JP2013045670A - 燃料電池装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アニオン交換型燃料電池において、単純な構造で、酸化剤ガスから二酸化炭素を除去し、結果として高い電池出力を得ることができる新たな燃料電池装置を提供すること。
【解決手段】 陰イオン交換膜を用いる燃料電池セルから構成される燃料電池装置において、該燃料電池セルと同様の基本構造を備えたプレ燃料電池セルを別に設け、係るプレ燃料電池セルの酸化剤ガス供給管に二酸化炭素含有酸化剤ガスが供給され、他方、プレ燃料電池セルのカソード反応処理ガス排出管は燃料電池セルの酸化剤ガス供給管に繋がった構造とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、陰イオン交換膜を用いる燃料電池セルから構成される燃料電池装置に関する。
燃料電池は、化学エネルギーを電力として取り出す発電システムである。その動作機構や用いる材料からアルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型などに分類され、各種の形式の燃料電池が提案、検討されている。これらの中でも、アルカリ型燃料電池や固体高分子型燃料電池は、作動温度が200℃以下の低温であるため、携帯電源のほかにも定置型電源や車載用途などの中小型低温作動型燃料電池としての使用が期待されている。
固体高分子型燃料電池は、イオン交換樹脂等の固体高分子を電解質として用いた燃料電池であり、動作温度が比較的低いという特徴を有する。該固体高分子型燃料電池は、図3に示すように、それぞれ供給管9,11または排出管10,12を介して外部と連通する燃料流通孔2および酸化剤ガス流通孔3を有する電池隔壁1内の空間を、固体高分子電解質膜6の両面にそれぞれアノード4およびカソード5が接合した接合体で仕切って、燃料流通孔2を通して外部と連通するアノード室7、および酸化剤ガス流通孔3を通して外部と連通するカソード室8が形成された基本構造をしている。そして、このような基本構造の固体高分子型燃料電池では、前記アノード室7に燃料供給管9より水素ガスあるいはメタノール等の液体からなる燃料を供給すると共に、カソード室8に酸化剤ガス供給管11より酸化剤となる酸素や空気等の酸素含有ガスを供給し、更に両電極間に外部負荷回路を接続することにより、次のような機構により電気エネルギーを発生させる。
固体高分子電解質膜6として陽イオン交換膜を使用した場合には、アノード4において該電極内に含まれる触媒と燃料とが接触することにより生成したプロトン(水素イオン)が固体高分子電解質膜6内を伝導してカソード室8に移動し、カソード5で酸化剤ガス中の酸素と反応して水を生成する。一方、アノード4においてプロトンと同時に生成した電子は、外部負荷回路11を通じてカソード5へと移動するので上記反応のエネルギーを電気エネルギーとして利用することができる。
このような固体電解質膜として陽イオン交換膜を使用した固体高分子型燃料電池(以下陽イオン交換膜型燃料電池と呼ぶ)においては、反応場が強酸性のため、電極中の触媒として高価な貴金属触媒しか使用できない。
そこで、陽イオン交換膜に替えて陰イオン交換膜を用いることが検討されている(このような燃料電池を、「陰イオン交換膜型燃料電池」と呼ぶ))。陰イオン交換膜型燃料電池では反応場は塩基性であるため、貴金属以外の触媒にも使用の可能性が広がる。しかし、この場合、固体高分子型燃料電池において、電気エネルギーが発生するための機構は、次のような固体高分子電解質膜6内を移動するイオン種が異なるものになる。すなわち、アノード室に水素あるいはメタノール等を供給し、カソード室に酸素および水を供給することにより、カソード5において該電極内に含まれる触媒と該酸素および水とが接触して水酸イオンが生成する。この水酸イオンは、上記陰イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜6内を伝導してアノード室7に移動し、アノード4で燃料と反応して水を生成することになるが、これに伴って該アノード4で生成した電子を外部負荷回路13を通じてカソード5へと移動させて、この反応のエネルギーを電気エネルギーとして利用する。
上記のような、カソードからアノードへ水酸イオンが移動する機構の燃料電池をアルカリ型燃料電池と呼ぶ。アルカリ型燃料電池では、両電極の雰囲気が塩基性となり、かつ、使用可能になる触媒種の選択範囲が広がることによって、以下のような利点がある。例えば、酸素還元の過電圧が低減されることであり、さらには、カソードからアノードへ透過した燃料に対して不活性なカソード触媒を選択することによる電圧向上も期待されている。斯様な陰イオン交換膜型燃料電池としては、水素をアノード側に、酸素または空気をカソード側に供給して発電させた例がある(特許文献1、非特許文献1)。
このようなアルカリ型燃料電池においては、空気に含有される二酸化炭素が発電性能に影響することが知られている(非特許文献2)。通常、大気には380ppm程度の濃度の二酸化炭素が含有される。アルカリ型燃料電池の一種である陰イオン交換膜型燃料電池に使用される陰イオン交換膜は、予め陰イオン交換基の対イオンをOHにイオン交換したものであっても、燃料電池として使用する前に大気に曝されるなどして、大気中の二酸化炭素を吸収し、該対イオンは急速にOHからCO 2−に置換され、次いでこのCO 2−もHCO へと変化する。対イオンがCO 2−やHCO となった陰イオン交換膜はそのイオン伝導性が、対イオン全てがOHである陰イオン交換膜に比べて低く、また、電極反応種であるOHの濃度や、電極反応場の塩基性が低い。そのため反応過電圧が、対イオン全てがOHである陰イオン交換膜に比べて大きくなり、結果として、対イオン全てがOHである陰イオン交換膜を用いた燃料電池のものに比べてその出力は低くなる。
上述のように、陰イオン交換膜型燃料電池の陰イオン交換膜は、発電前には大気中の二酸化炭素を吸収してHCO 型となっているが、該HCO 等は発電時にはカソードで生成するOHに再度置換されアノードから二酸化炭素として放出される。しかしながら、二酸化炭素を含む空気を酸化剤ガスとして用いた場合には、カソードから常に二酸化炭素が吸収されるため対イオン全てがOHとなることはない。つまり、残存するCO 2−やHCO によって陰イオン交換膜のイオン伝導性が低くなり、かつアノード触媒周囲の塩基性が低くなる。二酸化炭素を除去した空気を用いた場合にはこれらのイオン伝導性や塩基性の低下は生じない。
一方、従来のアルカリ型燃料電池の場合には、陰イオン交換膜のかわりにアルカリ水溶液を浸した多孔質膜が用いられる。アルカリ水溶液としては濃厚な水酸化カリウム水溶液が用いられるのが一般的である。従来のアルカリ型燃料電池においては、このアルカリ水溶液が多孔質膜から隣接するカソードに染み出し、酸化剤ガス中の二酸化炭素を吸収し反応して、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムとして析出する。そのためこれらの塩がカソード表面の触媒を覆い、酸化剤ガスの触媒表面での反応を阻害し、出力の低下、ひいては燃料電池としての寿命の短期化を招くことが問題となっていた。
上記のいずれの場合においても、酸化剤ガスに二酸化炭素が含有されることが原因となるため、これを除去する試みが行われてきた。
特許文献2には、ガス吸着剤に二酸化炭素を吸着させることにより、二酸化炭素を低減した空気を供給できる装置が記載されている。この装置処理した空気は、アルカリ型燃料電池に使用できることが記載されている。
特許文献3には、燃料電池に供給される空気に含まれる有機不純物を吸着剤で除去する手段を有することを特徴とする燃料電池が記載されている。
また、特許文献4には、ガス中の二酸化炭素を水中に固定する装置が記載されている。
特開2007−042617号公報 特開2001−70736号公報 特開2007−193952号公報 特開2003−243021号公報
Jin-Soo Park, Seok-Hee Parka, Sung-Dae Yima, Young-Gi Yoona, Won-Yong Leea,Chang-Soo Kima,「Performance of solid alkaline fuel cells employing anion-exchange membranes」,ジャーナル オブ パワー ソースズ(Journal of Power Sources)2008年,178巻,620ページ Minoru Inaba,Yu Matsui,Morihiro Saito,Akimasa Tasaka,Kenji Fukuta,Shin Watanabe,Hiroyuki Yanagi,「Effects of carbon dioxide on the performance of anion -exchange membrane fuel cells」,エレクトロケミストリー(Electrochemistry)2011年,79巻,322ページ
しかし、従来のアルカリ型燃料電池で試みられてきた、これら酸化剤ガスから二酸化炭素を除去する技術は、該二酸化炭素を吸収させるための特別な装置が必要である。また、簡便な構造で、装置を小型化するのは困難である。さらに、吸着剤の定期的な交換などのメンテナンスが必要であり、使用する際のコストも課題となっていた。そのため、これらの点を改善することが望まれており、本発明では、アニオン交換型燃料電池において、単純な構造で、酸化剤ガスから二酸化炭素を除去し、結果として高い電池出力を得ることができる新たな燃料電池装置を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題に鑑み、種々の検討を行ってきた。その結果、酸化剤ガスから妨害物質である二酸化炭素を低減させる手段として、プレ燃料電池セルの設置が、単純な構造でありながら効果が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、電池隔壁で囲まれたセル室内が、陰イオン交換膜の両面にアノードおよびカソードが夫々接合された膜・電極接合体により仕切られてアノード室とカソード室とが形成されてなり、該アノード室側の電池隔壁には燃料供給管とアノード反応処理物排出管とが接続され、他方、カソード室側の電池隔壁には酸化剤ガス供給管とカソード反応処理ガス排出管とが接続され、アノードおよびカソード間には外部負荷回路が接続された基本構造の燃料電池セルを備えた燃料電池装置において、上記燃料電池セルと同様の基本構造を備えたプレ燃料電池セルを別に設け、その酸化剤ガス供給管に二酸化炭素含有酸化剤ガスが供給され、そのカソード反応処理ガス排出管は前記燃料電池セルの酸化剤ガス供給管に繋がる構造としたことを特徴とする燃料電池装置である。
また、別の発明は、 燃料電池セルが複数個設けられ、プレ燃料電池セルに接続されるカソード反応処理ガス排出管が途中で分岐し、上記複数個の燃料電池セルの夫々の酸化剤ガス供給管として並列的に接続される構造である上記燃料電池装置である。
さらに別の発明は、二酸化炭素含有酸化剤ガスが大気である上記燃料電池装置である。
本発明の燃料電池装置は、プレ燃料電池セルと燃料電池セルから成る。そして、プレ燃料電池セルにおいて燃料電池セルの出力低下の原因となる二酸化炭素濃度を低減させることにより、燃料電池セルの出力低下を防ぎ、結果として高い出力を得ることができる。従って、上記した様々な利点を有する陰イオン交換膜型燃料電池の実用化において極めて有用である。
プレ燃料電池を設けることにより二酸化炭素濃度が低減される理由は以下の通りである。すなわち、プレ燃料電池の構成は、燃料電池セルの構成と同じであり、プレ燃料電池セルにおいてもカソード、アノードにおいて燃料電池セルと同じ電気化学反応が進行し発電が行われる。この際に、カソード室に導入された酸化剤ガス中に含まれる二酸化炭素は、塩基性であるカソードの触媒電極層に速やかに吸収され、重炭酸イオンまたは炭酸イオンとなる。これらのイオンはアニオン交換膜を通りアノードに到達し、二酸化炭素としてアノード室に放出される。そのため、プレ燃料電池セルの酸化剤ガス排出管から排出されるガス中の二酸化炭素濃度は低減される。これを燃料電池セルに供給するため、燃料電池セルは二酸化炭素濃度が低減された酸化剤ガスにより発電を行うことができ、高出力が得られるのである。
プレ燃料電池セルは前記の通り、燃料電池セルと同じ構造を有するため、燃料電池セルと同様に扱えば良く、耐久性、コスト、メンテナンス性に優れるという利点を有する。さらに、プレ燃料電池セルは、大きな発電能力は必要とせず、二酸化炭素を吸収するためのものであるから、触媒電極層にそれほどに大きな面積を必要としない。この理由により燃料電池セルよりも小さくすることができるため、容易に携帯型の燃料電池を構成することができるという利点も有する。
図1は、本発明の燃料電池装置の一形態を示す概念図である。 図2は、複数の燃料電池セルを並列的に設けた、本発明の別の態様の燃料電池装置を示す概念図である。 図3は、固体高分子型燃料電池の基本構造を示す概念図である。
本発明の燃料電池装置は、前記図3で示した基本構造の燃料電池装置、すなわち、電池隔壁1で囲まれたセル室内が、陰イオン交換膜6の両面にアノード4およびカソード5が夫々接合された膜・電極接合体により仕切られてアノード室7とカソード室8とが形成されてなり、該アノード室側の電池隔壁には燃料供給管10とアノード反応処理物排出管11とが接続され、他方、カソード室側の電池隔壁には酸化剤ガス供給管12とカソード反応処理ガス排出管13とが接続され、アノードおよびカソード間には外部負荷回路13が接続された基本構造の燃料電池セルを備えた燃料電池装置において、上記燃料電池セルと同様の基本構造を備えたプレ燃料電池セルを別に設けた点に最大の特徴を有する。すなわち、図1に示したように、上記基本構造の燃料電池セル22だけでなく、同様の構造のプレ燃料電池セル21が設けてあり、燃料電池セル22の酸化剤ガス供給管11に、プレ燃料電池セル21のカソード反応処理ガス排出管12が繋げてある。
このような構造の本発明の燃料電池装置に用いられる、各種材料やその製造方法には限定はなく、従来の固体高分子型燃料電池で採用されているものや方法が何ら制限なく適用できる。例えば、電池隔壁としては、酸化剤ガス、燃料を漏洩させない材質のものであれば、いかなるものでも使用することができる。一般的にはフッ化エチレン、ポリメタクリル酸メチルなどのポリマー、カーボン、ステンレスなどの金属が用いられる。腐食に強く、かつカソードあるいはアノードと接触させる構造とすれば電流を取り出すことができることからカーボンを用いるのが一般的である。
陰イオン交換膜には、固体高分子型燃料電池用の固体高分子電解質膜として使用できることが知られている公知の陰イオン交換膜が制限なく使用できる。中でも、燃料である水素ガスの透過性を抑制でき、安価に製造できるなどの観点から、上記陰イオン交換膜としては炭化水素系のものを使用するのが好適である。炭化水素系陰イオン交換樹脂を含む陰イオン交換膜としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンズイミダゾール系ポリマー等に代表されるエンジニアリングプラスチック材料に必要に応じ種々の官能基を導入した炭化水素系陰イオン交換樹脂をキャスト製膜した陰イオン交換膜などであっても良い。
好適には、炭化水素系陰イオン交換膜としては、多孔質膜を母材とし、該多孔質膜の空隙部に架橋された炭化水素系陰イオン交換樹脂が充填されてなる陰イオン交換膜から構成されていることが好ましい。このように多孔質膜中に架橋された炭化水素系陰イオン交換樹脂が不均質に分散された陰イオン交換膜は、該多孔質膜が補強部分として働くため電気抵抗を犠牲にすることなく陰イオン交換膜の物理的強度を高めることができ、さらに化学的な耐久性も高められるという利点を有する。このような陰イオン交換膜としては、例えば、特開2007−42617号公報に記載されているような、多孔質膜の空隙にクロロメチルスチレンとジビニルベンゼン、4−ビニルピリジンとジビニルベンゼンなどの重合性単量体組成物を含浸させ、次いで該重合性組成物を熱重合させ、さらに、アミノ化、アルキル化等の処理により所望の陰イオン交換基を導入した膜などが挙げられる。
前記した多孔質膜には、一般的には、熱可塑性樹脂製の織布、布織布、多孔質フィルム等が使用されるが、ガス透過性が低く、薄膜化が可能であることから該多孔質膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂製多孔質フィルムからなるものを用いるのが好適である。
このような陰イオン交換膜中に存在する陰イオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム塩基、4級イミダゾリウム塩基等が挙げられる。陰イオン伝導性に優れる点で、強塩基性基である4級アンモニウム塩基が好適である。
本発明の電解質膜に用いられる陰イオン交換膜は、如何なる対イオンを有するものであっても良いが、通常は、該対イオンはハロゲン型のものとして製造される。対イオンがハロゲン型の陰イオン交換膜はイオン伝導性が低く高い出力が得難いため、斯様な対イオン型の場合には、膜のイオン伝導性を高め、電極反応種であるOHの濃度を高め、かつ、電極反応場の塩基性も高めやすい点で、対イオンのOH型へのイオン交換処理をされたものであることが好ましい。OH型へのイオン交換は、従来公知の方法、すなわち、陰イオン交換膜を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液などのアルカリ溶液に浸漬して行うことができる。通常、該イオン交換は、アルカリ濃度0.01〜5mol/Lの濃度で、0.5〜10時間浸漬することで行われる。イオン交換の操作を複数回繰り返し行うことも有効である。また、通常、イオン交換後の陰イオン交換膜は、必要に応じて水洗、乾燥などを施した後使用される。
また、前記した陰イオン交換膜の対イオンを、HCO やCO 2−、あるいはこれらの混合物とすることも好適である。該対イオン型とすることで、大気中の二酸化炭素の吸収度合いによらず安定した特性を有する陰イオン交換膜とすることができるだけでなく、4級アンモニウム塩基などの陰イオン交換基の安定性を向上させることも可能となる。これら対イオンへの交換も、OH型へのイオン交換と同様に、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの水溶液に陰イオン交換膜を浸漬することで行うことができる。
本発明の電解質膜に用いられる陰イオン交換膜は、通常0.2〜3mmol/g−1、好適には0.5〜2.5mmol/g−1の陰イオン交換容量を有し、また、乾燥によるアニオンの伝導性の低下が生じ難いように、25℃における含水率が7質量%以上、好適には10〜90質量%となるように調製することが好ましい。また、膜厚は、電気抵抗を低く抑える観点及び支持膜として必要な機械的強度を付与する観点から、通常5〜200μmの厚みを有するものが好ましく、より好ましくは10〜100μmを有するものが好ましい。これらの特性を有することで、本発明の電解質に用いられる陰イオン交換膜は、25℃、0.5mol/L−塩化ナトリウム中の膜抵抗が、通常0.05〜1.5Ω・cmであり、好ましくは0.1〜0.5Ω・cmである。
本発明の基本構造の燃料電池において膜・電極接合体を構成するアノードおよびカソードは、電極触媒とアニオン伝導性アイオノマーとを含んでなる、固体高分子型燃料電池で使用される従来公知の触媒電極層が制限なく使用できる。陰イオン交換膜に対して、これらアノードおよびカソードを形成する具体的な方法は、(I)電極触媒に必要に応じて結着剤や分散媒を添加してペースト状の組成物とし、これをそのままロール成型するか又はカーボンペーパー等の支持層材料上に塗布した後に熱処理して層状物を得、陰イオン交換膜との接合面となる表面にアニオン伝導性アイオノマー溶液を塗布含浸させた後に必要に応じて乾燥し、陰イオン交換膜と熱圧着する方法;又は(II)電極触媒にアニオン伝導性アイオノマー及び必要に応じて結着剤や分散媒を添加してペースト状の組成物とし、これをカーボンペーパー等の支持層材料上に塗布するか、剥離フィルム上に塗布して陰イオン交換膜上に転写するか、または陰イオン交換膜上に直接塗布するかした後に乾燥させ、その後必要に応じて陰イオン交換膜と熱圧着する方法、等が挙げられる。触媒電極層の電極触媒の利用率を高める観点で、前記(II)の方法がより好ましい。
上記のアニオン伝導性アイオノマーとしては、分子内に陰イオン交換基を有し、陰イオンの導電性を示す材料であれば、従来公知の材料をなんら制限なく使用できる。塩基性化合物を溶解させて本発明の効果を十分に発揮させる観点から、25℃における含水率が5質量%以上、好適には10〜200質量%のものを用いるのが好ましい。
例えば、クロルメチル基、クロルエチル基、クロルプロピル基、クロルブチル基、クロルペンチル基、クロルヘキシル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基、ブロモブチル基、ブロモペンチル基、ブロモヘキシル基、ヨードメチル基、ヨードエチル基、ヨードブチル基などのハロゲノアルキル基を有する樹脂、具体的には、ポリクロルメチルスチレン、ポリ(スチレン−クロルメチルスチレン)共重合体、ポリブロモエチルスチレン、ブロモブチルスチレン、クロルメチル化ポリスルホン、クロルメチル化ポリフェニレンオキシド、クロルメチル化ポリエーテルエーテルケトン等をアミノ化し、対応する陰イオン交換基を導入した樹脂などが挙げられる。
あるいは、ポリ−(4−ビニルピリジン)、ポリ−(2−ビニルピリジン)や、ポリ−ビニルイミダゾール、ポリ−ベンズイミダゾールなどに、ヨウ化メチルなどのアルキル化剤を作用させ、対応する陰イオン交換基を導入した樹脂も使用可能である。
特に、アノードおよびカソードとなる各触媒電極層の、前記陰イオン交換膜への接合性や液体燃料への耐溶剤性、さらには前述した触媒電極層製造時の操作性などを考慮すると、特開2002−367626号公報に開示されているような、分子内に陰イオン交換基を有し、水及びメタノールに難溶な炭化水素系高分子エラストマーが好適に使用される。
触媒電極層の電極触媒も公知のものが特に制限なく使用可能である。即ち、酸化反応及び酸素の還元反応を促進する白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム、あるいはそれらの合金等の金属粒子が制限なく使用できるが、触媒活性が優れていることから白金族触媒を用いるのが好適である。
また、陰イオン交換膜を用いるため、従来の強酸性の陽イオン交換膜では使用できなかったような各種の金属酸化物を電極触媒として利用することも可能である。例えば、酸化活性に優れているABOで表されるペロブスカイト型酸化物なども好適に使用できる。具体的には、LaMnO、LaFeO、LaCrO、LaCoO、LaNiOなど、あるいは前記のAサイトの一部をSr、Ca、Ba、Ce、Agなどで部分置換したもの、さらに、Bサイトの一部をPd、Pt、Ru、Agなどで部分置換したペロブスカイト型酸化物なども電極触媒として好適に使用できる。
なお、これら電極触媒の粒径は、通常、0.1〜100nm、より好ましくは0.5〜10nmである。粒径が小さいほど触媒性能は高くなるが、0.5nm未満のものは、作製が困難であり、100nmより大きいと十分な触媒性能が得にくくなる。なお、これら触媒は、予め導電剤に担持させてから使用してもよい。導電剤としては、電子導電性物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等を単独または混合して使用するのが一般的である。
これら電極触媒の含有量は、アノードおよびカソードとなる触媒電極層をシート状にした状態における単位面積当たりの電極触媒質量で、通常0.01〜10mg/cm、より好ましくは0.1〜5.0mg/cmである。
また、アノードおよびカソードとなる触媒電極層には、必要に応じて結着剤を添加することもできる。このような結着剤としては、各種熱可塑性樹脂が一般的に用いられるが、好適に使用できる熱可塑性樹脂を例示すれば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体等が挙げられる。該結着剤の含有量は、上記触媒電極層の5〜25重量%であることが好ましい。また、結着剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
また、触媒電極層に対して必要に応じて使用される支持層材料としては、通常、カーボン繊維織布、カーボンペーパー等の多孔質炭素材料が使用される。これら支持層材料の厚みは、50〜300μmが好ましく、その空隙率は、50〜90%が好ましい。通常、このような支持層材料の空隙内及び表面上に前記電極触媒を含むペースト状の組成物を、得られる触媒電極層が5〜50μmの厚みになるよう充填及び付着されて触媒電極層が構成される。
また、前記(I)及び(II)のアノードおよびカソードの形成方法において、前記したアニオン伝導性アイオノマーの使用量は特に限定されないが、上記(I)の方法においては、イオン伝導性付与効果の観点から、接合面から全体の厚さの1〜50%の範囲の触媒電極層に対して、アニオン伝導性アイオノマーの含有量が5〜60質量%、特に10〜40質量%となる用に施用するのが好適である。また、上記(II)の方法においては触媒電極層の全質量に対して、アニオン伝導性アイオノマーの含有量が5〜60質量%、特に10〜40質量%となるように施用するのが好適である。
さらに、前記(I)及び(II)の方法において、アノードおよびカソードを陰イオン交換膜に熱圧着する場合には、該熱圧着は、加圧、加温できる装置、一般的には、ホットプレス機、ロールプレス機等により行われる。プレス温度は一般的には80℃〜200℃である。プレス圧力は、使用する各触媒電極層の厚み、硬度に依存するが、通常0.5〜20MPaである。
このようにして製造された膜・電極接合体は、前記した図3に示すような基本構造の燃料電池セルに装着されて使用される。
本発明で採用する基本構造の燃料電池には、電池隔壁で囲まれたセル室がある。セル室の面積は、上記触媒電極層に燃料および酸化剤ガスを行き渡らせることができれば得に制限されることなく適宜設定すれば良い。一般的には触媒電極と同じ形状、面積にすれば良い。
セル室の体積は、上記セル室の面積と厚みにより決定される。厚みは、触媒電極層に燃料および酸化剤ガスを供給できる大きさであれば、特に制限されること無く用いることができる。一般には、膜電極接合体を設置したときに電池隔壁との間に、燃料および酸化剤ガス流路として0〜5mm程度の空隙が残る厚みが用いられる。
また、電池隔壁に凹凸を形成させ、一定の形状の流路を設けても良い。これにより、燃料、酸化剤ガスを十分にアノードあるいはカソードに行き渡らせることができ、かつ、電池隔壁とこれらの電極を接触させることにより、電流を取り出すことができるという利点がある。
本発明の基本構造の燃料電池では、セル室が膜・電極接合体に仕切られることにより、アノード室とカソード室が形成される。アノードが存在する側をアノード室と呼び、カソードが存在する側をカソード室と呼ぶ。これらアノード室、カソード室にそれぞれ燃料、酸化剤ガスが導入され、燃料電池として使用される。アノード、カソード表面において電気化学的反応が進行し、燃料、酸化剤が消費され、それぞれの室では各電極反応処理物が生成する。そのため、アノード室、カソード室では、燃料および酸化剤が常に供給され、各電極反応処理物が常に排出されていることが望ましい。そのため、本発明の基本構造の燃料電池セルには、アノード室側の電池隔壁に燃料供給管とアノード反応処理物排出管とが、カソード室側の電池隔壁には酸化剤ガス供給管とカソード反応処理ガス排出管とが接続される。燃料供給管からはアノード室に燃料が供給され、酸化剤ガス供給管からはカソード室に酸化剤が供給される。また、アノード反応処理物排出管からは、アノード室を通過してアノードの電極反応を受けた燃料処理物が排出され、カソード反応処理ガス排出管からは、カソード室を通過してカソードの電極反応を受けた酸化剤ガスの処理ガスが排出さる。
次に、プレ燃料電池セルについて説明する。プレ燃料電池セルも上記燃料電池セルと同様の基本構造を備えたものであるが、そのカソード反応処理ガス排出管を、燃料電池セルの酸化剤ガス供給管に繋げた態様で、燃料電池装置に組入れてある。このような態様でプレ燃料電池セルを設けることにより、該燃料電池装置では、酸化剤ガスとして、大気のように二酸化炭素を多量に含有するものを用いたとしても、これは最初に、プレ燃料電池セルのカソード室に供給されることになる。プレ燃料電池セルには、係るカソード室への酸化剤ガスの供給だけでなく、アノード室に対して燃料も供給されるため、各電極ではそれぞれの電極反応が進行する。そのため、プレ燃料電池セルのカソードでは酸素と水が反応してOHが生成され、該触媒電極層は塩基性を帯びる。しかして、燃料電池セルにおいて、酸化剤中に二酸化炭素が含有されている場合には、塩基性雰囲気にあるカソードに二酸化炭素が効率よく吸収されることがわかっている。
このため、上記プレ燃料電池セルのカソードでは、酸化剤ガスに含有される二酸化炭素は高い割合でカソードに吸収され、該酸化剤ガスの二酸化炭素の含有量は大きく低減される。なお、燃料電池セルにおいて、斯様にカソードに吸収された二酸化炭素は、OHと反応しHCO 、CO 2−を生成し、これらイオンは陰イオン交換膜を通過して、アノードから二酸化炭素として放出されることが分かっており、上記プレ燃料電池セルでも同様に挙動する。
以上から、上記構造でプレ燃料電池セルを設けた本発明の燃料電池装置によれば、後段の燃料電池セルに供給される酸化剤ガスが、その二酸化炭素含有量が大きく低減されたものになるため、この燃料電池セルの発電は、二酸化炭素濃度の影響が低く抑えられ、高出力が実現できる。
なお、上記説明から明らかなように、本発明の燃料電池装置では、プレ燃料電池セルでも、アノード、カソードにおいて電子の授受が行われるため、これを電流として取り出すことができる。その発電効率は、二酸化炭素の影響を受けるため高いものではないが、本発明では、この電流も、後段の燃料電池セルから得られる電流に加えて、出力増加に利用するのが好ましい。
本発明において、プレ燃料電池セルと燃料電池セルを繋ぐ配管には、内部のガスが漏洩せず、かつ外部のガスが侵入しない材質のものが用いられる。その入手のしやすさや、良好な耐久性を有することから、ステンレス、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などが一般的に用いられる。
該配管は、内部の酸化剤ガスの温度を燃料電池セルのセル温度以上に保つと好適である。これにより、燃料電池セル内での反応温度を一定に保つと共に、配管内での水の結露を防ぐことができ、燃料電池セルのカソードにおける反応を良好に進行させることができる。
本発明においてプレ燃料電池セルは、二酸化炭素濃度の低減を目的として設置するため、その膜・電極接合体の面積は、供給する酸化剤ガスの流量と、含まれる二酸化炭素の濃度を勘案して決定すればよい。一般的には、1cmのプレ燃料電池セルのカソード面積に対して10〜200ml/min程度の酸化剤ガスを流通させる。よって、プレ燃料電池セルのカソード面積は、燃料電池セルのカソード面積に対して1/2〜1/100程度を用いれば十分である。そのため、プレ燃料電池セルは燃料電池セルに比べ小さくすることができる。
プレ燃料電池セルの温度は燃料電池セルと同じでも良いし、異なっていても良い。プレ燃料電池セルの温度が燃料電池セルの温度よりも高い場合には、含有される水蒸気が凝縮されアノードあるいはカソード上に蓄積されることがある。そのため、触媒表面に燃料あるいは酸化剤ガスが供給され難くなり、燃料電池の出力性能の低下を招く場合があるため、一般的には同じ温度で用いられる。
プレ燃料電池セルのアノードから排出される燃料には二酸化炭素が含有されているため、廃棄するのが一般的である。燃料の使用効率を高くするためには、プレ燃料電池セルのアノードに供給される燃料は少なくすることが望ましいが、流量が小さくなると二酸化炭素の放出効率が低くなるため、最適な流量の範囲が存在する。一般にアノードの面積1cmに対して、燃料の流量は1〜50ml/minが用いられる。
本発明のプレ燃料電池セル、燃料電池セル、それぞれの運転条件には、従来公知の陰イオン交換膜型燃料電池の運転条件や構成をなんら制限なく採用することができる。すなわち、カソードに供給されうる二酸化炭素含有酸化剤ガスとしては、二酸化炭素および酸素を含むガスであれば制限はないが、特別な精製装置やボンベなどの保存装置が不要であるといった理由から、通常は大気が用いられる。
空気は、相対湿度30〜100%RHであることが好ましく、さらに50〜100%RHであることがより好ましい。30%RH未満の場合、陰イオン交換膜が乾燥して高抵抗になり出力が低くなることがある。燃料電池の運転環境における大気湿度が上記範囲の場合には、湿度調整することなく供給してもよく、また、加湿器によって加湿して供給しても構わない。
二酸化炭素含有酸化剤ガスの供給量は、特に制限されるものではないが、好適には、使用する陰イオン交換膜の面積と発電時の電流密度から酸化剤ガス必要量を算出し、その2倍以上の量が用いられる。通常は、陰イオン交換膜1cmあたり10〜200ml/分の範囲から採択される。
本発明の燃料電池装置に供給する燃料としては、アルカリ型燃料電池に用いる公知の燃料をなんら制限無く用いることができる。すなわち、水素、メタノール、エタノール、アンモニア等を例示することができる。燃料は気体または液体として供給することができる。これらの燃料は、プレ燃料電池セルと燃料電池セルとで、それぞれ別種のものを用いても良いが、通常は同種であるのが効率的である。
プレ燃料電池セルおよび燃料電池セルの各アノードに供給される燃料は、気体として供給される場合には、相対湿度30〜100%RHであることが好ましく、さらに50〜100%RHであることがより好ましい。30%RH未満の場合、陰イオン交換膜が乾燥して高抵抗になり出力が低くなることがある。燃料電池の運転環境における大気湿度が上記範囲の場合には、湿度調整することなく供給してもよく、また、加湿器によって加湿して供給しても構わない。
燃料電池セルのアノードに対して、燃料の供給量は、特に制限されるものではないが、好適には、使用する陰イオン交換膜の面積と発電時の電流密度から燃料の必要量を算出し、その2倍以上の量が用いられる。通常は、陰イオン交換膜1cmあたり1〜200ml/分の範囲から採択される。
本発明のプレ燃料電池セル、燃料電池セルの運転温度としては、通常、−30℃〜120℃であり、出力の高さや使用する材料の耐久性を勘案すると20℃〜90℃が好ましい。燃料ガスや酸化剤ガスも、上記温度範囲のものとして供給するのが好ましい。
本発明のプレ燃料電池セルは燃料電池とは別に第2のセルとして設けるのが一般的であるが、一つの電池隔壁にプレ燃料電池セル、燃料電池セルを有するように構成することもできる。
また、本発明の燃料電池装置は、図2に示すように燃料電池セル32が複数個並列的に設けられ、プレ燃料電池セル31に接続されるカソード反応処理ガス排出管が途中で分岐し、上記複数個の燃料電池セル32の夫々の酸化剤ガス供給管として並列的に接続される構造をとることができる。このような構造をとることにより、複数の燃料電池セルから大きな電力を取り出すことが可能となる。
以下、本発明を更に詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例において燃料電池の運転特性を以下に説明する。
アルカリ型燃料電池の評価
(陰イオン交換膜の作成)
ポリエチレンからなる多孔質膜(膜厚25μm、平均孔径0.03μm、空隙率37%)に、クロロメチルスチレン97質量部、ジビニルベンゼ3質量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル5質量部、t−ブチルパーオキシエチルヘキサノエート5質量部からなる重合性単量体組成物を含浸させ、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として多孔質膜の両側を被覆した後、0.3MPaの窒素加圧下、80℃で5時間加熱重合した。得られた膜状物を6質量%のトリメチルアミンと25質量%のアセトンを含む水溶液中に室温で16時間浸漬し、4級アンモニウム塩基を陰イオン交換基として有する燃料電池用の陰イオン交換膜を得た。
得られた陰イオン交換膜の陰イオン交換容量は、1.8mmol/g、25℃における含水率は25質量%、乾燥膜厚は28μmであった。
陰イオン交換膜は、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に含浸し、陰イオン交換基の対イオンをOHにイオン交換した。
その後、大気中で12時間以上放置した後に、この膜を燃料電池出力評価に使用した。
(膜・触媒電極接合体の作成)
{ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン}トリブロック共重合体(旭化成ケミカルズ製、「タフテックH1031」、)をクロロメチル化したものを、6質量%のトリメチルアミンと25質量%のアセトンを含む水溶液中に室温で16時間浸漬し、さらに0.5mol/L−NaOH水溶液に10時間以上浸漬して触媒電極層用のアニオン伝導性アイオノマー(OH型)を合成した。該アイオノマーは、重量平均分子量30000で、アニオン交換容量は1.5mmol/g−乾燥樹脂、25℃における含水率は120質量%であった。
このアニオン伝導性アイオノマーを、130℃のオートクレーブ中で1−プロパノールに3時間かけて溶解させ、濃度5質量%のアイオノマー溶液を得た。
次いで、上記アイオノマー溶液と、平均粒子径2nmの白金触媒を50質量%担持したカーボンブラックとを混合して触媒電極層形成用組成物を作成した。次いで、該組成物を陰イオン交換膜の片面に印刷し、大気中25℃で12時間以上乾燥しアノードを形成した。さらに、陰イオン交換膜のもう一方の面にも同様にしてカソードを形成し、陰イオン交換膜−触媒電極接合体を得た。アノード面およびカソード面共に、白金量は0.4mg/cmとなるようにし、これら触媒電極層中のアイオノマーの含有量は共に30質量%であった。また、触媒電極層の面積として、それぞれ5cm、10cmである2種類の膜電極接合体を作製した。
(燃料電池出力試験)
得られた膜・触媒電極接合体の両面に、ポリテトラフルオロエチレンで撥水化処理した厚みが300μmのカーボンクロス(エレクトロケム社製「EC−CC1−060T」)を重ね、これらを図3に示す燃料電池セルに組み込んだ。この燃料電池セルを2個作成した。一方の燃料電池セルを本発明のプレ燃料電池セルとし、もう一方のセルを本発明の燃料電池とした。図1に示すように、プレ燃料電池セルのカソード反応処理ガス排出管口と、燃料電池セルの酸化剤ガス供給管口をステンレス管にて接続し、本発明の燃料電池装置を構成した。プレ燃料電池セルに用いた触媒電極層の面積は5cmとした。燃料電池セルに用いた触媒電極層の面積は各実施例、比較例に示した。
次いで、プレ燃料電池セルおよび燃料電池セル温度を50℃に設定した。プレ燃料電池、燃料電池セルのアノード側に燃料として、50℃で95%RHに加湿した水素を供給した。水素の流量は各実施例、比較例に示した。
二酸化炭素を含有する酸化剤ガスとしては、二酸化炭素濃度を調整した空気を用いた。プレ燃料電池のカソード側にボンベから空気を、50℃で95%RHに加湿し供給して発電試験を行なった。空気の流量および含有される二酸化炭素濃度は各実施例、比較例に記した。
始めにプレ燃料電池セル、燃料電池セル共に、セル電圧0.2Vにて2時間発電を行った。その後に、プレ燃料電池セルは0.1A/cm、燃料電池セルは0.4A/cmにて発電させたときのセル電圧を測定し、それぞれのセルの電圧値との積から電力を算出し、合計して出力を評価した。
また、プレ燃料電池のカソード側排出管より排出されたガス中の二酸化炭素濃度を、市販の二酸化炭素測定装置(VAISALA社 GM70)を用いて測定した。
実施例1〜3
表1に示す水素流量、空気流量、二酸化炭素濃度、触媒電極層の面積にて、燃料電池出力試験を行い、その合計出力を算出し表1に示す結果を得た。
Figure 2013045670
比較例1
実施例1と同じ2つのセルを用い、それぞれ表2に示した水素流量、空気流量、二酸化炭素濃度、触媒電極層の面積にて、別個に作動させて燃料電池出力試験を行った。それぞれを燃料電池セル1、燃料電池セル2として表中に記載した。実施例と同じ発電条件にするために触媒面積が5cmのセルの一つは0.1A/cmにて発電させた。また各セルには、発電に必要とされる量の2倍以上の水素または空気を供給した。その合計出力を算出し、表2に示す結果を得た。
比較例2
実施例1と同じ2つのセルを用い、それぞれ表1に示した水素流量、空気流量、二酸化炭素濃度、触媒電極層の面積にて、別個に作動させて燃料電池出力試験を行った。それぞれを燃料電池セル1、燃料電池セル2として表中に記載した。2つのセルとも、最高出力が得られる電流密度値である0.4A/cmにて発電させた。各セルには、発電に必要とされる量の2倍以上の水素または空気を供給した。その合計出力を算出し、表2に示す結果を得た。
Figure 2013045670
比較例3、4
実施例1と同じ2つのセルを用い、それぞれ表3に示した水素流量、空気流量、二酸化炭素濃度、触媒電極層の面積にて、別個に作動させて燃料電池出力試験を行った。それぞれを燃料電池セル1、燃料電池セル2として表中に記載した。実施例と同じ条件にするために触媒面積が5cmのセルは0.1A/cmにて発電させた。各セルには、発電に必要とされる量の2倍以上の水素または空気を供給した。これらのセルの合計出力を算出し、表3に示す結果を得た。
Figure 2013045670
比較例1〜4においては、全てのセルに、高い濃度で二酸化炭素を含有する空気が供給されるため、その出力は低かった。
実施例1〜3より、本発明のプレ燃料電池から排出された空気中の二酸化炭素濃度は、低減せしめられていることが示された。実施例1〜3、比較例1〜4より、本発明の燃料電池システムを用いると、より大きな電力を取り出すことができることが示された。
実施例4
1つのプレ燃料電池セルと、5個の燃料電池セルを用い、プレ燃料電池セルのカソード反応処理ガス排出管を途中で五つに分岐させ、それぞれの分岐管を各燃料電池セルの酸化剤ガス供給管にステンレス管にて接続した。
表4に示した水素流量、空気流量、二酸化炭素濃度、触媒電極層の面積にて、燃料電池出力試験を行ったところ、合計出力は5.7Wであった。
比較例5
実施例4と同じ6個のセルを用い、それぞれ表5に示した水素流量、空気流量、二酸化炭素濃度、触媒電極層の面積にて、別個に作動させ燃料電池出力試験を行った。実施例4にてプレ燃料電池セルとして用いたものを燃料電池セル1、燃料電池セルとして用いたものを燃料電池セル2として表記した。合計出力は2.7Wであった。
Figure 2013045670
実施例4、比較例5より、プレ燃料電池セルに複数の燃料電池セルを接続した場合にも、同じセルを用いて各個に発電させた場合よりも大きな電力を得られることが示された。
1;電池隔壁
2;燃料流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;アノード
5;カソード
6;固体高分子電解質(陰イオン交換膜)
7;アノード室
8;カソード室
9;燃料供給管
10;アノード反応処理物排出管
11;酸化剤ガス供給管
12;カソード反応処理ガス排出管
13;外部付加回路
21;プレ燃料電池セル
22;燃料電池セル
31;プレ燃料電池セル
32;燃料電池セル

Claims (3)

  1. 電池隔壁で囲まれたセル室内が、陰イオン交換膜の両面にアノードおよびカソードが夫々接合された膜・電極接合体により仕切られてアノード室とカソード室とが形成されてなり、該アノード室側の電池隔壁には燃料供給管とアノード反応処理物排出管とが接続され、他方、カソード室側の電池隔壁には酸化剤ガス供給管とカソード反応処理ガス排出管とが接続され、アノードおよびカソード間には外部負荷回路が接続された基本構造の燃料電池セルを備えた燃料電池装置において、上記燃料電池セルと同様の基本構造を備えたプレ燃料電池セルを別に設け、その酸化剤ガス供給管に二酸化炭素含有酸化剤ガスが供給され、そのカソード反応処理ガス排出管は前記燃料電池セルの酸化剤ガス供給管に繋がる構造としたことを特徴とする燃料電池装置。
  2. 燃料電池セルが複数個設けられ、プレ燃料電池セルに接続されるカソード反応処理ガス排出管が途中で分岐し、上記複数個の燃料電池セルの夫々の酸化剤ガス供給管として並列的に接続される構造である請求項1記載の燃料電池装置。
  3. 二酸化炭素含有酸化剤ガスが大気である請求項1または2記載の燃料電池装置。
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