JP2013039015A - 永久磁石同期電動機の駆動制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、数学モデルに立脚した永久磁石同期電動機の駆動制御方法に関する。特に、永久磁石磁束がq軸電流により軸間磁束干渉を受ける永久磁石同期電動機に対して、軸間磁束干渉の影響を排除して電動機を適切に駆動できる制御方法を提供する。
【解決手段】 固定子電流の制御を担う電流制御器6には、軸間磁束干渉を考慮に入れた非干渉器を備えさせ、高精度な電流制御を可能とした。また、マグネットトルク指令値からq軸電流指令値の生成を担う補正形指令生成器10には、軸間磁束干渉を考慮に入れた非線形な変換を遂行させ、高精度な電流制御と共に、トルク指令値通りのマグネットトルクを発生できるようにし、課題を解決した。
【選択図】図3
【解決手段】 固定子電流の制御を担う電流制御器6には、軸間磁束干渉を考慮に入れた非干渉器を備えさせ、高精度な電流制御を可能とした。また、マグネットトルク指令値からq軸電流指令値の生成を担う補正形指令生成器10には、軸間磁束干渉を考慮に入れた非線形な変換を遂行させ、高精度な電流制御と共に、トルク指令値通りのマグネットトルクを発生できるようにし、課題を解決した。
【選択図】図3
Description
本発明は、界磁に永久磁石を利用した永久磁石同期電動機の駆動制御方法に関する。特に、永久磁石から発した永久磁石磁束に影響を受ける電流応答の制御、マグネットトルクの制御を中心とした永久磁石同期電動機の駆動制御方法を提供するものである。
永久磁石同期電動機の高性能な制御は、ベクトル制御法により達成することができる。ベクトル制御法は、モデルベースド(model based)な制御法であり、永久磁石同期電動機の主要特性(電気回路的特性、トルク発生特性)を簡潔に数式表現した数学モデルに立脚して構築される。本構築原理により明らかなように、数学モデルの変更は、これに立脚したベクトル制御法に相応の影響・変更をもたらす。
従来の数学モデルは、以下のような理想的ともいえる前提を設けるもであり、また従来の電動機に対しては実際的であり有用であった。
(a) u、v、w相の各巻線の電気磁気的特性は同一である。
(b) 電流、磁束の高調波成分は無視できる。
(c) 正弦着磁がなされている。
(d) 磁気回路の飽和特性などの非線形特性は無視できる。
(e) 磁気回路での損失である鉄損は無視できる。
(f) 磁気回路でのdq軸間磁束干渉は無視できる。
(a) u、v、w相の各巻線の電気磁気的特性は同一である。
(b) 電流、磁束の高調波成分は無視できる。
(c) 正弦着磁がなされている。
(d) 磁気回路の飽和特性などの非線形特性は無視できる。
(e) 磁気回路での損失である鉄損は無視できる。
(f) 磁気回路でのdq軸間磁束干渉は無視できる。
永久磁石同期電動機の特長の一つは、電動機の単位体積当たりの軸出力を比較的大きくできる点にある。本特長の一層の向上を図る場合には、他軸電流による軸間磁束干渉が発生し、ひいては発生トルクの低下が起きることがある。このような場合には、上記前提(f)はもはや成立しない。
他軸による磁束干渉を考慮した数学モデルに関する先行発明は、後掲の特許文献1、非特許文献1〜5がある。これら先行発明は、例外なく、「永久磁石に起因する永久磁石磁束は他軸の軸間干渉は受けない」ものとして、電機子反作用磁束における軸間磁束干渉をモデル化するものである。特に、特許文献1、非特許文献1は、電機子鎖交磁束(電機子磁束ともいう)をd軸電流、q軸電流を用いた非線形関数でモデル化しているが、「本磁束モデルにおいても、永久磁束磁束は一定」としている。
永久磁石同期電動機が発生するトルクは、一般に、リラクタンストルクとマグネットトルクに二分される。前者のリラクタンストルクは、電動機電機子のインダクタンスに蓄積された磁気エネルギーの空間的非一様性に起因するトルクであり、電機子反作用磁束に直接的に関連している。これに対して後者のマグネットトルクは、フレミングの左手則に基づくトルクであり、永久磁石磁束に直接的に関連している。両トルクを発生する永久磁石同期電動機(すなわち、突極形同期電動機)の多くにおいては、支配的なトルクはマグネットトルクである。特に、非突極(円筒形)の永久磁石同期電動機は、マグネットトルクのみを発生する。しかしながら、上に説明したように、マグネットトルクに直接的な影響を与える永久磁石磁束への軸間干渉を考慮した数学モデル、さらにはこれに基づく駆動制御方法に関する研究、技術開発は見受けられない。
回転形の電動機においては、電機子は固定子であり、界磁を担う永久磁石は回転子に装着されている。一方、直動形のリニア電動機においては、永久磁石が固定され、電機子が可動子となることが多い。以降の説明では、生産量で回転形電動機が圧倒している事実を考慮し、次の各用語を同義で使用する。すなわち、電機子と固定子、電機子鎖交磁束(電機子磁束)と固定子鎖交磁束(固定子磁束)、電機子反作用磁束と固定子反作用磁束、電機子電流と固定子電流、永久磁石磁束と回転子磁束、等である。
中津川潤之助・岩崎則久・名倉寛和・岩路善尚:「磁気飽和およびdq軸間干渉を考慮した永久磁石同期モータの数式モデルの提案」、電気学会論文誌D、130,11,pp.1212−1220(2010−11)
B.Stumberger,G.Stumberger,D.Dolinar,A.Hamler,and M.Trlep: "Evaluation of Saturation and Cross−Magnetization Effects in Interior Permanent−Magnet Synchronous Motor",IEEE Trans. Industry Applications,Vol. 39,No. 5,pp.1264−1271(2003−9)
G.Almandoz,J.Poza,M.A.Rodriguez,and A.Gonzalez: "Modeling of Cross−Magnetization Effect in Interior Permanent Magnet Machines",Proc. of 18th International Conference on Electrical Machines(ICEM 2008),pp. 1−6(2008−9)
M.Seilmeter and B.Piepenbreier: "Modeling of PMSM with Multiple Saliencies Using a Stator−Oriented Magnetic Circuit Approach",Proc. of International Electric Machines and Drives Conference(IEMDC 2011),pp.131−136(2011−5)
T.Herold,D.Franck,E.Lange,and K.Hameyer: "Extenstion of a D−Q Model of a Permanent Magnet Excited Synchronous Machine by Including Saturation,Cross−Coupling and Slotting Effects",Proc. of International Electric Machines and Drives Conference(IEMDC 2011),pp.1379−1383(2011−5)
本発明は上記背景の下になされたものであり、その主たる目的は以下の通りである。
1) 回転子磁束への軸間磁束干渉を考慮した数学モデルを新規に提供し、本数学モデルに立脚した永久磁石同期電動機の新規な駆動制御方法を提供する。
2) 特に、回転子磁束への軸間磁束干渉がある場合にも、マグネットトルク指令値通りにマグネットトルクが発生される永久磁石同期電動機の新規な駆動制御方法を提供する。
1) 回転子磁束への軸間磁束干渉を考慮した数学モデルを新規に提供し、本数学モデルに立脚した永久磁石同期電動機の新規な駆動制御方法を提供する。
2) 特に、回転子磁束への軸間磁束干渉がある場合にも、マグネットトルク指令値通りにマグネットトルクが発生される永久磁石同期電動機の新規な駆動制御方法を提供する。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、電動機数学モデルに基づく、電機子電流の制御を伴う永久磁石同期電動機の駆動制御方法であって、電機子に鎖交した永久磁石磁束のベクトル位相にd軸位相が同期したdq同期座標系上で評価した電機子電流のq軸要素をq軸電流とするとき、該電動機数学モデルが、永久磁石磁束をq軸電流の関数として表現した数式あるいは本数式に準じた数式を含むことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1記載の永久磁石同期電動機の駆動制御方法であって、該q軸電流をiqとし、該dq同期座標系上で評価した永久磁石磁束のd軸要素をφmdとし、特にq軸電流がゼロのときの永久磁石磁束のd軸要素をΦとするとき、永久磁石磁束のq軸電流による該関数を、係数Klを用いた次の1次近似式
とすることを特徴とする。
請求項3の発明は、電動機数学モデルに基づく、電機子電流の制御を伴う永久磁石同期電動機の駆動制御方法であって、電機子に鎖交した永久磁石磁束のベクトル位相にd軸位相が同期したdq同期座標系上で評価した電機子電流のq軸要素をq軸電流とするとき、該電動機数学モデルが、永久磁石磁束に起因するマグネットトルクをq軸電流の非線形関数として表現した数式あるいは本数式に準じた数式を含むことを特徴とする。
請求項1の発明の効果を説明する。効果の説明に先だち、これに必要な座標系の説明を行う。図1を考える。同図には、α軸の位相がu相巻線の中心と一致したαβ固定座標系、d軸位相が回転子磁束のベクトル位相(回転子永久磁石のN極位相と同一)と同一のdq同期座標系、任意の(角)速度ωγで回転するγδ一般座標系を描画している。dq同期座標系の速度は、回転子の速度ω2nと同一である。また、α軸からみたd軸の位相をθα、γ軸からみたd軸の位相をθγとしている。なお、本発明におけるベクトル位相とは、磁束等の電動機物理量を2×1ベクトルとして捕らえた場合のベクトルの位相をいう。
段落0003に示した前提が実質的に成立する状況下では、回転子磁束φmは、dq同期座標系上、γδ一般座標系上、αβ固定座標系上では、各々次式で記述される。
なお、回転子磁束φmの脚符は関連座標系を示している。(3)式においては、2×1ベクトルとしの回転子磁束のノルムは、固定子電流の如何にかかわらず一定値Φをとる。すなわち、
ところが、前提(f)が成立しない永久磁石同期電動機にいては、回転子磁束ノルムを一定とすることは、数学モデル内で矛盾が発生し、合理的な数学モデルを構築することができない。ひいては、数学モデルに基づいた合理的な駆動制御法を確立することができない。
本発明は前提(f)が成立しない同期電動機を対象としたものであり、請求項1の発明は、回転子磁束φmを、dq同期座標系上、γδ一般座標系上、αβ固定座標系上で次のようにq軸電流iqを用いて数式表現する。
(5a)式は、永久磁石磁束をq軸電流の関数として表現した数式に該当する。また、位相情報θγ、θαを含む(5b)、(5c)式は、永久磁石磁束をq軸電流の関数として表現した数式に準じた数式に該当することになる。(5)式に関しては、次の関係が成立する。
(5)、(6)式におけるq軸電流を変数とする関数f(iq)は、一般には、q軸電流絶対値に関して単調減少な関数であり、q軸電流に関し偶関数である。
本発明は前提(f)が成立しない同期電動機を対象としたものであり、請求項1の発明は、回転子磁束φmを、dq同期座標系上、γδ一般座標系上、αβ固定座標系上で次のようにq軸電流iqを用いて数式表現する。
誘起電圧(速度起電力、逆起電力ともいう)は、回転子磁束の回転に伴い発生する。本発明による誘起電圧emは、dq同期座標系上、γδ一般座標系上、αβ固定座標系上では、(5)式に対応した次式で表現することになる。
上式において、誘起電圧emの脚符は関連座標系を、また、ω2nは回転子の電気速度を意味する。
(5)式の回転子磁束ひいては(7)式の誘起電圧を利用した数学モデルの回路方程式、特に電流制御器の設計に必要なdq同期座標系上での回路方程式は、次式となる。
上式におけるR1、Ld、Lqは固定子の抵抗、d軸インダクタンス、q軸インダクタンスであり、vd、vq、idは固定子のd軸電圧、q軸電圧、d軸電流である。またsは微分演算子d/dtである。(8)式の回路方程式に従うならば、図2に例示したような非干渉器を備えた電流制御器を構成することができる。なお、同図においては頭符*をもつ信号は、関連応答信号の指令値を意味する。
電力変換器(インバータ)が、電圧指令値通りの電圧を実質的に発生する場合には、電圧指令値と同応答値は、実質的に同一と見なしてよい。この場合には、非干渉器の効果により、(8)式と図2より、次の関係が成立する。
すなわち、固定子の電圧と電流の関係は、単純な一次遅れの関係となる。ひいては、固定子電流を容易にかつ精度良く制御できる電流制御器を設計でき、電流制御系を構成できるようになる(なお、本発明による電流制御系の具体的な構成例は、実施例の欄で詳しく説明する)。
以上の説明より明らかなように、請求項1の発明によれば、回転子磁束が軸間干渉を受ける場合にも、固定子電圧と固定子電流の関係を実質的に単純な1次遅れの関係にできる作用が得られ、ひいては、固定子電流を容易にかつ精度良く制御できるようになるという効果が得られる。
請求項2の発明の効果を説明する。請求項2の発明は、請求項1の発明における(5)、(6)式に用いたq軸電流を変数とする関数f(iq)を、次式のように特に1次偶関数で近似するものである。
上式におけるΦは、q軸電流がゼロのときの回転子磁束d軸成分である。(10)式に提示した1次偶関数は、回転子磁束への軸間磁束干渉を記述し得る最小次数の最もコンパクトな数式である。ひいては、請求項2の発明によれば、請求項1による作用・効果を最少の計算量で達成できるという効果が得られる。
請求項3の発明の効果を説明する。段落0003に示した前提が実質的に成立する状況下では、(3a)式の回転子磁束に対応したマグネットトルクτmは、q軸電流の線形関数である次式で記述されることが知られている。
ところが、前提(f)が成立しない永久磁石同期電動機にいては、マグネットトルクをq軸電流の線形関数で表現することは、数学モデル内で矛盾が発生し、合理的な数学モデルを構築することができない。ひいては、数学モデルに基づいた合理的な駆動制御法を確立することができない。
本発明は前提(f)が成立しない同期電動機を対象としたものであり、請求項3の発明は、マグネットトルクをq軸電流iqを用いて次のように数式表現する。
(12)式におけるq軸電流を変数とする関数g(iq)は、一般には、q軸電流に対して非線形な奇関数である。
特に、(5)式の回転子磁束を表現した関数f(iq)との整合を図る場合には、関数g(iq)は次式としなければならない。
(5)式に対応した形で、マグネットトルクを2×1ベクトルを用いて表記する場合には、(13)式のマグネットトルクは、dq同期座標系上、γδ一般座標系上、αβ固定座標系上では、次の各式の右辺のように記述される。
上式においては、固定子電流i1の脚符は、ベクトルが定義された座標系を示している。
また、Jは次の2×2交代行列である。
(12)、(13)、(14a)式は、永久磁石磁束に起因するマグネットトルクをq軸電流の非線形関数として表現した数式に該当し、γδ一般座標系上の(14b)式右辺、αβ固定座標系上の(14c)式右辺は、永久磁石磁束に起因するマグネットトルクをq軸電流の非線形関数として表現した数式に準じた数式に該当することになる。
また、Jは次の2×2交代行列である。
永久磁石同期電動機の固定子電流制御には、図2に例示したように、d軸電流指令値id*、q軸電流指令値iq*の生成が必要である。マグネットトルクにはd軸電流は寄与しないので、マグネットトルクのためのd軸電流指令値は基本的にはゼロに設定する。一方、q軸電流指令値は、発生すべきマグネットトルク(より実際的には、マグネットトルク指令値)に対応した形で決定しなければならない。請求項3の本発明によれば、マグネットトルクとq軸電流は(12)式の関係に従うことになるので、本式をq軸電流について求解し、応答値を指令値に置換した次式に従い得ることができる。
上式の*は関連応答値に対応した指令値を意味する。電流制御が適切の動作する場合には、電流応答値は電流指令値と実質的に等しくなるので、(12)、(16)式より、次式が成立する。
上式は、請求項3の発明によれば、回転子磁束が軸間磁束干渉を受ける永久磁石同期電動機に対しても、マグネットトルク指令値通りのマグネットトルクが発生できるようになるという効果が得られることを示している。本発明によれば、マグネットトルク指令値通りのマグネットトルクが得られるので、電流制御系の上位に速度制御系、位置制御系を構成する場合には、精度のよい速度制御系、位置制御系の構成が可能となるという効果も得られる。
続いて、請求項4の発明の効果を説明する。請求項4の発明は、請求項3の発明における(12)、(13)式に用いたq軸電流を変数とする関数g(iq)を、次式のように特に2次奇関数で近似するものである。
上式におけるΦは、q軸電流がゼロのときの回転子磁束d軸成分である。(18)式に提示した2次奇関数は、回転子磁束への軸間磁束干渉を考慮したトルク式を表現した最小次数の最もコンパクトな非線形関数であり、この逆関数は以下のように直ちに得ることができる。
上式におけるsgn関数は、変数の極性に応じ1、0、−1の値を示す符号関数である。上式に従い、q軸電流指令値iq*はトルク指令値τm*より以下のように直ちに決定される。
以上の説明より明らかなように、請求項4の発明によれば、トルク指令値からq軸電流指令値を簡単に生成できると言う効果が得られる。ひいては、請求項4の発明によれば、請求項3による作用・効果を容易に達成できるという効果が得られる。
以下、図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明する。永久磁石同期電動機に対し、本発明の駆動制御方法を適用した1例を図3に示す。1は永久磁石同期電動機を、2は電力変換器を、3は電流検出器を、4a、4bは夫々3相2相変換器、2相3相変換器を、5a、5bは共にベクトル回転器を、6は本発明を利用した非干渉器を備えた電流制御器を、7は位相検出器を、8は速度検出器を、9は余弦正弦信号発生器を、10は本発明を利用した補正形指令変換器を、11は速度制御器を、各々示している。図3では、1の電動機を除く、2から11までの諸機器が制御方法を構成している。本図では、簡明性を確保すべく、2×1のベクトル信号を1本の太い信号線で表現している。以下のブロック図表現もこれを踏襲する。なお、本図では、ベクトル信号である固定子電流、固定子電圧の定義された座標系を明示すべく、これらベクトル信号に脚符r(dq同期座標系)、s(αβ固定座標系)、t(uvw座標系)を付している。
電流検出器3で検出された3相の固定子電流は、3相2相変換器4aでαβ固定座標系上の2相電流に変換された後、ベクトル回転器5aでdq同期座標系の2相電流に変換される。変換電流は、非干渉器を備えた電流制御器6へ送られる。非干渉器を備えた電流制御器6は、dq同期座標系上の2相電流が、各相の電流指令値に追随すべくdq同期座標系上の2相電圧指令値を生成する。dq同期座標系上の2相電圧指令値はベクトル回転器5bへ送られる。5bでは、dq同期座標系上の電圧指令値をαβ固定座標系の2相電圧指令値に変換し、2相3相変換器4bへ送る。4bでは、2相電圧指令値を3相電圧指令値に変換し、電力変換器2への最終指令値として出力する。電力変換器2は、電圧指令値に応じた電圧を発生し、永久磁石同期電動機1へ印加しこれを駆動する。
上述のように、非干渉器を備えた電流制御器6の役割は、dq同期座標系上の2相電流が、各相の電流指令値に正確に追随すべくdq同期座標系上の2相電圧指令値を生成することにある。これには、効果の欄で説明したように非干渉器が重要な役割を担う。非干渉器を備えた電流制御器6の基本構成は、図2の通りである。図3では、非干渉器を備えた電流制御器6への入力は、d軸電流指令値、q軸電流指令値、d軸電流応答値、q軸電流応答値、回転子電気速度の5種としている。一方、図2では、非干渉器に用いる非干渉信号は、外部から入力されるように描画している。図2の作図は、図の輻輳を避けるための工夫を施している。実際には、非干渉信号は、非干渉器を備えた電流制御器への入力信号から、同電流制御器内で合成されることになる。非干渉器の合成に利用する偶関数f(iq)としては、簡単には、請求項2の発明による(10)式を用いればよい。
本発明による非干渉器を備えた電流制御器の構成は図2を基本とするが、実際の構成は、本基本に限定するものではない。図2では、非干渉器に用いる非干渉信号の合成に電流、電気速度の実測値を利用するように描画しているが、非干渉信号の合成には、電流、電気速度の相当値を利用してよい。信号の相当値としては、信号の推定値、指令値、フィルタ処理値などがある。当然のことながら、非干渉器の合成に利用する相当信号に応じて、非干渉器を備えた電流制御器6への入力信号は、異なることになる。
主要発生トルクをマグネットトルクとする場合には、非干渉器を備えた電流制御器6への入力信号であるd軸電流指令値はゼロに、q軸電流指令値はトルク指令値から生成することになる。トルク指令値からq軸電流指令値の生成を担っているのが、図3の補正形指令変換器10である。補正形指令変換器は、請求項3の発明に基づく(12)〜(15)式に従った(16)式のように構成されている。簡単には、これは、請求項4の発明に基づく(18)、(19)式に従った(20)式を構成すればよい。
マグネットトルク指令値τm*は、トルク制御を遂行する場合には外部より直接的に与え、速度制御を遂行する場合には速度制御器の出力より得ることになる。図3では、この様子を示している。当然のことながら、トルク制御の場合には、機械速度指令値ω2mと同応答値ω2m*を入力とする速度制御器11は不要である。また、位置制御を行う場合には、速度制御器を備えた速度制御系の上位に、位置制御器を備えた位置制御系を構成することになる。速度制御器を用いた速度制御系、位置制御器を用いた位置制御系の構成は、回転子磁束への軸間磁束干渉が無い場合と基本的に同一であり、当業者には公知であるので、この説明は省略する。
実施例2では、発生トルクはマグネットトルクのみであり、トルク指令値はマグネットトルク指令値そのものであった。次に、マグネットトルクに加えてリラクタンストルクを発生する実施例を示す。一般には、突極形同期電動機は、マグネットトルクτmにリラクタンストルクτrを加えたトルクτを発生することができる。すなわち、
(21)式のおけるrτは、トルク比すなわちマグネットトルクに対するリラクタンストルクの比である。(21)式より理解されるように、マグネットトルク、リラクタンストルクは、トルク比を利用することにより、トルクより次のように算定される。
このとき、d軸電流とリラクタンストルクとは、次の関係を有する。
(22)、(23)式を利用すると、マグネットトルク指令値とリラクタンストルク指令値からなるトルク指令値から、d軸電流指令値、q軸電流指令値を生成するブロックとして、図4を構成することができる。図4では、先ず、トルク指令値τ*から、(22)式の関係に従い、マグネットトルク指令値τm*とリラクタンストルク指令値τr*を生成している。次に、マグネットトルク指令値から、補正形指令変換器10を利用してq軸電流指令値iq*を生成している。このときの補正形電流指令値としては、図3の実施例と同一のものを利用することができる。続いて、リラクタンストルク指令値から、(23)式の関係を利用してd軸電流指令値id*を生成している。このときのd軸電流指令値は非正、すなわち負またはゼロである。マグネットトルクに加えてリラクタンストルクを発生する場合には、図3において、ゼロ値のd軸電流指令値とq軸電流指令値を生成を担う補正形指令変換器10を、図4の拡張指令変換器10−1のブロックで差し換えればよい。
本発明においては、トルク指令値τ*に応じてトルク比を変更するようにすれば、効率的なトルク発生をもたらす電流指令値の生成が可能となる。さらには、回転子速度、電力変換器のバス電圧(リンク電圧ともいう)に応じてトルク比を変更するようにすれば、高速回転が可能なトルク発生をもたらす電流指令値の生成が可能となる。
マグネットトルクに加えてリラクタンストルクの発生をもたらすq軸電流指令値、d軸電流指令値の生成法は、請求項3あるいは請求項4の本発明に従うならば、図4の実施例以外の構成も可能であることを指摘しておく。
請求項1または請求項2の発明は、図2、図3を用いて説明した固定子電流制御のみならず、センサレスベクトル制御における回転子位相推定等、同期電動機の駆動制御上で必要とされる他の機能にも利用可能であることを指摘しておく。
本発明は、回転子磁束への軸間磁束干渉を有する永久磁石同期電動機を用いた応用の中で、特に、高精度のトルク発生を必要とする用途に好適である。
1 永久磁石同期電動機
2 電力変換器
3 電流検出器
4a 3相2相変換器
4b 2相3相変換器
5a ベクトル回転器
5b ベクトル回転器
6 非干渉器を備えた電流制御器
6−1 基本電流制御器
6−2 非干渉器
7 位相検出器
8 速度検出器
9 余弦正弦信号発生器
10 補正形指令変換器
10−1 拡張指令変換器
11 速度制御器
2 電力変換器
3 電流検出器
4a 3相2相変換器
4b 2相3相変換器
5a ベクトル回転器
5b ベクトル回転器
6 非干渉器を備えた電流制御器
6−1 基本電流制御器
6−2 非干渉器
7 位相検出器
8 速度検出器
9 余弦正弦信号発生器
10 補正形指令変換器
10−1 拡張指令変換器
11 速度制御器
Claims (4)
- 電動機数学モデルに基づく、電機子電流の制御を伴う永久磁石同期電動機の駆動制御方法であって、
電機子に鎖交した永久磁石磁束のベクトル位相にd軸位相が同期したdq同期座標系上で評価した電機子電流のq軸要素をq軸電流とするとき、該電動機数学モデルが、永久磁石磁束をq軸電流の関数として表現した数式あるいは本数式に準じた数式を含むことを特徴とする永久磁石同期電動機の駆動制御方法 - 電動機数学モデルに基づく、電機子電流の制御を伴う永久磁石同期電動機の駆動制御方法であって、
電機子に鎖交した永久磁石磁束のベクトル位相にd軸位相が同期したdq同期座標系上で評価した電機子電流のq軸要素をq軸電流とするとき、該電動機数学モデルが、永久磁石磁束に起因するマグネットトルクをq軸電流の非線形関数として表現した数式あるいは本数式に準じた数式を含むことを特徴とする永久磁石同期電動機の駆動制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011183118A JP2013039015A (ja) | 2011-08-08 | 2011-08-08 | 永久磁石同期電動機の駆動制御方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011183118A JP2013039015A (ja) | 2011-08-08 | 2011-08-08 | 永久磁石同期電動機の駆動制御方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2013039015A true JP2013039015A (ja) | 2013-02-21 |
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Family Applications (1)
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JP2011183118A Withdrawn JP2013039015A (ja) | 2011-08-08 | 2011-08-08 | 永久磁石同期電動機の駆動制御方法 |
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JP (1) | JP2013039015A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110086400A (zh) * | 2019-05-06 | 2019-08-02 | 北京精密机电控制设备研究所 | 一种机电伺服系统非线性变增益控制方法和系统 |
CN111027255A (zh) * | 2019-12-25 | 2020-04-17 | 哈尔滨工业大学 | 一种永磁同步电机空载电流仿真分析方法 |
CN111211716A (zh) * | 2020-01-07 | 2020-05-29 | 湖南大学 | 一种效率优化的pmsm电流预测控制方法及系统 |
-
2011
- 2011-08-08 JP JP2011183118A patent/JP2013039015A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN110086400A (zh) * | 2019-05-06 | 2019-08-02 | 北京精密机电控制设备研究所 | 一种机电伺服系统非线性变增益控制方法和系统 |
CN111027255A (zh) * | 2019-12-25 | 2020-04-17 | 哈尔滨工业大学 | 一种永磁同步电机空载电流仿真分析方法 |
CN111211716A (zh) * | 2020-01-07 | 2020-05-29 | 湖南大学 | 一种效率优化的pmsm电流预测控制方法及系统 |
CN111211716B (zh) * | 2020-01-07 | 2023-05-16 | 湖南大学 | 一种效率优化的pmsm电流预测控制方法及系统 |
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