JP2013071170A - スポット溶接装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ワークを撓ませることなく電極チップの加圧力を変化させる。
【解決手段】溶接ガン本体には、電極チップ14を備えるガンアーム15と、電極チップ16を備えるガンアーム17とが設けられる。ガンアーム15,17を駆動するボールネジ30,32は、フローティングクラッチ40を介して連結される。フローティングクラッチ40は、ボールネジ30,32の相対回転を禁止するロック状態と、ボールネジ30,32の相対回転を所定角度内で許容する解除状態に切り換えられる。また、溶接ガン本体には副加圧プレート18が固定される。スポット溶接時には、フローティングクラッチ40を解除状態にし、副加圧プレート18がワーク表面に押し付けられる。このとき、ボールネジ32のボールネジ30に対する相対回転が許容され(矢印B1)、電極チップ16は主加圧力を引き下げる方向に微小ストロークで上昇する(矢印B2)。
【選択図】図6

Description

本発明は、複数枚のパネルからなるワークを溶接するスポット溶接装置に関する。
自動車等の車体組立ラインにおいては、様々なパネルを組み合わせてスポット溶接を施すことにより、自動車車体が製造されている。溶接ロボットには一対のアーム部材を備えた溶接ガンが装着されており、溶接ガンから伸びるアーム部材の先端には電極チップが取り付けられている。そして、一対の電極チップによってパネルを加圧しながら短時間に大電流を流すことにより、抵抗発熱によってパネルを溶接することが可能となっている。
ところで、自動車車体等においては、板厚の異なる3枚以上のパネルが重ねられる構造も多く、このような構造のワークに対して溶接品質を確保しつつスポット溶接を施すことが困難であった。すなわち、薄板のパネルは厚板のパネルに比べて変形し易いことから、一対の電極チップによってワークを単に加圧した場合には、薄板と厚板との間(以下、薄板側という)の接触面積が厚板と厚板との間(以下、厚板側という)の接触面積に比べて増大することから、薄板側の抵抗が厚板側の抵抗に比べて低下する。この結果、薄板側の発熱量が厚板側の発熱量に比べて低下し、ナゲットが厚板側に偏って生成されることから、良好な溶接品質を得ることが困難となっていた。
そこで、一対の電極チップによってワークを加圧した後に、溶接ガンを薄板側に移動させるスポット溶接方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。溶接ガンを薄板側に移動させることにより、厚板側が凹むようにワークを撓ませることができ、薄板側の加圧力を厚板側の加圧力よりも撓み反力分だけ小さくすることが可能となる。このように、薄板側の加圧力を低下させることにより、薄板側の接触面積を減少させて抵抗を増大させることができ、薄板側の発熱量を増大させることが可能となる。
特開2003−251469号公報
しかしながら、特許文献1のスポット溶接方法は、溶接ガンを移動させてワークを撓ませることにより、薄板側の加圧力を撓み反力分だけ小さくする方法である。すなわち、パネルを変形させて撓み反力を発生させる必要があるため、高剛性のパネル(例えば、高張力鋼鈑)を前提とした溶接方法であり、十分な撓み反力が得られない低剛性のパネルに適用することは困難であった。さらに、ワークを撓ませて加圧力を調整することから、ワーク表面に対して電極チップを垂直に突き当てることが不可能であり、スパッタや圧痕不良を発生させてしまうおそれがある。
本発明の目的は、ワークを撓ませることなく電極チップの加圧力を変化させて溶接品質を向上させることにある。
本発明のスポット溶接装置は、複数枚のパネルからなるワークを溶接するスポット溶接装置であって、先端に第1電極チップを備え、前記ワークの一方面に前記第1電極チップを接触させる溶接位置と前記一方面から前記第1電極チップを退避させる退避位置とに作動する第1アーム部材と、先端に第2電極チップを備え、前記ワークの他方面に前記第2電極チップを接触させる溶接位置と前記他方面から前記第2電極チップを退避させる退避位置とに作動する第2アーム部材と、前記第1アーム部材にネジ結合されるとともにアクチュエータに回転駆動され、前記第1アーム部材を溶接位置と退避位置とに作動させる第1ネジ軸と、前記第2アーム部材にネジ結合されるとともに、同軸上の前記第1ネジ軸に対して所定角度内で相対回転自在に連結され、前記第2アーム部材を溶接位置と退避位置とに作動させる第2ネジ軸と、前記ワークの他方面に押し付けられる加圧部材とを有し、前記加圧部材を前記ワークの他方面に押し付け、前記第1ネジ軸に対して前記第2ネジ軸を相対回転させることにより、前記第1電極チップの加圧力よりも前記第2電極チップの加圧力を低下させることを特徴とする。
本発明のスポット溶接装置は、前記第1ネジ軸を一方向に回転駆動することにより、前記第1および第2アーム部材は溶接位置に向けて互いに近づく一方、前記第1ネジ軸を他方向に回転駆動することにより、前記第1および第2アーム部材は退避位置に向けて互いに離れることを特徴とする。
本発明のスポット溶接装置は、前記第1ネジ軸と前記第2ネジ軸との間に設けられ、前記第1ネジ軸と前記第2ネジ軸との相対回転を禁止するロック状態と、前記第1ネジ軸と前記第2ネジ軸との相対回転を許容する解除状態とに作動する連結機構を有することを特徴とする。
本発明のスポット溶接装置は、前記加圧部材は、前記第1および第2アーム部材が設けられる溶接ガン本体に固定され、前記溶接ガン本体を移動させて前記ワークの他方面に押し付けられることを特徴とする。
本発明によれば、加圧部材をワークの他方面に押し付けるようにしたので、ワークの一方面に付与される第1電極チップの加圧力よりも、ワークの他方面に付与される第2電極チップの加圧力を低下させることが可能となる。これにより、溶接品質を向上させることが可能となる。しかも、第1ネジ軸に対して第2ネジ軸を相対回転させるようにしたので、ワークを撓ませることなく第2電極チップの加圧力を低下させることが可能となる。
本発明の一実施の形態であるスポット溶接装置としてのスポット溶接ガンを示す概略図である。 スポット溶接ガンの使用状態を示す説明図である。 (a)および(b)はフローティングクラッチの内部構造および作動状態を示す説明図である。 (a)〜(c)はスポット溶接の手順を示す説明図である。 電極チップおよび副加圧プレートによるワークの加圧状態を示す説明図である。 (a)および(b)は副加圧プレートの加圧作動時におけるフローティングクラッチの作動状態を示す説明図である。 (a)〜(c)はスポット溶接の手順を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態であるスポット溶接装置としてのスポット溶接ガン10を示す概略図である。また、図2はスポット溶接ガン10の使用状態を示す説明図である。図1および図2に示すように、スポット溶接ガン10は、溶接ロボット11のロボットアーム12に固定される溶接ガン本体13を備えている。この溶接ガン本体13には、先端に第1電極チップ14を備えるガンアーム(第1アーム部材)15と、先端に第2電極チップ16を備えるガンアーム(第2アーム部材)17とが移動自在に設けられている。ガンアーム15,17の電極チップ14,16は、互いに対向するように同軸上に配置されている。また、溶接ガン本体13には副加圧プレート(加圧部材)18が固定されている。なお、副加圧プレート18を上方から示した図1の部分平面図に示すように、副加圧プレート18の先端には電極チップ16との干渉を避ける切り欠き18aが形成されている。さらに、溶接ガン本体13には、ガンアーム15,17を駆動するサーボモータ(アクチュエータ)19が設けられている。さらに、溶接ガン本体13には、スポット溶接時の高圧電流を生成する図示しないトランスが設けられている。なお、図示するスポット溶接ガン10は、ガンアーム15,17を平行移動させるようにした直動Xガンである。
図2に示すように、溶接ロボット11の近傍には、コンピュータ等が組み込まれた溶接制御盤20が設置されている。溶接ロボット11には、予め教示された打点位置情報がケーブル21を介して送信されており、溶接ロボット11は、スポット溶接ガン10を所定の打点位置に向けて移動させる。また、スポット溶接ガン10には、打点毎に設定された溶接条件情報(加圧時間、通電時間、保持時間、通電電流等)がケーブル22を介して送信されており、スポット溶接ガン10は、溶接条件に沿ってスポット溶接を実行する。後述するように、スポット溶接時には、電極チップ14,16間にワークWが挟まれて加圧されるとともに、副加圧プレート18によってワーク表面が加圧される。なお、スポット溶接の手順については、スポット溶接ガン10の内部構造を説明した後に改めて説明する。
図1に示すように、溶接ガン本体13にはボールネジ(第1ネジ軸)30が設けられており、ボールネジ30にはガンアーム15のボールナット31がネジ結合されている。また、溶接ガン本体13にはボールネジ(第2ネジ軸)32が設けられており、ボールネジ32にはガンアーム17のボールナット33がネジ結合されている。なお、ネジ結合とは、ボールネジ30,32とボールナット31,33とが回転自在に噛み合う状態を意味している。また、ガンアーム15,17の基端部にはスライダ34,35が設けられており、スライダ34,35は直線状に伸びるガイドレール36に摺動自在に装着されている。さらに、ボールネジ30とボールネジ32とは同軸上に配置されており、ボールネジ30とボールネジ32との間にはフローティングクラッチ(連結機構)40が設けられている。すなわち、対向するボールネジ30とボールネジ32とは、フローティングクラッチ40を介して連結されている。
ここで、図3(a)および(b)はフローティングクラッチ40の内部構造および作動状態を示す説明図である。なお、図3(a)および(b)には、フローティングクラッチ40の部分断面図と、ボールネジ30側からの底面図とが示されている。図3(a)に示すように、フローティングクラッチ40は、ボールネジ30に固定される駆動ドラム41と、ボールネジ32に固定される従動ハブ42とを備えている。駆動ドラム41には複数枚の駆動ディスク43aが取り付けられており、従動ハブ42には複数枚の従動ディスク43bが取り付けられている。駆動ディスク43aおよび従動ディスク43bは、交互に重なってディスク群43を構成している。ディスク群43の一端側には磁力を発生させる電磁石44が配置され、ディスク群43の他端側には磁力で吸引されるプレッシャプレート45が配置されている。すなわち、フローティングクラッチ40は、電磁摩擦クラッチとして機能している。図3(a)に示すように、電磁石44に対する通電遮断によってフローティングクラッチ40を解放することが可能となり、図3(b)に示すように、電磁石44に対する通電によってフローティングクラッチ40を締結することが可能となる。
また、図3(a)に示すように、駆動ドラム41の円板部46には、周方向に所定間隔を空けて配置される複数の係合長孔47が形成されている。従動ハブ42の円板部48には、駆動ドラム41に向けて伸びる複数の係合爪49が形成されている。また、係合長孔47には係合爪49の先端部が収容されており、係合爪49の先端部は一対のバネ部材50の間に保持されている。このように、駆動ドラム41と従動ハブ42とは機械的に連結されており、フローティングクラッチ40を解放した場合であっても、駆動ドラム41と従動ハブ42との相対回転は所定角度内に制限されている。すなわち、図3(a)に示すように、係合長孔47の長手寸法に応じて規定される角度X内に、駆動ドラム41と従動ハブ42との相対回転は制限されることになる。これにより、電磁石44に対する通電遮断によってディスク群43の係合を解くことにより、フローティングクラッチ40は、ボールネジ30とボールネジ32との相対回転を所定角度内で許容する解除状態に切り換えられる。また、電磁石44に対する通電によってディスク群43を係合させることにより、フローティングクラッチ40は、ボールネジ30とボールネジ32との相対回転を禁止するロック状態に切り換えられる。
また、図1に示すように、フローティングクラッチ40の駆動ドラム41の外周面には、サーボモータ19の駆動ギヤ51に噛み合う従動ギヤ52が形成されている。これにより、サーボモータ19からボールネジ30に対し、駆動ドラム41から直に駆動力が伝達される一方、サーボモータ19からボールネジ32に対し、フローティングクラッチ40を介して駆動力が伝達されることになる。サーボモータ19を駆動してボールネジ30,32を矢印A1方向に回転させると、ガンアーム15,17はガイドレール36に沿いながら溶接位置に向けて矢印A1方向に移動する。一方、サーボモータ19を駆動してボールネジ30,32を矢印A2方向に回転させると、ガンアーム15,17はガイドレール36に沿いながら退避位置に向けて矢印A2方向に移動する。なお、ボールネジ30とボールネジ32とのネジ溝は、互いに逆向きとなるように形成されている。また、副加圧プレート18は、溶接ガン本体13に固定されることから、ロボットアーム12に連動して溶接ガン本体13と共に移動することになる。
続いて、スポット溶接の手順について説明する。図4(a)〜(c)はスポット溶接の手順を示す説明図である。図4(a)に示すように、溶接対象であるワークWは、3枚のパネルP1〜P3によって構成されている。上方に配置されるパネルP3は、下方に配置されるパネルP1や中央に配置されるパネルP2よりも板厚が薄く形成されている。また、薄板となるパネルP3は、厚板となるパネルP1,P2よりも剛性が低くなっている。以下の説明においては、発明の理解を容易にするため、パネルP1を厚板P1、パネルP2を厚板P2、パネルP3を薄板P3と記載する。なお、厚板P1,P2は、同じ寸法の板厚であっても良く、異なる寸法の板厚であっても良い。
また、ワークWは図示しないクランプ装置によって治具上に固定されている。このワークWに対してスポット溶接を施すため、図4(a)に示すように、ガンアーム15,17が互いに離れる方向に移動し、電極チップ14,16間に所定の隙間が設けられる。すなわち、ガンアーム15,17は、電極チップ14,16がワーク表面から離れる退避位置に動作している。そして、電極チップ14,16間にワークWを挟み込むように、ロボットアーム12はスポット溶接ガン10を移動させる。このとき、溶接ガン本体13は、副加圧プレート18が薄板P3の表面に軽く接触する位置に移動している。
続いて、フローティングクラッチ40をロック状態に保持してサーボモータ19を駆動することにより、図4(b)に示すように、ガンアーム15,17は互いに近づけられる。すなわち、ガンアーム15は、電極チップ14が厚板P1の表面(ワークWの一方面)に接触する溶接位置まで移動する。同様に、ガンアーム17は、電極チップ16が薄板P3の表面(ワークWの他方面)に接触する溶接位置まで移動する。これにより、ワークWの打点位置には、電極チップ14から主加圧力(加圧力)FLが加えられた状態となり、電極チップ16から主加圧力(加圧力)FUが加えられた状態となる。このとき、フローティングクラッチ40はロック状態であるため、電極チップ14,16は同じ推力でワークWに突き当てられている。次いで、フローティングクラッチ40が解除状態に切り換えられ、ロボットアーム12から溶接ガン本体13に対して下方に推力が加えられる。すなわち、図4(c)に示すように、溶接ガン本体13に固定される副加圧プレート18が、薄板P3の表面(ワークWの他方面)に押し付けられる。これにより、ワークWの打点位置の周囲には、副加圧プレート18から副加圧力Fαが加えられた状態となる。
このように、電極チップ14,16によってワークWの打点位置が主加圧力FU,FLで加圧されるとともに、副加圧プレート18によってワークWの打点位置の周囲が副加圧力Fαで加圧された状態となる。そして、この加圧状態のもとで、電極チップ14,16間には短時間に大電流が流され、パネルP1〜P3を接合するナゲットが形成される。このようなスポット溶接が完了すると、図4(a)に示すように、再びガンアーム15,17は退避位置に移動し、続く打点位置に向けてロボットアーム12はスポット溶接ガン10を移動させる。なお、副加圧プレート18は、先端の加圧ピース18bとこれを支持するプレート本体18cとによって構成されており、加圧ピース18bとプレート本体18cとの間は絶縁された状態となっている。
ここで、図5は電極チップ14,16および副加圧プレート18によるワークWの加圧状態を示す説明図である。図5に示すように、電極チップ14から厚板P1の打点位置には主加圧力FLが付与され、電極チップ16から薄板P3の打点位置には主加圧力FUが付与される。さらに、副加圧プレート18から薄板P3の打点位置の周囲には副加圧力Fαが付与される。このとき、電極チップ14から厚板P1に付与される主加圧力FLは、薄板P3に対して電極チップ16から付与される主加圧力FUと副加圧プレート18から付与される副加圧力Fαとの総和となる(FL=FU+Fα)。すなわち、薄板P3に対して電極チップ16から付与される主加圧力FUは、厚板P1に対して電極チップ14から付与される主加圧力FLに比べて小さくなる。
前述したように、電極チップ14,16によってワークWを挟む際には、電極チップ14,16は同じ推力でワークWに突き当てられる。すなわち、電極チップ14,16によってワークWを挟む際には、主加圧力FUと主加圧力FLとが一致した状態となっている。この状態から、ワークWを撓ませることなく主加圧力FUを引き下げるためには、ワーク表面から電極チップ16を微小なストロークで上方に逃がす必要がある。ここで、図6(a)および(b)は副加圧プレート18の加圧作動時におけるフローティングクラッチ40の作動状態を示す説明図である。なお、図6(b)にはボールネジ30側からのフローティングクラッチ40が示されている。図6(a)に示すように、フローティングクラッチ40が解除状態であることから、ボールネジ30に対してボールネジ32は相対回転が可能な状態となっている。ここで、図6(a)および(b)に示すように、ワークWに副加圧力Fαが付与され、主加圧力FUと副加圧力Fαとの総和が主加圧力FLと釣り合うように主加圧力FUが減少しようとすると、この主加圧力FUの減少を許容するように、ボールネジ32がボールネジ30に対して矢印B1方向に回転する。すなわち、従動ハブ42は、一方のバネ部材50を縮めながら、駆動ドラム41に対して矢印B1方向に角度X1で回転する。これにより、ガンアーム17および電極チップ16が、矢印B2方向に微小なストロークで上昇し、その結果、主加圧力FUが引き下げられることになる。なお、駆動ドラム41に対する従動ハブ42の回転により、電極チップ16が矢印B2方向に上昇する際のストロークは、電極チップ16がワーク表面から離れることのない微小なストロークとなっている。
ところで、スポット溶接を実施する際に、主加圧力FUと主加圧力FLとが同じ大きさであったとすると、薄板P3は厚板P1,P2に比べて変形し易いことから、薄板P3と厚板P2との接合部αにおける接触面積が、厚板P1と厚板P2との接合部βにおける接触面積に比べて増大することになる。すなわち、薄板P3側の接合部αの抵抗が厚板P1側の接合部βの抵抗に比べて低下することから、接合部αの発熱量が接合部βの発熱量に比べて低下し、ナゲットが厚板P1側に偏ることから良好な溶接品質を得ることが困難であった。これに対し、本発明のスポット溶接ガン10を用いた場合には、主加圧力FUを主加圧力FLよりも引き下げることができるため、薄板P3側の接合部αの接触面積を減少させることが可能となる。これにより、薄板P3側の接合部αの抵抗を増加させるとともに、接合部αの発熱量を増加させることができるため、ナゲットが厚板P1側に偏ることがなく良好な溶接品質を得ることが可能となる。
しかも、副加圧プレート18によってワーク表面を加圧する際に、電極チップ16からの推力を引き下げる方向の移動を許容したので、電極チップ14,16によるワークWの撓みを防止することが可能となる。これにより、ワーク表面に対して電極チップ14,16を垂直に押し当てることができ、スパッタや圧痕不良の発生を抑制することが可能となる。また、副加圧プレート18の副加圧力Fαを調整することで、主加圧力FU,FLの加圧力差を調整することができるため、高精度に主加圧力FU,FLを制御することが可能となる。さらに、ワークWの撓み反力を用いて主加圧力FU,FLを調整する構成では無いため、パネルP1〜P2の剛性によって影響されることなく、主加圧力FU,FLを調整することが可能となっている。また、副加圧プレート18によって薄板P3が押さえられることから、薄板P3の湾曲変形を抑制することができ、この点からも、良好な溶接品質を得ることが可能となる。
前述の説明では、上方つまり電極チップ16側に薄板P3が配置されているが、下方つまり電極チップ14側に薄板P3が配置されていても良い。図7(a)〜(c)はスポット溶接の手順を示す説明図である。図7(a)に示すように、溶接対象であるワークWは、前述したワークWの上下を反転させたものである。このように、ワークWの下側に薄板P3が配置される場合には、ロボットアーム12を回転させてスポット溶接ガン10の上下が入れ替えられる。
図7(a)に示すように、電極チップ14,16間にワークWを挟み込むように、ロボットアーム12はスポット溶接ガン10を移動させる。このとき、溶接ガン本体13は、副加圧プレート18が薄板P3の表面に軽く接触する位置に移動している。続いて、フローティングクラッチ40をロック状態に保持してサーボモータ19を駆動することにより、図7(b)に示すように、ガンアーム15,17によって電極チップ14,16がワーク表面に突き当てられる。これにより、ワークWの打点位置には、電極チップ14から主加圧力FUが加えられた状態となり、電極チップ16から主加圧力FLが加えられた状態となる。このとき、フローティングクラッチ40はロック状態であるため、電極チップ14,16は同じ推力でワークWに突き当てられる。次いで、フローティングクラッチ40が解除状態に切り換えられ、ロボットアーム12から溶接ガン本体13に対して上方に推力が加えられる。これにより、ワークWの打点位置の周囲には副加圧プレート18から副加圧力Fαが加えられた状態となる。この副加圧力Fαの付与に伴って主加圧力FLが減少しようとすると、この主加圧力FLの減少を許容するように、電極チップ16がワーク表面から離れることのない微小なストロークで下降し、その結果、主加圧力FLが引き下げられる。このように、ワークWの下側に薄板P3が配置される場合には、主加圧力FLが主加圧力FUよりも引き下げられる。これにより、ナゲットを厚板P1側に偏らせることなく、良好な溶接品質を得ることが可能となる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、アクチュエータとして、電動のサーボモータ19を用いているが、これに限られることはなく、油圧や空気圧で駆動されるアクチュエータを用いても良い。また、前述の説明では、電極チップ14,16によってワークWを挟んだ後に、副加圧プレート18をワーク表面に押し付けているが、これに限られることはなく、副加圧プレート18をワーク表面に押し付けた後に、電極チップ14,16によってワークWを挟んでも良い。また、同じタイミングで、電極チップ14,16によってワークWを挟むとともに、副加圧プレート18をワーク表面に押し付けても良い。
また、前述の説明では、溶接ガン本体13に対して副加圧プレート18を固定しているが、これに限られることはなく、様々なワークWの厚みに対応させるため溶接ガン本体13と副加圧プレート18との間に位置調整機構を設けても良い。さらに、溶接ガン本体13を移動させることなく、アクチュエータを用いて副加圧プレート18をワーク表面に押し付けるようにしても良い。
また、前述の説明では、フローティングクラッチ40の係合長孔47にバネ部材50を組み付けているが、係合長孔47からバネ部材50を取り外すようにしても良い。この場合には、スポット溶接時にフローティングクラッチ40を解除状態に切り換えると、係合長孔47の端部に係合爪49が突き当たるまで回転することになる。このため、フローティングクラッチ40を解除状態に切り換えても、電極チップ16がワーク表面から離れないように、係合長孔47の長手寸法が設定されることになる。さらに、ボールネジ30,32間にフローティングクラッチ40を設けているが、ボールネジ30とボールネジ32とは所定角度内で相対回転自在に連結されていれば良く、図示するフローティングクラッチ40の構成に限られないことはいうまでもない。
また、前述の説明では、3枚のパネルP1〜P3からなるワークWを溶接対象としているが、これに限られることはなく、4枚以上のパネルからなるワークWを溶接対象としても良い。さらに、前述の説明では、板厚の異なるパネルP1〜P3からなるワークWを溶接対象としているが、これに限られることはなく、同じ板厚のパネルからなるワークWを溶接対象としても良い。すなわち、同じ板厚であっても物性値としての電気抵抗が異なるパネルを組み合わせた場合には、発熱量が相違することから溶接品質を確保することが困難となるが、副加圧プレート18を用いて主加圧力FU,FLを相違させることにより、適切な溶接品質を得ることが可能となる。
10 スポット溶接ガン(スポット溶接装置)
13 溶接ガン本体
14 電極チップ(第1電極チップ)
15 ガンアーム(第1アーム部材)
16 電極チップ(第2電極チップ)
17 ガンアーム(第2アーム部材)
18 副加圧プレート(加圧部材)
19 サーボモータ(アクチュエータ)
30 ボールネジ(第1ネジ軸)
32 ボールネジ(第2ネジ軸)
40 フローティングクラッチ(連結機構)
FU 主加圧力(加圧力)
FL 主加圧力(加圧力)

Claims (4)

  1. 複数枚のパネルからなるワークを溶接するスポット溶接装置であって、
    先端に第1電極チップを備え、前記ワークの一方面に前記第1電極チップを接触させる溶接位置と前記一方面から前記第1電極チップを退避させる退避位置とに作動する第1アーム部材と、
    先端に第2電極チップを備え、前記ワークの他方面に前記第2電極チップを接触させる溶接位置と前記他方面から前記第2電極チップを退避させる退避位置とに作動する第2アーム部材と、
    前記第1アーム部材にネジ結合されるとともにアクチュエータに回転駆動され、前記第1アーム部材を溶接位置と退避位置とに作動させる第1ネジ軸と、
    前記第2アーム部材にネジ結合されるとともに、同軸上の前記第1ネジ軸に対して所定角度内で相対回転自在に連結され、前記第2アーム部材を溶接位置と退避位置とに作動させる第2ネジ軸と、
    前記ワークの他方面に押し付けられる加圧部材とを有し、
    前記加圧部材を前記ワークの他方面に押し付け、前記第1ネジ軸に対して前記第2ネジ軸を相対回転させることにより、前記第1電極チップの加圧力よりも前記第2電極チップの加圧力を低下させることを特徴とするスポット溶接装置。
  2. 請求項1記載のスポット溶接装置において、
    前記第1ネジ軸を一方向に回転駆動することにより、前記第1および第2アーム部材は溶接位置に向けて互いに近づく一方、前記第1ネジ軸を他方向に回転駆動することにより、前記第1および第2アーム部材は退避位置に向けて互いに離れることを特徴とするスポット溶接装置。
  3. 請求項1または2記載のスポット溶接装置において、
    前記第1ネジ軸と前記第2ネジ軸との間に設けられ、前記第1ネジ軸と前記第2ネジ軸との相対回転を禁止するロック状態と、前記第1ネジ軸と前記第2ネジ軸との相対回転を許容する解除状態とに作動する連結機構を有することを特徴とするスポット溶接装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のスポット溶接装置において、
    前記加圧部材は、前記第1および第2アーム部材が設けられる溶接ガン本体に固定され、前記溶接ガン本体を移動させて前記ワークの他方面に押し付けられることを特徴とするスポット溶接装置。
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