JP2013001964A - レアアースの回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】強酸や強アルカリでの処理などの、複雑な処理を必要とせずに、温和な条件で、簡易な処理により、レアアースを含む金属含有物から、効率的にレアアースを回収する方法を提供する。
【解決手段】レアアースを含む金属含有溶液に、嫌気培養または好気培養した鉄還元細菌を用いて処理し、レアアースを鉄還元菌細胞に収着後、酸処理してレアアースを脱離して回収する。鉄還元細菌として、シワネラアルゲを用い、酸処理のpHは前記金属含有溶液のpHより小さくすることが条件が好ましい。回収されるレアアースは、高濃度に濃縮され、工業的に再利用するのが容易となる。
【選択図】なし

Description

本発明は、レアアースの回収方法に関する。
レアアースは、スカンジウム、イットリウム、ランタンからルテチウムまでの17元素からなる第3族のうち第4周期から第6周期までの元素である。レアアースは、蓄電池や発光ダイオード、磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠な材料である。レアアースは、化学的性質が互いによく似ている。レアアースのうち性質を若干異にするスカンジウムおよび天然に存在しないプロメチウム以外の元素は、ゼノタイムやイオン吸着鉱などの鉱石中に相伴って産出し、単体として分離することが難しい。そのため、混合物であるミッシュメタルとして利用されることも多い。また、金や銀などの貴金属に比べて地殻に存在する割合は多いが、単独の元素を分離精製することが難しい。
また、現在多くのレアメタルは、海外から輸入されている。このため、海外の政情などにより、安定な輸入が出来ない場合がある。
したがって、単独のレアアースを分離する方法や、製品のスクラップからレアアースを回収する方法があれば望ましい。このため、レアアースを回収する方法が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1には、レアアースマグネットの製造工程において、大量に発生する切断および研磨等によりレアアースを含むスラッジおよび有形屑からレアアースを回収する技術が開示されている。具体的には、レアアースマグネット屑を濃度が1.5mol/L以上かつ3.0mol/L以下の硫酸溶液に溶解させ、レアアースより分子量が小さいイオン性物質を添加して晶析し、レアアース硫酸塩を析出させて回収する。
特許文献2には、光学硝子汚泥をアルカリ溶融してレアアースメタルを溶出させた後、残存する不溶物を酸煮沸して更にレアアースメタルを溶出させ、次いで溶出したレアアースメタルをシュウ酸塩にした後、焼成して酸化物として回収する技術が開示されている。
しかし、これらの方法は、いずれも強酸や強アルカリでの処理を必要とする。また、複雑な処理を必要とする。このため、温和な条件でレアメタルを回収する方法の開発が望まれる。
なお、本発明者らは、鉄還元細菌を用い、貴金属または白金族のイオンから貴金属または白金族を還元して金属を回収する方法を開発している(例えば、特許文献3参照)。また、本発明者らは、鉄還元細菌を用い、インジウム、ガリウムまたはスズを含む金属含有物からインジウム、ガリウムまたはスズを回収する、金属の回収方法を提案している(例えば、特許文献4参照)。この文献の例では、インジウム、ガリウムまたはスズを吸着した鉄還元細菌をアルカリ処理または焼成してインジウム、ガリウムまたはスズを回収する。この文献には、鉄還元細菌が、どのような金属を回収することができるかどうかについては、明らかではない。
特開2007−231379号公報 特開平8−245218号公報 特開2007−113116号公報 特開2011−26701号公報
すなわち、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、温和な条件で、簡易な処理により、レアアースを含む金属含有物から、効率的にレアアースを回収する方法を提供することにある。
本発明者らは、レアアースを含む金属含有物を、鉄還元細菌で処理することにより、レアアースを回収できることを見出し、本発明を完成した。なお、鉄還元細菌は、従来電子供与体から電子の供給を受けて、鉄を還元する細菌である。一方、本発明では、電子供与体が存在しなくても、鉄還元細菌が、レアアースを還元せずに微生物細胞に収着・回収することを見出した。すなわち、本発明は、鉄還元細菌の新たな機能を見出し、その機能を利用するものである。また、前記鉄還元細菌を酸処理してレアアースを脱離すると、これらの金属を高濃度に濃縮できることから、工業的に再利用するのが容易である。
また、本発明のレアアースの回収方法で用いる鉄還元細菌は、シワネラ アルゲであると好ましい。
本発明のレアアースの回収方法では、前記処理後の鉄還元細菌を酸処理してレアアースを脱離する。
本発明の方法では、従来鉄イオンなどの金属イオンの還元に関与していた鉄還元細菌をレアアースの回収に用いる。これにより、レアアースを高純度で効率よく回収することができる。
また、本発明の方法では、レアアースを収着した鉄還元菌を酸処理するだけで、鉄還元菌からレアアースを脱離することができる。
図1は、pHを変えた場合のジスプロシウムの回収率を示すグラフである。 図2は、嫌気性雰囲気下回収処理において、120分経過後の単位細胞あたりのジスプロシウムの濃度をプロットしたグラフである。 図3は、嫌気性雰囲気下回収処理において、120分経過後の細菌細胞が回収したジスプロシウム回収率をプロットしたグラフである。 図4は、pHを変えた場合のジスプロシウムの回収率を示すグラフである。 図5は、好気性雰囲気下回収処理において、120分経過後の単位細胞あたりのジスプロシウムの濃度をプロットしたグラフである。 図6は、好気性雰囲気下回収処理において、120分経過後の細菌細胞が回収したジスプロシウム回収率をプロットしたグラフである。 図7は、初期ジスプロシウム濃度を変えた場合のジスプロシウムの回収率を示すグラフである。 図8は、嫌気性雰囲気下で細胞濃度を変えた場合のジスプロシウムの回収率および嫌気培養細胞からの鉄の溶離量を示すグラフである。 図9は、好気性雰囲気下で細胞濃度を変えた場合のジスプロシウムの回収率を示すグラフである。 図10は、嫌気性雰囲気下で細胞濃度を変えた場合のジスプロシウムの脱着率および嫌気培養細胞からの鉄の溶離量を示すグラフである。 図11は、好気雰囲気下で細胞濃度を変えた場合のジスプロシウムの脱着率を示すグラフである。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のレアアースの回収方法によれば、レアアースを、以下の工程により回収することができる。
[鉄還元細菌]
本発明で用いる鉄還元細菌は、電子供与体から電子の供給を受けて、鉄を還元する細菌のうち、還元作用を行わずに、インジウムを水酸化インジウムとして吸着できる細菌である。このような鉄還元菌としては、例えば、ゲオバクター属(代表種:Geobacter metallireducens:ゲオバクター メタリレデューセンス:ATCC(American Type Culture Collection)53774株)、デスルフォモナス属(代表種:Desulfuromonas palmitatis:デスルフォモナス パルミタティス:ATCC51701株)、デスルフォムサ属(代表種:Desulfuromusa kysingii:デスルフォムサ キシンリDSM(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)7343株)、ペロバクター属(代表種:Pelobacter venetianus:ペロバクター ベネティアヌス:ATCC2394株)、シワネラ属(Shewanella algae:シワネラ アルゲ(以下、「S.algae」ともいう):ATCC51181株、Shewanella oneidensis:シワネラ オネイデンシス:ATCC700550株)、フェリモナス属(Ferrimonas balearica:フェリモナス バレアリカ:DSM9799株)、エアロモナス属(Aeromonas hydrophila:エアロモナス ヒドロフィラ:ATCC15467株)、スルフロスピリルム属(代表種:Sulfurospirillum barnesii:スルフロスピリルム バーネシイ:ATCC700032株)、ウォリネラ属(代表種:ウォリネラ スシノゲネス:Wolinella succinogenes:ATCC29543株)、デスルフォビブリオ属(代表種:Desulfovibrio desulfuricans:デスルフォビブリオ デスルフリカンス:ATCC29577株)、ゲオトリクス属(代表種:Geothrix fermentans:ゲオトリクス フェルメンタンス:ATCC700665株)、デフェリバクター属(代表種:Deferribacter thermophilus:デフェリバクター テルモフィルス:DSM14813株)、ゲオビブリオ属(代表種:Geovibrio ferrireducens:ゲオビブリオ フェリレデューセンス:ATCC51996株)、ピロバクルム属(代表種:Pyrobaculum islandicum:テルモプロテウス アイランディカム:DSM4184株)、テルモトガ属(代表種:Thermotoga maritima:テルモトガ マリティマ:DSM3109株)、アルカエグロブス属(代表種:Archaeoglobus fulgidus:アルカエグロブス フルギダス:ATCC49558株)、ピロコックス属(代表種:Pyrococcus furiosus:ピロコックス フリオサス:ATCC43587株)、ピロディクティウム属(代表種:Pyrodictium abyssi:ピロディクティウム アビーシイ:DSM6158株)などが例示できる。
本発明で用いる鉄還元細菌のうち、特に好ましい鉄還元菌は、S.algaeである。
本発明で用いる鉄還元細菌は、嫌気性細菌である。本発明の方法の実施においては、前培養および回収処理は、嫌気性条件下で行ってもよく、好気性条件下で行ってもよい。嫌気性条件下で行う場合、培地は鉄を含む。このため、レアアースの吸着・脱着の際に鉄も同様に鉄還元菌に吸着・脱着される。したがって、レアアースと鉄との分離処理を別個に行わない場合は、高純度でレアアースを回収するためには、好気性条件下で行うほうが好ましい。
嫌気性条件下で鉄還元菌の前培養を行う場合、当該細菌に適した培地を用いればよい。例えばS.algaeは、例えば、pHが7.0で、電子供与体として乳酸ナトリウム(32mol/m3)が、電子受容体としてFe(III)イオン(56mol/m3)が含まれている、クエン酸第二鉄培地(ATCC No.1931)を用いて、回分培養して増殖させ、維持する。鉄イオンの塩は、この例では、クエン酸塩であるが、使用する培地、使用する鉄還元細菌の種類により、適宜選択すればよい。
好気性条件下で鉄還元菌の前培養を行う場合、公知の一般的な細菌培養用の培地を用いればよい。例えば、TSB(トリプケースソイブイヨン)培地などである。
[レアアースを含む金属含有物]
本発明で処理対象は、レアアースを含む金属含有物である。レアアースを含む金属含有物は、鉱石(モナザイト、バストネサイト、ゼノタイム等)であってもよく、レアアースを含む製品(水素吸蔵合金、二次電池原料、光学ガラス、強力な希土類磁石、蛍光体、研磨材、光ディスク、光磁気ディスク、石油精製触媒、自動車用排気ガス浄化触媒など)のスクラップ、レアアースを含むスラッジおよび有形屑など、レアアースを含む物であればよい。また、レアアースを含む金属含有物は、金属以外の成分(例えば、金属以外の無機物や有機物など)が含まれていてもよい。レアアースを含む金属含有物には、1種または2種以上のレアアースが含まれていてもよい。
レアアースは、17元素からなる第3族のうち第4周期から第6周期までの元素である。具体的には、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムである。
[レアアースを含む金属含有物からのレアアースの回収]
レアアースは、その種類より水(熱水を含む)、無機酸(塩酸、硝酸、硫酸など)、アルカリ(アンモニアなど)に溶解する。上記レアアースを含む金属含有物は、含まれているレアアースの種類に応じて、適した溶媒に溶解させて、処理に用いる。この溶媒は、少なくともレアアースを溶解できるものであればよい。また、必要に応じてレアアースを含む金属含有物溶液のpHは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸塩、または水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸塩などを用いることで調整してもよい。
本発明の回収方法では、含まれるレアアースの種類により、良好な回収率が得られるように液のpHを適宜調整すればよい。例えば、回収するレアアースの溶解度積から、溶解度がよいpHを選択すればよい。あるいは、収着させた後の脱離処理を行いやすいpHを選択してもよい。例えば、ジスプロシウムを回収する場合は、最終的にpHが4.0〜6.5、好ましくは4.5〜6.0になるようにすればよい。
本発明で用いるレアアースを含む金属含有物は、使用に際し、粉砕をしてもよい。粉砕方法は特に制限されず、公知の方法を用いて粉砕すればよい。粉砕方法としては、例えばローラー式粉砕機(フレットミル)、振動ミル、ボールミル、ポットミル、乳鉢、自動乳鉢などを用いる方法が挙げられる。
ガラスを含む原料を用いる場合は、粉砕してそのまま用いてもよく、ろ過等の公知の分離手段を用いてガラスを除いてもよい。また、光学ガラスなどのように、ガラス自体にレアアースが含まれる場合は、粉砕して用いればよい。
有機物を用いる原料を用いる場合は、焼成して有機物を除いてもよい。焼成は、粉砕前であっても、後であってもよいが、好ましくは粉砕前である。焼成温度は特に制限されず、含まれる有機物の種類によって最適の温度を選択すればよい。好ましくは、レアアースの酸化物が還元されて揮発する温度以下であることが好ましい。例えば、500〜800℃、好ましくは600〜800℃である。焼成時間は、例えば、10分間〜10時間である。
また、本発明の回収方法を行う前に、レアアースを含む溶液を前処理して、レアアースを含む溶液に含まれるレアアース以外の他の金属や夾雑物(金属以外で混ざっている余計なものを意味している)を、公知の方法により、除去してもよい。
本発明のレアアースの回収方法で用いるレアアースを含む溶液に含まれるレアアースの量は、特には制限されず、含まれるレアアースの種類や用いる鉄還元菌の数によって適宜選択できる。レアアースを含む溶液の濃度は、特に制限されず、良好な回収率が得られるように液のpHを適宜調整すればよい。例えば、ジスプロシウムを回収する場合は、初期濃度が0.6mol/m3以下、より好ましくは0.2mol/m3程度になるようにすればよい。
本発明のレアアースの回収方法で用いる鉄還元菌の数は、特には制限されず、含まれるレアアースの種類により、良好な回収率が得られるように鉄還元菌の数を適宜調整すればよい。鉄還元菌の数としては、例えば、ジスプロシウムを回収する場合は、8.0×1014cells/m3以上、例えば、8.0×1015cells/m3〜15.0×1015cells/m3程度であればよい。
鉄還元細菌の懸濁液の調製は、まず指数増殖末期に達した鉄還元細菌培養液を、窒素ガスにより嫌気状態にしたグローブボックス内で採取し、遠心分離機で集菌する。集菌した菌液は、回収条件により嫌気性雰囲気下または好気性雰囲気下で前培養を行う。嫌気性雰囲気下の場合は、嫌気性雰囲気下(例えば、酸素濃度2.5%以下)で、所定の鉄培地を用いて、培養する。培養時間は、特に制限はないが、24時間程度である。また、好気性雰囲気下の場合は、公知の一般細菌培養用培地(例えば、TSB(トリプケースソイブイヨン)培地など)を用いて、培養する。培養時間は、特に制限はないが、12時間程度である。前培養後の細菌を集菌し、水(蒸留水、イオン交換水、純水などを含む)を用いて洗浄する。その後、細菌を、水(蒸留水、イオン交換水、純水などを含む)を用いて所定の濃度に懸濁する。
調製したレアアースを含む金属溶液と鉄還元細菌の懸濁液を嫌気性雰囲気または好気性雰囲気で、常温で混合し、レアアースの回収(収着)を行う。嫌気性雰囲気または好気性雰囲気のいずれの雰囲気を用いるかは、用いる鉄還元菌の種類、レアアースの種類に応じて、レアアースの回収率またはレアアースの蓄積率のよいほうを適宜選択すればよい。
本発明のレアアースの回収方法では、処理時間は特に制限はされない。処理効率を考えると、レアアースの濃度と使用する鉄還元菌の数を調整し、15〜30分程度でレアアースが高い回収率で回収できるようにすればよい。
鉄還元菌細胞に収着されたレアアースは、例えば酸を加えて、上記処理液よりpHを小さくすることで、鉄還元細菌から脱着することで、回収できる。これにより回収されるレアアースの態様は、嫌気培養した還元細菌と好気培養した還元細菌とでは異なる。嫌気培養した還元細菌を用いてレアアースを回収する場合、鉄を含む培地で培養した細胞のため、レアアースの収着に伴い、細胞から鉄が溶離する。脱着時には、レアアースと鉄とが脱着される。このため、脱着したレアアースは、鉄との分離操作が必要となる。一方、好気培養した還元細菌を用いてレアアースを回収する場合には、鉄を含まない培地で培養した細胞のため、レアアースの収着・脱着には鉄は関与せず、純度の高いレアアースが回収できる。
本発明のレアアースの回収方法を用いれば、極めて簡易な操作で、短時間に高い効率で、レアアースを回収することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、レアアース含有溶液は、以下のように調製した。まず、塩化ジスプロシウムをイオン交換水に溶解させて所定の濃度に調整して、ジスプロシウム含有酸性溶液を作製した。ジスプロシウム含有溶液のpHは水酸化ナトリウムまたは塩酸で調整した。
鉄還元菌として、シワネラ アルゲを用いた。鉄還元細菌の懸濁液の調製は、まず指数増殖末期に達した鉄還元細菌培養液を、窒素ガスにより嫌気状態にしたグローブボックス内で採取し、遠心分離機で集菌した。次に、嫌気性雰囲気で回収処理を行う場合は、クエン酸第二鉄培地(ATCC No.1931)を用いて酸素濃度2.5%以下で嫌気的に24時間前培養した。好気性雰囲気で回収処理を行う場合は、TSB培地を用いて好気的に24時間前培養した。集菌した菌液をイオン交換水で再懸濁し所定の濃度に調整し、細胞懸濁液を得た。
以下の実施例において、レアアースの回収処理は以下のように行った。まず、バルブ付きねじ口瓶を培養器として用いた。培養温度は、303Kであった。
液中のジスプロシウム濃度は、溶液から、少量の液体を分取したものについて、ICP(誘導結合プラズマ(Inductively coupled plasma))発光分光法を用いて行った。
(実施例1)
(ジスプロシウム収着におけるpHの影響−嫌気)
嫌気性雰囲気下で、シワネラ アルゲの細胞濃度:8.23×1015cell/m3、初期ジスプロシウム濃度:1.0mMの培養液中で、pHを変えてジスプロシウムを回収した。実験は、ジスプロシウム含有溶液に水酸化ナトリウムまたは塩酸を加えpHを調整したものに、上記細胞懸濁液を加え、pHを(2.84、3.54、4.56、4.93、5.57)に調整したものを用いた。対照実験としてそれぞれのpHに調整したジスプロシウム含有溶液を用い、シワネラ アルゲを加えなかったものを用いた。結果を図1に示す。図1は、pHを変えた場合のジスプロシウムの回収率を示すグラフである。図1において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているジスプロシウム(III)濃度(mol/m3)を示す。また、●はpH2.84のジスプロシウム含有溶液を、▲はpH3.54のジスプロシウム含有溶液を、■はpH4.56のジスプロシウム含有溶液を、▼は、pH4.93のジスプロシウム含有溶液を、◆はpH5.57のジスプロシウム含有溶液を、○、△、□、▽、◇はそれぞれのpHの対照実験を示す。
図1から、PHがpH2.84から5.57に大きくなるに従って、特に、pH4.56〜5.57の範囲で、ジスプロシウムの回収率が向上する(43%、49%、51%)ことがわかる。これから、適切なpHを選択することで、ジスプロシウムを効率よく回収できることがわかる。
図2は、嫌気性雰囲気下回収処理において、120分経過後の単位細胞あたりのジスプロシウムの濃度をプロットしたグラフである。図2において、横軸は処理液のpH、縦軸は単位細胞あたりのジスプロシウムの濃度(III)濃度(mol/m3)を示す。図2から、本実施例においては、pHが5付近まではpHの上昇と共に、ジスプロシウムの回収率が上昇するが、pHが5付近より大きくなると、ジスプロシウムの回収率が上限に達することがわかる。
図3は、嫌気性雰囲気下回収処理において、120分経過後の細菌細胞が回収したジスプロシウム回収率をプロットしたグラフである。図3において、横軸は処理液のpH、細菌細胞が回収したジスプロシウムの回収率(%)を示す。図3から、本実施例においては、溶液のpHの上昇と共に、回収率が増加することがわかる。
(実施例2)
(ジスプロシウム収着におけるpHの影響−好気)
好気性雰囲気下で、シワネラ アルゲの細胞濃度:8.00×1015cell/m3、初期ジスプロシウム濃度:1.0mMの培養液中で、pHを変えてジスプロシウムを回収した。実験は、ジスプロシウム含有溶液に水酸化ナトリウムまたは塩酸を加えpHを調整したものに、上記細胞懸濁液を加え、pHを(2.52、3.27、4.58、5.08、5.58、5.95)に調整したものを用いた。対照実験としてジスプロシウム含有溶液を用い、シワネラ アルゲを加えなかったものを用いた。結果を図4に示す。図4は、pHを変えた場合のジスプロシウムの回収率を示すグラフである。図4において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているジスプロシウム(III)濃度(mol/m3)を示す。また、●はpH2.52のジスプロシウム含有溶液を、▲はpH3.27のジスプロシウム含有溶液を、■はpH4.58のジスプロシウム含有溶液を、▼は、pH5.08のジスプロシウム含有溶液を、◆はpH5.58のジスプロシウム含有溶液を、五角形はpH5.95のジスプロシウム含有溶液を、○は対照実験を、それぞれ示す。
図5は、好気性雰囲気下回収処理において、120分経過後の単位細胞あたりのジスプロシウムの濃度をプロットしたグラフである。図5において、横軸は処理液のpH、縦軸は単位細胞あたりのジスプロシウムの濃度(III)濃度(mol/m3)を示す。図5から、本実施例においては、pHの上昇と共に、ジスプロシウムの回収量が直線的に上昇することがわかる。
図6は、好気性雰囲気下回収処理において、120分経過後の細菌細胞が回収したジスプロシウム回収率をプロットしたグラフである。図6において、横軸は処理液のpH、細菌細胞が回収したジスプロシウムの回収率(%)を示す。図6から、本実施例においては、溶液のpHの上昇と共に、回収率が直線的に増加することがわかる。
(実施例3)
(ジスプロシウム収着における初期ジスプロシウム濃度の影響−嫌気・好気)
嫌気性・好気性雰囲気下で、シワネラ アルゲの細胞濃度:8.57×1015cell/m3の培養液中で、初期ジスプロシウム濃度を0.2mM、0.5mM、1.0mMと変えて、ジスプロシウムを回収した。実験は、初期ジスプロシウム濃度を変えたジスプロシウム含有溶液に上記細胞懸濁液を加えたものを用いた。また、溶液のpHの調整は、塩酸を用いた。対照実験としてジスプロシウム含有溶液を用い、シワネラ アルゲを加えなかったものを用いた。結果を図7に示す。図7は、初期ジスプロシウム濃度を変えた場合のジスプロシウムの回収率を示すグラフである。図7において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているジスプロシウム(III)濃度(mol/m3)を示す。また、■実線は嫌気性雰囲気初期ジスプロシウム濃度が0.2mMのものを、▲実線は嫌気性雰囲気初期ジスプロシウム濃度が0.5mMのものを、●実線は嫌気性雰囲気初期ジスプロシウム濃度が1.0mMのものを、■点線は嫌気性雰囲気初期ジスプロシウム濃度が0.2mMのものを、▲点線は嫌気性雰囲気初期ジスプロシウム濃度が0.5mMのものを、●点線は嫌気性雰囲気初期ジスプロシウム濃度が1.0mMのものを、○、△、□は各濃度における対照実験をそれぞれ示す。
図7から、初期ジスプロシウム濃度が小さいほど、ジスプロシウムの回収率が向上することがわかる。このことから、シワネラ アルゲを用いるジスプロシウムの回収条件を選択すれば、回収率が向上することがわかる。
(実施例4)
(ジスプロシウム収着における細胞濃度の影響−嫌気培養したシワネラ アルゲ)
嫌気性雰囲気下で、初期ジスプロシウム濃度:0.5mMの培養液中で、嫌気培養したシワネラ アルゲの細胞濃度を、4.00×1015cell/m3、8.00×1015cell/m3、12.00×1015cell/m3と変えてジスプロシウムを回収した。実験は、ジスプロシウム含有溶液に塩酸を加えpHを調整したものに、上記細胞懸濁液を加えたものおよび細胞濃度が4.00×1015cell/m3の細胞懸濁液のみのものを用いた。対照実験としてジスプロシウム含有溶液を用い、シワネラ アルゲを加えなかったものを用いた。なお、本実施例においては、ジスプロシウム濃度と共に、鉄濃度も、ICP発光分光法を用いて、測定した。結果を図8に示す。図8は、嫌気性雰囲気下で嫌気培養した細胞の濃度を変えた場合のジスプロシウムの回収率および嫌気培養した細胞からの鉄の溶離量を示すグラフである。図8(a)は、ジスプロシウムの回収率を、図8(b)は、細胞からの鉄の溶離量を示す。図8において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているジスプロシウム(III)濃度(mol/m3)(図8(a))または縦軸は処理液に溶解している鉄(III)濃度(mol/m3)(図8(b))を示す。また、▲は細胞濃度4.00×1015cell/m3のものを、■は細胞濃度8.00×1015cell/m3のものを、◆は細胞濃度12.00×1015cell/m3のものを、●は細胞濃度4.00×1015cell/m3の細胞懸濁液のみのものを、○、△、□は無菌対照実験を示す。また、図中のpHは、120分経過後のpHである。
図8から、細胞濃度が増えるにしたがって、ジスプロシウムの回収率が向上する(27%、55%、83%)ことがわかる。また、嫌気培養した細胞の濃度が増えるにしたがって、細胞からの鉄の溶離量も増加することがわかる。
嫌気培養には鉄含有液体培地を使用したことから、培地中の鉄をシワネラ アルゲが細胞中に取り込んでおり、ジスプロシウムの収着に伴いこの細胞中の鉄が溶液中に溶離したと推測される。
(実施例5)
(ジスプロシウム収着における細胞濃度の影響−好気培養したシワネラ アルゲ)
好気性雰囲気下で、初期ジスプロシウム濃度:0.5mMの培養液中で、好気培養したシワネラ アルゲの細胞濃度を、4.00×1015cell/m3、8.00×1015cell/m3、12.00×1015cell/m3と変えてジスプロシウムを回収した。実験は、ジスプロシウム含有溶液に塩酸を加えpHを調整したものに、上記細胞懸濁液を加えたものおよび細胞濃度が4.00×1015cell/m3の細胞懸濁液のみのものを用いた。対照実験としてジスプロシウム含有溶液を用い、シワネラ アルゲを加えなかったものを用いた。なお、本実施例においては、ジスプロシウム濃度と共に、鉄濃度も、ICP発光分光法を用いて、測定した。結果を図9に示す。図9は、好気性雰囲気下で細胞濃度を変えた場合のジスプロシウムの回収率を示すグラフである。図9において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているジスプロシウム(III)濃度(mol/m3)を示す。また、▲は細胞濃度4.00×1015cell/m3のものを、■は細胞濃度8.00×1015cell/m3のものを、◆は細胞濃度12.00×1015cell/m3のものを、●は細胞濃度4.00×1015cell/m3の細胞懸濁液のみのものを、○、△、□は無菌対照実験を示す。また、図中のpHは、120分経過後のpHである。
図9から、細胞濃度が増えるにしたがって、ジスプロシウムの回収率が向上する(35%、72%、95%)ことがわかる。また、好気培養したシワネラ アルゲを用いたジスプロシウムの回収では、細胞からの鉄の溶離は起こらなかった。
(実施例6)
(ジスプロシウム脱着における細胞濃度の影響−嫌気培養したシワネラ アルゲ)
嫌気性雰囲気下で、上記実施例4で収着したジスプロシウムを脱着した。実験は、上記実施例4で120分経過したサンプルを10ml採取し、サンプル溶液に5.0mol/l塩酸を20μl加えpHを低下させて行った。なお、本実施例においては、ジスプロシウム濃度と共に、鉄濃度も、ICP発光分光法を用いて測定した。結果を図10に示す。図10は、嫌気性雰囲気下で細胞濃度を変えた場合のジスプロシウムの脱着率および嫌気培養細胞からの鉄の溶離量を示すグラフである。図10(a)は、ジスプロシウムの回収率を、図10(b)は、鉄の溶離量を示す。図10において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているジスプロシウム(III)濃度(mol/m3)(図10(a))または縦軸は処理液に溶解している鉄(III)濃度(mol/m3)(図10(b))を示す。また、▲は細胞濃度4.00×1015cell/m3のものを、■は細胞濃度8.00×1015cell/m3のものを、◆は細胞濃度12.00×1015cell/m3のものを、●は細胞濃度4.00×1015cell/m3の細胞懸濁液のみのものを、○、△、□は無菌対照実験を示す。また、図中のpHは、脱着開始時のpHである。
図10から、細胞濃度に関係なく、ジスプロシウムの脱着率および嫌気培養細胞からの鉄の溶離量は、約15分で上限に達することがわかる。また、細胞濃度が増えるにしたがって、鉄の溶離量が増加することがわかる。このことから、嫌気培養したシワネラ アルゲ細胞を用いてジスプロシウムを収着する場合は、脱着後に鉄の分離が必要なことがわかる。
(実施例7)
(ジスプロシウム脱着における細胞濃度の影響−好気培養したシワネラ アルゲ)
好気性雰囲気下で、上記実施例4で好気培養したシワネラ アルゲ細胞を用いて収着したジスプロシウムを脱着した。実験は、上記実施例4で120分経過したサンプルを10ml採取し、サンプル溶液に5.0mol/l塩酸を20μl加えpHを低下させて行った。なお、本実施例においては、ジスプロシウム濃度と共に、鉄濃度も、ICP発光分光法を用いて測定した。結果を図11に示す。図11は、好気雰囲気下で細胞濃度を変えた場合のジスプロシウムの脱着率を示すグラフである。図11において、横軸は、処理時間(分(図中「min」))、縦軸は処理液に溶解しているジスプロシウム(III)濃度(mol/m3)を示す。また、▲は細胞濃度4.00×1015cell/m3のものを、■は細胞濃度8.00×1015cell/m3のものを、◆は細胞濃度12.00×1015cell/m3のものを、●は細胞濃度4.00×1015cell/m3の細胞懸濁液のみのものを、○、△、□は無菌対照実験を示す。また、図中のpHは、脱着開始時のpHである。
図11から、細胞濃度に関係なく、ジスプロシウムの脱着率は、約15分で上限に達することがわかる。好気培養したシワネラ アルゲ細胞を用いて、好気性雰囲気下でジスプロシウムを収着する場合は、効率よく脱着することができることがわかる。

Claims (3)

  1. レアアースを含む金属含有溶液に、嫌気培養または好気培養した鉄還元細菌を用いて処理し、レアアースを鉄還元菌細胞に収着後、酸処理してレアアースを脱離して回収するレアアースの回収方法。
  2. 前記鉄還元細菌は、シワネラ アルゲである請求項1記載のレアアースの回収方法。
  3. 前記酸処理のpHは前記金属含有溶液のpHより小さい請求項1または2記載のレアアースの回収方法。
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