JP2013016947A - アンテナ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】2つの給電点及び1つの放射電極のアンテナ装置において、良好な軸比の帯域を広帯域にし、入力端から2つの給電点までの2経路のアイソレーションを改善し、且つアンテナ素子に接続する回路の面積を小さくすることである。
【解決手段】アンテナ装置は、アンテナ基体、放射電極、第1及び第2の給電部、接地電極を備えるアンテナ素子と、基板部と、を備える。基板部は、接続部321、1/4λの経路長の経路部322A,322B、抵抗323、を備える分配回路部C1と、第1の給電部までの経路部324A、経路部324Aよりも1/4λ長く第2の給電部までの経路部324B、を備える位相シフト回路部C2と、を備える。位相シフト回路部C2及び分配回路部C1は、基板部の同一面に形成される。位相シフト回路部C2は、分配回路部C1の経路部322A,322Bの内側に配置される。
【選択図】図8

Description

本発明は、2給電のアンテナ装置に関する。
従来、自動車等の移動体の位置を測位する衛星測位システムの規格としてGPS(Global Positioning System)が知られている。GPSにおいて、移動体に設けられたGPS受信機は、パッチアンテナ等によりGPS衛星からGPS信号を受信し、受信したGPS信号を用いて自機の位置を測位する。
GPSは、米国の規格であり、その搬送波の周波数帯の中心周波数は、1.57542[GHz]である。また、ロシアの衛星測位システムの規格として、GLONASS(Global Navigation Satellite System)が知られている。GLONASSでも、GPSと同様に、移動体に設けられた受信機は、パッチアンテナ等によりGLONASSの衛星から信号を受信し、受信信号を用いて自機の位置を測位する。GLONASSの搬送波の周波数帯の中心周波数は、約1.602[GHz]である。このように、GPS及びGLONASSの搬送波の周波数帯は、互いに比較的近い。また、GPS及びGLONASSは、右旋円偏波の信号を用いて通信を行う規格である。
また、GPS又はGLONASS用に、通常の周波数の信号と遅延を補償するための周波数の信号とを受信可能なデュアルバンドアンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、このGPS用のデュアルバンドアンテナは、通常の周波数:1.575[GHz]と、遅延を補償するための周波数:1.277[GHz]と、の信号を受信する。このデュアルバンドアンテナは、放射電極である導電体と、接地導電体と、を2組備える。
特開平7−288420号公報
GPS及びGLONASSの両方の信号を受信できるアンテナ装置の要請がある。上記従来のデュアルバンドアンテナは、GPS又はGLONASS用に、通常の周波数の信号と遅延を補償するための周波数との比較的離れた周波数の信号を受信するものであった。そこで、上記従来のデュアルバンドアンテナを、GPS及びGLONASSの2つの周波数帯の信号を受信するデュアルバンドアンテナとする構成も考えられるが、2組の放射電極及び接地導電体のアンテナとなり、構造が複雑であった。
このため、GPS及びGLONASS用の比較的近い2つの周波数の信号を受信するために、1つの給電点及び1つの放射電極を有するパッチアンテナを適用することが考えられる。GPS及びGLONASSの信号は、円偏波であるため、パッチアンテナの1つの放射電極に摂動素子(切り欠き、出っ張り)を設けることで、円偏波の信号受信が可能となる。しかし、1つの給電点及び1つの放射電極のパッチアンテナは、構造が簡単であるものの、良好な軸比の帯域が狭かった。
このため、GPS及びGLONASS用の比較的近い2つの周波数の信号を受信するために、2つの給電点及び1つの放射電極を有するパッチアンテナを適用することが考えられる。2つの給電点及び1つの放射電極のパッチアンテナは、放射電極に摂動素子が不要であり、2つの給電点に給電する2つの電気信号のうち、一方の電気信号の位相に対してもう一方の電気信号の位相を90°シフトすることで、円偏波の無線信号の放射が可能となり、逆に円偏波の無線信号の受信も可能である。2つの給電点及び1つの放射電極のパッチアンテナでは、2つの給電点を有するため、良好な軸比の帯域を広帯域にとれる。しかし、2つの給電点及び1つの放射電極のパッチアンテナは、一方の給電点に給電する経路と、もう一方の給電点に給電する経路とのアイソレーションをとることが難しかった。
また、アンテナ装置の小型化のため、アンテナ素子に接続する回路の面積を小さくする要請があった。
本発明の課題は、2つの給電点及び1つの放射電極のアンテナ装置において、良好な軸比の帯域を広帯域にし、入力端から2つの給電点までの2つの経路のアイソレーションを改善し、且つアンテナ素子に接続する回路の面積を小さくすることである。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のアンテナ装置は、
アンテナ素子と、
前記アンテナ素子の下面に設けられた基板部と、を備え、
前記アンテナ素子は、
誘電体、磁性体又は磁性誘電体からなるアンテナ基体と、
前記アンテナ基体の上面に設けられた放射電極と、
前記放射電極に接続されて前記アンテナ基体を貫通された第1及び第2の給電部と、
前記アンテナ基体の下面に設けられた接地電極と、を備え、
前記基板部は、
給電の入力端に接続される接続部と、前記接続部から2分配されて1/4λの経路長を有する第1及び第2の経路部と、前記第1及び第2の経路部の出力端に接続された抵抗と、を備える分配回路部と、
前記抵抗から前記第1の給電部までの経路であって、入力端が前記第1の給電部の近傍に設けられた第3の経路部と、前記抵抗から前記第2の給電部までの経路であって、前記第3の経路部よりも1/4λ長い経路長を有する第4の経路部と、を備える位相シフト回路部と、を備え、
前記分配回路部及び前記位相シフト回路部は、前記基板部の同一面に形成され、
前記位相シフト回路部は、前記分配回路部の前記第1及び第2の経路部の内側に配置されたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記基板部は、
前記分配回路部及び前記位相シフト回路部と同一面に形成され、前記分配回路部の前記接続部から出力される信号を増幅する増幅回路部を備えることを特徴とする。
本発明によれば、2つの給電点及び1つの放射電極のアンテナ装置において、良好な軸比の帯域を広帯域にでき、入力端から2つの給電点までの2つの経路のアイソレーションを改善でき、且つアンテナ素子に接続する回路の面積を小さくすることができる。
本発明の実施の形態のアンテナ装置の分解図である。 アンテナ装置の断面図である。 アンテナ装置の斜視図である。 アンテナ素子、基板部及びブラケットの斜視図である。 アンテナ素子及び基板部の平面図である。 基板部の回路部の平面図である。 (a)は、分離状態の回路接続部を示す図である。(b)は、接続状態の回路接続部を示す図である。 位相シフト回路の平面図である。 アンテナ装置の周波数に対するS11を示す図である。 アンテナ装置のスミスチャートである。 アンテナ装置の周波数に対する軸比を示す図である。 アンテナ装置の周波数に対する天頂方向の利得を示す図である。 アンテナ装置の放射パターンを示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
図1〜図13を参照して、本発明に係る実施の形態を説明する。先ず、図1〜図8を参照して、本実施の形態のアンテナ装置1の装置構成を説明する。
図1〜図3を参照して、アンテナ装置1の全体構成を説明する。図1に、アンテナ装置1の分解構成を示す。図2に、アンテナ装置1の断面構成を示す。図3に、アンテナ装置1の斜視構成を示す。
本実施の形態のアンテナ装置1は、比較的互いに近い周波数帯の規格としてのGPS及びGLONASSの共用のパッチアンテナである。GPSの搬送波の周波数帯は、1.57542±0.1[GHz]であり、その中心周波数が1.57542[GHz]である。GLONASSの搬送波の周波数帯の中心周波数は、1.602+k×0.0005625[GHz](k:各衛星の周波数チャネル番号)である。また、GPS及びGLONASSは、右旋の円偏波の信号を用いて通信を行う規格である。
アンテナ装置1は、移動体としての自動車のダッシュボード等に取り付けられる。図1及び図2に示すように、アンテナ装置1は、アンテナ素子2と、基板部3と、シールドケース4と、クッションシート5と、トップカバー6と、ブラケット7と、螺子8と、を備える。
アンテナ素子2は、アンテナ装置1のパッチアンテナの本体部分であり、衛星から送信されたGPS又はGLONASSの無線信号の受信アンテナである。アンテナ素子2は、例えば、40×40×4t[mm]の正方形板形状を有する。
基板部3は、アンテナ素子2の下面(裏面)に取り付けられたPCB(Printed Circuit Board)であり、同軸ケーブル3aの一端が接続されている。同軸ケーブル3aの他端は、GPS又はGLONASSの受信機のアンテナ接続端子に接続される。基板部3の形状は、アンテナ素子2の下面に対応した面積の正方形の板状とするが、これに限定されるものではなく、アンテナ素子2の下面よりも小さな面積を有する形状としてもよい。基板部3は、例えば、40×40×0.8t[mm]の正方形板形状を有する。アンテナ素子2は、例えば、両面テープにより基板部3に貼り付けられて固定される。なお、アンテナ素子2及び基板部3については、詳細に後述する。
シールドケース4は、基板部3を下面から覆うケースであり、外部から基板部3への電波等の侵入を遮断し、基板部3を流れる信号にノイズがのることを防ぐ。シールドケース4は、ブリキ等の金属製の導電体で構成される。クッションシート5は、シールドケース4をブラケット7に取り付ける際、それらの間に挟み込まれクッションとなるシートである。クッションシート5は、例えば、両面テープにより構成される。
トップカバー6は、アンテナ素子2、基板部3、シールドケース4及びクッションシート5を上面(表面)から覆うカバーである。トップカバー6は、樹脂により形成され、外部の衝撃等からアンテナ素子2、基板部3、シールドケース4及びクッションシート5を保護する。トップカバー6には、螺子8に対応する4箇所の雌螺子部(図示略)を有する。また、トップカバー6には、アンテナ素子2及び基板部3を取り付けるためのフック(図示略)を有する。アンテナ素子2及び基板部3をトップカバー6のフックで止めることにより、トップカバー6に対するアンテナ素子2及び基板部3の位置決めを正確に行うことができる。トップカバー6は、例えば、44.2×44.2×12.5t[mm]の正方形板形状を有する。
ブラケット7は、接地板と、ダッシュボード等へのアンテナ装置1の取り付けの固定金具と、を兼ねる。ブラケット7は、銅等の金属導体で構成され、接地される。ブラケット7には、螺子8用の4つの通し穴7aがあけられている。ブラケット7は、例えば、70[mm]角又は90[mm]角の正方形板形状を有する。
螺子8は、トップカバー6をブラケット7に取り付けるための4本の雄螺子である。螺子8は、ブラケット7にあけられた通し穴7aに通され、トップカバー6の雌螺子部に螺合される。このため、ブラケット7に対するトップカバー6の位置決めを正確に行うことができる。これにより、ブラケット7に対するアンテナ素子2及び基板部3の位置決めも正確となる。
図3に示すように、組み立て後のアンテナ装置1において、同軸ケーブル3a、トップカバー6、ブラケット7(及び螺子8)が露出する。
次いで、図4〜図8を参照して、アンテナ素子2及び基板部3を詳細に説明する。図4に、アンテナ素子2、基板部3及びブラケット7の斜視構成を示す。図5に、アンテナ素子2及び基板部3の平面構成を示す。図6に、基板部3の回路部32の平面構成を示す。図7(a)に、分離状態の回路接続部32cを示す。図7(b)に、接続状態の回路接続部32cを示す。図8に、分配位相シフト回路部32aの平面構成を示す。
図4及び図5に示すように、組み立て後のアンテナ装置1のアンテナ素子2、基板部3及びブラケット7について、X軸、Y軸、Z軸をとる。Z軸は、アンテナ素子2、基板部3及びブラケット7の平面上の中心にとられている。図4において、アンテナ素子2及び基板部3と、ブラケット7とは、シールドケース4及びクッションシート5により、所定距離離れている。その所定距離は、例えば、3[mm]である。
図4に示すように、アンテナ素子2は、放射電極21と、アンテナ基体22と、給電部23A,23Bと、接地電極24と、を有する。放射電極21は、アンテナ基体22の上面(表面)に形成された金属導体の電極である。放射電極21は、例えば、アンテナ基体22の上面よりも小さな、34.1×34.1[mm]の正方形状の銀箔でアンテナ基体22にパターン形成されている。放射電極21には、給電部23A,23Bが電気的に接続されている。放射電極21には、摂動素子(切り欠き、出っ張り)が形成されていない。
アンテナ基体22は、所定の比誘電率を有する誘電体で形成された板である。アンテナ基体22の比誘電率εrは、例えば、6.8である。この比誘電率εrによる波長短縮効果により、アンテナ素子2を小型化できる。アンテナ基体22は、誘電体に限定されるものではなく、所定の比透磁率μrを有する磁性体としたり、所定の比誘電率εr及び比透磁率μrを有する磁性誘電体としてもよい。比透磁率μrでも波長短縮効果が生ずる。アンテナ基体22は、例えば、40×40×4t[mm]の正方形板形状を有する。
給電部23A,23Bは、金属導体からなる例えば給電ピンであり、その一端に放射電極21が電気的に接続され、アンテナ基体22、接地電極24及び基板部3の基板本体部31を貫通して、他端が後述する回路部32の分配位相シフト回路部32aに接続されている。給電部23A,23Bは、2つの給電点となる。給電部23A,23Bは、アンテナ基体22を貫通するスルーホールによって構成されていてもよく、給電部23A,23Bは回路部32の分配位相シフト回路部32aに半田付けなどによって接続される。
接地電極24は、アンテナ基体22の下面に形成され接地された金属導体の電極である。接地電極24は、例えば、アンテナ基体22の下面よりも小さな、38×38[mm]の正方形状の銀箔でアンテナ基体22にパターン形成されている。
基板部3は、基板本体部31と、回路部32と、を備える。回路部32は、分配位相シフト回路部32aと、増幅回路部32b(図4及び図5では回路パターン図示略)と、を有する。
基板本体部31は、ガラス繊維にエポキシ樹脂を染み込ませたFR(Flame Retardant Type)4等の絶縁体の基板である。基板本体部31は、例えば、40×40×0.8t[mm]の正方形板形状を有する。基板本体部31の上面(アンテナ素子2側の平面)には、接地電極(図示略)が全面にパターン形成されている。基板本体部31の接地電極は、銀箔等の金属導体からなり接地されている。
回路部32は、基板本体部31の下面(ブラケット7側の平面)に銅箔等の金属導体でパターン形成された回路部である。分配位相シフト回路部32aは、入力端(接続部321)から放射電極21の給電部23A,23Bへ送信する電気信号を2分配して位相をシフトする回路である。
図5に示すように、アンテナ素子2及び基板部3の平面において、Z軸からX軸の正方向に長さL1離れた位置に、給電部23Aが配置されるものとする。同じく、Z軸からY軸の正方向に長さL2離れた位置に、給電部23Bが配置されるものとする。例えば、L1は、3.5[mm]であり、L2は、3.5[mm]である。
増幅回路部32bは、例えばLNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅回路)であり、分配位相シフト回路部32a及び同軸ケーブル3aに接続されている。増幅回路部32bは、給電部23A,23Bから出力され分配位相シフト回路部32aにより位相シフトされた電気信号を増幅して同軸ケーブル3aへ出力する。
次いで、図6及び図7を参照して、基板部3の回路部32における回路の接続を説明する。図6に示すように、回路部32は、分配位相シフト回路部32aと、増幅回路部32bと、回路接続部32cと、を備える。回路接続部32cは、分配位相シフト回路部32aと、増幅回路部32bと、を接続する銅箔等の導電体の回路パターンである。また、増幅回路部32bは、同軸ケーブル3aと接続される接続端子である端子部32b1を有する。
図7(a)に示すように、回路接続部32cは、接続端部32c1,32c2を有する。接続端部32c1は、増幅回路部32bのアンテナ素子2側の端子に接続された半円状の回路パターンである。接続端部32c1は、分配位相シフト回路部32aの受信機側の端子に接続された半円状の回路パターンである。つまり、接続端部32c1,32c2により、略円形の回路パターンとなるが、この形状に限定されるものではない。
アンテナ装置1の製造の一工程において、基板部3の回路部32とアンテナ素子2とが接続される。このとき、先ず、図7(a)に示すように、接続端部32c1,32c2は、互いに分離され、電気的に接続されていない分離状態にされている。このアンテナ装置1における回路接続部32cの分離状態で、接続端部32c2を使って、分配位相シフト回路部32a単独での出力が評価される。同様に、回路接続部32cの分離状態で、接続端部32c1を使って、増幅回路部32b単独での出力が評価される。
そして、分配位相シフト回路部32a、増幅回路部32b、各々の評価が完了した後、図7(b)に示すように、分配位相シフト回路部32aと、増幅回路部32bとが、ハンダSでハンダ付けされ、電気的に接続された接続状態にされる。
次いで、図8を参照して、分配位相シフト回路部32aを詳細に説明する。ここでは、仮にアンテナ装置1を送信アンテナとし、分配位相シフト回路部32aにより放射電極21へ給電部23A,23Bを介して電力の電気信号を給電することを前提として説明する。
分配位相シフト回路部32aは、分配回路部C1と、位相シフト回路部C2と、を備える。分配回路部C1は、ウィルキンソンの分配回路である。
分配回路部C1は、接続部321と、経路部322A,322Bと、抵抗323と、を備える。接続部321は、増幅回路部32bに電気的に接続される接続部である。経路部322A,322Bは、それぞれ、接続部321から抵抗323までの経路パターンである。抵抗323は、経路部322A,322Bの2つの出力端(経路部324A,324Bの2つの入力端)の間に配置されている。
位相シフト回路部C2は、経路部324A,324Bと、ピン接続部325A,325Bと、を備える。経路部324Aは、抵抗323からピン接続部325Aまでの経路パターンである。経路部324Bは、抵抗323からピン接続部325Bまでの経路パターンである。ピン接続部325Aは、給電部23Aが電気的に接続される接続部である。ピン接続部325Bは、給電部23Bが電気的に接続される接続部である。
つまり、分配位相シフト回路部32aにおいて、増幅回路部32bと給電部23A,23Bとの間の経路が、接続部321−経路部322A−(抵抗323)−経路部324A−ピン接続部325Aの経路P1と、接続部321−経路部322B−(抵抗323)−経路部324B−ピン接続部325Bの経路P2と、に分配されている。ここで、(放射する)無線信号の波長をλで表すと、経路部322Aの経路長は、1/4λにとられている。経路部322Bの経路長は、1/4λにとられている。
ピン接続部325Aは、抵抗323の近傍に配置されている。このため、経路部324Aの経路長は、経路部324Bに比べて、無いものとみなせる。経路部324Bの経路長は、経路部324Aの経路長よりも1/4λ分長い。この1/4λの長さの差は、位相90°の差に対応する。つまり、接続部321に入力されて、経路P1を通る信号は、経路P2を通る信号に比べて位相が90°シフトされる。
接続部321は、インピーダンスが50[Ω]になるように線幅がとられている。経路部322A,322Bは、接続部321側から見てインピーダンスが100[Ω]となり、給電部側から見てインピーダンスが50[Ω]となるように調整されている。具体的には、経路部322A,322Bは、約71(70.7)[Ω]になるよう線幅がとられている。経路部324A,324Bは、インピーダンスが50[Ω]になるよう線幅がとられている。ピン接続部325A,325Bは、インピーダンスが50[Ω]にされている。接続部321、経路部322A,322Bの線幅は、例えば、0.8[mm]にとられている。経路部324A,324Bの線幅は、例えば、1.5[mm]にとられている。また、接続部321の線幅は、実際には、0.8[mm]よりも大きくとられる。
抵抗323は、経路P1と、経路P2とのアイソレーションを改善するために設けられている。また、図8に示すように、経路P1,P2の角部分(直角に経路が折れ曲がっている部分)は45°の面取りがなされている。というのは、経路P1,P2に流れる電流は、経路が短くなるように経路幅の内側部分を通る。このため、経路P1,P2の経路幅の外側部分が不要であり、容量成分が増えるのを防ぐために、経路P1,P2の面取りがなされている。
接続部321に入力された給電用の電気信号は、2分配されて、それぞれ、経路P1,P2としての経路部322A,322Bを通り、抵抗323に到達する。抵抗323後の経路P1の電気信号は、経路部324Aを通り、ピン接続部325Aに入力される。抵抗323後の経路P2の電気信号は、経路部324Bを通り、ピン接続部325Bに入力される。ピン接続部325A,325Bへの到達時点で、経路P2の電気信号は、経路P1の電気信号に比べて位相が90°遅くなっている。このため、放射電極21からは、円偏波の無線信号が放射される。
ここで、アンテナにおける送信(アンテナへの電気信号の入力)における特性は、アンテナにおける受信(アンテナからの電気信号の出力)における特性と等価であるため、分配位相シフト回路部32aをGPS及びGLONASSの受信専用のアンテナ装置1に適用できる。
次に、図9〜図13を参照して、アンテナ装置1のアンテナ特性を説明する。図9に、アンテナ装置1の周波数に対するS11を示す。図10に、アンテナ装置1のスミスチャートを示す。図11に、アンテナ装置1の周波数に対する軸比を示す。図12に、アンテナ装置1の周波数に対する天頂方向の利得を示す。図13に、アンテナ装置1の放射パターンを示す。
アンテナ装置1の各種特性をシミュレーションした。先ず、図9に示すように、アンテナ装置1の周波数に対するSパラメータのS11特性が得られた。図9において、m1,m2,m3は、特性曲線(ここでは、S11曲線)上の特定の周波数の点を示す。m1を、GPSの周波数帯の中心周波数である1.5750[GHz]とした。m2を、m1とm2との中間の周波数である1.5900[GHz]とした。m3を、GLONASSの周波数帯の中心周波数である1.6050[GHz]とした。このm1,m2,m3の周波数値は、図10〜図12でも同様である。
図9の結果により、m1,m2,m3において、S11[dB]が一般的な特性の良否の判断の基準値としての−10[dB]よりも十分低い。このため、GPS及びGLONASSに対応する広帯域の周波数帯で、アンテナ装置1の共振が良好にとれている。
次いで、図10に示すように、アンテナ装置1のスミスチャートが得られた。図10において、円の中心の1.00が50[Ω]に対応する。また、1.00を中心とし、0.50及び2.00を結ぶ円が、S11の−10[dB]に対応する。図10の結果により、m1,m2,m3の点が、S11の−10[dB]の円内で1.00付近に集まっている。このため、GPS及びGLONASSに対応する広帯域の周波数帯で、アンテナ装置1のインピーダンスは、50[Ω]でマッチングがとれている。
次いで、図11に示すように、アンテナ装置1の周波数に対する軸比[dB]が得られた。図11において、軸比が小さいほど、完全な円偏波に近付く。図11の結果により、m1,m2,m3において、軸比[dB]が一般的な特性の良否の判断の基準値としての3[dB]よりも十分低い。このため、GPS及びGLONASSに対応する広帯域の周波数帯で、アンテナ装置1の軸比を低く良好に得られる。軸比が低いと、信号が完全な円偏波に近付くため、アンテナ装置1の方向によらず、感度(利得)を一定にすることができる。
次いで、図12に示すように、アンテナ装置1の周波数に対する天頂方向の利得[dBi]が得られた。天頂方向とは、図4及び図5に示したZ軸の正方向である。図12において、実線が右旋円偏波での天頂方向の利得[dBi]であり、点線が左旋円偏波での天頂方向の利得[dBi]である。図12において、m1,m2,m3は、上記と同じ周波数で、右旋円偏波での天頂方向の利得曲線上の点である。m4,m5,m6は、それぞれm1,m2,m3と同じ周波数で、左旋円偏波での天頂方向の利得曲線上の点である。
図12の結果により、m1,m2,m3において、右旋円偏波で高い天頂方向の利得[dBi]が得られているとともに、m4,m5,m6において、左旋円偏波で天頂方向の利得[dBi]が低く抑えられている。このため、天頂方向の衛星と通信する右旋円偏波の通信規格であるGPS及びGLONASSに対応する広帯域の周波数帯で、アンテナ装置1の天頂方向に高い利得[dBi]が得られている。
次いで、図13に示すように、アンテナ装置1の放射パターン特性が得られた。図13の放射パターン特性は、図4及び図5に示したY軸及びZ軸の平面(YZ平面)における周波数1.59[GHz]における利得[dBi]である。図13において、実線が右旋円偏波での利得[dBi]であり、点線が左旋円偏波での利得[dBi]である。また、図13において、m7を右旋円偏波での利得曲線におけるZ軸上の点とする。
図13の結果により、m7の利得の5.6278[dBi]を頂点として、Zが正の半球面で右旋円偏波での高い利得が得られ、Zが負の半球面で右旋円偏波での利得が低く抑えられている。また、Zが正の半球面で左旋円偏波での利得が低く抑えられ、Zが正の半球面で左旋円偏波での高い利得が得られている。このため、天頂方向の衛星と通信する右旋円偏波の通信規格であるGPS及びGLONASSの中間の周波数(GPS及びGLONASSに対応する周波数帯)で、アンテナ装置1の天頂方向の半円球に高い利得[dBi]が得られている。
以上、本実施の形態によれば、アンテナ装置1は、アンテナ素子2と、基板部3と、を備える。アンテナ素子2は、アンテナ基体22と、アンテナ基体22の上面に設けられた放射電極21と、放射電極21に接続されてアンテナ基体22を貫通された給電部23A,23Bと、接地電極24と、を備える。基板部3は、分配回路部C1と、位相シフト回路部C2と、を備える。分配回路部C1は、増幅回路部32bの入力端が接続される接続部321と、接続部321に接続されて1/4λの経路長を有する経路部322A,322Bと、経路部322A,322Bに接続された抵抗323と、を備える。位相シフト回路部C2は、抵抗323から給電部23Aまでの経路であって、入力端が給電部23Aの近傍に設けられた経路部324Aと、抵抗323から給電部23Bまでの経路であって、経路部324Aよりも1/4λ長い経路長を有する経路部324Bと、を備える。分配回路部C1及び位相シフト回路部C2は、基板部3の同一面に形成され、位相シフト回路部C2は、分配回路部C1の経路部322A,322Bの内側に配置されている。
このため、2つの給電点及び1つの放射電極のアンテナ装置1において、GPS及びGLONASSの共用に、良好な軸比の帯域を広帯域にすることができ、入力端から給電部23A,23B(2つの給電点)までの経路P1,P2のアイソレーションを改善でき、且つアンテナ素子2に接続する分配位相シフト回路部32aの面積を小さくすることができる。経路P1,P2のインピーダンスのバランスをとることで、広帯域で容易にインピーダンスマッチングをとることができる。分配位相シフト回路部32aの面積を小さくすることで、基板部3を小さくすることができ、アンテナ装置1を小型化できる。
また、経路部324Aが、給電部23Aに接続されて出力端が給電部23Aの近傍に設けられるので、経路部324A,324Bで不要な経路を削除でき、この不要な経路の挿入損失を無くすことができ、分配位相シフト回路部32aの面積をさらに小さくできる。
また、増幅回路部32bは、基板部3の分配回路部C1及び位相シフト回路部C2と同一の面上に形成される。このため、部品点数の低減及びアンテナ装置1の低背化が図れ、アンテナ装置1をさらに小型化できる。特に、分配位相シフト回路部32aの面積が小さいため、基板部3の下面の分配位相シフト回路部32a以外のスペースに、増幅回路部32bを容易に形成できる。
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係るアンテナ装置の一例であり、これに限定されるものではない。
上記実施の形態では、アンテナ装置1に適用する周波数帯として、互いに近く且つ異なGPS及びGLONASSの周波数帯の信号を受信する構成としたが、これに限定されるものではない。アンテナ装置1は、広帯域のアンテナ装置として、異なる複数の周波数帯又は単数でも広い周波数帯の通信に適用できる。
また、上記実施の形態では、アンテナ装置1を、GPS及びGLONASSの受信専用のアンテナ装置として説明したが、これに限定されるものではない。アンテナ装置1を、送信用又は送受信用のアンテナに適用してもよい。
その他、上記実施の形態におけるアンテナ装置の細部構成及び詳細動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
1 アンテナ装置
2 アンテナ素子
21 放射電極
22 アンテナ基体
23A,23B 給電部
24 接地電極
3 基板部
31 基板本体部
32 回路部
32a 分配位相シフト回路部
C1 分配回路部
C2 位相シフト回路部
321 接続部
322A,322B,324A,324B 経路部
323 抵抗
325A,325B ピン接続部
32b 増幅回路部
32b1 端子部
32c 回路接続部
32c1,32c2 接続端部
P1,P2 経路
3a 同軸ケーブル
4 シールドケース
5 クッションシート
6 トップカバー
7 ブラケット
7a 通し穴
8 螺子

Claims (2)

  1. アンテナ素子と、
    前記アンテナ素子の下面に設けられた基板部と、を備え、
    前記アンテナ素子は、
    誘電体、磁性体又は磁性誘電体からなるアンテナ基体と、
    前記アンテナ基体の上面に設けられた放射電極と、
    前記放射電極に接続されて前記アンテナ基体を貫通された第1及び第2の給電部と、
    前記アンテナ基体の下面に設けられた接地電極と、を備え、
    前記基板部は、
    給電の入力端に接続される接続部と、前記接続部から2分配されて1/4λの経路長を有する第1及び第2の経路部と、前記第1及び第2の経路部の出力端に接続された抵抗と、を備える分配回路部と、
    前記抵抗から前記第1の給電部までの経路であって、入力端が前記第1の給電部の近傍に設けられた第3の経路部と、前記抵抗から前記第2の給電部までの経路であって、前記第3の経路部よりも1/4λ長い経路長を有する第4の経路部と、を備える位相シフト回路部と、を備え、
    前記分配回路部及び前記位相シフト回路部は、前記基板部の同一面に形成され、
    前記位相シフト回路部は、前記分配回路部の前記第1及び第2の経路部の内側に配置されたことを特徴とするアンテナ装置。
  2. 前記基板部は、
    前記分配回路部及び前記位相シフト回路部と同一面に形成され、前記分配回路部の前記接続部から出力される信号を増幅する増幅回路部を備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
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