JP2013044003A - 熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.08%超0.30%未満、Si:3.0%以下、Mn:1.0%以上4.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:3.0%以下、N:0.010%以下を含有し、かつSi+sol.Alの合計含有量が0.8%以上3.0%以下の化学組成を有し、かつDαq≦5.0、Vαq≧50、Vγq≧3、Vαs>Vαq、Vγs>Vγq(DαqおよびVαqは、それぞれ鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの平均粒径(μm)および面積率(%)、Vγqは同位置での残留オーステナイト体積率(%)、VαsおよびVγsはそれぞれ鋼板表面から100μm深さ位置でのフェライト面積率(%)および残留オーステナイト体積率(%)を表す)を満たす鋼組織を有する。
【選択図】 なし
Description
特許文献1に記載された鋼板は、加工性の重要な指標の一つである穴拡げ性が低く、伸びフランジ性が要求されるような部品については使用することが困難である。
(A)SiとAlを適量含有する鋼に対して、熱間圧延完了直後に急速冷却するいわゆる直後急冷プロセスを適用することにより、微細フェライト粒を主相とし、第二相として微細な残留オーステナイトを含有する鋼板を得ることができる。このような鋼板は、主相であるフェライトの微細粒化によって高強度化されるとともに、残留オーステナイトのTRIP効果によって延性も向上し、強度−延性バランスが大きく向上する。ただし、穴拡げ性は低下する場合があり、特にSi含有量の多い鋼組成では、穴拡げ性が顕著に低下する。
(1)質量%で、C:0.08%超0.30%未満、Si:3.0%以下、Mn:1.0%以上4.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:3.0%以下、N:0.010%以下を含有し、かつSi+sol.Alの合計含有量が0.8%以上3.0%以下であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するとともに、下記式(1)〜(5)を満足する鋼組織を有することを特徴とする熱延鋼板。
Vαq≧50 (2)
Vγq≧3 (3)
Vαs>Vαq (4)
Vγs>Vγq (5)
ここで、
Dαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの平均粒径(μm)、
Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率(%)、
Vγqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オーステナイトの体積率(%)、
Vαsは鋼板表面から100μm深さ位置でのフェライトの面積率(%)、
Vγsは鋼板表面から100μm深さ位置での残留オーステナイトの体積率(%)、
をそれぞれ表す。
(6)前記化学組成が、Feの一部に代えて、Ni:1.0質量%以下を含有する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱延鋼板。
TS1.7×HER≧4×106 (6)
TS×El≧20×103 (7)
(TS1.7×HER)+(TS×El)×103≧28×106 (8)
(A)化学組成
(C:0.08%超0.30%未満)
Cは、オーステナイトからフェライトへの変態温度を低下させる作用を有し、熱間圧延完了温度をより低温にすることを可能にすることで、フェライト粒の微細化の促進に寄与する。さらに、フェライト変態の進行に伴いオーステナイト中に濃縮して、オーステナイトを安定化させる作用を有するので、室温においてオーステナイトを残留させるのに不可欠な元素である。C含有量が0.08%以下ではオーステナイトの安定化効果が十分でなくなり、目的とする残留オーステナイト量を確保することが困難である。したがって、C含有量は0.08%超とする。好ましくは0.10%超、さらに好ましくは0.12%超、特に好ましくは0.15%超である。一方、C含有量が0.30%以上では、熱間圧延後のフェライト変態が過度に遅延してしまい、目的とするフェライト量を確保することが困難となる場合がある。また、溶接性の劣化が顕著になる。したがって、C含有量は0.30%未満とする。好ましくは0.25%未満、さらに好ましくは0.22%未満である。
Siは、Alと同様に、フェライトの生成を促進するとともにセメンタイトの析出を遅延させる作用を有し、これにより、オーステナイトが未変態で残留する量、すなわち残留オーステナイトの体積率を高めることを可能とする。また、フェライトの生成を促進するとともに、フェライトを固溶強化する作用を有し、これにより、フェライト主体の鋼組織とするとともに、鋼板の強度を高めることを可能にする。また、脱酸により鋼を健全化する作用を有する。しかし、Si含有量が3.0%超では鋼板の表面性状の劣化や化成処理性の劣化が著しくなる。したがって、Si含有量は3.0%以下とする。後述するように、本発明ではSiおよびsol.Alの合計含有量が重要であるので、Si含有量の下限値は特に規定しないが、Siはsol.Alよりも固溶強化能が高いことから、より高い強度を求める場合には、Si含有量を0.5%以上とすることが好ましい。この場合、さらに好ましくは0.8%以上、特に好ましくは1.0%以上である。
Mnは、鋼の強度を高める作用を有する。また、高温域におけるオーステナイトを安定化させて、Ar3点を低下させる作用を有し、これにより熱間圧延完了温度をより低下させることを可能にし、フェライト結晶粒の微細化促進に寄与する。Mn含有量が1.0%未満では上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、Mn含有量は1.0%以上とする。好ましくは1.3%以上、より好ましくは1.6%以上である。一方、Mn含有量が4.0%超では、オーステナイトが過度に安定化してしまい、熱間圧延後の冷却過程で十分なポリゴナルフェライトを生成させることが困難となる。したがって、Mn含有量は4.0%以下とする。好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.7%以下である。
Pは、不純物として鋼中に含有される元素であり、粒界に偏析して鋼を脆化させる作用を有する。P含有量が0.10%超では鋼の脆化が著しくなる。したがって、P含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.020%未満であり、さらに好ましくは0.015%未満である。
Sは、不純物として鋼中に含有される元素であり、鋼中に硫化物系介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させる作用を有する。S含有量が0.010%超では、伸びフランジ性の劣化が著しくなる。したがって、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%未満、特に好ましくは0.001%以下である。
Alは、Siと同様に、フェライトの生成を促進するとともにセメンタイトの析出を遅延させる作用を有し、これにより、オーステナイトが未変態で残留する量、すなわち残留オーステナイトの体積率を高めることを可能とする。また、フェライトの生成を促進する作用を有し、これにより、フェライト主体の鋼組織とすることを可能にする。さらに、脱酸により鋼を健全化する作用も有する。しかし、sol.Al含有量が3.0%超になると、高温域におけるオーステナイトが不安定となり、Ar3点の上昇にともなって熱間圧延完了温度を上昇させざるを得なくなり、フェライト結晶粒の微細化を困難にする。また、安定した連続鋳造を困難にする。したがって、sol.Al含有量は3.0%以下とする。好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。後述するように、本発明ではSiおよびsol.Alの合計含有量が重要であるのでsol.Al含有量の下限値は特に規定しないが、Alによる脱酸を目的に含有させる場合には、sol.Al含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
Nは、不純物として鋼中に含有される元素であり、延性を劣化させる作用を有する。N含有量が0.010%超では鋼板の延性の劣化が著しくなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.006%以下、さらに好ましくは0.005%以下である。
上述したように、SiおよびAlは、フェライトの生成を促進するとともにセメンタイトの析出を遅延させる作用を有する。このフェライトの生成を促進する作用により、フェライト主体の鋼組織を形成するとともに、フェライトから排出されたCがオーステナイト中に濃縮される。さらに、セメンタイトの析出を遅延させる作用によって、オーステナイトからのセメンタイトの析出によりオーステナイト中のC濃度が低下することが抑制される。これらの作用が相俟って、オーステナイトの安定化が効率的に図られ、未変態で残留するオーステナイトの量、すなわち残留オーステナイトの体積率を高めることを可能とする。
(Nb:0.10%以下、Ti:0.20%以下およびV:0.20%以下からなる群から選択された1種または2種以上)
Ti、NbおよびVは、鋼中に炭化物または窒化物として析出し、鋼組織を微細化する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に含有させても、上記作用による効果が飽和して不経済となる。また、熱間圧延後の変態が過度に抑制され、十分なポリゴナルフェライトを生成させることが困難となる。したがって、Nb含有量は0.10%以下、Ti含有量は0.20%以下、V含有量は0.20%以下とする。これらの元素の上記作用による効果をより確実に得るには、Nb:0.002%以上、Ti:0.005%以上およびV:0.005%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Cr、MoおよびBは、鋼の焼入性を高める作用を有し、熱延鋼板中の低温変態生成相の割合を増加させて鋼板の強度を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に含有させると、50面積%以上のフェライトを確保することが困難となる。したがって、Cr含有量は1.0%以下、Mo含有量は0.50%以下、B含有量は0.010%以下とする。好ましくは、Cr含有量は0.50%以下、Mo含有量は0.20%以下、B含有量は0.0030%以下である。これらの元素の上記作用による効果をより確実に得るには、Cr:0.20%以上、Mo:0.05%以上およびB:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Ca、MgおよびREMは、介在物の形状を調整することにより、Biは、凝固組織を微細化することにより、ともに鋼板の伸びフランジ性を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Ca含有量は0.010%以下、Mg含有量は0.010%以下、REM含有量は0.050%以下、Bi含有量は0.050%以下とする。好ましくは、Ca含有量は0.0020%以下、Mg含有量は0.0020%以下、REM含有量は0.0020%以下、Bi含有量は0.010%以下である。これらの元素の上記作用による効果をより確実に得るには、Ca:0.0005%以上、Mg:0.0005%以上、REM:0.0005%以上およびBi:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。なお、REMとは希土類元素を意味し、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REM含有量はこれらの元素の合計含有量である。
Cuは、低温で析出して鋼板の強度を増加させる作用を有する。したがって、Cuを含有させてもよい。しかし、過度に含有させるとスラブの粒界割れなどを引き起こす恐れがある。したがって、Cu含有量は1.0%以下とする。好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.3%未満である。Cuの上記作用による効果をより確実に得るには、Cu含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
Niは、残留オーステナイトを安定化させる作用を有する。また、Cuを含有させる場合においてスラブの粒界脆化を抑制する作用を有する。したがって、Niを含有させてもよい。しかし、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Ni含有量は1.0%以下とする。Niの上記作用による効果をより確実に得るには、Ni含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
本発明に係る高張力熱延鋼板の板厚は特に制限されるものではないが、通常は1.0〜10.0mmの範囲内である。
本発明に係る熱延鋼板の組織は、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置および鋼板表面から100μm深さ位置での鋼組織に特徴を有する。ここで、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置は、鋼板表面と鋼板の板厚中心との中間点であるので、この位置での鋼組織は鋼板の平均的な組織を示している。一方、鋼板表面から100μm(=0.1mm)深さの位置での鋼組織は、鋼板の表面近傍における組織を示す。表面から数十μm深さまでの表層は、酸化スケールや冷却の影響によって組織が乱れる可能性があるので、そのような乱れを避けるために、表面から100μm深さ位置での組織によって鋼板表面近傍の組織を判断する。
鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの平均粒径が5.0μm超では、細粒化強化の効果が十分に得られない。したがって、下記式(1)を満足するものとする。下記式(1−1)を満足するものとすることが好ましく、下記式(1−2)を満足するものとすることがさらに好ましい。上記フェライトの平均粒径が小さいほど強化量が大きくなるので、上記フェライトの平均粒径の下限は特に規定しないが、1.0μmを下回ると延性の低下が著しくなって、強度−延性バランスが急激に低下する場合がある。したがって、上記フェライトの平均粒径は1.0μm以上とすることが好ましい。
Dαq≦3.5 (1−1)
Dαq≦3.0 (1−2)
ここで、Dαqは、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの平均粒径(μm)を表す。
鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率が50%未満では、細粒化強化の効果が十分に得られない。したがって、下記式(2)を満足するものとする。上記フェライトの面積率の上限は、後述する残留オーステナイトの体積率を確保する限りにおいて、特に規定しない。
ここで、Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率(%)を示す。
鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オーステナイトの体積率が3%未満では、十分な延性が得られない。したがって、下記式(3)を満足するものとする。上記残留オーステナイトの体積率が高ければ高いほど延性が向上するので、上記残留オーステナイトの体積率の上限は特に規定しないが、上記化学組成において確保し得る残留オーステナイト体積率は50%未満である。
ここで、Vγqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オーステナイトの体積率(%)を示す。
鋼板表面から100μm深さ位置でのフェライトの面積率が鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率以下であったり、鋼板表面から100μm深さ位置での残留オーステナイトの体積率が鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オーステナイトの体積率以下であったりすると、鋼板内部に比べて鋼板表面近傍の変形能を高めることができず、打ち抜き加工時の微小クラックの生成を抑制することが困難となる。また、フェライトと第二相との硬度差を低減することや残留オーステナイトの均一微細分散を促進することも不可能となって、微小クラックの伝播を抑制することが困難となり、結果として穴拡げ性を飛躍的に向上させることができない。したがって、下記式(4)および(5)を満足するものとする。
Vγs>Vγq (5)
ここで、
Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率(%)、
Vγqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オーステナイトの体積率(%)、
Vαsは鋼板表面から100μm深さ位置でのフェライトの面積率(%)、
Vγsは鋼板表面から100μm深さ位置での残留オーステナイトの体積率(%)、
をそれぞれ表す。
鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オーステナイトの平均粒径は2.0μm以下とすることが好ましい。上記残留オーステナイトの平均粒径を2.0μm以下とすることにより、硬質かつ粗大なマルテンサイトがTRIPによって生成するのを効果的に抑制することができ、これにより穴拡げ性が一層向上する。また、残留オーステナイトをより均一・多量に分散させることができるので、TRIPが効率的に起こることにより、延性が一層向上する。残留オーステナイトの平均粒径はさらに好ましくは1.0μm以下、特に好ましくは0.8μm以下である。なお、残留オーステナイトの平均粒径は、電子線後方散乱回折パターン(EBSP)解析においてオーステナイト相と判定された部分の粒径を算術平均することにより求められる。
本発明に係る高張力熱延鋼板は、優れた延性と穴拡げ性とを有するが、プレス成形性の観点から、その機械特性は引張強度(TS)、全伸び(El)、穴拡げ率(HER)が下記式(6)〜(8)を満足することが好ましい。
TS×El≧20×103 (7)
(TS1.7×HER)+(TS×El)×103≧28×106 (8)
(TS1.7×HER)値が4×106以上であれば伸びフランジ性において非常に優れており、(TS×El)値が20×103以上であれば延性において非常に優れている。さらに{(TS1.7×HER)+(TS×El)×103}が28×106以上であれば延性−伸びフランジ性のバランスに優れ、プレス成形性時における割れやしわの発生を効果的に抑制することができる。(TS1.7×HER)値は4.2×106以上であることがさらに好ましく、4.5×106以上であることが特に好ましい。また、(TS×El)値は21×103以上であることがさらに好ましく、23×103以上であることが特に好ましい。また、{(TS1.7×HER)+(TS×El)×103}値は29×106以上であることがさらに好ましく、30×106以上であることが特に好ましい。
本発明に係る熱延鋼板は、上述した化学組成および鋼組織を有するものであればよく、その製造方法は特に限定されないが、本発明の熱延鋼板を得るのに好適な製造方法を以下に説明する。
熱間多パス圧延を行うに際し、その圧延温度はAr3点以上かつ800℃以上とすることが好ましい。圧延温度がAr3点未満では、圧延中にフェライト変態が生じ、加工フェライト粒が混在した鋼組織となり、延性が劣化する場合がある。また、800℃未満では、熱延鋼板の集合組織が過度に発達してしまい、穴拡げ性が劣化する場合がある。
最終圧延パスにおける圧下率を20%以上、かつ、最終圧延パスの2つ前の圧延パスから最終圧延パスまでの3つの圧延パスにおける合計圧下率を50%以上とすることが好ましい。従って、熱間圧延は3パス以上の多パス圧延により行うことが好ましい。
熱間圧延された鋼板に対し、熱間圧延完了後0.4秒以内に720℃以下の温度域まで冷却されるように400℃/s以上の平均冷却速度で一次冷却を施すことが好ましい。
鋼板の一次冷却を720〜550℃の温度域の温度T1(℃)で停止し、T1(℃)から500℃の温度範囲に0.5〜20秒間保持することが好ましい。
巻取温度が500℃を超えるとパーライトが生成して残留オーステナイト量が減少し、延性が低下する。したがって、巻取温度は500℃以下とする。好ましくは450℃以下である。一方、巻取温度が300℃未満ではマルテンサイトの生成が促進され、延性と穴拡げ性がともに劣化する。したがって巻取温度は300℃以上とする。好ましくは350℃以上である。
(めっき層)
本発明に係る熱延鋼板の表面(片面または両面)には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を備えさせて表面処理鋼板としてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
めっき層に代えて、またはそれに重ねて、本発明に係る熱延鋼板の表面を有機樹脂で被覆して塗装鋼板とすることも可能である。有機樹脂皮膜には、例えば、潤滑成分を含有させて潤滑性を付与するなど、防錆顔料を含有させて防錆性を付与するなど、用途に応じて望ましい特性をもたせることができる。
Claims (8)
- 質量%で、C:0.08%超0.30%未満、Si:3.0%以下、Mn:1.0%以上4.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:3.0%以下、N:0.010%以下を含有し、かつSi+sol.Alの合計含有量が0.8%以上3.0%以下であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するとともに、下記式(1)〜(5)を満足する鋼組織を有することを特徴とする熱延鋼板。
Dαq≦5.0 (1)
Vαq≧50 (2)
Vγq≧3 (3)
Vαs>Vαq (4)
Vγs>Vγq (5)
ここで、
Dαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの平均粒径(μm)、
Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率(%)、
Vγqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オーステナイトの体積率(%)、
Vαsは鋼板表面から100μm深さ位置でのフェライトの面積率(%)、
Vγsは鋼板表面から100μm深さ位置での残留オーステナイトの体積率(%)、
をそれぞれ表す。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.10%以下、Ti:0.20%以下およびV:0.20%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有する、請求項1または請求項2に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有する、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、Cu:1.0質量%以下を含有する、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、Ni:1.0質量%以下を含有する、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱延鋼板。
- 引張強度(TS)、全伸び(El)および穴拡げ率(HER)が下記式(6)〜(8)を満足する機械特性を有する請求項1〜請求項6のいずれかに記載の熱延鋼板。
TS1.7×HER≧4×106 (6)
TS×El≧20×103 (7)
(TS1.7×HER)+(TS×El)×103≧28×106 (8) - 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の化学組成を有する鋼塊または鋼片に、Ar3点以上かつ800℃以上の温度で3パス以上の多パス熱間圧延を施して鋼板となし、この熱間圧延を、最終圧延パスにおける圧下率が20%以上、最終圧延パスの2つ前の圧延パスから最終圧延パスまでの3つの圧延パスにおける合計圧下率が50%以上となる条件で完了し、熱間圧延完了後0.4秒以内に720℃まで400℃/s以上の平均冷却速度で鋼板を冷却する一次冷却を行い、この一次冷却を720〜550℃の温度域内の温度T1(℃)で停止した後、鋼板をT1(℃)から500℃までの温度範囲に0.5〜20秒間保持し、500〜300℃の温度域で巻き取ることを特徴とする、熱延鋼板の製造方法。
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