本発明は、被験者の摂食行動を変化させるために使用することのできる装置および方法に関する。
本発明の原理および操作は、図面および添付された説明を参照するとより良く理解することができる。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、または図面において例示される構成要素の配置および構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。また、本明細書中において用いられる表現法および用語法は説明のためであって、限定として見なされるべきでないことを理解しなければならない。
幽門は十二指腸につながる胃の領域である(図1)。幽門は2つの部分すなわち、胃体につながる遠位洞(A)または同等の幽門洞(PA、図1)、および十二指腸(D、図1)につながる幽門管(PC、図1)に分割される。幽門括約筋(PS、図1)または弁は、GI管の粘膜下組織(SM、図1)および粘膜(MC、図1)層によって包囲された、幽門管の端部における環状の平滑筋(mu、図1)である。幽門括約筋は、胃から十二指腸への血流を制御することに関与するシステムの部分である。幽門口(PO、図1)は幽門括約筋(PS)のリップによって包囲された開口であり、特定の状況下では幽門管(PC)の一部をも含む。その直径は幽門管および括約筋の収縮および弛緩の程度に応じて変化する。研究は、開いているときの開口の直径が5〜25mmの間で変動し得ることを示している。
身体組織内および特に胃のような身体器官の管腔組織内の装置の定着は、大変な難題を提起する。組織内定着のための方法は当該技術分野に幾つか存在するが、そのような方法は、定着の強度、組織内の定着部位の衝撃、アンカ損失につながる組織を介する定着要素の侵食、定着される装置またはアンカ自体による粘膜表面の侵食、または定着手順の複雑さによって制限される。幽門を通過できるより大きい物体による胃内の定着は結果的に、洞および胃体の絶え間ない撹拌を前提として、胃粘膜内層に侵食を引き起こす。さらに、逆とげまたは組織に半径方向の力を加える他の要素を用いて動的かつ敏感なGI組織を定着すると、組織侵食および炎症が引き起こされることが文書で実証されており(Rodriguez‐Grunert L.ら、Surgery for Obesity and Related Diseases 4、2008、55‐59)、したがって実用的な長期定着スキームとはみなされない。一般的に、より強く、かつそこでの穿孔または部分穿孔が、繊細な小腸の生命を脅かす穿孔または部分穿孔ほど深刻ではない、胃組織に定着することが好ましい。
本発明を実施化しながら、本発明者は、摂食行動を変化させるための装置、および装置本体を器官の管腔内に配置することを容易化すると共にその実行が迅速かつ容易である定着方法を考案した。以下の実施例の節に示す通り、本装置は被験者の摂食行動を変化させることに成功する一方、該定着方法は、組織を損傷することなく器官の組織への装置本体の確実な長期定着を可能にする。本定着方法は、装置本体が定着部位から順行(または同等の反口または尾側)方向のみならず逆行(または同等の口または口側)方向にも設定距離を越えて移動することを抑制するように設計され、したがって被験者の摂食行動が変化することを促進する。
こうして、本発明の一態様では、被験者の摂食行動を変化させるための装置、および身体の組織内に装置本体を定着する方法を提供する。好ましくは、組織は中空身体器官(例えば胃)の壁組織であり、定着は、装置本体が器官の管腔内で定着部位からどの方向へも設定最大半径内に位置するように行なわれる。
本発明の1つの好適な使用法は、被験者の摂食行動を変化させる目的で、装置を胃に定着させることである。
胃は、分泌された胃酸およびペプシンを介して食物粒子を化学的/酵素学的に分解することによって、かつ蠕動収縮を介して食物粒子を機械的に分解することによって、食物を消化するのに重要な役割を果たす。
正常な消化では、胃が満たされると、胃体および胃底の消化腺が、食物の消化を助け消化酵素の活性体への変換を容易にする強酸である塩酸を放出する。胃壁内の特に洞領域における筋肉の蠕動収縮は、消化液と食物を混同して、糜粥として知られる半流動物質を生成する。糜粥は、数ある因子の中でも特に糜粥のコンシステンシによってトリガされる洞‐幽門‐十二指腸領域間の協調圧力差により、十二指腸へ移動する。
発明者が観察した通り、蠕動波は時々幽門から始まり、口の方向(逆行)に6〜10cm移動する。より一般的には、そのような波は洞で始まり、反口方向(順行)に移動する。そのような蠕動波は、洞に繋留された装置に対しそれぞれ幽門から遠ざかる方向または幽門に向かう方向の力を加える。発明者によって行なわれたヒトへの実験において、逆行収縮波は平均的な順行収縮波よりずっと激しく強力であり、幽門口から口側に6〜10cmの距離まで管腔を閉塞するように伝搬し、したがって遠位洞で食物を磨砕するか、あるいは固形物を押して幽門から遠ざけるかのいずれかに作用することが注目された。
さらに、内視鏡手段を使用して、容易に破砕できない大きい非抑止固形物が強力な逆行収縮波によって、幽門から8〜12cmの距離まで胃体内に自由に逆行推進されることが、発明者によって観察された。
これらの観察結果から、本発明者は、遠位洞に繋留された装置本体を逆行収縮波が「越流」し、装置の意図された作用部位(幽門領域および十二指腸)から離れて胃体内に押し戻すことを自明のこととして仮定するに至った。
重力のため、大きい物体は、水溜め槽のように働く洞の最下部分に沈降する。そのような物体が、順行性洞収縮波中、または低頻度の「管腔閉塞」第三相MMC波中に、幽門の近くに適切に配置されると、それらは幽門を通過する。しかし、そのような物体が通過するのは、摂取した食物の大部分が胃から排出された後だけである。
例えば米国の直径24mm、厚さ1.75mmの25セント硬貨は、MMCの第三相によって大部分の成人の幽門を無事に通過し、これは、規則的な順行性蠕動波の結果、波が幽門近くに伝搬するにつれて、管腔の径が小さくなるという事実にもかかわらず、そうである。そのような波により、管腔径は幽門までの最後の7cm程度付近で著しく低減される。
本発明者は、装置本体が幽門に近づくにつれて、順行性洞収縮波に捕捉され、十二指腸へ通過する可能性が高くなることを観察した。したがって、装置本体を幽門の近くに、できれば(最高7cmの距離内に)定着させ、それを沈子ライン(後でさらに詳述する)により十二指腸内に向かわせ、かつ/または幽門に近い洞空間でそれが浮遊するように装置本体を浮遊させることが重要である。この洞空間は、ヒトが直立したときに洞より上に位置する。装置を幽門の近くに定着させ、装置の一部分を十二指腸内に存在させ、かつ/またはそれを浮遊させることによって、本発明の装置は、胃内の同様の大きさの非抑止物体より迅速に幽門と相互作用するかまたは幽門を通過するはずである。そのような定着構成は、胃排出を妨害する装置本体の能力を実質的に向上する。
ここで提案する装置構成および定着スキームの機能性は、順行性幽門流動を生成するために必要な圧力差が小さすぎてマノメトリによって測定することができないので、幽門括約筋は胃排出を制御する主要要素ではないという反直観的な観察結果をさらに支持する。開いた幽門を通過する糜粥の流動は、胃底と十二指腸との間の高度に制御された協調的な筋緊張差によって生み出される、胃と十二指腸との間の非常にわずかな圧力差によって引き起こすことができる(Pal Aら、Proc R Soc Lond B Biol Sci 2004;271:2587‐94、およびPallotta Nら、Am J Gastroenterol 1998;93:2513‐22)。実際、排出シーケンスの約3分の1は、胃蠕動無しで、非常にわずかな幽門横断圧力勾配(0.15kPa、0.6インチH2O、または0.02PSI)により生じる。したがって、胃が緊張収縮により最小限の幽門抵抗に抗してかなり大きい体積の液体を排出することができることは、理に適っている(Ramkumar,Dら、Neurogastroenterol Motil(2005)17 Suppl. 1、22‐30)。したがって、本書では、幽門管および十二指腸の領域で、適切な大きさおよび形状に作られしかも比較的薄肉の装置本体を有する装置が、糜粥の低圧順行流動に効果的に抵抗し、したがって胃排出を緩慢化することを自明のこととして仮定する。
加えて、十二指腸球および近位十二指腸に全胃収縮周期の最高2分の1までの早期収縮が発生し、幽門を通過する逆行流動の短い噴出を導き(Hausken Tら、Gastroenterology 1992;102:1583‐90)、それは洞に定着された任意の装置を、次の順行性収縮波がそれを十二指腸内に戻すまで、洞内に一時的に逆流させるように作用する。したがって、装置本体が、幽門から1〜15cm、好ましくは3〜8cmの半径内で前後に往復し、胃内容物を十二指腸内に排出する大量流動、胃内への胆汁の逆流、および胃内容物の洞内における胃体への逆行流動をも防止することができることが重要である。
幽門流動は、排出‐逆流‐排出サイクルのシーケンスによって特徴付けられる。十二指腸胃逆流は幽門閉鎖の直前に発生し、したがってエピソードは胃十二指腸流動よりずっと短い。逆流は、伝搬または非伝搬パターンに関係なく、十二指腸収縮によって促された。胆汁の胃内への逆流を阻止することは、消化の効率を低下させ、したがって摂食行動を変化させることができる。
ヒトの小腸は水約20〜50インチの蠕動圧力を生成することができる。胃は、腸管系が生成することのできる最大圧力とはかけ離れた、ずっと低い圧力(水約0.6インチ)で排出すると想定される。したがって、胃排出を妨害するために、比較的小型で薄板状の装置本体を介して幽門口またはGI管腔一般を制限すれば充分であろう。実際、0.15KPaの胃排出圧力差によって例えば直径12mmの円板状装置本体に対して加えられる合力は、わずか3ないし4グラムである。直径22mmの円板状装置本体に加えられる圧力は、わずか10ないし15グラムである。したがって、胃排出を遅延させる目的で、糜粥の十二指腸への移動または十二指腸内の糜粥の流動を部分的に阻止するために、幽門を遮断することのできる装置本体を剛性または肉厚にする必要はない。
本発明者は、実験を通して、胃排出を遅延させるように意図された大型または剛性の物体には、管腔内の糜粥の順行流動中に加えられる力より大きい力が、GI管の蠕動および粉砕によって加えられると判断した。したがって、大型で比較的剛性の装置本体を使用した場合、大きい蠕動力がテザーを介してアンカに伝達され、数週間または数ヶ月で装置の外植(explantation)を引き起こし得る。
対照的に、5ニュートン以下、好ましくは2ニュートン以下の力で、断面積1平方センチ未満のフォームファクタに破砕可能/圧潰可能な装置本体を利用した場合、胃排出の妨害および洞の逆行流動が依然として達成されるが、それでも蠕動中に装置に働く力は小さく、したがって定着部位の応力は低くなり、特に非外傷的な弾性定着および繋留と結合された場合、長期的植込みおよび永久的な植込みさえも可能になる。
加えて、(例えば食物を混合および粉砕する逆行蠕動を部分的に阻止することによって)装置が洞内の食物の粉砕を妨害する場合、または本書に記載する装置の部分的遮断のため、一部の糜粥が幽門を通過することを可能にするために、幽門がより大きく開かなければならない場合には、より大きい未粉砕粒子がより大きく開存する幽門を通過することができる。食物のより大きい粒子が十二指腸に入ると、脂肪のような栄養素は0.5mm以上の食物粒子からうまく抽出されないので(0.5mm未満の粒子の場合の効率が85%であるのに対して、50%未満の効率である―Schulze K.、Neurogastroenterol Motil 2006、18、172‐183)、吸収不良につながる。さらに、幽門管における装置本体の含有容積または排水容積は、十二指腸へ排出するのに利用可能な糜粥の量を直接相殺し得る。例えば、幽門管内の容積2〜3mlの装置本体(中実か中空かにかかわらず)は、十二指腸へ排出するのに利用可能な糜粥の量を排除させ、それは排出サイクル毎に2〜3mlの一定分量ずつ行なわれる(Schulze K.、Neurogastroenterol Motil 2006、18、172‐183)。これらの効果も全て摂食行動の変化およびその結果としての減量を導くであろう。
特定の理論に束縛されることなく、本発明の装置の作用の1つのメカニズムは、幽門または幽門管の部分的閉塞による胃排出の遅延である。直径2mmのステム上に載った直径12mmの遮断円板を開存幽門の前に配置すると想定すると、直径7、9、11、および13mmの開存幽門の遮断円板による百分率遮断(エクリプス)は、それぞれ100%、80%、60%、および40%となる。平均的静止幽門の幽門口の直径が5〜13mmの範囲で8.7mmであることを前提とすると(Keet,A.D.、The Pyloric Sphincteric Cylinder in Health and Disease)、直径12mmの遮断要素は、胃と十二指腸との間の背圧または圧力差の生成によって、平均的幽門口の開放面積の約80%、およびしたがって平均的幽門を通過する流動の少なくとも80%を遮断すると計算される。シールが不完全である(遮断要素は前後に少し移動することができる)と仮定すると、流動の閉塞はおそらく80%未満であるが、それでも胃排出率の顕著な低減を引き起こすのに充分である。
代替的シナリオで、ビデオX線透視検査の研究は、胃排出中に幽門が、おおよそ小腸の直径である25mmの最大開口まで開くことができることを示している。そのような場合、幽門は流動に対する抵抗体であることを停止する。したがって、幽門、十二指腸球、または近位十二指腸の領域に配置された、直径が22mmの円板状または傘形の装置本体は、流出の75%を効果的に遮断し、胃排出率の実質的な低減を生じ、満腹を増大する。
伸展受容器のような電気、ホルモン、化学、または筋力信号の形の生理学的反射作用は、胃が流体で満たされたときに胃から、かつ糜粥の過剰な存在または微弱の組成または特徴の変化に応答して十二指腸によって開始される。そのような信号はGI管の他の領域(例えば幽門および洞)に戻り伝達され、食物の撹拌および/または胃排出を緩慢化し、あるいは停止させることさえある。加えて、満腹誘発(ホルモンまたは電気)信号が脳に伝達される(Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology、785‐6頁;2006)。そのようなフィードバックの一例として「十二指腸ブレーキ」がある(Schulze‐Delrieuら、Gastroenterology、1996;110:740‐747)。十二指腸は糜粥の量および化学的組成に応答して緊張収縮し、胃の内容物の幽門横断流出を機械的に停止または緩慢化することができる。さらに、胃底を弛緩させ、洞の運動性を抑制し、幽門の緊張を高め、かつ推進パターンから混合パターンに十二指腸の運動性を切り替えることによって、十二指腸は胃排出を緩慢化することができる。
こうして、いかなる理論にも束縛されることなく、胃の洞‐幽門‐十二指腸領域が消化およびフィードバックおよび適切な刺激に重要な役割を果たすと想定して、これらの領域のいずれかにおける糜粥の部分的遮断または貯留により、摂食行動の変化を引き起こすことができる。
こうして、本発明の一態様では、被験者の摂食行動を変化させるための装置を提供する。本書で使用する場合、被験者という用語は動物、好ましくはヒトのような哺乳類、例えば摂食障害または肥満症のような体重関連障害を有するヒトを意味する。
本装置の一実施形態は、装置本体と、洞、幽門、および十二指腸の近位領域(例えば十二指腸球)内のみならず幽門の十二指腸側内にも存在する粘膜組織との間の断続的接触が可能になるように、GI管組織に定着される装置本体を含む。先行技術の装置とは対照的に、本発明の装置本体は、GI管の1つの場所に固定されず、胃内で自由に浮遊してもおらず、むしろ選択された定着点を中心に所定の長さを持つ定着されたテザーの抑止効果に抗して、GI管に対して両方向に軸方向に移動することができる。そのような定着スキームは、例えば早期満腹フィードバックを刺激することによって、摂食行動を変化させるために使用することができる。
本装置のこの実施形態は、幽門または幽門管の部分的および/または一時的閉塞を形成するためにも使用することができる。医学文献の多くの報告書が、幽門における部分的胃流出路閉塞からもたらされた生理学的結果を報告している。部分的胃流出路閉塞は、消化された食物の胃から幽門管および/または幽門自体を介して十二指腸への自由移動を部分的に妨害する、直径1〜3cmの無茎性または有茎性胃ポリープが存在する結果発生し得る。そのような部分的胃流出路閉塞に関連付けられる生理学的信号は主として、早期満腹、軽度ないし中程度の吐気、ならびにある程度の食欲減退および減量である。こうして、以下の実施例で述べるように、本発明の装置を幽門の近傍に配置することにより、幽門を通過する消化された食物の量を部分的に制限し、そのような制御された干渉を介して、摂食行動の変化におけるポリープの効果を模倣することが可能になる。
本装置の好適な本実施形態は、洞または幽門の組織に付着されたときに装置本体が幽門領域に断続的に接触することを可能にするように、洞または幽門の組織に直接または間接的に付着可能な装置本体を含む。本書で使用する場合、語句「洞−十二指腸領域」とは、近位洞から始まり、胃の幽門および幽門領域を含む遠位十二指腸で終わる胃腸(GI)管の領域内に存在する任意の粘膜組織を意味する。
ここでは洞または幽門定着が好適であるが、組織穿通手段およびテザー長を適切に選択することにより、他のGI管定着部位(例えば胃体、胃底、下部食道括約筋、鼻腔等)も想像されることは理解されるであろう。
代替的実施形態では、本装置は2つ以上の装置本体(例えば2、3、4、5、6、またはそれ以上)を含み、そのような装置本体(同一または異なる大きさおよび/または形状とすることができる)は、小腸のあらゆる位置の糜粥の流量を効果的に変化させるために、十二指腸(〜26cm)、空腸(〜2.5m)、回腸(〜3.5m)、またはこれら3つの任意の組合せの全長にわたってテザー上に間隔を置いて配置することができる。好ましくは、本発明の単数または複数の装置本体は、単数または複数の装置本体と洞、幽門、および十二指腸の近位領域、十二指腸球のみならず、幽門の十二指腸側にも存在する粘膜組織との間の断続的接触が可能になるように、組織に定着される。その趣旨で、装置本体の組織への定着はテザーを介して行なわれることが好ましい。
テザーは、任意の生体適合性材料から構成された任意の細長い要素とすることができる。適切なテザーの例として、(例えば金属、ポリマ、エラストマ、天然素材、もしくはそれらの組合せから製造された)縫合材料、弾性または非弾性の編組または単繊維縫合糸、ワイヤ、リボン、またはひもがある。
装置本体は、植込み部位および機能に応じて任意の形状または大きさとすることができる。装置本体は圧縮または折り畳まれた状態で送達し、植込み後に患者を装置に徐々に慣れさせるように時間をかけてゆっくりと展開状態に拡張することができる。例えば弾性的に圧縮可能な通常開パラシュートまたは傘の形の装置本体は、開いた装置本体が突然胃排出率を75%低下させると患者に対する衝撃が大きすぎるのでそうしないために、植込み後に徐々に溶解して装置本体が1、2週間かけて自然開放パラシュート状の形状を取ることを可能にする水溶性フィルムまたは接着剤により接着閉鎖することができる。代替的に、装置本体は、注入管または口(例えば隔膜)を介して導入される流体またはガスを使用して、装置本体の植込み後の形状、容積、剛性、または外径を変化させ、患者に装置と共に生きることを徐々に学習させ、あるいは装置の大きさまたは有効性をいずれかの方向に動的に、または調整可能なラップバンドと全く同様に周期的に調整するように、拡張させることができる。そのような容積または形状の変化の制御は、患者の体外からリモートコントロールを介して行なうことができる。
さらに、テザーの長さ、テザー上の装置本体の位置、または装置本体の大きさは固定するか、あるいは定着手順中またはその後に使用者/医師によって、または生理学的パラメータ(例えば食物の有無、浸透圧駆動流体流入による緩慢な拡張)を介して自動的に制御して、装置の位置または機能の適応または調整を可能にすることができる。
加えて、テザーまたは装置本体は、組織からまたは装置本体からのテザーの解放を指し示すように構成することができる。例えば、切り離された場合、装置本体は、装置が切り離されたことが患者に分かるように指示染料(例えばメチレンブルー)を放出することができる。
装置本体は、電気部品(例えばトランシーバ、電極、カメラ、弁、コイル、電池、コンデンサ、テザーを引き込みかつ通常の蠕動流動等に抗して装置本体を移動させる小型ウィンチ)および/または組成物(例えば薬剤)として機能するかそれを担持するように構成することができ、かつ外部信号および環境状態に応じて形状および/または大きさを変化させる(例えば化学反応、圧縮ガス、浸透液の流動を介して膨張する)ように構成することができる。
例えばテザーは、胃の粘膜、粘膜下組織、筋肉、または漿膜層に埋め込まれた電極として働き、当該技術分野で公知の電極位置および刺激パラメータを使用して胃運動性を変化(胃不全麻痺の場合増強、または肥満症の場合遅延)させるために使用することができる。多くの外部胃刺激装置が当該技術分野で公知である。本発明の電極担持装置は、内視鏡を用いて導入し植え込むことができ、既存の胃電気刺激装置で使用される開放性または腹腔鏡外科手技より耐容性が著しく高い。さらに、テザー電極は、胃を刺激する神経(迷走神経等)に近接して配置することができる。テザー電極装置全体は受動とし、有線または無線手段を介して電気エネルギ源に接続することができる。この実施形態の装置本体は定着用円板(例えば厚さ1mm×直径5mm)の大きさとすることができ、長さ約5〜25mmのテザー電極はしたがって胃内で最小限の衝撃を有し、単一パスの非吸収性縫合糸が胃内に数十年残存するのと全く同様に、悪影響無く長期に存続する。代替的に、金属電極は、電極特性を持つ充分に弾性的なテザーとして挙動するシリコーンコード(例えば直径0.5〜2mm)のような弾性テザーの周りに螺旋状に巻きつけられた非常に細いワイヤ(例えば直径50〜100ミクロン)とすることができる。
上記の装置は、開または閉ループで動作することができる(閉ループの例は、被験者が摂食し、胃酸が生成されているときに作動するような場合である)。さらに、装置はリモート充電(例えばコイル誘導)するように、または胃酸を利用して電気を発生するように構成することができる。装置は、将来使用するために余分なエネルギを蓄積する(装置本体内の)搭載電池またはコンデンサ、刺激パラメータを管理調整する搭載電子機器、現在のpH、食物の存在および組成のようなパラメータを検出するセンサとのインタフェースのみならず、体外から装置を制御することを可能にする無線通信能力をも有することができる。そのような機能は、組織侵食を生じることなく胃環境で持ちこたえることを可能にするために軟質コーティング(例えばショアA70以下のシリコーン)を設けることのできる、BION類似装置(BION‐Advanced Bionics Inc.)によって実行することができる。装置本体は、GI管における有無を確認するために、硫酸バリウムもしくは金属のような放射線不透過マーカ、またはRFIDユニットを含むことができる。能動RFIDユニットはセンサデータ(例えばpH、温度、圧力等)を伝達することもできる。
本発明のBION類似装置はまた腸に沿って植え込み、神経障害誘発便秘症のような場合に、腸収縮(蠕動)を整調するために使用することもできる。
代替的に、装置本体は電極として機能することができ、その場合、胃壁との接触により刺激がもたらされる。BION類似装置は、侵食を防止しながら組織試料採取(断続的組織接触)を確実にするように、一端を洞に定着させることができる。アンカまたはテザーはまた電極面として働くこともでき、それを介して電流または電荷が胃組織へ送達される。
幾つかの装置(装置本体およびテザー)のシステムは胃内の様々な場所に植え込んで、蠕動波を生成、抑制、または同調させるように働くことのできる装置本体またはテザーから提供される制御された電気インパルスを介して、胃壁の様々な場所の刺激を協調させるために使用することができる。そのような装置の制御は、装置本体の1つに配置された中央制御ユニットを介して、または体外制御ユニットを介して達成することができる。種々の装置は、有線または無線接続を介して、中央制御ユニットと相互通信および/または通信することができる。
本発明の装置はまた、組織を電気的に刺激するための幾つかの他のメカニズムを組み込むこともできる。例えば装置は、装置本体に配置可能でありかつテザー付着部位に配置された電源から電力を供給される電極を含むことができる。そのような電源は電池とすることができる。テザーは、電源によって生成された電流を、装置本体の表面に配置された電極に運ぶための絶縁ワイヤを含むことができる。装置本体は断続的に組織に接触するだけであるので、電流は周期的に組織に印加される。
GI管組織の電気的刺激は、内視鏡により導入される電極アンカまたはねじを使用して胃の粘膜、粘膜下組織、または筋肉層に埋め込まれた電極を用いて達成することができ、よって当該技術分野で公知の電極位置および刺激パラメータを用いて胃動性を変化(胃不全麻痺の場合は増強、または肥満症の場合は遅延)させるために使用することができる。本書に記載する装置は、内視鏡を用いて導入し植え込むことができ、既存の胃電気刺激装置に使用される開放性または腹腔鏡外科手技より耐容性が著しく高い。
装置本体はまた、環境状態(例えば酸放出)内部センサまたは外部コマンドの制御下で薬物を放出する薬物デポーとして機能するように構成することもできる。そのような装置本体は、例えばpH制御下でプロトンポンプ阻害剤(PPI)のような医薬の徐放のために使用することができる。放出することのできる代替的薬剤として、アトロピン、ガストリン、ニューロテンシン、モルヒネ、スマトリプタン、カルシウムチャネル遮断薬、または種々のメカニズムを介して胃排出を減速させることが知られている他の薬剤のような、胃排出を緩慢化する薬剤が挙げられる。早期満腹を引き起こすために、ホルモンCCKのような他のタイプの薬物を胃または小腸に放出することができる。装置本体はまた、医薬リザーバが使い尽くされた後、再装填するように構成することもできる。そのような再装填は数多くの方法で達成することができる(例えばリザーバとして働く装置本体から食道を介して鼻腔まで走る中空注入管、または代替的に、装置本体が磁石を含み、薬物で被覆されるが薬物を含有する鉄粒子のような磁性または常磁性粒子の形の薬物が経口的に提供される磁気結合)。
本発明の装置は、本書に記載する技術を用いて関心GI組織に、口から肛門までのGI管に沿った任意の位置で、または鼻咽頭、鼻腔、または鼻孔領域に定着される。
装置本体はまた、定着後に上述の注入管によって、または内蔵圧縮ガス源によって胃内の容積を占めかつ満腹を誘発するように膨張される膨張可能なバルーンとして構成することもできる。代替的に、膨張は、例えば米国特許第5005591号明細書に記載されているような浸透圧ポンプを用いて、胃環境からの水分の吸収を介して達成することができる。
本発明の装置10の2つの実施形態の1つの実施例を図4aに示す。胃腔内に植え込むように構成された図4bの装置本体12は、先細の端部を持つ中空円筒として形作られる。以下の実施例の節で、この装置本体およびその使用法についてさらに記載する。
組織および装置本体の両方への付着を可能にするために、テザーは2つの定着/付着端を含む。第1端は、組織の部分的または完全な穿通を介してテザーを組織に定着するように構成され、第2端はテザーを装置本体に付着するように構成される。
テザーの組織への付着は、テザーが挿入される部位における組織(例えば器官の壁の外面、または組織襞)に対するアンカの穿通および配置に依存する種々の定着構成を介して達成することができる。そのような定着は、テザーの第1端のT形材、平坦な円板、ボール、バスケット、フック、またはコイル構成によってもたらすことができる。テザーの端部は、装置本体に存在する軸力のため器官の組織に潜伏するように充分に小さい形状および大きさに、またはそのような力を充分に大きい面積に分散させてテザーの定着端の器官組織内への潜伏を防止するように充分大きい形状および大きさに設計することができる。さらなる実施形態では、組織を貫通しないテザーの端部は1つ以上の装置本体に付着させることもでき、それによって中空器官の同一領域で2つ以上の装置本体が1つのテザーで「ダンベル」構成に定着される。装置本体自体は組織内のテザーの前後運動を制限するように働くことができる。
装置本体へのテザーの付着は、体内付着に適用することができる一方、テザーと装置本体との間の確実な接続を維持することのできる幾つかの方法のいずれかを介して達成することができる。
そのような定着は、テザーにフックを設けかつ装置本体にループを設ける(またはその逆)フックおよびループ構成のような種々の結合器を介して、磁気付着、T形材、フック等の配置を介して、達成することができる。
好適なテザー定着構成の一例を図2a〜cに示す。この場合、テザー14には第1端に逆転防止要素16が設けられ、それはテザー挿入部位の組織に当接配置される。テザー14の第2端にはT形材定着要素18が取り付けられ、それはガイド(例えば溝付き針)を介して装置本体(この場合は装置本体内の中空空間)内に押し込むことができる。T形材の代替例として、ピグテールまたは偏平な螺旋状に事前形成され、送達のために送達針内部にまっすぐに押し込まれるニチノール要素がある。そのような定着は、装置本体12内に定着要素18を隔離しながら確実な付着をもたらし、こうしてアンカ要素18およびその縁部によって引き起こされることがあり得る潜在的な組織の損傷から組織を効果的に保護するので、有利である。実際、アンカ要素18は金属から作られることがあるが、本発明で組織と接触する唯一の材料は、図2a〜cに記載する通り、装置本体12(例えばシリコーン)、テザー14、および逆転防止要素16(例えばシリコーン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステル等)の材料であり、長期生体適合性を確実にし、かつ敏感な動的粘膜組織表面をこすり付ける金属のような硬質材料の浸食効果を最小化する。
装置本体12を器官の内腔内に定着するために使用する場合、組織定着は組織貫通定着として達成される。組織貫通定着は、テザーの組織アンカ側を体器官の内腔の外側に存在させる(経管腔的にまたは経壁的に送達させ、胃の外側に、座金要素の有無にかかわらず、漿膜に当接載置させる)か、または代替的に組織襞を貫通定着して内腔の内側に存在させる(図2および3に示す通り)ことを含む。
そのような定着を達成するために、幾つかの方法を使用することができる。中空器官の壁を通して内腔にテザーを送達することは、内視鏡、経皮、腹腔鏡、もしくは開放性外科手術による送達のみによって、または装置本体を内視鏡により送達する手技と組み合わせて達成することができる。組織襞を介する送達は、完全内視鏡手技により達成することができる。いずれの場合も、テザーの組織および装置本体への定着は、装置が最後は第1針穿通点の前方に配置される「前方定着」構成で、装置本体を組織およびテザーの第2端と整列させることが必要になる。内視鏡による定着方法については、下で、かつ後に続く実施例の節でさらに記載する。
図4a〜bは、どちらも本書で装置10と呼ぶ装置の2つの実施形態を示す。図4bでは、装置10は、先細の端部が閉じた中空円筒として形作られた装置本体12を含む。装置本体12は長さ25mm、直径10mmであり、平均壁厚が2mmの中空であり、成形技術を用いてシリコーンまたは別の生体適合性および/または耐酸/耐糜粥材料から作製される。装置本体12は、単一物体から集群物体(ぶどう状)に及ぶ種々の構成、および平滑、ピット状、凸凹、フィラメント状等の表面を含むことができる。装置本体12は端部が開放または密閉された球状または管状に形成することができる。装置10はさらに、逆転防止要素16および定着要素18が設けられた縫合糸(例えば2〜0単繊維ポリプロピレン縫合糸または0.3〜3mm径のシリコーンもしくはポリウレタンコード)を含む付着可能なテザー14を含む。逆転防止要素16はシリコーンで構成された平坦な円板(またはその潜込みもしくは侵食を最小化するために組織に対して1〜25平方mmの定着面を提供するのに適した任意の他の形状および材料)を含む一方、定着要素18は、完全にまたは部分的に金属(例えばステンレス鋼、チタン、ニチノール)または硬質ポリマで構成されたT形材要素を含む。定着の部位に応じて、テザー14は0.5〜10cmの長さにすることができる。好ましくはテザー14の長さは、装置10の定着後に組織と装置本体12との間の距離が少なくとも0.5cmになるように選択される。これは、装置本体12が胃内の所定の(例えば幽門管に限られた)領域内で動作し、しかも組織の侵食を導くおそれのある組織の単一領域との常時接触を行なわないように、充分な運動の自由をも有することを確実にする。発明者は実験から、テザーが短すぎて装置本体が組織に直接着座するように装置が定着された場合に、そのような侵食が発生することに注目した。装置の厳密な配置が決定的に重要ではない場合、組織と装置本体12との間の距離は2cm超とすることができる。テザーが伸縮自在である場合、中空器官内の任意の力が装置を一時的にかつ無害にその定着位置から押し離す傾向があるので、露出させる必要のある距離はそれよりさらに少なくてすむ。さらに、単一点定着は装置本体に掛かる力を一方向のみに―テザーに対して軸方向に―限定する。2つ以上のテザーまたは定着点を使用する場合、定着点の相対運動は装置本体に対し著しい応力を加え、結果的に生じる力ベクトルにより軸から引き離されるテザーによって組織の断裂のみならず、組織の侵食および/または潰瘍をも引き起こすことがあり得る。
装置10は少なくとも1つの装置本体12および1つのテザー14を含む。装置10の使用時に、テザー14の逆転防止要素16は組織表面に当接載置される。逆転防止要素16は第2装置本体12、テザー材料自体のループ、T形アンカ、コイル、縫合糸、ステープル、クリップ、円板、座金等を介して形成することができる。
図8a〜bは装置10の追加の実施形態を表わし、図8aに主要特徴を示し、図8bに装置10の典型的寸法(mm単位)を示す。図8a〜bに関連して、装置本体12は前テザー70、前ボール72、円板74、およびステム76を含む。前テザー70は、患者にシステム100を挿管した後、装置10の前部分を内視鏡68または針ガイド58に一時的に付着させて、装置10が逆方向に口側方向を向き続けることを可能にする。前テザー70はまた、小腸内に続き装置10を尾側方向に向けさせ、または後述するように静止状態で幽門を通過させ続ける、「沈子ライン」の一部として使用することもできる。
前ボール72は、装置を蠕動波と共に十二指腸に出入りさせるように働く。前ボール72はまた、幽門口80を部分的に遮断するようにも働く。前ボール72は十二指腸に維持され、幽門の前またはすぐ後に円板を配置させる。前ボール72はまた、洞、幽門、および十二指腸の機械受容器を刺激する物体としても働く。前ボール72は中空(例えば壁厚0.5mmであり、閉じ込められた空気で満たされる)とすることができ、それにより該ボールは粘膜の表面侵食を防止するように充分に軟質になり、かつ液体で満たされた洞内で浮揚するように充分な浮力を有し、直立したヒトでは上方向である幽門口の近接位置に留まる。前ボール72は、それに1〜10ニュートン、好ましくは2〜5ニュートンの横力が加えられたときに、その直径の半分に圧縮されるように設計される。前ボール72(および同じく円板74)のそのような容易な変形は、洞内での装置10の摩擦および粉砕中の粘膜の侵食を防止する。この目的のために、前ボール72は、固体か独立もしくは連続気泡フォームとしてかにかかわらず、ショアA5シリコーンのような非常に軟質のポリマで作製することもでき、それは、テザー14および定着要素18を作るために使用されるショアA60シリコーンのようなより硬質のポリマと接着されるか一体成形される。
ステム76は、ステムが幽門を通過する状態で装置の複数の安定な静止状態を可能にする。ステム76は軟質で変形可能であるが、それでも装置全体の幾何学的安定性をもたらすので、円板74はステム76の軸に対して垂直に維持され、それは装置10を胃壁から離しておくのに役立ち、装置10が順行波に捕捉されかつ幽門口80に押し付けられまたは押し込まれる機会が増大する。
1つ以上の円板74は、胃と十二指腸との間の非常に低い圧力差で生じる順行性食物輸送中に、幽門口80を部分的に遮断するのに役立つ。円板74は、洞内に存在し口側方向を向いているときに、逆推進粉砕波中に混合噴流を遮断するのにも役立つ。共通テザー14に沿ってまたは別個のテザー14に積み重ねられた複数の円板74は、装置10の内視鏡位置決め精度をプラスまたはマイナス数センチの範囲とすることができ、かつたとえ装置本体12が幽門内を前後に往復運動していても少なくとも1つの円板74が常に幽門口80に近接することを確実にする。円板74は、テザーの弾性によってそれが胃側で狭い幽門に対して押し上げられるか、それとも幽門の十二指腸側に引き戻されるかにかかわらず、流動を遮断するように働くことができる。幽門口を閉塞する円板74の部分は通路内に張り出すが、幽門組織の表面に当接載置された円板74の大部分によって部分的に支持もされる。円板74は直径を5〜40mm、好ましくは12〜25mmとすることができ、かつ反転を防止するために、支持要素の有無にかかわらず、偏平、円錐状、または略凹状とすることができる。
テザー14は、装置10を幽門口から0〜20cm、または好ましくは2〜10cm、またはより好ましくは3〜5cmの距離に弾性的に定着させ、装置本体12に幽門から0〜6cm以内で発生する高圧逆行性収縮波を口側方向に逃がすように充分な軸方向運動を可能にするのに役立つ。テザー14の遠位部0.5〜3cm、好ましくは1〜2cmは、送達装置50を用いて胃の粘膜下/筋/漿膜層に植え込まれるか、あるいはTアンカ等を用いて、組織を完全に貫通して器官の外面に定着される。
定着要素18は、剛性のためにバーベル型端部を持つ直径0.010″〜0.020″のステンレス鋼ワイヤ上に外側被覆された、例えば外径0.8mmのシリコーンTアンカとして作製することができる。定着要素は溝付きの18または19ゲージの送達用針の内部に嵌め込むことができる。
上述しかつ図8a〜bに示した装置10は、破断するまでにテザー14に沿って少なくとも2ニュートン、好ましくは5ニュートン、より好ましくは10ニュートン以上の張力に耐えることができる。5ニュートンの張力の下で、弾性テザー14は、材料の選択、材料の硬度、およびテザー14の直径によって長さが約100%ないし800%増大する。
組織定着は、ここでは組織貫通または組織内定着と分類される。組織内定着は、アンカおよびテザーの一部が組織内で静止する(例えば組織内コイルまたは逆とげにより定着される)ことを暗に示す。組織貫通定着は、アンカを管腔の外側に定着させること、またはアンカが管腔の内側に存在し、テザーの一部分だけが組織自体内に存在することを含む。組織貫通定着は図2、3、および13によって例示される。組織貫通定着は、内視鏡の作業チャネルで直接ビジュアルガイダンスを用いて針により達成することができる(図13参照)。代替的に、真空カップは組織貫通定着を支援することができる(図2および3参照)。
組織内および組織貫通定着の両方に適した組織アンカは、組織内に埋め込むかまたは組織に当接して出口部位に並置することのできるT形材またはマッシュルーム状要素を含むことができる。そのようなアンカを挿入する方法は、開放性外科手術、当該技術分野で公知でありそのような手技、例えば自然開口経胃的内視鏡手術(NOTES)のために開発された腹腔鏡または内視鏡手段を含む。
いずれの場合も、テザー14は、GI管の運動中に装置本体12およびテザー14に働く力に耐えることのできる確実な接続を確保する方法で、洞の組織に付着される。テザー14または逆転防止要素16は、胃または十二指腸それぞれの酸または胆汁環境で設定時間後に分解し分離するように設計することができる。このようにして、装置10は設定時間後に外れるように設計することができ、装置10またはその構成部品は無害でGI管を通過し、体内から取り出すことができる。
装置本体12は広範囲の生体適合性材料から作製することができる。単独でまたは互いに組み合わせて使用することのできる適切な材料の例として、ポリウレタンおよびポリプロピレンのようなポリマ、シリコーン、ラテックス、PTFE、ePTFE、SBS(ポリスチレン‐ポリブタジエン‐ポリスチレンまたはスチレン‐ブチレン‐スチレン)のような熱可塑性エラストマ、PEF、セラミックス、ニチノール、不動態化金属、合金等がある。
生物膜形成、カプセル化、侵食、および抗原反応を防止するための追加的コーティングを使用することもできる。先行技術には、そのような目的に使用することのできる材料の例が充実している[例えばBavejaら、Biomaterials. 2004 Sep;25(20):5003‐12またはSurfacine(商標)(www.surfacine.com)参照]。
ここでは医薬または薬学的活性剤を含むコーティングも想定される。活性剤の例として、CCK、グレリン、モチリン等のようなホルモンがあるが、それらに限定されない。代替的に、化学受容器(例えば脂肪または脂肪様物質、糖等)を刺激するコーティングも利用することができる。(例えば非分解性リンカを介して付着された)非剥離性コーティングは長期作用に好適である。
さらに、本発明の装置は、医薬、ホルモン、小分子、または他のペプチドのような薬学的活性剤のみならず、例として塩酸のような、十二指腸粘膜表面に接触したときに運動性を抑制することが知られている化学薬品のための、内視鏡により再充填可能なリザーバとすることができる。
装置本体12は、定着組織から切り離された場合にその全体が安全にGI管を通過することができるように、長さおよび直径が選択され、それによって幽門または小腸の閉塞のリスクが最小化される。装置本体12の静的直径(通常開位置のとき)が25mm(幽門口を通過できる物体の最大平均サイズ)より大きい場合、装置本体12は、直径25mm未満にまで容易に変形または圧潰することができ、したがって定着組織から切り離された場合にGI管を通過することができるように、非常に薄肉(例えば極薄壁中空ボール、円錐、または偏平薄肉シリコーン円板)になるように設計される。
中実または薄壁閉鎖中空物体の形状の装置本体の場合、包含容積(最大流体貯留構成に向き付けられたときに、装置本体がその中に包含することのできる流体の容量と定義される)は、装置本体の排水容積(浸漬された装置本体によって押し退けられる流体の容量と定義される)に略等しい。例えば直径2cmの閉鎖中空薄壁球体は、約4cm3の容積を包含し押し退ける。
しかし、開放構造の場合、包含容積はその外面のボリューメトリックエンベロープ(volumetric envelope)によって決定され、排水容積は単純に表面積に装置本体の厚さを乗算したものである。例えば図16bおよび16cに示された装置本体12の構成では、直径2cmの2つの半球形装置開放本体12は、合わせて最大で約4cm3の流体を包含することができる。両方の装置本体の総表面積は約18cm2であり、装置本体壁の厚さは約0.03cmであり、約0.5cm3の排水容積を導く。こうして、この構成の装置本体12の設計は、同一直径の中空球体の包含容積を達成することができるが、排水容積は中空球体の1/8にすぎない。流動遅滞は包含容積に関係し、テザーを組織から外植するために装置本体に働く力は、本書でさらに詳述するように排水容積に関係するので、これは重要である。
装置本体12の包含容積は典型的には、0cm3(収縮管腔によって圧潰されたとき)から30cm3(開存管腔でその通常開位置に展開されたとき)までの範囲から選択される。好ましくは、装置全体の排水容積は、蠕動波中に装置に加えられる力を最小化するために、4cm3未満である。そのような容積は、1〜4cmの長さおよび0.1〜3cmの直径を有する円筒状の形状に分散される。本書で想定される他の形状は、中空または中実の開放または閉鎖球形、楕円形(例えば卵形または魚雷形)、円板、立方体、三角形、円錐、傘、突出フィンガ、不定形等を含む。装置本体12の設計の目標は、大量胃排出を妨害する包含容積を最大化する一方、蠕動中、粉砕中、撹拌中、または植込みのために内視鏡によりGI管内に導入中に、装置本体12が受ける力の大きさに関係する排水容積を最小化することである。
種々の形状を1つ以上のテザー14上で並列または直列に接続することができる。洞、幽門、および/または十二指腸の粘膜組織に加えられる剪断力を最小化し、かつ装置本体12の周囲における胃石形成の可能性を最小化するために、装置本体12の表面は平滑であるが、組織をよりよく刺激するために潜在的に畝を立てることも好ましい。代替的に、装置本体12の表面を多孔性、ピット状とするか、または1つ以上のカップの形状に形成して、毛管力を介して装置表面に少しの糜粥を保持し、したがって糜粥の存在を感知しそれゆえに胃運動性を緩慢化させる化学センサの十二指腸における刺激を長引かせることができる。
装置本体12は、鋳造、トランスファまたは射出成形、押出し成形、機械加工等を含むがそれらに限らず、幾つかの周知の作製技術のいずれか1つを使用して作製することができる。
5〜100のショアA硬度範囲を有するシリコーンから作製された装置本体12は、その生体適合性、耐久性、および低い表面硬度のため、現在好適である。GI管の粘膜下層と接触する装置の全ての部分は、GI管によって装置に働く圧力および運動にもかかわらず、粘膜表面の侵食を生じないように充分な程度に屈曲、変形、および弾性伸縮するために充分軟質であることが好ましい。
装置本体12は、定着点に対して過度な運動が求められなければ、逆転防止要素16を介してGI組織に直接付着することができる。代替的に、テザー14の長さおよび組成は、装置10の意図される機能に従って選択される。テザー14の長さは0.5cmから700cmまでのどこかとすることができ、逆転防止16の付着部位および装置10の機能に大きく依存する。例えば、逆転防止要素16が大体50〜70cm長さのテザー14を用いて食道を介して鼻腔に付着される場合、装置本体12は幽門に到達することができる。幽門から空腸の端部に到達するためには、テザー14を約300cmの長さにする必要がある。
テザー14は一般的に軟弱かつ薄肉であり、相当の曲げ力または圧縮力に抵抗できず、かつ非弾性または弾性とすることができる。非弾性テザー14はポリマ(例えばポリエチレン、PTFE、ポリプロピレン、もしくはナイロン)または金属から作製することができる一方、弾性テザー14はシリコーン、ポリウレタン、ゴム、ラテックス等から作製することができる。弾性テザーは弾性的構成を持ちながら、しかも非弾性材料、例えばポリマ製のコイルから作ることができ、あるいはシリコーンのような弾性材料から作製することができる。弾性である第1部分および弾性ではない第2部分を有するテザーも本発明によって利用することができる。
本書で使用する場合、語句「弾性」、「弾性特性」、または「弾性コンプライアンス」は互換的に使用され、テザーまたはその一部分が引張り力の下で長さを可逆的に増大する能力を指す。そのような長さの増大は、破断するか塑性変形を受けるまで少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%とすることができる。テザーの弾性特性はテザーの構造、断面形状、および軸方向形状、ならびに/またはテザーの材料によって提供することができる。
テザーは、1つまたは幾つかの隣接部分を含む中空または中実の糸またはひも状構造とすることができる。中空の場合、テザーを介して装置本体12に/から流体またはガスを輸送することができる。テザーは、バンジーコードによく似たより小さい弾性繊維の撚りまたは編組セットから作ることができる。そのような編組デザインは細胞の内方成長および宿主組織へのよりよい統合を可能にする。独自の弾性プロファイルを提供するために、2つの隣接部分から構成されたテザーを使用することができ、1つの部分は弾性的に伸縮し、もう1つの部分は伸縮しない。または両方の部分が互いに異なる程度に伸縮する。本発明のアンカの構築を簡素化するために、複数部分テザー構成を使用することもできる。例えば定着要素およびテザーの第1部分は単一材料から成形し、接着、圧入、外側被覆等を介して、テザーの第2の弾性部分に付着することができる。異なる部分が異なる環境にさらされる場合、例えばテザーの第1部分が組織内に存在し、別の部分が管腔内に存在する場合にも、複数部分テザー構成を使用することができる。テザー材料は非弾性とすることができ、それでもなおテザーは弾性をもたらすように、例えば弾性コイル構造に構成することができる。例えばテザーは非弾性とし、非弾性材料により弾性効果をもたらすために、装置本体内の回転ばね式ドラムに巻回することができる。
テザー14は選択された硬度を有する材料から作ることができる。一般的に、テザーに長期間にわたって力が加えられる場合に、テザーが通る組織管をカット、侵食、または再造形することを回避するために、硬い材料より軟らかい材料の方が好ましい。例えばポリプロピレンはショアDスケールで約60のデュロメータ硬度を有し、長期緊張状態でチーズ削り器のように組織をカットまたは侵食し、(以下の実施例で記載するように)定着された装置の最終的な切離しを導くことがあり得る。しかし、シリコーンは典型的にはショアAスケールで約3〜70のデュロメータ硬度を有し、ポリウレタンはショアAスケールで約100を有する。Dスケールでショア60対Aスケールでショアの間の差違は、約300倍である。定性的には、これはヘルメットとゴムバンドとの間の差異である。したがって、低硬度材料(例えばAスケールで150以下またはDスケールで1以下)から作られたテザーが組織を「チーズ削り」、侵食、カット、または再造形する傾向はない。したがって、装置10の長期植込みを希望する場合、シリコーンおよびポリウレタンはテザー14の理想的な材料になる。テザー14、定着要素18、および装置本体12は、異なる材料または異なるショア硬度の同一材料から作ることができる。例えば図15a〜eで、テザー14および定着要素18の強度は最大化されるが、装置本体12は、GI管内で容易に変形し、かつ粘膜侵食またはテザー14に対する大きい軸力を生じないように充分軟質であるように、テザー14および定着要素18はシリコーンショア硬度A70とすることができ、かつ装置本体12はショア硬度A30とすることができる。
アンカ要素18はテザー14と同一材料から作ることができ、その場合、アンカ要素18の周囲の領域およびテザー14への接続は、溝付き送達針内にある間、薄い(例えば厚さ0.02ないし0.05mm)金属またはPTFE、ナイロン、もしくはポリウレタンのような硬質ポリマの永久または一時的外部シート、箔、または共形コーティングにより保護することができる。そのような保護層は、非常に軟質な材料、例えばシリコーンが送達手技中に溝付き針の潜在的に鋭利な側部によって切り傷を負いあるいはカットされることを防止する。シリコーンの切り傷は、引張り荷重の下で迅速に伝搬して完全な断裂になる。
好適な実施形態では、テザー14はシリコーン、ポリウレタン、または同等物のような高弾性の軟質材料から作られ、ゴムバンドのように伸張し、それによって装置10をその定着位置から引き裂くように働く力を最小化する。テザー14の典型的直径は、0.1mmから5mmまでのどこか、好ましくは1〜2mmとすることができる。
テザー14、逆転防止要素16、アンカ要素18、装置本体12、またはそれらのいずれかの間の接続は非吸収性とし、したがって永続することができる。代替的に、それらは一時的に(吸収性、酸感受性、融着性等)にすることができ、かつ設定された植込み時間後に分解し、かつ最終的に自動的にまたは外部からトリガされることにより装置の放出が行なわれるように設計することができる。
種々の構成の装置本体10およびテザー12をキットの形で提供することができる。各キットは、特定の大きさおよび形状のみならず特定の表面テクスチャでもある装置本体12、およびテザーの特定の長さ、直径、および弾性/非弾性特性のテザーを位置決めおよび送達装置と共に含むことができる。
テザー14の長さおよび装置本体12の大きさは、装置本体12が十二指腸内に存在するときに、ファータ乳頭への干渉または刺激を回避するために、それが十二指腸の最初の10cmを超えて、好ましくは最初の5cmを超えて遠位方向に移動しないように選択することが好ましい。装置本体12または沈子要素(下述の通り)が十二指腸の最初の5cmを超えて延びる場合、ファータ乳頭に触れてその領域の潜在的炎症を引き起こすことがないように、装置本体12または沈子要素をファータ乳頭の充分先に配置することが好ましい。
洞定着装置10を幽門の方向に向けさせておくかあるいは完全にまたは部分的に幽門を定常状態で通過させる力を小腸が加えることを可能にするために、十二指腸の最初の5cmを超えて続く装置本体12に「沈子要素」を付着させることが可能である。遠位端に直径5ないし20mmの中空または中実ボールを持つ例えば直径1mm、長さ5ないし20cmの薄いシリコーン管はそのような沈子要素の一例である。小腸の正常な蠕動力は沈子ラインを緊張状態に維持するように働き、それは装置本体12を尾側に引っ張り、それを逆行推進力に抵抗するように偏倚させる。代替的に、テザー14はGI管の部分に付着するか、またはGI管を通して幽門の下流に肛門まで延びて、テザー14を尾側方向に偏倚させることができる。
テザー14は、組織内または組織貫通定着を用いて、その近位端および遠位端の両方を組織に定着させることができる。このスキームは、GI管内の装置10の運動範囲がテザー14の2つの定着点の間の運動範囲によって制限されることを確実にする。そのような定着スキームは、縦一列に配置された、1つはテザー14の遠位端用、1つは近位端用の2つの送達ヘッドを有する送達装置によって実現することができる。テザー14の遠位端用の送達ヘッドは所望の部位に配置され、テザー14の遠位端は組織に定着される。次いで送達装置は再配置され、送達ヘッドはテザー14の近位端を所望の位置で組織に定着させる。送達装置はそのような構成で患者に1回だけ挿管する必要がある。例えば、テザー14の遠位端は腸(小腸または大腸)に位置し、近位端は胃に位置することができる。
アンカの位置、テザー14の長さ、ならびに装置本体12の形状および大きさのため、装置10またはその部分は、GI管内に存在する自然蠕動および逆流力のため、幽門を介して洞および十二指腸内でまたはそれらの間で往復動または運動し、こうして十二指腸、幽門、および洞の粘膜組織に断続的に接触する。
そのような断続的接触は、主としてGI管の運動(例えば洞および十二指腸の蠕動運動のみならず幽門の括約筋運動も)のみならず、洞から胃体へ、または洞から十二指腸への糜粥の流れ(逆推進力)、および胆汁の十二指腸から洞への逆流によっても影響される。洞から十二指腸への糜粥の流れは装置本体12またはその部分を十二指腸内に運ぶ一方、胆汁の十二指腸から洞内への逆行性流動は、装置本体12またはその部分を洞内に運ぶ。そのような前後往復動は、被験者が摂食しているときに、毎分2ないし3回発生することができる。理論に束縛されることなく、本発明者らは、そのような往復動は幽門、十二指腸、および/または洞に存在する受容器を活性化し、こうして摂食率および/または摂食量を低減させるという意見である。
さらなる実施形態では、装置10は、十二指腸に存在し十二指腸および幽門の粘膜組織に断続的に接触しかつ洞内に往復動しない装置本体12を含む。この構成の装置10では、テザー14は幽門、幽門洞、または十二指腸幽門組織(粘膜、粘膜下組織、および任意選択的に筋肉)に付着され、装置本体が十二指腸および幽門(十二指腸側)の壁に断続的に接触することができるように充分に長い。装置本体12はテザー14の寸法まで収縮させることができ、したがってGI組織とテザー14のみ(または複数の装置が存在する場合には複数のテザー)との接触は、被験者の摂食行動の所望の変化を生じるのに充分であろう。装置本体12はテザー14の漸次拡大、例えば直径1mmから始まり直径30mmまで増大する円錐管とすることができ、その遠位端は開放端であるか、中実または密閉中空とすることができる。
装置10はまた、特に胆汁が十二指腸から洞に流れる場合、幽門壁(十二指腸側)に背圧を加えることが可能になるように構成することもできることは理解されるであろう。十二指腸は通常食物粒子を含まず、したがってそのような圧力または固形物質の機械的刺激は、固形食物がようやく十二指腸に入ってきたという信号を生成し、次いで胃運動性一般を緩慢化させる信号伝達を駆動することができる。
さらなる実施形態では、装置本体12を含む装置10は洞に存在し、洞およびおそらく幽門の粘膜組織と断続的に接触し、テザー14の位置および長さのため、十二指腸に達することができない。この構成では、テザー14は洞の組織に付着され、装置本体が洞の壁のみならず幽門の壁(洞側および任意選択的に口)にも接触することができるだけとなるように充分に長い。
本発明はまた、幾つかの植込み装置を含み、各装置を洞‐十二指腸領域の特定の場所に別々に配置することができる構成を利用することもできることは理解されるであろう。例えば複数のそのような装置10は、管腔をまとめて閉塞するように、幽門口の周りに配置することができる。一実施形態では、各々が直径10mmの装置本体12を持つ4つの装置10インプラントは、完全開口時の直径が25mmの幽門の2/3を遮断する。
多装置構成の別の実施例は、各々が円板または球体のような体積占有要素として形成された装置本体12を含む2〜5つの装置10の構成を含む。各々の装置は、洞、幽門、または十二指腸における1つ以上の組織位置に個別に繋留することができる。複合装置の有効容積および表面積は植え込まれる装置の数と共に線形的に増大し、それはその刺激または流動遮断能力を増大させる一方、各個別装置10の大きさは最小限に維持され、胃への容易な導入、容易な定着を可能にし、各装置10に掛かる力を最小化し、かつ各装置10が定着された組織から切り離された場合に小腸を安全に通過するように各装置が充分に小さいことが確保される。一実施形態では、1つ以上の円板形装置本体12が幽門口の周りに配置されて、幽門を通過する流量を低減するための(例えば心臓三尖弁に類似した)リーフ弁を形成する。
上述した装置構成はテザー14を含むが、本書では装置本体12を組織に直接付着することも予想されることは理解されるであろう。そのような直接付着は、クリップ、ステープル、逆とげ、縫合等を用いて実現することができる。例えば図12a〜cに示す「幽門円板」は、逆とげ、鉗子、クリップ、または縫合糸の1つ以上により、幽門組織の胃側に直接付着することができる。そのような付着は装置本体12の回転を防止することができ、それは、図12a〜cに示す回転対称な装置本体12とは対照的に、幽門口の部分的遮断を生じる側に対し非対称に形作ることを可能にする。装置本体12の表面積を低減することによって、装置10に働く力はしたがって実質的に低減され、それは装置10をその定着位置から取り除こうとする力を低減させる。
開放性手術、腹腔鏡手術、および内視鏡手術を含め、装置10を植え込むための幾つかの方法が本書で予想される。
開放性手術法では、医師は完全切開を介して幽門洞領域にアクセスし、テザー14の端部16を洞または幽門組織に定着/縫合する。定着後に、医師は装置本体12を洞、幽門、または十二指腸領域内に配置し、胃および皮膚の切開を閉じる。
腹腔鏡法はほぼ同様であるが、唯一の大きい違いは、開放切開が3つ以上の小さい切開に置き換えられることであり、それを介して装置は、腹腔鏡装置を用いて所定の位置まで案内することができる。
腹腔鏡および内視鏡複合手技も使用することができる。腹腔鏡は、それが定着を希望する場所で胃の外面に衝突するように、導入および配置することができる。衝突は内視鏡を用いて胃の内側から観察することができ、内視鏡は装置を衝突位置に定着させるように操作される。腹腔鏡は次いで、胃の外面でアンカを操作する(例えばそれを胃内に戻すように案内する)ために、あるいは単純にアンカ部位に長期出血または他の合併症が無いことを確認するために使用することができる。代替的に、腹腔鏡は、胃の外面に定着要素18を残しながら、胃内腔の外側を介してテザー14を例えば遠位洞内に導入するために使用することができ、装置本体12は内視鏡手段を使用して胃の内側からテザー14に付着させることができる。
装置10を送達するために使用される方法に関係なく、装置10が配置された後、縫合、ステープル、クリップを使用して、あるいはテザー14の定着要素18を組織に通し、それを組織内に定着するか、組織の表面に着座する逆転防止要素16を設置または展開することによって、テザー14は粘膜/粘膜下組織、および任意選択的に筋肉に付着される。
上記の外科的方法はいずれも、2つの別個の手技を用いて達成することができる。最初の手技では、テザー14用のアンカが設置され、続く手技では、装置10が可逆的にまたは永久的にアンカ点に付着される。
上記の装置は、非弾性または弾性テザーを用いて胃組織に定着させることができる。好ましくは、本発明の装置は、弾性コンプライアンス用に構成されかつテザー14により組織管がカットされないように軟質である少なくとも1つのテザーを介して、胃組織に定着される。ヒトの組織は動的であり、組織の動きによって生じる力および緊張は、硬質または非コンプライントな縫合糸またはテザーが組織を切り裂きあるいは剥ぎ取るか、粘膜のような表面を侵食するのに充分に大きくなることがあり得る。これは、非コンプライアントな縫合糸またはテザーが組織の正常な動きを抑止しようとした場合に、またはそのような縫合糸またはテザーがそれ自体と組織との間の相対運動を不能にする形状である場合には、特に当てはまる。したがって、本発明で教示するコンプライアントな定着は、組織の自然な動きを抑止せず、したがってアンカの不具合および組織の侵食の機会を最小化するので、好適である。
装置本体の定着は、組織内定着または組織貫通定着能力を提供するのに適した、組織定着要素に付着される弾性テザー14を用いて達成される。例としてT形材構造、逆とげ、コイル、ピグテール構造(通常コイル状に巻かれ、無理やり引っ張られるか送達針に挿入されたときに直線化される)、傘、ボールもしくはバスケット(拡張可能、静的、中空、中実、またはワイヤ)、ねじ、オーガ、または永続的もしくは取外し可能のいずれに設計されるかに関係なく、組織内にまたは組織に当接して存在し、かつ組織に対して1つ以上の方向に加えられる力に対抗することのできる任意の他の構造がある。組織定着要素は金属、合金、ポリマ等を含め任意の材料から作製することができる。定着要素構造は本来、剛性、コンプライアント、または弾性とすることができる。定着要素は、アンカに加えられる力に対抗するために必要な剛性をもたらしながら、組織に対し軟質の非外傷性接触面を維持し、それによって組織の摩耗を最小化する材料の組合せから構築することができる。例えばT形材定着要素は、剛性プラスチックまたは金属棒もしくはワイヤをシリコーンで外側被覆して、シリコーン被覆クロスバーおよびシリコーン・テザー・ステムを有するT字形を形成することによって構築することができる。外側被覆された金属の使用はまた、定着要素に放射線不透過性をも提供し、こうして撮像技術を使用してそのアイデンティフィケーションを可能にする。代替的に、アンカ、テザー、および装置の本体の一部または全部が、製造中に、硫酸バリウムまたは小さい金属ボールもしくはワイヤ要素のような放射線不透過材料を含むことができる。定着要素の外面は、組織の入口穴における縁部の捕獲および送達針穿刺の抵抗増加を回避するために、ステムへの円滑な移行を行なうことが重要である。そのような抵抗は、内視鏡の近位端で長いプッシュロッドの遠隔端を押すことによって克服することは難しいことがあり得、針挿入中に大きい力は定着要素18をテザー14から分離させるおそれがある。したがって定着要素18およびテザー14を含む単一成形部品が好ましい。
定着要素の負荷容量は、構造、大きさ、および材料の選択の組合せによって決定される。そのような負荷容量は、定着の使用法および部位に従って定着要素内に設計することができることは理解されるであろう。
装置10は、GI管の組織に定着される装置本体12を含む。装置10の好適な構成では、テザー14には、組織貫通定着を可能にする定着要素18が設けられる。組織貫通定着を可能にするために、定着要素18および付着されたテザー14は胃内から胃壁組織またはGI括約筋(本書で後述する)を介して送達され、アンカ要素18は展開されて、胃の最外組織層(漿膜)、GI管の内腔の陥入組織襞の内腔表面、または幽門括約筋の十二指腸側または下部食道括約筋の胃側のような括約筋の裏側に並置される。組織に対する定着要素18の接触の表面積を増大するために、座金要素を使用することができる。
座金要素は、送達装置に装着されたときに一時的にかつ弾性的に互いに対して90度曲げられる2つの平行な表面から作ることもできる(例えば図16bの座金208を参照)。定着要素は座金208の第1表面を直角に穿通し、次いで送達装置から切り離された後、座金208の第2表面は平坦に折り畳まれ、座金208の下にある第1表面と平行に静止するフラップとして定着要素18を被覆し、こうして元の弛緩位置に戻る。このようにして、定着要素は座金の第1および第2表面の間に挟まれ、組織侵食または定着要素の分解を導くおそれのある粘膜表面の直接摩擦にさらされることがない。代替的に、定着要素が凸条より低く陥凹するように、座金要素の外周に沿って凸条を隆起させることができ、このようにして粘膜表面の直接摩擦が防止される。
座金は、定着要素18が組織内に埋入することを防止するために、組織に対して定着要素18の表面積を効果的に増大する中実、多孔性、またはメッシュ状材料から作ることができる。粘膜または粘膜下組織内へのそのような潜込みは、装置が胃の粘膜または粘膜下組織に直接配置された小さい定着要素(例えば直径1mm×長さ8mmのT形アンカ)により定着された場合に、ブタで発明者によって観察された。定着要素18の潜込みは、内視鏡によるその回収および胃からの取出しを不可能ではないとしても困難にし、テザーの両端が器官の内腔に現われる組織貫通定着に内在する完全可逆性の利点を損ねる。代替的に、より永続的な組織内定着の場合、定着要素18の組織内へのそのような潜込みは望ましい特徴であり、その場合座金を使用する必要は無い。
組織貫通定着は、その定着強度および完全な可逆性のために好適である。幾つかの組織定着デザインで実験しながら、本発明者らは、貫通T形材定着および弾性テザーを用いて(例えば胃壁、組織襞、または括約筋を介して)胃組織内に定着された装置が一貫した定着結果をもたらす一方で、組織穿通部位の組織の壊死および損傷を最小化することを発見した(この例として図11c〜dを参照)。
括約筋または組織襞を貫通する定着は、定着要素がGI管上に維持されるので、有利である。この特徴は、定着要素がテザーから切り離されたときにGI管内に放出され、回収するかあるいは無害に体内の外に通過することができることを確実にする。定着要素をGI管の内腔側に維持することは、単純に定着要素および付着されたテザーを胃から第1穴を通して外に送り出し、かつ第2穴を通して戻すことによって、胃壁定着により達成することもできる。これは、複合腹腔鏡/内視鏡手段を介して胃壁から組織襞を形成することによって、または網目状機能をもたらす装置を利用することによって、達成することができる。テザーは定着要素を用いて組織に定着することができ、あるいはテザーは節止め等を介して固定することができる。
テザーはまた、テザーおよび/または定着要素の望ましくない方向の動きを制限するために、テザー上にストッパ構造をも含むことができる。特に、網はアンカ要素18のような任意の物体を胃の漿膜面から引き離す傾向があることが本発明者によって発見されたので、このストッパ機能は重要である。胃内腔の内側にあるテザー14の部分上のストッパは、定着要素18に対する網の引張り力による胃の外側のテザーのさらなる移動を防止する。加えて、または代替的に、座金は、組織に当接配置されたアンカ(例えばT形アンカ)がテザーの引張り力の下で組織内に埋入され組織を侵食することを防止するために使用することができる。そのような座金の1つの構成を図3a〜cに示し、実施例の節でさらに説明する。
さらなる実施形態では、装置10は、一端を幽門口に近接して繋留された、事実上長さ1〜15cmの小さいスパゲッティ麺のような最高1000個までの装置本体12から構成される。各装置本体12は円形、楕円形、方形、長方形、三角形、または不規則形状の断面を有することができ、かつ幅、形状、および/または厚さがそれらの長さに沿って変動することもできる。装置本体12は中空とし、かつ一端を開放するか、あるいは密閉してガス、液体、またはゲルを充填してそれらの容積および/またはコンプライアンスをそれらの長さ全体または一部分に沿って増大させることができる。複数の装置本体12の利点は、各装置本体12に掛かる力が比較的小さく、したがって定着を浅く、おそらく粘膜下組織層のみにすることができ、したがって簡素化することができることである。さらに、アンカ18またはテザー14が破損した場合、装置10の機能を果たすのに充分な装置本体12が当該領域に維持される。遊離した装置本体12は消化器系を無害に通過する。さらに、幽門が開閉するにつれて、かつ幽門を通過する食物の支配的な軸流に基づいて、装置本体12が自由に拡散し再配列するので、この構成の装置10は食物粒子によって遮断されない。各装置本体が直径が2mmの開放端薄壁管であり、かつ最大幽門口の直径が平均して10mmであると仮定すると、数量約25個の装置本体12が幽門口を満たし、胃排出を遅延させる。
この特定の実施形態では、装置本体12は、胃側が密閉され、十二指腸側が開放され、胃組織および幽門によって容易に破砕可能であり、したがって後者を適切に密閉する、直径が数mm、長さが最大15cmまでの薄壁管である。軟質かつ圧潰可能であることによって、装置本体12は侵食を引き起こさない。管は、圧潰されないとき、かつ開いた幽門を通過するときに、内腔の断面積を塞ぎ、内腔の内側から幽門口を事実上バルク化し(bulk)、こうして幽門を通過する流動を部分的に閉塞する。管はそれらの遠位端をほとんどいつも十二指腸内に存在させるのに充分な長さとすることができ、それによって装置本体12が常に幽門を通過することを確実にする。装置本体12を形成する管は、流動を遮断するそれらの能力をさらに高めるために、層円板または円錐体をそれらに積み重ねることができる。
この実施形態における装置10の植込みは、幽門口の周りに放射状パターンに事前に組み立てられるか、さもなければ胃の内側に「マガジン」形式で供され、一度に1つずつ定着される、装置本体12の定着要素18を全部同時に幽門の近位組織内に押し込むことによって、内視鏡により達成することができる。後者の実施形態では、各々長さ2cm、直径2mmの25個の装置本体12は端と端をつなげて縦一列に、標準胃鏡の作業チャネル内に収まる例えば内径2.2mmおよび長さ0.5メートルの中空管内に収め、アンカ側を最初に作業チャネルの先端にして提示することができる。アンカ要素18は組織に固定され、次いで内視鏡は2センチ後退し、装置本体12が管から引き出され、アンカ要素18(例えば逆とげ)によって胃組織に繋留されたまま維持され、次の装置本体12が内視鏡の作業チャネルの尖端に提示され、充分な装置本体12が幽門領域内に送達されるまで、サイクルが繰り返される。代替的に、装置本体12の全部または一部分を、1つ以上のテザー14を介して、単一の定着要素18に付着させることができる。
位置決めおよび送達装置50ならびに装置10を備えたシステム100を示す図2a〜cおよび図3a〜cを参照する。送達装置50は、内視鏡68の端部に嵌り、かつ内部か外部かにかかわらずその作業チャネルの1つ以上と通信するように設計される。送達装置50はポリマまたは金属またはそれらの組合せから成形、機械加工、または組み立てることができる。送達装置50またはその一部分は剛性とするか、または代替的に、GI管内への挿入を容易にするために弾性とすることができる。送達装置50の前端は、GI管内を円滑に送達することができるように、丸みを付けて鈍端にすることが好ましい。
送達装置50は、内視鏡の外側をそれに沿ってまたは内視鏡の作業チャネル内を走る真空ホースに付着可能な真空導管54を通して加えられる真空を介して、器官組織82を組織襞として真空チャンバ52内に陥入させるように設計された真空チャンバ52を含む。真空チャンバ52は任意選択的に、真空チャンバ52の全長および全幅に沿って真空の均等な分布をもたらすために、真空チャンバ52の頂部または側部に沿って走る複数の真空導管54、チャネル、またはポートを含むことができる。そのようなチャネルまたは複数のポートは、組織が真空チャンバ内に吸引されたときに組織によって封止されず、したがって均等量の組織の真空チャンバ内への吸込み、および送達針206の穿通に対する強い反力がもたらされるが、それが無ければ、真空が真空チャンバ52の1つの領域にだけ送達された場合、真空チャンバ52の真空は容易に破られる。代替的に、真空チャンバ52の頂部および側部は、真空入口のどの一点も組織によって閉止させることなく、したがって真空チャンバ52の他の部分に到達する真空を遮断することなく、真空チャンバの容積に沿って真空力の均等な分布をもたらすために、スクリーンまたは多孔性メッシュ材によるチャネルまたは管から形成することができる。組織は針206の運動軸に対し垂直な方向で真空チャンバ52内に吸込まれる。
装置本体12に掛かる最大の力が逆転防止体16から装置本体12の方向に働き、テザー14をまっすぐに伸張させるときに、定着は最も安定し、侵食が起きる可能性は最も少ない。蠕動または洞の収縮波のような力が装置本体12に対して逆転防止体16の方向に働く場合、テザー14は折り畳まれ、応力が集中する180度の屈曲部で組織を侵食する傾向がある。したがって、定着スキームを選択する前に、装置10に掛かる最大の力の方向を分析することが重要である。システム100は上記の方向の両方の定着が可能である(図2および3でそれぞれ実証する通り)。テザー14は可撓性であり、装置本体12をどの方向でも移動させることができるが、図2a〜cに示すシステム100の第1実施形態は、テザー14が組織襞を介してまっすぐに伸張したときに、送達内視鏡から離れる方向(尾側方向)に繋留された装置本体12を有する。装置10に働く最大の力が送達内視鏡から離れる方向である場合、この定着スキームは最も有用である。定着を十二指腸内ではなく依然として胃組織内に維持しながら、装置本体12を定着部位から尾側方向にさらに離して、例えば幽門にできるだけ近くに配置することが重要である場合にも、この定着スキームは重要である。
図2a〜cおよび図5a〜cに示すこの第1実施形態では、送達装置50はさらに、摩擦力の下で装置本体12を保持するように構成された装置チャンバ56を含む。装置チャンバ56は、GI管を通過に通過できるように、かつ装置本体12を穿通する針の力に対する反力をも提供するように、遠位端が半球状に形成される。装置チャンバ56および真空チャンバ52は、装置チャンバ56内に存在する装置本体12が真空チャンバ52を封鎖し、組織を引きこむために必要な真空力を加えることを可能にするように構成される。さらに、真空チャンバ52および装置チャンバ56は、装置本体12をチャンバ56から押し退ける横力を装置本体に加えることなく、同一軸に沿って針が作業チャネルから真空チャンバ52、装置チャンバ56、および装置本体12を通して直線経路を移動することを可能にする。
送達装置はまた、送達針206が第1チャンバ52内に含まれる組織襞を介して、装置チャンバ56内に保持された装置本体12内に穿通することを可能にするように設計された、針ガイド58を含む。送達針206には溝が切られ、そこに定着要素18を挿入することができ、テザー14は針206の外側をそれと平行して組織内を引きずられる。
真空の力また真空チャンバ52の頂部に対する針穿通軸間の距離(針の高さ)は、真空チャンバ52内に保持された組織襞の針の穿通を任意の予め選択された組織の深さで、または任意の組織層で行なうことができるように、変化させることができる。例えば、胃の壁組織に定着する際に、送達針206の軸の高さは、テザー14が、胃内に戻って再合流する前に、粘膜下組織、粘膜組織を通過し、あるいは漿膜の外側まで通過するように、調整することができる。
送達針206内には、装置本体12内への送達が達成された後、定着要素18を放出するためのプランジャ(図示せず)が存在する。送達装置50の横に位置するポケット60は、逆転防止要素16を放出可能に保持するように設計される。
図5bは、送達装置50に装填された装置10を示す。テザー14および装置本体12は、手技前に送達装置50に別々に付着される。
装置10を配置しかつ定着するために、図5bに示す通りテザー14および装置本体12が装填された内視鏡装着送達装置50は、胃の内腔内に配置され、真空導管54に付着された真空ホースを介して真空に引かれる。ひとたび組織襞が真空チャンバ52内に吸い込まれると、定着要素18を担持する送達針206は組織襞を介して装置本体12内に穿通される。送達針206を介して送達されたプランジャは、定着要素18を送達針206から装置本体12の中空空間内に押し出すために使用される。真空は解除され、内視鏡は静かに引き戻されて、装置本体12を第2チャンバ56から解放し、かつ逆転防止要素16をポケット60から解放することを可能にする。図5cは、送達装置50から部分的に解放される過程にある装置本体12および逆転防止要素16を示す。この写真では、テザー14は織襞(分かり易くするために図示せず)を通り抜ける。送達装置50から解放された後、逆転防止要素16は、針進入口の部位で逆転防止体として機能し、それによって装置10を組織内に効果的に定着させるために、組織に当接して静止する。
以下の実施例1は、内視鏡搭載送達装置50を用いた雌ブタの胃内への装置10の送達を記載する。以下の実施例2は、同一内視鏡搭載送達装置50を用いた肥満ヒト患者の胃内への装置10の送達を記載する。
図3a〜c、9a〜b、および10a〜dに示す第2実施形態では、送達装置50は、図8a〜bの実施形態に示す通り、装置10を送達するように設計される。さらに、逆推進研磨洞収縮波中に胃に口側方向の強い力が存在することが実施例2の過程で本発明者によって発見された通り、定着は、装置本体12が送達内視鏡の方向(口側方向)を向くように行なわれる。従来の通念では、胃は食物を尾側方向に押し進めるが、それにもかかわらず洞内の物体による最大限の力は、幽門から洞に向かう方向の食物の逆推進研磨中の口方向の力であるので、この発見は直観的なものではない。したがって、装置本体12を口側方向に向けさせる定着方向を選択したのは、応力が集中して屈曲部位に侵食を生じさせる180度折り返されたテザー14ではなく、直線状のテザー14に最大限の力を作用させるためである。
図9aおよび10a〜dは、内視鏡68の作業チャネルの外側を走る針ガイド58を含む、送達装置50のこの第2実施形態の特徴を示す。真空チャンバ52は、真空が従来の方法で内視鏡68のトップハンドル上のボタンを介して内視鏡検査医によって制御されるように、短い管を介して内視鏡68の作業チャネルに接続される。
代替的に、真空チャンバ52は、内視鏡68の作業チャネルを他の器具のために空けておくため、または内視鏡の標準水/真空制御を使用する内視鏡レンズのクリーニングを強化するために内視鏡68の外側をそれと平行に走る外管を介して、真空ポンプに接続することができる。この場合、送達装置50は内視鏡に完全に外嵌し、オペレータの良好な視野が得られるように、内視鏡の前に充分離して配置される。送達装置50は、挿管を容易にするために内視鏡68に対する送達装置50の制限された角形成を可能にする可撓性アタッチメントを用いて、内視鏡68の前に付着することができる。
さらなる実施形態では、送達装置50は挿管することができ、その位置は内視鏡68とは別個に制御される。換言すると、送達装置50は、GI管における適切な位置決めを可能にするために、内視鏡と全く同様に縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ制御を持つことができる。送達装置50の位置は、事前または事後に挿管されかつ送達装置50と平行に走行しかつその背後の短い距離からそれを観察する、内視鏡を使用して確認することができる。代替的に、送達装置50は、別個の内視鏡を必要とすることなく、完全に独立した装置として動作するために、それに直接組み込まれた光源およびカメラのような可視化手段を有することができる。
送達装置50はまた、装置本体12の一部である円板74を配置するため、および座金208のためのポケット60をも有する。図9bは、送達装置50がいかに光源を遮断せず、かつ内視鏡の視野の25%超を遮断しないかを実証する、ヒトの胃内の送達装置50のオペレータの内視鏡観察図を示す。それは胃内の適切な定着点の位置決めを非常に容易にする。送達装置50は内視鏡68の先端から3cm延びるだけであり、幅1.3cmおよび高さ1cmの最大断面寸法を有し、オーバチューブを使用することなく挿管を容易かつ安全にする。図9bはまた、送達装置50の硬質部分の遠位先端の先に延び、5mm毎にマークが付いた距離マーカ83の内視鏡観察図をも示す。それは、内視鏡のオペレータが胃内で幽門口80のような標認点に対して送達装置50を適切に位置決めすることを可能にする。距離マーカ83は、それを内視鏡の作業チャネルと平行に内視鏡の近位端まで走らせることによって、オペレータが直接的な視覚的評価に基づいて距離マーカを所望の目的物まで延長させ、次いで内視鏡の操作ハンドルに隣接する距離マーカ上のマーキングを利用して、カップまたは内視鏡の先端からの距離を読み取ることを容易にするために、挿管中に後退可能とし、次いで延長可能とすることができる。こうして、距離マーカが送達装置50の先端と一致するとき、内視鏡のオペレータのハンドルの領域の読取線の横に「0mm」マークが来る。距離マーカが30mm前進して幽門口に接触するとき、内視鏡のオペレータのハンドルの領域の読取線の横に「30mm」マークが来る。距離マーカは、内視鏡の長さに延びかつその近位端のみで表示または較正することのできる、プラスチックまたは金属のワイヤとすることができ、それを延長および後退させるために使用されるのもハンドルとすることができる。内視鏡画像の2次元的性質のため、距離マーカ83の助け無しに胃内で距離を測ることは非常に難しい。距離マーカ83が無ければ、内視鏡検査医は別個の手技で内視鏡定規装置を導入し、染料注入を用いて、または生検鉗子により小さい出血傷口を形成することによって、胃内の定着領域をマーキングすることが必要になる。
送達装置50はさらに、1回のユーザ動作により針206をその動程の端まで押し進め、同じユーザ動作を持続することにより内部プッシュロッドを押し込み、アンカ要素18を針206から押し出すハンドルをさらに含む。ハンドルアセンブリ内の戻しばねは、針206がまだ組織に係合されている間に内視鏡が変位することにより組織が損傷することがないように、ハンドルが解放されたときに針が完全かつ自動的に後退することを確実にする。
送達装置50はさらにアンカ解放チャンバ84を含み、そこに針206が進入し、アンカ要素18は座金208の背後で針206から外に押し出される。中空アンカ解放チャンバ84は、アンカ要素18の解放中に針がGI管腔の内部にあることを確実にする。アンカ解放チャンバ84が無ければ、針206はその動程の端で組織内に位置するか、あるいは組織の外部に位置することさえがあり、意図しない場所でのアンカ要素18の解放を導くおそれがある。したがってアンカ解放チャンバ84は、GI管腔内部に定義された保護空間を提供する。そこでアンカ要素18は針206から出現し、座金208の背後で係合するように回転し、次いで送達装置50からアンカ解放チャンバ84の近位部分で溝85を介して放出される。アンカ解放チャンバ84はまた、図19a〜bの装置50に示す通り、その2mm以下の幅および数mmの深さのため、アンカ要素18が針206から放出される領域への組織の陥入ができない陥凹オープンフェース(open‐faced)溝とすることもできる。解放チャンバ84のオープンフェース溝はまた、解放チャンバ84への組織の陥入を防止する一方で、同時にアンカ要素18が展開しかつ任意選択的にプロセス中に解放チャンバ84からカバリングを剥ぎ取ることは防止しないように、可撓性の切離し可能なカバリングにより被覆することもできる。
送達装置50における装置10の装填についてさらに詳述するために、図10a〜dを参照する。図10aでは、装置10の最後部の円板74が、送達装置50のポケット60に固定される。患者にシステム100を挿管した直後、装置10を逆方向に口側方向に向けておくために、前テザー70は一時的に内視鏡68または針ガイド58に付着される。座金208も同様に送達装置50のポケット60内に導入される。今や組織に定着されたテザー14は、装置10を送達装置50から取り外すために反力を提供するので、送達装置50に対するこれら3つ全部の接続部(円板74、前テザー70、および座金208)は、定着手技の前に変位しないように充分に強固であるが、内視鏡68が定着手技後に組織から引き離された後、切り離すのに充分に脆弱であるように、摩擦嵌めまたは機械的融着とすることができる。送達装置50または内視鏡68のさらなる特徴(例えば、ポケット、クリップ、溝、ラッチ、磁気クラスプ、機械的融着、ベルクロ(商標)等)の1つは、植込み前に、装置10を適位置に確実に維持するように協働することができるが、それでもなお植込み後に切離し可能である。装置10の任意の特徴を送達装置50から切り離す力は、中断された植込み手技において装置の挿管または取外し中の偶発的な切離しを防止するために、内視鏡軸に沿った方向に高いが、植込み手技が実行された後、内視鏡軸に垂直な方向には比較的低い。各拘束要素の法線方向の切離し力は、テザー14またはそれが定着された組織を過度に引っ張ることなく、または内視鏡68を植込み部位から取り出す以外に、解放機構の作動のようなさらなる介入または追加措置を内視鏡検査医が要求することなく、装置10の切離しを容易かつ安全にするために、10ニュートン、好ましくは3ニュートン、より好ましくは1ニュートンを超えるべきではない。何らかの理由で植込み手技を実行することなくGI管から内視鏡68を取り出す場合、装置10は、内視鏡68の取出し中にも、送達装置50に取り付けられたまま維持され、装置10が最初に適切に定着されることなくGI管腔で送達装置50から切り離されるように設計される。代替的に、解放機構は送達装置50から装置10を解放するために、内視鏡68の近位ハンドルから操作することができる。
図10bに関連して、定着要素18は18ゲージの送達針206の溝内に押し込まれたT形アンカであり、それは真空チャンバ52を介して部分的に押し出されたが、座金208またはアンカ解放チャンバ84に到達する前の状態で示される。
図10cは、座金208を穿通してアンカ解放チャンバ84に進入した、最も遠い動程にある送達針206を示す。テザー14は送達針206と平行に、かつ真空チャンバ52内に吸込まれた組織襞(分かり易くするために組織は図示せず)を貫通して走る。アンカ要素18はアンカ解放チャンバ84で送達針206から押し出される。送達針は針ガイド58内に後退し、真空はこの時点で停止される。組織襞が真空チャンバ52から分離すると、それはテザー14を同伴し、それによりアンカ解放チャンバ84の溝85を介してアンカ要素18が引き出され、かつ円板74および座金208がポケット60から引き出される。
図10dは、送達装置50から切り離されたときの装置10を示し、座金208は定着主義の直後に送達装置50に対して適切に整列して定着要素18に当接して配置される。装置10は内視鏡68の方向(口側方向)を向いていることに注目されたい。それは、胃内の口側方向(逆行性)の蠕動または収縮波が、テザー14を直線状に伸張させ、かつ座金208を組織にしっかりと当接着座させるように作用することを意味する。装置本体12に作用する胃内の尾側方向(順行性)の蠕動または収縮波は、テザー14をそれ自体に重ねるように折り返させる。
以下の実施例3は、この第2実施形態に係る内視鏡搭載送達装置50を用いた雌ブタの胃内への装置10の送達について記載する。
図12a〜cに示すさらなる実施形態では、装置本体12は、直径が約15mmであり、中心部の厚さ0.5mmからその外周の厚さ0.2mmまで漸減する偏平な円板(または代替的にボウルもしくは球形の要素)である。円板は長さ約10mmおよび直径1mmのテザー14に接続され、該テザーは次に長さ8mmおよび直径0.9mmの定着要素18に接続される。図12aは装置10を等角図で示し、図12bは装置10を側面図で示す。図12cは、装置本体12が幽門口80を部分的に閉塞するように意図された位置にある装置10を示す。テザー14は幽門筋を貫通して走り、アンカ要素18は幽門括約筋の十二指腸側に、前述の通り組織に直接または座金(図示せず)上に載置される。装置10は完全にシリコーン、ポリウレタン、または他の軟質ポリマから作ることでき、したがって幽門が開閉し、蠕動および食物粉砕中に幽門管が変形するときに、侵食を生じない。幽門口の遮断の程度は、消化の食物排出段階における幽門の直径、装置本体12を形成する円板の直径、および幽門口80の外縁からのテザー14の距離の関数である。後者の2つのパラメータは、装置本体12の適切な大きさの選択、および送達装置50における定着カップまたは定着チャンバの深さを介して制御可能である。
図13a〜cは、装置10を幽門括約筋に送達するように構成された送達装置50の追加的実施形態を示す。図13aにおいて、送達装置50は内視鏡68に搭載され、幽門から数センチメートル以内に運ばれ、そこで幽門までの距離が直接目視を用いるか、または距離マーカ83(図示せず)を用いて測定される。
図13bに示す通り、送達装置50は次いで、内視鏡68の作業チャネルの外側またはその中を走りかつそこを介して内視鏡オペレータによって患者の体外から操作されるプッシャ要素87を用いて、内視鏡68の作業チャネルから押し出される。プッシャ要素87は送達装置50を軸方向に入出するように並進させ、かつ/またはそれを内視鏡68に対して回転させることができる。送達装置50は、挿管に対する抵抗を最小化するために内視鏡の寸法からの全体的な横方向の延長を最小化する方向に向けられ、または内視鏡オペレータの視野の遮蔽を最小化するように向けられ、次いで所定の位置に近づいたときに、関心対象の目標組織に対して送達装置50を向き付けるように再び回転させることができる。プッシャ要素87の並進または回転と共に、上下および左右の動きの標準的内視鏡制御を用いて、送達装置50は、内視鏡オペレータが直接ビジュアルガイダンスを用いることによって、定着チャンバが幽門リッジ(pylorus ridge)を跨ぐように配置することができる。送達装置50を内視鏡68から数センチ離すように並進させることにより、内視鏡オペレータは送達装置50および洞/幽門の両方をその視野内に捉えることが可能になる。針ガイド58は、内視鏡68の外側をそれと平行に患者の体外の針操作ハンドルまで走ることができる。この実施形態では、幽門リッジは解剖学的に非常に明瞭に画定されるため、直接ビジュアルガイダンスを用いて跨設することが容易であるので、送達装置50は真空源または真空チャンバを必要としない。テザー14と幽門口80の縁部との間の距離は、定着チャンバの頂部と送達針206の軸との間の距離によって制御される。この実施形態の送達装置50は、幽門リッジを適切に跨ぐために、正面から見たときに例えば厚さ数mmの薄いプロファイアルを有することができる。図13bに示す通り、ひとたび配置されると、送達針206は幽門組織を穿通し、定着要素18およびテザー14(図示せず)を幽門リッジの向こう側に運ぶ。挿管および排出後に、患者体内に押し込まれるかまたは引き出される装置の長さを最小化するために、送達装置50は後退して内視鏡68に接近する。
図13cは、装置本体12が幽門口80を部分的に遮断し、テザー14が幽門組織を貫通して走り、定着要素18が幽門の十二指腸側に配置された状態で、幽門に近接して配置された図12a〜cに示す実施形態に係る装置10の切欠き断面図を示す。食物が胃から排出しようとすると、装置本体12は幽門口80の胃側に押し付けられて、フラップ弁の形の開口を部分的に遮断し、胃排出の遅延および早期満腹を導く。
代替的実施形態では、装置本体12は幽門口80の十二指腸側に配置することができ、食物の排出はテザー14を緊張させる。このようにして装置本体12は十二指腸から胃への胆汁の逆流を阻止する。
さらなる実施形態では、第2装置本体12は定着要素18と幽門組織の十二指腸側との間に配置され、それにより胃および十二指腸側の両方における幽門口の部分的閉塞を導くことができ、それは胃排出を遅延させ、かつ十二指腸から胃への胆汁逆流も阻止する。
図12a〜cに基づく追加的実施形態では、装置本体12は、偏平な円板に対し垂直に10ないし30mm延びる1つ以上の偏平な要素をも有する。このようにして、幽門が完全に開き、かつ幽門の壁が消える(すなわち幽門が十二指腸に通じる管腔と区別不能になる)と、偏平な円板は胃腔の表面上に平坦に横たわり、垂直腔内に延び、流動を部分的に遮断する。追加的要素は、この影響を増大するために、円板から90度以外の角度で出現することができる。
さらなる実施形態では、装置本体12は、管腔に垂直または平行のいずれかであるときに、糜粥の流動を効果的に遮断することのできるボウル状要素の形を取ることができる。さらに別の実施形態では、装置本体12は、幽門に隣接する胃ポリープの影響を厳密に模倣する、直径が10〜30mmの球状要素の形を取ることができる。そのような球状要素は(例えば図17a〜cに示した装置本体12の開口端中空球形実施形態のように)中実、中空および密閉、または中空および開口とすることができる。開口球形構成の場合、装置本体12は幽門管の容積を占有するが、非常に破砕し易くもあるので、それを十二指腸内に押し込もうとする蠕動波に対して抵抗を示さない。蠕動波は、装置本体12を前方に押し進めるというよりむしろ、それを破砕するように作用する。
さらに別の実施形態では、装置本体12は、幽門口80に隣接するテザー14無しで、前述の通り組織内定着のために内視鏡の作業チャネルを介して直接送達された単純な逆とげ、クリップ、または縫合要素を使用して、所定の位置に設置することができる。
図14a〜bに示すさらなる実施形態では、装置本体12は、中心をステム76および前ボール72に接続されかつ外周をテザー14および定着要素18に接続された、直径約16mmおよび厚さ0.5mmの偏平な円板74を含む。図14aは装置10を等角図で示し、図14bは、円板74または要素75が幽門口80を部分的に遮断するように、装置10の意図された位置を示す関連生体構造上に重ね合わされた装置を側面図で示す。テザー14は幽門筋を貫通して走り、アンカ要素18は前述の通り幽門括約筋の十二指腸側で組織上に直接または座金(図示せず)上に載置される。ステム76および前ボール72は通常十二指腸(幽門口80の左側)にあり、円板74は幽門の胃側(幽門口80の右側)にある。ステム76および前ボール72は、特に装置10がフラップ弁として働き、胃内容物の十二指腸への排出を部分的に阻止する胃排出段階中に、円板74を幽門口80に対して整列および偏倚させるように働く。前ボール72は充分に大きいサイズにするか、または通常の滞留時間を越えて、糜粥の一部を十二指腸で2つの円板の間に維持するように働く円板74と同様の前方偏平円板に置き換えることができる。十二指腸における糜粥の存在のこの延長は、前述の通り、満腹フィードバック信号を患者に送り、かつ/または胃排出を緩慢化するように作用する。ステム76および前ボール72は時折胃に逆流することがあり得るが、胃の通常蠕動または順行性収縮波のため、最終的に十二指腸に逆戻り移送される。装置10は完全にシリコーン、ポリウレタン、または他の軟質ポリマから作ることでき、したがって幽門が開閉し、蠕動および食物粉砕中に幽門管が変形するときに、侵食を生じない幽門口の遮断の程度は、消化の食物排出段階の幽門の直径、円板74の直径、およびテザー14幽門口80の外縁からのテザー14の距離の関数である。後者の2つのパラメータは、円板74の適切な大きさの選択および送達装置50内の定着カップまたは定着チャンバの深さを介して制御可能である。
図12a〜cの実施形態の1つと同様に、円板74は円板74に対して斜めに突出する追加的部材75を持つことができる。胃排出の特定の段階中に幽門が消えたときに、円板74が胃腔内に横たわった場合に、1つ以上の要素75が胃腔内に突出し、流動を部分的に閉塞する。図12a〜cに記載した実施例の装置本体12の実施形態と矛盾しない、装置本体12の追加的実施形態を予想することができる。
図15a〜eに示すさらなる実施形態では、装置10は、この実施形態では補強ウェブ94を持つ「くらげ」、「パラシュート」、または「傘」の形状に作られた1つ以上の装置本体12を含む。装置本体12は非常に圧潰し易く、その全体を例えば厚さ0.2ないし2mmのシリコーンで作ることができる。装置本体12のリムまたはウェブ94のようなオーバモールド要素は、より厚いまたはより硬質のポリマまたはニチノールのような弾性金属で作ることができる。装置本体12の形状および材料は、装置本体12を1cm平方未満の断面積になるまで容易に圧潰することを可能にするが、図15aに示す開放状態では、1.5〜10cm平方、好ましくは約4〜8cm平方の断面積である。図15bは、定着要素18の取付け場所、テザー14、および逆転防止要素16を含め、装置10の他の部分を示す。図15cは、内視鏡68に組み付けられた送達装置50が幽門口80にわずかに近接して適切に配置され、組織82が真空チャンバ52内に吸い込まれようとしている状態を、ヒトの胃の写真にオーバレイして示す。図15dは、順行性蠕動中に十二指腸球90にある装置本体12を示す。ここで装置本体12は杓子またはブレーキまたは貯留要素として糜粥を捕捉するように働き、蠕動波毎にテザー14に沿ってより遠位の十二指腸92内に延長する。波が通過すると、装置本体12は小腸内でその静止状態に戻り、その過程で、波により捕捉された糜粥の一部を戻す。図15eは、装置本体12が幽門を介して洞内に戻ったときの装置本体12の位置を示す。この位置で、装置本体12は狭まる洞中の逆行流動を少なくとも部分的に遮断するように働き、それにより食物の混合、撹拌、および最終的に糜粥としての十二指腸への排出を妨げる。
図16a〜cに示すさらなる実施形態では、装置10は複数の装置本体12から構成される。図16aにおいて、各装置本体12は厚さ0.3mmのショアA50シリコーンから、共通ステム16および共通テザー14に沿って一列に並べられた直径18mmの中空円錐体の形に作られる。各装置本体12は独立して、糜粥の流れを遮断し、かつテザー14およびステム16の弾性のため、糜粥を捕捉しかつ近位方向に戻すように働く。装置10の定着場所は、定着要素18および座金208の位置によって示される。装置本体12は適切な数量とし、テザー14がその静止長のときに、装置本体が小腸、十二指腸92、十二指腸球90、幽門口80、もしくは洞、またはそれらの任意の組合せ内にのみ存在するように配置することができる。図16bは、装置本体12が抗力の結果としてそれ自体の上に折り返されるのを防止するウェブ94付きの2つの装置本体12を持つ装置10を示す。ウェブ94は、装置本体12の外径20mmの通常開いた外周が、この場合は、細長い楕円形に圧潰される前に約0.01〜0.50ニュートン、好ましくは0.02〜0.2ニュートン、より好ましくは0.03〜0.1ニュートンの力に抵抗することのできる、直径0.7mmのシリコーンのビーズである外周リムの弾性によって維持されるときに、緊張状態で働く必要があるだけである。ウェブ94は中実壁状要素ではなく、ひも状要素とすることができる。2つのウェブ94要素が互いに180度離して使用される場合(例えば図16b)、装置本体12は依然としてウェブ94に対して偏平になるように容易に圧潰することができる。3つ以上のウェブ94要素が使用される場合(例えば図15a)、装置本体12の圧潰を妨害しないように、それらは可撓性(例えば非常に薄い、またはひも状要素)にすべきである。大きさの低下と共に圧潰に対する抵抗が著しく増大する発泡体要素とは対照的に、非多孔性装置本体12は、最小限の力によりほぼ零の包含容積を達成することができ、かつ糜粥を長期間貯留(それは細菌または菌類が繁殖する表面をもたらすおそれがある)せず、胃石の蓄積を導くおそれのある繊維の付着もない。図16cは、胃に配置された図16bの装置10を示し、1つの装置本体12は十二指腸に存在し、もう1つは幽門洞に存在する。
装置10の機能は、以下の計算を用いて理解することができる(イヌのGI系に基づいているが、ヒトの場合と同様であると想定される)。2〜3mlのボーラスを小腸内で最高12cm/秒伝搬させるために、小腸は水約20〜50インチ(0.5〜1.25ニュートン/cm2)の蠕動圧力を生成することができる。
イヌのビデオ蛍光観察研究でノンカロリー非粘性液体を使用すると、洞、幽門、および十二指腸は弛緩し、排出は急速である。ヒトでは、これは直径約2.5cmの最小幽門口を暗示し、流動は胃体および洞の非閉塞波の胃緊張により加えられる圧力によって制御される。十二指腸は弛緩性であり、弛緩するので流動に抵抗しない。しかし、粘性カロリー食を消費すると、十二指腸、幽門、および幽門洞は緊張が高まり、実質的に狭くなる。したがって直径2cmの遮断要素は、胃のカロリー内容物の排出を効果的に妨害する。
しかし、生体構造が非常に動的であること、糜粥の小腸への流出および小腸を通過する流出を支配するボトルネックおよび制御点が洞、幽門、および十二指腸であることから動的に移動すること、ならびにこれらの要素間の距離洞排出サイクルの過程中に一定ではないことを前提として、弾性テザー14上の2つ以上の装置本体12を、常に胃排出を支配するボトルネック領域の近傍に存在するように展開することは、有利であろう。
装置に加えられる力は主に2種類がある。約0.015ニュートン/cm2の圧力による糜粥の胃排出順行性バルクフロー推進力、および最高1.25ニュートン/cm2までの蠕動力である。糜粥の順行性推進力に関して、「開いたパラシュート」の形の2つの直径2cmの装置本体12(総開放表面積は12cm2)を想定すると、0.015ニュートン/cm2の圧力による胃のバルクフロー排出は、実験により求められた直径1mmの弾性シリコーンテザーの600グラムの破断力よりはるかに低い、0.18ニュートンまたは18グラム重量の最大力を発生する。
蠕動力に関して、同一要素は1.25ニュートン/cm2の最大蠕動圧力に耐えることができなければならない。「開いたパラシュート」の形の直径2cmの同じ2つの装置本体12は、同じく装置10のテザー14によって許容される600グラムの最大力よりはるかに低い2.5ニュートンまたは250グラム重量の線形力に変換される、蠕動力によって加えられる半径方向の圧力にさらされたときに、今度は2cm2の総断面積を持つ「閉じたパラシュート」構成に圧潰される。装置本体12が圧潰可能でなかった場合、蠕動力はテザー14の破壊強度より高い7.5ニュートンまたは750グラムとなり、あるいは控えめに言ってもテザー14の周りの組織の構造変化および組織からのその最終的な外植の確率が増大する。
図16a〜cの実施形態では、装置本体12を構成する円錐体が偏平に圧縮されたときに、装置10全体は0.2〜4立方センチメートルの間、好ましくは1〜2立方センチメートルの間の容積を有し、この最小容積形状で、自然弾性および装置10を構成する単数または複数の材料の幾何学的形状によってもたらされるものを除き、容積変化(送達装置50ポケット60内の弾性折畳みを除く)、膨張、膨潤、または他の活性化手段の必要なく、機能ユニットとして体内に導入される。GI管内に日常的に存在する間に、装置10は、有意の抵抗力を用いることなく、この最小包含容積まで(その排水容積に至るまで)弾性的に圧潰され、ひとたび圧潰または粉砕力が通過すると、元の形状に戻ることができる。この意味で、装置10はGI管内で有意の容積を占めることはなく、むしろ十二指腸および胃における糜粥の流動および/または食物の粉砕をそれぞれ妨げるように働くだけである。
発明者による実験によって明らかになったように、装置10の設計についての一般的な考察として、装置10および特に装置本体12は、蠕動抗力および結果的に生じるテザーおよびアンカに対する力を最小化するように充分に小さくかつ軟質にすること(容積、表面積、および圧潰性)と、それにもかかわらず適切な生理学的効果を達成するように充分に大きくすることとの間のバランスを達成しなければならない。例えば、適切に構成されたパラシュート形の装置本体12は、一方向の流体の流動を遅らせることに大きい効果を持つが、それにもかかわらず蠕動運動中の筋肉の収縮がそのような装置本体そのものを容易に圧潰することができるように設計される。順行方向のバルクフローは実際にパラシュート形装置本体12を「膨張させる」ように作用し、それによって装置本体を開放し続け、流動を遅らせる効果を最大にする。したがって、構造的剛性をほとんど必要とすることなく、開いた管腔内のバルクフローに抵抗しているときに、流動に抗して開いたときのパラシュート形装置本体12の有効容積は大きくなり、(例えば直径20mmの半球形パラシュートは2000立方ミリメートルの包含容積を有する)が、それでもなお蠕動が作用することのできる有効または排水容積は、装置本体12が600平方ミリメートルの半円形面積に偏平に折り畳まれたときに非常に小さくなる。他方、胃の筋肉は直径20mmの球形を把持し、かつ装置10をその定着位置から取り除く傾向のある蠕動力を加えることが容易になる。
非常に薄肉のパラシュート型要素を含む装置本体12によって胃排出に抵抗するという概念は、直観的に明白なことではなく、主として排出期中の胃体と十二指腸との間のわずかな圧力差のため、胃排出がバルクフローとして発生するという観察結果に基づいているが、洞粉砕、またはMMCの第III期中の管腔閉塞性収縮、または嘔吐のような蠕動駆動事象のような蠕動駆動事象(装置10が胃内で受ける最も高い力である)は、装置10の最小圧潰容積に作用する。これら2つの動作モード(排出を遮断する拡張形状と装置本体12に作用する蠕動力を最小化する圧潰形状との間の弾性復元)は、周期的パターンで連続的に行なわれ、したがって装置本体12要素が開閉構成間の切替を行なう弾力性または能力は、装置10の設計の重要な部分である。
装置10の適切な設計における別のパラメータは、弾性テザーの反力に抗して装置本体12を3〜4cmを超えて変位させるために必要な力が、装置本体12をその意図された変形範囲を越えて変形または反転させるために必要な力より低いことを確実にする。例えば装置本体12が尾側を向いた中空円錐体である場合、円垂体が口側を向くようにそれを反転させるために必要な力は、蠕動波または圧力誘発流動内で円垂体3〜4cm変位させる力より大きくしなければならない。図16bのウェブ94は、装置本体12の反転に対してそのような抵抗をもたらす。このようにして、装置本体12は流動中に糜粥を遠位方向に移動させ、糜粥をそのデッドボリュームに貯蔵するために杓子または貯留要素として働き、そのような変位に必要なエネルギを弾性テザーに貯蔵し、次いで蠕動が通過するかあるいは圧力誘発流動が停止すると装置本体12は、糜粥を近位方向に戻し、弾性テザーはその弛緩位置に戻る。装置本体12がこれらの力による変形に抵抗するのにちょうど充分な強さになるように装置本体を設計することによって、それが蠕動中に組織によって圧潰されたときに蠕動牽引力によって把持されず、かついかなる形の組織侵食も管腔に生じないように、充分に圧潰可能とすることができる。代替的に、装置本体12は糜粥の流動エネルギを吸収し、かつ糜粥の一部を口側方向に戻すように、それ自体弾性とすることができる。さらに、蠕動によって圧潰されたときに、装置本体12は事実上容積零まで圧潰し、捕獲された糜粥を開いた装置本体12によって画定された包含容積内から一掃し、したがってそれ自体を事実上掃除し、装置本体12内の糜粥または他の物質の長期堆積を防止する。
図17a〜cに示すさらなる実施形態では、装置10は開口(中空)球形装置本体12から構成される。装置本体12の直径、その前部開口98の大きさ、その壁の厚さ、テザー14の長さおよび直径、ならびに胃内の定着要素18の場所は全て、本書に記載する全ての装置10の構成に全体的にまたは部分的に適用される実験で発見された制約条件の厳しいリストに適合させるために、実験により決定された。
1.装置本体12は開き、かつ圧潰した形での容易な内視鏡送達を可能にし、組織侵食および装置本体12の定着要素18からの過剰延長を防止するために洞の粉砕力に対する低抵抗を可能にし、前部開口98を介して蠕動力によって圧潰されたときに装置本体12の胃または十二指腸の内容物を一掃すべく、1N以下の半径方向の力により1立方センチメートル未満の体積まで完全に圧潰可能でなければならない。
2.装置本体12は、装置本体12が十二指腸と洞との間を往復してこれらの領域の化学受容器を刺激するときに、糜粥をすくい上げかつ胃内容物を十二指腸に送り出し、かつその逆を行なうように、充分に大きい前部開口(例えば直径1cm以上)を持つ必要がある。上記開口の大きさは食物粒子によって目詰まりする傾向も無い。さらに、開いた装置本体12はそれ自体の内部に充分な空気を取り込んで、装置10を浮揚させ、かつ幽門口の近傍に留まり、それによって幽門口をより効果的に遮断し、往復動して十二指腸への出入を可能にする見込みが高い。
3.材料の選択およびジオメトリの結果として、低圧バルクフロー胃排出事象中にその自然球形状態を取り、かつ0.5〜32立方センチメートル、好ましくは2〜6立方センチメートルの容積占有要素として働き、幽門洞、胃側もしくは十二指腸側からの幽門口、十二指腸球、または近位十二指腸を部分的に遮断するように、装置本体12は充分な大きさおよび外方向弾力性(例えば、装置本体を圧潰状態から球形のショアA60シリコーンから作られた壁厚0.5〜1.5mm、外径10〜40mm、好ましくは20〜25mmの中空球体に復元しようとする0.03N以上の力)を持つ必要がある。遮断は、GI管腔の断面の一部分を物理的に塞ぐことによって、または弾性テザー14によって装置本体12に加えられ、次いで関心対象の組織、例えば幽門口80の十二指腸側に伝達される穏やかな圧力によって可能である。糜粥横断装置本体12は、テザー14の張力に抗してそれを最初に変位させ、こうして胃排出に対する抵抗を高めなければならない。GI管の圧力は胃排出中には充分に低いので、装置本体12に掛かる力は、それを圧潰させるのに充分でない(圧潰力は0.1〜10Nの間、好ましくは0.5〜2Nの間である)。同時に、上に示した大きさの装置本体12は充分に小さいので、(弛緩状態、または変形状態、または圧潰状態のいずれかで)幽門口を通り抜け、かつそれが定着されていた組織から切り離された場合、伝播性筋放電群蠕動波の第III期中にGI管を介して無害に除去される。さらに、上に明記した形状および大きさの装置本体12は、洞内で固形物として扱われるのに充分な容積を占有し、洞に固形物が存在するときに実験で観察された胃排出の遅延をトリガし、それによって胃排出を遅延させ、早期満腹を引き起こす。
4.装置10は、装置10に繊維が蓄積し、長い間に胃石が形成されるのを防止するために、鋭利な縁部または多孔質表面を持たないことが好ましい(例えば装置本体12とテザー14との間の遷移は漸進的かつ平滑であるようにすべきである)。
5.テザー14は、胃で、特に洞領域で日常的に遭遇する力である1〜20N、好ましくは2〜10Nの軸力を加える結果として、最高400%までの伸張および歪みを可能にするように、1〜10cmの間の長さ、好ましくは3〜6cmの間の長さとし、0.5〜2mmの間の直径、好ましくは1〜1.5mmの間の直径とし、弾性材料(例えばシリコーンまたはポリウレタン)から作るようにすべきである。
6.胃内の定着位置は、装置本体10が幽門管に存在し、かつ優勢な力に基づいて幽門口を通って十二指腸と遠位洞との間で可逆的かつ弾性的に往復動することができることを確実にするために、幽門口から0.5〜10cmの間とすべきである。
したがって胃排出、GI生体構造、GI系と異物との間の相互作用、および機械設計を取り巻くプロセスに関連するので、装置10は発明者による意義深い実験の成果である。上記制限は全て、インビボ実験でなかったら経験的に発見される見込みが無かった設計制約を狭めることにつながった。
上記とは対照的に、先行技術「流量低減要素」(例えばWO2006060049に記載されているもの)は、GI管に対して固定されるように設計される。それは、糜粥の流動が直接流動抵抗(閉塞)および/または摩擦(エネルギ散逸)を通して妨害されることを意味する。固定流量低減要素の周りに強制される流動は、十二指腸の壁に対して半径方向の力を加えるように、かつ流量低減要素を迂回するのに充分な大きさの直径までそれを構造変化させるように作用する(そのような構造変化の例については図18を参照されたい)。対照的に、本発明の装置本体12は半径方向の剛性をほとんど持たないので、装置本体12またはその周りの流動は、充分な半径方向の力を加えて十二指腸組織を構造変化させることができない。
ビデオ蛍光観察による胃排出研究に基づいて、ノンカロリー液体は、栄養固形食によって生じる糜粥と比較して、胃から弛緩した小腸(直径20〜30mm)までより速く排出される。装置本体12の要素は、脱水症および胃の膨満を防止するために、しかし固形栄養食の排出中に起こるように小腸管腔がより小さい(直径10〜20mm)場合には、糜粥の流動をより完全に遮断するために、弛緩した小腸の液体の自由な流動を著しく妨害しないような大きさに形成される。
さらに、テザー14は装置本体12がGI管内を設定距離にわたって糜粥と移動し、かつ管腔内の糜粥の流動を妨害するために、蠕動エネルギを弾性的に貯蔵することを可能にする。糜粥ボーラスを分離セクションに区切ることによって、装置本体12は、栄養含有食の消化後に小腸内に存在する前後蠕動運動で糜粥を混合することをも抑制する。そのような混合は、糜粥を胆汁および他の膵液と混合するために不可欠である。混合の欠如は栄養吸収の効率を低下させる。先行技術の装置とは対照的に、本発明の弾性繋留は、装置本体12とGI管との間の相対的軸方向運動を可能にし、それによって糜粥のボーラスを装置本体12の要素間で区切り、それは混合効率を低下させ、テザー14が弛緩したときに逆流力をもたらし、小腸内で糜粥を逆流させる。
さらなる実施形態では、装置10はアパーチャが貫通する遮断要素の形の装置本体12を含むことができる。例えば装置本体12は、装置10を介して小腸の遠位部に送り出される糜粥の量を制限するために、十二指腸に配置される直径45mmの開口端、および小端部の直径3〜15mmのアパーチャを持つ尾側を向いた漏斗とすることができる。この実施形態の装置10の定着および繋留は、本書に記載する技術のいずれかを介して達成することができる。装置10は共通テザーに沿って複数のそのような装置本体12を持つことができる。
さらなる実施形態では、装置10は、栄養素の吸収を抑制する胃および/または小腸内の1つ以上のスリーブ、または糜粥の流動に対する抵抗をもたらすために遠位側の直径に対して近位側の直径がより大きいスリーブの形の装置本体12を含むことができる。そのような装置10は、栄養管と同様の送達管を用いて、圧潰状態で口または鼻咽頭を介して完全に送達することができる。テザー14は弾性または非弾性とすることができ食道、鼻咽頭、鼻腔、または鼻孔領域に定着することができる。そのような定着を用いると、装置本体はアプリケータまたは小腸の蠕動運動を使用して適切な位置に簡単に送達することができるので、内視鏡は不要である。
上述の通り、胃スリーブの形の装置本体12を持つ装置10は、本書に記載する組織内または組織貫通定着技術を使用して、胃に定着することができる。装置本体12は十二指腸内に存在し、幽門口80を通過する弾性または非弾性の1つ以上のテザー14を介して、定着要素18に接続することができる。このようにして、十二指腸球内の半径方向に拡張可能な定着リングの半径方向の力に依存する先行技術の装置とは対照的に、本発明の装置本体12は、消化の様々な段階中に日常的に発生する十二指腸の管腔閉塞収縮が可能となるように、半径方向の剛性をずっと低くすることができ、圧潰可能とすることができる。過度の半径方向の剛性は、十二指腸で先行技術の装置の定着リングの周囲に、最終的に自然生体構造を変化させる構造変化を引き起こし、かつ完全には可逆的でない処置を導く。装置本体12のスリーブの開口は、それ自体の弾性力で開くのに足る剛性を有するだけでよく(例えば1.5mm径シリコーンの45mm径Oリング)、定着用逆とげを組織に着座させることのできる法線力をもたらすほど剛性にする必要はない。さらに、装置本体12を構成するスリーブの近位部分は、スリーブの開口を常に管腔に向けさせるに足る剛性を有し、したがってそれを押し退けて開口を横向きにしようとする力に抵抗する、長さが約20〜50mmのシリコーンカフとすることができる。テザー14(またはスリーブ開口の外周に接続されたテザーの複数の要素)は幽門口80を介して胃内に延び、吹流しのひもが吹流しを膨張させ、風の方向を指し続けるのによく似て、同じくスリーブを開き続け、管腔の軸方向を向き続けさせるように働く。さらに、軸方向を向いたテザーを利用する本発明のアンカ方法は、組織圧縮を通して軸方向を向いた力に効率的に抵抗するアンカ(例えば胃組織を押圧する逆転防止要素16)に依存するものであって、先行技術で行なわれるように、組織内に部分的に突出しかつ蠕動力によって横方向に引きずられる逆とげの半径方向の力を介してではなく、それは事実上外傷および慢性的な組織損傷の原因となる。後者の定着スキームが有効であるためには、逆とげが常に組織に対し法線力をもたらさなければならない。そのような力は最終的に組織の構造変化および拡張を引き起こし、次いでそれは悪循環でさらに法線力を低下させ、それが定着リングの緩められた直径まで組織を膨張させ(すなわちリングはもはや外向き半径方向の力をもたらさない)、したがって定着強度の喪失、および永久に膨張した十二指腸、またはおそらく十二指腸穿孔さえも引き起こす。
装置本体12は、スリーブの形を取るか、あるいは本書に記載するいずれかの他の実施形態の形を取るかにかかわらず、蠕動中の十二指腸球または小腸の圧縮に抵抗できるようにすることなく、弛緩した十二指腸球または小腸の外周を弾性的にまたは穏やかに封止する大きさに形成することができる。代替的に、装置本体12の最大直径は、十二指腸球または小腸の最大直径未満とすることができ、したがって部分閉塞または糜粥からのバイパスとして働き、摂食行動のより穏やかでより漸減的な変化を導く。先行技術のスリーブ(例えばUS5820584)は、管腔の内周全体を定着する必要があり、したがって糜粥の全流動に対して作用する。
さらなる実施形態では、装置本体は、消化された食物の全部または一部分を食道から直接小腸に移送し、それによって胃を迂回するために、近位開口を下部食道括約筋の下、中、または上に配置するスリーブとすることができる。そのような装置は、弾性または非弾性テザーを使用して、あるいはテザーを食道から上部食道、中咽頭、口腔、鼻咽頭、鼻腔、鼻中隔、または鼻孔領域の定着部位まで通すことによって、下部食道括約筋に定着させることができる。
本発明の装置本体は経口的に送達することができ、テザーは中咽頭で、経鼻的に導入され、次いで鼻腔、鼻中隔、または鼻孔領域にテザーを定着させることを可能にするフックから引き出すことができる。
テザー14は、装置本体12の位置を小腸内に見ることができない場合であっても、テザー14上のマークを幽門口80のような既知の解剖学的標認点に関連付けることによって推測することができるように、マークを付けることができる。さらに、テザー14の長さは、従来の手段または内視鏡手段を使用して植え込まれた後で、修正または調整することができる。
装置本体12またはその一部分は、それらの大きさを変化させるために膨張可能にすることができる。注入口は胃または鼻咽頭の定着部位にすることができ、中空テザー14は装置本体12の内外に流体を運搬することができる。
送達装置50は、適切な大きさの装置10を実時間で選択するために、GI管腔の直径を測定するように、内視鏡の作業チャネルを通り作業チャネルの軸から90度の角度で出現する、予成形ワイヤの測定ループを含むことができる。
胃定着および被験者の摂食行動の変化における本発明の装置およびシステムの使用は現在好適であるが、本発明の装置10のみならず送達装置50も例えば下部食道括約筋(LES)を通過する逆流を防止または低減するように設計された装置本体を送達することを含め、他の目的に使用することができ、したがって胃食道逆流症(GERD)に治療に使用することができる。
そのような装置本体は、装置本体12について説明したように、GERD治療に使用するように変更された適切な送達装置50に装填することのできる、平坦な円板、円垂体、または任意の他の形状に形成することができる。例えばGERD防止装置10のテザーの下端は、送達装置50を使用してLESの真下の胃組織に付着させることができ、テザー14の上端は高い位置にある食道、中咽頭、鼻咽頭、口腔、鼻腔、または鼻中隔に付着させることができる。高い位置での定着は、装置本体12が蠕動のために下方に移動することを防止する。低い位置での定着は、おくびまたは嘔吐のため装置本体12が食道を通って上方に戻ることを防止する。1つ以上の円錐体または円筒体の形の装置本体12は、装置本体12がLESを横切るように、下方の定着点の真上でテザー14に付着させることができる。以下の実施例7は、ブタのGI管におけるGERD装置の定着についてさらに記載する。
本発明の特定の実施形態を個別に提示するか、あるいは特定のシステムに組み入れたが、装置または関連位置決めおよび送達システムの全ての個別要素は複数回、種々の構成でモジュール方式で本発明の全ての実施形態に提示することができる。
本明細書で使用される用語「約」は±10%を示す。
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
上記説明とともに本発明を非限定的な様式で例示する以下の実施例を参照されたい。
実施例1
非弾性定着を用いたブタの洞定着胃装置
図5a〜cに示したシステム100を使用して、体重40キロの3頭の生きているブタに装置10を植え込んだ。ブタに麻酔をし、送達装置50を取り付けたOlympus GIF130胃鏡を利用して、図4bに示すアンカ装置10をブタの遠位洞に送達した。送達装置50は、取り付けられた真空ホース(内視鏡の外側をそれに沿って走る)から引いた真空を介して壁組織を把持するための真空チャンバ52と、中空装置本体12を保持するための装置チャンバ56とを含む。送達装置50は、組織貫通要素(送達針206)が胃鏡の作業チャネルを介して送達され、かつ真空チャンバ52に保持された組織襞を介して、この場合は丸みを帯びた端部および被包された中空部分を持つシリコーン円筒体である装置本体12内に穿通することができるように構成される。送達装置50は胃鏡に取り付けられた光源およびカメラを完全に遮断しないように設計され、したがってそれは、真空チャンバ52内に陥入する組織を含む、処置の明瞭な画像をユーザに提供する。
装置本体12は、摩擦力を介して、送達装置の前部で装置チャンバ56内に固定される。2ニュートンの力は、装置本体12を内視鏡の軸線に垂直な方向に装置チャンバ56から外に摺動させるのに充分である。テザー14に付着された定着要素18(この場合はT形アンカ)は、送達針206に形成された溝内に固定される。送達針206は胃鏡の作業チャネル内に配置される一方、逆転防止要素16は送達装置50のサイドポケット内に固定される。0.5ニュートンの力は、逆転防止要素16をポケット60から外に摺動させるのに充分である。
2〜0単繊維ポリプロピレン縫合材料から作られ、テザー14の一端に直径8mm×厚さ1mmのシリコーン逆転防止要素16、他端に長さ6mm、直径21Gの金属T形材定着要素18が取り付けられたテザー14を使用して、装置10を雌ブタの胃の洞壁領域に定着した。
麻酔したブタの口から食道を介して胃内にシステム100を誘導し、洞の幽門付近に配置した。真空を使用して壁組織の一部を真空チャンバ52内に引き込んだ。ひとたび壁組織襞が真空チャンバ52を完全に満たすと、直接ビジュアルガイダンスの下で壁組織襞に送達針206を押し通した。定着要素18および付着されたテザー14を、壁組織を介して装置本体12内に前進させた。内部プランジャ(図示せず)を押し、それによってT形材定着要素18を送達針206から装置本体12内の中空空間内に展開させた。送達針206を後退させて、T形材定着要素18を装置本体12の内側の内部座面に固定されたままにした。真空を解除し、胃鏡を組織から取り出し、装置本体12(図5cに示す)を装置チャンバ56から解放し、逆転防止要素16をポケット60から解放した。
上記の処置を各ブタに対し複数回繰返した。図6aは、1頭のブタの胃に定着され、少なくとも8週間合併症の無い状態で胃に存在した、5つのそのような装置の内視鏡観察図を示す。
標準内視鏡の作業チャネルに導入された標準縫合糸カッタを使用して、図に示された装置の1つを内視鏡的に取り出した。テザー14はテザー14の装置本体内への進入点付近で切断し、次いで切り離された装置本体12、テザー14、および逆転防止要素16を、内視鏡で導入した標準鉗子およびバスケットアクセサリにより、ブタの口から別々に取り出した。こうして、異物、縫合糸、またはアンカ要素を動物の体内に残すことなく、装置10を内視鏡手段により完全に取り出し、縫合によって形成された組織路はその日のうちに治癒した。装置10の全ての部品は、それらが自力で切り離される場合、それらが全て安全に幽門を通過することができるような大きさに形成され(直径2.5cm以下の物体はそれを通過する)、無害で排泄物中に排出される。
装置を装着している動物の1頭を8週間の期間後に犠牲にし、定着部位の周囲(当該部位を含む)の組織を採取し(図6b)、分析した。粘膜および筋層に認識できる組織変化は観察されず、上記の処置を用いた長期定着が目に見えるほどの侵食、組織反応、または他の悪影響を生じないことを示した。
実施例2
ヒト患者の洞定着胃装置
図5a〜cに示したシステム100を使用して、装置10を2人のヒト患者の洞内に植え込んだ。処置前に患者1は体重120キロ(BMI35.1)であり、患者2は体重137キロ(BMI35.7)であった。患者を鎮静させ、送達装置50を取り付けたOlympus GIF130胃鏡を利用して、図4bに示したアンカ装置10を患者の遠位洞に送達した。上記の実施例1に従って処置の残りを実行した。患者1では、装置10の定着部位は幽門から約9cm離れており、患者2では幽門から約5cm離れていた。
図7aは、患者の1人の遠位洞に定着された装置10を示し、逆転防止要素16、テザー14、装置本体12、および幽門口80が全部見える。図7bは幽門口80に接近する装置本体12を示す。図7cは幽門口80を部分的に遮断する装置本体12を示す。図7dは幽門口80を完全に遮断する装置本体12を示す。図7eは、幽門口80を部分的に通過する(そしてその過程でそれを完全に遮断する)装置本体12を示し、テザー14は装置本体12の前進運動を抑止しようとしている。図7eは、いかにして装置10の最大部分、すなわち装置本体12が幽門口を完全に通過して、テザー14および逆転防止要素16によってそうすることが抑制されず、十二指腸内に続くように構成されるかを明瞭に示す。図7fは、さらなる順行方向の運動を教示のテザー14によって抑制された、幽門口80の直後ろの十二指腸球内の装置本体12を示す。消化および蠕動の過程で、装置本体12は日常的に位置7a、7b、7c、7d、7e、および7fから前後に往復動し、それによって胃/十二指腸組織と断続的に接触し、幽門口を部分的にかつ断続的に閉塞し、胃排出の遅延および早期満腹を引き起こす。
両患者は処置後1日以内に痛みを感じず、早期満腹および食物の摂食する部分が少なくなり、かつ摂食速度が遅くなる一方で、満腹感が長く維持されることを報告した。患者1は植え込まれた装置10を9週間維持し、その時点で内視鏡により取り出した。患者1はこの期間に6キロ減量し、最終BMIは33.3であった。患者2は10週間後に無傷の装置10をトイレで発見したが、この期間に13キロ減量し、最終BMIは32.3であった。
追跡内視鏡検査では、両患者とも胃組織の損傷を示す持続的徴候が見られず、送達装置50を用いた装置10の植込みが容易かつ安全であることが示された。
患者2における装置10の紛失から、発明者は、ポリプロピレン製のテザー14が胃組織を侵食したことを学習した。図8に示す装置10の第2実施形態は、ポリプロピレンよりずっと軟質かつ弾性であり、したがって胃組織を侵食しそうにないシリコーン製のテザー14を有し、したがって現在の実施例に記載する装置10より長く植え込むように設計される。図8に示す装置10の植込みは次の実施例で説明する。
実施例3
弾性定着を使用したブタの洞定着胃装置
図9a〜bおよび図10a〜dに示したシステム100を使用して、体重40キロの3頭の生きているブタの洞内に装置10を植え込んだ。ブタに麻酔をし、送達装置50を取り付けたOlympus GIF130胃鏡を利用して、図8a〜bに示すアンカ装置10をブタの遠位洞に送達した。装置10は完全にショアA60シリコーンから作られ、直径8mm、壁厚0.5mmの中空前ボール、円板間の直径1.5mmのステム、直径1.2mmのテザー、および長さ1mm、シリコーンの鋳造中にワイヤを鋳型の中心に維持するために両端に直径0.9mmのステンレス鋼スペーサを持つ長さ8mm直径0.25mmのステンレス鋼ワイヤにオーバモールドされた直径0.9mmのシリコーンT形アンカを持つ。
送達装置50は、内視鏡の作業チャネル内から引いた真空を介して壁組織を把持するための真空チャンバ52と、装置本体12の一部である円板74を保持するポケット60とを含む。送達装置50は、組織貫通要素(送達針206)が内視鏡68と平行に走る外部針ガイド58を介して送達され、かつ真空チャンバ52に保持される組織襞および座金208を穿通することができるように構成される。送達装置50は、胃鏡に取り付けられた光源およびカメラを遮断しないように設計され、したがってそれは、幽門口80に重ね合わされた距離マーカ83を含む、処置の明瞭な画像(全視野の75%超)をユーザに提供する。
装置本体12は摩擦力を介してポケット60内に固定され、2ニュートンの法線力は装置10を送達装置50の外に摺動させるのに充分である。テザー14に付着された定着要素18(この場合はT形アンカ)は、送達針206に形成された溝内に固定される。
麻酔したブタの口から食道を介して胃内にシステム100を誘導し、洞の幽門付近に配置した。真空を使用して壁組織の一部を真空チャンバ52内に引き込んだ。ひとたび壁組織襞が真空チャンバ52を完全に満たすと直接ビジュアルガイダンスの下で壁組織襞に送達針206を押し通した。定着要素18および付着されたテザー14を、壁組織を介し、直径8mmおよび厚さ0.5mmのシリコーン座金208を介して、アンカ解放チャンバ84内に前進させた。内部プランジャ(図示せず)を押し、それによってT形材定着要素18を送達針206から装アンカ解放チャンバ84内の中空空間内に展開させた。送達針206を後退させて、T形材定着要素18を座金208に固定されたままにした。真空を解除し、胃鏡を組織から取り出し、装置本体12(図10dに示す)をポケット60から解放し、定着要素18をアンカ解放チャンバ84から溝85を介して解放した。
上記の処置を各ブタに対し複数回繰返した。図11aは、1頭のブタの胃の幽門口80の近くに定着された装置10の内視鏡観察図を示す。図11bは、部分的に幽門口80を通過した装置10、および2つの円板74要素を接続するステム76付きで幽門口80を部分的に遮断する円板7の内視鏡観察図を示す。近位円板74が十二指腸を通過すると、遠位の円板74が自動的に前進して幽門口80を部分的に遮断し、装置10の定着の正確な位置、テザー14の長さ、または胃内の装置10の向きに関係なく、装置10が幽門を遮断する効率が高くなる。図11cおよび11dは2週間後のブタの胃内の装置10を示し、粘膜表面およびテザー14が通過する組織路における侵食の欠如を示し装置10が胃組織を侵食しそうになく、胃組織を損傷することもなさそうであることを示す。
標準内視鏡の作業チャネルに導入された標準縫合糸カッタを使用して、図示された装置の1つを内視鏡的に取り出した。テザー14はテザー14の装置本体内への進入点付近で切断し、次いで切り離された装置本体12、テザー14、および逆転防止要素16を、内視鏡で導入した標準鉗子およびバスケットアクセサリにより、ブタの口から別々に取り出した。こうして、異物、縫合糸、またはアンカ要素を動物の体内に残すことなく、装置10を内視鏡手段により完全に取り出し、縫合によって形成された組織路はその日のうちに治癒した。装置10の全ての部品は、それらが自力で切り離される場合、それらが全て安全に幽門を通過することができるような大きさに形成され(直径2.5cm以下の物体はそれを通過する)、無害で排泄物中に排出される。
実施例4
生きているブタの洞定着胃装置の植込み
図13a〜bに示す送達装置50を使用して、麻酔した40キロの雌ブタの幽門括約筋に、本発明の摂食行動変化装置を定着した。図13bに示すように、送達装置50を、幽門口80を包囲する組織のリッジを跨ぐように配置した。送達針206を、針ガイド58を介して幽門筋の遠位側まで押し通し、そこで定着要素18を展開し、装置本体12を幽門口80の前に維持し、胃から十二指腸への糜粥の流動を部分的に遮断した。ビジュアルガイダンスだけの下で行なわれたこの処置に、真空は不要であった。2週間後にブタを犠牲にし、組織は侵食または炎症の徴候を示さなかった。
実施例5
十二指腸に存在するブタの洞定着胃装置
図3a〜cに示したシステム100を使用して、体重40キロの3頭の生きているブタの洞内に装置10を植え込んだ。ブタに麻酔をし、送達装置50を取り付けたOlympus GIF130胃鏡を利用して、図3a〜cに示すアンカ装置10をブタの遠位洞に送達した。装置10は完全にショアA60シリコーンから作られ、直径10mm、長さ25mmのピル状中実装置本体12は、直径1.5mmのシリコーン製テザー14を介して接続され、該テザーはその第2非弾性部分を形成する長さ20mmのポリエステル非吸収性2‐0縫合糸に接続され、それを今度は、直径1mm×長さ6mmのステンレス鋼管から作られシリコーン座金208に載置された定着要素18に接続した。
装置本体12をポケット60内に保持せず、内視鏡68の背後で自由に引きずることを除いて、上記の実施例1に従って、送達装置50および植込み処置を実行した。送達針206の内側の定着要素18は、装置10を送達装置50に取り付ける唯一の手段であった。装置10を幽門口80から3〜5cmの距離に定着させた。ブタは半日以内に回復し、処置前より少ない量の食物を摂取し始めた。
ブタの1頭を植込みからちょうど1週間後に犠牲にし、組織学的分析は、図18に示す通り、装置本体12が近位十二指腸に静止していることを示した。領域92として示される装置本体12の周囲の近位十二指腸組織は、装置本体12によって平坦化された粘膜リッジを有していた。この領域は、装置本体12の周囲が構造変化し始めていた。装置本体12が位置した部分の上流であった十二指腸球90、および下流の十二指腸の領域は、この粘膜平坦化も構造変化も示さなかった。容易に圧潰できず(例えば任意の方向の1ニュートンの半径方向の力で装置を完全に圧潰させることができなかった)、かつ以下の実施例6に記載するように完全に弾性のテザーにより繋留された装置本体による追加実験は、胃組織より薄く、より敏感である十二指腸組織に平坦化、侵食、または構造変化を引き起こさなかった。したがって、実施例5は、装置本体12が長期にわたって十二指腸内に存在するように意図される場合、破砕可能かつ容易に圧潰可能な装置本体12、および装置本体12と十二指腸との間の相対運動を可能にする弾性繋留の重要性を示している。
実施例6
ブタの洞に定着された装置
図19aに示したシステム100を使用して、体重が各40キロの8頭のブタの洞内に、図16b〜cに示す装置10を植え込んだ。ブタに麻酔をし、送達装置50を取り付けたOlympus GIF130胃鏡を利用して、アンカ装置10をブタの遠位洞に送達した。装置10は完全にショアA50シリコーンから作られ、破砕可能な直径20mmの2つのパラボラ状傘形装置本体12が、直径1.2mmのシリコーンテザー14から作られたテザー14を介して接続され、それを今度は、シリコーン座金208に当接して直径0.33mm×長さ8mmのステンレス鋼ピンから作られた定着要素18に接続した。
装置本体12をポケット60内に保持せず、内視鏡68に沿って引きずることを除いて、上記の実施例1に従って、送達装置50および植込み処置を実行した。送達針206の内部の定着要素18および拘束ストラップ96の内側に摩擦嵌めされた前テザー70を使用して、装置10を送達装置50に取り付けた。装置10は幽門口80から3〜5cmの距離に定着し、次いで内視鏡68を引き出すことによって内視鏡68から切り離し、その結果前テザー70が拘束ストラップ96から切り離された。ブタは半日以内に回復した。図20aは、幽門口80を部分的に遮断する洞内の近位装置本体12の内視鏡観察図を示す。テザー14は幽門口80を介して、遠位装置本体12が存在する(見えない)十二指腸内に走り、それによって安定した定着および意図されたとおりの装置10の配置を示す。
植込みから3ヵ月後にブタの2頭を犠牲にし、組織学的分析は、図20b〜cに示す通り、1つの装置本体12が近位十二指腸に存在し、1つの装置本体12が遠位洞に存在することを示した。図20cは、炎症の欠如および本発明の弾性テザー定着スキームの安定性を示す。図20bは切除され分割かつ拡開されたブタの胃および十二指腸領域を示し、領域92として示した装置本体12の周囲の近位十二指腸組織は、上記の実施例5とは対照的に、3ヶ月の実験中ずっと装置本体12によって損傷されなかった粘膜リッジを有する。したがって、実施例6はさらに、装置10が長期にわたって十二指腸/洞内に存在するように意図される場合、破砕可能かつ容易に圧潰可能な装置本体12、および装置本体12と十二指腸/洞との間の相対運動を可能にする弾性繋留の重要性を示している。
実施例7
生きているブタの下部食道括約筋における酸防御装置の植込み
本発明はまた、胃食道逆流症(GERD)を治療するためにも使用することができる。装置本体12は、図13a〜bに示すように送達装置50の前端に装着された、シリコーン製の円錐体または偏平な弾性円板である。テザー14は、送達針206の溝の内側に装着される定着要素18を形成するために、一端が金属T形材の上にオーバモールドされた長さ25mmおよび直径1.5mmのシリコーンである。逆転防止要素16は、テザー14の後端にある直径6mm、厚さ1mmのシリコーン円板であり、それは食道の組織表面で送達針206の入口穴の部位で逆転防止体として静止する。送達装置を単一チャネルのOlympus GIF130胃鏡に装着し、麻酔した40kgのブタの口から食道を介して胃の入口付近まで誘導した。自然筋肉収縮を介して下部食道括約筋(LES)をL字形アプリケータ内に陥入させ、それによって針と送達装置50の遠位端に装着した装置本体12との間に組織襞を配置した。代替的に、実施例1〜5に従って、真空チャンバを使用して組織の壁を引き込むことができるが、この場合、LESの自然陥入は、植込みの正確な位置を確認するのに役立った。LESに対してより高い位置またはより低い位置では、食道または胃の組織はこの空間に自然陥入しない。
送達針206を、組織襞を介し、かつ装置本体12の中心を介して、胃内にある送達装置50の遠位先端をアンカ解放チャンバ84内に押し込んだ。内部プッシュロッドを用いて、装置本体12内に走る定着要素18を展開した。送達針206を後退させ、装置本体をLESの底面に弾性的に定着しているテザーを残して、内視鏡68をブタの口から引き出した。そのような構成で、装置本体は一方向「フラップ弁」として働き、酸が食道に流入することを防止し、それによってGERDを軽減または排除する一方で、食物が胃に入ることは妨害または阻止しない。
装置を取り出した後、粘膜および胃筋層に目立った組織変化は観察されず、上記の処置を用いた長期定着による組織反応が最小限であり、悪影響が無いことが示された。
単にテザー14の長さを増大し、かつ逆転防止要素16を別個の処置で所望の組織に定着させることによって、逆転防止体16を食道のより高い位置、口腔、鼻咽頭、または鼻腔に配置する代替的定着スキームを実現することもできる。定着部位をより低いアンカ18の領域にすると、おくびまたは嘔吐が起きた場合に、装置本体12が食道に逆流して、口から排出されることが防止される。逆転防止要素16の位置がより高ければ、テザー14を介して加えられる力により、蠕動力のため装置本体12が胃内に移動することが防止され、それによってLESの領域に適切に配置され続ける。
さらなる代替例として、図19に示した送達装置50を用いてアンカ18をLESの下の胃組織に適用すること、および食道またはLESに針穿刺を行なう必要なく、装置本体12がLESの領域に安定して配置されるように、装置本体12をアンカ18と逆転防止要素19の間でテザー14に配置することが挙げられる。
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許または特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。