JP2013066920A - アルミニウム合金鋳造素材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】不可避的に含有されている鉄系晶出物による二次的不具合を解消したアルミニウム合金鋳造素材の製造方法を提供する。
【解決手段】AC4C材のアルミニウム合金の溶湯Mを容器1に注湯して半溶融鋳造法のための素材(ビレット)を製造する方法である。容器1への溶湯Mの注湯後に、超音波振動付加装置4A〜4Dにて複数の方向から超音波振動を付加する。超音波振動付加装置4Aの振動子7のみを溶湯Mに浸漬させる。溶湯Mの中心部の鉄系晶出物粗大化領域Qに向けて複数方向から指向性をもって、且つ溶湯Mの液相線温度から固相線温度までの温度域にて超音波振動を付加するものとする。
【選択図】図1
【解決手段】AC4C材のアルミニウム合金の溶湯Mを容器1に注湯して半溶融鋳造法のための素材(ビレット)を製造する方法である。容器1への溶湯Mの注湯後に、超音波振動付加装置4A〜4Dにて複数の方向から超音波振動を付加する。超音波振動付加装置4Aの振動子7のみを溶湯Mに浸漬させる。溶湯Mの中心部の鉄系晶出物粗大化領域Qに向けて複数方向から指向性をもって、且つ溶湯Mの液相線温度から固相線温度までの温度域にて超音波振動を付加するものとする。
【選択図】図1
Description
本発明は、アルミニウム合金の溶湯をステンレス製その他の所定の容器に注湯して、半溶融鋳造法(チクソ鋳造法またはチクソキャスティング法とも称される。)のためのいわゆるビレットと称されるアルミニウム合金鋳造素材を製造する方法に関する。
半溶融鋳造法に適したいわゆるビレットと称されるアルミニウム合金鋳造素材を製造する技術として、例えば特許文献1および特許文献2に記載されているように、温度管理された所定サイズの円筒状のステンレス容器にアルミニウム合金の溶湯を注湯するようにしたものが知られている。なお、半溶融鋳造法は、上記のようにして製造されたビレットを固相と液相とが共存する半溶融状態まで温めた上で所定の金型に充填して製品とするもので、一般的な溶湯鋳造法と比べて、冷却速度を速め、製品の機械的性質の向上に寄与できるとされている。
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された技術では、製造されるビレットの大きさ、ひいては使用するステンレス容器の大きさに自ずと制約があり、生産性の向上および製造しようとする製品の大型化を図るべく大容量のビレットを製造しようとすると、内部に鉄(Fe)系晶出物の粗大化組織が生成されてしまう傾向がある。この傾向は例えばAC4CH材よりもAC4C材に顕著で、鉄分(Fe)の増加により破壊モードが変化し、最終製品の機械的性質である伸びが低下してしまうこととなって好ましくない。
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、不可避的に含有されている鉄系晶出物による二次的不具合を解消したいわゆるビレットであるところのアルミニウム合金鋳造素材の製造方法を提供するものである。
本発明は、アルミニウム合金の溶湯を所定の容器に注湯して半溶融鋳造法のための素材(ビレット)を製造するにあたって、容器に注湯した溶湯に対して複数の方向から超音波振動を付加するようにしたものである。
本発明によれば、複数の方向から超音波振動を付加することによって、溶湯に含まれる鉄系晶出物が短時間で粒状化されるとともに微細化されることになるので、ビレットたるアルミニウム合金鋳造素材を大容量化しても、組織全体が均質のものを容易に得ることができる。
図1は本発明に係るアルミニウム合金鋳造素材の製造方法を実施するためのより具体的な第1の形態を示す図である。
同図に示すように、耐熱性に優れた耐火煉瓦を底板2としてその上にステンレス製の円筒状のケーシング3を載置するとともに、底板2との継ぎ目に所定のシール性を確保して、耐火煉瓦製の底板2を含むケーシング3を注湯のための容器1とする。この容器1は製造しようとするビレット、すなわち半溶融鋳造のためのアルミニウム合金鋳造素材のサイズに対応しているものであり、後述するように図示外の溶解炉等で溶解されたアルミニウム合金の溶湯Mが容器1に注湯されることになる。
また、容器1とは別に複数(図1の例では4組)の超音波振動付加装置4A〜4Dを用意する。これらの複数の超音波振動付加装置4A〜4Dはいずれも同じ構造のもので、超音波振動付加装置4A〜4Dは、超音波発振器5と冷却装置6および例えばチタン製の振動子(ホーン)7とからなり、各超音波振動付加装置4A〜4Dごとに独立した操作盤8での条件設定および操作により所定周波数の超音波振動が振動子7から発せられる。なお、図1では一つの超音波振動付加装置4Aの操作盤8のみを図示し、それ以外の超音波振動付加装置4B〜4Dの操作盤8は図示省略してある。また、各超音波振動付加装置4A〜4Dごとに独立して条件設定および操作が可能であれば、操作盤8が単一のものとして集約化されていても良い。
そして、溶湯Mが注湯された容器1の軸心上において上側の超音波振動付加装置4Aの振動子7と下側の超音波振動付加装置4Cの振動子7とが正対するようにそれぞれの超音波振動付加装置4A,4Cを配置するとともに、溶湯Mが注湯された容器1の高さ方向中央部の直径方向において左右の超音波振動付加装置4B,4Dの振動子7同士が正対するようにそれぞれの超音波振動付加装置4B,4Dを配置してある。
さらに複数の超音波振動付加装置4A〜4Dのうち上側の超音波振動付加装置4Aの振動子7については溶湯Mに直接浸漬させるようになっているものの、それ以外の超音波振動付加装置4B〜4Cの振動子7については底板2またはケーシング3の穴に挿入するだけで、容器1内の溶湯Mには直接接触しないようにしてある。これよって、容器1に注湯された溶湯Mに対して複数の方向、すなわち容器1の軸心方向で正対する2方向と容器1の直径方向で正対する2方向の合計4方向からそれぞれに超音波振動を付加することができるようになっている。
ここでは、図示外の溶解炉で溶解されたAC4C相当のアルミニウム合金の溶湯Mをラドル等を用いて所定量だけ容器1に注湯したならば、所定のタイミングで容器1内の溶湯Mに対して各超音波振動付加装置4A〜4Dから所定周波数の超音波振動を直接的に付加するものとする。なお、この場合において、上側の超音波振動付加装置4Aの振動子7のみを溶湯M中に浸漬させ、それ以外の各超音波振動付加装置4B〜4Dの振動子7については溶湯Mに直接接触していないことは先に述べたとおりである。
さらに、複数の方向から付加された超音波振動が重畳したり干渉したりして互いに逆位相の関係になると、それぞれの超音波振動が互いに打ち消し合って、特定の目的をもって付加した超音波振動が減衰してしまう可能性がある。そこで、このような超音波振動の減衰が発生しないように、言い換えるならばそれぞれの超音波振動付加装置4A〜4Dから発せられる超音波振動の周波数が互いに異なるように、制御盤8の操作にてそれぞれの超音波振動付加装置4A〜4Dからの発振周波数を予め個別に調整または制御するものとする。
ここで、容器1の大型化によって、製造するビレットの大容量化を図ろうとすると、相対的に凝固が遅れ気味となる溶湯Mの中心部で鉄(Fe)系晶出物の粗大化組織(領域)Qが生成される傾向にあることは先に述べた。このため、そのまま凝固が進行すると偏析により鉄系晶出物の組織が不均一になり、ビレットの組織としても均質のものが得られないことになる。
そこで、複数の超音波振動付加装置4A〜4Dの振動子7から溶湯Mの中心部の鉄系晶出物の粗大化組織Qに向けて、複数の方向から指向性をもって超音波振動を直接的に付加するものとする。この場合、超音波同士の干渉によって超音波振動の減衰が発生しないように、各超音波振動の周波数が予め調整または制御さていることは先に述べたとおりである。超音波振動を溶湯Mに直接的に付加するのは、粗大化しようとする鉄系晶出物の組織Qを破壊して当該組織の粒状化および微細化を図り、もって製造されるビレットの組織を均一または均質なものとするためである。また、複数の方向から超音波振動を付加することで溶湯Mの振動を増幅させ、広範囲にわたって且つ短時間のうちに鉄系晶出物の粒状化および微細化を図ることができる。特に図1に示すように各振動子7の先端を半球状のものとしてあると、振動付加範囲を広域化する上で有利となる。
図2は溶湯Mの温度変化を、図3はAC4C相当のアルミニウム合金の溶湯Mの温度と各晶出物の生成・晶出のタイミングとの関係をそれぞれ示している。同図から明らかなように、液相線温度よりもわずかに高い温度域で鉄系晶出物のうちでもα鉄の晶出が見られるようになり、同様に固相線温度よりもわずかに高い温度域で鉄系晶出物のうちでもβ鉄の晶出が見られるようになるので、超音波振動を付加する温度域としては、図3に示すように、共に鉄系晶出物の晶出タイミングに近い液相線温度、またはその近傍から固相線温度もしくはその近傍までの温度域とする。
また、鉄系晶出物のうちでもβ鉄の晶出物のみに着目した場合には、図3から明らかなように、β鉄の晶出物の晶出タイミングは固相線温度よりもわずかに高温側の温度域であることから、固相線温度の近傍の温度域、より望ましくは固相線温度近傍であって且つ固相線温度よりもわずかに高温側から固相線温度までの温度域で超音波振動を付加するものとする。
この固相線温度の近傍の温度域にて超音波振動を付加する場合には、その名のとおり溶湯Mの表層部では凝固が進行しているので、超音波振動付加装置4Aの振動子7を溶湯Mに浸漬することなく、溶湯Mの上面の固相化層または凝固層に振動子7を当接させた状態で超音波振動を付加するものとする。こうすることにより振動子7の摩耗も抑制することができる。
このように溶湯Mの凝固が進行する過程で複数の方向から超音波振動を付加することにより、溶湯M内での鉄系晶出物の粗大化組織Qの生成が阻止されて、その鉄系晶出物の粒状化と微細化が促進されることになる。そのため、製造しようとするビレットの組織の中に粒状化と微細化とが図られた鉄系晶出物が均等に分散するかたちとなり、ビレットを大容量化しても組織全体の均一化と均質化が図れるようになる。なお、必要に応じて溶湯Mの温度低下に伴い各超音波振動付加装置4A〜4Dの発振周波数を変更するようにしても良い。
そして、超音波振動の付加後はそのまま静置して自然凝固による固化を待てば、目的とする組成のアルミニウム合金鋳造素材たるビレットを得ることができる。
図4は超音波振動を付加しない場合のビレットの組織の顕微鏡写真を、図5は固相線線温度近傍にて超音波振動を付加した場合のビレットの組織の顕微鏡写真を、また図6は固相線温度から液相線温度までの温度域で超音波振動を付加した場合のビレットの組織の顕微鏡写真をそれぞれ示している。
図4では、同図の中央部に一番問題としている鉄(Fe)系晶出物の板状の形態が筋状に現れている。この形態では、製品の延性低下ひいては機械的特性に大きな影響を与えることになる。図5では、図4と異なり鉄系晶出物が粒状をなして分散している様子がうかがえる。この形態が最も望ましく、製品の機械的特性への影響は小さいものとなる。図6では、鉄系晶出物が比較的大きな粒状または球状に凝集した形態が現れており、図4に示した鉄系晶出物の板状の形態に比べて、製品の機械的特性への影響は小さいものとなる。ただし、機械加工時等に抜け落ちることで製品に空洞ができる可能性を残している。
なお、こうして得られたビレットは、電磁誘導加熱法等により再加熱して半溶融状態とした上で、例えばスクイズダイカスト法(SDC法または層流充填ダイカスト法とも称される。)のもとで所定の金型に充填して、自動車部品等の製造に供されることになる。なお、ダイカスト鋳造法としてはスクイズダイカスト法に限らないことは言うまでもない。
本発明者等は、上記のようにして製造されたAC4C材相当のビレット(アルミニウム合金鋳造素材)を用いて、自動車のステアリングナックルおよびリアアクスルハウジングをスクイズダイカスト法にて試作してみた。その結果、一般的なAC4C材ではAC4CH材等に比べてFe量が多いことから製品の伸びが低下するとされているにもかかわらず、本発明のビレットを用いた場合には製品の延びの低下が抑制され、逆に製品の伸びが向上することを確認できた。
図7は本発明に係るアルミニウム合金鋳造素材の製造方法を実施するためのより具体的な第2の形態を示す図で、図1と共通する部分には同一符号を付してある。
この第2の形態では、単一の超音波振動付加装置4において一対の振動子7A,7Bを互いに平行に並設し、これら一対の振動子7A,7Bから溶湯M内の鉄系晶出物の粗大化組織(領域)Qに向けて、共に同じ周波数の超音波振動を付加するようにしたものである。この第2の形態においても図1に示した第1の形態のものと同等の効果が得られることになる。
1…容器
2…底板
3…ケーシング
4…超音波振動付加装置
4A〜4D…超音波振動付加装置
7…振動子
7A,7B…振動子
M…溶湯
Q…鉄系晶出物の粗大化領域
2…底板
3…ケーシング
4…超音波振動付加装置
4A〜4D…超音波振動付加装置
7…振動子
7A,7B…振動子
M…溶湯
Q…鉄系晶出物の粗大化領域
Claims (9)
- アルミニウム合金の溶湯を所定の容器に注湯して半溶融鋳造法のための素材を製造する方法であって、
容器に注湯した溶湯に対して複数の方向から超音波振動を付加することを特徴とするアルミニウム合金鋳造素材の製造方法。 - 容器に注湯した溶湯のうち中心部における鉄系晶出物の粗大化領域に向けて複数の方向から超音波振動を付加することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金鋳造素材の製造方法。
- 複数の方向から付加される超音波振動が互いに干渉して減衰することがないように、それぞれの方向からの超音波振動の周波数を個別に調整することを特徴とする請求項2に記載のアルミニウム合金鋳造素材の製造方法。
- 複数の方向からの超音波振動はそれぞれに独立した超音波振動付加装置によって発せられるようになっていて、少なくともいずれか一つの超音波振動付加装置における振動子の先端形状を半球状のものとしてあることを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム合金鋳造素材の製造方法。
- 容器に注湯した溶湯の固相線温度近傍の温度域にて超音波振動を付加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のアルミニウム合金鋳造素材の製造方法。
- 上記溶湯の固相線温度が552℃であることを特徴とする請求項5に記載のアルミニウム合金鋳造素材の製造方法。
- 容器に注湯した溶湯の液相線温度から固相線温度までの温度域にて超音波振動を付加することを特徴とする請求項6に記載のアルミニウム合金鋳造素材の製造方法。
- 上記溶湯の液相線温度が615℃であることを特徴とする請求項7に記載のアルミニウム合金鋳造素材の製造方法。
- アルミニウム合金がAC4C材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のアルミニウム合金鋳造素材の製造方法。
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