JP2013053069A - セメント組成物、それを用いたモルタル又はコンクリート - Google Patents

セメント組成物、それを用いたモルタル又はコンクリート Download PDF

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Abstract

【課題】 セメントのロットや銘柄による減水剤の減水率や流動性が低下するなどの相性問題が解決され、良好な作業性が得られ、分散性を高め、より少ない配合量で高い流動性と強度が得られ、経済的で有利な設計が可能となる、土木・建築構造物や二次製品に使用されるセメント組成物、それを用いたモルタル又はコンクリートを提供する。
【解決手段】 セメント、又は、セメントと、ポゾラン質微粉末及び/又は石膏とである結合材と、ポリカルボン酸塩系減水剤と、シアナミド及び/又はジシアンジアミドとを含有してなるセメント組成物、シアナミド及び/又はジシアンジアミドが、結合材100部に対して、0.01〜1.0部である該セメント組成物、さらに、硫酸カルシウムを除く、無機酸及び/又は有機酸の水溶性のカルシウム塩を併用してなる該セメント組成物、並びに、該セメント組成物、骨材、及び水を配合してなるモルタル又はコンクリートを構成とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、土木・建築構造物及び二次製品に使用されるセメント組成物、それを用いたモルタル又はコンクリートに関する。詳しくは、結合材と、ポリカルボン酸塩系減水剤と、シアナミド及び/又はジシアンジアミドを含有する、流動性と強度を改善したセメント組成物、それを用いたモルタル又はコンクリートである。
近年、ポリカルボン酸塩系減水剤の減水率は飛躍的に向上している。その結果、電気炉によるシリコン合金や金属シリコン製造時に発生するシリカフューム、微粉炭焚き火力発電所から副生するフライアッシュを、20又は10μm以下に分級した分級フライアッシュ、ガス化した石炭を燃焼させる火力発電所から副生する石炭ガス化フライアッシュ、及びその他の球形のポゾラン質微粉末を適量併用することにより、水結合材比を極限まで下げることが可能となり、設計基準強度100〜150N/mm2の、高流動コンクリートによる建築柱や梁等が容易に製造、施工されるようになっているし、金属繊維で補強したモルタルでは、高い曲げ強度と180N/mm2以上の圧縮強度も得られている。さらに、高強度コンクリート製品であるパイルも、従来の設計基準強度80〜85N/mm2に対して、遠心力成形供試体で105〜123N/mm2のものが開発され、日本建築センターの認可が得られるようになっている(特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、ポリカルボン酸塩系減水剤は、使用されるセメントのロットや種類によって、得られる流動性が、顕著に異なるという課題を有する。
即ち、同種のセメントで同一工場のものでも、ロットによって変わり、工場間、メーカー間、セメントの種類でも変化する。そして同一水結合材比で同一軟らかさとした場合は、ポリカルボン酸塩系減水剤の添加量がその都度変化し、実機でスランプやスランプフロー値をコントロールすることは困難であった。また、減水率の限界値も異なるので、得られる水セメント比や水結合材比も異なるという課題もあった。
セメントによって流動性が顕著に異なる理由は、セメントに含まれる硫酸ナトリウムや硫酸カリウムから瞬時に溶解してくる硫酸イオンが、ポリカルボン酸塩系減水剤の吸着を妨害するためといわれ、これを改善するためには硫酸イオンを捕捉してナトリウムやカリウム塩よりも溶性速度の小さい塩を生ずる、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及び鉛の塩化物、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、又は有機酸塩が効果を示すことが知られている(特許文献3参照)。
また、低熱セメントを使用した場合の流動性と初期強度を向上させるために、低熱セメント、ポゾラン質微粉末、水、減水剤、並びに、亜硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、蟻酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、及び酢酸カルシウムの一種以上を含むセメントスラリーも提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、本発明者の実験によれば、硫酸イオンを捕捉してポリカルボン酸塩系減水剤の流動性を高める前記塩類は、ある添加量から急に流動性を向上させるが、それ以上添加しても流動性は向上しなくなり、添加量依存性は小さいものである。
また、複数の前記塩類を併用しても相互作用は全く示されないものである。即ち、ポリカルボン酸塩系減水剤と複数の前記塩類を併用したときの流動性は、例えば、モルタルフロー値が大きくても小さくても一定のフロー値より向上しないので、セメントのロット間等による差は完全には改善されないものである。
同様に、ポゾラン質微粉末のなかにも硫酸アルカリ金属塩を含むものもあり、その多寡とは別に、原料の産地や製造方法・操業条件の違いによって、ポゾラン質微粉末同士の凝集性が異なり分散の程度も異なるので、モルタルやコンクリートの流動性や強度に影響を与えるものである。
また、ポゾラン質微粉末のなかでもシリカフュームは粒子形が球形であり、粒子径も最も小さく、より高流動性を発揮し、かつ、ポゾラン活性も高くて高強度を発現するので、最も重要なポゾラン質微粉末であるが、輸送の観点から造粒して顆粒状にしてあるためにロットや銘柄により分散性が異なる。と同時に世界的に供給がタイトであり、価格も高沸しているので、その分散性を上げ、反応率を高くして使用量を少なくすることも重要な改善点となっている。
石膏類は養生方法に拘わらず高強度を発現することは知られており、石膏とシリカフュームとの組み合わせでは、より高い強度や耐久性が得られることも知られている(特許文献5参照)。
本発明は、セメントや、セメントにポゾラン質微粉末を含んだ結合材により、ポリカルボン酸塩系減水剤を添加したモルタル又はコンクリートの流動性が顕著に変わることや、粒子の分散が不充分で反応率が低下して強度が低下するなどの相性問題を、従来知られていないシアナミドなどと併用することにより、改善するものであり、かつ、ポゾラン質微粉末や石膏等も、より少ない配合量で高い強度を発現させるものである。
特開昭63−008248号公報 特開2001−019527号公報 特開平11−180746号公報 特開2002−037653号公報 特開平03−040947号公報
本発明が解決しようとする課題は、ポリカルボン酸塩系減水剤を使用した場合の、セメントのロットや種類によって得られる流動性が顕著に異なるという課題や、顆粒状の、あるいは凝集し易いポゾラン質微粉末の分散性の違いによって、流動性や強度が変動することを解決するものであり、セメント、又は、セメントとポゾラン質微粉末及び/又は石膏からなる結合材と、ポリカルボン酸塩系減水剤と、シアナミド及び/又はジシアンジアミドとを併用することにより、さらに、無機酸及び/又は有機酸の水溶性のカルシウム塩を併用することにより、より良好な流動性が得られ、より少ないポゾラン質微粉末量や石膏量で、強度発現性も良好となることを知見し、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、結合材と、ポリカルボン酸塩系減水剤と、シアナミド及び/又はジシアンジアミドとを含有してなり、結合材が、セメント、又は、セメントと、ポゾラン質微粉末及び/又は石膏とであり、ポリカルボン酸塩系減水剤が、結合材100部に対して、0.5〜6.0部であり、シアナミド及び/又はジシアンジアミドが、結合材100部に対して、0.01〜1.0部である、セメントのロットや銘柄が異なっていても、ポリカルボン酸塩系減水剤の減水率や流動性が低下する相性問題が解決され、良好な作業性が得られるセメント組成物であり、ポゾラン質微粉末が、セメント100部に対して、40部以下である該セメント組成物であり、石膏が、セメント100部に対して、6部以下である該セメント組成物であり、さらに、硫酸カルシウムを除く、無機酸及び/又は有機酸の水溶性のカルシウム塩を併用してなる該セメント組成物であり、該セメント組成物、骨材、及び水を配合してなるモルタル又はコンクリートである。
本発明のモルタル又はコンクリートを使用することによって、セメントのロットや銘柄により、ポリカルボン酸塩系減水剤の減水率や流動性が低下するなどの相性問題が解決され、良好な作業性が得られる。また、ポゾラン質微粉末等の凝集に対しても分散性を高め、より少ない配合量で高い流動性と強度が得られる。土木建築構造物やコンクリート二次製品を製造する上で、100N/mm2以上の超高強度が容易に得られるので経済的で有利な設計が可能となる。
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
本発明は、結合材と、ポリカルボン酸塩系減水剤と、シアナミド及び/又はジシアンジアミドとを含有してなるセメント組成物である。
結合材としては、セメント、又は、セメントと、ポゾラン質微粉末及び/又は石膏からなるものが挙げられる。
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、中庸熱、低熱、白色、及び耐硫酸塩等のポルトランドセメント、フライアッシュセメントや高炉スラグセメントなどの混合セメントが挙げられる。このうち、流動性の観点からは、混合セメントや、低熱、中庸熱、及び耐硫酸塩等のポルトランドセメントの使用が好ましく、初期強度の観点からは、普通、早強、超早強、及び中庸熱等のポルトランドセメントや、混合セメントの使用が好ましい。したがって、それぞれのセメントの特性を利用して任意に混合したセメントでも良いし、各ポルトランドセメントに、フライアッシュセメント用の分級していないフライアッシュや高炉スラグセメント用の高炉スラグ粉末を任意に配合したものでも良い。
本発明の結合材として使用されるポゾラン質微粉末(以下、ポゾラン物質という)としては、流動性を向上させる、粒子形が球状である、電気炉によるシリコン合金や金属シリコン製造時に発生するシリカフュームや、ジルコニア起源のシリカフューム、微粉炭焚き火力発電所から副生するフライアッシュを分級したもの、ガス化した石炭を燃焼させる火力発電所から副生する石炭ガス化フライアッシュ、溶融シリカ微粉末、及び合成したエアロジルなどが挙げられ、そのうちの一種又は二種以上が使用可能である。その他に、流動性は向上しないが、粘土鉱物を熱処理した白土、メタカオリンなどの微粉末、非晶質SiO2が主成分のケイ化木の焼却灰、ケイソウ土、及びオパール質シリカ粉末等は強度を高めることから使用可能である。なお、ポゾラン物質のなかでもシリカフュームは流動性の向上と強度の両方を改善するので最も好ましいものである。
ポゾラン物質の使用量は、セメント100部に対して、40部以下が好ましく、1〜35部がより好ましく、4〜30部が最も好ましい。40部を超えて配合しても流動性の改善や強度の増大が頭打ちとなるおそれがある。
なお、分級フライアッシュ、石炭ガス化フライアッシュ、及び溶融シリカ微粉末等は流動性の向上等は期待できるが、シリカフュームのような強度的効果は期待できない。しかしながら、シリカフュームと、分級フライアッシュや溶融シリカなどの球形ポゾラン物微粉末との少量の併用は、より流動性を助長するだけでなく、相乗的に強度も高めるので特に好ましい。シリカフュームと併用する分級フライアッシュや溶融シリカなどの球形ポゾラン物微粉末の使用量は、セメント100部に対して、2〜10部が好ましい。
石膏は、アルミナ成分と反応して、空隙占有率が高く、高い結晶強度を有するエトリンガイトを生成して高強度化を促すものである。具体的には、II型無水石膏、二水石膏、半水石膏、及びIII型無水石膏が挙げられ、そのうち、II無水石膏や二水石膏の使用が好ましく、II型無水石膏の使用が最も好ましい。
石膏は、無水物換算で、セメント100部に対して、多くても6部が好ましく、0.5〜4部がより好ましく、1〜3部が最も好ましい。6部を超えて配合しても強度の増加は頭打ちとなるおそれがある。
なお、石膏は、アルカリ金属の硫酸塩より溶解速度が遅いため、ポリカルボン酸塩系減水剤を使用したモルタルやコンクリートの流動性に影響を与えるものではない。
また、石膏の粉末度は特に限定されるものではなく、普通ポルトランドセメントと同等以上であれば使用可能である。
本発明のポリカルボン酸塩系減水剤(以下、PC減水剤という)とは、通常、高性能AE減水剤と呼称されるものであり、不飽和カルボン酸モノマーを一成分として含む共重合体又はその塩であり、例えば、ポリアルキレングリコールモノアクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールモノメタクリル酸エステル、無水マレイン酸、及びスチレンの共重合体、アクリル酸やメタクリル酸塩の共重合体、並びに、前記単量体と共重合可能な単量体から導かれた共重合体等を挙げることができる。
ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤、及びメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤は、アルカリ金属の硫酸塩が共存すると逆に流動性は向上するため、本発明では好ましくない。
PC減水剤を具体的に示すと、BASFポゾリス(株)社商品名「レオビルドSP8SV/8RV」、「レオビルドSP8HV」、及び「レオビルドSP8HU」など、日本シーカ(株)社商品名「シーカメント1100NT」、「シーカメント1100NTR」など、竹本油脂(株)社商品名「チュポールHP」、「チュポールSR」、「チュポールSSP−104」、及び「チュポールNV−G」など、グレースケミカルズ(株)社商品名「スーパー100」、「スーパー300」、及び「スーパー1000」など、花王(株)社商品名「マィティ21WH」、「マィティ21LV」、「マィティ21VS」、「マィティ21HF」、「マィティ21HP」、「マィティ3000S」、及び「マィティ3000H」など、(株)フローリック社商品名「SF500S」、「SF500R」、「SF500H」、及び「SF500SK」など、その他、高強度用、超高強度用として市販されているものがある。
PC減水剤の使用量は、結合材100部に対して、0.5〜6.0部が好ましい。0.5部未満ではポゾラン物質とシアナミドなどを併用しても水結合材比は30%以下にはならなくなるおそれがあり、6.0部以上配合しても減水率は頭打ちとなる。
本発明では、セメントやポゾラン物質の分散性を高めて、流動性や強度を改善するためにシアナミド及び/又はジシアンジアミドを配合する。
シアナミド及び/又はジシアンジアミド(以下、CN化合物という)の使用量は、結合材100部に対して、シアナミドの場合は、0.01〜0.5部が好ましく、0.03〜0.2部がより好ましく、ジシアンジアミドの場合は、0.05〜1.0部が好ましく、0.1〜0.8部がより好ましい。そして、シアナミドの方が少量で顕著な流動性や強度の改善効果を示す。CN化合物の使用量が、この範囲未満では流動性や強度を改善する効果は小さくなるおそれがあり、この範囲を超えて配合しても効果は頭打ちとなる。
本発明では、流動性をより向上させる面から、硫酸カルシウムを除く、無機酸及び/又は有機酸の水溶性のカルシウム塩(以下、水溶性カルシウム塩という)を配合することが可能である。
水溶性カルシウム塩としては、酢酸、蟻酸、硝酸、亜硝酸、チオ硫酸、及びチオシアン酸のカルシウム塩や、カルシウムシアナミドが挙げられる。
水溶性カルシウム塩の使用量は、結合材100部に対して、無水物換算で0.05〜0.8部が好ましく、0.1〜0.6部がより好ましい。0.05部未満では流動性を向上させる作用が小さくなるおそれがあり、0.8部を超えて配合すると流動性が低下するおそれがある。
本発明は、結合材と、PC減水剤と、CN化合物とを含有するセメント組成物であり、必要によって水溶性カルシウム塩を含有するセメント組成物であり、該セメント組成物に適量の水と骨材とを配合するモルタル又はコンクリートである。
ここで使用する水の量は、水結合材比で30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、20%以下が最も好ましい。30%を超えて水量が多くなると、PC減水剤とシアナミドなどにより、結合材の分散性を高めると、ペースト粘度が下がり過ぎて、モルタル又はコンクリート中でペーストだけが分離傾向となるおそれがある。
モルタル又はコンクリートの製造に使用する骨材としては、通常の細骨材や粗骨材があり、任意量が配合されるが、モルタルの場合の細骨材量は、結合材100部に対して、30〜200部が好ましい。
また、コンクリートの場合の粗骨材量は、高流動コンクリートでは500〜1,000kg/m3が好ましく、遠心力成形用コンクリートでは900〜1,400kg/m3が好ましい。
本発明のモルタル又はコンクリートを練り混ぜる方法は特に限定されるものではなく、常法で良く、セメント、ポゾラン物質及び/又は石膏、並びに、CN化合物、さらに、必要によって水溶性カルシウム塩を、あらかじめ混合したセメント組成物と、骨材と、PC減水剤と、水とを一緒にミキサに投入して練り混ぜる方法、ポゾラン物質及び/又は石膏、並びに、CN化合物、さらに、必要によって水溶性カルシウム塩を、あらかじめ混合して混和材としたものを、セメント、骨材、PC減水剤、及び水と一緒にミキサに投入して練り混ぜる方法も可能である。さらには、全材料を、それぞれ単独でミキサに投入して練り混ぜる方法も可能である。また、PC減水剤、CN化合物、及び水溶性カルシウム塩等の水溶性成分は練り混ぜ水に、あらかじめ溶解して投入しても良い。
さらに、PC減水剤を練り混ぜ水に、あらかじめ溶解して他の材料と一緒に練り混ぜる同時添加方式でも、PC減水剤のみを最後に添加する後添加方式でも良い。
なお、本発明のモルタル又はコンクリートを製造する際に、自己収縮を低減するために収縮低減剤及び/又は膨張材を適量併用することができ、曲げ強度や靱性を高めるために有機繊維、金属繊維、ガラス繊維、及びその他の補強用繊維が利用できる。
また、本発明のモルタル又はコンクリートは蒸気養生しても、しなくても良いし、オートクレーブ養生も可能であり、打設した状態で現場養生しても良く、養生方法には制限されない。
成型方法も、高流動による流し込み、適切なスランプによる振動成形、遠心力成形、硬練りとした振動加圧成型等も可能である。
発明を実施するための最良の形態は、普通ポルトランドセメント又は混合セメント100部に対して、シリカフューム4〜30部、シリカフューム以外のポゾラン物質10部以下、II型無水石膏1〜3部とし、結合材100部に対して、PC減水剤を1.6〜5.0部、及びシアナミド0.03〜0.2部配合し、水結合材比を20%以下として、モルタル又はコンクリートを練り混ぜる。この際、細骨材の量は、結合材100部に対して、細骨材30〜100部、粗骨材量は、高流動コンクリートでは600〜900kg/m3、遠心力成形用コンクリートででは1,000〜1,350kg/m3程度とすることにより、作業性が良好で高強度のモルタル又はコンクリートが得られる。
以下、本発明の実験例に基づいて、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実験例1
結合材としてセメントを使用し、結合材/細骨材比=0.8、水結合材比20%、PC減水剤を結合材100部に対して2.5部として、表1に示すセメントとCN化合物を使用してモルタルを1リットル練り混ぜた。
モルタルの練り混ぜは、セメントと細骨材を30秒間空練りした後、PC減水剤とCN化合物は、水に溶解して練り混ぜ水として、一括添加して、ミキサで練り混ぜた。
その後、モルタルのフロー値を測定し、成形した供試体を翌日脱型して、蒸気養生を行った。蒸気養生は、昇温速度20℃/hrで75℃まで上げて、そのまま20時間保持してから蒸気バルブを止めた。冷却後、圧縮強度を測定した。結果を表1に併記する。
<使用材料>
セメントA:A工場の普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm3
セメントB:B工場の普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm3
セメントC:C工場の普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm3
セメントD:D工場の普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm3
セメントE:セメントA85部とフライアッシュ15部の混合品、密度3.03g/cm3
セメントF:セメントA85部と粉末度4,500cm2/gの高炉スラグ粉末15部の混合品、密度3.13g/cm3
PC減水剤:ポリカルボン酸系減水剤、市販品
CN化合物a:シアナミド、市販品、固形分濃度13%、固形分換算で添加、水分は練り混ぜ水とする
細骨材 :新潟県姫川産川砂、5mm下、密度2.62g/cm3
<測定方法>
フロー値 :JIS R 5201に準じ、抜き上げたときのフロー値を測定した。ただし、フローテーブルの上に50×50×2cmのアクリルガラス板を乗せてその上で行った。測定のタイミングはフローコーンを抜いてから3分後とした。
圧縮強度 :JIS R 5201に準じた。ただし、供試体寸法は、φ5×10cmとし、フロー値が250mm以下のモルタルはJIS R 5201のモルタル成型用の振動台で2層成形として、各層毎に振動を60秒間かけた。フロー値が250mmを超えるモルタルは流し込みで成形した。
Figure 2013053069
使用するセメントによって、得られるフロー値は大きく変化するが、CN化合物を添加すると、フロー値が向上するだけでなく、セメントによるフロー値の差が少なくなり、高く、一定したフロー値が得られる(実験No.1- 1〜実験No.1- 6の比較例と、実験No.1-14〜実験No.1-18の実施例)。
シアナミドの添加量を多くするとフロー値は大きくなる。特に、セメント100部に対して、0.01部から効果が大きくなり、0.03部からより顕著となる。また、0.5部を超えて添加してもフロー値の増大効果は頭打ちとなることが示される(実験No.1- 7〜実験No.1-13)。
実験例2
表2に示すCN化合物を使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
<使用材料>
CN化合物b:ジシアンジアミド、一級試薬
Figure 2013053069
ジシアンジアミドを使用した場合は、セメント100部に対して、0.1部から、より顕著な効果が示され、0.8部を超えて添加してもそれ以上のフロー値は大きくならない傾向が示される(実験No.2- 1〜No.2- 7)。
シアナミドとジシアンジアミドの併用では、同様にフロー値が大きくなる(実験No.2- 8〜No.2-11)。
実験例3
結合材として、セメントAと、セメント100部に対して、表3に示すポゾラン物質を使用し、結合材100部に対して、表3に示すCN化合物と、PC減水剤2.0部とを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
なお、CN化合物が0部のときは、PC減水剤を2.5部とした。
<使用材料>
ポゾラン物質ア:シリカフューム、エルケム社製、顆粒状、密度2.44g/cm3
ポゾラン物質イ:20μ以下に分級した分級フライアッシュ、密度2.44g/cm3
ポゾラン物質ウ:メタカオリン、カオリンを600℃で熱処理して粉砕、粉末度9500cm2/g、密度2.40g/cm3
Figure 2013053069
実施例において、ポゾラン物質のなかでもシリカフュームは、シアナミドと併用することによって、フロー値も強度も、1部の添加量から大きくなり、添加量が多くなるほどいずれも順次高くなるが、40部を超えて添加すると、フロー値は小さくなる傾向が示される。これは、シリカフュームが多すぎるとモルタルがプラスチック性となるためであり、モルタルは軽くて軟らかいが、流動性が損なわれるためである(実験No.3- 6〜実験No.3-13)。
また、その他のポゾラン物質の場合も、シアナミドと併用すると、フロー値は向上し、強度も高くなることも示される(実験No.3- 3、実験No.3- 4、実験No.3-14、及び実験No.3-15)。
なお、シアナミドの流動性を高める効果が強度に対しても良い影響を与える理由は、セメントやポゾラン物質のフロック構造や凝集を解消して反応性を高めるためと思われ、少ない配合量で同様の強度が得られる。
実験例4
結合材として、セメントAと、セメント100部に対して、表4に示すポゾラン物質と石膏を使用し、結合材100部に対して、CN化合物a0.06部と、PC減水剤2.0部とを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に示す。
<使用材料>
石膏 :II型無水石膏、天然産、粉末度5,000cm2/g、密度2.82g/cm3
Figure 2013053069
実施例において、石膏の添加量を多くしてもフロー値に与える影響は小さいが、強度は0.5部から高くなり、1.0部で顕著となる。また、6部では強度の伸びはなく、石膏は6部以下が好ましく、1.0〜3.0部がより好ましいことが示される(実験No.4- 2〜実験No.4- 7)。
ポゾラン物質と石膏の併用は、良好な流動性と高い強度を発現させる(実験No.4- 9〜実験No.4-14)。
また、球状のポゾラン物質同士の併用は、より流動性を向上させ、強度も高くなることも示される(実験No.4-15〜実験No.4-17)。
なお、CN化合物を使用しないで、石膏のみを使用した比較例の実験No.4- 1と、CN化合物を併用した実施例の実験No.4- 4を比較すると、CN化合物を併用した実施例の方が、フロー値は向上し、圧縮強度も10N/mm2強の増進が認められる。
また、CN化合物を使用しないで、ポゾラン物質と石膏とを使用した比較例の実験No.4- 8と、CN化合物を併用した実施例の実験No.4-12を比較すると、CN化合物、ポゾラン物質、及び石膏を併用すると、フロー値の増大と共に、圧縮強度が25N/mm2も高くなることがわかる。
実験例5
結合材として、セメントAを使用し、表5に示すCN化合物と水溶性カルシウム塩を使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
<使用材料>
水溶性カルシウム塩α:酢酸カルシウム、一級試薬、無水物換算で添加
水溶性カルシウム塩β:蟻酸カルシウム、一級試薬
水溶性カルシウム塩γ:カルシウムシアナミド、カルシウムシアナミド含有量70%の石灰窒素、有効成分量換算で添加
Figure 2013053069
表5より、シアナミドを併用しない場合、水溶性カルシウム塩の添加量依存性が小さいことと、組み合わせてもフロー値の増大効果は改善されないことが示される(実験No.5- 1〜実験No.5- 6)。
シアナミドと水溶性カルシウム塩の組み合わせでは、水溶性カルシウム塩0.1部から相乗的効果が示されるようになり、0.8部を超えて添加してもそれ以上、フロー値は大きくならない傾向が示される(実験No.5- 7〜No.5-12)。
また、ジシアンジアミドの場合も、水溶性カルシウム塩との組み合わせでは、フロー値の増加傾向が認められる(実験No.5-16〜No.5-19)。
なお、CN化合物を使用しないで、水溶性カルシウム塩同士の併用では、殆どフロー値も圧縮強度も単独添加と変わらず、相乗的効果がないことが示される(実験No.5- 2と実験No.5- 5や実験No.5- 6との比較)。
これに対して、CN化合物を使用すると、水溶性カルシウム塩単独使用と比較して、水溶性カルシウム塩同士を併用すると相乗的効果が明らかである(実験No.5- 9と実験No.5-20〜実験No.5-22)。
実験例6
セメントA100部、ポゾラン物質ア12部、ポゾラン物質イ5部、及び石膏2部からなる結合材100部に対して、表6に示すCN化合物aとPC減水剤を配合し、表6に示す結合材/砂比、水/結合材比としたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表6に示す。
Figure 2013053069
シアナミドなしの比較例では、PC減水剤を6部以上添加しても、水結合材比が14%以下には下がらず、フロー値も上がらず、減水率に限界が示され、流し込み成形ができるような流動性は得られない(実験No.6- 1〜実験No.6- 3)。シアナミドを0.06部添加した実施例では、PC減水剤を減水率が限界となる6部添加しても、流し込み成形ができるような流動性が得られ、結合材/細骨材比を100/30と、細骨材を少なくすると、水結合材比は10%まで下げられる(実験例6- 8)。
また、水結合材比が30%で、結合材/細骨材比を100/200と、細骨材量を多くして、PC減水剤を0.5部と少なくすると、ペーストが軟らかく分離気味となる結果、フロー値としては小さくなる傾向がある(実験No.6-15)。
実験例7
実験例6実験No.6-10の空気量2.5%のモルタル1m3に、表7に示す粗骨材を配合して、遠心力成形用コンクリートを練り混ぜと、同実験No.6-11の空気量2.5%のモルタル1m3に、表7に示す粗骨材を配合して、高流動用コンクリートを各々練り混ぜた。
各々のコンクリートのスランプ・スランプフロー値を測定した後、遠心力成形用コンクリートではφ20×30cmの、高流動コンクリートではφ10×20cmの供試体を成形した。各々の供試体を翌日脱型して、蒸気養生を行った。蒸気養生は、昇温速度20℃/hrで75℃まで上げて、そのまま20時間保持してから蒸気バルブを止めた。冷却後、圧縮強度を測定した。結果を表7に示す。
<使用材料>
粗骨材 :新潟県姫川産砕石、5〜13mm、密度2.64g/cm3
<測定方法>
スランプ・スランプフロー値:コンクリートスランプ又はスランプフローの測定方法、JIS A 1101に準じ、スランプコーンを抜き上げたときの高さをスランプとし、横の広がりをスランプフローとした。測定するタイミングはスランプコーンを抜いてから3分後とした。
圧縮強度 :JIS A 1132、JIS A 1108、及びJIS A 1136 に準じた。ただし、高流動コンクリートの場合の供試体は、単なる流し込みで成形した。遠心力成形用コンクリートの場合は φ20×30Lcmの型枠に15kgのコンクリートを入れ、低速1.5Gで5分、中速I3Gで3分、中速II8Gで5分、高速20Gで4分回転させた。
Figure 2013053069
遠心力成形用コンクリートでは水結合材比が小さいので、脱水はないが内面のペースト層は締まらず、軟らかい状態となった。
単位粗骨材量900kg/m3では内面のペースト層が厚くなりダレが生じ(実験No.7- 1)、1,000kg/m3以上ではダレがなく中空形を保持するが、単位粗骨材量が多くなり過ぎると強度が低下してくる。強度と内面状態から遠心力成形における粗骨材量は1,000〜1,350kg/m3が好ましいことが示される(実験No.7- 2〜実験No.7- 8)。
高流動コンクリートの場合の単位粗骨材量は、500kg/m3未満では強度が低下する傾向が示され、1,000kg/m3以上ではスランプフローを測定したときに粗骨材が中央に集まって分離傾向となり、強度も低下する傾向となる。したがって、高流動コンクリートの場合の粗骨材量は強度と材料分離抵抗性から600〜900kg/m3がより好ましい(実験No.7- 9〜実験No.7-14)。
このモルタル又はコンクリートは、土木・建築構造物及び二次製品、例えば、超高強度の建築柱、梁、桁、コンクリートパイル、ポール、推進管、ボックスカルバート、及び埋設型枠等に使用される。

Claims (5)

  1. 結合材と、ポリカルボン酸塩系減水剤と、シアナミド及び/又はジシアンジアミドとを含有してなり、結合材が、セメント、又は、セメントと、ポゾラン質微粉末及び/又は石膏とであり、ポリカルボン酸塩系減水剤が、結合材100部に対して、0.5〜6.0部であり、シアナミド及び/又はジシアンジアミドが、結合材100部に対して、0.01〜1.0部である、セメントのロットや銘柄が異なっていても、ポリカルボン酸塩系減水剤の減水率や流動性が低下する相性問題が解決され、良好な作業性が得られるセメント組成物。
  2. ポゾラン質微粉末が、セメント100部に対して、40部以下である請求項1に記載のセメント組成物。
  3. 石膏が、セメント100部に対して、6部以下である請求項1又は請求項2に記載のセメント組成物。
  4. さらに、硫酸カルシウムを除く、無機酸及び/又は有機酸の水溶性のカルシウム塩を併用してなる請求項1〜請求項のうちのいずれか1項に記載のセメント組成物。
  5. 請求項1〜請求項のうちのいずれか1項に記載のセメント組成物、骨材、及び水を配合してなるモルタル又はコンクリート。
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