JP2013057624A - 応答遅れ評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】評価者の能力に関わらず、バラツキが少ない信頼性の高い評価結果が得られる応答遅れ評価方法を提供すること。
【解決手段】ヨーイングを含む走行時の車両の、操舵角とヨーレイトとの関係を示すグラフを得るステップと、このグラフにおける、操舵角とヨーレイトとの対応を示すカーブCの曲率が大きく変化する点である変化点PIの位置から、応答遅れを判断するステップとを含んでいる。上記カーブCの変化点PIの位置における操舵角の値を応答遅れの指数とし、上記変化点PIが、上記カーブCにおける、操舵角の5度以下の2点間を結ぶ第一直線SL1と、8度以上の2点間を結ぶ第二直線SL2との交差点であり、上記第一直線SL1と第二直線SL2との交差角θが、定められた閾値未満の場合は応答遅れ無しとし、この閾値以上の場合は応答遅れ有りとするのが好ましい。
【選択図】図3

Description

本発明は応答遅れ評価方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ステアリング操舵に対する車両のヨーイングの応答遅れを評価する方法に関する。
従来、ステアリング操舵に対する車両のヨーイングの応答遅れを評価する試験が行われている。この応答遅れの評価は、対象車両の運動性能の評価のみならず、車両に装着されたタイヤの運動性能の評価にもつながる。現在では、ステアリング操舵に対する車両のヨーイングの応答遅れの評価は、官能のみによって行われている。例えば、評価対象の車両を運転するドライバーが、ハンドルをどれほど操舵すればヨーレイト(車両の重心回りの回転角速度)が発生するか、自己のステアリング操舵に対する車両のヨーレイトの増加がリニアー(線形)であるか否か、及び、その線形性の程度等を、官能のみによって6段階、10段階等の評点を付与することによって評価する。
タイヤの運動性能の官能評価試験の一例は以下のとおりである。試験用車両に、仕様が異なる複数種類のタイヤのうちの一種を装着し、評価者が蛇行(ヨーイング)を含めた試験走行を行う。次いで、異なるタイヤを上記車両に装着し、同一評価者がヨーイングを含めた試験走行を行う。評価者には、いずれのタイヤが装着されているかは知らされない。そして、評価者が、いずれのタイヤの方が応答遅れが大きいかを宣言する。
上記車両のヨーイングの応答遅れを定量的に評価する方法を教示するような文献は知られていない。一方、車両のヨーレイトの応答遅れの存在を前提とした、操舵安定性を得る後輪操舵装置について開示した文献(特開昭63−192667号公報)、車両のヨーレイトの応答性を高めることができる前後輪操舵装置の制御方法について開示した文献(特開平7−156819号公報)は知られている。
前述したような官能のみによる評価においては、同一評価対象の車両であっても、評価者が相違する場合、同一評価者でもあって体調が異なる場合等では、評価結果に大きなバラツキが生じる。
特開昭63−192667号公報 特開平7−156819号公報
本発明は、かかる課題を解消するためになされたものであり、評価者の相違や評価者の体調等の相違に関わらず、同一対象についての評価結果のバラツキが低減された走行車両の応答遅れの評価方法を提供することを目的としている。
本発明に係る応答遅れ評価方法は、
ヨーイングを含む走行時の車両の、操舵角とヨーレイトとの関係を示すグラフを得るステップと、
このグラフにおける、操舵角とヨーレイトとの対応を示すカーブの曲率が大きく変化する点である変化点の位置から、応答遅れを判断するステップと、を含んでいる。。
好ましくは、操舵角とヨーレイトとの関係を示すカーブの変化点位置における操舵角の値を応答遅れの指数とする。
好ましくは、上記変化点が、上記カーブにおける、操舵角の5度以下の2点間を結ぶ第一直線と、8度以上の2点間を結ぶ第二直線との交差点である。
好ましくは、上記グラフにおける第一直線と第二直線との交差角の値が、定められた閾値未満の場合は応答遅れ無しとし、この閾値以上の場合は応答遅れ有りとする。
好ましくは、上記閾値は、上記交差角が第二直線の傾斜角から第一直線の傾斜角を減じた角度であり、上記操舵角の単位が(度)であり、上記ヨーレイトの単位が(度/秒)であり、上記各傾斜角の単位が(1/秒)であるときの、0.2±0.05(1/秒)の範囲内の値に相当する値である。
好ましくは、上記車両の走行において、操舵の波形と正弦波との相関係数が0.9650以上である。
好ましくは、上記車両の走行において、操舵速度の平均が38±10度/秒の範囲である。
好ましくは、上記車両の走行において、操舵角の平均が20±2度の範囲である。
好ましくは、上記車両の走行において、操舵時間の平均が0.8±0.2秒の範囲である。
好ましくは、上記車両の走行において、走行速度の平均が140±2km/hの範囲である。
本発明に係る応答遅れ評価方法によれば、評価者の能力に関わらず、バラツキが少ない信頼性の高い評価結果が得られる。
図1は、本評価方法の実行に用いられる供試車両の一例を概略的に示す構成図である。 図2は、本評価方法に用いられる、走行データから得られた操舵角とヨーイングとの関係を示すグラフの一例である。 図3は、本評価方法に用いられる、走行データから得られた操舵角とヨーイングとの関係を示すグラフの他の例である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、本評価方法の実行に用いられる供試車両1が示されている。この車両1は、一般的な四輪の乗用車である。この車両1は、走行時の操舵(ステアリング)に対するヨーイングの応答遅れを評価する試験ために用いられる。試験の一例としては、異なる仕様のタイヤを装着した場合の、当該車両1の上記応答遅れの相違を評価する試験である。以下、図1から図3を参照しつつ、かかる試験、及び、試験結果に基づく評価の方法についての説明がなされる。
上記車両1には、制御装置10、及び、車両1の操舵状態及び走行状態を検出するための各種センサが搭載されている。これらのセンサには、操舵角センサ11、ヨーレイトセンサ12及び車速センサ13が含まれる。これらのセンサによる検出結果から、制御装置10において、上記車両1のヨーイング応答遅れが定量的に確認される。このように、各センサによる検出結果及び制御装置10による演算結果から、車両1の応答遅れの定量的な評価が可能となる。
操舵角センサ11として、通常は前輪2用の舵角センサが用いられるが、後輪3用の舵角センサが用いられてもよい。四輪ともに、後述する供試タイヤTが装着されている。操舵角センサ11は、ステアリングホイール4又はステアリングシャフト5の回転を検出し、前輪2の操舵角(ステアリング角)に応じた前輪舵角信号を制御装置10へ送信する。ヨーレイトセンサ12として、通常はジャイロセンサが用いられる。ヨーレイトセンサ12は、車両1の重心回りの回転角速度(ヨーレイト)に応じたヨーレイト信号を制御装置10へ送信する。車速センサ13は、車輪2、3又は車軸6の回転速度を検出し、この車両1の走行速度に応じた速度信号を制御装置10へ送信する。
操舵角センサ11、ヨーレイトセンサ12及び車速センサ13による検出は、同時に並行して行われる。また、検出された操舵角、ヨーレイト及び車速は、制御装置10において、時間軸に沿って(時系列に)記録される。制御装置10において、これらの検出結果から、操舵時間、操舵速度、操舵波形、操舵角とヨーレイトとの関係等が演算される。
上記操舵角とヨーレイトとの関係は、車両1のヨーイング応答遅れの判断材料を提供するものである。操舵角と、この操舵角におけるヨーレイトとの関係は、操舵角が横軸とされ、ヨーレイトが縦軸とされたグラフ上のカーブとして表されうる(図2及び図3における符号C)。このカーブCを含むグラフは制御装置10において作成される。本実施形態のグラフでは、操舵角が横軸とされ、ヨーレイトが縦軸とされているが、本発明ではかかる方法には限定されない。操舵角が縦軸とされ、ヨーレイトが横軸とされてもよい。
以下、操舵角とヨーレイトとの関係を示すグラフに基づいた応答遅れ評価について説明がなされる。操舵角とヨーレイトとの関係は、後述するように、供試車両を、所定の操舵波形で、所定の操舵速度範囲で、所定の操舵角範囲で、所定の操舵時間で操舵し、及び、所定の走行速度で走行させつつ得られる。上記「操舵時間」とは、操舵角ゼロから、絶対値で最大の操舵角に至るまでの時間である。
図2及び図3は、走行データから得られた操舵角とヨーレイトとの関係を示すグラフである。図2は、応答遅れが無いと判断された試験結果を表し、図3は、応答遅れがあると判断された試験結果を表している。このグラフでは、横軸が操舵角を示し、その単位は度(°)である。縦軸はヨーレイトを示し、その単位は度/秒(°/秒)である。グラフ中のカーブCの曲率が大きく変化する点である変化点(図3における符号PI)が、応答遅れを示す点とされている。この変化点PIにおける操舵角の値が応答遅れ指数を示している。応答遅れ指数をこのように定めた理由は、以下のとおりである。発明者らの調査により、一般的に、操舵角とヨーレイトとの関係を示すカーブの変化点を通過した後では、操舵角とヨーレイトの関係がリニアに近づくことが判っている。従って、この変化点位置での操舵角の大小によって応答遅れ指数を決定するのが妥当である。
上記カーブCの変化点PIの求め方が以下に説明される。各グラフ中のカーブCには、2本の直線が画かれている。いずれのグラフにおいても、左側の直線(小さい操舵角側の直線)が第一直線SL1であり、右側の直線(大きい操舵角側の直線)が第二直線SL2である。第一直線SL1は、上記カーブCにおける、操舵角0°の点と5°の点とを通る直線である。第二直線SL2は、上記カーブCにおける、操舵角10°の点と15°の点とを通る直線である。この第一直線SL1と第二直線SL2との交点を、上記変化点PIとみなす。例えば、図3の場合、上記の方法で定めた変化点PIは、操舵角が7.8°の位置に存在する。従って、図3に示された試験結果については、その応答遅れ指数は7.8°と判定される。換言すれば、この供試車両1(供試タイヤT)には7.8°の応答遅れがあると判定される。図2に示された試験結果においても、第一直線SL1と第二直線SL2との交点は存在する。しかし、後述するように、これは変化点PIとはされない。すなわち、図2に示された供試車両1(供試タイヤT)には応答遅れが無い。
本実施形態では、両直線SL1、SL2を、操舵角0°の点と5°の点、及び、操舵角10°の点と15°の点、によって定めた。しかし、本発明ではかかる点のみには限定されない。第一直線SL1は、操舵角0°から5°の間の、4°以上の間隔をおいた2点によって定めてもよい。第二直線SL2は、操舵角8°から18°の間の、5°以上10°未満の間隔をおいた2点によって定めてもよい。このように定めた理由は、以下のとおりである。すなわち、発明者らの調査により、上記カーブに変化点が存在する場合には、一般的に、操舵角5°から8°の間に存在することが判っているからである。また、カーブは操舵角10°から15°のあたりでリニアーに近づくことが判っているからである。加えて、評価試験を容易に行うために、車両走行時の操舵角の絶対値を20°以下にすることが好ましいからである。
変化点PIの位置から応答遅れ指数を決定する前に、上記カーブCに変化点PIが存在するか否かの判定が行われる。この判定は、上記2つの直線SL1、SL2を用いて行われる。前述のとおりに、グラフ中に第一直線SL1と第二直線SL2が画かれる。次いで、第一直線SL1と第二直線SL2との交差角θが求められる。この交差角θが所定の閾値未満であれば、そのカーブCに変化点PIは存在しないと判断される。交差角θが上記閾値以上であれば、変化点PIが存在すると判断される。
上記交差角θは、第二直線SL2の傾斜角から第一直線SL1の傾斜角を減じた角度である。各直線SL1、SL2の傾斜角は、(ヨーレイト値)÷(操舵角値)から求めることができる。傾斜角及び交差角の単位は、それぞれ(度/秒)÷(度)=(1/秒)である。例えば、図2の場合、第一直線SL1の傾斜角は、操舵角0°と5°との間のヨーレイト値1.0(°/秒)を用いて、1.0(°/秒)÷5(°)=0.20(1/秒)として得られる。第二直線SL2の傾斜角は、操舵角10°と15°との間のヨーレイト値1.8(°/秒)を用いて、1.8(°/秒)÷5(°)=0.36(1/秒)として得られる。交差角θは、0.36−0.20=0.16(1/秒)となる。本実施形態における上記閾値は、0.2(1/秒)とされている。従って、図2に示された試験結果については、カーブCに変化点PIが無いと判定される。換言すれば、この供試車両1(供試タイヤT)には応答遅れが無いと判定される。
図3の場合は、第一直線SL1の傾斜角は、操舵角0°と5°との間のヨーレイト値0.2(°/秒)を用いて、0.2(°/秒)÷5(°)=0.04(1/秒)として得られる。第二直線SL2の傾斜角は、操舵角10°と15°との間のヨーレイト値1.5(°/秒)を用いて、1.5(°/秒)÷5(°)=0.30(1/秒)として得られる。。交差角θは、0.30−0.04=0.26(1/秒)である。この交差角θは上記閾値0.2(1/秒)より大きい。従って、図3に示された試験結果については、カーブCに変化点PIが存在すると判定される。換言すれば、この供試車両1(供試タイヤT)には応答遅れがあると判定される。応答遅れ指数は、前述したように、変化点PIが位置する操舵角の値(7.8°)である。
変化点PIの有無を判定するための閾値を0.2(1/秒)とした理由は、経験的に評価ドライバーが感じ取れる変化の閾値が0.2±0.05(1/秒)の範囲に存在したからである。
応答遅れに関する安定した評価結果、すなわち、バラツキの少ない評価結果を得るためには、供試体の相違に関わらず、試験条件(走行条件)をできる限り一定にするのが望ましい。また、適正な応答遅れ指数を得るためにも、車両1の操舵入力等の走行条件をできる限り一定にするのが望ましい。操舵の再現性確保の観点からも、操舵入力条件を一定範囲内に設定するのが望ましい。かかる観点から、供試車両1の走行条件が、以下のとおり所定範囲に管理される。
〈1〉操舵波形の、正弦波との相関係数が0.9650以上であること。相関係数が0.9650未満であると、操舵の初期の操作に違いが生じ、応答遅れの絶対値が変化するおそれがあるからである。
〈2〉1回の走行中に複数回(後述する実施例及び比較例では、それぞれ6回)操舵したときの操舵速度の平均が38±10°/秒の範囲内であること。この範囲を外れると、上記と同様に、操舵の初期の操作に違いが生じ、応答遅れの絶対値が変化するおそれがあるからである。
〈3〉1回の走行中に複数回操舵したときの操舵角の平均が20±2°の範囲内であること。この範囲を外れると、上記と同様に、操舵の初期の操作に違いが生じ、応答遅れの絶対値が変化するおそれがあるからである。加えて、供試車両1が動く絶対量が相違し、走行すべき車線を大きく外れる可能性があるからである。
〈4〉1回の走行中に複数回操舵したときの操舵時間の平均が0.8±0.2秒の範囲内であること。この範囲を外れると、上記と同様に、操舵の初期の操作に違いが生じ、応答遅れの絶対値が変化するおそれがあるからである。
〈5〉1回の走行中に複数回操舵したときの走行速度の平均が140±2km/hの範囲内であること。この範囲を外れると、車両1の走行速度が変化するため、「応答遅れ」の絶対値が変化するからである。一般に、高速側に外れるほど応答遅れが大きくなり、低速側に外れるほど応答遅れが小さくなる傾向にある。
上記走行条件は、供試車両1を運転するドライバーのドライビングテクニックによって満たされうる。この補助のために、車両1の走行路に所定の正弦波形状のラインが画かれてもよい。ステアリングシャフト又はステアリングホイールにおける、絶対値最大の操舵角(例えば22°等)の位置にストッパ、マーキング等が施されてもよい。走行時の実際の操舵波形、操舵速度範囲、操舵角範囲、操舵時間、走行速度については、各センサ11、12,13の検出結果から確認することができる。操舵入力については、ドライバーのテクニックに頼らず、コンピュータ制御によって指定のステアリング操舵を行わしめるロボット(ステアリングロボットと呼ばれる)を用いてもよい。このロボットをを用いることにより、容易に上記走行条件を充足することができる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[走行試験]
異なる仕様の供試タイヤTが装着される車両1の実車走行試験を行った。その目的は、従来の官能のみによる応答遅れ評価(比較例)と、前述したごとく算出された応答遅れ指数による数値評価(実施例)との、評価精度の比較を行うことである。試験要領は以下のとおりである。
[試験要領]
車両1に、2種類の異なる仕様(X仕様、Y仕様)のタイヤTを交互に装着し、それぞれ5回ずつ走行した。すなわち、各比較例及び各実施例において、X仕様タイヤTについて5回走行し、Y仕様タイヤTについて5回走行した。各走行後に応答遅れの評価が行われた。すなわち、各例につき5回の評価が行われた。
・車両1 : 日本国内メーカー製造の四輪乗用車である。前述の制御装置10及び各種センサ11、12、13が搭載されている。これらの機器は、応答遅れの数値評価(実施例)を行う際には作動しているが、応答遅れの官能評価(比較例)を行う際には作動しない。
・X仕様のタイヤT : 純正装着品であり、その空気圧は純正指定内圧である。
・Y仕様のタイヤT : 純正装着品であり、その空気圧は純正指定内圧+80kPaである。
・上記車両1を運転する者 : 10年以上の評価経験を有するベテランドライバーA、及び、2年の評価経験を有する新人ドライバーBである。
・応答遅れを評価する評価者 : 上記ドライバーA(評価者Aともいう)、及び、ドライバーB(評価者Bともいう)である。
・応答遅れの官能評価(比較例) : 評価者A、Bが、装着されたタイヤTがX仕様かY仕様か判らない状態で車両1を運転する。その後、評価者A、Bが、いずれのタイヤTの方が応答遅れが大きいかを宣言する。5回の評価の正解率で評価精度を判定する。
・応答遅れの数値評価(実施例) : 評価者Bが、装着されたタイヤTがX仕様かY仕様か判らない状態で車両1を運転する。その後に、6回の測定結果の平均値によって作成された前述のグラフ(図2及び図3に例示)から得られた指数に基づき、評価者Bが、いずれのタイヤTの方が応答遅れが大きいかを宣言する。5回の評価の正解率で評価精度を判定する。この数値評価においては、評価者の主観的判断の入り込む余地はない。
[実施例1]
実施例1として、以上説明された評価試験の条件及び結果の一例が示される。前述した試験条件(操舵の管理項目等)の充足度は、表1に示されるとおりである。すなわち、制御装置及び各センサが作動し、グラフによる応答遅れの指数化が実現した(表1中の○印)。しかし、操舵入力及び走行速度については、全て管理範囲から外れていた(表1中の×印)。評価(応答遅れが大きいのはX仕様タイヤかY仕様タイヤかの宣言)は、評価者Bがグラフによる指数に基づいて行った。
[実施例2]
実施例2として、以上説明された評価試験の条件及び結果の一例が示される。前述した試験条件(操舵の管理項目等)の充足度は、表1に示されるとおりである。すなわち、制御装置及び各センサが作動し、グラフによる応答遅れの指数化が実現した(表1中の○印)。しかし、操舵入力及び走行速度については、操舵波形のみが管理範囲内にあり(表1中の○印)、他の項目は管理範囲から外れていた(表1中の×印)。評価は、評価者Bがグラフによる指数に基づいて行った。
[実施例3]
実施例3として、以上説明された評価試験の条件及び結果の一例が示される。前述した試験条件(操舵の管理項目等)の充足度は、表1に示されるとおりである。すなわち、制御装置及び各センサが作動し、グラフによる応答遅れの指数化が実現した(表1中の○印)。しかし、操舵入力及び走行速度については、操舵角のみが管理範囲内にあり(表1中の○印)、他の項目は管理範囲から外れていた(表1中の×印)。評価は、評価者Bがグラフによる指数に基づいて行った。
[実施例4]
実施例4として、以上説明された評価試験の条件及び結果の一例が示される。前述した試験条件(操舵の管理項目等)の充足度は、表1に示されるとおりである。すなわち、制御装置及び各センサが作動し、グラフによる応答遅れの指数化が実現した(表1中の○印)。しかし、操舵入力及び走行速度については、操舵速度のみが管理範囲内にあり(表1中の○印)、他の項目は管理範囲から外れていた(表1中の×印)。評価は、評価者Bがグラフによる指数に基づいて行った。
[実施例5]
実施例5として、以上説明された評価試験の条件及び結果の一例が示される。前述した試験条件(操舵の管理項目等)の充足度は、表1に示されるとおりである。すなわち、制御装置及び各センサが作動し、グラフによる応答遅れの指数化が実現した(表1中の○印)。しかし、操舵入力及び走行速度については、操舵時間のみが管理範囲内にあり(表1中の○印)、他の項目は管理範囲から外れていた(表1中の×印)。評価は、評価者Bがグラフによる指数に基づいて行った。
[実施例6]
実施例として、以上説明された評価試験の条件及び結果の一例が示される。前述した試験条件(操舵の管理項目等)の充足度は、表1に示されるとおりである。すなわち、制御装置及び各センサが作動し、グラフによる応答遅れの指数化が実現した(表1中の○印)。しかし、操舵入力及び走行速度については、走行速度のみが管理範囲内にあり(表1中の○印)、他の項目は管理範囲から外れていた(表1中の×印)。評価は、評価者Bがグラフによる指数に基づいて行った。
[実施例7]
実施例として、以上説明された評価試験の条件及び結果の一例が示される。前述した試験条件(操舵の管理項目等)の充足度は、表1に示されるとおりである。すなわち、制御装置及び各センサが作動し、グラフによる応答遅れの指数化が実現した(表1中の○印)。しかし、操舵入力及び走行速度については、全ての項目が管理範囲内にあった(表1中の○印)。評価は、評価者Bがグラフによる指数に基づいて行った。
[比較例1]
比較例1として、以上説明された評価試験の条件及び結果の一例が示される。制御装置及び各センサは作動せず、グラフによる応答遅れの指数化は行われなかった。従って、操舵入力及び走行速度の全項目について、管理範囲内か外かは不明である(表1中の×印)。評価は、評価者Aが官能のみで行った。
[比較例2]
比較例2として、以上説明された評価試験の条件及び結果の一例が示される。制御装置及び各センサは作動せず、グラフによる応答遅れの指数化は行われなかった。従って、操舵入力及び走行速度の全項目について、管理範囲内か外かは不明である(表1中の×印)。評価は、評価者Bが官能のみで行った。
Figure 2013057624
[評価]
実施例1から7、並びに、比較例1及び2の各評価試験の結果とし、「評価精度」が表1に示されている。比較例1の評価者Aによる官能評価では、5回の走行のうち4回について、X仕様タイヤの方が応答遅れが大きいと判断された。X仕様タイヤの方が応答遅れが大きいとする判断が正解である。ベテランの全官能評価ドライバーの85%の意見と一致するからである。従って、比較例1の評価者Aによる官能評価の精度は80%となる。比較例1の評価者Bによる官能評価では、5回の走行のうち2回について、X仕様タイヤの方が応答遅れが大きいと判断された。評価精度は40%となる。実施例1から6の数値評価においても、それぞれ5回走行したが、操舵入力等の管理項目のうちの一項目のみ管理範囲内に入っていた。管理範囲内に入っている項目は、実施例1から6のそれぞれで異なる。評価精度は50%から80%の範囲である。この実施例1から6の評価精度の相違により、管理項目の重要度を推測することができる。実施例7の数値評価では、全管理項目について管理範囲内に入っていた。実施例7では、5回の走行の全てについて、X仕様タイヤの方が応答遅れが大きいと判断された。評価精度は100%となる。
以上の評価試験結果から、グラフを用いた数値評価によれば、ベテランの評価者に頼ることなく高精度の評価が可能となる。また、当該数値評価では、供試車両を運転したドライバーに限らず、何人によっても高精度の評価が可能となる。さらに、複数の車両間の応答遅れの対比、及び、複数のタイヤ間の応答遅れの対比のみならず、応答遅れの程度自体についても高精度の評価が可能となる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係る応答遅れ評価方法は、車両及びタイヤの動的性能評価に適用されうる。
1・・・車両
2・・・前輪
3・・・後輪
4・・・ステアリングホイール
5・・・ステアリングシャフト
6・・・車軸
10・・・制御装置
11・・・操舵角センサ
12・・・ヨーレイトセンサ
13・・・車速センサ
C・・・カーブ
PI・・・変化点
SL1・・・第一直線
SL2・・・第二直線
θ・・・交差角
T・・・供試タイヤ

Claims (10)

  1. ヨーイングを含む走行時の車両の、操舵角とヨーレイトとの関係を示すグラフを得るステップと、
    このグラフにおける、操舵角とヨーレイトとの対応を示すカーブの曲率が大きく変化する点である変化点の位置から、応答遅れを判断するステップとを含む、応答遅れ評価方法。
  2. 操舵角とヨーレイトとの関係を示すカーブの変化点位置における操舵角の値を応答遅れの指数とする、請求項1に記載の応答遅れ評価方法。
  3. 上記変化点が、上記カーブにおける、操舵角の5度以下の2点間を結ぶ第一直線と、8度以上の2点間を結ぶ第二直線との交差点である、請求項2に記載の応答遅れ評価方法。
  4. 上記グラフにおける第一直線と第二直線との交差角の値が、定められた閾値未満の場合は応答遅れ無しとし、この閾値以上の場合は応答遅れ有りとする、請求項3に記載の応答遅れ評価方法。
  5. 上記閾値は、
    上記交差角が第二直線の傾斜角から第一直線の傾斜角を減じた角度であり、上記操舵角の単位が(度)であり、上記ヨーレイトの単位が(度/秒)であり、上記各傾斜角の単位が(1/秒)であるときの、0.2±0.05(1/秒)の範囲内の値に相当する値である、請求項4に記載の応答遅れ評価方法。
  6. 上記車両の走行において、操舵の波形と正弦波との相関係数が0.9650以上である、請求項1から5のいずれかに記載の応答遅れ評価方法。
  7. 上記車両の走行において、操舵速度の平均が38±10度/秒の範囲である、請求項1から6のいずれかに記載の応答遅れ評価方法。
  8. 上記車両の走行において、操舵角の平均が20±2度の範囲である、請求項1から7のいずれかに記載の応答遅れ評価方法。
  9. 上記車両の走行において、操舵時間の平均が0.8±0.2秒の範囲である、請求項1から8のいずれかに記載の応答遅れ評価方法。
  10. 上記車両の走行において、走行速度の平均が140±2km/hの範囲である、請求項1から9のいずれかに記載の応答遅れ評価方法。
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