JP2012530498A - プロテアーゼバリアント - Google Patents

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Abstract

本発明は、改変された特異性および/または活性を有する野生型ヒトネプリライシンのプロテアーゼバリアントを含むポリペプチドに関する。 特に、本発明は、特定の物質、特に、アミロイドベータに対して増大した特異性および/または活性を有するヒトのネプリライシンから誘導したプロテアーゼバリアントを含むポリペプチドに関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、野生型ヒトネプリライシンに関して改変された基質特異性を有するヒトネプリライシンのバリアントの核酸およびアミノ酸配列、ならびに医薬組成物中でのそのようなバリアントの使用に関する。詳細には本発明は、野生型ネプリライシンと比較して、アミロイドベータ(Aβ)ペプチドの開裂について高い特異性を有するネプリライシンバリアントのポリペプチドに関する。本発明は、そのようなネプリライシンバリアント分子を含む融合タンパク質にも関する。ネプリライシンバリアントを含むポリペプチドは、アミロイドベータの蓄積に関連する疾患、詳細にはアルツハイマー病の処置に用いてもよい。
発明の背景
疾患に関連する基質ペプチドまたはタンパク質の開裂は、多くの場合、その不可逆的な不活性化または活性化をもたらすため、設計されたプロテアーゼは、治療薬として望ましい。しかし薬物として使用するためには、プロテアーゼは、ターゲットに十分な活性を有していなければならないが、処置条件下で許容しえない毒性副反応をもたらす程、他の基質を開裂してはならない。
プロテアーゼの特異性、即ち、特定のペプチド基質を優先的に認識して加水分解する能力は、定性的および定量的に表すことができる。定性的には、1種または数種のペプチドに作用するプロテアーゼは、高い特異性を有するが、多種の異なるペプチドに作用するプロテアーゼは、低い特異性を有すると考えられる。定量的事項において、プロテアーゼの特異性プロファイルは、所定の基質における複数の開裂部位での潜在的kcat/Km比をはじめとする、基質全ての各kcat/Kmによって与えられる。近年のタンパク質設計の方法により、所定のプロテアーゼの特異性の調整が可能となり、予防的または治療的タンパク質薬としての使用に望ましい特異性を有するプロテアーゼの生成が潜在的に可能になった。
「正常」レベルと比較した、ポリペプチドの蓄積または活性上昇は、疾患の原因または症状に寄与する可能性があり、そのような場合、タンパク質分解性開裂によるポリペプチドの不活性化が、患者にとって有益となる可能性がある。多くの異なるポリペプチドが、タンパク質分解性不活性化のターゲットとして予見される。これらは、例えば血管活性の調節、疼痛、食欲、心臓機能、免疫機能、代謝調節、サーカディアンリズムなどの調節に関与する、内分泌系の生物活性ペプチドなどの小ペプチドを包含する。他の例としては、小および大タンパク質またはホモマーおよびヘテロマー多重タンパク質複合体、例えば、可溶性および膜結合性タンパク質および受容体、構成タンパク質、サイトカイン、酵素、抗体、トランスポーターなどが挙げられる。アンジオテンシン−1および−2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン−1および−2、ニューロペプチドY、ならびにニューロテンシンに加え、アドレノメジュリン、ボンベシン、BLP、CGRP、エンケファリン、FGF−2、fMLP、GRP、ニューロキニン、ニューロメジンC、オキシトシン、PAMP、サブスタンスP、VIPなどをはじめとする多くのペプチドが、強力な調節機能を有することで公知である。これらのいずれかの活性が高ければ、患者に望ましくない作用をもたらす可能性がある。例えば、ニューロテンシンは、前立腺癌PC3細胞の増殖を刺激し(Carraway et al.(2007) Regul Pept. 141(1-3):140-53)、インビボでのその分解が、疾患を緩和する可能性がある。ブラジキニンは、血圧調節に関与するが、神経因性疼痛および心臓リモデリングにも関与する。示される通り、ニューロテンシンまたはブラジキニンについて高い特異性を有するプロテアーゼを生成することができる。
アルツハイマー病(AD)は、脳の離散的な領域、特に皮質および海馬のニューロン損失を特徴とする進行性神経変性障害である。ADを罹患した患者の脳に生じる神経病理学的特質が、老人斑および顕著な細胞骨格変化であり、同時に異常な繊維状構造が出現する。ニューロン損失は、老人斑の形態でのアミロイドベータ(Aβ)ペプチドの細胞外沈着と、微小管関連タンパク質タウの高リン酸化形態で生成された神経原線維変化の細胞内蓄積とを伴う。家族性症例と散発性症例の両者は、細胞外原線維β−アミロイドの脳内沈着を、ニューロン機能障害およびニューロン損失に関連すると考えられる共通の病理学的特質として共有する(Younkin S. G., Ann. Neurol. 37, 287-288, 1995; Selkoe, D. J., Nature 399, A23-A31, 1999; Borchelt D. R., et al., Neuron 17, 1005-1013, 1996)。β−アミロイド沈着は、複数の種類のアミロイド−βペプチド(Aβ)、特にAβ1−42で構成されており、それらがアミロイド斑内に進行的に沈着される。家族性ADを起こす遺伝子的条件の全てでないが多くで、多量のAβ1−42が生成されることが、遺伝子的証拠により示唆され(Borchelt D. R. et al., Neuron 17, 1005-1013, 1996; Duff K. et al., Nature 383, 710‐713,1996;Scheuner D. et al. Nat. Med. 2, 864-870, 1996; Citron M. et al., Neurobiol. Dis. 5, 107-116, 1998)、アミロイド形成が、Aβ1−42の生成増加もしくは分解減少のいずれか、またはその両方によって起こりうることが示唆された(Glabe, C., Nat. Med. 6, 133-134, 2000)。
現在、ADの治癒法は存在しない。しかし、Aβは、形成を減少させる目的(Vassar, R. et al., Science 286, 735-41, 1999)、および脳からのクリアランスを促進するメカニズムを活性化させる目的の両方から、薬物開発の主要なターゲットとなった。Aβの生成を減少させることに相当な努力が注がれたが、これらのペプチドのクリアランスは、あまり重要視されなかった。
Bard et al(Nature Medicine, Vol. 6, Number 8, 916-919, 2000)は、Aβに対する抗体の末梢投与が、アミドイロ負荷を十分に低減することを報告した。受動的に投与された抗体は、血液脳関門を通過して中枢神経系に入り、プラークに結合(プラークを修飾)して、既存のアミロイドのクリアランスを誘発することができる。しかし、Aβに対する受動免疫化でさえも、ヒト患者に望ましくない副反応を起こす場合がある。
DeMattos(PNAS 98: 8850-8855, 2001)は、シンク仮説を記載しており、それは血漿中のペプチド濃度を低下させることにより、AβペプチドがCNSから間接的に除去されうることを述べたものである。De Mattosは、血漿中でAβに結合する抗体を用いた。血漿からCNSへのAβの流入を予防すること、および/または血漿とCNSの間の平衡を変化させること(血漿中の遊離Aβ濃度の低下による)により、AβがCNSから隔離される。抗体とは無関係の2種の他のAβ結合剤、ゲルソリンおよびGM1も、血漿中での結合を介してCNSからAβを除去し、そして脳アミロイドーシスを低減または予防するのに効果的であることが示された(Matsuoka et al. (J. Neuroscience 23; 29-33, 2003)。
Aβを除去する別の方法が、Aβを、毒性作用がより低く、より容易にクリアランスされる小さなフラグメントに分解する酵素を使用することである。シンク仮説のメカニズムを介して、Aβの酵素的消化が血漿中Aβの遊離濃度を低下させることにより作用することが前提である。しかし、このアプローチは、CNSおよび/またはCSFにおけるAβの直接的クリアランスの可能性も提供する。このアプローチは、Aβの遊離濃度を低下させるだけでなく、環境からの完全長ペプチドも直接クリアランスする。このアプローチは、Aβペプチド結合剤、例えば抗体を用いる場合に認められた通り、血漿中の総(遊離および結合)Aβ濃度が増加しないため有利である。ネプリライシンは、Aβペプチドを多重開裂部位で分解して小さなフラグメントを生成し、血流から容易にクリアランスさせることが文献に記載された酵素である(Leissring et al., JBC. 278: 37314-37320, 2003)。ネプリライシンは、脳内のAβペプチドレベルを調節することに重要な役割を担うことも報告されている。加齢、遺伝子欠損(ノックアウト)、またはネプリライシン阻害剤での処置に伴いAD発達の初期段階で、ネプリライシンがダウンレギュレーションを起こすと、脳内のAβペプチドの蓄積が増加して記憶障害をもたらすことの証拠が示唆されている。それとは逆に、ネプリライシンの過剰発現により、トランスジェニックADマウスの脳内のプラーク蓄積が減少する。
インスリン分解酵素、プラスミン、ACEなどをはじめとする、Aβペプチドを分解する複数の他のプロテアーゼが、記載された。
抗Aβペプチド抗体は、血中の遊離Aβレベルを効果的に低下させて、脳内のプラーク沈着を減少させるのに適用されてきた。しかし、Aβペプチドを分解および不活性化させるプロテアーゼを全身適用することは、1つの選択肢となりうるが、そのようなプロテアーゼは、効果的となるのに十分、特異的なAβペプチドであること、およびオフターゲット活性による毒性副反応の誘発を回避することが求められる。
ヒトネプリライシン(NEP、中性エンドペプチダーゼ、CD10、急性リンパ芽球性白血病共通抗原(CALLA)、エンケファリナーゼとも呼ばれる:SwissProt アクセション番号P08473)は、最初のメチオニンの除去により、750または749の残基で構成された、94kDの2型膜結合性Znメタロペプチダーゼである(配列番号1)。749aaの命名法(pdbナンバリング)を、この文書全体を通して用いる。それは、CNSのペプチド作動性ニューロン中に存在し、脳内での発現が、細胞特異的な手法で調節される(Roques B. P. et al., Pharmacol. Rev. 45, 87-146, 1993; Lu B. et al., J. Exp. Med. 181, 2271-2275, 1995; Lu B. et al., Ann. N. Y. Acad. Sci. 780, 156-163, 1996)。タンパク質分解ドメイン(細胞外触媒ドメイン、ECD)は、51〜749のaaを含み、亜鉛結合モチーフ(HEXXH)を含む活性部位を含む。膜貫通性ドメインおよび細胞内ドメインが欠如した可溶性形態が、循環内に存在することが公知である。ネプリライシンは、Aβペプチドの単量体および(おそらく)オリゴマー形態をはじめとする多数のペプチド基質を分解させることが可能で、エンドペプチダーゼおよびカルボキシペプチダーゼとして作用することが可能であるが、生理学的条件下でのこれらの異なる活性の関連性は、詳細には決定されていない。分解されるペプチドを、非限定的に、(表1)に列挙する:
Figure 2012530498
阻害剤との複合体におけるネプリライシンの構造は、解明されている(Oefner et al.(2000)J. Mol. Biol. 296:341-9; Sahli et al.(2005) Helv. Chim. Acta. 88:731; PDBエントリーズ 1Y8J, 1DMT, 1R1H)。ネプリライシンは、メタロプロテイナーゼのM13類に属し、ほぼα−らせんの2つのドメイン構造を特徴とする。これらの2つのドメインが、活性部位を含む一体型空洞(integral-cavity)を取り囲む。空洞の寸法により、天然基質の大部分が5kDa未満に限定される。しかし、ネプリライシンの残基が、基質と相互作用し、こうしてプロテアーゼの特異性に影響を及ぼすことは、ほとんど知られていない。阻害剤と接触する数種のアミノ酸が、プロテアーゼの活性部位の一部とみなされる場合があり、表2に列挙する:
Figure 2012530498
ネプリライシンは、ブラジキニン、アンジオテンシンII、エンドセリンI、およびナトリウム利尿ペプチド(心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)および脳性ナトリウム利尿ぺプチド(BNP))をはじめとする多くの血管作動性ペプチドも分解する("Basic and Clinical Pharmacology",(1998),The MacGraw -Hill CompaniesのReid Ian A., Vasoactive Peptides)。
アンジオテンシン、ブラジキニン、エンドセリンおよびナトリウム利尿ペプチド(ANPおよびBNP)は、動脈圧の調節に関与する。アンジオテンシンIIは、血管収縮性オクタペプチドである。ブラジキニンは、血管拡張性ナノペプチドである。エンドセリンは、2個のジスルフィド架橋がシステイン残基につながった(connecting)、アミノ酸が約20の血管収縮性ポリペプチドである。ANP(28アミノ酸)およびBNP(32アミノ酸)は、心臓内で合成される血管拡張性ペプチドであり、主として腎臓の刷子縁細胞、肝臓、および肺のネプリライシンにより破壊される(Rademaker M. T. and Richards A. M. Clinical Science. 108, 23-36, 2005)。ANPおよびBNPは、血管拡張をもたらし、血圧を低下させる。したがって、組換えネプリライシン分子の治療的投与は、ナトリウム利尿ペプチドの半減期を短縮し、それにより高血圧または慢性心不全を増悪させる可能性がある。
ネプリライシンは、ニューロぺプチドYおよびニューロテンシンをはじめとする幾つかのシグナル伝達ペプチドも分解する。ニューロペプチドYは、ホ乳類中枢神経系に分布する36アミノ酸のポリペプチド神経伝達物質である。CNS内での公知の生理学的機能としては、社会行動および摂食行動の調節、サーカディアンリズムならびに中枢性心臓血管機能が挙げられる(Gray W., Molecular and Cellular Endocrinology 288, 52-62, 2008)。ニューロテンシン(NT)は、30アミノ酸のペプチドである。脳では、NTは、ニューロンにおいて発現され、そこで神経調整物質として作用する。中枢に投与されたNTの効果としては、ペプチドとドーパミン作動(DA)系との相互作用、オピオイド依存性痛覚脱失を誘導する能力、摂食阻害および脳下垂体ホルモン放出の調整が挙げられる。末梢では、NTは、主として粘膜全体で産生され、多数の消化工程を調節する。NTを産生する他の器官としては、心臓および腎臓が挙げられる(Sarret and Kitabgi, Encyclopedia of Neuroscience, 1021-1034, 2009; Pons, J., et al., Current Opinion in Investigational Drugs 5, 957-962, 2004)。
潜在的治療薬を開発するにあたって、ネプリライシンは、多数のペプチド基質を開裂し、その全てではないにしろ多くが生理学的役割を担うため、他の(オフターゲット)ペプチド基質の開裂に比較して、基質ペプチドの1種、例えばAβを開裂するための高い特異性を有するネプリライシンバリアントを同定することが望ましい。
改変された特異性プロファイルを有するネプリライシン変異体が、記載された。即ち、アルギニン102をグルタミン(R102Q)に突然変異させることで、ネプリライシンのカルボキシペプチダーゼ活性に関する示差的な触媒効率が得られる(Beaumont et al. (1992) J. Biol. Chem. 267:2138-41; Kim et al. (1992) J. Biol. Chem. 267:12330-35; Barros et al. (2007) Biol. Chem. 388:447-455)。R747も、選択性に影響を及ぼすことが見出された(Beaumont et al. (1991) J. Biol. Chem. 266:214-220)。位置F563、F564、M579、F716およびI718は、エンケファリン誘導体の加水分解のkcat/Kmに影響を及ぼすことが記載された(Marie-Claire et al. (2000) Proteins 39:365-371)。位置R102およびN542も、小化合物による阻害に影響を及ぼすことが見出された(Dion et al.(1997) FEBS Lett. 411:140:144)。
WO2007/040437には、A−L−M(ここで、「A」は、アミロイドベータペプチドを開裂することが可能なプロテアーゼであり、「L」は、リンカーであり、「M」は、インビボ半減期を調整する成分、例えば、抗体のFc部分であり、「A」は、ヒトネプリライシンであってもよい)の形態の融合タンパク質が記載されている。
WO2008/118093には、半減期調整部分がヒトネプリライシンのN−末端に付着(attached)されている、アミロイドベータペプチドを開裂する誘導タンパク質、およびそのような融合タンパク質を薬物治療として投与することにより、Aβペプチド濃度を低下させる方法が記載されている。
WO2005/123119には、組換えトランケート型ホ乳類ネプリライシンを製造する方法およびそのようなトランケート型タンパク質を含む医薬組成物で、ホ乳類の炎症性腸疾患を処置する方法が提供されている。
US2003/0083277および同第2003/0165481には、効果的量の不活性化酵素、例えばネプリライシンの投与による、アミロイド原線維の成長の形成を予防する方法が記載されている。処置は、精製タンパク質もしくはウイルス、またはプラスミドベクターの投与のいずれかによるものであってもよい。投与は、脳に施される。US2003/0083277には、同じ適用のためのインスリン分解酵素が記載されている。
アミロイドベータ(Aβ)、ブラジキニンまたはニューロテンシンについて高い特異性を有するネプリライシンバリアントに関して本明細書で実証された通り、がネプリライシンの基質特異性に影響を及ぼすアミノ酸位置を同定することにより、改変された基質特異性を有するネプリライシンバリアント、詳細にはAβペプチドについて高い特異性を有するバリアントを生成することが望ましい。
本発明は、改善された性質を有するバリアントネプリライシンポリペプチド、好ましくはバリアントヒトネプリライシンポリペプチドを提供する。詳細には、本発明のバリアントネプリライシンポリペプチドは、野生型ネプリライシンと比較して、他のネプリライシン基質ペプチドに関する1種のネプリライシン基質ペプチドについて、高い特異性を有する。詳細には、本発明は、野生型ネプリライシンと比較して、Aβの開裂に関して野生型ネプリライシンの他の基質よりも高い特異性を有する、ネプリライシンの変異体/バリアント形態を提供する。そのような分子は、治療薬として投与された場合に、Aβ分解において野生型ネプリライシンと類似の、またはそれよりも高い効果を有しうるが、他のネプリライシンリガンド基質の分解では、野生型ネプリライシンと比較して低い効果を有しうるため、こうしてこれらの他の基質の分解を介して起こりうる任意の不必要な、または不利な、または有毒な作用が最小限に抑えられる、または低減される。
Aβペプチドについて高い特異性を有するバリアントに関しては、そのようなバリアントは、Aβの過剰形成のまたはAβの分解低下を原因とする、アルツハイマー病およびAβ蓄積による他の疾患の処置に有用となる可能性がある。
本発明は、アミロイドペプチドと、Aβペプチドについて高い特異性を有するバリアントネプリライシンポリペプチドを含む組成物との反応により、それらを分解または修飾して不活性化させる、アミロイド斑形成および/または成長を予防する方法にも関する。本発明は、更に、血漿中のAβペプチドについて高い特異性および/または触媒活性および/または選択性および/または長期活性を有する、最適化されたバリアントネプリライシンポリペプチドを投与することによる、アルツハイマー病を処置する方法に関する。本発明は、薬物治療の分野、詳細には神経変性疾患の分野にも関し、神経変性疾患、詳細にはアルツハイマー病を罹患した患者において脳アミロイドのクリアランスメカニズムを誘発する方法を提供する。更に本発明は、そのようなメカニズムを誘発するのに効果的なタンパク質およびペプチドの使用に関する。
本発明は、組換えタンパク質を用いてアルツハイマー病患者を処置することも対象とする。詳細には、本発明のネプリライシンバリアントポリペプチドの使用または本発明のネプリライシンバリアントポリペプチド含む融合タンパク質の使用を対象とする。本発明のネプリライシンバリアントは、野生型ネプリライシンと比較して、他のネプリライシン基質の結合および/または開裂よりも、Aβペプチドの結合および/開裂について高い特異性を有する。これらの他の基質への特異性を低下させれば、本発明のネプリライシンバリアントを患者に投与する際に起こりうる任意のオフターゲット効果(毒性)が最小限に抑えられることを理解されたい。
本発明は、少なくとも1種のアミノ酸が配列番号2に示された野生型ヒトネプリライシン細胞外ドメインと異なるアミノ酸配列を有する、バリアントヒトネプリライシン細胞外ドメインまたはそのフラグメントを含むポリペプチドを提供し、そのポリペプチドは、野生型ネプリライシンよりも高い特異性で、アミロイドベータポリペプチドを消化することができる。アミロイドベータポリペプチドは、ヒトアミロイドβ1−40および/またはヒトアミロイドβ1−42であってもよい。バリアントヒトネプリライシン細胞外ドメインにおいて、アミノ酸G399および/またはG714は、他の天然アミノ酸に交換されていてもよく、前記天然アミノ酸は、Ala以外のアミノ酸であってもよく;G399は、バリン(V)により交換されていてもよく、そして/またはG714は、リシン(K)により交換されていてもよく;アミノ酸残基のナンバリングは、配列番号1に示された野生型ヒトネプリライシン配列に基づく。本発明によるポリペプチドは、T99、S100、S101、G104、D107、G195、T206、H211、H214、H217、D219、Q220、G224、S227、R228、D229、F247、A287、R292、L323、Y346、M376、D377、L378、S380、S381、F393、R394、A396、G399、E403、T404、A405、Y413、N415、G416、N417、E419、V422、A468、I485、I510、L514、F516、S517、Q518、Q521、L522、K524、E533、W534、S536、G537、V540、Y545、S546、S547、G548、D590、D591、N592、G593、F596、G600、W606、Q624、A649、V692、W693、Y697、Y701、N704、S705、T708、D709、V710、S712、G714、R735およびK745から選択される位置のアミノ酸の少なくとも1つが異なる、プロテアーゼバリアントヒトネプリライシン細胞外ドメインまたはそのフラグメントを含んでいてもよく、それにより野生型ヒトネプリライシン細胞外ドメイン配列中に存在するアミノ酸残基が、他の天然アミノ酸により交換されており、そのアミノ酸残基ナンバリングは、配列番号1に示された野生型ヒトネプリライシン配列に基づく。バリアントプロテアーゼヒトネプリライシン細胞外ドメインまたはそのフラグメントは、
T99のD、
S100のI、
S101のL、V、Y、またはI、
G104のL、M、R、VまたはW、
D107のN、VまたはW、
G195のV、
T206のR、
H211のN、
H214のN、
H217のN、
D219のA、
Q220のK、
G224のW、
S227のLまたはR、
R228のG、
D229のN、
F247のCまたはL、
A287のS、
R292のM、
L323のF、
Y346のW、
M376のY、
D377のF、H、T、YまたはG、
L378のE、KまたはR、
S380のKまたはR、
S381のR、
F393のS、
R394のC、E、G、MまたはP、
A396のD、
G399のV、
E403のH、LまたはS、
T404のDまたはF、
A405のT、
Y413のD、
N415のA、
G416のRまたはW、
N417のW、
E419のL、M、FまたはK、
V422のM、
A468のS、
I485のV、
I510のD、E、FまたはR、
L514のKまたはF、
F516のR、
S517のD、F、R、WまたはY、
Q518のRまたはP、
Q521のRまたはE、
L522のY、
K524のR、
E533のF、AまたはR、
W534のC、
S536のG、P、R、E、EまたはW、
G537のEまたはT、
V540のC、E、FまたはG、
Y545のSまたはV、
S546のD、E、I、R、WまたはY、
S547のD、E、F、GまたはK、
G548のC、E、RまたはW、
D590のF、MまたはW、
D591のEまたはL、
N592のP、
G593のVまたはD、
F596のP、
G600のD、VまたはW、
W606のS、
Q624のH、
A649のG、
V692のM、
W693のC、F、N、Q、VまたはL、
Y697のG、
Y701のGまたはR、
N704のE、G、RまたはW、
S705のR、
T708のK、
D709のKまたはV、
V710のF、
S712のH、L、QまたはG、
G714のHまたはK、
R735のH、および
K745のN、
から選択される1ヶ所以上の位置が野生型ヒトネプリライシンと異なっていてもよい。
本発明のこの態様によるポリペプチドは、本明細書に記載された通り、血漿中のポリペプチドの半減期の延長を可能にする部分を含んでいてもよく、血漿中のポリペプチドの半減期の延長を可能にする部分は、バリアントヒトネプリライシン細胞外ドメインまたはそのフラグメントにN−末端を提供する、ヒト血清アルブミン、Fcドメイン、またはそのフラグメントであってもよい。ヒト血清アルブミンは、バリアントHSA、例えば、システイン残基がセリンにより交換されているバリアントHSA C34Sであってもよい。ポリペプチドの半減期の延長を可能にする部分と、プロテアーゼバリアントヒトネプリライシン細胞外ドメインまたはそのフラグメントとが、場合により、リンカーを介してつながっていてもよい。リンカーは、ペプチドリンカー、例えば、ペプチドGGGGSまたはGGGGGSなどのグリシン−セリンリンカーであってもよい。本発明は、更に、配列番号28に示される通り、HSA C34S、GGGGSリンカーおよびG399V/G714バリアントヒトネプリライシン細胞外ドメインを含むポリペプチドを提供する。
本発明によるポリペプチドは、野生型ヒトネプリライシンよりも低い特異性で、アンジオテンシン−1および−2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン−1および−2、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、アドレノメジュリン、ボンベシン、BLP、CGRP、エンケファリン、FGF−2、fMLP、GRP、ニューロキニンA、ニューロメジンC、オキシトシン、PAMP、サブスタンスPならびにVIPから選択されるペプチド1種以上を消化することができる。本発明は、先に記載されたポリペプチドをコードする核酸、前記核酸を含むベクター、および前記ベクターを含む宿主細胞も提供する。加えて本発明は、以下のステップ:(a)バリアントヒトネプリライシン細胞外ドメインまたはそのフラグメントを含むポリペプチドの発現に適した条件下で、先に記載された宿主細胞を培養するステップ;および宿主細胞培養物からポリペプチドを回収するステップ、を含む、プロテアーゼバリアントを含む先に記載されたポリペプチドを生成させる方法を提供する。本発明は、更に、本発明によるバリアントヒトネプリライシン細胞外ドメインまたはそのフラグメントを含むポリペプチドと、薬学的に許容しうる賦形剤とを含む医薬組成物を更に提供する。本発明は、Aβの蓄積に関連する疾患、例えばアルツハイマー病を処置するのに使用される、本発明によるバリアントヒトネプリライシン細胞外ドメインまたはそのフラグメントを含むポリペプチドも提供する。同じく提供されるのは、本発明による、バリアントヒトネプリライシン細胞外ドメインまたはそのフラグメントを含むポリペプチドの治療上効果的な用量を、必要とする患者に投与することを含む、Aβの蓄積に関連する疾患、例えばアルツハイマー病を処置する方法である。
重要な配列の詳細な説明
配列番号1は、最初のメチオニンのためのコドントリプレットを有さない野生型ヒトネプリライシン(Wt−完全長ネプリライシン)のアミノ酸配列を示す。ヒト可溶性ネプリライシン配列の最初のアミノ酸(Y)は、位置51に生じる。
配列番号2は、野生型可溶性ヒトネプリライシン(Wt−sネプリライシン)のアミノ酸配列、即ち細胞外触媒ドメインを示す。
配列番号3は、アミノ末端3×HA−タグおよびジペプチドリンカーを有する可溶性ヒトネプリライシンのアミノ酸配列を示す。ヒト可溶性ネプリライシン配列の最初のアミノ酸(Y)は、位置30に生じる。
配列番号4は、野生型可溶性ヒトネプリライシン(Wt−sネプリライシン)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号5は、アミノ末端3×HA−タグおよびジペプチドリンカーを含む可溶性ヒトネプリライシンのヌクレオチド配列を示す。ヒト可溶性ネプリライシン配列(TAC)の最初のコドントリプレットは、位置88〜90に生じる。
配列番号6は、最初のメチオニンのためのコドントリプレットを有さない完全長野生型ヒトネプリライシンのヌクレオチド配列を示す。
配列番号7は、発現ベクターpYES2中の分泌リーダー、分泌部位、3×HA−タグおよびジペプチドリンカーをコードする配列に融合されたヒト可溶性ネプリライシン配列N−末端のヌクレオチド配列を示す。分泌部位を含むα−分泌リーダー配列は、位置507〜773に存在し、3×HA−タグ配列は、位置774〜854に存在し、Gly/Serリンカー(ジペプチドリンカー)は、位置855〜860に存在し、sネプリライシン配列は、位置861〜2960に存在し、そしてCYY1ターミネーター配列は、位置3090〜3338に存在する。
配列番号28は、野生型ヒトネプリライシンからのアミノ酸2個の変化:つまり、グリシン399からバリンへの変化およびグリシン714からリシンへの変化を有するヒトバリアントネプリライシン細胞外ドメインを示し、このバリアントは、高い安定性および特異性を有する。
Figure 2012530498
配列番号29は、(N−末端からC−末端までの)HSA(C34Sバリアント)−GGGGSリンカー−野生型ネプリライシンからのアミノ酸2個の変化:つまりG399VおよびG714Kを有するヒトネプリライシンバリアントを示す。
Figure 2012530498
配列番号30は、ヒト血清アルブミンバリアントHSA C34Sの配列を示す:
Figure 2012530498
酵母発現ベクターpYES2(インビトロジェン、SKU#V825−20)、5856bpのヌクレオチド配列(配列番号22)を示す。pYES2ベクターは、S. cerevisiae中の該当するタンパク質の天然型発現のために設計された。それは、酵母内で選択されるためのURA3遺伝子と、高いコピー数を維持するための2μオリジンとを含有する。 酵母発現ベクターpESC−URA(ストラタジーン)、6631bpのヌクレオチド配列(配列番号23)を示す。 発現ベクターp427−TEF(デュアルシステムズ・バイオテック)、6702bpのヌクレオチド配列(配列番号24)を示す。 ヒトsネプリライシンを発現する細胞の培養上清のウェスタンブロット分析を示す(検出抗体:ヒツジポリクローナル抗−hネプリライシン(R&D))。 G399V/G714K親変異体に関する、様々な変異体によるペプチド基質5種(ペプチド5=アンジオテンシン;ペプチド3=ANP;ペプチド6a=エンドセリンペプチドの1種;ペプチド1=AB1−40;およびペプチド2=AB1−42)の開裂を示しており(表8参照)、アミロイドβペプチド(AB1−40およびAB1−42)の開裂増加およびそれ以外の3種のペプチド(ANP、エンドセリンおよびアンジオテンシン)の開裂減少が示されている。 G399V/G714K親変異体に関する、表10の様々な変異体によるペプチド基質6種(ペプチド5=アンジオテンシン;ペプチド4=BNP;ペプチド7=ニューロペプチドY;ペプチド6a=エンドセリンペプチドの1種;ペプチド1=AB1−40;およびペプチド2=AB1−42)の開裂を示す。 1μM〜0.1nMの酵素を用いて室温で1時間インキュベートした後のC57BL/6マウスの血漿中の内因性マウスAベータ1−40のAベータ分解である。A)野生型ネプリライシン。B)HASに融合されたネプリライシンバリアントG399V/G714K(この実施例および以下の実施例におけるN−HSA−hNepG399V/G714K−C)。 1μM〜0.1nMの酵素を用いて室温で1時間インキュベートした後のTG2576マウスの血漿中のヒトAベータ1−42のAベータ分解である。A)野生型ネプリライシン。B)HASに融合されたネプリライシンバリアントG399V/G714K。 3μM〜10nMの酵素を用いて室温で1時間インキュベートした後のTG2576マウスの血漿中のヒトAベータ1−40のAベータ分解である。A)野生型ネプリライシン。B)HASに融合されたネプリライシンバリアントG399V/G714K。 1μM〜0.1nMの酵素を用いて室温で1時間インキュベートした後のスプラグー・ドゥーリー・ラットの血漿中のラットAベータ1−40のAベータ分解である。A)野生型ネプリライシン。B)HASに融合されたネプリライシンバリアントG399V/G714K。 3μM〜0.1nMの酵素を用いて室温で1時間インキュベートした後のヒト血漿中のAベータ1−42のAベータ分解である。A)野生型ネプリライシン。B)HASに融合されたネプリライシンバリアントG399V/G714K。 1μM〜0.1nMの酵素を用いて室温で1時間インキュベートした後のヒト血漿中のAベータ1−40のAベータ分解である。A)野生型ネプリライシン。B)HASに融合されたネプリライシンバリアントG399V/G714K。 1μM〜0.1nMの酵素を用いて室温で1時間インキュベートした後の緩衝液中のAベータ1−40のAベータ分解である。A)野生型ネプリライシン。B)HASに融合されたネプリライシンバリアントG399V/G714K。
発明の詳細な説明
本発明の枠組みにおいて、以下の略語、用語および定義が用いられる:
aa アミノ酸
HA−タグ ヘマグルチニン・エピトープ−タグ
3×HA−タグ 3倍HAエピトープ
Nt ヌクレオチド
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
sネプリライシン 可溶性ネプリライシン
wt 野生型
用語「アミロイドベータペプチド」、「Aβペプチド」または「アミロイドβペプチド」は、配列内のアミノ酸672〜714(アミノ酸1〜43個;Aβ1−43)に対応するヒトAβ A4タンパク質[前駆体]中のアミノ酸配列(1文字コード)DAEFRHDSG YEVHHQKLVF FAEDVGSNKG AIIGLMVGGV VIATに相関するペプチドの任意の形態を意味する。それは、このペプチドの任意のより短い形態、例えば、Aβ1−40、Aβ1−41、Aβ1−42、Aβ1−39、Aβ1−38、Aβ1−43と、修飾ペプチド、例えば、Aβ3−42、Aβ11−40、Aβ11−42のようなN−末端トランケート形態と、Aβ(py3−42)およびAβ(py11−42)のようなピログルタミル形態を有するAβペプチドと、酸化、異性化、ラセミ化、および/または共有結合により修飾されているAβペプチド(ID17274、ID17231、ID17850)、も含む。その用語は、GlnのためのGlu22などの残基の置換を有するAβ(Soto, C. and Castano, M., (1996) Biochem. J. 314:701-707内の参照)およびオリゴマー形態および凝集体も含む。
用語「ポリヌクレオチド」は、調節要素、構造遺伝子、遺伝子群、プラスミド、全ゲノムおよびそのフラグメントをはじめとする一本鎖および二本鎖DNAおよびRNA分子を含む任意の長さおよび任意の配列の任意の遺伝子材料に対応する。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドにおける用語「部位」は、それぞれポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列内の特定の位置または領域を指す。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドにおける用語「位置」は、それぞれポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列内の特定の単一塩基またはアミノ酸を指す。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドにおける用語「領域」は、それぞれポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列内の複数の塩基またはアミノ酸のストレッチを指す。
用語「ポリペプチド」は、タンパク質、例えば酵素、抗体など、中程度の長さのポリペプチド、例えば、ペプチド阻害剤、サイトカインなど、および10未満のアミノ酸配列長までの短いペプチド、例えばペプチド受容体リガンド、ペプチドホルモンなどを含む。
用語「プロテアーゼ」は、ペプチド結合の加水分解を触媒する任意のタンパク質分子を意味する。それは、天然のタンパク質分解酵素、ならびにプロテアーゼバリアントおよびその誘導体を包含する。それは、タンパク質分解酵素の任意のフラグメント、ならびに挿入、欠失、組換えおよび/または任意の他の方法により設計されたバリアントも含み、天然プロテアーゼまたはそのプロテアーゼバリアントとはアミノ酸配列が異なるプロテアーゼを生成する。それは、翻訳後修飾および/または化学修飾、例えば、グリコシル化、PEG化、HES化、γ−カルボキシル化およびアセチル化を受けたタンパク質分子、前述のタンパク質の1種を含む任意の分子複合体または融合タンパク質も含む。
用語「プロテアーゼバリアント」は、各野生型アミノ酸配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有し、プロテアーゼ活性を保持し、野生型の配列と比較すると異なる基質特異性プロファイルを有していてもよい、突然変異誘発により、好ましくは部位特異的またはランダム突然変異誘発により得られる任意のプロテアーゼ分子を意味する。
用語「特異性」は、特定の基質を優先的に認識して変換する酵素の能力を意味する。プロテアーゼの特異性、即ち、特定のペプチド基質を優先的に認識して加水分解する能力を、定性的および定量的に表すことができる。定性的には、1種または数種のペプチドを消化するプロテアーゼは、高い特異性を有するが、多種のポリペプチドを消化するプロテアーゼは、低い特異性を有する。定量的項目において、プロテアーゼの特異性プロファイルは、所定の基質における複数の開裂部位の潜在的kcat/Km比をはじめとする、物質全ての各kcat/Km比によって与えられる。
Figure 2012530498
この式(式中、「Var」=プロテアーゼ(例えば、ネプリライシン)バリアント、および「WT」=野生型プロテアーゼ(例えば、ネプリライシン)は、野生型プロテアーゼと比較した、「基質_i」および「基質_k」のプロテアーゼバリアントの相対活性を説明している。1.5、2、3、4、5、7、10、20、30、40、50、100、200またはそれを超える比により、特異性の上昇が表わされる。実際には、反応速度kapp=(kcat/Km)×[E]([E]=酵素濃度)が、測定される。しかし、全ての測定が、同じ酵素濃度で実施されるため、定義された特異性は、[E]に独立している。
増強された特異性とは、野生型酵素と比較して、バリアント酵素がアミロイドベータ(Aβ)ペプチドをより大きな程度に、そして/または他のペプチド(ANP、BNP、アンジオテンシン−1、ブラジキニン、エンドセリン1、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、アドレノメジュリンおよびインスリンβ−鎖など)をより小さな程度に開裂できることを意味する。
アミロイドベータ(Aβ)に対する増強された特異性とは、バリアントネプリライシンが、野生型ネプリライシンと比較して、Aβ1−40および/またはAβ1−42ペプチドを以下のペプチド基質:ANP、BNP、アンジオテンシン−1、ブラジキニン、エンドセリン1、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、アドレノメジュリンおよびインスリンβ−鎖の任意の1種よりも多く開裂することを意味する。
特定の実施形態において、それ(ネプリライシンバリアント)は、他のネプリライシン基質ペプチドのいずれよりも、Aβについて少なくとも8倍、例えば、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、そして少なくとも100倍大きな特異性(開裂の程度により測定)を示す。他の実施形態において、それは、ANP、アンジオテンシン−1、ブラジキニン、エンドセリン1またはニューロテンシンのいずれよりも、Aβについて少なくとも8倍、例えば、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、そして少なくとも100倍大きな特異性(開裂の程度により測定)を示す。他の実施形態において、それは、ANP、アンジオテンシン−1、ブラジキニン、エンドセリン1およびニューロテンシンのそれぞれよりも、Aβについて少なくとも8倍、例えば、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、そして少なくとも100倍大きな特異性(開裂の程度により測定)を示す。他の実施形態において、それは、ANP、BNP、アンジオテンシン−1、ブラジキニン、エンドセリン1、ニューロペプチドYおよびニューロテンシンのそれぞれよりも、Aβについて少なくとも8倍、例えば、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、そして少なくとも100倍大きな特異性(開裂の程度により測定)を示す。
用語「触媒活性」は、定義された反応条件下で所定の基質の変換を定量的に説明するもので、kcat/Kmに比例する。
用語「基質」または「ペプチド基質」は、プロテアーゼにより触媒されて加水分解することができるペプチド結合を含有する、任意のアミノ酸組成、配列または長さの任意のペプチド、オリゴペプチド、またはタンパク質分子、およびこれらの分子の翻訳後形態または化学修飾形態を含む。加水分解されるペプチド結合は、「開裂部位」と呼ばれる。
用語「モジュレーター」は、分解を防ぎ、そして/または血漿中半減期を増加させる、毒性を低減する、免疫原性を低下させる、もしくは治療性タンパク質の生物活性を上昇させる分子を指す。実例のモジュレーターとしては、Fcドメインおよび直鎖ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリリシン、デキストランなど);分枝鎖ポリマー(例えば、米国特許第4,289,872号、同第5,229,490号;WO93/21259参照);脂質;コレステロール群(例えば、ステロイド);炭水化物もしくはオリゴ糖;またはサルベージ受容体に結合する任意の天然もしくは合成タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドが挙げられる。グリコシル化も、主にクリアランスメカニズムにおける変化により、ポリペプチドの寸法増大を通して血漿中半減期を延長させうるモジュレーターの一例である。モジュレーターは、ヒト血清アルブミン(HSA)結合成分、例えば、野生型ヒトHSAまたはバリアントヒトHSA、例えばHSA C34Sを含み、それによりポリペプチドの血漿中半減期を延長することもできる。
用語「融合体」は、モジュレーター分子およびタンパク質分子で構成された分子を指す。モジュレーターが、タンパク質部分に共有結合して、融合タンパク質を作製してもよい。非共有結合的アプローチも、タンパク質をモジュレーター部分につなげるのに用いることができる。モジュレーター部分は、ペグ化またはグリコシル化であってもよい。
用語「分解する」、「分解している」または「分解」は、1個の出発分子が、2個以上の分子に分割される工程を指す。より詳細には、アミロイドβペプチド(アミノ酸1〜43個以下の任意の寸法)は、開裂されると、出発分子と比較して、より小さなフラグメントを生成する。開裂は、ペプチド結合の加水分解、または分子をより小さな部分に切断することができる他のタイプの反応により達成することができる。
用語「天然型Fc」は、単量体または多量体形態のいずれかの、全抗体の消化により得られた非抗原結合フラグメントの配列を含む分子または配列を指す。天然型Fcの元々の免疫グロブリン供給源は、ヒト起源のものであってもよく、免疫グロブリンのいずれかであってもよいが、IgG1が好ましい。天然型Fcは、共有結合的会合(即ち、ジスルフィド結合)または非共有結合的会合により二量体または多量体形態に連結していてもよい単量体ポリペプチドから構成されている。天然型Fc分子の単量体サブユニットの間の分子間ジスルフィド結合の数は、分類(例えば、IgG、IgA、IgE)または亜分類(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1,IgA2)に応じて、1〜4の範囲内である。天然型Fcの一例が、IgGのパパイン消化から得られるジスルフィド結合された二量体である(Ellison et al. (1982), Nucleic Acids Res. 10:4071-9参照)。本明細書で用いられる用語「天然型Fc」は、単量体、二量体、および多量体形態に属する。
用語「Fcバリアント」は、天然型Fcから修飾されているが、サルベージ受容体、FcRnへの結合部位を依然として含む分子または配列を指す。特許公報WO97/34631および同96/32478には、実例的なFcバリアントおよびサルベージ受容体との相互作用が記載されており、それは本明細書に参照により組入れられている。したがって用語「Fcバリアント」は、非ヒト天然型Fcからヒト化された分子または配列を含む。更に天然型Fc部位は、本発明の融合分子に必要のない構造的特徴または生物活性を提供するため除去されてもよい部位を含む。したがって用語「Fcバリアント」は、天然型Fc部位、または(1)ジスルフィド結合形態、(2)選択された宿主細胞との不適合性、(3)選択された宿主細胞内での発現時のN−末端異種成分、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体への結合、もしくは(7)抗体依存性細胞障害作用(ADCC)、に影響を及ぼすか、もしくはそれに関与する残基、の1種以上が欠如した分子または配列を含む。Fcバリアントは、本明細書の以後に更に詳細に記載される。
用語「Fcドメイン」は、先に定義された天然型FcおよびFcバリアント分子および配列を包含する。Fcバリアントおよび天然型Fcと同様に、用語「Fcドメイン」は、全抗体から消化された、または他の手段で生成された、単量体または多量体形態の分子を包含する。
用語「薬理活性のある」は、そのように記載された物質が、医療パラメータ(例えば、血圧、血球計数、コレステロールレベル)または疾患状態(例えば、癌、自己免疫障害、認知症)に影響を及ぼす活性を有すると決定されていることを意味する。
用語「半減期」は、血漿のタンパク質またはポリペプチドの初期濃度の半量を除去するのにかかる時間と定義される。本発明は、血漿中のネプリライシンバリアントポリペプチドの半減期を調整する方法を記載している。そのような改変により、改善された薬物動態性を有する(例えば、増加したインビボ血清半減期を有する)融合タンパク質を生成することができる。半減期の延長は、血漿のタンパク質の初期濃度の半量がクリアランスされるのにより長い時間がかかることを意味する。薬学的または化学的化合物の半減期は、明確に定義されており、当該技術分野で周知の用語である。
用語「つながる」は、2部分以上の間の共有結合または可逆的結合を意味する。共有結合は、例えば、ペプチド結合、ジスルフィド結合、炭素−炭素カップリング、または原子間の共有結合に基づく任意のタイプの結合であってもよい。可逆的結合は、例えば、ビオチン−ストレプトアビジン、抗体−抗原または当該技術分野で公知の可逆的結合として分類される結合であってもよい。例えば共有結合は、融合タンパク質の半減期モジュレーター部分およびプロテアーゼ部分が同じプラスミドから組換え形態で生成された場合、即ち、つながりがDNAレベルで設定された場合に、直接得られる。
用語「共有結合的につながれた」は、電子が2原子間で共有される、2原子間の化学的結合を意味する。共有結合的につながれた結合の例は、ペプチド結合、ジスルフィド結合、炭素−炭素カップリングが挙げられる。融合タンパク質は、ポリペプチド結合により結合されていてもよく、その場合、融合タンパク質が生成される時、リボソーム上での翻訳工程の間に結合を果たすことができる。他のタイプの共有結合的につながれた成分は、タンパク質上のアミノ残基(例えば、リシン)に共有結合されたペグ化試薬での修飾であってもよい。化学的カップリング反応は、例えば、アシル化、または2成分を共に融合タンパク質に結合させる他の適切なカップリング反応であってもよい。共有結合的につながれた、とは、モジュレーターがタンパク質部分と結合されている2つの部位のリンカーによる結合も意味することができる。
用語「開裂部位」は、タンパク質または酵素により開裂することができる、ペプチド配列内の特異的位置/部位を意味する。開裂は通常、2個のアミノ酸をつなぐペプチド結合の加水分解により成立する。開裂は、タンパク質または酵素を単独で、または組合わせて使用して、同じペプチド内の複数の部位で起こってもよい。開裂部位は、ペプチド結合以外の部位であってもよい。本発明は、アミロイドβペプチドの開裂を詳細に記載している。
幾つかの実施形態において、プロテアーゼバリアント、またはプロテアーゼバリアントを含むポリペプチド、例えば、融合ポリペプチド、または前述のいずれかの誘導体、または前述のものをコードする核酸が単離される。単離された生物学的成分(例えば、核酸分子またはタンパク質、例えばプロテアーゼ)は、生物体の細胞内でその成分が自然に生成される他の生物学的成分、例えば、他の染色体および染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質ならびにオルガネラ、から離されて実質的に分離または精製されたものである。「単離」された核酸およびタンパク質は、標準的精製法により精製された核酸およびタンパク質を包含する。その用語は、宿主細胞内での組換え発現により調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸も包含する。
アミノ酸は、本明細書では、アミノ酸の名称、3文字の略語、または1文字の略語を用いて呼称される。以下の表には、標準のアミノ酸の列挙がそれらの略語と共に提供されている。
Figure 2012530498
特異的アミノ酸変種(variation)およびその変種をコードする核酸に加えて、その変種の保存的アミノ酸置換が、本明細書において提供される。そのような置換は、保存的なものであり、例えば、バリアントアミノ酸が、同一分類の別のアミノ酸によって交換されたものである。アミノ酸は、その側鎖に応じて、酸性、塩基性、中性極性、もしくは中性非極性、および/または芳香族として分類することができる。バリアントアミノ酸の位置の好ましい置換は、その位置のバリアントアミノ酸と同じ分類を1種以上有するものを包含する。したがって、一般にアミノ酸Lys、Arg、およびHisは、塩基性であり;アミノ酸アスパラギン酸およびグルタミン酸は、酸性であり;アミノ酸Ser、Thr、Cys、Gln、およびAsnは、中性極性であり;アミノ酸Gly、Ala、Val、Ile、およびLeuは、非極性脂肪族であり;アミノ酸Phe、Trp、およびTyrは、芳香族である。GlyおよびAlaは、小アミノ酸であり、そしてVal、IleおよびLeuは、脂肪族アミノ酸である。
当業者には周知であろうが、特定のアミノ酸を1つ以上のコドントリプレットでコードすることができる遺伝子コードは、縮重している。それゆえ、本明細書で提供された核酸は、異なるコドンを用いて同一アミノ酸をコードする代替的な配列も含む。更に本明細書で提供された核酸は、本明細書で提供されたバリアントネプリライシンポリペプチドをコードする核酸のコード配列と相補的配列を両者とも含む。
本明細書で提供されたプロテアーゼバリアントまたはその誘導体は、宿主細胞中でそれをコードする核酸配列の組換え発現により、調製することができる。プロテアーゼまたはその誘導体を組換え発現するために、プロテアーゼまたはその誘導体をコードするDNAフラグメントを含む1種以上の組換え発現ベクターで、宿主細胞をトランスフェクトし、それによりプロテアーゼまたはその誘導体を宿主細胞内で発現せることができる。例えばSambrook, Fritsch and Maniatis(編), Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N. Y., (1989), Ausubel, F. M. et al. (編) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, (1989)に記載された通り、標準的な組換えDNA方法論を利用して、プロテアーゼまたはその誘導体をコードする核酸を調製および/または獲得し、これらの核酸を組換え発現ベクターに組込んで、宿主細胞にベクターを導入する。
別のポリペプチドに融合されたプロテアーゼまたはその誘導体をコードするポリヌクレオチド配列を作製するために、プロテアーゼをコードする核酸を、可撓性リンカーをコードする別のフラグメントに作動可能に連結することができ、それによりプロテアーゼおよび他のポリペプチド配列を、可撓性リンカーにより接合された(joined)プロテアーゼおよび他のポリペプチド領域を有する、隣接した一本鎖タンパク質として発現させることができる。
プロテアーゼまたはその誘導体を発現させるために、標準の組換えDNA発現方法を用いることができる(例えば、Goeddel; Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif.(1990)参照)。例えば、所望のポリペプチドをコードするDNAを、発現ベクターに挿入し、その後、それを適切な宿主細胞内にトランスフェクトすることができる。調節配列の選択をはじめとする発現ベクターの設計が、宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル、および発現が構成であるか、または誘導であるか、などの因子によって影響を受けることを理解されたい。
ホ乳類宿主細胞発現に好ましい調節配列としては、ホ乳類細胞内で高レベルのタンパク質発現を指導するウイルス要素、例えばサイトメガロウイルス(CMV)から誘導されるプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)から誘導されるプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルスから誘導されるプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))ならびにポリオーマから誘導されるプロモーターおよび/またはエンハンサーが挙げられる。ウイルス調節要素およびその配列の更なる記載については、例えば、StinskiによるU.S.5,168,062、Bell他によるU.S.4,510,245、およびSchaffner他によるU.S.4,968,615を参照されたい。組換え発現ベクターは、複製起点および選択マーカーを含むこともできる(例えば、Axel他によるU.S.4,399,216、同4,634,665および同5,179,017参照)。適切な選択マーカーは、ベクターが導入された宿主細胞上に、薬物、例えばG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートへの耐性を付与する遺伝子を包含する。例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子は、メトトレキサートへの耐性を付与し、neo遺伝子は、G418への耐性を付与する。
宿主細胞への発現ベクターのトランスフェクションは、標準的技術、例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿法、およびDEAE−デキストラントランスフェクションを用いて実施することができる。
本明細書で提供されたバリアントプロテアーゼポリペプチドを発現させるのに適したほ乳類宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R. J. Kaufman and P. A. Sharp(1982) Mol. Biol. 159:601-621に記載された通り、DHFR選択マーカーと共に用いられる、Urlaub and Chasin,(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されたdhfr−CHO細胞を含む)、NSOミエローマ細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。幾つかの実施形態において、発現ベクターは、宿主細胞を発育させる培地中に発現されたタンパク質が分泌されるように設計される。プロテアーゼまたはその誘導体は、標準的なタンパク質精製法を用いて、培地から回収することができる。
バリアントプロテアーゼポリペプチドは、例えば、Robinson他へのU.S.6,204,023およびCarter et al., Bio/Technology 10:163-167(1992)に記載された通り、適切なベクターを用いて原核細胞内で産生させることもできる。発現ベクターは、発現されたポリペプチドを細胞膜周辺腔に分泌させるように設計することができ、またはポリペプチドを細胞内、例えば封入体内にに保持することができる。それぞれ、発現されたポリペプチドは細胞膜周辺腔から、または封入体は宿主細胞から、単離することができる。
本明細書に記載されたベクター内でDNAをクローニングまたは発現させるのに適した宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞、または先に記載された、より高等の真核細胞である。原核細胞に加えて、真核性微生物、例えば、糸状菌または酵母は、本明細書に提供された抗体、抗原結合部分、またはその誘導体の適切なクローニングまたは発現宿主である。Saccharomyces cerevisiaeは、適切な真核性宿主の微生物(microorganism)である。別の適切な酵母宿主は、Schizosaccharomyces pombeである。本明細書に提供されたグリコシル化プロテアーゼまたはその誘導体の発現に適した宿主細胞としては、ホ乳類細胞、植物細胞、および昆虫細胞が挙げられる。
宿主細胞を、バリアントプロテアーゼポリペプチドのための上記発現またはクローニングベクターによりトランスフェクトし、プロモーターの導入、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜、改変された従来の栄養培地で培養する。市販の培地、例えば、ハムF10、最小必須培地(MEM)、RPMI−1640、およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)は、宿主を培養するのに適している。培養条件、例えば温度、pHなどは、発現用に選択される宿主細胞によってこれまで利用されていたものであり、当業者には自明であろう。プロテアーゼまたはその誘導体を培地に分泌させる場合、そのような発現系からの上清を、一般には最初に市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばアミコンまたはミリポア・ペリコン限外ろ過ユニットを用いて濃縮する。細胞から調製されたプロテアーゼまたはその誘導体の組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、透析、およびアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することができる。
一般に、本明細書で記載されたプロテアーゼバリアントは、薬理活性物質を処理/分解する能力から得られた薬理活性を有する。2種の因子により改変された活性および/または特異性は、野生型と比較して、バリアントの薬理活性を変化させるのに十分である。プロテアーゼバリアントの活性/特異性は、当該技術分野で公知のアッセイにより決定することができる。インビボアッセイは、当該技術分野で公知であり、実施例の節に更に記載される。そのような医薬組成物は、注射として、または経口、肺内、経鼻、経皮、皮下、もしくは他の投与形態で投与されるものであってもよい。一般に本発明は、効果的量の本発明のバリアントプロテアーゼポリペプチドを、薬学的に許容しうる希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/または担体と共に含む医薬組成物を包含する。そのような組成物は、様々な緩衝剤量、pHおよびイオン強度の希釈剤;添加剤、例えば、洗剤および可溶化剤、酸化防止剤、防腐剤、および充填物質;材料を高分子化合物、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸などの特定の調製物、またはリポソームに組込んだものが挙げられる。酸も用いてよく、これが、循環の際に持続時間を延長する作用を有していてもよい。そのような組成物は、本発明のプロテアーゼバリアントまたはその誘導体の物理状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を及ぼすことができる。例えば、本明細書に参照により組入れられた、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版(1990 Mack Publishing Co., Easton, Pa 18042) p1435-1712を参照されたい。バリアントプロテアーゼポリペプチドは、液体形態で調製されてもよく、または乾燥粉末、例えば凍結乾燥形態であってもよい。インプラント可能な徐放性配合剤も、経皮配合剤と同様に企図される。これらの投与の選択肢は、当該技術分野で周知である。
本明細書で提供されたバリアントプロテアーゼポリペプチドは、それを必要とする患者に投与することができる。様々な経路を用いて、プロテアーゼまたはその誘導体を投与することができる。医療上許容しうる任意の投与様式、つまり効果的レベルの活性化合物を、臨床的に許容しえない有害作用を起こすことなく製造する任意の様式を、プロテアーゼまたはその誘導体を投与するのに用いることができる。そのような投与様式としては、経口、舌下、局所、経鼻、経皮または非経口経路が挙げられる。用語「非経口」としては、皮下、静脈内、筋肉内、または持続注入(infusion)が挙げられる。
バリアントプロテアーゼポリペプチドは、1回、連続、例えば連続ポンプにより、または定期的間隔で投与することができる。定期的間隔は、1週間に1回、1週間に2回、または1ヶ月に1回であってもよい。1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間またはそれを超える期間にわたり投与を行って、適切な応答を誘発してもよい。特定の組成物の複数回投与の所望の時間間隔は、当業者が過度の実験を行わずに決定することができる。プロテアーゼまたはその誘導体を投与するための他のプロトコルは、当業者に公知であり、そのうち、用量、投与計画、投与部位、投与様式などは、前述の事柄により変動する。
本発明は、改変された活性および/または特異性を有する、ヒトネプリライシンから誘導されるプロテアーゼバリアントポリペプチドに関する。好ましい実施形態において、プロテアーゼバリアントは、特定のタンパク質およびペプチドについて改善された活性を有する、ヒトネプリライシンから誘導される。一実施形態において、ネプリライシンバリアントは、Aβペプチドについて改善された特異性または活性を有する。別の実施形態において、ヒトネプリライシンから誘導されるプロテアーゼバリアントは、Aβペプチド以外の特定のタンパク質およびペプチドについて改善された活性を有する。プロテアーゼバリアントにより開裂可能な特定の非Aβぺプチドタンパク質およびペプチドの例は、アンジオテンシン−1および−2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン−1および−2、ニューロペプチドY、ならびにニューロテンシンに加え、アドレノメジュリン、ボンベシン、BLP、CGRP、エンケファリン、FGF−2、fMLP、GRP、ニューロキニンA、ニューロメジンC、オキシトシン、PAMP、サブスタンスPおよびVIPである。
更に別の実施形態は、アミロイドβ40、アミロイドβ42、アンジオテンシン−1および−2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン−1および−2、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、アドレノメジュリン、ボンベシン、BLP、CGRP、エンケファリン、FGF−2、fMLP、GRP、ニューロキニンA、ニューロメジンC、オキシトシン、PAMP、サブスタンスPまたはVIPからなる群より選択される少なくとも1種の基質について改変された特異性を有する前述のバリアントのいずれかによるプロテアーゼバリアントである。更なる実施形態は、アミロイドβ40、アミロイドβ42、アンジオテンシン−1および−2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン−1および−2、ニューロペプチドYまたはニューロテンシンからなる群より選択される少なくとも1種の基質について改変された特異性を有する前述のバリアントのいずれかによるプロテアーゼバリアントである。更なる実施形態は、少なくともアミロイドβ40またはアミロイドβ42について改変された特異性を有する前述のバリアントのいずれかによるプロテアーゼバリアントである。
以下の表に、2種の対応するKapp値(実施例3参照)の比から決定された、異なる基質に対する、プロテアーゼバリアントvs野生型ネプリライシンの相対活性を列挙する。これらのバリアントは、一列目に記載された位置にある突然変異1つまたは突然変異の組合せにより定義された全てのプロテアーゼバリアントの組の代表例である。例示の目的で:
プロテアーゼバリアントG399Vは、ペプチド−1(Aβペプチド誘導体)について1.43倍高い活性、ペプチド−2(Aβペプチド誘導体)について1.21倍高い活性、ペプチド−7(NPY誘導体)について1.32倍高い活性、ペプチド−8(ニューロテンシン誘導体)およびペプチド−13(ブラジキニン誘導体)について50倍低い活性、ならびにペプチド−5(アンジオテンシン誘導体)について12.5倍の低下を示す。プロテアーゼバリアントを野生型プロテアーゼと比較した上記の特異性定義では、このバリアントG399Vは、ペプチド−1vsペプチド−13で約70倍高い特異性を示す。
プロテアーゼバリアントG714Kは、ペプチド−1(Aβペプチド誘導体)について6.91倍高い活性、ペプチド−2(Aβペプチド誘導体)について3.99倍高い活性、ペプチド−6(エンドセリン誘導体)について1.31倍高い活性、ならびにペプチド−13(ブラジキニン誘導体)およびペプチド−4(BNP誘導体)について5倍低い活性を示す。プロテアーゼバリアントを野生型プロテアーゼと比較した上記の特異性定義では、このバリアントG714Kは、ペプチド−1vsペプチド−13で約35倍高い特異性を示す。
プロテアーゼバリアントG600Wは、ペプチド−1(Aβペプチド誘導体)について1.91倍高い活性、ペプチド−4(BNP誘導体)について1.95倍高い活性、およびペプチド−13(ブラジキニン誘導体)について100倍低い活性を示す。プロテアーゼバリアントを野生型プロテアーゼと比較した上記特異性定義では、このバリアントG600Wは、ペプチド−1vsペプチド−13でほぼ200倍高い特異性を、そしてペプチド−4vsペプチド−13でほぼ200倍高い特異性を示すが、ペプチド−1とペプチド−4との活性の比は、ペプチド−1vsペプチド−4の特異性がほぼ不変であることを意味している。
プロテアーゼバリアントN592Pは、ペプチド−6(エンドセリン誘導体)について1.49倍高い活性、ペプチド−8(ニューロテンシン誘導体)について1.35倍低い活性、およびペプチド−13(ブラジキニン誘導体)について2.84倍低い活性を示す。このバリアントは、ペプチド−6vsペプチド−13で4倍高い特異性、ならびにペプチド−6vsペプチド−8、およびペプチド−8vsペプチド−13で、2倍高い特異性を示す。
プロテアーゼバリアントW693Lは、ペプチド−13(ブラジキニン誘導体)について2.15倍高い活性、ペプチド−4(BNP誘導体)について6.25倍低い活性、およびペプチド−5(アンジオテンシン−1誘導体)についてほぼ不変の活性を示す。このバリアントは、ペプチド−13vsペプチド−4で13倍高い特異性、ペプチド−13vsペプチド−5で2倍高い特異性、およびペプチド−5vsペプチド−4で6.5倍高い特異性を示す。
しかし、変異体W693LおよびG399Vを組合わせたプロテアーゼバリアントは、ペプチド−13(ブラジキニン誘導体)について6.7倍低い活性、およびペプチド−4(BNP誘導体)について3.3倍低い活性を示し、ペプチド−4vsペプチド−13で2倍高い特異性が得られた。
プロテアーゼバリアントS536Eは、ペプチド−5(アンジオテンシン誘導体)について1.37倍高い活性、ペプチド−13(ブラジキニン誘導体)について3倍低い活性、およびペプチド−1(Aβペプチド誘導体)について4倍低い活性を示す。このバリアントは、ペプチド−5vsペプチド−1で5倍高い特異性、およびペプチド−5vsペプチド−13で4倍高い特異性を示す。しかし、位置536に酸性残基の代わりに塩基性残基を有するプロテアーゼバリアント、即ち、バリアントS536Rは、ペプチド−5で2.3倍低い特異性、およびペプチド−1で3.85倍高い特異性を示し、つまりこの基質の組に関しては逆の特異性を示す
意外にも、文献に記載されたGln(Q)以外の残基をもたらす位置102での突然変異は、wtまたはR102突然変異とは異なる特異性を示し、例えば、ペプチド−5vsペプチド−1で突然変異体R102Pの特異性が0.66倍低いが、R102QおよびR102Mは、それぞれ3倍および3.6倍高い特異性を示す。
意外にも、文献に記載された位置718でのI−>A以外の2つの突然変異は、異なる特異性を示し、ペプチド−1vsペプチド−6で、I718Lは9倍の、そしてI718Vは、2.5倍高い特異性を示す。
Figure 2012530498

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他に断りがなければ、本明細書に定義されたアミノ酸位置は、配列番号1に開示された通り、完全長野生型ネプリライシン内のもの(開始メチオニンを減算)に関する。したがって例えば、S100は、完全長野生型ネプリライシンの位置100のセリンを指す。
本発明の別の実施形態は、野生型ヒトネプリライシンと比較して、特定の基質について少なくとも2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍高い特異性、または特定の基質について少なくとも2倍、5倍、8倍、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍高い活性を有する、ヒトネプリライシンから誘導されるプロテアーゼバリアントである。好ましい実施形態において、前述の高い特異性は、少なくとも10倍である。更に好ましい実施形態において、前述の高い活性は、少なくとも4倍である。特定の実施形態において、プロテアーゼバリアントは、Aβについて高い特異性または活性を有する。
本発明の別の実施形態は、野生型ヒトネプリライシンと比較して、第二のネプリライシン基質に比して第一のネプリライシン基質について少なくとも2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍高い特異性、または第二のネプリライシン基質に比して第一のネプリライシン基質について少なくとも2倍、5倍、8倍、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍高い活性を有する、ヒトネプリライシンから誘導されるプロテアーゼバリアントである。好ましい実施形態において、前述の高い特異性は、少なくとも10倍である。更に好ましい実施形態において、前述の高い活性は、少なくとも4倍である。特定の実施形態において、プロテアーゼバリアントは、Aβについて高い特異性または活性を有する。更なる実施形態において、第一のネプリライシン基質は、Aβであり、第二のネプリライシン基質は、アンジオテンシン−1および−2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン−1および−2、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、アドレノメジュリン、ボンベシン、BLP、CGRP、エンケファリン、FGF−2、fMLP、GRP、ニューロキニンA、ニューロメジンC、オキシトシン、PAMP、サブスタンスPならびにVIPからなる群より選択される。更なる実施形態において、第一のネプリライシン基質は、Aβであり、第二のネプリライシン基質は、アンジオテンシン−1および−2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン−1および−2、ニューロペプチドYならびにニューロテンシンからなる群より選択される。
本発明の別の実施形態は、野生型ヒトネプリライシンと比較して、特定の基質について少なくとも2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍高い特異性、そして前述の基質について少なくとも2倍、5倍、8倍、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍高い活性を有する、ヒトネプリライシンから誘導されるプロテアーゼバリアントである。好ましい実施形態において、前述の高い特異性は、少なくとも10倍である。更に好ましい実施形態において、前述の高い活性は、少なくとも4倍である。特定の実施形態において、プロテアーゼバリアントは、Aβについて高い特異性および活性を有する。
更に別の実施形態は、T99、S100、S101、G104、D107、G195、T206、H211、H214、H217、D219、Q220、G224、S227、R228、D229、F247、A287、R292、L323、Y346、M376、D377、L378、S380、S381、F393、R394、A396、G399、E403、T404、A405、Y413、N415、G416、N417、E419、V422、A468、I485、I510、L514、F516、S517、Q518、Q521、L522、K524、E533、W534、S536、G537、V540、Y545、S546、S547、G548、D590、D591、N592、G593、F596、G600、G600、W606、Q624、G645、A649、V692、W693、Y697、Y701、N704、S705、T708、D709、V710、S712、G714、R735およびK745からなる群より選択される配列内の少なくとも1つの改変を有する、ヒトネプリライシンから誘導されるプロテアーゼバリアントである。特定の実施形態において、引用された位置のいずれかの改変は、別の天然アミノ酸による天然型残基の置換である。更なる実施形態は、ヒト野生型ネプリライシンと比較して、置換が特定の基質への高い特異性および/または活性をもたらす、前述のプロテアーゼである。更に好ましい実施形態は、野生型ヒトネプリライシンと比較して、特定の基質について少なくとも2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、200倍高い特異性を有する前述のプロテアーゼバリアントである。更に好ましい実施形態は、高い特異性に加えて、野生型ヒトネプリライシンと比較して、特定の基質について少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、8倍、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍高い活性を有する前述のプロテアーゼバリアントである。特定の実施形態において、プロテアーゼバリアントは、Aβについて高い特異性または活性を有する。
更に別の実施形態は、T99、S100、S101、G104、D107、G195、T206、H211、H214、H217、D219、Q220、G224、S227、R228、D229、F247、A287、R292、L323、Y346、M376、D377、L378、S380、S381、F393、R394、A396、G399、E403、T404、A405、Y413、N415、G416、N417、E419、V422、A468、I485、I510、L514、F516、S517、Q518、Q521、L522、K524、E533、W534、S536、G537、V540、Y545、S546、S547、G548、D590、D591、N592、G593、F596、G600、G600、W606、Q624、G645、A649、V692、W693、Y697、Y701、N704、S705、T708、D709、V710、S712、G714、R735およびK745からなる群より選択される配列内の少なくとも1つの改変を有する、ヒトネプリライシンから誘導されるプロテアーゼバリアントである。特定の実施形態において前記改変は、別の天然アミノ酸による置換である。更なる実施形態は、野生型ヒトネプリライシンと比較して、特定の基質について少なくとも2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、200倍高い特異性を有し、そして高い特異性に加えて、野生型ヒトネプリライシンと比較して、前述の基質について少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、8倍、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍高い活性を有する前述のプロテアーゼバリアントである。特定の実施形態において、プロテアーゼバリアントが高い特異性または活性を有する基質は、Aβである。
更なる実施形態は、T99のD、S100のI、S101のL、V、Y、またはI、G104のL、M、R、VまたはW、D107のN、VまたはW、G195のV、T206のR、H211のN、H214のN、H217のN、D219のA、Q220のK、G224のW、S227のLまたはR、R228のG、D229のN、F247のCまたはL、A287のS、R292のM、L323のF、Y346のW、M376のY、D377のF、H、T、YまたはG、L378のE、KまたはR、S380のKまたはR、S381のR、F393のS、R394のC、E、G、MまたはP、A396のD、G399のV、E403のH、LまたはS、T404のDまたはF、A405のT、Y413のD、N415のA、G416のRまたはW、N417のW、E419のL、M、FまたはK、V422のM、A468のS、I485のV、I510のD、E、FまたはR、L514のKまたはF、F516のR、S517のD、F、R、WまたはY、Q518のRまたはP、Q521のRまたはE、L522のY、K524のR、E533のF、AまたはR、W534のC、S536のG、P、R、EまたはW、G537のEまたはT、V540のC、E、FまたはG、Y545のSまたはV、S546のD、E、I、R、WまたはY、S547のD、E、F、GまたはK、G548のC、E、RまたはW、D590のF、MまたはW、D591のEまたはL、N592のP、G593のVまたはD、F596のP、G600のD、VまたはW、W606のS、Q624のH、G645のQ、A649のG、V692のM、W693のC、F、N、Q、VまたはL、Y697のG、Y701のGまたはR、N704のE、G、RまたはW、S705のR、T708のK、D709のKまたはV、V710のF、S712のH、L、QまたはG、G714のHまたはK、R735のH、およびK745のN、からなる群から選択される配列内の少なくとも1つの改変を有する、ヒトネプリライシンから誘導されるプロテアーゼバリアントである。
別の実施態様は、R102がGln(Q)および/またはI718以外の別の天然アミノ酸により交換されている、ヒトネプリライシンから誘導されるプロテアーゼバリアントである。更なる実施形態は、1ヶ所以上の位置で、アミノ酸の以下の交換が導入されている、ヒトネプリライシンから誘導されたプロテアーゼバリアントである:R102のC、L、M、P、SもしくはW、および/またはI178のLもしくはV。
更に別の実施形態は、アミロイドβ40、アミロイドβ42、アンジオテンシン−1および−2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン−1および−2、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、アドレノメジュリン、ボンベシン、BLP、CGRP、エンケファリン、FGF−2、fMLP、GRP、ニューロキニンA、ニューロメジンC、オキシトシン、PAMP、サブスタンスPまたはVIPからなる群より選択される少なくとも1種の基質について改変された特異性を有する前述のバリアントのいずれかによるプロテアーゼバリアントである。更なる実施形態は、アミロイドβ40、アミロイドβ42、アンジオテンシン−1および−2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン−1および−2、ニューロペプチドYまたはニューロテンシンからなる群より選択される少なくとも1種の基質について改変された特異性を有する前述のバリアントのいずれかによるプロテアーゼバリアントである。更なる実施形態は、少なくともアミロイドβ40またはアミロイドβ42について改変された特異性を有する前述のバリアントのいずれかによるプロテアーゼバリアントである。
Aβについて増大した特異性を有するネプリライシンバリアント
本発明の一実施形態は、野生型ヒトネプリライシンと比較して、特定の基質について少なくとも10倍高い特異性を有する、ヒトネプリライシンから誘導されるプロテアーゼバリアントである。
Aβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアントに関して、本発明人は、以下の位置(配列番号1に示された野生型ネプリライシンに関して):101、107、220、224、227、228、229、247、287、323、376、377、378、380、381、393、394、396、399、405、416、417、419、468、485、510、514、517、524、533、536、537、546、547、548、590、592、593、596、600、645、692、693、701、704、705、708、709、712、714および718、で1つ以上のアミノ酸置換変異が、野生型ネプリライシンと比較して、ペプチド基質群に対するAβについて高い特異性を示すことを決定した。以下の位置:227、228、247、399、419、590、593、596、600、709、714および718(配列番号1に示された野生型ネプリライシンに関して)、の1ヶ所以上にアミノ酸置換を有する変異体/バリアントネプリライシンポリペプチドは、特定の他のペプチドよりもAβについて特に特異性があった。
別の態様において、配列番号1に開示された配列またはそのフラグメントを含むが、位置:101、107、220、224、227、228、229、247、287、323、376、377、378、380、381、393、394、396、399、405、416、417、419、468、485、510、514、517、524、533、536、537、546、547、548、590、592、593、596、600、645、692、693、701、704、705、708、709、712、714および718から選択される配列番号1の1ヶ所以上の位置にアミノ酸置換を有する、単離されたネプリライシンバリアントが提供される。特定の実施形態において、前記ポリペプチドは、位置:227、228、247、399、419、590、593、596、600、709、714および718から選択される配列番号1の1ヶ所以上にアミノ酸置換を有する。
以下の特異的置換を1ヶ所以上有するネプリライシンのバリアント形態が作製され、特定の他のペプチドよりもAβについて高い特異性を有することが示された:S227R、S227L、R228G、F247L、F247C、G339V、E419M、E419L、D590W、D590M、D590F、G593V、F596P、G600W、G600V、G600D、G600L、G645Q、D709K、D709V、G714K、またはI718L。これらのバリアントポリペプチドのそれぞれが、本発明の特定の実施形態である。
本発明人は、同定された位置に1ヶ所のみのアミノ酸置換を含む変異体ネプリライシンポリペプチドが、Aβについて高い特異性を有することを見出した。しかし、生成された変異体/バリアントのうち、2ヶ所以上の置換を含むもの、詳細には少なくとも2ヶ所の置換が位置399および714に存在するものは、野生型ヒトネプリライシンと比較して、他のペプチド基質のいずれよりもAβに特に特異性があった。したがって、別々の実施形態において、バリアントネプリライシン形態は、配列番号1に示されたヒトネプリライシンに関して、1ヶ所、2ヶ所、3ヶ所、4か所、5か所、6ヶ所、7ヶ所、8ヶ所またはそれを超えるアミノ酸置換を有する。例えば、特定のバリアントポリペプチドは、G399VおよびG714Kの置換を含むものである。
本発明の更なる態様によれば、配列番号1の位置に従った配列を有する野生型ヒトネプリライシンと比較して、位置399のグリシン(G)以外のアミノ酸および/または位置714のグリシン(G)以外のアミノ酸と、場合により、野生型ネプリライシンに関係する1ヶ所以上の置換とを有する、単離されたネプリライシンバリアントポリペプチドが提供される。特定の実施形態において、1ヶ所以上の選択的置換は、以下の位置:227、228、247、419、590、593、596、600、645、709または718のいずれかにあり、特定の置換は、S227R、S227L、R228G、F247L、F247C、E419M、E419L、D590W、D590M、D590F、G593V、F596P、G600W、G600V、G600D、G600L、G645Q、D709K、D709V、またはI718Lのいずれかである。
本発明の更なる態様によれば、配列番号1の位置に従った配列を有する野生型ヒトネプリライシンと比較して、位置399のバリン(V)および/または位置714のリシン(K)と、場合により、野生型に関係する1ヶ所以上の置換とを有する、単離されたネプリライシンバリアントポリペプチドが提供される。特定の実施形態において、1ヶ所以上の選択的置換は、S227R、S227L、R228G、F247L、F247C、E419M、E419L、D590W、D590M、D590F、G593V、F596P、G600W、G600V、G600D、G600L、G645Q、D709K、D709V、およびI718Lからなる群より選択される。特定の一実施形態において、1ヶ所以上の選択的置換は、S227R、R228G、F247L、E419M、D590M、D590F、G593V、F596P、G600V、G600D、G600L、G645QおよびD709Vからなる群より選択される。更なる態様によれば、配列番号1の位置に従った配列を有する野生型ヒトネプリライシンと比較して、位置399のバリン(V)および位置714のリシン(K)と、以下の位置:227、228、247、419、590、593、596、600、645、709または718の1ヶ所以上にある選択的置換1つ以上とを有し、特定の置換が、S227R、S227L、R228G、F247L、F247C、E419M、E419L、D590W、D590M、D590F、G593V、F596P、G600W、G600V、G600D、G600L、G645Q、D709K、D709VおよびI718Lのいずれかである、単離されたネプリライシンバリアントポリペプチド。
本発明の更なる態様によれば、表3、5、7または9のいずれかに開示された、単離されたネプリライシンバリアントポリペプチドが提供される。詳細には、B1〜B12、C1〜C23、およびD1〜D10から選択される任意の変異体ネプリライシンポリペプチド。
本発明の一実施形態は、ヒトネプリライシンが可溶性ヒトネプリライシンまたはその誘導体である、前述のバリアントのいずれかによるプロテアーゼバリアントである。
別の実施形態は、前述のプロテアーゼバリアントをコードする核酸を包含する。更なる実施形態は、前述の核酸を含むベクターである。更に別の実施形態は、前述のベクターを含む宿主細胞、例えば、ベクターが形質転換またはトランスフェクトされているものである。
一実施形態は、以下のステップ:プロテアーゼバリアントの発現に適した条件下で、ネプリライシンバリアントをコードする核酸を収めたベクターを含む前述の宿主細胞を培養するステップ;および宿主細胞培養物からプロテアーゼバリアントを回収するステップ、を含む、プロテアーゼバリアントを生成させる方法である。
幾つかの実施形態において、プロテアーゼバリアント、またはその誘導体、またはそれをコードする核酸が単離される。単離された生物学的成分(例えば、核酸分子またはタンパク質、例えばプロテアーゼ)は、生物体の細胞内でその成分が自然に生成される他の生物学的成分、例えば他の染色体および染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質ならびにオルガネラ、から離されて実質的に分離または精製されたものである。「単離」された核酸およびタンパク質は、標準的精製法により精製された核酸およびタンパク質を包含する。その用語は、宿主細胞内での組換え発現により調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸も包含する。
一実施形態は、前述のプロテアーゼバリアントを含む医薬組成物である。更なる実施形態は、前述のプロテアーゼバリアントおよび薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物である。
一実施形態は、治療上効果的な量または用量の前述のプロテアーゼバリアントを、必要とする患者に投与し、それによりヒトネプリライシン基質関連疾患の症状を改善させるステップを含む、ヒトネプリライシン基質関連疾患を処置する方法である。そのようなネプリライシン基質関連疾患の例は、基質がアミロイドベータである認知症(アルツハイマー病)、基質がブラジキニンである神経因性疼痛、基質がアンジオテンシンである心臓血管疾患、または基質がニューロテンシンである癌である。
別の実施形態は、ヒトネプリライシン基質関連疾患の処置用の医薬を製造するための、前述のプロテアーゼバリアントの使用である。好ましい実施形態において、ヒトネプリライシン基質関連疾患は、多量の前述の基質がもたらす疾患、例えばAβ関連の病気である。そのようなネプリライシン基質関連疾患の例は、基質がアミロイドベータである認知症(アルツハイマー病)、基質がブラジキニンである神経因性疼痛、基質がアンジオテンシンである心臓血管疾患、または基質がニューロテンシンである癌である。
ヒトネプリライシン完全長配列(配列番号1)に関連する置換位置(開始メチオニンを減算)の場所を定めることで、細胞外ヒトネプリライシン内、および他の種、例えばラットおよびマウスからのネプリライシン(完全長または細胞外ドメイン)内の対応する位置の同定が可能になる。完全長ネプリライシンバリアントに加えて、本発明は、フラグメントが本明細書に示されたアミノ酸置換を含む、完全長ネプリライシンのフラグメントも包含し、野生型ネプリライシンが開裂する基質ペプチドの1種以上を開裂する能力を有する。詳細にはフラグメントは、完全長タンパク質の以下のタンパク質分解開裂を起こすもの、例えば細胞外領域などであろう。
したがって本発明の一態様によれば、野生型ネプリライシンと比較して、ANP、BNP、アンジオテンシン−1、ブラジキニン、エンドセリン1、ニューロペプチドYおよびニューロテンシンから選択される基質1種以上の開裂よりもアミロイドベータの開裂について少なくとも10倍高い特異性を有する、単離されたポリペプチドが提供される。一実施形態において、単離されたペプチドは、ANP、BNP、アンジオテンシン−1、ブラジキニン、エンドセリン1、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、アドレノメジュリンおよびインスリンb−鎖から選択されるペプチドのそれぞれよりも、Aβの開裂について少なくとも10倍高い特異性を有する。別の実施形態において、単離されたポリペプチド(ネプリライシンバリアント)は、配列番号1に開示された配列を有する野生型ネプリライシンと比較して、ANP、BNP、アンジオテンシン−1、ブラジキニン、エンドセリン1、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、アドレノメジュリンおよびインスリンb−鎖から選択される基質のそれぞれについて、少なくとも2倍低い開裂特異性を有する。別の実施形態において、ネプリライシンバリアントは、ANP、BNP、アンジオテンシン−1、ブラジキニン、エンドセリン1、ニューロペプチドYおよびニューロテンシンから選択される基質1種以上の開裂よりもアミロイドベータの開裂について少なくとも10倍高い特異性と、配列番号1に開示された配列を有する野生型ネプリライシンと比較して、ANP、BNP、アンジオテンシン−1、ブラジキニン、エンドセリン1、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、アドレノメジュリンおよびインスリンb−鎖から選択される基質のそれぞれについて、少なくとも5倍低い開裂特異性を有する。
本発明の別の態様によれば、配列番号1に開示された配列を有する野生型ネプリライシンと比較して、アミロイドベータの開裂について少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、15倍、20倍高い活性を有する、単離されたネプリライシンバリアントポリペプチドが提供される。
本発明の単離されたポリペプチドをコードする核酸、そのような核酸を収めるプラスミドベクター、そのようなポリペプチドを発現させることが可能な宿主細胞も、本発明の態様を形成する。本発明の別の態様としては、本発明の単離されたポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む融合タンパク質の投与を含む、アミロイドβペプチド濃度を低下させる方法;ならびに薬学的に許容しうる量の単離されたネプリライシンバリアントまたは本発明のネプリライシンバリアントを含む融合タンパク質を、薬学的に許容しうる担体または賦形剤と共に含む、アミロイドβペプチドを分解することが可能な医薬組成物;ならびにアミロイドβペプチドの分解が有益となる状態、例えばアルツハイマー病の予防および/または処置が必要なヒトをはじめとするホ乳類に、治療上効果的な量の単離されたネプリライシンバリアントまたは本発明のネプリライシンバリアントを含む融合タンパク質を投与することを含む、そのような予防および/または処置の方法;ならびに薬物治療における本発明の単離されたネプリライシンバリアントを含む融合タンパク質の使用;ならびにアミロイドβペプチドの分解が有益となる状態、例えばアルツハイマー病および軽度認知障害の予防および/または処置のための医薬の製造における、単離されたネプリライシンバリアントまたは本発明のネプリライシンバリアントを含む融合タンパク質の使用、が挙げられる。
本発明の別の態様において、修飾ネプリライシンバリアントタンパク質M−A(ここで、Aは、本明細書に記載されたネプリライシンバリアントポリペプチドであり、Mは、ネプリライシンポリペプチドの半減期を延長させる付着部分である)が提供される。
本明細書で用いられるM−A分子(修飾ネプリライシンバリアント)は、融合タンパク質とも呼ばれる。
特定の実施形態において、付着部分Mは、別のポリペプチドであるため、M−Aは、第二のポリペプチドに融合されたネプリライシンバリアントの融合タンパク質である。
Mが、別のポリペプチド(Mポリペプチド)である場合、好ましくは、それは、ネプリライシンバリアントのN−末端に付着されている。特定の実施形態において、Mポリペプチドは、本発明のネプリライシンバリアントのN−末端に付着されている。
本発明の一態様において、Mが抗体のFc部分である、融合タンパク質が提供される。この態様の一実施形態において、前記抗体は、IgG抗体である。この態様の別の実施形態において、前記抗体は、IgG1抗体である。
本発明の別の態様において、Mがヒト血清アルブミン(HSA)またはHSA結合ドメインもしくはペプチドまたはバリアントHSAであり、1ヶ所以上の突然変異を有する、融合タンパク質が提供され、好ましくは、バリアントHSAは、C34Sである。
本発明の別の態様において、Mがトランスフェリンである、融合タンパク質が提供される。
本発明の別の態様において、Mが非構造化アミノ酸ポリマーである、融合タンパク質が提供される。
本発明の別の態様において、Mが抗体結合ドメインである、融合タンパク質が提供される。
本発明の別の態様において、MおよびAがリンカーLで連結されている、融合タンパク質が提供される。
本発明の別の態様において、Lがペプチドおよび化学的リンカーから選択される、融合タンパク質が提供される。
特定の実施形態において、融合タンパク質は、融合または接合される2つのタンパク質またはペプチド成分で構成されている。しかし本明細書で用いられる用語の融合タンパク質は、モジュレーターが融合されたタンパク質を意味し、前記モジュレーターは、それ自体がタンパク質である必要はない。
したがって本発明の別の態様において、付着されたモジュレーターは、ペグ化および/またはグリコシル化である。
本発明の別の態様において、本明細書で教示されたAβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアントの投与を含む、Aβペプチド濃度を低下させる方法が提供される。この態様の一実施形態において、Aβペプチドの前記低下は、血漿内で達成される。この態様の別の実施形態において、Aβペプチドの前記低下は、脳脊髄液(CSF)中で達成される。本発明の更に別の実施形態において、Aβペプチドの前記低下は、CNS中で達成される。
本発明の別の態様において、薬学的に許容しうる量の、本明細書で教示されたAβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアント、または本発明による前記バリアントを含む融合タンパク質を、薬学的に許容しうる担体または賦形剤と共に含む、Aβペプチドを分解することが可能な医薬組成物が提供される。
本発明の別の態様において、Aβペプチドの分解が有益となる状態の予防および/または処置が必要なヒトをはじめとするホ乳類に、治療上効果的な量の、Aβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアントまたは本発明による融合タンパク質を投与することを含む、そのような予防および/または処置の方法が提供される。
本発明の別の態様において、アルツハイマー病、またはアミロイドβ斑の形成を介した、もしくはそれに関連する他の神経変性疾患の予防および/または処置が必要なヒトをはじめとするホ乳類に、治療上効果的な量の、Aβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアントまたは本発明による融合タンパク質を投与することを含む、そのような予防および/または処置の方法が提供される。
本発明の別の態様において、薬物治療で使用される、Aβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアントまたは本発明による融合タンパク質が提供される。
本発明の別の態様において、Aβペプチドの分解が有益となる状態の予防および/または処置のための、Aβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアントまたは本発明の融合タンパク質の使用が提供される。
本発明の別の態様において、Aβペプチドの分解が有益となる状態の予防および/または処置のための医薬の製造における、Aβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアントまたは本発明の融合タンパク質の使用が提供される。
本発明の別の態様において、アルツハイマー病または軽度認知障害の予防および/または処置のための、Aβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアントまたは本発明の融合タンパク質の使用が提供される。この態様の一形態において、前記医薬は、Aβペプチド濃度を低下させる。Aβペプチドの前記低下は、血漿、CSFおよび/またはCNS中で達成される。
本発明の別の態様において、アルツハイマー病または軽度認知障害の予防および/または処置のための医薬の製造における、Aβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアントまたは本発明の融合タンパク質の使用が提供される。本発明の一形態において、前記医薬は、Aβペプチド濃度を低下させる。Aβペプチドの前記低下は、血漿、CSFおよび/またはCNS中で達成される。
幾つかの実施形態において、Aβについて高い特異性を有するネプリライシンバリアント、またはその誘導体、またはそれをコードする核酸が単離される。
本発明のネプリライシンバリアントは、ペプチド開裂が可能な領域を収める完全長ネプリライシンタンパク質、またはそのタンパク質の細胞外部分から誘導されるか、またはそれに基づいていてもよい。細胞外部分は、膜領域の外側として定義されるネプリライシンの一部として定義される。本発明は、触媒活性がAβペプチドに対して守られる限りは、ネプリライシンのより小さなフラグメントも含む。
本明細書で提供されたネプリライシンバリアントポリペプチドまたはその誘導体は、宿主内でのそれをコードする核酸配列の組換え発現により、調製することができる。ネプリライシンバリアントポリペプチドまたはその誘導体を組換え発現させるために、宿主細胞は、ネプリライシンまたはその誘導体をコードするDNAフラグメントを含む組換え発現ベクター1つ以上でトランスフェクトすることができ、それによりネプリライシンまたはその誘導体は、宿主内で発現される。Sambrook, Fritsch and Maniatis(編), Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N. Y., (1989), Ausubel, F. M. et al. (編) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, (1989)に記載されたものと同様に、標準の組換えDNA方法論を利用して、ネプリライシンまたはその誘導体をコードする核酸を調製および/または獲得し;組換え発現ベクター内にこれら核酸を組込み;そして宿主内にベクターを導入する。
一般に、本明細書に記載されたネプリライシンバリアントは、薬理活性のある基質を処理/分解する能力から得られる薬理活性を有する。2種の因子により改変された活性および/または特異性は、野生型と比較して、バリアントの薬理活性を変化させるのに十分である。ネプリライシンバリアントの活性/特異性は、当該技術分野で公知のアッセイにより決定することができる。インビボアッセイは、当該技術分野で公知であり、実施例の節に更に記載されている。
本発明の別の実施形態は、Aβペプチドと高い親和力で結合する一部分で構成された分子を指す。この親和力は、マイクロモル量未満の結合親和力である。Aβペプチドへの結合親和力は、好ましくはナノモル量の結合親和力である。Aβペプチドとの相互作用に関与する別の部分は、Aβペプチドの構造の1ヶ所以上の部位でAβペプチドを開裂する活性成分である。共にAβペプチドを認識する、結合部分とそれが連結された触媒活性部分と組合わせる理由は、Aβペプチドと結合し、それにより局所濃度(結合部分および触媒部分)を上昇させる結合部分が、Aβペプチドの解離形態に結合しているためである。一部は、凝集形態に結合せずに、解離形態に特異的に結合する。一部のそのような抗体は、Aβペプチドの自然に生成した短い形態のAβに結合して(即ち、共有結合または他の方法で連結して)、二機能性分子中で設計された連結により、局所的に多く存在する活性部分により開裂されるようになる。Aβペプチド結合成分とAβペプチド分解成分の間の連結は、好ましくはリンカー成分を含む、または含まない血漿中半減期モジュレーター成分に介される。
本発明の幾つかの実施形態において、治療薬は、Aβペプチドまたはアミロイド斑の他の成分に特異的に結合する融合タンパク質を含む。そのような化合物は、モノクローナルまたはポリクローナルまたは任意の他のAβペプチド結合剤の一部であってもよい。これらの化合物は、Aβペプチドに、約10、10、10、10、または1010−1以上の結合親和力で結合する。これらの結合成分は、好ましくはAβペプチド分解成分とつながっている。
本発明の一態様は、融合タンパク質内でのAβペプチド結合成分を含む抗体の「Fc」ドメインとの組合せを指す。抗体は、二つの機能的に独立した部分、つまり抗原に結合する「Fab」として公知の可変ドメインと、補体活性化のようなエフェクター機能に関連する「Fc」として公知の定常ドメインとを含み、食細胞により攻撃される。Fcは、長い血清中半減期を有するが、Fabは、寿命が短い(Capon et al.(1989), Nature 337:525-31)。治療タンパク質と共に構築される場合、Fcドメインは、より長い半減期を提供することができるか、またはFc受容体結合、プロテインA結合、補体結合およびおそらく経胎盤移行のような機能を組込むことができる。
本発明による好ましい分子は、Fc連結アミロイドβペプチド分解タンパク質、例えば、ネプリライシン関連タンパク質である。
抗体のFcドメインとの融合によるタンパク質治療薬の有用な修飾は、表題"Modified Peptides as Therapeutic Agents(WO99/25044)の発行物に詳細に議論されている。その発行物は、PEG、デキストラン、またはFc領域などの「賦形剤」への連結を議論している。FcドメインのC−末端部分への連結は、可能なアプローチとして文献に記載されている(Protein Eng. 1998 11:495-500)。これにより、融合タンパク質のタンパク質部分でのN−末端連結が可能となる。本発明は、このアプローチと、この方策を利用して、インビボ有効性のための最適な性質を有する融合タンパク質を得ることの有益作用とを記載する。
IgG分子は、Fc受容体の4つの分類、即ち、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIおよびFcγRnと相互作用する。好ましい実施形態において、融合タンパク質の免疫グロブリン(Ig)成分は、FcRnに結合することが可能なIgGの定常領域の少なくとも一部を有する。本発明の一態様において、重鎖アイソタイプまたはそのバリアントを、細胞上のFc受容体への結合親和力を低下させた融合パートナーとして用いることにより、受容体のFcγRファミリーの1種への融合タンパク質の結合親和力が低下する。したがって好ましい実施形態において、IgGのFcドメインを第二の非免疫グロブリンタンパク質に連結させることにより、高いインビボ循環半減期を有する抗体ベースの融合タンパク質が得られる。
一実施形態において、融合タンパク質のAβペプチド分解成分は、酵素である。用語「酵素」は、本明細書では、プロテアーゼまたはぺプチダーゼとして活性があるタンパク質、その類似体、およびそのフラグメントを説明するために用いられる。好ましくは酵素としては、セリンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼが挙げられる。好ましくは、本発明の融合タンパク質は、酵素的生物活性を呈する。
別の実施形態において、免疫グロブリンドメインは、IgGのFcドメイン、IgGの重鎖、およびIgGの軽鎖からなる群より選択される。別の実施形態において、融合タンパク質内の抗体の定常領域は、ヒト起源のものであり、免疫グロブリンのIgG分類から、詳細には分類IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4から誘導される免疫グロブリンファミリーに属する。あるいは、他のホ乳類、詳細にはげっ歯類または霊長類のIgG分類に属する免疫グロブリンの定常領域を使用することも可能であるが、本発明によれば、免疫グロブリンの分類IgD、IgM、IgAまたはIgEの定常領域を用いることも可能である。典型的には、本発明による構造体内に存在する抗体フラグメントは、FcドメインCHまたはその部分と、FcドメインCHの少なくとも一部のセグメントとを含む。あるいは、含有する本発明による融合構造体を、二量体化のための成分(A)、CHドメインおよびヒンジ領域と見なすこともできる。
しかし、天然型の状態で見出される免疫グロブリン配列の誘導体、詳細には少なくとも1つの交換、欠失および/または挿入を含むそれらのバリアント(本明細書では用語「バリアント」にまとめられている)を使用することも可能である。典型的には、そのようなバリアントは、天然型配列との少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する。この文脈において特に好ましいバリアントは、各天然型配列と比較して、典型的には10未満、好ましくは5未満、非常に特別に好ましくは3未満の交換を含む交換バリアントである。好ましいとされる以下の交換可能性に注意されたい:TrpをMet、Val、Leu、Ile、Phe、HisもしくはTyrで、またはその逆;AlaをSer、Thr、Gly、Val、IleもしくはLeuで、またはその逆;GluをGln、AspもしくはAsnで、またはその逆;AsnをGlu、GlnもしくはAsnで、またはその逆;ArgをLysで、またはその逆;SerをThr、Ala、ValもしくはCysで、またはその逆;TyrをHis、PheもしくはTrpで、またはその逆;GlyもしくはProを他の天然型アミノ酸19種のうちの1つで、またはその逆。
可溶性受容体−IgG融合タンパク質は、一般的な免疫試薬であり、それらを構築する方法は、当該技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,225,538号参照)。機能的Aβペプチド分解ドメインを、免疫グロブリンの分類または亜分類から誘導された免疫グロブリンFcドメインに融合してもよい。異なるIgの分類または亜分類に属する抗体のFcドメインは、多様な第二のエフェクター機能を活性化させることができる。Fcドメインが同族のFc受容体に結合されると、活性化が起こる。第二のエフェクター機能は、補体系を活性化する能力、胎盤を通過する能力、および様々な微生物タンパク質に結合する能力を包含する。免疫グロブリンの異なる分類および亜分類の性質は、Roitt et al., Immunology, p4.8(Mosby-Year Book Europe Ltd., 第3版 1993)に記載されている。抗原に結合したIgG、IgG3およびIgM抗体のFcドメインは、補体−酵素カスケードを活性化することができる。IgG2のFcドメインは、効果が低いようであり、IgG4、IgA、IgDおよびIgEのFcドメインは、補体の活性化には無効である。したがって、関連する第二のエフェクター機能が、Aβペプチド分解Fc融合タンパク質で処置される特定の免疫反応または疾患に望ましいか否かに基づいて、Fcドメインを選択することができる。標的細胞を損傷する、または殺すことが有益ならば、特に活性Fcドメイン(IgG1)を選択して、Aβペプチド分解Fc融合タンパク質を作製することができる。あるいは、補体系を惹起せずにAβペプチド分解Fc融合体を生成することが望ましいならば、不活性のIgG4 Fcドメインを選択することができる。本発明は、Fc部分に連結された触媒成分を有する融合タンパク質を記載しており、直接結合成分は記載していない。多くのFc作用が結合に仲介されることから、これは、Fcからの作用および活性が限定されることを意味している。例えば、補体活性化は、結合およびネットワーク形成に依存する。
免疫グロブリンフラグメントのC−末端には、本発明による融合構造体は、必ずではないが典型的には、触媒部分とモジュレーター部分の間に移行領域(transition region)を含み、移行領域も、好ましくはペプチド配列のリンカー配列を含む。このペプチド配列は、1〜最大70までのアミノ酸、適宜、より多くのアミノ酸、好ましくは10〜50のアミノ酸、特に好ましくは12〜30のアミノ酸の長さを有することができる。移行配列のリンカー領域は、例えばDNA制限開裂部位に対応しうる更に短いペプチド配列に隣接されていてもよい。当業者には分子生物学でよく知られる制限開裂部位は、このつながりに用いることができる。適切なリンカー配列は、好ましくは人工配列であり、それは、多数のプロリン残基を含み(例えば、リンカー領域内の各2つごとの位置に)、それに加えて、好ましくは全体的な親水性を有する。少なくとも30%のプロリン残基からなるリンカー配列が、好ましい。親水性は、好ましくは正電荷を有する少なくとも1種のアミノ酸、例えばリシンもしくはアルギニン、または負電荷を有する少なくとも1種のアミノ酸、例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸によって実現することができる。それゆえ、全体的に見ればリンカー領域は、好ましくはリンカー領域に不可欠な可撓性および/または剛性を付与するために、多数のグリシンおよび/またはプロリン残基も含有する。
しかし、天然型配列、例えば、細胞外に配置されているが直ちに作用する、即ち細胞膜の前面に配置されている、ネプリライシンファミリーに属するリガンドのそれらのフラグメントも、適宜、天然型セグメントの交換、欠失または挿入後には、リンカーとしての使用に適する。これらのフラグメントは、好ましくは、膜貫通領域の後に細胞外に続く50のアミノ酸であり、さもなければこれらの最初の50のアミノ酸のサブフラグメントである。しかし、本発明の融合タンパク質内のこれらのリンカー領域の免疫原性を限定して、任意の本質的な対液性防御反応を誘発させないために、好ましいのは、対応する天然型ヒト配列との少なくとも85%の配列同一性、非常に特別に好ましいのは少なくとも95%の配列同一性、特に好ましいのは少なくとも99%の配列同一性を有するこれらのセグメントである。本発明の文脈内では、リンカー領域は、好ましくはいかなる免疫原性をも有するべきではない。
しかし、Aβペプチド分解成分および血漿中半減期モジュレーター成分にアミド様結合で連結するペプチド配列の代わりに、非ペプチド性もしくは擬ペプチド性のある化合物、または非共有結合に基づく化合物を使用することも可能である。これらのつながりに挙げられうる例は、詳細には、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびヘテロ二官能性リンカー、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)または類似のクロスリンカーである。
血漿中半減期を調節する他の方法は、ペグ化、または分子量を増加させる他のタイプの修飾、例えばグリコシル化を利用することである。
先に言及された通り、ポリマーモジュレーターを用いてもよい。モジュレーターとして有用な化学的部分を付着させる様々な手段は、現在入手可能であり、例えば、全体が本明細書に参照により組入れられた、表題”N-Terminally Chemically Modified Protein Compositions and Methods”の特許出願WO96/11953を参照されたい。このPCT公報には、とりわけ、水溶性ポリマーの、タンパク質のN−末端への選択的付着が開示されている。
好ましいポリマーモジュレーターは、ポリエチレングリコール(PEG)である。PEG基は、任意の簡便な分子量のものであってもよく、直鎖状または分枝状であってもよい。PEGの平均分子量は、好ましくは約2キロダルトン(「kD」)〜約100kDa、より好ましくは約5kDa〜約50kDa、最も好ましくは約5kDa〜約10kDaの範囲内であろう。PEG基は、一般にPEG部分の反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、チオール、またはエステル基)を介した、本発明の化合物の反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、またはエステル基)へのアシル化または還元アルキル化により、本発明の化合物に付着される。
タンパク質のPEG化の有用な方策は、溶液中で共役結合を形成することにより、それぞれが互いに他方への反応性を持つ特別な官能性を担うタンパク質とPEG部分とを組合わせることからなる。タンパク質は、従来の組換え発現技術により調製することができる。タンパク質は、特異的部位の適切な官能基で「予め活性化」される。前駆体が精製され、PEG部分と反応させる前に、完全に特徴づけられる。タンパク質とPEGとのライゲーションは水相中で起こり、逆相分析HPLCにより容易にモニタリングすることができる。PEG化タンパク質は、分取HPLCにより容易に精製することができ、分析HPLC、アミノ酸分析およびレーザ脱離質量分析により特徴づけることができる。
多糖ポリマーは、タンパク質修飾に用いられうる別のタイプの水溶性ポリマーである。デキストランは、α1−6結合により優先的に連結されたグルコースの個々のサブユニットからなる多糖ポリマーである。デキストラン自体は、多くの分子量範囲内で利用可能であり、約1kD〜約70kDの分子量は容易に入手できる。デキストランは、モジュレーターとして単独で、または別のモジュレーター(例えば、Fc)と組合わせて、本発明で使用されるのに適した水溶性ポリマーである。例えば、WO96/11953および同96/05309を参照されたい。治療用または診断用免疫グロブリンにコンジュゲートされたデキストランの使用が報告されており、例えば、本明細書に参照により組入れられた欧州特許公報EP0315456を参照されたい。デキストランが本発明による賦形剤として用いられる場合、約1kD〜約20kDのデキストランが好ましい。
炭水化物(オリゴ糖)基は、タンパク質内のグリコシル化部位であることが知られる部位に共有結合的に付着されていてもよい。一般にO−結合のオリゴ糖は、セリン(Ser)またはトレオニン(Thr)残基に付着するが、N−結合のオリゴ糖は、配列アスパラギン(Asn)−X−Ser/Thr(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸であってもよい)の一部であるアスパラギン(Asn)残基に付着している。Xは、好ましくはプロリン以外の19種の天然アミノ酸のうちの1種である。N−結合およびO−結合のオリゴ糖の構造、ならびに各タイプに形成された糖残基は、異なっている。両方に共通して見出される糖の1つのタイプが、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸とも呼ばれる)である。シアル酸は、通常、N−結合およびO−結合オリゴ糖の両方の末端残基であり、負電荷によって、酸性の性質をグリコシル化化合物に付与してもよい。そのような部位が、本発明の化合物のリンカー内に組込まれていてもよく、好ましくは、それは、ポリペプチド化合物の組換え生成時に細胞によりグリコシル化される(例えば、CHO、BHK、COSなどのホ乳類細胞内で)。しかしそのような部位は、更に、当該技術分野で公知の合成または半合成手順により、グリコシル化されてもよい。グリコシル化に適したアミノ酸を、モジュレーターおよびタンパク質部分の両方の特異的部位に組込むことができる。これらの特異的アミノ酸を設計するのに使用される好ましい技術は、部位特異的突然変異誘発または同等の方法である。
他の可能な修飾としては、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリルまたはトリオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、Cys内の硫黄原子の酸化、リシン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化が挙げられる。Creighton, Proteins: Structure and Molecule Properties(W. H. Freeman & Co., San Francisco), pp.79-86(1983)。したがってAβペプチド分解成分のグリコシル化部位は、設計することができる。例えば、好ましくはネプリライシン構造の表面にある残基が、修飾されてグリコシル化が可能になる。ネプリライシンの3D構造は公知であり、グリコシル化部位およびペグ化部位の両方の導入に適したアミノ酸交換を選択するために用いることができる。グリコシル化部位は、例えば、Asn−X−Ser/Thr配列を用いて導入される。ペグ化では、適切な表面露出アミノ酸が、例えば特異的で効率的なペグ化成分のカップリングのために、システイン残基に交換されている。
本発明の化合物は、DNAレベルで変換されていてもよい。その化合物の任意の部分のDNA配列が、選択された宿主細胞とより適合性のあるコドンに変換されていてもよい。例えば、好ましい宿主細胞であるE. coliでは、最適化されたコドンが、当該技術分野で公知である。コドンは、制限部位を排除するように、またはサイレント制限部位を含むように、置換されていてもよく、それが選択された宿主細胞内でのDNAのプロセシングの一助となりうる。賦形剤、リンカーおよびペプチドDNA配列が、前述の配列変換のいずれかを含むように修飾されていてもよい。
リンカー:任意の「リンカー」基が、選択できる。その化学構造は、存在する場合には、主としてスペーサーとして働くため、重要ではない。リンカーは、好ましくはペプチド結合により連結されたアミノ酸で構成されている。したがって好ましい実施形態において、リンカーは、ペプチド結合により連結された1〜20のアミノ酸で構成され、そのアミノ酸は、20の天然アミノ酸から選択される。当業者には十分理解されるであろうが、これらのアミノ酸の幾つかは、グリコシル化されていてもよい。より好ましい実施形態において、1〜20のアミノ酸は、グルシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、およびリシンから選択される。更により好ましくは、リンカーは、立体障害のない大部分のアミノ酸、例えば、グリシンおよびアラニンで構成されている。したがって好ましいリンカーは、ポリグリシン(詳細には(Gly)、(Gly))、ポリ(Gly−Ala)、およびポリアラニンである。特に有用なリンカーは、(Gly)Serまたは(Gly)Serである。
プロテアーゼの量的特異性は、広範囲で変動する。非常に非特異的なプロテアーゼ、例えば、フェニルアラニン、バリンもしくはロイシン残基を含むポリペプチドの全てを開裂するパパイン、またはアルギニンもしくはリシン残基を含むポリペプチドの全てを開裂するトリプシンが、公知である。その一方で、特異性の高いプロテアーゼ、例えば、1つの特異性部位のみでプラスミノーゲンを開裂する組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)が、公知である。基質特異性の高いプロテアーゼは、生存する生物体のタンパク質機能の調節において重要な役割を担う。例えば、ポリペプチド基質の特異的開裂は、前駆体タンパク質を活性化させるか、または活性化タンパク質もしくは酵素を不活性化し、それによりそれらの機能を調節する。高い基質特異性を有する複数のプロテアーゼが、医療的適用で用いられる。特異的ポリペプチド基質の開裂により活性化または不活性化される薬学的実施例は、急性心筋梗塞において、プラスミノーゲンを活性化してフィブリン塊を溶解するt−PAの適用、または卒中において、フィブリノーゲンを不活性化して、それにより血液の粘度を低下させて運搬能力を高めるアンクロドの適用である。t−PAは、ヒトの血液調節に必要な活性を有するヒトプロテアーゼであるが、アンクロドは非ヒトプロテアーゼである。それは、クサリヘビ(Agkistrodon rhodostoma)から単離されており、ヘビ毒の主成分を含む。それゆえ治療的適用性を有する非ヒトプロテアーゼが数種存在する。しかしそれらの同定は、通常は非常に偶発的である。
薬物を投与することによる疾患の処置は、典型的には、患者の体内で特異的タンパク質の機能を活性化または不活性化する薬物、つまり内在性タンパク質または感染微生物もしくはウイルスのタンパク質により開始される分子メカニズムに基づく。これらのターゲットに対する化学的薬物の作用は、依然として理解または予測が困難であるが、タンパク質薬は、無数の他のタンパク質の中からこれらの標的タンパク質を特異的に認識することができる。他のタンパク質を認識する本質的可能性を有するタンパク質の顕著な例が、抗体、受容体、およびプロテアーゼである。潜在的な標的タンパク質は大多数存在するが、これらの標的タンパク質を取扱うのに今日、入手できるのは、非常に少数のプロテアーゼのみである。それらのタンパク質分解活性のおかげで、プロテアーゼは、タンパク質またはペプチドターゲットの不活性化に特に適している。ヒトタンパク質のみを考慮したとしても、潜在的な標的タンパク質の数は依然として莫大である。ヒトゲノムは、30,000〜100,000の遺伝子を含むと推定され、そのそれぞれが、異なるタンパク質をコードしている。これらのタンパク質またはペプチドの多くは、ヒト疾患に関与しており、それゆえ潜在的な薬学的ターゲットとなる。天然型単離物をスクリーニングして、特定の定性的特異性を有するそのようなプロテアーゼを見出すことは考えにくい。それゆえ、触媒抗体をはじめとする公知のプロテアーゼまたは他の足場タンパク質の触媒選択性を最適化する必要がある。
既知の特異性を有するプロテアーゼの選択系は、例えば、Smith et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, Vol. 88 (1991)から、当該技術分野で公知である。例示された通り、その系は、選択マーカーとしての酵母転写因子GAL4と、TEVプロテアーゼと共同してGAL4に挿入された、定義された開裂可能な標的配列とを含む。開裂により、DNA結合ドメインが転写活性ドメインから分離され、それを用いて転写因子を不活性化させる。得られた細胞によるガラクトース代謝の表現型的不能は、熱量測定アッセイにより、または自殺基質2−デオキシガラクトースでの選択により検出することができる。
更に、修飾、例えば、過去にHarris他(US2002/022243)により記載された、ACCとしての基に基づく蛍光発生部分としての修飾を備えたペプチド基質の使用により、選択を実施してもよい。
本発明に記載された効果的なアミロイドβペプチド分解成分を同定または生成するのに、同一または類似のアプローチを用いることができる。このアミロイドβペプチド分解成分を設計する開始点は、アミロイドβペプチドに対する幾つかの活性を有するか、または全く活性を有さない酵素であってもよい。他の成分は、アミロイドβペプチドへの活性を有する特異的領域が無作為化されている、足場タンパク質であってもよい。文献には様々な足場タンパク質が記載されており、その足場構造の一部はコア構造で、相対的な固定位置に無作為化部分を保持して、結合および活性部位を生成する。アミロイドβペプチドへの幾つかの活性を有する酵素が、アミロイドβペプチドを分解することが記載された天然プロテアーゼであってもよい。例えば、ネプリライシンは、論理的計画またはより無作為なアプローチのいずれかにより設計すれば、アミロイドβペプチド分解成分としてより効率的となる可能性がある。
改変された配列特異性を有するタンパク質分解酵素を生成する実験室技術は、基本的には公知である。それらは、発現および選択系により分類が可能である。遺伝子選択は、生物体内で、前駆体タンパク質を開裂することができるプロテアーゼまたは任意の他のタンパク質を生成し、その結果、産生生物の成長挙動を改変することを意味している。異なるプロテアーゼを備えた生物体の集団から、改変された成長挙動を有するものを選択することができる。この原理は、Davis他(米国特許第5258289号)により報告されている。ファージ系の生成は、ファージタンパク質の開裂に依存し、それはファージタンパク質を開裂することが可能なタンパク質酵素または抗体の存在下で活性化される。選択されたタンパク質分解酵素、足場または抗体は、ファージ生成を活性化するためにアミノ酸配列を開裂する能力を有する。
膜結合型プロテアーゼを用いて改変された配列特異性を示すタンパク質分解酵素を生成するためのシステムが報告されている。Iverson et al.(WO 98/49286)は、細胞の表面に出現する膜結合プロテアーゼのための発現系を報告している。実験計画での必須要素は、触媒反応を細胞表面で必ず起こさなくてはならないことであり、すなわち、基質および産物が、細胞表面に酵素を発現する細菌と関与して残存しなければならない。その他の選択系の事例では、細胞表面に活性タンパク質を発現するFACS分類(Varadarajan et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, Vol. 102, 6855 (2005))と、改善された特性を有する変異体を含んでいる分類細胞とを使用している。この事例では、プロテアーゼ開裂部位についての特異性が300万倍も変化していた。
自己分泌型プロテアーゼを用いて改変された配列特異性を示すタンパク質分解酵素を生成するためのシステムも公知である。Duff et al.(WO 98/11237)は、自己分泌型プロテアーゼのための発現系を報告している。実験計画での必須要素は、成熟したプロテアーゼを、細胞膜から細胞外の環境へと放出するために、膜結合型前駆体分子の自己タンパク質分解的プロセッシングによって、プロテアーゼそれ自体において触媒反応を起こすことにある。
Broad et al.(WO 99/11801)は、プロテアーゼの特異性の改変に適した異種細胞系を開示している。この細胞系は、転写因子前駆体を含んでおり、この転写因子は、プロテアーゼ開裂部位を介して、膜アンカードメインに結合されている。プロテアーゼ開裂部位でのプロテアーゼによる開裂は、転写因子を放出し、次いで、各プロモーターの制御下にある標的遺伝子の発現を開始する。特異性の改変に関する実験計画は、修飾した配列を有するプロテアーゼ開裂部位の挿入と、プロテアーゼへの突然変異生成からなる。
本発明では、好適なアミロイドβペプチド分解成分を得るために、いずれのタンパク質またはペプチドでも、直接に使用することができ、または、出発点として使用することができる。例えば、本発明では、いずれのプロテアーゼでも、第一プロテアーゼとして使用することができる。好ましくは、ヒト由来のタンパク質またはペプチドが、使用される。通常は、人体内部に存在している天然タンパク質またはペプチドが使用され、改変はなるべく行っていないものが好ましい。
ある方法にあっては、異なる結合特異性、および/または、分解活性を有する二つまたはそれ以上の融合タンパク質が、同時に投与され、この場合での各融合タンパク質の投与量は、所定の範囲内とする。通常、融合タンパク質は、繰り返して投与される。単回投与の間隔は、例えば、毎週、毎月、3ヶ月ごと、または、毎年などとすることができる。この間隔は、患者の血漿中の融合タンパク質の血中濃度を測定することに応じて、不定期にすることができる。ある方法にあっては、血漿中融合タンパク質濃度が、1〜1000μg/mlとなるように調整され、または、ある方法にあっては、25〜300μg/mlとなるように調整される。また、ある方法にあっては、血漿中融合タンパク質濃度が、1〜1000ng/mlとなるように調整され、または、ある方法にあっては、25〜300ng/mlとなるように調整される。
あるいは、投与頻度を抑える必要がある場合には、融合タンパク質を、徐放性製剤として投与することができる。用量と頻度は、患者での融合タンパク質の半減期に応じて変化する。一般的に、Fc部分を有する融合タンパク質は、長い半減期を示す。投与の用量と頻度は、予防目的の処置、または、治療目的の処置であるかによって、変化させることができる。予防目的の場合には、長期間にわたって、比較的に不定期の間隔で、比較的に低用量で投与がされる。患者によっては、生存している期間にわたって、治療が続けられることとなる。治療目的の場合には、疾患の進行が軽減または停止するまで、そして、好ましくは、患者での疾患の症状が部分的または全体的に軽減するまで、比較的に短い間隔で、比較的に高用量で投与がされる。その後に、予防目的の処置に準じて患者に対して投与が行われる。触媒活性アミロイドβペプチド分解融合タンパク質は、結合剤、例えば、抗体などと比較して、低用量で投与できるものと考えられる。
本発明の医薬組成物での活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して毒性を呈することなく、特定の患者において所望の治療反応、組成物、および、投与方法を実現する上で効果的な量の活性成分を得るために変化させることができる。選択した投与量レベルは、使用をした本発明の特定の組成物、または、それらのエステル、塩、または、アミドが示す活性、投与経路、投与時間、実際に使用した化合物の排出率、治療期間、実際に使用した特定の化合物と共に用いたその他の薬剤、組成物、および/または、物質、治療を受けている患者の年齢、性別、体重、病態、全般的健康、および、病歴、および、医学分野で周知の同様の因子などの様々な薬物動態因子によって決まる。
本明細書で引用したすべての文献または特許は、本発明の完成当時の当該技術分野での技術水準、および/または、本発明の開示ならびに実施可能性を教示するものであるので、本明細書の一部を構成するものとして、それらの全内容を援用する。文献として、科学文献または特許文献、あるいは、電子形式または紙形式で記録されたものを含むすべてのメディア形式で入手可能なその他の情報がある。以下の文献は、本明細書の一部を構成するものとしてそれらの全内容を援用する。Ausubel, et al, ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY, N.Y. (1987-2001)。Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor, N. Y. (1989)。Harlow and Lane, antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)。Colligan, et al., eds., Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc., NY (1994-2001)。Colligan et al., Current Protocols in Protein Science, John Wiley & Sons, NY, N.Y., (1997- 2001)。
神経変性疾患の治療法の改善や、それら疾患での治療的介入に有用な化合物の同定に適した方法や物質を提供することが、本発明の目的である。本発明は、哺乳動物の末梢系に、有効量の至適酵素活性化合物を投与することを含む、神経変性障害を予防および治療するための方法を提供する。特に、酵素活性化合物として、融合タンパク質があり、このタンパク質の一方が、酵素活性を有しており、そして、このタンパク質の他方が、血漿中の半減期を調節している。この方法は、アルツハイマー病などの脳アミロイドーシスの予防と治療に適している。本発明は、至適酵素化合物の活性と血漿中半減期を調節するための試験、好ましくは、複数の化合物をスクリーニングするための異なるアッセイ原理である生物化学的アッセイ、具体的には、細胞アッセイも提供する。
更なる実施態様にあっては、このアッセイは、前記酵素活性を検出する前に、ネプリライシンファミリーのメンバーに対する公知の阻害剤を添加することを含む。 好適な阻害剤として、例えば、ホスホラミドン、チオルファン、スピノルフィン、あるいは、これら物質の官能性置換体などがある。
一般的な意味において、本発明のアッセイは、インビトロ(in vitro)およびインビボ(in vivo)の双方において、酵素活性と血漿中半減期を測定する。
別の実施態様において、本発明は、(i)アミロイドベータ-ペプチドを分解する化合物、好ましくは、アミロイドベータ-ペプチドに対する特異性が大きく、しかも、アミロイドベータ-ペプチドを分解する活性も大きな化合物を同定し、(ii)アミロイドベータ-ペプチドを分解する化合物を、血漿中半減期を決定する調節化合物に結合する、工程を含む薬剤の製造方法を提供する。
本発明の更に別の実施態様は、本発明の変異ネプリライシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、ベクター、特に、かような核酸を含んだプラスミドベクター、および、本発明の変異ネプリライシンポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞をも含んでいる。
本発明の別の実施態様によれば、オフターゲット(off-target)のペプチド基質と比較してアミロイドベータに対して優れた選択性を示すネプリライシン変異体、および/または、野生型ヒトネプリライシンの類縁物をコードするヌクレオチド配列を含む単離した核酸分子が提供され、それら変異体は、配列番号:1での位置では、101、107、220、224、227、228、229、247、287、323、376、377、378、380、381、393、394、396、399、405、416、417、419、468、485、510、514、517、524、533、536、537、546、547、548、590、592、593、596、600、692、693、701、704、705、708、709、712、714、および、718の位置において、一つまたはそれ以上のアミノ酸の置換を含んでいる。
本発明の別の実施態様によれば、オフターゲットの(非アミロイドベータ)ペプチド基質と比較してアミロイドベータに対して優れた選択性を示すネプリライシン変異体、および/または、野生型ヒトネプリライシンの類縁物をコードするヌクレオチド配列を含む単離した核酸分子が提供され、それら変異体は、配列番号:1での位置では、227、228、247、399、419、590、593、596、600、709、714、および、718の位置において、一つまたはそれ以上のアミノ酸の置換を含んでいる。ある特定の変異体では、399および714の位置の残基の一方または双方が置換された非野生型コドンを有している。野生型コドンとして、配列番号:1に記載されたものがある。
あるヌクレオチドを別のヌクレオチドと交換して、場合によっては、対応するポリペプチド配列に変異をもたらすためのポリヌクレオチド配列への変異の導入は、当該技術分野で周知の方法を用いて、部位特異的突然変異生成を行うことで実施可能である。このような技術は、例えば、Ausubel et ah, eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NY (2002)などの文献において解説がされている。
所望のポリヌクレオチド配列を有するスーパーコイル二本鎖DNAベクターと、所望の変異を有する二つのポリヌクレオチドプライマーを利用する手法が、特に有用である。これらプライマーは、ベクターの反対側の鎖に対して相補的であり、また、例えば、Pfu DNAポリメラーゼを用いて熱反応サイクルを行っている間に伸長される。プライマーを組み込む際に、欠損箇所を有する変異したプラスミドが生成する。 次いで、このプラスミドは、変異したプラスミドを壊さずに、開始プラスミドを消化するために、メチル化およびヘミメチル化DNAに特異的なDpnlで消化される(実施例2.1を参照されたい)。
変異体を、生成、同定、および、単離するための当該技術分野で周知のその他の手法、例えば、遺伝子シャフリングやファージ提示法なども使用することができる。
本発明の別の実施態様によれば、本発明のポリペプチドをコードする単離された(ゲノミックDNA、ゲノミックRNA、cDNAおよびmRNA;二本鎖のもの、ならびに、+veおよび-ve鎖を含む)ポリヌクレオチドが提供される。
これらのポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または、リガーゼ連鎖反応(LCR)、あるいは、ゲノミックライブラリーまたはcDNAライブラリーからのクローニングなどといった当該技術分野で周知の幾つかの手法の内の一つを用いて、化学的に合成したり、または単離することができる。
一旦、単離または合成が行われると、ネプリライシン変異体ポリペプチドを発現するために、様々な発現ベクター/宿主系を用いることができる。このようなものとして、プラスミド、コスミド、または、バクテリオファージで発現をした細菌などの微生物、発現ベクターで形質転換をした酵母、バキュロウイルス発現系で形質導入をした昆虫細胞系、カリフラワーモザイクウイルスなどの植物ウイルス発現系で形質導入をした植物細胞系、または、哺乳動物細胞系(例えば、アデノウイルスベクターで形質転換されたもの)などがあるが、これらに限定されない。最も好適な発現系の選択は、選択の問題に過ぎない。
発現ベクターは、通常、複製開始点、プロモーター、翻訳開始点、任意のシグナルペプチド、ポリアデニル化部位、それに、転写終結部位を含んでいる。これらベクターは、通常、選抜のために供する一つまたはそれ以上の抗生物質耐性マーカー遺伝子も含んでいる。前述した通り、好適な発現ベクターとして、プラスミド、コスミド、そして、ファージやレトロウイルスなどのウイルスが使用可能である。使用可能な好適なレトロウイルスベクターの例として、pLNCX2(クロンテック、BDバイオサイエンセス、カタログ番号631503)、pVPac-Eco(ストラタジーン、カタログ番号217569)、または、pFB-neo(ストラタジーン、カタログ番号217561)などがある。これらベクターと共に使用可能なパッケージング細胞株の例として、BD EcoPack2-293(クロンテック、BDバイオサイエンセス、カタログ番号631507)、BOSC 23(ATCC、CRL-11270)、または、Phoenix-Eco(ノーラン ラボ、スタンフォード大学)などがある。
ポリペプチドのコード配列は、適切なプロモーター(すなわち、HSV、CMV、TK、RSV、SV40など)、制御要素、および、転写ターミネーターの制御下に置かれ、それにより、ポリペプチドをコードする核酸配列が、発現ベクター構築物によって形質転換または形質導入された宿主細胞のRNAに転写されるようになる。このコード配列は、宿主細胞からのポリペプチドの分泌に関与するシグナルペプチドまたはリーダー配列を含んでいてもよく、あるいは、含んでいなくてもよい。好ましいベクターは、通常、少なくとも一つの多重クローニング部位を含むであろう。ある実施態様にあっては、プロモーターと所望の遺伝子との間に、単一のクローニング部位、あるいは、多重クローニング部位を設けることになるであろう。 このようなクローニング部位は、そのクローニング部位に第二の核酸配列をクローニングすることによって、所望の遺伝子と隣接し、かつ、インフレームで、N末端融合タンパク質を生成するために用いることができる。その他の実施態様にあっては、N末端融合タンパク質について前述したのと同様の方法で、C末端融合物の生成を促すために、所望の遺伝子の下流側直近に、単一のクローニング部位、あるいは、多重クローニング部位を設けることができ、また、 細菌、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞、それに、ヒトおよび動物の細胞などの様々な宿主において発現をすることができる。真核組換え宿主細胞が、特に好ましい。その例として、酵母、それに、ヒト、ウシ、ブタ、サル、および、齧歯動物に由来する哺乳動物細胞、そして、ショウジョウバエ、ヨウトガ、および、カイコに由来する細胞株などの昆虫細胞などがある。本発明のネプリライシン変異体ポリペプチドを発現するために、様々な哺乳動物発現ベクター/宿主系を用いることができる。具体的な例として、組換えアデノウイルス系、アデノ関連ウイルス(AAV)系、または、レトロウイルス系を用いた発現に適したものが挙げられる。ワクシニアウイルス系、サイトメガロウイルス系、単純ヘルペスウイルス系、および、欠損B型肝炎ウイルス系なども使用することができる。利用可能で、かつ、市販されている哺乳動物由来の具体的な細胞株として、L細胞L-M(TK-)(ATCC CCL 1.3)、L細胞L-M(ATCC CCL 1.2)、HEK 293(ATCC CRL 1573)、Raji(ATCC CCL 86)、CV-1(ATCC CCL 70)、COS-1(ATCC CRL 1650)、COS-7(ATCC CRL 1651)、CHO-K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、HeLa (ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS-C-1(ATCC CCL 26)、および、MRC-5(ATCC CCL 171)などがある。
ネプリライシン変異体ポリヌクレオチド配列の発現のために、哺乳動物発現系を用いることは好ましいことではあるが、その他のベクター、そして、細菌、酵母、植物、真菌、細胞などの宿主細胞系も利用可能であることは理解できるであろう。
本発明のネプリライシン変異体ポリペプチドをコードするDNAを含むベクターは、本発明のポリペプチドを発現するために、リン酸カルシウム形質転換法、DEAE-デキストラン形質転換法、陽イオン性脂質媒介性リポフェクション、電気穿孔法、または、感染法などを含む多数の技術のいずれかを用いて、宿主細胞へと導入をすることができる。本発明の実施は、宿主細胞の特定株やベクターに依存するものではなく、また、それらに限定されるものではなく、本発明において好適に利用できる宿主細胞やベクターは当業者に自明の事項であり、また、当業者の選択の問題に過ぎない。
変異ネプリライシンをコードするヌクレオチド配列を誘発するために遺伝子操作をした宿主細胞を、コードしたタンパク質の発現と、細胞培養物からのタンパク質の回収を行う上で好適な条件下で、培養をすることができる。このように発現をしたタンパク質/ポリペプチドを、培地に分泌することができ、あるいは、利用した配列、すなわち、適切な分泌シグナル配列の有無に応じて、細胞内に留めることもできる。
本発明のポリペプチドの発現と精製は、当該技術分野で周知の方法 (例えば、前出のSambrook et alの文献での前述した箇所)を用いて、容易に実施することができる。
したがって、別の実施態様において、本発明は、本発明の核酸で形質転換または形質導入された細胞および細胞株を提供する。形質転換された細胞として、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、または、昆虫に由来するものが利用可能である。本発明のさらに別の実施態様にあっては、本発明のネプリライシン変異体ポリペプチドの発現に適した宿主細胞が提供される。
本発明のネプリライシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドは、本発明のさらに別の実施態様である。
変異ネプリライシンを発現することができるトランスジェニック動物を作り出すために、好適な発現系を利用することもできる(例えば、米国特許第5,714,666号を参照されたい)。
本発明のさらに別の実施態様において、アミロイドベータに対して高い特異性を有する変異ネプリライシンをコードする核酸と、細胞内の遺伝子の発現を指令することができる調節管理配列とを含む細胞を有しているトランスジェニック非ヒト動物が提供される。好ましい実施態様において、このトランスジェニック動物は、マウス、ヒツジ、または、ウシである。
本発明のさらに別の実施態様において、本発明の核酸配列から本発明の変異ネプリライシンポリペプチドを発現するのに適した宿主細胞が提供される。 好ましい宿主細胞は、CHO-K1やフェニックス細胞などの哺乳動物由来のものである。 発現目的において、ヒト細胞が最も好ましい。
本発明の化合物は、組換えDNA技術を用いて、形質転換した宿主細胞において生成することができる。そのことを実現する上で、融合タンパク質をコードする組換えDNA分子が好ましい。そのようなDNA分子を調製する方法は、当該技術分野で周知である。 例えば、モジュレーターとタンパク質をコードする配列は、適切な制限酵素を用いて、DNAから切り出すことが可能である。あるいは、アミド亜リン酸法などの化学合成技術を用いて、そのようなDNA分子を合成することも可能である。また、これら技術の組み合わせも利用可能である。
本発明は、適切な宿主において、モジュレーター、タンパク質、または、融合物を発現することができるベクターも含む。このベクターは、適切な発現調節配列に作動可能に結合したモジュレーター、タンパク質、および/または、融合物をコードするDNA分子を含む。DNA分子のベクターに挿入する前後にかかわらず、この作動可能な結合を実効ならしめる方法は、周知の事項である。発現調節配列は、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、終止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニレーションシグナル、および、転写または翻訳の制御に関与するその他のシグナルを含んでいる。
こうして得られたDNA分子を有するベクターは、適切な宿主を形質転換するために用いられる。この形質転換は、当該技術分野で周知の方法を用いて行うことができる。
本発明の実施にあたって、数多くの市販の宿主細胞や周知の宿主細胞を利用することができる。特定の宿主の選択は、当該技術分野で認識されているファクターの数によって定まる。これらファクターとして、例えば、選択した発現ベクターの適合性、DNA分子によってコードされた融合物の毒性、形質転換率、融合物の回収難度、発現特性、生物学的安全性、および、費用などがある。これらファクターのバランスは、すべての宿主が、特定のDNA配列の発現に関して同等の効果を示すわけではない、との認識の下に決定をしなければならない。このような一般的なガイドラインの下、有用な微生物宿主として、培養中の細菌(E. coli sp.など)、酵母(Saccharomyces sp.など)、および、その他の真菌、昆虫、植物、動物(ヒトを含む)由来の細胞、あるいは、当該技術分野で周知のその他の宿主などがある。
次に、形質転換した宿主は、培養および精製がされる。宿主細胞は、従来の発酵条件下で培養をして、所望の化合物を発現することができる。かような発酵条件は、当該技術分野で周知の事項である。最後に、融合物を、当該技術分野で周知の方法によって、培養物から精製される。好ましい方法として、プロテインAの使用、あるいは、Fc部分をモジュレーターとして用いる場合には、融合タンパク質を精製するための同様の技術を使用する方法などがある。
モジュレーター、タンパク質、および、融合物も、合成法によって生成することができる。例えば、固相合成技術を用いることができる。好適な技術は、当該技術分野で周知であり、また、そのような技術は、Merrifield (1973), Chem. Polypeptides, pp. 335-61 (Katsoyannis and Panayotis eds.); Merrifield (1963), J. Am. Chem. Soc. 85: 2149; Davis et al. (1985), Biochem. Intl. 10: 394-414; Stewart and Young (1969), Solid Phase Peptide Synthesis; 米国特許第3,941,763号; Finn et al. (1976), The Proteins (3rd ed.) 2: 105-253; and Erickson et al. (1976), The Proteins (3rd ed.) 2: 257-527に記載されている。固相合成は、小さいなペプチドやタンパク質を最も費用効果的に生成する方法であるので、この技術は、個々のペプチドやタンパク質を生成する上で最も好適な技術である。
概して、本発明の化合物は、インビボでアミロイドβペプチドを分解する性質に起因する薬理活性を有している。これら化合物でのそのような活性は、当該技術分野で周知のアッセイ法によって測定をすることができる。Fc-ネプリライシン化合物に関するインビボでのアッセイについては、本明細書の実施例の欄に記載がしてある。
概して、本発明は、本発明の化合物の医薬組成物での用途をも提供する。そのような医薬組成物は、注射での投与、あるいは、経口的、経肺的、経鼻的、経皮的、あるいは、その他の経路で投与することができる。概して、本発明は、有効量の本発明の化合物と共に、医薬的に許容可能な希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、補助剤、および/または、担体を含む医薬組成物を包含している。これら組成物は、様々な緩衝度、pH、および、イオン強度を有する希釈剤(例えば、Tris-塩酸、酢酸塩、リン酸塩)、それに、洗浄剤や可溶化剤(例えば、Tween 80、ポリソルベート80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)、および、増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤を含んでおり、そして、これら物質は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの特定の高分子化合物の調製物や、リポソームへ加えられる。ヒアルロン酸も使用可能であり、この物質は、持続的循環を促す効果を有している。このような組成物は、本発明のタンパク質とその誘導体の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、それに、インビボでの消失速度にも影響をあたえる。例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed.(1990, Mack Publishing Co., Easton, Pa. 18042),pp.1435-1712 を参照されたい。この組成物は、液状で調製することができ、あるいは、凍結乾燥形態のような乾燥粉末で調製することもできる。埋込型の徐放性製剤を、経皮製剤として意図している。このような代替的投与方法は、当該技術分野で周知の事項である。
上記した病態の治療方法に関係する投薬計画は、例えば、患者の年齢、病態、体重、性別、および、食習慣、それに、感染の重篤度、投与時間、そして、その他の臨床学的因子などといった薬剤の作用に変化を及ぼす様々な因子を考慮に入れて、治療にあたっている医師によって決定されるであろう。一般的には、毎日の処方を、本発明の化合物を、0.1〜1000μg/体重kgの範囲、好ましくは、0.1〜150μg/体重kgの範囲に収まるようにすべきである。
ある実施態様において、本発明は、治療有効量の本発明の融合タンパク質を、哺乳動物(ヒトを含む)に投与することを含む、ダウン症候群などのアミロイドベータ関連病、および、β-アミロイド血管症を治療する方法を提供するものであって、β-アミロイド血管症として、脳アミロイド血管症、全身性アミロイド症、封入体筋炎、遺伝性脳出血、軽度認識機能障害(MCI)に代表される認識機能障害が関連した障害、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病が関連した注意欠陥症、そして、アルツハイマー病、または、混合血管と変性を原因とする認知症、若年性認知症、老年性認知症、それに、パーキンソン病、進行性核上麻痺、または、大脳皮質基底核変性症が関連した認知症などの疾患が関連した神経変性などがあるが、これらに限定されない。
実施例1:クローニング
アミノ酸51〜アミノ酸749 (PDB番号付方式)のコドンを含むヒト野生型可溶性ネプリライシン配列が、酵母発現ベクター(pYES2インヴィトロジェン、SKU# V825-20; 配列番号:22を参照されたい)にクローニングされた。 pESC-URA(ストラタジーン;配列番号:23を参照されたい)やp427-TEF(デュアルシステムズ バイオテク;配列番号:24を参照されたい)などのpYES2以外の酵母発現ベクターも使用可能である。
得られた構築物でのこの可溶性ネプリライシン配列は、分泌リーダー、分泌部位、トリプルHA-タグ、および、ジペプチドリンカーをコードする配列に融合したN末端となっている(配列番号:5を参照されたい)。このトリプルHA-タグは、発現した可溶性ネプリライシンの精製に関与して役立つ。あるいは、His-タグも使用することができる。タグとジペプチドリンカーを有する野生型可溶性ネプリライシン構築物のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号:5および3に記載してある。
オリゴに基づく部位特異的突然変異生成によって、変異体を生成した。
3×HA-タグを、2段階PCRを介して導入した。 プライマーNEP-85AとNEP-24を用いて、最初のPCRを行った。
NEP-85A
5'GAC GTC CCA GAC TAT GCT TAc CCt TAc GAt GTa CCt GAt TAc GCa GGA TCC TAC GAT GAT GGT ATT TGC AAG (配列番号:19)
NEP-24
5'ATA GTT TAG CGG CCG CTC ACC AAA CCC GGC ACT T (配列番号:20)
XhoIとNotIの制限エンドヌクレアーゼ部位がさらに導入されたプライマーNEP-85BとNEP-24を用いて、前記したPCR増幅産物に関して、2回目のPCRを行った。
NEP-85B
5' GTA TCT CTC GAG AAA AGA GAG GCT GAA GCT TAT CCA TAT GAC GTC CCA GAC TAT GCT TAT CCA TAT GAC GTC CCA GAC TAT GCT TAC (配列番号:21)
下線を付けた配列は、XhoI部位である。
NEP-24
5'ATA GTT TAG CGG CCG CTC ACC AAA CCC GGC ACT T (SEQ ID NO: 20)
下線を付けた配列は、NotI部位である。
分泌リーダーを含む発現ベクターpYES2にPCR増幅産物をライゲーションするために、標準的な分子生物学的プロコトールにしたがった後続のライゲーション反応によって、PCR増幅産物とベクターを、XhoIとNotIとを用いて消化を行ったところ、配列番号:7で示したヌクレオチド配列を有する構築物が得られ、その配列において、分泌部位を含むα分泌リーダー配列は、507〜773の位置にあり、3×HAタグ配列は、774〜854の位置にあり、Gly/Serリンカー(ジペプチドリンカー)は、855〜860の位置にあり、可溶性ネプリライシン配列は、861〜2960の位置(野生型配列を示した)にあり、そして、CYYl終止配列は、3090〜3338の位置にある。
実施例2:発現および精製
酵母を用いた哺乳動物ネプリライシンの発現については、シゾサッカロミセス・ポンベやピキア・パストリスに関して、文献での報告がされている(Beaulieu et al. (1999), Oefner et al. (1999))。実施例1に記載の構築物を用いて、SC-培地(YB-酵母、窒素塩基(ベクトン、ディキンソン、#291920)、CSM-Ura(MPBio、#4511-222)、0.5%カゼイン加水分解物、2%ガラクトース(メルク、#1.04061.1000)を含む0.2M HEPES(メルク、#1.010110.1000); pH7.0))において、発現を誘発するために、30℃で、55〜70時間かけて培養をしたサッカロミセス・セレビシエ YMR307w(ユーロスカーフ)において、可溶性ネプリライシンと変異部位を有する変異体が発現された(図4)。
HA-タグ(モノクローナル抗体HA.11、# MMS-101P)に特異的なイムノアフィニティークロマトグラフィー、あるいは、Hisが付けられたプロテアーゼに特異的な代替の金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによって、HAが付けられたプロテアーゼの精製を行うことができる。 (Coligan, J.E., Dunn, B.M., Ploegh, H.L., Speicher, D.W., Wingfield, P.T.(Eds.), Current Protocols in Protein Science, John Wiley & Sons, New York (1996), 9.4および9.5の各々)。 プレローディングをする後者の場合、酵母上清に含まれるプロテアーゼを、クロス濾過器(VIVAFLOW 200、10k分子量カットオフ、Satorius, #512-4069)を用いて再緩衝化した。
溶出したクロマトグラフィー試料は、透析、または、脱塩カラム(セファデックスG-25、アマシャム・ファーマシア・バイオテック)を用いて、5OmM Hepes(シグマ、#H4034)、300mM NaCl(メルク、#1.06404.5000)、pH7で、再緩衝化した。
タグを付けていないプロテアーゼは、リソースQ(アマシャム・ファーマシア・バイオテック)を用いたイオン交換クロマトグラフィーと、それに続く、スーパーデックス200(アマシャム・ファーマシア・バイオテック)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーによって精製することができる。(Coligan, J.E., Dunn, B.M., Ploegh, H.L., Speicher, D.W., Wingfield, P.T.(Eds.), Current Protocols in Protein Science, John Wiley & Sons, New York (1999) 8.2 and (1998) 8.3の各々)。
実施例3:触媒活性および特異性の決定
タンパク質分解活性のkcat/k比率は、決定した基質の分解度の見かけの速度定数であるkappに比例しており、また、kcat/k [E]([E]=酵素濃度)にも比例している。すべての測定を、同じ酵素濃度[E]において実施しているので、[E]と無関係と定義される特異性は、kcat/kの相対比率の計算から除外される。kappは、単一の基質の各々についての蛍光異方性に関する動態変化として測定された。すべての基質を、特別注文に応じて生成させ(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィックGmbH)、そして、N末端とC末端に、それぞれ、蛍光色素分子とビオチンを標識付けした。このビオチンは、ストレプトアビジンを加えた後に、未開裂の分子サイズを大きくする作用を奏するので、それにより、アッセイウィンドウと測定可能なシグナルが増大することとなる。
Figure 2012530498
6OnMのペプチド基質を含む5OmM Hepes(シグマ、#H4034)、15OmM NaCl(メルク、#1.06404.5000)、および、0.05%プルロニックF68(シグマ、#P7061-500)からなるアッセイ溶液(pH7.0)とプロテアーゼ試料を加えたマイクロタイタープレートをインキュベートすることによって、アッセイを行った。このアッセイを、動的測定(5〜90%の基質分子の交換)に適した37℃で、インキュベーションした後に、等量の1.2μM ストレプトアビジン(カルビオケム、#D36271)で試料を希釈することによって、アッセイを停止し、そして、ペプチド-3、または、ペプチド-6を用いたアッセイの場合には、この溶液は、さらに10mM DTT(シグマ、#117K0663)を含んでいた。一般的なインキュベーション時間は、ペプチド-1および-2で、21時間、ペプチド-4および-7で、24時間、ペプチド-10で、6時間、ペプチド-3および-6で、2.5時間であり、そして、ペプチド-5、-8、-13の消化物は、40分間かけてインキュベーションした。この試料の異方性を、偏光フィルターを適切に設置したMTP-リーダー(テカンインフィニットF500;フィルター:485/20、535/25、625/35、670/25)で測定を行った。ペプチド1〜6a、6b、7、8、10および13は、それぞれ、配列番号:8〜18に対応している。
表3に、表4で示した各々のペプチド基質に対する様々な変異体が奏する特異性を記載している。
実施例4:多重置換変異体
各々の変異体が示した様々なペプチドに対する比活性(表3)により、アミロイドベータに対する活性の増大および関係のないペプチドに対する活性の減少をもたらす特定の位置および特定の置換が同定された。一次実験で得た(アミロイドベータに対する活性の増大に関して)最も効果的な置換の一つが G714Kであることが見出されたが、その他の変異体は、ある特定の無関係の標的ペプチドに対する活性を顕著に減少させる。最善のアミノ酸置換を組み合わせることで、アミロイドベータに対するさらに大きな活性および無関係の標的ペプチドに対するより小さな活性を有する変異体を生成できると仮定した。したがって、変異を組み合わせて得た変異体を生成するに至った(表5)。
表5を参照すると、G714Kの置換(B9においては単一の変異)が、B1〜B12のすべてのクローンに含まれている。表6では、異なる基質に関するプロテアーゼ変異体と変異体G714Kとの間の相対活性を示しており、この数値は、対応する二つのkapp値の比として決定した。B1〜B8(これらのほとんどが、G399Vの変異を有している)は、(ペプチド-5、-8、-13、-3、-6 および -10などの無関係のペプチドと比較した、アミロイドベータに対する特異性の改善に関して)様々なペプチドに対して、特に望ましい開裂プロファイルを示している(表6を参照されたい)。
G399V/G714Kの二重変異の実施態様は、ペプチド-5、-8、-13、および -3との比較で、>100という変化率でアミロイドベータに対する特異性を改善しており、また、ペプチド-4との比較では、〜50という変化率で特異性を改善しており、そして、ペプチド-6、-10、および -7との比較では、>10という変化率で特異性を改善している。
Figure 2012530498
Figure 2012530498
B1(G399V/G714Kの二重変異)に基づいて、その他の変異を組み合わせて、さらに別の変異体を生成した(表7)。表8では、異なる基質に関する特定のプロテアーゼ変異体とB1との間の相対活性を示しており、この数値は、対応する二つのkapp値の比率から導いた。C1〜C23では、C2とC3を除いて、ペプチド-1および-2に関する活性を増大しており、そして、ペプチド-6、-5および-3に関する活性は減退させていた。 したがって、ペプチド-1および-2と、ペプチド-6、-5および-3とで認められた特異性は、B1と比較して、すべて改善をしていたと言える。多くの事例において、変異体の間でのペプチド-7、-4、-13および-8に関する活性の差異は有意ではなかったが、それらの個々の活性値は、すべて、B1の活性値の範囲内にあるので、ペプチド-1および-2についての変異体の特異性と、ペプチド-7、-4、-13および-8についての変異体の特異性は、B1と比較して改善をしていたと言える。
Figure 2012530498
特に関心のある数値を示した変異体を、表8に示している。
Figure 2012530498
図5にも、親変異体のG399V/G714Kに関連する様々な変異体によってもたらされた五つのペプチド基質(ペプチド5=アンジオテンシン;ペプチド3=ANP:ペプチド6a=エンドセリンペプチドの一つ;ペプチド1=アミロイドベータ1-40;および、ペプチド2=アミロイドベータ1-42)での開裂を示しており、ここでは、アミロイドベータペプチド(アミロイドベータ1-40およびアミロイドベータ1-42)の開裂が増大している一方で、三つの無関係のペプチド(ANP、エンドセリン、および、アンジオテンシン)の開裂が減少していることが示されている。
これら変異体の内の二つ(C22とC10)を、親分子として選択し、そして、その親分子に対して、D377G、A287S、および、G645Qの一つまたはそれ以上の変異をさらに導入した。
Figure 2012530498
特異性のデータを、表10に示してある。
Figure 2012530498
表10に記載の代表的なクローンのデータを、図6に記載してある。
実施例5.融合タンパク質Fc-ネプリライシン変異体をコードする遺伝子の構築、その発現と精製
A.Fc-ネプリライシン変異体発現系の構築
一つまたはそれ以上の変異ネプリライシンの基質に対するプロテアーゼの特異性に影響を与える一つまたはそれ以上の変異を含む当該変異ネプリライシンの細胞外ドメインは、(ヒンジ領域を含む)ヒトIgG1 Fcドメインに融合される。発現が起こっている間に培地へのタンパク質の分泌を可能ならしめるために、シグナル配列-MGWSCIILFLVATATGAHS(配列番号:25)が導入される。ヒンジ領域の配列は、THTCPPCP(配列番号:26)であり、また、IgG1 Fcドメインの配列は、配列番号:27に示してある。ヒトネプリライシン変異体を有する完全な融合タンパク質(シグナル配列を除く)は、211kDaの推定分子量(二量体としてのFc-Nep)を有する。
シグナル配列を含む(Fc-ネプリライシン変異体をコードする)完全遺伝子が、pCEP4、pEAK10、pEF5/FRT/V5-DEST、および、pcDNA5/FRT/TO(ゲートウェイ適合したもの)などの好適な哺乳動物発現ベクターに導入される。これらすべては、CMVプロモーター(pCEP4、pEAK10、およびpcDNA5/FRT/TO)、または、EF-1αプロモーター(pEF5/FRT/V5-DEST)に基づいた標準的な発現ベクターである。すべてのクローニングの後に、ベクターに正しい配列が存在するかどうかを検証するために、遺伝子の配列決定を行うことが望ましい。
B.HEK293細胞でのNEPの細胞外ドメインおよび融合タンパク質Fc-NEPの発現
タンパク質NEP(細胞外ドメインのみ)とFc-NEP(Fc-Nep)が、懸濁液に順応した哺乳動物細胞において、一時的に発現される。製造実験で用いる細胞株として、HEK293S、HEK293S-T、および、HEK293S-EBNA細胞などのHEK293に由来した細胞株が利用可能である。約0.5〜1×10の細胞密度で、0.3〜0.8μg/細胞懸濁液ml(最終濃度)の濃度範囲のプラスミドDNAを用いて、形質導入が行われる。30ml〜1,000mlの体積(振とうフラスコ)、次いで、5リットル〜10リットルのウェーブ・バイオリアクターにおいて、細胞培養物に関して発現が行われる。4〜14日後に、遠心分離をして、細胞培養物の回収が行われる。
C.アフィニティークロマトグラフィーを用いた発現したFc-ネプリライシンタンパク質の精製
細胞培地を用いて、哺乳動物細胞での発現物から融合タンパク質の精製を行うことができる。この精製は、AKTAクロマトグラフィーシステム(探索機器または精製機器、GEヘルスケア)でのアフィニティークロマトグラフィー(プロテインA)と、それに続く、低pH溶出によって行うことができる。XK26カラム(GEヘルスケア)に含まれる組換えプロテインAセファロースFF(GEヘルスケア)を、10カラム用量(CV)のPBS(2.7mM KCl、138mM NaCl、1.5mM KHPO、8mM NaHPO-7HO、pH6.7〜7.0、インビトロジェン)で平衡化される。発現した融合タンパク質(Fc-ネプリライシン)を含んだ細胞培養培地は、カラムに適用される。結合したタンパク質を、溶出用緩衝液(0.1Mグリシン、pH 3.0)で溶出する前に、このカラムは、20CVのPBSで洗浄される。50μlの1Mトリス塩基を、1mlの溶出タンパク質に加えることによって、精製した画分は、即座に中和される。精製した画分はプールされ、そして、PD10カラム(GEヘルスケア)を用いて、緩衝液は、50mM Tris-HCl、pH 7.5、150 mM NaClと交換される。
実施例6:ネプリライシンまたはネプリライシン変異体を用いたヒトの血漿でのアミロイドβペプチド1-40の分解
ボランティアの健常者から得たヘパリン化した血漿を用いて、ネプリライシンによってもたらされる、ヒトアミロイドβペプチド1-40(Aβ40)およびヒトアミロイドβペプチド1-42(Aβ42)の分解が研究されている。ヒトヘパリン血漿は、試料を得て30分以内に、4℃、2500×gで、20分間かけて、遠心分離して調製される。血漿試料は、予冷したポリプロピレン製チューブに移され、そして、即座に凍結され、そして、使用時まで、-70℃で保存される。ネプリライシンまたはネプリライシン変異体(0.1〜300μg/ml)、または、5μg/mlの組換えヒトネプリライシン(R&Dシステムズ)を、対応する賦形剤(50mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH 7.5、または、25mM Tris-HCl、0.1M NaCl、pH 8.0、または、50mM HEPES、100mM NaCl、0.05% BSA、pH 7.4)と共に、10μMホスホラミドン(バイオモル)、または、2mMの1、10-フェナントロリン(シグマ-アルドリッチ)の存在下または不在下、室温下で、0時間、1時間、および、4時間かけて、血漿プールを用いてインキュベーションされる。アミロイドベータ40とアミロイドベータ42を、バイオソース/インビトロジェン(Aβ1-40)、または、イノジェネティックス(Aβ1-42)から入手した市販のELISAキットを用いて分析を始める前に、最終濃度である5mMのEDTAが、チューブに加えられる。
実施例7:ネプリライシンまたはネプリライシン変異体を用いたC57BL/6マウスでのアミロイドβペプチド1-40の分解(インビボ試験)
ネプリライシンまたはネプリライシン変異体のインビボでの効果を検証するために、C57BL/6マウスを用いたインビボ試験が行われる。読出値は、血漿中の可溶性アミロイドベータ(Aβ)の濃度と血漿中の薬物濃度である。17〜21gの体重のC57BL/6マウスを計量し、そして、適切な用量を用いた単一の静脈内投与が行われる。各時点に、5匹の動物が振り分けられており、また、それぞれの時点では、各々の賦形剤グループも割り当てられている。麻酔をしたマウスに心臓穿刺をして血液を採取し、そして、EDTAを入れてある予冷したマイクロティナチューブへと移される。遠心分離を行う前に、血液試料は、即座に氷上に置かれる。約3000×g、+4℃で、10分間かけて、血漿は、遠心分離される。血漿中のアミロイドベータ40の濃度は、バイオソースから入手した市販のELISAキットを用いて分析がされる。 すべての血漿試料は、薬物暴露を決定するために、メソスケールテクノロジーを用いて分析される。
実施例8:ネプリライシンまたはネプリライシン変異体を用いたマウスC57BL/6の血漿でのマウスアミロイドβペプチド1-40の分解
オスおよびメスのC57BL/6マウス(20〜30g)から得たヘパリン化した血漿を用いて、ネプリライシンによってもたらされる、マウスアミロイドβペプチド1-40(Aβ40)の分解が研究されている。麻酔をしたマウスに心臓穿刺をして血液が採取される。血液は、ヘパリンを入れてある予冷したマイクロティナチューブへと移され、そして、試料を得て20分以内に、4℃、2500×gで、10分間かけて、遠心分離される。血漿試料は、予冷したポリプロピレン製チューブに移され、そして、即座にドライアイス上で凍結され、そして、使用時まで、-70℃で保存される。この実験は、血漿、ネプリライシンまたはネプリライシン変異体(0.1〜300μg/ml)、または、5μg/mlの組換えヒトネプリライシン(R&Dシステムズ)のプールに関して、それらを、対応する賦形剤(50mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH 7.5、または、25mM Tris-HCl、0.1M NaCl、pH 8.0、または、50mM HEPES、100mM NaCl、0.05% BSA、pH 7.4)と共に、10μMホスホラミドン(バイオモル)、または、2mMの1、10-フェナントロリン(シグマ-アルドリッチ)の存在下または不在下、室温下で、0時間、1時間、および、4時間かけて、インキュベーションして行われる。所定量のマウスアミロイドベータを、バイオソース(Aβ1-40)から入手した市販のELISAキットを用いて分析を始める前に、最終濃度である5mMのEDTAが、チューブに加えられる。
実施例9:ネプリライシンまたはネプリライシン変異体を用いたAPP SWE -トランスジェニックマウスの治療、および、それに続く、血漿およびCNSでのアミロイドベータ濃度に関する分析
ネプリライシンまたはネプリライシン変異体のインビボでの効果を検証するために、APPSWE-トランスジェニックマウス(Tg2576)を用いたインビボ試験が行われる。最初の読出値は、血漿およびCNSでのアミロイドベータ(Aβ)の濃度と血漿中の薬物濃度である。20〜25gの体重のTg2576マウスを計量し、そして、単一用量または反復用量が、静脈内(i.v.)または腹腔内(i.p.)へと投与される。
各グループに5〜6匹が振り分けられたトランスジェニックマウス(25〜27週齢)に対して、適切な用量を用いた単一投与が行われる。各時点に、各々の賦形剤グループも割り当てられている。麻酔をしたマウスに心臓穿刺をして血液を採取し、そして、EDTAを入れてある予冷したマイクロティナチューブへと移される。遠心分離を行う前に、血液試料は、即座に氷上に置かれる。約3000×g、+4℃で、10分間かけて、血漿は、遠心分離される。血液を採取した後、マウスを断頭して屠殺し、そして、脳試料が回収される。一方の脳半球が、0.2%ジエチルアミン(DEA)と50mM NaCl(18μl/組織mg)を用いて均質化される。均質化した脳試料は、133,000×g、+4℃で、1時間かけて、遠心分離される。回収した上清は、2M Tris-HClを用いて、pH 8.0にまで中和される。血漿および脳に含まれるアミロイドベータ40とアミロイドベータ42の濃度は、それぞれ、バイオソース、または、イノジェネティックスから入手した市販のELISAキットを用いて分析がされる。すべての血漿試料は、薬物暴露を決定するために、メソスケールテクノロジーを用いて分析される。
各グループに30匹が振り分けられたトランスジェニックマウス(試験開始時に25〜27週齢であった)に対して、適切な用量を用いた反復投与が行われる。各時点に、各々の賦形剤グループも割り当てられている。試験を行っている間、二週間おきに、マウスから血液が採取し、そして、EDTAを入れてある予冷したマイクロティナチューブへと移される。遠心分離を行う前に、血液試料は、即座に氷上に置かれる。約3000×g、+4℃で、10分間かけて、血漿は、遠心分離される。メソスケールテクノロジーを用いて試験を行っている間、血漿中の薬物濃度と免疫原性が測定される。終了時に、麻酔をしたマウスに心臓穿刺をして血液を採取し、そして、EDTAを入れてある予冷したマイクロティナチューブへと移され、次いで、血漿は、前述したようにして調製される。CSFを大槽から吸引し、そして、遠心分離を行う前に、予冷したエッペンドルフ型チューブへと移される。約3000×g、+4℃で、1分間かけて、CSFは、遠心分離される。上清が回収され、そして、予冷した別の新たなエッペンドルフ型チューブへと移される。これらチューブは、ドライアイス上で即座に凍結され、そして、-70℃で凍結保存される。血液を採取した後、マウスを断頭して屠殺し、そして、脳試料が回収される。一方の脳半球が、0.2%ジエチルアミン(DEA)と50mM NaCl(18μl/組織mg)を用いて均質化される。均質化した脳試料は、133,000×g、+4℃で、1時間かけて、遠心分離される。回収した上清は、2M Tris-HClを用いて、pH 8.0にまで中和される。この不溶性のペレットは、70%ギ酸(FA)(18μl/組織mg)を用いて、さらに超音波分解に供される。均質化した脳試料は、133,000×g、+4℃で、1時間かけて、遠心分離される。回収した上清は、1M Trisを用いて、pH 8.0にまで中和される。血漿、脳、および、CSFに含まれるアミロイドベータ40とアミロイドベータ42の濃度は、それぞれ、バイオソース、または、イノジェネティックスから入手した市販のELISAキットを用いて分析がされる。すべての血漿試料は、薬物暴露を決定するために分析される。
実施例10:ネプリライシンまたはネプリライシン変異体を用いたTg2576マウスの血漿でのアミロイドβマウスペプチド1-40、アミロイドβヒトペプチド1-40、および、アミロイドβヒトペプチド1-42の分解
メスのTg2576マウス(20〜30g)から得たヘパリン化した血漿を用いて、ネプリライシンによってもたらされる、アミロイドβペプチド1-40(Aβ40)、ヒトアミロイドβペプチド1-40(Aβ40)、および、ヒトアミロイドβペプチド1-42(Aβ42)の分解が研究されている。麻酔をしたマウスに心臓穿刺をして血液が採取される。血液は、ヘパリンを入れてある予冷したマイクロティナチューブへと移され、そして、試料を得て20分以内に、4℃、3000×gで、10分間かけて、遠心分離される。血漿試料は、予冷したポリプロピレン製チューブに移され、そして、即座にドライアイス上で凍結され、そして、使用時まで、-70℃で保存される。この実験は、血漿、ネプリライシンまたはネプリライシン変異体(0.1〜300μg/ml)、または、5μg/mlの組換えヒトネプリライシン(R&Dシステムズ)のプールに関して、それらを、対応する賦形剤(50mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH 7.5、または、25mM Tris-HCl、0.1M NaCl、pH 8.0、または、50mM HEPES、100mM NaCl、0.05% BSA、pH 7.4)と共に、10μMホスホラミドン(バイオモル)、または、2mMの1、10-フェナントロリン(シグマ-アルドリッチ)の存在下または不在下、室温下で、0時間、1時間、および、4時間かけて、インキュベーションして行われる。所定量のアミロイドベータ40およびアミロイドベータ42を、バイオソース/インビトロジェン(Aβ1-40)、または、イノジェネティックス(Aβ1-42)から入手した市販のELISAキットを用いて分析を始める前に、最終濃度である5mMのEDTAが、チューブに加えられる。
実施例11:ネプリライシンまたはネプリライシン変異体を用いたスプラーグ・ドーリーラットでのアミロイドβペプチドの分解(インビボ試験)
ネプリライシンまたはネプリライシン変異体のインビボでの効果を検証するために、オスのスプラーグ・ドーリー(SD)ラットを用いたインビボ試験が行われる。読出値は、血漿、csf、および脳での可溶性アミロイドベータ(Aβ)の濃度と血漿中の薬物濃度である。オスのSDラット(250〜300g)の体重を計量し、そして、適切な用量を、静脈内に単一投与または反復投与される。各時点に、8〜10匹の動物が振り分けられており、また、それぞれの時点では、各々の賦形剤グループも割り当てられている。麻酔をしたラットに心臓穿刺をして血液を採取し、そして、EDTAを入れてある予冷したマイクロティナチューブへと移される。遠心分離を行う前に、血液試料は、即座に氷上に置かれる。約3000×g、+4℃で、10分間かけて、血漿は、遠心分離される。CSFを大槽から吸引し、そして、遠心分離を行う前に、予冷したエッペンドルフ型チューブへと移される。約3000×g、+4℃で、1分間かけて、CSFは、遠心分離される上清が回収され、そして、予冷した別の新たなエッペンドルフ型チューブへと移される。これらチューブは、ドライアイス上で即座に凍結され、そして、-70℃で凍結保存される。試料を採取した後、ラットを断頭して屠殺し、そして、脳試料が回収される。一方の脳半球が、0.2%ジエチルアミン(DEA)と50mM NaCl(18μl/組織mg)を用いて均質化される均質化した脳試料は、133,000×g、+4℃で、1時間かけて、遠心分離される。回収した上清は、2M Tris-HClを用いて、pH 8.0にまで中和される。血漿に含まれるアミロイドベータ40、ならびに、脳およびCSFに含まれる可溶性のアミロイドベータ40とアミロイドベータ42の濃度は、それぞれ、バイオソースから入手した市販のELISAキットを用いて分析がされる。すべての血漿試料は、薬物暴露を決定するために、メソスケールテクノロジーを用いて分析される。
実施例12:ネプリライシンまたはネプリライシン変異体を用いたラットの血漿でのアミロイドβラットペプチド1-40の分解
オスのプラーグ・ドーリーラット(250〜300g)から得たヘパリン化した血漿を用いて、ネプリライシンによってもたらされる、ラットアミロイドβペプチド1-40(Aβ40)の分解が研究されている。麻酔をしたラットに心臓穿刺をして血液が採取される。血液は、ヘパリンを入れてある予冷したマイクロティナチューブへと移され、そして、試料を得て20分以内に、4℃、3000×gで、10分間かけて、遠心分離される。血漿試料は、予冷したポリプロピレン製チューブに移され、そして、即座にドライアイス上で凍結され、そして、使用時まで、-70℃で保存される。この実験は、血漿、ネプリライシンまたはネプリライシン変異体(0.1〜300μg/ml)、または、5μg/mlの組換えヒトネプリライシン(R&Dシステムズ)のプールに関して、それらを、対応する賦形剤(50mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH 7.5、または、25mM Tris-HCl、0.1M NaCl、pH 8.0、または、50mM HEPES、100mM NaCl、0.05% BSA、pH 7.4)と共に、10μMホスホラミドン(バイオモル)、または、2mMの1、10-フェナントロリン(シグマ-アルドリッチ)の存在下または不在下、室温下で、0時間、1時間、および、4時間かけて、インキュベーションして行われる。所定量のアミロイドベータ40を、バイオソース/インビトロジェン(Aβ1-40)から入手した市販のELISAキットを用いて分析を始める前に、最終濃度である5mMのEDTAが、チューブに加えられる。
実施例13:ネプリライシンまたはネプリライシン変異体を用いたモルモットでのアミロイドβペプチドの分解(インビボ試験)
ネプリライシンまたはネプリライシン変異体のインビボでの効果を検証するために、オスのダンキンハートレイ(DH)モルモットを用いたインビボ試験が行われる。読出値は、血漿、csf、および脳での可溶性アミロイドベータ(Aβ)の濃度と血漿中の薬物濃度である。オスのDHモルモット(200〜4,000g)の体重を計量し、そして、適切な用量を、静脈内に単一投与または反復投与される。 各時点に、8〜10匹の動物が振り分けられており、また、それぞれの時点では、各々の賦形剤グループも割り当てられている。CSFを大槽から吸引し、そして、遠心分離を行う前に、予冷したエッペンドルフ型チューブへと移される。約3000×g、+4℃で、1分間かけて、CSFは、遠心分離される。上清が回収され、そして、予冷した別の新たなエッペンドルフ型チューブへと移される。これらチューブは、ドライアイス上で即座に凍結され、そして、-70℃で凍結保存される。CSFを採取した直後に、心臓穿刺をして血液を採取し、そして、EDTAが入れてある予冷したラベル付のマイクロティナチューブへと移される。遠心分離を行う前に、血液試料は、直ちに氷上に置かれる。採取時間を正確に記録しておくことが肝要である。試料を得て20分以内に、4℃、約3000×gで、10分間かけて、遠心分離することによって、血漿が調製される。試料を採取した後、動物を断頭して屠殺し、そして、脳試料が回収される。一方の脳半球が、0.2%ジエチルアミン(DEA)と50mM NaCl(20μl/組織の湿重量mg)を用いて均質化される。均質化した脳試料は、133,000×g、+4℃で、1時間かけて、遠心分離される。回収した上清は、2M Tris-HClを用いて、pH 8.0にまで中和される。血漿、脳、および、CSFに含まれる可溶性のアミロイドベータ40とアミロイドベータ42の濃度は、それぞれ、バイオソース、および、イノジェネティックスから入手した市販のELISAキットを用いて分析がされる。すべての血漿試料は、薬物暴露を決定するために、メソスケールテクノロジーを用いて分析される。
実施例14:ネプリライシンまたはネプリライシン変異体を用いたAPP SWE -トランスジェニックマウスの治療、および、それに続く、血漿での可溶性アミロイドベータ濃度に関する分析
この研究の目的は、急性静脈投与治療を行った後に、メスのAPPSWE-トランスジェニックマウスの血漿に含まれるネプリライシン変異体の時間と用量応答効果を評価することにある。具体的な目的は、血漿Aβ40とAβ42に関する効果を見い出すことにある。
賦形剤または1mg/kgまたは5mg/kgのネプリライシン変異体を、25〜31週齢のメスのAPPSWE-トランスジェニックマウス(10匹/グループ)に対して単回の静脈注射をする。3時間かけて、動物(4匹)の治療をする。ブランクグループも、この研究に参加させる。所定用量を投与して1.5時間後および3時間後に、賦形剤で処置した動物、および、化合物で処置をした動物の採血を行う。麻酔をしたマウスに心臓穿刺をして血液を採取し、そして、EDTAを入れてある予冷したマイクロティナチューブへと移される。遠心分離を行う前に、血液試料は、即座に氷上に置かれる。試料を得て20分以内に、4℃、約3000×gで、10分間かけて、遠心分離することによって、血漿が調製される。採血を終えた後、マウスは解放される。血漿に含まれるアミロイドベータ40とアミロイドベータ42の濃度は、それぞれ、バイオソース、および、イノジェネティックスから入手した市販のELISAキットを用いて分析がされる。
実施例15:ネプリライシンまたはネプリライシン変異体を用いたAPP SWE -トランスジェニックマウスでのEEG試験(インビボ試験)
この研究は、EEGを読み出して実施することができる。剥き出した先端部を有するポリイミド被覆された三つの金属線からなる留置電極が、マウスに埋め込まれ、これら電極は、海馬(ブレグマから2.5mm後方かつ2.0mm側方)のCA3領域と皮質表面(海馬輪郭から1mmおよび2mm吻側)のそれぞれを目的箇所として、脳の背面側から3mm、1mm、および、1mmの深さに埋め込まれる。電極の位置は、海馬領域での適切な位置づけを示す一部の動物において検証される。暗サイクル(夜間:活性)(午後6時〜午前6時)の間に、継続して記録が採取される。標準データは、暗サイクルでの最初の二時間に関して個別に解析が行われ、そして、代表値として示される。
シグナルは、128Hzと帯域通過濾波器の1-64Hz(二次バターワース)へと補間される。 スパイク2(ケンブリッジエレクトロニックデザイン)を用いて、波形データを、0.5Hzの解析度(256のFFTサイズ)を有するパワースペクトルに変換するために、パワースペクトル密度(PSD)は、高速フーリエ変換(FFT)で算出される。PDSは、すべての記録から算出される。スペクトログラムが作成され、そして、パワースペクトルは、128HzのFFTを用いて1秒ごとに算出され、次いで、10logl0(基本PSD)として算出されたPSDのLog対数に関してカラー表示がされ、また、この基本PSDは、すべてのスペクトル値の合計が、シグナルの平均平方値と等しくなるように正規化される。パワースケールは、国際化され、そして、得られたスペクトログラムの可視化を円滑にするために、ボックスカーフィルターが用いられる。特定のヘルツ間隔での優位周波数(DF)を算出するために、各記録間隔について30秒ごとに、上記したようにしてPSDが生成される。各30秒間でのDFは、その期間において最大の出力値を示す周波数である。平均DF値は、その記録時において、各30秒間(3600/30=120期間)での各DFから、それぞれのマウスについて算出される。 平均DF値は、各グループのすべてのマウスから得たDF値の平均値である。
実施例16:プロテアーゼ変異体のインビボ試験
1.認知症
物体認識試験
この物体認識試験とは、齧歯動物の認識能力に関する実験操作の効果を評価するためのものである。二つの同じ物体が置かれている空間に、マウスが放される。物体認識試験の最初の試行の間、ラットは、双方の物体をうかがっている。例えば、24時間の待機期間の後に行われた二回目の試行において、最初の試行で用いた物体のいずれか、すなわち、「見慣れた」物体と新たな物体が、その空間に置かれている。これら物体の各々についての観察時間が記録される。OR試験での基本的な測定対象は、二回目の試行において、ラットが二つの物体を探査するのに要した時間である。「見慣れた」物体よりも新たな物体に関して長い探査時間を要しておれば、記憶力は良好であると言える。
一回目の試行の前に、推定認知増強物質を投与することで、主に、認知と定着プロセスに関する効果の評価が可能となる。一回目の試行の後に、試験化合物を投与することで、定着プロセスに関する効果の評価は可能となるが、二回目の試行の前に投与を行うと、探索プロセスに関する効果の評価が可能となる。
受動的回避試験
受動的回避試験は、ラットおよびマウスでの記憶力を評価する。抑制回避器具は、明るい区画を備えたコンパートメントボックスと暗い区画を備えたコンパートメントボックスの二つから構成されている。この二つの区画は、実験者によって操作可能なギロチン式ドアによって分離されている。ドアが開いている時の暗い区画での照明は、約2ルクスである。明るいコンパートメントでの床中央部では、常に、約500ルクスの光度が保たれている。
二つの馴化期間、すなわち、ショック期間と待機期間を、それぞれ一つずつ与え、両期間の間には24時間の間隔を設ける。この馴化期間と待機期間において、ラットは、300秒間かけて装置を自由に探索することができる。このラットは、ギロチン式ドアとは反対側にある壁に面した明るいコンパートメントに置かれる。15秒間の順応期間の後に、ギロチン式ドアが開けられて、装置のすべての構成部材と自由に接触できるようにする。 通常、ラットは、明るく照らされた箇所を避けようとし、そして、瞬く間に暗いコンパートメントに入ろうとするであろう。
ショック期間において、コンパートメントの間にあるギロチン式ドアは、ラットが四足で暗いコンパートメントに入ると直ちに下げられ、そして、0.3〜1mAの電気ショックが、2秒間、足に与えられる。このラットは、装置の外に出され、そして、元の飼育カゴに戻される。待機期間の間に行われる手順は、馴化期間でのそれと同一である。
待機期間の間に暗いコンパートメントに入り込む最初の潜伏時間(秒)にある潜伏段階は、動物の記憶力の指標であり、暗いコンパートメントに入り込む潜伏時間が長いほど、記憶の定着は良好である。ショック期間の半時間前に、スコポラミンと共に試験化合物が与えられる。スコポラミンは、待機期間である24時間後に、記憶力を弱める。スコポラミンで処置をしたコントロールと比較をして、試験化合物が、潜伏性を高めるようであれば、認識力が増強されているものと考えられる。
恐怖条件付け文脈試験
恐怖条件付け文脈は、ラットおよびマウスでの忌避記憶を評価するためのものである。顕著な文脈素性(光や感触など)を有する観察箱が使用される。この箱は、各コンパートメントで使われていた格子付の床と刺激光を具備している。この部屋は、透明なプレキシグラスから作られており、また、60ワット電球(調光器を含む)で照らされている。
訓練と試験を行う日に、動物は、まず、60分間かけて実験室に馴らされる。実験(実験的訓練)の初日に、コンパートメントを探索する場所でもある照らされた部屋に置かれる。所定の時間(180秒)の後、動物の足に、電気ショック(通常は、0.7mA、2秒間、一定電流)が与えられる。実験的訓練の直後に飼育カゴへと戻す以前に、動物は、明るい部屋に、さらに30秒間かけて置かれる。試験日に、固定材を使わず、また、遮断時間を180秒とする以外は、前述した方法と同じくして、24時間後(試験訓練)に改めて挙動が記録される。 用いた読出値は、凍結応答(すなわち、動物の無動作)であり、そして、この文脈での前述した嫌悪療法の記憶に関する測定値として用いられる。これらの箱は、製造業者から提供されたソフトウェアによって制御される。
動物を、ビデオテープに録画し、そして、その後、凍結応答が、手作業で採点される。動物は、用量と時刻に関して均等に割り振られる。試験化合物を、スコポラミンと共に与える場合がある。スコポラミンは、待機期間である24時間後に、記憶力を弱める。スコポラミンで処置をしたコントロールと比較をして、試験化合物が、潜伏性を高めるようであれば、認識力が増強されているものと考えられる。
モリス水迷路試験
モリス水迷路試験は、齧歯動物での空間的定位学習能力を評価するものである。 この試験は、ラットおよびマウスの認知機能に関する推定的治療の効果を調査するために広く利用されていた試験システムである。動物の行動は、水面下約1cmまで沈む逃避台を具備した円形水槽において評価される。水槽を泳ぐ動物には、逃避台を目視で確認することはできない。室内の家具類、例えば、机やコンピューター装備品などによって、多数の迷路の出口が提供されている。
動物は、五日間の毎日の学習期間の間に、4回の試験を受ける。試験は、動物を、水槽の壁面に向かせながら、プールに入れることから始まる。4回の試験の各々において、東西南北の四方向のいずれかを、一度は開始位置とするが、この方向の順序は無作為である。逃避台は、いつも同じ位置に置かれている。動物が逃避台に登りつめたり、あるいは、90秒が経過したりするなど、いずれかの状態に達すれば、すぐさま試験を終了とする。動物は、30秒間にわたって逃避台にいることが許容されている。そして、逃避台から動物を移動させてから、次の試験が開始される。90秒以内に動物が逃避台を見つけることができなかった場合には、実験者が、動物を逃避台に乗せ、そして、そこで30秒間にわたってとどまらせる。五日間の毎日の学習期間における4回目の試験が終わった後に、プローブ試験として、さらに別の試験が行われ、そこでは、逃避台は撤去されており、また、四方向において動物が要した時間を、30秒または60秒かけて測定される。このプローブ試験では、学習期間中に逃避台の位置を決定していた四方向とは違って、すべての動物が、同じ開始位置から試験を始める。
学習実験の期間内での動物の行動を評価するために、逃避潜時、移動距離、逃避台までの距離、および、遊泳速度の四つの項目が測定される。四方向での時間(秒)と四方向での移動距離(cm)についての測定値が、プローブ試験では評価される。このプローブ試験は、逃避台の位置を見つけ出す動物の能力に関するさらなる情報を提供する。学習期間内に逃避台を設けていた四方向において、動物が、その他の方向の場合よりも、多くの時間を要し、また、より長い距離を泳いでいるようであれば、逃避台の位置が、十分に学習されていると結論づけることとなる。
推定認知増強物質であるプロテアーゼ変異体の効果を評価するために、認知機能を弱める脳障害を有するラットまたはマウス、または、通常の学習能力を阻害するスコポラミンやMK801などの化合物で処置をした動物、または、認知障害を患った高齢の動物が用いられる。
T迷路自発的交替試験
T迷路自発的交替試験は、マウスの空間記憶力を評価する。T迷路のスタートアームと二つのゴールには、実験者が手作業で作動可能なギロチン式ドアが設けられている。訓練を始めようとしているマウスは、スタートアームの場所に置かれる。ギロチン式ドアは、閉じられている。「強制試験」である最初の試験において、ギロチン式ドアを下げることによって、左側または右側のいずれかのゴールアームがブロックされる。スタートアームからマウスが解放されると、迷路をうまく通り抜け、ついには、開いているゴールアームにまで入り込み、そして、ギロチン式ドアを下げられて、5秒間だけ閉じ込められていたであろう出発地点にまで戻ることとなる。次いで、14回の「自由選択」試験を行っている間に、動物は、左側および右側のゴールアーム(すべてのギロチン式ドアは開けてある)の間を自由に選択することができる。マウスが、一方のゴールアームに入り込むと、他方のゴールアームは閉じられる。最終的に、マウスは、スタートアームにまで戻り、そして、スタートアームにて5秒間だけ閉じ込められた後は、警戒感を覚える箇所にでも自由に行動できる。一回の期間で14回の自由選択試験を終えた後に、迷路からマウスを移動させる。訓練を行っている間、動物が触れられることは一切なかった。
変化率が、14回の試験から算出される。この変化率の他に、最初の強制試験とその後の14回の自由選択試験を完了するために要した全時間(秒)が、分析される。訓練期間の始まる30分前に、スコポラミンを注射することによって、通常、認知障害は誘発される。スコポラミンは、交替率を、チャンスレベルまたはそれ以下にまで減少した。常に訓練期間の前に投与される認知エンハンサーは、少なくとも部分的には、スコポラミンが誘発をした減少効果を、自発的交替率で中和するであろう。
2.神経因性疼痛
神経因性疼痛は、主に、ラットでの片側性坐骨神経損傷の変異型によって誘発される。手術は、麻酔下で行われる。最初のタイプの坐骨神経損傷は、総坐骨神経の周囲に結紮糸を緩めに巻き付けることで発生する。第二のタイプの坐骨神経損傷では、総坐骨神経の直径の半分程度を強めに結紮する。次のタイプの坐骨神経損傷では、L5脊髄神経およびL6脊髄神経のいずれか、あるいは、L%脊髄神経だけに強い結紮または交差結紮が施されたモデルのグループが用いられる。第四のタイプの坐骨神経損傷では、腓腹神経が無傷なままの坐骨神経(腓骨神経および総腓骨神経)の三つの分岐末端の内の二つの軸索切断が関与しており、これに対して、最後のタイプの坐骨神経損傷では、腓腹神経および総腓腹神経が無傷なままの腓骨神経だけの軸索切断を含む。コントロール動物には、疑似手術が施される。
術後に、神経を損傷した動物は、慢性機械的異痛、冷感異痛、ならびに、温熱性痛覚過敏を発症する。機械的異痛は、圧力トランスデューサー(エレクトロニック フォン フレイ触覚計、IITC社、ライフサイエンスインスツルメンツ、ウッドランドヒルズ、カリフォルニア州、米国;エレクトロニックフォンフレイシステム、ソメディックセイルスAB、ホルビー、スウェーデン)の手段によって測定される。温熱性痛覚過敏は、放射熱源(プランターテスト、ウゴバシル、コメリオ、イタリア)の手段や、5〜10℃の冷却板を用いて、刺激を受けた後足の疼痛反応を、疼痛強度の尺度として計数する手段によって測定がされる。 冷感誘発疼痛に関する別の試験法として、疼痛反応の計数や、刺激を与えた後肢の足底にアセトンを投与した後の疼痛反応の期間の測定などがある。
一般的に、慢性疼痛は、活動のサーカディアンリズムを記録したり(Surjo and Arndt、ケルン大学、コロン、ドイツ)、また、歩行状態の差異を等級付けする(フットプリントパターン;フットプリントプログラム、Klapdor et al., 1997;フットプリントパターンを低コストで分析する方法、J. Neurosci. Methods 75, 49 54)などして、評価がされる。
疑似手術を受け、そして、賦形剤を与えたコントロールのグループにおいて、プロテアーゼ変異体が試験される。疼痛試験を実施する前に、異なる時点で、異なる投与経路(静脈内、腹腔内、経口、吸入、脳室内、皮下、皮内、経皮)を介して、物質が投与される。
3.プロテアーゼ変異体の心臓血管系作用についてのインビボ試験
麻酔をしたラットでの血行動態
300〜350gの体重のオスのウィスターラット(ハーランウィケルマン、ボルシェン、ドイツ)に、100mg/kgのチオペンタール「ナイコメッド」(ナイコメッド、ミュンヘン、ドイル)を腹腔内に投与をして、麻酔がかけられる。
気管切開術が行われ、そして、血圧と心拍数を計測する(グールド圧力トランスデューサーおよび記録計、モデルRS 3400)ために大腿動脈へカテーテルが挿入され、また、物質投与のために大腿静脈へカテーテルが挿入される。動物は、室内の空気で換気され、また、動物の体温は調節されている。試験するプロテアーゼ変異体は、静脈内に投与される。
意識的SHRでの血行動態
メスの意識的SHR(メレガード/デンマーク、220〜290g)に、埋め込み可能なテレメトリーが装着され、そして、液体で満たされたカテーテルを具備した長期間の埋め込みが可能なトランスデューサー/トランスミッターユニットを含むデータ取得システム(データ・サイエンス、セントポール、ミネソタ州、米国)が用いられる。トランスミッターが、腹膜腔に埋め込まれ、そして、検知カテーテルが、下行大動脈に挿入される。
試験するプロテアーゼ変異体の単回投与が、静脈内に対して行われる。コントロールグループの動物には、賦形剤のみが投与される。処置を行う前に、処置グループと処置を行わないコントロールグループの平均血圧値と心拍数が測定される。
実施例17.ネプリライシン変異体に融合した10ヒスチジンタグをコードする遺伝子の構築、その発現と精製
A.10ヒスチジン-ネプリライシン変異体発現系の構築
一つまたはそれ以上の変異ネプリライシンの基質に対するプロテアーゼの特異性に影響を与える一つまたはそれ以上の変異を含む当該変異ネプリライシンの細胞外ドメインは、N末端10ヒスチジンタグに融合される。発現が起こっている間に培地へのタンパク質の分泌を可能ならしめるために、シグナル配列-MGWSCIILFLVATATGAHS(配列番号:25)が導入される。ヒトネプリライシン変異体を有する完全な融合タンパク質(シグナル配列を除く)は、約81kDaの推定分子量を有する。
シグナル配列を含む(10ヒスチジン-ネプリライシン変異体をコードする)完全遺伝子が、pDEST12.2、pCEP4、pEAK10、pEF5/FRT/V5-DEST、および、pcDNA5/FRT/TO(ゲートウェイ適合したもの)などの好適な哺乳動物発現ベクターに導入される。これらすべては、CMVプロモーター(pDEST12.2、pCEP4、pEAK10、および、pcDNA5/FRT/TO)、または、EF-1αプロモーター(pEF5/FRT/V5-DEST)に基づいた標準的な哺乳動物の発現ベクターである。すべてのクローニングの後に、ベクターに正しい配列が存在するかどうかを検証するために、遺伝子の配列決定を行うことが望ましい。
B.CHO細胞でのNEPの細胞外ドメインおよび融合タンパク質10ヒスチジン-NEPの発現
10ヒスチジン-ネプリライシン変異体が、懸濁液に順応したCHO細胞において、一時的に発現される。製造実験で用いる細胞株として、CHO-K1に由来した細胞株が利用可能である。約0.5〜1×10の細胞密度で、1μg/細胞懸濁液ml(最終濃度)のプラスミドDNAを用いて、形質導入が行われる。30ml〜500mlの体積(振とうフラスコ)、次いで、5リットル〜25リットルのウェーブ・バイオリアクターにおいて、細胞培養物に関して発現が行われる。4〜14日後に、遠心分離をして、細胞培養物の回収が行われる。
C.アフィニティークロマトグラフィーを用いた発現した10ヒスチジンタンパク質の精製
細胞培地を用いて、哺乳動物細胞での発現物から融合タンパク質の精製を行うことができる。この精製は、AKTAクロマトグラフィーシステム(探索機器または精製機器、GEヘルスケア)において、例えば、ヒスチジントラップHPまたはニッケル-セファロースを用いて、固定化した金属イオン吸着クロマトグラフィー(IMAC)によって行うことができる。このカラムは、10カラム用量(CV)の2×PBS(5.4mM KCl、276mM NaCl、3mM KHPO、16mM NaHPO-7HO、pH7.4、インビトロジェン)で平衡化される。発現した融合タンパク質(10ヒスチジン-ネプリライシン)を含んだ細胞培養培地は、カラムに適用される。次いで、10カラム量の40〜400mMのイミダゾ−ルからなるイミダゾ−ル勾配を用いて溶出をする前に、このカラムを、20CVの2×PBSと40mMのイミダゾ−ルを含む10CVの2×PBSで洗浄される。10ヒスチジン-ネプリライシンタンパク質を含んだ画分は、プールおよび濃縮され、そして、サイズ排除クロマトグラフィーを用いてさらに精製される。この精製は、AKTAクロマトグラフィーシステム(探索機器または精製機器、GEヘルスケア)において、スーパーデックス200 16/60カラム(GEヘルスケア)を用いて実施することができる。このタンパク質は、1×PBS(2.7mM KCl、138mM NaCl、1.5mM KHPO、8mM NaHPO-7HO、pH7.4、インビトロジェン)に溶出され、そして、10ヒスチジン-ネプリライシンタンパク質を含んだ画分は、プールされ、凍結され、そして、-80℃で保存される。
実施例18.融合タンパク質HSA-ネプリライシン変異体をコードする遺伝子の構築、その発現と精製
A.HSA-ネプリライシン変異体発現系の構築
一つまたはそれ以上の変異ネプリライシンの基質に対するプロテアーゼの特異性に影響を与える一つまたはそれ以上の変異を含む当該変異ネプリライシンの細胞外ドメインは、プロペプチドを有する、あるいは、プロペプチドを持たないヒト血清アルブミン(HSA)に融合される。発現が起こっている間に培地へのタンパク質の分泌を可能ならしめるために、シグナル配列-MGWSCIILFLVATATGAHS(配列番号:25)が導入される。ヒトネプリライシン変異体を有する完全な融合タンパク質(シグナル配列を除く)は、約147kDaの推定分子量を有する。
シグナル配列を含む(HSA-ネプリライシン変異体をコードする)完全遺伝子が、pDEST12.2、pCEP4、pEAK10、pEF5/FRT/V5-DEST、および、pcDNA5/FRT/TO(ゲートウェイ適合したもの)などの好適な哺乳動物発現ベクターに導入される。これらすべては、CMVプロモーター(pDEST12.2、pCEP4、pEAK10、および、pcDNA5/FRT/TO)、または、EF-1αプロモーター(pEF5/FRT/V5-DEST)に基づいた標準的な哺乳動物の発現ベクターである。 すべてのクローニングの後に、ベクターに正しい配列が存在するかどうかを検証するために、遺伝子の配列決定を行うことが望ましい。
B.CHO細胞でのNEPの細胞外ドメインおよび融合タンパク質HSA-NEPの発現
タンパク質NEP(細胞外ドメインのみ)とHSA-NEPが、懸濁液に順応したCHO細胞において、一時的に発現される。製造実験で用いる細胞株として、CHO-K1に由来した細胞株が利用可能である。約0.5〜1×10の細胞密度で、1μg/細胞懸濁液ml(最終濃度)のプラスミドDNAを用いて、形質導入が行われる。30ml〜500mlの体積(振とうフラスコ)、次いで、5リットル〜25リットルのウェーブ・バイオリアクターにおいて、細胞培養物に関して発現が行われる。4〜14日後に、遠心分離をして、細胞培養物の回収が行われる。
C.アフィニティークロマトグラフィーを用いた発現したHSA-ネプリライシンの精製
細胞培地を用いて、哺乳動物細胞での発現物から融合タンパク質の精製を行うことができる。この精製は、抗HSAアフィボディカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって行うことができる。このアフィボディは、スルフォリンク樹脂(ピアス)の遊離システインを介して同樹脂に結合され、そして、10カラム用量(CV)の緩衝液A(50mM Tris、250mM NaCl、pH8)で平衡化される。発現した融合タンパク質(HSA-ネプリライシン)を含んだ細胞培養培地は、その樹脂に適用される。次いで、結合したタンパク質を、緩衝液B(100mMグリシン、pH 2.7)を用いて溶出をする前に、このカラムは、緩衝液Aで洗浄される。10mlの溶出したタンパク質に対して1mlの1M Trisを加えることによって、精製した画分は、即座に中和される。精製した画分は、プールおよび濃縮され、そして、サイズ排除クロマトグラフィーを用いてさらに精製される。この精製は、AKTAクロマトグラフィーシステム(探索機器または精製機器、GEヘルスケア)において、スーパーデックス200 16/60カラム(GEヘルスケア)を用いて実施することができる。このタンパク質は、1×PBS(2.7mM KCl、138mM NaCl、1.5mM KHPO、8mM NaHPO-7HO、pH7.4、インビトロジェン)に溶出され、そして、HSA-ネプリライシンを含んだ画分は、プールされ、凍結され、そして、-80℃で保存される。
実施例19.プロテアーゼ変異体によって開裂したペプチドの動態解析
N末端とC末端に、それぞれ、蛍光色素とビオチンがラベルされた合成ペプチド基質の開裂を測定する蛍光偏光アッセイを用いて、プロテアーゼ変異体によってもたらされたペプチドの開裂に関するVmax、K、KcatおよびKcat/Kという動力学的パラメーターが測定された。ビオチンは、アビジンを加えた後に、未開裂の分子の分子サイズを増大させる作用があるので、アッセイウィンドウや測定可能なシグナルの範囲が拡大することとなる。このようなペプチド基質が、以下の表11に示されている。
Figure 2012530498
このアッセイは、96-ウェルマイクロタイタープレートで行われ、そして、50mM HEPES(pH 7.4、シグマ、# H3375)、150mM NaCl、0.05%(w/v) BSA(シグマ、# A9576)、1-200μMペプチド基質、それに、1-500nM プロテアーゼ変異体を利用していた。エンドセリン1a、エンドセリン1b、および、ANPを利用したアッセイでは、2mM トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(シグマ、# C4706)を、さらに使用していた。
2分〜360分の間の様々な時点で、2mM 1、10-フェナントロリン一水和物(シグマ、# P9375)と2μM アビジン(インビトロジェン、# A2667)を含んだ245μlの50mM HEPES緩衝に5μlの一定量を移して反応を停止するまで、反応物を、37℃でインキュベーションした。得られた溶液の蛍光偏光を、ビクタープレートリーダーで測定し、そして、アビジンと基質だけを含むコントロールとアビジンを含まない基質だけのコントロールを参照して、開裂した物質の量を決定した。経時変化の線形領域での線形回帰によって、初速度が得られた。データを補正して、VmaxとKのパラメーターを得るために、基質濃度とミカエリスメンテン式の関数として、酵素速度を記入した。Vmaxを酵素濃度で割って、Kcatを算出した。特定の基質に関する触媒効率を、M-1-1の単位で表現される二次速度定数によって評価をした。
表12は、野生型ネプリライシン、G399V/G714K変異体、および、G399V/G714K変異体とHSAとの融合物のKcat/K値を示している。G399V/G714K変異体とその変異体のHSA融合物のKcat/K値の野生型ネプリライシンのそれに対する比率が、表13に示されている。アミロイドベータ1-40に関する触媒効率は、野生型ネプリライシンと比較して、G399V/G714K変異体で、4.5倍だけ増大していた。G399V/G714K変異体のHSA融合物でも、アミロイドベータ1-40に関するKcat/K値について、同様の増大が認められた。 ブラジキニン、ニューロテンシン、ソマトスタチン1-28、アンジオテンシン、および、ANPの開裂についてのKcat/K値は、G399V/G714K変異体において、それぞれ、1/3200、1/330、1/140、1/71および1/11にまで減少した。 これら基質での触媒効率に関する同様の減少が、変異体のHSA融合物についても認められた。 エンドセリン-1、GIP、および、グルカゴンの開裂についてのKcat/K値は、野生型ネプリライシンと比較して、G399V/G714K変異体において、1/4〜1/2にまで減少していた。 これら基質での触媒効率に関する同様の減少が、変異体のHSA融合物についても認められた。
Figure 2012530498
Figure 2012530498

Claims (17)

  1. 配列番号:2に示した野生型ヒトネプリライシン細胞外ドメインのプロテアーゼバリアントを含むポリペプチドであって、野生型ヒトネプリライシンと比較して、ネプリライシン基質に対して少なくとも10倍大きな特異性を有するポリペプチド。
  2. 前記ポリペプチドが、野生型ヒトネプリライシン(配列番号:1)と比較して、アミロイドベータに対して少なくとも10倍大きな特異性を有する、請求項1に記載のプロテアーゼバリアントを含むポリペプチド。
  3. 野生型ヒトネプリライシン細胞外触媒ドメイン(配列番号:2)のプロテアーゼバリアントを含むポリペプチドであって、野生型ヒトネプリライシンと比較して、アミロイドベータペプチドに対して大きな特異性を有し、T99、S100、S101、G104、D107、G195、T206、H211、H214、H217、D219、Q220、G224、S227、R228、D229、F247、A287、R292、L323、Y346、M376、D377、L378、S380、S381、F393、R394、A396、G399、E403、T404、A405、Y413、N415、G416、N417、E419、V422、A468、I485、I510、L514、F516、S517、Q518、Q521、L522、K524、E533、W534、S536、G537、V540、Y545、S546、S547、G548、D590、D591、N592、G593、F596、G600、W606、Q624、A649、V692、W693、Y697、Y701、N704、S705、T708、D709、V710、S712、G714、R735、および、K745の位置にある一つまたはそれ以上のアミノ酸が、天然に存在するその他のアミノ酸と置換されているポリペプチド。
  4. ヒトネプリライシン細胞外触媒ドメイン(配列番号:2)のプロテアーゼバリアントを含むポリペプチドであって、野生型ヒトネプリライシンと比較して、アミロイドベータペプチドに対して大きな特異性を有し、一つまたはそれ以上の位置において、
    T99をD、
    S100をI、
    S101を、L、V、Y、または、I、
    G104を、L、M、R、V、または、W、
    D107を、N、V、または、W、
    G195を、V、
    T206を、R、
    H211を、N、
    H214を、N、
    H217を、N、
    D219を、A、
    Q220を、K、
    G224を、W、
    S227を、L、または、R、
    R228を、G、
    D229を、N、
    F247を、C、または、L、
    A287を、S、
    R292を、M、
    L323を、F、
    Y346を、W、
    M376を、Y、
    D377を、F、H、T、Y、または、G、
    L378を、E、K、または、R、
    S380を、K、または、R、
    S381を、R、
    F393を、S、
    R394を、C、E、G、M、または、P、
    A396を、D、
    G399を、V、
    E403を、H、L、または、S、
    T404を、D、または、F、
    A405を、T、
    Y413を、D、
    N415を、A、
    G416を、R、または、W、
    N417を、W、
    E419を、L、M、F、または、K、
    V422を、M、
    A468を、S、
    I485を、V、
    I510を、D、E、F、または、R、
    L514を、K、または、F、
    F516を、R、
    S517を、D、F、R、W、または、Y、
    Q518を、R、または、P、
    Q521を、R、または、E、
    L522を、Y、
    K524を、R、
    E533を、F、A、または、R、
    W534を、C、
    S536を、G、P、R、E、E、または、W、
    G537を、E、または、T、
    V540を、C、E、F、または、G、
    Y545を、S、または、V、
    S546を、D、E、I、R、W、または、Y、
    S547を、D、E、F、G、または、K、
    G548を、C、E、R、または、W、
    D590を、F、M、または、W、
    D591を、E、または、L、
    N592を、P、
    G593を、V、または、D、
    F596を、P、
    G600を、D、V、または、W、
    W606を、S、
    Q624を、H、
    A649を、G、
    V692を、M、
    W693を、C、F、N、Q、V、または、L、
    Y697を、G、
    Y701を、G、または、R、
    N704を、E、G、R、または、W、
    S705を、R、
    T708を、K、
    D709を、K、または、V、
    V710を、F、
    S712を、H、L、Q、または、G、
    G714を、H、または、K、
    R735を、H、および、
    K745を、N へと交換するアミノ酸の交換が行われているポリペプチド。
  5. 野生型ヒトネプリライシン細胞外触媒ドメイン(配列番号:2)のプロテアーゼバリアントを含むポリペプチドであって、野生型ヒトネプリライシンと比較して、アミロイドベータペプチドに対して大きな特異性を有し、G399が、その他の天然に存在するアミノ酸と置換され、および/または、G714が、その他の天然に存在するアミノ酸と置換され、前記天然に存在するアミノ酸が、所望により、アラニン(A)以外である、ポリペプチド。
  6. G399が、バリン(V)と置換され、および/または、G714が、リシン(K)と置換される、請求項5に記載のプロテアーゼバリアントを含むポリペプチド。
  7. 前記ポリペプチドが、アミロイドβ40、アミロイドβ42、アンジオテンシン-1および-2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン-1および-2、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、アドレノメデュリン、ボンベシン、BLP、CGRP、エンケファリン、FGF-2、fMLP、GRP、ニューロキニンA、ニューロメジンC、オキシトシン、PAMP、サブスタンスPまたはVIPに対する変化した特異性を有する、配列番号:2に示した野生型ヒトネプリライシン細胞外触媒ドメインのプロテアーゼバリアントを含む、請求項1乃至6のいずれかに記載のポリペプチド。
  8. アミロイドβ40、アミロイドβ42、アンジオテンシン-1および-2、ANP、BNP、ブラジキニン、エンドセリン-1および-2、ニューロペプチドY、または、ニューロテンシンに対する変化した特異性を有する、配列番号:2に示した野生型ヒトネプリライシン細胞外ドメインのプロテアーゼバリアントを含む、請求項1乃至6のいずれかに記載のポリペプチド。
  9. プロテアーゼバリアントのN末端に半減期調節部位を含み、好ましくは、前記半減期調節部位が、Fcドメイン、HSA、または、これらの変異体から選択され、所望により、前記半減期調節部位とプロテアーゼバリアントがリンカーによって結合している、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリペプチド。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸。
  11. 請求項10に記載の核酸を含むベクター。
  12. 請求項11に記載のベクターを含む宿主細胞。
  13. 請求項1乃至9のいずれかに記載のポリペプチドを製造する方法であって、当該方法が、以下の工程、すなわち;
    a.プロテアーゼバリアントの発現に好適な条件下で、請求項12に記載の宿主細胞を培養する工程、および、
    b.宿主細胞培養物からプロテアーゼバリアントを回収する工程、を含む方法。
  14. 請求項1乃至9のいずれかに記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
  15. アルツハイマー病といったアミロイドベータ関連病などのヒトのネプリライシン基質が関連する疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1乃至9のいずれかに記載のプロテアーゼバリアントを含むポリペプチドを、治療を必要とする患者に投与することを含み、それにより、ヒトのネプリライシン基質が関連する疾患の症状を緩和する方法。
  16. アルツハイマー病といったアミロイドベータ関連病などのヒトのネプリライシン基質が関連する疾患のための薬剤として用いられる、請求項1乃至9のいずれかに記載のポリペプチド。
  17. アルツハイマー病などのアミロイドベータ関連病を予防、および/または、治療するために用いられる、請求項1乃至9のいずれかに記載のアミロイドベータに対して増大した特異性を有するポリペプチド。
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