JP2012533853A - フォトニック装置を封止する方法 - Google Patents
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Abstract
フォトニック装置を封止する方法が開示される。フォトニック装置は、例えば、ディスプレイ装置、照明装置又は光起電力装置を構成することができる。フォトニック装置をフォトニック装置の両側から(両方のガラス基材を通って)順次又は同時に加熱されたガラスフリットで封止する。このような方法はフォトニック装置の強度を増大させるために広いシール幅及び全体に幅の広いフリットの使用を容易にすることができる。
Description
本発明は、フォトニック装置を封止する方法、特にガラスを主成分とするフリットで気密封止されたガラス板を有するガラスパッケージを形成する方法に関する。
〔関連出願の説明〕
本願は、2009年7月15日に出願された米国特許出願第12/503,547号の権益主張出願である。このような米国特許出願及びこの米国特許出願に引用されている刊行物を含む非特許文献及び特許文献を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。
本願は、2009年7月15日に出願された米国特許出願第12/503,547号の権益主張出願である。このような米国特許出願及びこの米国特許出願に引用されている刊行物を含む非特許文献及び特許文献を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。
有機発光ダイオード(OLED)装置は、ディスプレイ用途において台頭しつつある技術であり、目下のところ、技術的には例えば携帯電話のようなありふれた装置に見受けられる寸法形状を超える寸法形状まで進歩しているに過ぎない。したがって、有機発光ダイオードは、製造するのに費用が依然として高くついている。
OLED装置、例えばOLEDを利用したディスプレイと関連した1つの問題は、OLEDに用いられる有機発光材料のために気密封止環境を維持する必要があるということにある。これは、ごく僅かな酸素又は水分が存在していても、この中では迅速に劣化するために生じる。このことに鑑みて、ガラスシールが2枚のガラス板を互いに封止するガラスを主成分とするフリット材料によって提供される場合があり、このようなガラスシールは、結果として得られるパッケージ内に納められた有機材料に対して十分な気密性を提供する。このようなガラスパッケージは、接着剤により封止された装置よりも遙かに優れていることが判明した。典型的なフリット封止構成では、ガラスを主成分とするフリットは、閉ループの形態のカバープレートと呼ばれている第1のガラス板に被着される。フリットは、ペーストとして被着され、このペーストは、その後、カバープレート上の定位置にあるフリットを少なくとも部分的に焼結する(予備焼結する)のに十分な期間及び温度で炉内で加熱され、ディスプレイのその後の組み立てが容易になる。次に、OLEDを一般にバックプレーンプレート又は単にバックプレーンと呼ばれている第2のガラス板に被着させる。OLEDは、例えば、電極材料、有機発光材料、正孔注入層及び必要に応じて他の構成部品を含む場合がある。次に、2枚の板を互いに整列状態にし、予備焼結フリットをレーザで加熱し、レーザは、フリットを軟化させて2枚のガラス板相互間に気密シールを形成する。
ディスプレイ装置のサイズが増大するにつれ、シールの健全性及び丈夫さに対する要求も又増大している。フリット利用シールが破損する1つの理由は、有効フリット表面の利用度が不十分であることによることが判明した。すなわち、実際に基材ガラスに封着するフリットの幅は、有効幅全体が封止される場合に可能なほど広くはない。
一実施形態では、フォトニック装置を形成する方法であって、ガラスを主成分とするフリットのループを有する第1のガラス板を位置決めするステップを有し、フリットは、有機光子活性又はフォトニック的活性(photonically active)材料が被着された第2のガラス板上に壁を形成し、この方法は、第1のガラス板を通して第1のレーザビームで第1のガラス板と接触状態にある壁の第1の表面を照射するステップと、第2のガラス板を通して第2のレーザビームで第2のガラス板と接触状態にある壁の第2の表面を照射するステップとを更に有し、壁の第1及び第2の表面の照射により、第1のガラス板が第2のガラス板に結合され、第2の表面は、封止部分及び非封止部分を有することを特徴とする方法が開示される。これは、例えば顕微鏡を用いて基材としてのガラス板のうちの一方を透かして見ることによって確かめられる。封止部分の幅は、好ましくは、幅の最大幅の80%以上である。好ましくは、封止部分の幅は、壁の最大幅の80%〜98%である。フリット壁の第1の表面及びフリット壁の第2の表面を第1のレーザビーム及び第2のレーザビームでそれぞれ封止することは、順次又は同時に実施可能である。順次実施される場合、第1のレーザビームと第2のレーザビームは、同一のレーザビームであるのが良く、封止は、レーザ(及びレーザビーム)を再配向し又は封止されるべき組立体を再配向し(例えば、裏返す)ことによって達成される。
幾つかの実施形態では、封止されるべき組立体を照射及び封止に先立って加熱するのが良く、それにより封止されるべき組立体のガラス板に生じる応力が減少する。例えば組立体を熱板上に支持することにより組立体を加熱することができる。
組立体を横から見ると、即ち、フリットが最初に予備焼結されなかったガラス基材を透かして見ると、非封止部分は、封止部分の互いに反対側の側部に位置決めされた一対の非封止部分から成る。封止部分の幅を測定し、フリット壁の最大幅を測定し(例えば、一方の非封止部分の外側から他方の非封止部分の外側まで)、封止部分の幅をこの最大幅で除算すると、シール幅が得られる。シール幅を百分率で表すことができる。
2枚のガラス板相互間に設けられる有機材料は、例えば、エレクトロルミネッセント(電光)有機材料であるのが良い。例えば、有機材料は、有機発光ダイオードを構成することができ、更に、ディスプレイ又は照明パネルを構成することができ、或いは、光起電力装置を構成することができる。
別の実施形態では、ガラスパッケージを封止する方法であって、第1のガラス板を第2のガラス板上に位置決めするステップを有し、第1のガラス板の表面には壁がくっついており、壁は、ガラス封止材料から成り、この方法は、第1のガラス板を通して第1のレーザビームで第1のガラス板と接触状態にある壁の第1の表面を照射するステップと、第2のガラス板を通して第2のレーザビームで第2のガラス板と接触状態にある壁の第2の表面を照射するステップとを更に有し、壁の第2の表面は、第2のガラス板に隣接して位置し、壁の第1及び第2の表面の照射により、第1のガラス板が第2のガラス板に結合され、第2の表面は、封止部分及び非封止部分を有し、封止部分の幅は、壁の最大幅の80%以上であることを特徴とする方法が開示される。
一実施形態では、この方法は、第1の表面及び第2の表面を順次照射するステップを有する。別の実施形態では、第1の表面と第2の表面を同時に照射するのが良い。
添付の図面を参照して本発明をなんら限定することなく与えられる以下の詳細な説明において本発明の内容は一層容易に理解されると共に本発明の他の目的、特徴、細部及び利点は、一層明らかになろう。この説明に含まれるこのような追加のシステム、方法、特徴及び利点は全て、本発明の範囲に含まれ、特許請求の範囲に記載された本発明により保護されるものである。
以下の詳細な説明では、本発明を限定するものではなく説明の目的上、特定の細部を開示する例示の実施形態が本発明の完全な理解を提供するために記載されている。しかしながら、本発明の開示の恩恵を受ける当業者には明らかなように、本発明は、本明細書において開示した特定の細部から逸脱した他の実施形態で実施できる。さらに、周知の装置、方法及び材料に関する説明は、本発明の説明を分かりにくくしないよう省かれている場合がある。最後に、該当する場合には、同一の参照符号は、同一の要素を示している。
本明細書で用いられるフリットという用語は、無機ガラス粉末を含むガラスを主成分とする材料として定義される。ガラスを主成分とするフリット(以下、「ガラス主体フリット」という場合がある)又は単に「フリット」は、オプションとして、1種類又は2種類以上の揮発性結合剤及び/又はビークルとしての溶剤を含む場合がある。フリットは、所望ならば、接合されるガラス基材の熱膨張率(CTE)へのフリットCTEの一致又は整合を向上させるようフリットのCTEを変えるのに役立つ不活性の、通常は結晶性の材料を更に含む場合がある。かくして、フリットは、主としてガラスで構成されるが、フリットは、他の無機及び有機材料を更に含む場合がある。フリットは、種々の形態で存在しうる。例えば、ガラス粉末を結合剤及びビークルと混合すると、フリットは、ペーストを形成することができる。フリットを揮発性結合剤及びビークルを追い出す(蒸発させる)がフリットを焼結することがないようにするのに十分な温度でフリットを加熱することにより、ガラス粉末ケークを生じさせることができ、この場合、ガラス粉末は、特定の形状に軽く結合されるが、ガラス粒子は、それほど流動しない。高い温度での加熱により、ガラス粒子は、流動して融合し、それによりフリットが少なくとも部分的に焼結(「予備焼結」)される。フリットガラスの溶融温度を超える高い温度で更に加熱すると、その結果として、ガラス粒子の完全な融合が得られ、ガラス粒子の粒の性質が消える。ただし、フリット内に存在する結晶性CTE変更成分は、ガラスマトリックス内に残存可能である。
本明細書に用いられる「フリットガラス」という用語は、ビークル、結合剤又はCTE変更成分を除くフリットのガラス部分を意味するために用いられる。
本明細書で用いられるフォトニック装置という用語は、電流又は電圧を生じさせるのに光を利用するか、光を発生させるために電圧又は電流の印加を利用するかのいずれかの装置を意味している。フォトニック装置の非限定的な例としては、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、例えば有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、光起電力装置(太陽電池)、有機発光ダイオード照明パネルを含む照明パネルなどが挙げられる。広汎な用途が本発明の恩恵を受けることができるが、本発明は、上記の装置の中の幾つか、例えば、有機発光ダイオードを利用した装置に使用できる有機材料の劣化を阻止する上で特に効果的である。この理由で、以下の説明は、有機発光ダイオード素子に関して行われ、本明細書において提供される教示を他のフォトニック装置に利用することができるということは理解されたい。
フォトニック装置、例えば有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ(例えば、テレビジョン、コンピュータ用モニタ)又は照明器具のようなフォトニック装置を形成する代表的な方法では、エレクトロルミネッセント素子をフリット封止材料で2枚のガラス板相互間に封止する。これは、有機材料から成るエレクトロルミネッセント素子の封止にとって特に効果的である。というのは、大抵の有機材料は、相当な時間にわたり酸素又は水分にさらされると必ず深刻な劣化が生じるからである。したがって、シールは、好ましくは、気密である。このために、封止材料は、2枚のガラス板相互間に位置決めされた状態で加熱されるガラス主体フリットであるのが良い。
図1は、第1のガラス板12(カバープレート12)、第2のガラス板14(バックプレーンプレート14)及びエレクトロルミネッセント素子16を有する例示の有機発光ダイオード装置10を示している。エレクトロルミネッセント素子16は、例えば、第1の電極材料18(例えば、アノード)、第2の電極材料20(例えば、カソード)及び第1の電極材料と第2の電極材料との間に設けられた有機エレクトロルミネッセント材料22(例えば、有機発光材料)の1つ又は2つ以上の層を有するのが良い。封止材料24は、第1のガラス板と第2のガラス板との間に気密シールを形成する。
例えば有機発光ダイオード装置のようなフォトニック装置のための従来型封止作業では、ガラス主体フリットを封止材料24として用い、第1のガラス板(カバープレート)12に被着させ、そして定位置で予備焼結するが、その手段として、フリット中の有機材料を追い出すと共にフリット24を焼結してこれをガラス板にくっつけるのに十分な期間及び温度でカバーガラス‐フリット組立体を炉内で加熱する。フレーム又はループの形をした予備焼結フリット壁26を有するカバープレートが図2に示されている。
図3に示されている第2のガラス板には、エレクトロルミネッセント材料22の1つ又は2つ以上の層が被着されている。第2のガラス板は、他の層、例えばアノード18、カソード20及び少なくとも1つの導電性リード(導線)28を更に有するのが良い。導電性リード28は、金属又は金属酸化物であるのが良い。
フリット24をいったん予備焼結してこれをカバープレート12にくっつけてフリット壁26を形成すると、有機エレクトロルミネッセント素子16を有するカバープレート12及びバックプレーンプレート14は、好ましくは、不活性雰囲気中で(例えば、制御雰囲気を収容した適当に寸法決めされているグローブボックス内で)位置合わせされ、その結果、2枚のプレートを互いに結合すると、有機エレクトロルミネッセント素子は、カバープレート12、バックプレーンプレート14及びフリット壁26によって封入されるようになる。すなわち、バックプレーン、カバープレート及びフリット壁は、有機材料を収容したキャビティ30を形成する。次に、フリット壁26を再び加熱して壁を軟化させ、その結果、この壁がカバープレートとバックプレーンプレートの両方にくっつくようにする。ガラス主体フリット壁が冷えると、このフリット壁は、2枚のガラス板相互間に有機材料を酸素及び水分から保護する気密シールを形成する。
カバー基材及びバックプレーン基材を気密封止する一方法では、ガラス板12,14相互間に位置決めしたフリット壁26を図4に示されているように封止レーザ34に封止されたレーザビーム32でカバープレート12を通って照射する。好ましくは、カバープレート(又はレーザビームを透過させるプレート)のガラスは、ガラス主体フリットが光を吸収する波長又は波長範囲の有意光を吸収せず、その結果、封止レーザビーム32は、ガラス板を実質的に非減衰状態で通過するようになる。これは、フリットの加熱を妨害する場合があり又は有機材料を損傷させる場合があるプレートの加熱を阻止する。換言すると、カバープレート12及びバックプレーンプレート14は、透明であり又は封止レーザ34により出力される1つ又は複数の波長ではほぼ透明であることが好ましく、従って、カバープレートの加熱の結果として、有機材料が約125℃の温度を超えることがなく、好ましくは100℃以上の温度を超えることがないようになる。封止レーザ34により生じるビーム32は、フリットを通過してフリットを軟化させ、そしてこれをカバーガラスプレートとバックプレーンガラスプレートの両方にくっつけ、それによりこれらプレート相互間に気密封止が形成される。また、カバーガラスプレートを通ってフリットを照射すると、アノード及びカソード電極をシール領域の外部に位置するコンポーネントに接続する1本又は2本以上の電気リード28を通って封止する必要がなくなる。換言すると、ガラスカバープレート12を通って照射することにより、レーザビームにとって邪魔のない経路が、それほど減衰することのない状態でフリットまで得られる。
上述したように、レーザビームを通すガラス板は、主としてレーザビームに対して透明であることが望ましい。これは、有機材料の温度を著しく上げる場合のあるガラス板の加熱を阻止する。他方、フリットは、フリットを加熱してこれを軟化させるために十分なエネルギーが吸収されるようレーザビームに対して高い吸収性を示さなければならない。事実、レーザビームのエネルギーの大部分は、代表的には表面から数ミクロン以内でフリットの表面(例えば、フリットとカバープレートとの間のインターフェイス)のところ又はその近くで吸収される。かくして、フリットの表面よりも下における加熱は、主として、熱伝導によるものである。
予備焼結ステップ中、フリットを構成する個々の粒子は、流動して融合(即ち、合体)し始める。予備焼結ステップの完了時、フリットは、カバープレートに良好にくっつけられているが、フリットのバルク全体を通じて完全に合体されているわけではない場合がある。かくして、このプロセスのレーザ密封部分の間、フリットがバックプレーンにくっついてカバープレートをバックプレーンに封着させるだけでなくフリットガラスが実質的に合体するよう十分な加熱が必要である。合体が不十分であると、フリット壁にボイドが生じ又はフリット壁とその下に位置する表面(例えば、ガラス基材表面、リードなど)との間のインターフェイスがくっついていない場合がある。
気密性に加えて、シールは、通常の取り扱い又は使用中、シールの健全性を保証するのに十分な強度を有することも又望ましい。これは、例えば、完成物品、例えばディスプレイの寸法が大きく、シールに加わる応力が同様に大きい場合に特に重要である。このために、実際に下に位置する表面にくっつけられたフリットの部分は、できるだけ幅が広いことが必要である。代表的には、封止を実施するために用いられるレーザの強度は、ガウスプロフィールを有し、従って、多くのエネルギーが縁部ではなくフリットの中心に運ばれる。フリットの幅全体にわたって一定の強度を達成するためにあらゆる技術的労力が用いられ、例えば、ビームの中央部分だけがフリットとオーバラップするようにビームの幅を増大させているが、これは、部分的にしか成功していないことが判明した。第1に、エレクトロルミネッセント素子の被着に利用できるバックプレーンプレートの表面積を利用するため、ディスプレイ製造業者は、典型的には、エレクトロルミネッセント素子を拡張してこれをできるだけフリットに近づけてレーザビームサイズが必然的に拘束されるようにしている。
さらに、予備焼結ステップに先立ってフリットをカバープレートに被着させる(例えば、ノズルを介する小出し、スクリーン印刷など)手法とは無関係に、フリットの開放フェースに急な(例えば、正方形の)コーナー部を得ることが困難であることを言うことも認識されるべきである。これにより、予備焼結プロセス中の表面張力効果に加えて、フリットをフリットの幅全体にわたって、特にバックプレーンガラスプレートの近くで封止しないよう妨げる場合のある丸いコーナー部が生じることがある。
最後に、上述したように、バックプレーンプレートは、通常、バックプレーンの内面に被着され、エレクトロルミネッセント素子とキャビティ30の外部に位置する要素との間の電路を形成する少なくとも1本の導電性リード28を有する。1本又は2本以上の電気リードの熱的特性は、バックプレーンガラス又はガラス主体フリットの熱的性質とは異なっているので、電気リード領域上の封止幅は、電気リードのないガラス領域上の封止領域とは異なる場合がある。事実、或る場合には、シール幅は、リードのないガラス領域上よりもリード領域上の方が大きい場合がある。というのは、電気リードは、バックプレーンガラスよりも良好に熱を伝導することができるので、フリットとバックプレーンとの間のインターフェイスのところでフリットの幅全体にわたって温度を均一にするからである。本明細書で用いられる密封又はシール幅という用語は、バックプレーン(より適切に言えば、フリットが最初に予備焼結されていないプレート)に封着されたフリット壁26の部分の幅をフリット壁の最大幅で除算して得られる割合を意味している。シール幅は、この商に100%を乗算することにより百分率で表現可能である。
かくして、フォトニック装置、例えばOLEDディスプレイ装置を封止する一試みは、互いに競合する要望に直面する。ガラスパッケージは、製造スループットを最大にするようできるだけ迅速に封止されるべきであるが、フリットの厚み中を通る所要の熱伝導にとっての時間が不十分であるほど封止が迅速であってはならない。レーザビームは、ビームの最も平べったい部分がフリットの幅を覆うほど広いが、ビームがパッケージ内に納められたエレクトロルミネッセント素子を照射するほど広くはないことが必要である。これは、特にエレクトロルミネッセント素子が例えば有機発光ダイオード(OLED)装置で用いられている有機エレクトロルミネッセント材料から成る場合に特に当てはまる。レーザビーム出力は、十分な光エネルギーがフリットに及ぼされてフリットがフリット上におけるビームの所与の移動速度の場合に熱くなって軟化するほど高いが、ガラス主体フリットの吸収性が高く且つ熱伝導率が小さいのでフリットの照射面の過熱が生じるほど高くはないことが必要である。さらに、シール幅は、特に大型ディスプレイの場合にシール強度を向上させるようできるだけ広く且つ一定であることが必要である。
したがって、80%を超え、好ましくは少なくとも約80%〜95%のシール幅を得ることができる方法が本明細書において開示される。このようなシール幅は、単一の側部からの封止時に得られる約70%〜78%のシール幅よりも大きい。図5は、第1のガラス板12、第2のガラス板14、第1の電極18、第2の電極20、第1の電極と第2の電極との間に設けられたエレクトロルミネッセント層16及び第2のガラス板14上に設けられていて、これら電極のうちの一方に接続された電気リード28を含むフォトニック組立体10を示している。
第1のガラス板12は、第1のガラス板上に壁26を形成するガラス主体フリット24のループを有する。フリット24は、例えば、封止プロセスで用いられるレーザの動作周波数に一致し又は実質的に一致した所定の波長の実質的に相当大きな光吸収断面を有する耐寒性ガラスフリットであるのが良い。フリットは、例えば、鉄、銅、バナジウム、ネウジウム及びこれらの組み合わせから成る群から選択された1つ又は2つ以上の光吸収イオンを有するのが良い。フリットは、フリットの熱膨張率を変えてこれがガラス板12,14の熱膨張率に一致し又は実質的に一致するようにする充填剤(例えば、反転充填剤又は添加充填剤)を更に有するのが良い。壁の断面形状は、特に制限されず、例えば、実質的長方形又は台形であるのが良い。本発明の実施形態に従って第1のガラス板12と第2のガラス板14との間に気密シールを形成する例示のフリット壁が図6の断面図に示されている。フリット壁は、第1のガラス板12の表面42に隣接して位置する第1の壁面又は表面40及びこれと反対側の第2の壁面又は表面44を有する。第2の表面44は、第2のガラス板14の表面46と接触状態にあっても良く、或いは、第2の表面44は、第2のガラス板14上に被着された1つ又は2つ以上の他の材料と接触状態にあっても良い。これら追加の層は、1つ又は2つ以上の電極層、例えばカソード金属‐リード、インジウムスズ酸化物(ITO)及び他の保護材料バリヤ層又は電気リード(例えば、図6に示されているリード28)を含むのが良い。装置基材(即ち、基材板14)上の各材料は、種々の熱的性質を有する(例えば、熱膨張率(CTE)、熱容量及び熱伝導率)を有する。装置側部上に見られる種々の熱的性質により、レーザ封止プロセスの完了後におけるフリットと装置境界部との間の結合強さの相当大きな変化が生じる場合がある。フリット壁26は、外側表面48、内側表面50、最大幅Wmax、高さ(厚さ)h及びシール幅Wsを更に有する。
フリット壁26は、第2の基材14への第1の基材12の封着に先立って予備焼結されるのが良い。予備焼結を達成するため、フリット24を加熱し、その結果、壁26が第1の基材12にくっつくようになる。次に、フリット24が被着された状態で第1の基材12を炉内に配置するのが良く、炉は、壁26を形成するフリットの組成に基づく温度でフリット24を「発火」し、又は圧密化する。予備焼結段階中、フリット24を加熱し、フリット内に含まれている有機結合剤を燃え尽きさせる。
壁26の厚さ又は高さhは、好ましくは、特定の装置(例えば、ディスプレイ装置)に関する用途に応じて、5〜30ミクロンのオーダ、好ましくは約10〜20ミクロンのオーダ、より好ましくは約12〜15ミクロンのオーダである。過剰すぎない適当な厚さの壁により、基材を第1の基材12の裏側から封止することができる。壁26は薄すぎる場合、加熱が不十分である場合がある。壁26が厚すぎる場合、壁は、溶解するのに十分なエネルギーを第1の表面40のところで吸収することができるが、フリットを溶解させるのに必要なエネルギーが第2の基材14の近くの壁の領域に達するのを阻止する。第1のガラス板12は、壁26がガラス板と周りの有機発光材料22との間に位置決めされるよう第2のガラス板14に対して位置決めされる。
大まかに図4を参照すると、単一のレーザビームがフリット壁を通過し、特に、単一のレーザビームが表面40を通過する封止プロセス中、壁表面44の一部分が隣接の下に位置する材料(例えば、基材板14)に密着する場合がある。しかしながら、代表的には、壁表面44の一部分は、隣接の材料にはくっつかない。上述したように、熱は、主として壁面40からの熱伝導により第2の表面44に伝達され、ビームの滞留時間及び/又は出力は、フリット壁の厚さ全体にわたってフリット壁の完全な溶融を促進するには不十分である場合がある。かくして、両方の表面40,44のところでの壁の周囲周りに少なくとも最小限の接着が存在していることにより気密封止部を形成することができるが、シールは、特に、例えばフリット壁面44と下に位置する材料(例えばガラス板14)との間のインターフェイスのところでは機械的強度を欠いているので壊れやすい場合がある。封止の度合いは、シール幅により特徴付けられる場合がある。シール幅は、第1の表面(WS)の封止部分の幅をフリット壁の最大幅(Wmax)で除算して計算される。これは、図6及び図7により最も良く理解できる。
図7は、図6に示されているレーザビーム32bの方向からフリット壁26を示す図である。図7は、2つの非封止部分54a,54bと境を接したフリット壁26の封止部分52を示している。非封止部分54a,54bは、この図ではWUSの幅を有している。非封止部分54aの非封止幅は、部分54bの非封止幅と同一であっても良く、これとは異なっていても良い。注目されるべきこととして、観察されているこの構造が3次元であるが、図(例えば、顕微鏡を通して見た図)は、2次元であり、かくして、種々の部分の相対幅の測定をあたかも2次元平面上に置いたかのように容易に測定することができる。
上述したように、メートル法によるこのシール幅は、上述の商に100%を乗算することにより百分率で容易に表せる。かくして、一例を挙げると、最大幅Wmaxが2mmのフリットの場合、フリット壁の表面(第1の表面40か第2の表面44かのいずれか)を最大フリット幅の1mmだけにわたってくっつけた場合、その表面のシール幅は、50%である。第1の基材12の表面42とフリット壁26の第1の表面44との間のシール幅は、代表的には、予備焼結ステップに起因して非常に高い百分率のものなので、別段の指定がなければ、シール幅は、予備焼結中にくっつけられないフリットの表面の封止度を示すために用いられる。これは、代表的には、第2のガラス板14(バックプレーン14)に密着された第2の表面44である。
シール幅が大きければ大きいほど、フリット壁の機械的強度はそれだけ一層高くなることが示された。図8は、0.4mmの最大フリット幅(左側の黒で塗りつぶした円)及び0.7mmのフリット壁幅(右側の黒で塗りつぶした正方形)を有する2つのサンプルの背反又は鞍形曲げ強度のワイブルプロット図(ニュートン・メートルで表された力と破損の確率との関係を表す図)である。まず最初にサンプルの一方の側部を封止し、次に他方の側部を封止する(組立体を裏返すことにより)ことによってシールを形成した。24ワットのレーザ出力で10mm/秒の速度で封止を行った。0.4mmサンプルのシール幅は、79%±1%であり、0.7mmサンプルのシール幅は、85%±1%であった。黒で塗りつぶした円で表されているデータ(0.4mmサンプル)は、11.3のワイブル勾配m及び10.2ニュートン・メートルのワイブル特性応力Soを含み、黒で塗りつぶした正方形により表されたデータ(0.7mmサンプル)は、15.2のm値及び19.5ニュートン・メートルのSo値を含んでいる。0.7mmフリット壁のシール幅は、0.4mmフリット壁のシール幅よりも約88%大きかった。このデータは、大きなシール幅を備えた壁の背反又は鞍形シール強度の約2倍の増大を示している。
図9は、四点曲げで試験した0.4mm壁幅及び0.7mm壁幅に関する同様なワイブルデータを示している。封止パラメータは、先の例の場合と同一であった。0.4mmサンプルに関するワイブル勾配mは、11.9であり、特性応力Soは、35.4ニュートン・メートルであった。0.7mmサンプルのワイブル勾配mは、13.3であり、特性応力Soは、52.6ニュートン・メートルであった。この場合、0.7mm壁幅に関するシール幅は、80%±1%であり、0.7mmサンプルに関するシール幅は、84%±1%であり、0.4mm壁幅よりも約80%大きかった。0.7mm壁のシール強度(右側の黒で塗りつぶした三角形)は、0.4mm壁(左側の黒で塗りつぶした正方形)のシール強度よりも49%大きかった。
一実施形態によれば、フォトニック装置を封止する方法は、ガラス主体フリットをカバーガラスプレート12上に小出しするステップ及びフリットを予備焼結してカバープレート上に壁を形成するステップを有する。ガラス主体フリットを予備焼結するのに、例えば、カバープレート及びフリットをオーブン又は炉内に入れて加熱するのが良い。例示の加熱スケジュールは、例えば、少なくとも15分間で400℃であるのが良い。
以下のステップにおいて、レーザビーム32aは、第1のガラス板12を通ってフリット壁26の第1の表面40を照射する。ビーム32aとフリット壁26との相対運動により、フリット壁26の第1の表面40が熱くなって軟化する。その後、壁26は、冷えて凝固する。第2のレーザビーム32bは、同様に、第2のガラス板14を通って、或る場合には、電極(例えば、アノーデ18)又はプレート14上に被着された他の層を通ってフリット壁26の第2の表面44を照射する。レーザビーム32bとフリット壁26の相対運動により、ビーム32bは、壁を加熱してこれを軟化させる。その後、壁26は、冷えて凝固し、第1のガラス板12と第2のガラス板14との間のエレクトロルミネッセント層16を気密封止する。第1の表面40の加熱後又は第1の表面40の加熱と同時に第2の表面44を加熱するのが良い。例えば、一実施形態では、フリット壁26の第1の表面40をレーザビーム32によって加熱するのが良い。次に、封止されるべき組立体をひっくり返し、レーザビーム32を用いて同様に表面44を加熱し、シールの封止を完了させる。変形例として、第1のレーザ34aを用いて第1の表面40を第1のレーザビーム32aで加熱し、第2のレーザ34bが第2の表面44を第2のレーザビーム32bで加熱しても良い。別の実施形態では、レーザから来た1本のビームを2つのビームに分割することによって単一ビームから2つのビームを生じさせることができる。好ましくは、両面封止に起因して生じるシール幅は、約80%を超え、より好ましくはシール幅は、約85%を超え、より好ましくは約90%を超える。シール幅の代表的な範囲は、80%〜95%であるが、95%を超えても良い。
シール強度を向上させるため、ガラス板12及び/又はガラス板14のうちの一方又は両方をフリット壁26の照射に先立って加熱し、それによりシールを形成している間に存在する場合のある応力を減少させるのが良い。例えば、基材のうちの一方の温度を上昇させるために加熱状態の支持体(「ホットプレート」)を用いて照射前に組立体を支持するのが良い。加熱状態の1枚又は複数枚の基材は、有機エレクトロルミネッセント材料が損傷されないようにするために125℃未満、好ましくは100℃未満の温度に維持されるべきである。ただし、有機材料を収容していないガラスパッケージの封止は、この制約に縛られることがない。
幾つかの実施形態では、レーザ34a及び/又はレーザ34bに代えてマイクロ波発生器を用いても良く、この場合、フリット壁をレーザビームではなくマイクロ波ビームにより加熱する。
上述したように、両面封止を利用すると、フリットを損傷させないで所与のシールの幅及びかくしてシール強度を増大させることができる。通常、フリット壁の全体幅が増大すると、フリットの質量が増大し、封止を達成するのにより多くのエネルギーが必要になる。装置を効果的に封止するのに必要なエネルギーは、フリットを損傷させ、本質的にフリットを焼くのに十分高い場合がある。両面封止は、片面封止の場合のように単一箇所に加えられるエネルギーをそれほど増大させないで、必要なエネルギーを加える方法を提供する。
片面封止の結果として、代表的には、シール幅が比較的狭くなるだけでなく、シール幅を横切る狭い領域が下に位置する材料(例えば、ガラス、電極、リード等)にくっつくことがないようになることが判明した。その結果、非封止フリットの小さなポケットがシール表面に沿って小さな「スペックル」に見える。かくして、従来型片面シールが例えば70%の全体的シール幅を示す場合であっても、これら極めて小さな非シール領域を計算に入れた有効シール幅は、狭い場合があり、シールが一段と弱体化する。両面封止は、シールインターフェイスのところに見えるスペックル発生を著しく減少させるだけでなく、フリット壁の本体内における小さなボイドの形成を減少させることができる。
強調されるべきこととして、本発明の上述の実施形態、特にどの「好ましい」実施形態でも、単に考えられる具体化例であり、本発明の原理の明確な理解のために記載されているに過ぎない。本発明の精神及び原理から実質的に逸脱することなく、本発明の上述の実施形態の多くの変形例及び改造例を想到できる。このような改造例及び変形例は全て、本明細書における開示内容及び本発明の範囲に含まれ、特許請求の範囲に記載された本発明によって保護される。
Claims (11)
- フォトニック装置を形成する方法であって、
ガラスを主成分とするフリット(24)のループを有する第1のガラス板(12)を位置決めするステップを有し、前記フリットは、有機光子活性材料(16)が被着された第2のガラス板(14)上に壁(26)を形成し、
前記第1のガラス板を通して第1のレーザビーム(32a)で前記第1のガラス板と接触状態にある前記壁の第1の表面(40)を照射するステップを有し、
前記第2のガラス板を通して第2のレーザビーム(32b)で前記第2のガラス板と接触状態にある前記壁の第2の表面(44)を照射するステップを有し、
前記壁の前記第1及び前記第2の表面の前記照射により、前記第1のガラス板が前記第2のガラス板に結合され、前記第2の表面は、封止部分及び非封止部分を有し、前記封止部分の幅は、前記壁の最大幅の80%以上である、方法。 - 前記封止部分の前記幅は、前記壁の最大幅の80%〜98%である、請求項1記載の方法。
- 前記壁の前記第1の表面の前記照射と前記壁の前記第2の表面の前記照射は、同時に実施される、請求項1又は2記載の方法。
- 前記第1の表面の照射に先立って前記第1のガラス板を加熱するステップを更に有する、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
- 前記非封止部分は、前記封止部分(52)の互いに反対側の側部に位置決めされた一対の非封止部分(54a,54b)から成る、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の方法。
- 前記有機材料は、有機発光ダイオードを構成する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の方法。
- 前記フォトニック装置は、光起電力装置を構成する、請求項1〜6のうちいずれか一に記載の方法。
- 前記フォトニック装置は、照明パネルを構成する、請求項1〜6のうちいずれか一に記載の方法。
- ガラスパッケージを封止する方法であって、
第1のガラス板(12)を第2のガラス板(14)上に位置決めするステップを有し、前記第1のガラス板の表面には壁(26)がくっついており、前記壁は、ガラス封止材料(24)から成り、
前記第1のガラス板を通して第1のレーザビーム(32a)で前記第1のガラス板と接触状態にある前記壁の第1の表面(40)を照射するステップを有し、
前記第2のガラス板を通して第2のレーザビーム(32b)で前記第2のガラス板と接触状態にある前記壁の第2の表面(44)を照射するステップを有し、前記壁の前記第2の表面は、前記第2のガラス板に隣接して位置し、
前記壁の前記第1及び前記第2の表面の前記照射により、前記第1のガラス板が前記第2のガラス板に結合され、前記第2の表面は、封止部分(52)及び非封止部分(54a)を有し、前記封止部分の幅は、前記壁の最大幅の80%以上である、方法。 - 前記壁の前記第1の表面の前記照射と前記壁の前記第2の表面の照射は、順次実施される、請求項9記載の方法。
- 前記壁の前記第1の表面の前記照射と前記壁の前記第2の表面の前記照射は、同時に実施される、請求項9又は10記載の方法。
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