本発明の実行は、他の方法で指示されていなければ、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術及び免疫学の従来の技法を用いることになり、これらの技法は当技術分野の技術の範囲内である。このような技法は文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. I, II and III, Second Edition (1989); Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984); the series, Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.); 及びHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D.M. Weir and CC. Blackwell eds., 1986, Blackwell Scientific Publications)を参照されたい。
本明細書で引用されているすべての出版物、特許及び特許出願は、上記のものでも下記のものでも、参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。
A.定義
本発明を説明する際に、以下の用語が用いられることになり、下に指示される通りに定義されることが意図されている。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形で記載した用語は、内容が他の方法で明確に指示していなければ、複数の指示対象を含むことに留意されなければならない。したがって、例えば、「1つのSTEC細菌」への言及は、2又はそれ以上のそのような細菌の混合物及び同類のものを含む。
本明細書で使用されるように、用語STEC「エフェクタータンパク質」又はそのタンパク質と同一のものをコードするヌクレオチド配列とは、それぞれ様々なSTECセロタイプのうちのいずれかの由来であり、かつ腸細胞消失遺伝子座(LEE,locus for enterocyte effacement)病原性アイランドにより転位置される、タンパク質又はヌクレオチド配列を意味する。この遺伝子座は、STEC細菌の病原性にとって決定的に重要なEsc−EspタイプIII分泌装置をコードする。しかし、エフェクタータンパク質は、LEE病原性アイランドの内部でも外側でもコードされることが可能である。複数のSTECエフェクタータンパク質が公知であり、様々な配列が本明細書及び本技術分野において記載されている。例えば、LEEと非LEE STECエフェクタータンパク質の両方の考察では、Tobe et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103:14941-14946の他にも本明細書の開示も参照されたい。STECエフェクタータンパク質の非限定的例には、Tir、NleA、TccP、EspM2及びEspBが挙げられる。
本明細書で使用されるように、用語STEC「構造タンパク質」又はそのタンパク質と同一のものをコードするヌクレオチド配列とは、それぞれ様々なSTECセロタイプのうちのいずれかの由来であり、かつエフェクタータンパク質の細胞内への分泌に必要な物理的複合体の一部であるタンパク質又はヌクレオチド配列を意味する。構造タンパク質は、通常は細菌細胞と関連して見出される。そのような構造タンパク質の例には、ニードルの基部と先端などのニードル成分;外部膜成分及びフィラメント成分が挙げられる。いくつかのSTEC構造タンパク質は公知であり、その配列は本明細書及び当技術分野において記載されている。STEC構造タンパク質の非限定的例には、EspA及びEspDが挙げられる。
本明細書で使用されるように、rTir、rEspA、rEspB、rEspD、rEspF、rEspG、rEspRI、rNleA、rNleH2−1、rEspM2及びrTccpの他にもrインチミンなどの、しかしこれらには限定されない「組換え」STECタンパク質とは、組換えポリヌクレオチドの発現により産生されるタンパク質を意味する。一般には、下にさらに記載されているように、所望の遺伝子はクローニングされ、次に形質転換された生物において発現される。宿主生物は、発現条件下で外来遺伝子を発現してタンパク質を産生する。「組換えタンパク質」とは、そのタンパク質が少なくとも1つの特異的エピトープ又は活性を保持している限り、完全長ポリペプチド配列、参照配列の断片、又は参照配列の置換、欠失及び/若しくは付加を指す。一般に、参照配列のアナログは、完全長参照配列に少なくとも約50%配列同一性、好ましくは少なくとも約75%〜85%配列同一性、さらに好ましくは約90%〜95%又はそれ以上の配列同一性を示すことになる。
用語「複数エピトープ融合タンパク質」とは、STECエフェクタータンパク質及び/又はSTEC構造タンパク質の1を超えるエピトープを含み、該エピトープが天然に存在する順序では存在しないタンパク質を意味する。したがって、複数エピトープ融合タンパク質は、同一エピトープの1を超える繰返しの他にも同一タンパク質由来の1を超えるエピトープ又は1を超えるタンパク質由来の1を超えるエピトープを含む。該エピトープは互いに直接連結されている必要はなく、天然では同じように繰り返されておらず、さらに、STECエピトープではない他のアミノ酸を含むさらに大きな配列内に存在していてもよい。本発明の目的のために、融合体中に存在するエピトープ配列は、野生型エピトープ配列の正確なコピーでも、それと「機能的に等価」である配列、すなわち、そのエピトープが由来する元の完全長分子又はその免疫原性部分のどちらかと同一性を有するエピトープにより誘発される応答と比べた場合、本明細書に定義されるように、実質的に等価な若しくは増強された免疫応答を誘発することになる配列でもよい。さらに、複数エピトープ融合タンパク質は、完全長分子又はその免疫原性断片を含み得る。
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」とは、アミノ酸残基のポリマーのことであり、最小長の該生成物に限定されない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体及び同類のものがこの定義に含まれる。完全長タンパク質とその断片の両方が定義に包含される。この用語はポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化及び同類のものを含む。さらに、本発明の目的のために、「ポリペプチド」とは、天然のタンパク質配列の他にも、タンパク質が望ましい活性を維持している限り、天然配列に対する欠失、付加及び置換などの改変を含むタンパク質を指す。これらの改変は、部位特異的変異誘発を通じてのような計画的でもよく、又はタンパク質を産生する宿主の変異若しくはPCR増幅のためのエラーを通じてなどの偶発的でもよい。
本明細書で使用される用語「ペプチド」とは、ポリペプチドの断片を指す。したがって、ペプチドは、全タンパク質配列が存在しない限り、天然ポリペプチドのC末端欠失、N末端欠失及び/又は内部欠失を含むことが可能である。ペプチドは一般に、完全長分子の少なくとも約3〜10連続アミノ酸残基を含むことになり、問題のペプチドが望ましい生物学的応答を誘発する能力を保持しているという条件で、完全長分子の少なくとも約15〜25連続アミノ酸残基又は完全長分子の少なくとも約20〜50若しくはそれ以上の連続アミノ酸残基又は3アミノ酸と完全長配列におけるアミノ酸の数の間の任意の整数を含むことが可能である。
STEC「ペプチド」は、STECタンパク質の完全長配列未満を含むポリペプチドである。さらに、STECペプチドは、免疫応答を生じることができるように少なくとも1つのエピトープを含むことになる。STECペプチドは、下に記載される様々なSTECセロタイプのうちのいずれの由来でも可能である。
本明細書で使用されるように、「ワクチン」とは、STECエフェクタータンパク質及び/又はSTEC構造タンパク質などのSTEC抗原に対する免疫応答を刺激する働きをする組成物を指す。該免疫応答は、STEC感染に対して又はSTECの定着及び排出に対して完全な予防及び/又は処置を提供する必要はない。STEC細菌の定着及び排出に対する部分的予防でも、排出及び汚染食肉生産をなお低減することになるので、本明細書では利用法がある。いくつかの場合、ワクチンは、免疫応答を増強するために免疫アジュバントを含むことになる。用語「アジュバント」とは、特定の抗原又は抗原の組合せに対する免疫応答を増加する非特異的な形で作用し、したがって、いかなるワクチンにおいても必要な抗原の量及び/又は所望の抗原に対して適切な免疫応答を生み出すために必要な注射の頻度を低減する薬剤を指す。例えば、A. C. Allison J. Reticuloendothel. Soc. (1979) 26:619-630を参照されたい。そのようなアジュバントは下にさらに記載されている。
本明細書で使用されるように、「定着(colonization)」とは、反芻動物などの哺乳動物の腸管におけるSTECの存在を指す。
本明細書で使用されるように、「排出」とは、排泄物におけるSTECの存在を指す。
本明細書で使用されるように、「免疫化」又は「免疫する」とは、組成物中に存在する抗原のうちの1又は2以上に対する免疫応答を誘発するために、組成物を投与される動物の免疫系を刺激するのに効果的な量でSTEC組成物を投与することである。
用語「エピトープ」とは、特異的なB細胞及び/又はT細胞が応答する抗原又はハプテン上の部位を指す。この用語は「抗原決定基」又は「抗原決定基部位」とも互換的に使用される。好ましくは、エピトープは、タンパク質抗原に由来する又はタンパク質抗原の一部としての短いペプチドである。いくつかの異なるエピトープは、単一抗原性分子により坦持され得る。用語「エピトープ」は、生物全体を認識する応答を刺激するアミノ酸の改変された配列も含む。エピトープは、過度の実験をしなくても、ペプチド又はポリペプチドのアミノ酸配列及び対応するDNA配列についての知識からの他にも特定のアミノ酸の性質(例えば、サイズ、電荷など)及びコドン辞書から生成することが可能である。例えば、Ivan Roitt, Essential Immunology, 1988; Kendrew (同上); Janis Kuby, Immunology, 1992 e.g., pp. 79-81を参照されたい。
組成物又はワクチンに対する「免疫学的応答」とは、宿主における、所望の組成物又はワクチンに対する細胞及び/又は抗体媒介免疫応答の発生を指す。通常、「免疫学的応答」は、以下の効果:所望の組成物又はワクチンに含まれる抗原(単数又は複数)に特異的に向けられる、抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞及び/又は細胞障害性T細胞及び/又はγδT細胞の産生のうちの1又は2以上を含むがこれらに限定されない。好ましくは、宿主は、STEC疾患が和らげられる及び/若しくは予防される;STECの定着に対する腸の抵抗性が授けられる;STECを排出する動物の数が減少する;動物により排出されるSTECの数が減少する;並びに/又は動物によるSTEC排出の期間が減少するように、治療的又は予防的免疫学的応答のいずれかを示すことになる。
用語「免疫原性」タンパク質又はポリペプチドとは、上記の免疫学的応答を誘発するアミノ酸配列を指す。「免疫原性」タンパク質又はポリペプチドは、本明細書で使用されるように、問題の特定のSTECタンパク質の完全長配列、そのアナログ、凝集体又はその免疫原性断片を含む。「免疫原性断片」とは、1又は2以上のエピトープを含み、したがって上記の免疫学的応答を誘発するSTECタンパク質の断片を意味する。そのような断片は、当技術分野で周知のいかなる数のエピトープマッピング技法を使用しても同定されることが可能である。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E. Morris, Ed., 1996) Humana Press, Totowa, New Jerseyを参照されたい。例えば、直鎖状エピトープは、例えば、タンパク質分子の一部に一致している多数のペプチドを固体支持体上で同時に合成し、ペプチドを、支持体にまだ付着している間に抗体と反応させることにより決定し得る。そのような技法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,708,871号明細書;Geysen et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002; Geysen et al. (1986) Molec. Immunol. 23:709-715に記載されている。これらの文献はすべて参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。同様に、立体構造的エピトープは、例えば、X線結晶学及び2次元核磁気共鳴によりなどのアミノ酸の空間的立体構造を決定することにより容易に同定される。例えば、Epitope Mapping Protocols (同上)を参照されたい。タンパク質の抗原領域も、例えば、Oxford Molecular Groupから入手可能なOmiga version 1.0 software programを使用して計算されるプロットなどの標準抗原性及びヒドロパシープロットを使用して同定することが可能である。このコンピュータプログラムは、抗原性プロファイルを決定するためにHopp/Woods法(Hopp et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA(1981) 78:3824-3828)を及び、ヒドロパシープロットのためにKyte-Doolittle法(Kyte et al., J. Mol. Biol. (1982) 157: 105-132)を用いる。
本発明の目的のための免疫原性断片は、通常、親STECタンパク質分子の少なくとも約3アミノ酸、好ましくは少なくとも約5アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも約10〜15アミノ酸、もっとも好ましくは25又はそれ以上のアミノ酸を含むことになる。断片の長さに決定的な上限はなく、タンパク質配列のほぼ完全長、又は特定のSTECタンパク質の2又はそれ以上のエピトープを含む融合タンパク質でさえ含み得る。
「抗原」とは、宿主免疫系を刺激して体液性及び/又は細胞性抗原特異的応答を作り出すことになる1又は2以上のエピトープ(直鎖状、立体構造的のいずれか、又は両方)を含有するタンパク質、ポリペプチド又はその断片などの分子を指す。この用語は、用語「免疫原」と互換的に使用される。抗原又は抗原決定基を模倣することが可能な、抗イディオタイプ抗体又はその断片、及び合成ペプチドミモトープなどの抗体も、本明細書で使用される抗原の定義下に収まる。同様に、DNA免疫化適用におけるなどのインビボで抗原又は抗原決定基を発現するオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドも、本明細書での抗原の定義に含まれる。
「担体」とは、所望の抗原に関連する場合、抗原に免疫原性を与えるいかなる分子でも意味する。
用語「RTX」毒素とは、本明細書で使用されるように、カルボキシ末端コンセンサスアミノ酸配列Gly−Gly−X−Gly−X−Asp(XはLys、Asp、Val又はAsnである)により特徴付けられる分子のファミリーに属するタンパク質のことである(Highlander et al., DNA (1989) 8:15-28)。そのようなタンパク質には、とりわけ、パスツレラ・ヘモリチカ及びアクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)由来のロイコトキシンの他にも大腸菌アルファ溶血素が挙げられる(Strathdee et al., Infect. Immun. (1987) 55:3233-3236; Lo, Can. J. Vet. Res. (1990) 54:S33-S35; Welch, Mol. Microbiol. (1991) 5:521-528)。毒素のこのファミリーは毒素の「RTX」ファミリーとして知られている(Lo, Can. J. Vet. Res. (1990) 54:S33-S35)。さらに、用語「RTX毒素」とは、化学的に合成される、RTX毒素と同一のものを発現している生物から単離されるRTXファミリーのメンバー、又は組換え的に産生されるRTXファミリーのメンバーを指す。さらに、この用語は、特定の天然RTX分子に見られる連続アミノ酸配列に実質的に相同なアミノ酸配列を有する免疫原性タンパク質を意味する。したがって、この用語は完全長配列と部分的配列の両方の他にもアナログを含む。天然の完全長RTX毒素は細胞毒性活性を示すが、用語「RTX毒素」は、依然免疫原性であるが、天然分子の細胞毒性特徴を欠く分子も意味する。本発明に従って作製されるキメラでは、選択されるRTXポリペプチド配列は、融合STECタンパク質又は複数エピトープ融合タンパク質に増強された免疫原性を与える。
用語「ロイコトキシンポリペプチド」又は「LKTポリペプチド」とは、上記に定義されるように、とりわけ、パスツレラ・ヘモリチカ及びアクチノバチルス・プルロニューモニア由来のRTX毒素を意味する。いくつかのロイコトキシンのヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列は公知である。例えば、米国特許第4,957,739号明細書及び米国特許第5,055,400号明細書; Lo et al., Infect. Immun. (1985) 50:667-67; Lo et al., Infect. Immun. (1987) 55:1987-1996; Strathdee et al., Infect. Immun. (1987) 55:3233-3236; Highlander et al., DNA (1989) 8:15-28; Welch, Mol. Microbiol. (1991) 5:521-528を参照されたい。選択されたロイコトキシンポリペプチド配列は、融合STECタンパク質又は複数エピトープ融合タンパク質に増強された免疫原性を与える。
担体に連結されているSTECタンパク質は、それが対応するタンパク質単独よりも免疫応答を誘発する大きな能力を有する場合「増強された免疫原性」を示す。そのような増強された免疫原性は、特定のタンパク質/担体複合体及びタンパク質対照を動物に投与し、当技術分野で周知の放射性免疫アッセイ及びELISAなどの標準アッセイを使用してこれら2つに対する抗体力価を比較することにより決定することが可能である。
用語「精製された」とは、物質がそれが属する試料中の大多数の割合を含むように物質(化合物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチド組成物)を単離することである。典型的には、試料中では、精製された成分は、試料の50%、好ましくは80%〜85%、さらに好ましくは90〜95%を含む。本明細書の「精製された」の定義から明確に除外されるのは、米国特許第7,300,659号明細書に記載されるなどの、増殖培地に分泌されているSTEC抗原の混合物を含有する細胞培養上清の成分である。所望のポリヌクレオチド及びポリペプチドを精製するための技法は当技術分野では周知であり、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー及び密度に従った沈降が挙げられる。
「単離された」とは、ポリペプチドに言及する場合、指示された分子はその分子と一緒に天然に見出される生物全体から分離し別個である、又は実質的に同種の他の生物学的巨大分子の非存在下で存在していることを意味する。ポリヌクレオチドに関する用語「単離された」は、天然には通常その核酸に付随する配列、若しくは天然に存在する配列であるが異種配列が一緒に付随している配列を全体的にも部分的にも欠く核酸分子、又は染色体から解離した分子である。
「抗体」とは、抗原中に存在する所望のエピトープを「認識する」、すなわち該エピトープに特異的に結合する分子を意味する。「特異的に結合する」とは、抗体と例えば該抗体と反応する被験物質を含む混合物中の成分間で起こることがある非特異的結合とは対照的に、抗体が「錠と鍵」タイプの相互作用でエピトープと相互作用して抗原と抗体の間で複合体を形成することを意味する。したがって、例えば、抗STECエフェクター抗体は、問題のSTECエフェクタータンパク質のエピトープに特異的に結合する分子である。本明細書で使用される用語「抗体」には、ポリクローナルとモノクローナル調製物の両方から得られる抗体の他にも以下の:ハイブリッド(キメラ)抗体分子(Winter et al., Nature (1991) 349:293-299; 及び米国特許第4,816,567号明細書参照);F(ab’)2及びF(ab)断片;Fv分子(非共有ヘテロ二量体、例えば、Inbar et al., Proc Natl Acad Sci USA (1972) 69:2659-2662; and Ehrlich et al., Biochem (1980) 19:4091-4096参照);一本鎖Fv分子(sFv)(例えば、Huston et al., Proc Natl Acad Sci USA (1988) 85:5879-5883参照);二量体及び三量体抗体断片構築物;ミニボディー(例えば、Pack et al., Biochem (1992) 31:1579-1584; Cumber et al., J Immunology (1992) 149B:120-126参照);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmann et al., Nature (1988) 332:323-327; Verhoeyan et al., Science (1988) 239:1534-1536; 及び1994年9月21日公開の英国特許出願第GB2,276,169号参照);並びにそのような分子から得られ、親抗体分子の免疫学的結合特性を保持しているいかなる機能的断片も挙げられる。
本明細書で使用されるように、用語「モノクローナル抗体」とは、均一な抗体集団を有する抗体組成物を指す。この用語は、抗体の種又は供給源に関して限定されておらず、抗体が作られる方法によって限定されることを意図されてもいない。この用語は、全免疫グロブリンの他にも、Fab、F(ab’)2、Fv及び他の断片などの断片の他にも、親モノクローナル抗体分子の免疫学的結合特性を示すキメラ及びヒト化均一抗体集団を包含する。
「天然」タンパク質又はポリペプチドとは、タンパク質が天然に存在する供給源から単離されるタンパク質又はポリペプチドを指す。「組換え」ポリペプチドとは、組換えDNA技法により産生される、すなわち、望ましいポリペプチドをコードする外来性DNA構築物により形質転換された細胞から産生されるポリペプチドを指す。「合成」ポリペプチドは、化学合成により調製されるポリペプチドである。
「相同性」とは、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド部分間のパーセント同一性を指す。2つの核酸又は2つのポリペプチド配列は、該配列が該分子の限定された長さにわたり少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、さらに好ましくは少なくとも約80%〜85%、好ましくは少なくとも約90%、もっとも好ましくは少なくとも約95%〜98%配列同一性を示す場合は、互いに「実質的に相同である」。本明細書で使用されるように、実質的に相同であるとは、特定の配列に完全な同一性を示す配列のことでもある。
一般に、「同一性」とは、2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列のそれぞれ正確なヌクレオチド−ヌクレオチド又はアミノ酸−アミノ酸一致を指す。パーセント同一性は、配列を整列させ、2つの整列された配列間の適合の正確な数を計数し、参照配列の長さで除し、該結果に100を掛けることによる2つの分子(参照配列と参照配列に対する%同一性が未知である配列)間配列情報の直接比較により決定することが可能である。ペプチド解析については、Smith and Waterman Advances in Appl. Math. 2:482-489, 1981の局所相同性アルゴリズムを応用したALIGN, Dayhoff, M.O. in Atlas of Protein Sequence and Structure M.O. Dayhoff ed., 5 Suppl. 3:353-358, National biomedical Research Foundation, Washington, DCなどの容易に入手可能なコンピュタープログラムを使用すれば解析に役立つことが可能である。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラムは、Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 (Genetics Computer Group社, Madison, WIから入手可能)、例えば、the BESTFIT, FASTA and GAP プログラムにおいて入手可能であり、これらのプログラムもSmith and Watermanアルゴリズムに依拠している。これらのプログラムは、製造業者により推奨され上に引用されるWisconsin Sequence Analysis Packageに記載されているデフォルトパラメータを用いて容易に利用される。例えば、参照配列に対する特定のヌクレオチド配列のパーセント同一性は、デフォルトスコアリング表及び6ヌクレオチド位置のギャップペナルティーを用いるSmith and Watermanの相同性アルゴリズムを使用して決定することが可能である。
本発明の文脈においてパーセント同一性を確立するもう1つの方法は、エディンバラ大学に著作権があり、John F. CollinsとShane S. Sturrokが開発し、IntelliGenetics, Inc. (Mountain View, CA)から配給されるプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。この一揃いのパッケージから、スコアリング表にデフォルトパラメータが使用されているSmith-Watermanアルゴリズムを用いることが可能である(例えば、ギャップ開始ペナルティー12、ギャップ伸長ペナルティー1及びギャップ6)。生み出されるデータから、「マッチ(Match)」値は「配列同一性」を反映する。配列間のパーセント同一性又は類似性を計算するための他の適切なプログラムは、当技術分野では一般に公知であり、例えば、別のアラインメントプログラムはBLASTでありデフォルトパラメータを用いて使用される。例えば、BLASTN及びBLASTPは、以下のデフォルトパラメータ:遺伝コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ(cutoff)=60;エクスペクト(expect)=10;マトリックス=BLOSUM62;デスクリプション(Descriptions)=50配列;ソートバイ(sort by)=HIGH SCORE;データベース=非重複、ジェンバンク+EMBL+DDBJ+PDB+ジェンバンクCDS翻訳+Swiss protein+Spupdate+PIRを使って、使用することが可能である。これらのプログラムの詳細は容易に入手可能である。
代わりに、相同領域間で安定な二重鎖を形成する条件下でポリヌクレオチドをハイブリダイズさせ、続いて一本鎖特異的ヌクレアーゼ(複数可)を用いて消化し、消化された断片をサイズ決定することにより相同性を決定することが可能である。実質的に相同なDNA配列であれば、例えば、その特定の系のために定義される厳密な条件下でサザンハイブリダイゼーション実験において同定することが可能である。適切なハイブリダイゼーション条件を定義するのは当技術分野の技術の範囲内である。例えば、Sambrook et al. (同上); DNA Cloning (同上); Nucleic Acid Hybridization (同上)を参照されたい。
核酸分子を記載するために本明細書で使用される「組換え」とは、その起源又は操作により、天然では関連しているポリヌクレオチドのすべて又は部分とは関連していないゲノム、cDNA、ウイルス、半合成又は合成起源のポリヌクレオチドを意味する。
用語「形質転換」とは、挿入のために使用される方法とは無関係に、外来性ポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入することである。例えば、直接取り込み、形質導入又はf−交配が挙げられる。外来性ポリヌクレオチドは、非組込みベクター、例えば、プラスミドとして維持されてもよく、又は、代わりに宿主ゲノムに組み込まれてもよい。
「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞株」、「細胞培養物」及び単細胞体として培養される微生物又は高等真核細胞株を意味する他のそのような用語とは、組換えベクター又は他の移入されたDNAのためのレシピエントとして使用することが可能な又は使用されてきた細胞のことであり、トランスフェクトされた原細胞の初代後代を含む。
「コード配列」又は選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列(又は「制御エレメント」)の制御下に置かれている場合には、インビボで転写される(DNAの場合)及びポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端では開始コドンにより、3’(カルボキシ)末端では翻訳停止コドンにより決定される。コード配列には、ウイルス、原核生物又は真核生物mRNA由来のcDNA、ウイルス又は原核生物DNA由来のゲノムDNA配列、及び合成DNA配列までも挙げることが可能であるが、これらに限定されない。転写終止配列はコード配列の3’側に位置し得る。
典型的な「制御エレメント」には、転写プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列(翻訳終止コドンの3’側に位置する)、翻訳の開始を最適化するための配列(コード配列の5’側に位置する)及び翻訳終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
「核酸」分子には、原核生物塩基配列、真核生物mRNA、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNA由来のゲノムDNA配列、及び合成DNA配列までも挙げることが可能であるが、これらに限定されない。この用語は、DNA及びRNAの既知の塩基アナログのうちのいずれでも含む配列も取り込む。
「作動可能に連結されている」とは、そのように記載されている成分が、その通常の機能を果たすように形成されているエレメントの配置を指す。したがって、コード配列に作動可能に連結されている所与のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合にはコード配列の発現を達成することができる。プロモーターは、それがコード配列の発現を指示するよう機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在する非翻訳であるが転写されている配列がプロモーター配列とコード配列間に存在することが可能であり、プロモーター配列はそれでもコード配列に「作動可能に連結されている」と見なすことが可能である。
「によりコードされている」とは、ポリペプチド配列又はその部分が、核酸配列によりコードされるポリペプチド由来の少なくとも3〜5アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも8〜10アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも15〜20アミノ酸のアミノ酸配列を含有するポリペプチド配列をコードする核酸配列を指す。該配列にコードされるポリペプチドと免疫学的に同一視することが可能なポリペプチド配列も包含される。
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取込みを指すのに使用される。細胞は、外来性DNAが細胞膜内部に導入されてしまうと「トランスフェクト」されていることになる。いくつかのトランスフェクション技法が当技術分野では一般に公知である。例えば、Graham et al. (1973) Virology, 52:456, Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Davis et al. (1986) Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier, and Chu et al. (1981) Gene 13:197を参照されたい。そのような技法を使用すれば、1又は2以上の外来性DNA部分を適切な宿主細胞に導入することが可能である。この用語は、遺伝物質の安定でもあり一過的でもある取込みを指し、ペプチド連結DNA又は抗体連結DNAの取込みを含む。
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞へ導入することができる(例えば、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、粒子性担体及びリポソーム)。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」及び「遺伝子導入ベクター」とは、所望の遺伝子の発現を指示することができ、遺伝子配列を標的細胞導入することが可能ないかなる核酸構築物でも意味する。したがって、この用語はクローニング及び発現ビヒクルの他にもウイルスベクターを含む。
本明細書で使用されるように、「生体試料」とは、対象から単離される組織又は体液の試料を意味し、例えば、限定はされないが、血液、血漿、血清、排泄物、尿、骨髄、胆汁、髄液、リンパ液、皮膚の試料、皮膚、呼吸器、腸管及び尿生殖管の外分泌物、涙、唾液、乳、血液細胞、臓器、生検等が挙げられる。また、限定されないが、培地中での細胞及び組織の増殖から生じる条件培地をはじめとするインビトロ細胞培養成分の試料、例えば、組換え細胞及び細胞成分等を挙げることができる。
本明細書で使用されるように、用語「標識」及び「検出可能標識」とは、放射性同位元素、蛍光剤(fluorescer)、化学発光剤(chemiluminescer)、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、発色団、色素、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチン又はハプテン)及び同類のものが挙げられるがこれらに限定されない検出可能な分子を指す。用語「蛍光剤」とは、検出可能範囲で蛍光を示すことができる物質又はその部分を指す。本発明下で使用し得る標識の特定の例には、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ルミノール、NADPH及びα−β−ガラクトシダーゼが挙げられる。
本明細書で使用される用語「処置(treatment)」とは、(i)感染若しくは再感染の予防(予防法)又は(ii)所望の疾患の症状の減少若しくは除去(治療)のいずれかを指す。処置は、反芻動物などの哺乳動物のSTEC定着の予防若しくは減少;及び/又は動物により排出させるSTECの数の減少;及び/又は動物によるSTEC排出の期間を減少することも包含する。
本明細書で使用されるように、「治療量」、「有効量」及び「に効果的な量」とは、組成物中に存在するSTEC抗原に対する免疫応答を誘発し、それによって反芻動物などの哺乳動物のSTEC疾患及び/若しくはSTEC定着を低減する若しくは予防する;並びに/又はSTECを排出する動物の数を低減する;並びに/又は動物により排出されるSTECの数を低減する;並びに/又は動物によるSTEC排出の期間を低減するのに有効なワクチンの量を指す。
「哺乳動物対象」とは、ヒト並びに、ウシ、ブタ及びヒツジ属(ヒツジとヤギ)種を含むがこれらに限定されない反芻動物などの他のあらゆる乳腺所有動物(雄と雌の両方)を含む哺乳綱の任意のメンバーを意味する。該用語は特定の年齢を示さない。したがって、成体、新生仔及び胎仔が含まれるよう意図されている。
B.一般的方法
本発明の中核をなすのは、1を超えるSTECセロタイプ由来の1を超えるSTECエピトープを含む複数エピトープ融合タンパク質が、それが投与される動物において免疫応答を生じるという発見である。さらに、1を超えるSTECセロタイプ由来のタンパク質と反応する抗体を産生させるSTECエフェクタータンパク質由来のエピトープ、及び1を超えるSTECセロタイプ由来のタンパク質と反応する抗体を産生させるSTEC構造タンパク質由来のエピトープが発見されている。キメラ構築物及び交差反応性STECセロタイプはワクチン組成物において使用され、定着に対する防御などの広範にわたるSTEC感染の予防及び処置を提供する。したがって、複数のSTECセロタイプ由来の様々なSTECエフェクタータンパク質、及び複数のSTECセロタイプ由来の様々なSTEC構造タンパク質は、本組成物及び方法において利用法がある。そのようなエピトープは、1又は2以上のサブユニットワクチン組成物において個々に提供するか、又は都合が良いのは、融合タンパク質として組換え発現させたキメラタンパク質として提供するか、若しくは個々に発現させ、その後融合が可能なことである。
ある種の実施形態では、組成物は、複数のSTECセロタイプ由来のTirの複数のエピトープなどの、1を超えるSTECセロタイプ由来の1を超えるエピトープを含む複数エピトープ融合タンパク質を含む。他の実施形態では、組成物は、精製されたSTECエフェクタータンパク質及び/又は精製されたSTEC構造タンパク質の混合物を含み、前記タンパク質は、EspA、EspB、EspD、EspG、EspF、EspRI、NleA、NLeH2−1、Tccp、Tirから選択されるSTECタンパク質などの、しかしこれらに限定されない1を超えるSTECセロタイプ由来のタンパク質、及び/又は複数のTirエピトープを有するタンパク質などの複数エピトープ融合タンパク質と反応する抗体を産生する。
いくつかの実施形態では、STEC構築物又は精製されたSTECタンパク質は免疫原性を増強する担体分子に連結されている。薬学的に許容されるアジュバントを組成物と一緒に投与してもよい。組成物は抗原のうちの1又は2以上に対して免疫応答を誘発し、それによってSTEC感染を低減する又は除去するのに有効な量で投与される。いくつかの例では、動物におけるSTEC定着は減少され除去される。好ましい実施形態では、動物はウシ又はヒツジ又は他の反芻動物である。
本発明の組成物を用いた免疫化は、免疫された動物の免疫系を刺激して、EspA、EspB、EspD、EspG、EspF、EspRI、NleA、NLeH2−1、Tccp及び/又はTirなどの1又は2以上のSTEC抗原に対して、腸上皮細胞へのSTEC付着を遮断し、STEC定着を妨げ、それによって動物によるSTEC排出を低減する抗体を産生する。STEC排出のこのような減少により、食物及び水のSTEC汚染は減少しヒトにおけるSTECが引き起こす疾患は減少する。さらに、STEC定着及びウシによる排出を予防し、減少し除去する免疫化の能力は、医学分野における長年にわたる切実な満たされない要求に取り組み、ヒトに重要な利益をもたらす。
さらに、本発明の組成物を使用すれば、ヒトなどの他の哺乳動物におけるSTEC感染を処置する又は予防することが可能である。組換え的に産生されるタンパク質などの精製された抗原、例えば、毒性を減少させるために志賀毒素1及び2のうちの1つ又は両方を欠く組成物を使用すれば、発現する抗原(antigens present)を制御することが可能になる。
STEC組成物の治療有効性は、天然若しくは合成担体、アジュバントを使用することにより及び/又は別の抗STEC剤の前に、同時に、若しくは後に該組成物を投与することにより、増強することが可能である、そのような薬剤には、生物学的、生物学的に操作された、化学的、核酸ベースの及び組換えタンパク質抗STEC剤が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の理解を促進するために、STECタンパク質及びキメラ、その産生物、それらと同一のものを含む組成物、並びに感染の処置又は予防の他にも感染の診断におけるそのような組成物の使用法に関して、下においてさらに詳細な考察が提供される。
I.キメラ構築物及び組合せワクチンにおける使用のためのポリペプチド
上で説明されたように、本発明のタンパク質は、1を超えるセロタイプ由来の1又は2以上のSTECエフェクタータンパク質由来の1を超えるエピトープ、及び/又は1を超えるセロタイプ由来の1又は2以上のSTEC構造タンパク質由来の1を超えるエピトープを含む、キメラ構築物の使用により1を超えるSTECセロタイプに対する広範な予防を提供する。代わりの実施形態では、組成物は、1を超えるSTECセロタイプ由来の抗原と反応する抗体を産生する、精製されたSTECタンパク質、その免疫原性断片及び/又はバリアントを含むことが可能である。
本発明で使用するためのタンパク質及びエピトープは、血清型O157、O158、O5、O8、O18、O26、O45、O48、O52、O55、O75、O76、O78、O84、O91、O103、O104、O111、O113、O114、O116、O118、O119、O121、O125、O28、O145、O146、O163、O165由来のSTECセロタイプを限定することなく含む様々なSTECセロタイプのいずれからでも入手し得る。そのようなSTECセロタイプは感染動物の血清から容易に入手される。STECを単離するための方法は当技術分野では周知である。例えば、Elder et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2000) 97:2999; Van Donkersgoed et al., Can.Vet. J. (1999) 40:332; Van Donkersgoed et al., Can.Vet. J. (2001) 42:714を参照されたい。一般に、そのような方法は、セフィキシム及びテルル酸を補充されているソルビトールマッコンキー寒天上に直接蒔く、又は免疫磁気濃縮に続いて同一培地に蒔く必要がある。さらに、STECタンパク質及びエピトープは、毒性を減らすために志賀毒素1及び/又は2の発現をノックアウトするように遺伝的に操作されているSTECセロタイプから入手し得る。
複数エピトープ融合タンパク質及び、STECタンパク質を含む組成物が由来するタンパク質としては、各種の任意のSTEC構造タンパク質及び任意の公知のLEE及び非LEEエフェクターを挙げることができる。そのようなタンパク質には、EspA、EspD、Tir、NleA、EspB、TccP、Ler、Orf2、CesA/B、Orf4、Orf5、EscS、EscT、Rorf13、GrlR、GrlA、CesD、EscC、SepD、EscJ、Orf8、SepZ、Orf12、EscN、Orf16、SepQ、EspH、CesF、Map、CesT、EscD、SepL、CesD2、EscF、Orf29、EspF、EspG、NleB、NleB2−1、NleC、NleE、NleF、NleG、NleH、NleH1−2、NleH2−1、NleI、NleG2−1、NleG2−2、NleG3、NleG5−1、NleG6−1、NleG8−2、NleG9、EspK、EspL2、EspM2、EspR1、EspV、EspW、EspX2、EspX7、EspY1、EspY2及びESpY3が限定することなく挙げられる。
様々なSTECタンパク質の配列は公知であり及び/又は本明細書に記載されている。大腸菌O157:H7ゲノムの完全な配列については、例えば、ジェンバンク受託番号AE005594、AE005595、AP002566、AE005174、NC_002695、NC_002655の他にも、米国特許第6,855,814号明細書(参照によりその全体を本明細書に組み込まれている)を参照されたい。これには様々なO157:H7構造タンパク質及びO157:H7エフェクタータンパク質の配列が含まれている。STEC O26:H11及びO103:H2のLEE病原性アイランドの配列については、それぞれジェンバンク受託番号AJ277443及びAJ303141を参照されたい。これには様々なSTECタンパク質の配列が含まれる。STEC O111:H tir、インチミン及びシャペロンの配列についてはジェンバンク受託番号AF025311を参照されたい。
いくつかの大腸菌セロタイプ由来のEspAのヌクレオチド及びアミノ酸配列については、例えば、国際公開第97/40063号パンフレットの他にもジェンバンク受託番号AE005174、Y13068、U80908、U5681、Z54352、AJ225021、AJ225020、AJ225019、AJ225018、AJ225017、AJ225016、AJ225015、AF022236、AF200363、NC_011601、NC_002695、BA000007及びAJ303141を参照されたい。図16A〜16Bは、代表的STEC O157:H7 EspAのそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示している。
STEC O157:H7 Tirのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列については、例えば、それぞれ図1A〜1Bを;STEC O26:H11 Tirのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列については、それぞれ図2A〜2Bを;STEC O103:H2 Tirのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列については、それぞれ図3A〜3Bを;STEC O111:NM Tirのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列については、それぞれ図4A〜4Bを;他にもいくつかの大腸菌セロタイプ由来のTirのヌクレオチド及びアミノ酸配列については国際公開第99/24576号パンフレット、並びにジェンバンク受託番号AF125993、AF132728、AF045568、AF022236、AF70067、AF070068、AF013122、AF200363、AF113597、AF070069、AB036053、AB026719、U5904及びU59502を参照されたい。
いくつかの大腸菌セロタイプ由来のインチミンのヌクレオチド及びアミノ酸配列については、例えば、ジェンバンク受託番号U32312、U38618、U59503、U66102、AF081183、AF081182、AF130315、AF339751、AJ308551、AF301015、AF329681、AF319597、AJ275089−AJ275113を参照されたい。
いくつかの大腸菌セロタイプ由来のEspBのヌクレオチド及びアミノ酸配列については、例えば、ジェンバンク受託番号AE005174、U80796、U65681、Y13068、Y13859、X96953、X99670、X96953、Z21555、AF254454、AF254455、AF254456、AF254457、AF054421、AF059713、AF144008、AF144009、NC_011601、NC_002695、BA000007及びAJ303141を参照されたい。図17A〜17Bは、代表的なSTEC O157:H7 EspBのそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示している。
いくつかの大腸菌セロタイプ由来のEspDのヌクレオチド及びアミノ酸配列については、例えば、ジェンバンク受託番号AE005174、Y13068、Y13859、Y17875、Y17874、Y09228、U65681、AF054421、AF064683、NC_011601、NC_002695、BA000007及びAJ303141を参照されたい。図18A〜18Bは、代表的なSTEC O157:H7 EspDのそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示している。
いくつかの大腸菌セロタイプ由来のNleAの配列については、例えば、ジェンバンク受託番号AE005174、BAF9651、CAM11325、CAM11324、CAM11323、CAM11322、CAM11321、CAM11320、CAM11319、CAM11318、CAM11317、CAM11316、CAM11315、CAM11314、CAM11313及びNC_011601を参照されたい。図19A〜19Bは、代表的なSTEC O157:H7 NleAのそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示している。
いくつかの大腸菌セロタイプ由来のTccpの配列については、例えば、ジェンバンク受託番号AE005174、AB356000、AB355999、AB355998、AB355997、AB355996、AB355995、AB355659、AB253549、AB253548、AB253547、AB253546、AB253545、AB253544、AB253543、AB253542、AB253541、AB253540、AB253539、AB253538、AB253537、DQ206456を参照されたい。
いくつかの大腸菌セロタイプ由来のEspG、NleE及びNleHの配列については、例えば、ジェンバンク受託番号AE005174、NC_011601、NC_002695、BA000007及びAJ303141を参照されたい。図20A〜20Bは、代表的なSTEC O157:H7 EspGのそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示している。図21A〜21Bは、代表的なSTEC O157:H7 NleEのそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示している。図22A〜22Bは、代表的なSTEC O157:H7 NleH1−1のそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示している。
いくつかの大腸菌セロタイプ由来のEspFのヌクレオチド及びアミノ酸配列については、例えば、ジェンバンク受託番号AF022236、AJ303141、NP_290250.1、YP_002331392.1、NP_310742.1、AAG58814.1を参照されたい。図24A〜24Bは、代表的なSTEC O157:H7 EspFのそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示している。
代表的なSTEC O157:H7 NleH2−1のそれぞれヌクレオチド配列及びアミノ酸配列については、例えば、図23A〜23Bを参照されたい。代表的なSTEC O157:H7 EspRIについては、例えば、図25A〜25Bを参照されたい。
組成物における使用のための交差反応性エピトープの他に本発明のキメラにおける使用のためのエピトープは、例えば、上に収載されるSTECセロタイプのうちの2又はそれ以上に由来するSTECタンパク質の配列を整列させ、可変及び保存領域を捜すことにより容易に同定することが可能である。通常、様々な細菌に対する広範な予防を与えるためにはSTEC分子の可変領域由来のエピトープを含むのが望ましい。例えば、STEC O157から分化したが、それでも宿主免疫系により認識される非O157 STECセロタイプにおいても有用なエピトープを同定することが可能である。例えば、Tirの場合、アミノ酸259〜363にまたがる部分は、これらのアミノ酸が宿主表皮細胞の表面に曝露されており、該宿主表皮細胞をワクチン開発のための主要標的にすることが明らかにされているので、特に興味深い。
追加のエピトープは、標準抗原性及びハイドロパシープロット、例えば、Oxford Molecular Groupから入手可能なOmiga version 1.0 software programを使用して、例えば、計算されるプロットを使用するなどの当技術分野で周知の技法を使用して同定することが可能である。このコンピュータプログラムは、抗原性プロファイルを決定するためにHopp/Woods法(Hopp et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA(1981) 78:3824-3828)を、ハイドロパシープロットにはKyte-Doolittle法(Kyte et al., J Mol. Biol. (1982) 157: 105-132)を用いる。このプログラムは、以下のパラメータ:7のウィンドウにわたる結果を平均化する;Eminiに従って表面確率を決定する;Karplus-Schulzに従ったチェイン柔軟性;Jameson-Wolfに従った抗原性指標;Garnier-Osguthorpe-Robsonに従った二次構造;Chou-Fasmanに従った二次構造;及び予想されるグリコシル化部位を同定することを用いて使用することが可能である。当業者であれば、本明細書の教唆と組み合わせて得られる情報を使用して、本発明の組成物中で用い得る抗原性領域を容易に同定することが可能である。
特に好ましい実施形態では、組成物は、STEC O157:H7及び/若しくはO157:NMなどのSTEC O157、並びに少なくとも1つの他のSTECセロタイプ、好ましくは少なくとも2つの他のSTECセロタイプ、さらに好ましくは、STEC O26、例えば、O26:H11、O103:H2などのSTEC O103、及び/若しくはO111:NMなどのSTEC O111などの少なくとも3つの他のSTECセロタイプ、又はSTEC O157に加えて上記のSTECセロタイプのうちのいずれかと反応する抗体を産生するSTECタンパク質若しくはその免疫原性断片を含有する。実施例において記載されるように、STEC O157:H7由来のTir、EspA、EspB、EspD、NleA及びTccpはそれぞれが、STEC O157:H7の他にSTEC O26:H11、STEC O103:H2及びSTEC O111:NMと反応する抗体を産生する(表5参照)。さらに、STEC O157:H7由来のEspG、NleE及びNleHのそれぞれは、STEC O157:H7の他にSTEC O103:H2及びSTEC O111:NMと反応する抗体を産生する(表5参照)。
ある種の実施形態では、本発明は、1又は2以上のSTECエフェクタータンパク質及び/又は1又は2以上のSTEC構造タンパク質由来の1を超えるエピトープを含む複数エピトープ融合タンパク質を対象とする。エピトープは、同一大腸菌STECセロタイプ由来、又は好ましくは複数のSTECセロタイプ由来であることが可能である。さらに、エピトープは、同一STECタンパク質由来である、又は同一若しくは異なるSTECセロタイプ由来の異なるSTECタンパク質由来であることが可能である。
さらに具体的には、キメラは複数のエピトープ、同一若しくは異なるセロタイプ由来のいくつかの異なるSTECタンパク質の他にも複数の若しくはタンデム反復の選択されたSTEC配列、複数の若しくはタンデム反復の選択されたSTECエピトープ又はそのいかなる考え得る組合せでも含み得る。実施例において記載されるように、エピトープは、上記の技法を使用して同定し得る、又はSTECタンパク質の断片は、免疫原性及び全ポリペプチドに代わって組成物中で使用される活性断片について試験され得る。エピトープはスペーサーにより分離されていてもよい。選択されるSTECポリペプチド間の様々なスペーサー配列の戦略的使用は、対象構築物に増加した免疫原性を与えることが可能である。したがって、本発明下では、選択されるスペーサー配列は、1又は2以上のアミノ酸長の多種多様な部分をコードし得る。選択されるスペーサー群は、発現されるキメラがインビボにおいてタンパク質分解酵素により(APC又は同様のものにより)プロセシングされていくつかのペプチドを生じることができるように、酵素切断部位も提供し得る。さらに、免疫原性ヘルパーT細胞エピトープを提供するような、一般に当技術分野で認識されている両親媒性及び/又はαらせん状ペプチド配列をコードする配列などのT細胞抗原性を提供するようにスペーサー配列を構築し得る。含まれる場合には、そのようなスペーサー配列により提供されることになる特定のT細胞エピトープの選択は、ワクチン接種されることになる特定の種に応じて変わり得る。
特に好ましいのはアミノ酸スペーサー配列である。そのようなスペーサーは典型的には、1〜500アミノ酸、好ましくは1〜100アミノ酸、さらに好ましくは1〜50アミノ酸、好ましくは1〜25アミノ酸、もっとも好ましくは1〜10アミノ酸、又は1〜500の間の任意の整数を含むことになる。スペーサーアミノ酸は、様々なエピトープ間で同一でも異なっていてもよい。スペーサーとしての使用のために特に好ましいアミノ酸は、セリン、アラニン、グリシン及びバリンなどの小側鎖基のアミノ酸である。
本明細書ではスペーサー配列を含む特定のキメラが例証されているが、融合構築物中に存在するエピトープのうちの1又は2以上が、介在スペーサー配列なしで別のエピトープに直に隣接することが可能であることも理解されるべきである。
特定のSTEC複数エピトープ融合タンパク質のヌクレオチド及びアミノ酸配列は、それぞれ図5A及び5B(配列番号51及び52)に示されており、該配列の図表示は図9Bに示されている。図9A及び図9Bに示されるように、このタンパク質には、4つの異なるSTECセロタイプ由来のエフェクタータンパク質Tir由来のエピトープが含まれる。そのDNA配列には、STEC O157:H7の完全長コード配列の他に240塩基対のSTEC O111:NM Tir、165塩基対のSTEC O26:H11 Tir及び90塩基対のO103:H2 Tirが含まれる。これらの配列は、アミノ酸GlyとSerの様々な組合せを含むスペーサーにより分離されている。
上記タンパク質には、N末端からC末端への順に、完全長O157 Tir配列(図5Bのアミノ酸1〜558)、続いてリンカーGly−Ser−Gly−Ser、続いてO111 Tirのアミノ酸279〜358(図5Bにおけるアミノ酸565〜644に一致する)、続いてリンカーSer−Gly−Ser−Gly、続いてO26 Tirのアミノ酸243〜296(図5Bにおけるアミノ酸651〜705に一致する)、続いてリンカーSer−Ser−Gly−Gly、続いてO103のアミノ酸318〜347(図5Bにおけるアミノ酸712〜741に一致する)が含まれる。図5Bにおけるアミノ酸559〜564、645〜650及び706〜711は、Tir断片を挿入するのに使用される制限部位を表す。
II.タンパク質コンジュゲート
STECタンパク質と複数エピトープ融合分子の免疫原性を増強するために、これに担体をコンジュゲートし得る。「担体」とは、所望の抗原と会合しているときに該抗原に免疫原性を与える任意の分子である。適切な担体の例には、タンパク質などの大きなゆっくり代謝される巨大分子;セファロース、アガロース、セルロース、セルロースビーズ及び同類のものなどの多糖類;ポリグルタミン酸、ポリリシン及び同類のものなどのポリマーアミノ酸;アミノ酸コポリマー;不活性ウイルス粒子;破傷風トキソイドなどの細菌毒素、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、サイログロブリン、卵白アルブミン、血清クジラミオグロビン及び当業者に周知の他のタンパク質が挙げられる。本発明の抗原に対する他の適切な担体には、米国特許第5,071,651号明細書に開示されるようなロタウイルスのVP6ポリペプチド又はその機能的断片が挙げられる。
これらの担体はその天然型で使用してもよく、又はその官能基含有量を、例えば、リシン残基のサクシニル化若しくはCysチオラクトンとの反応により改変してもよい。スルフヒドリン基は、例えば、アミノ官能基と2−イミノチオラン又は3−(4−プロピオン酸ジチオピリジルのN−ヒドロキシサクシニミドエステルとの反応により担体(又は抗原)に組み込まれてもよい。適切な担体は、ペプチドの付着のためにスペーサーアーム(例えば、ヘキサメチレンジアミン又は類似の大きさの他の二機能性分子)を組み込むように改変され得る。
STECタンパク質と複数エピトープ融合分子は、パスツレラ・ヘモロチカロイコトキシン(LKT,Pasteurella haemolytica leukotoxin)ポリペプチドなどの毒素のRTXファミリーのメンバー(下にさらに記載される)にコンジュゲートすることも可能である。例えば、1993年4月29日出願の国際公開第93/08290号パンフレットの他にも米国特許第5,238,823号明細書、米国特許第5,273,889号明細書、米国特許第5,723,129号明細書、米国特許第5,837,268号明細書、米国特許第5,422,110号明細書、米国特許第5,708,155号明細書、米国特許第5,969,126号明細書、米国特許第6,022,960号明細書、米国特許第6,521,746号明細書及び米国特許第6,797,272号明細書を参照されたい。これら特許文献はすべて参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。
ロイコトキシンポリペプチド担体は、カルボキシ末端コンセンサスアミノ酸配列Gly−Gly−X−Gly−X−Aspにより特徴付けられる分子のファミリーに属するタンパク質由来であり(Highlander et al., DNA (1989) 8:15-28)、XはLys、Asp、Val又はAsnである。そのようなタンパク質は、とりわけ、P.ヘモリチカ及びアクチノバチルス・プルロニューモニア由来のロイコトキシンの他にも大腸菌アルファ溶血素を含む(Strathdee et al., Infect. Immun. (1987) 55:3233-3236; Lo, Can. J. Vet. Res. (1990) 54:S33-S35; Welch, Mol. Microbiol. (1991) 5:521-528)。毒素のこのファミリーは、毒素の「RTX」ファミリーとして知られている(Lo, Can. J. Vet. Res. (1990) 54:S33-S35)。いくつかのロイコトキシンのヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列は公知である。例えば、米国特許第4,957,739号明細書及び米国特許第5,055,400号明細書;Lo et al., Infect. Immun. (1985) 50:667-67; Lo et al., Infect. Immun. (1987) 55:1987-1996; Strathdee et al., Infect. Immun. (1987) 55:3233-3236; Highlander et al., DNA (1989) 8:15-28; Welch, Mol. Microbiol. (1991) 5:521-528を参照されたい。本明細書で使用するための免疫原性ロイコトキシンポリペプチドの特定の例には、LKT342、LKT352、LKT111、LKT326及びLKT101が挙げられるが、これらは下により詳細に記載されている。
「LKT352」とは、プラスミドpAA352中に存在するlktA遺伝子(図10)由来であり、米国特許第5,476,657号明細書に記載されているタンパク質を意味する。この特許文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。LKT352は天然ロイコトキシン配列のN末端短縮を有し、その天然分子のアミノ酸38〜951を含む。したがって、プラスミドpAA352中の遺伝子は、該分子の細胞障害性部分を欠く、914アミノ酸を有する短縮されたロイコトキシンをコードしている。LKT352のヌクレオチド及びアミノ酸配列は図11A〜11Iに示されている。
「LKT111」とは、プラスミドpCB111中に存在するlktA遺伝子由来のロイコトキシンポリペプチドを意味する。該プラスミド及びこの遺伝子のヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列は、米国特許第5,723,129号明細書及び米国特許第5,969,126号明細書に記載されており、これらの特許文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。該遺伝子は、約1300bp長の内部のDNA断片を取り除くことにより、プラスミドpAA352中に存在する組換えロイコトキシン遺伝子から開発されたロイコトキシンの短縮版をコードする。LKT111ポリペプチドは52kDa(99kDaのLKT352ポリペプチドと比べて)の推定分子量を有し、担体分子として機能する能力を保持しており、本発明の融合タンパク質を作製するのに使用するための都合のよい制限部位を含有している。
「LKT101」とは、プラスミドpAA101中に存在するlktA遺伝子由来のロイコトキシンポリペプチドを意味する。該プラスミド及びLKT101の配列は米国特許第5,476,657号明細書(その図3参照)に記載されており、この特許文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。LKT101ポリペプチドは、該遺伝子の5’末端から独自のPst1制限エンドヌクレアーゼ部位までを含有するC末端短縮型のlktA遺伝子から発現される。したがって、LKT101は、天然完全長P.ヘモリチカロイコトキシンの最初の377アミノ酸を含む。
「LKT342」とは、米国特許第5,476,657号明細書に記載されるプラスミドpAA342中に存在するlktA遺伝子由来のロイコトキシンポリペプチドを意味する。この特許文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。LKT342は、天然ロイコトキシン配列のN末端とC末端短縮を有し、天然ロイコトキシンのアミノ酸38〜334を含む。
上記の様々なLKT分子は代表的なものであり、STECタンパク質及び融合物の免疫原性を増強する他のロイコトキシン分子も本明細書において利用法があることになる。さらに、ロイコトキシン分子は対応するプラスミド中に存在する配列に物理的に由来する必要はないが、例えば、下記のように、化学的合成又は組換え産生による方法を含むいかなる方法において生み出してもよい。
さらに、STECタンパク質と複数エピトープ融合分子を、担体分子のカルボキシル末端若しくはアミノ末端のどちらかに又は両方に、又は内部の部位で担体に融合させることが可能である。
担体は、標準カップリング反応を使用して所望のタンパク質に物理的にコンジュゲートさせることが可能である。代わりに、キメラ分子は、選択されるSTECタンパク質又はSTEC複数エピトープ融合分子をコードする遺伝子の1若しくは2以上のコピー又はその断片に、適切なポリペプチド担体をコードする遺伝子を融合させることなどによる、本発明において使用するために組換え的に調製することが可能である。
ロイコトキシン担体を含む例となるキメラ構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列は、それぞれ図6A及び6Bに示されており、該配列の図表示は図9Cに示されている。この構築物は、ロイコトキシン担体分子がN末端に存在すること以外は上記キメラTir構築物と同一である。
該タンパク質は、N末端からC末端への順に、pAA352由来の短いベクター配列(図6Bのアミノ酸1〜9に一致する)、LKT352(図6Bのアミノ酸10〜923に一致する)、pAA352由来の短いベクター配列(図6Bのアミノ酸924〜926)、O157 Tirのアミノ酸2〜558(図6Bにおけるアミノ酸927〜1483に一致する)、続いてリンカーGly−Ser−Gly−Ser、続いてO111 Tirのアミノ酸279〜358(図6Bにおけるアミノ酸1490〜1569に一致する)、続いてリンカーSer−Gly−Ser−Gly、続いてO26 Tirのアミノ酸243〜296(図6Bにおいてアミノ酸1576〜1630に一致する)、続いてリンカーSer−Ser−Gly−Gly、続いてO103のアミノ酸318〜347(図6Bにおいてアミノ酸1635〜1666に一致する)を含む。図6Bにおけるアミノ酸1484〜1489、1570〜1575及び1631〜1634は、Tir断片を挿入するのに使用される制限部位を表している。
III.STECタンパク質、複数エピトープ融合構築物及びコンジュゲートの作製
STECタンパク質及びその免疫原性断片並びに担体分子とのコンジュゲートは、いかなる適切な方法でも(例えば、組換え発現、細胞培養からの精製、化学的合成、等)及び様々な形態で(例えば、天然、変異体、融合物、等)調製することが可能である。そのようなタンパク質及びコンジュゲートを調製するための手段は当技術分野ではよく理解されている。タンパク質及びコンジュゲートは、好ましくは実質的に純粋な形態で(すなわち、他の宿主細胞又は非宿主細胞タンパク質が実質的にない)調製される。
タンパク質及びそのコンジュゲートは、ペプチド技術分野の当業者に公知であるいくつかの技法のうちのいずれによっても、都合よく、化学的に合成することが可能である。一般に、これらの方法は、伸長しているペプチド鎖への1又は2以上のアミノ酸の連続付加を用いる。通常、第1アミノ酸のアミノ基又はカルボキシル基のどちらかは適切な保護基により保護されている。次に、保護された又は誘導体化されたアミノ酸を不活性固形支持体に付着させる、又はアミド連鎖の形成を可能にする条件下で、相補(アミノ若しくはカルボキシル)基が適切に保護されている配列において次のアミノ酸を付加することにより溶液中で利用することが可能である。次に、保護基は、新たに付加されたアミノ酸残基から取り除かれ、その後次のアミノ酸(適切に保護されている)が付加される、など。望ましいアミノ酸が正しい配列に連結された後、残っている保護基はいずれも(固相合成法が使用される場合はいずれの固体支持体でも)順次又は同時に取り除かれて最終ポリペプチドを与える。この一般的手順の簡単な改変により、例えば、保護されたトリペプチドを適切に保護されたジペプチドと(キラル中心をラセミ化しない条件下で)カップリングさせて脱保護後ペンタペプチドを形成させることにより、一度に1を超えるアミノ酸を伸長している鎖に付加することが可能である。例えば、固相ペプチド合成法については、J. M. Stewart and J. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis (Pierce Chemical Co., Rockford, IL 1984)及びG. Barany and R. B. Merrifield, The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, editors E. Gross and J. Meienhofer, Vol. 2, (Academic Press, New York, 1980), pp. 3-254を参照し、古典的な溶液合成法については、M. Bodansky, Principles of Peptide Synthesis, (Springer-Verlag, Berlin 1984)及びE. Gross and J. Meienhofer, Eds., The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, Vol. 1を参照されたい。
典型的な保護基には、t−ブチルオキシカルボニル(Boc,butyloxycarbonyl)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc,fluorenylmethoxycarbonyl)ベンジルオキシカルボニル(Cbz,benzyloxycarbonyl);p−トルエンスルホニル(Tx,toluenesulfonyl);2,4−ジニトロフェニル;ベンジル(BzI,benzyl);ビフェニルイソプロピルオキシカルボキシ−カルボニル、t−アミルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、o−ブロモベンジルオキシカルボニル、シクロヘキシル、イソプロピル、アセチル、o−ニトロフェニルスルフォニル及び同類のものが挙げられる。典型的な固形支持体は架橋ポリマー支持体である。これらには、ジビニルベンゼン架橋スチレンベースポリマー、例えば、ジビニルベンゼン−ヒドロキシメチルスチレン共重合体、ジビニルベンゼン−クロロメチルスチレン共重合体及びジビニルベンゼン−ベンズヒドリルアミノポリスチレン共重合体を挙げることが可能である。
本発明のタンパク質及びコンジュゲートは、同時複数ペプチド合成の方法などによる他の方法によって化学的に調製することも可能である。例えば、Houghten Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 82:5131-5135; 米国特許第4,631,211号明細書を参照されたい。代わりに、上記タンパク質及びコンジュゲートは組換え的に作製することが可能である。例えば、代表的な組換えSTECタンパク質の作製の説明については、国際公開第97/40063号パンフレット及び国際公開第99/24576号パンフレット及び米国特許第7,300,659号明細書を参照されたい。これら広報及び特許は参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。本発明のタンパク質は、発現のためにN末端メチオニンを有していてもよいが、必ずしも含む必要はない。
望ましいタンパク質のコード配列が単離され又は合成されると、発現のためにいかなる適切なベクター又はレプリコンにもクローニングすることが可能である。数多くのクローニングベクターが当業者には公知であり、適切なクローニングベクターの選択は好みによる。当技術分野では種々の細菌、酵母、植物、哺乳動物及び昆虫発現系が利用可能であり、そのような発現系のいずれでも使用することが可能である。随意に、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを無細胞翻訳系において翻訳させることが可能である。そのような方法は当技術分野では周知である。
クローニングのための組換えDNAベクター及びそのベクターが形質転換することが可能な宿主細胞の例には、バクテリオファージλ(大腸菌)、pBR322(大腸菌)、pACYC177(大腸菌)、pKT230(グラム陰性菌)、pGV1106(グラム陰性菌)、pLAFR1(グラム陰性菌)、pME290(非大腸菌グラム陰性菌)、pHV14(大腸菌及びバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis))、pBD9(バチルス(Bacillus))、pIJ61(ストレプトマイセス(Streptomyces))、pUC6(ストレプトマイセス)、YIp5(サッカロミセス(Saccharomyces))、YCp19(サッカロミセス)並びにウシパピローマウイルス(哺乳動物細胞)が挙げられる。一般的には、DNA Cloning: Vols. I & II (同上); Sambrook et al. (同上); B. Perbal (同上)を参照されたい。
バキュロウイルス系などの昆虫細胞発現系も使用することが可能であり、当業者には公知であり、例えば、Summers and Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No. 1555 (1987)に記載されている。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料及び方法は、とりわけ、Invitrogen社製、 San Diego Calif.からキットの形態(「MaxBac」 kit)で市販されている。
植物発現系を使用して免疫原性タンパク質を作製することも可能である。一般に、そのような系はウイルスベースのベクターを使用して植物細胞に異種遺伝子をトランスフェクトさせる。そのような系の説明は、例えば、Porta et al., Mol. Biotech. (1996) 5:209-221; and Hackiand et al., Arch. Virol. (1994) 139:1-22を参照されたい。
Tomei et al., J. Virol. (1993) 67:4017-4026 and Selby et al., J. Gen. Virol. (1993) 74:1103-1113に記載されるワクシニアベースの感染/トランスフェクション系などのウイルス系も、本発明に関して利用法があることになる。この系では、細胞は先ず、バクテリオファージT7RNAポリメラーゼをコードするワクシニアウイルス組換え体をインビトロでトランスフェクトされる。このポリメラーゼは、T7プロモーターを抱える鋳型のみを転写する点で、精巧な特異性を示す。感染に続いて、細胞は、T7プロモーターにより推進される所望のDNAをトランスフェクトされる。細胞質においてワクシニアウイルス組換え体から発現されるポリメラーゼは、トランスフェクトされたDNAをRNAに転写し、その後RNAは宿主翻訳機械によりタンパク質に翻訳される。該方法は、大量のRNA及びその翻訳産物(複数可)の高レベル一過性細胞質産生を提供する。
望ましい免疫原性ペプチドをコードするDNA配列が、この発現構築を含有するベクターにより形質転換される宿主細胞においてRNAに転写されるように、コード配列を、プロモーター、リボソーム結合部位(細菌発現のために)及び随意にオペレーター(本明細書では、全体では「制御」エレメントと呼ばれる)の制御下に置くことが可能である。コード配列は、シグナルペプチド又はリーダー配列を含有していてもしていなくてもよい。リーダー配列は、翻訳後プロセシングにおいて宿主により取り除かれることが可能である。例えば、米国特許第4,431,739号明細書、米国特許第4,425,437号明細書、米国特許第4,338,397号明細書を参照されたい。
宿主細胞の増殖に関連してペプチド配列の発現を調節することを可能にする他の調節配列も望ましい場合がある。そのような調節配列は当業者には公知であり、例には、調節化合物の存在を含む化学的又は物理的刺激に応答して遺伝子の発現にスイッチを入れる又は切る調節配列が挙げられる。他の種類の調節エレメント、例えば、エンハンサー配列もベクター内に存在し得る。
制御配列及び他の調節配列は、ベクターへの挿入に先立ってコード配列にライゲートされ得る。代わりに、コード配列を、すでに制御配列及び適切な制限部位を含有する発現ベクターに直接クローニングすることが可能である。
いくつかの場合、コード配列が適切な配向を有する制御配列に結合され得るように、すなわち正しい読み枠を維持するために、コード配列を改変することが必要になる場合がある。免疫原性タンパク質の変異体又はアナログを作製することが望ましい場合もある。変異体又はアナログは、タンパク質をコードする配列の一部の欠失により、配列の挿入により、及び/又は配列内の1若しくは2以上のヌクレオチドの置換により調製し得る。部位特異的突然変異誘発などのヌクレオチド配列を改変するための技法は当業者には周知である。例えば、Sambrook et al. (同上); DNA Cloning, Vols. I and II (同上); Nucleic Acid Hybridization (同上)を参照されたい。
次に、発現ベクターを使用して適切な宿主細胞を形質転換する。いくつかの哺乳動物細胞株が当技術分野では公知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO,Chinese hamster ovary)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK,baby hamster kidney)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)の他にも他の細胞などの、しかしこれらに限定されないアメリカ培養細胞株保存機関(ATCC,American Type Culture Collection)から入手可能な不死化細胞株が挙げられる。同様に、大腸菌、バチルス・スブチリス及び連鎖球菌(Streptococcus)菌種などの細菌宿主は、本発現構築物に関して利用法があることになる。本発明において有用な酵母宿主には、とりわけ、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロマイセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・ギリエルモンディ(Pichia guillerimondii)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)及びヤロウイア・リポリチィカ(Yarrowia lipolytica)が挙げられる。バキュロウイルス発現ベクターを用いて使用するための昆虫細胞には、とりわけ、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)、カイコ(Bombyx mori)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)及びイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)が挙げられる。
選択される発現系及び宿主に応じて、本発明のペプチドは、所望のタンパク質が発現される条件下で上記の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を培養することにより産生される。適切な培養条件の選択は当技術分野の範囲内である。次に該細胞は、細胞は溶解させるがペプチドは実質的に無傷のままにしておく化学的、物理的又は機械的手段を使用して、破壊される。細胞壁又は膜から成分を取り除くことにより、例えば、免疫原性ポリペプチドの漏出が起こるように、洗浄剤又は有機溶剤を使用することにより、細胞内タンパク質を得ることも可能である。そのような方法は当業者には公知であり、例えば、Protein Purification Applications: A Practical Approach, (E. L. V. Harris and S. Angal, Eds., 1990) に記載されている。
例えば、本発明に関して使用するための細胞を破壊する方法には、音波処理又は超音波処理;攪拌;液体又は固体押出;熱処理;凍結融解;乾燥;爆発的減圧;浸透圧衝撃;トリプシン、ノイラミニダーゼ及びリゾチームなどのプロテアーゼを含む溶解酵素を用いた処理;アルカリ処理;並びに胆汁塩、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton、NP40及びCHAPSなどの界面活性剤及び溶剤の使用が挙げられるがこれらに限定されない。細胞を破壊するのに使用される特定の技法は、主に選択の問題であり、ポリペプチドが発現される細胞型、培養条件及び任意の使用される前処理に依拠することになる。
細胞の破壊に続いて、細胞残屑は一般に遠心分離により取り除かれ、細胞内産生タンパク質は、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、HPLC、免疫吸着剤法、アフィニティークロマトグラフィー、免疫沈降及び同類のものなどの、しかしこれらに限定されない標準精製法を使用してさらに精製される。
例えば、本発明の細胞内タンパク質を得るための1つの方法は、特異的抗体を使用する免疫アフィニティークロマトグラフィーなどによるアフィニティー精製を含む。適切なアフィニティー樹脂の選択は当技術分野の範囲内である。アフィニティー精製後、ペプチドは、上記の技法のうちのいずれかなどによる、当技術分野で周知の従来技法を使用してさらに精製することが可能である。
IV.STEC抗体
本発明のSTECタンパク質及び複数エピトープ融合タンパク質を使用して、治療目的、診断目的及び精製目的の抗体を作製することが可能である。これらの抗体はポリクローナル若しくはモノクローナル抗体調製物、単特異性抗血清、ヒト抗体でもよく、又は、ヒト化抗体、改変抗体、F(ab’)2断片、F(ab)断片、Fv断片、単一ドメイン抗体、二量体若しくは三量体抗体断片構築物、ミニボディー、又は問題の抗原に結合するその機能的断片などのハイブリッド又はキメラ抗体でもよい。抗体は当業者に周知であり、例えば、米国特許第4,011,308号明細書、米国特許第4,722,890号明細書、米国特許第4,016,043号明細書、米国特許第3,876,504号明細書、米国特許第3,770,380号明細書及び米国特許第4,372,745号明細書に開示されている技法を使用して作製される。
例えば、該タンパク質を使用して、診断アッセイ及び検出アッセイにおける使用のために、精製のために、並びに受動免疫のためなどの治療法としての使用のためにSTEC特異的ポリクローナル及びモノクローナル抗体を作製することが可能である。そのようなポリクローナル及びモノクローナル抗体は、問題のSTECタンパク質に特異的に結合する。特に、STECタンパク質を使用して、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ又はウマなどの哺乳動物に該タンパク質を投与することによりポリクローナル抗体を産生することが可能である。免疫動物由来の血清は採取され、例えば、硫酸アンモニウムを用いた沈殿、続いてクロマトグラフィー、好ましくはアフィニティークロマトグラフィーにより、抗体は血漿から精製される。ポリクローナル抗血清を作製し処理するための技法は当技術分野では公知である。
細胞表面抗原に存在するエピトープに対して向けられるマウス及び/又はウサギモノクローナル抗体も容易に産生することが可能である。そのようなモノクローナル抗体を産生するために、抗原を生理食塩水に、好ましくは、フロイント完全アジュバント(「FCA」,Freund's complete adjuvant)などのアジュバントに混合する又は乳化し、混合液又は乳濁液を非経口的に(一般には、皮下に若しくは筋肉内に)注射することなどにより、ウサギ又はマウスなどの所望の哺乳動物を免疫する。動物は、生理食塩水中の抗原の1又は2以上の注射で、好ましくはフロイント不完全アジュバント(「FIA,Freund's incomplete adjuvant」)を使用して、一般に2〜6週間後にブーストされる。
抗体は、当技術分野で公知の方法を使用して、インビトロ免疫化によっても生み出され得る。例えば、James et al., J. Immunol. Meth. (1987) 100:5-40を参照されたい。
次に、ポリクローナル抗血清は免疫動物から得られる。しかし、余分な血清まで動物から採血するのではなく、脾臓(及びいくつかの大きなリンパ節でもよい)を取り除き、単細胞に解離させる。必要であれば、脾臓細胞(脾細胞)を、抗原を用いて被膜されたプレート又はウェルに細胞懸濁液を適用させることによりスクリーニングし得る(非特異的接着細胞の除去後)。B細胞は、抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現しているが、プレートに結合することになり、残りの懸濁液を用いても洗い流されない。次に、こうして得られるB細胞又はすべての解離された脾細胞は、不死化細胞株(「融合パートナー」とも呼ばれる)由来の細胞と融合しハイブリドーマを形成するよう誘導される。典型的には、融合パートナーは、特異的な媒体を使用する得られたハイブリドーマの選択を可能にする特性を含む。例えば、融合パートナーは、ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン(HAT,hypoxanthine/aminopterin/thymidine)感受性であることが可能である。
ウサギ−ウサギハイブリドーマが望まれる場合、不死化細胞株はウサギ由来であることになる。そのようなウサギ由来融合パートナーは当技術分野では公知であり、例えば、Spieker-Polet et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA (1995) 92:9348-9352及び米国特許第5,675,063号明細書に記載されるウサギ形質細胞腫由来の細胞などのリンパ系起源の細胞又は米国特許第4,859,595号明細書に記載されるTP−3融合パートナーが挙げられる。これらの文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。ウサギ−マウスハイブリドーマ又はラット−マウス若しくはマウス−マウスハイブリドーマ又は同様のものが望ましい場合は、マウス融合パートナーは、リンパ系起源の細胞などのマウス由来の、典型的にはマウス骨髄腫細胞株由来の不死化細胞株由来になる。いくつかのそのような細胞株は当技術分野では公知であり、ATCCから入手可能である。
融合は、当技術分野で周知の技法を使用して実現される。融合を促進する化学物質は一般にフソゲン(fusogen)と呼ばれる。これらの薬剤は極端に親水性であり膜接触を促進する。細胞融合の1つの特に好ましい方法は、ポリエチレングリコール(PEG,polyethylene glycol)を使用する。細胞融合の別の方法は、電気融合である。この方法では、細胞は、細胞膜電位を変化させる前もって決められた放電に曝露される。細胞融合のための追加の方法は、ブリジッド融合法が挙げられる。この方法では、抗原はビオチン化され、融合パートナーはアビジン化される。これらの細胞を1つに合わせると、抗原反応性B細胞−抗原−ビオチン−アビジン−融合パートナー架橋が形成される。これにより、抗原反応性細胞と不死化細胞との特異的融合が可能になる。該方法は、細胞融合を促進するために化学的又は電気的手段をさらに用い得る。
融合に続いて、細胞は選択培地(例えば、HAT培地)で培養される。抗体分泌を増強するために、IL−6などの分泌刺激効果を有する薬剤を使用してもよい。例えば、Liguori et al., Hybridoma (2001) 20: 189-198を参照されたい。得られたハイブリドーマは限界希釈により蒔くことが可能であり、免疫抗原に特異的に結合し(無関係な抗原には結合しない)抗体の産生についてアッセイされる。次に、選択されるモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマはインビトロで(例えば、組織培養瓶若しくは中空線維反応器(hollow fiber reactor)において)又はインビボで(例えば、マウスにおける腹水として)培養される。例えば、STECタンパク質特異的抗体を産生しているハイブリドーマは、RIA又はELISAを使用して同定し、半流動寒天におけるクローニングにより又は限界希釈により単離することが可能である。望ましい抗体を産生しているクローンは、スクリーニングをもう一巡行うことにより単離することが可能である。
本発明のモノクローナル抗体を産生するための代わりの技法は、選択リンパ球抗体法(SLAM,selected lymphocyte antibody method)である。この方法は、大集団のリンパ球細胞内で望ましい特異性又は機能を有する抗体を産生している単一リンパ球を同定する。次に、抗体の特異性をコードする遺伝情報(すなわち、免疫グロブリンVH及びVLDNA)はレスキューされクローニングされる。この方法の説明については、例えば、Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93:7843-7848を参照されたい。
ウサギモノクローナル抗体並びにウサギ−ウサギ及びウサギ−マウス融合体からウサギモノクローナル抗体を作る方法の追加の説明については、例えば、米国特許第5,675,063号明細書(ウサギ−ウサギ)、米国特許第4,859,595号明細書(ウサギ−ウサギ)、米国特許第5,472,868号明細書(ウサギ−マウス)及び米国特許第4,977,081号明細書(ウサギ−マウス)を参照されたい。従来のマウスモノクローナル抗体の作製の説明については、例えば、Kohler and Milstein, Nature (1975) 256:495-497を参照されたい。
キメラ抗体を提供するのが望ましい場合がある。「キメラ抗体」とは、好ましくは組換え技法を使用して得られ、ヒト(免疫学的に「関係のある」種、例えば、チンパンジーを含む)と非ヒト成分の両方を含む抗体を指す。そのような抗体は「ヒト化抗体」とも呼ばれる。好ましくは、ヒト化抗体は非ヒト免疫グロブリン配列由来の最小配列を含有する。大部分、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、望ましい特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト種の超可変領域由来の残基(ドナー抗体)で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例えば、米国特許第5,225,539号明細書、米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,693,762号明細書、米国特許第5,859,205号明細書を参照されたい。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク残基は対応する非ヒト残基で置き換えられている(例えば、米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,693,762号明細書参照)。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも存在しない残基を含み得る。これらの改変物は、抗体性能をさらに洗練するために(例えば、望ましい親和性を得るために)作られる。一般に、ヒト化抗体は、超可変領域のすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に一致しており、フレームワーク領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である、少なくとも1つの典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むことになる。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含むことになってもよい。さらに詳細な点は、Jones et al., Nature (1986) 331:522-525; Riechmann et al., Nature (1988) 332:323-329; and Presta, Curr. Op. Struct. Biol. (1992) 2:593-596を参照されたい。
非ヒト哺乳動物宿主、さらに具体的には、不活性化された内在性免疫グロブリン(Ig)座により特徴付けられるトランスジェニックマウスにおいて産生される異種又は改変抗体も包含される。そのようなトランスジェニック動物では、宿主免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖サブユニットの発現のためのコンピテント内在性遺伝子は、非機能性にされ類似のヒト免疫グロブリン座で置換されている。これらのトランスジェニック動物は、軽鎖又は重鎖宿主免疫グロブリンサブユニットの実質的非存在下でヒト抗体を産生する。例えば、米国特許第5,939,598号明細書を参照されたい。
所望のタンパク質を認識する能力を保持している抗体断片も本明細書において利用法があることになる。無傷の抗体分子の免疫学的結合特性を示すことができる抗原結合部位を含むいくつかの抗体断片は当技術分野では公知である。例えば、機能的抗体断片は、例えば、ペプシンを使用して抗体分子から抗原結合に関与しない定常領域を切断してF(ab’)2断片を作製することにより作製することが可能である。これらの断片は、2つの抗原結合部位を含有するが、重鎖のそれぞれ由来の定常領域の一部を欠くことになる。同様に、必要であれば、1つの抗原結合部位を含むFab断片を、例えば、パパインを用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体を消化することにより、作製することが可能である。重鎖と軽鎖の可変領域のみを含む機能的断片を、組換え産生又は免疫グロブリン分子の優先的タンパク質切断などの標準技法を使用して作製することも可能である。これらの断片はFVとして知られている。例えば、Inbar et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA (1972) 69:2659-2662; Hochman et al., Biochem. (1976) 15:2706-2710; and Ehrlich et al., Biochem. (1980) 19:4091-4096を参照されたい。
ファージディスプレイ法を使用して、インビトロで抗体分子集団を拡大することが可能である。Saiki, et al., Nature (1986) 324:163; Scharf et al., Science (1986) 233:1076; 米国特許第4,683,195号明細書及び米国特許第4,683,202号明細書; Yang et al., J Mol Biol. (1995) 254:392; Barbas, III et al., Methods: Comp. Meth Enzymol. (1995) 8:94; Barbas, III et al., Proc Natl Acad Sci USA(1991) 88:7978。
産生されると、ファージディスプレイライブラリーを使用して、Fab分子の免疫学的結合親和性を公知の技法を使用して改良することが可能である。例えば、Figini et al., J. Mol. Biol (1994) 239:68を参照されたい。ファージジディスプレイライブラリーから選択されるFab分子の重鎖と軽鎖部分のコード配列は、単離する又は合成し、発現のためのいかなる適切なベクター又はレプリコンにでもクローニングすることが可能である。上記の発現系を含むいかなる適切な発現系でも使用することが可能である。
一本鎖抗体も作製することが可能である。一本鎖Fv(「sFv」又は「scFv」)ポリペプチドは、ペプチドコードリンカーにより連結されたVH−及びVL−コード遺伝子を含む遺伝子融合体から発現される共有結合VH−VLヘテロ二量体である。Huston et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA (1988) 85:5879-5883。抗体V領域由来の自然に凝集しているが化学的に分離された軽鎖及び重鎖ポリペプチド鎖を、抗原結合部位の構造に実質的に類似している三次元構造に折り畳まれることになるsFv分子に変換するための化学的構造体(リンカー)を識別し発達させるいくつかの方法がすでに記載されている。例えば、米国特許第5,091,513号明細書、米国特許第5,132,405号明細書及び米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい。sFv分子は当技術分野に記載される方法を使用して作製され得る。例えば、Huston et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA (1988) 85:5879-5883; 米国特許第5,091,513号明細書、米国特許第5,132,405号明細書及び米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい。設計基準は、リンカーが丸くなる、又は二次構造を形成する傾向がない小親水性アミノ酸残基から一般に形成される1つの鎖のC末端ともう一方の鎖のN末端間の距離をまたがるのに適切な長さを決定することを含む。そのような方法は当技術分野ですでに記載されている。例えば、米国特許第5,091,513号明細書、米国特許第5,132,405号明細書及び米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい。適切なリンカーは一般に、グリシンとセリン残基が交互になったセットのポリペプチド鎖を含み、可溶性を増強するために挿入されるグルタミン酸及びリシン残基を含んでもよい。
「ミニ抗体」又は「ミニボディー」も本発明に関して利用法があることになる。ミニボディーは、ヒンジ領域によりsFvから分離されているそのC末端にオリゴマー形成ドメインを含むsFvポリペプチド鎖である。Pack et al., Biochem. (1992) 31 : 1579-1584。オリゴマー形成ドメインは、追加のジスルフィド結合によりさらに安定化することが可能である自己会合性αヘリックス、例えば、ロイシンジッパーを含む。オリゴマー形成ドメインは、膜を横切るベクトルフォールディング、すなわち機能的結合タンパク質へのポリペプチドのインビボフォールディングを促進すると考えられるプロセス、と適合するように設計される。一般に、ミニボディーは、当技術分野で周知の組換え法を使用して作製される。例えば、Pack et al., Biochem. (1992) 31: 1579-1584; Cumber et al., J Immunology (1992) 149B:120-126を参照されたい。
上記の抗体及びその免疫反応性断片をコードするポリヌクレオチド配列は、STECタンパク質の組換え産生に関する上記の技法などの、当技術分野で周知の標準技法を使用して容易に得られる。
STEC疾患を有すると分かっている対象では、抗STECタンパク質抗体は治療効果を有する可能性があり、これを使用して問題の対象に受動免疫を与えることが可能である。代わりに、抗体は、さらに下に記載される診断的適用においての他にSTECタンパク質の精製のためにも使用することが可能である。
V.免疫原性組成物
上のタンパク質、コンジュゲート、抗体、並びに必要であれば追加の組換え及び/又は精製タンパク質が作製されると、哺乳動物対象への送達のために組成物に処方される。活性成分は典型的には薬学的に許容されるビヒクル又は賦形剤と混合される。適切なビヒクルは、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセリン、エタノール又は同類のもの及びその組合せである。さらに該ビヒクルは、湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、又はワクチン組成物の場合は、ワクチンの有効性を増強するアジュバントなどの少量の補助剤を含有し得る。適切なアジュバントはさらに下に記載されている。本発明の組成物は、薬剤、サイトカイン、又は他の生物学的応答調節剤などの補助物質も含むことが可能である。
上記に説明されるように、本発明のワクチン組成物は、STEC抗原のうちの1又は2以上の免疫原性をさらに増加するためのアジュバントを含み得る。そのようなアジュバントには、STEC抗原又は抗原の組合せに対する免疫応答を増加するように作用し、したがって、ワクチンにおいて必要な抗原の量及び/又は十分な免疫応答を生み出すために必要な注射の回数を低減するいかなる化合物又は複数の化合物でも挙げられる。アジュバントは、例えば、乳化剤、ムラミルジペプチド、アブリジン、水酸化アルミニウムなどの水溶性アジュバント、キトサンベースのアジュバント、並びに様々なサポニン、オイル、及びアンフィゲン(Amphigen)、LPS、細菌細胞壁抽出物、細菌DNA、合成オリゴヌクレオチド及びその組合せなどの当技術分野で公知の他の物質のいずれでも(Schijns et al., Curr. Opi. Immunol. (2000) 12:456)、マイコバクテリウム・フレイ(M.phlei,Mycobacterial phlei)細胞壁抽出物(MCWE,Mycobacterial phlei cell wall extract)(米国特許第4,744,984号明細書)、M.phlei DNA(M−DNA)、M−DNA−M.phlei細胞壁複合体(MCC,M-DNA-M. phlei cell wall complex)が挙げられ得る。例えば、本明細書において乳化剤として働き得る化合物には、天然及び合成乳化剤の他にアニオン性、カチオン性及び非イオン性化合物が挙げられる。合成化合物のうち、アニオン性乳化剤には、例えば、ラウリン酸とオレイン酸のカリウム、ナトリウム及びアンモニウム塩、脂肪酸のカルシウム、マグネシウム及びアルミニウム塩(すなわち、金属セッケン)並びにラウリル硫酸ナトリウムなどの有機スルホン酸が挙げられる。合成カチオン剤には、例えば、セチルトリメチルアンモニウム臭化物が挙げられ、合成非イオン剤は、グリセリルエステル(例えば、モノステアリン酸グリセリン)、ポリオキシエチレングリコールエステル及びエーテル、並びにソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノパルミチン酸)及びそのポリオキシエチレン誘導体(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸)により例示される。天然乳化剤には、アカシア、ゼラチン、レシチン及びコレステロールが挙げられる。
他の適切なアジュバントは、単一オイル、オイルの混合物、油中水型乳剤、又は水中油型乳剤などのオイル成分を用いて形成することが可能である。オイルは、鉱油、植物油又は動物油でもよい。鉱油又はオイル成分が鉱油である水中油型乳剤が好ましい。この点に関して、「鉱油」は、本明細書では、蒸留法を介してワセリンから得られる液化炭化水素の混合物として定義されており、この用語は「流動パラフィン」、「流動ワセリン」及び「ホワイト鉱油」と同義である。この用語は、「軽油」、すなわちワセリンの蒸留から同様に得られるが、ホワイト鉱油より比重がわずかに低いオイルを含むことも意図されている。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (同上)を参照されたい。特に好ましいオイル成分は、MVP Laboratories社製、 Ralston, Nebraskaから入手可能なEMULSIGEN PLUS(商標)(軽油の他に保存剤として0.05%ホルマリン及び30mcg/mLゲンタマイシンを含む)の商品名で販売されている水中油型乳剤である。本明細書において使用するための別の好ましいアジュバントは、DDAを含む改質型のEMULSIGEN PLUS(商標)アジュバントである「VSA3」として知られるアジュバントである(米国特許第5,951,988号明細書参照。この特許は参照によりその全体を本明細書に組み込まれている)。適切な動物油には、例えば、タラ肝油、ハリバ油、メンヘーデン油、オレンジラフィー油及びサメ肝油が挙げられ、すべて市販されている。適切な植物油には、ナタネ油、アーモンド油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油及び同類のものが限定されることなく挙げられる。
代わりに、いくつかの脂肪族窒素含有塩基は、ワクチン製剤と一緒にアジュバントとして使用することが可能である。例えば、公知の免疫アジュバントは、アミン類、四級アンモニウム化合物、グアニジン、ベンズアミジン及びチオウロニウムを含む(Gall, D. (1966) Immunology 11:369-386)。特定の化合物は、ジメチルジオクタデシルアンモニウム臭化物(DDA,dimethyldioctadecylammonium bromide)(Kodak社から入手可能)及びN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン(「アブリジン」)を含む。免疫アジュバントとしてのDDAの使用はすでに記載されており、例えば、the Kodak Laboratory Chemicals Bulletin 56(1):l-5 (1986); Adv. Drug Deliv. Rev. 5(3):163-187 (1990); J. Controlled Release 7:123-132 (1988); Clin. Exp. Immunol. 78(2):256-262 (1989); J. Immunol. Methods 97(2): 159-164 (1987); Immunology 58(2):245-250 (1986); 及びInt. Arch. Allergy Appl. Immunol. 68(3):201-208 (1982)を参照されたい。アブリジンも周知のアジュバントである。N,N−高級アルキル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン一般の、及び特にワクチンアジュバントとしてのアブリジンの使用を記載している、Wolff, III et al.への米国特許第4,310,550号明細書を参照されたい。Babiukへの米国特許第5,151,267号明細書及びBabiuk et al. (1986) Virology 159:57-66も、ワクチンアジュバントとしてのアブリジンの使用に関する。
ワクチン組成物は、ミキシング、音波処理及び顕微溶液化を含むがこれらに限定されない当業者には周知の技法を使用して、STECタンパク質調製物とアジュバントを均一で密に会合させることにより調製することが可能である。アジュバントは、好ましくはワクチンの約10〜50%(v/v)、さらに好ましくは約20〜40%(v/v)、もっとも好ましくは約20〜30%若しくは35%(v/v)又はこれらの範囲内の任意の整数を含むことになる。
本発明の組成物は、通常は、液体溶液若しくは懸濁液としての注射剤として、又は注射に先立つ液体ビヒクル中の溶液若しくは懸濁液に適した固体形態として調製される。調製物は、固体形態に、乳化されて又は徐放性送達のために使用されるリポソームビヒクル若しくは他の微粒子担体に被包された活性成分にも調製し得る。例えば、ワクチンは、ワクチンの徐放を可能にする、油乳剤、油中水型乳剤、水中油中水型乳剤、部位特異的乳剤、長期滞留乳剤、粘着性乳剤、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、リポソーム、微小粒子、マイクロスフィア、ナノスフィア、ナノ粒子、並びに酢酸エチレンビニル共重合体とHytrel7共重合体などの非吸収性不透過性ポリマー、ハイドロゲルなどの膨潤性ポリマー又はコラーゲンなどの吸収性ポリマー、及び吸収性縫合糸を作るのに使用されるポリ酸又はポリエステルなどのある種のポリ酸又はポリエステルなどの様々な天然又は合成ポリマーの形態であり得る。
さらに、ポリペプチドは、中性又は塩の形態で組成物に処方し得る。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸及び同類のものなどの有機酸で形成される酸付加塩(活性ポリペプチドの遊離のアミノ基で形成される)が挙げられる。遊離のカルボキシル基から形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄などの無機塩基、並びにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン及び同類のものなどの有機塩基由来でもよい。
そのような剤形を調製する実際の方法は当業者には公知であり、又は明らかであろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 18th edition, 1990を参照されたい。
組成物は、望ましいSTECタンパク質又は複数エピトープ融合体の有効量を含有するように処方され、その正確な量は当業者であれば容易に決定され、この量は処置される動物及び抗体を合成する動物の免疫系の能力に依拠する。投与される組成物又は製剤は、処置を受けている対象において望ましい状態を実現するのに十分な本明細書に記載されるSTEC抗原のうちの1又は2以上の量を含有することになる。本発明の目的のために、添加される組換え及び/又は精製STEC抗原と一緒に又はなしでSTECタンパク質を含む治療的有効量のワクチンは、約0.05〜1500μgのSTECタンパク質、好ましくは約10〜1000μgの該タンパク質、さらに好ましくは約30〜500μg、もっとも好ましくは約40〜300μg、例えば、50〜200μg若しくはこれらの値間の任意の整数を含有する。投与経路には、経口、局所的、皮下、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、経皮的及び真皮下が挙げられるが、これらに限定されない。投与経路に応じて、用量当たりの容量は、好ましくは約0.001〜10ml、さらに好ましくは約0.01〜5ml、もっとも好ましくは約0.1〜3mlである。ワクチンは、単回投与処置で又は計画に基づいて、対象の年齢、体重及び状態、使用される特定のワクチン製剤並びに投与経路に適合している期間にわたり複数回投与処置(ブースト)で投与することが可能である。
脊椎動物対象へ組成物を送達するためには、いかなる適切な医薬品送達手段でも用い得る。例えば、従来の針注射器、スプリング又は圧縮ガス(空気)注入器(Smootへの米国特許第1,605,763号明細書;Laurensへの米国特許第3,788,315号明細書;Clark et al.への米国特許第3,853,125号明細書;Morrow et al.への米国特許第4,596,556号明細書;及びDunlapへの米国特許第5,062,830号明細書)、液体ジェット注入器(Schererへの米国特許第2,754,818号明細書;Gordonへの米国特許第3,330,276号明細書;及びLindmayer et al.への米国特許第4,518,385号明細書)並びに粒子注入器(McCabe et al.への米国特許第5,149,655号明細書;及びSanford et al.への米国特許第5,204,253号明細書)はすべてが組成物の送達に適している。
ジェット注入器が使用される場合、液体ワクチン組成物の単回ジェットは、高圧及び速度、例えば、1200〜1400PSI下で駆出され、それによって皮膚に開口を作り免疫化に適した深さまで貫通させる。
VI.核酸ベースの免疫化法
一般に、本発明に関して使用するための核酸ベースのワクチンは、望ましいSTECタンパク質又は融合体をコードする関連領域を、適切な制御配列、及び随意に補助的治療ヌクレオチド配列と一緒に含むことになる。核酸分子は、上記のように、レシピエント細胞において転写及び翻訳を指示するのに必要なエレメントを含むベクターの形態で調製される。
免疫対象における免疫応答を増強するために、核酸分子は、薬物、アジュバントなどの補助物質と併せて又はサイトカイン及び同類のものなどの生物学的応答調節剤をコードするベクターの送達と併せて投与することが可能である。
調製されると、核酸ワクチン組成物は、公知の方法を使用して対象に送達することが可能である。この点に関して、抗原コードDNAを用いる免疫化のための様々な技法はすでに記載されている。例えば、Felgner et al.への米国特許第5,589,466号明細書;Tang et al. (1992) Nature 358:152; Davis et al. (1993) Hum. Molec. Genet. 2:1847; Ulmer et al. (1993) Science 258:1745; Wang et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:4156; Eisenbraun et al. (1993) DNA Cell Biol. 12:791; Fynan et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:12476; Fuller et al. (1994) AIDS Res. Human Retrovir. 10:1433; 及びRaz et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9519を参照されたい。リポソーム媒介遺伝子移入などの、核酸分子をインビトロで細胞まで送達するための、それに続く宿主への再導入のための一般的方法も使用することが可能である。例えば、Hazinski et al. (1991) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 4:206-209; Brigham et al. (1989) Am. J. Med. Sci. 298:278-281; Canonico et al. (1991) Clin. Res. 39:219A; 及びNabel et al. (1990) Science 249:1285-1288を参照されたい。したがって、核酸ワクチン組成物は、種々の公知の技法を使用して、液体又は微粒子形態で送達することが可能である。典型的なワクチン組成物は上に記載されている。
VII.免疫応答の有効性を判定するための試験
治療的処置及び予防の有効性を評価する1つの方法は、本発明の組成物におけるSTECタンパク質及び融合物に対する免疫応答を、組成物の投与後にモニターすることを含む。有効性を評価する別の方法は、本発明の組成物の投与後の感染をモニターすることを含む。さらに、組成物の有効性は、対象における腸管中のSTECの量の減少が実現され、したがって細菌の排泄物排出の量を低減することにより疾患の伝染を減少する、及び/又は動物によるSTEC排出の期間を低減するかどうかを評価することにより決定することが可能である。
本発明の免疫原性組成物のタンパク質の免疫原性を評価する別の方法は、該タンパク質を組換え的に発現させ、免疫ブロットにより対象の血清をスクリーニングすることである。タンパク質と血清間で陽性反応が起これば、対象が問題のタンパク質に対する免疫応答をすでに開始しており、したがって該タンパク質が免疫原であることを示している。この方法は、免疫優性タンパク質及び/又はエピトープを同定するのにも使用し得る。
有効性を検証する別の方法は、本発明の組成物の投与後に感染をモニターすることを含む。有効性を検証する1つの方法は、組成物の投与後に本発明の組成物中の抗原に対する免疫応答を全身的にも(例えば、IgG1及びIgG2a産生のレベルをモニターする)粘膜的にも(例えば、IgA産生のレベルをモニターする)モニターすることを含む。典型的には、血清特異的抗体応答は、免疫化後、但しチャレンジ前に決定されるが、粘膜特異的抗体身体応答は免疫化後及びチャレンジ後に決定される。
本発明の免疫原性組成物は、宿主投与に先立ってインビトロ及びインビボ動物モデルにおいて評価することが可能である。
本発明の免疫原性組成物の有効性は、免疫原性組成物を用いて感染の動物モデルをチャレンジすることによりインビボにおいて決定することも可能である。免疫原性組成物は、チャレンジ株と同じ株由来でもよく、同じ株由来でなくてもよい。好ましくは、免疫原性組成物はチャレンジ株と同じ株から誘導できる。
免疫応答は、TH1免疫応答とTH2応答のうちの1つでも又は両方でもよい。免疫応答は、改良された又は増強された又は改変された免疫応答であり得る。免疫応答は、全身免疫応答と粘膜免疫応答のうちの1つでも又は両方でもよい。好ましくは、免疫応答は、増強された全身及び/又は粘膜応答である。
増強された全身及び/又は粘膜免疫は、増強されたTH1及び/又はTH2免疫応答に反映される。好ましくは、増強された免疫応答は、IgG1及び/又はIgG2a及び/又はIgAの産生の増加を含む。好ましくは、粘膜免疫応答はTH2免疫応答である。好ましくは、粘膜免疫応答は、IgAの産生の増加を含む。
活性化されたTH2細胞は抗体産生を増強し、したがって細胞外感染に対する応答に価値がある。活性化されたTH2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6及びIL−10のうちの1又は2以上を分泌し得る。TH2免疫応答はIgG1、IgE、IgA及び将来の防御のための記憶B細胞を産生し得る。
TH2免疫応答は、TH2免疫応答に伴うサイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6及びIL−10)のうちの1若しくは2以上の増加、又はIgG1、IgE、IgA及び記憶B細胞の産生の増加のうちの1又は2以上を含み得る。好ましくは、増強されたTH2免疫応答は、IgG1産生の増加を含むことになる。
TH1免疫応答は、CTLの増加、TH1免疫応答に伴うサイトカイン(例えば、IL−2、IFNγ及びTNFβ)のうちの1若しくは2以上の増加、活性化されたマクロファージの増加、NK活性の増加、又はIgG2aの産生の増加のうちの1又は2以上を含み得る。好ましくは、増強されたTH1免疫応答は、IgG2a産生の増加を含むことになる。
本発明の免疫原性組成物は、好ましくは持続性(例えば、中和)抗体及び、1又は2以上の感染性抗原に曝露されると迅速に応答することが可能な細胞性免疫を誘導することになる。実施例によって、対象由来の血液試料中の中和抗体の証拠は、防御の代替パラメータと見なされる。
VIII.診断アッセイ
上記に説明されるように、STECタンパク質、そのバリアント、免疫原性断片及び融合物は、感染の存在を決定するために生体試料においてSTECの反応性抗体の存在を検出するための診断法としても使用し得る。例えば、STECタンパク質と反応する抗体の存在は、標準電気泳動法及び競合、直接反応又はサンドイッチ型アッセイなどの免疫アッセイを含む免疫診断技法を使用して検出することが可能である。そのようなアッセイには、ウェスタンブロット;凝集試験;ELISAなどの酵素標識及び媒介免疫アッセイ;ビオチン/アビジン型アッセイ;放射性免疫アッセイ;免疫電気泳動法;免疫沈降法、等が挙げられるが、これらに限定されない。反応は、一般に、蛍光、化学発光、放射性、酵素標識若しくは色素分子などの露出標識、又は抗原とそれと反応した抗体若しくは複数の抗体間の複合体の形成を検出するための他の方法を含む。
前述のアッセイは、一般に、抗原−抗体複合体が結合している固相支持体からの液相中の非結合抗体の分離を含む。本発明の実施において使用することが可能な固体支持体には、ニトロセルロース(例えば、膜又はマイクロタイターウェル形態で);ポリ塩化ビニル(例えば、シート又はマイクロタイターウェル);ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズ又はマイクロタイタープレート);ポリフッ化ビニリデン;ジアゾ化ペーパー;ナイロン膜;活性化ビーズ;磁気応答ビーズ;及び同類のものなどの基材が挙げられる。典型的には、固形支持体は、成分が支持体に十分に固定化されるように、適切な結合条件下で固相成分(例えば、1又は2以上のSTECタンパク質又は融合物)と先ず反応させる。抗原の支持体への固定化は、先ず抗原を結合特性がより良好なタンパク質にカップリングさせることにより増強することが可能な場合もある。適切なカップリングタンパク質には、ウシ血清アルブミン(BSA,bovine serum albumin)を含む血清アルブミンなどの巨大分子、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、卵白アルブミン、及び当業者に周知の他のタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。抗原を支持体に結合させるのに使用することが可能な他の分子には、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸共重合体、及び同類のものが挙げられる。そのような分子及びそのような分子を抗原にカップリングする方法は当業者には周知である。例えば、Brinkley, M.A. Bioconjugate Chem. (1992) 3:2-13; Hashida et al., J. Appl. Biochem. (1984) 6:56-63; 及びAnjaneyulu and Staros, International J. of Peptide and Protein Res. (1987) 30:117-124を参照されたい。
固体支持体を固相成分と反応させた後、いかなる非固定化固相成分でも、洗浄することにより支持体から取り除かれ、次に、支持体結合成分は、リガンド部分(例えば、固定化された抗原に向かう抗体)を含有すると疑われる生体試料に適切な結合条件下で接触させる。洗浄していかなる非結合リガンドも取り除いた後、二次結合剤が結合したリガンドと選択的に会合することができる適切な結合条件下で二次結合剤部分が添加される。次に、二次結合剤の存在は当技術分野で周知の技法を使用して検出することが可能である。
さらに具体的には、マイクロタイタープレートのウェルがSTECタンパク質又は融合物で被膜されているELISA法を使用することが可能である。次に、抗腸炎菌(S. Enteritidis)免疫グロブリン分子を含有する又は含有すると疑われる生体試料は、被膜ウェルに添加される。抗体を固定化抗原に結合させるのに十分なインキュベーション期間後、プレート(複数可)を洗浄して、非結合部分及び添加された検出可能に標識された二次結合分子を取り除くことが可能である。二次結合分子をいかなる捕獲された試料抗体とも反応させ、プレートは洗浄され、二次結合分子の存在は、当技術分野で周知の方法を使用して検出される。
したがって、一特定の実施形態では、生体試料由来の結合した抗STECリガンドの存在は、抗体リガンドに対して向けられる抗体を含む二次結合剤を使用して容易に検出することが可能である。当業者に公知の方法を使用して、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ又はウレアーゼなどの検出可能酵素標識に容易にコンジュゲートさせることが可能ないくつかの免疫グロブリン(Ig,immunoglobulin)分子が当技術分野では公知である。次に、適切な酵素基質を使用して、検出可能シグナルを生じさせる。他の関連する実施形態では、競合型ELISA法は、当業者に公知の方法を使用して実行することが可能である。
STECタンパク質及びそれらのタンパク質に特異的な抗体は、沈降条件下で複合体を形成するように、アッセイを溶液中で行うことも可能である。一特定の実施形態では、STECタンパク質は、直接化学的又は間接的カップリングなどによる当技術分野で公知のカップリング法を使用して、固相粒子(例えば、アガロースビーズ又は同類のもの)に付着させることが可能である。次に、抗原被膜粒子は、適切な結合条件下で、STECタンパク質に対する抗体を含有すると疑われる生体試料に接触させる。結合した抗体間の交差結合は、粒子−抗原−抗体複合体凝集体の形成を引き起こし、この凝集体を洗浄及び/又は遠心分離を使用して試料から沈殿させ分離することが可能である。反応混合物を解析して、上記の免疫診断法などのいくつかの標準法のいずれかを使用して、抗体−抗原複合体の存在又は非存在を決定することが可能である。
さらに追加の実施形態では、抗STEC分子を含有すると疑われる生体試料由来の抗体のポリクローナル集団が基材に固定化される、免疫アフィニティーマトリックスを提供することが可能である。この点に関して、試料の最初のアフィニティー精製は、固定化された抗原を使用して実施することが可能である。したがって、こうして得られる試料調製物は抗STEC部分のみを含有し、親和性支持体における潜在的非特異的結合特性を回避することになる。高収率で及び抗原結合活性を良好に保持して免疫グロブリン(無傷のもの又は特異的断片において)を固定化するいくつかの方法は当技術分野では公知である。いかなる特定の方法によっても限定されることなく、固定化されたプロテインA又はプロテインGを使用すれば免疫グロブリンを固定化することが可能である。
したがって、免疫グロブリン分子が固定化されて免疫アフィニティーマトリックスを提供すると、標識STECタンパク質を、適切な結合条件下で結合した抗体に接触させる。いかなる非特異的に結合している抗原でも免疫親和性支持体から洗浄された後は、結合している抗原の存在は、当技術分野で公知の方法を使用して標識についてアッセイすることにより決定することが可能である。
さらに、タンパク質それ自体ではなく、STECタンパク質に対して産生された抗体は、所与の試料中のタンパク質に対する抗体の存在を検出するために、上記のアッセイにおいて使用することが可能である。これらのアッセイは、実質的に上記の通りに実施され、当業者には周知である。
IX.キット
本発明は、本発明の組成物の1又は2以上の容器を含むキットも提供する。組成物は、個々の抗原と同じように、液体の形態であることが可能であり、又は凍結乾燥されることが可能である。組成物のための適切な容器には、例えば、ビン、バイアル、注射器及び試験管が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスティックを含む種々の材料から形成することが可能である。容器は無菌点検口を有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針により突き通せるストッパー付きのバイアルであり得る)。
キットは、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液又はブドウ糖溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第二の容器をさらに含むことが可能である。キットは、緩衝液、希釈剤などの他の薬学的に許容される製剤溶液、フィルター、針、及び注射器を含む、最終使用者にとり有用な他の材料又は他の送達デバイスも含有することが可能である。キットは、アジュバントを含む第三の成分をさらに含み得る。
キットは、免疫を誘導する方法のための又は感染を処置するための書面使用説明書を含有する添付文書も含むことが可能である。添付文書は、未認可草案添付文書であることが可能であり、又は食品医薬品局(FDA,Food and Drug Administration)若しくは他の取締機関により認可された添付文書であることが可能である。
本発明は、本発明の免疫原性組成物が前もって充填されている送達デバイスも提供する。
同様に、抗体は、上記の免疫アッセイを行うために適切な使用説明書及び他の必要な試薬と共にキットで提供することが可能である。キットは、使用される特定の免疫アッセイに応じて、適切な標識並びに他のパッケージ化された試薬及び材料(すなわち、洗浄緩衝液と同類のもの)も含有することが可能である。上記の免疫アッセイなどの標準免疫アッセイは、これらのキットを使用して行うことが可能である。
C.実験
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の実施例である。実施例は説明目的のためだけに提供され、いかなる点でも本発明の範囲を限定することを意図されていない。
使用される数(例えば、量、温度、等)に関しては正確さを確保するよう努力が払われてきたが、ある程度の実験誤差及び逸脱は、当然許容されるべきである。
TIRエピトープの構築及び同定
Tirエピトープを同定するために、STEC O157:H7 Tirタンパク質を表す5アミノ酸オーバーラップを有する22の30merペプチドが構築された(表1参照)。ウサギポリクローナル抗血清が、STEC O157:H7由来のTTSP及び非O157 TTSP(O26:H11、O103:H2及びO111:NM)に対して産生され、22のO157:H7 Tirペプチドに対して20分の1の希釈度で試験された。図7に示されるように、非O157血清により認識されるペプチドはごくわずかであった。抗O103:H2は、複数のペプチドを認識する唯一の血清であった。
キメラTirタンパク質を構築するために、STEC O157:H7から分化したが、それでも宿主免疫系により認識される非O157セロタイプ由来のTirタンパク質においてエピトープが同定された。特に興味深いのは、Tirのうちアミノ酸259〜363にまたがる部分であった。これらのアミノ酸は、宿主上皮細胞の表面に曝露されていることが明らかにされており、該上皮細胞をワクチン開発のための主要標的にしている。非O157EHECセロタイプ(O26:H11、O103:H2及びO111:NM)ごとに、総数で7の30merペプチドが構築された(表1)。様々なセロタイプ由来のTTSPに対するSTECポリクローナル抗体の交差反応性は上記の通りに試験された。
非O157及び非O157ペプチドに対するO157:H7 TTSPポリクローナル抗体は、STEC O157:H7ペプチドに関して見られるパターンに類似するパターンを示した。相同血清は、最良の結果を示した(図8A〜8D)。様々なセロタイプ由来のペプチド番号3は、非O157血清に対してもっとも大きな反応性を示した。これらの結果は、STECセロタイプ中のTirタンパク質内に見られる可変性を実証した。しかし、いくつかのペプチドは、他のセロタイプでは認識しない相同血清により認識された。
表1. 構築されたSTEC O157:H7 Tir及び非O157 Tirペプチドの配列
O157セクションの下線が施されたペプチドは、インチミン結合ドメインを表す。
キメラTIRタンパク質の構築
実施例1において試験されたペプチドから、各セロタイプに特異的な6つの独自の非O157 30merペプチドが選択された。表2を参照されたい。
これらの非O157ペプチドをコードするDNAは、STEC O157:H7 Tirタンパク質をコードするDNAの3’末端に連結された。プライマー及び制限部位は表3に示されている。各ペプチドは、タンパク質の可動性を改善するためにGlyとSerから選択される4アミノ酸により分離されるよう設計された(図9A及び9B参照)。キメラTirタンパク質のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれ図5A及び5Bに示されている(配列番号51及び配列番号52)。該タンパク質はN末端からC末端の順に、完全長O157 Tir配列(図5Bのアミノ酸1〜558)、続いてリンカーGly−Ser−Gly−Ser、続いてO111 Tirのアミノ酸279〜358(図5Bにおけるアミノ酸565〜644に一致する)、続いてリンカーSer−Gly−Ser−Gly、続いてO26 Tirのアミノ酸243〜296(図5Bにおけるアミノ酸651〜705に一致する)、続いてリンカーSer−Ser−Gly−Gly、続いてO103のアミノ酸318〜347(図5Bにおけるアミノ酸712〜741に一致する)を含む。図5Bにおけるアミノ酸559〜564、645〜650及び706〜711は、Tir断片を挿入するのに使用される制限部位を表す。
これらのペプチドを使用して、ロイコトキシン担体LKT352に融合されることを除けば第一のキメラタンパク質と同一の第二のキメラタンパク質も構築した(図9C)。これを実現するため、上記のキメラTir構築物は、米国特許第5,476,657号明細書、米国特許第5,422,110号明細書、米国特許第5,723,129号明細書及び米国特許第5,837,268号明細書に記載されるプラスミドpAA352にライゲートされた。これらの特許は参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。プラスミドpAA352は図10に描かれており、LKT352を発現し、LKT352の配列を図11に示す。LKT352はパスツレラ・ヘモリチカロイコトキシンのlktA遺伝子に由来し、914アミノ酸及び推定分子量約99kDaを有するが、該分子の細胞障害性部分を欠く切断型ロイコトキシン分子である。キメラTir融合タンパク質は、Lktタンパク質のC末端融合物として発現された。
LKT352/キメラTir融合タンパク質のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は図6A及び6Bに示されている(配列番号53及び配列番号54)。該タンパク質はN末端からC末端の順に、pAA352由来の短いベクター配列(図6Bのアミノ酸1〜9に一致する)、LKT352(図6Bのアミノ酸10〜923に一致する)、pAA352由来の短いベクター配列(図6Bのアミノ酸924〜926)、O157 Tirのアミノ酸2〜558(図6Bにおけるアミノ酸927〜1483に一致する)、続いてリンカーGly−Ser−Gly−Ser、続いてO111 Tirのアミノ酸279〜358(図6Bにおけるアミノ酸1490〜1569に一致する)、続いてリンカーSer−Gly−Ser−Gly、続いてO26 Tirのアミノ酸243〜296(図6Bにおけるアミノ酸1576〜1630に一致する)、続いてリンカーSer−Ser−Gly−Gly、続いてO103のアミノ酸318〜347(図6Bにおけるアミノ酸1635〜1666に一致する)を含む。図6Bにおけるアミノ酸1484〜1489、1570〜1575及び1631〜1634は、Tir断片を挿入するのに使用される制限部位を表す。
両タンパク質は精製され、12%SDS−PAGEクーマシー染色ゲル上に流され、STEC O157:H7抗Tirモノクローナル抗体に対してウェスタンブロットにおいて使用されて、適切なタンパク質が精製されたことを確認した。
キメラTIRタンパク質の免疫原性
キメラTIRタンパク質の免疫原性を試験し、該タンパク質に応答して抗体陽転が起きるかどうかを決定するために、ウサギの別個の群を(1)キメラTir構築物、(2)LKT352/キメラTir融合物、(3)表2からO26ペプチド#2、(4)表2からO26ペプチド#3、(5)表2からO103ペプチド#5、(6)表2からO111ペプチド#3、(7)表2からO111ペプチド#4、(8)表2からO111ペプチド#5、(9)STEC O157:H7由来のTirタンパク質、及び(10)負の対照としてのペプチドSN11を用いてワクチン接種した。ウサギは3回ブーストされた(21日目、42日目及び57日目)。ワクチンには、アジュバントとして30%EMULSIGEN D (MVP Laboratories社製、Ralston, NE)を含む製剤中50マイクログラムの各タンパク質が含まれていた。
初回のブーストの2週間後、動物から採血し、血清は抗体陽転を決定するためにELISAにおいて使用された。図12A〜12Jにおいて見ることができるように、ウサギは全キメラタンパク質に良好に応答し、個々の非O157ペプチドにも応答することができた。ウサギは、LKT352/Tir融合物よりもキメラTirタンパク質上のO111ペプチド#5及びO103ペプチド#5により良好に応答したと思われる。
STEC O157:H7分泌タンパク質のクローニング、発現及び精製
インビトロ阻害付着アッセイを使用して、抗O157:H7 TTSPポリクローナル抗体は、STEC O157:H7がHEp−2上皮細胞へ付着するのを阻害することができることが明らかにされた。しかし、抗Tir O157:H7ポリクローナル抗体又はいくつかの濃度の精製されたTirタンパク質が試験されると、どちらもSTEC O157:H7のHEp−2細胞への付着を遮断することはできなかった。抗EspA O157:H7ポリクローナル抗体も試験され、抗Tir O157:H7ポリクローナル抗体と同じ結果を生じた。
これらの結果は、抗O157:H7 TTSPポリクローナル抗体には、何か定着を阻害することができるものが存在していることを示している。ウェスタンブロット上で、抗O157:H7 TTSPポリクローナル抗体と反応するTir及びEspAは、抗Tir O157:H7ポリクローナル抗体及び抗EspA O157:H7ポリクローナル抗体が試験されたときには、STEC O157:H7のHEp−2細胞への定着を阻害することはできなかった。特定の理論に縛られることなく、抗O157:H7 TTSPポリクローナル抗体による定着が阻害されたことは、抗体の組合せによるものである、又は培地に分泌された未同定のタンパク質によるものである可能性がある。
抗体を産生するために使用されるSTEC O157:H7 TTSPは、大部分がM9最少培地に分泌される未同定のタンパク質の混合物であった。はじめ、分泌されるタンパク質の大部分は腸細胞消失遺伝子座(LEE)病原性アイランド由来であると考えられた。しかし、最近、TTSSを通して分泌されるがLEEアイランドに位置していない非LEEエフェクター(NLE,non-LEE effector)と呼ばれるいくつかのタンパク質が同定されている。Tobe et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103:14941-14946は、39の非LEEエフェクターがTTSSを通して分泌されることを報告した。
抗O157:H7 TTSPポリクローナル抗体及び抗非O157 TTSPポリクローナル抗体に対して、ELISA及びウェスタンブロットにおいてタンパク質を試験するために、LEE病原性アイランド上に見出される遺伝子由来の40のタンパク質(インチミンは除く)の他に29の非LEEエフェクターが過剰発現され精製された。
特に、69の遺伝子すべてが、Qiagen pQE-30 HIS-タグ付きベクタークローニングシステム(プライマー及び制限部位は表4に見られる)を使用してクローニングされ塩基配列決定された。重力流動クロマトグラフィーによる6×His−タグ付きタンパク質の精製のためにNi−NTAアガロースが使用された。これらのタンパク質のうち66が精製された。残りの3つは精製するのが困難であった膜タンパク質である。これら3つのタンパク質は、分泌装置の内膜複合体のメンバーである。しかし、これらのタンパク質は、その位置及び役割に基づく分泌免疫原性タンパク質の同定には関連性がない可能性がある。
表4. LEE及び非LEE遺伝子の増幅のために使用されるオリゴヌクレオチドプライマー
ヌクレオチド配列は5’から3’方向である。プライマーに組み込まれている制限部位は収載されている。*=GST融合遺伝子
抗TTSP STEC O157:H7及び非O157:H7血清を使用するウェスタンブロット及びELISA
次に、実施例4の精製されたタンパク質は、STEC O157:H7及び非O157セロタイプ由来のTTSPに対して産生された血清を使用してウェスタンブロットにおいて試験された。ウサギ抗TTSP STEC O157:H7、ウシ抗TTSPa STEC O157:H7及び抗Hisタグモノクローナル抗体を使用して、LEE病原性アイランドタンパク質と非LEE精製タンパク質の両方の上でウェスタンブロットは実施された。ウェスタンブロットは、STEC O26、O111及びO103由来のTTSPに対する血清も使用して実施された。すべてのタンパク質が、12%SDS−PAGEゲル上に流された。
総数で20のタンパク質が、少なくとも1つのセロタイプ由来の血清と反応した。反応性タンパク質の概要は表5Aに見られる。
ウェスタンブロットの結果をさらに確証するために、組換え精製STEC O157:H7タンパク質も、STEC O157:H7及び非O157セロタイプ由来のTTSPに対して産生された血清を使用してELISAにおいて試験された。すべての試料は三通り行われた。タンパク質の大多数がウェスタンブロトと同一結果を生じた(免疫前と比べた力価の2−ログ差に基づいて陽性)(表6)。しかし、いくつかのタンパク質は適合する結果を生じなかった、又は免疫前と比べて1−ログ差を示すのみであった。タンパク質Map及びNleG6−1は、これらのタンパク質がウェスタンブロットで陰性結果を与えたので負の対照として使用された。これらの入り交じった結果は、ELISAと比べてウェスタンブロットにおいてタンパク質が受ける変性のレベルと関係付けることができる。
STEC O157:H7を用いて実験的に感染させたウシ由来の血清を使用するウェスタンブロト及びELISA
実験的に感染させたウシ由来の血清も、実施例4の組換え精製STEC O157:H7タンパク質に対して試験された。総数で6つのタンパク質がTir、EspA、EspD、EspB、EspM2及びTccPからなる実験的に感染させた血清と反応した(表5B)。組換え精製STEC O157:H7タンパク質は、実験的に感染させたウシ由来の血清を使用してELISAにおいても試験された。タンパク質ごとに血清の単一ウェル希釈液が使用された。免疫前ウシ血清を使用して、各タンパク質に対するバックグラウンド値が計算された。ELISA OD値は、感染ウシの値から免疫前値を引くことにより測定された。重複している値は平均を取り、3つの標準偏差は引き算前に計算された。
試験された全66のタンパク質のうち、5つのタンパク質が陽性結果を与えた。図13を参照されたい。図13に示されていない陰性タンパク質には、Ler、Orf2、CesA/B、Orf4、Orf5、EscS、EscT、Rorfl3、GrlR、GrlA、CesD、EscC、SepD、EscJ、Orf8、SepZ、Orf12、EscN、Orfl6、SepQ、EspH、CesF、Map、CesT、EscD、SepL、CesD2、EscF、Orf29、EspF、EspG、NleB、NleB2−1、NleC、NleE、NleF、NleG、NleH1−2、NleI、NleG2−1、NleG2−2、NleG3、NleG5−1、NleG6−1、NleG8−2、NleG9、EspK、EspL2、EspM2、EspR1、TccP、EspV、EspW、EspX2、EspX7、EspY1、EspY2及びEspY3が挙げられる。
ELISAについての5つの陽性タンパク質のうちの4つはウェスタンブロットにおいても陽性であった(Tir、EspB、EspD及びEspA)。
ヒトHUSタンパク質由来の血清を使用するELISA結果
A.2000年のウォルカートン集団発生から採取された陽性及び陰性ヒト患者由来の16の血清試料。試料は集団発生の2年後に採取された。試料は、STEC O157:H7による感染と相関する免疫原性抗原(Tir)に対して試験された(図14)。一組の陰性試料も採取され、陰性試料の余分な組として使用された。全体では、3組の血清に関して有意差は観察されず、採取時にはそのような抗原に対する抗体はもはや存在していなかったことを意味していた。
B.第2の実験では、STEC O157:H7感染からHUSを発症した6人の追加の患者由来の血清は、66の組換え精製大腸菌O157:H7タンパク質に対して試験された。試験された66のうち総数で12のタンパク質がヒト血清に対して反応した。タンパク質ごとに1対500のヒト血清単一ウェル希釈液が使用された。各タンパク質のバックグラウンドを測定するために未処置のヒト血清が計算された。ELISA OD値は、HUS陽性ヒト血清から未処置値を引くことにより測定された。重複値は平均を取り、3つの標準偏差は引き算前に計算された。
一般に、4つのタンパク質が試験された血清の大多数と一貫して反応した(Tir、EspD、EspA及びNleA)。図15を参照されたい。興味深いことに、これらは、実施例6における実験的に感染させたウシ由来の血清に対して反応したのと同一タンパク質である。図15に示されていない陰性タンパク質には、Ler、Orf2、CesA/B、Orf4、Orf5、EscT、Rorfl3、GrlR、GrlA、CesD、EscC、SepD、EscJ、Orf8、SepZ、Orfl2、EscN、Orfl6、EspH、CesF、Map、CesT、EscD、SepL、CesD2、EscF、Orf29、EspF、NleB、NleB2−1、NleC、NleE、NleG、NleH1−2、NleI、NleG2−2、NleG3、NleG5−1、NleG6−1、NleG8−2、NleG9、EspK、EspL2、EspR1、TccP、EspV、EspW、EspX2、EspX7、EspY1、EspY2及びEspY3が挙げられる。
組換えSTECタンパク質を使用するマウスのワクチン接種
3群の10マウス(下参照)が以下の通りにワクチン接種された。
群1−プラセボ(0.1Mリン酸緩衝食塩水(PBS,phosphate buffered saline))
群2−30%EMULSIGEN D(MVP Laboratories社製、Ralston, NE)中O157:H7 TTSP(大部分が未同定タンパク質の混合物であるM9培地に分泌されたTTSP)
群3−組換えO157:H7 EspG、NleH2−1、NleA、EspRI、EspF、EspB、EspD、EspA及び上記のキメラTirプラス30%EMULSIGEN D
マウスは最初、0.5μgの抗原を用いて皮下にワクチン接種され、血液試料が採取された。21日後、マウスは再び上のワクチン接種をされ、血液試料が採取された。19日後、マウスは5g/Lストレプトマイシンを含有する水で24時間処置されて通常の腸管細菌叢を取り除いた。次に、18時間餌と水を取り除かれ、血液試料が再び採取されて、マウスは20%ショ糖中nalr大腸菌O157株の109CFU/mlを100μl経口用量でチャレンジされた。2日後に開始して、排泄物試料は2週間の間2日置きに採取され、STECの排泄物排出が調べられた。
特に、1ペレットのマウス排泄物試料(約0.1g)を1mlのルリアブロスと組み合わされ、室温で2〜4時間インキュベートされ、ペレットを軟化させた。試料はボルテックスされてペレットを分散させ、PBS中に希釈された試料と25μlドットはCT-SMAC寒天プレート(Mackonkey寒天+セフィキシム0.05mg/L+テルル酸2.5mg/L+ナリジクス酸15mg/L)上に3通りに蒔かれた。プレートは37℃で一晩インキュベートされ、コロニーは計数され、大腸菌O157の存在は凝集検査により確証された。
データは時間をかけて合計された。総計は正規分布していなかったために、総計は対数変換され、一方向ANOVAに続いて、テューキー比較及びミーンズテストが行われた。結果は図26に示されている。生データの中央値はデータ点として使用された。群間には有意差が存在していた(P<0.0001)。群2及び群3の両方から採取された以前の試料は、群1よりも排泄物排出が有意に少なかった。
したがって、哺乳動物の腸管出血性大腸菌定着を処置及び予防するための組成物及び方法が開示された。本発明の好ましい実施形態はある程度詳細に説明されたが、特許請求の範囲により定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、明らかな変化をさせることが可能であることは理解されている。