以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の実施形態である吐水装置について説明する。本発明に係る吐水装置は、人体に向けて水を吐出するものであって、大型のポンプを用いることなく、吐水に充分大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することが可能なものである。従って、本発明に係る吐水装置の応用範囲は多岐に渡るものであって、水塊となった吐水を人体に着水することが可能であって、節水効果と洗浄感向上とを両立できるあらゆるものに応用可能なものである。本実施形態の説明では、人体の局部洗浄を行う装置として本発明の吐水装置を応用した一例を説明する。本発明の趣旨に鑑みれば、本発明に係る吐水装置としてはこれに限られるものではない。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る吐水装置としての局部洗浄装置WAは、大便器CBに載せて使用されるものである。局部洗浄装置WAは、本体部WAaと、便座WAbと、便蓋WAcと、リモコンWAdとを備えている。本体部WAaは、ノズルNZを有しており、ノズルNZを進退自在に保持している。本体部WAaは、便座WAb及び便蓋WAcを回動自在に保持している。
使用者は使用時に、便蓋WAcを図1に示すように便蓋WAcを上方に回動させ、便座WAbを露出させる。使用者は便座WAbに着座して用便をした後、リモコンWAdを操作してノズルNZに形成された吐出口NZaから吐水させ、自身の局部を洗浄する。使用者は局部洗浄後、リモコンWAdを操作して吐出口NZaからの吐水を停止する。その後使用者は、リモコンWAdを操作して大便器CBに洗浄水を流す。
本実施形態では、図1に示すように、吐水JWの進行方向に沿ったJ軸と、鉛直方向に沿ったV軸とを設定し、このJ軸及びV軸を用いながら局部洗浄装置WAの吐水態様について説明する。
図2に、図1に示す局部洗浄装置WAの吐水状態を模式的に示す。本実施形態では、大型のポンプを使用することなく、吐水される水量を周期的に変動させて、大きな水塊を吐水対象部位に衝突させるように構成されている。一般に、吐水される水量が脈動的に変遷して周期的にその水量が変動すると、流速も同様に変動して脈動的に変遷する。従って、吐水される水は、その水量が最大流量になると、流速も最大速度になり、瞬間の流速および流量が時間とともに変動する。
このように吐水される水量及び流速の変動が起こると、図2の(A)に示すように、吐水JWは、部位Wp1,部位Wp2,部位Wp3,部位Wp4,部位Wp5を含むものとなる。この各部位の量は部位Wp1(≒部位Wp5)<部位Wp2(≒部位Wp4)<部位Wp3となる。部位Wp1,部位Wp2,部位Wp3,部位Wp4,部位Wp5それぞれの流速を、V1,V2,V3,V4,V5とすると、V1(≒V5)<V2(≒V4)<V3となる。
よって、吐水直後から図2の(A)〜(C)へと移行するにつれて、部位Wp3は部位Wp2より速度が大きいから、部位Wp3は部位Wp2と合体し、さらに部位Wp1と合体して大きな水塊となる。
このように最大流速の部位Wp3がその前の部位Wp2,部位Wp1と順次合体することにより、大きな塊となって、人体局部に着水することになる。この洗浄水は、人体局部に当たるときには、衝突エネルギ(洗浄強度)が大きい水塊状態となっている。この部位Wp3の流速V3は、最大流速であることから、脈動流で吐水された洗浄水は、合体した水塊の状態が脈動周期ごとに現れるような吐水形態で、吐出口NZaから吐水されていることになる。しかも、脈動周期でこのような現象が起きることから、上記のように最大流速の部位Wp3の合体を経た水塊は繰り返し現れ、ある吐水タイミングでの水塊とその次の吐水タイミングでの部位Wp3の合体を経た水塊とはほぼ同じ速度で吐水されることになる。しかも、このそれぞれの水塊は、最大流速での部位Wp3に遅れて吐水された部位Wp4、部位Wp5で繋がれたような状態となる。
本実施形態に係る局部洗浄装置WAは、大型のポンプを用いずに吐水の流速変化をつけ、上述したような繰り返し周期的に現れる水塊による吐水を行うものである。局部洗浄装置WAは、図1に示したノズルNZの吐出口NZaの上流側に、水溜室10を有している。本実施形態に係る局部洗浄装置WAは、水溜室10によって気泡を供給することで吐水の流速変化をつけている。この水溜室10の構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、水溜室10の概略構成を模式的に示す図である。
図3に示すように水溜室10は、空気管路101と、第一給水管路102(給水路)と、吐出管路103と、第二給水管路104とを備えている。空気管路101、第一給水管路102、吐出管路103、及び第二給水管路104は、水溜室10の内部に連通するように設けられた管路である。
空気管路101は、水溜室10に形成された空気導入口10aを介して、水溜室10内部と連通している。第一給水管路102は、噴射口10bを介して、水溜室10内部と連通している。吐出管路103は、水溜室側開口10cを介して、水溜室10内部と連通している。第二給水管路104は、副水流導入口10dを介して、水溜室10内部と連通している。
空気管路101は、空気導入口10aと大気開放された開口とを繋ぐ管路である。空気管路101から導入される空気は、空気導入口10aから水溜室10の内部に引き込まれる。水溜室10の内部に引きこまれた空気は、気泡BAを形成している。
第一給水管路102は、噴射口10bと給水源とを繋ぐ管路である。第一給水管路102は、その管路の途上若しくは噴射口10bにおいて縮径されている。従って、第一給水管路102から供給される水は、その速度が高められ噴流WSmとして水溜室10内に噴射される。
吐出管路103は、水溜室側開口10cとノズルNZ(図1参照)に形成された吐出口NZaとを繋ぐ管路である。本実施形態の場合、噴射口10bと水溜室側開口10cとは対向配置されている。従って、噴射口10bから水溜室10内に噴射される噴流WSmは、水溜室10内をJ軸に沿って進行し、水溜室側開口10cから吐出管路103に入る。吐出管路103に入った水は、J軸に沿って吐出管路103内を進行し、吐出口NZaから外部へと吐出される。
第二給水管路104は、副水流導入口10dと給水源とを繋ぐ管路である。第二給水管路104は、副水流導入口10dを介して、水溜室10内部と連通している。第二給水管路104から供給される水の少なくとも一部は、水溜室10内において旋回流である副水流WSsを形成する。
上述したように、噴射口10bから水溜室10内に噴射される噴流WSmは、水溜室10内をJ軸に沿って進行し、水溜室側開口10cから吐出管路103に入る。従って、噴射口10bから吐出口NZaに至る噴流WSmが通過する経路である通水経路部105が形成される。本実施形態の場合、通水経路部105は、噴射口10bと水溜室側開口10cとを繋ぐ経路である。
水溜室10内の通水経路部105を除いた残余の領域は、水溜部106となっている。水溜部106は、通水経路部105に隣接させて溜水PWを形成するための部分である。本実施形態の場合、水溜部106は、通水経路部105を囲むように形成されている。
本実施形態の場合、噴射口10b及び水溜室側開口10cは、矩形となっている水溜室10の一辺側に近接させて配置されている。一方、空気導入口10a及び副水流導入口10dは、矩形となっている水溜室10の他辺側に近接配置されている。従って、噴射口10b及び水溜室側開口10cと、空気導入口10a及び副水流導入口10dとは、離隔配置されている。
図3のA―A断面を図4に示し、図3のB―B断面を図5に示す。図3に示す状態では、噴流WSmは、溜水PWの中を進行しており、図4に示すように溜水PWからの抵抗を受けながら水溜室側開口10cに向かっている。水溜室側開口10cに至った噴流WSmは、吐出管路103内に入り、図5に示すように吐出管路103の内壁面と接触した状態で進行している。
図3に示す状態では、気泡BAは小さい。図3に示す状態から更に時間が進行すると、図6に示すように気泡BAが成長する。気泡BAは、噴流WSmにその下端が近づくまで成長している。従って、副水流WSsが旋回可能な領域は、図3に示す状態よりは狭まっている。副水流WSsは、旋回流速が速くなり、且つ噴流WSmの流れを阻害しない方向に旋回している。図6のC―C断面を図7に、図6のD領域を図8にそれぞれ示す。
図7に示すように、気泡BAは、水溜室10の空気導入口10aから噴射口10bに向かって伸びる4つの壁の内の3つの壁に接触して成長している。従って、副水流WSsに接触する面は、副水流導入口10dに向かう面のみとなっている。
図8に示すように、成長した気泡BAは、鉛直方向であるV軸方向に浮力が作用する。副水流WSsは、この浮力に抗するように気泡BAに作用している。従って、気泡BAは、水溜室10の空気導入口10aから噴射口10bに向かって伸びる4つの壁の内の3つの壁に接触した状態を保つことができる。
図6に示す状態から更に時間が進行すると、図9に示すように気泡BAが噴流WSmに近づき干渉し始める。気泡BAは、噴流WSmに引っ張られ、通水経路部105に入り込む。従って、気泡BAが入り込んだ分の水が押し退けられることになり、副水流WSsの旋回流速が速くなる。旋回流速が高まった副水流WSsは、気泡BAを引きちぎることになる。
図9に示す状態から更に時間が進行すると、図10に示すように気泡BAが噴流WSmに完全に引き込まれ、気泡BAは通水経路部105の略全域に渡って存在する。図10のF領域を図11に、図10のE―E断面を図12にそれぞれ示す。
図11の(A)に示すように、気泡BAは通水経路部105の略全域に渡って存在するので、噴射口10bの近傍まで存在する。従って、噴射口10bの近傍に存在する水の量が減り、噴射口10bの近傍における渦流の発生が抑制される。気泡BAが噴射口10bから離れた位置に形成される場合には、図11の(B)に示すような状態になる。図11の(B)に示す状態では、噴射口10bの近傍に水が多く存在し、渦流が多く発生している。渦流の発生は噴流WSmの進行に抵抗となるので、図11の(A)に示すように渦流を抑制することで、噴流WSmの速度を低下させずに吐出口NZaに向かわせることができる。
図12に示すように、噴流WSmは気泡BAを貫通している。このように噴流WSmが気泡BAを貫通することで、噴流WSm周りの抵抗が低下し、噴流WSmは速度を低下させずに吐出口NZaに向かうことができる。もっとも、図12に例示するような、噴流WSmが気泡BAを完全に貫通する状態が必須なものではなく、噴流WSmの周囲の多くの部分を気泡BAによって囲むことができればよく、一部において溜水PWと接触する状態であっても構わないものである。
図10に示す状態から更に時間が進行すると、図13に示すように気泡BAが噴流WSmに引き込まれるように吐出管路103に向かう。気泡BAは、通水経路部105よりも広い流路断面積となるように形成されているので、水溜室側開口10cの外周に引っかかりながら吐出管路103に向かう。このように水溜室側開口10cの外周に引っかかった気泡BAは、噴流WSmによって後方から押し込まれたり、溜水PWからの圧力を受けて押し込まれたりしながら、吐出管路103に入っていくことになる。
図13に示す状態から更に時間が進行すると、図14に示すように気泡BAが吐出管路103に入り込む。図15に、図14のG―G断面を示す。図15に示すように、気泡BAが吐出管路103内に入り込むと、吐出管路103の内壁に沿って空気の膜を形成し、噴流WSmはその膜の中を進行する。従って、噴流WSmが吐出管路103の内壁から受ける抵抗が減少し、噴流WSmは減速されずに吐出口NZaに向かう。もっとも、図15に例示するような、噴流WSmを気泡BAが完全に包むような状態が必須なものではなく、噴流WSmの周囲の多くの部分を気泡BAによって囲むことができればよく、一部において吐出管路103と接触する状態であっても構わないものである。
図14に示す状態から気泡BAが更に吐出管路103の下流側に進行すると、次の気泡BAが空気管路101から取り込まれ、図3の状態に戻る。本実施形態では、図3〜図15を参照しながらした説明による気泡BAの動きが周期的に繰り返される。
図16に、実際に本実施形態の水溜室10に相当するものを作成し、通水した様子を撮影した写真を示す。図16の(A)は、噴流WSmが溜水PWの中を進行し、気泡BAが成長している状態を撮影したものであって、図6の状態に相当する。図16の(B)は、噴流WSmが気泡BAの中を進行している状態を撮影したものであって、図9の状態に相当する。図16の(C)は、噴流WSmが気泡BAの中を進行している状態を撮影したものであって、図13の状態に相当する。
上述したように本実施形態に係る吐水装置は局部洗浄装置WAであって、人体に向けて水を吐出するものであり、水を供給する給水路である第一給水管路102と、第一給水管路102から供給された水を下流側に向けて噴流WSmとして噴射する噴射口10bと、噴射口10bの下流側に設けられ、噴流WSmを外部に吐出する吐出口NZaと、噴射口10bと吐出口NZaとの間に設けられ、噴射口10bから吐出口NZaに至る噴流WSmが通過する経路である通水経路部105及び通水経路部105に隣接させて溜水PWを形成するための水溜部106を有する水溜室10と、通水経路部105に空気を泡状にした気泡BAを供給する気泡供給手段の少なくとも一部の機能を発揮する空気導入口10aと、を備える。
気泡供給手段は、噴射口10bから水溜室10内を見たときに、噴射口10bの流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡BAを生成するものであって(図12参照)、この大気泡BAを間欠的に形成することで、大気泡BAの中を噴流WSmが貫通する第一通水状態(図10参照)と、水の中を噴流WSmが通過する第二通水状態(図3,図6等参照)とを交互に繰り返し発生させ、通水経路部105における噴流WSmの通水抵抗を変動させる。
本実施形態では、噴射口10bの流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡BAを間欠的に形成するので、大気泡BAの中を噴流WSmが貫通する第一通水状態と、水の中を噴流WSmが通過する第二通水状態とを交互に繰り返し発生させることができる。第一通水状態では、大気泡BAの中を噴流WSmが貫通するので、噴流WSmの周囲は空気が多く存在し、噴流WSmを減速させる抵抗が弱く、噴流WSmの速度は保たれたまま吐出口NZaに向かう。一方、第二通水状態では、水の中を噴流WSmが通過するので、噴流WSmの周囲は水が取り囲み、噴流WSmを減速させる抵抗が強く、噴流WSmの速度が落ちながら吐出口NZaに向かう。従って、第一通水状態と第二通水状態とを交互に繰り返し発生させることで、吐出口NZaに向かう噴流WSmの速度を大きく変動させて吐水に大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することができる。
また本実施形態では、噴流WSmの断面積が大気泡BAの断面積よりも小さくなるように、噴流WSmが縮流されて噴射口10bから噴出される。このように、噴流WSmが縮流されて噴射口10bから噴出されるので、噴流WSmの拡散が抑制され確実にその断面積をコントロールすることができる。従って、噴流WSmの断面積が大気泡BAの断面積よりも小さくなる状態を確実に形成することができ、第一通水状態を確実に実現することができるため、吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、気泡供給手段は、通水経路部105の噴射口10b寄りに大気泡BAを供給する。このように、通水経路部105の噴射口10b寄りに大気泡BAを供給するので、その大気泡BAは貫通する噴流WSmによって吐出口NZa側に引き伸ばされる。従って、噴射口10b寄りに大気泡BAを供給するという簡便な方法で、大気泡BAを噴射口10b側から吐出口NZa側までの長い範囲に存在させることができる。その結果、大気泡BAを貫通する噴流の長さが長くなり、第一通水状態における噴流WSmの減速をより確実に回避することができ、第一通水状態を確実に実現することができるため、吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、気泡供給手段は、噴射口10bを覆うように大気泡BAを供給する(図11参照)。このように、噴射口10bを覆うように大気泡BAを供給することで、噴射口10bの近傍を空気で覆うことができる。従って、第一通水状態においては、噴射口10bの周囲における渦の発生が抑制され、渦の発生に伴う噴流WSmの乱れを抑制することができる。その結果、噴流WSmの進行が安定し、第一通水状態を確実に実現することができるため、吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、外部から水溜室10に空気を取り込むために空気導入口10aが設けられると共に、空気導入口10aの近傍に、空気導入口10a側から通水経路部105側に向けて延び、気泡BAの成長を促進させるガイド面としての水溜室10の内壁面が設けられている(図7参照)。
空気導入口10aから水溜室10内に取り込まれた空気は、大気泡BAとなる前に水溜室10内の水流によって空気導入口10aから引き離され、ちぎれてしまう傾向がある。そこで、空気導入口10aから取り込まれた泡状の空気を、近傍に設けられたガイド面としての内壁面によって支持するため、水勢を受けても安定的に成長が促進され、確実に大気泡BAに成長させることができる。従って、第一通水状態を確実に実現することができるため、吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また、本実施形態の気泡供給手段は、吐出管路103内に噴射口10bの流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡BAを生成するものであって、この大気泡BAを間欠的に形成することで、大気泡BAによって吐出管路103の内壁面に沿って形成される空気層の中を噴流WSmが通過する第一通水状態(図15参照)と、水溜室10から吐出管路103に供給される水の中を噴流WSmが通過する第二通水状態(図5参照)とを交互に繰り返し発生させ、吐出管路103内を流れる水と吐出管路103の内壁面との接触面積を変動させる。
この観点によれば、気泡供給手段が噴射口10bの流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡BAを間欠的に生成して吐出管路103に供給するので、吐出管路103の内壁面に沿って形成される空気層の中を噴流WSmが通過する第一通水状態と、水溜室10から吐出管路103に供給される水の中を噴流WSmが通過する第二通水状態とを交互に繰り返し発生させることができる。第一通水状態では、吐出管路103内に形成される空気層の中を噴流WSmが通過するので、吐出管路103の内壁面と噴流WSmとの接触面積が小さくなり、吐出管路103内を進行する噴流WSmが受ける摩擦抵抗が小さくなる。一方、第二通水状態では、水溜室10から供給される水の中を噴流WSmが通過するので、吐出管路103の内壁面と噴流WSmを含む水との接触面積が大きくなり、吐出管路103内を進行する噴流WSmが受ける摩擦抵抗が大きくなる。従って、第一通水状態と第二通水状態とを交互に繰り返し発生させることで、吐出管路103内を流れる水と吐出管路103の内壁面との接触面積を変動させる。その摩擦抵抗の変動によって、吐出口NZaに向かう噴流WSmの速度を大きく変動させて吐水に大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することができる。
更に、第一通水状態において、吐出管路103内に形成される空気層の中を噴流WSmが通過するので、吐出管路103内の水全体の流れに着目すれば、第二通水状態よりも実質的な流路断面積が減少する。従って、第一通水状態において吐出管路103を通過する噴流WSmの速度が、第二通水状態において吐出管路103を通過する水の速度よりも高くなる要因の一つとなる。前述したような摩擦抵抗の変動による吐水の流速変動に、流路断面積の変動による吐水の流速変動効果も加わって、吐水により大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、気泡供給手段は、大気泡BAを生成することで、吐出管路103内を通過する噴流WSmを、その進行方向に沿って囲むように内壁面に沿った管状の空気層を形成している。このように、噴流WSmをその進行方向に沿って囲むように内壁面に沿った管状の空気層が形成されるので、噴流WSmと吐出管路103の内壁面との接触面積をより低減させることができる。従って、第一通水状態における噴流WSmの速度を、第二通類状態における水の速度よりも充分に高めることができ、吐水により大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、気泡供給手段は、通水経路部105から吐出管路103に大気泡BAを供給するものであって、吐出管路103が水溜室10に臨む開口である水溜室側開口10cの外周を覆うように大気泡BAを供給する。
このように、吐出管路103が水溜室10に臨む開口である水溜室側開口10cの外周を覆うように通水経路部105側から大気泡BAを供給するので、吐出管路103の内壁面に沿わせるように大気泡BAを送り込むことができる。従って、吐出管路103の内壁面に沿った管状の空気層が形成しやすくなり、吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、気泡供給手段は、通水経路部105から吐出管路103に大気泡BAを供給するものであって、吐出管路103側から通水経路部105側を見た場合に、吐出管路103の流路断面積よりも大きな断面積となるように大気泡BAを供給する。
このように、吐出管路103の流路断面積よりも大きな断面積となるように大気泡BAを供給するので、吐出管路103の内壁面に大気泡BAを確実に沿わせながら送り込むことができる。従って、吐出管路103の内壁面に沿った管状の空気層をより確実に形成しやすくなり、吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、気泡供給手段は、通水経路部105から吐出管路103に大気泡BAを供給する際に、一時的に滞留させて供給する。このように、通水経路部105から吐出管路103に大気泡BAを供給する際に、一時的に滞留させて供給するので、吐出管路103の内壁面に大気泡BAを添わせやすくなる。従って、吐出管路103の内壁面に沿った管状の空気層をより確実且つ容易に形成しやすくなり、吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、気泡供給手段は、吐出管路103の噴流WSmの進行方向に沿った長さと略同等の長さに空気層が形成されるように、大気泡BAを生成して供給することも好ましいものである。この好ましい態様では、吐出管路103の全長に渡って空気層が形成されるように大気泡BAを供給するので、水溜室10から吐出口NZaに至るまで管状の空気層を形成することができる。従って、第一通水状態において、水溜室10から吐出口NZaに至るまでに噴流WSmが受ける摩擦抵抗を極めて小さくすることができ、吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、噴射口10bから噴射される噴流WSmの中心軸が、吐出管路103の中心軸と略同一直線上に位置するように、噴射口10b及び吐出管路103が配置されており、噴射口10bの流路断面積よりも吐出管路103の流路断面積が大きくなるように形成されている。
このように、噴射口10bから噴射される噴流WSmの中心軸が、吐出管路103の中心軸と略同一直線上に位置するように配置されているので、吐出管路103の中心と吐出管路103に突入する噴流WSmの中心とを揃えることができる。更に、噴射口10bの流路断面積よりも吐出管路103の流路断面積が大きくなるように形成されているので、噴流WSmと吐出管路103の内壁面との間の隙間を確実に保つことができる。従って、その隙間に管状の空気層を形成することができ、管状の空気層の中に確実に噴流WSmを通すことができる。
また、本実施形態の気泡供給手段は、空気導入口10aから水溜室10内に導入した空気を、時間経過と共に泡状に大きく成長させ、その気泡BAが所定の大きさになった段階で大気泡BAとして通水経路部105に供給するものであって、更に、空気導入口10aから導入した空気が大気泡BAとなって通水経路部105に供給されるまでは、空気導入口10aと気泡BAとが連通した状態を維持することが可能な比較的低い流速の副水流WSsを水溜室10内に形成する第一水流状態(図3,図6参照)と、空気導入口10aから導入した空気が大気泡BAとなって通水経路部105に供給されるように、空気導入口10aから気泡BAを切り離すことが可能な比較的高い流速の副水流WSsを水溜室10内に形成する第二水流状態(図9参照)と、を交互に繰り返し発生させる。
この観点によれば、第一水流状態では、空気導入口10aと気泡BAとが連通した状態を維持することが可能な比較的低い流速の副水流WSsを水溜室10内に形成するので、空気導入口10aから導入した空気が形成する気泡BAを引きちぎることなく成長させることができる。一方、第二水流状態では、空気導入口10aから導入した空気が大気泡BAとなって通水経路部105に供給されるように、空気導入口10aから気泡BAを切り離すことが可能な比較的高い流速の副水流WSsを水溜室10内に形成するので、第一水流状態で成長した気泡BAを切り離して大気泡BAとして通水経路部105に供給することができる。このような第一水流状態と第二水流状態とを交互に繰り返し発生させることで、大気泡BAが噴流WSmに供給されない期間と、大気泡BAが噴流WSmに供給される期間とを交互に繰り返し発生させることができる。大気泡BAが噴流WSmに供給される期間においては、噴流WSmの速度は保たれたまま吐出口NZaに向かう。一方、大気泡BAが噴流WSmに供給されない期間においては、噴流WSmの速度が落ちながら吐出口NZaに向かう。従って、第一水流状態と第二水流状態とを交互に繰り返し発生させることで、吐出口NZaに向かう噴流WSmの速度を大きく変動させて吐水に大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することができる。
また本実施形態では、水溜室10に、空気導入口10a側から通水経路部105側に向けて延び、気泡BAの成長を促進させるガイド面として機能する水溜室10の内壁が設けられ、気泡供給手段は、空気導入口10aから導入した空気が形成する気泡BAをガイド面としての内壁に接触させた状態を保ちながら通水経路部105近傍まで導いている(図6及び図7参照)。
空気と水の境界である気液界面は、空気と水それぞれが互いに作用させる力のバランスによって形成されるため変形しやすく、力のバランスが崩れると気液界面も崩れる。従って、気泡BAを成長させる期間である第一水流状態においては、空気と水とが接触する気液界面の面積を極力小さく保つことが、安定して気泡BAを成長させるために必要である。そこで、空気導入口10aから導入した空気が形成する気泡BAをガイド面としての内壁に接触させた状態を保つことで、空気導入口10a側から通水経路部105側にかけて気液界面の面積を減少させ、空気導入口10aと成長中の気泡BAとの連通状態を維持し、安定した気泡成長を促進することが可能となる。
また本実施形態では、気泡供給手段は、第一水流状態における副水流WSsによって、空気導入口から導入した空気が形成する気泡BAをガイド面としての内壁に向けて押し付けながら通水経路部105近傍まで導いている(図6及び図8参照)。
水溜室10内においては、噴流WSmが噴射口10bから吐出口NZaに向けて噴射されているため負圧が発生している。この負圧は水溜室10内に形成される気泡BAに作用するため、気泡BAはガイド面である壁面から引き離される力を受ける可能性がある。そこで、第一水流状態における副水流WSsによって気泡BAをガイド面としての壁面に向けて押し付けるので、負圧が作用しても気泡BAがガイド面としての壁面から引き離されることがなく、空気導入口10a側から通水経路部105側にかけて気液界面の面積を減少させ、空気導入口10aと成長中の気泡BAとの連通状態を維持し、安定した気泡成長を促進することが可能となる。
また本実施形態では、気泡供給手段は、第一水流状態における副水流WSsによって、空気導入口10aから導入した空気が形成する気泡BAをその気泡BAに作用する浮力に抗する方向に押し付けながら通水経路部105近傍まで導いている(図8参照)。
このように、成長中の気泡BAに作用する浮力と、その浮力に抗する方向に気泡BAを押し付けるように形成する副水流WSsとをバランスさせるので、安定して気泡BAを成長させることができる。例えば、第一水流状態における副水流WSsの流速がやや高めになったとしても、副水流WSsが気泡BAをガイド面としての壁面に押し付ける力の余剰分を気泡BAの浮力によって減じることができるので、副水流WSsによる過度の影響を排除することが可能になり、空気導入口10aと成長中の気泡BAとの連通状態を維持し、安定した気泡成長を促進することが可能となる。
また本実施形態では、ガイド面は、気泡が押し付けられる第一面と、第一面を挟んで対向配置された第二面及び第三面を有するものである(図7参照)。このように、ガイド面を第一面と第二面と第三面とで構成するので、空気導入口10aから導入した空気が形成する気泡BAを、第一面に押し付けながら第二面及び第三面にも接触させることができる。従って、副水流WSsと気泡BAとが接触する気液界面の面積を減じることができ、空気導入口10aと成長中の気泡BAとの連通状態を維持し、安定した気泡成長を促進することが可能となる。
また本実施形態では、前記副水流は、噴射口10bとは別個独立して形成されてなる副水流導入口10dから水溜室10内に導入されている。このように、噴射口10bとは別個独立して形成されてなる副水流導入口10dから副水流WSsを導入するので、噴射口10bから導入される水を分離して副水流WSsとする場合に比較して、副水流WSsの流速をより低速に制御することが容易になる。従って、空気導入口10aと成長中の気泡BAとの連通状態を維持し、安定した気泡成長を促進することが可能となる。
また本実施形態では、副水流WSsは、噴流WSmと干渉しない状態で、空気導入口10aから導入した空気が形成する気泡BAをガイド面に押し付ける。このように、副水流WSsを噴流WSmと干渉しない状態で気泡BAに作用させるため、噴流WSmの作用によって副水流WSsが加速されることがない。従って、第一水流状態において副水流WSsが過度に加速され気泡BAを引きちぎることがなくなり、空気導入口10aと成長中の気泡BAとの連通状態を維持し、安定した気泡成長を促進することが可能となる。
また本実施形態では、空気導入口10aの大きさは、空気導入口10aから導入した空気が形成する気泡BAが、第一水流状態における副水流WSsによっては空気導入口10aとの連通状態が断たれないような大きさとなるように設定されている。
第一水流状態において気泡を成長する際に、気泡BAと副水流WSsとが接触すると、気泡BAは変形する。そこで、第一水流状態における副水流WSsによっては空気導入口10aとの連通状態が断たれないような大きさとなるように、空気導入口10aの大きさを設定しているので、副水流WSsの作用によって気泡BAが変形したとしても空気導入口10aと成長中の気泡BAとの連通状態を維持し、大気泡BAを供給することができる。
また、本実施形態の気泡供給手段は、噴射口10bから水溜室10内を見たときに、噴射口10bの流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡BAを生成するものであって、この大気泡BAを間欠的に形成して通水経路部105に供給することで、噴流WSmを加圧して加速させる第一状態と、噴流WSmを加速させない第二状態とを交互に繰り返し発生させる。
この観点によれば、気泡供給手段が噴射口10bの流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡BAを間欠的に形成するので、噴流WSmを加圧して加速させる第一状態と、噴流を加速させない第二状態とを交互に繰り返し発生させることができる。第一状態では、噴流WSmを加圧して加速させるので、噴流WSmの速度は増加しながら吐出口NZaに向かう。一方、第二状態では、噴流WSmを加速させないので、噴流WSmの速度は増加せずに吐出口NZaに向かう。従って、第一状態と第二状態とを交互に繰り返し発生させることで、吐出口NZaに向かう噴流WSmの速度を大きく変動させて吐水に大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することができる。
また本実施形態では、第一状態において、通水経路部105に供給された大気泡BAよりも上流側から噴流WSmによって大気泡BAを加圧し、この加圧された大気泡BAがその下流側の噴流WSmを加圧して加速させている(図13参照)。このように、噴流WSmによって加圧された大気泡BAが更に下流側の噴流WSmを加圧するので、第一状態において噴流WSmがより加速され、噴流WSmの速度を大きく変動させて吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、第一状態において、通水経路部105に供給された大気泡BAが吐出口NZaから排出される際に、吐出口NZaから吐出される噴流WSmを加圧して加速させている。このように、通水経路部105に供給された大気泡BAが吐出口NZaから排出される際に大気開放されて吹き出す力を利用し、吐出口NZaから吐出される噴流WSmを加圧して加速するので、第一状態において噴流WSmがより加速され、噴流WSmの速度を大きく変動させて吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、第一状態において、通水経路部105に供給された大気泡BAが吐出口NZaに向かって排出される際に、水溜室10から吐出口NZaに向かう吐出管路103の水溜室側開口10cを覆う大きさとなるように大気泡BAを供給する。
このように、水溜室10から吐出口NZaに向けて排出される際に水溜室側開口10cを覆う大きさとなるように大気泡BAが供給されるので、大気泡BAは抵抗なく排出されずに一時的に水溜室側開口10cから抵抗を受けながら排出される。従って、その過程において噴流WSmから大気泡BAが圧力を受け、大気泡BAの内部圧力が高まる。結果として、第一状態において噴流WSmが大気泡BAからより大きな圧力を受けて加圧され加速することになり、噴流WSmの速度を大きく変動させて吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また本実施形態では、第一状態において、通水経路部の水溜室側開口10c寄りに大気泡BAを供給することも好ましい。この好ましい態様では、大気泡BAを水溜室側開口10c寄りに供給するので、気泡BAが分裂することなく確実に大きな気泡のまま水溜室側開口10cに至る。従って、大気泡BAの内部圧力を確実に高め、第一状態において噴流WSmが大気泡BAからより大きな圧力を受けて加圧され加速することになり、噴流WSmの速度を大きく変動させて吐水に大きな流速変動を与えることができる。
また、本実施形態における気泡供給手段は、空気導入口10aから導入した空気によって形成され水溜部106に一時的に留まる気泡である停留気泡としての気泡BAの大きさを変更するものであって、停留気泡としての気泡BAを大きくすることで水溜部106の水の容量を相対的に減少させる第一状態(図6参照)と、停留気泡としての気泡BAを小さくすることで水溜部106の水の容量を相対的に増加させる第二状態(図3参照)とを交互に繰り返し発生させることで、水溜室10内の圧力を変動させる。
この観点によれば、気泡供給手段が水溜部106に一時的に留まる気泡である停留気泡としての気泡BAの大きさを変更するので、停留気泡としての気泡BAを大きくすることで水溜部106の水の容量を相対的に減少させる第一状態と、停留気泡としての気泡BAを小さくすることで水溜部106の水の容量を相対的に増加させる第二状態とを交互に繰り返し発生させることができる。このように、第一状態と第二状態とを交互に繰り返し発生させることで、水溜室10内の水圧を変動させ、吐出口NZaに向かう噴流WSmの速度を大きく変動させることが可能となり、吐水に大きな流速変動を与えることができる。従って、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することができる。
また本実施形態では、水溜部106内において旋回する副水流WSsを生成する旋回流生成手段を備え、旋回流生成手段は、水溜部106内の水の容量を変動させることで、旋回する副水流WSsの旋回径を変動させ、吐出口NZaからの吐出される噴流WSmの速度を変更する。このように、旋回流である副水流WSsの旋回径を変動させるので、副水流WSsが噴流WSmに影響を及ぼす態様が変動し、吐出口NZaからの吐出される噴流WSmの速度を変更することができる。
また本実施形態では、停留気泡としての気泡BAが形成される形成位置である空気導入口10a及びその下方領域と、水溜部106に副水流WSsが入り込む流入位置である副水流導入口10dとが離隔配置されている。このように、停留気泡としての気泡BAが形成される形成位置である空気導入口10a及びその下方領域と、水溜部106に副水流WSsが入り込む流入位置である副水流導入口10dとが離隔配置されているので、停留気泡としての気泡BAの大きさや位置が急激に変動しても、旋回流である副水流WSsの軌道に与える直接的な影響を低減することができる。従って、噴流WSmの速度変動に与える影響も低減することができ、安定した変動態様の噴流WSmを吐出することができる。
上述した本実施形態では、副水流WSsを形成するために副水流導入口10dを、噴射口10bとは別個独立して設けたけれども、副水流導入口10dを設けずに副水流WSsを形成することも好ましい態様である。この観点からの変形例について図17及び図18を参照しながら説明する。
図17は、水溜室10に副水流WSsを形成する変形例としての水溜室10Lを示す図である。図18は、図17に示す変形例において副水流WSsの流れ方の変遷を説明するための図である。
水溜室10Lは、水溜室10の副水流導入口10dを省略し、噴射口10bを拡径して噴射口10bLとしたものである。このように拡径した噴射口10bLを形成することで、噴流WSmの一部が方向転換し、分流WSdとして副水流WSsを形成する。
図18の(A)に示すように、気泡BAが小さい段階では、水溜室10L内の圧力が低いため、分流WSdの分流量は比較的多く、副水流WSsの流量も大きくなる。一方、図18の(B)に示すように、気泡BAが大きくなると、水溜室10L内の圧力が高まり、分流WSdの分流量が低下し、副水流WSsの流量が低下する。
図19は、水溜室10に副水流WSsを形成する変形例としての水溜室10Mを示す図である。水溜室10Mは、水溜室10の副水流導入口10dを省略し、水溜室側開口10cの一部を塞ぐように縮径部材10cMを設けたものである。このように構成することで、噴流WSmの一部が縮径部材10cMによって方向転換し、分流WSdとして副水流WSsを形成する。
上述した実施形態では、気泡BAを成長させた大気泡とする例について説明したけれども、大気泡は小気泡を結合して形成することも好ましい態様である。この好ましい態様について、図20〜図22を参照しながら説明する。
図20に、浮力によって小気泡を集めて大気泡を形成する例としての、水溜室10Nの概略構成を示す。図20の(A)に示すように、水溜室10Nは、空気管路101Nと、第一給水管路102と、吐出管路103と、第二給水管路104とを備えている。空気管路101N、第一給水管路102、吐出管路103、及び第二給水管路104は、水溜室10の内部に連通するように設けられた管路である。空気管路101Nは、水溜室10に形成された空気導入口10aNを介して、水溜室10内部と連通している。
空気管路101Nは、空気導入口10aNと大気開放された開口とを繋ぐ管路である。空気管路101Nから導入される空気は、空気導入口10aNから水溜室10Nの内部に引き込まれる。水溜室10Nの内部に引きこまれた空気は、小気泡BAsを形成している。
本実施形態の場合、噴射口10b及び水溜室側開口10cは、矩形となっている水溜室10Nの一辺側に近接させて配置されている。一方、空気導入口10aN及び副水流導入口10dは、矩形となっている水溜室10の他辺側に近接配置されている。従って、噴射口10b及び水溜室側開口10cと、空気導入口10aN及び副水流導入口10dとは、離隔配置されている。また、空気導入口10aNと副水流導入口10dとは、近接配置されている。従って、空気導入口10aNから供給される小気泡BAsは、副水流導入口10dから供給される副水流WSsによって搬送される。
更に、水溜室10Nには、気泡保持凹部107N(気泡停留部)及び気泡保持突起108N(気泡停留部)が設けられている。気泡保持凹部107Nは、空気導入口10aNと同じ壁面に形成され、その壁面から後退した凹部として形成されている。気泡保持突起108Nは、副水流導入口10dが形成された壁面と対向する壁面に形成され、気泡保持凹部107Nよりも下方に形成される突起部である。
空気導入口10aNから導入された小気泡BAsは、副水流WSsによって搬送され、浮力によって副水流WSsから離脱する。この離脱ポイントに、気泡保持凹部107N及び気泡保持突起108Nが形成されているので、小気泡BAsが集まって中気泡BAmが形成される(図20の(B)参照)。
図20の(B)の状態から更に小気泡BAsが集結すると、大気泡BAnとなって、気泡保持凹部107N及び気泡保持突起108Nによって囲まれた空間から溢れ出る(図20の(C)参照)。気泡保持凹部107N及び気泡保持突起108Nによって囲まれた空間から溢れ出た大気泡BAnは、副水流WSsの流れに乗って噴流WSmに向かう(図20の(D)参照)。
続いて、図21に、遠心分離によって小気泡を集めて大気泡を形成する例としての、水溜室10Pの概略構成を示す。図21の(A)に示すように、水溜室10Pは、空気管路101Nと、第一給水管路102と、吐出管路103と、第二給水管路104とを備えている。空気管路101N、第一給水管路102、吐出管路103、及び第二給水管路104は、水溜室10の内部に連通するように設けられた管路である。空気管路101Nは、水溜室10に形成された空気導入口10aNを介して、水溜室10内部と連通している。
空気管路101Nは、空気導入口10aNと大気開放された開口とを繋ぐ管路である。空気管路101Nから導入される空気は、空気導入口10aNから水溜室10Nの内部に引き込まれる。水溜室10Nの内部に引きこまれた空気は、小気泡BAsを形成している。
本実施形態の場合、噴射口10b及び水溜室側開口10cは、矩形となっている水溜室10Nの一辺側に近接させて配置されている。一方、空気導入口10aN及び副水流導入口10dは、矩形となっている水溜室10の他辺側に近接配置されている。従って、噴射口10b及び水溜室側開口10cと、空気導入口10aN及び副水流導入口10dとは、離隔配置されている。また、空気導入口10aNと副水流導入口10dとは、近接配置されている。従って、空気導入口10aNから供給される小気泡BAsは、副水流導入口10dから供給される副水流WSsによって搬送される。
更に、水溜室10Pには、気泡保持鈎部107P(気泡停留部)が設けられている。気泡保持鈎部107Pは、水溜室10Pの中央近傍に設けられている。気泡保持鈎部107Pは、空気導入口10aN及び副水流導入口10d側に設けられた高壁部107Paと、その高壁部107Paに対向配置され高壁部107Paよりも高さが低い低壁部107Pbと、高壁部107Paと低壁部107Pbとを繋ぐ底壁部107Pcとを含む。
空気導入口10aNから導入された小気泡BAsは、副水流WSsによって搬送され、旋回流である副水流WSsの流れによって遠心分離され、軽い小気泡BAsが副水流WSsから離脱し、旋回中心に集まる。この集合ポイントに、気泡保持鈎部107Pが形成されているので、小気泡BAsが集まって中気泡BAmが形成される(図21の(B)参照)。
図21の(B)の状態から更に小気泡BAsが集結すると、大気泡BAnとなって、気泡保持鈎部107Pによって囲まれた空間から溢れ出る(図21の(C)参照)。気泡保持鈎部107Pから溢れ出た大気泡BAnは、副水流WSsの流れに乗って噴流WSmに向かう。
続いて、図22に、引っ掛けることによって小気泡を集めて大気泡を形成する例としての、水溜室10Qの概略構成を示す。図22の(A)に示すように、水溜室10Qは、空気管路101と、第一給水管路102と、吐出管路103と、第二給水管路104とを備えている。空気管路101、第一給水管路102、吐出管路103、及び第二給水管路104は、水溜室10の内部に連通するように設けられた管路である。
空気管路101は、空気導入口10aと大気開放された開口とを繋ぐ管路である。空気管路101から導入される空気は、空気導入口10aから水溜室10Qの内部に引き込まれる。水溜室10Qの内部に引きこまれた空気は、小気泡BAsを形成している。
本実施形態の場合、噴射口10b及び水溜室側開口10cは、矩形となっている水溜室10Nの一辺側に近接させて配置されている。一方、空気導入口10a及び副水流導入口10dは、矩形となっている水溜室10の他辺側に近接配置されている。従って、噴射口10b及び水溜室側開口10cと、空気導入口10a及び副水流導入口10dとは、離隔配置されている。空気導入口10aから供給される小気泡BAsは、副水流導入口10dから供給される副水流WSsによって搬送されながら下降する。
更に、水溜室10Qには、気泡保持凹部107Q(気泡停留部)及び気泡保持突起108Q(気泡停留部)が設けられている。気泡保持凹部107Qは、空気導入口10aの下方であって、副水流導入口10dが形成された壁面と対向する壁面に形成され、その壁面から後退した凹部として形成されている。気泡保持突起108Qは、副水流導入口10dが形成された壁面と対向する壁面に形成され、気泡保持凹部107Qよりも下方に形成される突起部である。
空気導入口10aから導入された小気泡BAsは、副水流WSsによって搬送され、気泡保持突起108Qに引っ掛かる。このように引っ掛けることで、小気泡BAsが集まって中気泡BAmが形成される(図22の(B)参照)。
図22の(B)の状態から更に小気泡BAsが集結すると、大気泡BAnとなって、気泡保持凹部107Q及び気泡保持突起108Qによって囲まれた空間から溢れ出る(図22の(C)参照)。気泡保持凹部107Q及び気泡保持突起108Qによって囲まれた空間から溢れ出た大気泡BAnは、副水流WSsの流れに乗って噴流WSmに向かう(図22の(D)参照)。
図20〜図22を参照しながら説明した変形例に係る水溜室10N,10P,10Qでは、空気導入口10a,10aNから水溜室10N,10P,10Q内に導入した空気を時間経過と共に泡状に大きく成長させる気泡停留部(気泡保持凹部107N,107Q、気泡保持突起108N,108Q、気泡保持鈎部107P)、を有し、その気泡が所定の大きさになった段階で大気泡BAnとして通水経路部に供給するものであって、空気導入口10a,10aNから導入した空気が形成する複数の小気泡BAsを気泡停留部に一時的に停留させ、その一時的に停留させた複数の小気泡BAsを合体させて大気泡BAnとする第一状態と、複数の小気泡BAsを合体して所定の大きさになった段階で大気泡BAnとして気泡停留部から通水経路部に供給する第二状態と、を交互に繰り返し発生させる。
このような構成によれば、第一状態では、空気導入口10a,10aNから導入した空気が形成する複数の小気泡BAsを気泡停留部に一時的に停留させ、その一時的に停留させた複数の小気泡BAsを合体させるので、空気導入口10a,10aNから導入した空気が形成する小気泡BAsを寄せ集めて成長させることができる。一方、第二状態では、複数の小気泡BAsを合体して所定の大きさになった段階で大気泡BAnとして気泡停留部から通水経路部に供給するので、第一状態で成長させた大気泡BAnを通水経路部に供給することができる。このような第一状態と第二状態とを交互に繰り返し発生させることで、大気泡BAnが噴流WSmに供給されない期間と、大気泡BAnが噴流WSmに供給される期間とを交互に繰り返し発生させることができる。大気泡BAnが噴流WSmに供給される期間においては、噴流WSmの速度は保たれたまま吐出口NZaに向かう。一方、大気泡BAnが噴流WSmに供給されない期間においては、噴流WSmの速度が落ちながら吐出口NZaに向かう。従って、第一状態と第二状態とを交互に繰り返し発生させることで、吐出口NZaに向かう噴流WSmの速度を大きく変動させて吐水に大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することができる。
また本変形例では、気泡供給手段は、空気導入口10a,10aNから導入した空気が形成する複数の小気泡BAsを、噴流WSmとは異なる流れとして水溜室10N,10P,10Q内に形成される副水流WSsから分離させて気泡停留部に導く気泡分離手段を有する。
噴流WSmとは異なる流れとして水溜室10N,10P,10Qに形成される副水流WSsであっても、水溜室内を流れている間に噴流WSmに近づけば、噴流WSmの近傍に引き込まれるものである。従って、副水流WSsに複数の小気泡BAsを含ませている状態では、複数の小気泡BAsを寄せ集めて成長させることができない。そこで、副水流WSsから複数の小気泡BAsを分離させる気泡分離手段を設けているので、副水流WSsから複数の小気泡BAsを分離させて確実に成長させることができる。
また本変形例では、気泡供給手段は、気泡分離手段によって副水流WSsから分離された複数の小気泡BAsが気泡停留部に留まるように、噴流WSm及び副水流WSsとは異なる流れとして停留水流を気泡停留部内に形成している。
このように、気泡停留部内に噴流WSm及び副水流WSsと異なる独立した流れとして停留水流を形成しているので、この停留水流に小気泡BAsを含ませることで、噴流WSmや副水流WSsの影響を排除して小気泡BAsを気泡停留部内にとどまらせることができる。
また本変形例では、気泡供給手段は、気泡停留部に一時的に停留した複数の小気泡BAsが合体して所定の大きさの大気泡BAnとなった場合に、気泡停留部から溢れ出させて通水経路部に供給している。
このように、気泡停留部に集められた複数の小気泡BAsが合体して所定の大きさとなるまでは気泡停留部にそれら複数の気泡を停留させることができる一方で、集められた複数の小気泡BAsが合体して所定の大きさの大気泡BAnとなった場合には気泡停留部から溢れ出させることで、その大気泡BAnを通水経路部に供給することができる。従って、気泡停留部からの気泡の溢れ現象を利用して、第一状態と第二状態とを切り替えることができる。
また図20を参照しながら説明した水溜室10Nでは、気泡分離手段は、複数の小気泡BAsに作用する浮力によって副水流WSsから複数の小気泡BAsを分離するものであって、気泡停留部としての気泡保持凹部107N及び気泡保持突起108Nは、水溜部の上方壁に隣接して設けられている。
このように、複数の小気泡BAsに作用する浮力という自然発生力を利用して副水流WSsから複数の小気泡BAsを分離するので、簡単な構成で気泡を分離することができる。また、気泡停留部を上方壁に隣接するように設けているので、浮力によって分離した気泡が上昇する現象を最大限に利用して気泡を集めることができる。
また図21を参照しながら説明した水溜室10Pでは、気泡分離手段は、副水流WSsを旋回させることで発生する遠心力によって複数の小気泡BAsを分離するものであって、気泡停留部である気泡保持鈎部107Pは、副水流WSsが旋回する軌道の内側であって旋回中心近傍に設けられている。
このように、副水流WSsを旋回させた結果発生する遠心力によって小気泡BAsを分離し、その旋回中心近傍に設けた気泡停留部である気泡保持鈎部107Pで小気泡BAsを集めて成長させるので、副水流WSsを旋回させるという簡単な手法で、小気泡BAsを副水流WSsから分離し集めることができる。