ローラチェーン用のランダムスプロケットが知られている。本出願に参考として組み込まれている米国特許第6,155,943号明細書には、着座ローラの間の弦の寸法を一定に維持しつつローラの半径方向着座位置を変えることによってスプロケット上のローラ位置を変調するランダムスプロケットを有するローラチェーン及びスプロケット駆動装置が開示されている。スプロケット歯の間の歯底部は、公称半径、最大半径及び最小半径の間で変化する半径を有する。この変化又はランダム化は、従来のランダムスプロケットによる高い衝撃の負の影響を回避しつつ、ノイズ変調効果をもたらすように意図されている。
チェーンのスパン長さの変化を最小にするような向きにされたローラチェーンスプロケットも知られている。本出願に参考として組み込まれている米国特許第6,213,905号明細書には、半径方向の着座位置が異なる少なくとも2つのスプロケットを有するローラチェーン及びスプロケット駆動装置が開示されている。スプロケットの相対的な向きは、良好な動的作用を駆動装置に与えるように調整される。このことは、スパン変化を最小に抑えることを含んでおり、各々のチェーンスパンが他のスパンと異なって位相調整されるように最大のスパン変化をもたらす。
同様に、等しく離間した歯を有する従来のスプロケット用のエラストマー製クッションリングが知られている。米国特許出願公開第2003/0176251号明細書には、クッションリングをスプロケット本体に取り付ける方法が開示されており、この方法は、クッションリングの開口部が、クッションリングを通してスプロケット本体の非円形フランジの通路を収容する形状に変形されるように、クッションリングに力を加えることを含む。クッションリングの開口部を通してスプロケット本体の非円形フランジを挿入した後、クッションリングがフランジとスプロケット本体の他の部分との間に捕捉されるように、変形力がクッションリングから解放される。スプロケット組立体は、それぞれの非円形フランジによって捕捉された少なくとも1つ、典型的に2つのクッションリングを含む。
米国特許出願公開第2002/0169044号明細書には、ハブと、ハブから半径方向外側に突出する複数の歯とを有するスプロケットが開示されている。少なくとも1つのクッションリングが歯の隣に配置され、クッションリングが、横方向の溝によって互いに分離された複数の圧縮パッドを画定する。圧縮パッドの各々は、円周方向の中間点の周りに対称に画定される。スプロケットの一部が対称の歯間隔を有する場合、クッションリングは、逆向きの第1及び第2の回転方向に同じように動作できる。一構成では、圧縮パッドの各々は、前側端及び後側端を有する平坦な外側面を含み、この場合、前側端及び後側端は、スプロケットが回転するハブの中心から共通の半径方向距離に配置される。スプロケットの歯の空間は、対称でも非対称でもよく、歯底面を除去してもよい。スプロケットは、ハブの周りにランダムに分布された複数の歯形状を含む。
米国特許第6,179,741号明細書及び米国特許第6,371,875号明細書には、各々が係合フランク及び非係合フランクを有するスプロケット歯を有するローラチェーンスプロケットが開示されている。スプロケットの第1の歯の係合フランクは第2の歯の非係合フランクと協働して、係合フランクと非係合フランクとの間に延びる歯底面を有する歯の空間を画定する。歯底面は、第1の歯底面部分の円弧中心から延びる第1の半径によって画定された第1の歯底面部分を有する。クッションリングは、スプロケットの第1の面に取り付けられ、交互に配置されたいくつかの圧縮パッド及び溝を有する。第1の溝は、第1の溝部分の円弧中心から延びる第2の半径によって画定された第1の溝部分を有する。第1の溝部分の円弧中心は、スプロケットの中心と第1の歯底面部分の円弧中心との間に延びる半径方向ラインに少なくとも隣接して位置決めされる。第1の圧縮パッドは、後側縁に対し半径方向内側に離間される前側縁によって画定された傾斜した外側面を有する。同様に、前側縁は、第1の歯の係合フランクから半径方向内側に位置決めされ、後側縁は、第1の歯の非係合フランクから半径方向内側に位置決めされる。
以上のように、上に挙げた従来技術のスプロケット歯の角度間隔は反復的であり、360度をスプロケット歯数で除したものに等しい。反復的なスプロケット歯の間隔は、スプロケット歯数に関係する次数を有する望ましくないチェーン係合ノイズを生じることが知られている。ランダム歯スプロケットは、スプロケット歯の不規則な角度間隔及び変化するピッチ半径の両方を有し、これにより、反復的なチェーン係合ノイズの次数が分断される。
第1の組の実施形態では、スプロケットは、スプロケット歯の幾何学的形状の輪郭に実質的に従う輪郭を有するクッションリングを含むランダム歯スプロケットである。図1を参照すると、ランダム歯スプロケット10は、その円周上に円周方向に分布された1組の歯12を含む。ランダム歯スプロケット10は、図2〜図8に示したように、ローラチェーン13と関連して使用されることが好ましい。図1〜図8のランダム歯スプロケットは、使用中のスプロケットの時計回りの回転について、ここで説明するが、図1〜図8の幾何学的形状は、本発明の趣旨の範囲内で反時計回りの回転でも使用し得る。ランダム歯スプロケット10は、第1の歯底半径を有する複数の歯底部と、第1の歯底半径よりも大きな第2の歯底半径を有する複数の歯底部とを含む。図1〜図9の実施形態では、第1の歯底半径を有する歯底部は、ランダム歯スプロケット10の周縁の周りで、予め定められたパターンで、第2の歯底半径を有する歯底部と共にランダムに配置される。ランダムに配置されることとは、パターンが、第1及び第2の半径の間の純粋な交互パターンでなく、第1及び第2の半径の間で互い違いに配置されることを意味する。ランダム歯スプロケットは、参考として本出願に組み込まれている米国特許第6,155,943号明細書に詳細に記載されている。ランダムスプロケットは、歯底部を配置するための2つ以上の半径を有する。好ましくは、図2〜図8の番号1、2と3によって示されているように、3つの歯底部が使用される。
ローラチェーン13のローラが歯の組12の間で着座部から着座部に移動するとき、ローラが着座する半径方向位置は、最大半径から公称半径に最小半径まで変化する。スプロケットの角度変位は、1つの着座部のローラの中心と、隣接する着座部のローラの中心との間の角度距離である。角度変位は、ランダム歯スプロケット10の周りで着座部から着座部に効果的に変更される。ローラチェーン13は、チェーンピン及びブシュリンクを含む。
クッションリングのクッション材料14は、ランダム歯スプロケット10の少なくとも一方の側面に接着によって取り付けられることが好ましい。クッション材料14の輪郭は、ローラチェーン13のピンリンク及びブシュリンクと、予め定められた干渉量を提供する。チェーンピン及びブシュリンクは、チェーン13とスプロケットとの係合中にエラストマー材料14を圧縮する。エラストマー材料14は、チェーンローラ又はブシュ係合の衝撃力を低減し、これによって、ノイズが低減されかつローラ/ブシュの疲労寿命が延ばされる。クッションリングは、様々な耐熱性及び耐油性の非ハロゲン合成ゴム、水素処理されたニトリルブタジエンゴム(HNBR)、部分的に又は完全に水素処理されたアクリロニトリルブタジエンゴム、又はポリアクリレート(ACM)を含み得るが、それらに限定されないエラストマー材料を含む。
クッションリングのエラストマー材料14は、輪郭付き縁部又は円周16を有する。輪郭付き縁部16の幾何学的形状は、各々のチェーン13の係合がチェーンピンリンク及びブシュリンクと、予め定められた量の完全に係合されたチェーン干渉を有するように、ランダムスプロケット歯12の不規則な幾何学的形状に従う。輪郭付き縁部16は、チェーンの各々の着座時に実質的に等価のチェーン干渉を提供するように設計される。輪郭付き縁部16の幾何学的形状はまた、チェーンがスプロケット10と係合を始めまた終えるときにチェーン干渉の速度を変化させるように設計されることが好ましい。したがって、輪郭付き縁部16は、様々な幾何学的形状又は輪郭を有してもよい。例えば、図1の第1の輪郭付きの縁部16、図2の第2の輪郭付きの縁部16a、図3の第3の輪郭付き縁部16b、図4の第4の輪郭付き縁部16c、図5の第5の輪郭付き縁部16d、図6の第6の輪郭付き縁部16e、図7の第7の輪郭付き縁部16f、及び図8の第8の輪郭付き縁部16gを参照されたい。輪郭付き縁部16の様々な形状は、スプロケット及びチェーン係合システムを調整するために使用されることが好ましい。ノイズ・振動・耳障り感(NVH)レベルの向上及び最適化を達成するために、同時に、チェーン荷重の増大、又はクッションリングを圧縮するために必要なチェーン13の係合力から設定されるエラストマー材料14の耐久性若しくは圧縮のような負の効果をいずれも最小にするために、調整が必要であり得る。クリアランスリリーフの輪郭は、各々の干渉幾何学的形状に隣接して位置決めされることが好ましい。各々の隣接する干渉リリーフは、偏向したクッションリング材料14、特に輪郭付き縁部16の部分を受け入れるための空間を提供する。輪郭付き縁部16の干渉の幾何学的形状及び量、ならびに輪郭付き縁部16のクリアランスリリーフの幾何学的形状及び量は、最適なシステム性能を達成するために変更してもよい。図1〜図9からわかるように、様々なクッションリングの幾何学的形状は、チェーンがスプロケットと係合しまた係合から離れるときの干渉速度、ならびに完全に係合されたチェーンとの干渉全体に影響を及ぼす。輪郭付きのクッション材料縁部16〜16gは、ランダムスプロケットの第1の半径、第2の半径、及び第3の半径に円周方向に従う不均一な縁部を有することが好ましい。
図9の断面図に示したような輪郭付き縁部16は、第1の厚さ20と、ランダム歯スプロケット10の反対側の、第1の厚さとは異なる第2の厚さ22とを有し得る。第1の厚さ20及び第2の厚さ22は、スプロケット10の上のチェーン13の許容可能な側面から側面の移動範囲内で、チェーン13のブシュリンクプレートとピンリンクプレートとの十分な接触を可能にする程度に十分な幅を有することが好ましい。ランダム歯スプロケット10のフランジ内に1組の穴を設けて、クッション材料14がランダム歯スプロケット10を通過できるようにしてもよい。
少なくとも2つの半径がランダム歯スプロケット10に設けられる。第3の半径を設けてもよい。図2〜図8に示したように、3つの半径の間の1つの関係は、半径3の長さが半径2よりも大きく、半径2の長さが半径1よりも大きいことである。ランダム歯スプロケット10の幾何学的形状は、各々のローラの着座時に、予め定められた実質的に等価量のチェーン干渉及びクッションを提供するために、3つの半径の間の関係に実質的に従うことが好ましい。
着座ローラの間のピッチ距離又は弦の長さがスプロケットの周りで好ましくは一定のままであることに留意すべきである。弦の長さを一定に維持することにより、歯に対するローラの衝撃荷重が低減される。歯ごとに着座位置を変更することにより、連続する衝撃のタイミングの変調が行われる。この変調により、チェーン駆動装置によって生じるノイズのピッチ周波数が低減される。
図1〜図9のスプロケットの設計は、ローラとスプロケット10の歯底部との係合又は着座の維持に向けられることが好ましいが、歯底部の半径方向位置は、スプロケット10の周りで歯ごとに不規則に変化する。好ましくは、このパターンは、少なくとも1つの歯の公称着座位置を通過することなく、上方の着座位置から下方の着座位置への又はその逆の急激な移行部をまったく含まない。急激な移行部を回避することは、チェーン13の円滑な走行に寄与し、機械的ノイズの発生を低減しかつローラの摩耗を低減する。
本発明のスプロケット10の形状を創成するために、各々の歯底部の着座半径の位置、又はローラが着座するスプロケット歯12の間の空間が最初に決定される。各々のローラの着座位置を決定しつつ、着座ローラの間のピッチ距離が一定に維持される。
エラストマー材料14は、ランダム歯スプロケット10の両側に接着することが可能である。クッションリングの輪郭16は、ローラチェーンのピンリンク及びブシュリンクと、予め定められた量の干渉を有する。チェーンピン及びブシュリンクは、チェーン13とスプロケット10との係合中にエラストマー材料14、特にリング輪郭縁部16の部分を圧縮する。エラストマー材料14は、チェーンローラ又はブシュ係合の衝撃力を低減し、これによって、ノイズが低減されかつローラ/ブシュの疲労寿命が延ばされる。
図1〜図9の実施形態のランダムスプロケット10は、3つの異なる半径に限定されない。スプロケット10のようなランダムスプロケットは、2つ程度の半径又は3つよりも大きな複数の半径を有することができる。ランダム歯スプロケット10は、スプロケット歯12の不規則な角度間隔及び変化するピッチ半径の両方を有し、これにより、反復的なチェーン係合ノイズの次数が分断される。
本発明のいくつかの実施形態では、スプロケットは、ランダムクッションリングを有する従来のスプロケットである。従来のスプロケットの角度間隔は反復的であり、360度をスプロケット歯数で除したものに等しい。反復的なスプロケット歯の間隔は、スプロケット歯数に関係する望ましくないチェーン係合ノイズの次数を生じる。従来のクッションリングは、反復的なチェーン係合ノイズの次数を変えない。本発明のいくつかの実施形態では、ランダム干渉パッドを有するエラストマー製クッションリングは、従来のローラチェーンスプロケットの両側に接着される。
本発明のランダムクッションリングのエラストマー材料は、チェーンとスプロケットとの係合中に不均等にかつ非反復的に圧縮されることが好ましい。クッションリングのランダム性により、角度位置が変調され、この場合、各々のチェーンローラがスプロケット歯に衝突し、反復的なチェーン係合ノイズの次数を分断する。この変化又はランダム化により、ノイズ変調効果が提供されることが好ましい。エラストマー材料の圧縮は、チェーンローラ又はブシュ係合の衝撃力を低減し、これによって、次にノイズが低減されかつローラ/ブシュの疲労寿命が延ばされる。本発明のランダムクッションリングは、不規則な幾何学的形状、角度位置決め、半径方向位置決め、又はチェーン干渉の圧縮パッドを有し得る。クッションリングのランダム性により、角度位置が変調され、この場合、各々のチェーンローラがスプロケット歯に衝突し、反復的なチェーン係合ノイズの次数を分断する。
クリアランスリリーフの幾何学的形状は、各々の干渉幾何学的形状に隣接して位置決めされることが好ましい。各々の隣接するクリアランスリリーフは、偏向したクッションリング材料を受け入れるための空間を提供する。少なくともいくつかの実施形態では、クッションリング材料は、圧縮パッドの直前のクリアランスリリーフ空間及び圧縮パッドの直後のクリアランスリリーフ空間の両方に偏向される。クッションリング干渉の幾何学的形状、角度位置、半径方向位置及び量、ならびにクッションリングのクリアランスリリーフの幾何学的形状、角度位置、半径方向位置及び量は、スプロケット及びチェーン係合システムを調整するために変更し得る。最適なNVHの向上を達成するために、同時にクッションリングを圧縮するために必要な係合力による負の効果をいずれも最小にするために、調整が必要であり得る。図10と図11のスプロケットは、使用中のスプロケットの時計回りの回転についてここに説明されるが、図10と図11の幾何学的形状は、本発明の趣旨の範囲内で反時計回りの回転にも使用し得る。
図10は、ランダムクッションリング34を含むスプロケット30の側面図を示しており、この場合、干渉パッド35は、スプロケットの中心に対しランダムな配列の3つの半径方向位置4、5及び6に配置される。半径方向距離は、図10の破線として示されている。スプロケット30は、等しく成形されかつスプロケットの周囲の周りに等しく離間される複数の歯32を含む。ローラ着座部33は、スプロケットの隣接する各対の歯の間に配置される。クッションリングの輪郭付き縁部37は、各々のローラ着座部用のクリアランスリリーフの幾何学的形状36を圧縮パッド35に設けるために形成される。好ましくは、パターンは、少なくとも1つの歯の中間半径方向位置を通過することなく、上方の半径方向位置6から下方の半径方向位置4への又はその逆の急激な移行部をまったく含まない。干渉パッドは図10の3つの半径方向位置に示されているが、2つの半径方向位置又は4つ以上の半径方向位置を本発明の趣旨の範囲内でランダムな配列に使用してもよい。
図11は、ランダムクッションリング44を含むスプロケット30の側面図を示しており、この場合、干渉パッド45は、スプロケットの中心に対しランダムな配列の3つの角度位置7、8及び9に配置される。図11には、角度位置は、スプロケット歯の中心と、歯における輪郭付き縁部の中心との整列からの回転として示され、各々の角度位置について、輪郭付き縁部の中心は歯の中心に対し時計回りに回転される。他の実施形態では、角度位置は、スプロケット歯の中心と整列された輪郭付き縁部の中心、及び/又は本発明の趣旨の範囲内でスプロケット歯の中心に対し反時計回りに回転される輪郭付き縁部の1つ、2つ以上、又はすべての中心を含んでもよい。スプロケット30は、等しく成形されかつスプロケットの周囲の周りに等しく離間される複数の歯32を含む。ローラ着座部33は、スプロケットの隣接する各対の歯の間に配置される。クッションリングの輪郭付き縁部47は、各々のローラ着座部用のクリアランスリリーフの幾何学的形状46を圧縮パッド45に設けるために形成される。好ましくは、パターンは、少なくとも1つの歯の中間角度位置を通過することなく、最大角度位置9から最小角度位置7への又はその逆の急激な移行部をまったく含まない。干渉パッドは図11の3つの角度位置に示されているが、2つの角度位置又は4つ以上の角度位置を本発明の趣旨の範囲内でランダムな配列に使用してもよい。
本発明の他の実施形態では、ランダムクッションリングは、ランダムな配列の少なくとも2つの輪郭付き縁部を含む。輪郭付き縁部の圧縮パッドの形状又はクリアランスリリーフの幾何学的形状は、変更してもよい。輪郭付き縁部は、図1〜図8に示した幾何学的形状16〜16gから選択される。
代わりに、本発明のランダムクッションリングは、本発明のランダムスプロケットと組み合わせて使用してもよい。最後に、ランダムクッションリングは、本発明の趣旨の範囲内で、幾何学的形状、角度位置、及び半径方向位置の変形の任意の組み合わせの輪郭付き縁部からなるランダムな配列を含み得る。
したがって、本明細書に記載した本発明の実施形態は、単に本発明の原理の適用の例示目的に過ぎないことを理解すべきである。図示した実施形態の詳細に対する本明細書の参照は、それら自体が本発明に重要であると見なされるそれらの特徴を列挙する特許請求の範囲を限定するようには意図されない。