JP2012515197A - 3−(シクロプロピル−1−エニル)−プロパンナトリウム塩を用いて農作物でのエチレン応答をブロックするための組成物および方法 - Google Patents
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Abstract
農作物においてエチレン応答を阻害する方法が開示されており、前記農作物の少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対して、前記少なくとも一つの植物においてエチレン応答を阻害するのに効果的な量の水溶性シクロプロピル−1−エニル−プロパン酸塩(WS−CPD、式I)の溶液を適用する工程を含んでおり、式中のMは、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、カリウム(K)、および、1/2カルシウム(Ca)からなるグループから選択される。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
本発明は、概して、農作物でのエチレン応答をブロックするための水溶性組成物および方法に関し、具体的には、3−(シクロプロピル−1−エニル)−プロパンナトリウム塩(WS−CPD)を用いることで、農作物においてエチレンが制御している生長、再生、および、生産などの様々なプロセスを阻害するための方法に関する。
エチレンは、様々な植物の生長プロセスを調節する揮発性の植物ホルモンである。例えば、エチレンは、オーキシン輸送のブロッキングや、アブシジン酸(ABA)の合成の誘発などのプロセスにおいて、植物体内のホルモンバランスの調節に関与している。また、エチレンは、果実熟成の促進、酵素活性の向上、熟成および老化ならびに休眠の促進、クロロフィル分解、葉および果実の離脱、上偏生長、ならびに植物生長方位および植物根の生長などのその他の変化、ならびに重力屈性反応の改変といった植物のライフサイクルにおける様々な現象の制御にも関与している。植物におけるエチレン生産は、高温、冷却および凍結、干ばつ、および、過度の水分供給または洪水、放射線、機械的ストレス、ならびに病原体または昆虫による攻撃などの様々な形態の環境ストレスによって増長される。20世紀初頭以来、生産者たちは、収穫期の前後に、収穫量を調整するためにエチレンを使用してきた。熟成前の果実の落下の予防や、果実の保持に要する支持力を減少させるなどの目的でエチレンの作用を阻害するか、あるいは、綿花の葉の離脱を促して機械的収穫を容易にしたり、果実の寿命を延ばしたり、そして、切り花の花もちを良くしたりなどの目的でエチレンを利用することによって、エチレンの奏する効果を制御する必要性が故に、科学者たちは、エチレンの生合成または作用をブロックする化学物質の開発を試みる一方で、エチレンを放出する化学物質の開発にもあたってきた。ローヌ・プーラン社から市販されているエテフォン(商標)(以下、「エテフォン」と称する)は、エチレン放出性化学物質の一例であり、また、アミノエトキシビニルグリシン(AVG)は、エチレンの生合成をブロックし、そして、揮発性化合物である1−メチル−シクロプロペン(1−MCP)は、植物におけるエチレン作用に対するアンタゴニストである。1−MCPは、この15年の内に広く普及するに至った化学物質であり、収穫後の取り扱いにおいて、果実の熟成を阻害して品質保持期限を延ばしたり、葉菜や切り花の老化を遅延させたりするために用いられているが、最大の欠点は、閉環境での使用が必須であるその揮発性である。1−MCPは、非常に有効なエチレンアンタゴニストであるので、これまでのところ、非揮発性(そして、以下に詳述するように、好ましくは、水溶性)のシクロプロペン誘導体の開発を主目的として研究が行われてきた。
ガス状の、またはより多くの場合はエテフォン(商標)のようなエチレン放出化合物の手段によるエチレンの適用は、主に、小さな果実を間引くために使用されたり、機械的収穫を円滑にするために熟れた果実を落実させたり、目的に応じて落葉を促したり、開花を誘発したり、そして、熟成(バナナ)や斑入(柑橘類)を促したりするために用いられている。また、エチレンは、若枝の生長を阻害するために、広範に利用がされている。その一方で、エチレンアンタゴニストも農業分野で広範に利用されている。エチレンアンタゴニストの用途の例としては、様々な植物器官の離脱の予防、花卉、果実および野菜の商品寿命の延長、および、葉の老化のブロッキングまたは遅延がある。
様々な農作物、とりわけ、穀物での登熟は、主に、止め葉や、小麦の穂およびトウモロコシの穂の様々な箇所での光合成の速度と期間によって決定される。最終的な穀物の重量に対する穂のみの光同化部分の寄与率は、約25%であると見積もられている。止め葉や未熟な穂の部分からの光同化性の供給を制限する主な因子は、老化である。エチレンは、老化を開始する主たる因子の一つである。多くの農作物は、特に、農作物がよく直面する干ばつのようなストレスを被る条件下にあっては、自然にエチレンを生産している。エチレンアンタゴニストを利用することで、小麦の収穫量が向上することが報告されている。おそらく、この効果は、老化を遅延または妨害するエチレンアンタゴニストの作用に起因するものであり、これにより、植物が光合成作用を呈する期間が延長されることとなる。エチレンアンタゴニストのこの特性は、すべての農作物に共通する代謝プロセスに影響を与えるものであるので、その特性は、すべての農作物に及ぶものと考えられる。
通常、水に対する溶解性は、利用した化学物質を植物の組織に浸透させる上で有利に作用する。多くの植物ホルモン、ならびに、合成ホルモンおよびホルモンアンタゴニストは、水に難溶性の酸である。これら化学物質の水溶液の調製に際しては、これら化学物質を、まず最初に有機溶媒に溶解するか、あるいは、pHを7の近傍またはそれ以上に維持する必要がある。しかしながら、これらの手順は、大規模生産の形態には適していない。上記化学物質の利用を容易にするための一般的な方法として、それら物質を、水に対して容易に溶解する塩形態に変換する方法がある。この例として、発根ホルモンであるインドール−3−酢酸がある。挿し木の端部を浸漬するための苗床として、長年にわたって、タルク粉末に遊離酸を混合したものが利用されている。ホルモン溶液に挿し木の端部を浸漬することが、遊離酸へ浸漬した場合よりも多くの場合有益であるとの知見から、水溶性に富んだインドール−3−酪酸のカリウム塩の合成へと至ったのである。現在のところ、この産物は、遊離酸よりも多くの苗床に好まれている。この知見とその他の知見が、揮発性シクロプロペン誘導体に基づいた水溶性エチレンアンタゴニストの研究と開発を促すに至っている。
幾つかの文献、特に、ノースカロライナ大学のシスラーの研究グループに由来する文献は、シクロプロペニルアルカン酸の合成に対する様々なアプローチを開示している。例えば、米国特許第6,365,549号公報、Tetrahedron 1996, 52, 3409、Tetrahedron 1996, 52, 12509、および、Tetrahedron 2004, 60, 1803を、参照されたい。そこに開示された方法の内、シクロプロペニルプロパン酸の合成に最も好適であると先験的に考えられる方法は、成功しないということが分かっている。したがって、シクロプロペニルプロパン酸の製造のための新たな合成戦略が、必要とされているのである。
このように、農作物において利用可能であり、しかも、室温で固体を呈し、また、長期安定性を示し、そして、水溶性に富んだ性質を有する植物エチレン応答の阻害剤が、依然として待望されているのである。
したがって、本願発明の目的は、農作物においてエチレン応答を阻害する方法であって、前記農作物の少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対して、前記少なくとも一つの植物においてエチレン応答を阻害するのに効果的な量の水溶性シクロプロピル−1−エニル−プロパン酸塩(WS−CPD、式I)の溶液を適用する工程を含み、式中のMが、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、カリウム(K)、および、1/2カルシウム(Ca)からなるグループから選択される方法を開示することにある。
Mがナトリウムである方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記溶液が水溶液である方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記溶液を適用する工程が、(a)前記少なくとも一つの植物と前記溶液との接触、(b)前記溶液への前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分の浸漬、(c)前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対する前記溶液の噴霧、(d)前記少なくとも一つの植物に対する前記溶液の灌注、(e)前記溶液を用いた前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分のブラッシング、および、(f)これらの組み合わせ、からなるグループから選択された所定の技術によって前記溶液を適用する別の工程をさらに含む、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記エチレン応答が、老化、植物の葉柄の離脱、および、クロロフィル分解からなるグループから選択される、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記農作物が、穀物、マメ科植物、油脂生産植物、繊維生産植物、および、タバコからなるグループから選択される、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記穀物が、小麦、大麦、米、トウモロコシ(コーン)、および、オート麦からなるグループから選択される、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記マメ科植物が、大豆、エンドウ豆、落花生、および、豆類からなるグループから選択される、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記油脂生産植物が、ヒマワリ、ベニバナ、トウゴマ、亜麻、胡麻、エゴマ、および、菜種からなるグループから選択される、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記繊維生産植物が、綿花、および、麻からなるグループから選択される、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記エチレン応答の阻害が、(a)収穫量の増大、(b)葉柄の離脱率の減少、(c)葉のクロロフィル含量の分解率の減少、(d)止め葉の老化の遅延、(e)穂の緑色器官の老化の遅延、および、(f)これらの組み合わせ、からなるグループから選択された差異によって明白となり、前記差異が、前記エチレン応答が阻害されていない植物と比較して測定される、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
界面活性WS−CDP含有水溶液を得るに十分な量の界面活性剤を加える別の工程をさらに含む方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記農作物の少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対して、前記少なくとも一つの植物の寿命を延ばすのに効果的な量の水溶性シクロプロピル−1−エニル−プロパン酸塩(WS−CPD、式I)の溶液を適用する工程を含み、式中のMが、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、カリウム(K)、および、1/2カルシウム(Ca)からなるグループから選択される、農作物の老化を遅延する方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
Mがナトリウムである方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記溶液が水溶液である方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記農作物が、葉菜、香辛料生産植物、および、薬草からなるグループから選択される、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記溶液を適用する工程が、(a)前記少なくとも一つの植物と前記溶液との接触、(b)前記溶液への前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分の浸漬、(c)前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対する前記溶液の噴霧、(d)前記少なくとも一つの植物に対する前記溶液の灌注、(e)前記溶液を用いた前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分のブラッシング、および、(f)これらの組み合わせ、からなるグループから選択された所定の技術によって前記溶液を適用する別の工程をさらに含む、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
前記農作物が、(a)穀物および穀類作物―小麦、オート麦、大麦、ライ麦、米、トウモロコシ、穀実用モロコシ、(b)採種用マメ科植物―ピーナッツ、フィールドピー、ササゲ、大豆、ライマメ、緑豆、ヒヨコマメ、キマメ、ソラマメ、および、平豆、(c)飼料作物―牧草、マメ科植物、アブラナ科植物、および、干し草、穀物飼料、家畜用飼料、貯蔵牧草、または、青草のために栽培および使用されるその他の作物、(d)根菜作物―サツマイモ、および、キャッサバ、(e)繊維作物―綿花、亜麻、カラムシ、ケナフ、および、麻、(f)塊茎作物―ジャガイモ、(g)糖料作物―甜菜、甘蔗、(h)嗜好品作物―タバコ、並びに、(i)油料作物―菜種/キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、胡麻、亜麻仁、トウゴマ、および、エゴマからなるグループから選択される、方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
農作物の収穫量を、特に、植物のエチレンに対する老化反応を抑制することによって、向上させる方法であって、少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対して、少なくとも一つの植物の寿命を延ばすのに効果的な量のWS−CPDを適用することを含む方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
農作物の落葉率を、特に、エチレンに対する植物の落葉反応を抑制することによって、減少させる方法であって、少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対して、少なくとも一つの植物の寿命を延ばすのに効果的な量のWS−CPDを適用することを含む方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
穀物(例えば、小麦、大麦、トウモロコシ、または、米)についての穀物収穫量の増大をもたらす「止め葉」や穂の緑色器官の老化を遅延させる方法であって、少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対して、少なくとも一つの穀物の寿命を延ばすのに効果的な量のWS−CPDを適用する工程を含む方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
葉菜(例えば、レタスやベビーレタス、キャベツ、ほうれん草、または、アメリカンセロリ)の老化を遅延させる方法であって、少なくとも一つの葉菜の少なくとも一部分に対して、少なくとも一つの葉菜の寿命を延ばすのに効果的な量のWS−CPDを適用する工程を含む方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
香辛料薬草の老化を遅延させる方法であって、少なくとも一つの薬草の少なくとも一部分に対して、少なくとも一つの薬草の寿命を延ばすのに効果的な量のWS−CPDを適用する工程を含む方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
挿し木の老化を遅延させる方法であって、少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対して、少なくとも一つの植物の寿命を延ばすのに効果的な量のWS−CPDを適用する工程を含む方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
農作物での葉のクロロフィル含量の分解率を、特に、エチレンに対する植物クロロフィル分解反応を抑制することによって、減少させる方法であって、少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対して、少なくとも一つの植物の寿命を延ばすのに効果的な量のWS−CPDを適用することを含む方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
溶液を適用する工程が、WS−CPDを含む水溶液中で、当該水溶液で、または、当該水溶液を用いて、少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対して、浸漬、噴霧、ブラッシング、または、灌注からなるグループから選択される技術によって実施される上記の任意の方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
農作物のエチレン応答を阻害する方法であって、界面活性WS−CPD含有水溶液を生成するに十分な量の界面活性剤とWS−CPDとを混合する工程をさらに含む方法を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
(a)以下のピーク箇所(TMSに対するδ値)、分裂パターン、および、積分値:0.88(s,2H)、2.42(t,2H)、2.75(t,2H)、および、6.52(s,1H)を特徴とするメタノール溶液にて得られた1H−NMRスペクトル、(b)以下のピーク箇所(TMSに対するδ値):4.27、23.58、34.90、97.21、120.18、および、180.06を特徴とするメタノール溶液にて得られた13C{1H}−NMRスペクトル、ならびに、(c)δ−2.46ppmでのピークを特徴とするジュウテロメタノール溶液にて得られた23Na{1H}−NMRスペクトルによって特徴付けられる水溶性シクロプロピル−1−エニル−プロパン酸ナトリウム塩(WS−CPD)を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
粉末の形態である場合に、(a)2θ=10.6°、15.94°、28.42°、47.3°、および、56.16°であるピーク、および、(b)2θ 〜 23°を中心とした幅広いピークからなるグループから選択される少なくとも一つのパターンを含むX線回折パターンによって特徴付けられる水溶性シクロプロピル−1−エニル−プロパン酸ナトリウム塩(WS−CPD)を開示することが、本願発明のさらなる目的である。
水溶液の形態である場合に、浸漬、ブラッシング、噴霧、灌注、または、これらの組み合わせからなるグループから選択される手段によって植物の少なくとも一部分に対して適用されるWS−CPDを開示することが、本願発明のさらなる目的である。
上記のように定義したWS−CPDであって、界面活性水溶液の形態で提供されるWS−CPDを開示することが、本願発明のさらなる目的である。
本明細書に添付した図面を参照しつつ、実施例を示すことにより、本願発明をさらに詳細に説明する。
本願発明は、農作物において利用可能であり、しかも、室温で固体を呈し、また、長期安定性を示し、そして、水溶性に富んだ性質を有する植物エチレン応答の阻害剤であるWS−CPDを提供するための手段と方法を開示するものである。
本明細書で使用する「農作物」という用語は、一般名称であって、(園芸作物と定義されている)果実、野菜、および、花卉以外の大規模生産されるすべての農業作物とそれらの農学的分類に属するものを指す。より具体的には、農作物の用語は、(a)穀物および穀類作物―小麦、オート麦、大麦、ライ麦、米、トウモロコシ、穀実用モロコシ、(b)採種用マメ科植物―ピーナッツ、フィールドピー、ササゲ、大豆、ライマメ、緑豆、ヒヨコマメ、キマメ、ソラマメ、および、平豆、(c)飼料作物―牧草、マメ科植物、アブラナ科植物、および、干し草、穀物飼料、家畜用飼料、貯蔵牧草、または、青草のために栽培および使用されるその他の作物、(d)根菜作物―サツマイモ、および、キャッサバ、(e)繊維作物―綿花、亜麻、カラムシ、ケナフ、および、麻、(f)塊茎作物―ジャガイモ、(g)糖料作物―甜菜、甘蔗、(h)嗜好品作物―タバコ、および、(i)油料作物―菜種/キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、胡麻、亜麻仁、トウゴマ、および、エゴマを指すものであるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する「水溶液」という用語は、水を指すものである。このように定義はされているものの、WS−CPDは、粉末、錠剤、エアロゾル、乳濁液、懸濁液、水混和性溶液の形態、あるいは、WS−CPDを農作物に対して利用可能にすることができるその他の形態などの様々な実施態様で提供される。
モデル植物
この実験モデルは、(1)敏感で農業的に重要な植物の選択と、(2)「一般性」を示す標準的な生理学的システム、つまり、植物ホルモンに対する反応を含む。
このモデル調査のために代表的な実施例として選択した植物は、綿花(ゴシピウム ヒルスタム バルバデンセ エル.(Gossypium hirsutum barbadense L.))、タバコ(ニコチアナ タバカム バー. 「サムスン」(Nicotiana tabacum var. ’Samsun’))、および、小麦(トリティカム ツルギダム バー. 「グデラ」(Triticum turgidum var. ’Gdera’))であった。
このモデル調査では、4つの標準的な生理学的システムを採用した。
(1)離脱
これは、植物ホルモンの効果を研究するための高感度のモデルシステムである。エチレンは、離脱のプロセスを誘発するが、オーキシンは、そのプロセスを遅延させる。実験室にあっては、離脱箇所を含んだ植物器官の外植体を用いて実験系が構築される。エチレンに曝して離脱を誘発し、次いで、実験の最終段階にて、離脱した器官、通常は、葉身または葉柄のいずれかの数を計数し、そして、離脱の割合が算出されることとなる。果実の場合には、果実を支持する力の減少についての分析がされる。WS−CPD(本明細書に開示したエチレン作用性アンタゴニスト)を綿花で試験する場合には、植物全体または外植体に対して、市販の0.1%キネティック(商標)を界面活性剤として含むリン酸緩衝液(10〜20mM、pH 7.0)にこのアンタゴニストを溶解して得た溶液を噴霧して前処理を行い、そして、所定の時間、通常は、6〜24時間かけて放置してインキュベーションを行う。次いで、これら植物または外植体を、さらに24時間かけて、エチレンガス(5〜20μl/l)に対して曝す。そして、換気をした後に、これら植物または外植体を、制御された条件下で、所定の時間をかけてインキュベーションする。実験の最後に、離脱率が決定される。
これは、植物ホルモンの効果を研究するための高感度のモデルシステムである。エチレンは、離脱のプロセスを誘発するが、オーキシンは、そのプロセスを遅延させる。実験室にあっては、離脱箇所を含んだ植物器官の外植体を用いて実験系が構築される。エチレンに曝して離脱を誘発し、次いで、実験の最終段階にて、離脱した器官、通常は、葉身または葉柄のいずれかの数を計数し、そして、離脱の割合が算出されることとなる。果実の場合には、果実を支持する力の減少についての分析がされる。WS−CPD(本明細書に開示したエチレン作用性アンタゴニスト)を綿花で試験する場合には、植物全体または外植体に対して、市販の0.1%キネティック(商標)を界面活性剤として含むリン酸緩衝液(10〜20mM、pH 7.0)にこのアンタゴニストを溶解して得た溶液を噴霧して前処理を行い、そして、所定の時間、通常は、6〜24時間かけて放置してインキュベーションを行う。次いで、これら植物または外植体を、さらに24時間かけて、エチレンガス(5〜20μl/l)に対して曝す。そして、換気をした後に、これら植物または外植体を、制御された条件下で、所定の時間をかけてインキュベーションする。実験の最後に、離脱率が決定される。
(2)クロロフィル分解
これは、老化を研究するための標準的なモデルである。植物試料(植物全体、切除した葉、または、葉片)の前処理を行う。WS−CPDを、綿花、タバコ、および、小麦で試験する場合には、植物全体または外植体に対して、市販の0.1%キネティック(商標)を界面活性剤として含むリン酸緩衝液(10〜20mM、pH 7.0)にこのアンタゴニストを溶解して得た溶液を噴霧して前処理を行い、そして、所定の時間、通常は、6〜24時間かけて放置してインキュベーションを行う。次いで、これら植物または外植体を、さらに24時間かけて、エチレンガス(1〜100μl/l)に対して曝すか、あるいは、エテフォン(商標)(小麦、250〜750μl/l)を噴霧する。そして、換気をした後に、これら植物または外植体を、制御された条件下で、所定の時間をかけてインキュベーションする。実験の最後に、植物組織のジメチルスルホキシド(DMSO)抽出物を調製し、そして、分光光度分析法によって、DMSO抽出物でのクロロフィル含量が決定される。このクロロフィル含量は、生乾燥重量または表面積のいずかに基づいて報告される。
これは、老化を研究するための標準的なモデルである。植物試料(植物全体、切除した葉、または、葉片)の前処理を行う。WS−CPDを、綿花、タバコ、および、小麦で試験する場合には、植物全体または外植体に対して、市販の0.1%キネティック(商標)を界面活性剤として含むリン酸緩衝液(10〜20mM、pH 7.0)にこのアンタゴニストを溶解して得た溶液を噴霧して前処理を行い、そして、所定の時間、通常は、6〜24時間かけて放置してインキュベーションを行う。次いで、これら植物または外植体を、さらに24時間かけて、エチレンガス(1〜100μl/l)に対して曝すか、あるいは、エテフォン(商標)(小麦、250〜750μl/l)を噴霧する。そして、換気をした後に、これら植物または外植体を、制御された条件下で、所定の時間をかけてインキュベーションする。実験の最後に、植物組織のジメチルスルホキシド(DMSO)抽出物を調製し、そして、分光光度分析法によって、DMSO抽出物でのクロロフィル含量が決定される。このクロロフィル含量は、生乾燥重量または表面積のいずかに基づいて報告される。
(3)上偏生長
これも、植物でのエチレン効果を研究するための古典的方法の一つである。エチレンが誘発した葉の上偏生長の程度は、葉柄と茎枝または葉身との間の角度の変化によって決定される。インタクトな植物に対してエチレンを曝した後に、直立状態に生育した葉を、下向きに曲げる。葉柄と茎との間の角度値(度)は、エチレンの効果を測定するために用いられる。WS−CPDを、綿花および小麦に関して試験する場合には、植物全体に対して、市販の0.1%キネティック(商標)を界面活性剤として含むリン酸緩衝液(10〜20mM、pH 7.6)にこのアンタゴニストを溶解して得た溶液を噴霧して前処理を行い、そして、所定の時間、通常は、6〜24時間かけて放置してインキュベーションを行う。次いで、これら植物を、さらに24時間かけて、エチレンガス(綿花、5〜10μl/l)に対して曝すか、あるいは、エテフォン(商標)(小麦、250〜750μl/l)を噴霧する。そして、換気をした後に、これら植物を、制御された条件下で、所定の時間をかけてインキュベーションする。上偏成長効果は、葉身と葉柄との間の下方屈曲(綿花、図1〜3)、または、葉身と茎との間の下方屈曲(小麦、図31および32)の度数を測定することによって表されることとなる。
これも、植物でのエチレン効果を研究するための古典的方法の一つである。エチレンが誘発した葉の上偏生長の程度は、葉柄と茎枝または葉身との間の角度の変化によって決定される。インタクトな植物に対してエチレンを曝した後に、直立状態に生育した葉を、下向きに曲げる。葉柄と茎との間の角度値(度)は、エチレンの効果を測定するために用いられる。WS−CPDを、綿花および小麦に関して試験する場合には、植物全体に対して、市販の0.1%キネティック(商標)を界面活性剤として含むリン酸緩衝液(10〜20mM、pH 7.6)にこのアンタゴニストを溶解して得た溶液を噴霧して前処理を行い、そして、所定の時間、通常は、6〜24時間かけて放置してインキュベーションを行う。次いで、これら植物を、さらに24時間かけて、エチレンガス(綿花、5〜10μl/l)に対して曝すか、あるいは、エテフォン(商標)(小麦、250〜750μl/l)を噴霧する。そして、換気をした後に、これら植物を、制御された条件下で、所定の時間をかけてインキュベーションする。上偏成長効果は、葉身と葉柄との間の下方屈曲(綿花、図1〜3)、または、葉身と茎との間の下方屈曲(小麦、図31および32)の度数を測定することによって表されることとなる。
(4)小麦粒収穫量
これは、内因性エチレンの生産を増大せしめて、老化を誘発する干ばつなどの環境ストレスに単子葉植物を曝した場合の効果を見るための一般的な試験法である。過剰な内因性エチレンまたは外因性エチレンは、穀物収穫量の減少を招く老化を促進することとなる。この研究では、乳熟期IおよびIIの穂が形成されるまで、インタクトな植物を温室で生育させた。0.1%キネティック(商標)を界面活性剤として含むリン酸緩衝液(10mM、pH 7.6)にWS−CPDを溶解して得た溶液を、これら植物に対して噴霧した。
これは、内因性エチレンの生産を増大せしめて、老化を誘発する干ばつなどの環境ストレスに単子葉植物を曝した場合の効果を見るための一般的な試験法である。過剰な内因性エチレンまたは外因性エチレンは、穀物収穫量の減少を招く老化を促進することとなる。この研究では、乳熟期IおよびIIの穂が形成されるまで、インタクトな植物を温室で生育させた。0.1%キネティック(商標)を界面活性剤として含むリン酸緩衝液(10mM、pH 7.6)にWS−CPDを溶解して得た溶液を、これら植物に対して噴霧した。
綿花の幼苗
上偏生長
3週齢の苗木(図1〜3)に対して、WS−CPD(10〜300μg/ml)を噴霧した。24時間後に、これらの苗木を、閉環境(湿度85%、22℃、標準蛍光灯)に移し、そして、さらに24時間かけて、10μl/lのエチレンガスに曝した。この処置の最終段階において、これらの苗木を、さらに24時間かけて空気に曝した。葉柄の上偏生長に関するエチレン効果についての実証と、WS−CPDの完全な拮抗効果を、図2に示してある。WS−CPDは、エチレンが誘発した上偏生長に対して完全な拮抗作用を示しており、エチレン処理をした苗木は、実験期間中にわたって生育していた。10μg/mlおよび30μg/mlのWS−CPDでさえもが(図2および図4の各々に記載のように)、エチレンが誘発した葉の上偏生長を完全に覆したということが明白である。
3週齢の苗木(図1〜3)に対して、WS−CPD(10〜300μg/ml)を噴霧した。24時間後に、これらの苗木を、閉環境(湿度85%、22℃、標準蛍光灯)に移し、そして、さらに24時間かけて、10μl/lのエチレンガスに曝した。この処置の最終段階において、これらの苗木を、さらに24時間かけて空気に曝した。葉柄の上偏生長に関するエチレン効果についての実証と、WS−CPDの完全な拮抗効果を、図2に示してある。WS−CPDは、エチレンが誘発した上偏生長に対して完全な拮抗作用を示しており、エチレン処理をした苗木は、実験期間中にわたって生育していた。10μg/mlおよび30μg/mlのWS−CPDでさえもが(図2および図4の各々に記載のように)、エチレンが誘発した葉の上偏生長を完全に覆したということが明白である。
クロロフィル分解
3週齢の苗木に対して、10〜300μg/mlのWS−CPDを噴霧して、前処理をした。24時間後に、葉の外植体を調製し(図2および図3)、これらを、閉環境(湿度85%、22℃、標準蛍光灯)に移し、そこで、さらに24時間かけて、エチレン(10μl/l)に曝した。10μg/mlのWS−CPDで前処理をしたところ、エチレンが誘発したクロロフィル分解に対して完全な拮抗作用を示した。処理を施した植物での葉の葉身に残存していたクロロフィル含量は、未処理の対照でのクロロフィル含量と同じであった(図5および図6)。30μg/mlおよび100μg/mlで前処理を施した場合でも、未処理の対照と比較して、クロロフィル含量は、それぞれ、20%および28%増大していた(図6)。それより高濃度のWS−CPDでは、あまり効果的ではなかった。
3週齢の苗木に対して、10〜300μg/mlのWS−CPDを噴霧して、前処理をした。24時間後に、葉の外植体を調製し(図2および図3)、これらを、閉環境(湿度85%、22℃、標準蛍光灯)に移し、そこで、さらに24時間かけて、エチレン(10μl/l)に曝した。10μg/mlのWS−CPDで前処理をしたところ、エチレンが誘発したクロロフィル分解に対して完全な拮抗作用を示した。処理を施した植物での葉の葉身に残存していたクロロフィル含量は、未処理の対照でのクロロフィル含量と同じであった(図5および図6)。30μg/mlおよび100μg/mlで前処理を施した場合でも、未処理の対照と比較して、クロロフィル含量は、それぞれ、20%および28%増大していた(図6)。それより高濃度のWS−CPDでは、あまり効果的ではなかった。
葉柄の離脱
3週齢のインタクトな苗木を、WS−CPD(10〜300μg/ml)を用いて、上記した手順によって処理をした。標準的な処理手順の最終段階にて、茎と葉柄との間に離脱箇所を定めた外植体(図7)を、閉環境(湿度85%、22℃、標準蛍光灯)においてインキュベーションした。そうしたところ、予想通りに、エチレンは、葉柄の離脱率を増大していた。10〜30μg/mlの濃度のWS−CPDは、実験期間を通じて、離脱率を約20%減少させており、また、300μg/mlのWS−CPDで処理をした外植体の離脱率は、空気を用いた対照の処理群よりも小さかった。
3週齢のインタクトな苗木を、WS−CPD(10〜300μg/ml)を用いて、上記した手順によって処理をした。標準的な処理手順の最終段階にて、茎と葉柄との間に離脱箇所を定めた外植体(図7)を、閉環境(湿度85%、22℃、標準蛍光灯)においてインキュベーションした。そうしたところ、予想通りに、エチレンは、葉柄の離脱率を増大していた。10〜30μg/mlの濃度のWS−CPDは、実験期間を通じて、離脱率を約20%減少させており、また、300μg/mlのWS−CPDで処理をした外植体の離脱率は、空気を用いた対照の処理群よりも小さかった。
成熟した綿花植物
クロロフィル分解
若幼の葉、未成熟の葉、および成熟した葉を有する若枝(6ヶ月齢)を、成熟した植物から収穫し、近隣の圃場で生育させ、そして、上記した手順によって処理をした。10μg/mlのWS−CPDは、若幼の葉においてエチレンが誘発したクロロフィル分解に対して完全な拮抗作用を示したが(図9a)、高濃度(270μg/ml)の場合では、あまり効果的ではなかった(図10a)。成熟した葉(図9c)は、WS−CPDの拮抗効果に対する反応性が小さく、エチレンが誘発したクロロフィル分解を95%阻害するためには、高濃度のWS−CPD(90μg/mlおよび240μg/ml)を必要としていた。それよりも高濃度(例えば、480μg/l)の場合では、あまり効果的ではなかった(図10b)。
若幼の葉、未成熟の葉、および成熟した葉を有する若枝(6ヶ月齢)を、成熟した植物から収穫し、近隣の圃場で生育させ、そして、上記した手順によって処理をした。10μg/mlのWS−CPDは、若幼の葉においてエチレンが誘発したクロロフィル分解に対して完全な拮抗作用を示したが(図9a)、高濃度(270μg/ml)の場合では、あまり効果的ではなかった(図10a)。成熟した葉(図9c)は、WS−CPDの拮抗効果に対する反応性が小さく、エチレンが誘発したクロロフィル分解を95%阻害するためには、高濃度のWS−CPD(90μg/mlおよび240μg/ml)を必要としていた。それよりも高濃度(例えば、480μg/l)の場合では、あまり効果的ではなかった(図10b)。
葉柄の離脱
上記した(クロロフィル分解を測定するための)手順によって得た若枝(6ヶ月齢)に対して、10〜480μg/mlのWS−CPDを噴霧し、次いで、10μl/lのエチレンに曝した。これらの若枝から調製した葉の外植体(図11)を、閉環境(湿度85%、22℃、標準蛍光灯)においてインキュベーションした。10μg/mlおよび30μg/mlの用量で阻害剤を用いたところ、3日間のインキュベーションを終えた後に、離脱率は、20%減少していた。引き続いて90μg/mlのWS−CPDで処理をした場合の離脱率は、空気を用いた未処理の対照の離脱率よりも、わずかに小さかった。しかしながら、三つの濃度(10、30、および、90μg/ml)のWS−CPDで処理をしたすべての外植体は、5日目には、100%の離脱率に到達していたが、高濃度(240〜480μg/ml)で処理をした外植体については、同じ期間において、50%の離脱率にようやく届く状況であった(図12)。
上記した(クロロフィル分解を測定するための)手順によって得た若枝(6ヶ月齢)に対して、10〜480μg/mlのWS−CPDを噴霧し、次いで、10μl/lのエチレンに曝した。これらの若枝から調製した葉の外植体(図11)を、閉環境(湿度85%、22℃、標準蛍光灯)においてインキュベーションした。10μg/mlおよび30μg/mlの用量で阻害剤を用いたところ、3日間のインキュベーションを終えた後に、離脱率は、20%減少していた。引き続いて90μg/mlのWS−CPDで処理をした場合の離脱率は、空気を用いた未処理の対照の離脱率よりも、わずかに小さかった。しかしながら、三つの濃度(10、30、および、90μg/ml)のWS−CPDで処理をしたすべての外植体は、5日目には、100%の離脱率に到達していたが、高濃度(240〜480μg/ml)で処理をした外植体については、同じ期間において、50%の離脱率にようやく届く状況であった(図12)。
タバコの幼苗(発芽から6週間後)
葉の黄変
インタクトな苗木での老化プロセスの一部として、葉の葉身から緑色が徐々に抜けていき、そして、葉の色が、緑色から黄色へと変化する。この変化は、クロロフィル分析によって定量することができる。タバコの葉は、エチレンが誘発したクロロフィル分解に対して非常に敏感である。この感受性は、葉の成熟ともに増大する(図13)。若幼の葉は、エチレンに対して抵抗性を示すが、エチレン処理を行った後でも、葉の緑色には何らの変化も示さない(図13、15、および、16)。標準的な実験手順にしたがって、WS−CPDを噴霧して前処理を行い、その後、エチレン(10μl/l)に曝し、そして、制御された生育室(湿度85%、22℃、標準蛍光灯)において、さらにインキュベーションを行った。14μg/mlのWS−CPDは、成熟した葉においてのみ、エチレンが誘発した老化に対して拮抗作用を示した(図14〜17)。127μg/mlの濃度のWS−CPDも、若幼の葉において、わずかながらも効果を示した(図18)。エチレンの濃度を20μl/lにまで増大させると、成熟した葉において、葉の黄変が増強されたが(図19および図20)、14〜127μg/mlのWS−CPDで前処理を行った場合には、葉の黄変は顕著に阻害されていた(図21〜図23)。
インタクトな苗木での老化プロセスの一部として、葉の葉身から緑色が徐々に抜けていき、そして、葉の色が、緑色から黄色へと変化する。この変化は、クロロフィル分析によって定量することができる。タバコの葉は、エチレンが誘発したクロロフィル分解に対して非常に敏感である。この感受性は、葉の成熟ともに増大する(図13)。若幼の葉は、エチレンに対して抵抗性を示すが、エチレン処理を行った後でも、葉の緑色には何らの変化も示さない(図13、15、および、16)。標準的な実験手順にしたがって、WS−CPDを噴霧して前処理を行い、その後、エチレン(10μl/l)に曝し、そして、制御された生育室(湿度85%、22℃、標準蛍光灯)において、さらにインキュベーションを行った。14μg/mlのWS−CPDは、成熟した葉においてのみ、エチレンが誘発した老化に対して拮抗作用を示した(図14〜17)。127μg/mlの濃度のWS−CPDも、若幼の葉において、わずかながらも効果を示した(図18)。エチレンの濃度を20μl/lにまで増大させると、成熟した葉において、葉の黄変が増強されたが(図19および図20)、14〜127μg/mlのWS−CPDで前処理を行った場合には、葉の黄変は顕著に阻害されていた(図21〜図23)。
クロロフィル分解
若幼の苗木が有する若幼の葉(上葉)と成熟した葉(下葉)の双方に関して、クロロフィル含量の決定を行った(図24および図25)。エチレンで処理をした若幼の葉には、緑色の脱色は目視では確認できなかったが(図24)、空気で処理をした葉と比較して、それらのクロロフィル含量は17%減少をしていた(図25a)。成熟した葉では、エチレンは、クロロフィル含量を72%減少させていた(図25a)。14μg/mlのWS−CPDを噴霧して前処理を行ったところ、若幼の葉と成熟した葉において、エチレンが誘発したクロロフィル分解は、完全に拮抗されていたが(図25aおよび図25b)、高濃度の場合では、あまり効果的ではなかった。
若幼の苗木が有する若幼の葉(上葉)と成熟した葉(下葉)の双方に関して、クロロフィル含量の決定を行った(図24および図25)。エチレンで処理をした若幼の葉には、緑色の脱色は目視では確認できなかったが(図24)、空気で処理をした葉と比較して、それらのクロロフィル含量は17%減少をしていた(図25a)。成熟した葉では、エチレンは、クロロフィル含量を72%減少させていた(図25a)。14μg/mlのWS−CPDを噴霧して前処理を行ったところ、若幼の葉と成熟した葉において、エチレンが誘発したクロロフィル分解は、完全に拮抗されていたが(図25aおよび図25b)、高濃度の場合では、あまり効果的ではなかった。
若幼の小麦苗木の栄養生長
発芽から10日後に、最初の二枚の葉は、ほとんど生長しきって、葉の長さも最大になっていた。三枚目の葉は、その3日後に、葉の長さが最大となった(図26)。この期間において、これら苗木に対して継続的にエチレン(1μl/l)を曝したところ、三枚目の葉の長さは、空気を用いた対照にある同じ成熟した葉の長さと比較して、50%長くなっていた(図27)。10μl/lおよび100μl/lのエチレンを、これらの苗木に対して曝したところ、三枚目の葉の生長は、空気を用いた対照にある葉と比較して、それぞれ、50〜30%が阻害されていた(図28および図29)。さらに別の実験において、1.6〜20μl/lのエチレンを、これらの苗木に対して曝したところ、三枚目の葉の生長は、それぞれ、20〜35%が阻害されていた。発芽から10日後に、異なる濃度のWS−CPDを噴霧して前処理を行い、そして、24時間後に、これらの苗木に対して、エチレン (1.6〜40μl/l)を、さらに二日間かけて曝したところ、低濃度のWS−CPD(4および40μg/ml)だけが、三枚目の葉の生長についてのエチレンの阻害効果に対して拮抗作用を示し、そして、40μg/mlのWS−CPDが、1.6μl/lのエチレンの阻害効果を、100%拮抗する、ことが実証されていた(図30)。
出穂した小麦の葉の上偏生長
出穂段階の後(発芽から6ヶ月後)に、小麦に対して、エテフォン(商標)(750μl/l)を噴霧し、次いで、WS−CPD(15〜415μg/ml)を噴霧して前処理を行った。エテフォン(商標)処理に反応して、止め葉は、顕著な葉の上偏生長を示した。135および415μg/mlで前処理を行ったところ、一部の止め葉において、エテフォン(商標)が誘発をした葉の上偏生長は認められなかった(図31および図32)。
小麦での葉の黄変およびクロロフィル分解
出穂期間の後、これら穀物は、光合成産物を蓄積していた。この穀物での生長過程は、二つの段階、すなわち、乳熟期IおよびIIと、それに続く、乾燥段階から構成されている。これらの段階にあっては、 乳熟期Iで止め葉と葉IIでのクロロフィル含量が漸減しており、止め葉での245および260μg/100mg(図39)のクロロフィル含量が、それぞれ、乳熟期IIでの120および150μg(図43)へと漸減した。クロロフィルの漸減は、穂の包頴および籾殻でも検出がされており、乳熟期Iでの80および170μg(図40)が、それぞれ、乳熟期IIでの45および70μg/100mg(止め葉)へと漸減した(図44)。
発芽から6.5月後に、乳熟期Iにある植物に対して、エテフォン(商標)(250および750μl/l、それぞれを図39および図41に示した)を噴霧した。5〜6日後に、クロロフィル含量が顕著に減少し、止め葉で16〜21%、また、葉IIで21〜22%の減少が認められた。12〜62μg/mLのWS−CPDを用いて前処理をしたところ、エテフォン(商標)が誘発したクロロフィルの減少が有意に減少し、これは止め葉(葉I)において主に認められ、また、葉IIでも認められた。両方の実験において、WS−CPDで処理をした後のクロロフィル含量は、対照の植物と比較して、わずかに減少をしていた(図39および図41)。312μg/mlの濃度にまで高めたWS−CPDは、さらに効果的なものであって、250μl/lのエテフォン(商標)で処理をして誘発をした止め葉でのクロロフィル含量の減少に対しては、ほぼ完全な拮抗作用を示した(図39A)。415μg/mlの濃度にまで高めたWS−CPDについては、いずれのタイプの葉に対してもさほどの効果は認められず、エテフォン(商標)(750μl/l、図41)によって誘発されたクロロフィルの減少に対して僅かな拮抗作用を示すにすぎなかった。
250μl/lおよび750μl/lのエテフォンで、同じ植物を処理したところ、籾殻でのクロロフィル含量は、それぞれ、33%および28%が減少し、顕著な減量を示した(図40Aおよび図42A)。包頴でのクロロフィル含量は、上記した濃度のエテフォン(商標)を用いて、それぞれ、10%および40%が減少した(図40Bおよび図42B)。葉の事例と同様に、WS−CPD(62μg/ml)による前処理は、包頴および籾殻においてエテフォン(商標)(250μl/l)により誘発されたクロロフィル分解を完全に覆し、むしろ、処理を施していない対照の植物でのクロロフィル含量よりも増大したクロロフィル含量(それぞれ、60%および10%の増大)を有していた(図40Aおよび40B)。WS−CPD(45μg/ml)は、エテフォン(商標)(750μl/l)が誘発をした籾殻のクロロフィル含量の減少に対して顕著な拮抗作用を示したが(図42B)、包頴ではさほど効果的ではなかった(図42A)。
発芽から7ヶ月が経過して、最終段階に到達して乳熟期IIに至ってもなお、この穀物は柔らかであった。この段階において、未処理の葉でのクロロフィル含量は、約50%の減少を示しており(図43)、また、これらの葉は、止め葉および葉IIのクロロフィル含量について、それぞれ、33%および47%の減少を誘発するエテフォン(商標)(750μl/l)に対して、より感受性になっていた(図43)。クロロフィル分解についてのエテフォン(商標)(750μl/l)に対する包頴および籾殻の感受性は、葉の感受性よりもずっと小さく、対照の未処理の穂と比較しても、12%だけ小さいにすぎない。エテフォン(商標)(750μl/l)で処理をした葉でのクロロフィルの力価を減少させるものと考えられていたWS−CPD(15〜135μg/l)を植物に噴霧して前処理をしたが、効果的ではなかった(図43)。この場合、処理をした穂−籾殻でのクロロフィルの力価を、有意でなく3%だけ減少させるものであった(図43)。
乳熟期における穀物(乾燥種子)重量
発芽から6〜7ヶ月が経過した後に、乳熟期IおよびIIの双方における(砂地で生育した)穀物の生重量は、80mg/穀粒に至っており、両者に大差はなかった。エテフォン(商標)(750μl/l)は、粒重を、4%(乳熟期I)および18%(乳熟期II)減少させていた(それぞれ、図45および図46に記載してある)。乳熟期Iにおいて、エテフォン(商標)で誘発をした葉のクロロフィルの分解に対して顕著な拮抗作用を示したWS−CPD(135μg/ml)を用いて前処理をしたところ(図41)、双方の乳熟期において、エテフォン(商標)で誘発をした粒重の減少に歯止めがかかった(図45〜図47)。
粒重を生重量に基づいて表している図45〜図47に記載のデータから、乳熟期IおよびIIでの、WS−CPDが、エテフォン(商標)の効果に対して拮抗作用を示すことによって、穀物収穫量が、それぞれ、約5%および約16%増大していたことは明らかである。粒重分布(収穫した穂粒の総数に対するパーセンテージとして表したもの)を算出し、そして、エテフォン(商標)で処理をした植物について得た粒重分布と比較した場合にも、同じことが明らかとなっている。このデータ(図48)は、粒重の顕著な増大が、ほぼすべての大きさの穀物において認められたこと、そして、そのことは、空気を用いた対照の植物で認められた現象に似通っている、ことを明確に示している。
エテフォン(商標)がもたらす粒重の減少を回避する上で、80〜180μg/mlのWS−CPDが最良の結果をもたらすことを示した上記実験にしたがって、自然条件下で生育させた小麦の穀物収穫量に関する効果を検証するために、120μg/mlの濃度のWS−CPDを選択した。この実験では、砂地の温室で生育させた小麦を用いた。粒重は、収穫時、つまり、乾燥段階において決定をした。穂が直立した後に、乳熟期Iに移行した時点から、各グループの小麦に対して、処置間隔として8〜10日の期間を開けながら、WS−CPD(120μg/ml)を、一度、二度、三度、および、四度の回数で噴霧をした。
収穫時に、小麦の穂を乾燥したところ(発芽から7ヶ月後)、粒重は、約50%減少しており、また、その最終乾燥重量は、38〜41mg/穀粒であった(図49)。乳熟期IにおいてWS−CPDを一回だけ噴霧をした後であっても、全収穫量は、約18%増大しており(図50B)、そして、一ヶ月後に、乳熟期IIにおいて処理を施した場合に、一回の噴霧をした後の全収穫量は、約20%増大していたことが明らかとなった。乳熟期IIの後に、噴霧を繰り返した場合に利点を見い出すことはできず(図50B)、また、対照との比較(図50Aと図50Bとの比較)において、上記応答にあっては、最も大きな15個の穀粒の平均重量と、すべての穂粒の平均重量との間に差異は認められなかった。
対照の植物での粒重分布に照らして、各々の重量(mg/穀粒)に基づいて粒重分布(穀物の総数に対するパーセンテージとして表したもの)を計算した場合に、乾燥穀物の重量(すなわち、収穫量)が20%増大していること、特に、乳熟期IIにWS−CPDを一度噴霧した後の増大が顕著であることも明らかである。このデータは、ほとんどすべての大きさの穀物において、粒重の顕著な増大があったことを明確に示している(図51〜図53)。処理を施した植物の穂では、35mg/穀粒に満たない穀物は認められなかったが、処理を施していない穂では、30%以上の穀粒が、その重量を下回っていた(図51〜図53)。
他の実験では、小麦を、泥炭を主成分とする土壌を収容した450ml容量の植木鉢で栽培した。発芽から7ヶ月後の乳熟期IIにおいて、これら植物に対して、WS−CPD(120μl/l)を、一度、噴霧をした。これらの結果は、未処理の対照の植物での穀物重量よりも、穀物収穫量が15%増大していることを示す上記結果とも符合していた(図54)。粒重分布(穀物の総数に対するパーセンテージとして表したもの)を算出し、そして、対照の植物について得た粒重分布と比較した場合にも、このことが明らかとなっている。このデータは、粒重の顕著な増大が、ほぼすべての大きさの穀物において認められたことを改めて明確に示している(図55)。
WS−CPDの特徴
メタノール中のWS−CPDの13C{1H}、1H、および23Na{1H}−NMRスペクトルを、図56〜図58に示している。WS−CPDの13C{1H}NMRスペクトルでの6個のピークは、δc 4.27 (C6)、23.58 (C2)、34.90 (C3)、97.21 (C5)、120.18 (C4)、および、180.06 (Cl)として表されている。1H NMRでは、4個のピークが認められている(図57)。ピーク位置(δH)、断片、および、割り当ては、次の通りである。0.88(s, 2H, C6); 2.42 (t, 2H, C2); 2.75 (t, 2H, C3); および、6.52 (s, 1H, C5)。図58に示した23Na{1H}−NMRスペクトルは、δNaに、−2.46ppmの一つのシグナルを示しており、このことは、分子Iが、一つのタイプのナトリウム原子であることを確認するものである。
WS−CPD(負モード)の質量スペクトルを、図59に示してある。二つの主要なピークが観察されており、一方のものは、m/z = 111.0(C6H7O2−)にて、また、他方は、m/z = 244.8(C6H7O2−・NaC6H7O2)において出現していた。
IRスペクトル(図60)、紫外可視スペクトル(図61)、および、電位差滴定(図62)の結果のいずれもが、上記したWS−CPDの構造と符合するものであった。C1でのWS−CPDのIRピークは、1773cm−1であり、また、IRでのC=Oストレッチのピークと紫外可視ピークは、λmax206nmである。
WS−CPDは、25℃の水に対して高溶解性(≧400mg/ml)を示す(図63)。加熱をすると、265〜270℃から分解が始まるが、溶融はしない。図64に示したHPLC分析結果は、WS−CPDが、単一の純物質として生成されていることを、さらに実証している。
室温下では、WS−CPDのpKaは、4.5よりも大きい。よって、通常の使用条件下、例えば、pH7.6〜7.8の条件下にあっては、99%以上の化合物が、アニオン型で存在している。図65を参照すると、そこには、乳棒と擂り鉢で粉砕し、そして、バックグラウンドの無いシリコンディスクの浅い窪みに置かれたWS−CPD粉末のX線回折パターンが記載されている。このX線回折パターンは、リガク社のUltimaシールド管シータ−シータ回折計を用いて得たものであって、この機器は、1.6kWの電力レベル、0.02°のステップサイズ、10〜60°の角度範囲、および、0.5°/分の露光速度で稼動する。このX線回折パターンの分析は、ジェード8プログラム(MDI社)を用いて実施した。この回折パターンから、粉体物質は均質なものではなく、むしろ、構造的に相異なる三つの物質、つまり、非晶形、低品質の結晶形、および、結晶形の物質が混在していることがうかがえる。非晶形物質の存在は、2θ〜23°に出現する顕著な回折ピークによって表されている。この幅広いピークに重ね合わさっているものは、幾つかの明瞭なピークあって、これらは、結晶形の存在を指し示すものである。これらのピークは、2θ=10.6°、15.94°、28.42°、47.3°、および、56.16°において出現する。16.5°−19°、42°−46°の間にあるその他の回折ピークは、5つの明確なピークよりも有意に幅広であるが、幅広い回折ピークよりもずっと狭小であるので、これは、低品質の結晶形の存在を示している。結晶形の有用な微結晶サイズは、シェラーの式を用いて算出され、そして、300〜700Åの範囲であることが判明している。結晶形の規則性が保たれていないと、その微結晶サイズは、さらに小さくなる。上記粉末に含まれる三つの形態の相対量を定量したところ、不純物は認められなかった。以下の体積分率が測定された。非晶形が、57.5%、低品質の結晶形が、39.5%、それに、結晶形が、3%であった。用意された物質が、その他の物質よりも大きな平均原子番号を有している限りは、その体積分率は、本明細書に示したものよりも小さくなるであろう。
図66を参照すると、そこには、WS−CPD産物の化学分析の試験成績表が記載されている。WS−CPDの分析は、イスラエルのレホボトに所在するD−パーム・イノベイティブ・バイオファーマシューティカルズ社によって実施された。
小麦におけるWS−CPDの効果を、野外実験を通じてさらに研究を行った。その野外実験では、前記した温室実験で得た結果が確認され、また、これら野外実験の条件下では、最も効果的な処理方法が乳熟期Iでの一回の噴霧であること、さらに、機械的に脱穀して分離をすることで、正味の収穫量が約15±2.6%から約5〜6%にまで減少することが明らかとなった。
小麦を用いた野外実験
植物試料および実験計画
2008年12月に、イスラエルのベトダガンに所在する農業研究機関の火山センターの農場にある粘度成分をやや多く含んだ土壌に、冬小麦(トリティカム エストキシバン、 バー. ガリル(Ttriticum aestxvwn, var. Galil))を播いた。10月〜3月までの冬期の雨量は、515mmであった。干ばつに遭遇せずに、農作物は生育した。これら植物に対して、2度の殺虫剤の噴霧、すなわち、「チュネックス」(1リットル/エーカー)を11月に、そして、「オロ ターボ」(200 g/エーカー)を12月に噴霧をした。2009年3月中旬に、実験を開始した。6個のブロックを無作為に選択し、そして、各ブロックを、それぞれ2平方メーターの4つの処理区画に分けた(図67Aの右欄と左欄)。未処理植物の2メーター幅の区画を、ブロック間の境界線と定めた(図67Aの中央欄)。以下の処理を実施した。1.対照、2.「乳熟」期IでのWS−CPDの噴霧(2009年3月30日)、3.「乳熟」期IIでのWS−CPDの噴霧(2009年4月17日)、4.上記した連続する2度のWS−CPDの噴霧(2009年3月30日および2009年4月17日)。
2008年12月に、イスラエルのベトダガンに所在する農業研究機関の火山センターの農場にある粘度成分をやや多く含んだ土壌に、冬小麦(トリティカム エストキシバン、 バー. ガリル(Ttriticum aestxvwn, var. Galil))を播いた。10月〜3月までの冬期の雨量は、515mmであった。干ばつに遭遇せずに、農作物は生育した。これら植物に対して、2度の殺虫剤の噴霧、すなわち、「チュネックス」(1リットル/エーカー)を11月に、そして、「オロ ターボ」(200 g/エーカー)を12月に噴霧をした。2009年3月中旬に、実験を開始した。6個のブロックを無作為に選択し、そして、各ブロックを、それぞれ2平方メーターの4つの処理区画に分けた(図67Aの右欄と左欄)。未処理植物の2メーター幅の区画を、ブロック間の境界線と定めた(図67Aの中央欄)。以下の処理を実施した。1.対照、2.「乳熟」期IでのWS−CPDの噴霧(2009年3月30日)、3.「乳熟」期IIでのWS−CPDの噴霧(2009年4月17日)、4.上記した連続する2度のWS−CPDの噴霧(2009年3月30日および2009年4月17日)。
処理
WS−CPD処理溶液は、120μg/mlのWS−CPDを含む10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH 7.6)と0.1%の「キネティック」界面活性剤とを含んでいた。携帯式噴霧器(ACL−7、英国)を用いて、噴霧(約0.8リットル/2平方メートル)を行った。対照には、WS−CPDを含んでいない処理溶液を噴霧した。この噴霧は、「止め葉」の下にある二番目の葉から、その上の穂全体を覆うように、つまり、植物の上部を処理溶液が覆うように作業がされる。
WS−CPD処理溶液は、120μg/mlのWS−CPDを含む10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH 7.6)と0.1%の「キネティック」界面活性剤とを含んでいた。携帯式噴霧器(ACL−7、英国)を用いて、噴霧(約0.8リットル/2平方メートル)を行った。対照には、WS−CPDを含んでいない処理溶液を噴霧した。この噴霧は、「止め葉」の下にある二番目の葉から、その上の穂全体を覆うように、つまり、植物の上部を処理溶液が覆うように作業がされる。
種子の発生の確認
「乳熟」期Iから種子の完成に至るまでの種子の発生の経過を見るために、境界区画から200個の穂の集団を採取した。2009年3月30日(「乳熟」期I)、2009年4月17日(「乳熟」期II)、および、2009年5月19日(完成種子)に、試料を採取した。これらの穂を実験室に持ち込み、オーブン(60℃)にて、完全に乾燥するまで、加熱を続けた。乾燥を終えた後に、各穂から種子を分離して、計数を行い、そして、各穂での平均種子重量を決定するために、それらの重量を記録した。処理ごとに同じ平均種子重量を有する穂の数を、穂の総数に対するパーセンテージとして示した。
「乳熟」期Iから種子の完成に至るまでの種子の発生の経過を見るために、境界区画から200個の穂の集団を採取した。2009年3月30日(「乳熟」期I)、2009年4月17日(「乳熟」期II)、および、2009年5月19日(完成種子)に、試料を採取した。これらの穂を実験室に持ち込み、オーブン(60℃)にて、完全に乾燥するまで、加熱を続けた。乾燥を終えた後に、各穂から種子を分離して、計数を行い、そして、各穂での平均種子重量を決定するために、それらの重量を記録した。処理ごとに同じ平均種子重量を有する穂の数を、穂の総数に対するパーセンテージとして示した。
収穫
種子が完全に形成されるに至った本実験の最終段階(2009年5月19日)で、六つのすべてのグループから穂を収穫し、計数を行い、そして、温室内のテーブル上に置いて、そこで、12日間かけて、完全に乾燥させた(図67B)。
種子が完全に形成されるに至った本実験の最終段階(2009年5月19日)で、六つのすべてのグループから穂を収穫し、計数を行い、そして、温室内のテーブル上に置いて、そこで、12日間かけて、完全に乾燥させた(図67B)。
手作業での種子の分離
収穫を終えた後に、乾燥した100個の穂を無作為に採取し、各区画(n=6)に分けた。穂ごとに種子を分離し(図67Cおよび図67D)、計数を行い、そして、それらの重量を決定した。各々の穂についての平均種子重量を算出するために、各々の穂が有する種子重量を、一つの穂が有する種子の数で割った。処理方法別に同じ平均種子重量を有する穂の数を、穂の総数に対するパーセンテージとして表した。
収穫を終えた後に、乾燥した100個の穂を無作為に採取し、各区画(n=6)に分けた。穂ごとに種子を分離し(図67Cおよび図67D)、計数を行い、そして、それらの重量を決定した。各々の穂についての平均種子重量を算出するために、各々の穂が有する種子重量を、一つの穂が有する種子の数で割った。処理方法別に同じ平均種子重量を有する穂の数を、穂の総数に対するパーセンテージとして表した。
機械的脱穀による種子の分離
各実験区画に残存している乾燥した穂を計数し、次いで、それらの包頴および籾殻から機械的に脱穀して分離を行い(クルトペルツ社、ドイツ)、そして、それらの乾燥重量を記録した(g/区画)。機械的脱穀を行った対照と手作業による分離を行った対照との間での収穫量を比較するために、各方法で得た200個の種子を無作為に採取した。
各実験区画に残存している乾燥した穂を計数し、次いで、それらの包頴および籾殻から機械的に脱穀して分離を行い(クルトペルツ社、ドイツ)、そして、それらの乾燥重量を記録した(g/区画)。機械的脱穀を行った対照と手作業による分離を行った対照との間での収穫量を比較するために、各方法で得た200個の種子を無作為に採取した。
種子の発生の確認
穂から手作業で分離をした後に、自然に成熟する間における未処理の植物での種子重量の分布(図68)は、「乳熟」期Iと「乳熟」期IIとの間、それに、「乳熟」期IIと成熟期との間において、すべての種子サイズにおいて、顕著な種子重量の増大があったことを示していた。「乳熟」期Iと「乳熟」期IIとの間で、平均種子重量は、41%の増大が認められており、そして、「乳熟」期IIと成熟期との間では29%の増大であった。
穂から手作業で分離をした後に、自然に成熟する間における未処理の植物での種子重量の分布(図68)は、「乳熟」期Iと「乳熟」期IIとの間、それに、「乳熟」期IIと成熟期との間において、すべての種子サイズにおいて、顕著な種子重量の増大があったことを示していた。「乳熟」期Iと「乳熟」期IIとの間で、平均種子重量は、41%の増大が認められており、そして、「乳熟」期IIと成熟期との間では29%の増大であった。
一つの穂における種子重量と種子数
未処理の植物から無作為に収穫された220個の穂を保有する未処理区画において、「乳熟期II」に記録がされた種子数(種子数/穂)と種子重量(mg/種子/穂)との関連を検討したところ、種子数/穂については、(種子数/穂の最大値に対する種子数/穂の最小値の比率を算出したところ)約3.75倍の増大が認められたが、平均種子重量/穂については、約1.5倍の変化しか認められなかった(図69)。このような関連性は、平均種子重量/穂の増大と種子数/穂との関連性についての試験をした場合にも、顕著に認められた。これらデータは、種子数の顕著な増大が、種子重量の顕著な減少とは付随的に関連するものではない、ことを明確に示していた(図70)。
未処理の植物から無作為に収穫された220個の穂を保有する未処理区画において、「乳熟期II」に記録がされた種子数(種子数/穂)と種子重量(mg/種子/穂)との関連を検討したところ、種子数/穂については、(種子数/穂の最大値に対する種子数/穂の最小値の比率を算出したところ)約3.75倍の増大が認められたが、平均種子重量/穂については、約1.5倍の変化しか認められなかった(図69)。このような関連性は、平均種子重量/穂の増大と種子数/穂との関連性についての試験をした場合にも、顕著に認められた。これらデータは、種子数の顕著な増大が、種子重量の顕著な減少とは付随的に関連するものではない、ことを明確に示していた(図70)。
図67を参照すると、そこには、実験計画とデータ収集が示されている。A.6個のブロックを無作為に選択し、そして、各ブロックを、それぞれ2平方メーターの4つの処理区画に分けた(右欄と左欄)。2メーター幅の区画を、ブロック間の境界線と定めた(中央欄)。B.各植物(区画)が個別に回収され、計数が行われ、そして、温室内のテーブル上に置かれて、そこで、12日間かけて、完全に乾燥させた。C.手作業での分離のための準備が整った穂。D.穂、包頴、および、籾殻からの種子の分離。
図68を参照すると、そこには、「乳熟」期Iから成熟期に至る間の種子の生育動態が示されている。各生育段階にある同じ平均種子重量(mg/種子)を有する200個の穂が有している種子数を計数し、そして、全穂数に対するパーセンテージとして表した。
図69を参照すると、そこには、平均種子数/穂の増大と種子重量との関連性が示されている。この関連性とは、未処理区画において、「乳熟期II」に記録がされた種子数/穂の増大と種子重量(mg/種子)との間の関連性である。
図70を参照すると、そこには、平均種子重量/穂の増大と種子数の増大との関連性が示されている。この関連性とは、未処理区画において、「乳熟期II」に記録がされた種子重量/穂の増大とその種子数との間の関連性である。
図71を参照すると、そこには、機械的に脱穀および分離した種子の収穫量(g/区画)に関するWS−CPDの効果が示されている。出穂した後に、植物を無作為に6つのグループに分け、そして、二つの種子の発生期;a.「乳熟」期I(2009年3月30日)とb.「乳熟」期II(2009年4月17日);および、c.乳熟期IおよびII(2009年3月30日および2009年4月17日)にて、WS−CPD(120μg/ml;リン酸カリウム緩衝液、pH 7.6、10mM;「キネティック」、0.1%)を植物に対して噴霧した。対照には、WS−CPDを含まない処理溶液を噴霧した。(A)区画あたりの穂の総数は、収穫時に計数をした。(B)機械的に脱穀および分離した種子の区画あたりの種子重量。(C)WS−CPDで処理をした植物の収穫量であって、対照に対するパーセンテージとして表している。
図72を参照すると、そこには、手作業で収穫を行った際の収穫量(g/100個の穂)に関するWS−CPDの効果が示されている。(A)収穫重量/100個の穂。(B)収穫重量/100個の穂であって、対照に対するパーセンテージとして表している。
図73を参照すると、そこでは、機械的に脱穀をした対照の種子と手作業で分離をした対照の種子との間での種子重量の比較を示している。
図74を参照すると、そこには、手作業で分離をした種子の重量(g/種子)に関するWS−CPDの効果が示されている。(A)種子重量。(B)種子重量であって、対照に対するパーセンテージとして表している。
図75を参照すると、そこには、種子重量/穂の分布に関するWS−CPDの効果が示されており、「乳熟」期Iにあるすべての穂に対するパーセンテージとして表している。同じ種子重量(mg)を有する100個の穂に含まれる穂数を計数し、そして、全穂数に対するパーセンテージとして表した。
図76を参照すると、そこには、種子重量/穂の分布に関するWS−CPDの効果が示されており、「乳熟」期IIにあるすべての穂に対するパーセンテージとして表している。同じ平均種子重量(mg)を有する100個の穂に含まれる穂数を計数し、そして、全穂数に対するパーセンテージとして表した。
最後に、図77を参照すると、そこには、種子重量/穂の分布に関するWS−CPDの効果が示されており、「乳熟」期Iおよび「乳熟」期IIにあるすべての穂に対するパーセンテージとして表している。同じ平均種子重量(mg)を有する100個の穂に含まれる穂数を計数し、そして、全穂数に対するパーセンテージとして表した。
収穫量に関するWS−CPDの効果
WS−CPDによるこの効果は、a)各実験区画での収穫量(g/区画)を算出し、そして、b)各実験区画から無作為に選択をした100個の穂の乾燥収穫重量(g/100個の穂)を算出する、という二つの方法によって研究がされている。そのデータを示す。
WS−CPDによるこの効果は、a)各実験区画での収穫量(g/区画)を算出し、そして、b)各実験区画から無作為に選択をした100個の穂の乾燥収穫重量(g/100個の穂)を算出する、という二つの方法によって研究がされている。そのデータを示す。
「乳熟」期Iまたは「乳熟」期IIにおいて、WS−CPDを噴霧した区画の間での全穂数(360〜450個の穂/区画)についての統計的ばらつきが比較的に大きい(SE 約±10%)にもかかわらず(図71A)、穂から機械的脱穀によって分離をした種子の収穫量(図71B)は、未処理の対照(図71C)と比較して、それぞれ、約5%および約8%増大していた。「乳熟」期I+IIにおいて、二回にわたってWS−CPDを噴霧してはみたものの、二つの「乳熟」期の各々に一回の噴霧を行った場合よりも有利な効果は認められなかった。
各処理において、手作業で分離をした100個の穂の収穫量を記録したところ(図72A)、「乳熟」期IでWS−CPDを噴霧することで、対照と比較して、約15±2.6%もの顕著な収穫量の増大が認められた(図72B、g/100個の穂)が、「乳熟」期IIで噴霧をした場合には、収穫量の増大は、わずか約8%に止まっていた。「乳熟」期I+IIにおいて、二回にわたって噴霧してはみたものの、「乳熟」期Iに一回だけの噴霧を行った場合よりも、有利な効果は認められなかった(図72Aおよび図72B)。上述のデータは、WS−CPDで処理をした植物の収穫量の増大が、手作業で分離した種子と比較すると、機械的脱穀によって分離した種子よりも小さかったことを示している。機械的脱穀分離装置の強風によって小さな種子が巻き上げられてしまい、それらを損失することに起因して、異なる結果を得るに至っている。この結論は、機械的に脱穀・分離した種子の平均種子重量が、手作業で分離をした種子の平均種子重量よりも大きかったことに基づくものである(図73)。
WS−CPDで処理をした植物の収穫量の増大は、平均種子重量の増大に起因するものであった(図74A)。「乳熟」期Iで一度の噴霧を行ったところ、種子重量は、約15%増大していた(図74B)。後に、「乳熟」期IIでも噴霧を行い、そして、二度の噴霧とした場合でも、同様の結果しか得られなかった。このことは、重量/100個の穂として収穫量を計算しても(図72A)、あるいは、平均重量に基づいて収穫量を計算しても(図74A)、「乳熟」期I+IIにおいて、二回にわたって噴霧してみたところで、「乳熟」期Iに一度だけ噴霧を行った場合よりも有利な効果は認められなかった、ということを明示する証拠となっている。
成熟期での種子重量の分布
収穫量の増大に関するWS−CPDの効果をさらに評価するために、「乳熟」期I(図75)、「乳熟」期II(図76)、および、両方の段階(図77)での処理について、種子重量に対する種子数の分布を算出した。得られた分布曲線は、所定の重量の種子の種子数に関するWS−CPDの効果を示すものであって、試験を行った全穂数に対するパーセンテージとして表した。処理をした植物から得たすべての種子は、各計量群での種子数に関係なく、対照の植物から得たすべての種子よりも重かった。換言すれば、最軽量の種子群から最重量の種子群に至るまで、WS−CPDを噴霧して処理をした穂から得られた種子は、対照の穂から得た種子よりも常に顕著に重かった(図73および図74)。さらに、二度の噴霧を行って得られる結果が、一度目または二度目の噴霧のいずれかを行った後に得られる結果と非常に近似していたことも明白である(図77)。
収穫量の増大に関するWS−CPDの効果をさらに評価するために、「乳熟」期I(図75)、「乳熟」期II(図76)、および、両方の段階(図77)での処理について、種子重量に対する種子数の分布を算出した。得られた分布曲線は、所定の重量の種子の種子数に関するWS−CPDの効果を示すものであって、試験を行った全穂数に対するパーセンテージとして表した。処理をした植物から得たすべての種子は、各計量群での種子数に関係なく、対照の植物から得たすべての種子よりも重かった。換言すれば、最軽量の種子群から最重量の種子群に至るまで、WS−CPDを噴霧して処理をした穂から得られた種子は、対照の穂から得た種子よりも常に顕著に重かった(図73および図74)。さらに、二度の噴霧を行って得られる結果が、一度目または二度目の噴霧のいずれかを行った後に得られる結果と非常に近似していたことも明白である(図77)。
Claims (17)
- 前記Mが、ナトリウムである請求項1に記載の方法。
- 前記溶液が、水溶液である請求項1に記載の方法。
- 前記溶液を適用する工程が、(a)前記少なくとも一つの植物と前記溶液との接触、(b)前記溶液への前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分の浸漬、(c)前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対する前記溶液の噴霧、(d)前記少なくとも一つの植物に対する前記溶液の灌注、(e)前記溶液を用いた前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分のブラッシング、および、(f)これらの組み合わせ、からなるグループから選択された所定の技術によって前記溶液を適用する別の工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
- 前記エチレン応答が、老化、植物の葉柄の離脱、および、クロロフィル分解からなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
- 前記農作物が、穀物、マメ科植物、油脂生産植物、繊維生産植物、および、タバコからなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
- 前記穀物が、小麦、大麦、米、トウモロコシ(コーン)、および、オート麦からなるグループから選択される請求項6に記載の方法。
- 前記マメ科植物が、大豆、エンドウ豆、落花生、および、豆類からなるグループから選択される請求項6に記載の方法。
- 前記油脂生産植物が、ヒマワリ、ベニバナ、トウゴマ、亜麻、胡麻、エゴマ、および、菜種からなるグループから選択される請求項6に記載の方法。
- 前記繊維生産植物が、綿花、および、麻からなるグループから選択される請求項6に記載の方法。
- 前記エチレン応答の阻害が、(a)収穫量の増大、(b)葉柄の離脱率の減少、(c)葉のクロロフィル含量の分解率の減少、(d)止め葉の老化の遅延、(e)穂の緑色器官の老化の遅延、および、(f)これらの組み合わせ、からなるグループから選択された差異によって明白となり、前記差異が、前記エチレン応答が阻害されていない植物と比較して測定される請求項1に記載の方法。
- 界面活性WS−CDP含有水溶液を得るに十分な量の界面活性剤を加える別の工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
- 前記Mが、ナトリウムである請求項13に記載の方法。
- 前記溶液が、水溶液である請求項13に記載の方法。
- 前記農作物が、葉菜、香辛料生産植物、および、薬草からなるグループから選択される請求項13に記載の方法。
- 前記溶液を適用する工程が、(a)前記少なくとも一つの植物と前記溶液との接触、(b)前記溶液への前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分の浸漬、(c)前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分に対する前記溶液の噴霧、(d)前記少なくとも一つの植物に対する前記溶液の灌注、(e)前記溶液を用いた前記少なくとも一つの植物の少なくとも一部分のブラッシング、および、(f)これらの組み合わせ、からなるグループから選択された所定の技術によって前記溶液を適用する別の工程をさらに含む請求項13に記載の方法。
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