JP2013032683A - 防波堤構造および引波補強機構 - Google Patents

防波堤構造および引波補強機構 Download PDF

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Abstract

【課題】津波などが発生したときの引波に対する防波堤の破壊抵抗力を増大可能な防波堤構造およびそのための引波補強機構を提供する。
【解決手段】この防波堤構造は、複数のケーソンKSが並べられて構築される防波堤構造であって、ケーソンの港外側の前面Fに配置されたストッパ部材11と、ケーソンの港内側の背面側に設置されたカウンタ部材12と、ケーソン間の隙間に配置されてストッパ部材とカウンタ部材とを連結する連結部材13と、を有する引波補強機構10を備え、引波補強機構は、ケーソンの背面に引波波力が作用したとき、引波波力に抗してケーソンに抵抗力を作用させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、引波に対する補強構造を有する防波堤構造およびそのための引波補強機構に関する。
防波堤は、図9(a)のように、一般的に捨石マウンドMを水底に構築し、その上に重力式のケーソンKSを設置することで完成させる。防波堤の被害は一般的に、津波などのような強い波の力により、水平方向への滑動や転倒によりマウンドから転げ落ちる形態が多い。押波に対する防波堤の補強方法として、図9(a)のように、ケーソンの背面Bに裏込石(または被覆石)BSにより裏込を設置して、前面からの押波波力に対して抵抗力を増加させる方法があり、経済的に優れた方法である(非特許文献1参照)。
また、図9(c)のように、ケーソンKSの上部から緊張材STを鉛直方向に捨石マウンドまたは捨石マウンド下のアンカーACまで延ばして配置し、ケーソンKSの上部の定着体FCで緊張させてアンカー構造体を構築することで、ケーソンを補強して定着させる港湾構造物の補強方法・補強構造が提案されている(特許文献1参照)。
特開2011−220028号公報
菊地・新舎・河村・江口「裏込めを有するケーソン式混成堤の安定性の検討」土木学会論文集C(地圏工学)Vol.67,No.4,474-487,2011
図9(a)のようにケーソンKSの背面Bに裏込石BSにより裏込を構築する方法は、押波時に防波堤が背後に移動して被災することを防ぐことには有効であるが、図9(b)のように引波時に背面Bに対し引波波力が作用したとき、ケーソンKSが前面F側に移動し被災することを防ぐことには役立たない。
また、特許文献1のような港湾構造物の補強方法・補強構造は、図9(c)のように、捨石マウンドまたは捨石マウンド下の地盤内にアンカーを増築しなければならないため、大掛かりな作業となる。また、アンカーによる連結は、一般的に大きなアンカーが必要となるため、上述の補強構造におけるアンカーは極めて巨大なものにする必要がある。
また、一般に、防波堤のケーソンは、多量の鉄筋を有するRC構造となるため、構造上、一旦製作した後に、壁に孔を設ける等の手入れを施すと構造の安全性が損なわれる。アンカーから延びる緊張材STを貫通させるためにケーソンに貫通孔を設けることから、ケーソン補強のためその開口部の処理が必要となるなどの問題が生じる。
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、津波などが発生したときの引波に対する防波堤の破壊抵抗力を増大可能な防波堤構造およびそのための引波補強機構を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本実施形態による防波堤構造は、複数のケーソンが並べられて構築される防波堤構造であって、前記ケーソンの港外側の前面に配置されたストッパ部材と、前記ケーソンの港内側の背面側に設置されたカウンタ部材と、前記ケーソン間の隙間に配置されて前記ストッパ部材と前記カウンタ部材とを連結する連結部材と、を有する引波補強機構を備え、前記引波補強機構は、前記ケーソンの背面に引波波力が作用したとき、前記引波波力に抗して前記ケーソンに抵抗力を作用させることを特徴とする。
この防波堤構造によれば、引波補強機構を設置することで、ケーソンの背面に引波波力が作用しても、ストッパ部材とカウンタ部材とを連結する連結部材を介してケーソンに引波波力と反対方向のテンションが作用するので、ケーソンの引波波力に抵抗する抵抗力が大きくなる。また、複数のケーソンを連続して配置して防波堤を所定の距離にして完成させると、各ケーソン間には0.1〜0.3m程度の隙間(目地)が生じるが、この隙間を利用して引波補強機構の連結部材を簡単に配置することができ、構造が簡単であり施工が容易となり、また、ケーソンに対し特別な加工などは不要である。
前記ケーソンの背面に裏込材料を堆積させて裏込を構築し、前記カウンタ部材を前記裏込材料により支持させて設置することが好ましい。ケーソンの背面とカウンタ部材との間の裏込め材料の存在によって引波波力に対する抵抗力が増す。
前記ストッパ部材は前記ケーソンとその隣のケーソンとの間に配置されることが好ましい。
この場合、前記ストッパ部材が前記ケーソン間の隙間の大部分を塞ぐように構成されることで、ケーソン間における洗掘防止を図ることができる。
前記ストッパ部材は前記各ケーソンの前面に個別に配置されるようにし、各ケーソン毎に引波補強機構を設置するようにしてもよい。
なお、前記カウンタ部材は、前記ケーソンが設置される基礎マウンドに接する底版を有することが好ましい。また、前記カウンタ部材は、前記ケーソンが設置される基礎マウンドに対し鉛直方向乃至傾斜方向に延びる鉛直版または傾斜版を有することが好ましい。
本実施形態による引波補強機構は、上述の防波堤構造において用いられる引波補強機構である。
この引波補強機構によれば、防波堤に設置されることで、ケーソンの背面に引波波力が作用しても、ストッパ部材とカウンタ部材とを連結する連結部材を介してケーソンに引波波力と反対方向のテンションが作用するので、ケーソンの引波波力に抵抗する抵抗力が大きくなる。また、複数のケーソンを連続して配置して防波堤を所定の距離にして完成させると、各ケーソン間には0.1〜0.3m程度の隙間(目地)が生じるが、この隙間を利用して引波補強機構の連結部材を簡単に配置することができ、構造が簡単であり施工が容易となり、また、ケーソンに対し特別な加工などは不要である。
本発明の防波堤構造および引波補強機構によれば、津波などが発生したときの引波に対する防波堤の破壊抵抗力を簡単な構造により増大させることができる。
本実施形態による防波堤構造の概略的構成を示す上面図(a)および側断面図(b)である。 図1の引波補強機構のカウンタ部材による抵抗力増加効果を説明するための側断面図である。 図1の引波補強機構を防波堤に設置する工程(a)〜(c)を説明するための図である。 図1の引波補強機構におけるストッパ部材をケーソン前面の上部に設置した例を示す側断面図である。 図1の引波補強機構におけるストッパ部材をケーソンKS間の隙間のほぼ全面を塞ぐようにした例を示す側断面図である。 本実施形態においてストッパ部材を各ケーソンの前面に個別に配置した例を示す斜視図である。 図1の引波補強機構におけるカウンタ部材の別の例を示す側断面図である。 本実施形態のカウンタ部材として基礎マウンド上に敷設した網状物または格子状物を用いた例を示す側断面図である。 従来のケーソン背面に裏込を設置した防波堤構造を示す側断面図(a)、図9(a)の従来の防波堤構造における問題を説明するための側断面図(b)、および、特許文献1における港湾構造物の補強構造を概略的に示す図(c)である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態による防波堤構造の概略的構成を示す上面図(a)および側断面図(b)である。
図1(a)(b)の防波堤構造は、水底Gの上に構築した捨石マウンドMの上にケーソンKSを設置し、背面B(港内側)に割石等による裏込石BSによる裏込を設置して、前面F(港外側)への押波波力に対して抵抗力を増加させるとともに、引波対策として防波堤補強のための引波補強機構10を設けている。
図1(a)のように、防波堤は、複数のケーソンKSを連続して据付・配置して所定の距離にして完成させる。このため、各ケーソンKSの間には隙間(目地)GPができるが、隙間GPは0.1〜0.3m程度の間隔を有する。本実施形態の防波堤構造では、この隙間GPを利用して引波補強機構10を設置する。
図1(a)(b)のように、引波補強機構10は、ケーソンKSの前面Fに位置するストッパ部材11と、背面B側に設置されるカウンタ部材12と、ストッパ部材11とカウンタ部材12との間に配置されて両者を連結する連結部材13と、を有する。
引波補強機構10のストッパ部材11は、たとえば矩形状の鋼板からなり、各ケーソンKSの間の隙間GPを跨いで両側のケーソンKSの前面Fの一部に当接するように配置される。
カウンタ部材12は、断面形状がL字形に構成されて底版12aと鉛直版12bとを有し、ケーソンKSの背面B側のマウンドM上に設置され、裏込石BSにより裏込めされることで堆積した裏込石BSにより支持されるようになっている。
連結部材13は、たとえばチェーンやワイヤ等からなり、図1(a)のようにケーソンKSの間の隙間GPを通して配置され、ストッパ部材11とカウンタ部材12とに接続されて両者を連結する。
本実施形態の引波補強機構10を有する防波堤構造によれば、図1(b)のように、津波などの場合、港内側からの引波時にケーソンKSの背面Bに引波波力Hが作用すると、カウンタ部材12に連結された連結部材13を介してストッパ部材11によってケーソンKSに前面Fから背面B側へテンションTが作用することで、ケーソンKSの引波に対する破壊抵抗力が増す。すなわち、図1(b)において引波補強機構10がない場合には、引波に対して、ケーソンKSの自重によるケーソンKSの底面とマウンドMとの間に作用する摩擦力が抵抗力となるだけであるが、引波補強機構10を設置したことで、摩擦力にテンションTが加わることにより破壊抵抗力が増加する。
上述の引波補強機構10は、ストッパ部材11とカウンタ部材12と連結部材13とから構成できるので、簡単な構造で、施工も容易となる。かかる引波補強機構10を各ケーソンKS間に設置することで、防波堤全体を引波に対して補強することができる。
次に、引波補強機構10のカウンタ部材12による抵抗力増加効果について図2を参照して説明する。図2は、図1の引波補強機構10のカウンタ部材12による抵抗力増加効果を説明するための側断面図である。
図2のように、引波補強機構10のカウンタ部材12をケーソンKSの背面B側のマウンドMに設置した場合、カウンタ部材12とケーソンKS本体との間に堆積した砕石等の裏込石BS(図2のハッチングで示す部分)による荷重UがマウンドMに作用し、裏込石BSとマウンドMとの間に摩擦力が作用することで、引波波力Hに対する抵抗力Rが増加する。
すなわち、図1(b)、図2のように、港内側からの引波時にケーソンKSの背面Bから引波波力Hが作用すると、カウンタ部材12にはストッパ部材11から連結部材13を介してテンションTの反力T’が作用するが、カウンタ部材12は、カウンタ部材12とケーソンKSの背面Bとの間の図2にハッチングで示す裏込石BSの存在によって反力T’に抵抗してカウンタとして作用し、ケーソンKSの引波に対する破壊抵抗力が増す。
また、本実施形態による引波補強機構10によれば、ケーソンKS間の目地(隙間)を活用することで設置が可能であり、既存のケーソンに孔を空ける必要がなく、ケーソン壁に孔を設けることによる構造安全性の低下に対処するための開口部の処理などは不要であり、コストがかさまない。また、本実施形態の引波補強機構10は、新規の防波堤のみならず、既存の防波堤にも容易に設置することができる。
次に、図1の引波補強機構10を設置する施工工程について図3を参照して説明する。図3は図1の引波補強機構10を防波堤に設置する工程(a)〜(c)を説明するための図である。
図3(a)のように、水底G上に捨石により構築された基礎マウンドMの上にケーソンKSが設置され、カウンタ部材12を作業船SPのクレーンCRによりワイヤWRで吊り下げて、ケーソンKSの背面B側の基礎マウンドM上に設置する。
次に、図3(b)のように、ストッパ部材11,連結部材13を作業船SPのクレーンCRによりワイヤWRで吊り下げて、ストッパ部材11をケーソンKSの前面Fに設置し、ストッパ部材11から延びる連結部材13をケーソン間の隙間GPを通して背面B側のカウンタ部材12に接続する。
次に、図3(c)のように、作業船SPなどのクレーンCRによりワイヤWRで吊り下げたグラブGBで砕石等の裏込石BSをケーソンKSの背面B側に投入し、裏込石BSによりカウンタ部材12を支持するとともに背面B側に裏込を構築する。
上述のようにして、防波堤のケーソンに図1の引波補強機構10を設置することができる。この場合、必要に応じて潜水士が水中で作業する。また、引波補強機構10を設置する防波堤が新規であっても既設であっても、図3の各工程により設置することができる。
本実施形態において、ケーソンKSの前面Fに配置するストッパ部材11は、図1(b)のように下部に設置したが、これに限定されず、下部・中部・上部のいずれに設置してもよい。たとえば、図4のように、ストッパ部材11をケーソンKSの前面Fの上部に設置し、ストッパ部材11とカウンタ部材12とをワイヤやチューン等からなる連結部材13で連結する。なお、ストッパ部材11は、ケーソンに公知のアンカーボルト等を用いて固定するようにしてもよい。
また、図5のように、高さ方向の寸法を大きくしたストッパ部材11AをケーソンKSの前面Fに設置し、ケーソンKS間の隙間GP(図1(a))のほぼ全面を塞ぐことで、隙間GPに発生する水の流れの流速を低減させることができ、捨石による基礎マウンドMの洗掘防止効果を期待できる。また、ケーソンKSの転倒防止の効果も期待できる。
また、ストッパ部材を必ずしもケーソン間に跨るように配置する必要はなく、たとえば、図6のように、ケーソンKSの前面Fの幅に対応するストッパ部材11Bを用い、ワイヤ等からなる連結部材13をストッパ部材11Bの両脇からケーソン間の隙間を通してカウンタ部材12に接続するようにしてもよい。このように、ストッパ部材を各ケーソンの前面に個別に配置することで、各ケーソンに対し引波補強機構をそれぞれ設置するようにしてもよい。
また、カウンタ部材の形状は、図1(b)のような形状に限らず、たとえば、図7のように、カウンタ部材12を底版12aのほぼ中央から鉛直版12bが鉛直方向に直立するような逆T字型の構造としてもよい。
また、図8のように、カウンタ部材として、基礎マウンドMの平坦面から法面20へ敷設した、ジオテキスタイルのような機能を有するチェーンやワイヤ等で構成された網状物(または鋼製の格子状物)12Aを利用してもよい。
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態では連結部材13にチェーンやワイヤ等の可撓性部材を用いたが、本発明はこれに限定されず、連結部材13として、たとえば、隙間GPに配置可能でかつワイヤ等よりも剛性のある形鋼や鋼板や棒鋼などを用いてもよい。
また、カウンタ部材は、図1(b)や図7に示すものに限定されず、たとえば、重力式のものをマウント上に設置するようにしてもよい。これらのカウンタ部材は、たとえば、コンクリートや鋼板から構成することができる。かかるカウンタ部材として、港湾構造物に用いられる控え版などの控え工を利用することができる。
また、引波補強機構10を構成するストッパ部材11,カウンタ部材12,連結部材13には、防錆のための公知の被覆処理等を行うようにしてもよい。
また、図1(b)等においては、カウンタ部材全体が裏込石の中に埋没しているが、本発明はこれに限定されず、裏込石からカウンタ部材の天端の一部が露出していてもよい。
10 引波補強機構 11,11A,11B ストッパ部材 12 カウンタ部材 12a 底版 12b 鉛直版 13 連結部材 20 法面 KS ケーソン F 前面 B 背面 BS 裏込石 G 水底 GP 隙間 H 引波波力 M 基礎マウンド、マウンド R 破壊抵抗力 T テンション T’ 反力 U 荷重

Claims (6)

  1. 複数のケーソンが並べられて構築される防波堤構造であって、
    前記ケーソンの港外側の前面に配置されたストッパ部材と、
    前記ケーソンの港内側の背面側に設置されたカウンタ部材と、
    前記ケーソン間の隙間に配置されて前記ストッパ部材と前記カウンタ部材とを連結する連結部材と、を有する引波補強機構を備え、
    前記引波補強機構は、前記ケーソンの背面に引波波力が作用したとき、前記引波波力に抗して前記ケーソンに抵抗力を作用させることを特徴とする防波堤構造。
  2. 前記ケーソンの背面に裏込材料を堆積させて裏込を構築し、
    前記カウンタ部材を前記裏込材料により支持させて設置することを特徴とする請求項1に記載の防波堤構造。
  3. 前記ストッパ部材は前記ケーソンとその隣のケーソンとの間に跨いで配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の防波堤構造。
  4. 前記ストッパ部材が前記ケーソン間の隙間の大部分を塞ぐように構成されることを特徴とする請求項3に記載の防波堤構造。
  5. 前記ストッパ部材は前記各ケーソンの前面に個別に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の防波堤構造。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の防波堤構造に用いられることを特徴とする引波補強機構。
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