視図、(B)は、同断面図である。(実施例1) マウント・シャフトの側面図である。(実施例1) マウント・シャフトの上面図である。(実施例1) マウント・シャフトの下面図である。(実施例1) 図15のXVII−XVII線矢視断面図である。(実施例1) (A)は、実施例に係るシャーピンの破断トルクと撃針のボンベ貫通トルクとの比較を示すグラフ、(B)は、比較例に係るシャーピンの破断トルクと撃針のボンベ貫通トルクとの比較を示すグラフである。(実施例1、比較例) (A)は、空ボンベ取り付け時の説明図、(B)は、ボンベ取り付け時の説明図、(C)は、自動作動時の説明図である。(実施例1) (A)は、アクチュエーター組立単体の説明図、(B)は、自動作動後の説明図、(C)は、脱落防止の説明図である。(実施例1)
誤ってレバーが手動操作されたときでも、圧縮ガスを内蔵した容器を打ち抜き、膨張動作を完結させることを可能にするという目的を、シャーピンが破断するときのレバーの回転トルクが、撃針が容器を貫通するときのレバーの回転トルクよりも大きくなるように設定することで実現した。
図1〜図3は、本発明実施例の膨張装置に係り、図1(A)は、ガス・ボンベを取り付けた膨張装置の全体側面図、(B)は、シェアピンの側面図、図2は、膨張装置の断面図、図3は、図2のIII‐III線矢視断面図である。
図1〜図3のように、膨張装置1は、自動又は手動で動作させ、ライフ・ジャケット等の浮揚体に圧縮ガスを送り込んで膨らませるためのものであり、撃針体部3とインジケーター部5とアクチュエーター7とから成っている。撃針体部3に、圧縮ガスを内蔵した容器であるガス・ボンベ9が取り付けられている。この膨張装置1は、アクチュエーター7の動作により撃針が自動で駆動される他、レバー11の操作によっても駆動できるようになっている。レバー11の取り付け構造は後述するが、レバー11は、シャーピン13で固定され、ハンドル15を設定以上の力で引くとレバー11に紐15aを介して回転力が伝えられ、シャーピン13が破断してレバー11が回転する。
[撃針体部]
撃針体部3は、ケース17、撃針19を備えている。
(ケース)
ケース17は、樹脂により中空に形成され、容器取付口21を備えている。容器取付口21は、ガス・ボンベ9の封止端を着脱可能に取り付ける部分であり、この容器取付口21には、ガス・ボンベ9取付用の雌ねじ23が形成されている。容器取付口21の奥壁25には、密閉用のボンベ・オーリング27が装着され、ガス・ボンベ9の封止端に密接可能となっている。
奥壁19の中央には、小径の通路待機孔29が形成され、容器取付口21に連通している。通路待機孔29は、撃針19の尖端を待機させると共に、ガス・ボンベ9から流出する圧縮ガスを流通させるものである。
通路待機孔29に連通して通路ガイド孔31が形成されている。通路ガイド孔31は、断面円形で通路待機孔29よりも大径で同心に形成されている。通路ガイド孔31は、通路待機孔29と協働してガス・ボンベ9から流出する圧縮ガスを流通させると共に、撃針19の中間部をガイドする。
通路ガイド孔31に連通してガイド孔33及びマウント孔35が形成されている。ガイド孔33は、断面円形で通路ガイド孔31よりも大径で同心に形成されている。ガイド孔33は、撃針19の後部をガイドする。マウント孔35は、容器取付口21に連通して浮揚体側へ連通接続される吐出口を構成する。このマウント孔35は、通路ガイド孔31に直交するように形成され、このマウント孔35に、後述のマウント・シャフトを取り付ける。マウント・シャフトは、ライフ・ジャケット等の浮揚体(図示せず)に取り付けられる。マウント孔35には、回り止め用の平面部35aが設けられ、D形断面となっている。このマウント孔35両端の開口周縁には、マウント・シャフト・オーリング37が備えられ、取り付けられたマウント・シャフト側に密接する。
ケース17の後端部には、ガイド孔33を開放する空間部39が形成されている。空間部39は、撃針19の後端部を突出させる部分となっている。この空間部39の回りに形成され、空間部39を囲むアクチュエーター取付部41が形成されている。アクチュエーター取付部41は、アクチュエーター7を螺合により着脱可能に取り付ける部分であり、雄ねじ43が形成されている。
ケース17の中間部には、レバー取付部45が設けられている。レバー取付部45は、開口47を備え、開口47の両側に軸支部49が形成されている。開口47は、ガイド孔33をケース17の側面部に開放し、軸支部49は、樹脂製のレバー11をピン51により回転自在に支持している。開口47の外部近傍に、シャーピン支持部52が形成されている。シャーピン支持部52にレバー11のシャーピン挿通部11aをシャーピン13の挿通で結合し、通常時のレバー11の回転が固定されている。
レバー11は、開口47内でガイド孔33側へ臨む先端部11bが二股に形成され、先端部が撃針13の後部側を挟む形態となっており、先端部11bの二股対向面に、撃針13に係合する段部11cが形成されている。
(撃針)
撃針19は、通路ガイド孔31及びガイド孔33内に装填されている。この撃針19は、ケース17に可動支持されて水などの液体に反応するアクチュエーター7の動作により又はレバー11の操作により尖端部が前記容器取付口21内へ進出してガス・ボンベ9の封止端を貫通するように駆動される構成となっている。
図4は、インジケーター軸が貫通した撃針の断面図、図5は、撃針の断面図、図6は、撃針本体の断面図、図7は、撃針本体の平面図、図8は、撃針本体と撃針ワッシャとの関係を示す端面図である。
図2〜図8のように、撃針19は、撃針ホルダー53に撃針本体55を一体に形成したものである。
図4、図5のように、撃針ホルダー53は、樹脂製であり、全体的に円形断面に形成され、先端側に撃針本体55を一体成型により固定している。撃針ホルダー53には、撃針本体55に連続する連通孔57及びシール孔59が段付状に形成されている。
撃針ホルダー53の端部には、受け面62が形成されている。この9撃針ホルダー53の外周先端側部60は、断面円形に形成され、この外周先端側部60には、シール支持部61が形成され、撃針オーリング63が支持されている。撃針ホルダー53の外周部後端側には、断面円形のガイド面65が形成されている。ガイド面65には、周回状の凹部により嵌合部67及び駆動係合部69が形成されている。
嵌合部67を、レバー11の二股の先端部11bが挟み、二股対向面の段部11cが駆動係合部69に係合する。
撃針ホルダー53の後端には、衝突面70が形成され、アクチュエーター7の衝突駆動を受けることができるようになっている。
図6〜図8のように、撃針本体55は、ステンレスなどの金属板により断面U字状に形成され、先端に針部71が形成され、中間部にストッパ用の凸部73が形成され、後部側に抜け止め用の爪部75が切り起こされている。
針部71は、凹状の湾曲部71a及びカット面71bにより尖端が鋭利に形成されている。
この撃針本体55が撃針ホルダー53に一体形成され、凸部73が金属製の撃針ワッシャ77を介して撃針ホルダー53の端面に当接し、爪部75が撃針ホルダー53に食い込むように形成されている。
撃針ホルダー53と一体の撃針本体55は、その断面U字の内部が、連通孔57に連通し、連通孔57を撃針ホルダー53外の撃針本体55先端側へ解放している。したがって、撃針本体55から連通孔57及びシール孔59に掛けて撃針19の中空部19aが構成されている。
かかる撃針19は、ケース17内に収容され、撃針ホルダー53の先端側がケース17の通路ガイド孔31に挿入され、シール支持部61の撃針オーリング63が通路ガイド孔31内面に密接し、撃針ホルダー53の後端側がガイド孔33内に収容され、ガイド可能となっている。
撃針ホルダー53と通路ガイド孔31端面との間には、コイル・スプリング78が介設され、撃針ホルダー53の後端は、ケース17の空間部39内に臨み、撃針本体55の尖端は、通路待機孔29内に待機配置されている。
図9は、アクチュエーター及び表示部の断面図、図10は、表示部の側面図、図11は、表示視認部を含めたインジケーター軸の断面図である。
図2、図4、図9〜図11のように、インジケーター部5は、インジケーター軸79と表示部81とを備えている。
インジケーター軸79は、ステンレスなどの金属で形成され、撃針19の中空部19aを貫通して配置され、先端が撃針本体55の針部71から突出して容器取付口21内へ臨み、後端側がアクチュエーター7を貫通してインジケーター部5に至っている。
インジケーター軸79の中間部には、樹脂の一体成形等によりシール支持部83が形成され、このシール支持部83にシール部材としてインジケーター・オーリング85が取り付けられている。このインジケーター・オーリング85は、シール孔59内に配置され、シール孔59内面に密接している。
インジケーター軸79の後端部には、表示部81のインジケーター・リング87及びインジケーター・キャップ89が樹脂等により一体的に設けられている。インジケーター・リング87は、ガス・ボンベ9の正しい装着を示すために、例えば緑色に着色され、インジケーター・キャップ89は、ガス・ボンベ9の非装着を示すために、例えば赤色に着色されている。なお、この着色は、他の色にすることも可能である。
表示部81は、インジケーター軸79が容器取付口21に取り付けられたガス・ボンベ9の封止端により押圧されて移動すると外観上の表示を変化させるものであり、インジケーター・ハウジング91と表示視認部93とを備えている。
インジケーター・ハウジング91は、周回形状の基部95及び中空頭部97と径方向のブリッジ99及び係合爪101で全体形状が形成され、基部95の内部にインジケーター・リング孔103aが形成され、中空頭部97の内部にインジケーター・キャップ孔103bが形成されている。
基部95及び中空頭部97間は、空間として形成された表示窓105となっている。
インジケーター・リング87がインジケーター・リング孔103aに、インジケーター・キャップ89がインジケーター・キャップ孔103bにそれぞれ軸方向移動可能に収容支持されている。
インジケーター・キャップ89とインジケーター・キャップ孔103bの端部との間には、インジケーター・スプリング107が介設され、基部95を貫通して配置されたインジケーター軸79を容器取付口21側へ軸方向に付勢している。
インジケーター軸79の移動により表示窓105に対して着色の異なるインジケーター・リング87及びインジケーター・キャップ89のいずれかが露出することで、表示窓105が異なる表示態様となる。
したがって、インジケーター・リング87及びインジケーター・キャップ89、表示窓105は、インジケーター軸79に設けられ、このインジケーター軸79が前記ガス・ボンベ9の封止端により押圧されて移動する前後で表示窓105が異なる表示態様となり、表示視認部93を構成する。
インジケーター・ハウジング91は、アクチュエーター7のアクチュエーター・ハウジング111に固定され、アクチュエーター・ハウジング111を介してケース17側に固定支持された構成となっている。
アクチュエーター・ハウジング111は、透明の樹脂で形成され、内部が視認可能となっている。アクチュエーター・ハウジング111の内部には、アクチュエーター孔113とインジケーター孔115とが同芯に形成され、インジケーター孔115は、アクチュエーター孔113よりも僅かに大径に形成されている。
アクチュエーター孔113の一端部には、雌ねじ117が形成され、同中間部には、係止突部119が形成されている。インジケーター孔115の端部には、係止孔120が形成されている。
インジケーター部5は、インジケーター・ハウジング91がインジケーター孔115に嵌合し、係合爪101が係止孔120に着脱可能に係止されることで固定支持されている。
[アクチュエーター]
アクチュエーター7は、アクチュエーター・ハウジング111の他、アクチュエーター・ソケット121とアクチュエーター・シャフト123とアクチュエーター・ロール125とを備えている。
図12は、(A)は、アクチュエーター・ソケットの斜視図、(B)は、同断面図である。
図12のように、アクチュエーター・ソケット121は、中空円筒状に形成され、外周面に固定用フランジ127が設けられている。アクチュエーター・ソケット121の一端は、スリット129が複数一定間隔で形成され、可撓片部131が周回状に連設されている。可撓片部131の内面には、断面山形の突起133が形成されている。このアクチュエーター・ソケット121は、固定用フランジ127の部分でアクチュエーター・ハウジング111のアクチュエーター孔113内に圧入され、係止突部119に係止されて位置決められている。
図13(A)は、アクチュエーター・シャフトの斜視図、(B)は、同断面図である。
図13のように、アクチュエーター7の動作体を構成するアクチュエーター・シャフト123には、中空部として、第1シャフト連通口135及び第2シャフト連通口137が形成されている。第2シャフト連通口137は、第1シャフト連通口135よりも細く形成されている。
アクチュエーター・シャフト123の外周部には、軸方向中間部に段部139が形成され、段部139に隣接して作動表示部141が形成されている。作動表示部141は、例えば赤色に着色され、クチュエーター・シャフト123の動作を示すことができる。なお、着色はその他の色を選択することもできる。
アクチュエーター・シャフト123の一端には、スプリング座フランジ143が形成され、他端側に断面谷形の凹部145が周回状に形成されている。
このアクチュエーター・シャフト123は、図2、図9のように、他端側がアクチュエーター・ソケット121に嵌合し、凹部145が突起133に嵌合して位置決められる。この位置決め状態で可撓片部131の回りには、紙製のアクチュエーター・ロール125が巻きつけられ、可撓片部131の径方向外側への撓みを規制する。
スプリング座フランジ143と固定用フランジ127との間には、圧縮コイル・スプリング147が介設され、アクチュエーター・シャフト123を付勢待機している。
インジケーター軸79は、第1シャフト連通口135及び第2シャフト連通口137によりアクチュエーター7を貫通し、表示部81がアクチュエーター7の後端部に支持された構成となっている。
図9のアクチュエーター7単独時に第2シャフト連通口137は、インジケーター軸79のシール支持部83は通すが、インジケーター・オーリング85は端部開口縁137aに係合する。端部開口縁137aは、シール部材であるインジケーター・オーリング85に係合可能な係合部を構成する。
アクチュエーター7は、ケース17のアクチュエーター取付部41に、螺合により着脱可能に取り付けられ、螺合は、雄ねじ43と雌ねじ117とにより行われる。
この取付状態でアクチュエーター・シャフト123が撃針19の後端部に打撃駆動可能に対向配置される。
[マウント・シャフト]
図14〜図17は、マウント・シャフトに係り、図14は、マウント・シャフトの側面図、図15は、同上面図、図16は、同下面図、図17は、図15のXVII−XVII線矢視断面図である。
図14〜図17のように、マウント・シャフト149は、マウント嵌合部151と浮揚体結合部153とからなっている。
マウント嵌合部151は、ナイロンなどの樹脂又は金属で中空の軸形状に形成され、内部に、貫通孔154を備えている。マウント嵌合部151の外周部は、マウント孔35のD形断面に対応したD形断面に形成され、中間に小径部155が形成され、この小径部155に通気穴157が形成されている。マウント嵌合部151の先端には、雄ねじ159が形成され、袋ナットを締結できるようになっている。
マウント嵌合部151には、くびれ部161を介してシール面フランジ163が形成され、このシール面フランジ163に結合フランジ165、167が併設されている。
浮揚体結合部153はライフ・ジャケットの気室169に結合されるものであり、気室169のウレタン引布に合わせてウレタンで形成され、シール面フランジ163から結合フランジ165、167にかけて一体に形成されている。
浮揚体結合部153は、貫通孔154に連通する吐出開口171を備え、吐出開口171の外部周囲は、平面部173として形成され、この平面部173に、密着防止部として十字の溝175が形成されている。溝175は、吐出開口171を平面部173の外縁外へ開放している。
平面部173の外縁は、テーパー面177を介して取付フランジ179に至っている。取付フランジ179が気室169の図示しない結合部に結合され、吐出開口171側が気室169内に臨まされている。
なお、マウント嵌合部151及び浮揚体結合部153の材質は、種々変更することができる。
マウント・シャフト149は、マウント嵌合部151が膨張装置1のマウント孔35にマウントされ、浮揚体結合部153にライフ・ジャケット等の気室169が結合されるものである。
マウント・シャフト149のマウントは、マウント嵌合部151を、そのD形をマウント孔35のD形に合わせて一方側から挿入し、マウント孔35の他方側から突出した雄ねじ159に袋ナットを締結して固定する。
この締結固定で、袋ナットとシール面フランジ163とがマウント孔35のマウント・シャフト・オーリング37に密着し、マウント・シャフト149及びマウント孔35間の密閉が行われる。
このマウント・シャフト149は、密着防止部として、テーパー面177を介して取付フランジ179より突出した平面部173に十字の溝175を備えているので、気室内への圧縮ガス(ガス)の噴出を、負圧に妨げられることなく、円滑に行わせることができる。
すなわち、十字の溝175がないときは、貫通孔154から吐出開口171を経て平面部173及び気室169間に高速で噴き出され、平面部173及び気室169間に負圧が発生することで気室169が平面部173に密着し、ガスの噴出が円滑に行われない場合がある。これに対し、十字の溝175が存在することで気室169が平面部173に密着しても圧縮ガスが十字の溝175を通り、気室169内へ円滑に到達する。
気室169内へ圧縮ガスが入り始めると、気室169が膨張するので気室169と平面部173との密着は起こらず、以後気室169が膨張を完了するまでガ圧縮ガスの通過が円滑に行われる。
なお、密着防止部としては、十字の溝175に限らず、一文字、三又等、種々の形態をとることができる。また、密着防止部は、溝に限らず平面部173に形成する規則的に並んだ或いは不規則に配置された凸部などで形成することもできる。
気室169には、人の口から呼気としての圧縮ガスを給気可能とする給気用のパイプも接続されるが、このパイプにも同様の密着防止部を形成することができる。
さらに、密着防止部は、浮揚体に限らず、可撓性の袋状体で形成された気室にガスを供給する部分に広く適用することができる。
[膨張装置の作動]
(自動作動)
ガス・ボンベ9を取り付けた膨張装置1は、マウント孔35に密に取り付けられたマウント・シャフト149がライフ・ジャケット等の浮揚体に結合され、ガス・ボンベ9からの圧縮ガスにより浮揚体が膨張する。
例えば、ライフ・ジャケットを身に付けた人が、水中に入り、膨張装置1が水に浸かると、アクチュエーター・ハウジング111内に水が浸入し、紙製のアクチュエーター・ロール125が、水を含んで溶け又は強度が低下する。この溶け又は強度が低下することによりアクチュエーター・ソケット121の可撓片部131の拘束力が開放され、圧縮コイル・スプリング147の付勢力でアクチュエーター・シャフト123の凹部145がアクチュエーター・ソケット121の突起133から外れ、アクチュエーター・シャフト123が撃針19側へ瞬時に移動する。
この瞬時の移動によりアクチュエーター・シャフト123が撃針19の撃針ホルダー53端面に衝突し、撃針19がコイル・スプリング78の付勢力に抗して瞬時に移動する。
この瞬時の移動により撃針19の撃針本体55がその針部71からガス・ボンベ9の閉止端に突入し、貫通する。
この撃針19の貫通でガス・ボンベ19から圧縮ガスが噴出し、通路待機孔29、通路ガイド孔31、マウント孔35へと順次移動する。
マウント孔35へ移動した圧縮ガスは、マウント・シャフト149の通気孔157から貫通孔154を通り吐出開口171からライフ・ジャケットの気室169に至り、ライフ・ジャケットが瞬時に膨張する。
撃針19がガス・ボンベ9の閉止端を打ち抜くとき、撃針本体55に撃針ホルダー53側への衝撃力が反力として作用する。このとき、撃針本体55の凸部73が金属製の撃針ワッシャ77を介して撃針ホルダー53の端面に当接するから、撃針本体55が金属製で撃針ホルダー53が樹脂製の一体成形であっても、凸部73の存在で撃針本体55が撃針ホルダー53へ食い込むことを抑制できる。
特に、凸部73が金属製の撃針ワッシャ77に当接するから、撃針本体55が撃針ホルダー53へ食い込むことを、より確実に防止できる。このため、撃針体部3の繰り返しの使用にも高い耐久性を維持することができる。
(手動作動)
膨張装置1は、レバー11によっても動作させることができる。
ハンドル15を強く引くとレバー11に紐15aを介して回転力が伝えられ、シャーピン13が破断してレバー11がピン51を中心に回転する。
レバー11の回転によりレバー11の先端部11bの段部11cが撃針ホルダー53の駆動係合部69を軸方向に押圧し、撃針ホルダー53をガス・ボンベ9方向へ付勢する。
この付勢により撃針19が上記同様に動作し、同様にガス・ボンベ9の閉止端が打ち抜かれ、ライフ・ジャケットが瞬時に膨張する。
(手動誤作動看過防止)
図18(A)は、実施例に係るシャーピンの破断トルクと撃針のボンベ貫通トルクとの比較を示すグラフ、(B)は、比較例に係るシャーピンの破断トルクと撃針のボンベ貫通トルクとの比較を示すグラフである。横軸は時間を示し、縦軸は破断トルクを示す。この場合のトルクは、レバー11を回転させるトルクとしている。
図18(B)のように、比較例では、シャーピン13の破断トルクT3(シャーピン13が破断するときのレバー11の回転トルク)よりも撃針19のボンベ貫通トルクT4(撃針19が容器を貫通するときのレバー11の回転トルク)の方が大きくなっている。撃針19のボンベ貫通は、シャーピン13の破断トルク後となる。
このようなトルク関係では、シャーピン13が設定トルクで適切に破断した後でも、撃針19がガス・ボンベ9の閉止端を容易には貫通しない恐れがある。このため、誤ってレバー11が手動操作され、シャーピン13が破断して撃針19の尖端がガス・ボンベ9の閉止端に衝突しても、閉止端に僅かな傷ができるだけで、貫通はしない状況を招き得る。
この状況では、ガス・ボンベ9からの圧縮ガスの噴出はなく、閉止端の傷から微小なガス漏れが発生することがある。このガス漏れは、比較的長い時間をかけて行われ、ライフ・ジャケットの膨張はないがガス・ボンベ9からガスが抜けているという状況を招く恐れがある。
これに対し、図18(A)のように、実施例では、シャーピン13の破断トルクT1が撃針19のボンベ貫通トルクT2よりも大きくなるように設定されている。撃針19のボンベ貫通は、シャーピン13の破断トルク後となる。
このようなトルク関係では、シャーピン13が設定トルクで適切に破断した後、撃針19がガス・ボンベ9の閉止端を容易に貫通する。このため、誤ってレバー11が手動操作されても、撃針19の尖端がガス・ボンベ9の閉止端に衝突すると、閉止端が容易に打ち抜かれて撃針19の針部71が閉止端を貫通する。
このため、ガス・ボンベ9から圧縮ガスが噴出して、ライフ・ジャケットが膨張し、誤作動を容易に認識し、ガス・ボンベ9の交換を促すことができる。
図18(A)のようなトルク関係は、針部71の工夫により容易に得ることができる。実施例の針部71は、図6、図7のように、凹状の湾曲部71a及びカット面71bにより尖端が鋭利に形成され、比較例の針部71は、かかる鋭利な針部とはなっていない。
[ボンベ取付等]
図19(A)は、空ボンベ取り付け時の説明図、(B)は、ボンベ取り付け時の説明図、(C)は、自動作動時の説明図である。
(空ボンベ取付時)
図19のように、膨張装置1には、容器取付口21にガス・ボンベ9を取り付けて使用される。
ガス・ボンベ9の取付は、端部の封止端を備えた口部を容器取付口21の雌ねじ23にねじ込むことで行われる。
このガス・ボンベ9の取り付けにおいて、使用済みの空ボンベを取り付けてしまうことがある。空ボンベは、封止端が撃針19で既に穴を開けられており、図19(A)のようにインジケーター軸79の先端は、ガス・ボンベ9側から当接力を受けないから、インジケーター・スプリング107の付勢力でインジケーター軸79の先端が容器取付口21内側へ突出したままの状態となる。
この状態では、表示窓105にインジケーター・キャップ89が位置し、赤色の表示態様となる。
したがって、ガス・ボンベ9の装着時に透明なアクチュエーター・ハウジング111越しに表示窓105の赤色の表示態様を視認することで、使用済みの空のガス・ボンベ9の装着を容易に知ることができる。
(ボンベ取付時)
図19(B)のように、新しいガス・ボンベ9を正規位置に取り付けると、封止端がインジケーター軸79に当接して押圧する。
この押圧力でインジケーター・スプリング107を撓めながらインジケーター軸79が軸方向移動し、インジケーター・リング87が表示窓105へ移動し、表示窓105が緑色の表示対様となる。
したがって、ガス・ボンベ9の装着時に透明なアクチュエーター・ハウジング111越しに表示窓105の緑色の表示態様を視認することで、新しい未使用のガス・ボンベ9の装着を容易に知ることができる。
このとき、ガス・ボンベ9の取り付けが甘いと表示が完全に切り替わらず、インジケーター・キャップ89及びインジケーター・リング87の境目が表示窓105に位置することになり、赤と緑の両方が表示される。
このため、ガス・ボンベ9の取り付けの甘さを、容易に確認することができる。
(自動作動時)
撃針19がアクチュエーター7により自動で作動すると、図19(C)のように、圧縮コイル・スプリング147の巻き線間の間隔が広がり、動作したアクチュエーター・シャフト123の作動表示部141がアクチュエーター・ソケット121外へ移動してその赤色が巻き線間に視認できる。
同時にインジケーター軸79の先端がインジケーター・スプリング107の付勢力でガス・ボンベ9の閉止端内へ移動し、図19(A)同様に表示窓105にインジケーター・キャップ89が位置し、赤色の表示態様となる。
なお、手動作動時は、アクチュエーター7のアクチュエーター・シャフト123の動作がないから、作動表示部141はアクチュエーター・ソケット121内の位置を維持し、赤色は視認できない。
[ボンベの交換]
ボンベの交換は、ガス・ボンベ9を軸周りに回転させて容器取付口21の雌ねじ23から離脱させ、同時に閉止端部に貫通している撃針19が抜かれる。
ガス・ボンベ9の軸周りの回転時に撃針19には軸回転周りの力が働く。
このとき、撃針19は撃針ホルダー53の断面円形の外周先端側部60及びガイド面65が、ケース17の断面円形の通路ガイド孔31及びガイド孔33に対して軸周りに回転し、ガス・ボンベ9と共回りする。
このため使用済みの、ガス・ボンベ9を取り外す時に撃針19に回転方向の無理な力が働かず、撃針19の破損を抑制することができる。
[アクチュエーターの交換]
図20(A)は、アクチュエーター組立単体の説明図、(B)は、自動作動後の説明図、(C)は、脱落防止の説明図である。
膨張装置1の自動作動後は、アクチュエーター7を交換し、撃針体部3を再利用する。
アクチュエーター7の取り外しは、アクチュエーター取付部41の雄ねじ43からアクチュエーター・ハウジング111の雌ねじ117をアクチュエーター7の撃針体部3に対する軸回りの回転で離脱させて行う。
アクチュエーター7が撃針体部3から離脱すると、図20(A)の単体となる。
自動作動後は、図20(B)のように、アクチュエーター7単体でも、圧縮コイル・スプリング147の巻き線間の間隔が広がっており、動作したアクチュエーター・シャフト123の作動表示部141がアクチュエーター・ソケット121外へ移動してその赤色が巻き線間に視認できる。
このため、アクチュエーター7単体で自動作動を容易に確認することができる。
撃針体部3に新ボンベを取り付けたまま、自動作動後のアクチュエーター7を誤って再度取り付けると、撃針19の撃針本体55が新ガス・ボンベ9の閉止端に穴を開けてしまうことがある。
このため、アクチュエーター7の自動作動を容易に確認することで、自動作動後のアクチュエーター7の誤組み付けを防止できる。
自動作動後のアクチュエーター7が単体で取り出されると、アクチュエーター・ソケット121から離脱しているアクチュエーター・シャフト123がインジケーター軸79の先端側へ移動可能となる。
アクチュエーター・シャフト123がインジケーター軸79の先端側へ移動したときは、インジケーター軸79のシール支持部83が第1シャフト連通口135から第2シャフト連通口137へ相対的に入り込むものの、インジケーター・オーリング85が第2シャフト連通口137の端部開口縁137aに係合するから、アクチュエーター・シャフト123の離脱を防止できる。
このため、自動作動後のアクチュエーター7単体の取り扱いを容易に行わせることができる。
[実施例の効果]
本発明実施例1は、シャーピン13で動作が規制されたレバー11を操作してシャーピン13を破断し、このレバー11の動作により撃針19を駆動し、この撃針19がガス・ボンベ9の封止端を貫通して圧縮ガスを噴出させ、この圧縮ガスによりライフ・ジャケット側を膨張させる膨緒装置1であって、図8(A)のように、シャーピン13が破断するときのレバー11の回転トルク(破断トルクT1)が、撃針19がガス・ボンベ9の封止端を貫通するときのレバー11の回転トルク(ボンベ貫通トルクT2)よりも大きくなるように設定した。
このようなトルク関係では、シャーピン13が設定トルクで適切に破断した後、撃針19がガス・ボンベ9の閉止端を容易に貫通する。このため、誤ってレバー11が手動操作されても、撃針19の尖端がガス・ボンベ9の閉止端に衝突すると、閉止端が容易に打ち抜かれて撃針19の針部71が閉止端を貫通する。
このため、ガス・ボンベ9から圧縮ガスが噴出して、ライフ・ジャケットが膨張し、誤作動を容易に認識し、ガス・ボンベ9の交換を促すことができる。
撃針19の尖端の針部71は、凹状の湾曲部71a及びカット面71bにより鋭利に形成されている。
このため、図8(A)のようなトルク関係を、針部71の工夫により容易に得ることができる。
1 膨張装置
3 撃針体部
9 ガス・ボンベ(圧縮ガスを内蔵した容器)
11 レバー
19 撃針
71 針部
71a 湾曲部
71b カット面

Claims (2)

  1. シャーピンで動作が規制されたレバーを操作してシャーピンを破断し、このレバーの動作により撃針を駆動し、この撃針が圧縮ガスを内蔵した容器の封止端を貫通して圧縮ガスを噴出させ、この圧縮ガスにより浮揚体側を膨張させる膨緒装置であって、
    前記シャーピンが破断するときの前記レバーの回転トルクが、前記撃針が容器を貫通するときの前記レバーの回転トルクよりも大きくなるように設定した、
    ことを特徴とする膨張装置。
  2. 請求項1記載の膨張装置であって、
    前記撃針の尖端の針部は、凹状の湾曲部及びカット面により鋭利に形成されている、
    ことを特徴とする膨張装置。
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