JP2013023604A - 太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物および太陽熱集熱用反射板の製造方法 - Google Patents

太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物および太陽熱集熱用反射板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐候性および耐衝撃性を有し、かつ耐クラック性に優れ、反射面等の下層より剥離し難いことで、反射面の傷等の不具合による反射率の低下を抑制する塗膜を反射基板の表面に形成できる太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物、及びこれを用いた太陽熱集熱用反射板の製造方法を提供する。
【解決手段】架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)と、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンの水素添加物、およびポリブタジエンの水素添加物から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、数平均分子量が500〜10000であり、水酸基を有する重合体(B)と、イソシアネート系硬化剤、アミノ系硬化剤、オルガノシラン系硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(C)と、溶剤(D)と、を含有する塗料組成物よりなる太陽熱集熱用反射板11の表面塗布用塗料組成物12。
【選択図】図2

Description

本発明は、太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物および太陽熱集熱用反射板の製造方法に関する。
近年、地球環境問題の観点から、化石燃料の使用量を抑える試みが多くなされており、その一つとして太陽熱を利用する太陽熱集熱システムが知られている。太陽熱集熱システムとしては、例えば、水、無機塩等の熱媒を備えた集熱管と、太陽光を反射して上記集熱管に集める反射板とを有する太陽熱集熱システムが挙げられる。該太陽熱集熱システムでは、反射板で太陽光を反射して集熱管に集め、その太陽光の熱で集熱管の熱媒を加熱することで熱エネルギーを得る。
反射板としては、ガラス基板と、該ガラス基板上に形成された反射面となる反射金属層(以下、「反射層」ともいう)と、該反射金属層上に形成された防錆塗膜層とを有する反射鏡や金属基板の一方の面が鏡面仕上げされた金属反射板等が広く用いられている。
反射鏡の製造方法としては、通常、透明なガラス基板上に、反射金属層としての銀膜を形成し、その後、防錆塗膜層形成のために、防錆塗料を塗布して製造する方法が挙げられる。しかし、銀膜は、非常に酸化されやすいことから、銀膜の保護層として、銅保護層を被覆した上に防錆塗料を塗布して、その後、乾燥、硬化させることで防錆塗膜層を形成し、反射鏡が製造される。すなわち、上記構成の反射鏡は、防錆塗膜層によって、反射金属層の腐食および変質が抑制されている。
防錆塗料には、樹脂成分として、エポキシ樹脂やアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂といった熱硬化性樹脂が広く用いられる。さらに塗料が硬化する際に発生する塗膜の硬化収縮を抑えるために、炭酸カルシウムやタルクといった無機系の顔料成分が配合されている。(特許文献1)
しかしながら、太陽熱集熱用反射板は、長時間、砂漠地帯等の過酷な環境下で使用されることが多いことから、防錆塗膜層中の樹脂劣化(光劣化、加水分解による劣化等)や炭酸カルシウムやタルクといった無機顔料成分の溶出、脱落によって、防錆塗膜層の内部応力が増大し、銅保護層より防錆塗膜層が剥離する。その結果、銅保護層で被覆されていたとしても、反射金属層としての銀膜が腐食、反射率が低下するという問題がある。
さらに、砂嵐等によって、防錆塗膜層に砂が高速でぶつかることにより、防錆塗膜層に割れが生じ、その割れから水分が浸入して反射金属層としての銀膜が酸化され、反射鏡の反射率が低下することがある。
一方、金属反射板は、アルミニウム、ステンレス鋼等からなる金属基材の一方の面を鏡面仕上げすることにより製造することができる。金属反射板においては、鏡面仕上げ面が反射面となる。
金属反射板においては、砂嵐等によって、防錆塗膜層に砂が高速でぶつかることにより、反射面に傷が付いたり、反射面の酸化、腐食等によって反射率が低下することがある。
特開2007−45849号公報
本発明は、優れた耐候性および耐衝撃性を有し、かつ塗膜の耐クラック性に優れ、反射層の腐食や鏡面仕上げ面の傷等の不具合による反射率の低下を抑制する塗膜を反射基板の表面に形成できる、太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物の提供を目的とする。
また、本発明は、優れた耐候性および耐衝撃性を有し、かつ塗膜の耐クラック性に優れ、反射層の腐食や鏡面仕上げ面の傷等の不具合による反射率の低下の少ない太陽熱集熱用反射板の製造方法の提供を目的とする。
本発明は、上記課題を解決する、以下の構成を有する太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物および太陽熱集熱用反射板の製造方法を提供する。
(1)架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)と、
ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンの水素添加物、およびポリブタジエンの水素添加物から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、数平均分子量が500〜10000であり、水酸基を有する重合体(B)と、
イソシアネート系硬化剤、アミノ系硬化剤、オルガノシラン系硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(C)と、
溶剤(D)と、を含有する太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
(2)上記重合体(B)が、水酸基価10〜100mgKOH/g−樹脂である上記(1)に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
(3)上記フルオロオレフィン系共重合体(A)と上記重合体(B)との質量比が99/1〜80/20である上記(1)または(2)に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
(4)上記フルオロオレフィン系共重合体(A)が、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、およびこれらの混合物から選ばれるいずれか基づく繰り返し単位を含むフルオロオレフィン系共重合体である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
(5)顔料成分(E)を含有する上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
(6)反射基材と反射面とを有する反射基板の表面に、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の表面塗布用塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、上記溶剤(D)を除去し、上記塗布層を硬化させて、塗膜を形成する太陽熱集熱用反射板の製造方法。
(7)上記反射基板が、上記反射基材としてのガラス基材と、該ガラス基材の一方の面に、上記反射面としての、金属および金属酸化物の少なくとも一方からなる反射層と、を有する反射基板である上記(6)に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
(8)上記反射基板が、上記反射基材としての、金属からなる金属基材と、該金属基材の一方の面を鏡面仕上げして得られる、上記反射面としての鏡面仕上げ面と、を有する反射基板である上記(6)に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
(9)上記反射基板が、上記反射基材としての、金属からなる金属基材と、該金属基材の一方の面に、上記反射面としての、金属および金属酸化物の少なくとも一方からなる反射層と、を有する反射基板である上記(6)に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
(10)上記金属基材が、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる金属基材である上記(8)または(9)に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
本発明の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物は、優れた耐候性および耐衝撃性を有し、かつ耐クラック性に優れ、反射層の腐食や鏡面仕上げ面の傷等の不具合による反射率の低下を抑制する塗膜を太陽熱集熱用反射板の反射基板の表面に形成でき、それにより、耐候性、耐衝撃性、耐クラック性に優れる太陽熱集熱用反射板を提供できる。
また、本発明の太陽熱集熱用反射板の製造方法によれば、優れた耐候性および耐衝撃性を有し、かつ耐クラック性に優れ、反射層の腐食や鏡面仕上げ面の傷等の不具合による反射率の低下を抑制する塗膜が反射基板の表面に形成された太陽熱集熱用反射板が得られる。
図1は本発明の太陽熱集熱用反射板の反射基板の断面図である。 図2は本発明の太陽熱集熱用反射板の一態様の断面図である。 図3は本発明の太陽熱集熱用反射板の一態様の断面図である。
<太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物>
本発明の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(以下、「塗料組成物」ともいう。)は、架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)と、
ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンの水素添加物、およびポリブタジエンの水素添加物から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、数平均分子量が500〜10000であり、水酸基を有する重合体(B)と、
イソシアネート系硬化剤、アミノ系硬化剤、オルガノシラン系硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(C)と、
溶剤(D)と、を必須成分として含む組成物である。
以下、各原料について説明する。
<1>架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)
本発明における架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)は、上記硬化剤(C)と反応して架橋結合を形成する架橋性官能基を有する。架橋性官能基については後述する。
フルオロオレフィン系共重合体(A)としては、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な単量体との共重合体が好ましい。フルオロオレフィン系共重合体(A)中のフルオロオレフィンに基づく繰り返し単位の割合の下限は、塗膜に充分な耐候性を付与する点から、20モル%が好ましく、30モル%がより好ましい。また、上記フルオロオレフィンに基づく繰り返し単位の割合の上限は、下地(反射面等の下層)との密着性の点から、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましい。
フルオロオレフィン系共重合体(A)の数平均分子量は2000〜100000が好ましく、6000〜30000がより好ましい。
フルオロオレフィン系共重合体(A)の数平均分子量が上記下限値以上であれば、塗膜の耐水性、耐塩水性が良好である。フルオロオレフィン系共重合体(A)の数平均分子量が上記上限値以下であれば、塗膜の平滑性が良好である。
数平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトフラフィー(GPC)で測定されたものである。
フルオロオレフィン系共重合体(A)の数平均分子量を上記範囲とするには、重合開始剤の添加量や連鎖移動剤の種類、添加量等で調整すればよい。
また、フルオロオレフィン系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は−10〜50℃が好ましい。フルオロオレフィン系共重合体(A)のTgを上記範囲とするには、フルオロオレフィン系共重合体(A)を構成するモノマー(フルオロオレフィンやこれと共重合可能な単量体)の構造を適宜調整すればよい。具体的には、シクロヘキサン環等の環構造を有するモノマーを用いるとTgが上昇する傾向があり、直鎖状または分岐状で炭素鎖が長いモノマーを用いるとTgが低下する傾向がある。また、重合開始剤の添加量や連鎖移動剤の種類、添加量でも調整可能である。
フルオロオレフィン系共重合体(A)が架橋性官能基として水酸基を有する場合、下地(反射面等の下層)との密着性が向上する点から、水酸基価の下限は、5mgKOH/g−樹脂が好ましく、10mgKOH/g−樹脂がより好ましい。また、剥離やクラックが発生し難くなる点から、水酸基価の上限は、250mgKOH/g−樹脂が好ましく、200mgKOH/g−樹脂がより好ましい。
なお、本発明におけるフルオロオレフィン系共重合体(A)の水酸基価(単位:mgKOH/g−樹脂)は、フルオロオレフィン系共重合体(A)が溶媒を含まない状態、つまり不揮発分100質量%の状態での水酸基価を意味する。
フルオロオレフィン系共重合体(A)が水酸基以外の架橋性官能基を有する場合も水酸基のときと同程度の当量数であることが好ましい。
フルオロオレフィンは、炭化水素オレフィン(一般式C2n)の水素原子の1以上がフッ素原子で置換された化合物である。
フルオロオレフィンの炭素数(一般式C2nのn)は、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
フルオロオレフィンにおけるフッ素原子の数(以下、「フッ素付加数」という。)は、2以上が好ましく、3〜4がより好ましい。フッ素付加数が2以上であれば、硬化した塗膜の耐候性が向上する。フルオロオレフィンにおいては、フッ素原子で置換されていない水素原子の1以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンおよびフッ化ビニルからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、およびこれらの混合物から選ばれるいずれかがより好ましい。
フルオロオレフィンと共重合可能な単量体としては、ビニル系モノマー、すなわち、炭素−炭素二重結合を有する化合物が好ましい。
ビニル系モノマーとしては、例えばビニルエーテル、アリルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、カルボン酸アリルエステル、オレフィン等が例示される。
ビニルエーテルとしては、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;
ノニルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;等が例示される。
アリルエーテルとしては、エチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル等が例示される。
カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸、酪酸、ピバリン酸、プロピオン酸、ネオナノン酸、ネオデカン酸等のビニルエステルが例示される。このなかでも、ピバリン酸、ネオナノン酸、ネオデカン酸等の分岐状アルキル基を有するカルボン酸のビニルエステルが好ましい。分枝状アルキル基を有するカルボン酸のビニルエステルとして、市販されているベオバ−9(ネオナノン酸ビニルエステル)、ベオバ−10(ネオデカン酸ビニルエステル)(いずれもシェルジャパン(株)製、商品名)等を使用してもよい。
カルボン酸アリルエステルとしては、安息香酸等のアリルエステルが例示される。
オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、イソブチレン等が例示される。
上記単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明における架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)の架橋性官能基は、硬化剤と反応して架橋結合を形成するものであればよい。架橋性官能基は硬化剤との組み合わせにより、適宜選択でき、代表的な例として水酸基、カルボキシ基、加水分解性シリル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基等が例示される。
本発明において、フルオロオレフィン系共重合体(A)の架橋性官能基は、目的により適宜選択できる。例えば、塗料組成物に好ましく含有される顔料成分(E)の分散性を向上させる為に、フルオロオレフィン系共重合体(A)の架橋性官能基として、カルボキシ基を用いる。また、下地(反射面等の下層)との密着性を向上させる為に、アルコキシシリル基、エポキシ基等を用いる。
本発明の塗料組成物に含まれるフルオロオレフィン系共重合体(A)の架橋性官能基の種類と、硬化剤(C)の種類との組み合わせについては、後述の硬化剤(C)の項で説明する。
フルオロオレフィン系共重合体(A)に架橋性官能基を導入する方法としては、フルオロオレフィンと、該フルオロオレフィンと共重合可能な単量体との共重合反応時に、該単量体として架橋性官能基を有するモノマーを用いる方法が挙げられる。
架橋性官能基を有するモノマーとしては、以下のものが例示される。架橋性官能基が水酸基の例としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル;
ヒドロキシアルキルクロトン酸ビニル等の水酸基含有カルボン酸のビニルエステルまたはアリルエステル等の水酸基を有するモノマーが挙げられる。
架橋性官能基がカルボキシ基の例としては、クロトン酸、ウンデセン酸等のカルボキシ基を有するモノマーが挙げられる。
架橋性官能基加水分解性シリル基の例としては、トリエトキシビニルシラン等の加水分解性シリル基を有するモノマーが挙げられる。
架橋性官能基がエポキシ基の例としては、グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル等のエポキシ基を有するモノマーが挙げられる。
架橋性官能基がアミノ基の例としては、アミノプロピルビニルエーテル、アミノプロピルビニルエステル等のアミノ基を有するモノマーが挙げられる。
架橋性官能基がイソシアネート基の例としては、2−イソシアネートエチルメタクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレート、2−イソシアネートエチルエトキシメタクリレート、2−イソシアネートエチルビニルエーテル等のイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
また、上記方法以外に、フルオロオレフィンと共重合可能な単量体との共重合後に架橋性官能基を導入する反応を行うことによっても、フルオロオレフィン系共重合体に架橋性官能基を導入できる。この方法としては、例えば共重合可能な単量体としてカルボン酸ビニルエステルを用いて共重合して得られたフルオロオレフィン系共重合体をケン化することにより水酸基を導入する方法;
水酸基を有するフルオロオレフィン系共重合体に多価カルボン酸またはその無水物を反応させてカルボキシ基を導入する方法;
水酸基を有するフルオロオレフィン系共重合体にイソシアネートアルキルアルコキシシランを反応させて加水分解性シリル基を導入する方法;
水酸基を有するフルオロオレフィン系共重合体に多価イソシアネート化合物を反応させてイソシアネート基を導入する方法;等が例示される。
架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)の好適な具体例としては、例えばクロロトリフルオロエチレン、シクロヘキシルビニルエーテル、アルキルビニルエーテルおよびヒドロキシアルキルビニルエーテルとの共重合体;クロロトリフルオロエチレン、アルキルビニルエーテルおよびアリルアルコールとの共重合体;クロロトリフルオロエチレン、脂肪族カルボン酸ビニルエステルおよびヒドロキシアルキルビニルエーテルとの共重合体;またはこれらの共重合体におけるフルオロオレフィン成分としてのクロロトリフルオロエチレンの代わりに、テトラフルオロエチレンを用いた共重合体等がある。
また上記架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)は、商品名「ルミフロン」(旭硝子(株)製)、商品名「フルオネート」(大日本インキ化学工業(株)製)、商品名「セフラルコート」(セントラル硝子(株)製)、商品名「ザフロン」(東亜合成(株)製)、商品名「ゼッフル」(ダイキン工業(株)製)等の商品名で市販されている。
これらのフルオロオレフィン系共重合体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<2>重合体(B)
本発明における重合体(B)は、硬化剤(C)によって上記架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)と架橋されることが好ましい。本発明における重合体(B)は、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンの水素添加物、およびポリブタジエンの水素添加物から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、数平均分子量が500〜10000であり、水酸基を有することを特徴とする。
なお、重合体(B)は、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンの水素添加物、およびポリブタジエンの水素添加物から選ばれる1種の構造を有する重合体の2種以上を混合して用いても良い。また、ブテン、イソブチレン、イソプレン、ブタジエンから選ばれる2種以上の単量体に基づく繰り返し単位を重合体分子内に有する重合体を用いても良い。重合体分子内に上記2種以上の繰り返し単位を有する場合は、該繰り返し単位はブロック状でもよくランダム状でもよい。
重合体(B)の塗膜からのブリードアウトを抑制する点、および耐汚染性の点から、重合体(B)の水酸基価は、10mgKOH/g−樹脂以上が好ましく、ゲル化を抑制する点から重合体(B)の水酸基価は、100mgKOH/g−樹脂以下が好ましい。
また、重合体(B)の水酸基価が上記範囲内であれば、フルオロオレフィン系共重合体(A)との相溶性が向上する。
本発明における重合体(B)の数平均分子量は、500〜10000であることが重要であり、1000〜5000が好ましい。数平均分子量がこの範囲にあれば塗膜の機械的強度が向上するとともに、様々な溶剤に溶解しやすく、ゲル化を抑制しやすく、塗料組成物における溶剤(D)の使用量を低減して塗膜を容易に形成することができる。また、塗料組成物の分離、沈降がないので、塗装作業性が良好となる。さらに、塗膜が均一になるので、塗膜の耐久性、特に、耐水性と耐候性に優れる。
ここで、数平均分子量は、フルオロオレフィン系共重合体(A)の場合の測定と同様に求める。
重合体(B)の数平均分子量を上記範囲とするには、重合開始剤の添加量や連鎖移動剤の種類、添加量等で調整すればよい。
さらに、塗膜の着色を抑制する点から、重合体(B)は、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンの水素添加物、およびポリブタジエンの水素添加物から選ばれる少なくとも1種の構造を有する重合体が好ましい。塗膜の柔軟性、ヒートサイクル性の点で、水素添加ポリブタジエンがより好ましい。
ポリブタジエンの構造を有し、数平均分子量が500〜10000で、水酸基を有する重合体(B)として、商品名「NISSO−PB G−1000」(数平均分子量1250〜1650、水酸基価68〜78KOHmg/g)、「NISSO−PB G−2000」(数平均分子量1800〜2200、水酸基価35〜55KOHmg/g)、「NISSO−PB G−3000」(数平均分子量2600〜3200、水酸基価27KOHmg/g以上)、(いずれも、日本曹達(株)製)等の商品名で市販されているものを使用できる。
ポリブタジエンの構造を有し、数平均分子量が500〜10000で、水酸基を有し、かつ、分子内の不飽和二重結合部位が水素添加された重合体(B)として、商品名「NISSO−PB GI−1000」(数平均分子量約1500、水酸基価70KOHmg/g)、「NISSO−PB GI−2000」(数平均分子量訳2100、水酸基価40〜55KOHmg/g)、「NISSO−PB GI−3000」(数平均分子量約3000、水酸基価25〜35KOHmg/g)(いずれも、日本曹達(株)製)等の商品名で市販されているものを使用できる。
これらの重合体(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における重合体(B)は柔軟性に優れ、かつ、耐クラック性を有することから、重合体(B)を含む塗料組成物は、塗料組成物からなる塗膜の下層、例えば、反射基板の反射面等より剥離し難い塗膜を、反射基板表面に形成できる。また、塗膜の柔軟性が向上することで、太陽熱集熱用反射板の反射基板の外面に形成した塗膜は、砂等が衝突してもその衝撃を吸収するので傷付き難い。
本発明の塗料組成物における重合体(B)の含有量は、塗料組成物の総量に対して、1.0〜20.0質量%が好ましく、3.0〜10.0質量%がより好ましい。重合体(B)の含有量が上記下限値以上であれば、塗膜がより柔軟になり耐衝撃性が向上する。重合体(B)の含有量が上記上限値以下であれば、相対的にフルオロオレフィン系共重合体(A)の量が増加するため、塗膜の耐候性および下層との密着性が向上する。
本発明の塗料組成物におけるフルオロオレフィン系共重合体(A)と重合体(B)との質量比((A)/(B))は、99/1〜80/20が好ましく、95/5〜85/15がより好ましい。上記質量比((A)/(B))が下限値以上であれば、塗膜の耐候性が向上する。上記質量比((A)/(B))が上限値以下であれば、塗膜がより柔軟になり耐衝撃性が向上する。
<3>硬化剤(C)
硬化剤(C)は、イソシアネート系硬化剤、アミノ系硬化剤、オルガノシラン系硬化剤から選ばれる少なくとも1種である。硬化剤(C)は、フルオロオレフィン系共重合体(A)および重合体(B)の両方と架橋反応する硬化剤であることが好ましい。硬化剤(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の塗料組成物に含まれるフルオロオレフィン系共重合体(A)の架橋性官能基の種類と、硬化剤(C)の種類との組み合わせについては、具体的には下記が好ましい。
フルオロオレフィン系共重合体(A)が水酸基を有する場合、硬化剤(C)としては、イソシアネート系硬化剤、アミノ系硬化剤、オルガノシラン系硬化剤等が好ましい。
フルオロオレフィン系共重合体(A)がカルボキシ基を有する場合、硬化剤(C)としては、アミノ系硬化剤等が好ましい。
フルオロオレフィン系共重合体(A)が加水分解性シリル基を有する場合、硬化剤(C)としては、オルガノシラン系硬化剤等が好ましい。
フルオロオレフィン系共重合体(A)がエポキシ基を有する場合、硬化剤(C)としては、オルガノシラン系硬化剤等が好ましい。
フルオロオレフィン系共重合体(A)がアミノ基を有する場合、硬化剤(C)としては、オルガノシラン系硬化剤等が好ましい。
フルオロオレフィン系共重合体(A)がイソシアネート基を有する場合、硬化剤(C)としては、イソシアネート系硬化剤、オルガノシラン系硬化剤等が好ましい。
以下、各硬化剤について説明する。
(3−1)イソシアネート系硬化剤
イソシアネート系硬化剤は、イソシアネート基を有し、イソシアネート基が保護されたブロック化ポリイソシアネート系硬化剤であってもよく、イソシアネート基が保護されていない非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤であってもよい。
イソシアネート基が保護されていない非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤としては、例えば、多価イソシアネート化合物が挙げられる。多価イソシアネート化合物とは、2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
多価イソシアネート化合物としては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族多価イソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン等の脂環族多価イソシアネート化合物;m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート等の無黄変性芳香族イソシアネート化合物等が挙げられる。
非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤としては、多価イソシアネート化合物の変性体も使用できる。
多価イソシアネート化合物の変性体としては、例えば、ウレタン変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、ビューレット変性体、アロファネート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。なかでも、イソシアヌレート変性体、ビューレット変性体、ウレタン変性体が好ましく、イソシアヌレート変性体、ビューレット変性体がより好ましい。
非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤としては、上記したものの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の無黄変性の多価イソシアネート化合物、またはそれらのイソシアヌレート変性体もしくはビューレット変性体が好ましい。
イソシアネート基が保護されたブロック化ポリイソシアネート系硬化剤としては、上記多価イソシアネート化合物のイソシアネート基が、加熱等により脱保護できる基で保護された化合物等が挙げられる。例えば、上記多価イソシアネート化合物に、アルコール、カプロラクタム、MEKオキシム、有機酸エステル等の公知のブロック剤を反応させてイソシアネート基を保護した化合物等が挙げられる。
非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤を使用する場合、該硬化剤の配合は、塗料組成物を塗布する直前に行うことが好ましい。一方、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤を使用する場合、硬化剤の配合時期は特に限定されない。
イソシアネート系硬化剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(3−2)アミノ系硬化剤
アミノ系硬化剤は、2つ以上のアミノ基を有するものを用いる。アミノ系硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂等が挙げられる。中でも、硬化速度が速いという点で、メラミン樹脂が好ましい。
アミノ系硬化剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アミノ系硬化剤を使用する場合、硬化剤の配合時期は特に限定されない。
(3−3)オルガノシラン系硬化剤
オルガノシラン系硬化剤は、2つ以上のアルコキシ基を有するものを用いる。オルガノシラン系硬化剤としては、下式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」という。)が好ましい。
(R4−kSi(OR (1)
(上記式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、kは2〜4の整数を示す。)
の1価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。すなわち、Rの1価の炭化水素基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていてもよい。該置換基はハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
は、メチル基、エチル基、ヘキシル基、デシル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましい。化合物(1)中にRが複数存在する場合、原料の供給性の点から、複数のRが互いに同じであることが好ましい。ただし、複数のRは互いに異なっていてもよい。
の1価の炭化水素基は、炭素数1〜10のアルキル基であり、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。化合物(1)中にRが複数存在する場合、アルコキシ基の反応性が同じになって塗膜を均一に形成しやすい点から、複数のRが互いに同じであることが好ましい。ただし、複数のRは互いに異なっていてもよい。
化合物(1)におけるkは2〜4の整数であり、3〜4が好ましい。
化合物(1)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等の4官能性アルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の2官能性アルコキシシラン等が挙げられる。なかでも、硬化速度、および得られる塗膜の物性の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。
オルガノシラン系硬剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。オルガノシラン系硬化剤を使用する場合、硬化剤の配合時期は特に限定されない。
上記化合物(1)は、部分的に加水分解されて縮合した部分加水分解縮合物として使用してもよい。該部分加水分解縮合物は、上記化合物(1)を、分子中に2以上の加水分解性基(−OR基)が残るように、部分的に加水分解して縮合することで得られる化合物である。該部分加水分解縮合物の全体構造は明らかではないが、−Si−O−結合からなる骨格とアルコキシ基からなるポリ珪酸エステルであって、その骨格は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状構造であってもよい。なお、上記Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
上記化合物(1)の部分加水分解縮合物は、縮合度が低いほど好ましい。部分加水分解縮合物の縮合度が低いほど、フルオロオレフィン系共重合体(A)との相溶性が向上する。また、形成される塗膜と該塗膜が形成される反射基板の反射面の熱膨張係数がより近くなり、熱による膨張、収縮に起因する、塗膜の反射基板表面からの剥離が起き難くなる。
上記化合物(1)の部分加水分解縮合物を製造する方法は、特に限定されず、公知の部分加水分解縮合物の製造方法を採用できる。例えば、上記化合物(1)に、水、酸、および溶剤の少なくとも1種を加え、部分的に加水分解縮合させる方法が挙げられる。
上記化合物(1)の部分加水分解縮合物としては、縮合度、構造、アルコキシ基の種類が異なるものが市販されており、例えば、商品名「KR−500」、「KR−510」、「KR−213」(以上、信越化学工業(株)製)、商品名「MKCシリケートMS51」、「MKCシリケートMS56」(以上、三菱化学(株)製)、商品名「Mシリケート51」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート45」(以上、多摩化学工業(株)製)等の有効シリカ分が28〜70質量%程度である縮合物、または、該縮合物をエタノールもしくはイソプロパノールに溶解した商品名「HAS−1」、「HAS−6」、「HAS−10」(以上、コルコート(株)製)等が挙げられる。
上記「有効シリカ分」とは、製品中に含まれるポリアルキルシリケートを100質量%としたときの、SiO換算としてのシリカの含有量(質量割合)を示す値である。
上記化合物(1)の部分加水分解縮合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の塗料組成物における硬化剤(C)の含有量は、フルオロオレフィン系共重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して、5〜150質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。硬化剤(C)の含有量が上記下限値以上であれば、フルオロオレフィン系共重合体(A)と重合体(B)を充分に架橋しやすい。硬化剤(C)の含有量が上記上限値以下であれば、未反応の硬化剤(C)が塗膜に残留し、塗膜の性能に影響することを抑制しやすい。
<4>溶剤(D)
本発明の塗料組成物に用いる溶剤(D)は、特に限定されず、キシレン、トルエン等の芳香族化合物;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類等が挙げられる。
溶剤(D)は、上記重合体(B)を溶解するものが好ましい。重合体(B)の数平均分子量が特定の範囲とすることで、上記例示した溶剤(D)に重合体(B)は溶解する。
溶剤(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の塗料組成物における溶剤(D)の含有量は、塗料組成物の総量に対して、5.0〜80.0質量%が好ましく、10.0〜60.0質量%がより好ましい。溶剤(D)の含有量が上記下限値以上であれば、塗料組成物の粘度がより高くなり、塗布作業が容易になる。溶剤(D)の含有量が上記上限値以下であれば、溶剤(D)を除去して塗膜を形成するのが容易になる。
<5>顔料(E)
本発明の塗料組成物は、所望の物性(例えば、反射面の防錆性、または、下地(反射面等の下層)に到達するUV光の遮断性)を有するために、顔料(E)を含有することが好ましい。
本発明の塗料組成物における顔料(E)としては、防錆顔料、着色顔料および体質顔料からなる群から選ばれる1種以上の顔料が好ましい。
防錆顔料は、反射面の腐食や変質を防止するための顔料である。環境への負荷が少ない無鉛防錆顔料が好ましい。無鉛防錆顔料としては、シアナミド亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムマグネシウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸バリウム、シアナミド亜鉛カルシウム等が挙げられる。
着色顔料は、塗膜を着色するための顔料である。着色顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ジオキサジン等が挙げられる。
体質顔料は、塗膜の硬度を向上させ、かつ、塗膜の厚みを増すための顔料である。体質顔料としては、タルク、硫酸バリウム、マイカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
顔料の含有量は、使用時の塗料組成物の固形分の総量に対して、50〜500質量%が好ましく、100〜400質量%がより好ましい。顔料の含有量が上記下限値以上であれば、顔料の機能が得られやすい。顔料の含有量が上記上限値以下であれば、硬化した塗膜が砂等の衝撃で割れたり傷付いたりし難くなり、かつ、経時での塗膜剥離が発生しにくい。
<6>硬化触媒
本発明の塗料組成物には、硬化反応を促進し、硬化物である塗膜に良好な化学性能および物理性能を付与させる目的で、硬化触媒を含有させることが好ましい。特に、低温において短時間で硬化させる場合には、硬化触媒を含有させることが好ましい。硬化触媒としては、例えば、オクチル酸錫、トリブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート等の錫触媒が好ましい。
硬化触媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化触媒の含有量は、使用時の塗料組成物の固形分の総量に対して、0.00001〜10質量%が好ましい。硬化触媒の含有量が0.00001質量%以上であれば、触媒効果が充分に得られやすい。硬化触媒の含有量が10質量%以下であれば、残存する硬化触媒が塗膜に影響することがなく、耐熱性および耐水性が向上する。
<7>他の成分
また、本発明の塗料用組成物には、目的に応じて、添加剤を適宜配合してもよい。
添加剤としては、塗膜の密着性向上のためのシランカップリング剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物等の有機系の紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機系の紫外線吸収剤;超微粉合成シリカ等のつや消し剤;ノニオン系、カチオン系、またはアニオン系の界面活性剤;レベリング剤;充填剤;熱安定剤;増粘剤;分散剤;帯電防止剤等が挙げられる。
<太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物の調製方法>
本発明の塗料組成物は、上記した各成分、具体的には架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)と、重合体(B)と、硬化剤(C)と、溶剤(D)と、必要により、顔料(E)と、硬化触媒と、その他の成分等と、を混合することで調製可能である。
配合量は上記の好ましい範囲内とすればよい。
配合順序は特に制限されないが、硬化剤(C)がブロック化ポリイソシアネート硬化剤以外の場合は、塗料組成物を塗布する直前に硬化剤(C)を配合することが好ましい。
なお、本発明の塗料組成物が顔料(E)を含む場合、分散機器等による顔料分散を行うことが好ましい。
<太陽熱集熱用反射板の製造方法>
本発明における太陽熱集熱用反射板は、太陽熱を集めて熱エネルギーとして利用する太陽熱集熱システムにおける太陽光を反射する反射板であり、反射基材と反射面とを有する反射基板の表面に、本発明の塗料組成物を用いて塗膜を形成することで得られる。
太陽集熱用反射板は、下記のように製造できる。
本発明の太陽熱集熱用反射板の製造方法は、反射基材と反射面とを有する反射基板の表面に、本発明の塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、塗布層中の上記溶剤(D)を除去し、上記硬化剤(C)により塗布層を硬化させて塗膜を形成させる。
反射基板とは、太陽熱集熱用反射板の本体をなす部分である。本発明における反射基板は、反射基材と反射面とを有した構造で、太陽光を反射する性能を有している基板であれば特に制限されない。
なお、ここで本発明の製造方法における塗料組成物を塗布する「反射基板の表面」とは、本発明の塗料組成物を塗布する前の反射基板の最表面層のことである。反射基板の表面は、反射基板を構成する態様によって異なる。主に、反射面となる反射層や鏡面仕上げ面等が挙げられる。反射面以外の最表面層として具体的には、後述する裏止塗膜が挙げられる。この場合にも、本発明の塗料組成物から形成される塗膜は、反射基板の表面(本発明における塗膜の下層)との密着性に優れている。
また、「反射基板の表面」とは、反射基板の太陽光入射面、太陽光入射面と反対側の面、および側面の少なくとも1つの面である。本発明の製造方法では、太陽熱集熱用反射板における反射基板の太陽光入射面の反対側に塗膜を形成してもよく、反射基板の側面に塗膜を形成してもよく、反射基板の太陽光入射面側に塗膜を形成してもよい。
本発明の製造方法においては、反射基板の太陽光入射面、その反対側の面および側面の少なくとも一方に、本発明の塗料組成物により塗膜を形成することが好ましい。
反射基板を構成する反射基材の材質としては、例えばガラス、金属、樹脂およびこれらの複合物等が挙げられる。また、反射基材の形状としては、板状やフィルム状等が挙げられる。
反射基板は、反射基材上に反射面を有している。反射面としては、上記反射基材の一方の面を鏡面仕上げして得られる鏡面仕上げ面、または上記反射基材の一方の面に、金属および金属酸化物の少なくとも一方から形成される反射層等が挙げられる。反射基板は、上記反射面により、太陽光を反射する性能が付与される。
反射基板としては、具体的には、下記構成が挙げられる。
反射基板(I):反射基材としてのガラス基材と、該ガラス基材の一方の面に、反射面としての、金属および金属酸化物の少なくとも一方からなる反射層と、を有する反射基板、
反射基板(II):反射基材としての金属基材と、該金属基材の一方の面を鏡面仕上げして得られる、反射面としての鏡面仕上げ面と、を有する反射基板、
反射基板(III):反射基材としての金属基材と、該金属基材の一方の面に、反射面としての、金属および金属酸化物の少なくとも一方からなる反射層と、を有する反射基板。
本発明の太陽熱集熱用反射板の製造方法は、本発明の塗料組成物を塗布する反射基板の種類によって、例えば下記方法が挙げられる。なお、下記方法は、反射基板の種類に関係なく、同じように適用可能である。
本発明における太陽熱集熱用反射板は、上記反射基板の表面に、本発明の塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、溶剤(D)を除去し、硬化剤(C)により塗布層を硬化させて塗膜を形成する方法で製造できる。
以下、反射基板の違いによる各製造方法について説明する。
(製造方法(α):反射基板(I)の場合)
製造方法(α)における反射基板(I)は、反射基材としてのガラス基材と、該ガラス基材の一方の面に、反射面としての、金属および金属酸化物の少なくとも一方からなる反射層と、を有する反射基板である。
反射基板(I)の太陽光入射面とは、ガラス基材側の面である。また、太陽光入射面と反対側の面とは、反射層側の面である。
反射基板(I)のガラス基材としては、鏡用の公知のガラスが使用でき、例えば、ソーダライムガラス等が挙げられる。ガラス基材の厚みは、0.5〜10mmが好ましい。ガラス基材を曲げることがあるので、厚みは薄い方が好ましい。また、質量の点でも薄い方が好ましい。ただ、強度の問題で薄くするには限界がある。
反射基板(I)における金属および金属酸化物の少なくとも一方からなる反射層(以下、「反射層(I)」という。)は、太陽光を反射する層である。反射層(I)を形成する金属、金属酸化物は、反射層とした時に高い反射率を確保できるものであれは特に限定されない。
反射層(I)が金属からなる場合、該金属としては、チタン、モリブデン、マンガン、アルミニウム、銀、銅、金およびニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、特に銀を含有することが好ましい。その場合の反射層(I)における銀の含有量は、60質量%以上が好ましく、100質量%が特に好ましい。
反射層(I)が金属酸化物からなる場合、該金属酸化物は1種でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。反射層(I)を形成する金属酸化物としては、酸化チタンが好ましい。
また、反射層(I)は、金属と金属酸化物が組み合わされた層であってもよい。
反射層(I)の厚みは、反射率が低下しにくい点から、300〜1500mg/mが好ましい。
反射基板(I)は、ガラス基材の一方の面に、スパッタリング、または銀鏡反応等の化学反応を利用する方法等の公知の方法で反射層(I)を設けることにより製造できる。
反射層(I)は、1層でもよく、2層以上であってもよい。
以下、製造方法(α)の一例を図1〜3に基づいて説明する。
本実施形態では、図1に例示した反射基板(I)11の表面に塗膜を形成する。反射基板(I)11は、ガラス基材11aと、該ガラス基材11aの一方の面に形成された反射層(I)11bとからなる。
本実施形態の製造方法では、図2に示すように、反射基板(I)11の反射層(I)11b側に、本発明の塗料組成物を塗布して塗布層12Aを形成する。
塗料組成物の塗布方法としては、刷毛、ローラ、スプレー、フローコータ、アプリケータ等を使用する方法が挙げられる。塗料組成物の塗布量は、目的とする乾燥膜厚に応じて適宜選定すればよい。
次いで、形成した塗布層12Aから、溶剤(D)を除去し、塗布層を硬化させて塗膜12を形成する。溶剤(D)を除去する方法としては、加熱、減圧等により溶剤(D)を揮発させる方法が好ましい。
溶剤(D)を除去する際の温度は、溶剤(D)の種類にもよるが、常温〜250℃が好ましく、常温〜200℃がより好ましい。上記温度が下限値以上であれば、溶剤(D)が除去されやすく、溶剤除去工程中で硬化剤(C)による硬化(架橋)反応も進行しやすくなる。なお、上記温度が上限値以下であれば、塗膜12に発泡跡が生じにくい。
なお、溶剤除去工程中に硬化(架橋)反応が十分に進まない場合は、溶剤除去工程の後に硬化(架橋)反応をさらに行うことが好ましい。
ガラス基板(I)11a上に反射層(I)11bを形成し、その製造ライン上で続けて塗膜12を形成する場合、本発明の塗料組成物における硬化剤(C)としては、ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤を使用することが好ましい。つまり、硬化剤(C)を予め配合した状態の1液型の塗料組成物を使用することが好ましい。この場合、溶剤(D)の除去と、保護されたイソシアネート基の脱保護とを加熱等により同時に行ってもよく、溶剤(D)を除去した後に加熱等により保護されたイソシアネート基の脱保護を行ってもよい。
なお、硬化剤(C)として非ブロック化イソシアネート系硬化剤を使用する場合は、製造ラインから反射基板を一旦取り出して、塗料組成物を塗布することが好ましい。
非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤を使用する場合等、溶剤(D)を除去する際に、硬化剤(C)のイソシアネート基が保護されていなければ、溶剤(D)が除去されるにつれて、フルオロオレフィン系共重合体中の架橋性基や共重合体(B)の水酸基と硬化剤(C)の架橋性反応基(イソシアネート基、アミノ基、アルコキシ基等)の濃度が高くなり、硬化(架橋)反応が進行しやすくなる。アミノ系硬化剤、オルガノシラン系硬化剤を使用する場合も同様の傾向がある。
形成する塗膜12の膜厚は、反射面や下地(反射面等の下層)の保護効果が得られやすいことから、0.5〜100μmが好ましい。
次いで、図3に示すように、反射基板(I)11の側面11cに、本発明の塗料組成物を塗布して塗布層13Aを形成する。
塗料組成物の塗布方法としては、反射基板(I)11の側面11cに均一に塗布しやすい点から、刷毛、スプレー等を使用して手作業で塗布する方法が好ましい。塗料組成物の塗布量は、目的とする乾燥膜厚に応じて適宜選定すればよい。
その後、塗膜12の形成と同様にして、形成した塗布層13Aから溶剤(D)を除去し、上記塗布層を硬化させて塗膜13を形成し、太陽熱集熱用反射板10を得る。
形成する塗膜13の膜厚は、側面から水分や湿気が浸入し、塗膜が剥離することを抑制する点から0.5〜100μmが好ましい。
以上説明した製造方法によれば、反射基板の反射面上および側面上に、耐候性および耐衝撃性に優れ、かつ温度差が大きい使用条件下でも下層から剥離しにくい塗膜を有する太陽熱集熱用反射板が得られる。また、本発明の製造方法により得られる太陽熱集熱用反射板の塗膜は、耐汚染性にも優れている。
なお、製造方法(α)においては、上記工程に従って、反射基板(I)の側面も本発明の塗料組成物を塗布することが好ましい。ただし、別の手段によって側面の耐水性等が確保されている場合には、側面への塗布は必要ない場合がある。
(製造方法(β):反射基板(II)の場合)
製造方法(β)における反射基板(II)は、反射基材としての金属基材と、該金属基材の一方の面を鏡面仕上げして得られる、反射面としての鏡面仕上げ面と、を有する反射基板である。反射基板(II)の太陽光入射面とは、鏡面仕上げ面側である。反射基板(II)は、ガラス基材を用いる反射基板(I)に比べて、破損のおそれが少ない点、軽量化が容易で設置費用を削減できる点、曲げ等の加工が容易である点で有利である。
反射基板(II)の厚みは、加工しやすい点から0.1〜10mmが好ましく、0.5〜5mmがより好ましい。
反射基板(II)における金属基材としては、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる基材が好ましい。なかでも、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属基材が特に好ましい。
上記鏡面仕上げは、例えば物理的な研磨が一般的だが、化学的または電気的研磨方法によって行うことができる。このとき、研磨後の反射基板(II)の鏡面仕上げ面の表面粗さRaは、0.3μm以下、さらには0.1μm以下であることが好ましい。
製造方法(β)は、反射基板(I)の代わりに反射基板(II)を使用する以外は、上記製造方法(α)と同様に行える。つまり、反射基板(II)への塗料組成物の塗布、塗布層からの溶剤(D)の除去は、製造方法(α)と同様にして行える。
なお、製造方法(β)においては、反射基板(II)の側面も本発明の塗料組成物を塗布することが好ましい。ただし、別の手段によって側面の耐水性等が確保されている場合には、側面への塗布は必要ない場合がある。
(製造方法(γ):反射基板(III)の場合)
製造方法(γ)における反射基板(III)は、反射基材としての金属基材と、該金属基材の一方の面に、反射面としての、金属および金属酸化物の少なくとも一方からなる反射層(以下、「反射層(III)」という。)と、を有する反射基板である。反射基板(III)の太陽光入射面とは、反射層(III)側の面である。
反射基板(III)は、反射基板(II)と同様、ガラス基材を用いた反射基板(I)に比べて、破損のおそれが少ない点、軽量化が容易で設置費用を削減できる点、曲げ等の加工が容易である点で有利である。
反射基板(III)の厚みは、0.1〜10mmが好ましく、0.5〜5mmがより好ましい。
反射基板(III)における金属基材としては、反射基板(II)で用いられる金属基材と同様のものが挙げられ、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる金属基材が好ましい。なかでも、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属基材が特に好ましい。
反射層(III)を形成する金属、金属酸化物は、反射層とした時に高い反射率を確保できるものであれは特に限定されない。
反射層(III)が金属からなる場合、該金属は、反射基板(I)で用いられる金属と同様のものが挙げられ、チタン、モリブデン、マンガン、アルミニウム、銀、銅、金およびニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましい。反射層(III)を形成する金属は、1種でもよく、2種以上の合金であってもよい。
また、反射層(III)が金属酸化物からなる場合、反射基板(I)で用いられる金属酸化物と同様のものが挙げられる。該金属酸化物は1種でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。反射層(III)を形成する金属酸化物としては、酸化チタンが好ましい。
反射層(III)は、リン酸塩処理、陽極酸化処理、真空蒸着処理等により形成でき、その厚さは、例えば5〜1500nmとすることができる。反射層(III)は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
製造方法(γ)は、反射基板(I)の代わりに反射基板(III)を使用する以外は、製造方法(α)と同様に行える。つまり、反射基板(III)への塗料組成物の塗布、塗布層からの溶剤(D)の除去は、上記製造方法(α)と同様にして行える。
なお、製造方法(γ)においては、反射基板(III)の側面も本発明の塗料組成物を塗布することが好ましい。ただし、別の手段によって側面の耐水性等が確保されている場合には、側面への塗布は必要ない場合がある。
以上説明した本発明の太陽熱集熱用反射板の製造方法によれば、優れた耐候性および耐衝撃性を有し、かつ下層との密着性に優れ剥離し難い塗膜を反射基板の表面に形成された太陽熱集熱用反射板が得られる。
なお、本発明の製造方法は、前述した方法には限定されない。例えば、反射基板の太陽光入射面の反対側の面のみに本発明の塗料組成物による塗膜を形成してもよく、反射基板の側面上のみに本発明の塗料組成物による塗膜を形成してもよい。反射基板の側面上のみに本発明の塗料組成物による塗膜を形成する場合、反射基板の太陽光入射面の反対側の面には公知の塗膜を形成することが好ましい。
上記公知の塗膜としては、樹脂成分、顔料および溶剤を必須成分として含み、必要に応じて硬化剤、硬化触媒、レオロジーコントロール剤等の他の成分を含む溶剤系の塗料組成物からなる塗膜が挙げられる。上記樹脂成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられる。より具体的には、鉛を含まない変性エポキシ樹脂系塗料用主剤(商品名「SM COAT DF LEAD FREE」、大日本塗料(株)製)と、変性エポキシ樹脂系塗料用硬化剤(商品名「SM COAT DF 硬化剤」、大日本塗料(株)製)と、からなる塗料から得られる塗膜が挙げられる。
また、反射基板の太陽光入射面側に本発明の塗料組成物による塗膜を形成してもよい。
反射基板(I)の反射層(I)側に本発明の塗料組成物による塗膜を形成する場合、該塗膜と反射層(I)との間に、屋内で使用される鏡の裏面に設けられる公知の塗膜(裏止塗膜や銅保護層)を形成してもよい。裏止塗膜が形成される場合は、本発明の塗料組成物が塗布される反射基板の表面は、裏止塗膜となる。
裏止塗膜としては、上記の公知の塗膜と同じものが挙げられる。
また、本発明の塗料組成物は、金属基材と、該金属基材に鏡面仕上げして得られる鏡面仕上げ面と、該鏡面仕上げ面の上にさらに反射層(以下、「反射層(IV)」という。)を設けた反射基板(以下、「反射基板(IV)」という。)にも使用できる。反射基板(IV)における鏡面仕上げ面は、反射基板(II)における鏡面仕上げ面と同様である。反射層(IV)は、反射基板(III)の反射層(III)と同じものが挙げられる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
(実施例1)
<フルオロオレフィン系共重合体(A)の製造>
内容積2500mLの撹拌機付きステンレス鋼製耐圧反応器に、キシレンの590gと、エタノールの170gと、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)の129gと、エチルビニルエーテル(EVE)の206gと、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)の208gと、炭酸カルシウムの11gと、パーブチルパーピバレート(PBPV)の3.5gとを仕込み、窒素による脱気により液中の溶存酸素を除去した。
次に、フルオロオレフィンであるクロロトリフルオロエチレン(CTFE)の660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。10時間反応させた後、反応器を水冷して反応を停止した。該反応液を室温まで冷却した後、未反応モノマーをパージし、得られた反応液を珪藻土で濾過して固形物を除去した。次に、キシレンの一部とエタノールを減圧留去により除去し、フルオロオレフィン系共重合体(「A1」とする)のキシレン溶液(不揮発分60%)を得た。得られたフルオロオレフィン系共重合体A1は、CTFE/EVE/CHVE/HBVE=50/25/15/10(モル比)であり、フルオロオレフィンに基づく繰り返し単位割合は、50モル%であり、数平均分子量は20000であった。
<太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物の製造>
フルオロオレフィン系共重合体(A)としての、上記<フルオロオレフィン系共重合体(A)の製造例>で得られたフルオロオレフィン系共重合体(A1)のキシレン溶液(不揮発分60%)の60.0gに、顔料(E)としての酸化チタン(堺化学工業(株)製、商品名「D−918」)の22.0g、キシレンの14.5g、酢酸ブチルの5.0g、重合体(B)としての水素添加型ポリブタジエングリコール「NISSO−BP GI−1000」(日本曹達(株)製、水酸基価70mgKOH/g−樹脂、数平均分子量1500)の3.5gを加え、さらに、直径1mmのガラスビーズの105.0gを加えて、ペイントシェーカーで2時間撹拌した。撹拌後、濾過を行ってガラスビーズを取り除き、顔料組成物を得た。
次に、上記顔料組成物に、非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤であるポリイソシアネート樹脂(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHX」、ヘキサメチレンジイソシアネートの無黄変性の多価イソシアネート化合物)の6.6gと、硬化触媒であるジブチルチンジラウレート(キシレンで4〜10倍に希釈して3gとしたもの)の0.1gとをさらに加えて混合し、太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(i)を得た。
<太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(i)の評価>
(塗膜の反り試験)
JIS K 6911に準拠し、上記で得られた太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(i)から形成される塗膜の反り試験を実施した。
すなわち、ポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、「ユーピレックス商品名−S」、膜厚125μm)の表面に、上記で得られた塗料組成物(i)を膜厚が35〜45μmとなるように塗布して塗布層を形成し、200℃のオーブンで20分間、加熱硬化した。その後、オーブンから該フィルムを取り出し、室温まで急冷した。このようにして得られたフィルムの反りの高さを測定することで、太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(i)から形成される塗膜の反り(硬化収縮度合い)を測定した。なお、以下の基準に従って評価した。結果を表1に示す。
「○」:反りの高さ:1mm未満。
「△」:反りの高さ:1mm以上、5mm未満。
「×」:5mm以上。
(塗膜の折り曲げ試験)
上記<太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(i)の評価>の際に得られた、表面に塗膜が形成されたフィルムを180°に折り曲げ、室温で3分間そのままの状態で静置した。その後、以下の基準に従って、塗膜の折り曲げ性を評価した。結果を表1に示す。
「○」:塗膜に割れ、損傷等が確認されなかった。
「×」:塗膜に割れ、損傷等が確認された。
(比較例1)
<太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物の製造>
実施例1で得られたフルオロオレフィン系共重合体(A1)のキシレン溶液(不揮発分60%)の60.0gに、顔料(E)としての酸化チタン(堺化学工業(株)製、商品名「D−918」)の22.0g、キシレンの14.5g、酢酸ブチルの5.0gを加え、さらに、直径1mmのガラスビーズの105.0gを加えて、ペイントシェーカーで2時間撹拌した。撹拌後、濾過を行ってガラスビーズを取り除き、顔料組成物を得た。
次に、該顔料組成物に、非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤であるポリイソシアネート樹脂(上記「コロネートHX」)の6.6gと、硬化触媒であるジブチルチンジラウレート(キシレンで4〜10倍に希釈して3gとしたもの)の0.1gとをさらに加えて混合し、太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(ii)を得た。
<太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(ii)の評価>
(塗膜の反り試験)
実施例1と同様に、太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(ii)から形成される塗膜の反り(硬化収縮度合い)を測定した。結果を表1に示す。
(塗膜の折り曲げ試験)
実施例1と同様に、太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(ii)から形成される塗膜の折り曲げ性を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2013023604
折り曲げ試験で、割れ、損傷がない実施例1の表面塗布用塗料組成物は、塗膜が剥離しにくい特性を有することを意味する。
(実施例2)
<太陽熱集熱用反射基板の製造>
ガラス基材の片面に、厚みが750mg/mになるように銀メッキ処理を施して銀膜の反射層を形成し、さらに、銀膜(反射層)上に、厚みが80mg/mになるように銅メッキ処理を施して、銅保護層を形成した。
次に、この銅保護層上に、鉛を含まないミラー用裏止塗料(大日本塗料(株)製、商品名「SM COAT DF」を、乾燥塗膜の膜厚が60μmとなるように塗布し、170℃のオーブンで5分間乾燥硬化させることにより裏止塗膜を形成して、裏止塗膜付の太陽熱集熱用反射基板を得た。
<太陽熱集熱用反射板の製造およびその評価>
上記太陽熱集熱用反射基板の裏止塗膜上に、実施例1で得られた塗料組成物(i)を、乾燥塗膜の膜厚が30μmとなるように塗布して塗布層を形成し、25℃の恒温室中で、1週間養生させ、塗膜を形成し、太陽熱集熱用反射板(以下、「試験反射板−I」ともいう)を得た。
得られた試験反射板−Iについて、促進耐候性、暴露試験を下記のようにして評価した。
[評価方法]
(促進耐候性)
サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、促進耐候性評価を実施し、試験反射板−Iに対して5000時間暴露後と初期とを比較して耐候性を評価した。評価は、以下の基準に従って促進耐候性を評価した。結果を表2に示す。
「○」:光沢保持率が80%以上であった。
「×」:光沢保持率が80%未満であった。
(暴露試験:光沢保持率特性)
沖縄県那覇市の屋外に試験反射板−Iを設置し、設置直前と、1年後における塗膜表面の光沢を、PG−1M(光沢計:日本電色工業(株)製)を用いて測定した。設置直前の光沢の値を100%としたときの、1年後の光沢の値の割合を光沢保持率(単位:%)として算出し、以下の基準に従って耐候性(光沢保持率特性)を評価した。結果を表2に示す。
「○」:光沢保持率が80%以上であった。
「×」:光沢保持率が80%未満であった。
(比較例2)
<太陽熱集熱用反射板の製造およびその評価>
実施例2で得られた太陽熱集熱用反射基板の裏止塗膜上に、比較例1で得られた塗料組成物(ii)を、乾燥塗膜の膜厚が30μmとなるように塗布して塗布層を形成し、25℃の恒温室中で、1週間養生させ、塗膜を形成し、太陽熱集熱用反射板(以下、「試験反射板−II」ともいう)を得た。
得られた試験反射板−IIについて、実施例2と同様に促進耐候性、暴露試験(光沢保持率特性)を評価した。結果を表2に示す。
実施例2は、比較例2と比較し、促進試験&暴露試験後の塗膜の光沢に差はないが、促進試験&暴露試験後の下層との密着性に優れていた。
Figure 2013023604
本発明によれば、優れた耐候性および耐衝撃性を有し、かつ耐クラック性に優れ、塗膜の下層(反射層または鏡面仕上げ面等の反射面等)より剥離し難いことで、反射面の傷等の不具合による反射率の低下を抑制する塗膜を反射基板の表面に形成できる太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物が得られる。
また、本発明の太陽熱集熱用反射板の製造方法によれば、優れた耐候性および耐衝撃性を有し、かつ耐クラック性に優れ、塗膜の下層(反射面等)より剥離し難いことで、反射面の傷等の不具合による反射率の低下を抑制する塗膜が反射基板の表面に形成された太陽熱集熱用反射板が得られる。
10 太陽熱集熱用反射板
11 反射基板(I)
11a ガラス基材
11b 反射層(I)
12、13 塗膜
12A、13A 塗布層

Claims (10)

  1. 架橋性官能基を有するフルオロオレフィン系共重合体(A)と、
    ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンの水素添加物、およびポリブタジエンの水素添加物から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、数平均分子量が500〜10000であり、水酸基を有する重合体(B)と、
    イソシアネート系硬化剤、アミノ系硬化剤、オルガノシラン系硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(C)と、
    溶剤(D)と、を含有する太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
  2. 前記重合体(B)が、水酸基価10〜100mgKOH/g−樹脂である請求項1に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
  3. 前記フルオロオレフィン系共重合体(A)と前記重合体(B)との質量比が99/1〜80/20である請求項1または2に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
  4. 前記フルオロオレフィン系共重合体(A)が、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、およびこれらの混合物から選ばれるいずれかに基づく繰り返し単位を含むフルオロオレフィン系共重合体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
  5. 顔料成分(E)を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
  6. 反射基材と反射面とを有する反射基板の表面に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面塗布用塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、前記溶剤(D)を除去し、前記塗布層を硬化させて、塗膜を形成する太陽熱集熱用反射板の製造方法。
  7. 前記反射基板が、前記反射基材としてのガラス基材と、該ガラス基材の一方の面に、前記反射面としての、金属および金属酸化物の少なくとも一方からなる反射層と、を有する反射基板である請求項6に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
  8. 前記反射基板が、前記反射基材としての金属からなる金属基材と、該金属基材の一方の面を鏡面仕上げして得られる、前記反射面としての鏡面仕上げ面と、を有する反射基板である請求項6に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
  9. 前記反射基板が、前記反射基材としての金属からなる金属基材と、該金属基材の一方の面に、前記反射面としての、金属および金属酸化物の少なくとも一方からなる反射層と、を有する反射基板である請求項6に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
  10. 前記金属基材が、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる金属基材である請求項8または9に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
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