JP2013028115A - 成型物の製造方法及び成型物 - Google Patents

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剛志 八塚
Chiho Ito
千穂 伊藤
Yasuo Kakihara
康男 柿原
Kosaku Tamari
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Abstract

【課題】 導電性に優れた成型物を得ることができる成型物の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の製造方法によれば、熱可塑性樹脂シート上に銀粉末、バインダー樹脂、及び溶剤を主成分とする銀ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銀粉末含有塗膜が設けられた熱成型用シートに、酸処理を施した後に熱成形を行う、又は該熱成型用シートを熱成型して得られた成型物に酸処理を施すことにより、導電性が良好な成型物が得られる。本発明で得られる成型物は導電性が優れるだけでなく、成型性や生産性が良好である。そのため、本発明の成型物は電磁波遮蔽機能が必要とされる成型物や導電回路付き成型物に用いられる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、導電性に優れた成型物の製造方法及びその製造方法により得られた成型物に関するものである。
近年、電磁波を利用した通信機器等の電子機器が広範囲に普及しているが、その一方で、不要な電磁波による機器の誤動作や故障等が問題となっている。電磁波対策材料としては、外部からの電磁波の進入防止と発生電磁波の外部への伝播防止を目的とする電磁波遮蔽材と、電磁波を吸収する電磁波吸収材がある。
携帯電話では筐体外部を電磁波遮蔽するシールド構造が求められている。シールド構造には筐体に金属ケースを用いる方法あるいは樹脂筐体への導電塗装、導電性物質の蒸着やスパッタリング、電解めっきや無電解めっき等により導電層を形成する方法等が知られている。しかしながら、金属ケースは重量が大きいため、軽量化が要求される携帯電話では不適当である。また、電子機器の搭載が急増している自動車においても電磁波遮蔽は課題となっているが、重量化は好ましくない。
特許文献1にはシート上に銅とニッケルの薄層をスパッタリングで設けた、成型性に優れたシールドボックス用シートが開示されている。しかしながら、スパッタリングを行うには高価な真空装置が必要であり、またバッチ処理であるため、生産性が悪い。
特許文献2にはシールドボックスとしてステンレス鋼等の金属粉を混合したエンジニアリングプラスチックが開示されている。しかし、樹脂への金属粉の混合だけでは良好な電磁波遮蔽性を得ることは困難である。
特開2005−5297号公報 特開2000−196278号公報
本発明の課題は、熱成型性に優れた熱成型用シートを用いて、導電性に優れた成型物の製造方法を提供することである。本発明の好ましい実施態様においては、ロール・ツ・ロール方式で成型物を得ることができる。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
(1) 熱可塑性樹脂シート上に、銀粉末、バインダー樹脂、及び溶剤を主成分とする銀ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銀粉末含有塗膜が設けられた熱成型用シートに酸処理を施した後に熱成型することを特徴とする成型物の製造方法。
(2) 熱可塑性樹脂シート上に、銀粉末、バインダー樹脂、及び溶剤を主成分とする銀ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銀粉末含有塗膜が設けられた熱成型用シートを熱成型して得られる成型物に、熱成型後に酸処理を施すことを特徴とする成型物の製造方法。
(3) 基材上に、銀粉末、バインダー樹脂、及び溶剤を主成分とする銀ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銀粉末含有塗膜を設け、熱可塑性樹脂シート上に銀粉末含有塗膜を転写した熱成型用シートに酸処理を施した後に熱成型することを特徴とする成型物の製造方法。
(4) 基材上に、銀粉末、バインダー樹脂、及び溶剤を主成分とする銀ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銀粉末含有塗膜を設け、熱可塑性樹脂シート上に銀粉末含有塗膜を転写した熱成型用シートを熱成型して得られる成型物に、熱成型後に酸処理を施すことを特徴とする成型物の製造方法。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法によって製造された成型物。
本発明によれば、熱可塑性樹脂シート上に銀粉末含有塗膜を形成した熱成型用シート又は該熱成型用シートを熱成型して得られた成型物に酸処理を施すことにより成型物の導電性が向上する。酸処理による導電性の向上は酸処理後に熱成型を行っても保持されている。また、本発明によれば、高価な真空装置を必要とせず、ロール・ツ・ロールで連続処理ができるため生産性に優れる。
本発明で用いる銀ペーストは、銀粉末、バインダー樹脂を溶剤中に分散させたものである。銀粉末は加熱処理により粒子間が融着するものでも融着しないものでもよい。銀粉末は銀を主成分とする金属粒子であり、銀粉末の形状としては、球状、フレーク状(リン片状)、樹枝状(デンドライト状)などがある。
本発明で用いる銀粉末は平均粒径が0.01〜20μmであることが好ましい。銀粉末の平均粒径が20μmより大きいと、銀ペーストでの粒子の沈降が激しいため、塗布作業性が悪くなる。また、平均粒径が0.01μmより小さい場合には分散が困難となることや、乾燥時の加熱による微粒子間融着に起因する歪の発生により、熱可塑性樹脂シートとの接着性が低下することがある。銀粉末の平均粒径が0.02μm〜15μmの範囲がより好ましく、更に好ましくは0.04〜4μm、更により好ましくは0.05〜3μmである。平均粒径の測定は、透過電子顕微鏡、電界放射型透過電子顕微鏡、電界放射型走査電子顕微鏡のいずれかにより粒子100個の粒子径を測定して平均値をもとめる方法による。本発明で用いる銀粉末は平均粒径が0.01〜20μmであれば、異なる粒径のものを混合して使用してもかまわない。
本発明で用いる銀ペーストに使用される溶剤は、バインダー樹脂を溶解するものから選ばれ、有機化合物であっても水であってもよい。溶媒は、銀ペースト中で銀粉末を分散させる役割に加えて、分散体の粘度を調整する役割がある。有機溶媒の例として、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、アミド等が挙げられる。
本発明で用いる銀ペーストに使用されるバインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドあるいはアクリル等の樹脂が挙げられる。樹脂中にエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、イミド結合等を有するものが、銀粉末の安定性から、好ましい。本発明で使用されるバインダー樹脂は数平均分子量が1万以上のものが好ましく、より好ましくは2万以上のものである。数平均分子量が1万以上のものを用いることにより、硬化剤との反応後でも熱成型性を保持できる。数平均分子量の上限は銀ペーストの粘度等から、20万が望ましい。本発明で使用されるバインダー樹脂のガラス転移温度は50℃以下が好ましく、特に好ましくは30℃以下のものである。ガラス転移温度が50℃を超えると、熱成型時の温度を高くしても成型性が不十分になることがある。
本発明で用いる銀ペーストは、銀粉末とバインダー樹脂との割合が95:5〜80:20重量比の範囲であることが好ましく、特に、92:8〜85:15重量比の範囲が好ましい。銀粉末とバインダー樹脂の比率が95:5よりも銀粉末が多くなると、バインダー樹脂の分子量やガラス転移温度を最適化しても熱成型性が悪化する。また、銀粉末とバインダー樹脂との比率が80:20よりも銀粉末が少なくなると、酸処理を最適化しても、導電性が低くなる。
本発明で用いる銀ペースト中の溶剤量は銀ペーストの塗布作業性や目標とする塗布厚み等から決定される。例えば、銀ペーストの固形分濃度を30〜90重量%の範囲で設定することが望ましい。
本発明で用いる銀ペーストには、必要に応じて硬化剤を配合する。本発明の銀ペーストに使用できる硬化剤としてはフェノール樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂等が挙げられる。硬化剤はバインダー樹脂に応じて選ばれるが、ポリエステルとポリイソシアネート化合物、ポリエステルとブロック化ポリイソシアネート化合物、ポリエステルと熱硬化フェノール樹脂が特に好ましい。硬化剤の使用量はバインダー樹脂の1〜20重量%の範囲が好ましい。
本発明で用いる銀ペーストは、スルフォン酸塩基やカルボン酸塩基等の金属への吸着能力のある官能基を含有するポリマーをバインダー樹脂として含んでもよい。さらに分散剤を配合してもかまわない。分散剤としてはステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、燐酸エステル、スルフォン酸エステル等が挙げられる。分散剤の使用量は有機バインダーの0.1〜5重量%の範囲が好ましい。
次に、銀ペーストの製造方法について述べる。
銀ペーストを得る方法としては、粉末を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、銀粉末とバインダー樹脂溶液、必要により追加の溶媒からなる混合物を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法等で分散を施せばよい。これらの分散手段のうち、複数を組み合わせて分散を行うことも可能である。これらの分散処理は室温で行ってもよく、分散体の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂シートの素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂等の非晶性シート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィンシート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートのブレンド樹脂、ポリカーボネートとABS樹脂のブレンド樹脂等が挙げられる。特に耐熱性や機械的物性からポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレンが望ましい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂シートは、熱成型性を悪化させない範囲でシリカやカーボンブラック等の無機フィラーをブレンドしたものでも良く、表面にハードコート層や、接着性改善層、あるいは、耐溶剤性向上層を設けたものでも良い。さらに、熱可塑性樹脂シートはコロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ処理等の表面処理を行ったものでもよい。
本発明で形成される銀粉末含有塗膜は乾燥後の厚みを10μm以下、特に5μm以下とすることが望ましい。厚みが10μmを超えると、樹脂硬化時に発生する硬化歪等により、接着性が低下することがある。厚みが0.01μm以下では熱成型時による変形により、接着性が低下することがある。
本発明での銀ペーストを用いて、熱可塑性樹脂シート上に銀粉末含有塗膜を形成する方法を説明する。なお、銀粉末含有塗膜は熱可塑性樹脂シート上に全面に設けられたものでも、導電回路や網目等のパターン物でもかまわない。また、銀粉末含有塗膜は熱可塑性樹脂シートの片面に設けても、両面に設けてもかまわない。
熱可塑性樹脂シート上に銀ペーストを用いて銀粉末含有塗膜を形成するには、銀ペーストをフィルムやシートに塗布あるいは印刷する場合に用いられる一般的な方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、ロールコート法、ダイコート法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法等が挙げられる。印刷あるいは塗布により形成された塗膜から加熱あるいは減圧等により溶剤を蒸発させることにより、銀粉末含有塗膜を形成することができる。
ポリカーボネートのように耐溶剤性の乏しい熱可塑性樹脂シートの場合には、直接シート上に塗布するのではなく、耐溶剤性を有する素材でできた基材上に銀ペーストを塗布乾燥して設けた銀粉末含有塗膜をシートに転写することによって、本発明に用いられる熱可塑性樹脂シート上に銀粉末含有塗膜を形成した熱成形用シートを得ることができる。転写方法は、公知の転写方法が使用可能であり、例えば、圧着により転写する方法、ラミネーターで転写する方法、プレス機で転写する方法、サーマルヘッドで熱転写する方法などを用いることができる。
本発明においては熱成型を行って成型物を製造する。熱成型は真空成型や圧空成型とも呼ばれる成型方法である。真空成型では、所定の大きさの熱可塑性樹脂シートは両端をクランプで保持されながら上下からヒーターで加熱される。加熱により軟化したシートは金型上に移動され、金型とシートの間の空気を抜きとり、真空にすることで金型に密着させて成型される。圧空成型では軟化したシートに空気圧をかけ、金型に密着させて成型する。また、空気の代わりにプラグを使って金型に密着させて成型してもよい。
本発明では、熱可塑性樹脂シート上に銀粉末含有塗膜を形成した熱成型用シート又は該熱成型用シートを熱成型して得られた成型物に酸処理を行う。酸処理は、熱成型前の熱成型用シートに行っても、該熱成型用シートを熱成型して得られた成型物に行っても、導電性向上効果を得ることができる。あるいは、熱成型の前後の両方で行ってもよい。酸処理を行わずに熱成型を行うと樹脂の延伸度により、10倍以上の抵抗の増加が容易に起こるが、酸処理後に熱成型すると、熱成型の影響は非常に小さくなる。
酸処理に用いる酸は有機酸や無機酸から選ぶことができる。強酸でも弱酸でもかまわない。具体的な例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸、蓚酸、乳酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、蟻酸等の有機酸が挙げられる。酸処理は対象物の酸溶液への浸漬、酸溶液の銀粉末含有塗膜へのコート又は付着、酸蒸気への暴露等がある。特に、塩酸あるいはp−トルエンスルフォン酸の水溶液に対象物を浸漬することが望ましい。浸漬時に加熱してもかまわないが、室温での浸漬でも有効である。浸漬時間は用いる酸の種類や処理条件等により異なるが、1秒以上、1分以下で効果がある。
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は以下の方法によって測定したものである。
比抵抗:三菱化学社製低抵抗率計ロレスターGPとASPプローブを用いて測定した。電気抵抗値は比抵抗で記載した。
接着性:成型物上の銀含有膜にセロハンテープを張り合わせて、急速に剥離した。
○---成型物と銀含有膜間に剥離を生じない。
△---剥離が認められるが、剥離はセロハンテープ張り合わせ部の10%未満。
×---剥離が認められ、剥離はセロハンテープ張り合わせ部の10%以上。
電磁遮蔽性:KEC法により周波数100MHzで測定した。
<用いた銀粉末>
銀粉末1:硝酸銀水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加え、酸化銀スラリーを得た後、ミリスチン酸ナトリウムを有機保護剤として加えた後、ホルマリンにより銀粉末まで還元した。透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径0.12μmの球状の粒子である。
銀粒子2:三井金属鉱業社製 湿式銀粉末「SPN10J」平均粒径2μmの球状粒子。
実施例 1
下記の配合割合の組成物をサンドミルにいれ、800rpmで、2時間分散した。メディアは半径0.2mmのジルコニアビーズを用いた。得られた銀ペーストをアプリケーターにより、厚み50μmの東洋紡績社製二軸延伸ポリエステルフィルム「ソフトシャインA1597」上に、乾燥後の厚みが3μmになるように塗布し、120℃で5分間、熱風乾燥して銀粉末含有塗膜を得た。
分散液組成
共重合ポリエステルの溶液 2.5部
(トルエン/シクロヘキサノン=1/1(重量比)の40重量%溶液)
銀粉末1(平均粒径0.12μm) 9部
γ−ブチロラクトン(希釈溶剤) 3.5部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 5部
ブロックイソシアネート 0.1部
(共重合ポリエステル:東洋紡積社製「バイロン300」
ブロックイソシアネート:日本ポリウレタン社製「コロネート2546」)
得られた銀粉末含有塗膜付きポリエステルフィルムを5重量%塩酸水溶液に15秒間浸漬し、酸処理を行った。その後、該フィルムを水で洗浄し乾燥後、銀粉末含有塗膜を内側にして熱成型した。熱成型は浅野研究所製輻射加熱方式真空圧空成型機FKS−0631−20型にて開口部120mm×120mm、底部100mm×100mm、深さ20mmのトレー状の金型を取り付け、あらかじめ余熱した後、金型温度90℃にて真空成型を行った。成型物の外観を観察したところ、成型性は良好であった。成型物の比抵抗、接着性、電磁波遮蔽性を測定した。結果を表−1に示す。
実施例 2
実施例1で行った5重量%塩酸水溶液への15秒間浸漬を、熱成型前のフィルムには行わず、熱成型された成型物に実施するように変更したこと以外は実施例1と同様に成型物を得た。評価結果を表−1に示す。
実施例 3〜5
実施例1で用いた銀粉末とバインダー樹脂の比率を表−1に記載したものに変更したこと以外は実施例1と同様にして成型物を得た。得られた成型物の評価結果を表−1に示す。
実施例 6
実施例1で用いた銀粉末を銀粉末2に変更したこと、および酸処理をp−トルエンスルフォン酸の5%水溶液に1分間浸漬することに変更したこと以外は実施例1と同様にして成型物を得た。得られた成型物の評価結果を表−1に示す。
実施例 7〜10
実施例2で用いたバインダー樹脂及び硬化剤を表−1に記載したものに変更したこと以外は実施例2と同様にして成型物を得た。実施例8、9ではバインダー樹脂としてレゾルシノール骨格を有するグリコールを原料の一部として使ったポリエステルを用い、ベンゼンスルフォン酸を触媒とするフェノール樹脂硬化を用いた。また、実施例8、9は銀ペーストの乾燥を150℃で5分間行った。得られた成型物の評価結果を表−1に示す。
実施例 11
実施例1で作成した銀ペーストを二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に乾燥後の厚みが3μmになるように塗布し、120℃で5分間乾燥させた。銀粉末含有塗膜の形成された面を、厚み100μmのポリカーボネートシートと重ね、120℃で10分間圧着後、ポリプロピレンフィルムを剥離し、ポリカーボネート上に銀粉末含有塗膜を転写した。その後、実施例1と同様に塩酸処理と熱成型を行った。得られた成型物の評価結果を表−1に示す。
比較例1
下記の配合割合の組成物をサンドミルにいれ、800rpmで、2時間分散した。メディアは半径0.2mmのジルコニアビーズを用いた。得られた銀ペーストをアプリケーターにより、厚み50μmの東洋紡績社製二軸延伸ポリエステルフィルム「ソフトシャインA1597」上に、乾燥後の厚みが3μmになるように塗布し、120℃で5分熱風乾燥して銀粉末含有塗膜を得た。
分散液組成
共重合ポリエステルの溶液 2.5部
(トルエン/シクロヘキサノン=1/1(重量比)の40重量%溶液)
銀粉末1(平均粒径0.12μm) 9部
γ−ブチロラクトン(希釈溶剤) 3.5部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 5部
ブロックイソシアネート 0.1部
(共重合ポリエステル:東洋紡積社製「バイロン300」
ブロックイソシアネート:日本ポリウレタン社製「コロネート2546」)
得られた銀粉末含有塗膜付きポリエステルフィルムに酸処理を施すことなく、銀粉末含有塗膜を内側にして熱成型を実施した。熱成型は浅野研究所製輻射加熱方式真空圧空成型機FKS−0631−20型にて開口部120m×120mm、底部100mm×100mm、深さ20mmのトレー状の金型を取り付け、あらかじめ余熱した後、金型温度90℃にて真空成型を行った。成型物の外観を観察したところ、成型性は良好であった。成型物の比抵抗、接着性、電磁波遮蔽性を測定した。結果を表−1に示す。
比較例2
実施例9と同様にして、ただし酸処理は熱成型前も熱成型後も行わずに成型物を得た。得られた成型物の評価結果を表−1に示す。
Figure 2013028115
本発明で得られる成型物は導電性が優れるだけでなく、成型性や生産性が良好である。そのため、本発明の成型物は電磁波遮蔽機能が必要とされる成型物や導電回路付き成型物に用いられる。

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂シート上に、銀粉末、バインダー樹脂、及び溶剤を主成分とする銀ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銀粉末含有塗膜が設けられた熱成型用シートに酸処理を施した後に熱成型することを特徴とする成型物の製造方法。
  2. 熱可塑性樹脂シート上に、銀粉末、バインダー樹脂、及び溶剤を主成分とする銀ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銀粉末含有塗膜が設けられた熱成型用シートを熱成型して得られる成型物に、熱成型後に酸処理を施すことを特徴とする成型物の製造方法。
  3. 基材上に、銀粉末、バインダー樹脂、及び溶剤を主成分とする銀ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銀粉末含有塗膜を設け、熱可塑性樹脂シート上に銀粉末含有塗膜を転写した熱成型用シートに酸処理を施した後に熱成型することを特徴とする成型物の製造方法。
  4. 基材上に、銀粉末、バインダー樹脂、及び溶剤を主成分とする銀ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銀粉末含有塗膜を設け、熱可塑性樹脂シート上に銀粉末含有塗膜を転写した熱成型用シートを熱成型して得られる成型物に、熱成型後に酸処理を施すことを特徴とする成型物の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造される成型物。
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