JP2013016607A - 静止誘導電器用巻線 - Google Patents
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Abstract
【課題】直列静電容量を更に調整して絶縁性能の向上を図れ、急峻なサージ電圧に耐えられ、小型化が可能な静止誘導電器用巻線を提供する。
【解決手段】絶縁被覆102A、102Bを施した素線導体101A、101Bを巻回して円板コイル単位100A、100Bを形成すると共に、各円板コイル単位100A、100Bは素線導体101A、101Bの巻回が順に進むターン間に、巻回ターン数の異なる素線導体を位置させるように互いに入り組ませて巻回形成したインターリーブ方式により静止誘導電器用巻線を構成する。そして、各円板コイル単位100A、100Bの入り組ませた各素線導体101A、101Bは、一方の絶縁被覆102Aをクラフト紙により形成し、他方の絶縁被覆102Bをアミン添加紙の如く誘電率がより高くて耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙により形成している。
【選択図】図1
【解決手段】絶縁被覆102A、102Bを施した素線導体101A、101Bを巻回して円板コイル単位100A、100Bを形成すると共に、各円板コイル単位100A、100Bは素線導体101A、101Bの巻回が順に進むターン間に、巻回ターン数の異なる素線導体を位置させるように互いに入り組ませて巻回形成したインターリーブ方式により静止誘導電器用巻線を構成する。そして、各円板コイル単位100A、100Bの入り組ませた各素線導体101A、101Bは、一方の絶縁被覆102Aをクラフト紙により形成し、他方の絶縁被覆102Bをアミン添加紙の如く誘電率がより高くて耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙により形成している。
【選択図】図1
Description
本発明は変圧器巻線やリアクトル巻線等の静止誘導電器用巻線に係り、特に衝撃電圧特性を向上できる静止誘導電器用巻線に関する。
通常、静止誘導電器である内鉄型変圧器の場合、油槽内に鉄心の脚部に少なくとも低圧巻線と高圧巻線を巻装した変圧器本体を収納すると共に、絶縁油を満たして構成されている。この高圧巻線は、絶縁被覆を施した素線導体を渦巻状に巻回して形成する円板状コイルの複数個を、巻軸方向に積重ねて直列に接続した機械的強度が大きな円板巻線で構成している。
そして、静止誘導電器の高圧巻線は、線路端子或いは中性点端子から侵入する雷インパルス電圧などの急峻なサージ電圧に耐えて、絶縁破壊を引き起さないことが要求されている。円板巻線で構成した高圧巻線では、サージ電圧が印加された時の発生電圧が高圧巻線に分布する対地静電容量及び直列静電容量によって決まることは良く知られている。
それ故、静止誘導電器の高圧巻線は、絶縁被覆を施した素線導体を巻回するターン間及び円板状コイル間の直列静電容量を大きくして、巻線全体の軸心方向の電位分布を均等化することが行われている。この高圧巻線の電位分布を均等化する手段として、例えば特許文献1や2に記載されているようなインターリーブ巻線が良く知られている。
一般的なインターリーブ巻線は、例えば絶縁被覆を施した素線導体を2本並列に用いて巻回形成する円板コイル単位の上下2個を一組とし、各円板コイル単位の絶縁被覆を施した素線導体は、巻回が順に進むターン間に異なる巻回ターンを位置させ、互いに素線導体を入り組ませて巻回して構成する。
このインターリーブ巻線は、円板コイル単位における隣り合う各素線導体間ターン間の電位が高くなることから、素線導体間の充電電流が増加して、各円板コイル単位の等価的な直列静電容量が大きくできることを利用した方式である。
インターリーブ巻線で構成した高圧巻線は、均等分布に近い電位分布が得られることから、端子側から侵入する急峻なサージ電圧に耐えることできる。そして、複数個の円板コイル単位のみ、或いは通常の円板コイル単位と組み合わせて軸方向に積層して構成する高圧巻線は、通常は各円板コイル単位間に板状絶縁スペーサを介在させて油道を設け、油道に流れる絶縁油によって良好に冷却できるようにしている。
しかし、インターリーブ巻線で構成した高圧巻線の場合においても、各円板コイル単位の絶縁被覆を施した素線導体を巻回するターン間に高い差電圧が加わるから、巻回ターン間耐電圧を確保するために大きな絶縁距離が必要となる。つまり、高圧巻線を構成する各円板コイル単位の絶縁距離を確保するために、巻線の軸方向寸法が長くなってしまい、静止誘導電器が一層大型化する問題が生じてくる。この種の高圧巻線では、電界緩和を図るために取り付けるシールド等の構成部品の数も多くなり、取り付けも複雑なため作業工数も多くなり、経済的に製作できなる。
また、複数個の円板コイル単位を軸方向に積層して構成する高圧巻線は、この巻線に分布する対地静電容量及び直列静電容量を微調整するため、特に線路端子側の円板コイル単位間に配置する絶縁スペーサの厚みを増加させ、水平ダクトと称される絶縁油の油道の間隔を広げることも行われている。しかし、この構造とする場合には、高圧巻線の軸方向長が更に増加して大型化してしまう欠点が生ずるし、絶縁油が流れる水平ダクトの空間寸法が巻線の軸方向長で不均一になるため、巻線冷却の面から見ると好ましくないばかりか、極端な場合には冷却器を増やす必要が生じてくる。
本発明の目的は、直列静電容量を更に調整して絶縁性能の向上を図れ、急峻なサージ電圧に耐えられてしかも小型化が可能な静止誘導電器用巻線を提供することにある。
本発明の静止誘導電器用巻線は、絶縁被覆を施した素線導体を巻回して円板コイル単位を形成すると共に、前記円板コイル単位は素線導体の巻回が順に進むターン間に、巻回ターン数の異なる素線導体を位置させるように互いに入り組ませて巻回形成したインターリーブ方式により構成する際に、円板コイル単位の入り組ませた各素線導体は、一方の絶縁被覆をクラフト紙により形成し、他方の絶縁被覆を誘電率がより高くて耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙により形成したことを特徴としている。
好ましくは、前記誘電率がより高くて耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙は、アミン添加紙であることを特徴としている。
本発明の静止誘導電器用巻線のように構成すれば、円板コイル単位の入り組ませて隣接する絶縁被覆を施した各素線導体は、一方の絶縁被覆をクラフト紙で形成し、他方の絶縁被覆を誘電率がより高くて耐熱絶縁特性が良好な絶縁紙により形成したので、等価的に直列静電容量をより大きくすることができる。このため、従来に比べてより一層急峻なサージ電圧に耐える静止誘導電器用巻線とすることができる。
また、素線導体の絶縁被覆がクラフト紙の薄茶色と、誘電率がより高くて耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙であるアミン添加紙の鶯色の組み合せとなるから、円板コイル単位の製作時の作業性及び信頼性を向上できる。しかも、通常のクラフト紙に比べ、耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙であるアミン添加紙を組み合わせて使用したから、絶縁油が流れる水平ダクト巻線の冷却特性も損なわない利点がある。
本発明の静止誘導電器用巻線は、絶縁被覆を施した素線導体を巻回して円板コイル単位を形成すると共に、前記円板コイル単位は素線導体の巻回が順に進むターン間に、巻回ターン数の異なる素線導体を位置させるように互いに入り組ませて巻回形成したインターリーブ方式により構成する。そして、円板コイル単位の入り組ませた各素線導体は、一方の絶縁被覆をクラフト紙により形成すると共に、他方の絶縁被覆を誘電率がより高くて耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙により形成している。
以下、本発明の静止誘導電器用巻線を、変圧器巻線の例を用いて説明する。図1(a)に示す変圧器巻線は、上下2個が一組となるインターリーブの円板コイル単位100A、100Bを、この複数個のみ或いは通常の円板コイル単位と組み合わせ、巻線軸方向に配置して構成される。円板コイル単位100A、100Bは、例えば平角状の素線導体101A、101Bを用い、後述するようにそれぞれ所定の厚さに絶縁被覆102A、102Bを施して巻回形成している。
各円板コイル単位100A、100Bは、絶縁被覆102A、102Bを施した素線導体101A、101Bの巻回が数字順で示すように双方とも9ターンで、上下計18ターンであり、数字順で示すターン間にターン数の大きな異なる素線導体を入り組ませて巻回したインターリーブ構成となっている。この円板コイル単位100Aは、線路端子側となる最外側の巻回開始の1ターン目から数字順に一つ飛びに巻回のターンが進み、最内側の5ターン目から円板コイル単位100Bの6ターン目に渡り、同様に一つ飛びにターンが進んだ9ターン目から円板コイル単位100A側に渡って繰り返し、コイル単位100Bの最外側が中性点側となる巻回終りの18ターン目となる。
素線導体101A、101Bは、本発明により絶縁被覆102A、102Bに特別な工夫を施している。即ち、入り組ませて巻回する一方の素線導体101Aの絶縁被覆102Aは、クラフト紙を用いて巻回形成している。これに対して、他方の素線導体101Bの絶縁被覆102Bは、誘電率がより高くて耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙を用いて巻回形成している。この誘電率がより高くて耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙としては、例えばアミン添加紙を使用する。
変圧器巻線は、上記のように巻回形成した各円板コイル単位100A、100Bを、巻線軸方向に複数個積層して構成する。このような変圧器巻線とすると、クラフト紙の絶縁被覆102Aとアミン添加紙の絶縁被覆102Bが交互に配置されているから、巻線の等価的な直列静電容量を従来のクラフト紙の絶縁被覆を用いるものに比べて大きくすることができるため、急峻なサージ電圧に耐える巻線になる。
例えば変圧器で、表1のように一般的な鉱油(比誘電率ε=2.2)を用いて、アミン添加紙の絶縁被覆(比誘電率ε=3.7と、クラフト紙の絶縁被覆(比誘電率ε=3.5)の組み合せであると、両絶縁被覆の比で略決まる等価的な直列静電容量は、クラフト紙のみを使用した場合に比べて数%大きくすることができる。
また、表2のように一般的なシリコーン油(比誘電率ε=2.5)と、アミン添加紙の絶縁被覆(比誘電率ε=3.9と、クラフト紙の絶縁被覆(比誘電率ε=3.7)の組み合せの場合でも、表1の場合よりは少ないものの、等価的な直列静電容量を同様に比べて大きくすることができる。
しかも、上記の構成の変圧器巻線は、従来のように直列静電容量を調節するために各円板コイル単位間に形成する油道(水平ダクト)の寸法を、絶縁スペーサの厚み調節で変える必要もなくなるし、この結果絶縁油の流れも良好にして巻線の冷却特性も良くすることができる。
更に、アミン添加紙は通常のクラフト紙に比べて約10℃耐熱性が向上する利点があるし、またアミン添加紙を長期にて使用するとアミン添加紙のアミンが絶縁油中に溶出してクラフト紙の劣化を抑制する効果も期待することができる。その上、一般に市販されているクラフト紙は薄茶色に、アミン添加紙は鶯色に着色されているから、巻線を製作する作業者は色による識別が容易なため、作業性及び信頼性を向上できる利点もある。
なお、複数個の円板コイル単位及び通常形式で巻回形成した複数個の円板コイル単位を、組み合わせて巻線軸方向に積層して変圧器巻線を構成するときのように、例えば異なる形状の円板コイル単位間の局所で電界緩和が必要で静電容量を調節したい場合は、その部位に例えば(アラミド紙(ε=2.9)の如き低誘電率の絶縁紙を、絶縁被覆として適宜に使用することができる。
100A、100B…円板コイル単位、101A、101B…素線導体、102A、102B…絶縁被覆。
Claims (2)
- 絶縁被覆を施した素線導体を巻回して円板コイル単位を形成すると共に、前記円板コイル単位は素線導体の巻回が順に進むターン間に、巻回ターン数の異なる素線導体を位置させるように互いに入り組ませて巻回形成したインターリーブ方式により構成する静止誘導電器用巻線において、前記円板コイル単位の入り組ませた前記各素線導体は、一方の絶縁被覆をクラフト紙により形成し、他方の絶縁被覆を誘電率がより高くて耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙により形成したことを特徴とする静止誘導電器用巻線。
- 請求項1において、前記誘電率がより高くて耐熱絶縁特性の良好な絶縁紙は、アミン添加紙であることを特徴とする静止誘導電器用巻線。
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JPN6013063788; 山形直樹・宮城克徳・大江悦男: '"クラフト紙の油中加熱劣化に及ぼすアミン添加紙共存の影響"' 平成20年電気学会電力・エネルギー部門大会論文集 , 20080924, 論文No.300, 社団法人電気学会電力・エネルギー部門 * |
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