JP2012522508A - シェーグレン症候群の診断および治療のためのバイオマーカーとしての示差的に発現されるマイクロrna - Google Patents

シェーグレン症候群の診断および治療のためのバイオマーカーとしての示差的に発現されるマイクロrna Download PDF

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Abstract

シェーグレン症候群患者において示差的に発現されるマイクロRNAの同定が本明細書に開示されている。本明細書で同定された少なくとも1種の示差的に発現されるmiR遺伝子産物のレベルを測定することによって、被験体がシェーグレン症候群を有すると診断する方法が提供される。被験体の生体試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルの、対照と比較した変化により、その被験体がシェーグレン症候群を有することが示される。シェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して上方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する治療有効量の作用剤を患者に投与することによって、または、シェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して下方制御される治療有効量の単離されたmiR遺伝子産物を患者に投与することによって、シェーグレン症候群を有する患者を治療する方法も提供される。

Description

関連出願への相互参照
本願は、2009年3月31日に出願された米国仮特許出願第61/145,142号の利益を主張し、この米国仮特許出願は本明細書中に参考として援用される。
分野
本開示は、健常人と比較して、シェーグレン症候群患者において示差的に発現されるマイクロRNA、およびシェーグレン症候群を診断および治療するための、上記開示マイクロRNAの使用に関する。
背景
シェーグレン症候群は、免疫細胞によって涙および唾液を産生する腺が攻撃され、破壊される自己免疫障害である。この障害の顕著な特徴である症状は、口内乾燥およびドライアイである。シェーグレン症候群は、皮膚、鼻および膣の乾燥も引き起こす可能性があり、腎臓、血管、肺、肝臓、膵臓および脳を含めた体内の他の器官に影響を及ぼす可能性がある。シェーグレン症候群は、米国の1〜4百万人に影響を及ぼしており、女性は9倍この疾患を発症しやすい。シェーグレン罹患者の大多数は、診断される時点で40歳以上である。シェーグレン症候群は、一次状態として、または、全身性エリテマトーデス(「ループス」)または関節リウマチなどの他の自己免疫疾患に付随する二次障害として発生し得る。
シェーグレン症候群により、生命維持に必要な体の器官が損傷する可能性があり、症状は、安定した状態が保たれ得る、悪化し得る、または寛解の状態になり得る。一部の患者がドライアイおよび口内乾燥の軽度の症状のみを経験する一方、他の患者は良好な健康状態の後に重篤な疾患が続く周期を経験する。多くの患者が問題を症候的に治療することができる一方、他の患者は霧視、持続性の目の不快感、再発性の口腔感染症、耳下腺腫大、嗄声、ならびに嚥下および摂食における困難を生じる。消耗性疲労および関節痛により、生活の質が重篤に損なわれる可能性がある。シェーグレン症候群の診断は、乾燥の主観的根拠および客観的根拠、ならびに自己免疫(自己抗体)および/または唾液腺の炎症のマーカーの存在の種々の組合せに基づいて行われる。シェーグレン症候群の診断の正確度を改善するために、より客観的な診断用バイオマーカーが非常に望ましい。
現在、シェーグレン症候群に対する公知の治癒も、腺分泌を回復させるための普遍的に有効な治療もない。治療は、一般に、眼および口内乾燥の症状を軽減するための水分補充療法を含め、症候的かつ支持的である。患者のサブセットは、唾液の産生を刺激する、経口的に利用可能な薬物(ピロカルピンおよびセビメリン)に対していくらかの応答を有するが、その応答は通常限られていて、多くの患者は副作用のせいで薬物に対して耐容性を示さない。非ステロイド系抗炎症薬を使用して筋骨格の症状を治療することができる。重篤な合併症を伴う個体に対して、多くの場合コルチコステロイドまたは免疫抑制薬が処方される。これらの薬物は重大な副作用を有する可能性がある。したがって、シェーグレン症候群患者を正確に診断するだけでなく、疾患を治療するための実現可能な治療標的を同定する必要性がある。
要旨
マイクロRNA(miRNAまたはmiR)は、遺伝子発現を制御する小さな一本鎖RNA分子である。シェーグレン症候群患者が、健康な対照の被験体と比較して示差的なmiR遺伝子発現を示すことが本明細書に開示されている。いくつものmiRが、唾液の流れが不十分な患者と比較して唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者において、ならびに病巣スコアが高い(高度の炎症)シェーグレン症候群患者と病巣スコアが低い(低度の炎症)シェーグレン症候群患者において、示差的に発現されることも本明細書に開示されている。
したがって、本明細書で同定された少なくとも1種の示差的に発現されるmiR遺伝子産物のレベルを測定することによって、被験体がシェーグレン症候群を有すると診断する方法が本明細書で提供される。方法は、シェーグレン症候群患者の生体試料(唾液腺生検材料または唾液など)中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。被験体の生体試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルの、対照と比較した変化により、その被験体がシェーグレン症候群を有することが示される。一部の実施形態では、方法は、シェーグレン症候群と診断された被験体に対して適切な療法を提供することも含む。
シェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して上方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する治療有効量の作用剤を患者に投与することによって、シェーグレン症候群を有する患者を治療する方法も提供される。シェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して下方制御される治療有効量の単離されたmiR遺伝子産物を患者に投与することによって、シェーグレン症候群を有する患者を治療する方法がさらに提供される。
シェーグレン症候群を有する患者における唾液の流れを回復させる方法も提供される。方法は、患者に、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者と比較して、唾液の流れが正常な患者において上方制御される治療有効量の単離されたmiR遺伝子産物(またはmiR遺伝子産物の組合せ)を投与することを含む。あるいは、方法は、患者に、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者と比較して、唾液の流れが正常な患者において下方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する治療有効量の作用剤を投与することを含む。
被験体の生体試料中の、病巣スコアが高いことまたは病巣スコアが低いことに関連付けられる少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定することによって、シェーグレン症候群患者を病巣スコアが高いまたは病巣スコアが低いと診断する方法がさらに提供される。
前述および他の本発明の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照して進める以下の詳細な説明から明らかになる。
図1は、マイクロアレイ発現解析に使用した小唾液腺(MSG)クラスの概略図である。全部で24検体のMSGを使用し、そのうち8検体は正常な対照(NC)から生検し、16検体はシェーグレン症候群(SS)患者から得た。SS生検材料16検体のうち8検体の病巣スコアが高く(12)、SS生検材料8検体の病巣スコアが低かった(≦2)。 図2Aは、マイクロアレイデータを正規化するために使用したハウスキーピングマイクロRNAの表である。 図2Bは、すべてのマイクロアレイにわたるマイクロRNAの対すべての発現に対するピアソン相関係数の分布を、示したハウスキーピングマイクロRNAに対して正規化する前と後で比較したボックスプロットを示すグラフである。すべてのマイクロアレイにおいて、Agilent Feature Extraction Softwareによって存在するとしてスコア化されたマイクロRNAのみを算出に含めた。 図3は、全24検体のハイブリダイズした試料の主成分分析(PCA)の結果を示す一連の3次元プロットである。試料は、それらの最初の3主成分に沿ってプロットされている。PCAプロットの3つの向きを示している。非SSの小唾液腺を中サイズの円で表し、病巣スコアが低いMSGを大きな円で表し、病巣スコアが高いMSGを小さな円で表している。プロットは、GENESPRING(商標)からエクスポートした。 図4は、マイクロRNAアレイの階層クラスタリングを示すデンドログラムである。SS試料と正常な対照とが明白に分離されており、また、病巣スコアが高いSS試料と病巣スコアが低いSS試料との間が分離されており、ただ一人病巣スコアが高い患者(1C−1)が、病巣スコアが低い試料にクラスタリングされている。高病巣スコア群では、唾液の流れが不十分である、または唾液の流れが保たれている患者は異なるクラスターを形成する:1A−病巣スコアが低く、唾液の流れが保たれているSS患者;1A、1B−病巣スコアが低いSS患者;1C、1D−病巣スコアが高いSS患者;2A−健康な対照。デンドログラムはBRB ArrayToolsからエクスポートした。 図5は、小唾液腺病巣スコアと相関させた、選択されたマイクロRNAの相対的な発現を示すグラフである。正規化されたデータセットから、正常試料、病巣スコアが低い試料および病巣スコアが高い試料の間で別個の反対の発現パターンを有する2種のマイクロRNAが同定された;病巣スコアが上昇すると、miR−768−3pは増加するが、一方miR−574は減少する。これら2種のマイクロRNAの発現パターンを、リアルタイム定量PCRにより、種々の病巣スコアを有する独立した試料セット(n=15)において、全く同じ試料におけるそれらの相対的な発現レベルを周期の差異(Ct diff)を決定することを通してモニタリングすることによって検証した。病巣スコアが低い試料(FS:0〜2)、病巣スコアが中程度の試料(FS:5〜7)および病巣スコアが高い試料(FS:12)間のCt差異に統計的有意差があった(p=0.0003、一元配置分散分析に基づく)。 図6Aおよび図6Bは、Ingenuity Pathway Analysisによる、表20からの非炎症性マイクロRNA群(A)および炎症性マイクロRNA群(B)の標的となる遺伝子についての10種の最も重要な生物学的機能を示すグラフである。 図6Aおよび図6Bは、Ingenuity Pathway Analysisによる、表20からの非炎症性マイクロRNA群(A)および炎症性マイクロRNA群(B)の標的となる遺伝子についての10種の最も重要な生物学的機能を示すグラフである。
I.略称
ebv エプスタイン・バール・ウイルス
FS 病巣スコア
hcmv ヒトサイトメガロウイルス
hiv1 ヒト免疫不全ウイルス1
hsa Homo sapiens
hsv1 単純ヘルペスウイルス1
kshv カポジ肉腫ヘルペスウイルス
miR マイクロRNA
miRNA マイクロRNA
MSG 小唾液腺
NC 正常対照
NPV 陰性適中率
NSAID 非ステロイド系抗炎症薬
PCA 主成分分析
PCRポリメラーゼ連鎖反応
PPV 陽性適中率
RNA リボ核酸
siRNA 低分子干渉RNA
SS シェーグレン症候群
II.用語および方法
特に記載のない限り、技術用語は、従来の用法に従って使用されている。分子生物学における一般用語の定義は、Benjamin Lewin、Genes IX、Jones and Bartlett Publishersより出版、2007年(ISBN 0763740632);Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Inc.より出版、1998年;およびRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers, Inc.より出版、1995年(ISBN 1−56081−569−8)において見ることができる。
本開示の種々の実施形態の概説を容易にするために、以下の特定の用語の説明を提供する:
投与:被験体に、治療剤などの作用剤を任意の有効な経路で提供または付与することである。典型的な投与経路としては、注射経路(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内および静脈内など)、経口経路、管内経路、舌下経路、直腸経路、経皮経路、鼻腔内経路、膣経路および吸入経路が挙げられるが、これらに限定されない。
作用剤:任意のタンパク質、核酸分子(化学的に修飾された核酸を含む)、化合物、小分子、有機化合物、無機化合物または対象とする他の分子である。作用剤は、治療剤、診断剤または医薬品を含んでよい。治療剤もしくは医薬品は、単独で、または追加の化合物と一緒に(被験体に投与された際に治療効果または予防効果を誘導するなど)所望の応答を誘導する治療剤もしくは医薬品である。
唾液産生を促進する作用剤:被験体(例えば、シェーグレン症候群を有する被験体)において産生される唾液の量を上昇させる任意の化合物である。場合によっては、唾液産生を促進する作用剤は、ピロカルピン(Salagen(商標))またはセビメリン(Evoxac(商標))などの医師によって処方される治療剤である。一部の実施例では、唾液産生を促進する作用剤は、健康な被験体と比較して、シェーグレン症候群患者において下方制御される、または、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者と比較して、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者において下方制御される遺伝子産物などのマイクロRNA遺伝子産物である。
発現の変化:miR遺伝子産物の発現の変化は、生体試料(シェーグレン症候群患者由来の試料など)において検出可能なmiR遺伝子産物のレベルの、対照(健康な被験体など)と比較した変化を指す。発現の「変化」は、発現の増加(上方制御)または発現の減少(下方制御)を含む。
アンチセンス化合物:それがハイブリダイズする(miR遺伝子産物などの)標的核酸分子領域と少なくとも部分的に相補的なオリゴマー化合物を指す。本明細書で使用される、標的核酸分子に「特異的」なアンチセンス化合物は、標的核酸分子と特異的にハイブリダイズし、その発現を調節するアンチセンス化合物である。本明細書で使用される、「標的」核酸は、アンチセンス化合物が特異的にハイブリダイズし、その発現を調節するように設計される核酸分子である。一部の実施例では、標的核酸分子はmiR遺伝子産物である。
アンチセンス化合物の非限定的な例としては、プライマー、プローブ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、shRNAおよびリボザイムが挙げられる。そのように、これらの化合物を、一本鎖、二本鎖、環状、分枝状、またはヘアピンの化合物として導入することができ、また、これらの化合物は、内部または末端のバルジまたはループなどの構造要素を含有してよい。二本鎖アンチセンス化合物は、ハイブリダイズして二本鎖化合物を形成する2つの鎖であってよく、またはハイブリダイゼーションし、完全にまたは部分的に二本鎖の化合物を形成できるようにするために十分な自己相補性を有する一本鎖であってよい。本明細書の特定の実施例では、アンチセンス化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAまたはリボザイムである。
アンチセンスオリゴヌクレオチド:本明細書で使用される、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、核酸ベースのオリゴマーである一本鎖アンチセンス化合物である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、糖、塩基、および/またはヌクレオシド間結合に対する1つまたは複数の化学修飾を含んでよい。一般に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的RNA分子にハイブリダイズしたとき、二重鎖がRNase H(DNA:RNA二重鎖を認識する酵素)に認識され、その結果RNAが切断されるように、「DNA様」である。
アレイ:基板上または基板内のアドレス可能な場所における生物学的な巨大分子(核酸分子など)などの分子の配列である。「マイクロアレイ」は、評価または分析するための顕微鏡検査が必要になる、または顕微鏡検査が助けとなるように小型化されたアレイである。アレイは、時にはDNAチップまたはバイオチップと称される。
分子(「フィーチャー」)のアレイにより、試料について非常に多くの解析を一度に行うことが可能になる。ある特定例のアレイでは、1種または複数種の分子(オリゴヌクレオチドプローブなど)を、例えば内部対照を提供するために、複数回(2回など)アレイに生じさせる。アレイ上のアドレス可能な場所の数は変動してよく、例えば少なくとも2個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも500個、少なくとも550個、少なくとも600個、少なくとも800個、少なくとも1000個、少なくとも10,000個、またはそれ以上からである。特定の実施例では、アレイは、例えば10〜100個のアドレス可能な場所など、5〜1000個のアドレス可能な場所を含む。特定の実施例では、アレイは、表1〜6および表16〜21の1つまたは複数に列挙されているmiR遺伝子産物に特異的なプローブまたはプライマー(増幅を可能にするプローブまたはプライマーなど)から本質的になる。
アレイ内で、整列させた試料のそれぞれは、その場所をアレイの少なくとも2次元以内で確実にかつ一貫して決定することができるという点で、アドレス可能である。アレイ上のフィーチャーの適用場所としては、種々の形状を想定することができる。例えば、アレイは規則的(均一な行と列に配列されるなど)または不規則であってよい。したがって、規則正しいアレイでは、各試料の場所は、試料がアレイに適用された時点で試料に割り当てられ、各場所を適切な標的またはフィーチャーの位置と相関させるためにキーを提供することができる。多くの場合、規則正しいアレイは、対称な格子型に配列されるが、試料は他の型(放射状に分布した線、らせん状の線、または規則正しいクラスターなど)に配列することができる。アドレス可能なアレイは、アレイ上の特定のアドレスとその位置の試料についての情報(例えばシグナル強度を含めた、ハイブリダイゼーションまたは結合のデータなど)を相関させるためにコンピュータをプログラムすることができるという点で、通常コンピュータ可読である。一部のコンピュータ可読の形式例では、アレイ内の個々のフィーチャーは規則的に、例えばデカルト格子型に配列されていて、コンピュータによってアドレス情報と相関させることができる。
生体試料:被験体から得られた、ゲノムDNA、RNA(mRNAおよびマイクロRNAを含む)、タンパク質、またはそれらの組合せを含有する生物検体である。例としては、唾液、末梢血、尿、組織生検材料、手術検体および剖検材料が挙げられるが、これらに限定されない。一実施例では、試料は、シェーグレン症候群患者または健康な対照の被験体由来などの唾液腺生検材料を含む。他の実施形態では、生体試料は唾液試料である。一部の実施例では、エキソソームが唾液から単離され、miRNAの供給源として使用される。他の実施形態では、生体試料は血液、または血漿または血清などのその成分である。
血液:心臓、動脈、毛細血管および静脈を循環し、体内の輸送(ガス、代謝産物および老廃物輸送など)の主要手段である流体である。血液は、主に血漿(流体部分)ならびに血液細胞および血小板(固形部分)で構成されている。「血漿」は、血液細胞が懸濁している、血液の流体部分を指す。血漿は大部分が水であり、血漿タンパク質、無機塩、栄養分、ガス、細胞からの廃物および種々のホルモン、分泌物および酵素を含有する。「血清」は、フィブリノーゲンまたは血液細胞を含有せず、血液凝固後に流体のままである、透明な淡黄色の血漿の液体部分を指す。
対照:「対照」は、シェーグレン症候群患者から得られた唾液腺試料などの実験試料と比較するために使用される試料または標準物質を指す。一部の実施形態では、対照は、健康な患者から得られた試料である(本明細書では「正常な」対照とも称される)。一部の実施形態では、対照は、歴史的な対照または標準値(すなわち、基線値または正常値を表す、予め試験された対照試料または試料群)である。
コルチコステロイド:副腎皮質で産生されるステロイドホルモンである。コルチコステロイドは、ストレス応答、免疫応答および炎症の制御、炭水化物の代謝、タンパク質の異化、血液の電解質レベル、および挙動などの幅広い生理系に関与している。コルチコステロイドの例としては、コルチゾールおよびプレドニゾンが挙げられる。
診断:疾患をその徴候、症状および/または種々の試験の結果から同定するプロセスである。そのプロセスを通して到達した結果も「診断」と称される。一般に実施される試験形態としては、血液試験、医用画像、遺伝子解析、尿検査および生検が挙げられる。
診断上有意な量:本明細書で使用される「診断上有意な量」は、一方の患者集団と他方(シェーグレン症候群患者集団と健常人群など)を区別することを可能にするために十分な、生体試料中のmiR遺伝子産物のレベルの上昇または低下を指す。一部の実施形態では、診断上有意な上昇または低下は、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、または少なくとも40倍である。一部の実施例では、診断上有意な量は、表1〜6に示されているmiR遺伝子発現における倍率変化である。診断上有意な量は、表16、19または20のいずれか1つに示されている、2種類の試料間(対照の被験体とシェーグレン症候群患者との間、または、病巣スコアが高いシェーグレン症候群患者と病巣スコアが低いシェーグレン症候群患者との間など)の特定のmiRの発現における倍率変化を算出することによっても決定することができる。マイクロアレイ解析は、本明細書では、miR遺伝子産物の発現をどのように検出することができるかについての1つの例として提供される。しかし、遺伝子発現を測定するための他の方法(本明細書に記載の方法の1つなど)が存在し、使用された方法に応じて、検出される発現レベルが変動し得ることが当業者には理解されよう。したがって、診断上有意な量は、RT−PCRなどの別の検出方法が使用された場合、変動する可能性がある。
マイクロRNAの示差的な発現または発現の変化:マイクロRNA遺伝子にコードされている情報がマイクロRNA遺伝子産物に転換されるときの増加または減少などの差異である。一部の実施例では、差異は健康な対照の被験体由来の試料におけるマイクロRNAの発現量などの対照値または参照値と相対的である。
下方制御されるまたは減少する:核酸分子(マイクロRNAなど)の発現に関して使用される場合、遺伝子産物の産生の減少をもたらす任意のプロセスを指す。本開示において、遺伝子産物は、一次転写物マイクロRNA(pri−miRNA)、前駆体マイクロRNA(pre−miRNA)または成熟マイクロRNAであってよい。遺伝子の下方制御は、マイクロRNA遺伝子産物の産生における任意の検出可能な減少を含む。ある特定の実施例では、マイクロRNAの産生は、対照と比較して少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも40倍減少する。一部の実施例では、対照は、シェーグレン症候群を有さない1体または複数体の被験体におけるマイクロRNAの発現の相対量である。
エキソソーム:多小胞体と血漿膜の融合から生じた、約30〜100nmの小さな、表が上の細胞分泌小胞である。エキソソームは、もっと大きく(およそ1ミクロン)、代わりに血漿膜をつまみとることから生じる分泌微小胞とは形態学的に別個である。微小胞およびエキソソームはどちらも細胞質内容物を保持しているが、エキソソームは、他の分泌小胞集団には見出されないCD63、CD9、CD81およびTSG101を含めた特徴的な表面マーカーを有する。エキソソームは、幅広い細胞、網状赤血球、血小板、樹状細胞、Bリンパ球およびTリンパ球、ならびにマクロファージなどの主要な造血細胞から生じる。しかし、エキソソームは、種々の上皮細胞(肺胞組織、ネフロン由来の細管細胞および有足細胞、ならびに腸細胞など)および腫瘍細胞からも分泌される。
病巣スコア:シェーグレン症候群の診断において頻繁に使用される炎症の尺度である。病巣スコアは、4mmの腺切片内のリンパ性病巣(少なくとも50個の炎症性細胞を含有する)の数を測定することによって決定する。一部の実施形態では、低病巣スコアはスコア0〜4である。特定の実施例では、低病巣スコアはスコア0〜2である。一部の実施形態では、高病巣スコアはスコア8以上である。特定の実施例では、高病巣スコアはスコア12以上である。
遺伝子発現プロファイル(またはフィンガープリントまたはサイン):示差的な遺伝子発現または遺伝子発現の変化を、遺伝子発現の検出可能な量(mRNAまたはマイクロRNAなど)の変化によって、またはそれらの遺伝子によって発現されるタンパク質の検出可能な量の変化によって検出することができる。遺伝子発現プロファイルは、遺伝子発現の明確なまたは同定可能なパターン、例えば定義された遺伝子セットの高発現および低発現のパターンである。一部の実施例では、わずか1種または2種の遺伝子または遺伝子産物によりプロファイルがもたらされるが、より多く、例えば、少なくとも5種、少なくとも10種、少なくとも15種、少なくとも20種、少なくとも25種、少なくとも30種、少なくとも40種または少なくとも50種の遺伝子または遺伝子産物をプロファイルに使用することができる。遺伝子発現プロファイル(フィンガープリントまたはサインとも称される)は、組織もしくは細胞型(唾液腺など)、疾患の特定の病期、または予測可能に遺伝子発現に影響を及ぼす任意の他の明確なもしくは同定可能な状態と関連付けることができる。遺伝子発現プロファイルは、特定の遺伝子の相対的な発現レベルならびに絶対的な発現レベルを含んでよく、基線または対照試料のプロファイル(シェーグレン症候群を有さない被験体由来の試料など)と比較して試験試料に照らして考察することができる。一部の実施例では、被験体における遺伝子発現プロファイルは、アレイ(核酸アレイなど)において読み取られる。
健康な対照の被験体:適切な検査の後にシェーグレン症候群と臨床的に診断されない被験体である。
ハイブリダイゼーション:DNA、RNAの2本の鎖の相補性領域間、またはDNAとRNAとの間に塩基対を形成し、それによって二重鎖分子を形成することである。特定の程度のストリンジェンシーをもたらすハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション方法の性質およびハイブリダイズする核酸配列の組成および長さに応じて変動する。一般に、ハイブリダイゼーションの温度およびハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(Na濃度など)により、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーが決定される。特定の程度のストリンジェンシーを達成するためのハイブリダイゼーション条件に関する算出については、Sambrookら、(1989年)Molecular Cloning、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Plainview、NY(第9章および第11章)で考察されている。下記は、典型的なハイブリダイゼーション条件のセットであり、限定的なものではない:
非常に高いストリンジェンシー(少なくとも90%の同一性を共有する配列を検出)
ハイブリダイゼーション:65℃で16時間、5×SSC
2回洗浄:それぞれ、室温(RT)で15分間、2×SSC
2回洗浄:それぞれ、65℃で20分間、0.5×SSC
高いストリンジェンシー(少なくとも80%の同一性を共有する配列を検出)
ハイブリダイゼーション:65℃〜70℃で16〜20時間、5×〜6×SSC
2回洗浄:それぞれ、RTで5〜20分間、2×SSC
2回洗浄:それぞれ、55℃〜70℃で30分間、1×SSC
低いストリンジェンシー(少なくとも60%の同一性を共有する配列を検出)
ハイブリダイゼーション:RT〜55℃で16〜20時間、6×SSC
少なくとも2回洗浄:それぞれ、RT〜55℃で20〜30分間、2×〜3×SSC
免疫抑制薬:体の免疫系応答を低下させる能力を有する任意の作用剤または化合物を含む。一部の実施形態では、免疫抑制薬はコルチコステロイドである。他の実施形態では、免疫抑制薬は、小分子(シクロスポリンなど)またはモノクローナル抗体(サイトカイン遮断薬など)である。
単離された:「単離された」生物学的成分(核酸分子、タンパク質または細胞など)は、その成分が天然に存在する生物体の細胞もしくは組織または生物体自体の他の生物学的成分、例えば他の染色体のおよび染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質および細胞などから離れて実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質は、標準の精製方法によって精製された核酸分子およびタンパク質を含む。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸分子およびタンパク質ならびに化学的に合成された核酸分子およびタンパク質も包含する。
発現レベルの測定:本明細書で使用される、特定のmiR遺伝子産物の発現レベルの測定は、試料中に存在するmiR遺伝子産物の量を定量化することを指す。定量化は、数値的または相対的のいずれかであってよい。miR遺伝子産物の発現の検出は、RT−PCRによってなど、当技術分野で公知のまたは本明細書に記載の任意の方法を用いて実現することができる。miR遺伝子産物の発現を検出することは、miRの発現と相関性があるmiRの成熟型または前駆体型(すなわち、pri−miRNAまたはpre−miRNA)のいずれかの発現を検出することを含む。一般には、miRの検出方法は、RT−PCRによってなど、配列特異的な検出を伴う。miR特異的なプライマーおよびプローブを、当技術分野で公知の前駆体miR核酸配列および成熟miR核酸配列を使用して設計することができる(miRBaseマイクロRNAデータベースがUniversity of Manchester、www.mirbase.orgのオンラインで利用可能である)。
主要な実施形態では、検出される変化は、参照値または健康な対照の被験体などの対照と比較した、発現の増加または減少である。一部の実施例では、検出される増加または減少は、対照と比較して少なくとも2倍の増加または減少である。他の実施例では、検出される増加または減少は、表1〜6のいずれかにおいてmiRについて示されている倍率変化の端数を切り捨てて最も近い整数にした(2.05および2.67はどちらも端数を切り捨てて2にするように)、または最も近い整数に丸めた(2.05は2になり、2.67な3になるように)変化である。方法の他の実施形態では、増加または減少は、診断上有意な量の増加または減少であり、診断の統計的確率をもたらすのに十分な大きさの変化を指す。特定の実施例では、変化は、表1〜6のいずれかに示されている変化の大きさ、または表16、19、または20に示されている2種の試料間の強度の幾何平均の倍率変化である。
マイクロRNA(miRNAまたはmiR):植物、動物およびウイルスにおいて遺伝子発現を制御する一本鎖RNA分子である。マイクロRNAをコードする遺伝子は転写されて一次転写物マイクロRNA(pri−miRNA)を形成し、それがプロセシングされて前駆体マイクロRNA(pre−miRNA)と名付けられた短いステムループ分子を形成し、その後ヌクレオチド鎖切断されて成熟マイクロRNAを形成する。成熟マイクロRNAは、およそ21〜23ヌクレオチドの長さであり、1種または複数種の標的メッセンジャーRNA(mRNAs)の3’UTRと部分的に相補的である。「マイクロRNA遺伝子産物」という用語は、pri−miRNA、pre−miRNAおよび成熟マイクロRNA(miR*と称される小型成熟miRNA種を含む)を含む。
マイクロRNAは、標的mRNAの切断を促進することによって、または細胞転写物の翻訳を遮断することによって遺伝子発現を調節する。これまで、900種を超える特有のヒトマイクロRNA(hsa−miRと称される)が同定されている。エプスタイン・バール・ウイルス由来のmiR(ebv−miR)、カポジ肉腫ヘルペスウイルス由来のmiR(kshv−miR)、単純ヘルペスウイルス1由来のmiR(hsv1−miR)、ヒト免疫不全ウイルス1由来のmiR(hiv1−miR)およびヒトサイトメガロウイルス由来のmiR(hcmv−miR)を含めた多数のヒトウイルスmiRも同定されている。ウイルスmiRはヒト細胞において同定されており、場合によっては癌などのヒト疾患に関連付けられている。
新規のマイクロRNAが同定されると、研究者らは、研究を発表する前に配列を登録して、特有のマイクロRNAのそれぞれに公式な番号が割り当てられることを確実にし(miRBase RegistryはUniversity of Manchester、www.mirbase.orgにおいてオンラインで利用可能である)、特定のマイクロRNAの同一性に関して文献中でどんな多義性も排除する。miRBase登録番号によって参照されるすべてのmiRは、本出願の出願日時点でmiRBase登録されているので、参照により本明細書に組み込まれる。miRBase登録は既知のmiRについての配列情報も提供する。
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID):プロスタグランジンの産生を阻害することによって機能する抗炎症剤の1種である。NSAIDSは、抗炎症作用、鎮痛作用および解熱作用を発揮する。NSAIDSの例としては、イブプロフェン、ケトプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、スリンダク、アスピリン、次サリチル酸コリン、ジフルニサル、フェノプロフェン、インドメタシン、メクロフェナム酸、サルサラート、トルメチンおよびサリチル酸マグネシウムが挙げられる。
作動可能に連結:第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列に作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、そのプロモーターはコード配列に作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結されたDNA配列は近接していて、2つのタンパク質コード領域を結びつける必要がある場合、同じ読み枠内にある。
患者:本明細書で使用される、「患者」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。治療するために好ましい患者はヒトである。「患者」および「被験体」は本明細書では互換的に使用される。
薬学的に許容できるビヒクル:本開示において有用な薬学的に許容できる担体(ビヒクル)は従来のものである。E. W. MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第15版(1975年)に、1種または複数種の治療用化合物、治療用分子または治療剤の医薬送達に適した組成物および製剤が記載されている。
一般に、担体の性質は、利用される特定の投与様式に左右される。例えば、非経口的な製剤は、通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、ブドウ糖液、グリセリンまたは同種のビヒクルなどの薬学的および生理的に許容できる流体を含む注射用流体を含む。固形組成物(例えば、粉末、ピル、錠剤またはカプセルの形態)に対しては、従来の無毒性固形担体、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。生物学的に中性な担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存料およびpH緩衝剤および同類のもの、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートなどの少量の無毒性補助物質を含有してよい。
疾患を予防すること、治療することまたは寛解させること:疾患(シェーグレン症候群など)を「予防すること」は、疾患の完全な発症を阻害することを指す。「治療すること」は、疾患または病的な状態の徴候または症状を、それが発症し始めたあとに寛解させる治療介入を指す。「寛解させること」は、疾患の徴候または症状の数または重症度を低下させることを指す。
予後:特定の疾患または障害に苦しんでいる被験体に対する臨床転帰の可能性である。シェーグレン症候群に関しては、予後は、被験体において疾患が進行する(悪化する)(疾患の重篤な徴候および/または症状が発症する)可能性(確率)を表す。例えば、予後不良により、口内乾燥、嚥下困難、齲歯、歯肉疾患、口がひりひりすること、および口の腫大、耳下腺の感染症ならびに口唇乾燥につながる可能性がある唾液腺の炎症の増加が示され得る。場合によっては、予後不良により、呼吸通路を裏打ちしている腺(肺感染症につながる)および膣(反復性の膣感染症につながる)などの他の腺の腫大が示される。予後不良により、関節痛または炎症(関節炎)、レイノー病、肺炎症、リンパ節腫脹、腎疾患、神経疾患または筋疾患、または血管の炎症(血管炎)などの腺外の症状も示される。
組換え:組換え核酸分子は、天然に存在しない配列を有する、または2つの別の分離した配列のセグメントを人工的に組み合わせることによって作製した配列を有する核酸分子である。この人工的な組合せは、化学合成によって、または単離された核酸分子セグメントを人工的に操作することによって、例えば遺伝子工学技術によって実現することができる。
唾液の流れを回復させること:例えばシェーグレン症候群に起因し得る、唾液の流れが縮小した被験体における唾液産生を増加させるプロセスを指す。一部の実施形態では、唾液の流れを回復させることは、治療剤を投与することによって実現することができる。一部の実施例では、治療剤はピロカルピン(Salagen(商標))またはセビメリン(Evoxac(商標))などの医薬である。他の実施例では、治療剤は、健常人と比較してシェーグレン症候群患者において下方制御される、または唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者と比較して唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者において下方制御される単離されたmiR遺伝子産物である。
リボザイム:触媒作用をするRNA分子である。場合によっては、リボザイムは、他のRNA分子の特異的部位に結合し、そのRNA分子のリン酸ジエステル結合の加水分解を触媒することができる。
唾液腺:唾液を産生する外分泌腺である。本明細書で使用される、「唾液腺」は、例えば、耳下腺、小唾液腺、顎下線、舌下腺およびフォンエブネル腺を含めた、ヒト被験体の任意の唾液腺を含む。特定の実施例では、唾液腺は、小唾液腺または耳下腺である。口腔全体を通して600を超える小唾液腺が位置している。小唾液腺は直径1〜2mmである。耳下腺は、下顎枝ならびに外耳の前側および下方を覆う顔の皮下組織に位置する一対の腺である。
配列の同一性/類似性:2つ以上の核酸配列間、または2つ以上のアミノ酸配列間の同一性/類似性は、配列間の同一性または類似性によって表される。配列同一性は、パーセンテージ同一性によって測定することができる;パーセンテージが高いほど、配列の同一性が高い。配列類似性は、パーセンテージ類似性によって測定することができる(保存的なアミノ酸置換を考慮に入れる);パーセンテージが高いほど、配列の類似性が高い。核酸またはアミノ酸配列の相同体またはオルソログは、標準の方法を用いて整列化すると、比較的高度の配列同一性/類似性を有する。この相同性は、オルソロガスなタンパク質またはcDNAが、遠縁種(ヒト配列とC.elegans配列など)と比較して、近縁種(ヒト配列とマウス配列など)由来である場合に著しい。
比較するために配列を整列化する方法は当技術分野で周知である。種々のプログラムおよび整列化アルゴリズムが、Smith & Waterman、Adv. Appl. Math. 2巻:482頁、1981年;Needleman & Wunsch、J. Mol. Biol.48巻:443頁、1970年;Pearson & Lipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:2444頁、1988年;Higgins & Sharp、Gene、73巻:237〜44頁、1988年;Higgins & Sharp、CABIOS 5巻:151〜3頁、1989年;Corpetら、Nuc. Acids Res. 16巻:10881〜90頁、1988年;HuangらComputer Appls. in the Biosciences 8巻、155〜65頁、1992年;およびPearsonら、Meth. Mol. Bio. 24巻:307〜31頁、1994年に記載されている。Altschulら、J. Mol. Biol. 215巻:403〜10頁、1990年に、配列の整列化方法および相同性の算出について詳しい考察が提示されている。
配列解析プログラムのblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxに関連して使用するために、NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J. Mol. Biol. 215巻:403〜10頁、1990年)が、National Center for Biological Information(NCBI)およびインターネットを含めたいくつかの供給源から入手可能である。追加の情報はNCBIのウェブサイトで見ることができる。
唾液分泌促進医薬:ムスカリン性アセチルコリン受容体を刺激することによって唾液産生を上昇させる経口的に利用可能な医薬である。現在、ピロカルピン(Salagen(商標))およびセビメリン(Evoxac(商標))が、米国においてこの表示の認可を受けている。
シェーグレン症候群:涙および唾液を産生する腺を攻撃し、破壊する免疫細胞を特徴とする自己免疫障害である。シェーグレン症候群は、生命にはかかわらない、または寿命を短縮しないが、生活の質を著しく低下させる可能性がある。この障害の顕著な特徴である症状は、口内乾燥およびドライアイである。シェーグレン症候群は、皮膚、鼻および膣の乾燥も引き起こす可能性があり、腎臓、血管、肺、肝臓、膵臓および脳を含めた体内の他の器官に影響を及ぼす可能性がある。シェーグレン症候群は、米国の1〜4百万人に影響を及ぼしており、女性は9倍この疾患を発症しやすい。シェーグレン罹患者の大多数は、診断される時点で40歳以上である。シェーグレン症候群は、一次状態として、または全身性エリテマトーデス(「ループス」)、関節リウマチまたは強皮症などの結合組織疾患に付随する二次障害として発生し得る。
低分子干渉RNA(siRNA):RNAi経路を通じて遺伝子発現を調節する二本鎖核酸分子である(例えば、Bass、Nature 411巻:428〜9頁、2001年;Elbashirら、Nature 411巻:494〜8頁、2001年;およびPCT公開番号WO 00/44895;WO 01/36646;WO 99/32619;WO 00/01846;WO 01/29058;WO 99/07409;およびWO 00/44914を参照されたい)。siRNA分子は、一般に20〜25ヌクレオチドの長さであり、それぞれの3’末端に2ヌクレオチドの突出を有する。しかし、siRNAは平滑末端であってもよい。一般に、siRNA分子の一方の鎖は標的mRNAなどの標的核酸と少なくとも部分的に相補的である。siRNAは、「低分子阻害性RNA(small inhibitory RNA)」、「低分子干渉RNA」または「短い阻害性RNA(short inhibitory RNA)」とも称される。本明細書で使用される、siRNA分子はRNAのみを含有するsiRNA分子に限定する必要はないがRNAiの能力または活性を有する化学的に修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドをさらに包含する。ある実施例では、siRNA分子は、生物活性またはmiR遺伝子産物の発現を低下させるまたは阻害する分子である。
被験体:生きている多細胞性の脊椎動物生物体、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含むカテゴリーである。
治療の、または療法:診断および治療の両方を含む総称である。治療は、障害の通常の過程を変化させるために処方される方策(治療剤の投与を含む)を指す。
治療剤:被験体に適切に投与されたときに所望の治療効果または予防効果を誘導することができる、アンチセンス化合物、抗体、プロテアーゼ阻害剤、ホルモン、ケモカインまたはサイトカインなどの化合物、小分子または他の組成物である。
治療有効量:特定の医薬品または治療剤で治療される被験体または細胞において所望の効果を実現するために十分なその医薬品または治療剤の量である。作用剤の有効量は、これらに限定されないが、治療される被験体または細胞および治療組成物の投与様式を含めたいくつかの因子に左右される。
上方制御されるまたは活性化される:核酸分子(マイクロRNAなど)の発現に関して使用される場合、遺伝子産物の産生の増加をもたらす任意のプロセスを指す。本開示において、遺伝子産物は、一次転写物マイクロRNA(pri−miRNA)、前駆体マイクロRNA(pre−miRNA)または成熟マイクロRNAであってよい。遺伝子の上方制御は、マイクロRNA遺伝子産物の産生における任意の検出可能な増加を含む。ある特定の実施例では、マイクロRNAの産生は、対照と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも40倍増加する。一部の実施例では、対照は、シェーグレン症候群を有さない1体または複数体の被験体におけるマイクロRNAの発現の相対量である。
ベクター:ベクターは、ベクターの、宿主細胞において複製し、かつ/または組み込む能力を妨害することなく外来核酸を挿入することを可能にする核酸分子である。ベクターは、複製開始点などの、宿主細胞における複製を可能にする核酸配列を含んでよい。ベクターは、1種または複数種の選択マーカー遺伝子および他の遺伝因子も含んでよい。発現ベクターは、挿入された遺伝子(単数または複数)の転写および翻訳を可能にするために必要な制御配列を含有するベクターである。本明細書の一部の実施形態では、ベクターはプラスミドベクターである。他の実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。
他に特に説明がなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または(もしくは)」は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、「および」を含むものとする。したがって、「AまたはBを含む」は、A、もしくはB、または、AおよびBを含めて示す。さらに、核酸またはポリペプチドについて示したすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子の質量値はおよそであり、説明のために提供していることを理解されたい。本明細書に記載の方法および材料と類似のまたは等価の方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載している。本明細書で言及したすべての刊行物、特許出願、特許および他の参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。矛盾する場合には、用語の説明を含めた本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法および実施例は、例示のみであり、限定するものではない。
III.いくつかの実施形態の概要
健康な対照の被験体と比較して、シェーグレン症候群患者において示差的に発現されるマイクロRNAを同定することが本明細書に記載されている。唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者と比較して、正常な唾液の流れを示すシェーグレン症候群患者において上方制御されるマイクロRNAも開示されている。470種のヒトマイクロRNAおよび64種のヒトウイルスマイクロRNAのマイクロアレイ発現解析を使用して、対照と比較して、シェーグレン症候群患者において少なくとも2倍、上方制御または下方制御される多数のマイクロRNAを同定した。場合によっては、マイクロRNA遺伝子産物の発現は45倍または92倍と同程度に変化した。したがって、被験体における1種または複数種の示差的に発現されるマイクロRNAの発現を測定することにより、被験体がシェーグレン症候群を有すると診断することができる。
被験体の生体試料中の少なくとも1種のマイクロRNA(miR)遺伝子産物のレベルを測定することによって、被験体がシェーグレン症候群を有すると診断する方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、表1〜6および表16〜21のいずれか1つに列挙されている任意のmiR遺伝子産物を含む。特定の実施形態では、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bまたはmiR−409−3p遺伝子産物である。被験体の生体試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物の、対照と比較したレベルの変化により、被験体がシェーグレン症候群を有することが示される。本明細書に記載の通り、シェーグレン症候群を有する被験体の生体試料における、対照と比較したmiR−150のレベルの上昇、ebv−miR−BART13のレベルの上昇、ebv−miR−BART19のレベルの上昇、miR−768−3pのレベルの上昇、miR−574のレベルの低下、miR−513のレベルの上昇、miR−188のレベルの上昇、miR−202のレベルの上昇、hcmv−miR−US4のレベルの上昇、miR−565のレベルの上昇、miR−509のレベルの上昇、miR−154のレベルの上昇、miR−99bのレベルの上昇、miR−564のレベルの上昇、miR−30bのレベルの上昇またはmiR−409−3pのレベルの上昇、またはそれらの組合せにより、被験体がシェーグレン症候群を有することが示される。一部の実施形態では、miR遺伝子産物のレベルの上昇または低下は、診断上有意な量の上昇または低下である。
方法の一部の実施形態では、miR遺伝子産物の発現の診断上有意な増加または減少は少なくとも2倍である。他の実施形態では、診断上有意な増加または減少は少なくとも3倍である。一部の実施例では、対照と比較して、シェーグレン症候群を有する被験体の生体試料において、miR−150が少なくとも32倍増加する、ebv−miR−BART13が7倍増加する、ebv−miR−BART19が45倍増加する、miR−768−3pが3倍増加する、miR−574が4倍減少する、miR−513が6倍増加する、miR−188が少なくとも2倍増加する、miR−202が少なくとも2倍増加する、hcmv−miR−US4が少なくとも2倍増加する、miR−565が6倍増加する、miR−509が少なくとも2倍増加する、miR−154が少なくとも2倍増加する、miR−99bが少なくとも2倍増加する、miR−564が6倍増加する、miR−30bが3倍増加する、またはmiR−409−3pが少なくとも2倍増加する、またはそれらが組み合わされる。
他の実施例では、対照と比較して、シェーグレン症候群を有する被験体の生体試料において、miR−150が38倍増加する、ebv−miR−BART13が21倍増加する、ebv−miR−BART19が9少なくとも2倍増加する、miR−768−3pが3倍増加する、miR−574が2倍減少する、miR−513が16倍増加する、miR−188が7倍増加する、miR−202が5倍増加する、hcmv−miR−US4が6倍増加する、miR−565が7倍増加する、miR−509が18倍増加する、miR−154が3倍増加する、miR−99bが5倍増加する、miR−564が29倍増加する、miR−30bが4倍増加する、またはmiR−409−3pが3倍増加する、またはそれらが組み合わされる。
診断上有意な増加または減少は、倍率変化を算出するために用いることができる、miR発現における特異的な倍率変化、またはシェーグレン症候群患者と正常な対照(または病巣スコアが高いシェーグレン症候群患者と病巣スコアが低いシェーグレン症候群患者)との間の強度の幾何平均のいずれかを提供する表1〜6、表16、表19または表20のいずれか1つから決定することもできる。
診断方法の他の実施例では、少なくとも1種のmiR遺伝子産物はmiR−150、miR−183、miR−494、miR−513、miR−548c、miR−564、miR−565、miR−585、miR−768−5p、miR−801、ebv−miR−BART13またはebv−miR−BART19遺伝子産物である。本明細書に記載の通り、対照と比較して、シェーグレン症候群を有する被験体において、miR−150のレベルが上昇し、miR−183のレベルが低下し、miR−494のレベルが上昇し、miR−513のレベルが上昇し、miR−548cのレベルが低下し、miR−564のレベルが上昇し、miR−565のレベルが上昇し、miR−585のレベルが低下し、miR−768−5pのレベルが低下し、miR−801のレベルが上昇し、ebv−miR−BART13のレベルが上昇し、かつ/またはebv−miR−BART19のレベルが上昇する。
場合によっては、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−150、miR−183、miR−494、miR−513、miR−548c、miR−564、miR−565、miR−585、miR−768−5p、miR−801、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、hsa−let−7d、hsa−let−7e、miR−125a、miR−148aまたはmiR−32遺伝子産物であり;シェーグレン症候群を有する被験体の生体試料における、対照と比較したmiR−150のレベルの上昇、miR−183のレベルの低下、miR−494のレベルの上昇、miR−513のレベルの上昇、miR−548cのレベルの低下、miR−564のレベルの上昇、miR−565のレベルの上昇、miR−585のレベルの低下、miR−768−5pのレベルの低下、miR−801のレベルの上昇、ebv−miR−BART13のレベルの上昇、ebv−miR−BART19のレベルの上昇、hsa−let−7dのレベルの低下、hsa−let−7eのレベルの低下、miR−125aのレベルの低下、miR−148aのレベルの低下またはmiR−32のレベルの低下、またはそれらの組合せにより、被験体がシェーグレン症候群を有することが示される。
一部の実施形態では、方法は、1種または複数種の追加のmiR遺伝子産物のレベルを測定することをさらに含む。したがって、一部の実施例では、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−126、miR−189、miR−200c、miR−212、miR−22、miR−30b、miR−326、miR−328、miR−574、miR−575、miR−768−3pまたはmiR−9遺伝子産物、またはそれらの組合せをさらに含む。本明細書で教示される通り、対照と比較して、シェーグレン症候群を有する被験体においてmiR−126のレベルが上昇し、miR−189が低下し、miR−200cが低下し、miR−212が上昇し、miR−22が低下し、miR−30bが上昇し、miR−326が低下し、miR−328が低下し、miR−574が低下し、miR−575が上昇し、miR−768−3pが上昇し、かつ/またはmiR−9が低下する。
方法の一部の実施形態では、miR遺伝子産物の発現の診断上有意な増加または減少は、少なくとも2倍である。他の実施形態では、診断上有意な増加または減少は少なくとも3倍である。特定の実施例では、対照と比較して、シェーグレン症候群を有する被験体の生体試料において、miR−150が少なくとも32倍増加する、miR−183が7倍減少する、miR−494が6倍増加する、miR−513が6倍増加する、miR−548cが7倍減少する、miR−564が6倍増加する、miR−565が6倍増加する、miR−585が10倍減少する、miR−768−5pが8倍減少する、miR−801が7倍増加する、ebv−miR−BART13が7倍増加する、ebv−miR−BART19が45倍増加する、miR−126が4倍増加する、miR−189が4倍減少する、miR−200cが3倍減少する、miR−212が4倍増加する、miR−22が3倍減少する、miR−30bが3倍増加する、miR−326が3倍減少する、miR−328が4倍減少する、miR−574が4倍減少する、miR−575が4倍増加する、miR−768−3pが3倍増加するまたはmiR−9が3倍減少する、hsa−let−7dが2倍減少する、hsa−let−7eが2倍減少する、miR−125aが2倍減少する、miR−148aが2倍減少する、またはmiR−32が2倍減少する、またはそれらが組み合わされる。
本明細書に開示されている方法が、表1〜6または表16〜21に列挙されている任意の単一のmiR遺伝子産物またはmiR遺伝子産物の任意の組合せもしくは部分的組合せのレベルを測定することを含むことが理解される。特定の実施例では、miR遺伝子産物の組合せは、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bおよびmiR−409−3p、または任意のその部分的組合せを含む。他の実施例では、miR遺伝子産物の組合せは、miR−150、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、ebv−miR−BART19、miR−501、miR−126、miR−342、miR−330、miR−135b、miR−142−5pおよびmiR−650、または任意のその部分的組合せを含む。他の実施例では、miR遺伝子産物の組合せは、miR−150、miR−585およびebv−miR−BART19、または任意のその部分的組合せを含む。他の実施例では、miR遺伝子産物の組合せは、miR−150、miR−183、miR−548c、miR−585、miR−768−5p、miR−801、ebv−miR−BART13およびebv−miR−BART19、または任意のその部分的組合せを含む。他の実施例では、miR遺伝子産物の組合せは、miR−150、miR−183、miR−494、miR−513、miR−548c、miR−564、miR−565、miR−585、miR−768−5p、miR−801、ebv−miR−BART13およびebv−miR−BART19、または任意のその部分的組合せを含む。他の実施例では、miR遺伝子産物の組合せは、miR−126、miR−150、miR−183、miR−189、miR−200c、miR−212、miR−22、miR−30b、miR−326、miR−328、miR−494、miR−513、miR−548c、miR−564、miR−565、miR−574、miR−575、miR−585、miR−768−3p、miR−768−5p、miR−801、miR−9、ebv−miR−BART13およびebv−miR−BART19、または任意のその部分的組合せを含む。他の実施例では、miR遺伝子産物の組合せは、miR−150、miR−183、miR−494、miR−513、miR−548c、miR−564、miR−565、miR−585、miR−768−5p、miR−801、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、hsa−let−7d、hsa−let−7e、miR−125a、miR−148aおよびmiR−32、または任意のその部分的組合せを含む。
場合によっては、方法は、単一のmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。一実施例では、単一のmiR遺伝子産物は、miR−574である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はebv−miR−BART−13である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はebv−miR−BART19である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−150である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−768−3pである。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−574である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−513である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−188である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−202である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はhcmv−miR−US4である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−565である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−509である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−154である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−99bである。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−564である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−30bである。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−409−3pである。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−183である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−548cである。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−585である。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−768−5pである。別の実施例では、単一のmiR遺伝子産物はmiR−801である。
miR発現を検出し測定する方法は、当技術分野で周知であり、以下に詳細が記載されている。一部の実施例では、単一のmiR遺伝子産物を分析するときなど、miR遺伝子産物のレベルを測定するためにRT−PCRを使用する。他の場合では、多数のmiR遺伝子産物を測定するとき、マイクロアレイ解析を使用することが望ましい。
測定されるmiR遺伝子産物は、一次miRNA(pri−miRNA)、前駆体miRNA(pre−miRNA)または成熟miRNA(miR*と表される小型成熟miRNA産物を含む)であってよい。
方法の一部の実施形態では、生体試料は小唾液腺または耳下腺唾液腺などの唾液腺である。場合によっては、この種類の腺に対する生検手順は侵入性が低いので、小唾液腺から試料を得ることが望ましい。他の実施形態では、生体試料は唾液である。マイクロRNAを唾液中に見出されるエキソソームから単離できることが決定されている(Michaelら、Oral Dis. 16巻:34〜38頁、2010年)。したがって、一部の実施例では、唾液試料のエキソソームからマイクロRNAを単離する。一部の実施形態では、生体試料は、血液、または、血漿もしくは血清などのその成分である。
一部の実施形態では、方法は、シェーグレン症候群と診断された被験体に対して適切な療法を提供することをさらに含む。一部の実施例では、療法は、唾液産生を促進する作用剤を投与することを含む。そのような作用剤は、当技術分野で公知であり、それらとしてピロカルピンまたはセビメリンが挙げられる。他の実施例では、療法は、コルチゾールまたはプレドニゾンなどのコルチコステロイドを投与することを含む。他の実施例では、療法は、小分子(例えばシクロスポリン)またはモノクローナル抗体(例えばサイトカイン遮断薬)などの免疫抑制薬を投与することを含む。他の実施例では、療法は、対照と比較して、シェーグレン症候群患者において下方制御される、または、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者と比較して、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者において下方制御されると同定されたmiR遺伝子産物などの単離されたmiR遺伝子産物を投与することを含む。他の実施例では、療法は、対照と比較して、シェーグレン症候群患者において上方制御される、または、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者と比較して、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者において上方制御されると同定されたmiR遺伝子産物を阻害する作用剤などのmiR遺伝子産物の発現を阻害する作用剤を投与することを含む。
シェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して上方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する治療有効量の作用剤を患者に投与することによって、またはシェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して下方制御される治療有効量の単離されたmiR遺伝子産物を患者に投与することによってシェーグレン症候群患者を治療する方法も本明細書で提供される。
一部の実施形態では、シェーグレン症候群患者において上方制御されるmiR遺伝子産物は、表1または表2に列挙されている、制御の列で「下方」(正常な被験体において発現が減少していることを示す)に分類されている任意遺伝子産物である。一部の実施形態では、上方制御されるmiR遺伝子産物は、表3に列挙されている、制御の列で「上方」(健康な被験体と比較して、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者において発現が増加していることを示す)と分類されている任意のmiR遺伝子産物である。一部の実施形態では、シェーグレン症候群患者において上方制御されるmiR遺伝子産物は、表16、表19または表20に列挙されている任意遺伝子産物であり、シェーグレン症候群患者における強度値の幾何平均は正常対照における値よりも大きい。特定の実施形態では、上方制御されるmiR遺伝子産物は、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30b、またはmiR−409−3p遺伝子産物である。他の実施例では、上方制御されるmiR遺伝子産物は、miR−126、miR−150、miR−212、miR−30b、miR−494、miR−513、miR−564、miR−565、miR−575、miR−768−3p、miR−801、ebv−miR−BART13またはebv−miR−BART19遺伝子産物である。作用剤は、1種または複数種のmiR遺伝子産物の発現を阻害することができる核酸分子、ポリペプチド、小分子または他の化合物などの任意の化合物であってよい。一部の実施形態では、miR遺伝子産物の発現を阻害する作用剤は、miR遺伝子産物に特異的なアンチセンス化合物である。一部の実施例では、アンチセンス化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAまたはリボザイムである。
一部の実施形態では、シェーグレン症候群患者において下方制御されるmiR遺伝子産物は、表1または表2に列挙されている、制御の列で「上方」(正常な被験体において発現が増加していることを示す)と分類されている任意の遺伝子産物である。一部の実施形態では、下方制御されるmiR遺伝子産物は、表3に列挙されている、制御の列で「下方」(健康な被験体と比較して、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者において発現が減少していることを示す)に分類されている任意のmiR遺伝子産物である。一部の実施形態では、シェーグレン症候群患者において下方制御されるmiR遺伝子産物は、表16、表19または表20に列挙されている任意の遺伝子産物であり、シェーグレン症候群患者の強度値の幾何平均は正常対照の値よりも小さい。特定の実施形態では、下方制御されるmiR遺伝子産物は、miR−183、miR−189、miR−200c、miR−22、miR−326、miR−328、miR−548c、miR−574、miR−585、miR−768−5pまたはmiR−9遺伝子産物である。特定の実施例では、下方制御されるmiR遺伝子産物は、miR−574遺伝子産物である。一部の実施例では、単離されたmiR遺伝子産物を投与することは、プラスミドベクターまたはウイルスベクターなどのmiR遺伝子産物をコードするベクターを投与することを含む。他の実施形態では、単離されたmiR遺伝子産物は、例えば、ネイキッドmiRとして、またはリポソーム製剤(例えばmiRはリポソーム中にカプセル化することができる)、陽イオン性脂質またはポリペプチド担体を使用して送達することができる。
単離されたmiR遺伝子産物を治療有効量で患者に投与することによってシェーグレン症候群患者における唾液の流れを回復させる方法が、本明細書でさらに提供される。一部の実施形態では、miR遺伝子産物は、表4または表5に列挙されている、制御の列で「上方」(唾液の流れが不十分な患者と比較して、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者において上方制御されることを示す)に分類されている任意のmiR遺伝子産物である。特定の実施形態では、miR遺伝子産物は、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bまたはmiR−409−3p遺伝子産物である。他の実施例では、miR遺伝子産物は、miR−136、miR142−3p、miR−144、miR−19a、miR−212、miR−219、miR−301、miR−33、miR−330またはmiR−340遺伝子産物である。一部の実施形態では、単離されたmiR遺伝子産物は、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターなどのmiR遺伝子産物をコードするベクターを投与することを含む。他の実施形態では、単離されたmiR遺伝子産物は、例えば、ネイキッドmiRとして、またはリポソーム製剤(例えばmiRをリポソーム中にカプセル化することができる)、陽イオン性脂質またはポリペプチド担体を使用して送達することができる。
被験体の生体試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物の発現レベルの使用であって、少なくとも1種のmiR遺伝子産物が、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bまたはmiR−409−3p遺伝子産物であり、(i)被験体の生体試料における、対照と比較したmiR−150のレベルの上昇、ebv−miR−BART13のレベルの上昇、ebv−miR−BART19のレベルの上昇、miR−768−3pのレベルの上昇、miR−574のレベルの低下、miR−513のレベルの上昇、miR−188のレベルの上昇、miR−202のレベルの上昇、hcmv−miR−US4のレベルの上昇、miR−565のレベルの上昇、miR−509のレベルの上昇、miR−154のレベルの上昇、miR−99bのレベルの上昇、miR−564のレベルの上昇、miR−30bのレベルの上昇、またはmiR−409−3pのレベルの上昇、またはそれらの組合せにより、被験体がシェーグレン症候群を有することが示され、ここで上昇または低下は診断上有意な量の上昇または低下であり;かつ/または(ii)シェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して上方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する治療有効量の作用剤を患者に投与する、またはシェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して下方制御される治療有効量の単離されたmiR遺伝子産物を患者に投与することによる、被験体がシェーグレン症候群を有すると診断するため、および/またはシェーグレン症候群を有する被験体を治療するための使用がさらに提供される。一部の実施形態では、使用は、シェーグレン症候群と診断された被験体に対して適切な療法または第2の適切な療法を提供することをさらに含む。
シェーグレン症候群患者を治療するための薬剤の調製における、シェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して上方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する治療有効量の作用剤、またはシェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して下方制御される治療有効量の単離されたmiR遺伝子産物の使用も提供される。
シェーグレン症候群を治療する方法またはシェーグレン症候群患者における唾液の流れを回復させるための方法において使用するための、シェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して上方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する治療有効量の作用剤、またはシェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して下方制御される治療有効量の単離されたmiR遺伝子産物がさらに提供される。
シェーグレン症候群患者における唾液の流れを回復させるための薬剤の調製における、治療有効量の単離されたmiR遺伝子産物の使用であって、miR遺伝子産物が、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bまたはmiR−409−3p遺伝子産物である、使用も提供される。
シェーグレン症候群患者について、炎症の尺度である病巣スコアが高い、または低いと診断する方法も提供される。一部の実施形態では、方法は、被験体の生体試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、表6、表19または表20のいずれか1つに列挙されている任意のmiR遺伝子産物であってよい。例えば、表6には、病巣スコアが低いシェーグレン症候群患者と病巣スコアが高いシェーグレン症候群患者との間で示差的に発現されるmiRが示されている。表19および表20は、病巣スコアが高いシェーグレン症候群患者、病巣スコアが低いシェーグレン症候群患者および正常な対照の間の、示されたmiRについての強度の幾何平均を提供する。
一部の実施例では、少なくとも1種のmiR遺伝子産物は、miR−150、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、ebv−miR−BART19、miR−501、miR−126、miR−342、miR−330、miR−135b、miR−142−5p、またはmiR−650遺伝子産物である。シェーグレン症候群患者の生体試料における、対照と比較したmiR−150のレベルの上昇、miR−768−3pのレベルの上昇、miR−574のレベルの低下、miR−513のレベルの上昇、miR−188のレベルの上昇、ebv−miR−BART19のレベルの上昇、miR−501のレベルの上昇、miR−126*のレベルの上昇、miR−342のレベルの上昇、miR−330のレベルの上昇、miR−135bのレベルの上昇、miR−142−5pのレベルの上昇、またはmiR−650のレベルの上昇、またはそれらの組合せにより、シェーグレン症候群患者の病巣スコアが高いことが示される。それに加えてまたはその代わりに、シェーグレン症候群患者の生体試料における、対照と比較したmiR−150のレベルの低下、miR−768−3pのレベルの低下、miR−574のレベルの上昇、miR−513のレベルの低下、miR−188のレベルの低下、ebv−miR−BART19のレベルの低下、miR−501のレベルの低下、miR−126のレベルの低下、miR−342のレベルの低下、miR−330のレベルの低下、miR−135bのレベルの低下、miR−142−5pのレベルの低下、またはmiR−650のレベルの低下、またはそれらの組合せにより、そのシェーグレン症候群患者の病巣スコアが低いことが示される。
一部の実施形態では、上昇または低下は、診断上有意な量の上昇または低下である。一部の実施形態では、miR遺伝子産物のレベルにおける診断上有意な上昇または低下は、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、または少なくとも5倍である。
他の実施形態では、方法は、被験体の生体試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルの測定であって、少なくとも1種のmiR遺伝子産物がmiR−150、miR−338、miR−219、miR−142−5p、miR−142−3p、miR−155、miR−650、miR−146b、miR−181a、miR−200a、miR−223、miR−299−3p、miR−375またはmiR−377遺伝子産物である、測定を含む。シェーグレン症候群患者の生体試料における、対照と比較したmiR−142−3pのレベルの上昇、miR−142−5pのレベルの上昇、miR−146bのレベルの上昇、miR−150のレベルの上昇、miR−155のレベルの上昇、miR181aのレベルの上昇、miR−200aのレベルの低下、miR−219のレベルの低下、miR−223のレベルの上昇、miR−299−3pのレベルの低下、miR−338のレベルの低下、miR−375のレベルの低下、miR−377のレベルの低下、またはmiR−650のレベルの上昇、またはそれらの組合せにより、そのシェーグレン症候群患者の病巣スコアが高いことが示される。対照的に、シェーグレン症候群患者の生体試料における、対照と比較したmiR−142−3pのレベルの低下、miR−142−5pのレベルの低下、miR−146bのレベルの低下、miR−150のレベルの低下、miR−155のレベルの低下、miR181aのレベルの低下、miR−200aのレベルの上昇、miR−219のレベルの上昇、miR−223のレベルの低下、miR−299−3pのレベルの上昇、miR−338のレベルの上昇、miR−375のレベルの上昇、miR−377のレベルの上昇、またはmiR−650のレベルの低下、またはそれらの組合せにより、シェーグレン症候群患者の病巣スコアが低いことが示される。
本明細書に記載の診断方法および治療方法のために、対照は、参照値などの任意の適切な対照であってよい。例えば、参照値(または、2種以上のmiR遺伝子産物を測定する場合は、複数の値)は、病巣スコアが高い、または病巣スコアが低いことが既知であるシェーグレン症候群患者を含めたシェーグレン症候群患者における平均のmiR遺伝子産物の発現に基づいた歴史的な値であってよい。対照は、健康な被験体(シェーグレン症候群と診断されていない被験体)由来の生体試料であってもよい。
シェーグレン症候群を治療するための治療剤をスクリーニングするためのin vitroにおけるプロセスであって、(i)細胞培養物を候補作用剤と接触させるステップと、(ii)miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bおよびmiR−409−3p遺伝子産物から選択される少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定するステップであって、対照と比較した、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bおよび/またはmiR−409−3pのレベルの低下、および/またはmiR−574のレベルの上昇により、候補作用剤が、シェーグレン症候群を治療するための治療剤であると同定されるステップとを含むプロセスも、本明細書において提供される。
シェーグレン症候群患者を治療するための治療剤をスクリーニングするための、少なくとも1種のmiR遺伝子産物の発現レベルの使用であって、少なくとも1種のmiR遺伝子産物がmiR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bまたはmiR−409−3p遺伝子産物であり、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bまたはmiR−409−3pのレベルを低下させる、かつ/またはmiR−574のレベルを上昇させる作用剤がシェーグレン症候群を治療するための治療剤である、使用も提供される。
表1〜6および表16〜21のいずれか1つに列挙されているmiR遺伝子産物から選択されるmiR遺伝子産物と特異的にハイブリダイズする少なくとも2種のオリゴヌクレオチドを含むアレイも提供される。一部の実施形態では、アレイは、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bおよびmiR−409−3pからなる群から選択されるmiR遺伝子産物と特異的にハイブリダイズする少なくとも2種のオリゴヌクレオチドを含む。シェーグレン症候群を有する被験体に対する適切な療法を選択するためのそのようなアレイの使用がさらに提供される。アレイは、選択された療法の経過をモニターして、本明細書に開示されている通り、シェーグレン症候群に関連する1種または複数種のmiRのレベルの上昇または低下から明らかなように、その療法がシェーグレン症候群の治療に有効であるかを決定するためにも使用することができる。
表1〜6および表16〜21のいずれか1つに列挙されているmiR遺伝子産物から選択されるmiR遺伝子産物に特異的な少なくとも2種のオリゴヌクレオチドプローブを含むキットも提供される。一部の実施形態では、キットは、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bおよびmiR−409−3pからなる群から選択されるmiR遺伝子産物に特異的な少なくとも2種のオリゴヌクレオチドプローブを含む。
IV.マイクロRNAの命名法およびヌクレオチド配列
マイクロRNA(miRNAおよびmiRとしても公知である)は、動物、植物およびウイルスならびに少なくとも1種の単細胞真核生物のゲノムにおいて見出されるより長い転写物から発現される短いRNA配列である(Molnarら、Nature 447巻:1126〜1129頁、2007年;Zhaoら、Genes Dev. 21巻:1190〜1203頁、2007年)。マイクロRNAは、標的遺伝子転写物の相補的部位に結合して翻訳抑制または転写物の分解を引き起こすことによって標的遺伝子の発現を制御する(Pillaiら、Trends Cell Biol. 17巻:118〜126頁、2007年)。これらの低分子RNA分子は、発生、細胞増殖、アポトーシス、代謝、形態形成および疾患(とりわけ、癌)に関連するいくつもの生物学的なプロセスに結びつけられている(KloostermanおよびPlasterk、Dev. Cell 11巻:441〜450頁、2006年)。
マイクロRNAをコードする遺伝子は転写されて一次転写物マイクロRNA(pri−miRNA)を形成し、それがプロセシングされて前駆体マイクロRNA(pre−miRNA)と名付けられた短いステムループ分子を形成し、その後ヌクレオチド鎖切断されて成熟マイクロRNAを形成する。成熟マイクロRNAは、およそ21〜23ヌクレオチドの長さであり、1種または複数種の標的メッセンジャーRNA(mRNAs)の3’UTRと部分的に相補的である。
マイクロRNAに対する命名法のスキームが十分に確立されている(Griffiths−Jonesら、Nucleic Acids Res. 34巻:D140〜D144頁、2006年;Ambrosら、RNA 9巻:277〜279頁、2003年;Griffiths−Jones、Nucleic Acids Res. 32巻:D109〜D111頁、2004年)。例えば、マイクロRNAの名称は、Homo sapiensに対する「hsa」などの3つまたは4つの文字種の接頭辞、および「150」などの数字の接尾辞を含み、「hsa−miR−150」という完全な名称になる。2つ以上のヘアピン前駆体分子から発現される成熟miRNA配列は、「−1」および「−2」によって区別する(miR−6−1およびmiR−6−2など)。関連成熟マイクロRNA配列を発現する関連ヘアピン遺伝子座は文字入りの接尾辞を有する(miR−181aおよびmiR−181bなど)。場合によっては、ヘアピン前駆体の5’アームと3’アームの両方から成熟miRNAが同定され、「3p」または「5p」と称される(miR−768−3pおよびmiR−768−5pなど)。ウイルスマイクロRNAの名称は、マイクロRNAが由来する遺伝子座に関連する(例えば、ebv−miR−BART1は、エプスタイン・バール・ウイルスBART遺伝子座由来である)。
マイクロRNA遺伝子産物の配列は、科学文献および特許文献を通じて十分記載されており、University of Manchesterによって提供される(以前はSanger Instituteによって提供されていた)miRBase(www.mirbase.org)からオンラインで入手可能である。miRBase登録により、公開されたすべての動物、植物およびウイルスのマイクロRNAヌクレオチド配列が提供される(Griffiths−Jonesら、Nucleic acids Res. 36巻:D154〜D158頁、2008年)。miRBaseにより、前駆体マイクロRNA(ステムループmiRNA)、成熟miRNAおよび小型マイクロRNA種(miR)の配列が提供される。前駆体miRNAは、成熟miRNAと称されるmiRNAの1種を主に発現する。しかし、小型miRNA配列も検出されていて、miRと称される。
V.マイクロRNAの発現を検出および測定する方法
マイクロRNAは、種々の疾患を診断し、予後判定するためのバイオマーカーとして見込みがある非翻訳RNA分子である(Calinら、N Engl J Med 353巻:1793〜801頁、2005年;Johnsonら、Cell 120巻:635〜47頁、2005年;Voliniaら、Proc Natl Acad Sci U S A 103巻:2257〜61頁、2006年;Yanaiharaら、Cancer Cell 9巻:189〜98頁、2006年;Cumminsら、Proc Natl Acad Sci USA 103巻:3687〜92頁、2006年)。多数の予後バイオマーカーを組み合わせることにより、個々のバイオマーカーと比較して、シェーグレン症候群などの特定の疾患を診断し、治療する能力が改善される可能性がある。したがって、本明細書において提供される方法の一部の実施形態では、シェーグレン症候群を診断するため、およびシェーグレン症候群患者に対して予後を予測し、見込みのある治療を開発するためにマイクロRNAの発現プロファイルを使用する。
前駆体マイクロRNAおよび成熟miRNAの配列は、University of Manchesterによる、以前はSanger Instituteによって維持されていたオンラインで利用可能なmiRBaseデータベースを通してなど、公的に入手可能である(Griffiths−Jonesら、Nucleic Acids Res. 36巻:D154〜D158頁、2008年;Griffiths−Jonesら、Nucleic Acids Res. 34巻:D140〜D144頁、2006年;およびGriffiths−Jones、Nucleic Acids Res. 32巻:D109〜D111頁、2004年を参照されたい)。
マイクロRNAの発現の検出および定量化は、当技術分野で周知のいくつもの方法のいずれか1つによって実現することができる(例えば、米国特許出願公開第2006/0211000号および同第2007/0299030号を参照されたい)。必要に応じて、対象とするマイクロRNAに対する既知配列を使用して、本明細書に記載の検出方法において使用するために特異的なプローブおよびプライマーを設計することができる。
場合によっては、マイクロRNAの検出方法は、細胞、生体液試料または組織試料(例えば、唾液腺または唾液)などの試料から核酸を単離することを必要とする。RNA、とりわけmiRNAを含めた核酸は、当技術分野で公知の任意の適切な技法を用いて単離することができる。例えば、フェノールに基づく抽出が、RNAを単離するための一般的な方法である。フェノールに基づく試薬は、細胞および組織を破壊し、その後RNAを汚染物質から分離するための変性剤およびRNase阻害剤の組合せを含有する。フェノールに基づく単離手順により、10〜200ヌクレオチドの範囲のRNA種を回収することができる(例えば前駆体miRNAおよび成熟miRNA、5SリボソームRNAおよび5.8SリボソームRNA(rRNA)、およびU1核内低分子RNA(snRNA))。さらに、TRIZOL(商標)またはTRI REAGENT(商標)を使用した抽出などの抽出手順により、高分子および低分子すべてのRNAが精製され、これらの抽出手順は、miRNAおよびsiRNAを含有する生体試料から全RNAを単離するための効率的な方法である。
マイクロRNAのマイクロアレイ解析は、当技術分野で公知の任意の方法に従って実現することができる(例えば、PCT公開番号WO 2008/054828;Yeら、Nat. Med. 9巻(4号):416〜423頁、2003年;Calinら、N. Engl. J. Med. 353巻(17号):1793〜1801頁、2005年を参照されたい)。一実施例では、細胞試料または組織試料からRNAを抽出し、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して全RNAから低分子RNA(18〜26ヌクレオチドのRNA)をサイズ選択する。オリゴヌクレオチドリンカーを低分子RNAの5’末端および3’末端に結合させ、生じたライゲーション産物を、10サイクルの増幅を伴うRT−PCR反応の鋳型として使用する。センス鎖PCRプライマーの5’末端にフルオロフォアを結合させ、それによってPCR産物のセンス鎖を蛍光標識する。PCR産物を変性させ、次いでマイクロアレイにハイブリダイズさせる。アレイ上の対応するマイクロRNA捕獲プローブ配列と相補的な、標的核酸と称されるPCR産物が、塩基対合を介して、捕獲プローブが付着しているスポットにハイブリダイズする。次いでそのスポットを、マイクロアレイレーザースキャナーを使用して励起させると蛍光が発生する。次いで、各スポットの蛍光強度を、いくつもの陽性対照および陰性対照およびアレイデータの正規化法を用いて、特定のmiRNAのコピー数によって評価し、それにより特定のmiRNAの発現レベルが査定される。
代替的な方法では、細胞、生体液または組織試料から抽出された低分子RNA画分(miRNAを含む)を含有する全RNAを、低分子RNAのサイズ選択をせずに直接使用し、T4 RNAリガーゼおよび蛍光標識した短いRNAリンカーのどちらかを使用して3’末端を標識する。RNA試料を、30℃で2時間インキュベートし、続いて80℃で5分間T4 RNAリガーゼを熱失活させることによって標識する。アレイ上の対応するmiRNA捕獲プローブ配列と相補的なフルオロフォア標識されたmiRNAが、塩基対合を介して、捕獲プローブが付着しているスポットにハイブリダイズする。マイクロアレイのスキャンおよびデータ処理を上記の通り行う。
対象とする遺伝子(マイクロRNAを含む)の発現を検出するための当技術分野で公知のいくつもの方法のいずれか1つを用いて、マイクロRNAの発現を検出することができる。qRT−PCR、アレイ、マイクロアレイ、in situハイブリダイゼーション、in situ PCR、SAGEを含めたいくつものこれらの方法は、以下にさらに詳細を記載している。miRNAの検出は、当技術分野で公知の方法に従って、大規模配列決定(deep sequencing)によっても実現することができる(Creightonら、Brief Bioinform. 10巻(5号):490〜2009頁 Ma497、2009年)。
A.RT−PCR
マイクロRNAを含めたRNAを定量化するための方法は、当技術分野で周知である。一部の実施形態では、方法は、RT−PCRを利用する。一般に、RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングの最初のステップは、RNA鋳型をcDNAに逆転写することであり、続いてそのcDNAをPCR反応において指数関数的に増幅させることである。一般的に使用される2種の逆転写酵素は、トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。しかし、当技術分野で公知の任意の適切な逆転写酵素をRT−PCRに使用することができる。逆転写ステップは、一般に、状況および発現プロファイリングの目的に応じて、特異的なプライマー、ランダムヘキサマーまたはオリゴdTプライマーを使用してプライミングする。例えば、抽出されたRNAを、GeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer、CA)を製造者の説明書に従って使用して逆転写することができる。次いで、得られたcDNAをその後のPCR反応における鋳型として使用することができる。
PCRのステップに種々の熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを使用することができるが、多くの場合5’−3’ヌクレアーゼ活性を有するが3’−5’校正エンドヌクレアーゼ活性を欠くTaq DNAポリメラーゼが使用される。TaqMan(登録商標)PCRでは、標的アンプリコンに結合したハイブリダイゼーションプローブをハイブリダイズさせるために、一般にはTaq DNAポリメラーゼまたはTth DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用するが、等価の5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素を使用することができる。2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用してPCR反応に特有のアンプリコンを生成する。第3のオリゴヌクレオチド、またはプローブを設計して2つのPCRプライマー間に位置するヌクレオチド配列を検出する。プローブはTaq DNAポリメラーゼ酵素によって伸長できないものであり、また、それをレポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素で標識する。2つの色素がプローブ上ですぐ近くに位置すると、レポーター色素からレーザー誘起されたどんな放射もクエンチャー色素によってクエンチされる。増幅反応の間、Taq DNAポリメラーゼ酵素により、プローブが鋳型依存的な様式で切断される。生じたプローブ断片は溶液中で分離し、放出されたレポーター色素からのシグナルは第2のフルオロフォアのクエンチング作用を受けない。合成される新しい分子のそれぞれに対してレポーター色素の1つの分子が遊離し、クエンチされていないレポーター色素を検出することにより、データの定量化を解釈するための基礎がもたらされる。
TAQMAN(登録商標)RT−PCRは、例えば、ABI PRISM 7700(登録商標)Sequence Detection System(登録商標)(Perkin−Elmer−Applied Biosystems、Foster City、CA)またはLightcycler(Roche Molecular Biochemicals、Mannheim、Germany)などの市販の装置を使用して行うことができる。一実施例では、5’ヌクレアーゼ手順は、ABI PRISM 7700(登録商標)Sequence Detection System(登録商標)などのリアルタイム定量PCRデバイスで実行する。システムは、サーマルサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラおよびコンピュータを含む。システムにより、サーマルサイクラーにおいて96ウェル形式で試料が増幅される。増幅の間、96ウェルすべてに対して、レーザー誘起された蛍光シグナルが繊維光学ケーブルを通じてリアルタイムに収集され、CCDで検出される。システムは、機器を運転するため、およびデータを解析するためのソフトウェアを含む。
エラーおよび試料間の変動の影響を最小にするために、内部標準を使用してRT−PCRを行うことができる。理想的な内部標準は、異なる組織間で一定のレベルで発現し、実験処理によって影響を受けない。遺伝子発現パターンを正規化するために通常使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ベータアクチン、および18SリボソームRNAに対するmRNAである。
RNAの単離、精製、プライマーの伸長および増幅を含めた、RNA供給源として固定化パラフィン包埋組織を使用する、遺伝子発現を定量化するための代表的なプロトコールのステップは、種々の出版された学術論文に示されている(Godfreyら、J. Mol. Diag. 2巻:84〜91頁、2000年;Spechtら、Am. J. Pathol. 158巻:419〜29頁、2001年を参照されたい)。簡単に述べると、代表的なプロセスは、パラフィン包埋組織試料を約10μmの厚さの切片に切ることから開始する。次いでRNAを抽出し、タンパク質およびDNAを取り除く。あるいは、組織、細胞または流体の試料から直接RNAを見つける。RNA濃度を分析した後、必要であれば、RNAの修復および/または増幅ステップを含めることができ、遺伝子特異的プロモーターを使用してRNAを逆転写し、その後RT−PCRを行う。増幅に使用するプライマーは、マイクロRNAなどの対象とする遺伝子の特有のセグメントを増幅させるために選択される。特定のマイクロRNAを増幅させるために使用することができるプライマーは、市販されている(場合によっては)、または周知の方法に従って、公的に入手可能なマイクロRNA配列を用いて設計し、合成することができる。
B.遺伝子発現の連続分析(SAGE)
SAGEは、数多くの遺伝子転写物を、各転写物に対して個々のハイブリダイゼーションプローブを供給する必要なく同時かつ定量的に分析することを可能にする別の方法である。まず、転写物を一義的に同定するために十分な情報を含有する短い配列タグ(約10〜14塩基対)が各転写物特有の位置から得られれば、そのタグを生成する。次いで、多くの転写物を互いに連結して、配列決定することができる長い連続的な分子を形成し、多数のタグのアイデンティティを同時に明らかにする。転写物の任意の集団の発現パターンを、個々のタグの存在量を決定し、各タグに対応する遺伝子を同定することによって定量的に評価することができる(例えば、Velculescuら、Science 270巻:484〜7頁、1995年;およびVelculescuら、Cell 88巻:243〜51頁、1997年を参照されたい)。
C.In situハイブリダイゼーション(ISH)
ISHは、対象とする遺伝子の発現を検出し、比較するための別の方法である。ISHでは、核酸ハイブリダイゼーションの技術を単一細胞レベルまでに適用し、推定の基礎とし、細胞化学、免疫細胞化学および免疫組織化学の分野と組み合わせて、維持し同定されるべき細胞マーカーの形態を維持し同定することを可能にし、組織および血液の試料などの集団中の特異的な細胞に配列を局在化させることができる。ISHは、相補的な核酸を使用して、組織の一部分または一切片に(in situ)、または組織が十分小さければ、組織全体に(ホールマウントISH)1種または複数種の特異的な核酸配列を局在化させる、ハイブリダイゼーションの1種である。RNA ISHを使用してマイクロRNAの発現などの組織中の発現パターンをアッセイすることができる。
試料細胞または組織を処理して、マイクロRNAに特異的なプローブなどのプローブが細胞に進入することができるよう、透過性を上昇させる。処理した細胞にプローブを加え、妥当な温度でハイブリダイゼーションさせ、過剰なプローブを洗い流す。相補的なプローブを放射性タグ、蛍光タグまたは抗原性タグで標識して、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡または免疫測定を使用して組織中のプローブの場所および量を決定することができるようにする。試料は、唾液腺試料などの本明細書に記載の任意の試料であってよい。対象とするマイクロRNAの配列が既知であるので、対象とする遺伝子に特異的に結合するようにプローブを設計することができる。
D.In Situ PCR
In situ PCRは、ISHの前の、PCRに基づく標的核酸配列の増幅である。RNAを検出するために、細胞内逆転写ステップを導入して、in situ PCRの前にRNA鋳型から相補的DNAを生成する。これにより、低コピーのRNA配列を検出することができる。
In Situ PCRの前に、細胞または組織試料を固定し、透過処理して形態を保存し、増幅される細胞内配列にPCR試薬が接近できるようにする。次に標的配列のPCR増幅を、懸濁液中に保持されたインタクトな細胞において、または直接細胞遠心分離調製物もしくはスライドグラス上の組織切片においてのいずれかで行う。前者の手法では、PCR反応混合物中に懸濁させた固定化細胞を、従来のサーマルサイクラーを使用して熱サイクルさせる。PCR後、細胞を細胞遠心分離してスライドグラスにのせ、ISHまたは免疫組織化学によって細胞内PCR産物を視覚化する。そのあと反応混合物の蒸発を防ぐために密封するカバーガラスの下、試料をPCR混合物でおおうことによってスライドグラス上でIn situ PCRを行う。従来のもしくは特別に設計されたサーマルサイクラーの加熱ブロックの上部に直接スライドグラスを置くことによって、または熱サイクル乾燥器を使用することによってのいずれかで熱サイクルを行う。
細胞内PCR産物の検出は、一般に、PCR産物に特異的なプローブを用いたISHによる間接的なin situ PCR、または熱サイクルの間にPCR産物に取り込まれる標識したヌクレオチド(ジゴキシゲニン−11−dUTP、フルオレセイン−dUTP、3H−CTPまたはビオチン−16−dUTPなど)を直接検出することによる、ISHを伴わない直接的なin situ PCRの2つの異なる技法の一方によって実現される。
E.マイクロRNAの発現をプロファイリングするためのアレイ
本明細書で提供される特定の実施形態では、アレイを使用してマイクロRNAの発現を評価すること、例えばシェーグレン症候群を診断または予知することができる。特定のマイクロRNAのセット(miR−126、miR−150、miR−183、miR−189、miR−200c、miR−212、miR−22、miR−30b、miR−326、miR−328、miR−494、miR−513、miR−548c、miR−564、miR−565、miR−574、miR−575、miR−585、miR−768−3p、miR−768−5p、miR−801、miR−9、ebv−miR−BART13およびebv−miR−BART19など)に特異的なプローブまたはプライマーを含むアレイについて述べる場合、そのようなアレイは、列挙したマイクロRNAに特異的なプローブまたはプライマーを含み、対照プローブ(例えば、インキュベート条件が十分であるかを確認するため)および場合によって追加のマイクロRNAに対するプローブをさらに含んでよい。典型的な対照プローブとしては、GAPDH、アクチンおよびYWHAZが挙げられる。一実施例では、アレイはマルチウェルプレート(例えば98ウェルプレートまたは364ウェルプレート)である。
一実施例では、アレイは、miR−126、miR−150、miR−183、miR−189、miR−200c、miR−212、miR−22、miR−30b、miR−326、miR−328、miR−494、miR−513、miR−548c、miR−564、miR−565、miR−574、miR−575、miR−585、miR−768−3p、miR−768−5p、miR−801、miR−9、ebv−miR−BART13およびebv−miR−BART19を認識することができるプローブまたはプライマーを含む、それらから実質的になる、またはそれらからなる。オリゴヌクレオチドプローブまたはオリゴヌクレオチドプライマーは、プローブと標的配列(本明細書に開示されているマイクロRNAの1つなど)との間のハイブリダイゼーションシグナルを検出可能にするために、1種または複数種の検出可能な標識をさらに含んでよい。
i.アレイの基板
アレイの固体支持体は、有機ポリマーから形成することができる。固体支持体の適切な材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルピロリジン、ポリテトラフルロエチレン、ポリ二フッ化(difluroide)ビニリデン、ポリフルオロエチレン−プロピレン、ポリエチレンビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリクロロトリフルオロエチレン(polycholorotrifluoroethylene)、ポリスルホン、水酸化二軸延伸ポリプロピレン、アミノ化二軸延伸ポリプロピレン、チオール化二軸延伸ポリプロピレン、エチレンアクリル酸、エチレン(thylene)メタクリル酸、およびそれらのコポリマーの混合物が挙げられるが、これらに限定されない(米国特許第5,985,567号を参照されたい)。
一般に、固体支持体表面を形成するために使用することができる材料の適切な特性としては、活性化すると支持体の表面にオリゴヌクレオチドなどの生体分子が共有結合可能になるように表面を活性化しやすいこと;生体分子を「in situ」合成しやすいこと;オリゴヌクレオチドまたはタンパク質(抗体など)に占有されていない支持体の領域において非特異的に結合しにくいように、または非特異的な結合が生じた場合に、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質(抗体など)を除去することなくそのような材料を容易に表面から除去することができるように、化学的に不活性であることが挙げられる。
一実施例では、固体支持体の表面はポリプロピレンである。ポリプロピレンは、化学的に不活性であり、疎水性である。一般に、非特異的な結合は回避可能であり、検出感度は向上する。ポリプロピレンは種々の有機酸(ギ酸など)、有機作用剤(アセトンまたはエタノールなど)、塩基(水酸化ナトリウムなど)、塩(塩化ナトリウムなど)、酸化剤(過酢酸など)および鉱酸(塩酸など)に対して良好な耐薬品性を有する。ポリプロピレンも、低蛍光バックグラウンドをもたらし、それによりバックグラウンド干渉が最小になり、対象とするシグナルの感度が増す。
別の実施例では、表面活性化有機ポリマーは固体支持体の表面として使用される。表面活性化有機ポリマーの一例は、高周波プラズマ放電によってアミノ化されたポリプロピレン材料である。そのような材料は、ヌクレオチド分子を結合させるために容易に利用される。活性化有機ポリマーのアミン基は、ヌクレオチド分子がポリマーに結合することができるようにヌクレオチド分子と反応性である。カルボキシル化された基、ヒドロキシル化された基、チオール化された基または活性エステル基などの他の反応性基も使用することができる。
ii アレイの形式
多種多様なアレイの形式を、本開示に従って使用することができる。一例としては、当技術分野で一般にディップスティックと称されるオリゴヌクレオチドバンドの直線状アレイが挙げられる。別の適切な形式としては、別々の細胞の二次元パターン(64×64アレイの4096個のます目など)が挙げられる。当業者に理解されている通り、これらに限定されないが、スロット(長方形)アレイおよび環状アレイを含めた他のアレイの形式が、同様に使用に適している(米国特許第5,981,185号を参照されたい)。一部の実施例では、アレイはマルチウェルプレートである。一実施例では、アレイは、糸、膜またはフィルムであるポリマー媒体上に形成される。有機ポリマー媒体の例は、厚さ約1ミル(0.001インチ)〜約20ミルのポリプロピレンシートであるが、フィルムの厚さは重要ではなく、相当広範囲にわたって変動してよい。アレイは、耐久性に加え、低バックグラウンドの蛍光を示す二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムを含んでよい。
本開示のアレイの形式は、種々の異なる種類の形式に含まれてよい。「形式」は、例えばマイクロタイタープレート(例えば、マルチウェルプレート)、試験管、無機シート、ディップスティックなどの、固体支持体を付加することができる任意の形式を含む。例えば、固体支持体がポリプロピレンの糸である場合、1種または複数種のポリプロピレンの糸をプラスチックのディップスティック型デバイスに付加することができる;ポリプロピレンの膜をスライドグラスに付加することができる。特定の形式は、それ自体は重要でない。固体支持体またはそこに吸収される任意のバイオポリマーの機能的挙動に影響を与えることなく固体支持体を付加することができること、および形式(ディップスティックまたはスライドなど)が、デバイスが導入される任意の材料(臨床試料およびハイブリダイゼーション溶液など)に対して安定であることが必要なだけである。
本開示のアレイは、種々の手法によって調製することができる。一実施例では、オリゴヌクレオチド配列を別々に合成し、次いで固体支持体に結合させる(米国特許第6,013,789号を参照されたい)。別の実施例では、配列を支持体上に直接合成して所望のアレイをもたらす(米国特許第5,554,501号を参照されたい)。オリゴヌクレオチドを固体支持体に共有結合させるため、およびオリゴヌクレオチドを支持体上に直接合成するための適切な方法は、当業者に公知である;適切な方法の概要は、Matsonら、Anal. Biochem. 217巻:306〜10頁、1994年において見ることができる。一実施例では、オリゴヌクレオチドは、固体支持体上にオリゴヌクレオチドを調製するための従来の化学的技法を用いて支持体上に合成される(例えば、PCT出願WO 85/01051およびWO 89/10977または米国特許第5,554,501号を参照されたい)。
適切なアレイは、4種の塩基の前駆体を所定のパターンに置くことによってアレイのウェル中でオリゴヌクレオチドを合成するための自動手段を使用して作製することができる。簡単に述べると、マルチチャネル自動化学送達系を使用してオリゴヌクレオチドプローブ集団を、基板にわたって平行列(総計で送達系のチャネルの数に対応する)に創出する。第1の方向にオリゴヌクレオチドの合成が完了した後、次いで基板を90°回転させて、その時第1のセットに対して垂直になった第2の(2°)セットの列での合成の進行を可能にすることができる。このプロセスにより、その交差によって複数の別々の細胞が生成するマルチチャネルアレイが創出される。
オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3’末端、またはオリゴヌクレオチドの5’末端のいずれかでポリプロピレンの支持体に結合させることができる。一実施例では、オリゴヌクレオチドは、3’末端で固体支持体に結合している。しかし、当業者は、固体支持体に結合させるためにオリゴヌクレオチドの3’末端の使用または5’末端の使用のどちらが適切であるかを決定することができる。一般に、3’末端領域および5’末端領域におけるオリゴヌクレオチドプローブの内部相補性により、支持体への結合が決定される。
特定の実施例では、アレイ上のオリゴヌクレオチドプローブは、オリゴヌクレオチドプローブ:標的配列ハイブリダイゼーション複合体の検出を可能にする1種または複数種の標識を含む。
F.miR遺伝子発現解析結果の出力
遺伝子発現は、上記の任意の技法、または当技術分野で公知の任意の他の方法を用いて評価することができる。本明細書に記載の通り、遺伝子発現は、例えば、標準の装置を使用して検出することができる標識したプローブを使用して測定することができる。例えば、マイクロアレイまたはRT−PCR(一般には遺伝子産物に特異的な標識したプローブを使用する)を用いた遺伝子発現の測定は、マイクロアレイスキャナーまたは標識を検出するための他の適切なスキャナーを使用して定量化することができる。一部の実施形態では、遺伝子発現を測定するために使用するデバイスはマイクロアレイスキャナーである。マイクロアレイスキャナーは周知であり、Agilent TechnologiesからのModel G250GB Microarray Scannerなど、市販されている。
遺伝子発現解析の結果は、いくつもの出力デバイスまたは当技術分野で公知の形式のいずれか1つを使用して伝達することができる。例えば、出力デバイスはコンピュータスクリーンまたは印刷された紙などの視覚的な出力デバイスであってよい。他の実施例では、出力デバイスは、スピーカーなどの聴覚的な出力デバイスであってよい。他の実施例では、出力デバイスはプリンターである。場合によっては、データは患者の電子カルテに記録される。
VI.シェーグレン症候群を治療するためのマイクロRNAの発現の調節
多くのマイクロRNAがシェーグレン症候群患者において示差的に発現されることが本明細書に開示されている。そのように、シェーグレン症候群患者において下方制御される1種または複数種のマイクロRNAのレベルが上昇すること、またはシェーグレン症候群患者において上方制御される1種または複数種のマイクロRNAのレベルが低下することが、シェーグレン症候群の発症もしくは進行を阻害するため、および/またはシェーグレン症候群の1つまたは複数の徴候または症状(例えば、唾液の流れが低下すること)を軽減するために有益であり得る。
理論に縛られることを望むものではないが、細胞における1種または複数種のmiR遺伝子産物のレベルの変化により、シェーグレン症候群の発症または進行をまねく可能性があるこれらのmiRに対する1種または複数種の目的の標的が調節解除される可能性があると考えられている。したがって、miR遺伝子産物のレベルを変化させること(例えばシェーグレン症候群において上方制御されるmiRのレベルを低下させることによって、またはシェーグレン症候群において下方制御されるmiRのレベルを上昇させることによって)により、シェーグレン症候群の1つまたは複数の徴候または症状が首尾よく治療されるまたは寛解する可能性がある。
A.上方制御されるマイクロRNAを阻害する作用剤の使用
シェーグレン症候群患者を、対照(健康な対照の被験体など)と比較してシェーグレン症候群患者において上方制御される、または、対照(唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者など)と比較して唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者において上方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する作用剤を治療有効量で患者に投与することによって治療する方法が本明細書で提供される。
本明細書で使用される、「miR遺伝子産物の発現を阻害すること」は、治療後のmiR遺伝子産物の前駆体型および/または活性型、成熟型の産生が、治療前に産生された量よりも少ないことを意味する。当業者は、当技術分野で公知の、および本明細書に記載の技法を使用して、miR発現が被験体において阻害されているかどうかを容易に決定することができる。阻害は、遺伝子発現のレベル(すなわち、miR遺伝子産物をコードするmiR遺伝子の転写を阻害することによる)またはプロセシングのレベル(例えばmiR前駆体から成熟miRへのプロセシングを阻害することによる)で起こり得る。
本明細書で使用される、miR発現を阻害する化合物の治療有効量は、生物学的効果(シェーグレン症候群の1つまたは複数の徴候または症状を軽減することなど)をもたらすために十分な量である。例えば、作用剤により、標的miRの発現レベルを対照または参照値と比較して、所望の量、例えば少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも40倍低下させることができる。一部の実施例では、診断上有意な量は、表1〜6に示されているmiR遺伝子発現における倍率変化である。
当業者は、被験体のサイズおよび体重;疾患の進行の程度;被験体の年齢、健康状態および性別;投与経路;ならびに、投与が局部的であるか全身的であるかなどのいくつかの因子を考慮することにより、所与の被験体に投与される作用剤の治療有効量を容易に決定することができる。当業者は、miR遺伝子産物の発現を阻害する作用剤を被験体に投与するための適切な投薬レジメンも容易に決定することができる。
一部の実施形態では、miR遺伝子産物の発現を阻害する単一の作用剤を、治療を必要とする被験体に投与する。他の実施形態では、miR遺伝子産物の発現を阻害する2種以上の作用剤(2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種または10種またはそれ以上など)を被験体に投与する。2種以上の作用剤を被験体に投与する場合、作用剤は同時に(もしくは互いに数分以内など、立て続けに)投与することができ、または別の時間に投与することができる。例えば、2種以上の作用剤は、1時間、12時間、1日、2日、5日、1週間、2週間または1カ月の間を開けて投与することができる。
一部の実施形態では、miR発現を阻害する作用剤はシェーグレン症候群に対する1種または複数種の追加の治療と組み合わせて被験体に投与することができる。典型的なシェーグレン症候群の治療としては、唾液産生を促進する作用剤(ピロカルピンまたはセビメリンなど)を投与すること、水分補充療法(点眼薬など)、またはNSAIDSまたはコルチコステロイドまたは他の免疫抑制薬もしくは免疫調節薬を投与することが挙げられるが、これらに限定されない。
miR遺伝子産物の発現を阻害する作用剤は、これらに限定されないが、1種または複数種のmiR遺伝子産物の発現を阻害することができる核酸分子、ポリペプチド、抗体または小分子などの任意の種類の化合物であってよい。一部の実施形態では、作用剤はアンチセンス化合物である。
標的miR遺伝子産物の発現を阻害するために、miR遺伝子産物を特異的に標的とする任意の種類のアンチセンス化合物を使用することが企図されている。一部の実施例では、作用剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAまたはリボザイムから選択されたアンチセンス化合物である。アンチセンス化合物を設計し、調製し、使用する方法は、当業者の能力の範囲内である。さらに、開示されているmiR遺伝子産物についての配列は公的に入手可能である。シェーグレン症候群において示差的に発現されるmiR(または他の標的核酸)を特異的に標的とするアンチセンス化合物は、pri−マイクロRNA配列、pre−マイクロRNA配列または成熟マイクロRNA配列などの標的ヌクレオチド配列と相補的な化合物を設計することによって調製することができる。アンチセンス化合物は、標的核酸分子と特異的にハイブリダイズするために、標的核酸分子と100%相補的である必要はない。例えば、二本鎖化合物の場合、化合物のアンチセンス化合物またはアンチセンス鎖は、選択された標的核酸配列と、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%相補的であってよい。アンチセンス化合物を特異性についてスクリーニングする方法は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許出願公開第2003−0228689号を参照されたい)。
一般に、アンチセンス技術の後ろにある原理は、アンチセンス化合物が標的核酸とハイブリダイズし、遺伝子発現の活性または機能の調節に影響を与えることである。遺伝子発現の調節は、例えば、標的RNAの分解または占有率に基づく阻害によって実現することができる。分解による標的RNA機能の調節の例は、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのDNA様アンチセンス化合物とハイブリダイゼーションしたときのRNase Hに基づく標的RNAの分解である。
標的の分解による遺伝子発現の調節の別の例は、低分子干渉RNA(siRNA)を使用したRNA干渉(RNAi)である。RNAiは、標的の内在性mRNAレベルの配列特異的な低下をまねく二本鎖(ds)RNA様オリゴヌクレオチドの導入を伴うアンチセンス媒介遺伝子サイレンシングの一形態である。多くの場合アンチセンス化合物と分類される他の化合物は、リボザイムである。リボザイムは、他のRNA分子の特異的な部位に結合し、そのRNA分子のリン酸ジエステル結合の加水分解を触媒することができる、触媒作用をするRNA分子である。リボザイムは、miR遺伝子産物などの標的核酸を直接切断することによって遺伝子発現を調節する。
上記のアンチセンス化合物のそれぞれが、配列特異的な標的遺伝子制御をもたらす。この配列特異性により、アンチセンス化合物が、miR遺伝子産物などの対象とする標的核酸を選択的に調節するための有効なツールになる。
一部の実施形態では、アンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。miR遺伝子産物に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションおよび遺伝子発現の調節を可能にする任意の適切な長さであってよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは変動してよいが、一般には15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40ヌクレオチドを含めた、約15〜約40ヌクレオチドである。一部の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約20〜約35ヌクレオチドの長さである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA、RNAまたはその類似体であってよい。さらに本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは修飾されていなくてよい、または、修飾されたヌクレオシド間結合、修飾された糖部分、修飾された塩基、またはそれらの組合せなどの1つまたは複数の修飾を含んでよい。オリゴヌクレオチドの修飾については以下に詳細を記載している。
他の実施形態では、アンチセンス化合物はsiRNA分子である。開示されている方法に有用なsiRNAとしては、長さ約17ヌクレオチド〜約29ヌクレオチド、好ましくは長さ約19〜約25ヌクレオチド、例えば長さ約21〜約23ヌクレオチドなどの短い二本鎖RNAが挙げられる。siRNAは、標準のワトソン・クリック塩基対合相互作用によって互いにアニーリングしたセンスRNA鎖および相補的なアンチセンスRNA鎖で構成されている。センス鎖は、標的miR遺伝子産物内に含有される核酸配列と実質的に同一な核酸配列を含む。本明細書で使用される、標的配列と「実質的に同一」なsiRNA核酸配列は、標的配列と同一である、または標的配列と1ヌクレオチド、2ヌクレオチドまたは3ヌクレオチドが異なる核酸配列である。siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、2つの相補的な一本鎖RNA分子を含んでよく、または一本鎖「ヘアピン」領域により分離された、2つの相補的部分(塩基対合している)を有する単一分子であってよい。
siRNAは、1つまたは複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または変化によって天然に存在するRNAとは異なる、変化したRNAであってもよい。そのような変化は、例えばsiRNAの一方の末端もしくは両末端に、またはsiRNAの1つまたは複数の内部ヌクレオチドに、非ヌクレオチド材料を付加すること;ヌクレアーゼ消化に対して抵抗性のsiRNAを生じる修飾;またはsiRNAの1つまたは複数のヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドで置換することを含んでよい。siRNAの一方の鎖または両方の鎖は、3’突出も含んでよい。本明細書で使用される、「3’突出」は、二重鎖RNA鎖の3’末端から伸長している少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。したがって、特定の実施形態では、siRNAは、長さ1〜約6ヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含む)、長さ1〜約5ヌクレオチド、長さ1〜約4ヌクレオチド、または長さ2〜約4ヌクレオチドの3’突出を少なくとも1つ含む。特定の実施形態では、3’突出はsiRNAの両方の鎖に存在し、2ヌクレオチドの長さである。例えば、siRNAの各鎖は、ジチミジル酸(「TT」)またはジウリジル酸(「uu」)の3’突出を含んでよい。
他の実施形態では、アンチセンス化合物はリボザイムである。リボザイムは、miR遺伝子産物の近接する核酸配列と相補的な基質結合領域を有する核酸分子であり、miR遺伝子産物を特異的に切断することができる。基質結合領域は、標的miR遺伝子産物と100%相補的である必要はない。例えば、基質結合領域は、例えば、miR遺伝子産物の近接する核酸配列と少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%または少なくとも約95%相補的であってよい。酵素性の核酸は、塩基、糖、および/またはリン酸基における修飾も含んでよい。
アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAおよびリボザイムなどのアンチセンス化合物は、化学的もしくは生物学的に作出することができる、または、単離されたmiR遺伝子産物の発現に関して以下にさらに詳細を説明する通り、組換えプラスミドベクターまたは組換えウイルスベクターから発現させることができる。アンチセンス化合物を作出し、試験するための典型的な方法は当技術分野で周知である(例えば、米国特許第5,849,902号および同第4,987,071号;米国特許出願公開第2002/0173478号および同第2004/0018176号;SteinおよびCheng、Science 261巻:1004頁、1993年;WernerおよびUhlenbeck、Nucl. Acids Res. 23巻:2092〜2096頁、1995年;Hammannら、Antisense and Nucleic Acid Drug Dev. 9巻:25〜31頁を参照されたい)。
一部の実施例では、miR遺伝子産物に特異的なアンチセンス化合物は、ヌクレアーゼ抵抗性を増大させ、かつ/または化合物の活性を増加させるための1つまたは複数の修飾を含有する。修飾されたアンチセンス化合物は、修飾された主鎖または非天然ヌクレオシド間結合を含むアンチセンス化合物を含む。本明細書で定義された通り、修飾された主鎖を有するオリゴヌクレオチドは、主鎖にリン原子を保持しているオリゴヌクレオチドおよび主鎖にリン原子を有さないオリゴヌクレオチドを含む。
修飾されたオリゴヌクレオチド主鎖の例としては、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ジチオリン酸、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含めたメチルホスホネートおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデートを含めたホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキル−ホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに正常な3’−5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’−5’結合類似体、およびヌクレオシド単位の隣接対が、3’−5’から5’−3’、または2’−5’から5’−2’に結合している逆の極性を有するボラノホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。上記のリン含有結合の調製について教示している代表的な米国特許としては、米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,196号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,306号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;および同第5,625,050号が挙げられるが、これらに限定されない。
リン原子を含まない修飾されたオリゴヌクレオチド主鎖の例は、短鎖のアルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子とアルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、または1種または複数種の短鎖のヘテロ原子もしくは複素環のヌクレオシド間結合によって形成される主鎖である。これらの主鎖としては、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される)を有する主鎖;シロキサン主鎖;スルフィド主鎖、スルホキシド主鎖およびスルホン主鎖;ホルムアセチル主鎖およびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチル主鎖およびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノ主鎖およびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネート主鎖およびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖;ならびに混合N、O、SおよびCH構成部分を有する他の主鎖が挙げられる。上記のオリゴヌクレオシドの調製について教示している代表的な米国特許としては、米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,610,289号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号;および同第5,677,439号が挙げられるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはアンチセンス化合物のヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合の両方が新しい基と置き換わる。そのような修飾された化合物の1つは、ペプチド核酸(PNA)と称されるオリゴヌクレオチド模倣物である。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖主鎖がアミド含有主鎖、具体的にはアミノエチルグリシン主鎖と置き換わっている。塩基は保持され、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合している。PNA化合物の調製について教示している代表的な米国特許としては、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号が挙げられるが、これらに限定されない。PNA化合物についてのさらなる教示は、Nielsenら(Science 254巻、1497〜1500頁、1991年)において見ることができる。
修飾されたオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の置換された糖部分も含有してよい。一部の実施例では、オリゴヌクレオチドは、2’位に以下のうちの1つを含んでよい:OH;F;O−アルキル、S−アルキルもしくはN−アルキル;O−アルケニル、S−アルケニルもしくはN−アルケニル;O−アルキニル、S−アルキニルもしくはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキル、ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは置換された、または置換されていないC〜C10アルキルまたはC〜C10アルケニルおよびC〜C10アルキニルであってよい。他の実施形態では、アンチセンス化合物は、2’位に以下のうちの1つを含む:C〜C10の低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルまたはO−アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、干渉物質、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的な性質を改善するための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的な性質を改善するための基、および同様の性質を有する他の置換基。一実施例では、修飾は2’−メトキシエトキシ(2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても公知である)を含む(Martinら、Helv. Chim. Acta.、78巻、486〜504頁、1995年)。他の実施例では、修飾は、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ(2’−DMAOEとしても公知である)または2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’−DMAEOEとしても当技術分野で公知である)を含む。
同様の修飾を、化合物の他の位置において生じさせることもできる。アンチセンス化合物は、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣物を有してもよい。修飾された糖構造の調製について教示している代表的な米国特許としては、米国特許第4,981,957号;同第5,118,800号;同第5,319,080号;同第5,359,044号;同第5,393,878号;同第5,446,137号;同第5,466,786号;同第5,514,785号;同第5,519,134号;同第5,567,811号;同第5,576,427号;同第5,591,722号;同第5,597,909号;同第5,610,300号;同第5,627,053号;同第5,639,873号;同第5,646,265号;同第5,658,873号;同第5,670,633号;および同第5,700,920号が挙げられるが、これらに限定されない。
オリゴヌクレオチドは、塩基の修飾または置換も含んでよい。本明細書で使用される、「非修飾」または「天然の」塩基としては、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾された塩基としては、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチル誘導体および他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピル誘導体および他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシンおよび6−アゾチミン、5−ウラシル(擬似ウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロアデニン、8−ハログアニン、8ーアミノアデニン、8ーアミノグアニン、8−チオールアデニン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルアデニン、8−チオアルキルグアニン、8−ヒドロキシルアデニン、8−ヒドロキシルグアニンおよび他の8−置換アデニンおよび8−置換グアニン、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、具体的には5−ブロモウラシル、5−ブロモシトシン、5−トリフルオロメチルウラシル、5−トリフルオロメチルシトシンおよび他の5−置換ウラシルおよび5−置換シトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどの他の合成塩基および天然塩基が挙げられる。別の修飾された塩基が記載されている(例えば、米国特許第3,687,808号;およびSanghvi、Y. S.、Chapter 15、Antisense Research and Applications、289〜302頁、Crooke、S. T.およびLebleu、B.編、CRC Press、1993年を参照されたい)。
これらの修飾塩基のいくつかは、アンチセンス化合物の結合親和性を上昇させるために有用である。これらの修飾塩基としては、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンならびに、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含めたN−2置換プリン、N−6置換プリンおよびO−6置換プリンが挙げられる。5−メチルシトシン置換により、核酸二重鎖の安定性が0.6〜1.2℃上昇することが示されている。修飾塩基の調製について教示している代表的な米国特許としては、米国特許第4,845,205号;同第5,130,302号;同第5,134,066号;同第5,175,273号;同第5,367,066号;同第5,432,272号;同第5,457,187号;同第5,459,255号;同第5,484,908号;同第5,502,177号;同第5,525,711号;同第5,552,540号;同第5,587,469号;同第5,594,121号、同第5,596,091号;同第5,614,617号;同第5,681,941号;および同第5,750,692号が挙げられるが、これらに限定されない。
B.下方制御されるマイクロRNAをコードする核酸分子の使用
シェーグレン症候群患者を、対照(健康な被験体など)と比較して、シェーグレン症候群患者において下方制御される、または、対照(唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者など)と比較して、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者において下方制御される単離されたマイクロRNA遺伝子産物を治療有効量で患者に投与することによって治療する方法も提供される。対照(唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者など)と比較して、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者において下方制御される単離されたmiR遺伝子産物を治療有効量で投与することによってシェーグレン症候群患者における唾液の流れを回復させる方法がさらに提供される。本明細書に記載の通り、miR遺伝子産物は、pri−miRNA、pre−miRNAまたは成熟miRNAであってよい。
開示されている方法は、少なくとも1種の単離されたmiR遺伝子産物、または単離されたその変異体もしくは生物活性のある断片を有効量で投与することを含む。被験体に投与される単離されたmiR遺伝子産物は、シェーグレン症候群患者において下方制御される内在性の野生型miR遺伝子産物(pri−miRNA、pre−miRNAまたは成熟miRNAなど)と同一であってよい、または、その変異体または生物活性のある断片であってよい。本明細書で定義された通り、miR遺伝子産物の「変異体」は、対応する野生型miR遺伝子産物と100%未満の同一性を有し、対応する野生型miR遺伝子産物の生物活性の1つまたは複数を有するmiRNAを指す。そのような生物活性の例としては、標的RNA分子の発現阻害(例えば、標的RNA分子の翻訳を阻害すること、標的RNA分子の安定性を調節すること、または標的RNA分子のプロセシングを阻害すること)ならびにシェーグレン症候群に関連する細胞性プロセスの阻害(例えば、唾液の産生)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの変異体は、種変異体およびmiR遺伝子における1つまたは複数の突然変異(例えば、置換、欠失、挿入)の結果である変異体を含む。ある特定の実施形態では、変異体は、対応する野生型miR遺伝子産物と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または約99%同一である。
本明細書で使用される、miR遺伝子産物の「生物活性のある断片」は、対応する野生型miR遺伝子産物の生物活性の1つまたは複数を有する、miR遺伝子産物のRNA断片を指す。上記の通り、そのような生物活性の例としては、標的RNA分子の発現阻害およびシェーグレン症候群に関連する細胞性プロセスの阻害が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、生物活性のある断片は、少なくとも約9ヌクレオチド、少なくとも約11ヌクレオチド、少なくとも約13ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約17ヌクレオチドまたは少なくとも約19ヌクレオチドの長さである。
単離された遺伝子産物の治療有効量は、例えば、シェーグレン症候群の1つまたは複数の徴候または症状を軽減するために必要な量、および/または疾患の進行を遅延させるために必要な量であってよい。当業者は、治療有効性のために必要な単離されたmiR遺伝子産物の量を決定することができる。
一部の実施形態では、単一の単離されたmiR遺伝子産物を、治療を必要とする被験体に投与する。他の実施形態では、2種以上のmiR遺伝子産物(2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種または10種またはそれ以上など)を被験体に投与する。2種以上のmiR遺伝子産物を被験体に投与する場合、miR遺伝子産物は、同時に(もしくは互いに数分以内など、立て続けに)投与することができ、または別の時間に投与することができる。例えば、2種以上のmiR遺伝子産物は、1時間、12時間、1日、2日、5日、1週間、2週間または1カ月の間を開けて投与することができる。
一部の実施形態では、単離されたmiR遺伝子産物は、シェーグレン症候群に対する1種または複数種の追加の治療と組み合わせて被験体に投与するこができる。典型的なシェーグレン症候群の治療としては、唾液産生を促進する作用剤(ピロカルピンまたはセビメリンなど)を投与すること、水分補充療法(点眼薬など)、またはNSAIDSまたはコルチコステロイドを投与することが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される、「単離された」miR遺伝子産物は、合成された、またはmiRが天然に存在する細胞または組織の他の生物学的成分から離れて精製されたmiR遺伝子産物である。例えば、合成miR遺伝子産物、またはmiR遺伝子産物の天然の状況の他の生物学的成分から部分的にまたは完全に分離されたmiR遺伝子産物が、「単離された」と見なされる。単離されたmiR遺伝子産物は、いくつもの標準の技法を用いて得ることができる。例えば、miR遺伝子産物は、化学的に合成することができる、または当技術分野で公知の方法を用いて組換えで作出することができる。一実施形態では、適切に保護されたリボヌクレオシドホスホラミダイトおよび従来のDNA/RNA合成機を使用してmiR遺伝子産物を化学的に合成する。合成RNA分子または合成試薬の市販供給業者としては、例えば、Proligo(Hamburg、Germany)、Dharmacon Research(Lafayette、CO)、Pierce Chemical(Rockford、IL)、Glen Research(Sterling、VS)、ChemGenes(Ashland、MA)およびCruachem(Glasgow、United Kingdom)が挙げられる。
一部の実施形態では、方法は、miR遺伝子産物をコードするベクターを投与することを含む。ベクターは、非ウイルス由来(例えば、プラスミド)またはウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス)由来であってよい。遺伝子療法ベクターなどの適切なベクターは当技術分野で周知である。
一部の実施例では、miR遺伝子産物は、任意の適切なプロモーターを使用して、組換え環状DNAプラスミドまたは組換え直線状DNAプラスミドから発現させる。プラスミドからRNAを発現させるための適切なプロモーターとしては、例えば、U6 RNA pol III プロモーター配列またはH1 RNA pol III プロモーター配列、またはサイトメガロウイルスプロモーターが挙げられる。他の適切なプロモーターの選択は、当業者の技能の範囲内である。本発明の組換えプラスミドは、miR遺伝子産物を発現させるための誘導性プロモーターまたは制御可能なプロモーターも含んでよい。
2種以上のmiR遺伝子産物を発現させる場合、miR遺伝子産物は、別々の組換えプラスミドからそれぞれ発現させることができる、または同じ組換えプラスミドから発現させることができる。一実施形態では、miR遺伝子産物は、単一のプラスミドからRNA前駆体分子として発現され、その前駆体分子が標的細胞内でプロセシングされて機能性miR遺伝子産物になる。miR遺伝子産物を発現させるために適切なプラスミドの選択、核酸配列をプラスミドに挿入して遺伝子産物を発現させるための方法、および組換えプラスミドを対象とする細胞に送達するための方法は、当技術分野の技術の範囲内である(例えば、Zengら、Mol. Cell 9巻:1327〜1333頁、2002年;Tuschl、Nat. Biotechnol.、20巻:446〜448頁、2002年;Brummelkarrnpら、Science 296巻:550〜553頁、2002年;Miyagishiら、Nat. Biotechnol. 20巻:497〜500頁、2002年;Paddisonら、Genes Dev. 16巻:948〜958頁、2002年;Leeら、Nat. Biotechnol. 20巻:500〜505頁、2002年;およびPaulら、Nat. Biotechnol. 20巻:505〜508頁、2002年を参照されたい)。一実施形態では、miR遺伝子産物を発現するプラスミドは、CMV中初期プロモーターに作動可能に連結されたmiR前駆体RNAをコードする配列を含む。
miR遺伝子産物は、組換えウイルスベクターから発現させることもできる。2種以上のmiR遺伝子産物を投与する場合、miR遺伝子産物は、2つの別々の組換えウイルスベクターから、または同じウイルスベクターから発現させることができることが考察されている。組換えウイルスベクターから発現されたRNAは、標準の技法によって培養細胞発現系から単離することができる、またはシェーグレン症候群患者の標的細胞または標的組織において直接発現させることができる。
開示されている方法に有用である組換えウイルスベクターは、miR遺伝子産物をコードする配列およびRNA配列を発現させるための任意の適切なプロモーターを含む。適切なプロモーターとしては、U6 RNA pol III プロモーター配列もしくはH1 RNA pol III プロモーター配列、またはサイトメガロウイルスプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なプロモーターの選択は、当技術分野の技術の範囲内である。本発明の組換えウイルスベクターは、miR遺伝子産物を発現させるための誘導性プロモーターまたは制御可能なプロモーターも含んでよい。
適切なウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、アデノウイルスベクターは、第1世代、第2世代、第3世代および/または第4世代のアデノウイルスベクターまたはガットレスアデノウイルスベクターであってよい。アデノウイルスベクターは、力価が非常に高い感染性粒子に生成することができ;幅広い種類の細胞に感染し;分裂していない細胞に遺伝子を効率的に移し;かつ宿主ゲノムにめったに組み込まれず、それにより挿入変異によって細胞が形質転換される危険性を回避する(Douglas and Curiel、Science and Medicine、1997年3月/4月、44〜53頁;Zern and Kresinam、Hepatology 25巻(2号)、484〜491頁、1997年)。本明細書で提供される方法に使用することができる代表的なアデノウイルスベクターは、Stratford−Perricaudetら(J. Clin. Invest. 90巻:626〜630頁、1992年);Graham and Prevec(Methods in Molecular Biology:Gene Transfer and Expression Protocols 7巻:109〜128頁、1991年);およびBarrら(Gene Therapy、2巻:151〜155頁、1995年)に記載されている。
アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターも、HCC関連遺伝子を投与するために適している。AAVベクターを生成する方法、AAVベクターを投与する方法およびそれらの使用は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,951,753号;米国付与前公開第2007−036757号、同第2006−205079号、同第2005−163756号、同第2005−002908号;およびPCT公開番号WO 2005/116224およびWO 2006/119458を参照されたい)。
レンチウイルスを含めたレトロウイルスベクターも、本明細書に記載の方法で使用することができる。レンチウイルスとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1およびHIV−2など)、ネコ免疫不全ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルスおよびサル免疫不全ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。他のレトロウイルスとしては、ヒトTリンパ球向性ウイルス、サルTリンパ球向性ウイルス、マウス白血病ウイルス、ウシ白血病ウイルスおよびネコ白血病ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターを生成する方法およびそれらの使用は当技術分野で十分に記載されている(例えば、米国特許第7,211,247号;同第6,979,568号;同第7,198,784号;同第6,783,977号;および同第4,980,289号を参照されたい)。
適切なヘルペスウイルスベクターは、これらに限定されないが、単純ヘルペスウイルス1(HSV−1)、HSV−2およびリスザルヘルペスウイルスを含めたいくつもの異なる種類のヘルペスウイルスのいずれか1種から導くことができる。組換えヘルペスウイルスベクター、それらの構築および使用は、当技術分野で十分に記載されている(例えば、米国特許第6,951,753号;同第6,379,674号;同第6,613,892号;同第6,692,955号;同第6,344,445号;同第6,319,703号;および6,261,552号;および米国特許出願公開第2003−0083289号を参照されたい)。
本明細書で使用される、単離されたmiR遺伝子産物の「治療有効量」は、生物学的効果(シェーグレン症候群の1つまたは複数の徴候または症状を軽減することなど)をもたらすために十分な量である。当業者は、被験体のサイズおよび体重;疾患の進行の程度;被験体の年齢、健康状態および性別;投与経路;ならびに、投与が局部的であるか全身的であるかなどの因子を考慮することにより、所与の被験体に投与するべきmiR遺伝子産物の治療有効量を容易に決定することができる。
例えば、単離されたmiR遺伝子産物の有効量は、治療される被験体のおよその体重に基づいてよい。そのような有効量を、例えば、非経口的に、または経腸的になど、任意の適切な経路で投与することができる。一部の実施例では、被験体に投与される単離されたmiR遺伝子産物の治療有効量は、約5〜約3000マイクログラム/体重1kg、約700〜約1000マイクログラム/体重1kg、または約1000マイクログラム/体重1kgの範囲にわたってよい。
当業者は、単離されたmiR遺伝子産物を所与の被験体に投与するための適切な投薬レジメンも容易に決定することができる。例えば、miR遺伝子産物は、被験体に1回投与することができる(例えば単回の注射またはデポジション)。あるいは、miR遺伝子産物は、約3〜28日間、より具体的には約7〜10日間、毎日1回または2回、被験体に投与することができる。特定の投薬レジメンでは、miR遺伝子産物は、1日1回、7日間投与される。投薬レジメンが多数回の投与を含む場合、被験体に投与されるmiR遺伝子産物の有効量は、投薬レジメン全体を通して投与される遺伝子産物の総量を含んでよいことが理解される。
C.治療剤の投与
治療剤は、治療を必要とする被験体に、当技術分野で公知の任意の適切な手段を用いて投与することができる。投与方法としては、管内投与、皮内投与、筋肉内、腹腔内投与、非経口投与、静脈内投与、皮下投与、膣投与、直腸投与、鼻腔内投与、吸入投与、経口投与または遺伝子銃による投与が挙げられるが、これらに限定されない。鼻腔内投与は、片方の鼻孔または両方の鼻孔を通して鼻および鼻腔内に組成物を送達することを指し、噴霧機構もしくは液滴機構によって送達すること、または核酸またはウイルスをエアロゾル投与することによって送達することを含んでよい。吸入による組成物の投与は、噴霧機構または液滴機構による送達を介して鼻または口を通すことができる。挿管を介して呼吸器系の任意の領域に直接送達することができる。非経口投与は、一般に注射によって実現される。注射剤は、従来の形態で、溶液もしくは懸濁液として、注射前の懸濁溶液に適した固形として、または乳剤としてのいずれかで調製することができる。注射溶液および注射懸濁液は、滅菌粉末、滅菌顆粒および滅菌錠剤から調製することができる。投与は、全身的または局所的であってよい。
治療剤は、任意の適切な様式で、好ましくは薬学的に許容できる担体と一緒に投与することができる。薬学的に許容できる担体は、投与される特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するために使用する特定の方法によって一部決定される。したがって、本開示の医薬組成物の多種多様な適切な製剤がある。
非経口的に投与するための調製物としては、滅菌水溶液もしくは滅菌非水溶液、滅菌懸濁液および滅菌乳剤が挙げられる。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体としては、生理食塩水および緩衝化媒体を含めた、水、アルコール溶液/水溶液、乳剤または懸濁液が挙げられる。非経口的なビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、体液および栄養の補充液、電解質補充液(リンゲルのブドウ糖に基づいた補充液など)などが挙げられる。保存料および他の添加物、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガスなども存在してよい。
局所投与するための製剤としては、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、ドロップ剤、坐剤、噴霧剤、液体剤および粉末剤を挙げることができる。従来の医薬担体、水性基剤、粉末基剤または油性基剤、増粘剤などが必要であること、または望ましいことがある。
経口投与するための組成物としては、粉末もしくは顆粒、懸濁液もしくは水中溶液もしくは非水媒体、カプセル、サシェまたは錠剤が挙げられる。増粘剤、調味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましいことがある。
組成物の一部は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、ならびにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸などの有機酸との反応によって、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、ならびにモノアルキル、ジアルキル、トリアルキルおよびアリールアミンおよび置換されたエタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成される薬学的に許容できる酸付加塩または塩基付加塩として投与される可能性があり得る。
投与は、単回投与または多回投与によって実現することができる。必要な用量は、被験体の種、年齢、体重および全身状態、使用される特定の治療剤およびその投与様式に応じて被験体毎に変動する。適切な用量は、当業者が常用の実験法のみを用いて決定することができる。
一部の実施形態では、治療剤は、miR遺伝子産物、miR遺伝子産物をコードするベクター、アンチセンス化合物またはアンチセンス化合物をコードするベクターなどの核酸分子である。核酸に基づく治療剤は、任意の適切な経路で被験体に投与することができる。一部の実施例では、作用剤は、経腸投与経路または非経口投与経路を用いて投与される。適切な経腸投与経路としては、例えば、経口送達、直腸送達または鼻腔内送達が挙げられる。適切な非経口投与経路としては、例えば、血管内投与(静脈内ボーラス注射、静脈内点滴、動脈内ボーラス注射、動脈内点滴および脈管構造へのカテーテルによる滴下注入など);皮下点滴(浸透圧ポンプによるものなど)を含めた皮下注射または皮下デポジション;例えば、カテーテルまたは他の設置デバイス(例えば、坐薬または多孔質材料、非多孔質材料もしくはゼラチン質材料を含む移植片)による、対象とする組織への直接適用;および吸入が挙げられる。特に適した投与経路は、注射、点滴および標的組織への直接注射である。
本開示の関連において、miR遺伝子産物またはアンチセンス化合物は、ネイキッドRNAまたはネイキッドDNAのいずれかとして、送達試薬と組み合わせて被験体に投与することができる、または、組換えプラスミドベクターまたは組換えウイルスベクターにコードさせることができる。組換えプラスミドおよび組換えウイルスベクターは、miR遺伝子産物またはアンチセンス化合物を発現する配列を含み、そのようなプラスミドおよびベクターを標的細胞に送達するための技法は当技術分野で周知である。
一部の実施形態では、miR遺伝子産物またはアンチセンス化合物(またはそれらをコードする配列を含む核酸)を被験体に送達するために、リポソームを使用する。リポソームにより、遺伝子産物または核酸の血中半減期を上昇させることもできる。本発明において使用するための適切なリポソームは、一般に中性または負に帯電したリン脂質およびコレステロールなどのステロールを含む標準のベシクル形成脂質から形成することができる。脂質の選択は、一般に、所望のリポソームサイズおよび血流中でのリポソームの半減期などのいくつかの因子を考慮することによって導かれる。リポソームを調製するための種々の方法が当技術分野で公知である(例えば、Szokaら、Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9巻:467頁、1980年;および米国特許第4,235,871号;同第4,501,728号;同第4,837,028号;および同第5,019,369号を参照されたい)。一部の実施形態では、miR遺伝子産物またはアンチセンス化合物を被験体に送達するためにポリマーを使用することができる。治療用RNA分子を送達するために使用することができる陽イオン性の脂質およびポリマーが記載されている(例えば、Zhangら、J Control Release. 123巻(1号):1〜10頁、2007年;Vorhiesら、Methods Mol Biol. 480巻:11〜29頁、2009年;および米国特許出願公開第2009/0306194号を参照されたい)。ポリペプチド担体も、miR遺伝子産物を被験体に送達するために使用することができる(例えば、Rahbekら、J. Gene Med. 10巻:81〜93頁、2008年を参照されたい)。
以下の実施例は、ある特定の特徴および/または実施形態を例示するために提供する。これらの実施例は、記載されている特定の特徴または実施形態に本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
(実施例1)
シェーグレン症候群患者において示差的に発現されるマイクロRNAの同定
材料および方法
試料の取得およびマイクロRNAの単離
小唾液腺試料を、原発性シェーグレン症候群のコーカサス人種の女性から、および正常なボランティアから得た。すべての被験体は、Clinical Center of the National Institutes of Healthにおいて完全なリウマチ検査、口内検査および眼科検査ならびに実験室評価を受けた。すべてのシェーグレン症候群患者が原発性シェーグレン症候群に対する欧州−米国診断基準を満たした。生検時の患者の年齢中央値は、対照群については43.5歳(21〜58歳の範囲にわたる)、病巣スコアが低い群については58歳(23〜67歳の範囲にわたる)、および病巣スコアが高い群については51.5歳(37〜70歳の範囲にわたる)であった。
下唇から小唾液腺を切除し、余分な検体はマイクロRNAを単離するために急速凍結した。組織をホモジナイズし、マイクロRNAを、miRNeasy(商標)ミニキット(Qiagen、Valencia、CA)を用いて単離した。miRNAの品質を、2100 Agilent BioanalyzerにおけるAgilent Small RNA Kit(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)およびNanoDrop 8000(NanoDrop Technologies、Wilmington、DE)を用いて査定した。
マイクロアレイ
470種のヒトmiRNAおよび64種のヒトウイルスmiRNAに特異的なプローブを用いたAgilent miRNA Microarrays(V1)(Agilent Technologies)(スライドあたり8アレイ)を使用して小唾液腺miRNAをプロファイリングした。Agilent Small RNA Chipにおける最適miRNA曲線である(製造者の説明書により決定された)Agilent RNA 6000 Nano ChipにおいてRNA完全性の数値(RNA integrity number)が7を超え、NanoDrop 8000における260/280比および260/230比が2.00を超えた試料のみをマイクロアレイ解析に使用した。各アレイに対して、全RNA100ngを使用した。アレイを製造者のプロトコールに従って実行した。マイクロアレイを、Model G2505B Microarray Scanner(Agilent Technologies)を使用してスキャンし、データを抽出し、Agilent Feature Extraction Softwareを使用してアレイの品質管理を行った。
患者の4カテゴリーを互いに(n=16)、および正常なボランティア(n=8)と比較した。患者の半数が、小唾液腺において低度の炎症を有し(低病巣スコア、1または2)、半数が小唾液腺において広範な炎症を有した(高病巣スコア、12)。患者の各群において、半数は唾液の流れが保たれ(≧1.5mL/15分;「高流動性」)、半数は唾液の流れが不十分であった(<1.5mL/15分;「低流動性」)(図1)。
解析
正規化。マイクロRNAアレイデータを、以下の通り、小唾液腺アレイにおいて同定された(推定)ハウスキーパーマイクロRNAのセットを使用して正規化した。ハウスキーパーマイクロRNAは、定義によれば、すべての組織試料において一定のレベルで発現される。したがって、2種のハウスキーパーの強度比は、正規化と無関係にデータセット内のすべてのアレイにわたって同じであるはずである。このような挙動をする可能性のあるハウスキーパーマイクロRNAを探索するために、すべてのアレイにおいて、Agilent Feature Extraction Softwareによって存在するとしてスコア化された「候補」マイクロRNA(すなわち、すべてのアレイにおいてgIsGeneDetected=1であるマイクロRNA;そのようなマイクロRNAが全部で132種あった)について考察した。アレイデータを、これらの候補マイクロRNAのそれぞれの強度に対して順々に正規化した。各場合において、正規化されたアレイにわたって、他の候補マイクロRNAすべてについて平均および変動係数(CV)を算出し、CV<0.22である候補マイクロRNAの数、すなわち、アレイを正規化するために使用したマイクロRNAに同調して発現が変動すると思われる他の候補マイクロRNAの数を係数した。
次いで、これらのスコアが7以上の候補マイクロRNAを予備のハウスキーパーのセットとして使用した。次に、各アレイを、そのアレイ上の予備のハウスキーパーの強度の幾何平均に対して正規化した。次いで、これらの正規化されたアレイ上のすべての候補マイクロRNAについて平均およびCVを算出し、CV<0.22の候補マイクロRNAを予備のハウスキーパーの次のセットとして使用した。このプロセスを、算出によって得られるハウスキーパーのセットが、それを得るのに使用されるハウスキーパーのセットと同じになるまで(すなわち、自己一致した結果が得られるまで)繰り返した。次いで、アレイをこれらの最終的なハウスキーパーマイクロRNAの幾何平均の0.001倍に対して正規化した(幾何平均は一般には約1000であり、したがってこれにより約1の正規化因子が得られる)。この最終的な正規化されたデータセットにおいて、Agilent Feature Extraction Softwareによって非存在であるとスコア化された(すなわち、gIsGeneDetected=0の)マイクロRNAの強度を1.0と同じに設定した。
データ解析およびソフトウェア。本明細書で報告されているマイクロアレイ解析は、GENESPRING(商標)プログラム、10.0版(Agilent)を使用して行った主成分分析(PCA)を除いて、すべて、Dr.Richard SimonおよびBRB−ArrayTools開発チームによって開発されたBRB−ArrayTools(3.7.0版)を使用して行った。上記の正規化されたマイクロRNAアレイデータを、BRB ArrayToolsにローディングし、そこで1.0を閾値とし、log2変換し、フィルタリングして変動性が低いマイクロRNA(詳細には、すべてのアレイにわたる分散が、そのような分散すべての中央値よりも有意に大きくない(p>0.01)マイクロRNA)を取り除いた。
アレイ上のマイクロRNA534種のうち239種がフィルタリング基準を通過した。得られたフィルタリングされたデータセットを、後の解析すべてに使用した。マイクロRNA標的を予測するために、RNA22アルゴリズムを使用した(Homo sapiens 3’UTRの事前にコンパイルされた予測)(Mirandaら、Cell 126巻:1203〜1217頁、2006年)。データを、Ingenuity Pathways Analysis(Ingenuity Systems(商標))を使用することによっても解析した。mRNA識別子を含有するデータセットをアプリケーションにアップロードした。対象とする群のそれぞれにおいて、少なくとも20%のマイクロRNAの標的となったmRNAのみを下流の解析に使用した。
各識別子を、Ingenuity knowledge baseにおいて対応する遺伝子目的物にマッピングした。このソフトウェアでは「フォーカス遺伝子」と称されるこれらの遺伝子を、Ingenuity knowledge baseに含有される情報から発展させた広範囲の分子ネットワーク上にオーバーレイさせた。次いで、これらのフォーカス遺伝子のネットワークを、それらの連結性に基づいてアルゴリズム的に生成した。ネットワークを機能解析することにより、ネットワーク内の遺伝子についての最も重要な生物学的機能および/または疾患が同定された。Ingenuity knowledge baseにおいて生物学的機能および/または疾患に関連付けられるネットワーク遺伝子が解析のために検討された。フィッシャーの正確確率検定を用いて、ネットワークに割り当てられた生物学的機能および/または疾患のそれぞれが偶然のみに起因する確率を決定するp値を算出した。正準経路解析(Canonical Pathways Analysis)により、正準経路のIngenuity Pathways Analysisライブラリーから、データセットについての最も重要な経路が同定された。データセットと正準経路との間の関連の有意性を2方式で測定した:(1)経路に位置する発現値カットオフに適合したデータセットからの遺伝子の数を正準経路に存在する分子の総数で割った比を示す;および(2)フィッシャーの正確確率検定を用いて、データセット内の遺伝子と正準経路内の遺伝子との間の関連が偶然のみで説明される確率を決定するp値を算出した。
リアルタイム定量PCR
炎症性スコアが様々である15検体の小唾液腺試料に対して、TaqMan(商標)microRNA Assay(Applied Biosystems)を使用してリアルタイム定量PCR分析を行った;これらの試料は、本明細書に記載のマイクロRNAマイクロアレイ解析において使用した試料とは独立したものであった。出発材料10ng(感度限界内で確実に検出されるように最適化試験分析に基づいて決定された)を使用して、製造者の説明書に従って逆転写を行った。どちらもApplied Biosystemsから取得した(それぞれ製品番号4395188および4395460)マイクロRNAhsa−mir−768−3pおよびhsa−mir−574−3pを検出するために、特異的なマイクロRNAプライマーを使用した。簡単に述べると、逆転写させるために、Veriti 96ウェルサーマルサイクラー(Applied Biosystems、Foster City、CA)において、16℃で30分間、42℃で30分間、85℃で5分間、15μLのRT反応を行った。リアルタイムPCRを、ABI Prism 7500(Applied Biosystems)で行った。各PCR反応を3連で行った。20μLのPCR反応を、95℃で10分間、その後、95℃で15秒間の変性ならびに60℃で60秒間のアニーリングおよび伸長を40サイクルのサイクル条件で行った。
PCR試料のそれぞれに対して3つの複製物ができた。各試料に対して、内在性低分子RNA、RNU48を対照とした。各試料のレベルを、2−ΔΔCT法(Livakら、Methods (Duluth)25巻:402〜408頁、2001年)を用いて対照のレベルと比較した。
(実施例2)
マイクロRNAマイクロアレイデータの解析
解析方法
Agilent GENESPRING(商標)プログラム9版および10版、ならびにBRB Arrayツールパッケージ安定リリース3.7.0版を用いて統計分析を行った。GENESPRING(商標)を用いて分析するためにアレイの製造者の説明書に従ってデータをインポートし、正規化した。
患者カテゴリーと正常なボランティアカテゴリーとの間で、示差的に発現されるmiRNAを、独立T検定およびベンジャミニ・ホッホバーグ(Benjamini−Hochberg)補正を用いて検出した。独立T検定において補正して統計的有意性があり(p<0.05)、倍率変化が2を超えたmiRNAを、示差的に発現されるmiRNAと見なした。データを以下の5カテゴリーに比較収集した:
1)すべてのシェーグレン症候群の試料対正常なボランティア(表1および表2)
2)病巣スコアが低いシェーグレン症候群の試料と正常なボランティアの比較(表3)
3)病巣スコアが高い試料の中で、唾液の流れが正常な試料対唾液の流れが不十分な試料(表4)
4)病巣スコアが低い試料の中で、唾液の流れが正常な試料対唾液の流れが不十分な試料(表5)
5)病巣スコアが高い試料対病巣スコアが低い試料(表6)
結果
表1は、正常な健康なボランティアの小唾液腺と比較して、シェーグレン症候群患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNAの一覧を提供する。発現が2倍以上増加または減少するマイクロRNAが示されている(p=0.01に設定した統計的有意性)。マイクロRNAの発現における倍率変化(真ん中の列)、および、シェーグレン症候群患者由来の唾液腺と比較して、正常な唾液腺においてマイクロRNAが上方制御される(「上方」)か、下方制御される(「下方」)か(右側の列)についても列挙されている。この表において、シェーグレン症候群患者由来の小唾液腺は、それらの病巣スコア(炎症の尺度)または唾液の流れと関係なく一緒に分類されている。すべての正常なボランティアの小唾液腺の病巣スコアは0であった。
表1
健康な対照の被験体と比較して、シェーグレン症候群患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNA(p=0.01)
Figure 2012522508
Figure 2012522508
同様に、表2は、統計的有意性をp=0.05に設定した、正常な健康なボランティアの小唾液腺と比較して、シェーグレン症候群患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNAの一覧を提供する。
表2
健康な対照の被験体と比較して、シェーグレン症候群患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNA(p=0.05)
Figure 2012522508
Figure 2012522508
表3は、正常な健康なボランティアの小唾液腺と比較して、病巣スコア(炎症の尺度)が低いシェーグレン症候群患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNAの一覧を提供する。発現が2倍以上増加または減少するマイクロRNAが示されている(p=0.01に設定した統計的有意性)。マイクロRNAの発現における倍率変化(真ん中の列)、および、正常な被験体由来の唾液腺と比較して、病巣スコアが低いシェーグレン症候群患者においてマイクロRNAが上方制御される(「上方」)か、下方制御される(「下方」)か(右側の列)についても列挙されている。
表3
健康な対照の被験体と比較して、病巣スコアが低いシェーグレン症候群患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNA
Figure 2012522508
Figure 2012522508
表4は、病巣スコアが高く、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者と比較して、病巣スコアが高く、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNAの一覧を提供する。発現が2倍以上増加または減少するマイクロRNAが示されている(p=0.05に設定した統計的有意性)。マイクロRNAの発現における倍率変化(真ん中の列)、および、病巣スコアが高く、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者と比較して、病巣スコアが高く、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者においてマイクロRNAが上方制御される(「上方」)か、下方制御される(「下方」)か(右側の列)についても列挙されている。この表では、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者由来の病巣スコアが高い小唾液腺と比較して、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者由来の病巣スコアが高い小唾液腺においてすべてのマイクロRNAが過剰発現される。
表4
病巣スコアが高く、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者(低)と比較して、病巣スコアが高く、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者(正常)の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNA
Figure 2012522508
表5は、病巣スコアが低く、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者と比較して、病巣スコアが低く、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNAの一覧を提供する。発現が1.5倍以上増加または減少するマイクロRNAが示されている(p=0.05に設定した統計的有意性)。マイクロRNAの発現における倍率変化(真ん中の列)、および、病巣スコアが低く、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者と比較して、病巣スコアが低く、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者においてマイクロRNAが上方制御される(「上方」)か、下方制御される(「下方」)か(右側の列)についても列挙されている。この表では、hsa−mir−330が、病巣スコアが低く、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者と比較して、病巣スコアが低く、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者において2倍下方制御される。さらに、hsa−mir−340が、病巣スコアが低く、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者と比較して、病巣スコアが低く、唾液の流れが正常なシェーグレン症候群患者において1.6倍上方制御される。
表5
病巣スコアが低く、唾液の流れが不十分なシェーグレン症候群患者(低)と比較して、病巣スコアが低く、唾液の流れが正常な シェーグレン症候群患者(正常)の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNA
Figure 2012522508
表6は、病巣スコアが高いシェーグレン症候群患者と比較して、病巣スコアが低いシェーグレン症候群患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNAの一覧を提供する。発現が2倍以上増加または減少するマイクロRNAが示されている(p=0.05に設定した統計的有意性)。マイクロRNAの発現における倍率変化(真ん中の列)、および、病巣スコアが高いシェーグレン症候群患者と比較して、病巣スコアが低いシェーグレン症候群患者においてマイクロRNAが上方制御される(「上方」)か、下方制御される(「下方」)か(右側の列)についても列挙されている。
表6
病巣スコアが高いシェーグレン症候群患者に対して、病巣スコアが低いシェーグレン症候群患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNA
Figure 2012522508
(実施例3)
示差的に発現されるマイクロRNAのクラス予測分析
本実施例は、健康な対照の被験体と比較して、シェーグレン症候群患者において示差的に発現されるマイクロRNAのクラス予測分析について記載している。
問題の詳細
クラスの数:2
フィルタリング基準を通過した遺伝子の数:243
クラスの変数を定義する実験記述子:SS(シェーグレン症候群)対N(正常なボランティア)
各クラス内のアレイの数:クラス標識N内に8、クラス標識S内に16
特徴選択基準
クラス間で0.001の有意性レベルで有意に異なる遺伝子をクラス予測に使用した。
交差検証法
リーブワンアウト(Leave−one−out)交差検証法を使用して、誤分類率をコンピュータで計算した。(ベイズの)複合共変量予測に使用したT値を、abs(t)=10レベルで切り捨てた。同等のクラス分布率をベイズの複合共変量予測において使用する。ベイズの複合共変量予測からクラスに予測される試料についての予測確率の閾値は0.8である。
表7
交差検証中の分類器の性能
Figure 2012522508
表8
クラス(N)に属する各試料が、交差検証中にベイズの複合共変量から予測される確率
Figure 2012522508
交差検証中の分類器の性能:
仮にあるクラスAに対して、
n11=Aであると予測されたクラスAの試料の数
n12=Aでないと予測されたクラスAの試料の数
n21=Aであると予測されたAでない試料の数
n22=Aでないと予測されたAでない試料の数
次に、以下のパラメータによって分類器の性能を特徴付けることができる:
感度=n11/(n11+n12)
特異性=n22/(n21+n22)
陽性適中率(PPV)=n11/(n11+n21)
陰性適中率(NPV)=n22/(n12+n22)
感度は、クラスA試料について、クラスAであると正しく予測される確率である。特異性は、クラスAでない試料について、Aでないと正しく予測される確率である。PPVは、クラスAであると予測された試料が実際にクラスAに属する確率である。NPVは、クラスAでないと予測された試料が実際にクラスAに属さない確率である。各分類方法および各クラスについて、これらのパラメータが以下の表9〜表15に列挙されている。
Figure 2012522508
Figure 2012522508
Figure 2012522508
Figure 2012522508
Figure 2012522508
Figure 2012522508
Figure 2012522508
表16
t値でソートした分類器の構成
(クラス1: N; クラス2: S)
Figure 2012522508
Figure 2012522508
線形予測からの予測規則
予測規則は、有意な遺伝子の重量(w)および発現(x)の内部合計によって定義される。発現は、デュアルチャネルデータについての対数比および単一チャネルデータについての対数強度である。試料は、合計が閾値(すなわち、Σ閾値)を超えるとクラスNに分類される。複合共変量予測に対する閾値は−2237.041であり;対角線形判別予測に対する閾値は−1226.374であり;サポートベクターマシン予測に対する閾値は−3.933である。
表17
遺伝子の重量
Figure 2012522508
Figure 2012522508
Figure 2012522508
Figure 2012522508
(実施例4)
シェーグレン症候群患者の小唾液腺のマイクロRNAプロファイリング
試料およびアレイハイブリダイゼーション
全部で24検体の小唾液腺由来の試料を、マイクロRNAマイクロアレイ上でハイブリダイズさせた。これらの腺のうち8検体は健康な対照に由来し、16検体は原発性シェーグレン症候群(SS)患者に由来した。原発性シェーグレンの試料の半数は病巣スコアが12の広範な炎症を有し、半数は病巣スコアが1または2の低度の炎症を有した。病巣スコアが高い群と病巣スコアが低い群の両方の中で、患者の半数が、唾液の流れが不十分であり、半数が唾液の流れが保たれていた(図1)。これらの臨床パラメータを有する患者を選択して、正常な対照とSS患者との間だけでなく、炎症の程度が異なる患者間、または炎症のレベルが同様の患者の機能低下した唾液腺と機能が保たれている唾液腺との間で特異的なマイクロRNAのパターンに差異があるかどうかを試験するために、マイクロRNAの変化を探査することを可能にした。
データの正規化
正規化は、生物学的な変動ではなく技術的な変動を表す試料間の系統的な差異を取り除くことができるので、マイクロアレイデータ解析において重要なステップである。マイクロRNAアレイデータの解釈における主要な制限は、種々の正規化法の有用性および妥当性に明確な一致を欠くことである。mRNAマイクロアレイを解析するために開発された伝統的な正規化法の多くは、マイクロRNAデータセットとmRNAデータセットとの間に著しい差異があるので、マイクロRNAプロファイリングには適さない可能性がある(Pradervandら、RNA 15巻:493〜501頁、2009年)。例えば、mRNAと比較して、マイクロRNAの多くは非常に低いレベルで発現する、または全く発現せず、アレイ当たりのマイクロRNAがmRNAよりもずっと少ない(何万ものmRNAと比較してマイクロRNAは何百)。多くの正規化法では、mRNAの強度分布は疾患または実験条件にわたって不変であると想定されているが、この想定がマイクロRNAにあてはまるかは全く明白でない。
mRNAマイクロアレイを正規化するための広く認められ、十分に検証された方法は、ハウスキーピング遺伝子、すなわち、すべての試料において一定のレベルで発現される遺伝子を使用することである。しかし、マイクロRNAアレイに対して同様の方式で使用することができる、十分に確立されたハウスキーピングマイクロRNAはない。定量PCRなどのアプリケーション用に、核小体RNAなどの他の非翻訳ハウスキーピング遺伝子が使用されているが、異なる条件下でのそれらの変動性は著しく、それらを「ハウスキーパー」として使用することを可能にするにはその前に広範な試験を行う必要がある。この問題を克服するために、本開示のデータセットにおいてハウスキーパーとしての機能を果たすことができるマイクロRNAを同定するための方法を考案した。この方法は、実施例1に詳細を記載しており、基本的に、その挙動がハウスキーピングの役割と一致するマイクロRNA;詳細には、その発現レベルが一定であった場合に予測される通り、発現レベルがすべてのアレイにわたって同調して変動するマイクロRNAを探索することを伴う。探索をすべてのアレイ(全部で132)に存在するとスコア化されたこれらのマイクロRNAに限定して、そのようなマイクロRNAの27種のセットが見出された(図2A)。このように挙動するそのように多数のマイクロRNAのセットが存在することは、それらのハウスキーパーとしての役割と一致し、他のどんな機構によっても説明することは難しい。
この正規化法の有効性を確認するために、Plonerら(BMC Bioinformatics 6巻:80頁、2005年)により提唱された相関試験を行って、mRNAアレイに対する正規化法を査定した。この試験は、無作為に2種の遺伝子を選択した場合、それらの発現レベルが互いに相関する可能性はきわめて低いという仮定に基づいている。言い換えると、一部の遺伝子対は確かに生物学的に関連しているが、大部分の対は生物学的に関連していない。これは、すべてのマイクロアレイにわたって遺伝子対のすべての発現レベルについてピアソン相関係数を算出した場合、適切に正規化されたデータセットにより、ゼロ付近に集中した相関係数の分布がもたらされることを意味する。正規化が不十分なアレイの存在により、この分布を歪める人為的結果の相関が導入される(すべてのシグナルが一斉に上昇または低下するので)。図2Bは、本開示のマイクロRNAアレイについて、ハウスキーパーマイクロRNAを用いて正規化する前と正規化した後にそのような算出をした結果を例示している。正規化により、約ゼロのこの分布の対称性および中心性が明らかに改善され、図2Aに列挙されているマイクロRNAはハウスキーパーとして挙動するという仮説と一致する。
健康サブセットおよび疾患サブセットの分類
i)主成分分析
主成分分析(PCA)は、変動のほとんどを保持しながらデータセットの次元を縮小するための数学的方法である。マイクロアレイデータの場合、第1主成分は、データ内の最大量の変動性を説明する、発現パターンの線形結合である。第2主成分は第1主成分とは独立しており、残りの最大量の変動性などを説明する。したがって、PCAにより、実験変動性の大半を保持する2次元または3次元の多次元データセットの視覚化を可能にする教師なし分析がもたらされる。図3に唾液のマイクロRNAアレイのPCA分析結果を示す。各点は、最初の3主成分に沿った座標に従ってプロットしたアレイを表す。この分析により、すべてのSS試料(小さな円および大きな円)と健康な対照(中くらいの円)とが明白に分離し、ならびに病巣スコアが低い試料(大きな円)および病巣スコアが高い試料(小さな円)が互いに分離していることが示されている。したがって、この分析により、これらの種々の群を、それらのマイクロRNAプロファイルによって区別することができることの強力な証拠がもたらされる。
ii)階層クラスタリング
次に、正規化したマイクロアレイ発現データの階層クラスタリングを行った。階層クラスタリングは、別の教師なし分類法であり、マイクロRNAの発現の対での類似性の定義済みの尺度によって決定された試料を合併することによってクラスターを同定する。2つのクラスター間の距離を、すべての要素対の間の距離の平均として算出する、平均連結クラスタリングを使用した。PCAと同様に、健康な対照由来の小唾液腺試料と、病巣スコアが高いSS試料および病巣スコアが低いSS試料の両方とが明確に分離された(図4)。健康な組織と病巣スコアが高い試料とが分離したことは、それらが、細胞組成が非常に異なる組織を表すので、驚くべきことではなかった。しかし、健康な組織と病巣スコアが低い組織とが明白に区別されたことにより、マイクロRNAプロファイルが、組織学的差異が最小である小唾液腺間を区別するために十分な感度であることが示されている。さらに、miRNAプロファイルにより、炎症の程度が異なる試料間が良好に区別されただけでなく、病巣スコアが高い試料の中で、唾液の流れが保たれている試料と唾液の流れが低下した試料とが明白に分離された。
iii)示差的に発現されるマイクロRNAを使用したクラス予測
次に、示差的に発現されるマイクロRNAにより、健康なクラスのメンバーであること対SSクラスのメンバーであることを予測することができるかどうかを試験した。種々の予測アルゴリズム(すなわち、複合共変量予測、対角線形判別分析、1−最近傍、3−最近傍、最も近いセントロイド、サポートベクターマシンおよびベイズの複合共変量予測)のすべてにより、被験体が患者である、または健康な対照であると正確に分類され、事例の100%で1.0の感度および1.0の特異性の両方が得られた(表7)。分類器は、有意性のレベル0.001で、クラス間で有意に異なる58種のマイクロRNAで構成された。リーブワンアウト交差検証法を使用して誤分類率をコンピュータで計算した。
iv)潜在的なバイオマーカーの検証
マイクロアレイで観察された差異を確認するため、およびシェーグレン患者のサブグループ間を区別するために選択されたマイクロRNAを使用することの潜在性を査定するために、正常群、病巣スコアが低い群および病巣スコアが高い群の間で反対方向に変化した2種のマイクロRNAを同定した。病巣スコアが上昇すると、これらのマイクロRNAの一方(hsa−miR−768−3p)は上昇し、他方(hsa−miR−574)は低下した。図5に例示した実験では、これらの2種のマイクロRNAの発現パターンを病巣スコアの予測子として使用することの実現可能性を、マイクロアレイの試験に使用した試料とは独立した15の試料のセットにおいて試験した。TaqMan(商標)リアルタイムPCRを用いて同じ試料において同時に決定したこれらの2種のマイクロRNA間のCt差異が示されている。病巣スコアが低い試料(FS:0〜2)、病巣スコアが中程度の試料(FS:5〜7)および病巣スコアが高い試料(FS:12)の間でこれらのCt差異に統計的有意差が見られた。Ct差異は、これらの2種のマイクロRNAの発現比の尺度であり、したがって試料の正規化とは無関係であることを示すことが重要である。
正常クラス、病巣スコアが低いSSクラスおよび病巣スコアが高いSSクラスの間を識別する示差的に発現されるマイクロRNAの生物学的標的
診断、疾患の活動性または組織損傷などの臨床的特性との強い関連を示すことに加えて、信頼性のあるバイオマーカーは、根底にある重要な生理学的プロセスを反映しなければならない。したがって、これらの知見の潜在的な生物学的重要性を、示差的に発現されるマイクロRNAに影響を受ける可能性がある生理学的プロセスを同定することによって査定した。まず、種々の臨床群の中で最も有意に示差的に発現されるマイクロRNAを同定した。これは、信頼水準75%で最大で1つの偽陽性を許容するように設定したBRB ArrayToolsのクラス比較アルゴリズムを使用して実現した。これにより、健康群、病巣スコアが低いSS群および病巣スコアが高いSS群の間で示差的に発現される94種のマイクロRNAが得られた(p<0.01)(表19)。
表19
種々の臨床群の間で有意に示差的に発現したマイクロRNAの一覧(p<0.01)
Figure 2012522508
Figure 2012522508
BRB ArrayToolsクラス比較アルゴリズムを、偽発見75%の信頼水準で最大1つの偽陽性を許容するように設定して使用した。一変量のF検定を実行し、多変量の並べ替え検定を、1000回の並べ替えに基づいてコンピュータで行った。HF、病巣スコアが高い群;LF、病巣スコアが低い群;NC、正常対照。
炎症に関連するmiRNAと、リンパ性病巣の数と無関係に変化するmiRNAとを分離するために、2つの主要なパターンを最初に評価した(表20):
A.非炎症性パターン(n=13):この群のマイクロRNAは、健康群と低病巣スコア群との間で>5倍に増加したが、病巣スコアが低い群と病巣スコアが高い群との間では基本的に変化しなかった(<50%の増加または減少)(すなわち、それらの発現レベルは炎症と相関しなかった)。
B.炎症性パターン(n=10):この群のマイクロRNAは、健康な対照と低病巣スコアとの間で>50%増加し、病巣スコアが低い群と病巣スコアが高い群との間でも>2.5倍に増加した(すなわち、それらの発現レベルが炎症と一貫して上昇した)。
表20
正常な試料、SSの病巣スコアが低い試料(低FS)、およびSSの病巣スコアが高い試料(高FS)の間のクラス比較
Figure 2012522508
示差的に発現されるマイクロRNAを、BRB ArrayToolsクラス比較アルゴリズムを偽発見75%の信頼水準で最大1つの偽陽性を許容するように設定して使用して同定した。p<0.01の94種の示差的に発現されるマイクロRNAの完全なセットが表19に列挙されている。各試料群についての幾何平均が示されている。
非炎症性パターンからのマイクロRNAは、SSにおける炎症の増加に関連しないが、疾患プロセスの他の態様に関連する経路を標的とするだろうことが仮定された。この仮定を検定するために、これらのマイクロRNAの予測されるmRNA標的を、RNA22標的予測アルゴリズム(Mirandaら、Cell 126巻:1203〜1217頁、2006年)を用いて同定し、次いでIngenuity Pathway Analysisソフトウェアを使用して、これらのマイクロRNAの標的となっている可能性がある生理学的なネットワークおよび機能を予測した。複数のマイクロRNA標的から生じる偽の経路が同定される可能性を減らすために、少なくとも3種の非炎症性群のマイクロRNAの標的となることが予測されたmRNAのみを含めた。得られた最も高い統計的に有意な生物学的機能は、循環器疾患、細胞周期、細胞形態および細胞発生に関連する経路を含んだ(図6A)。炎症性群のマイクロRNAを使用した同様の分析により、免疫疾患、神経疾患、遺伝疾患および精神疾患ならびに細胞の集合および組織化に関連する経路が同定された(図6B)。
病巣スコアが高い唾液腺において唾液の流れが保たれていることと唾液の流れが不十分なこととを識別する、示差的に発現されるマイクロRNA
特異的なマイクロRNAが、炎症が激しい状況における機能低下に関連するかどうかをさらに探索するために、病巣スコアが高い患者を、唾液の流れが保たれているか、または唾液の流れが不十分であるかのいずれかと比較した。階層クラスター解析から予測された通り(図4)、病巣スコアが高い群において、唾液の流れが正常なものと唾液の流れが保たれているものとの間でいくつものmiRNAが示差的に発現された(表21)。
表21
病巣スコアが高く、唾液機能が保たれているか、唾液機能が低いかのいずれかの患者の小唾液腺において示差的に発現されるマイクロRNA
Figure 2012522508
興味深いことに、これらの24種のマイクロRNAすべてが、機能が低下した群において下方制御され、このことはそれらの標的の過剰発現が上皮細胞に対して負の効果を有する可能性があることが示唆している。これらの示差的に発現されるマイクロRNAのうち4種が炎症細胞の特異的なサブセットに関連するmir−17−92クラスターに属することも興味深い。
(実施例5)
マイクロRNAバイオマーカーの供給源としてのヒト唾液由来エキソソーム
本実施例には、ヒト唾液由来のエキソソームからmiRNAを単離するための典型的なプロトコールが記載されている(Michaelら、Oral Dis. 16巻:34〜38頁、2010年も参照されたい)。
方法
研究の被験体
被験体は、健康なボランティアに対するプロトコールまたはシェーグレン症候群の自然経過の研究において登録された。
唾液の採取
腺の唾液の流れを刺激するために、患者に、舌の後外側表面に2%クエン酸溶液を、両側に綿棒で30秒毎に5秒塗布することを受けさせた。採取手順の間中、クエン酸刺激を30秒間隔で続けた。耳下腺の唾液を、以下の通り採取した。Carlson Crittendenの耳下腺採取器を、上顎第2大臼歯の反対側の頬側粘膜のStensonの管開口部の開口に両側的に置いた。耳下腺採取器を、内輪が管開口を囲むように粘膜に置いた。圧迫することによって真空を創出し、外輪からの吸引により採取器を粘膜に保持し、管開口部全面に設置する間、圧縮されたバルブを保持し、その後カップが適切な位置になったときにバルブをはずした。顎下の唾液/舌下の唾液を以下の通り採取した。耳下腺管の開口部を採取器で覆い、2%クエン酸を少なくとも5回舌に塗布した後、口底を乾燥させ、20秒間穏やかに吸引して氷上のチューブに唾液を採取した。次いで採取を停止し、2×2のガーゼを顎下腺管の開口部の全面に置き、舌に2%クエン酸を塗布した。唾液を穏やかに吸引して同じチューブに採取し、ガーゼを用いて再度採取を停止した。プロセス全体を最大8回繰り返した。
唾液中のエキソソームの単離
唾液中のエキソソームを単離するためのプロトコールを、尿中のエキソソームを単離するための先行の方法から適合させ、改変した(Zhouら、Kidney Int 74巻:613〜621頁、2008年)。採取した直後に唾液を氷上に置き、研究室に移して4℃で10分間、1500gで遠心分離した。次いで上清を取り出し、別のチューブに入れて4℃で15分間、17,000gで遠心分離して不必要な細胞小器官および細胞断片をさらに取り除いた。最初の遠心分離ステップの後、上清を滅菌チューブに移して、4℃で1時間、160,000gで超遠心分離した。超遠心分離した後、全唾液試料において粘性である水層を取り除き、エキソソームを含有するペレットをPBSで洗浄し、4℃で1時間、160,000gで再度超遠心分離した。2回目の超遠心分離の後、上清を取り除き、ペレットを簡単に乾燥させた。次いで試料を、タンパク質またはRNAを単離する準備をした。
タンパク質の単離およびウェスタンブロット
エキソソームのタンパク質を分析する前に、10mMのトリエタノールアミン、250mMのショ糖および脱イオン水を混合することによって単離緩衝液の保存溶液を作製した。次いで、1Nの水酸化ナトリウムを用いて単離緩衝液のpHをpH7.6に調整した。脱イオン水を加えて単離緩衝保存溶液の総体積を50mLにした。溶液を−20℃で保管した。使用する直前に、単離緩衝液1mLにプロテアーゼ阻害剤を加えた(フッ化フェニルメチルスルホニル50マイクロリットル(2mg/ml)およびロイペプチン10マイクロリットル(1mg/ml)、どちらも−20℃で保管)。エキソソームを単離した後、ペレットを、プロテアーゼ阻害剤を含有する単離緩衝液100マイクロリットルに再懸濁させた。同体積の2×Laemmli緩衝液(Biorad、Hercules、CA)を加え、試料を60℃で10分間変性させた。ウェスタンブロットを用いてTSG101の存在を決定した。試料をNuPAGE Novex 4〜12% Bis−Tris Gel(Invitrogen、Carlsbad CA、USA)に供した。セミドライ転写ユニットを使用してタンパク質を膜に転写した。1:7500希釈したTSG101抗体(Abcam、(ab83)、Cambridge、MA)を用いてウェスタンブロットを行った。
RNAの単離および分析
エキソソームを単離した後、検出されたRNAがすべてエキソソーム由来であることを確実にするために、ペレットをRNase Aで処理して、いかなる残存細胞RNAも分解した。一部の試料を、RNase A(Puregene−Gentra Systems、Valencia、CA)、4mg/mlの溶液、脱イオン水中0.4mg/mlの作用濃度を用いて、37℃で10分間処理した。次いで、試料のエキソソームをmiRNeasy溶解緩衝液(Qiagen、Valencia、CA、USA)600マイクロリットルで溶解させ、後で使用するために−80℃で保管した、またはQiagenのmiRNeasy Kitを製造者のプロトコールに従って使用してすぐに処理した。すべてのRNA試料を、RNaseを含まない水50マイクロリットル中に溶出させた。エキソソームRNAの濃縮および沈殿の助けになるように、Novagenのペレットペイントを製造者のプロトコールに従って、軽微な改変をして使用した;RNA試料に2マイクロリットルのペレットペイントを加えた。ペレットペイントを加えた後、体積0.1の3M酢酸ナトリウムを試料に加え、試料を10秒間混合した。混合した後、体積2.5の100%エタノールを試料に加え、簡単にボルテックスした。次いで、試料を室温で2分間インキュベートし、4℃で5分間遠心分離した。遠心分離した後、エキソソームRNAを含有するペレットを70%エタノール200マイクロリットルで洗浄し、RNaseを含まない水に再懸濁させる前に風乾させた。次いでUV−Vis分光光度計(Nanodrop 8000)を使用してRNAを定量化し、Agilent 2100 Bioanalyzerを使用して、品質を査定し、RNase処理した試料と未処理試料の両方において低分子RNAの存在を検証した。
エキソソームRNAを単離し、定量化した後、TAQMAN(商標)MicroRNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems)を用いた逆転写反応のために5ナノグラムの入力RNAを使用した。hsa−mir−203、hsa−mir−768−3pおよびhsa−mir−574−3pに対する遺伝子特異的なプライマーを、別々の反応において使用した。核小体RNA U48を用いた陽性対照の逆転写反応を、特異的なプライマーを使用して行った。各反応と並んで、RNAの代わりに水5マイクロリットルを使用した陰性対照を行った。逆転写反応から得られたcDNAを−20℃で保管した、またはすぐにリアルタイム定量PCRに使用した。リアルタイム定量PCRを使用して対象とするマイクロRNAを検出し、定量化した。すべての試料について、製造者のプロトコールに記載されている通り、各反応に対して5ngのcDNAを使用して3連で実行した。
マイクロアレイ試験
Exiqon miRNAマイクロアレイシステム(miRCURY LNA(商標)microRNA Array、10.0版)を使用して、耳下腺の唾液および顎下腺の唾液から単離されたエキソソームmiRNA、ならびにシェーグレン症候群患者の耳下腺の唾液中のエキソソームmiRNAに対してマイクロアレイハイブリダイゼーションを行った。使用した出発材料がアレイの製造者の推奨よりも下限にあったことを除いて製造者のプロトコールに記載の通りに試料の標識およびハイブリダイゼーションを行った。簡単に述べると、対照にスパイクしたmiRNAを250ngの唾液中のエキソソームマイクロRNAに加え、仔ウシ腸ホスファターゼで処理した。次いで、試料をHy3またはHy5のいずれかで標識し、変性させ、56℃で16時間、アレイ上でハイブリダイズさせ、洗浄し、Agilentスキャナー(Model G2505B)でスキャンした。データをAgilentのFeature Extractionアルゴリズムで処理した。
結果
200μlから最大5mLまでの体積範囲の唾液試料により、定量PCRに適した量のエキソソームRNAが得られた。マイクロRNAは実に小体積の唾液から単離されたが、RNAの収量は少数の定量PCR反応に十分なだけのものであった。7日間−20℃で凍結させた唾液からエキソソームを単離することも可能であった。腺の唾液および全唾液の両方からエキソソームを単離することが可能であるが、全唾液は、その粘性および細胞のコンタミネーションにより、エキソソームを単離するための理想に満たない媒体になる。したがって、この試験は主に腺の唾液のみを焦点とした。
一連の遠心分離の後、ペレット中のエキソソームの存在を検証するために、顎下腺の唾液および耳下腺の唾液の両方からペレットを溶解させ、ウェスタンブロットによって標準のエキソソームマーカーであるTSG101の存在を確認した。エキソソームのマイクロRNA含有量を査定するため、および単離されたmiRNAがエキソソーム内に由来することを確実にするために、エキソソームペレットを上記の通りRNaseAで処理し、次いで、同様にmRNAを保存したキットを用いてエキソソーム溶解物からmiRNAを単離した。単離されたRNAの総濃度は個々で変動し、採取された耳下腺に対して、平均で100μl当たり20.9ngであり、採取された顎下の唾液100μl当たり27.4ngであった。採取時間を増やしてもRNA濃度は直線的に上昇しなかった;連続した唾液採取では、採取された最初の100μlでは、続く100μlよりも一貫してRNA濃度が高かった。細胞に存在するエキソソームは、刺激されると即座に唾液中に放出され、この方法により直ちに採取されることが仮定される。現存の供給が一度枯渇すると、エキソソームの新規合成には唾液採取時間よりも長い期間が必要になる。
エキソソーム内のマイクロRNAの存在を確認するために、小唾液腺、ならびに全唾液に存在することが予め同定された3種のマイクロRNA(hsa−miR−203、hsa−miR−768−3pおよびhsa−miR−574−3p)についてTaqMan(商標)マイクロRNA定量PCR増幅を行った。陰性対照および陽性対照を用いたPCR反応により、エキソソーム中にマイクロRNAが存在することが実証された。いかなるマイクロRNAがエキソソーム中に存在する可能性があるかについて包括的に考察するために、2種のmiRNAマイクロアレイを実行した:一方のマイクロアレイは、耳下腺の唾液由来のマイクロRNAを、同じ正常なボランティアからの顎下唾液由来のマイクロRNAに対してハイブリダイズさせ、もうひとつのマイクロアレイは、正常なボランティアからの耳下腺の唾液由来のmiRNAを、シェーグレン症候群患者の唾液試料由来のmiRNAに対してハイブリダイズさせた。
本明細書に記載の結果により、エキソソームを唾液から容易に単離することができること、およびこれらのエキソソームが、qPCRおよびマイクロアレイハイブリダイゼーションのどちらにも適した量のマイクロRNAを含有することが実証されている。
開示されている発明の原理を適用することができる多くの可能性のある実施形態を考慮して、例示した実施形態は単に本発明の好ましい実施例であり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことが理解されるべきである。もっと正確に言えば、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって規定される。したがって、本発明者らは、これらの請求項の範囲および主旨の範囲内に入るすべてを本発明として特許請求する。

Claims (31)

  1. 被験体がシェーグレン症候群を有すると診断するため、かつ/またはシェーグレン症候群を有する前記被験体を治療するための、前記被験体の生体試料中の少なくとも1種のマイクロRNA(miR)遺伝子産物の発現レベルの使用であって、前記少なくとも1種のmiR遺伝子産物がmiR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bまたはmiR−409−3p遺伝子産物であり、ここで、
    (i)前記被験体の前記生体試料における、対照と比較したmiR−150の前記レベルの上昇、ebv−miR−BART13の前記レベルの上昇、ebv−miR−BART19の前記レベルの上昇、miR−768−3pの前記レベルの上昇、miR−574の前記レベルの低下、miR−513の前記レベルの上昇、miR−188の前記レベルの上昇、miR−202の前記レベルの上昇、hcmv−miR−US4の前記レベルの上昇、miR−565の前記レベルの上昇、miR−509の前記レベルの上昇、miR−154の前記レベルの上昇、miR−99bの前記レベルの上昇、miR−564の前記レベルの上昇、miR−30bの前記レベルの上昇またはmiR−409−3pの前記レベルの上昇、またはそれらの組合せにより、前記被験体がシェーグレン症候群を有することが示され、ここで前記上昇または低下が診断上有意な量であり;かつ/または
    (ii)シェーグレン症候群を有する前記患者において対照と比較して上方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する作用剤を治療有効量で前記患者に投与する、またはシェーグレン症候群を有する前記患者において対照と比較して下方制御される単離されたmiR遺伝子産物を治療有効量で前記患者に投与することによる、
    使用。
  2. 前記(i)に記載の通りであって、前記miR遺伝子産物の前記レベルにおける前記診断上有意な上昇または低下が少なくとも2倍である、請求項1に記載の使用。
  3. 前記対照と比較して、シェーグレン症候群を有する前記被験体の前記生体試料において、miR−150が少なくとも32倍増加する、ebv−miR−BART13が少なくとも7倍増加する、ebv−miR−BART19が少なくとも45倍増加する、miR−768−3pが少なくとも3倍増加する、miR−574が少なくとも4倍減少する、miR−513が少なくとも6倍増加する、miR−188が少なくとも2倍増加する、miR−202が少なくとも2倍増加する、hcmv−miR−US4が少なくとも2倍増加する、miR−565が少なくとも6倍増加する、miR−509が少なくとも2倍増加する、miR−154が少なくとも2倍増加する、miR−99bが少なくとも2倍増加する、miR−564が少なくとも6倍増加する、miR−30bが少なくとも3倍増加する、またはmiR−409−3pが少なくとも2倍増加する、またはそれらの組合せである、請求項1または請求項2に記載の使用。
  4. 前記対照と比較して、シェーグレン症候群を有する前記被験体の前記生体試料において、miR−150が少なくとも38倍増加する、ebv−miR−BART13が少なくとも21倍増加する、ebv−miR−BART19が少なくとも92倍増加する、miR−768−3pが少なくとも3倍増加する、miR−574が少なくとも2倍減少する、miR−513が少なくとも16倍増加する、miR−188が少なくとも7倍増加する、miR−202が少なくとも5倍増加する、hcmv−miR−US4が少なくとも6倍増加する、miR−565が少なくとも7倍増加する、miR−509が少なくとも18倍増加する、miR−154が少なくとも3倍増加する、miR−99bが少なくとも5倍増加する、miR−564が少なくとも29倍増加する、miR−30bが少なくとも4倍増加する、またはmiR−409−3pが少なくとも3倍増加する、またはそれらの組合せである、請求項1または請求項2に記載の使用。
  5. 前記生体試料が唾液腺である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の使用。
  6. 前記唾液腺が小唾液腺である、請求項5に記載の使用。
  7. 前記唾液腺が耳下腺唾液腺である、請求項5に記載の使用。
  8. 前記生体試料が唾液である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の使用。
  9. 前記生体試料が血液、血清または血漿である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の使用。
  10. シェーグレン症候群と診断された前記被験体に対する適切な療法または第2の適切な療法を提供することをさらに含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の使用。
  11. 前記療法が、唾液産生を促進する作用剤を投与することを含む、請求項10に記載の使用。
  12. 前記療法がコルチコステロイドを投与することを含む、請求項10に記載の使用。
  13. 前記療法が、免疫抑制薬を投与することを含む、請求項10に記載の使用。
  14. 前記療法が、非ステロイド系抗炎症薬を投与することを含む、請求項10に記載の使用。
  15. シェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して上方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する治療有効量の作用剤、またはシェーグレン症候群を有する前記患者において対照と比較して下方制御される治療有効量の単離されたmiR遺伝子産物の使用であって、シェーグレン症候群を有する患者を治療するための薬剤の調製における使用。
  16. 前記上方制御されるmiR遺伝子産物が、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bまたはmiR−409−3p遺伝子産物である、請求項15に記載の使用。
  17. miR遺伝子産物の発現を阻害する前記作用剤が、前記miR遺伝子産物に特異的なアンチセンス化合物である、請求項15または請求項16に記載の使用。
  18. 前記アンチセンス化合物がアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAまたはリボザイムである、請求項17に記載の使用。
  19. 前記下方制御されるmiR遺伝子産物が、miR−183、miR−189、miR−200c、miR−22、miR−326、miR−328、miR−548c、miR−574、miR−585、miR−768−5pまたはmiR−9遺伝子産物である、請求項15に記載の使用。
  20. 前記下方制御されるmiR遺伝子産物がmiR−574遺伝子産物である、請求項15に記載の使用。
  21. 前記治療が、シェーグレン症候群を有する前記被験体における唾液の流れを回復させることを含む、請求項15から20までのいずれか一項に記載の使用。
  22. 病巣スコアが高いことまたは病巣スコアが低いことを診断するための、シェーグレン症候群患者の生体試料中の少なくとも1種のmiR遺伝子産物の発現レベルの使用であって、前記少なくとも1種のmiR遺伝子産物がmiR−150、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、ebv−miR−BART19、miR−501、miR−126*、miR−342、miR−330、miR−135b、miR−142−5pまたはmiR−650遺伝子産物であり;
    (i)シェーグレン症候群を有する前記患者の前記生体試料における、対照と比較した、miR−150の前記レベルの上昇、miR−768−3pの前記レベルの上昇、miR−574の前記レベルの低下、miR−513の前記レベルの上昇、miR−188の前記レベルの上昇、ebv−miR−BART19の前記レベルの上昇、miR−501の前記レベルの上昇、miR−126*の前記レベルの上昇、miR−342の前記レベルの上昇、miR−330の前記レベルの上昇、miR−135bの前記レベルの上昇、miR−142−5pの前記レベルの上昇、またはmiR−650の前記レベルの上昇、またはそれらの組合せにより、前記シェーグレン症候群患者の病巣スコアが高いことが示される;または
    (ii)シェーグレン症候群を有する前記患者の前記生体試料における、対照と比較した、miR−150の前記レベルの低下、miR−768−3pの前記レベルの低下、miR−574の前記レベルの上昇、miR−513の前記レベルの低下、miR−188の前記レベルの低下、ebv−miR−BART19の前記レベルの低下、miR−501の前記レベルの低下、miR−126*の前記レベルの低下、miR−342の前記レベルの低下、miR−330の前記レベルの低下、miR−135bの前記レベルの低下、miR−142−5pの前記レベルの低下、またはmiR−650の前記レベルの低下、またはそれらの組合せにより、前記シェーグレン症候群患者の病巣スコアが低いことが示され;
    前記上昇または低下が、診断上有意な量の上昇または低下である、
    使用。
  23. 前記少なくとも1種のmiR遺伝子産物がmiR−768−3p遺伝子産物、miR−574遺伝子産物、またはその両方であり、前記対照と比較した、miR−768−3pの前記レベルの上昇、miR−574の前記レベルの低下、またはその両方により、前記シェーグレン症候群患者の病巣スコアが高いことが示される、請求項22に記載の使用。
  24. 前記対照が健康な被験体由来の生体試料である、請求項1から23までのいずれか一項に記載の使用。
  25. シェーグレン症候群を治療するための方法、またはシェーグレン症候群患者における唾液の流れを回復させるための方法で使用するための、シェーグレン症候群を有する患者において対照と比較して上方制御されるmiR遺伝子産物の発現を阻害する治療有効量の作用剤、またはシェーグレン症候群を有する前記患者において対照と比較して下方制御される治療有効量の単離されたmiR遺伝子産物。
  26. シェーグレン症候群を治療するための治療剤をスクリーニングするためのin vitro方法であって、(i)細胞培養物を候補作用剤と接触させるステップと;(ii)miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bおよびmiR−409−3p遺伝子産物から選択される少なくとも1種のmiR遺伝子産物のレベルを測定するステップを含み、対照と比較して、miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bおよび/またはmiR−409−3pのレベルの低下、および/またはmiR−574のレベルの上昇により、候補作用剤がシェーグレン症候群を治療するための治療剤であると同定される方法。
  27. 表1〜6および表16〜21のいずれか1つに列挙されているmiR遺伝子産物から選択されるmiR遺伝子産物と特異的にハイブリダイズする少なくとも2種のオリゴヌクレオチドを含むアレイ。
  28. miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bおよびmiR−409−3pからなる群から選択されるmiR遺伝子産物と特異的にハイブリダイズする少なくとも2種のオリゴヌクレオチドを含む請求項27に記載のアレイ。
  29. 被験体がシェーグレン症候群を有すると診断するための、またはシェーグレン症候群を有する被験体に対する適切な療法を選択するための、請求項27または請求項28に記載のアレイの使用。
  30. 表1〜6および表16〜21のいずれか1つに列挙されているmiR遺伝子産物から選択されるmiR遺伝子産物に特異的な少なくとも2種のオリゴヌクレオチドプローブを含むキット。
  31. miR−150、ebv−miR−BART13、ebv−miR−BART19、miR−768−3p、miR−574、miR−513、miR−188、miR−202、hcmv−miR−US4、miR−565、miR−509、miR−154、miR−99b、miR−564、miR−30bおよびmiR−409−3pからなる群から選択されるmiR遺伝子産物に特異的な少なくとも2種のオリゴヌクレオチドプローブを含む、請求項30に記載のキット。
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