JP2013014724A - ウレタン樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents

ウレタン樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン樹脂組成物及びその硬化物 Download PDF

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Abstract

【課題】揮発性が低く、高温環境下での加熱減量が少なく、ウレタン樹脂の原料であるポリオールとの相溶性に優れ、これに配合することで溶液粘度を低下することができるウレタン樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン樹脂組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】芳香族多価カルボン酸(A)又はその酸無水物と、脂肪族分岐モノアルコール(B)とをエステル化反応させて得られたエステル化合物であって、前記芳香族多価カルボン酸(A)の価数と前記脂肪族分岐モノアルコール(B)の炭素原子数とを乗じた数が、33〜100の範囲であるエステル化合物を必須成分として含有することを特徴とするウレタン樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン樹脂組成物及びその硬化物を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ウレタン樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン樹脂組成物及びその硬化物に関する。
従来、電気・電子部品には、湿気、粉塵等を含む雰囲気や、振動、衝撃等から保護する目的で、シーリング材又はポッティング材といわれる電気絶縁封止剤が用いられている。その材料として、優れた絶縁特性、可撓性を有する点、比較的安価である点などから、ウレタン樹脂が広く用いられている。近年、電気機器は年々小型軽量化による気密性の高さや、使用電流量の増加等により、電気電子部品は耐熱性が要求されている。こうした背景から、それに用いる原料についても従来以上の耐熱性が求められている。
電気絶縁封止剤には、溶液粘度の調整のために、安価でウレタン樹脂の原料である各種ポリオールとの相溶性に優れることから、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタル酸エステルが主に使用されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、DOPを始めとしたフタル酸エステルは、内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)に該当するとされ、その使用が制限されている問題がある。また、フタル酸エステルは、比較的揮発性が高い物質であり、電気・電子部品の温度上昇により、フタル酸エステルが揮発して、ウレタン樹脂の柔軟性が失われたり、電気・電子機器内部を汚染したりする問題があった。
また、揮発性を抑制した可塑剤として、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル化合物が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この可塑剤は、さらに高い高温環境下での揮発性は十分抑制できない問題があった。
さらに、これらの問題を解決するために、加熱時の可塑剤が揮発する加熱損失の少ないシーリング材用可塑剤として、ポリエーテルとイソシアネートを反応させた化合物が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この可塑剤も、溶液粘度を効果的に低下できず、加熱損失が高く耐熱性が不足していた。
そこで、電気絶縁封止剤の粘度調整を容易に行うことができ、溶液粘度の低下効果に優れ、かつ加熱損失が少ないウレタン樹脂用可塑剤が求められていた。
特開平7−109326号公報 特開平5−230288号公報 特開2001−64505号公報
本発明が解決しようとする課題は、揮発性が低く、高温環境下での加熱減量が少なく、ウレタン樹脂の原料であるポリオールとの相溶性に優れ、これに配合することで溶液粘度を低下することができるウレタン樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン樹脂組成物及びその硬化物を提供することである。
上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、芳香族多価カルボン酸と、モノアルコールとをエステル化反応させて得られる特定のエステル化合物は、揮発性が低く、高温環境下での加熱減量が少なく、ウレタン樹脂の原料であるポリオールとの相溶性に優れ、これに配合することで溶液粘度を低下することができるウレタン樹脂用可塑剤として用いることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、芳香族多価カルボン酸(A)又はその酸無水物と、脂肪族分岐モノアルコール(B)とをエステル化反応させて得られたエステル化合物であって、前記芳香族多価カルボン酸(A)の価数と前記脂肪族分岐モノアルコール(B)の炭素原子数とを乗じた数が、33〜100の範囲であるエステル化合物を必須成分として含有することを特徴とするウレタン樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン樹脂組成物及びその硬化物に関する。
本発明のウレタン樹脂用可塑剤は、揮発性が低く、加熱による減量が少ないため、該可塑剤を用いたウレタン樹脂組成物の硬化後のウレタン樹脂の物性が、高温環境下でも変化が抑制でき、ウレタン樹脂の耐熱性を向上することができる。また、ウレタン樹脂組成物の粘度を効果的に低下できるため、ハンドリング性を向上することができる。これらのことから、耐熱性が求められるウレタン樹脂組成物に用いることができる。用途としては、水分や湿気から保護するために使用される封止剤、シーリング剤、ポッティング剤等の電気絶縁封止剤、コーティング剤、コンデンサーやコンバーターに用いられる絶縁材などが挙げられる。より具体的には、電気洗濯機、エアコンの室外機、温水洗浄便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機等のスイッチ部、電動工具、自動車、バイク等に使用されている電子、電気部品などが挙げられる。
本発明のウレタン樹脂用可塑剤は、芳香族多価カルボン酸(A)又はその酸無水物と、脂肪族分岐モノアルコール(B)とをエステル化反応させて得られたエステル化合物であって、前記芳香族多価カルボン酸(A)の価数と前記脂肪族分岐モノアルコール(B)の炭素原子数とを乗じた数が、33〜100の範囲であるエステル化合物を必須成分として含有するものである。
ここで、本発明のウレタン樹脂用可塑剤は、前記エステル化合物を必須成分として含有するものであるが、本発明のウレタン樹脂用可塑剤中の前記エステル化合物の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
前記芳香族多価カルボン酸(A)は、カルボキシル基を2つ以上有する芳香族化合物であるが、本発明のウレタン樹脂用可塑剤の加熱減量をより抑制できることから、カルボキシル基を2つ以上有する芳香族化合物が好ましい。このカルボキシル基が直接芳香環に結合している化合物が好ましく、具体例としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸等が挙げられる。これらの中でも、本発明のウレタン樹脂用可塑剤の加熱減量をより抑制できることから、トリメリット酸及びピロメリット酸が好ましい。また、これらの芳香族多価カルボン酸の酸無水物も用いることができ、具体的には、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。さらに、これらの芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
脂肪族分岐モノアルコール(B)は、分岐状の脂肪族基を有するモノアルコールである。このモノアルコールの中でも、本発明のウレタン樹脂用可塑剤の加熱減量をより抑制できることから、炭素原子数が9〜24の範囲のモノアルコールが好ましい。前記脂肪族分岐モノアルコール(B)の具体例としては、例えば、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール、イソウンデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソテトラデシルアルコール、イソペンタデシルアルコール、イソヘキシルデシルアルコール、イソヘプタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール、イソノナデシルアルコール、イソエイコサニルアルコール、イソヘニコサニルアルコール、イソドコサニルアルコール、イソトリコサニルアルコール、テトラコサニルアルコール、イソヘキシルデシルアルコール、オクチルデシルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、本発明のウレタン樹脂用可塑剤の加熱減量をより抑制でき、ウレタン樹脂の原料であるポリオール等との相溶性も良好であることから、炭素原子数が9〜20の脂肪族分岐モノアルコールが好ましく、具体的には、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール及びオクチルデシルアルコールが好ましい。これらの脂肪族分岐モノアルコールは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
本発明のウレタン樹脂用可塑剤の必須成分であるエステル化合物は、前記芳香族多価カルボン酸(A)と、前記脂肪族分岐モノアルコール(B)とをエステル化反応させて得られたエステル化合物のうち、前記芳香族多価カルボン酸(A)の価数と前記脂肪族分岐モノアルコール(B)の炭素原子数とを乗じた数が、33〜100の範囲であるエステル化合物である。前記の芳香族多価カルボン酸(A)と脂肪族分岐モノアルコール(B)との組み合わせは、前記芳香族多価カルボン酸(A)の価数と前記脂肪族分岐モノアルコール(B)の炭素原子数とを乗じた数が、33〜100の範囲にあれば、特に制限なく組み合わせることができる。また、本発明のウレタン樹脂用可塑剤の加熱減量をより抑制でき、ウレタン樹脂の原料であるポリオール等との相溶性も良好とできることから、前記芳香族多価カルボン酸(A)の価数と前記脂肪族分岐モノアルコール(B)の炭素原子数とを乗じた数は、36〜96の範囲が好ましく、36〜80の範囲がより好ましい。
本発明のウレタン樹脂用可塑剤の必須成分であるエステル化合物の製造方法としては、前記芳香族多価カルボン酸(A)と、前記脂肪族分岐モノアルコール(B)とを反応器に仕込み、通常のエステル化反応させる方法が挙げられる。また、このエステル化反応を促進する目的で、エステル化触媒を用いることが好ましい。
前記エステル化触媒として、金属又は有機金属化合物を用いることができる。具体的には、周期律表2族、4族、12族、13族及び14族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属や有機金属化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等の金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、反応性、取扱いやすさ、エステル化反応により得られたエステル化合物の保存安定性が良好であることから、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート等のチタンアルコキサイドが好ましい。
また、前記エステル化触媒の使用量は、エステル化反応を制御でき、かつ得られるエステル化合物の着色を抑制できる範囲の量であればよく、前記多価アルコールと前記モノジカルボン酸との合計量に対し、10〜2,000ppmの範囲が好ましく、20〜1,000ppmの範囲がより好ましい。
前記エステル化合物を製造する際、前記エステル化触媒を添加する時期は、前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(A)と前記脂肪族ジカルボン酸(B)とを反応器に仕込むのと同時に添加してもよく、昇温途中に添加してもよく、エステル化触媒を分割して添加してもよい。
前記エステル化合物を製造する際の反応温度は、各原料が蒸発や昇華することを抑制しつつ反応を促進し、反応により生成するエステル化合物の熱分解、着色を抑制できることから、60〜300℃の範囲が好ましく、100〜250℃の範囲がより好ましい。また、ウレタン樹脂用可塑剤を製造する際の反応時間は、2時間以上であることが好ましく、4〜100時間の範囲であることがより好ましい。
上記の製造方法により得られるエステル化合物は、高温高湿下でも加水分解をうけにくく安定であり、後述するウレタン樹脂との相溶性が良いためブリードを引き起こしにくく、かつウレタン樹脂溶液の粘度低下効果に優れることから、30以下の水酸基価を有し、かつ2以下の酸価を有するものが好ましく、20以下の水酸基価を有し、かつ1以下の酸価を有するものがより好ましい。
本発明のウレタン樹脂組成物は、ポリオール、ポリイソシアネート及び本発明のウレタン樹脂用可塑剤を含有する組成物である。
本発明のウレタン樹脂組成物の1成分であるポリオールは、1分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物である。このポリオールとしては、例えば、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン等のジエン化合物と必要によりスチレン、アクリロニトリルなどとを、例えば、金属リチウム、金属カリウム、金属ナトリウムなどのアニオン重合触媒の存在下で重合させた後、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させて得られるポリオール;前記ジエン化合物を、例えば、過酸化水素等の水酸基を有するラジカル開始剤によりラジカル重合させて得られるポリオール;これらのポリオールを水素添加したものなどが挙げられる。これらのポリオレフィンポリオールは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、分子中に2〜3つの水酸基を有する化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、又はそれらの混合物を、アルカリ触媒等の存在下で付加重合させたポリアルキレンポリオール;テトラヒドロフランをカチオン触媒下で重合させたポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸と多価アルコールの重縮合反応、カプロラクトンの開環重合又はアルキレンカーボネートとグリコールのエステル交換反応から得られ、具体例としては、ダイマー酸系ジオール、セバシン酸系ポリエステルポリオール、コハク酸系ポリエステルポリオール、)、ヒマシ油,水素化ヒマシ油,ヒマシ油エステル交換物等のポリオール化合物等が挙げられる。
また、上記以外のポリオールとしては、例えば、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール,2,3−ペンタンジオール,2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、N,N−ビス−2−ヒドロキシプロピルアニリン、N,N’−ビスヒドロキシイソプロピル−2−メチルピペラジン、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラヒドロフラン/アルキレンオキサイド共重合ポリオール、エポキシ樹脂変性ポリオール、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらの化合物の水素添加化合物等が挙げられる。
また、ポリオールとしてカーボネートジオールを用いても良く、例えば、α,ω−ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、α,ω−ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオール等が挙げられる。これらの市販品としては、ダイセル化学株式会社製の「PLACELCD−205」、「PLACEL205PL」、「PLACEL205HL」、「PLACEL210」、「PLACEL210PL」、「PLACEL210HL」「PLACEL220]、「PLACEL220PL」、「PLACEL220HL」等が挙げられる。
前記ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等のポリオールの中でも、耐クラック性が高いこと、寿命の長いことから、ポリオレフィンポリオールが好ましく、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンジオール、水添ポリイソプレンジオール、水添ポリブタジエンジオールがより好ましい。ポリブタジエンポリオールの市販品としては、出光石油化学株式会社製の「PolybdR−15HT」、「PolybdR−45HT」等が挙げられ、ポリイソプレンジオールの市販品としては、出光石油化学株式会社製の「Polyip」等が挙げられ、水添ポリイソプレンジオールの市販品としては、出光石油化学株式会社製の「エポール」が挙げられる。これらのポリオールは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
本発明のウレタン樹脂組成物の1成分であるポリイソシアネートは、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。このポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の脂肪族−芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;前記ポリイソシアネート化合物の環化三量体(イソシアヌレート変性体)、及びビューレット変性体やエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリアルカジエンポリオール、ポリアルカジエンポリオールの水素化物、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、ヒマシ油系ポリオール等のポリオール化合物と前記ポリイソシアネート化合物との付加反応物等が挙げられる。これらのポリイソシアネートは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
また、上記に例示したポリイソシアネートのイソシアネート基をフェノール系化合物、オキシム系化合物、イミド系化合物、メルカプタン系化合物、アルコール、ε−カプロラクタム、エチレンイミン、α−ピロリドン、マロン酸ジエチル、亜硫酸水素ナトリウム、ホウ酸等のブロック剤でブロックしたブロックイソシアネートも用いることができる。これらイソシアネートの中でも、常温で液状のものが、ハンドリング性、混合性が良好であるため好ましい。
前記ポリイソシアネートの使用量は、前記ポリオール化合物の1当量に対し、0.8〜1.2当量の範囲で用いるのが好ましい。
本発明のウレタン樹脂用可塑剤のウレタン樹脂組成物中の配合量は、ウレタン樹脂組成物の十分な粘度低下、ウレタン樹脂組成物の硬化物の十分な可撓性及び強度等の各種物性を得られることから、1〜30重量%の範囲が好ましく、3〜20重量%の範囲がより好ましく、5〜15重量%の範囲がさらに好ましい。
本発明のウレタン樹脂用可塑剤は、イソシアネート基と、水酸基又はアミノ基砥の反応によって硬化するウレタン樹脂であれば、効果的に性能を発現することができる。
また、本発明のウレタン樹脂組成物には、硬化物であるウレタン樹脂の耐久性の向上、高硬度化、熱伝導性の向上等の性能向上のために必要に応じて無機充填材を配合することができる。この無機充填材としては、例えば、フュームシリカ、沈降性シリカ、結晶シリカ、水和アルミナ、水酸化アルミニウム、無水珪酸、含水珪酸、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、ガラス繊維、フィラメント等が挙げられる。これらの中でも、放熱性に優れることから、アルミナ、シリカが好ましい。
前記無機充填剤のウレタン樹脂組成物中の配合量は、十分な熱伝導性が得られ、ハンドリング性が高い粘度となり、難燃性、熱伝導性等を十分に向上できることから、10〜90質量%の範囲が好ましく、20〜80質量%の範囲がより好ましく、40〜70質量%の範囲がさらに好ましい。
本発明のウレタン樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、本発明のウレタン樹脂用可塑剤以外の公知の可塑剤を併用してもよい。他の可塑剤を併用する場合、硬化物に弾性を付与するとともに、組成物調製時に低粘度化を図ることができることから、水酸基を有さない可塑剤を用いることが好ましい。このような可塑剤としては、例えば、トリエチルヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート等のトリメリテート系可塑剤;テトラエチルヘキシルピロメリテート、テトライソデシルピロメリテート等のピロメリテート系可塑剤;トリクレジルフォスフェート、トリスキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルホスフェート、トリフェニルフォスフェート等のリン酸エステル、ポリエステルなどが挙げられる。ただし、これらの可塑剤の配合量は、本発明のウレタン樹脂組成物中に配合する可塑剤の全配合量の半分以下であることが好ましい。
また、本発明のウレタン樹脂組成物には、硬化反応の促進のため、触媒を配合しても構わない。この触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート(DTD)、アルキルチタン酸塩、有機珪素チタン酸塩、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ジブチル錫ジオルソフェニルフェノキサイド、錫オキサイドとエステル化合物(ジオクチルフタレート等)の反応生成物などの金属系触媒、モノアミン類(トリエチルアミン等)、ジアミン類(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等)、トリアミン類(N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等)、環状アミン類(トリエチレンジアミン等)などのアミン系触媒が挙げられる。これらの触媒は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
本発明のウレタン樹脂組成物の硬化物は、該組成物に硬化剤を加えて加熱することにより得ることができる。前記硬化剤としては、上記したポリイソシアネートと同様のものを用いることができる。
本発明のウレタン樹脂組成物の硬化条件は、とくに制限されないが、該組成物を減圧、遠心力等を利用した脱泡装置により脱泡させた後、対象物に流し込み、50〜100℃の範囲で加熱する方法が挙げられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、性状、酸価、水酸基価及び粘度の測定は、下記の条件により行った。
[性状の観察]
透明容器にサンプルを入れ、目視で性状を観察した。
[酸価の測定条件]
JIS K 0070−1992に準じて測定した。
[水酸基価の測定条件]
JIS K 0070−1992に準じて測定した。
[粘度の測定条件]
粘度を測定するサンプルを100mlのガラス瓶に90g入れた後、液温が25℃にセットされた回転粘度計(東機産業株式会社製「TRV101F」;ローターNo.3、回転数60rpm)を用いて粘度を測定した。
下記実施例1〜8及び比較例1〜9にしたがって、可塑剤を製造又は用意した。
(実施例1)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、無水トリメリット酸(三菱ガス化学株式会社製;以下、「TMA」と略記する。)259g、イソトリデシルアルコール(協和発酵ケミカル株式会社製「トリデカノール」)810g、トルエン53g及びチタンテトライソプロポキシド(以下、「TiPT」と略記する。)0.3gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(1)を得た。このエステル化合物(1)の酸価は0.9、水酸基価は2.9、粘度は338mPa・sであった。
(実施例2)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、TMA269gと、ヘキシルデシルアルコール(高級アルコール工業株式会社製「リソノール16SP」)924g、トルエン60g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(2)を得た。このエステル化合物(2)の酸価は0.1、水酸基価は2.8、粘度は220mPa・sであった。
(実施例3)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、TMA211g、オクチルドデシルアルコール(高級アルコール工業株式会社製「リソノール20SP」)983g、トルエン60g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(3)を得た。このエステル化合物(3)の酸価は0.2、水酸基価は3.1、粘度は334mPa・sであった。
(実施例4)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、ピロメリット酸(三菱ガス化学株式会社製以下、「PMA」と略記する。)356g、イソノニルアルコール(協和発酵ケミカル株式会社製「オキソコール900」)887g、トルエン62g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(4)を得た。このエステル化合物(4)の酸価は0.9、水酸基価は2.0、粘度は338mPa・sであった。
(実施例5)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、PMA330g、イソデシルアルコール(協和発酵ケミカル株式会社製「デカノール」)863g、トルエン60g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(5)を得た。このエステル化合物(5)の酸価は0.7、水酸基価は3.5、粘度は258mPa・sであった。
(実施例6)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、PMA279g、イソトリデシルアルコール(協和発酵ケミカル株式会社製「トリデカノール」)968g、トルエン62g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(6)を得た。このエステル化合物(6)の酸価は0.5、水酸基価は3.5、粘度は348mPa・sであった。
(実施例7)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、PMA229g、ヘキシルデシルアルコール(高級アルコール工業株式会社製「リソノール16SP」)958g、トルエン59g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(7)を得た。このエステル化合物(7)の酸価は0.2、水酸基価は3.2、粘度は239mPa・sであった。
(実施例8)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、PMA229g、オクチルドデシルアルコール(高級アルコール工業株式会社製「リソノール20SP」)966g、トルエン60g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(8)を得た。このエステル化合物(8)の酸価は0.2、水酸基価は3.2、粘度は315mPa・sであった。
(比較例1)
比較例1のエステル化合物として、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DIC株式会社製;以下、「DOP」と略記する。)を用意した。このエステル化合物は透明液体で、その酸価は0.3、水酸基価は2、粘度は57mPa・sであった。
(比較例2)
比較例2のエステル化合物として、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(DIC株式会社製「モノサイザーW−700」;以下、「TOTM」と略記する。)を用意した。このエステル化合物は透明液体で、その酸価は0.4、水酸基価は2.0、粘度は206mPa・sであった。
(比較例3)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、TMA346g、イソノニルアルコール(協和発酵ケミカル株式会社製「オキソコール900」)817g、トルエン58g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(9)を得た。このエステル化合物(9)の酸価は0.4、水酸基価は0.5、粘度は191mPa・sであった。
(比較例4)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、TMA326g、イソデシルアルコール(協和発酵ケミカル株式会社製「デカノール」)846g、トルエン58g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(10)を得た。このエステル化合物(10)の酸価は0.8、水酸基価は3.1、粘度は251mPa・sであった。
(比較例5)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、TMA288g、n−デシルアルコール(花王株式会社製「カルコール1098」)879g、トルエン58g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、白色固体であるエステル化合物(11)を得た。このエステル化合物(11)の酸価は0.3、水酸基価は1.0であった。なお、得られたエステル化合物が固体であったため、粘度は測定できなかった。
(比較例6)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、PMA393g、n−オクチルアルコール(花王株式会社製「カルコール0898」)967g、トルエン68g及びTiPT0.4gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、白色固体であるエステル化合物(12)を得た。このエステル化合物(12)の酸価は0.1、水酸基価は0.7であった。なお、得られたエステル化合物が固体であったため、粘度は測定できなかった。
(比較例7)
比較例7のエステル化合物として、テトラ−2−エチルヘキシルピロメリテート(DIC株式会社製「モノサイザーW−7010」;以下、「TOPM」と略記する。)を用意した。このエステル化合物は透明液体で、その酸価は0.6、水酸基価は3.0、粘度は392mPa・sであった。
(比較例8)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、2−エチルヘキサン酸(協和発酵ケミカル株式会社製「オクチル酸」)633.6g、ポリエチレングリコール(日油株式会社製「PEG#600」、エチレンオキサイドの平均付加モル数13;以下、「PEG」と略記する。)1,200g及びTiPT0.18gを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.12g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、透明液体であるエステル化合物(13)を得た。このエステル化合物(13)の酸価は0.9、水酸基価は6.0、粘度は72mPa・sであった。
(比較例9)
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(プロピレンオキサイドの平均付加モル数5;以下、「PPO−MB」と略記する。)726g及びトリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と略記する。)165gを仕込み、80℃で10時間反応させて、ウレタン化合物(1)を得た。このウレタン化合物(1)の酸価は0.1、水酸基価は10、粘度は118mPa・sであった。
上記の実施例1〜8及び比較例1〜9で製造又は用意した可塑剤について、耐熱性を評価するため、下記の通り、加熱減量率を測定した。なお、比較例5及び6で得られたエステル化合物(11)及び(12)については、性状が固体であったため、加熱減量率の測定及び耐熱性の評価を行わなかった。
[加熱減量率の測定]
各エステル化合物2gを直径60mmの金属シャーレの中に注入し、ギア老化試験機(株式会社東洋精機製作所製「ACRギアー・オーブン」)に入れ、150℃で300時間加熱した後、室温まで自然冷却させた。再び質量を測り、加熱後質量とした。得られた加熱前質量及び加熱後質量を用いて、下式(1)により加熱減量率を算出した。
加熱減量率(%)=(加熱前質量−加熱後質量)/加熱前質量×100 (1)
[耐熱性の評価]
上記で算出した加熱減量率の値から、下記の基準で耐熱性を評価した。
○:加熱減量率が15%未満である。
△:加熱減量率が15%以上90%未満である。
×:加熱減量率が90%以上である。
上記の実施例1〜8及び比較例1〜9で製造又は用意したエステル化合物について、原料及び特性を表1及び2まとめた。なお、表2中の「PA」は無水フタル酸を表す。
Figure 2013014724
Figure 2013014724
(実施例9〜16及び比較例10〜18)
上記の実施例1〜8及び比較例1〜9で製造又は用意したエステル化合物について、可塑剤としての下記の評価を行った。なお、比較例4及び5で得られたエステル化合物(11)及び(12)については、性状が固体であったため、下記の評価を行わなかった。
[ポリオールとの相溶性の評価]
ポリブタジエンポリオール(出光興産株式会社製「R−45HT」;数平均分子量:2800、官能基数:2.3、ヨウ素価:398、水酸基価:46)100質量部、ヒマシ油系ポリオール(伊藤製油株式会社製「URIC Y−403」;水酸基価:152、酸価:1.5)70質量部、ヒマシ油系ポリオール(伊藤製油株式会社製「URIC H−31」;水酸基価:160、酸価:1.8)30質量部、及び上記の実施例1〜10及び比較例1〜7で製造又は用意した各エステル化合物100質量部を半月板付攪拌機にて10分間混合した。得られた溶液の外観を目視で観察し、成分の分離の有無、透明性で相溶性を確認した。なお、相溶性は、下記の基準で評価した。
○:分離がなく透明である。
×:分離があるか、又は白濁している。
[ポリオールに対する粘度低下能の評価]
上記のポリオールとの相溶性の評価で調製した溶液を容量100cmのガラス瓶に90g入れた後、液温が25℃にセットされた回転粘度計(東機産業株式会社製「TRV101F」;ローターNo.3、回転数60rpm)にて粘度を測定した。また、粘度低下性は、測定した粘度が、各エステル化合物を加える前のポリオールのみの粘度1390mPa・sからの粘度低下量を算出して、下記の基準で評価した。なお、ポリオールのみの粘度も同じ条件で測定したものである。
○:粘度低下量が500mPa・s以上である。
×:粘度低下量が500mPa・s未満である。
[ウレタン樹脂組成物の調製]
上記のポリオールとの相溶性の評価で調製した溶液を300質量部と、無機充填材として球状アルミナ(電気化学工業株式会社製「DAM10」;体積平均粒子径8.6μm)を500質量部とをディスパー(プライミクス株式会社製の機種名「TKホモディスパー2.5型」)にて分散させて均一な分散液にしてウレタン樹脂組成物を得た。
[ウレタン樹脂組成物への硬化剤の配合]
上記で調製したウレタン樹脂組成物800質量部に、硬化剤(日本ポリウレタン株式会社製「ミリオネートMR−100」;ポリイソシアネート成分:ポリメリックMDI)を50質量部加えて、半月板付攪拌機にて10分間混合させた後、0.27mPaに減圧して3分間脱泡して、硬化剤を配合したウレタン樹脂組成物を得た。
[ウレタン樹脂組成物の硬化物(ウレタン樹脂)のショア硬度の測定]
上記で得られた硬化剤を配合したウレタン樹脂組成物20gを直径60mmの金属シャーレの中に注入し、ギア老化試験機(株式会社東洋精機製作所製「ACRギアー・オーブン」)に入れ、90℃で4時間加熱して硬化を行った後、得られた硬化物を室温まで自然冷却させて、ショア硬度の測定用のサンプルを得た。次いで、得られたサンプルについて、JIS K 6253にしたがい、アスカーA型硬度計(高分子計器株式会社製)を用いてショア硬度を測定した。
上記の測定及び評価の結果を表3及び4に示す。
Figure 2013014724
Figure 2013014724
表1に示した実施例1〜8の評価結果から、本発明のウレタン樹脂用可塑剤であるエステル化合物(1)〜(8)は、すべて加熱残量率が15%未満であり、加熱による揮発が非常に少ないことが分かった。このことから、電気・電子部品の温度上昇により可塑剤が揮発して、ウレタン樹脂の柔軟性が失われたり、電気・電子機器内部を汚染したりすることがなく、長期に渡ってウレタン樹脂の物性を維持できることが分かった。
また、表3に示した実施例9〜16の評価結果から、本発明のウレタン樹脂用可塑剤であるエステル化合物(1)〜(8)は、ウレタン樹脂の原料であるポリオールの粘度を十分に低下させることができることが分かった。さらに、本発明のウレタン樹脂用可塑剤であるエステル化合物(1)〜(8)を用いたウレタン樹脂組成物の硬化物の硬度は、従来用いられている可塑剤(比較例13及び14)と同程度であり、硬化後の物性に問題がないことが確認でした。
一方、表2に示した比較例1〜9の評価結果から、本発明のウレタン樹脂用可塑剤の要件を満たしていない可塑剤は、加熱残量率が22.8%以上であり、加熱による揮発が多いことが分かった。このことから、電気・電子部品の温度上昇により可塑剤が揮発して、ウレタン樹脂の柔軟性が失われたり、電気・電子機器内部を汚染したりすることが懸念され、長期に渡ってウレタン樹脂の物性を維持できない問題があることが分かった。

Claims (7)

  1. 芳香族多価カルボン酸(A)又はその酸無水物と、脂肪族分岐モノアルコール(B)とをエステル化反応させて得られたエステル化合物であって、前記芳香族多価カルボン酸(A)の価数と前記脂肪族分岐モノアルコール(B)の炭素原子数とを乗じた数が、33〜100の範囲であるエステル化合物を必須成分として含有することを特徴とするウレタン樹脂用可塑剤。
  2. 前記脂肪族分岐モノアルコール(B)が、炭素原子数9〜24の範囲のものである請求項1記載のウレタン樹脂用可塑剤。
  3. 前記脂肪族分岐モノアルコール(B)が、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール及びオクチルデシルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1つのアルコールである請求項1記載のウレタン樹脂用可塑剤。
  4. 前記芳香族多価カルボン酸(A)が、3価以上のものである請求項1〜3のいずれか1項記載のウレタン樹脂用可塑剤。
  5. 前記芳香族多価カルボン酸(A)が、トリメリット酸又はピロメリット酸である請求項1〜4のいずれか1項記載のウレタン樹脂用可塑剤。
  6. ポリオール、ポリイソシアネート及び請求項1〜5のいずれか1項記載のウレタン樹脂用可塑剤を含有するウレタン樹脂組成物であって、該ウレタン樹脂組成物中の前記ウレタン樹脂用可塑剤の含有量が1〜30質量%であることを特徴とするウレタン樹脂組成物。
  7. 請求項6記載のウレタン樹脂組成物に硬化剤を加え、硬化させたことを特徴とする硬化物。
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