以下、本発明に係る車両用空調システムの実施の形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における車両用空調システムが搭載された編成車両100を示す概略図である。同図に示されるように、編成車両100は、先頭車両101、中間車両102a、中間車両102aに後続する中間車両102b、中間車両102bに後続する図示しない複数の車両から編成される。
次に、各車両の詳細について説明する。先頭車両101には、空調装置110a、空調制御装置111a、車両情報制御装置112a、列車情報管理装置113、リターン温度センサ120a、車内環境センサ121a、及び応荷重センサ122aが備えられている。中間車両102aにも同様に、空調装置110b、空調制御装置111b、車両情報制御装置112b、リターン温度センサ120b、車内環境センサ121b、及び応荷重センサ122bが備えられている。また、図示は省略しているが、中間車両102bについても同様のものが備えられており、さらに中間車両102bに後続する図示しない複数の車両にも同様のものが備えられている。なお、中間車両102a、102b、中間車両102bに後続する複数の車両においては、言うまでもないことであるが、先頭車両ではないため、乗務員室はない。そのため、列車情報管理装置113は備えられていない。また、各空調制御装置111は同一車両に搭載されている空調装置110を制御してもよい。また、空調制御装置111は他の車両に搭載されている空調装置110を制御してもよい。また、列車情報管理装置113が編成車両100に搭載されている全ての空調装置110を制御してもよい。
ここで、空調装置110a、110bは、空調制御装置111a、111bによって車内の環境が快適となるように制御される。まず、車内天井に設置された図示しないリターンエアフィルタより流れてくる車内空気の温度を車内天井裏に設置されたリターン温度センサ120a、120bが検出する。さらに、車内のつり革付近の高さの壁面に設置された車内環境センサ121a、121bが、常時車内湿度を検出するとともに、暖房時には車内空気の温度を検出する。また、車両下部に設置された応荷重センサ122a、122bが車両に加わる圧力を検出する。そして検出された圧力に基づいて車両情報制御装置112a、112bにより乗車率が算出される。具体的には、車両が空車であるときの圧力と検出された圧力との差が算出され、その差分を標準的な体格の乗客の重さによる圧力値で除することにより、現在の乗車人数が算出される。そして、算出された乗車人数を予め定められた乗車定員数で除することにより乗車率が算出される。例えば、算出された乗車率は車両のドアが閉じられてから1秒経過したときの値が乗車率として利用される。この値は次のドア開閉時までの乗車率として保持される。
また、先頭車両101の乗務員室に設置された列車情報管理装置113は伝送線を介して集約される情報を基に車両情報制御装置112a、112bに指令を出す。具体的には、列車情報管理装置113では、ドア開閉状態、空調運転状態、乗車率、外気温等が統合管理されている。そして空調運転状態には車内温度、車内湿度、冷房、暖房、送風、除湿、空調強運転、空調微運転、空調停止などが含まれている。このような状態で、列車情報管理装置113から適宜、車両情報制御装置112a、112bに伝送線を介して冷房指令、暖房指令、設定温度、乗車率、ドア開閉状態としての扉情報などの情報が送られる。
次に、編成車両100の電気的構成について図2を用いて詳細に説明する。
すなわち、図2は、本発明の実施の形態1における編成車両100の電気的構成を示す概略図である。図2に示されるように、編成車両100は、例えば、240kVAの補助電源装置180a、180bを1編成当たり2台搭載している。補助電源装置180a、180bは、補助回路用の電源のことである。ここでいう補助回路とは車両の駆動源以外の負荷のことである。例えば、補助回路とは、ドアの開閉に利用される空気圧縮機(図示せず)、空調装置110a、110b、・・・110f、各種表示器、整流装置及び照明等のことである。この補助回路のうち、空調装置110a、110b、・・・110f以外で運転時に必要とされる負荷が重要負荷200a、200b、・・・200fである。そのような重要負荷200a、200b、・・・200fは、例えば、各種表示器、整流装置、ブレーキ制御、ドアの開閉用の戸閉装置、または車内の照明等のことである。これに対して、VVVFインバータ制御装置(図示せず)は、車両の駆動用の電源である。これにより、電車のモータは駆動し、車両が前進する。なお、補助電源装置180a、180b及びVVVFインバータ制御装置は、いずれも架線から電力が供給される。そのため、架線からの電力供給が途絶えたときのために各車両にはバッテリ(図示せず)も搭載されている。これにより、補助電源装置180a、180b及びVVVFインバータ制御装置から電力が供給されない状況であっても、編成車両100を駆動させることができるようにしてもよい。
また、受給電装置190は編成車両100の中間付近に1台装備されている。この受給電装置190は、例えば、補助電源装置180aが故障したときに、補助電源装置180bを補助回路用の電源として利用するための接続回路として構成されている。なお、受給電装置190を介さなくとも、何らかの電気的接続装置により補助電源装置180bに切り替えるようにしてもよく、そのような接続装置を介さなくとも補助電源装置180bから電力を供給するようにしてもよい。
すなわち、通常においては、両方の補助電源装置180a、180bにより補助回路に電力が供給されるものの、いずれかが故障して作動しなくなったときには片方のみで補助回路に電力が供給されるような回路構成となっていればよいのである。
また、いずれの補助電源装置180a、180bも作動しないときには、上記で説明したように各車両に装備されているバッテリにより補助回路等へ電力を供給させるようにしてもよい。
次に、一車両の電気的構成について図3を用いて詳細に説明する。
すなわち、図3は、本発明の実施の形態1における一車両の電気的構成を示す概略図である。図3に示されるように、中間車両102fは、例えば、空調装置110fを備えている。空調装置110fは空調制御装置111fを備えている。空調制御装置111fが空調装置110fを制御することにより、車内が快適な状態に保たれるのである。また、空調制御装置111fは、空調制御に利用されるだけでなく、各種制御信号の中継装置として利用されてもよい。例えば、列車情報管理装置113からの空調運転制御指令を空調制御装置111fを介して空調装置110fを制御させてもよい。また、例えば、空調制御装置111bからの空調運転制御指令を空調制御装置111fを介して空調装置110fを制御させてもよい。このように適宜に空調制御装置111a、111b、・・・111fのいずれか1台または複数台が中継装置として利用されることにより、後述する各種のネットワーク・トポロジーであっても、空調制御装置111a、111b、・・・111fは編成車両100に搭載されている空調装置110a、110b、・・・110fのいずれか1台または複数台を制御することができるのである。
また、例えば、空調装置110fは、どこからの制御指令であっても有線または無線の通信媒体を介して制御されるようにしてもよい。そのため、上述したように、制御主体は同一車両に搭載されている空調制御装置111fだけでなく、他の車両に搭載されているものでもよい。また、有線または無線の通信媒体を介することにより、編成車両100以外からの制御指令であっても制御されるようにしてもよい。換言すれば、後述するようなネットワーク・トポロジーに限定されることなく、空調装置110a、110b、・・・110fは制御されるようにしてもよいのである。なお、ネットワーク・トポロジーとは論理構成と物理構成との両方が対象であることは言うまでもないことである。
具体的には、空調装置110fは、電力計測装置400f、410f、420f、430fと、圧縮機320f、330fと、室外送風機340fと、室内送風機350fとを備えている。
すなわち、電力計測装置400f、410f、420f、430fは、空調装置の駆動負荷である、圧縮機320f、330f、室外送風機340f、及び室内送風機350fの電力を測定し、その測定結果を空調制御装置111fへ送信する。
より具体的には、電力計測装置400f、410f、420f、430fは、計測部500f、510f、520f、530fと、通信部600f、610f、620f、630fとを備えている。
計測部500fは、室内送風機350fの電力を測定し、その測定結果を通信部600fを介して空調制御装置111fに送信する。計測部510fは、室外送風機340fの電力を測定し、その測定結果を通信部610fを介して空調制御装置111fに送信する。計測部520fは、圧縮機330fの電力を測定し、その測定結果を通信部620fを介して空調制御装置111fに送信する。計測部530fは、圧縮機320fの電力を測定し、その測定結果を通信部630fを介して空調制御装置111fに送信する。このようにすることで、空調装置110fで消費される電力を空調制御装置に随時送信することができる。
なお、電力等を測定する計測部500a、500b、・・・500f、510a、510b、・・・510f、520a、520b、・・・520f、530a、530b、・・・530fの設置される場所は限定されるものではない。よって、電力等を計測できれば車内のどこにあってもよいことは言うまでもない。また、電力を測定する方法は電力計に限定されない。例えば、電流計により電流値を求め、それから計算により電力値を求めるようにしてもよい。このとき、交流であれば、力率等を考慮することは言うまでもない。また、電流計は、例えば、電流シャント抵抗器によるものでもよく、実装形態は限定されるものではない。また、電流計と電圧計とに基づいて計算により電力を求めてもよい。いずれにしても、電力を測定または算出する方法自体は当業者であれば容易であるのでここではその詳細についての説明は省略する。
次に、空調制御装置111fは、演算部700fと、記憶部701fと、通信部702fと、制御部703fとを備えている。なお、この場合においては、空調制御装置111fは空調装置110f内部にあるように示したが、場所は空調装置110f内部に限定されるものではない。
すなわち、通信部702fは空調装置110fから送信されるデータ、例えば、消費電力を受信する。その他にも、中間車両102fにはリターン温度センサ120fや車内環境センサ121fが装備されている。したがって、これらの計測結果についても通信部702fは受信する。また、空調制御装置から各種制御信号を送信するときにも通信部702fを介して行われる。要するに、通信部702fは、各種データ信号や各種制御信号を送受信するためのインターフェースである。
通信部702fは、外部機器とのインターフェースであるため、場合によっては適宜プロトコル変換を行うことにより、異なる通信プロトコル間であっても空調制御装置111fは制御信号やデータ信号を送受信できるようにしてもよい。それにより、特定のネットワーク構成に左右されることなく、互いに相互通信ができる。よって、空調装置110fの制御主体を同一車両の空調制御装置111fに限定されることはない。そのため、周囲の環境に応じて、空調装置110の制御主体は変えることができるのである。そのときには、上述したように、例えば、空調制御装置111fはいわゆる中継局としての機能も有するようにしてもよい。
次に、記憶部701fは、例えば、揮発性メモリと不揮発性メモリ等からなる。揮発性メモリには、例えば、演算途中のデータや車両のさまざまな状況を示す車内状況テーブルが格納され、不揮発性メモリには、例えば、空調制御装置111fを稼働させるためのプログラムや空調装置110f等の仕様に基づいて決定される空調装置110fの運転パターン等が予め格納されている。なお、ここでいう車内状況テーブルとは、例えば、電力、温度、及び湿度が格納されているテーブルのことであり、空調装置110a、110b、・・・110fを制御するために必要なパラメータが格納されている。なお、空調制御装置111fを稼働させるためのプログラムを適宜更新可能とする場合には、揮発性メモリに格納させる構成としてもよい。
次に、演算部700fは後述する各種演算を実行する。これにより、例えば、時々刻々と変動する車両状況に基づいて最適な車内環境を実現できるのである。
続いて、制御部703fは、例えば、CPUで構成され、空調制御装置全体を統括制御する。これにより、時々刻々と変動する車両状況を的確に把握することができるので、最適な車内環境を実現できるのである。なお、本願発明の「演算手段」は、制御部703fに相当する。
なお、空調制御装置111fは、例えば、マイコンにより実装されるマイコン制御であり、例えば、温度、湿度、及び乗車率の情報をマイコンに取り込み、その車両に必要な冷房能力を算出し、自動的に制御するものである。
また、空調制御装置111fの各種処理は適宜更新可能であり、例えば、図示しない外部端末と空調制御装置111fとをケーブル等で接続させることによりデータ通信可能とし、この状態で、外部端末に格納された更新処理内容であるプログラム等を空調制御装置111fに送信し、新たな処理内容が上書きされる。これにより、適宜状況に応じて処理内容を更新することが可能となる。
また、空調制御装置111fの各種処理そのものが半導体メモリ等に格納されていてもよい。この場合、空調制御装置111fに装着された半導体メモリを更新内容の格納された別の半導体メモリに交換することにより、処理内容を更新するようにしてもよい。例えば、SDメモリカードを媒体として処理内容を更新するようにしてもよい。言うまでもないことであるが、この場合は、装着されていた半導体メモリに格納された各種処理を上書きし、その半導体メモリを再度装着させることで更新させてもよい。
また、空調制御装置111fの各種処理はファームウェアとして構成されていてもよい。この場合であっても、適宜処理内容は更新可能である。
また、空調制御装置111fの各種処理そのものは全て論理回路等で実装されていてもよい。
また、空調制御装置111は、搭載する場所を限定するものではなく、空調装置110に制御指令を出すようにできればよい。
次に、補助電源装置180bは、中間車両102fの補助回路である空調制御装置111fと空調装置110fに電力を供給する。このように絶えず補助電源により電力が供給されることにより、空調制御装置111fと空調装置110fは稼働することが可能である。また、補助電源装置180bから電力が供給されないときには、上記で説明した受給電装置190を介して他の補助電源装置180aから電力を供給させるようにしてもよい。また、いずれの補助電源装置180a、180bからの電力が供給されない場合であったとしても、図示しない各車両に装備されているバッテリから電力を供給することにより空調制御装置111fと空調装置110fは稼働するようにしてもよい。
次に、車内状況テーブルについて図4を用いて詳細に説明する。
すなわち、図4は、本発明の実施の形態1における車内状況テーブルである。図4に示されるように、車内状況テーブルは、例えば、一車両ごとに一つのテーブルとなっている。具体的には、車内状況テーブルは、運転パターンと、参照権限フラグと、空調装置割当可能総電力と、設定温度と、時々刻々と変動する値とから構成される。
例えば、運転パターンの欄には、対仕様値能力を段階的に定めた値が格納される。具体的には、運転パターンの欄には、後述するように予め空調装置110a、110b、110fの仕様から定められる値に基づいて設定された複数の運転パターンの中から1つの運転パターンが設定されている。この値は後に詳述する運転パターン決定処理により適宜変更される。この値を参照することにより、現在の運転パターンを確認することができるとともに、この値を更新することで別の運転パターンに変更することができる。そして、空調制御装置111fは、この値に基づいて空調装置110fを制御することにより、該当する運転パターンで空調装置110fを運転することができる。
次に、参照権限フラグの欄は、各車両が個別に空調装置110a、110b、110fを制御するか、または、各車両のいずれか、若しくは、他の外部機器が代表となり空調装置110a、110b、110fを制御するかを決めるフラグである。後述するように、例えば、参照権限フラグの値が1であるときには各車両で個別に空調装置110a、110b、110fを制御させるようにしてもよい。また、例えば、参照権限フラグの値が0であるときには代表となる車両若しくは外部機器により一括で空調装置110a、110b、110fを制御させるようにしてもよい。より具体的には、例えば、先頭車両101に設置されている列車情報管理装置113により、一括で制御させるようにしてもよい。
このようにすることで、車両ごとに独自に制御させることも、代表車両若しくは外部機器により制御させることも可能となるようにしてもよい。ただし、個別で制御か代表で制御かを切り替える手法は参照権限フラグに限定されるものではなく、他の方法であってもよいことは言うまでもないことである。要するに、車内状況テーブルを参照したときにはいずれかが制御主体であるかを判断できればよいのである。そのように各種情報を共有することにより、空調制御装置111a、111b、・・・111fは各自運転パターンを決めることができ、各自空調運転を実施することができる。
このように、空調装置110a、110b、・・・110fが各車両の車内状況テーブルを参照できるので、各車両の車内状況を共有することができる。よって、空調制御装置111aが空調装置110fを制御することができる。また、列車情報管理装置113が代表となり、一括して空調装置110a、110b、・・・110fを制御することもできる。また、空調制御装置111aは、外部からの指令を待つことなく、同一の車両に設置されている空調装置110aを制御することもできる。
すなわち、車両内の個々の負荷に対する電力使用割合を演算することにより、各車両の車内状況に応じた制御をすることができる。
次に、空調装置割当可能総電力の欄は、上記で述べたような空調装置割当可能総電力を格納させている。空調装置割当可能総電力は、供給可能な補助電源装置が供給できる電力から重要負荷200a、200b、・・・200fの消費電力を差し引いた電力を意味することとする。これにより、後に詳述する空調装置110a、110b、110fに配分できる電力を求めることができる。
次に、設定温度の欄は、いわゆる空調装置110a、110b、110fの設定温度のことである。現在の温度と設定温度との差の大きさ、すなわち、車内の温度測定値と設定値との差の度合いに応じて、後述する運転パターンを更新する優先順位が定められるのである。
次に、空調装置110a、110b、・・・110fの状況を示す欄について説明する。図4に示されるように、時刻と、電力と、温度と、湿度とから構成される。具体的には、例えば、一定の間隔毎にこれらの値は格納される。そのため、時刻の欄を参照することにより、午前中のある時間帯についての時系列データを作成することもでき、これにより、例えば、時系列データに基づいて統計的手法を用いることにより将来の値を予測できるようにしてもよい。
電力の欄は、例えば、空調装置110a、110b、・・・110f内に装備されている圧縮機320a、320b、・・・320f、330a、330b、・・・330f、室内送風機350a、350b、・・・350f、及び室外送風機340a、340b、・・・340fの各電力値を格納する領域から構成されている。このとき、例えば、空調装置110aに収納される圧縮機320a、330aが複数あるときには、同図に示されるように2つの領域のそれぞれに値が格納されていてもよい。また、この欄は車両に装備される機器によって適宜変更可能であり、例えば、圧縮機の欄は1つであってもよいことは言うまでもないことである。
温度の欄は、リターン温度センサ120a、120b、・・・120fで計測される値が格納され、湿度の欄は、車内環境センサ121a、121b、・・・121fで計測される値が格納される。なお、本願発明の「温度測定装置」は「リターン温度センサ120a、120b、・・・120f」に相当する。
このように、車内状況テーブルには空調装置110a、110b、110fを制御するために必要な値が格納され、例えば、車両ごとに別のテーブルから構成されている。それにより、車両単位でのデータ処理となるため、1つのテーブルに格納されるデータはそれほど大きくならない。また、各車両で個別に制御するときには、該当する車両の車内状況テーブル内のデータを検索するだけで済むので、それだけ高速に車内状況テーブルを参照することができる。そのため、なるべく速く、例えば、瞬時に制御量を決めたほうが好ましい空調装置110a、110b、・・・110fの制御に適している。
言うまでもないことであるが、車内状況テーブルの実装方法はこれに限定されるものではない。例えば、一括して一つのテーブルに各車内状況を格納させるようにしてもよい。その場合には、各車両ごとの領域が明確になるようなフラグ等を設けるようにしてもよい。そのようにすることで、各車両ごとのデータを参照する際の効率を向上させることができる。
なお、ここでは電力をパラメータとしているが、これに限定されるものではない。例えば、電流であってもよい。要するに、重要負荷200a、200b、・・・200fと空調装置110a、110b、・・・110fとの補助電源装置180a、180bを使用する割合がわかればよい。この割合がわかることにより、限られた電力をどのように割り当てるかを算出できるのである。
また、図4には欄を設けて説明していないが、空調装置110の総電力は常に所定の間隔で算出されるものであり、その値は総電力が算出されるごとに車内状況テーブルに格納される。これにより、後に詳述する重要負荷200a、200b、・・・200fと空調装置110a、110b、・・・110fの総電力との割合を算出するために利用される。さらに、運転パターンが変更されたときには、追従して空調装置110a、110b、・・・110fの総電力を算出するようにしてもよい。また、空調装置110の仕様からシミュレーションにより算出するようにしてもよい。また、個別制御ではなく、代表による一括制御であるときには、後述する運転パターン決定処理を実行するときに実測値による総電力ではなく、空調装置110a、110b、・・・110fの仕様からシミュレーションにより算出される総電力であってもよい。
すなわち、実測値に基づいて算出された総電力であれば、参照権限フラグは単なる個別制御か一括制御かを示す指標となる。そのため、このフラグに基づいて個別制御であるか代表による一括制御であるかのいずれかの制御方法を変更する必要はない。
次に、運転パターンの詳細について図5を用いて説明する。
すなわち、図5は、本発明の実施の形態1における運転パターンテーブルである。図5に示されるように、運転パターンに応じて圧縮機320a、320b、・・・320fや圧縮機330a、330b、・・・330fの容量を制御し、室内送風機350a、350b、・・・350fも制御する。その結果、対仕様値能力の割合が定められる。要するに、仕様に対して予め定めることのできる制御量の一覧が段階的に示されているのが運転パターンテーブルである。そして、運転パターンを、例えば、6段階の値に定めることにより、いずれかの値を設定すれば、所望の対仕様値能力となるような制御量が定められるのである。
具体的には、例えば、運転パターンが6であるときには、圧縮機320a、320b、・・・320fのいずれかまたは複数をフルロード、圧縮機330a、330b、・・・330fのいずれかまたは複数をフルロード、室内送風機350a、350b、・・・350fのいずれかまたは複数を運転とすることにより、対仕様値能力は100%となる。また、例えば、運転パターンが5であるときには、圧縮機320a、320b、・・・320fのいずれかまたは複数をフルロード、圧縮機330a、330b、・・・330fのいずれかまたは複数をアンロード、室内送風機350a、350b、・・・350fのいずれかまたは複数を運転とすることにより、対仕様値能力は85%となる。また、例えば、運転パターンが4であるときには、圧縮機320a、320b、・・・320fのいずれかまたは複数をアンロード、圧縮機330a、330b、・・・330fのいずれかまたは複数をアンロード、室内送風機350a、350b、・・・350fのいずれかまたは複数を運転とすることにより、対仕様値能力は70%となる。また、例えば、運転パターンが3であるときには、圧縮機320a、320b、・・・320fのいずれかまたは複数をフルロード、圧縮機330a、330b、・・・330fのいずれかまたは複数を停止、室内送風機350a、350b、・・・350fのいずれかまたは複数を運転とすることにより、対仕様値能力は50%となる。また、例えば、運転パターンが2であるときには、圧縮機320a、320b、・・・320fのいずれかまたは複数をアンロード、圧縮機330a、330b、・・・330fのいずれかまたは複数を停止、室内送風機350a、350b、・・・350fのいずれかまたは複数を運転とすることにより、対仕様値能力は35%となる。また、例えば、運転パターンが1であるときには、圧縮機320a、320b、・・・320fのいずれかまたは複数を停止、圧縮機330a、330b、・・・330fのいずれかまたは複数を停止、室内送風機350a、350b、・・・350fのいずれかまたは複数を運転とすることにより、対仕様値能力は0%となる。なお、対仕様値能力が0%であるときには、いずれの圧縮機320a、320b、・・・320f、330a、330b、・・・330fも稼働していないので、単なる送風運転となる。
このように、運転パターンを選択することにより空調能力を変更することが可能である。後に詳述するように、この運転パターンを利用することで、一律ではなく車両ごとに空調装置110a、110b、・・・110fを制御することができる。なお、ここでは2つの圧縮機320a、320b、・・・320f、330a、330b、・・・330fを稼働させる場合の例を示したが、もちろん1つの圧縮機320a、320b、・・・320fだけで空調装置110a、110b、・・・110fを運転させることも可能である。同様にして、1つの圧縮機330a、330b、・・・330fだけで空調装置110a、110b、・・・110fを運転させることも可能である。
なお、空調装置110a、110b、・・・110fにインバータが搭載されていれば、圧縮機320a、320b、・・・320f、330a、330b、・・・330f、室内送風機350a、350b、・・・350f、及び室外送風機340a、340b、・・・340fの電流または電力を監視し、周波数制御により消費電力または電流を制御するようにしてもよい。また、空調装置110a、110b、・・・110fにインバータが搭載されていなければ、圧縮機320a、320b、・・・320f、330a、330b、・・・330fの台数制御やアンロード、フルロードの切り替え、室内送風機350a、350b、・・・350f、室外送風機340a、340bの台数制御、極数変換により消費電力または電流を制御するようにしてもよい。
また、温度と湿度との値に基づいて定められている別の運転パターンテーブル(図示せず)により、除湿運転をするか否かを決定するようにしてもよい。このときには、車内状況テーブルから温度と湿度とを抽出後、抽出された温度と湿度を別の運転パターンテーブル、例えば、温度と湿度により定められるような除湿運転若しくは加湿運転の運転パターンテーブル(図示せず)に当てはめるようにしてもよい。このようにすることで、車内状況テーブルで管理されている値を有効に利用することができる。
例えば、湿度が高いときには、冷房だけでなく空調装置110a、110b、・・・110f内部に収納されている図示しない電気ヒータを動作させることによりリヒート運転、すなわち除湿運転をさせるようにしてもよい。それに対して、湿度が低いときには、加湿運転をさせるようにしてもよい。このようにすることで、体感温度のパラメータとして寄与しうる湿度を適切に制御することにより、車内を快適な状況に制御することができる。
具体的には、冷房時において、温度が設定温度よりも高く、かつ、湿度も設定湿度も高いときには、除湿運転をさせるようにしてもよい。そして、除湿運転後に湿度が下がったときには冷房時においては設定温度を上げるようにしてもよい。このようにすることで体感温度を下げることができ、車内の環境を快適にすることができる。
また、暖房時において、温度が設定温度よりも低く、かつ、湿度も設定湿度よりも低いときには、加湿運転をさせるようにしてもよい。そして、加湿運転後に湿度が上がったときには暖房時においては設定温度を下げるようにしてもよい。このようにすることで体感温度を上げることができ、車内の環境を快適にすることができる。
要するに、車内状況テーブルで管理されている各種パラメータを利用することにより、効率良く車内の環境を快適にするための制御量を求めることができる。
次に、冷凍サイクルについて図6を用いて説明する。
すなわち、図6は、本発明の実施の形態1における空調装置の冷凍サイクルを示す図である。冷凍サイクルは、圧縮機320と、凝縮器321と、減圧装置(例えば、キャピラリーチューブ)323と、蒸発器324とが冷媒配管で循環するように接続されて形成されている。また、図6に示されるように、室外送風機340及び室内送風機350を備えている。同図中、実線矢印は冷媒の流れる方向を示し、破線矢印は、室外送風機340からであれば、室外送風機340から凝縮器321を通した排熱の流れを示し、室内送風機350を通るものであれば、蒸発器324を通して室内送風機350から送風される冷風の流れを示す。これらにより、車内の冷房運転が行われる。すなわち、圧縮機320により冷媒は高温高圧に圧縮され、凝縮器321により車外へ熱を放散し、ドライヤにより過冷却液の不純物を取り除き、減圧装置323により冷媒は低温低圧に膨張され、蒸発器324により車内の暖かい空気から熱を奪う。そのような冷凍サイクルにより、車内を冷房することができる。付言すれば、空調装置110a、110b・・・110fは、いわゆる一体型冷房装置であり、ユニットクーラとして車両の屋根上に搭載される。
次に、以上説明した車両用空調システムの構成を前提として、本発明の要部である、車両内の個々の負荷に対する電力使用割合を演算することにより、各車両の車内状況に応じた制御をすることができる車両用空調システムの動作について説明する。
まず、動作の概要について説明する。
例えば、補助電源装置180a、180bの各電源容量は、240kVAとする。このとき、1編成7車両であれば、1車両当たり240kVA/7両の電源容量が割り当てられる。また、1編成は、先頭車両101、中間車両102a、102b、・・・102fが連結してなるものとする。このとき、空調装置110a、110b、・・・110fには、例えば、1kVAの室内送風機350a、350b、・・・350fが1台ずつ、1kVAの室外送風機340a、340b、・・・340fが1台ずつ、1台当たり20kVAの圧縮機330a、330b、・・・330f、320a、320b、・・・320fがそれぞれあるので、1車両に必要な合計電力容量は次式(数1)で表される。
1+1+20×2=42kVA・・・(数1)
このため、全車両分の空調装置に必要な電力容量は次式(数2)で表され、重要負荷を、例えば、1台2kVAとすれば、全車両の重要負荷に必要な電力容量は次式(数3)で表され、1編成で必要な総電力容量は次式(数4)で表される。
42×7=294kVA・・・(数2)
2×7=14kVA・・・(数3)
294+14=308kVA・・・(数4)
このため、各空調装置を独自に動作させることができる。しかしながら、補助電源装置180aが故障し、受給電装置190が動作すると、各空調装置に対する負荷軽減動作がなされる。
具体的には、電力計測装置400a、400b、・・・400f、410a、410b、・・・410f、420a、420b、・・・420f、430a、430b、・・・430fは通信部600a、600b、・・・600f、610a、610b、・・・610f、620a、620b、・・・620f、630a、630b、・・・630fを介して、通信部702a、702b、・・・702fに測定した電力値を送信する。このようにして送信された電力値は図4に示されるような車内状況テーブルで共有される。そして、そのような車内状況テーブルは図25に示されるようなネットワーク・トポロジーで共有される。また、リターン温度センサ120a、120b、・・・120fで測定された車内温度と車内環境センサ121a、121b、・・・121fで測定された湿度も図4に示されるような車内状況テーブルで共有される。そして、そのような車内状況テーブルは図25に示されるようなネットワーク・トポロジーで共有される。このとき、補助電源装置180bの容量240kVAから重要負荷14kVAを差し引いた226kVAを超えない範囲で各車両ごとに最適な空調装置110a、110b、・・・110fの運転パターンを演算する。
例えば、各車両の車内温度の設定値が25℃、そのときの実際の車内温度が、先頭車両101では27℃、中間車両102aでは27℃、中間車両102bでは25℃、中間車両102cでは24℃、中間車両102dでは24℃、中間車両102eでは23℃、中間車両102fでは26℃であるとする。すると、車内温度の設定値と実測値との差は、それぞれ、先頭車両101では+2℃、中間車両102aでは+2℃、中間車両102bでは±0℃、中間車両102cでは+1℃、中間車両102dでは−1℃、中間車両102eでは−2℃、中間車両102fでは+1℃となる。これらの温度情報は空調制御装置111a、111b、・・・111fが各自車内状況テーブルを参照することにより共有している。
次に後に詳述する運転パターンを決めるための演算を実行後に空調装置110a、110b、・・・110fに決定された運転パターンを割り当てる。例えば、先頭車両101ではフル運転、中間車両102aではフル運転、中間車両102bでは送風運転、中間車両102cでは圧縮機320cを運転停止かつ圧縮機330cをアンロード運転、中間車両102dでは送風運転、中間車両102eでは送風運転、中間車両102fでは圧縮機320fを運転停止かつ圧縮機330fをアンロード運転を実施する。このとき、1編成の消費電力は次式(数5)で表される。
(20×2+1+1)+(20×2+1+1)+1+34+1+1+34=155kVA・・・(数5)
従って、補助電源装置180bの容量240kVAを超過しない。そのため、空調装置110a、110b、・・・110fが運転可能となる。
次に、車両ごとに個別に空調装置110a、110b、・・・110fを制御するか、一車両が代表として一括で空調装置110a、110b、・・・110fを制御するかを切り替える処理について図7を用いて説明する。
すなわち、図7は、本発明の実施の形態1における制御主体決定処理の詳細を示すフローチャートである。同図に示されるように、制御主体決定処理は、上記で説明した参照権限フラグを設定することにより、個別制御で空調装置110a、110b、・・・110fを制御させるか、または、代表制御で空調装置110a、110b、・・・110fを制御させるかを決定することができる。これにより、空調制御装置111a、111b、・・・11f間をつなぐネットワーク構成、すなわち、ネットワーク・トポロジーに限定されることなく、各車両の空調装置の消費電力を電力供給可能な補助電源装置の範囲内に制御することにより、各車両の車内状況に応じた制御をすることができる。具体的には、個別制御の処理を呼び出すか、代表制御の処理を呼び出すか、という処理がここで実行される。
例えば、ネットワーク・トポロジーとして、リング形、メッシュ形、スター形、フルコネクト形、バス形、ツリー形、ハイブリッド形、階層形等があり、いずれであってもよい。言うまでもないことであるが、このような構成は論理構成であっても物理構成であってもネットワーク・トポロジーは限定されないのは言うまでもないことである。
例えば、図25にネットワーク・トポロジーの一例を示し、図26にネットワーク・トポロジーの他の一例を示す。図25は、例えば、空調制御装置111a、111b、・・・111fがそれぞれ空調装置110a、110b、・・・110fの運転パターンを決めている。図26は、例えば、列車情報管理装置113が空調制御装置111a、111b、・・・111fから情報を受信した後に、運転パターンを決定して空調制御装置111a、111b、・・・111fに伝達するようにしている。いずれにしても、このような構成により、空調制御装置111a、111b、・・・111fは、互いに通信し、決定された運転パターンに基づいて合計の消費電力または電流が供給可能な電力を超えない範囲でそれぞれの空調装置110a、110b、・・・110fを制御するのである。
まず、切替指令が有るか否かを確認する(S100)。切替指令有ではないときには(S100NO)、切替指令が有るまで待機する。これに対して、切替指令有りであるときには(S100YES)、続いて、切替指令の詳細が、代表であるか個別であるかを確認する(S101)。
次に、切替指令の詳細が代表であるときには(S101代表)、図4に示される車内状況テーブルに格納されている参照権限フラグを0に設定し、車内状況テーブルを取得し、運転パターン決定処理に移行する(S102〜104)。具体的には、参照権限フラグを0に設定した後、その車内状況テーブルに格納されている各種パラメータを一次的に演算用の領域に取り込む。
続いて、運転パターン決定処理にて運転パターン決定後、交番フラグは1であるか否かを確認する(S105)。交番フラグは1であるときには(S105YES)、交番フラグを0に設定し、処理は終了する(S108)。これに対して、交番フラグは1ではないときには(S105NO)、運転パターンを各車両に送信し、各車両に設置されている空調制御装置111は運転パターンに基づいて空調装置110を制御し、その後、交番フラグを0に設定し、処理は終了する(S106〜108)。
なお、運転パターン決定処理の詳細については図8〜23を用いて後に詳述する。また、交番フラグについては図23及び24を用いて後に詳述するが、要するに、運転パターンを下げる必要のある台数分の空調装置110を台数分毎に交番させる処理である。すなわち、この場合においては台数毎にラウンドロビンにて、運転パターンを下げる空調装置110を切り替えるのである。このようにすることで、運転パターンを下げる車両が局所的に定まるのを防ぐことができる。
次に、切替指令の詳細が個別であるときには(S101個別)、図4に示される車内状況テーブルに格納されている参照権限フラグを1に設定し、車内状況テーブルを取得し、運転パターン決定処理に移行する(S109〜111)。具体的には、参照権限フラグを1に設定した後、その車内状況テーブルに格納されている各種パラメータを一次的に演算用の領域に取り込む。続いて、運転パターン決定処理にて、運転パターンを決定するとともに、決定された運転パターンに基づいて空調装置110を制御し、処理は終了する(S109〜111)。
なお、運転パターン決定処理では、運転パターンを決定するだけでなく、決定された運転パターンに基づいて空調装置110を制御する場合もある。実際に制御をするか否かを判定させるのに、例えば、参照権限フラグが利用されてもよい。具体的には、参照権限フラグが0であるときには、実際の制御についてはこの段階では実施しないようにし、参照権限フラグが1であるときには、実際の制御についてもこの段階で実施するように定めることも可能である。このようにすることで、代表による一括制御か個別制御かを切り替えることができる。すなわち、車内状況を共有することにより、ネットワーク・トポロジーに左右されることなく空調装置110を制御することができる。
次に、運転パターン決定処理の詳細について図8を用いて説明する。
すなわち、図8は、本発明の実施の形態1における運転パターン決定処理の詳細を示すフローチャートである。同図に示されるように、運転パターン処理は、第1の運転台数調整処理(S200)を実行後、所定時間が経過したか否かを判定し(S201)、所定時間が経過していないときには(S201NO)、第2の運転台数調整処理にて設定された運転パターンを維持し、所定時間が経過したときには(S201YES)、第2の運転台数調整処理(S202)を実行し、処理は終了する。
なお、第1の運転台数調整処理の詳細については、図9〜13を用いて説明し、第2の運転台数調整処理の詳細については、図14〜17を用いて説明する。
まず、第1の運転台数調整処理の詳細について図9を用いて説明する。
すなわち、図9は、本発明の実施の形態1における第1の運転台数調整処理の詳細を示すフローチャートである。同図に示されるように、第1の運転台数調整処理は、必要電力算出処理を実行後(S300)、運転台数変更フラグが1であるか否かを判定する(S301)。運転台数変更フラグが1ではないときには(S301NO)、参照権限フラグは0であるか否かを判定する(S305)。参照権限フラグは0であるときには(S305YES)、そのまま処理は終了する。これに対して、参照権限フラグは0ではないときには(S305NO)、運転パターンに基づいて空調装置を制御し、処理は終了する(S306)。
次に、運転台数変更フラグが1であるときには(S301YES)、運転パターン変更台数算出処理(S302)、優先順位決定処理(S303)、第1の運転パターン変更処理(S304)を経た後、参照権限フラグは0であるか否かを判定する(S305)。参照権限フラグは0であるときには(S305YES)、そのまま処理は終了する。これに対して、参照権限フラグは0ではないときには(S305NO)、運転パターンに基づいて空調装置110を制御し、処理は終了する(S306)。
次に、必要電力算出処理の詳細について図10を用いて説明する。
すなわち、図10は、本発明の実施の形態1における必要電力算出処理の詳細を示すフローチャートである。まず、補助電源故障信号が到来したか否かを判定する(S400)。ここで言う補助電源故障信号とは補助電源装置180が故障したときに伝達される信号である。この信号により、少なくなった電源容量の範囲内で空調装置110を運転させつつも、乗客に対するサービスを低下させない制御が開始される。
まず、補助電源故障信号ありではないときには(S400NO)、そのまま待機する。次に、補助電源故障信号ありのときには(S400YES)、空調装置110の総電力を算出する(S401)。続いて、編成車両100にある全ての空調装置110について算出したか否かを判定する(S402)。すなわち、編成車両100にある全ての空調装置110について算出していないときには(S402NO)、S401に戻り、編成車両100にある全ての空調装置110について算出するまで空調装置110の総電力を算出する処理を繰り返す(S401、402)。これに対して、編成車両100にある全ての空調装置110について算出したときには(S402YES)、算出された全空調装置の総電力をW1に設定し、空調装置割当可能総電力を取得し、取得した空調装置割当可能総電力をW2に設定し、W1/W2を算出し、算出したW1/W2を運転台数低減要素に設定する(S403〜407)。
続いて、運転台数低減要素が1より小さいか否かを判定する(S408)。すなわち、運転台数低減要素が1より小さいときには(S408YES)、運転台数変更フラグを0に設定し、処理は終了する(S409)。これに対して、運転台数低減要素が1以上であるときには(S408NO)、運転台数変更フラグを1に設定し、処理は終了する(S410)。
この一連の処理により、現状のままの運転パターンで空調装置110を運転させ続けていても電力不足にならないか否かが判定される。すなわち、運転台数低減要素が1以上であれば、電力不足であることを意味し、運転パターンを変える必要があることになり、運転台数低減要素が1より小さいときには、現状のままの運転パターンであっても、電力不足ではないことを意味し、運転パターンを変える必要がないことになる。
換言すれば、ここでいう運転台数変更フラグが1のときには電力不足を意味し、運転台数変更フラグが0のときには電力不足ではないことを意味する。すなわち、補助電源装置180が故障したときに、まず、電力が足りているか否かを判定するのが必要電力算出処理である。
次に、運転パターン変更台数算出処理の詳細について図11を用いて説明する。
すなわち、図11は、本発明の実施の形態1における運転パターン変更台数算出処理の詳細を示すフローチャートである。
まず、変更台数Mを1に設定する(S500)。ここで言う変更台数Mとは、運転パターン変更台数算出処理により格納される運転パターンを変更する空調装置110の台数のことである。続いて、現在の運転パターンを取得し(S501)、運転パターンを下げられるか否かを判定する(S502)。運転パターンを下げられるときには(S502YES)、運転パターンを1段階下げ、全空調装置の総電力を算出し、算出された全空調装置の総電力をW1に設定し、図10で示されるS405で設定した空調装置割当可能総電力であるW2を用いて、W1/W2を算出し、算出したW1/W2を運転台数低減要素に設定する(S503〜507)。
続いて、運転台数低減要素が1より小さいか否かを判定する(S508)。すなわち、運転台数低減要素が1より小さいときには(S508YES)、処理は終了する。これに対して、運転台数低減要素が1以上であるときには(S508NO)、全台数の空調装置110について運転パターンを1段階下げた処理が実行されたか否かを判定する(S509)。
すなわち、全台数の空調装置110について運転パターンを1段階下げる処理がなされていないときには(S509NO)、未実施の空調装置110の車内状況テーブルを参照し、変更台数Mをインクリメントし、変更台数Mを格納した後(S510〜512)、再びS501に戻り、別の空調装置110について運転パターンを1段階下げる処理が実行される(S501〜508)。これにより、運転台数低減要素が1より小さくなるまで、1段階下げる空調装置110の合計台数を求める処理が実行される。そのため、運転パターンを下げるのに必要な台数を求めることができる。換言すれば、運転パターンを1段階下げただけで運転台数低減要素が1より小さくなる合計台数を求める処理が実行されるのである。
これに対して、全台数の空調装置110について運転パターンを1段階下げる処理がなされているときには(S509YES)、最初に選択した車両の空調装置110の車内状況テーブルを参照し、S500〜508の処理を繰り返す。これにより、運転パターンをもう1段階下げる処理が実行されることになり、その場合における変更台数Mが求められることになる。そして、この処理は運転台数低減要素が1より小さくなるまで繰り返されることになる(S508)。すなわち、運転台数低減要素が1より小さくなるまで繰り返し運転パターンを下げる処理が実行される。換言すれば、この場合においては、全ての空調装置110の運転パターンを1段階ずつ下げただけでは運転台数低減要素が1より小さくならなかったことを意味する。そのため、2段階以上下げることで運転台数低減要素が1より小さくなるまで処理を続行させるのである。
また、運転パターンを下げられないときには(S502NO)、上記で説明したS509以降の処理が実行される。
以上の結果、運転台数低減要素が1より小さくなるときの合計台数を求めることができる。すなわち、限られた電源容量以内でありつつも、できるだけ空調装置を稼働させて車内を快適な状態に制御するための制御パラメータを求めることができる。
次に、優先順位決定処理の詳細について図12を用いて説明する。
すなわち、図12は、本発明の実施の形態1における優先順位決定処理の詳細を示すフローチャートである。まず、nに1を設定する(S600)。ここで言うnは、空調装置110の全台数を意味し、後述する優先順位テーブルに利用される。
次に、車内状況テーブルから一つの車両分のテーブルを選択し、その選択されたテーブルから設定温度Tsを取得し、現在時刻に最も近い車内温度Tinを取得し、その差分の絶対値|Tin−Ts|を算出し、算出結果をΔTn、この場合には、ΔT1に設定する(S601〜605)。
続いて、nは編成車両100に設置されている空調装置110の全台数であるか否かが判定される(S606)。nは全台数でないときには(S606NO)、nをインクリメントし、上記で説明したS601〜605の処理を繰り返す。これに対して、nは全台数であるときには(S606YES)、全ΔTnを昇順に並べ替え、先頭データを最も優先順位の高いデータとして先頭から順に優先順位を割り付け、並べ替えた結果を図示しない優先順位テーブルに格納する(S608〜610)。
この結果、優先順位の最も高いとみなされた空調装置110は、最も設定温度と車内温度との差がある車両に設置されていることを意味することとなり、優先順位の最も低いとみなされた空調装置110は、最も設定温度と車内温度との差が少ない車両に設置されていることを意味することとなる。そのため、そのような空調装置110を高い優先順位に設定することにより、優先的に電力を割り当てるようにすることができる。なお、優先順位の順番付けはこれに限定されるものではない。例えば、降順等である。要するに、昇順、降順等いずれでもよく、何らかのアルゴリズムに基づいて順位付けがされていればよい。
次に、第1の運転パターン変更処理の詳細について図13を用いて説明する。
すなわち、図13は、本発明の実施の形態1における第1の運転パターン変更処理の詳細を示すフローチャートである。まず、上記で求めた、変更台数Mを取得し、優先順位テーブルを参照する(S700、701)。次に、優先順位テーブル末尾から変更台数M分の空調装置110を検索する(S702)。すなわち、優先順位の最も低い空調装置110から運転パターンを低減するために必要な台数分の空調装置110を検索する。
続いて、検索結果から該当する空調装置110の車内状況テーブルを取得する(S703)。すなわち、優先順位テーブルから該当する空調装置110を介して車内状況テーブルが参照されるのである。次に、車内状況テーブルに設定されている運転パターンを1段階下げ、運転パターンを更新し(S704、705)、処理は終了する。
次に、第2の運転台数調整処理の詳細について図14を用いて説明する。
すなわち、図14は、本発明の実施の形態1における第2の運転台数調整処理の詳細を示すフローチャートである。第2の運転台数調整処理は、優先順位決定処理(S800)、第1の必要電力再計算処理(S801)を経た後、再計算フラグが1であるか否かを判定する(S802)。再計算フラグが1であるときには(S802YES)、第2の必要電力再計算処理(S804)を実行後、参照権限フラグは0であるか否かを判定する(S805)。参照権限フラグは0であるときには(S805YES)、そのまま次の処理に移行する。これに対して、参照権限フラグは0ではないときには(S805NO)、運転パターンに基づいて空調装置を制御する(S806)。これに対して、再計算フラグが1ではないときには(S802NO)、第2の運転パターン変更処理を実行後(S803)、参照権限フラグは0であるか否かを判定する(S805)。参照権限フラグは0であるときには(S805YES)、そのまま次の処理に移行する。これに対して、参照権限フラグは0ではないときには(S805NO)、運転パターンに基づいて空調装置110を制御する(S806)。
次いで、所定時間が経過したか否かを判定する(S807)。所定時間経過していないときには(S807NO)、そのまま、現在の運転パターンを保持したままで空調装置110を運転する。これに対して、所定時間経過したときには(S807YES)、終了指令が有るか否かを判定する(S808)。終了指令有りのときには(S808YES)、そのまま処理は終了する。これに対して、終了指令有りではないときには(S808NO)、S800の優先順位決定処理に戻り、上記で説明した処理を繰り返す(S800〜807)。
なお、優先順位決定処理(S800)については、図9に示される優先順位決定処理(S303)と同様であり、図12を用いて説明したので、ここではその説明については省略する。
次に、第1の必要電力再計算処理の詳細について図15を用いて説明する。
すなわち、図15は、本発明の実施の形態1における第1の必要電力再計算処理の詳細を示すフローチャートである。まず、優先順位テーブルを参照し、最も優先順位の高い空調装置110を検索し、検索された空調装置110の車内状況テーブルを取得する(S900〜902)。続いて、運転パターンを1段階上げ、運転パターンを更新した後に(S903、904)、全空調装置の総電力を算出し、算出された全空調装置の総電力をW1に設定し、W1/W2を算出し、算出したW1/W2を運転台数低減要素に設定する(S905〜908)。
次いで、運転台数低減要素が1より小さいか否かを判定する(S909)。すなわち、運転台数低減要素が1より小さいときには(S909YES)、再計算フラグを0に設定し、処理は終了する(S910)。これに対して、運転台数低減要素が1より小さくないときには(S909NO)、再計算フラグを1に設定し、処理は終了する(S911)。
この結果、運転パターンを1段階上げたことで再度運転パターンを再計算すべきか否かが判定されることになる。
次に、第2の運転パターン変更処理の詳細について図16を用いて説明する。
すなわち、図16は、本発明の実施の形態1における第2の運転パターン変更処理の詳細を示すフローチャートである。まず、優先順位テーブルを参照し、最も優先順位の高い空調装置110を検索する(S1000、1001)。次に、検索された空調装置110の車内状況テーブルを取得し、運転パターンを1段階上げ、運転パターンを更新する(S1002〜1004)。このようにすることで、最も優先順位の高い空調装置110の運転パターンを1段階上げることができる。
次に、第2の必要電力再計算処理の詳細について図17を用いて説明する。
すなわち、図17は、本発明の実施の形態1における第2の必要電力再計算処理の詳細を示すフローチャートである。まず、最も優先順位の高い空調装置110を検索して運転パターンを1段階上げる(S1100〜1104)。次に、最も優先順位の低い空調装置110を検索して運転パターンを1段階下げる(S1105〜1110)。このようにすることで、必要な箇所には運転パターンを上げつつも、それほど必要ではない箇所には運転パターンを下げるというような制御ができるようになる。
具体的には、優先順位テーブルを参照し(S1100)、最も優先順位の高い空調装置110を検索し(S1101)、検索された空調装置110の車内状況テーブルを取得した後に(S1102)、運転パターンを1段階上げ(S1103)、運転パターンを更新する(S1104)。
続いて、優先順位テーブルを参照し(S1105)、優先順位テーブル末尾を指す末尾カウンタに末尾のデータを参照させ(S1106)、末尾カウンタの指すデータを取得し(S1107)、取得したデータに対応する空調装置110の庫内状況テーブルを取得した後に(S1108)、運転パターンを1段階下げ(S1109)、運転パターンを更新する(S1110)。
次いで、全空調装置の総電力を算出し(S1111)、算出された全空調装置の総電力をW1に設定し(S1112)、W1/W2を算出した後に(S1113)、算出したW1/W2を運転台数低減要素に設定する(S1114)。続いて、運転台数低減要素が1より小さいか否かを判定する(S1115)。運転台数低減要素が1より小さいときには処理は終了する(S1115YES)。これに対して、運転台数低減要素が1より小さくないときには(S1115NO)、次に優先順位の低いデータを指すように末尾カウンタを更新した後(S1116)、S1107に戻り、上記で説明したS1107〜1114の処理を繰り返す。
このような構成により、最も優先順位の高い空調装置110の運転パターンを1段階上げた後、限られた電源容量で他の空調装置110をできるだけ車内が快適になるように運転させるために、優先順位の低い空調装置110を1つずつ選択して、それらの運転パターンを1段階下げる処理を運転台数低減要素が1より小さくなるまですることができる。それにより、最も運転パターンを上げなければならない空調装置110の運転パターンを上げつつも、それを維持するために、運転パターンを下げてもそれほど影響の出ない空調装置110の運転パターンを下げるようにしたので、いずれかの補助電源が故障したとしても、一律に空調装置に制限をかけることなく、乗客に対するサービス低下を少なくすることができる。
従って、いずれかの補助電源装置180が故障した場合、残りの補助電源装置180から供給可能な電力を、空調装置110a、110b、・・・110fに余すことなく供給することができる。また、一律に空調装置110a、110b、・・・110fの運転上限を設定することなく、空調装置110a、110b、・・・110fに割当可能な許容電力内で各車両に最適な空調運転制御を実施できるので、車内の環境を快適にすることができる。
実施の形態2.
次に、運転パターン決定処理の詳細について図18を用いて説明する。
すなわち、図18は、本発明の実施の形態2における運転パターン決定処理の詳細を示すフローチャートである。同図に示されるように、運転パターン処理は、第3の運転台数調整処理(S1200)を実行後、所定時間が経過したか否かを判定し(S1201)、所定時間が経過していないときには(S1201NO)、第3の運転台数調整処理にて設定された運転パターンを維持し、所定時間が経過したときには(S1201YES)、第2の運転台数調整処理(S1202)を実行し、処理は終了する。
なお、第3の運転台数調整処理の詳細については、図19〜22を用いて説明する。また、第2の運転台数調整処理の詳細については、図14〜17を用いて上記で説明したのでここではその説明については省略する。
まず、第3の運転台数調整処理の詳細について図19を用いて説明する。
すなわち、図19は、本発明の実施の形態2における第3の運転台数調整処理の詳細を示すフローチャートである。第3の運転台数調整処理は、一律運転パターン変更処理(S1300)、優先順位決定処理(S1301)、第2の運転パターン変更台数算出処理(S1302)、第3の運転パターン変更処理(S1303)を経た後に、参照権限フラグは0であるか否かを判定する(S1304)。参照権限フラグは0であるときには(S1304YES)、一括で制御することになっているため、そのまま処理は終了する。これに対して、参照権限フラグは0ではないときには(S1304NO)、設定された運転パターンに基づいて空調装置110を制御する(S1305)。すなわち、個別に空調装置110を制御するのである。
次に、第3の運転台数調整処理の各工程ごとの処理の詳細について説明するが、優先順位決定処理(S1301)については、図9に示される優先順位決定処理(S303)と同様であり、図12を用いて説明したので、ここではその説明については省略する。
なお、一律運転パターン変更処理の開始時に、図10に示される必要電力算出処理の最初の行程である補助電源故障信号があるか否かの判定処理(S400)を設けるようにしてもよい。このようにすることで、補助電源装置200が故障してから、上記で説明した処理がなされるようにすることもできる。また、この行程がなかったとしても、一律運転パターン変更処理を実行することにより、余剰に空調運転させることがなくなるため、乗客に対するサービスが低下する度合いを少なくすることもでき、さらには、全体としてのエネルギー消費量を削減することができる。
次に、一律運転パターン変更処理の詳細について図20を用いて説明する。
すなわち、図20は、本発明の実施の形態2における一律運転パターン変更処理の詳細を示すフローチャートである。まず、空調装置110を1つ選択し(S1400)、選択された空調装置110の車内状況テーブルを取得する(S1401)。次に、車内状況テーブルから現在の運転パターンを取得し(S1402)、運転パターンを下げられるか否かを判定する(S1403)。
すなわち、運転パターンを下げられるときには(S1403YES)、運転パターンを1段階下げた後(S1404)、全台数の空調装置110について運転パターンを下げられるかを確認する処理が済んでいるかを確認し、済んでいないときには(S1405NO)、上記で説明したS1400〜1404を繰り返し実行する。それに対して、運転パターンを下げられないときには(S1403NO)、それについては運転パターンを下げずに、全台数の空調装置110について運転パターンを下げられるかを確認する処理が済んでいるかを確認し、済んでいないときには(S1405NO)、上記で説明したS1400〜1404を繰り返し実行する。
一方、全台数についての確認が済んでいるときには(S1405YES)、全空調装置の総電力を算出し(S1406)、算出された全空調装置の総電力をW1とし(S1407)、空調装置割当可能総電力を取得し(S1408)、取得した空調装置割当可能総電力をW2に設定し(S1409)、W1/W2を算出した後に(S1410)、算出したW1/W2を運転台数低減要素に設定する(S1411)。次に、運転台数低減要素が1より小さいか否かを判定する(S1412)。運転台数低減要素が1よりも小さくないときには(S1412NO)、S1400に戻り、上記で説明した処理を繰り返す(S1400〜1411)。これに対して、運転台数低減要素が1より小さいときには(S1412YES)、参照権限フラグは0であるか否かを確認する(S1413)。参照権限フラグは0ではないときには(S1413NO)、運転パターンに基づいて空調装置110を制御し(S1414)、所定時間が経過したか否かを判定する(S1415)。所定時間経過したときには(S1415YES)、そのまま処理は終了する。これに対して、所定時間経過しないときには(S1415NO)、所定時間経過するまで設定した運転パターンによる空調装置110の運転を継続する。また、参照権限フラグは0ではないときには、上記で説明したS1415の処理を実行した後、処理は終了する。
これにより、運転台数低減要素が1より小さくなるように運転パターンを一律に下げることができる。
次に、第2の運転パターン変更台数算出処理の詳細について図21を用いて説明する。
すなわち、図21は、本発明の実施の形態2における第2の運転パターン変更台数算出処理の詳細を示すフローチャートである。まず、変更台数Mを1に設定する(S1500)。続いて、現在の運転パターンを取得した後に(S1501)、運転パターンを上げられるか否かを判定する(S1502)。運転パターンを上げられるときには(S1502YES)、運転パターンを1段階上げ(S1503)、全空調装置の総電力を算出し(S1504)、算出された全空調装置の総電力をW1に設定した後に(S1505)、W1/W2を算出し(S1506)、算出したW1/W2を運転台数低減要素に設定する(S1507)。続いて、運転台数低減要素が1より小さいか否かを判定する(S1508)。運転台数低減要素が1より小さくないときには(S1508NO)、全台数の空調装置について運転パターンを1段階上げる処理が済んでいるかを判定する(S1509)。
すなわち、全台数の空調装置で済んでいないときには(S1509NO)、未実施の空調装置の車内状況テーブルを参照し(S1510)、変更台数Mをインクリメントし(S1511)、変更台数Mを格納した後に(S1512)、S1501に戻り、上記で説明した処理を繰り返す(S1501〜1508)。
また、運転パターンを上げられないときには(S1502NO)、上記で説明したS1509以降の処理が実行される。
また、運転台数低減要素が1より小さいときには(S1508YES)、そのまま処理は終了する。
また、全台数の空調装置110で済んでいるときには(S1509YES)、最初に選択した車両の空調装置110の車内状況テーブルを参照し(S1513)、S1500に処理が戻り、上記で説明した処理を繰り返す(S1500〜1507)。
これにより、図20に示される一律に運転パターンを下げる処理をした後に、どこまで運転パターンを上げられるかを運転台数低減要素により判定させることができる。
次に、第3の運転パターン変更処理の詳細について図22を用いて説明する。
すなわち、図22は、本発明の実施の形態2における第3の運転パターン変更処理の詳細を示すフローチャートである。まず、変更台数Mを取得し(S1600)、優先順位テーブルを参照し(S1601)、優先順位テーブル先頭から変更台数M分の空調装置110を検索する(S1602)。続いて、検索結果から該当する空調装置110の車内状況テーブルを取得し(S1603)、運転パターンを1段階上げた後(S1604)、運転パターンを更新する(S1605)。
この結果、図20に示される一律に運転パターンを下げる処理をした後に、どこまで運転パターンを上げられるかを運転台数低減要素により判定させることができる。
従って、いずれかの補助電源装置180が故障した場合、残りの補助電源装置180から供給可能な電力を、空調装置110a、110b、・・・110fに余すことなく供給することができる。また、一律に空調装置110a、110b、・・・110fの運転上限を設定することなく、空調装置110a、110b、・・・110fに割当可能な許容電力内で各車両に最適な空調運転制御を実施できるので、車内の環境を快適にすることができる。
なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
実施の形態3.
次に、運転パターン決定処理の詳細について図23を用いて説明する。
すなわち、図23は、本発明の実施の形態3における運転パターン決定処理の詳細を示すフローチャートである。同図に示されるように、運転パターン処理は、必要電力算出処理(S1700)を実行後、運転台数変更フラグが1であるか否かを判定し(S1701)、運転台数変更フラグが1ではないときには(S1701NO)、処理は終了し、運転台数変更フラグが1であるときには(S1701YES)、運転パターン変更台数算出処理(S1702)を実行し、続いて、交番処理を実行後(S1703)、処理は終了する。
なお、必要電力算出処理の詳細については、図9に示される必要電力算出処理(S300)と同様であり、図10を用いて説明した。運転パターン変更台数算出処理の詳細については、図9に示される運転パターン変更台数算出処理と同様であり、図11を用いて上記で説明した。従って、ここではその説明についてはいずれも省略する。
次に、交番処理の詳細について図24を用いて説明する。
すなわち、図24は、本発明の実施の形態3における交番処理の詳細を示すフローチャートである。ここで言う交番処理とは、上記で説明したように、運転パターンを下げる必要のある台数分の空調装置110について台数単位で交番させる処理である。すなわち、台数毎に、サイクリックに運転パターンを下げる空調装置110を交番させるのである。このようにすることで、編成車両100にて、運転パターンを下げる処理を一定間隔で行うことができる。それにより、過度に車内環境の悪化した車両とそうでない車両との差が生じることを防ぐことができる。
まず、交番フラグを1に設定し(S1800)、交番回数を設定する(S1801)。ここで言う交番回数とは何回交番処理を繰り返すかの値であり、任意に設定可能である。次に、変更台数Mを取得する(S1802)。続いて、テーブルカウンタを優先順位テーブルの先頭に設定し(S1803)、テーブルカウンタの参照先から変更台数M分までの空調装置110を検索する(S1804)。これにより、優先順位の高い順に変更台数分の空調装置110を検索することができる。
続いて、検索結果から該当する空調装置110の車内状況テーブルを取得し(S1805)、運転パターンを1段階下げ(S1806)、運転パターンを更新する(S1807)。次に、参照権限フラグは0であるか否かを判定する(S1808)。参照権限フラグは0ではないときには(S1808NO)、運転パターンに基づいて空調装置110を制御する(S1809)。次いで所定時間経過したか否かを判定する(S1811)。所定時間経過していないとき(S1811NO)には経過するまで待機する。これにより、更新された運転パターンにて所定時間空調装置が運転される。続いて、所定時間経過したときには(S1811YES)、テーブルカウンタに変更台数M+1が設定される(S1812)。
なお、言うまでもないことであるが、このS1812の処理は、具体的には、変更台数M台分のアドレス領域と1台分のアドレス領域との合計のことである。すなわち、テーブルカウンタはM台分の次の番地を指すことになるため、M+1台目のデータをテーブルカウンタは参照していることになる。
次いで、交番回数に達したか否かが判定される(S1813)。交番回数に達していないとき(S1813NO)にはS1804に戻り、上記で説明したS1804〜1812が繰り返し実行される。これに対して、交番回数に達しているときには(S1813YES)、そのまま処理は終了する。
一方、参照権限フラグは0であるときには(S1808YES)、運転パターンを各車両に送信し(S1810)、S1809に戻り、S1809以降が繰り返し実行される。
このようにして、交番処理が実現され、サイクリックに運転パターンを下げる処理を実行することができる。
なお、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態1または2と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
付言すれば、消費電力がシミュレーションに基づいた値ではなく、実測値に基づいた値であれば、上記で説明したS106、S107、S306、S806、S1305、S1414、及びS1809の処理は不要となる。すなわち、参照権限フラグにより、運転パターンに基づいて空調装置110a、110b、・・・110fを制御する処理が不要となる。換言すれば、実測値に基づくときには上記で説明した運転パターンを更新する処理のときに同時に実際の空調装置110a、110b、・・・110fが制御され、シミュレーションに基づいた値であるときには、運転パターンを更新する処理のときには空調装置110a、110b、・・・110fに実際の制御指令は送信されない。
以上の処理が実施されると、限られた電源容量の範囲内でありつつも、一律の運転パターンではなく、各車両に適した運転パターンにて空調装置110a、110b、・・・110fを制御し、その結果、車内を快適な状態に保つことができる。
従って、例えば、補助電源装置180aが故障した場合、残りの補助電源装置180bから供給可能な電力を、空調装置110a、110b、・・・110fに余すことなく供給することができる。また、一律に空調装置110a、110b、・・・110fの運転上限を設定することなく、空調装置110a、110b、・・・110fに割当可能な許容電力内で各車両に最適な空調運転制御を実施できるので、車内の環境を快適にすることができる。
付言すれば、編成車両数はいずれの上記実施例に限定されるものではなく、補助電源装置台数も限定されるものではない。要するに、車両内の個々の負荷に対する電力使用割合を演算するような実施形態であれば、補助電源装置180a、180bのいずれかが故障した場合であっても、各車両の車内状況に応じた制御をすることができるのである。なお、以上の実施形態では、冷房時について説明したが、暖房時においても同様であり、その場合には図示しない四方弁により冷媒の流れを切り替えることで対応可能である。また、暖房時においては冷媒回路に基づいた暖房に限定されるものではない。例えば、石油ストーブや電熱線によるヒーター等であってもよい。
このように、以上の実施形態によれば、各車両の空調装置の運転状態の優先度に応じて制御することにより、いずれかの補助電源が故障した場合であっても、各車両の車内状況に応じた制御をすることができる。すなわち、各車両の車内状況に応じた制御をすることができる。従って、補助電源装置180a、180bのいずれかが故障した場合であっても、各車両において、電力供給可能な範囲の電源容量にて各車両に最適な空調運転をすることができる。それにより、各車両内が不快な状況となるのを防ぐことができる。さらに、余剰に空調することがないことにより、乗客に対するサービスが低下する度合いを少なくすることもできる。
また、各車両の空調装置の運転状態の優先度に応じて制御することにより、いずれかの補助電源が故障した場合であっても、各車両の車内状況に応じた制御をすることができる。よって、各車両の車内状況に応じた制御をすることができるため、全ての補助電源装置180a、180bが故障した場合であっても、各車両に設置されたバッテリを電源として利用してもよい。そのような場合にあっては、電力供給可能な範囲の電源容量にて各車両に最適な空調運転をすることができるため、各車両内が不快な状況となるのを防ぐことができる。
また、余剰に空調することがないことにより、全体としてのエネルギー消費量を削減することができる。
換言すれば、補助電源装置180a、180bのいずれかが故障した場合には、残りの正常な補助電源装置180a180bのいずれかによって供給できる電力から重要負荷に必要電力を割り当てた後の残りの電力内で、各車両を最適な温度に設定できる。具体的には、通信部600a、600b、・・・600f、610a、610b、・・・610f、620a、620b、・・・620f、630a、630b、・・・630fによって、空調装置内部に収納されている、圧縮機320a、320b、・・・320f、330a、330b、・・・330f、室外送風機340a、340b、・・・340f、及び室内送風機350a、350b、・・・350fの電力値データが通信部702a、702b、・・・702fに送信される。続いて、演算部700a、700b、・・・700fによって、通信部702a、702b、・・・702fで受信した電力値データと各車両の車内温度等の関係に基づいて各車両内の温度を最適にする空調装置110a、110b、・・・110fの運転パターンが演算される。そして、制御部703a、703b、・・・703fによって、運転パターンに基づいた空調装置110a、110b、・・・110fの運転が実行される。これにより、補助電源装置180a、180bのいずれかが故障したときであっても、各車両において、供給可能な電源容量の範囲内で最適な空調運転を行うことができる。それにより、各車両内が不快な状態になることを防ぐことができるようになるとともに、余剰に空調をすることがなくなる。その結果、乗客に対するサービス低下を少なくすることができるのである。