JP2013028148A - セラミック射出成形用材料およびその製造方法 - Google Patents

セラミック射出成形用材料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶融状態において好適な流動性が生じるセラミック射出成形用材料を安定的に供給できるセラミック射出成形用材料の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、セラミック製品を射出成形により製造するために用いられるセラミック射出成形用材料を製造する方法である。この製造方法は、セラミック射出成形用材料を構成する、セラミック粉末と熱可塑性樹脂からなるバインダとを少なくとも含む混合材料を用意すること;混合材料を、バインダが溶融する温度域まで加熱して溶融状態にすること;溶融状態の混合材料について、所定の温度域における流体力学形状係数を算出すること;得られた流体力学形状係数を予め定めた許容値と対比し、許容値を下回る流体力学形状係数を有する混合材料をセラミック射出成形用材料として選択すること;を包含する。
【選択図】なし

Description

本発明は、セラミック射出成形用材料を製造する方法、及び、該方法によって得られたセラミック射出成形用材料と、該材料を用いてセラミック製品を製造する方法に関する。
近年、セラミック製品を成形する技術として射出成形が注目されている。かかる成形技術では、先ず、セラミック粉体と、熱可塑性樹脂からなるバインダとを主要構成成分としたセラミック射出成形用材料(以下、適宜「射出成形用材料」と略称する。)を加熱し、溶融状態となった射出成形用材料を射出成形用の金型に射出する。次いで、型内に射出された材料が、金型によって放熱(若しくは冷却)され固化することによってバインダが硬化して上記成形用金型のキャビティに対応する形状に成形される。これによって、所望の形状を有した非焼成の成形体(グリーン成形体)が得られる。そして、該グリーン成形体に加熱処理(脱脂処理)を行うことでバインダを取り除き、焼成処理を行うことによって所望の形状を有したセラミック製品を作製することができる。
上記射出成形は、最終製品形状のセラミック製品を得ることができるため、削り出しなどの二次的な成形処理を要しない(又は簡素化できる)という利点を有している。また、寸法精度が高いため、電子部品のような微細構造や複雑形状を有するセラミック製品を容易に作製できる。
上記射出成形を好適に実施するための要因の一つとして、成形用金型への射出時における溶融状態の射出成形用材料の流動性が挙げられる。当該流動性が低いと、成形用金型全体へ射出成形用材料がゆきわたらず、所望の形状にグリーン成形体が成形されない(成形不良)という問題が生じる。加えて、流動性が低いと、溶融状態の射出成形用材料中でセラミック粉体がうまく分散せず密度ムラが生じ、焼成処理時にクラックが生じ易くなり好ましくない。このため、射出成形を行う場合、溶融状態の射出成形用材料に好適な流動性が生じるように、セラミック粉体の粒径やバインダの含有割合を調整したり、ワックスやカップリング剤などの任意添加物を添加したりする。特許文献1,2には、射出成形用材料の構成材料に関する技術が開示されている。また、上記射出成形に関する技術が特許文献3,4に開示されている。
特表2000−502147号公報 特許第3459191号 特表2003−521580号公報 特開2004−256659号公報
上述のように、射出成形を行う際には、溶融状態の射出成形用材料に好適な流動性を生じさせるという観点に基づいて、射出成形用材料の構成を調整することが好ましい。しかし、上記流動性は、射出成形用材料の構成だけではなく、製造環境の湿度・温度などの様々な要因を受けて変化するため、同じ構成の射出成形用材料でも同程度の流動性が安定的に得られるわけではない。このため、射出成形を用いたセラミック製品の製造現場では、経験に基づいて溶融状態の流動性を予測し、それに応じて射出成形用材料の構成や作製条件を調整している。
しかしながら、上記経験的予測には限界があり、作製した個々の射出成形用材料について溶融状態で好適な流動性が生じるかは、実際に射出成形を行うまで判別することが難しい。すなわち、経験的予測に基づいて作製した射出成形用材料を用いた場合であっても、必ずしも全ての材料が射出成形に好適であるわけではなく、セラミック製品を作製した際に成形不良やクラックが生じて歩留まりが低下することがある。また、射出成形の場合、上記脱脂処理及び焼成処理において、長時間(例えば24時間〜96時間)の加熱処理が行われる。上記成形不良やクラックは、当該加熱処理後に発覚する不良であるため、単なる歩留まり低下のみではなく、長時間の加熱処理が無駄になるため、製造コストの大幅な増加の原因になる。
また、溶融状態の射出成形用材料に求められる流動性は、目的とするセラミック製品の形状や寸法によって異なる。したがって、少量多品種生産を行う場合、品種変更の度に射出成形用材料の構成を調整する必要があるため、上述の問題がさらに生じやすくなる。
本発明は、セラミック射出成形に関する上記の課題(問題点)に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶融状態において好適な流動性が生じるセラミック射出成形用材料を安定的に供給できるセラミック射出成形用材料の製造方法を提供することであり、かかる製造方法によって所望のセラミック射出成形用材料を提供することである。また、本発明は、他の側面として、ここで開示される製造方法で得られるセラミック射出成形用材料を用いて射出成形を行うことを特徴とする、セラミック製品の製造方法を提供する。
上記目的を実現するべく、本発明によって提供されるセラミック射出成形用材料の製造方法は、上記セラミック射出成形用材料を構成する、セラミック粉末と熱可塑性樹脂からなるバインダとを少なくとも含む混合材料を用意すること;上記混合材料を、上記バインダが溶融する温度域にて加熱して溶融状態にすること;上記溶融状態の混合材料について、所定の温度域における流体力学形状係数を算出すること;得られた流体力学形状係数を予め定めた許容値と対比し、上記許容値を下回る流体力学形状係数を有する混合材料をセラミック射出成形用材料として選択すること;を含む。
ここで、上記流体力学形状係数は、下記一般式(1)に基づいて算出される。
Figure 2013028148
また、ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記所定の温度域(流体力学形状係数を算出する際の温度)を60℃〜90℃に設定する。
ここで開示される製造方法では、溶融状態における混合材料の流体力学形状係数を上記一般式(1)に基づいて算出する。流体力学形状係数(hydrodynamic shape factor:K)とは、溶融状態の混合材料の流動性を粘弾性(レオロジー)評価によって定量的に規定した値である。この流体力学形状係数の値が低くなるほど溶融状態の混合材料に高い流動性が生じる。すなわち、算出された流体力学形状係数と予め定めた許容値とを対比し、該流体力学形状係数が許容値を下回った場合、当該流体力学形状係数を有した混合材料は射出成形用材料として好適であると判断できる。このため、ここで開示される製造方法によれば、溶融状態における混合材料の流動性を定量的に評価し、それに基づいて混合材料を射出成形用材料として選択するため、溶融状態において好適な流動性が生じる射出成形用材料を安定的に製造することができる。
ところで、物質の流動性を評価するための方法の一つとして、応力負荷時の粘度測定が挙げられる。しかし、溶融状態の混合材料は、液体(分散系)に見られる性質である「粘性」を有するとともに、固体に見られる性質である「弾性」を有している。上記粘度測定では、混合材料の「粘性」を評価することができるが、「弾性」を評価することができないため、上記流動性を正確に反映しているとは言い難い。これに対して、ここで開示される製造方法では、「粘性」と「弾性」の両方の性質を併せて評価する粘弾性評価で算出される流体力学形状係数に基づいて、射出成形用材料を選択している。このため、溶融状態において好適な流動性を有する混合材料を射出成形用材料として正確に選択することができる。
なお、本明細書における「許容値」とは、目的の形状のセラミック製品(若しくはグリーン成形体)を好適に成形するために求められる最低限の流体力学形状係数を示す値である。上述のとおり、流体力学形状係数が低くなるほど溶融状態における流動性が高くなる。すなわち、上記「許容値」を下回る混合材料は、溶融状態において必要最低限以上の流動性が生じると判断することができる。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記セラミック粉末として、光散乱法に基づく平均粒径が0.5μm以上50μm以下のセラミック粉末を用いる。
上記数値範囲内のように、比較的大きな平均粒径を有するセラミック粉末を含む射出成形用材料は、多孔質構造(典型的には気孔率20%以上)を有したセラミック製品を製造する際に好適に用いられる。
しかし、平均粒径が大きなセラミック粉末は、溶融したバインダ中で好適に分散させることが難しく、混合材料の流動性を不安定にさせる虞がある。これに対して、本発明の製造方法によれば、混合材料の流動性を正確に評価できるため、種々調製した混合材料のうちから好適な流動性を有し得る射出成形用材料を選択できる。すなわち、多孔質構造のセラミック製品を作製することを目的として、上記数値範囲の平均粒径を有するセラミック粉末を含んだ射出成形用材料を製造する場合、本発明の構成を採用することによる効果を特に好ましく発揮することができる。
また、ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記バインダとして、ポリエチレングリコール系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、エチレンビニルアセテート系、ポリスチレン系から選択される少なくとも1種または2種以上の熱可塑性樹脂を用いる。
上述した熱可塑性樹脂は、常温において固体であり、加熱により溶融しやすい(比較的融点が低い)という性質を有している。したがって、上述の熱可塑性樹脂からなるバインダを用いることによって、加熱により高い流動性が生じる射出成形用材料を得ることができる。
また、本発明は、他の側面として、射出成形を用いてセラミック製品を製造する方法を提供する。この製造方法では、上記射出成形用材料の製造方法によって得られた射出成形用材料を用い、射出成形を行うことによりセラミック製品を製造することを特徴とする。
このセラミック製品の製造方法では、上述の製造方法により得られた射出成形用材料を用いている。かかる射出成形用材料は、溶融状態において好適な流動性が生じるため、セラミック製品の製造プロセスにおける成形不良やクラック発生を好適に防止できる。
本発明に係るセラミック製品の製造方法で作製できるセラミック製品の一例を模式的に示した図である。
以下、本発明の好適な一実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、射出成形用材料の製造方法など)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
<射出成形用材料>
先ず、ここで開示されるセラミック射出成形用材料の製造方法によって得られる射出成形用材料(射出成形用組成物)について説明する。該射出成形用材料は、セラミック粉末と、熱可塑性樹脂からなるバインダとを少なくとも含んでおり、加熱により溶融状態となる組成物(混合材料)である。また、この射出成形用材料には、その他の材料(任意添加物)を適宜添加することができる。なお、上記射出成形用材料の構成成分は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の基準に照らして決定することができる。
1.セラミック粉末
セラミック粉末を構成するセラミックは、射出成形における最終製品であるセラミック製品の目的に応じて適宜選択することができ、その種類は本発明を限定するものではない。上記セラミックの具体例としては、アルミナ(Al),ジルコニア(ZrO),マグネシア(MgO),シリカ(SiO),チタニア(TiO),セリア(CeO),イットリア(Y),チタン酸バリウム(BaTiO),ムライト(Al13Si)等の酸化物系セラミックや、窒化ケイ素(Si),炭化ケイ素(SiC),窒化アルミニウム(AlN)等の非酸化物系セラミック、若しくはこれらのようなセラミックを少なくとも一種以上含む複合材料などが挙げられる。セラミック粉末は、射出成形用材料全体に対して60mass%〜90mass%(好ましくは75mass%〜85mass%)の質量割合で含まれているとよい。射出成形用材料全体に対するセラミック粉末の質量割合が大きすぎると、溶融状態における射出成形用材料の流動性が低くなる。一方、上記質量割合が小さすぎると、セラミック製品の製造プロセスにおける加熱処理(脱脂処理および焼成処理)の後における体積の減少率が大きくなるためクラックが発生しやすくなる。上記数値範囲内の質量割合でセラミック粉末が含まれている射出成形用材料は、溶融状態において好適な流動性を有するとともに、加熱処理後の体積の減少率が比較的に小さいため好ましい。
また、多孔質構造を有するセラミック製品を作製する場合ならば、セラミック粉末の平均粒径を、0.5μm以上50μm以下(好ましくは10μm以上40μm以下、より好ましくは20μm以上30μm以下)にするとよい。かかる数値範囲内の平均粒径を有するセラミック粉末を含有する射出成形用材料は、射出成形によって、多孔質構造(例えば、水銀圧入測定に基づく気孔率が20%以上(典型的には20%〜60%))のセラミック製品を容易に作成することができる。
2.バインダ
バインダは、熱可塑性樹脂から構成されている。この熱可塑性樹脂は、常温(例えば50℃以下、典型的には20℃〜40℃)において固体であり、所定の温度まで加熱されることにより溶融(軟化)して流動性が生じる高分子化合物である。かかる熱可塑性樹脂としては、一般的な射出成形用材料に用いられ得る重合体および共重合体、又はこれらの混合物を用いることができる。熱可塑性樹脂の好適例としては、ポリエチレングリコール系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、エチレンビニルアセテート系、ポリスチレン系などに含まれる重合体(若しくは共重合体)が挙げられる。上述のような熱可塑性樹脂をバインダとして用いることによって、溶融状態において高い流動性が生じる射出成形用材料を得ることができる。また、熱可塑性樹脂は、50℃〜120℃(より好ましくは60℃〜90℃)まで加熱されることにより溶融するものを好ましく用いることができる。このような熱可塑性樹脂は、常温(例えば50度以下)において固体であり、且つ、比較的に低温域の加熱により容易に溶融させることができるため好ましい。また、射出成形用材料全体に対するバインダの質量割合は、5mass%〜30mass%(好ましくは5mass%〜15mass%)であるとよい。上記数値範囲内の質量割合でバインダが含まれている射出成形用材料は、溶融状態において好適な流動性を有するとともに、加熱処理後の体積の減少率が比較的に小さいため好ましい。
バインダとして用いられるポリエチレングリコール系の熱可塑性樹脂としては、エチレンオキシドが単独で重合した単独重合体(ポリエチレングリコール:PEG)や、エチレンオキシドとモノマー(単量体)が共重合した共重合体などが挙げられる。ポリエチレングリコール系の熱可塑性樹脂としては、例えば、数平均分子量4000〜10000(好ましくは4000〜9000、より好ましくは4000〜6000)程度のポリエチレングリコールが挙げられる。
ポリエチレン系の熱可塑性樹脂としては、エチレンが単独で重合した単独重合体(ポリエチレン)や、エチレンとモノマー(例えば、酢酸ビニル、α−オレフインなど)が共重合した共重合体などが挙げられる。ポリエチレン系の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアセテート(PEA)、密度0.91g/cm未満の超低密度ポリエチレン(VLDPE)、密度0.91g/cm以上0.93g/cm未満の低密度ポリエチレン(LDPE),直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、密度0.93g/cm以上0.942g/cm未満の中密度ポリエチレン、密度0.942g/cm以上の高密度ポリエチレン(HDPE)等の各種ポリエチレン、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であるエチレンビニルアセテートなどが挙げられる。また、ポリエチレン系の熱可塑性樹脂の数平均分子量は、10000以上(好ましくは30000以上)であるとよい。
ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂としては、プロピレンが単独で重合した単独重合体(ポリプロピレン)や、プロピレンとモノマーが共重合した共重合体などが挙げられる。ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂の好適例としては、数平均分子量10000以上(好ましくは30000以上)のポリプロピレンが挙げられる。
エチレンビニルアセテート系の熱可塑性樹脂としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であるエチレンビニルアセテートや、該エチレンビニルアセテートの一部を他の原子や原子団に置換した構造を有する化合物などが挙げられる。エチレンビニルアセテート系の熱可塑性樹脂の好適例としては、数平均分子量10000以上(好ましくは30000以上)のエチレンビニルアセテートが挙げられる。
ポリスチレン系の熱可塑性樹脂としては、スチレン系モノマー(例えばスチレン)が単独で重合した単独重合体(例えばポリスチレン)や、スチレン系モノマーとモノマーが共重合した共重合体などが挙げられる。ポリスチレン系の熱可塑性樹脂の好適例としては、数平均分子量10000以上(好ましくは30000以上)のポリスチレンが挙げられる。
3.任意添加物
また、上述したように、射出成形用材料には、セラミック粉末やバインダの他に、任意添加物を添加することができる。該任意添加物としては、ワックス、カップリング剤などが代表的である。
3−1.ワックス
ワックスは、溶融状態における射出成形用材料中においてセラミック粉末の粒子間すべりを良好にするために添加される。また、当該ワックスを添加すると、射出成形用の金型で成形された未焼成の成形体(グリーン成形体)を成形用金型から取り外すことが容易になる。当該ワックスには、常温で固体であり、且つ、上記バインダの融点と同程度の温度域まで加熱することによって、低粘度の液体状に変化する高分子化合物(若しくはその混合物)を好ましく用いることができる。また、ワックスには、上記バインダを構成する熱可塑性樹脂とは異なる高分子化合物を用いると好ましい。射出成形用材料全体に対するワックスの質量割合は、0mass%(無添加)〜15mass%(好ましくは5mass%〜15mass%)であるとよい。上記ワックスには、例えば、天然ワックス、合成ワックス、加工ワックス、変性ワックスなどを用いることができる。
天然ワックスには、蜜蝋,鯨蝋,セラック蝋,ウールワックス等の動物由来ワックスや、カルナバ蝋,木蝋,米糠蝋(ライスワックス),キャンデリラワックス等の植物由来ワックスや、パラフィンワックス,マイクロワックス(マイクロクリスタリンワックス)等の石油由来ワックスや、モンタンワックス,オゾケライト等の鉱物由来ワックス等がある。上記天然ワックスの中でも、パラフィンワックス(融点:40℃〜70℃(好ましくは60℃〜70℃))や、マイクロワックス(融点:60℃〜90℃(好ましくは65℃〜75℃))などが好ましく用いられる。
また、合成ワックスには、フィッシャートロプシュワックス,ポリエチレンワックスなどの炭化水素系のワックスや、油脂系合成ワックス、水素化ワックス等が挙げられる。加工・変性ワックスには、酸化ワックス、配合ワックス、変性モンタンワックス等が挙げられる。
3−2.カップリング剤
カップリング剤は、溶融状態の射出成形用材料の流動性を向上させるために添加される。カップリング剤には、バインダとの接合性が良好な高分子化合物を好ましく用いることができる。このような高分子化合物は、バインダと接合することにより、セラミックス粒子とバインダとの黍離性を強くするため、溶融状態の射出成形用材料の流動性を向上させることができる。射出成形用材料全体に対するカップリング剤の質量割合は、0mass%(無添加)〜15mass%(好ましくは5mass%〜15mass%)であるとよい。また、カップリング剤は、上記セラミック粉末の種類に応じて好適なものを適宜選択するとよい。具体的には、セラミックの構成金属元素を含んだ高分子化合物をカップリング剤として使用すると、セラミック純度の高いセラミック製品が得られるため好ましい。例えば、シリカ粉末から成るセラミック製品を製造する場合、シラン(水素化ケイ素:SiH)を含んだシラン系カップリング剤を好ましく用いることができる。
上記カップリング剤は、例えば、メタクリル基、エポキシ基、ビニル基の中から選択される1種又は2種以上の有機官能基を有していると好ましい。これらの有機官能基は、「炭素原子間の二重結合」若しくは「2つの炭素原子に直接結合する1つの酸素原子」を有しているため、バインダとの接合性が良好である。
上記メタクリル基を有するシラン系カップリング剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6030),3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6033),3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6036)等が挙げられる。
また、上記エポキシ基を有するシラン系カップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6040),3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6044),3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6041),3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6042),2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6043),ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン(東京化成工業株式会社のD2632)等が挙げられる。
また、上記ビニル基を有するシラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリアセトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6075),ビニルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6300),ビニルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6519),ビニルトリイソプロポキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社のZ−6550)等が挙げられる。
3−3.その他添加物
また、射出成形用材料の任意添加物としては、上述のワックスやカップリング剤の他に、例えば、滑り剤や可塑剤などが挙げられる。
滑り剤は、上記ワックスと同様に、セラミック粉末の粒子間すべりを向上させるために添加される。例えば、滑り剤には、ステアリン,シリコーンオイルなどを用いることができる。該滑り剤の射出成形用材料全体に対する質量割合は、0mass%(無添加)〜15mass%(好ましくは5mass%〜15mass%)であるとよい。
また、上記可塑剤は、射出成形用材料の可塑性を向上させるために添加される。例えば、可塑剤には、フタル酸エステル、フタル酸ジオクチルなどを用いることができる。該可塑剤の射出成形用材料全体に対する質量割合は、0mass%(無添加)〜15mass%(好ましくは5mass%〜15mass%)であるとよい。
<射出成形用材料の製造方法>
以下、射出成形用材料の製造方法について説明する。ここで開示されるセラミック射出成形用材料の製造方法は、上述したようなセラミック射出成形用材料を製造するための方法である。以下、ここで開示される製造方法の好適な一実施形態について説明する。
本実施形態に係る製造方法は、大まかにいって、その製造プロセスにおいて「A.混合材料の用意」と「B.混合材料の溶融化」と「C.流体力学形状係数の算出」と「D.射出成形用材料の選択」とを包含する。
A.混合材料の用意
ここでは、セラミック粉末と、熱可塑性樹脂からなるバインダとを少なくとも含む混合材料を用意する。ここで「混合材料」は、製造目的たる「射出成形用材料」と典型的には同じ構成の組成物であるが、後述する流体力学形状係数に基づく評価を受ける対象として、当該評価後の射出成形用材料(即ち上記課題を解決するために製造されるセラミック射出成形用材料)と区別される用語である。
かかる「混合材料」は、上記各構成材料を単に混ぜ合わせた粉体であってもよいし、各構成材料を加熱しながら混練したものを成形することで得られた粒状体であってもよい。なお、混合材料を用意する方法は、本発明を限定するものではなく、市販されているものを購入してもよいし、原料から作製してもよい。この混合材料には、上記任意添加物(ワックス、カップリング剤など)が添加されていてもよい。
B.混合材料の溶融化
ここで開示される射出成形用材料の製造方法では、上記混合材料を、上記バインダが溶融する温度域まで加熱して溶融状態にする。当該バインダを溶融させるための加熱温度は、混合材料に含まれるバインダの種類に応じて適宜変更することができる。上記「2.バインダ」の項にて例示列挙したような熱可塑性樹脂をバインダとして使用する場合、上記「バインダが溶融する温度域」は、50℃〜150℃、好ましくは60℃〜140℃、より好ましくは120℃±20℃に設定するとよい。また、このときの加熱時間は、0.1時間〜1時間(例えば0.5時間程度)に設定するとよい。上述の条件で混合材料を加熱することによってバインダを好適に溶融させることができる。
なお、混合材料を溶融状態にするための加熱処理は、ロールミル、ミキサーなどを用い、1rpm〜100000rpmの攪拌速度で混練しながら行ってもよい。これによって、セラミック粉末が好適に分散した状態で、後述の「C.流体力学形状係数の算出」を行うことができる。この混練処理は、各構成材料を単に混ぜ合わせた粉体を混合材料として用いる場合に特に好ましい。
C.流体力学形状係数の算出
ここでは、溶融状態の混合材料について、所定の温度域における流体力学形状係数を算出する。ここで「所定の温度域」は、混合材料が溶融状態を維持できる程度の温度域であり、射出成形用材料に含まれるバインダの種類に応じて適宜変更することができる。上記「2.バインダ」の項にて例示列挙したような熱可塑性樹脂をバインダとして使用する場合、上記「所定の温度域」は、例えば50℃〜120℃、好ましくは60℃〜100℃、より好ましくは60℃〜90℃に設定するとよい。また、上記「所定の温度域」は、射出成形を実施する際に設定する温度と同じ温度であるとより好ましい。この場合、実際に射出成形を行う際の温度における流動性を評価することができる。
上記流体力学形状係数は、下記一般式(1)に基づいて計算することができる。
Figure 2013028148
上記一般式(1)は、いわゆるDougherty-Kriegerモデル(ドゥーティー・クリーガの方程式)である。かかる数式(1)における「混合材料の相対粘度」は、溶融状態におけるバインダの粘度に対する混合材料の比粘度を示す値であり、混合材料の粘度をバインダの粘度で割ることで求めることができる。「流動が遮られたときの混合材料の粘度」は、粘度が高すぎることにより、バインダが溶融状態になっても流動性が生じない(流動が遮られた)状態の混合材料の粘度を示すものである。「混合材料の流体力学形状係数」は、分散質(ここではセラミック粉末)が分散液(溶融状態の混合材料)の粘度に寄与する率を示す値である。「流体力学形状係数」は、溶融状態の混合材料の流動性を評価する指標となり、この値が低い混合材料ほど溶融状態における流動性が高くなる。
流体力学形状係数は、例えば、溶融状態の混合材料に対してレオメータ(レオロジー評価装置)を用いて粘弾性評価を行うことによって得られる。かかるレオメータとしては、HAKKE株式会社製のMARS IIのように、流体力学形状係数を自動的に求めることができるものが市販されており、このようなレオメータを好ましく用いることができる。
D.射出成形用材料の選択
次に、得られた流体力学形状係数を予め定めた許容値と対比し、該許容値を下回る流体力学形状係数を有する混合材料をセラミック射出成形用材料として選択する。
ここで、「許容値」とは、目的の形状のセラミック製品(グリーン成形体)を好適に成形するために射出成形用材料に求められる最低限の流動性を定めた値である。上述のとおり、流体力学形状係数が低くなるにつれて混合材料の流動性が高くなるため、上記「許容値」を下回る混合材料は、目的の形状のセラミック製品(グリーン成形体)を好適に成形するために求められる流動性を少なくとも有していると判断することができる。したがって、上記「許容値」を下回る混合材料を、射出成形用材料として選択することにより、溶融状態において好適な流動性が生じる射出成形用材料を安定的に製造することができる。
なお、射出成形用材料に求められる「最低限の流動性」は、目的とするセラミック製品の寸法や形状、混合材料の加熱温度などによって変化するため、それに応じて上記「許容値」を適宜変更するとよい。具体的には、目的とするセラミック製品が小さな凹凸やカーブを多く含むような複雑構造を有している場合、射出成形用材料には高い流動性が求められるため、上記「許容値」を低く設定するとよい。一方、目的とするセラミック製品が単純な構造であった場合、ある程度低い流動性が許容されるため、高く設定することができる。具体例を示すと、図1に示すようなスパイラル形状のセラミック製品100(幅L1:3mm、厚み:3mm、スパイラル形状の隙間L2:1mm)を製造する場合、上記「許容値」を4程度(典型的には4±0.5)に設定するとよい。このとき、良好な混合材料の流体力学形状係数は、2〜4の範囲(特に好ましくは2.5〜3.5の範囲)に包含される。上記「許容値」に基づいて混合材料から射出成形用材料を選択することにより、好適な流動性を有する射出成形用材料が得られる。かかる射出成形用材料を用いて、セラミック製品100を作製すると、成形不良やクラックの発生が防止された好適なセラミック製品100が得られる。また、上記「許容値」は、予備的な成形試験で得られた実測値に基づいて設定するとより好ましい。
また、射出成形用材料として選択された混合材料は、常温になるまで冷却して固形物にするとよい。このときの固形物は、長尺状の粒状体(例えば、円柱状、球状、直方体、断面が五角形以上の多角柱状体、略ラグビーボール状)に成形するとよい。また、かかる粒状体の長手方向の長さは5mm〜10mmにすると好ましく、短手方向の長さは1mm〜5mmにすると好ましい。このような粒状体に成形された射出成形用材料は、射出成形において容易に射出することができる。
また、ここで開示される製造方法では、混合材料に不可逆的な変化を生じさせない。このため、射出成形用材料として選択されなかった混合材料の組成を調整した後に、再利用することができる。これによって、製造プロセスにおける歩留まりを向上させることができる。なお、射出成形用材料として選択されなかった混合材料の取り扱いは、本発明を限定するものではなく、上述のように再利用してもよいし、廃棄してもよい。
<セラミック成形体の製造方法>
以上、本発明の一側面として、セラミック射出成形用材料を製造する方法について説明した。一方、本発明は、他の側面として射出成形を用いてセラミック製品を製造する方法を提供する。以下、ここで開示されるセラミック製品の製造方法の好適な一実施形態について説明する。
本実施形態に係るセラミック製品の製造方法は、上述のセラミック射出成形用材料を製造する方法によって得られた射出成形用材料を用いて、射出成形を行うことによりセラミック製品を製造することを特徴とする。かかるセラミック製品の製造方法では、例えば、「a.射出成形用材料の射出」と、「b.バインダの除去」と、「c.焼成処理」が行われる。
a.射出成形用材料の射出
本実施形態に係るセラミック製品の製造方法では、先ず、上記射出成形用材料を所望の形状を有した成形用金型のキャビティへ射出する。かかる射出処理では、射出成形用材料を溶融状態にした後に、該溶融状態の射出成形用材料を上記キャビティ内に射出する。
a−1.射出成形用材料の溶融
ここでは、射出成形用材料を所定の温度に加熱することによって溶融状態にする。このときの加熱温度は、射出成形用材料に含まれるバインダの融点よりも高い温度に設定するとよい。具体的には、50℃〜150℃(好ましくは60℃〜140℃、より好ましくは120±20℃)の範囲内であるとよい。さらに、加熱温度は、上述した射出成形用材料の製造において、流体力学形状係数の算出のために混合材料を溶融させた時の温度(「B.混合材料の溶融化」の項を参照)よりも高い温度に設定するとより好ましい。この場合、流体力学形状係数の算出時よりも好適な流動性が射出成形用材料に生じる。ここで用いられる射出成形用材料は、上記「D.射出成形用材料の選択」において、所定の温度域において好適な流動性が生じる混合材料から選択されたものである。このため、当該算出条件よりも高い温度で、射出成形用材料を加熱することによって、流体力学形状係数の算出時よりもさらに好適な流動性を生じさせることができる。
a−2.射出成形用材料の射出
次に、溶融状態の射出成形用材料を、バインダが硬化するような温度に維持された成形用金型のキャビティに射出する。これによって、溶融状態の射出成形用材料が放熱固化(若しくは冷却固化)され、上記成形用金型のキャビティに対応する形状を有した焼成の成形体(グリーン成形体)が得られる。
例えば、図1に示すようなスパイラル形状のセラミック製品100を製造する場合、1mm〜10mm程度の孔径を有した射出口から溶融状態の射出成形用材料を射出するとよい。このとき、溶融状態の射出成形用材料には、1MPa〜100MPa程度の圧力をかけるとよい。これによって、溶融状態の射出成形用材料を成形用金型のキャビティに好適に射出することができる。なお、上記、射出口の孔径や、射出成形用材料に加える圧力は、成形用金型が有するキャビティの形状、寸法に応じて適宜変更することができる。
射出が行われる際の成形用金型の温度は、例えば10℃〜50℃、好ましくは常温(20℃〜40℃)に調整されているとよい。成形用金型の温度が低すぎると、射出成形用材料が急激に冷却されて、クラックが生じる可能性が高くなる。また、成形用金型の温度が高すぎると、射出成形用材料が固化する速度が遅くなり密度ムラが生じる虞がある。
b.バインダの除去(脱脂処理)
次に、上記グリーン成形体を成形用金型から取り出し、グリーン成形体からバインダを除去する(脱脂処理を行う)。具体的には、バインダを構成する熱可塑性樹脂が熱分解される程度の温度でグリーン成形体を加熱する。この脱脂処理における加熱条件(温度、時間)は、バインダの種類や含有割合に応じて適宜変更することができる。また、加熱温度をできるだけ低く設定するとともに加熱時間を長く設定すれば、グリーン成形体の体積が急激に縮小することを防止し、クラック発生を抑制できるため好ましい。例えば、上記グリーン成形体全体に対して10mass%の割合でポリエチレングリコール(PEG)が含まれている場合、100℃〜200℃、好ましくは120℃〜180℃、より好ましくは150℃±10℃の範囲内に加熱温度を設定するとよい。また、加熱時間は、10時間〜100時間、好ましくは、24時間〜72時間、例えば48±12時間程度であるとよい。また、このときの加熱雰囲気は、酸化雰囲気に設定するとよい。
上述のようにして、脱脂処理が行われると、熱分解によってバインダがグリーン成形体から除去される。
c.焼成処理
次に、バインダを除去したグリーン成形体に対して焼成処理を行う。当該焼成処理における加熱条件(温度、時間、雰囲気)については、セラミック粉末の種類や粒径、目的とするセラミック製品の密度に応じて適宜変更することができる。例えば、セラミック粉末としてアルミナを用い、気孔率20%程度の多孔質構造のセラミック製品を製造する場合、焼成温度は1000℃〜1500℃(好ましくは1100℃〜1300℃)に設定するとよい。また、焼成時間は、6時間〜72時間(好ましくは12時間〜48時間、より好ましくは24±6時間)に設定するとよい。上記脱脂処理と同様に、焼成処理についても、加熱温度をできるだけ低く設定するとともに、加熱時間を長く設定することでクラックの発生を抑制できる。また、焼成中の雰囲気は酸化雰囲気若しくは不活性雰囲気に設定するとよい。
以上の工程を実施することにより、所望する形状のセラミック製品が得られる。ここで開示されるセラミック製品の製造方法によれば、溶融状態において好適な流動性が生じる射出成形用材料が用いられているため、成形不良やクラックの発生を防止できる。
また、上述のように、脱脂処理及び焼成処理においては、クラックの発生を抑制するために、長時間(例えば24時間〜96時間)の加熱処理が推奨されている。しかし、焼成処理後に成形不良やクラックが生じると、それまでの加熱処理が無駄になり、製造コストのロスが非常に大きくなる。これに対して、ここで開示される製造方法では、成形不良やクラックを好適に防止できる射出成形用材料のみが、上記加熱処理に提供されているため、上記加熱処理が無駄になることが少なくなり、製造コストのロスを大幅に減らすことができる。
<セラミック製品>
上記製造方法によって得られたセラミック製品は、構成材料や成形時の形状・寸法に応じて種々の目的に使用することができる。特に、射出成形用材料に含まれるセラミック粉末の平均粒径を0.5μm〜50μm(好ましくは10μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上30μm以下)に設定すると、多孔質構造のセラミック製品が得られる。この多孔質構造のセラミック製品は、金属触媒の担体、水やガスなどの浄化フィルター、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構成部材(例えばアノード)などに好適に用いることができる。
<実施例>
次に、本発明に関する実施例を説明する。この実施例では、構成の異なる8種類の射出成形用材料(サンプル1〜8)を作製し、それぞれの流体力学形状係数を算出した。そして、各々の射出成形用材料を用いてセラミック製品を作製し、各々のセラミック製品のクラック発生率を調べた。なお、以下で説明する実施例は、本発明を限定することを意図したものではない。
(サンプル1)
先ず、セラミック粉末として平均粒径0.1μmのアルミナ粉末、バインダとしてポリエチレングリコール(PEG)、ワックスとしてパラフィンを用意した。そして、セラミック粉末:バインダ:ワックスを80:10:10の質量割合で秤量し、これらの構成材料を、120℃で加熱しながらロールミルを用いて0.5時間混練処理を行った。以下、上述の工程を経て得られた射出成形用材料をサンプル1と称する。
次に、上記サンプル1に加熱処理(温度:70℃、時間:5分)を行って溶融状態にした。そして、溶融状態のサンプル1に対して粘弾性評価を行って流体力学形状係数を算出した。具体的には、レオメータ(HAKKE社製、MARS II)を用いて、35mmプレート、ギャップ2mmにおけるストレススウィープ評価を行うことで溶融状態のサンプル1の相対粘度を算出した。そして、Dougherty-Kriegerモデルに基づいて、上記相対粘度からサンプル1の流体力学形状係数を算出した。ここで算出されたサンプル1の流体力学形状係数は6.8であった。
次に、上記サンプル1から作製条件を変更して作製したサンプル2〜8に係る射出成形用材料について説明する。なお、サンプル2〜8の作製の説明において、特に言及していないプロセスについては、上記サンプル1と同様のプロセスを行っているものとする。
(サンプル2)
サンプル2では、セラミック粉末として平均粒径0.1μmのアルミナ粉末、バインダとしてポリエチレンアセテート(PEA)、ワックスとしてマイクロクリスタリンワックス(マイクロクリン)を用いた。このサンプル2に粘弾性評価を行うと、流体力学形状係数が8.3であった。
(サンプル3)
サンプル3では、セラミック粉末として平均粒径0.5μmのアルミナ粉末、バインダとしてPEG、ワックスとしてマイクロクリンを用いた。このサンプル3の流体力学形状係数は3.2であった。
(サンプル4)
サンプル4では、セラミック粉末として平均粒径0.5μmのアルミナ粉末、バインダとしてPEA、ワックスとしてパラフィンを用いた。このサンプル4の流体力学形状係数は2.5であった。
(サンプル5)
サンプル5では、セラミック粉末として平均粒径6.7μmのアルミナ粉末、バインダとしてPEG、ワックスとしてパラフィンを用いた。このサンプル5の流体力学形状係数は2.5であった。
(サンプル6)
サンプル6では、セラミック粉末として平均粒径30μmのアルミナ粉末、バインダとしてPEG、ワックスとしてパラフィンを用いた。このサンプル6の流体力学形状係数は2.6であった。
(サンプル7)
サンプル7では、セラミック粉末として平均粒径50μmのアルミナ粉末、バインダとしてPEG、ワックスとしてパラフィンを用いた。このサンプル8の流体力学形状係数は2.5であった。
(サンプル8)
サンプル8では、セラミック粉末として平均粒径80μmのアルミナ粉末、バインダとしてPEG、ワックスとしてパラフィンを用いた。このサンプル8の流体力学形状係数は6.5であった。
以上、本実施例で作製したサンプル1〜8について説明した。上述したサンプル1〜8の構成材料と流体力学形状係数を表1にまとめる。
Figure 2013028148
(セラミック成形体の作製)
次に、上記各サンプル1〜8を用いて、射出成形を行うことによってセラミック製品を作製した。なお、この実施例では、一つのサンプルから10個のセラミック製品を作製した。
ここでは、先ず、60℃〜90℃の範囲内の温度になるように上記各サンプル1〜8を加熱することで溶融状態にした。そして、溶融状態の射出成形用材料を、図1に示すようなスパイラル形状の成形用金型に射出成形することによってスパイラル形状のグリーン成形体を作製した。このスパイラル形状の幅L1の長さは3mmであり、スパイラル形状の隙間L2の長さは1mmである。また、厚み(図1における紙面に直交する方向の長さ)は3mmである。また、このときの成形用金型の温度は、常温(20℃程度)に維持した。
次に、上記成形用金型からグリーン成形体を取り出して、150℃で50時間加熱することによってバインダを除去した。そして、バインダ除去後のグリーン成形体を焼成(温度:1200℃、時間:24時間)することによって、セラミック製品を作製した。
(クラック発生率の測定)
上述のようにして、サンプル毎に10個ずつ作製されたセラミック製品を、目視で観察し、クラックが生じたセラミック製品をカウントした。そして、作製したセラミック製品全体に対するクラックが生じているものの割合を「クラック発生率」として算出した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、流体力学形状係数が4を上回る射出成形用材料(サンプル1,2,8)では、作製したセラミック製品の30%以上にクラックの発生が認められた。すなわち、流体力学形状係数が4を上回る射出成形用材料(サンプル1,2,8)では、好ましい流動性が得られなかった(×)と解される。
これに対して、流体力学形状係数が4以下の射出成形用材料(サンプル3〜7)では、いずれのサンプルでもクラック発生率が10%以下となり、クラックの発生が抑制されていた。すなわち、流体力学形状係数が4以下の射出成形用材料(サンプル3〜7)では、好適な流動性を有している(○)と解される。
以上の結果から、流体力学形状係数が4を下回る射出成形用材料は、図1に示すようなスパイラル形状のセラミック製品100を作製するために好適な流動性を有していると解される。したがって、かかる射出成形用材料を用いることにより、セラミック製品100の製造プロセスにおけるクラックの発生を好適に防止できる。
ここで開示されるセラミック射出成形用材料を製造する方法によれば、溶融状態において好適な流動性を有する射出成形用材料を製造することができる。かかる射出成形用材料を用いれば、射出成形でセラミック製品を製造する際に、成形不良やクラックの発生を好適に防止することができる。このため、セラミック製品の製造現場において製造コストの削減を実現することができる。多孔質構造のセラミック製品を作製する場合、平均粒径の大きなセラミック粉末を含んだ射出成形用材料を用いるが、かかる射出成形用材料は、溶融状態における流動性が安定しにくいため、製造プロセス中における歩留まりが悪い。ここで開示される射出成形用材料の製造方法によれば、好適な流動性が生じる射出成形用材料のみを選択するため、多孔質構造のセラミック製品を製造するときに特に好ましく用いることができる。
100 スパイラル形状のセラミック製品

Claims (5)

  1. セラミック製品を射出成形により製造するために用いられるセラミック射出成形用材料を製造する方法であって、
    前記セラミック射出成形用材料を構成する、セラミック粉末と熱可塑性樹脂からなるバインダとを少なくとも含む混合材料を用意すること;
    前記混合材料を、前記バインダが溶融する温度域まで加熱して溶融状態にすること;
    前記溶融状態の混合材料について、所定の温度域における流体力学形状係数を、下記一般式(1):
    Figure 2013028148
    に基づいて算出すること;
    得られた流体力学形状係数を予め定めた許容値と対比し、前記許容値を下回る流体力学形状係数を有する混合材料をセラミック射出成形用材料として選択すること;
    を含む、セラミック射出成形用材料の製造方法。
  2. 前記セラミック粉末として、光散乱法に基づく平均粒径が0.5μm以上50μm以下のセラミック粉末を用いる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記バインダとして、ポリエチレングリコール系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、エチレンビニルアセテート系、ポリスチレン系から選択される少なくとも1種または2種以上の熱可塑性樹脂を用いる、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記流体力学形状係数を算出する際の所定の温度域を、60℃〜90℃に設定する、請求項1〜3の何れか一項に記載の製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の製造方法によって得られた混合材料を用い、射出成形を行うことよりセラミック製品を製造することを特徴とする、セラミック製品の製造方法。



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