JP2013057350A - 内燃機関のコンロッド軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内燃機関のクランク軸用コンロッド軸受において、コンロッド軸受が一対の半円筒形軸受から成る。少なくとも一方の半円筒形軸受において、前方側円周方向端面24Aから前方側円周方向溝24Cが形成されており、対向する半円筒形軸受において、後方側円周方向端面26Aから後方側円周方向溝26Cが形成されている。前方側円周方向溝24Cと後方側円周方向溝26Cと軸線方向溝24Eが連通する連通部において、前方側円周方向溝の深さが後方側円周方向溝の深さよりも大きくなっていることにより、円周方向溝の深さ方向の段差部27Aが形成されている。
【選択図】図2
Description
この理由として、一般に、コンロッド軸受を保持するハウジングは、機関運転時の変形が大きいため、運転時におけるクランクピンとコンロッド軸受間の間隙が、クランク軸ジャーナル部と主軸受との間の間隙に比して大きく、潤滑油溝内に保持された異物が軸受摺動面全体に広がり易く、主荷重部になる「半円筒形軸受の円周方向中央部」における摺動面部分にも異物が分布し、前記円周方向潤滑油溝を設けない従来タイプのコンロッド軸受を使用した場合よりも、軸受損傷が増すからである。このことは試験によって確認された。
内燃機関のコンロッド軸受は、異物排出性に優れると共に、軸受摺動面への潤滑油の供給性に優れることが要求される。
軸受摺動面への潤滑油の供給性を高めるために、上述の前方側円周方向溝に加えて、図13、図14に示すように、対向する半円筒形軸受にも、突き合わせた円周方向端面から軸受内周面に沿って、前方側円周方向溝と同一形状の円周方向溝を設けることも考えられる。この構成によると、対向する半円筒形軸受の軸受摺動面への潤滑油の供給量を多くできるが、異物排出性は多少低下する。
内部潤滑油路を有するクランク軸のクランクピンを回転自在に支承する、内燃機関のクランク軸用コンロッド軸受において、
前記コンロッド軸受が一対の半円筒形軸受から成り、前記一対の半円筒形軸受は、それぞれ、前記クランクピンの回転方向に対して前方側に位置づけられる前方側円周方向端面、及び後方側に位置づけられる後方側円周方向端面を有し、一方の前記半円筒形軸受の前記前方側円周方向端面ともう一方の前記半円筒形軸受の前記後方側円周方向端面とが当接するようになっており、
少なくとも一方の前記半円筒形軸受において、前記前方側円周方向端面から軸受内周面に沿って最大中心角45度の範囲内で前方側円周方向溝が形成されており、
対向する前記半円筒形軸受において、前記後方側円周方向端面から軸受内周面に沿って最大中心角45度の範囲内で、前記前方側円周方向溝と連通する後方側円周方向溝が形成されており、
前記前方側円周方向溝及び前記後方側円周方向溝と連通する軸線方向溝が、軸受内周面に沿って軸線方向幅全長に亘って形成されており、
前記前方側円周方向溝と前記後方側円周方向溝と前記軸線方向溝が連通する連通部において、前記前方側円周方向溝の深さが前記後方側円周方向溝の深さよりも大きくなっていることにより、円周方向溝の深さ方向の段差部が形成されている、コンロッド軸受。
ここで、円周方向溝の深さとは、軸受内周面から溝底までの距離である。軸線方向溝がある部分については、軸線方向溝がないと仮定した場合の軸受内周面から溝底までの距離である。
前方側円周方向溝の深さ(D1)>軸線方向溝の深さ(D3)>後方側円周方向溝の深さ(D2)
を満たす。
ここで、軸線方向溝の深さとは、軸線方向溝がないと仮定した場合の軸受内周面から溝底までの距離である。
図1は、内燃機関のクランク軸を、ジャーナル部およびクランクピン部でそれぞれ截断した模式図であり、ジャーナル10、クランクピン12およびコンロッド14を示す。これら三部材の紙面奥行き方向での位置関係は、ジャーナル10が紙面の最も奥側にあり、手前側にクランクピン12があって、クランクピン12が、他端にピストンを担持するコンロッド14の大端部ハウジング16で包囲されている。
ジャーナル10は、一対の半円筒形軸受18A、18Bを介して、内燃機関のシリンダブロック下部に支持されている。図面で上側に位置する半円筒形軸受18Aは、その内周面全長に亘って潤滑油溝18aが形成されている。
また、ジャーナル10は、その直径方向貫通孔10aを有し、ジャーナル10が矢印X方向に回転すると、貫通孔10aの両端開口が交互に潤滑油溝18aに連通する。
さらに、ジャーナル10、図示されないクランクアーム、および、クランクピン12を貫通して潤滑油路20が、クランク軸内部に形成されている。
本実施例においては、円周方向端面24A、26Aの両方に傾斜面24D、26Dが設けられているが、円周方向端面24A、26Aのうちの一方にのみ傾斜面を設けてもよい。
また、本実施例においては、傾斜面24Dと26Dとが、円周方向端面に対して面対称形状に形成されているが、切除する寸法を変える等して、非対称形状に形成してもよい。
しかし、必ずしも突き合わせ端面の両方に円周方向溝を設ける必要はない。すなわち、一方の半円筒形軸受にのみ、前方側円周方向溝を形成してもよい。
本実施例においては、円周方向端面24B、26Bの両方に傾斜面24G、26Gを設けているが、円周方向端面24B、26Bのうちの一方にのみ傾斜面を設けてもよい。
また、本実施例においては、傾斜面24Gと26Gとが、円周方向端面に対して面対称形状に形成されているが、切除する寸法を変える等して、非対称形状に形成してもよい。
機関作動中、ジャーナル10を支承する主軸受の軸受内周面に形成された潤滑油溝18a内に潤滑油が供給される。ジャーナル10が回転すると、ジャーナル10に形成された直径方向貫通孔10aの両端開口が潤滑油溝18aと間欠的に連通する。その連通時に、貫通孔10a内に潤滑油圧が作用し、更には貫通孔10aに連通する潤滑油路20にも潤滑油供給圧力が作用する。この潤滑油供給圧力によって、クランクピン12の外周面にある潤滑油路20の出口開口から、クランクピン12とコンロッド軸受22の間の摺動面に潤滑油が供給される。クランクピン12が回転して、潤滑油路20の出口開口が前方側円周方向溝24C、26Fに連通すると、前方側円周方向溝24C、26F内に潤滑油が直接流入する。流入した潤滑油は、これに付随する異物と共に、前方側円周方向溝内を前方側円周方向端面の方向へ流れる。
前方側円周方向溝の溝底に沿って連通部まで移動してくる異物の速度を確実に低下させるために、後方側円周方向溝の深さ(D2)を前方側円周方向溝の深さ(D1)に対して90%以下とすることが好ましい。すなわち、前方側円周方向溝の深さの10%以上の段差部が、前方側円周方向溝内の潤滑油の流れを遮蔽するようになっていることが好ましい。一方、下流側の半円筒形軸受の軸受内周面に対する潤滑油の供給量を十分に確保するために、後方側円周方向溝の深さ(D2)は、前方円周方向油溝の深さ(D1)に対して20%以上とすることが好ましい。
この構成とすることにより、前方側円周方向溝24C内を相対的に緩やかに流れてきた潤滑油および異物の流速が軸線方向溝24E内で増大するので、異物が軸線方向溝24E内へ流入しやすくなり、異物が軸受幅方向端面から軸受外部へ円滑に排出されるやすくなる。
この構成とすることにより、前方側円周方向溝24C、26F内を流れる潤滑油および異物28の流れが円周方向端面に向かって緩やかになり、異物が潤滑油の流れに付随して確実に軸線方向溝へ押し流される。また、軸線方向溝に接近した際の潤滑油および異物28の流速が緩やかであるため、慣性力によって、異物が軸線方向溝を乗り越えて相手側半円筒形軸受側へ進入することを防ぐことができる。本実施例においては、後方側円周方向溝の深さも、前方側円周方向端面から離れるに従って次第に小さくなっている。
しかし、前方側円周方向溝の深さを一定の深さにすることも可能であり、後方側円周方向溝の深さを一定の深さにすることも可能である。
ここで、円周方向溝の溝幅は、潤滑油路20の出口開口の穴径(φA)×1/4以上、潤滑油路20の出口開口の穴径(φA)×2以下とすることが好ましい。さらに、円周方向溝の溝幅は、潤滑油路20の出口開口の穴径(φA)と同じとすることが好ましい。
また、軸線方向溝の寸法は、溝幅2mm未満、深さ0.1〜0.5mmであることが好ましい。潤滑油に混入する異物のサイズは、最大で長さが0.1mm程度であり、軸線方向溝の寸法は、異物排出性を考慮して決められる。
この構成とすることにより、半円筒形軸受24および26の部品共通化を図ることが可能である。しかし、本発明は本実施例に限定されず、前方側円周方向溝24Cと前方側円周方向溝26F、後方側円周方向溝24Fと後方側円周方向溝26C、及び軸線方向溝24Eと軸線方向溝26Hが、それぞれ軸受中心線に対して非対称形状に形成されてもよい。すなわち、前方側円周方向溝24Cと前方側円周方向溝26F、後方側円周方向溝24Fと後方側円周方向溝26C、及び軸線方向溝24Eと軸線方向溝26Hが、同じ寸法に形成されず、本発明の機能を維持する範囲において、円周方向長さ、溝幅、深さが異なっていても良い。
前方側円周方向溝の深さ(D1)>軸線方向溝の深さ(D3)>後方側円周方向溝の深さ(D2)
を満たしている。
実施例1では、軸線方向溝の深さ(D3)と後方側円周方向溝の深さ(D2)の大小関係が逆になっており、軸線方向溝の深さ(D3)<後方側円周方向溝の深さ(D2)となっていた。後方側円周方向溝の深さ(D2)が軸線方向溝の深さ(D3)より大きい場合、前方側円周方向溝の溝底側を流れて連通部に達した異物の中には、軸線方向溝まで到達する前に後方側円周方向溝に進入してしまうものがある。
しかし、この実施例2の構成とすることにより、前方側円周方向溝34Cの溝底側を流れてきた潤滑油と異物は、段差部37Aによって堰き止められた後、まず軸線方向溝34Eに流入する。したがって、実施例1よりも異物は軸線方向溝34Eを通じて軸受外部に排出されやすくなり、後方側円周方向溝36Cには進入しにくくなるので、異物排出効果が向上する。
本実施例においては、連通部において、前方側円周方向溝44Cの溝幅(W1)が、後方側円周方向溝46Cの溝幅(W2)よりも大きくなっていることにより、円周方向溝の溝幅方向の段差部が形成されている(図11参照)。
この構成とすることにより、円周方向溝の深さ方向の段差部47Aに加えて、溝幅方向の段差部47Cが形成されるため、前方側円周方向溝の側壁に沿って移動してきた異物も堰き止める効果が生じる。これにより、さらに異物排出効果が向上する。
ここで、円周方向断面溝の断面形状について、台形形状の実施例を示したが、他にも、半円形形状、三角形形状など任意の断面形状とすることができる。異物排出効果を有する段差部が形成されるのであれば、任意の断面形状の円周方向溝を適用することができる。
前方側円周方向溝が形成された中心角度(θ1)が大きいと、クランクピン12外周面の潤滑油路20の出口開口から排出される異物を前方側円周方向溝が捕らえる確率が大きくなる。すなわち、異物排出路である軸線方向溝の前で異物が捕捉されるので、異物排出効果が向上する。さらに、前方側円周方向溝が形成された中心角度(θ1)が大きいと、異物が前方側円周方向溝を流れる時間が長くなり、異物の移動速度が緩やかになり軸線方向溝から排出されやすくなる。
後方側円周方向溝が形成された中心角度(θ2)が小さいと、クランクピン12外周面の潤滑油路20の出口開口から異物が後方側円周方向溝へ排出される確率が小さくなる。後方側円周方向溝は、異物排出路である軸線方向溝の下流にあるので、後方側円周方向溝へ排出された異物は軸線方向溝から排出されない。すなわち、異物が後方側円周方向溝へ排出される可能性を低く抑えることで、結果的に異物排出効果が向上する。さらに、後方側円周方向溝が形成される中心角度(θ2)が小さくても、前方側円周方向溝からの油を下流側の軸受内周面へ供給する効果は十分に維持できる。
後方側円周方向溝の中心角度(θ2)を小さくし、後方側円周方向溝の円周方向長さが、潤滑油路20の出口開口の穴径(φA)よりも小さくなるようにすることが好ましい。ただし、後方側円周方向溝の先の軸受摺動面への潤滑油の供給を確保するため、後方側円周方向溝の円周方向長さは、潤滑油路20の出口開口の穴径(φA)×0.5以上とすることが好ましい。
10a ジャーナルの直径方向貫通孔
12 クランクピン
14 コンロッド
16 大端部ハウジング
16A コンロッド側大端部ハウジング
16B キャップ側大端部ハウジング
18A 半円筒形軸受
18B 半円筒形軸受
18a 潤滑油溝
20 潤滑油路
22 コンロッド軸受
24 半円筒形軸受
24A 前方側円周方向端面
24B 後方側円周方向端面
24C 前方側円周方向溝
24D 傾斜面
24E 軸線方向溝
24F 後方側円周方向溝
24G 傾斜面
26 半円筒形軸受
26A 後方側円周方向端面
26B 前方側円周方向端面
26C 後方側円周方向溝
26D 傾斜面
26F 前方側円周方向溝
26G 傾斜面
26H 軸線方向溝
27A、27B、27C 段差部
28 異物
34C 前方側円周方向溝
34E 軸線方向溝
36C 後方側円周方向溝
37A 段差部
44A 前方側円周方向端面
44C 前方側円周方向溝
44E 軸線方向溝
46A 後方側円周方向端面
46C 後方側円周方向溝
47A、47C 段差部
54C 前方側円周方向溝
56C 後方側円周方向溝
Claims (11)
- 内部潤滑油路を有するクランク軸のクランクピンを回転自在に支承する、内燃機関のクランク軸用コンロッド軸受において、
前記コンロッド軸受が一対の半円筒形軸受から成り、前記一対の半円筒形軸受は、それぞれ、前記クランクピンの回転方向に対して前方側に位置づけられる前方側円周方向端面、及び後方側に位置づけられる後方側円周方向端面を有し、一方の前記半円筒形軸受の前記前方側円周方向端面ともう一方の前記半円筒形軸受の前記後方側円周方向端面とが当接するようになっており、
少なくとも一方の前記半円筒形軸受において、前記前方側円周方向端面から軸受内周面に沿って最大中心角45度の範囲内で前方側円周方向溝が形成されており、
対向する前記半円筒形軸受において、前記後方側円周方向端面から軸受内周面に沿って最大中心角45度の範囲内で、前記前方側円周方向溝と連通する後方側円周方向溝が形成されており、
前記前方側円周方向溝及び前記後方側円周方向溝と連通する軸線方向溝が、軸受内周面に沿って軸線方向幅全長に亘って形成されており、
前記前方側円周方向溝と前記後方側円周方向溝と前記軸線方向溝が連通する連通部において、前記前方側円周方向溝の深さが前記後方側円周方向溝の深さよりも大きくなっていることにより、円周方向溝の深さ方向の段差部が形成されている、コンロッド軸受。 - 前記連通部において、前記後方側円周方向溝の深さが、前記前方側円周方向溝の深さの0.2〜0.9倍である、請求項1に記載されたコンロッド軸受。
- 前記連通部において、前記前方側円周方向溝の深さと前記後方側円周方向溝の深さと前記軸線方向溝の深さとが、次の関係式:
前方側円周方向溝の深さ>軸線方向溝の深さ>後方側円周方向溝の深さ
を満たす、請求項1または請求項2に記載されたコンロッド軸受。 - 前記連通部において、前記コンロッド軸受の円周方向から見た前記前方側円周方向溝の溝断面積が、前記コンロッド軸受の軸線方向から見た前記軸線方向溝の溝断面積より大きくなっている、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載されたコンロッド軸受。
- 前記連通部において、前記前方側円周方向溝の溝幅が、前記後方側円周方向溝の溝幅よりも大きくなっていることにより、円周方向溝の溝幅方向の段差部が形成されている、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載されたコンロッド軸受。
- 前記前方側円周方向溝が形成された中心角度が、前記後方側円周方向溝が形成された中心角度よりも大きくなっている、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載されたコンロッド軸受。
- 前記軸線方向溝は、前記前方側円周方向溝が形成された前記前方側円周方向端面の軸受内周面側、または前記後方側円周方向溝が形成された前記後方側円周方向端面の軸受内周面側のうちの少なくとも一方が切除されることにより形成される、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載されたコンロッド軸受。
- 前記前方側円周方向溝の深さは、前記前方側円周方向端面から離れるに従って次第に小さくなっている、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載されたコンロッド軸受。
- 一方の前記半円筒形軸受にのみ、前記前方側円周方向溝が形成されている、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載されたコンロッド軸受。
- 両方の前記半円筒形軸受に、前記前方側円周方向溝が形成されている、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載されたコンロッド軸受。
- 請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載されたコンロッド軸受を含む内燃機関。
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