JP2013056985A - プリプレグの製造方法と繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プリプレグの製造方法は、高強度繊維を繊維基材とするシート加工工程と、繊維基材にプラスチックを含浸させる含浸工程とからなる。シート加工工程は、高強度繊維を湿式抄紙して抄紙シートに加工する抄紙工程と、抄紙シートの高強度繊維をバインダー繊維で結合して繊維基材とする結合工程とからなる。抄紙工程は、熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂からなるバインダー繊維を高強度繊維に加えて分散液に添加し、この分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させてシート状に加工する。結合工程は、抄紙シートを加熱してバインダー繊維を溶融させて高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合する。含浸工程は、繊維基材の隙間に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む状態で含浸させる。
【選択図】なし
Description
(1)炭素繊維を所定の長さ6mmにカットし、湿式抄紙してシート状とし、これを乾燥して炭素繊維基材を製作する。
(2)炭素繊維基材を1枚と、ナイロン樹脂製のフィルム2枚とを、フィルム/炭素繊維基材/フィルムとなるように積層し、250℃の温度で5MPaの圧力を2分間かけて炭素繊維基材にナイロン樹脂を含浸させてプリプレグとする。
繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂シートを積層して加熱する方法は、加熱されると低粘度な液状となる熱硬化性樹脂シートを積層し、これを加熱して繊維の隙間に含浸させるので、低粘度に液化した液状の熱硬化性樹脂をスムーズに繊維の隙間に含浸させてZ軸方向の配向を保持できる。また、未硬化状態にある熱硬化性樹脂をローラーで転写する方法は、未硬化状態にある液状の熱硬化性樹脂を、簡単かつ容易に繊維の微細な隙間の内部に確実に含浸させながらZ軸方向の配向を保持できる。
以上の方法は、分散液を湿式抄紙するメッシュコンベアの網目を大きくしているので、分散液がメッシュコンベアをスムーズに透過して高強度繊維のZ軸方向の配向作用を大きくする。さらに、高強度繊維の先端部をより長く繊維基材表面から突出させて、プリプレグの層間強度をより向上できる。
以上の方法は、分散液を湿式抄紙するメッシュコンベアの網目を大きくしているので、分散液がメッシュコンベアをスムーズに透過して高強度繊維のZ軸方向の配向作用を大きくする。さらに、高強度繊維の先端部をより長く繊維基材表面から突出させて、プリプレグの層間強度をより向上できる。
短繊維の高強度繊維を水に懸濁して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状とし、これを乾燥して抄紙シートを製造する。この高強度繊維として、炭素繊維を使用する。高強度繊維である炭素繊維は、平均繊維長さを0.5mmないし13mmとするものを使用する。ただ、高強度繊維には、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、アラミド繊維、ポリアクリレート繊維、高強力ポリエチレン繊維、高強力ポリビニルアルコール繊維の何れかであって、平均繊維長さを0.5mmないし13mmとするものも使用できる。さらに、高強度繊維には、炭素繊維とポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維とアラミド繊維とポリアクリレート繊維と高強力ポリエチレン繊維と高強力ポリビニルアルコール繊維の複数種を混合したものを使用することもできる。
[実施例1]
以下の工程で実施例1の繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。
(1)プリプレグの製造工程
[シート加工工程]
1.抄紙工程
高強度繊維として、炭素繊維(繊維径7μm、平均繊維長3mm、加重平均密度1.80g/cm3)を70重量部と、
補助繊維として、ポリビニルアルコール繊維(繊度2.0デシテックス、平均繊維長4mm、加重平均密度1.20g/cm3)を20重量部と、
バインダー繊維として、ポリビニルアルコール繊維(繊度1.1デシテックス、平均繊維長3mm、加重平均密度は1.20g/cm3)を10重量部と
からなる組成物を水中に混合分散し、固形分0.1〜3.0%からなる抄紙用スラリーを調製する。
この後、分散剤としてアニオン系ポリアクリル酸ソーダを0.00002重量部を添加後、この分散液を、網目の隙間を0.3mmとするメッシュコンベアの抄紙面に吸引して堆積してシート化し抄紙シートとする。
以上の抄紙工程により、坪量が51g/m2、厚さ0.52mm、密度0.098g/cm3、引張強度を0.7kg/15mmとする抄紙シートが得られた。
抄紙工程で製造された加湿状態の抄紙シートを100℃〜130℃の温度で乾燥し、バインダー繊維を溶融して高強度繊維を交点で結合して繊維基材とする。この状態で、繊維基材は、短繊維の高強度繊維が、X軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向された状態で結合される。
なお、この工程において、抄紙シートに補助繊維として含まれるポリビニルアルコール繊維は、加湿や加熱により溶融される状態ではバインダー繊維として機能して高強度繊維を交点で結合し、溶融されない状態では繊維の状態で残存する。
シート加工工程で製造された繊維基材に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させる。含浸される熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を使用する。エポキシ樹脂は、メチルエチルケトンに希釈して原紙に付着させて熱硬化性樹脂シートとする。希釈濃度は、40重量%とする。メチルエチルケトンを除去する状態で原紙に付着される熱硬化性樹脂の量は80重量%とする。
以上のようにして、製造された熱硬化性樹脂シートを原紙から除去して、繊維基材の表面に積層し、さらに加熱して熱硬化性樹脂シートを溶融させて、未硬化で液状の熱硬化性樹脂を繊維基材の隙間に含浸させる。
これにより、単位面積に対する重量を190.0g/m2とするプリプレグを製造する。
[積層工程]
以上の工程で製造されたプリプレグを15枚積層する。
[加熱加圧処理工程]
プリプレグの積層体を、15kg/cm2、130℃条件下における熱圧処理を行う。これにより、プリプレグの熱硬化性樹脂を硬化させて、複数枚のプリプレグを層間で互いに結合して繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。
以上の工程で製造された繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、単位面積に対する重量が2386.0g/m2、厚さ2.0mm、密度1.19g/cm3であった。
プリプレグの製造工程において、抄紙工程で、炭素繊維に平均繊維長が6mmのものを使用して抄紙シートを製造する以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを製造する。さらに、このプリプレグを使用して繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する工程において、積層するプリプレグの枚数を18枚とする以外は、実施例1と同様にして実施例2の繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。
この繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、単位面積に対する重量が2687.0g/m2、厚さ2.1mm、密度1.19g/cm3であった。
プリプレグの製造工程において、含浸工程で、繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂をフェノール樹脂とし、希釈溶媒をメチルエチルケトンからメタノールにする以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを製造する。さらに、このプリプレグを使用して実施例1と同様にして繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。
この繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、単位面積に対する重量が3045.0g/m2、厚さ2.3mm、密度1.32g/cm3であった。
プリプレグの製造工程において、高強度繊維をバインダー繊維で結合することなく繊維基材を製造する以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを製造する。さらに、このプリプレグを使用して繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する工程において、積層するプリプレグの枚数を16枚とする以外は、実施例1と同様にして比較例1の繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。
この繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、単位面積に対する重量が3774.0g/m2、厚さ2.2mm、密度2.32g/cm3であった。
Claims (19)
- 短繊維の高強度繊維をシート状としてなる繊維基材にプラスチックを含浸してなるプリプレグの製造方法であって、
前記高強度繊維を繊維基材とするシート加工工程と、
このシート加工工程で得られた繊維基材にプラスチックを含浸させる含浸工程とからなり、
前記シート加工工程は、高強度繊維を湿式抄紙してシート状の抄紙シートに加工する抄紙工程と、この抄紙工程で得られる抄紙シートの高強度繊維をバインダー繊維で結合して繊維基材とする結合工程とからなり、
前記抄紙工程は、前記結合工程で加熱溶融されて高強度繊維を結合する熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂からなるバインダー繊維を、100重量部の高強度繊維に対して3重量部ないし30重量部加えて分散液に添加すると共に、高強度繊維とバインダー繊維の添加された分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させ堆積してシート状に加工し、
前記結合工程は、抄紙工程で得られる抄紙シートを加熱して、抄紙シートに含まれるバインダー繊維を溶融させてバインダー繊維の熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂で高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合し、
さらに、前記含浸工程は、前記繊維基材の隙間に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む状態で含浸させることを特徴とするプリプレグの製造方法。 - 前記含浸工程が、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂シートを積層して加熱し、熱硬化性樹脂シートを溶融させて未硬化状態にある熱硬化性樹脂を繊維基材の隙間に含浸させ、あるいは、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂をローラーで転写して繊維基材の隙間に含浸させる請求項1に記載されるプリプレグの製造方法。
- 前記高強度繊維の含有量を10重量%ないし50重量%とし、かつ前記高強度繊維の平均繊維長さを0.5mmないし13mmとする請求項1または2に記載されるプリプレグの製造方法。
- 前記メッシュコンベアの網目の隙間が0.01mmないし3mmである請求項1ないし3のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
- 前記バインダー繊維に、前記熱硬化性樹脂を硬化させる温度よりも軟化温度の高い熱可塑性樹脂繊維を使用する請求項1ないし4のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
- 前期バインダー繊維が、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリイミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチルビニルアルコール繊維のいずれか又はこれ等を複数種含む請求項1ないし5のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法
- 前記高強度繊維が炭素繊維である請求項1ないし6のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
- 前記高強度繊維が、炭素繊維と、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、アラミド繊維と、ポリアクリレート繊維と、高強力ポリエチレン繊維と、高強力ポリビニルアルコール繊維の何れか又はこれ等を複数種含む請求項1ないし7のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂である請求項1ないし8のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の何れかである請求項1ないし9のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
- 短繊維の高強度繊維をシート状としてなる繊維基材にプラスチックを含浸してなる複数のプリプレグを積層し、これを加熱してプリプレグの熱硬化性樹脂を硬化させる繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法であって、
前記プリプレグの製造方法が、短繊維の高強度繊維をシート状としてなる繊維基材にプラスチックを含浸させる製造方法であって、
前記高強度繊維を繊維基材とするシート加工工程と、
このシート加工工程で得られた繊維基材にプラスチックを含浸させる含浸工程とからなり、
前記シート加工工程は、高強度繊維を湿式抄紙してシート状の抄紙シートに加工する抄紙工程と、この抄紙工程で得られる抄紙シートの高強度繊維をバインダー繊維で結合して繊維基材とする結合工程とからなり、
前記抄紙工程は、前記結合工程で加熱溶融されて高強度繊維を結合する熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂からなるバインダー繊維を、100重量部の高強度繊維に対して3重量部ないし30重量部加えて分散液に添加すると共に、高強度繊維とバインダー繊維の添加された分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させ堆積してシート状に加工し、
前記結合工程は、抄紙工程で得られる抄紙シートを加熱して、抄紙シートに含まれるバインダー繊維を溶融させてバインダー繊維の熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂で高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合し、
さらに、前記含浸工程は、前記繊維基材の隙間に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む状態で含浸させることを特徴とする繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法 - 前記含浸工程が、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂シートを積層して加熱し、熱硬化性樹脂シートを溶融させて未硬化状態にある熱硬化性樹脂を繊維基材の隙間に含浸させ、あるいは、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂をローラーで転写して繊維基材の隙間に含浸させる請求項11に記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
- 前記高強度繊維の含有量を10重量%ないし50重量%とし、かつ前記高強度繊維の平均繊維長さを0.5mmなしい13mmとする請求項11または12に記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
- 前記メッシュコンベアの網目の隙間が0.01mmないし3mmである請求項11ないし13のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法
- 前記バインダー繊維に、前記熱硬化性樹脂を硬化させる温度よりも軟化温度の高い熱可塑性樹脂繊維を使用する請求項11ないし14のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
- 前記高強度繊維が炭素繊維である請求項11ないし15のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
- 前記高強度繊維が炭素繊維と、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維と、アラミド繊維と、ポリアクリレート繊維と、高強力ポリエチレン繊維と、高強力ポリビニルアルコール繊維の何れか又はこれ等を複数種含む請求項11ないし16のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂である請求項11ないし17のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の何れかである請求項11ないし18のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
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