JP2013053993A - 疲労強度測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】疲労試験を行う際の適切な試験条件を短時間かつ低コストで求めることができ、疲労試験時に試験片が接触端部で破壊してしまうことを防止可能な疲労強度測定方法を提供する。
【解決手段】予め、前記試験片の解析モデルを作成すると共に、その解析モデルを用いて種々の試験条件の下で有限要素法による解析を行い、前記評価部での最大主応力と最大主ひずみの積が、前記試験片の前記チャックに把持された部分と把持されない部分の境界部分である接触端部での最大主応力と最大主ひずみの積よりも大きくなる試験条件を抽出しておき、当該抽出した試験条件で前記疲労試験を行い、その試験結果に基づき、前記試験片が前記評価部で破損する際の疲労強度を測定する。
【選択図】図1
【解決手段】予め、前記試験片の解析モデルを作成すると共に、その解析モデルを用いて種々の試験条件の下で有限要素法による解析を行い、前記評価部での最大主応力と最大主ひずみの積が、前記試験片の前記チャックに把持された部分と把持されない部分の境界部分である接触端部での最大主応力と最大主ひずみの積よりも大きくなる試験条件を抽出しておき、当該抽出した試験条件で前記疲労試験を行い、その試験結果に基づき、前記試験片が前記評価部で破損する際の疲労強度を測定する。
【選択図】図1
Description
本発明は、疲労強度測定方法に関するものである。
従来より、試験片の両端部を試験装置のチャックに把持させ、試験片に繰返し負荷を付与する疲労試験(材料試験)を行い、その試験結果に基づき、疲労強度(材料強度)を測定することが行われている。
疲労試験では、試験片がその中央部に形成された評価部で破壊される際の疲労強度を測定する。つまり、疲労試験を行う際は、評価部(試験片中央部)での破損を目的とする。
しかし、上述のようなチャックを用いた試験装置では、試験片のチャックに把持された部分と把持されない部分の境界部分である接触端部にて局所的に高い応力が発生し、その部位を起点として破壊が発生してしまう場合があった。
試験片が接触端部で破壊すると、評価部での疲労強度の評価を行うことは当然できず、当該疲労試験は無駄になってしまう。このような無駄をなくすためにも、予め、接触端部で破壊が発生しない適切な試験条件を求めておくことが望ましい。
特許文献1,2では、接触端部近傍での発生応力をひずみゲージにより測定し、接触端部を有する構造体の強度評価を行う方法が開示されている。特許文献1,2により接触端部の強度評価を行い、評価部での強度と比較することにより、接触端部で破壊が発生せず、評価部で破壊が発生する適切な試験条件を求めることができる。
しかしながら、上述の特許文献1,2のように局所的に発生する接触端部の応力を計測することは、非常に困難である。
また、適切な試験条件を見つけ出すためには、条件を変更して試験を繰り返し行う必要があるが、上述の特許文献1,2の方法では、1つの条件で試験をするだけでも日数がかかってしまい、さらに試験点数を増やすとなると、莫大な時間とコストがかかってしまうという問題がある。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、疲労試験を行う際の適切な試験条件を短時間かつ低コストで求めることができ、疲労試験時に試験片が接触端部で破壊してしまうことを防止可能な疲労強度測定方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、試験片の両端部を試験装置のチャックに把持させ、前記試験片に繰返し負荷を付与する疲労試験を行い、その試験結果に基づき、前記試験片がその中央部に形成された評価部で破損する際の疲労強度を測定する疲労強度測定方法であって、予め、前記試験片の解析モデルを作成すると共に、その解析モデルを用いて種々の試験条件の下で有限要素法による解析を行い、前記評価部での最大主応力と最大主ひずみの積が、前記試験片の前記チャックに把持された部分と把持されない部分の境界部分である接触端部での最大主応力と最大主ひずみの積よりも大きくなる試験条件を抽出しておき、当該抽出した試験条件で前記疲労試験を行い、その試験結果に基づき、前記試験片が前記評価部で破損する際の疲労強度を測定する疲労強度測定方法である。
前記有限要素法による解析では、前記試験片に用いる材料の材料データと前記試験条件とを基に、弾塑性解析による応力・ひずみ計算を行い、前記評価部と前記接触端部それぞれの最大主応力と最大主ひずみを算出するとよい。
前記試験条件として、前記試験片の試験片形状と、前記チャックに前記試験片を把持させる際の負荷条件と、を用いるとよい。
本発明によれば、疲労試験を行う際の適切な試験条件を短時間かつ低コストで求めることができ、疲労試験時に試験片が接触端部で破壊してしまうことを防止可能な疲労強度測定方法を提供できる。
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
まず、本実施の形態で疲労試験で用いる試験片とチャックについて説明しておく。
図1に示すように、疲労試験で用いる試験片1は、中空円筒の棒状に形成されており、その軸方向の中央部には、薄肉の評価部2が形成されている。また、試験片1の両端部には、評価部2と同じ内径に形成されると共に、評価部2よりも大きい外径に形成された厚肉の把持部3が形成されており、評価部2と把持部3とは、曲面により滑らかに接続されている。把持部3は、疲労試験時に試験装置(図示せず)のチャック5に把持される部分である。
チャック5は、周方向に数個(図示例では3個)に分割されたリング状の治具であり、その中空部6に試験片1の把持部3を挿入した状態で各分割片7を内側(中空部6側)に油圧で押し付けることにより、試験片1の把持部3を把持するように構成されている。図1では、試験片1の一方の把持部3のみをチャック5に固定した場合を示しているが、実際に疲労試験を行う際には、試験片1の両端部(把持部3)をチャック5に把持させて、試験片1に所定の繰返し負荷を付与する。
疲労試験では、複数の試験片1を用い、試験片1に付与する繰返し負荷を変化させつつ、試験片1の評価部2で破壊が発生した際の繰返し数を計測することを繰返し、その試験結果を基にSN線図を作成する。SN線図を作成することで、サイクル数ごとの疲労強度や疲労寿命を測定することができる。
ところで、試験片1の把持部3をチャック5に把持させると、試験片1のチャック5に把持された部分と把持されない部分の境界部分である接触端部4に応力が集中し、評価部2が破壊される前に接触端部4で破壊が発生してしまう場合がある。
このような接触端部4での破壊の発生を防止すべく、本発明の疲労強度測定方法では、予め有限要素法(Finite Element Method)による解析を行い、接触端部4で破壊が発生せず、評価部2で破壊が発生する試験条件を抽出しておき、その抽出した試験条件で疲労試験を実施して疲労強度の測定を行う。
以下、本実施の形態に係る疲労強度測定方法の手順を具体的に説明する。
図2に示すように、本実施の形態に係る疲労強度測定方法では、まず、ステップS1にて、試験片1の解析モデルを作成すると共に、その解析モデルを用いて任意の試験条件の下で有限要素法による解析を行う。
ステップS1の有限要素法による解析では、試験片1に用いる材料の材料データと試験条件とを基に、弾塑性解析による応力・ひずみ計算を行い(ステップS11)、評価部2と接触端部4それぞれの最大主応力σ1と最大主ひずみε1を算出する(ステップS12)。
ステップS11の応力・ひずみ計算を行う際には、材料データとして、試験片1に用いる材料の弾性率、ポアソン比、降伏強さ、弾塑性領域の応力−ひずみ関係、摩擦係数などを入力する。試験条件としては、試験片1の試験片形状と、チャック5に試験片1を把持させる際の負荷条件(チャック油圧量、試験片変形量)を、設定し入力する。
ステップS1で作成する解析モデルの一例を図3に示す。図3に示すように、本実施の形態では、解析時の演算量を低減するために、試験片1の対称性を考慮して、軸方向における1/2で、かつ周方向の1/2のみをモデル化した軸対称モデルを採用した。解析上は円筒状となっているように模擬している。
その後、ステップS2にて、評価部2での最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積が、接触端部4での最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積よりも大きいか判断する。ステップS2でNOと判断された場合、適切な試験条件ではないので、ステップS1に戻る。
ステップS2でYESと判断された場合、つまり、評価部2での最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積が、接触端部4での最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積よりも大きい場合、ステップS3に進み、ステップS11で設定した試験条件で疲労試験を実施する。
なお、図2では手順を簡略化して示しているが、実際には、試験条件を変更しつつステップS1,S2を繰り返して、評価部2での最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積が、接触端部4での最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積よりも大きくなる試験条件を抽出しておき、ステップS3では、その抽出した試験条件で疲労試験を行うことになる。
その後、ステップS4にて、ステップS3の疲労試験の試験結果に基づき疲労強度を測定し、手順を終了する。
図4に、試験条件としてチャック油圧量(チャック油圧)を変化させた際の、評価部2での最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積(図4に◇で示す)と、接触端部4での最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積(図4に◆で示す)と、どの部位で破壊が発生したかという試験結果を併せて示す。図4では、破線で囲まれた領域では評価部2で破壊が発生し、一点鎖線で囲まれた領域では接触端部4で破壊が発生したことを示している。
図4に示すように、接触端部4よりも評価部2の方が最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積が大きいときには評価部2で破壊が発生し、逆に、評価部2よりも接触端部4の方が最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積が大きいときには接触端部4で破壊が発生しており、最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積の大小を比較することにより、破壊が発生する部位を特定できることが分かる。
把持部3の評価部2側の端部をチャック5内に位置させた場合(チャック内に端、図4に○と●で示す)や、試験片1の把持部3の中空部に、把持部3の内径と略同じ外径を有する棒状の中子を挿入した場合(中子付、図4に△と▲で示す)についても同様に試験を行ったが、これらいずれの場合においても、評価部2と接触端部4のうち、最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積が大きい方で破壊が発生することが確認できた。
なお、破壊が発生する部位を判断するパラメータとして、最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積の代わりに、最大主応力σ1のみ、あるいは最大主ひずみε1のみを用いた場合についても同様に実験を行ったが、評価部2よりも接触端部4の方が最大主応力σ1(または最大主ひずみε1)が大きい場合であっても、接触端部4で破壊が発生してしまう場合があり、精度のよい評価を行うことはできなかった。他にも、ミゼスの等価応力や等価ひずみ等をパラメータとして同様の実験を行ったが、精度のよい評価を行うことはできなかった。
以上説明したように、本実施の形態に係る疲労強度測定方法では、予め、試験片1の解析モデルを作成すると共に、その解析モデルを用いて種々の試験条件の下で有限要素法による解析を行い、評価部2での最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積が、接触端部4での最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積よりも大きくなる試験条件を抽出しておき、当該抽出した試験条件で疲労試験を行い、その試験結果に基づき、試験片1が評価部2で破損する際の疲労強度を測定している。
換言すれば、本実施の形態に係る疲労強度測定方法では、予め有限要素法による弾塑性解析を行い、その計算結果から得られる局所領域の最大主応力σ1と最大主ひずみε1の積を用いて接触端部4での破損の有無を判別し、接触端部4での破損が無い条件で疲労試験を行うようにしている。
これにより、従来技術のように、接触端部4での破損を防ぐ試験条件を見出すための試験を行う必要がなくなり、試験数を劇的に減らすことができ、時間とコストを大幅に削減することが可能となる。
つまり、本発明によれば、疲労試験を行う際の適切な試験条件を短時間かつ低コストで求めることが可能であり、疲労試験時に試験片1が接触端部4で破壊してしまうことを防止し、無駄な疲労試験を無くすことが可能になる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、試験片1をチャック5で把持する場合を説明したが、試験片1を把持する方法は特に限定するものではない。つまり、試験片1をチャック5以外の方法で把持する場合においても、本発明は適用可能である。
1 試験片
2 評価部
3 把持部
4 接触端部
5 チャック
6 中空部(チャック)
7 分割片
2 評価部
3 把持部
4 接触端部
5 チャック
6 中空部(チャック)
7 分割片
Claims (3)
- 試験片の両端部を試験装置のチャックに把持させ、前記試験片に繰返し負荷を付与する疲労試験を行い、その試験結果に基づき、前記試験片がその中央部に形成された評価部で破損する際の疲労強度を測定する疲労強度測定方法であって、
予め、前記試験片の解析モデルを作成すると共に、その解析モデルを用いて種々の試験条件の下で有限要素法による解析を行い、前記評価部での最大主応力と最大主ひずみの積が、前記試験片の前記チャックに把持された部分と把持されない部分の境界部分である接触端部での最大主応力と最大主ひずみの積よりも大きくなる試験条件を抽出しておき、
当該抽出した試験条件で前記疲労試験を行い、その試験結果に基づき、前記試験片が前記評価部で破損する際の疲労強度を測定する
ことを特徴とする疲労強度測定方法。 - 前記有限要素法による解析では、
前記試験片に用いる材料の材料データと前記試験条件とを基に、弾塑性解析による応力・ひずみ計算を行い、前記評価部と前記接触端部それぞれの最大主応力と最大主ひずみを算出する
請求項1記載の疲労強度測定方法。 - 前記試験条件として、前記試験片の試験片形状と、前記チャックに前記試験片を把持させる際の負荷条件と、を用いる
請求項1または2記載の疲労強度測定方法。
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2011
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