JP2013013887A - 気体分離膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い二酸化炭素透過係数と高い二酸化炭素/窒素選択性を同時に満足する気体分離膜を提供すること。
【解決手段】少なくとも架橋ポリマーを構成成分に有する気体分離膜であって、該架橋ポリマーがシロキサンを繰り返し単位とする部位(A)およびエチレンオキシドを繰り返し単位とする部位(B)を有することを特徴とする気体分離膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、気体の高透過係数と高分離性とを兼ね備えた気体分離膜に関する。さらに詳しくは、本発明の気体分離膜は特に二酸化炭素の透過係数に優れている。したがって、本発明の気体分離膜は、二酸化炭素と窒素および/または空気からなる二酸化炭素含有混合気体から二酸化炭素を分離する気体分離膜として、あるいは、ランドフィルガス(地中埋蔵中の廃棄物から発生する有機ガス)に含まれる二酸化炭素を分離する気体分離膜として用いることができる。
これまで気体分離膜としてはシリコーン(オルガノポリシロキサン)、ポリイミド、エチレンオキシドユニットからなるポリマー(PEO)など種々の高分子を素材としたものが知られている。
シリコーンは、二酸化炭素の気体透過係数が1,000Barrer(1Barrer=1*10-10[cm3(STP)cm/cm2/s/cmHg])以上という優れた透過係数を有するものの、酸素、窒素の透過係数比として得られる選択性は10以下に留まる(非特許文献1)。
よってシリコーンは、その高い透過係数を利用して気体分離複合膜形成時に気体分離層で発生した欠陥を埋めるための、穴埋め剤として気体分離膜に応用されたりしている(特許文献1)。
一方、ポリイミドは、一般に二酸化炭素/窒素選択性で20〜40と高い値を示すことが知られている(特許文献2、3)。これは、ポリイミドが剛直な分子構造を有しているため、気体が分子の大きさに依存した拡散挙動を発現させながら膜中を透過するためである。しかし、これらの二酸化炭素透過係数は、0.1〜10Barrerの場合が殆どであり(非特許文献1、2)、これはシリコーンの100分の1以下の透過係数に留まっている。即ち、シリコーンと同等の透過係数を得るには、シリコーンの厚みに対して100分の1以下に塗布しなければ得ることは出来ない。
エチレンオキシドユニットは、二酸化炭素と高い親和性があるため、PEOは二酸化炭素/窒素選択性で50以上を示すことが知られている(非特許文献3,4)。しかし、これらのポリマーの二酸化炭素透過係数は、100Barrer程度に留まっている。特開平7−060079号(特許文献4)には、好ましくは2〜30の繰返し単位を有するPEOを有する親水性の表面を有するプラズマ処理されたフィルムが記載されている。PEOを有する高分子材料の気体透過係数について示されているものの、二酸化炭素透過係数と二酸化炭素/窒素選択性は十分とは言えない。
特開平11−9974号公報 特開昭60−150806号公報 特開平8−332362号公報 特開平7−060079号公報
Journal of Membrane Science 1994年、94号、1−65頁 Journal of Membrane Science 1993年、83号、1−80頁 Chemical Engineering Science 2009年、64号、4707−4718頁 Journal of Membrane Science 2009年、327号、195−207頁
本発明の目的は、高い二酸化炭素透過係数と高い二酸化炭素/窒素選択性を同時に満足する気体分離膜を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、オルガノポリシロキサンとポリエチレンオキシドがシロキサン結合を介して結合した下記一般式(1)で示される構造を有する架橋ポリマーで構成した気体分離膜が前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
Figure 2013013887
(式中、R1およびR2は各々独立に炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、Y1は2価の有機基であり、mは1〜100の整数であり、nは5〜2000の整数である。)
即ち、本発明は下記の発明を提供する。
(1)少なくとも架橋ポリマーを構成成分に有する気体分離膜であって、該架橋ポリマーがシロキサンを繰り返し単位とする部位(A)およびエチレンオキシドを繰り返し単位とする部位(B)を有することを特徴とする気体分離膜。
(2)架橋ポリマーが下記式(1)で表される構造を有することを特徴とする上記(1)に記載の気体分離膜。
Figure 2013013887
(式中、R1およびR2は各々独立に炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、Y1は2価の有機基であり、mは1〜100の整数であり、nは5〜2000の整数である。)
(3)架橋ポリマーが下記式(2)で表される構造および/または下記式(3)で表される構造を有することを特徴とする上記(2)に記載の気体分離膜。
Figure 2013013887
(式中、R1およびR2は各々独立に炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、Y1およびY2は2価の有機基であり、mは1〜100の整数であり、nは5〜2000の整数である。)
Figure 2013013887
(式中、R1およびR2は各々独立に炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、Y1は2価の有機基であり、Y3は1価の有機残基であり、mは1〜100の整数であり、nは5〜2000の整数である。)
(4)Y1およびY2がアミノ基、ウレア基、ウレタン基およびチオエーテル基から選ばれた少なくとも1種の基を有することを特徴とする上記(2)または(3)に記載の気体分離膜。
(5)Y1およびY2が下記一般式(4)で表されることを特徴とする上記(2)〜(4)のいずれか一項に記載の気体分離膜。
Figure 2013013887
(式中、Z1はHまたは1価の有機基であり、プロピル側の結合手がSiと結合し、ヒドロキシプロピル側の結合手が酸素と結合する。)
(6)部位(A)と部位(B)の割合が、部位(A)100質量部を基準として部位(B)が5〜250質量部であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の気体分離膜。
(7)架橋ポリマーが、分子鎖両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(C)とアルコキシシリル基で少なくとも片末端が末端封止されたポリエチレンオキシド(D)を重縮合反応して得られることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の気体分離膜。
(8)前記(C)成分が下記一般式(5)で表される化合物であり、前記(D)成分が下記一般式(6)で表される化合物および/または下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする上記(7)に記載の気体分離膜。
Figure 2013013887
(式中、R1およびR2は、炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、nは5〜2000の整数である。)
Figure 2013013887
(式中、R3はHまたは有機基であり、R4およびR5は水酸基またはアルコキシ基または有機基であり、Y1およびY2は2価の有機基であり、mは1〜100の整数である。)
Figure 2013013887
(式中、R3はHまたは有機基であり、R4およびR5は水酸基またはアルコキシ基または有機基であり、Y1は2価の有機基であり、Y3は1価の有機残基であり、mは1〜100の整数である。)
(9)Y1およびY2がアミノ基、ウレア基、ウレタン基およびチオエーテル基から選ばれた少なくとも1種の基を有することを特徴とする上記(8)に記載の気体分離膜。
(10)Y1およびY2が下記一般式(8)で表されることを特徴とする上記(8)または(9)に記載の気体分離膜。
Figure 2013013887
(式中、Z1はHまたは1価の有機基であり、プロピル側の結合手がSiと結合し、ヒドロキシプロピル側の結合手が酸素と結合する。)
本発明の気体分離膜は、高い二酸化炭素透過係数を有し、かつ、二酸化炭素/窒素選択性に優れるものである。
気体透過測定装置を説明した図である。
以下、本発明の気体分離膜を詳細に説明する。
本発明の気体分離膜は、少なくとも架橋ポリマーを構成成分に有する気体分離膜であって、上記架橋ポリマーがシロキサンを繰り返し単位とする部位(A)とエチレンオキシドを繰り返し単位とする部位(B)を有することを特徴とする。
好ましくは、本発明の気体分離膜は下記一般式(1)で表される、オルガノポリシロキサンとポリエチレンオキシドがシロキサン結合を介して結合した構造を有する架橋ポリマーから構成される。二酸化炭素透過係数が高いオルガノポリシロキサンと二酸化炭素/窒素選択性に優れるポリエチレンオキシドを結合させることにより、高い透過性能の膜が得られる。
Figure 2013013887
(式中、R1およびR2は炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、Y1は2価の有機基であり、mは1〜100の整数であり、nは5〜2000の整数である。)
さらに好ましくは、前記シロキサンを繰り返し単位とする部位(A)とエチレンオキシドを繰り返し単位とする部位(B)を有する架橋ポリマーは下記式(2)で表される構造および/または下記式(3)で表される構造を有する。
Figure 2013013887
(式中、R1およびR2は各々独立に炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、Y1およびY2は2価の有機基であり、mは1〜100の整数であり、nは5〜2000の整数である。)
Figure 2013013887
(式中、R1およびR2は各々独立に炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、Y1は2価の有機基であり、Y3は1価の有機残基であり、mは1〜100の整数であり、nは5〜2000の整数である。)
二酸化炭素の選択性の観点から、上記式(3)で表される構造を主成分として有することが好ましい。上記式(3)で表される構造はエチレンオキシド鎖の片末端が残基であるため、膜にした際エチレンオキシド鎖の自由度が高いと推測される。自由度の高いエチレンオキシド鎖は二酸化炭素と容易に相互作用し、気体分離膜にした際の二酸化炭素の選択性が良好になるため好ましい。
本発明の気体分離膜をより詳細に説明するために、気体分離膜を構成する上記架橋ポリマーの製造方法を先ず説明する。しかし、この製造方法に限定されるものではなく、上記構造の架橋ポリマーが得られれば、どのような製造方法でもよい。
本発明における架橋ポリマーは、分子鎖両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(C)とアルコキシシリル基で少なくとも片末端が末端封止されたポリエチレンオキシド(D)を重縮合反応して得られる。
分子鎖両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(C)は下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2013013887
(式中、R1およびR2は、炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、nは5〜2000の整数である。)
上記式(5)で表される化合物中、R1およびR2は、炭素数1〜10の非置換または置換の1価の炭化水素基である。R1およびR2の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基が挙げられる。気体透過性の観点から、R1およびR2がメチル基であることが好ましい。R1とR2は同一の基でも異種の基であっても良い。
上記式(5)で表される化合物中、nは5〜2000の整数を表す。nが5〜2000の整数の場合、気体分離膜とした際の二酸化炭素の透過性や選択性に顕著な効果を奏するので好ましい。
(C)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、ジメチルシロキサンとメチルフェニルシロキサンの共重合体、ジメチルシロキサンとメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサンの共重合体が挙げられる。本発明ではこれらを単独で、あるいは2種類もしくはそれ以上の混合物として使用してもよい。
アルコキシシリル基で少なくとも片末端が末端封止されたポリエチレンオキシド(D)は下記式(6)および/または(7)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2013013887
(式中、R3はHまたは有機基であり、R4およびR5は水酸基またはアルコキシ基または有機基であり、Y1およびY2は2価の有機基であり、mは1〜100の整数である。)
Figure 2013013887
(式中、R3はHまたは有機基であり、R4およびR5は水酸基またはアルコキシ基または有機基であり、Y1は2価の有機基であり、Y3は1価の有機残基であり、mは1〜100の整数である。)
特に好ましくは、気体分離膜とした際の二酸化炭素の選択性の観点から、(D)成分は上記式(7)で表される化合物を主成分として有することである。上記式(7)で表される化合物はエチレンオキシド鎖の片末端が残基であるため、膜にした際エチレンオキシド鎖の自由度が高いと推測される。自由度の高いエチレンオキシド鎖は二酸化炭素と容易に相互作用し、気体分離膜にした際の二酸化炭素の選択性が良好になるため好ましい。
上記式(6)、(7)で表される化合物中、R3の具体例としては、Hや、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、エトキシメチル基などのアルキル基が挙げられる。重縮合反応の反応性の観点から、H、メチル基、エチル基が好ましい。
上記式(6)、(7)で表される化合物中、R4およびR5の具体例としては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基が挙げられる。重縮合反応の際の反応性の観点から水酸基、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。R4とR5は同一の基でも異種の基であっても良い。
上記式(6)、(7)で表される化合物中、エチレンオキシド繰り返し単位の長さを表すmは5〜100の整数である。mは、5以上が気体分離膜とした際に二酸化炭素の透過選択性が高くなるので好ましい。一方、mは100以下が膜の強度や耐熱性が高く維持されるので好ましい。即ち、mが5〜100の整数であると二酸化炭素の透過選択性と膜強度および耐熱性との双方を満足できる。
上記式(6)、(7)で表される化合物は、両末端に反応性基を持つポリエチレングリコール(E)と反応性基を持つアルコキシシラン(F)を反応させて得られる。
上記式(6)、(7)で表される化合物中、Y1およびY2はアミノ基、ウレア基、ウレタン基およびチオエーテル基から選ばれた少なくとも1種の基を有することが好ましい。これらY1およびY2は(E)成分と(F)成分の反応からくる連結基である。
上記式(6)、(7)で表される化合物中、Y1およびY2がアミノ基を有する化合物を合成する反応例としては例えば、(E)成分としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、(F)成分として3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、トリメトキシ(3−(フェニルアミノ)プロピル)シランから選ばれる化合物、の組み合わせが挙げられる。
上記式(6)、(7)で表される化合物中、Y1およびY2がウレア基を有する化合物を合成する反応例としては例えば、(E)成分としてポリ(エチレングリコール)ビス(3−アミノプロピル)末端、(F)成分として3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアナート、3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアナートから選ばれる化合物、の組み合わせが挙げられる。
上記式(6)、(7)で表される化合物中、Y1およびY2がウレタン基を有する化合物を合成する反応例としては例えば、(E)成分としてポリ(エチレングリコール)、(F)成分として3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアナート、3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアナートから選ばれる化合物の組み合わせ、(E)成分としてポリ(エチレングリコール)ビス(クロロホルメート)、(F)成分として3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、トリメトキシ(3−(フェニルアミノ)プロピル)シランから選ばれる化合物の組み合が挙げられる。
上記式(6)、(7)で表される化合物中、Y1およびY2がチオエーテル基を有する化合物を合成する反応例としては例えば、(E)成分としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートから選ばれる化合物、(F)成分として3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランから選ばれる化合物の組み合わせ、(E)成分としてポリエチレングリコールジチオール、(F)成分としてビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランから選ばれる化合物の組み合わせが挙げられる。
上記式(6)、(7)で表される化合物は、(E)成分と(F)成分の配合比によって作り分けることができる。(E)成分の反応性基の反応点のモル数に対し(F)成分の反応性基の反応点のモル数が2倍以上存在すると上記式(6)で表される両末端にアルコキシシランを有する化合物が主成分として得られる。(F)成分の反応性基の反応点のモル数に対し(E)成分の反応性基の反応点のモル数が2倍以上存在すると上記式(7)で表される片末端にアルコキシシランを有する化合物が主成分として得られる。例えば、(E)成分として反応点が2つであるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを1モル、(F)成分として反応点が2つであるアミノ基を有する3−アミノプロピルトリメトキシシランを2モル用いた場合、上記式(6)で表される化合物が主成分として得られる。一方、(E)成分として反応点が2つであるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを2モル、(F)成分として反応点が2つであるアミノ基を有する3−アミノプロピルトリメトキシシランを1モル用いた場合、上記式(7)で表される化合物が主成分として得られる。
上記式(7)で表される化合物中、Y3は1価の有機残基である。これは、(E)成分が(F)成分と反応した際の有機残基である。気体分離膜にした際、Y3は1価の有機残基であるためエチレンオキシド鎖が片末端のみポリマー鎖に固定されており、エチレンオキシド鎖は高い自由度を持つと推測される。自由度の高いエチレンオキシド鎖は二酸化炭素と容易に相互作用し、膜にした際の二酸化炭素の選択性が良好になるため好ましい。
上記式(6)、(7)で表される化合物中、Y1およびY2は下記式(8)で表される構造が好ましい。Y1およびY2が下記式(8)で表される化合物は、Y1およびY2に二酸化炭素と親和性の高いアミノ基と水酸基を有しており、気体分離膜にした際の二酸化炭素の選択性が良好なため好ましい。
Figure 2013013887
(式中、Z1はHまたは1価の有機基であり、プロピル側の結合手がSiと結合し、ヒドロキシプロピル側の結合手が酸素と結合する。)
(E)成分として反応性基がエポキシ基の化合物、(F)成分として反応性基が3−アミノプロピル基の化合物を用いた場合、Y1およびY2が上記一般式(8)で表される化合物を合成できる。
上記式(8)中、Z1は1価の有機基である。気体分離膜にした際の二酸化炭素の選択性の観点から、Z1は二酸化炭素と親和性の高いエチレンオキシド鎖を有することが好ましい。例えば、(E)成分として反応点が2つであるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを2モル、(F)成分として反応点が2つであるアミノ基を有する3−アミノプロピルトリメトキシシランを1モル用いた場合、Z1にエチレンオキシド鎖を有する化合物が得られる。
上記式(6)、(7)で表される化合物を合成する際、(E)成分と(F)成分の配合比率によっては、上記式(6)、(7)で表される化合物と、未反応の(E)成分および/または未反応の(F)成分、の混合物として得られる場合がある。その場合、上記式(6)、(7)で示される化合物を精製せず、混合物を用いて気体分離膜を作成してもよい。例えば、(E)成分を(F)成分に比べ過剰に配合して上記化合物を合成した場合、上記式(6)、(7)で表される化合物と未反応の(E)成分との混合物を用いて気体分離膜を作成できる。この場合、膜中に未反応の(E)成分のエチレンオキシド鎖が存在する。未反応の(E)成分は液体として存在しており、未反応の(E)成分のエチレンオキシド鎖の自由度は高く二酸化炭素と容易に相互作用するため、二酸化炭素の選択性が向上する。
上記(D)成分として最も好ましくは、(E)成分として両末端にグリシジル基を有するポリエチレンオキシドと、(F)成分として3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび/または3−アミノプロピルトリエトキシシランの組み合わせで合成した化合物である。両者の反応比率は、グリシジル基1モルに対しアミノ基を1モル反応させることが目安であるが、グリシジル基1モルに対し、アミノ基を0.8〜1.2モルの範囲で反応させることができる。反応は反応温度0〜150℃、好ましくは20〜100℃の範囲で、0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間、さらに好ましくは2〜10時間の範囲で行われる。
上記反応は無溶媒で行える他、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン系極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒から選ばれる1種または2種以上を混合して使用することができる。
上記反応には触媒を用いても良い。触媒の具体例としては、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、トリエチレンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、N−メチルモルホリン、テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどの三級アミンおよびそれらの塩;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィンなどの有機ホスフィン化合物が挙げられる。
以上述べた両末端にグリシジル基を有するポリエチレンオキシドと、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび/または3−アミノプロピルトリエトキシシランの付加反応は核磁気共鳴分析法(1H−NMR法)やフーリエ変換赤外分光分析法(FT−IR法)などの分析手法により追跡することができる。
以上の架橋ポリマーの製造方法を踏まえて、本発明の気体分離膜について説明する。
上記式(1)、(2)、(3)で表される化合物中、R1およびR2は、炭素数1〜10の非置換または置換の1価の炭化水素基である。R1、R2の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基が挙げられる。気体透過性の観点から、R1およびR2がメチル基であることが好ましい。R1とR2は同一の基でも異種の基であっても良い。
上記式(1)、(2)、(3)で表される化合物中、nは5〜2000の整数を表す。nが5〜2000の整数の場合、気体分離膜とした際の二酸化炭素の透過性や選択性に顕著な効果を奏するので好ましい。
上記式(1)、(2)、(3)で表される化合物中、エチレンオキシド繰り返し単位の長さを表すmは、5〜100の整数である。mは5以上の方が気体分離膜とした際に二酸化炭素の透過選択性が高くなるので好ましい。一方、mは100以下の方が気体分離膜の強度や耐熱性が高く維持されるので好ましい。即ち、mが5〜100であると二酸化炭素の透過選択性と膜強度および耐熱性との双方を満足できる。
上記式(1)、(2)、(3)で表される化合物中、Y1およびY2はアミノ基、ウレア基、ウレタン基、チオエーテル基から選ばれた連結基を有することが好ましい。これらの連結基は(D)成分を合成するために用いた(E)成分と(F)成分を連結するための連結基である。つまり、Y1およびY2は、(E)成分の反応性基と(F)成分の反応性基の組み合わせによって形成される。
上記アミノ基を有するY1およびY2の具体的な例としては、下記に表される構造を有する連結基が挙げられる。
Figure 2013013887
(上記式中、R6およびR7は各々独立にHまたは1価の有機基であり、プロピル側の結合手がSiと結合し、ヒドロキシプロピル側の結合手が酸素と結合する。)
上記ウレア基を有するY1およびY2の具体的な例としては、下記に表される構造を有する連結基が挙げられる。
Figure 2013013887
(R6およびR7は各々独立にHまたは1価の有機基である)
上記ウレタン基を有するY1およびY2の具体的な例としては、下記に表される構造を有する連結基が挙げられる。
Figure 2013013887
(上記式中、R6およびR7は各々独立にHまたは1価の有機基であり、プロピル側の結合手がSiと結合し、カルボニル側の結合手が酸素と結合する。)
上記チオエーテル基を有するY1およびY2の具体的な例としては、下記に表される構造を有する連結基が挙げられる。
Figure 2013013887
(上記式中、プロピル側の結合手がSiと結合し、ヒドロキシプロピル側の結合手が酸素と結合する。)
Figure 2013013887
(上記式中プロピル側の結合手がSiと結合し、エチル側の結合手が酸素と結合する。)
Figure 2013013887
上記式(1)、(2)、(3)で表される化合物中、Y1およびY2は下記一般式(4)で表される構造が好ましい。
Figure 2013013887
(式中、Z1はHまたは1価の有機基であり、プロピル側の結合手がSiと結合し、ヒドロキシプロピル側の結合手が酸素と結合する)
上記一般式(4)で表される構造は架橋ポリマーを得る際に用いる(D)成分を合成する際の連結基である。つまり、(E)成分と(F)成分を連結するための連結基である。例えば、(E)成分として反応性基がエポキシ基の化合物、(F)成分として反応性基が3−アミノプロピル基の化合物を用いた場合、Y1およびY2が上記一般式(4)で表される化合物を合成できる。Y1およびY2が上記一般式(4)で表されると、Y1およびY2に二酸化炭素と親和性の高いアミノ基と水酸基を有し、気体分離膜にした際の二酸化炭素の選択性が良好になるため好ましい。
上記式(4)中、Z1は1価の有機基である。Z1は,気体分離膜にした際の二酸化炭素の選択性の観点から、Z1は二酸化炭素と親和性の高いエチレンオキシド鎖を有することが好ましい。例えば、上記Z1基は(D)成分を合成する際に、(E)成分として反応点が2つであるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを2モル、(F)成分として反応点が2つであるアミノ基を有する3−アミノプロピルトリメトキシシランを1モル用いた場合、Z1にエチレンオキシド鎖を有する化合物が得られる。
上記式(3)中、Y3は1価の有機残基である。具体的には、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、チオール基、カルボニル基を有する有機残基が挙げられる。上記有機残基は(D)成分を合成する際に、(E)成分が(F)成分と反応した際の有機残基である。気体分離膜にした際、Y3は1価の有機残基であるため、エチレンオキシド鎖は片末端のみポリマー鎖に固定されている。よって、エチレンオキシド鎖は高い自由度を持つと推測される。自由度の高いエチレンオキシド鎖は二酸化炭素と容易に相互作用し、膜にした際の二酸化炭素の選択性が良好になるため好ましい。
本発明の気体分離膜においては、部位(A)と部位(B)の割合が、部位(A)100質量部を基準として部位(B)が5〜250質量部、より好ましくは10〜200質量部、更に好ましくは10〜150質量部となる範囲である。部位(A)に対して部位(B)が多過ぎると、得られる膜は相分離を起こし、気体分離膜として適さない。
本発明の気体分離膜は、前記(C)成分と前記(D)成分を重縮合して製造できる。好ましくは、気体分離膜にした際の二酸化炭素の透過性と選択性の観点から、(C)成分が上記一般式(5)で表される化合物、(D)成分が上記一般式(6)で表される化合物および/または下記一般式(7)で表される化合物である。
(C)成分と(D)成分の反応方法は特に制限はないが、(C)成分と(D)成分を混合した後、空気中の湿度で加水分解縮合させる方法、(D)成分と水を予め反応させ、両末端のアルコキシシリル基をシラノール基に加水分解した後に(C)成分と縮合させる方法などが挙げられる。
(D)成分を予め水と反応させる場合、水の使用量は(D)成分中のアルコキシシリル基1モルに対し3モルとすることが好ましい。アルコキシ基の加水分解反応を促進する目的で、塩酸、硫酸、硝酸、ギ酸などから選ばれる酸触媒や、アンモニアやアミンなどの塩基触媒を併用することができる。触媒の使用量は、アルコキシシリル基1モルに対し、0.001〜0.5モル、より好ましくは0.01〜0.2モル、更に好ましくは0.05〜0.2モルの範囲である。反応温度および反応時間は、触媒の種類や使用量にもよるが、反応温度は−20〜90℃、より好ましくは−5〜50℃、更に好ましくは0〜20℃の範囲であり、反応時間は0.1〜30時間、より好ましくは0.2〜10時間、更に好ましくは0.2〜5時間の範囲である。本反応は無溶媒で行うことができる他、(D)成分の調製で使用した溶媒中で連続して行うことも可能である。
(C)成分と(D)成分は、無溶媒で反応させる他、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン系極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒から選ばれる1種または2種以上を混合して使用することができる。好ましくは疎水性の(C)成分と親水性の(D)成分を容易に溶解するテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルムである。
(C)成分と(D)成分の反応は、20〜200℃、好ましくは50〜150℃、更に好ましくは50〜100℃の範囲で行われ、縮合反応によって生じる水、アルコール、残存する溶媒を常圧下ないし真空下で除去しながら1〜100時間、好ましくは2〜50時間の範囲で行われる。
(C)成分と(D)成分の縮合反応を促進する目的で、触媒を使用しても良い。このような触媒としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレート)、ジブチル錫ビス(2,4−ペンタンジオネート)、ジブチルブトキシクロロ錫、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ビス(ブチルマレート)、ジメチル錫ジネオデカノエート、ビス(2−エチルヘキサノエート)錫、ビスネオデカノエート錫、ビス(アセトキシジブチル錫)オキサイド、ビス(ラウロキシジブチル錫)オキサイドなどの有機錫化合物;ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジオクタノキシチタンジオクタネート、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)などの有機チタン化合物等を挙げることができる。触媒は、1種または2種以上を併用することができる。
(C)成分と(D)成分を反応させて本発明の気体分離膜とするためには、両成分を重縮合すると同時にキャスティングやコーティングなどの方法により薄膜状に賦形することが望ましい。薄膜は自立膜としても良いが、セルロース、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドなどの不織布;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの微多孔膜;該不織布と該微多孔膜の複合積層体などを支持体として用い、その上に(C)成分および(D)成分を積層、架橋することにより、耐久性と透過性に優れた気体分離膜とすることができる。支持体の形状は平膜であっても中空糸であっても良い。気体分離膜の膜厚としては、0.02〜500μm、好ましくは0.05〜100μm、より好ましくは0.05〜10μm、更に好ましくは0.05〜1μmの範囲である。
(C)成分と(D)成分の架橋反応が進行すると溶媒に不溶化することから、架橋反応の進行を容易に確認することができる。また示差走査熱量計(DSC)や動的粘弾性によるガラス転移温度(Tg)の測定から架橋反応の進行を確認することができる。
本発明で用いる架橋ポリマーには、(C)成分、(D)成分以外に架橋剤を併用することができる。架橋剤は架橋密度を高め、膜強度や耐熱性、耐久性を高めたりする場合に使用され、加水分解性官能基を複数個有するシラン化合物およびその部分加水分解縮合物が挙げられる。そのようなシラン化合物の具体例としては、メチルトリス(ジエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(ジエチルケトオキシム)シランなどのオキシムシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのアルコキシシラン;メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシランなどのアセトキシシラン;メチルトリス(ジメチルアミノ)シラン、メチルトリス(ジエチルアミノ)シラン、メチルトリス(N−メチルアセトアミド)シラン、ビニルトリス(N−エチルアセトアミド)シランなどのアミノ系シラン;メチルトリス(ジメチルアミノキシ)シラン、メチルトリス(ジエチルアミノキシ)シランなどアミノキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。架橋剤を併用する場合、その添加量は(C)成分および(D)成分の合計重量に対して0.1〜20重量%程度が好ましい。
また、本発明の気体分離膜には架橋ポリマー以外に充填剤を併用することができる。充填材は膜強度を高めたり、気体の透過性能を向上させたりする場合に使用され、ヒュームドシリカやコロイダルシリカなどのナノサイズのシリカ;酸化チタンや酸化ジルコニウムなどのナノサイズの金属酸化物が好適に用いられる。これらの充填剤を併用する場合、その添加量は架橋ポリマー重量に対して0.1〜50重量%程度が好ましい。
さらに、これらの充填材以外に、両末端をトリメチルシリル基で封止されたポリジメチルシロキサンや、ジメチルシロキサンとフェニルメチルシロキサンの共重合体を添加することもできる。これらの添加剤は気体の透過性能を向上させるために用いることができる。これらの添加剤を併用する場合、その添加量は架橋ポリマー重量に対して0.1〜20重量%程度が好ましい。
上記の触媒、架橋剤、充填材などの添加剤、および(C)成分である分子鎖両末端にシラノール基を有するポリオルガノポリシロキサンが予め混合されている市販の室温硬化型(RTV)シリコーンゴム組成物を(C)成分として利用してもよい。このようなシリコーンゴム組成物としては、信越化学工業(株)製のKE44、KE45、KE441、KE445;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSE382;東レ・ダウコーニング(株)製のSH780、SE5007などを挙げることができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
<アルコキシシリル基で末端封止されたポリエチレンオキシドの合成>
先ず、内容量500mLのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:KBM903)10.0g、エタノール(東京化成工業(株)製:特級)100mLを加えた。これをスターラーで攪拌し、溶解後にポリエチレンオキシドのジグリシジルエーテル(PEO鎖繰り返し単位数=9、Mw=526、Aldrich社製)47.5gを加えた。液温を3℃/分の速度で、90℃まで上昇させた。90℃で72時間加熱還流を行い、冷却後エバポレーターおよび真空ポンプを用いることによりエタノールを分離除去した。得られた生成物は、黄色味を帯びた粘調な透明液体であった。生成物の確認は1H−NMR測定で行い、アルコキシシリル基で末端封止されたポリエチレンオキシド(以下、PEO2と略記する)が合成できていることを確認した。
<気体分離膜の作製>
(A)成分として、両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンを主成分とする市販のオキシム型室温硬化シリコーンゴムTSE382(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)を用いた。TSE382を1.8g計量し、50mlのバイヤル瓶に加えた。先に合成したPEO2を0.2g添加し、THF(和光純薬工業(株)製)で10wt%に希釈した。ウェーブローターで5時間攪拌し、均一な溶液を得た。得られた液をPFAシャーレに展開し、真空乾燥機の中に静置した。温度を50℃に設定し、真空度を5時間掛けて少しずつ向上させ0.13KPaの状態で15時間保持することにより膜厚350μmの均一な緻密膜を得た。
両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンとPEO2の反応は、DSCを用い、PEO2のTgの変化より確認した。即ち、PEO2は−65℃にTgを有していたが、製膜後、ポリジメチルシロキサンと反応したことで−65℃のPEO2のTgは消失し、得られた気体分離膜のTgは−42℃の一点のみであった。これにより、両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンとPEO2が架橋し、均一な構造を形成していると判断された。
<気体透過測定>
気体透過測定には、図1に示すツクバリカセイキ(株)製のK−415Nを利用した。気体の透過係数は、高真空法により得たものである。測定方法としては、透過セルに直径5cmに切り取った膜を装着し、系全体を真空引きする。このとき、気体供給弁(1)のみが閉になっており、これ以外の弁は開になっている。系全体の真空度が、1×10-5Torr以下になるのを確認する。次に弁(2)を閉、弁(1)を開としてボンベよりガス溜めにガスを導入する。ガス導入後、弁(1)は閉とする。次に透過セル前後の弁(3)、(4)、装置と真空ポンプの間にある縁切り弁(5)を閉にする。そして、弁(2)および弁(3)を順次開とすることで測定を開始する。測定中、気体供給側の圧力は760Torrに調整し、透過側の圧力は、1×10-5Torr以下の条件で行った。測定に用いた気体は、二酸化炭素、酸素、窒素であり、測定温度は25℃である。
ガスが膜を透過したことによる透過側の圧力上昇を圧力計2で測定追跡することにより、透過係数Pを求めた。また透過曲線が定常状態に達するまでの遅れ時間を求め、Time−Lag法により拡散係数Dを求めた。さらに透過係数Pと拡散係数Dより溶解度係数Sを求めた。各パラメータの関係は以下に示す式の通りである。
P:透過係数[cm3(STP)cm/cm2/s/cmHg]
D:拡散係数[cm2/sec]
S:溶解度係数[cm3(STP)/cm3/cmHg]
L:膜厚[cm]
θ:遅れ時間[sec]
D=L2/6θ
S=P/D
得られた膜の気体透過係数、溶解度係数、拡散係数、気体選択性、拡散係数選択性、溶解度係数選択性を表1および表2に示す。
[実施例2〜7]
実施例1において、TSE382、PEO2の重量比を変更した以外は、実施例1と同様に気体分離膜を作製し、気体透過試験を行った。気体透過試験の結果を表1および表2に示す。実施例7で作製した膜はこの製造条件では相分離しており、透過測定が困難であった。
[比較例1]
実施例1において、PEO2を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で気体分離膜を作製して、透過試験を行った。透過試験の結果を表1および表2に示す。
Figure 2013013887
Figure 2013013887
表1、表2から明らかなように、両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンとPEO2とを反応させて得られる本発明の気体分離膜は、ポリジメチルシロキサン単独の場合と比較して気体選択性に優れていることが判る。気体選択性は、PEO2の添加量の増大に伴って向上し、実施例6では二酸化炭素/窒素選択性は、25以上を示した。これは、ポリジメチルシロキサン本来の選択性の約2.5倍になる。この気体選択性の向上は、気体の溶解度選択性が向上した結果であることが判る。これは、PEO2に導入されているエチレンオキシド構造が二酸化炭素に対して高い親和性を有するためである。
一方、気体透過係数は、PEO2の添加に伴って、低下する傾向にある。しかし、実施例6で示されるように二酸化炭素透過係数は1000Barrerを上回っており極めて高いものとなっている。以上より、エチレンオキシド構造を導入できたことでポリジメチルシロキサン本来の優れた気体透過係数を著しく低下させる事無く、高い二酸化炭素透過係数、高い二酸化炭素/窒素選択性を付与することが出来た。
[実施例8]
ポリエチレンオキシドのジグリシジルエーテル(PEO鎖繰り返し単位数=9、MW=526、Aldrich社製)の添加量を47.5gから58.6gに、溶媒をエタノールからメタノール(和光純薬工業(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に合成した。得られた生成物は黄色味を帯びた粘調な透明液体であった。1H−NMR測定の結果、アルコキシシリル基で末端封止されたポリエチレンオキシド(以下、PEO3と略記する)であることが確認された。
製膜については、TSE382の添加量を1.8gの代わりに1.2gとし、PEO2を0.8g添加する代わりにPEO3を0.8g添加した以外は実施例1と同様に製膜した。
ガス透過測定を差圧法で測定した。ガス透過率測定においてはJIS K7126に準拠したジーティーアールテック社製差圧式ガス・水蒸気透過率測定装置GTR30XAASを利用した。透過面積15.2cm2、差圧1気圧で測定した。ガスの検出についてはガスクロマトグラフィーにより実施し、得られたチャートの面積により透過率を計算した。1分積算(透過水蒸気の蓄積管への蓄積時間)にて測定した。得られた気体透過係数を表3に示す。
[実施例9]
ポリエチレンオキシドのジグリシジルエーテル(PEO鎖繰り返し単位数=9、Mw=526、Aldrich社製)の添加量を14.68gと変えた以外は実施例8と同様に合成した。1H−NMR測定の結果、アルコキシシリル基で末端封止されたポリエチレンオキシドであることが確認された。製膜、気体透過測定については実施例8と同様に行った。得られた膜の気体透過係数を表3に示す。
[実施例10]
ポリエチレンオキシドのジグリシジルエーテル(PEO鎖繰り返し単位数=9、Mw=526、Aldrich社製)58.6gの代わりにエチレンオキシドのグリシジルエーテル(PEO鎖繰り返し単位数=4、エポキシ当量(WPE)=185、ナガセケムテックス社製EX821)19.43gを用いた以外は実施例8と同様に合成した。製膜、気体透過測定については実施例8と同様に行った。得られた膜の気体透過係数を表3に示す。
[実施例11]
ポリエチレンオキシドのジグリシジルエーテル(PEO鎖繰り返し単位数=9、MW=526、Aldrich社製)58.6gの代わりにエチレンオキシドのグリシジルエーテル(PEO繰り返し単位数=4、エポキシ当量(WPE)=185、ナガセケムテックス社製EX821)4.86gを用いた以外は実施例8と同様に合成した。製膜、気体透過測定については実施例8と同様に行った。得られた膜の気体透過係数を表3に示す。
[実施例12]
ポリエチレンオキシドのジグリシジルエーテル(PEO鎖繰り返し単位数=9、MW=526、Aldrich社製)58.6gの代わりにエチレンオキシドのグリシジルエーテル(PEO鎖繰り返し単位数=21、エポキシ当量(WPE)=551、ナガセケムテックス社製EX861)123gを用いた以外は実施例8と同様に合成した。製膜、気体透過測定については実施例8と同様に行った。得られた膜の気体透過係数を表3に示す。
[実施例13]
ポリエチレンオキシドのジグリシジルエーテル(PEO鎖繰り返し単位数=9、MW=526、Aldrich社製)58.6gの代わりにポリエチレンオキシドのグリシジルエーテル(PEO鎖繰り返し単位数=21、エポキシ当量(WPE)=551、ナガセケムテックス社製EX861)30.2gを用いた以外は実施例8と同様に合成した。製膜、気体透過測定については実施例8と同様に行った。得られた膜の気体透過係数を表3に示す。
[比較例2]
実施例8において、PEO3を用いなかった以外は、実施例8と同様の方法で気体分離膜を作製し、透過試験を行った。透過試験の結果を表3に示す。
Figure 2013013887
表3から明らかなように、両末端に反応性基を持つポリエチレングリコール(E)と反応性基を持つアルコキシシラン(F)の配合比率によって、膜にした際の透過性能が大きく変化する。特に、(E)成分のポリエチレンオキシドジグリシジルエーテル2モルに対し、(F)成分の3−アミノプロピルトリメトキシラン1モルの比率で合成した(D)成分を用いた際に、高い二酸化炭素/窒素選択性が得られることが分かった。これは、膜にした際エチレンオキシド鎖の片末端が残基であるため、膜にした際エチレンオキシド鎖の自由度が高いと推測される。自由度の高いエチレンオキシド鎖は二酸化炭素と容易に相互作用し、膜にした際の二酸化炭素/窒素選択性が良好になったと推測される。
[実施例14―18]
実施例8で作成した膜を使用し、膜測定温度条件を25℃、50℃および75℃と変化させ、無加湿および加湿(80%RH)条件で、実施例8と同様にガス透過測定を差圧法で測定した。測定結果を表4に示す。
Figure 2013013887
表4から明らかなように、25℃から75℃の温度条件で、本発明の気体分離膜は十分使用可能であることがわかる。また、本発明の気体分離膜は加湿条件で使用可能である。加湿条件で測定すると、透過選択性が向上する利点がある。これは、膜に水蒸気が取り込まれ二酸化炭素の親和性が向上したためと推測される。
[比較例3]
両末端にメタクリル基を有するポリジメチルシロキサンであるX−22−164A(信越シリコーン社製、g/mol=860)とポリエチレングリコールジメタクリレート(Mn=475、Aldrich社製)を用い、気体分離膜の作成を行った。X−22−164Aを1.6g計量し、50mlのバイヤル瓶に加えた。ポリエチレングリコールジメタクリレート(Mn=475、Aldrich社製)を0.4g添加し、ラジカル発生剤としてアゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製)を80mg添加し、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)で10wt%に希釈した。ウェーブローターで5時間攪拌し、均一な溶液を得た。得られた液をガラスシャーレに展開し、真空乾燥機の中に静置した。温度を70℃に設定し、真空度を5時間掛けて少しずつ向上させ0.13KPaの状態で15時間保持した。膜は硬化収縮により細かく千切れ、評価測定に必要な面積の自立膜を得ることはできなかった。
本発明の気体分離膜は、高い二酸化炭素透過係数、二酸化炭素/窒素選択性を有する。したがって、本発明の気体分離膜は、二酸化炭素と窒素および/または空気からなる二酸化炭素含有混合気体から二酸化炭素を分離する気体分離膜として、あるいは、ランドフィルガス(地中埋蔵中の廃棄物から発生する有機ガス)に含まれる二酸化炭素を分離する気体分離膜として利用することができる。

Claims (10)

  1. 少なくとも架橋ポリマーを構成成分に有する気体分離膜であって、該架橋ポリマーがシロキサンを繰り返し単位とする部位(A)およびエチレンオキシドを繰り返し単位とする部位(B)を有することを特徴とする気体分離膜。
  2. 架橋ポリマーが下記式(1)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の気体分離膜。
    Figure 2013013887
    (式中、R1およびR2は各々独立に炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、Y1は2価の有機基であり、mは1〜100の整数であり、nは5〜2000の整数である。)
  3. 架橋ポリマーが下記式(2)で表される構造および/または下記式(3)で表される構造を有することを特徴とする請求項2に記載の気体分離膜。
    Figure 2013013887
    (式中、R1およびR2は各々独立に炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、Y1およびY2は2価の有機基であり、mは1〜100の整数であり、nは5〜2000の整数である。)
    Figure 2013013887
    (式中、R1およびR2は各々独立に炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、Y1は2価の有機基であり、Y3は1価の有機残基であり、mは1〜100の整数であり、nは5〜2000の整数である。)
  4. 1およびY2がアミノ基、ウレア基、ウレタン基およびチオエーテル基から選ばれた少なくとも1種の基を有することを特徴とする請求項2または3に記載の気体分離膜。
  5. 1およびY2が下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の気体分離膜。
    Figure 2013013887
    (式中、Z1はHまたは1価の有機基であり、プロピル側の結合手がSiと結合し、ヒドロキシプロピル側の結合手が酸素と結合する。)
  6. 部位(A)と部位(B)の割合が、部位(A)100質量部を基準として部位(B)が5〜250質量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の気体分離膜。
  7. 架橋ポリマーが、分子鎖両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(C)とアルコキシシリル基で少なくとも片末端が末端封止されたポリエチレンオキシド(D)を重縮合反応して得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の気体分離膜。
  8. 前記(C)成分が下記一般式(5)で表される化合物であり、前記(D)成分が下記一般式(6)で表される化合物および/または下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする請求項7に記載の気体分離膜。
    Figure 2013013887
    (式中、R1およびR2は、炭素数1〜10の非置換または置換の1価炭化水素基であり、nは5〜2000の整数である。)
    Figure 2013013887
    (式中、R3はHまたは有機基であり、R4およびR5は水酸基またはアルコキシ基または有機基であり、Y1およびY2は2価の有機基であり、mは1〜100の整数である。)
    Figure 2013013887
    (式中、R3はHまたは有機基であり、R4およびR5は水酸基またはアルコキシ基または有機基であり、Y1は2価の有機基であり、Y3は1価の有機残基であり、mは1〜100の整数である。)
  9. 1およびY2がアミノ基、ウレア基、ウレタン基およびチオエーテル基から選ばれた少なくとも1種の基を有することを特徴とする請求項8に記載の気体分離膜。
  10. 1およびY2が下記一般式(8)で表されることを特徴とする請求項8または9に記載の気体分離膜。
    Figure 2013013887
    (式中、Z1はHまたは1価の有機基であり、プロピル側の結合手がSiと結合し、ヒドロキシプロピル側の結合手が酸素と結合する。)
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