JP2013073854A - チタン酸リチウムとカーボンナノファイバーとの複合体、その製造方法、この複合体を用いた電極及び電気化学素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】旋回する反応容器内で、チタン酸リチウムを含むチタン酸源と、スクロースを含むリチウムを含むリチウム源と、カーボンナノファイバーとを含む溶液にずり応力と遠心力を加えて反応させてチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーとの複合体を生成する複合化処理を行う。この複合化処理を経た複合体を真空中において加熱する加熱処理を行う。この複合体のチタン酸リチウムの表面にスクロースからなる炭素皮膜が形成する。
【選択図】図4
Description
[式1]
Li4Ti5O12 + 3Li+ + 3e− → Li7Ti5O12 ・・・(1)
に属し、図22に示すような岩塩型の構造を有する。
(1)チタン酸リチウムのナノ粒子化
(2)チタン酸リチウムと導電補助剤との複合化
チタン酸リチウムの電気伝導度、Li+拡散係数が小さいのであれば、チタン酸リチウム中のLi+拡散距離、電子移動距離を短くすることでチタン酸リチウムの電気伝導度、Li+拡散係数を大きくすることができる。しかしながら、チタン酸リチウムの粒子がnmオーダーサイズになると、粒子全体に対する、表面原子の割合が高くなる。この粒子の表面は、粒子内部に比べて不規則な構造になっており不安定であり、nmオーダーサイズの粒子は不安定である。従って、nmオーダーサイズの粒子は安定になろうと、つまり表面積を減らそうとして凝集しようという傾向がある。従って、低いLi+拡散距離、電子移動距離を克服するためナノ粒子化するには限界がある。
Li4Ti5O12の電気伝導度は小さいので、電子がチタン酸リチウム以外を移動する時は電気伝導度の高い材料を電子移動パスとすれば良い。従って、チタン酸リチウムの周りを貴金属やカーボンといった電気伝導性の高い物質で覆うことにより、チタン酸リチウムの電気伝導度、Li+拡散係数を大きくすることができる。しかしながら、チタン酸リチウムの粒径が大きいと、チタン酸リチウムの内部は電気化学反応に関与しないことになるので、根本的な問題解決にはなっていない。
チタン源として、チタン(IV)テトラブトキシモノマー(Ti[O(CH2)3CH3]4、和光純薬工業株式会社製、一級)を用いることができる。チタン(IV)テトラブトキシモノマー以外のものとしては、イソプロピルアルコキシド、塩化チタンなどを利用することができる。Ti源の溶液は、キレート試薬として酢酸(CH3COOH、関東化学株式会社製、特級)、溶媒としてイソプロピルアルコール((CH3)2CHOH、和光純薬工業社製、有機合成用)を加えて調製する。
リチウム源として酢酸リチウム(CH3COOLi、和光純薬工業株式会社製、特級)を用いることができる。酢酸リチウム以外のリチウム源としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム等を利用することができる。Li源の溶液は、蒸留水、酢酸、イソプロピルアルコールの混合溶液に、酢酸リチウムを溶解させることにより調製した。
リチウム源に添加するスクロースはグルコースとフルクトースがグリコシド結合した二糖類である。スクロースは、化学式C12H22O11
で表すことができ、図1の構造を有している。スクロースの物性は、密度1.587gcm−3、融点186℃、水への溶解度211.5g(100ml,20℃)であり、広い意味ではポリアルコールに相当する。
また、添加するスクロースの割合が10−3wtよりも多いと、複合体全体への非晶質カーボンの形成によりLi+拡散が妨害されると共に、CNF上への厚い炭素皮膜が形成されることにより電気伝導度が失われる。これにより、チタン酸リチウムの利用率とレート特性が低下する。
反応過程で所定のCNFを加えることによって、チタン酸リチウムとCNFとの複合体を得ることができる。CNFは、数百nmの径のファイバーも含まれる多層カーボンナノチューブ(CNT)である。本実施例のCNFは、図2に示したTEM像のように、直径は15−30nmを使用した。このCNFは、電気伝導度は25Ω-1cm-1、比表面積は322m2g−1であり、一酸化炭素と原料とした触媒化学気相析出(CCVD ; catalytic chemical vapordeposition)法で作製した物である。
溶媒としては、アルコール類、水、これらの混合溶媒を用いることができる。例えば、酢酸と酢酸リチウムをイソプロパノールと水の混合物に溶解した混合溶媒を使用することができる。
本実施形態で用いるUC処理は、メカノケミカル反応を利用した処理である。このメカノケミカル反応は、化学反応の過程で、旋回する反応器内で反応物にずり応力と遠心力を加えて化学反応を促進させる。
本実施形態では、メカノケミカル反応によりチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーとの複合体を得た後、この複合体を真空中で乾燥及び焼成することにより、この複合体を使用した電極や電気化学素子の容量、出力特性を向上させる。
本実施形態により得られたチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーとの複合体は、バインダーと混錬、成型し、電気化学素子の電極、すなわち電気エネルギー貯蔵用電極とすることができ、その電極は高出力特性、高容量特性を示す。
この電極を用いることができる電気化学素子は、リチウムやマグネシウムなどの金属イオンを含有する電解液を用いる電気化学キャパシタや電池である。すなわち、本実施形態の電極は、金属イオンの吸蔵、脱着を行うことができ、負極や正極として作動する。したがって、金属イオンを含有する電解液を用い、対極として活性炭、金属イオンが吸蔵、脱着するチタン酸リチウムや金属酸化物等を用いることによって、電気化学キャパシタや電池を構成することができる。
本特性比較では、チタン酸リチウム及びカーボンナノファイバーの表面にスクロースによる炭素皮膜を形成する工程における特性比較である。図4は、本特性比較の工程を表す図であり、本図に従い実施例1,2及び比較例1〜3の複合体を合成した。
(1)実施例1:10−3wt%のスクロースを添加する時は、0.0178gのスクロースを100mLの蒸留水に溶かした水溶液を56.2μLだけチタン酸リチウム原料溶液に滴下した。
(2)実施例2:10−4wt%のスクロースを添加する時は、0.0025gのスクロースを25mLの蒸留水に溶かした水溶液を10.0μLだけチタン酸リチウム原料溶液に滴下した。
(3)比較例1:10−2wt%のスクロースを添加する時は、0.1978gのスクロースを20mLの蒸留水に溶かした水溶液を10.1μLだけチタン酸リチウム原料溶液に滴下した。
(4)比較例2:10−1wt%のスクロースを添加する時は、チタン酸リチウムに対して10−1wt%の割合のスクロースをUC反応原料溶液に加えた。
(5)比較例3:2wt%のスクロースを添加する時は、チタン酸リチウムに対して2wt%の割合のスクロースをUC反応原料溶液に加えた。
複合体中のLi4Ti5O12
とCNFの組成比を確かめるため、TG測定を行った。雰囲気は空気下(N2+O2)、測定温度は30−900℃とした。昇温速度は20℃
min−1、900℃において10分間温度を保持した。
測定の結果を表したグラフである。図からは、実施例1,2及び比較例1〜3の複合体の中で最もスクロース添加率が大きい2wt%の時でも、組成比が仕込み比のLi4Ti5O12/CNF=70:30とほぼ一致していた。この結果から、スクロースの添加量が比較例3より少ない実施例1,2及び比較例1,2の複合体においても組成制御は可能であることが判る。
結晶構造を同定するためXRD測定を行った。またXRD結果より、次に示すシェラーの式(2)から結晶子サイズd[nm]を求めた。
d=(Kλ)/(β cosθ)・・・・(2)
K は構造因子、λはX 線波長、βは半値幅
充放電試験は放電側(Li+がLi4Ti5O12に挿入する側)のレートを10Cに固定し、充電のレートを10、30、60、120、180、300Cと変えていき、各レートで3回ずつ測定を行った。測定電位は1−3Vvs.Li/Li+の範囲とした。
図10〜14は、実施例1及び比較例2,3の複合体の結晶構造を表した写真である。複合体の結晶構造は、HR−TEM(高分解能透過電子顕微鏡)を使用することにより観察した。
以上より、スクロースを添加することにより、Li4Ti5O12の表面に炭素皮膜が形成されLi4Ti5O12の結晶成長は抑制される。しかしながら、スクロース添加率が10−2wt%以上になると、CNF上の炭素皮膜はCNFが本来持つ電気伝導性を失わせるほど厚くなる。また、複合体全体に対して非晶質カーボンが形成され、Li+の拡散が妨害されるため、スクロースを添加していない複合体よりもLi4Ti5O12利用率が低下する。
本特性比較は、チタン酸リチウムの表面にスクロースによる炭素皮膜を形成する工程における特性比較である。図15は、本特性比較の工程を表す図であり、図15に従い実施例3,4の複合体を合成した。
(1)実施例3:10−3wt%のスクロースを添加する時は、0.0178gのスクロースを100mLの蒸留水に溶かした水溶液を56.2μLだけチタン酸リチウム原料溶液に滴下した。
(2)実施例4:10−4wt%のスクロースを添加する時は、0.0025gのスクロースを25mLの蒸留水に溶かした水溶液を10.0μLだけチタン酸リチウム原料溶液に滴下した。
複合体中のLi4Ti5O12
とCNFの組成比を確かめるため、TG測定を行った。雰囲気は空気下(N2+O2)、測定温度は30-900℃とした。昇温速度は20℃min−1、900℃において10分間温度を保持した。
図17は、実施例3,4の複合体に対して行ったXRD(X線粉末回折法)による結晶構造解析の結果を表した図である。この図によれば、実施例3,4において、25°付近にカーボン由来のピークがあり、アナターゼ型TiO2やルチル型TiO2などの不純物を含まないLi4Ti5O12が生成していることが判る。
第1の特性比較と同様に、充放電試験は放電側(Li+がLi4Ti5O12に挿入する側)のレートを10Cに固定し、充電のレートを10、30、60、120、180、300Cと変えていき、各レートで3回ずつ測定を行った。
これは、合成スキームを変更することにより、Li4Ti5O12に選択的に炭素皮膜が形成されるからである。
これは、CNF上に存在していた炭素皮膜も、全てLi4Ti5O12表面に担持したために、Li4Ti5O12表面の炭素皮膜が厚くなるからである。
以上より、CNFを先にTi源溶液に溶解させることで、CNF表面に優先的にTi源が担持させることにより、後から投入されるスクロースがCNF表面に担持しない。これにより、Li4Ti5O12表面に選択的に炭素皮膜が形成することができるので、CNFの表面に炭素皮膜を形成する場合に比べて少ないスクロースで、Li4Ti5O12の結晶成長は抑制され、Li4Ti5O12利用率が向上する。
1−2…せき板
1−3…内壁
2… 内筒
2−1…貫通孔
Claims (10)
- 前記チタン酸リチウムの表面にスクロースからなる炭素皮膜が形成されることを特徴とするチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーの複合体。
- 前記炭素皮膜の厚さは1〜2nmであることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーの複合体。
- 前記炭素皮膜は、チタン酸リチウムに対して10−4wt%〜10−3wt%の割合のスクロースを添加したものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーの複合体。
- チタン酸リチウムとカーボンナノファイバーの組成比が、80〜70:20〜30であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーの複合体。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーの複合体をバインダーを用いて成形することによって形成されたことを特徴とする電極。
- 請求項5に記載の電極を用いたことを特徴とする電気化学素子。
- 旋回する反応容器内で、チタン酸リチウムを含むチタン源と、スクロースを含有するリチウム源と、カーボンナノファイバーとを含む溶液にずり応力と遠心力を加えて反応させてチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーとの複合体を生成する複合化処理と、
この複合化処理を経た複合体を真空中において加熱する加熱処理と、
を有することを特徴とするチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーの複合体の製造方法。 - 前記スクロースの添加量は、チタン酸リチウムに対して10−4wt%〜10−3wt%であることを特徴とする請求項7に記載のチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーの複合体の製造方法。
- 前記複合化処理は、
チタン酸リチウムを含むチタン酸源にスクロースを含有するリチウム源を添加した後、カーボンナノファイバーを添加した溶液にずり応力と遠心力を加えて反応させる処理であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーの複合体の製造方法。 - 前記複合化処理は、
チタン酸リチウムを含むチタン酸源にカーボンナノファイバーを添加した後、スクロースを含むリチウムを含むリチウム源を添加した溶液にずり応力と遠心力を加えて反応させる処理である特徴とする請求項7または請求項8に記載のチタン酸リチウムとカーボンナノファイバーの複合体の製造方法。
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