JP2013001918A - 新規酸化物、及び酸化物膜 - Google Patents

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健治 後藤
Masahito Matsubara
雅人 松原
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Abstract

【課題】従来よりも抵抗値の低いIn系酸化物導電膜を形成することができる酸化物を提供する。
【解決手段】インジウム元素(In)及びガリウム元素(Ga)を含有し、X線回折において、2θ=12〜18度、21〜24度及び43〜45度に回折ピークを有する酸化物。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明導電膜に適した酸化物に関する。
液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置は、表示性能に優れ、かつ消費電力が少ないことから、携帯電話やパーソナルコンピュータ、テレビジョンなどの表示機器に広く用いられている。そして、これら表示機器は、いずれの機器においても表示素子を透明導電膜により駆動する構造を有している。
また、薄膜太陽電池やHIT構造の結晶シリコン太陽電池は、光電変換効率が高いため、広く用いられている。これらの太陽電池はいずれも光を取り込みかつ電力を取り出すために透明導電膜を光電変換層の上部に積層させた構造を有している。
これら表示機器や太陽電池に使用される透明導電膜の1つとして、インジウム含有酸化物(以下、In系酸化物ということがある。)膜がある。In系酸化物としては、インジウム錫酸化物膜(ITO)や、In−ZnO酸化物(以下、IZOと略称する場合がある。)膜が知られている。
IZO膜に関して、例えば、特許文献1には、一般式In(ZnO)(m=2〜7)で表される六方晶層状化合物を含み、かつInとZnの原子比[In/(In+Zn)]が0.2〜0.9である酸化物の焼結体からなり、2〜7at%の正3価以上の金属酸化物(Al,Ga,Zr,Ti,Si)を添加した膜について開示されている。しかしながら、得られる膜の比抵抗が9×10−4Ωcm以上と高かった。
特開平09−71860号公報
本発明は、従来よりも抵抗値の低いインジウム含有酸化物導電膜を形成することができる酸化物を提供するものである。
本発明者らは、In系酸化物にガリウム化合物を添加して得られ、所定の結晶構造を有する酸化物が、きわめて低い抵抗値を有することを見出した。
本発明によれば、以下の酸化物等が提供される。
1.インジウム元素(In)及びガリウム元素(Ga)を含有し、X線回折において、2θ=12〜18度、21〜24度及び43〜45度に回折ピークを有する酸化物。
2.さらに、亜鉛元素(Zn)及び錫元素(Sn)の少なくとも1つを含有する1に記載の酸化物。
3.上記1又は2に記載の酸化物を含有する酸化物膜。
4.ガリウム化合物を含有する層に、スパッタ法にてインジウム含有酸化物を成膜する工程を有し、前記成膜時のスパッタ出力密度を1W/cm以上5W/cm以下とすることにより得られる、3に記載の酸化物膜。
5.前記ガリウム化合物が、GaN、Ga及びGaNxOy(0≦X≦1,0≦y≦1.5)のいずれかである4に記載の酸化物膜。
6.前記インジウム含有酸化物が、In,In−ZnO,In−SnO又はIn−SnO−ZnOである4又は5に記載の酸化物膜。
7.前記インジウム含有酸化物の膜厚が200nm以下である3〜6のいずれかに記載の酸化物膜。
8.比抵抗が300μΩcm以下である3〜7のいずれかに記載の酸化物膜。
9.ガリウム化合物層又はインジウム含有酸化物層と、3に記載の酸化物膜と、を有する積層体。
10.ガリウム化合物層、3に記載の酸化物膜、及びインジウム含有酸化物層を、この順に積層した積層体。
11.上記3〜8のいずれかに記載の酸化物膜又は9もしくは10に記載の積層体を含む表示装置。
12.上記3〜8のいずれかに記載の酸化物膜又は9もしくは10に記載の積層体を含む太陽電池。
13.上記3〜8のいずれかに記載の酸化物膜又は9もしくは10に記載の積層体を含む発光ダイオード。
本発明によれば、従来と比べて抵抗値がきわめて低いIn系導電膜が得られる。
実施例1で作製した酸化物のX線回折チャートである。
本発明の酸化物は、インジウム元素(In)及びガリウム元素(Ga)を含有し、X線回折において、2θ=12〜18度、21〜24度及び43〜45度に回折ピークを有することを特徴とする。本発明の酸化物のX線回折チャートの例を図1に示す。尚、本チャートは後述する実施例1で作製した酸化物のチャートである。
一般に、酸化インジウム−酸化亜鉛系の結晶は,ビックスバイト構造のX線回折を示すが、本発明のように2θが12〜18度、21〜24度及び43〜45度に回折ピークを有する結晶酸化物は、従来、得られておらず、本発明の酸化物が新規であることを示している。本発明の酸化物を含有する膜は、従来のIn系膜と比べて、抵抗が大幅に低下する。
本発明の酸化物には、In及びGa以外の金属元素として、亜鉛元素(Zn)及び錫元素(Sn)の少なくとも1つを含有することが好ましい。即ち、インジウム錫酸化物や、In−ZnO酸化物等にGaを添加した酸化物であって、上述したX線回折のピークを有するものが好ましい。
本発明では、本発明の効果を損ねない範囲において、上述したIn、Zn、Sn又はGa以外の他の金属元素を含有していてもよい。しかしながら、本発明においては、スパッタリングターゲットに含有される金属元素は、実質的にIn及びGaのみ、In、Zn、Sn及びGaのみ、In、Sn及びGaのみ、又はIn、Zn及びGaのみであってもよい。
尚、酸化物の原子組成は、誘導プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により測定できる。
本発明の酸化物は、例えば、ガリウム化合物を含有する層に、スパッタ法にてインジウム含有酸化物を成膜する際に、成膜時のスパッタ出力を1W/cm以上5W/cm以下とすることにより得られる。尚、窒化ガリウム層等にスパッタリングする際、従来はスパッタによるガリウム化合物層の劣化を防ぐために、スパッタ出力をできるだけ低くして成膜していた。具体的に、スパッタ出力は通常、0.3W/cm以下である。
一方、本発明では成膜時のスパッタ出力を従来よりも大幅に高くしている。これにより、ガリウム化合物を含有する層とインジウム含有酸化物層との界面付近に、上述した新規な酸化物を含有する層(以下、界面層ということがある。)が生成することを見出した。
尚、上記界面層は、通常のインジウム含有酸化物層とはエッチング特性等が異なるため、その存在を確認することができる。
本発明の酸化物膜を形成する際に使用されるインジウム含有酸化物としては、In単体、In−ZnO酸化物(In−ZnO),インジウム錫酸化物(In−SnO)又はIn−SnO−ZnO等が挙げられる。具体的には、工業用として市販されているスパッタリングターゲット、例えば、ITOやIZO(出光興産株式会社の登録商標)等が使用できる。
ガリウム化合物としては、GaN、Ga及びGaNxOy(0≦X≦1,0≦y≦1.5)等が使用できる。
ガリウム化合物の層は、サファイア,シリコンの単結晶ウェハー,ガラスや樹脂等からなる基板上に、スパッタリングやCVD等の公知の方法で形成することができる。尚、工業用として市販されているガリウム化合物層を有する積層基板を使用してもよい。
本発明では、上述したガリウム化合物層上にスパッタ法にてインジウム含有酸化物を成膜する。スパッタ法としては、平行平板型,円筒型,ミラトロン型等が挙げられる。
尚、本発明は電子ビーム蒸着法等の蒸着法においても製造が可能である。
本発明では、成膜時のスパッタ出力を1W/cm以上5W/cm以下とする。1W/cm未満では、上述した本発明の酸化物層が生成しない。一方、5W/cmを超えるとスパッタリングターゲットに割れが生じるおそれがある。スパッタ出力は、好ましくは、1W/cm以上4W/cm以下である。
スパッタにより成膜されるインジウム含有酸化物層の膜厚は200nm以下とすることが好ましい。膜厚が200nmを超えると、界面層である低抵抗な層の寄与が小さくなり、酸化物膜全体の比抵抗が高くなる。膜厚は、好ましくは150nm以下であり、特に好ましくは、120nm以下である。尚、下限は特に限定しないが、膜厚制御が困難となる2nm程度である。
本発明の酸化物膜は、上述した本発明の酸化物の寄与により、従来のインジウム含有酸化物層よりも比抵抗が低くなる。具体的に、本発明の酸化物膜は、例えば、成膜時の基板温度を150℃にすると、比抵抗を300μΩcm以下にでき、さらには、210μΩcm以下も可能である。従来、成膜時の基板温度が150℃以下では、上記のような低抵抗な膜は得られ難かった。
従って、本発明の酸化物導電膜は各種表示装置や太陽電池の透明電極として好適に使用できる。
尚、上記の製法では、ガリウム化合物層、本発明の酸化物を含有する酸化物膜(低抵抗層)、及びインジウム含有酸化物層を、この順に積層した積層体が得られる。また、この積層体より、ガリウム化合物層又はインジウム含有酸化物層と、本発明の酸化物を含有する酸化物膜の2層構造を有する積層体も作製できる。これら積層体も、各種表示装置や太陽電池の透明電極として好適に使用できる。
実施例1
インジウム含有酸化物のスパッタリングターゲットとして、In−ZnO(In:ZnO=89.3:10.7wt%)ターゲット(出光興産株式会社製)を使用した。
また、ガリウム化合物層を有する基板として、GaN(結晶系:六方晶系、結晶面:C軸)層(厚さ4μm)を有するサファイヤ基板(オプトスター社製)を使用した。
GaN層上に、上記ターゲットを使用して酸化物膜を形成した。成膜条件は以下のとおりである。
スパッタリング装置:神鋼精機製 SRV−4320型
出力密度:1.59W/cm
スパッタガス:Ar
酸素濃度:1%
基板温度:150℃
成膜圧力:0.1Pa
膜厚:100nm
得られた酸化物膜の比抵抗を4探針法により測定した結果、206μΩcmであった。また、Van Der Pauw法にて移動度を測定したところ102cm/Vsであった。
上記の酸化物膜を蓚酸系エッチャント(蓚酸水溶液(関東化学製:ITO−06N))でエッチングした。その結果、GaN層及び上記ターゲットから得られる酸化物膜とは異なる層が確認された。
この層について、X線回折測定を実施した。得られたX線回折チャートを図1に示す。尚、X線回折の測定条件は以下のとおりである。
X線回折装置:リガク製スマートラボ
スキャンスピード:0.4°/min
線源:Cukα
出力:45kV,200mA
X線回折チャートから、2θ=12〜18度、21〜24度及び43〜45度に回折ピークを有する結晶酸化物が確認された。
実施例2
成膜時の出力密度を1.91W/cmにした他は、実施例1と同様にして酸化物膜を作製し評価した。
得られた酸化物膜の比抵抗は、158μΩcmであった。また、移動度は122cm/Vsであった。
酸化物膜を蓚酸系エッチャント(蓚酸水溶液(関東化学製:ITO−06N))でエッチングした結果、GaN層及び上記ターゲットから得られる酸化物膜とは異なる層が確認された。
比較例1
成膜時の出力密度を0.25W/cmにした他は、実施例1と同様にして酸化物膜を作製し評価した。
得られた酸化物膜の比抵抗は、360μΩcmであった。また、移動度は38cm/Vsであった。
酸化物膜を蓚酸系エッチャント(蓚酸水溶液(関東化学製:ITO−06N))でエッチングした結果、GaN層が現れ、酸化物層は完全に溶解した。
比較例2
ガリウム化合物層を有する基板の代わりに、無アルカリガラス基板を使用した他は、実施例1と同様にして酸化物膜を作製し評価した。
得られた酸化物膜の比抵抗は、335μΩcmであった。また、移動度は37cm/Vsであった。
酸化物膜を蓚酸系エッチャント(蓚酸水溶液(関東化学製:ITO−06N))でエッチングした結果、ガラス基板が現れ、酸化物層は完全に溶解した。
本発明の酸化物、酸化物膜、及び積層体は、各種表示装置及び太陽電池の透明電極等として好適である。

Claims (13)

  1. インジウム元素(In)及びガリウム元素(Ga)を含有し、
    X線回折において、2θ=12〜18度、21〜24度及び43〜45度に回折ピークを有する酸化物。
  2. さらに、亜鉛元素(Zn)及び錫元素(Sn)の少なくとも1つを含有する請求項1に記載の酸化物。
  3. 請求項1又は2に記載の酸化物を含有する酸化物膜。
  4. ガリウム化合物を含有する層に、スパッタ法にてインジウム含有酸化物を成膜する工程を有し、前記成膜時のスパッタ出力密度を1W/cm以上5W/cm以下とすることにより得られる、請求項3に記載の酸化物膜。
  5. 前記ガリウム化合物が、GaN、Ga及びGaNxOy(0≦X≦1,0≦y≦1.5)のいずれかである請求項4に記載の酸化物膜。
  6. 前記インジウム含有酸化物が、In,In−ZnO,In−SnO又はIn−SnO−ZnOである請求項4又は5に記載の酸化物膜。
  7. 前記インジウム含有酸化物の膜厚が200nm以下である請求項3〜6のいずれかに記載の酸化物膜。
  8. 比抵抗が300μΩcm以下である請求項3〜7のいずれかに記載の酸化物膜。
  9. ガリウム化合物層又はインジウム含有酸化物層と、請求項3に記載の酸化物膜と、を有する積層体。
  10. ガリウム化合物層、請求項3に記載の酸化物膜、及びインジウム含有酸化物層を、この順に積層した積層体。
  11. 請求項3〜8のいずれかに記載の酸化物膜又は請求項9もしくは10に記載の積層体を含む表示装置。
  12. 請求項3〜8のいずれかに記載の酸化物膜又は請求項9もしくは10に記載の積層体を含む太陽電池。
  13. 請求項3〜8のいずれかに記載の酸化物膜又は請求項9もしくは10に記載の積層体を含む発光ダイオード。
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